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特許7363025(ポリ)アルキレングリコール系(メタ)アクリレートの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】(ポリ)アルキレングリコール系(メタ)アクリレートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 65/331 20060101AFI20231011BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20231011BHJP
【FI】
C08G65/331
C07B61/00 300
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018224944
(22)【出願日】2018-11-30
(65)【公開番号】P2020084129
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】久野 和樹
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 達也
(72)【発明者】
【氏名】岩本 浩介
【審査官】山口 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-328346(JP,A)
【文献】国際公開第2007/122964(WO,A1)
【文献】特表2005-526159(JP,A)
【文献】特開2009-007254(JP,A)
【文献】特開2002-265594(JP,A)
【文献】特開平11-140050(JP,A)
【文献】特開2005-179609(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G、C08K、C08L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキル(メタ)アクリレートを含む(メタ)アクリル系化合物と、
(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルを含有する(ポリ)アルキレング
リコール系アルコールと、
を有機チタン系触媒の存在下で反応させること、及び
前記有機チタン系触媒を、食塩水を用いて加水分解して不溶化すること、
を含む(ポリ)アルキレングリコール系(メタ)アクリレートの製造方法であって、
前記(ポリ)アルキレングリコール系アルコール中の(ポリ)アルキレングリコールの
含有量が0.08質量%以下である、
(ポリ)アルキレングリコール系(メタ)アクリレートの製造方法。
【請求項2】
前記有機チタン系触媒の使用量が、アルキル(メタ)アクリレートと(ポリ)アルキレ
ングリコール系アルコールとの合計量100質量部に対して、0.01~5質量部である
、請求項1に記載の(ポリ)アルキレングリコール系(メタ)アクリレートの製造方法。
【請求項3】
前記有機チタン系触媒が、炭素数1~4のアルキル基を有するチタン酸テトラアルキル
を含む、請求項1又は2に記載の(ポリ)アルキレングリコール系(メタ)アクリレート
の製造方法。
【請求項4】
前記アルキル(メタ)アクリレートが、下記式(1)で表される(メタ)アクリレート
を含む、請求項1~3のいずれかに記載の(ポリ)アルキレングリコール系(メタ)アク
リレートの製造方法。
【化1】
(式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは炭素数1~5のアルキル基を表す。
【請求項5】
前記(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルが、下記式(2)で表される
モノアルコールを含む、請求項1~4のいずれかに記載の(ポリ)アルキレングリコール
系(メタ)アクリレートの製造方法。
【化2】
(式中、Rは炭素数2~4のアルキレン基を表し、Rは炭素数1~30の炭化水素基
を表し、nは1~300の数を表す。nが2以上である場合、複数のRは、互いに同じ
でも異なってもよい。)
【請求項6】
反応により、(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルモノ(メタ)アクリ
レートを含有する(ポリ)アルキレングリコール系(メタ)アクリレートであって、(ポ
リ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートの含有量が0.10質量%以下である
(ポリ)アルキレングリコール系(メタ)アクリレートを得る、請求項1~5のいずれか
に記載の(ポリ)アルキレングリコール系(メタ)アクリレートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、(ポリ)アルキレングリコール系(メタ)アクリレートの製造方法及び(ポリ)アルキレングリコール系(メタ)アクリレートに関する。
【背景技術】
【0002】
(メタ)アクリル酸エステルは、熱、光、過酸化物等によって重合しやすい性質を持っているため、この性質を生かし、幅広い用途で使用されている。例えば、(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルモノ(メタ)アクリレートを含む単量体を重合して得られる重合体は、塗料、被覆材料、接着剤、粘着剤等の様々な分野で利用されている。
【0003】
(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルモノ(メタ)アクリレートの製造方法としては、例えば、(1)アルキル(メタ)アクリレートと原料アルコールとを反応させ生成するアルコールを除去する方法(エステル交換法)、及び、(2)(メタ)アクリル酸と原料アルコールとを反応させ生成する水を除去する方法(脱水エステル化法)が一般的である。
【0004】
