(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】インクジェット印刷用硬化性組成物、その硬化物、及びその硬化物を有する電子部品
(51)【国際特許分類】
C09D 11/36 20140101AFI20231011BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20231011BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20231011BHJP
H05K 3/28 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
C09D11/36
B41M5/00 120
B41M5/00 100
B41J2/01 501
B41J2/01 129
H05K3/28 D
(21)【出願番号】P 2018068960
(22)【出願日】2018-03-30
【審査請求日】2021-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】591021305
【氏名又は名称】太陽ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】韋 瀟竹
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 秀之
(72)【発明者】
【氏名】松本 博史
(72)【発明者】
【氏名】吉川 里奈
(72)【発明者】
【氏名】志村 優之
【審査官】井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106980234(CN,A)
【文献】特開2015-187281(JP,A)
【文献】特開2012-103586(JP,A)
【文献】特開2010-077283(JP,A)
【文献】特開2014-133864(JP,A)
【文献】特開2013-173907(JP,A)
【文献】特開2013-082916(JP,A)
【文献】特開2007-310027(JP,A)
【文献】特開2017-215565(JP,A)
【文献】国際公開第2017/090680(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エチレン性不飽和基を有する多分岐状のオリゴマー又はポリマー、
(B)光重合開始剤、及び
(C)熱硬化性化合物、
を含み、かつ
二官能(メタ)アクリレート化合物を含み、粘度調整のための溶剤は含まない
プリント配線板のソルダーレジスト形成用のインクジェット印刷用硬化性組成物であって、
前記(A)エチレン性不飽和基を有する多分岐状のオリゴマー又はポリマーの含有量が前記インクジェット用硬化性組成物の質量を基準として1.5~60質量%であり、
前記(C)熱硬化性化合物は、ブロックイソシアネートを含み、
その配合量が前記インクジェット用硬化性組成物の質量を基準として1~30質量%である、
プリント配線板のソルダーレジスト形成用のインクジェット印刷用硬化性組成物。
【請求項2】
前記多分岐状のオリゴマー又はポリマーが、ハイパーブランチ又はデンドリマー構造を有することを特徴とする請求項1に記載の
プリント配線板のソルダーレジスト形成用のインクジェット印刷用硬化性組成物。
【請求項3】
JIS K2283に準拠して測定された50℃における粘度が50mPa・s以下である請求項1または2に記載の
プリント配線板のソルダーレジスト形成用のインクジェット印刷用硬化性組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の
プリント配線板のソルダーレジスト形成用のインクジェット印刷用硬化性組成物を硬化したことを特徴とする硬化物。
【請求項5】
請求項4に記載の硬化物を有することを特徴とする電子部品。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか1項に記載の
プリント配線板のソルダーレジスト形成用のインクジェット印刷用硬化性組成物を、インクジェットプリンターで基板に直接描画する工程と、前記描画された
プリント配線板のソルダーレジスト形成用のインクジェット印刷用硬化性組成物に光を照射して硬化させ、レジストパターンを形成する工程を含む、プリント配線板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット印刷用硬化性組成物に関し、特に耐熱性、硬度及び基板に対する密着性に優れる硬化物を得るためのインクジェット印刷用硬化性組成物、その硬化物、及びその硬化物を有する電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板などの電子部品の製造に使用されるインクジェット印刷法は、インクジェットプリンターを用いて、デジタルデータに基づいて直接基材にパターンを印刷し、UVなどのエネルギー線を利用し即時硬化させることで、所望とする硬化されたパターンを直接形成することができる技術である。そのため、従来法(写真現像法やスクリーン印刷法)と比較して効率的な生産が可能な方法である。また、他の利点として、インクジェット印刷法は非接触印刷であるため、凹凸のついた基材やフレキシブル性を有する基材への対応が容易であり、プリント配線板などの電子部品への適用が期待されている。
【0003】
また、プリント配線板用材料のうち、最外層の保護膜として形成されるソルダーレジストは、アルカリ現像法によりパターン形成を行っていたが、インクジェット印刷法を適用する事で、露光現像プロセスが不要となり、生産ラインの管理がしやすい、環境に優しいといったメリットがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
インクジェット印刷法に用いられるインキ(硬化性組成物)は、上記従来法のインキと比較して低粘度であることが必要という制約がある。インキを低粘度化するため、低粘度の希釈剤を多量に使用しており、耐熱性を始めとする各種特性が低下する傾向にあるが、プリント配線板のソルダーレジストとして使う場合、耐熱性が非常に重要となる。特に、リフロー後、クラックが発生することにより、部品の信頼性が低くなる恐れがある。これまでインクジェット用インキとして、優れた耐熱性を持ち、リフロー後クラックが発生せず、プリント配線板用の硬化性組成物として好適に使用できるものは存在しなかった。また、硬化性組成物の基板に対する密着性の向上も従来から依然として求められ続けている。
【0006】
したがって、本発明の目的は、耐熱性、特にリフロー時のクラック耐性およびNi/Pd/Auめっき耐性、基板に対する密着性に優れる硬化物を得るためのインクジェット印刷用硬化性組成物を提供することにある。
【0007】
また、本発明の目的は、そのインクジェット印刷用硬化性組成物を硬化した硬化物、及びその硬化物を有する電子部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は、
(A)エチレン性不飽和基を有する多分岐状のオリゴマー又はポリマー、
(B)光重合開始剤、及び
(C)熱硬化性化合物、
を含むインクジェット印刷用硬化性組成物により達成される。
【0009】
インクジェット印刷に用いる硬化性組成物に含有させる成分として、エチレン性不飽和基を有する多分岐状のオリゴマー又はポリマーを用い、更に光重合開始剤及び熱硬化性化合物と組み合わせることで、インクジェット印刷法に適した粘度の硬化性組成物が得られるとともに、耐熱性、特にリフロー時のクラック耐性およびNi/Pd/Auめっき耐性、基板に対する密着性に優れる硬化物を得ることができることが本発明者らにより見出された。
【0010】
本発明のインクジェット印刷用硬化性組成物の好ましい態様は以下の通りである。
【0011】
(1)前記多分岐状のオリゴマー又はポリマーが、ハイパーブランチ又はデンドリマー構造を有する。
(2)JIS K2283に準拠して測定された50℃における粘度が50mPa・s以下である。
【0012】
さらに、上記目的は、本発明のインクジェット印刷用硬化性組成物を硬化した硬化物、及びその硬化物を有する電子部品により達成される。
【0013】
また、本発明は、インクジェットプリンターで基板に直接描画する工程と、前記描画されたインクジェット印刷用硬化性組成物に光を照射して硬化させ、レジストパターンを形成する工程を含む、プリント配線板の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、耐熱性、特にリフロー時のクラック耐性およびNi/Pd/Auめっき耐性、基板に対する密着性に優れる硬化物を得るためのインクジェット印刷用硬化性組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】リフロー後のクラック耐性の評価において測定した温度を示している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。上述したように、本発明のインクジェット印刷用硬化性組成物は、(A)エチレン性不飽和基を有する多分岐状のオリゴマー又はポリマー、(B)光重合開始剤、及び(C)熱硬化性化合物を含む。
【0017】
<(A)エチレン性不飽和基を有する多分岐状のオリゴマー又はポリマー>
本発明において、エチレン性不飽和基を有する多分岐状のオリゴマー又はポリマーは、多分岐状のオリゴマー又はポリマー(1分子中に複数の分岐鎖を有するオリゴマー又はポリマーのことをいう)骨格にエチレン性不飽和基を少なくとも1つ有する化合物である。エチレン性不飽和基は、(メタ)アクリロイル基などの官能基に由来するものであり、1分子内に複数種のエチレン性不飽和基を有していてもよい。なお、(メタ)アクリロイル基は、アクリロイル基とメタクリロイル基の両方を含む概念である。
【0018】
1分子内のエチレン性不飽和基の数は、好ましくは3以上、より好ましくは4~30、である。エチレン性不飽和基の数は、1分子の多分岐状のオリゴマー又はポリマーが有するエチレン性不飽和基の数を指す。
【0019】
エチレン性不飽和基を有する多分岐状のオリゴマー及び/又はポリマー(以下、単に「多分岐状のオリゴマー又はポリマー」とも称する)としては、デンドリマー構造(樹状構造)を有する化合物(以下、単にデンドリマーともいう)、ハイパーブランチ(超分岐)構造を有する化合物(以下、単にハイパーブランチ(オリゴマー、ポリマー)ともいう)、スター構造を有する化合物(オリゴマー、ポリマ―)、及びグラフト構造を有する化合物(オリゴマー、ポリマ―)であって、エチレン性不飽和結合を有する官能基、例えば(メタ)アクリロイル基を有する化合物であることが好ましい。これらの中でも、樹枝状オリゴマー又はポリマーが組成物の耐熱性、特にリフロー時のクラック耐性およびNi/Pd/Auめっき耐性、硬度及び基板に対する密着性に優れる点で好ましい。
【0020】
なお、本発明でデンドリマーは、枝分岐鎖が放射状に広がった構造を有する化合物を広く称する。デンドリマーの具体的種類は特に限定されず、アミドアミン系デンドリマー、フェニルエーテル系デンドリマー、ハイパーブランチポリエチレングリコールなど公知のものから1種以上を選択することができる。
【0021】
また、デンドリマーの製造方法も特に限定されず、中心コア分子に世代ごとに分子を結合させて分岐を形成するダイバージェント法、予め合成した枝部分をコア分子に結合させるコンバージェント法、2以上の反応点Bを有する分岐部分と別の反応点Aを有するつなぎ部分とを1分子内に持つモノマーABxを用いて1段階で合成する方法など公知の製造方法を採用することができる。
【0022】
多分岐状のオリゴマー又はポリマーは市販品を用いることも可能であり、例えば、Etercure 6361-100(Eternal Materials社製)、Doublermer(DM)2015(Double Bond Chamical社製)、SP1106(Miwon Specialty Chemical社製)、ビスコート#1000(大阪有機化学工業株式会社製)を挙げることができる。
【0023】
このほか、多分岐状のオリゴマー又はポリマーはIris Biotech社、関東化学社、Merk Millipore社、QIAGEN社、Sigma-Aldrich社、テクノケミカル社、Double Bond Chamical 社、大阪有機化学工業社、伯東社などから入手可能である。多分岐状のオリゴマー又はポリマーは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0024】
多分岐状のオリゴマー又はポリマーの粘度は、25℃において、例えば、1000mPa・s以下、特に800mPa・s以下であることが好ましい。これらの範囲であれば、本発明のインクジェット印刷用硬化性組成物のインクジェット印刷性が良好となる。粘度とはJIS K2283に従って測定した粘度を指す。
【0025】
多分岐状のオリゴマー又はポリマーは、重量平均分子量(Mw)が、一般に1000~20000、好ましくは1000~8000である。重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフ測定に基づく分子量分布曲線に基づくポリスチレン換算の分子量である。
【0026】
エチレン性不飽和基を有する多分岐状のオリゴマー又はポリマーの含有量は、本発明のインクジェット印刷用硬化性組成物の質量を基準として、1~80質量%、好ましくは1.5~60質量%である。
【0027】
<(B)光重合開始剤>