特許文献1には、(メタ)アクリル酸と(ポリ)オキシアルキレン化合物とのエステル化反応により(ポリ)オキシアルキレン化合物の(メタ)アクリル酸エステルを製造する方法において、(メタ)アクリル酸中の(メタ)アクリル酸ダイマーの含有量が1重量%以下であることを特徴とする(ポリ)オキシアルキレン(メタ)アクリル酸エステルの製造方法が開示されている。特許文献1によれば、この製造方法によって、分子量分布が狭く、かつ水溶解性に優れる水溶性ビニルポリマーに容易に誘導(重合)できる(ポリ)オキシアルキレン(メタ)アクリル酸エステルが得られるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-289844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の実施形態は、(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートの含有量が少ない(ポリ)アルキレングリコール系(メタ)アクリレートを製造する方法を提供することを課題とする。また、本発明の実施形態は、低粘度の重合体を製造することができる(ポリ)アルキレングリコール系(メタ)アクリレートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態の例を以下に挙げる。本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0008】
[1](メタ)アクリル酸及びアルキル(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも1種を含む(メタ)アクリル系化合物と、
(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルを含有する(ポリ)アルキレングリコール系アルコールと、
を反応させることを含む(ポリ)アルキレングリコール系(メタ)アクリレートの製造方法であって、
前記(ポリ)アルキレングリコール系アルコール中の(ポリ)アルキレングリコールの含有量が0.08質量%以下である、(ポリ)アルキレングリコール系(メタ)アクリレートの製造方法。
【0009】
[2]前記アルキル(メタ)アクリレートと前記(ポリ)アルキレングリコール系アルコールとを反応させることを含む、前記[1]に記載の(ポリ)アルキレングリコール系(メタ)アクリレートの製造方法。
【0010】
[3]有機チタン系触媒の存在下で反応させる、前記[1]又は[2]に記載の(ポリ)アルキレングリコール系(メタ)アクリレートの製造方法。
【0011】
[4]前記アルキル(メタ)アクリレートが、下記式(1)で表される(メタ)アクリレートを含む、前記[1]~[3]のいずれかに記載の(ポリ)アルキレングリコール系(メタ)アクリレートの製造方法。
【化1】
(式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは炭素数1~5のアルキル基を表す。)
【0012】
[5]前記(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルが、下記式(2)で表されるモノアルコールを含む、前記[1]~[4]のいずれかに記載の(ポリ)アルキレングリコール系(メタ)アクリレートの製造方法。
【化2】
(式中、Rは炭素数2~4のアルキレン基を表し、Rは炭素数1~30の炭化水素基を表し、nは1~300の数を表す。nが2以上である場合、複数のRは、互いに同じでも異なってもよい。)
【0013】
[6]反応により、(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルモノ(メタ)アクリレートを含有する(ポリ)アルキレングリコール系(メタ)アクリレートであって、(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートの含有量が0.10質量%以下である(ポリ)アルキレングリコール系(メタ)アクリレートを得る、前記[1]~[5]のいずれかに記載の(ポリ)アルキレングリコール系(メタ)アクリレートの製造方法。
【0014】
[7](ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルモノ(メタ)アクリレートを含有する(ポリ)アルキレングリコール系(メタ)アクリレートであって、(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートの含有量が0.10質量%以下である、(ポリ)アルキレングリコール系(メタ)アクリレート。
【発明の効果】
【0015】
本発明の実施形態によれば、(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートの含有量が少ない(ポリ)アルキレングリコール系(メタ)アクリレートを製造する方法を提供することができる。また、本発明の実施形態によれば、低粘度の重合体を製造することができる(ポリ)アルキレングリコール系(メタ)アクリレートを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態について説明する。本発明は以下の実施形態に限定されない。
<(ポリ)アルキレングリコール系(メタ)アクリレートの製造方法>
本発明の実施形態である(ポリ)アルキレングリコール系(メタ)アクリレートの製造方法は、(メタ)アクリル酸及びアルキル(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも1種を含む(メタ)アクリル系化合物と、(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルを含有する(ポリ)アルキレングリコール系アルコールとを反応させることを含む。前記(ポリ)アルキレングリコール系アルコール中の(ポリ)アルキレングリコールの含有量は0.08質量%以下である。本明細書において、「(ポリ)アルキレングリコール系アルコール」は、(ポリ)オキシアルキレン構造を有するアルコールを意味し、「(ポリ)アルキレングリコール系(メタ)アクリレート」は、(ポリ)オキシアルキレン構造を有する(メタ)アクリレートを意味する。