光重合開始剤としては、エネルギー線の照射により、(メタ)アクリレートを重合させることが可能なものであれば、特に制限はなく、ラジカル重合開始剤が使用できる。なお、本明細書及び特許請求の範囲において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート、メタクリレート及びそれらの混合物を総称する用語で、他の類似の表現についても同様である。
【0028】
光ラジカル重合開始剤としては、光、レーザー、電子線等によりラジカルを発生し、ラジカル重合反応を開始する化合物であれば全て用いることができる。当該光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインとベンゾインアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン等のアセトフェノン類;2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン、N,N-ジメチルアミノアセトフェノン等のアミノアセトフェノン類;2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-t-ブチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン等のアントラキノン類;2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体;リボフラビンテトラブチレート;2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾオキサゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール等のチオール化合物;2,4,6-トリス-s-トリアジン、2,2,2-トリブロモエタノール、トリブロモメチルフェニルスルホン等の有機ハロゲン化合物;ベンゾフェノン、4,4’-ビスジエチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類又はキサントン類;2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。
【0029】
上記光ラジカル重合開始剤は、単独で又は複数種を混合して使用することができる。また更に、これらに加え、N,N-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、ペンチル-4-ジメチルアミノベンゾエート、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の三級アミン類などの光開始助剤を使用することができる。また、可視光領域に吸収のあるOmnirad(オムニラッド)784等(IGM Resins社製)のチタノセン化合物等も、光反応を促進するために光ラジカル重合開始剤に添加することもできる。尚、光ラジカル重合開始剤に添加する成分はこれらに限られるものではなく、紫外光もしくは可視光領域で光を吸収し、(メタ)アクリロイル基等の不飽和基をラジカル重合させるものであれば、光重合開始剤、光開始助剤に限らず、単独であるいは複数併用して使用できる。
【0030】
光重合開始剤で市販されているものの製品名としては、例えば、Omnirad(オムニラッド)907、Omnirad(オムニラッド)127、Omnirad(オムニラッド)379(何れもIGM Resins社製)等が挙げられる。
【0031】
光重合開始剤の配合量は、本発明のインクジェット印刷用硬化性組成物の質量を基準として、0.5~15質量%、より好ましくは0.5~10質量%、さらに好ましくは1~10質量%である。
【0032】
<(C)熱硬化性化合物>
本発明のインクジェット印刷用硬化性組成物は、熱硬化性化合物を含む。熱硬化性化合物としては、メラミン、イソシアネート、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、メラミン誘導体、ベンゾグアナミン誘導体等のアミノ樹脂、ブロックイソシアネート化合物、シクロカーボネート化合物、環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性化合物、ビスマレイミド、カルボジイミド樹脂等の公知の熱硬化性樹脂が挙げられる。中でも、耐熱性に優れることから、メラミンやブロックイソシアネート化合物を用いることが好ましい。これらの熱硬化性化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
分子中に複数の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性化合物は、分子中に3、4又は5員環の環状(チオ)エーテル基のいずれか一方又は2種類の基を複数有する化合物であり、例えば、分子内に複数のエポキシ基を有する化合物、すなわち多官能エポキシ化合物、分子内に複数のオキセタニル基を有する化合物、すなわち多官能オキセタン化合物、分子内に複数のチオエーテル基を有する化合物、すなわちエピスルフィド樹脂等が挙げられる。
【0034】
多官能エポキシ化合物としては、ADEKA社製のアデカサイザーO-130P、アデカサイザーO-180A等のエポキシ化植物油;三菱化学社製のjER828、ダイセル化学工業社製のEHPE3150、DIC社製のエピクロン840、東都化成社製のエポトートYD-011、ダウケミカル社製のD.E.R.317、住友化学工業社製のスミ-エポキシESA-011、旭化成工業社製のA.E.R.330等(何れも商品名)のビスフェノールA型エポキシ樹脂;ハイドロキノン型エポキシ樹脂、新日鉄住金化学株式会社製のYSLV-80XY等のビスフェノールF型エポキシ樹脂、新日鉄住金化学株式会社製のYSLV-120TEのチオエーテル型エポキシ樹脂;三菱化学社製のjERYL903、DIC社製のエピクロン152、東都化成社製のエポトートYDB-400、ダウケミカル社製のD.E.R.542、住友化学工業社製のスミ-エポキシESB-400、旭化成工業社製のA.E.R.711等(何れも商品名)のブロム化エポキシ樹脂;三菱化学社製のjER152、ダウケミカル社製のD.E.N.431DIC社製のエピクロンN-730、東都化成社製のエポトートYDCN-701、日本化薬社製のEPPN-201、住友化学工業社製のスミ-エポキシESCN-195X、旭化成工業社製のA.E.R.ECN-235等(何れも商品名)のノボラック型エポキシ樹脂;日本化薬社製NC-3000等のビフェノールノボラック型エポキシ樹脂;DIC社製のエピクロン830、三菱化学社製jER807、東都化成社製のエポトートYDF-170、YDF-175、YDF-2004等(何れも商品名)のビスフェノールF型エポキシ樹脂;東都化成社製のエポトートST-2004(商品名)等の水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂;三菱化学社製のjER604、東都化成社製のエポトートYH-434、住友化学工業社製のスミ-エポキシELM-120等(何れも商品名)のグリシジルアミン型エポキシ樹脂;ヒダントイン型エポキシ樹脂;ダイセル化学工業社製のセロキサイド2021等(何れも商品名)の脂環式エポキシ樹脂;日本化薬社製のEPPN-501等(何れも商品名)のトリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂;三菱化学社製のYL-6056、YX-4000、YL-6121(何れも商品名)等のビキシレノール型もしくはビフェノール型エポキシ樹脂又はそれらの混合物;日本化薬社製EBPS-200、ADEKA社製EPX-30、DIC社製のEXA-1514(商品名)等のビスフェノールS型エポキシ樹脂;三菱化学社製のjER157S(商品名)等のビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂;三菱化学社製のjERYL-931等(何れも商品名)のテトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂;日産化学工業社製のTEPIC等(何れも商品名)の複素環式エポキシ樹脂;日本油脂社製ブレンマーDGT等のジグリシジルフタレート樹脂;東都化成社製ZX-1063等のテトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂;新日鐵化学社製ESN-190、DIC社製HP-4032等のナフタレン基含有エポキシ樹脂;DIC社製HP-7200等のジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂;日本油脂社製CP-50S、CP-50M等のグリシジルメタアクリレート共重合系エポキシ樹脂;さらにシクロヘキシルマレイミドとグリシジルメタアクリレートの共重合エポキシ樹脂;エポキシ変性のポリブタジエンゴム誘導体(例えばダイセル化学工業製PB-3600等)、CTBN変性エポキシ樹脂(例えば東都化成社製のYR-102、YR-450等)等が挙げられるが、これらに限られるものではない。これらのエポキシ樹脂は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも特にノボラック型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ビフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂又はそれらの混合物が好ましい。
【0035】
多官能オキセタン化合物としては、例えば、ビス[(3-メチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、1,4-ビス[(3-メチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、(3-メチル-3-オキセタニル)メチルアクリレート、(3-エチル-3-オキセタニル)メチルアクリレート、(3-メチル-3-オキセタニル)メチルメタクリレート、(3-エチル-3-オキセタニル)メチルメタクリレートやそれらのオリゴマー又は共重合体等の多官能オキセタン類の他、オキセタンアルコールとノボラック樹脂、ポリ(p-ヒドロキシスチレン)、カルド型ビスフェノール類、カリックスアレーン類、カリックスレゾルシンアレーン類、又はシルセスキオキサン等の水酸基を有する樹脂とのエーテル化物等が挙げられる。その他、オキセタン環を有する不飽和モノマーとアルキル(メタ)アクリレートとの共重合体等も挙げられる。
【0036】
なお、(3-メチル-3-オキセタニル)メチルアクリレート、(3-エチル-3-オキセタニル)メチルアクリレート、(3-メチル-3-オキセタニル)メチルメタクリレート、(3-エチル-3-オキセタニル)メチルメタクリレート等、分子中にラジカル重合部位(メタクリル基)とカチオン重合部位(オキセタニル部位)を併せ持つモノマーは、光硬化成分でもあり、熱硬化性化合物でもあることから、光硬化及び熱硬化の2段階硬化を行う場合に組成物中に含まれることが好ましい。
【0037】
このような成分としては、多官能オキセタン化合物以外に、例えば、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート脂(製品名、A-BPE-4、新中村化学工業社製)、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル(製品名、4HBAGE、日本化成株式会社製)、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタアクリレート(製品名、サイクロマーM100、株式会社ダイセル製)などが挙げられる。
【0038】
分子中に複数の環状チオエーテル基を有する化合物としては、例えば、三菱化学社製のビスフェノールA型エピスルフィド樹脂 YL7000等が挙げられる。また、同様の合成方法を用いて、ノボラック型エポキシ樹脂のエポキシ基の酸素原子を硫黄原子に置き換えたエピスルフィド樹脂なども用いることができる。
【0039】
メラミン誘導体、ベンゾグアナミン誘導体等のアミノ樹脂としては、例えばメチロールメラミン化合物、メチロールベンゾグアナミン化合物、メチロールグリコールウリル化合物及びメチロール尿素化合物等がある。さらに、アルコキシメチル化メラミン化合物、アルコキシメチル化ベンゾグアナミン化合物、アルコキシメチル化グリコールウリル化合物及びアルコキシメチル化尿素化合物は、それぞれのメチロールメラミン化合物、メチロールベンゾグアナミン化合物、メチロールグリコールウリル化合物及びメチロール尿素化合物のメチロール基をアルコキシメチル基に変換することにより得られる。このアルコキシメチル基の種類については特に限定されるものではなく、例えばメトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル基、ブトキシメチル基等とすることができる。特に人体や環境に優しいホルマリン濃度が0.2%以下のメラミン誘導体が好ましい。
【0040】
これらの市販品としては、例えば、サイメル300、同301、同303、同370、同325、同327、同701、同266(いずれも三井サイアナミッド社製)、ニカラックMx-750、同Mx-032、同Mx-270、同Mx-280、同Mx-290、同Mx-706(いずれも三和ケミカル社製)等を挙げることができる。このような熱硬化性化合物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物は、1分子内に複数のイソシアネート基又はブロック化イソシアネート基を有する化合物である。このような1分子内に複数のイソシアネート基又はブロック化イソシアネート基を有する化合物としては、ポリイソシアネート化合物、又はブロックイソシアネート化合物等が挙げられる。なお、ブロック化イソシアネート基とは、イソシアネート基がブロック剤との反応により保護されて一時的に不活性化された基であり、所定温度に加熱されたときにそのブロック剤が解離してイソシアネート基が生成する。上記ポリイソシアネート化合物、又はブロックイソシアネート化合物を加えることにより硬化性及び得られる硬化物の強靭性を向上させることができる。