【0017】
本発明の実施形態において、「(メタ)アクリル」は「アクリル」及び「メタクリル」の総称であり、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」及び「メタクリレート」の総称である。また、「(ポリ)アルキレングリコール」は「アルキレングリコール」及び「ポリアルキレングリコール」の総称であり、「(ポリ)オキシアルキレン」は「オキシアルキレン」及び「ポリオキシアルキレン」の総称である。
【0018】
従来、(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルモノ(メタ)アクリレートを含有する(ポリ)アルキレングリコール系(メタ)アクリレートを含む単量体を用いた重合体の製造においては、(ポリ)アルキレングリコール系(メタ)アクリレートの製造ロットによっては、得られる重合体の粘度が高くなる場合があった。本発明の発明者らは、検討の結果、(ポリ)アルキレングリコール系(メタ)アクリレート中に存在する(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートがその原因の一つであると考えた。本発明の実施形態である(ポリ)アルキレングリコール系(メタ)アクリレートの製造方法は、(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートの含有量が少ない、高純度の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルモノ(メタ)アクリレートを含有する(ポリ)アルキレングリコール系(メタ)アクリレートを製造する方法である。本明細書において、ある成分について「含有量が少ない」という場合、ある成分が含まれないか又はある成分が含まれるが含有量が少ないことを意味する。
【0019】
(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルモノ(メタ)アクリレートとしては、例えば、後述する式(3)で表される(メタ)アクリレートが好ましい。(ポリ)アルキレングリコール系(メタ)アクリレート中の(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートの含有量は、0.10質量%以下であることが好ましい。
【0020】
(ポリ)アルキレングリコール系(メタ)アクリレートの好ましい製造方法として、エステル交換法と脱水エステル化法とが挙げられる。エステル交換法では、アルキル(メタ)アクリレートを含有する(メタ)アクリル系化合物を使用する。脱水エステル化法では、(メタ)アクリル酸を含有する(メタ)アクリル系化合物を使用する。
【0021】
[エステル交換法]
エステル交換法では、アルキル(メタ)アクリレートと(ポリ)アルキレングリコール系アルコールとをエステル交換反応させ、(ポリ)アルキレングリコール系(メタ)アクリレートを得る。
【0022】
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、下記式(1)で表される(メタ)アクリレートを用いることができる。
【0023】
【化3】
【0024】
式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは炭素数1~5のアルキル基を表す。
【0025】
炭素数1~5のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基等が挙げられる。アルキル基の炭素数は、1~3であることが好ましい。具体例として、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、メチルメタアクリレート、エチルメタアクリレート、プロピルメタアクリレート、イソプロピルメタアクリレート、ブチルメタアクリレート、イソブチルメタアクリレート等が挙げられ、メチルアクリレート、エチルアクリレート、及びメチルメタアクリレートが好ましい。
【0026】
アルキル(メタ)アクリレートと反応させるアルコールとしては、(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルを含有し、(ポリ)アルキレングリコールの含有量が0.08質量%以下である(ポリ)アルキレングリコール系アルコールを使用する。アルキル(メタ)アクリレートと(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルとの反応により、(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルモノ(メタ)アクリレートが生成する。アルキル(メタ)アクリレートと(ポリ)アルキレングリコールとの反応により、(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートが生成する。
【0027】
(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルとしては、例えば、下記式(2)で表されるモノアルコールを用いることができる。
【0028】
【化4】
【0029】
式中、Rは炭素数2~4のアルキレン基を表し、Rは炭素数1~30の炭化水素基を表し、nは1~300の数を表す。nが2以上である場合、複数のRは、互いに同じでも異なってもよい。
【0030】
炭素数2~4のアルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基等が挙げられ、エチレン基が好ましい。
【0031】