【0042】
このようなポリイソシアネート化合物としては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート又は脂環式ポリイソシアネートが用いられる。
【0043】
芳香族ポリイソシアネートの具体例としては、例えば、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート、o-キシリレンジイソシアネート、m-キシリレンジイソシアネート及び2,4-トリレンダイマー等が挙げられる。
【0044】
脂肪族ポリイソシアネートの具体例としては、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、4,4-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)及びイソホロンジイソシアネート等が挙げられる。
【0045】
脂環式ポリイソシアネートの具体例としてはビシクロヘプタントリイソシアネートが挙げられる。並びに先に挙げられたイソシアネート化合物のアダクト体、ビューレット体及びイソシアヌレート体等が挙げられる。
【0046】
ブロックイソシアネート化合物としては、イソシアネート化合物とイソシアネートブロック剤との付加反応生成物が用いられる。ブロック剤と反応し得るイソシアネート化合物としては、例えば、上述のポリイソシアネート化合物等が挙げられる。
【0047】
イソシアネートブロック剤としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、クロロフェノール及びエチルフェノール等のフェノール系ブロック剤;ε-カプロラクタム、δ-パレロラクタム、γ-ブチロラクタム及びβ-プロピオラクタム等のラクタム系ブロック剤;アセト酢酸エチル及びアセチルアセトン等の活性メチレン系ブロック剤;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、アミルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ベンジルエーテル、グリコール酸メチル、グリコール酸ブチル、ジアセトンアルコール、乳酸メチル及び乳酸エチル等のアルコール系ブロック剤;ホルムアルデヒドキシム、アセトアルドキシム、アセトキシム、メチルエチルケトキシム、ジアセチルモノオキシム、シクロヘキサンオキシム等のオキシム系ブロック剤;ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、t-ブチルメルカプタン、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノール等のメルカプタン系ブロック剤;酢酸アミド、ベンズアミド等の酸アミド系ブロック剤;コハク酸イミド及びマレイン酸イミド等のイミド系ブロック剤;キシリジン、アニリン、ブチルアミン、ジブチルアミン等のアミン系ブロック剤;イミダゾール、2-エチルイミダゾール等のイミダゾール系ブロック剤;メチレンイミン及びプロピレンイミン等のイミン系ブロック剤等が挙げられる。
【0048】
ブロックイソシアネート化合物は市販のものであってもよく、例えば、スミジュールBL-3175、BL-4165、BL-1100、BL-1265、デスモジュールTPLS-2957、TPLS-2062、TPLS-2078、TPLS-2117、デスモサーム2170、デスモサーム2265(いずれも住友バイエルウレタン社製)、コロネート2512、コロネート2513、コロネート2520(いずれも日本ポリウレタン工業社製)、B-830、B-815、B-846、B-870、B-874、B-882(いずれも三井武田ケミカル社製)、TPA-B80E、17B-60PX、E402-B80T(いずれも旭化成ケミカルズ社製)等が挙げられる。なお、スミジュールBL-3175、BL-4265はブロック剤としてメチルエチルオキシムを用いて得られるものである。このような1分子内に複数のイソシアネート基、又はブロック化イソシアネート基を有する化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
熱硬化性化合物の配合量は、本発明のインクジェット印刷用硬化性組成物の質量を基準として、1~30質量%が好ましい。配合量が1質量%以上であれば、塗膜の強靭性、耐熱性がさらに向上する。一方、30質量%以下であれば、耐熱性等の特性と射出性が共に優れる。
【0050】
<(メタ)アクリレート化合物>
本発明のインクジェット印刷用硬化性組成物は、更に、上述した(メタ)アクリレート化合物以外の単官能や2官能などの(メタ)アクリレート化合物や他の官能基(水酸基など)などを含む(メタ)アクリレート化合物を含んでいてもよい。
【0051】
単官能(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ブトキシメチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート等の脂肪族(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4-(メタ)アクリロキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、イソボルニル(メタ)アクリレート等の脂環式(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等の芳香族(メタ)アクリレート、脂肪族エポキシ変性(メタ)アクリレート等変性(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロキシアルキルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルリン酸エステル、(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、γ-(メタ)アクリロキシアルキルトリアルコキシシラン等が挙げられる。
【0052】
2官能(メタ)アクリレートの具体例としては、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,9-ノナンジオールジアクリレート、1,10-デカンジオールジアクリレートなどのジオールのジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールにエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドの少なくとも何れか1種を付加して得たジオールのジアクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレートなどのグリコールのジアクリレート、ビスフェノールAEO付加物ジアクリレート、ビスフェノールA PO付加物ジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、水添ジシクロペンタジエニルジアクリレート、シクロヘキシルジアクリレートなどの環状構造を有するジアクリレート、などが挙げられる。
【0053】
市販されているものとしては、ライトアクリレート1,6HX-A、1,9ND-A、3EG-A、4EG-A、(共栄社化学社製の商品名)、HDDA、1,9-NDA、DPGDA、TPGDA(ダイセル・サイテック社製の商品名)、ビスコート#195、#230、#230D、#260、#310HP、#335HP、#700HV、(大阪有機化学工業社製の商品名)、アロニックスM-208、M-211B、M-220、M-225、M-240、M-270(東亞合成社製の商品名)などが挙げられる。
【0054】
水酸基含有(メタ)アクリレートの例としては、2-ヒドロキシ-3-アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0055】
市販品としてはアロニックスM-5700(東亞合成社製の商品名)、4HBA、2HEA、CHDMMA(以上、日本化成社製の商品名)、BHEA、HPA、HEMA、HPMA(以上、日本触媒社製の商品名)、ライトエステルHO、ライトエステルHOP、ライトエステルHOA(以上、共栄社化学社製の商品名)等がある。(B)水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物は1種類又は複数種類を組み合わせて用いることができる。
【0056】
(メタ)アクリレート化合物の含有量は、本発明のインクジェット印刷用硬化性組成物の質量を基準として、好ましくは20~90質量%、より好ましくは30~80質量%である。
【0057】
<その他の成分>
本発明のインクジェット印刷用硬化性組成物には、必要に応じて消泡・レベリング剤、チクソトロピー付与剤・増粘剤、カップリング剤、分散剤、難燃剤等の添加剤を含有させることができる。
【0058】
消泡剤・レベリング剤としてはシリコーン、変性シリコーン、鉱物油、植物油、脂肪族アルコール、脂肪酸、金属石鹸、脂肪酸アミド、ポリオキシアルキレングリコール、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル等の化合物等が使用できる。
【0059】
チクソトロピー付与剤・増粘剤としては、カオリナイト、スメクタイト、モンモリロナイト、ベントナイト、タルク、マイカ、ゼオライト等の粘度鉱物や微粒子シリカ、シリカゲル、不定形無機粒子、ポリアミド系添加剤、変性ウレア系添加剤、ワックス系添加剤などが使用できる。
【0060】
消泡・レベリング剤、チクソトロピー付与剤・増粘剤を添加することにより、硬化物の表面特性及び組成物の性状の調整を行うことができる。
【0061】
カップリング剤としては、アルコキシ基としてメトキシ基、エトキシ基、アセチル等であり、反応性官能基としてビニル、メタクリル、アクリル、エポキシ、環状エポキシ、メルカプト、アミノ、ジアミノ、酸無水物、ウレイド、スルフィド、イソシアネート等である例えば、ビニルエトキシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニル・トリス(β―メトキシエトキシ)シラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシラン等のビニル系シラン化合物、γ-アミノプロピルトリメトキシラン、Ν―β―(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-ユレイドプロピルトリエトキシシラン等のアミノ系シラン化合物、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β―(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等のエポキシ系シラン化合物、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト系シラン化合物、Ν―フェニル―γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等のフェニルアミノ系シラン化合物等のシランカップリング剤、イソプロピルトリイソステアロイル化チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラ(1,1-ジアリルオキシメチルー1-ブチル)ビス-(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネート等のチタネート系カップリング剤、エチレン性不飽和ジルコネート含有化合物、ネオアルコキシジルコネート含有化合物、ネオアルコキシトリスネオデカノイルジルコネート、ネオアルコキシトリス(ドデシル)ベンゼンスルホニルジルコネート、ネオアルコキシトリス(ジオクチル)ホスフェートジルコネート、ネオアルコキシトリス(ジオクチル)ピロホスフェートジルコネート、ネオアルコキシトリス(エチレンジアミノ)エチルジルコネート、ネオアルコキシトリス(m-アミノ)フェニルジルコネート、テトラ(2,2-ジアリルオキシメチル)ブチル,ジ(ジトリデシル)ホスフィトジルコネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシ,トリネオデカノイルジルコネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシ,トリ(ドデシル)ベンゼン-スルホニルジルコネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシ,トリ(ジオクチル)ホスファトジルコネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシ,トリ(ジオクチル)ピロ-ホスファトジルコネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシ,トリ(N-エチレンジアミノ)エチルジルコネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシ,トリ(m-アミノ)フェニルジルコネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシ,トリメタクリルジルコネート(、ネオペンチル(ジアリル)オキシ,トリアクリルジルコネート、ジネオペンチル(ジアリル)オキシ,ジパラアミノベンゾイルジルコネート、ジネオペンチル(ジアリル)オキシ,ジ(3-メルカプト)プロピオニックジルコネート、ジルコニウム(IV)2,2-ビス(2-プロペノラトメチル)ブタノラト,シクロジ[2,2-(ビス2-プロペノラトメチル)ブタノラト]ピロホスファト-O,O等のジルコネート系カップリング剤、ジイソブチル(オレイル)アセトアセチルアルミネート、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート等のアルミネート系カップリング剤等が使用できる。
【0062】
分散剤としては、ポリカルボン酸系、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合系、ポリエチレングリコール、ポリカルボン酸部分アルキルエステル系、ポリエーテル系、ポリアルキレンポリアミン系等の高分子型分散剤、アルキルスルホン酸系、四級アンモニウム系、高級アルコールアルキレンオキサイド系、多価アルコールエステル系、アルキルポリアミン系等の低分子型分散剤等が使用できる。
【0063】
難燃剤としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の水和金属系、赤燐、燐酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、ホウ酸亜鉛、錫酸亜鉛、モリブデン化合物系、臭素化合物系、塩素化合物系、燐酸エステル、含燐ポリオール、含燐アミン、メラミンシアヌレート、メラミン化合物、トリアジン化合物、グアニジン化合物、シリコンポリマー等が使用できる。
【0064】
重合速度や重合度を調整するためには、更に、重合禁止剤、重合遅延剤を添加することも可能である。
【0065】
更に、本発明のインクジェット印刷用硬化性組成物には、粘度調整のため溶剤を用いてもよいが、溶剤の揮発による描画精度の低下を防ぐために、添加量は少ないことが好ましい。また、粘度調整のための溶剤は含まないことがより好ましい。
【0066】
本発明の硬化性組成物には、着色を目的として、着色顔料や染料等を添加しても良い。着色顔料や染料等としては、カラ-インデックスで表される公知慣用のものが使用可能である。例えば、Pigment Blue 15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、60、Solvent Blue 35、63、68、70、83、87、94、97、122、136、67、70、PigmentGreen 7、 36、3、5、20、28、Solvent Yellow 163、Pigment Yellow 24、108、193、147、199、202、110、109、139 179 185 93、94、95、128、155、166、180、120、151、154、156、175、181、1、2、3、4、5、6、9、10、12、61、62、62:1、65、73、74、75、97、100、104、105、111、116、167、168、169、182、183、12、13、14、16、17、55、63、81、83、87、126、127、152、170、172、174、176、188、 198、Pigment Orange 1、5、13、14、16、17、24、34、36、38、40、43、46、49、51、61、63、64、71、73、Pigment Red 1、2、3、4、5、6、8、9、12、14、15、16、17、21、22、23、31、32、112、114、146、147、151、170、184、187、188、193、210、245、253、258、266、267、268、269、37、38、41、48:1、48:2、48:3、48:4、49:1、49:2、50:1、52:1、52:2、53:1、53:2、57:1、58:4、63:1、63:2、64:1、68、171、175、176、185、208、123、149、166、178、179、190、194、224、254、255、264、270、272、220、144、166、214、220、221、242、168、177、216、122、202、206、207、209、Solvent Red 135、179、149、150、52、207、Pigment Violet 19、23、29、32、36、38、42、Solvent Violet 13、36、Pigment Brown 23、25、PigmentBlack 1、7等が挙げられる。これら着色顔料・染料等は、本発明のインクジェット印刷用硬化性組成物の質量を基準として、0.01~5質量%添加することが好ましい。
【0067】
また、本発明の硬化性組成物を白色硬化性組成物として用いる場合には、ルチル型やアナターゼ型の酸化チタンを添加すると好ましい。この場合は、本発明のインクジェット印刷用硬化性組成物の質量を基準として、1~50質量%添加することが好ましい。これら着色顔料・染料等は単独や2種以上の併用で使用できる。
【0068】
本発明の硬化性組成物は、インクジェット法による印刷に適用可能である。インクジェット法による印刷に適用可能であることには、インクジェットプリンターにより噴射(吐出)可能な粘度であることが好ましい。
【0069】
粘度とはJIS K2283に従って測定した粘度を指す。また、上記のインクジェット印刷用硬化性組成物の粘度は50℃で50mPa・s以下、特に1~40mPa・sであることが好ましい。この範囲であれば、インクジェットプリンターによって支障なく吐出可能である。
【0070】
従って、本発明のインクジェット硬化性組成物によりプリント配線板用の基板等に、直接パターンを描画することができる。
【0071】
本発明の硬化性組成物はインクジェットプリンターにインキとして使用され、基板上への印刷に使用される。
【0072】
本発明の硬化性組成物は光重合開始剤を含むため、印刷直後の組成物層に光照射を行うことにより組成物層を光硬化させることができる。光照射は、紫外線、電子線、化学線等の活性エネルギー線の照射により、好ましくは紫外線照射により行われる。
【0073】
例えば、紫外線感光性の光重合開始剤を含む組成物については、紫外線を照射することにより、組成物層を光硬化させることができる。
【0074】
インクジェットプリンターにおける紫外線照射は、例えばプリントヘッドの側面に高圧水銀灯、メタルハライドランプ、紫外線LEDなどの光源を取り付け、プリントヘッドもしくは基材を動かすことによる走査を行うことにより行うことができる。この場合は、印刷と、紫外線照射とをほぼ同時に行なえる。
【0075】
また、本発明の硬化性組成物は熱硬化性化合物が含むため、公知の加熱手段、例えば、熱風炉、電気炉、赤外線誘導加熱炉等の加熱炉を用いることにより熱硬化する。
【0076】
なお、本発明の硬化性組成物により得られた硬化物が一般的な諸特性の要求を満たすには、120℃~170℃にて5分~60分加熱することにより硬化することが好ましい。
【0077】
また、基板が、いわゆるリジッド基板、すなわち、両面に配線がプリントされた両面板や基板を積層させてなる多層板である場合には、上記硬化性組成物からなる被膜を有する基板が複数回上記はんだ付け工程に供され、繰り返し加熱されることとなる。
【0078】
しかし、本発明の硬化性組成物によれば、得られた被膜は、複数回のはんだ付けを想定した熱履歴を受けた後においても被膜上のクラックの発生が無く、且つ十分な基板との密着性及び被膜硬度を維持しており、リジッド基板上に施されるソルダーレジストとして期待される良好な機械的特性を有する。
【0079】
本発明の硬化性組成物の硬化物は、耐熱性、基板に対する密着性、及び硬度に優れることから種々の用途に適用可能であり、適用対象に特に制限はない。例えばプリント配線板用(リジッド基板、フレキシブル基板)の絶縁膜、及びマーキング等に用いられることが好ましい。
【0080】
上述したように、本発明は、本発明のインクジェット印刷用硬化性組成物を硬化してなる硬化物、及びその硬化物を有する電子部品も提供する。本発明のインクジェット印刷用硬化性組成物を用いることで、品質、耐久性及び信頼性の高い電子部品が提供される。なお、本発明において電子部品とは、電子回路に使用する部品を意味し、プリント配線板、トランジスタ、発光ダイオード、レーザーダイオード等の能動部品の他抵抗、コンデンサ、インダクタ、コネクタ等の受動部品も含まれ、本発明の硬化性組成物の硬化物がこれらの絶縁性硬化塗膜として、本発明の効果を奏するものである。
【0081】
なお、本発明は上記の実施の形態の構成及び実施例に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々変形が可能である。
【実施例】
【0082】
以下、実施例により本発明を説明する。
【0083】
<組成物の調製>
表1に示す割合(単位:質量部)で各成分を配合し、これをディゾルバーで撹拌した。これにより、本発明の組成物(実施例1~9)及び比較組成物(比較例1~2)を得た。得られた組成物を用い、以下の条件で基板にインクジェットプリンターにより描画し、次いでUV硬化させた後、150℃、60分で熱硬化を行って、高圧水銀灯により更に硬化させて、試験基板を作製した。
【0084】
インクジェットプリンターによる描画条件:
膜厚:20um
装置:ピエゾ方式インクジェットプリンター富士フィルムグローバルグラフィックシ ステムズ製マテリアルプリンターDMP-2831を使用(ヘッド温度50℃)
UV硬化条件:
露光量:1000mJ/cm2
UV-LED使用
【0085】
<評価>
(1)インクジェット(IJ)射出性
富士フィルムグローバルグラフィックシステムズ製マテリアルプリンターDMP-2831を用いてインクジェット射出性を以下の基準で評価した。液滴をまっすぐ連続して安定的に射出可能だったものを○とし、液滴の安定した射出ができなかったものを×とした。
【0086】
(2)リフロー後のクラック耐性
エイテックテクトロン社製NIS-20-82Cを用いて、下記のコンベア速度および熱源設定温度に従って、事前にリフロー条件と同じ条件で、リフロー炉内の温度を5回測定し(
図1)、大きな差異が無いことを確認した。その後、同じ条件で、上記で得た試験基板を、エアーリフローでリフロー処理を行った。
【0087】
コンベア速度:1.0m/min≒1ゾーン(約35cm)を約20秒で通過
熱源設定温度:A.210℃、B.190℃、C.~F.185℃、G.265℃、H.285℃、I.~J.ファンによる冷却工程
【0088】
リフロー処理を5回行い、硬化塗膜のクラック数を数えた。
【0089】
(3)無電解Ni/Pd/Auめっき耐性
上記で得られた試験基板につき、市販の無電解Ni/Auめっき浴をもちいて、Ni3um、Pd0.075um、Au0.1umの条件で無電解ニッケルパラジュウム金めっきを行った。
【0090】
(3)-1 鉛筆硬度
上記で得られためっきされた基板の硬化塗膜の表面における鉛筆硬度をJIS 5600-5-4に準拠して測定を行った。測定結果を表1に示す。
【0091】
(3)-2 密着性
上記で得られためっきされた基板硬化塗膜の密着性をJIS K 5600-5-6に準拠したクロスカットテープピールリング試験を実施し、以下の基準にて評価した。行った後の塗膜状態を目視にて観察し、下記の判定基準で判定した。剥離がなかったものを○とし、若干の剥離があったものを△とし、剥離が明らかに生じたものを×とした。
【0092】
【0093】
表1中の各成分の詳細は以下の通りである。
【0094】
8官能デンドリマー:Mw1000~2000、25℃、粘度200mPa・s、製品名6361-100(Eternal Materials社製)
15官能デンドリマー:Mw3000、25℃、粘度300mPa・s、製品名DM2015(Eternal Material社製)
18官能デンドリマー:Mw1630、25℃、粘度400mPa・s、製品名SP1106(Miwon Specialty Chemical社製)
Omnirad379:2-ジメチルアミノ-2-(4-メチル-ベンジル)-1-(4-モルホリン-4-イル-フェニル)ブタン-1-オン
ITX:イソプロピルチオキサントン(東京化成工業社製)
A-BPE-4:エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート(新中村化学社製)
HDDA:1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(大阪有機化学工業社製)
4-HBA:1,4-シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート(日本化成社製)
BYK-307:シリコン系添加剤(ビックケミー・ジャパン社製)
BI7982:ブロックイソシアネート(Baxenden社製)
【0095】
<評価結果>
ブロックイソシアネート(熱硬化性化合物)を含まない比較例1では、リフロー5回後のクラック数が5を超え耐熱性に劣り、また、密着性及び硬度も劣ることが認められた。また、デンドリマー(多分岐状オリゴマー)を含まない比較例2も、耐熱性、密着性及び硬度に関して評価が悪いことが認められた。一方、実施例1~9では、IJ(インクジェット)印刷性、リフロー時クラック耐性、Ni/Pd/Auめっき耐性(密着性及び鉛筆硬度)の全ての点で良好な結果が得られた。