炭素数1~30の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、ウンデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、ヘンエイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基、ペンタコシル基、ヘキサコシル基、ヘプタコシル基、オクタコシル基、ノナコシル基、トリアコンチル基等のアルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基等のアリール基;ベンジル基、ノニルフェニル基等のアリールアルキル基;ビニル基、アリル基、3-ブテニル基、3-メチル-3-ブデニル基等のアルケニル基;アルキニル基などが挙げられる。アルキル基は、直鎖アルキル基であっても分岐アルキル基であってもよい。炭化水素基としては、炭素数1~18のアルキル基が好ましく、炭素数1~5のアルキル基がより好ましく、炭素数1~3のアルキル基が更に好ましい。
【0032】
nは1~300の数を表す。nは「-(R-O)-」基の数の平均値である。nは用途に応じて適宜設定され、例えば、反応により得られる(ポリ)アルキレングリコール系(メタ)アクリレートを粘着剤の原料として用いる場合は、4~50であることが好ましく、8~25であることがより好ましい。nの値は、例えば、H NMR(核磁気共鳴)法により測定することができる。
【0033】
(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルの具体例として、(ポリ)エチレングリコールモノメチルエーテル、(ポリ)エチレングリコールモノエチルエーテル、(ポリ)エチレングリコールモノプロピルエーテル、(ポリ)エチレングリコールモノブチルエーテル等の(ポリ)エチレングリコールモノアルキルエーテル;(ポリ)プロピレングリコールモノメチルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールモノエチルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールモノプロピルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールモノブチルエーテル等の(ポリ)プロピレングリコールモノアルキルエーテル;(ポリ)テトラメチレングリコールモノメチルエーテル、(ポリ)テトラメチレングリコールモノエチルエーテル、(ポリ)テトラメチレングリコールモノプロピルエーテル、(ポリ)テトラメチレングリコールモノブチルエーテル等の(ポリ)テトラメチレングリコールモノアルキルエーテルなどが挙げられ、(ポリ)エチレングリコールモノアルキルエーテルが好ましい。
【0034】
(ポリ)アルキレングリコール系アルコール中の(ポリ)アルキレングリコールの含有量は、0.08質量%以下であり、好ましくは0.05質量%以下であり、より好ましくは0.03質量%以下であり、更に好ましくは0.01質量%以下である。すなわち、エステル交換反応に使用する(ポリ)アルキレングリコール系アルコールは、(ポリ)アルキレングリコールを含まないか、又は、(ポリ)アルキレングリコールを含む場合、その含有量は0.08質量%以下である。0.08質量%以下である場合、(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートの含有量が少ない(ポリ)アルキレングリコール系(メタ)アクリレートを得ることができる。(ポリ)アルキレングリコール系アルコールは、(ポリ)アルキレングリコールを含まないことが好ましく、例えば、(ポリ)アルキレングリコールの含有量の下限は0.00質量%であることが好ましい。微量の不純物として(ポリ)アルキレングリコールが含まれ得ることを考慮すると、(ポリ)アルキレングリコールの含有量の下限は0.00質量%超であってもよい。(ポリ)アルキレングリコールの含有量は、(ポリ)アルキレングリコール系アルコールの質量を基準とする含有量である。
【0035】
(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルを含有する(ポリ)アルキレングリコール系アルコールには、製造方法等に起因し、通常、不純物として少量の(ポリ)アルキレングリコールが含まれ得る。本実施形態には、(ポリ)アルキレングリコールの含有量が少ない、高純度の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルを含有する(ポリ)アルキレングリコール系アルコールを使用する。ポリアルキレングリコールの含有量が少ないポリアルキレングリコール系アルコールは、例えば、製造時に、出発原料として、水、及び、アルキレングリコールの含有量が低減されたアルキレングリコールモノアルキルエーテルを用いることにより得ることができる。(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルを含有し、(ポリ)アルキレングリコールの含有量が少ない(ポリ)アルキレングリコール系アルコールは、市販品として、三洋化成工業株式会社、日本乳化剤株式会社等から入手可能である。
【0036】
(ポリ)アルキレングリコール系アルコール中の(ポリ)アルキレングリコールの含有量は、LC-MS法(液体クロマトグラフィー質量分析法)により測定することができる。検量線には、例えば、ポリアルキレングリコールを用いて作成した検量線を使用すればよい。検量線に用いるポリアルキレングリコールにおける「アルキレン」は、測定対象である(ポリ)アルキレングリコールにおける「アルキレン」と同じであることが好ましい。
【0037】
エステル交換反応においては、(ポリ)アルキレングリコール系アルコールに対して過剰量のアルキル(メタ)アクリレートを使用することが、反応時間の短縮及び反応転化率の向上の点で好ましい。(ポリ)アルキレングリコール系アルコール1モルに対して、アルキル(メタ)アクリレートを2.5~50モルの範囲で使用することが好ましく、2.5~30モルの範囲で使用することがより好ましい。アルキル(メタ)アクリレートの使用量が2.5モル以上であると、反応が十分に進行し、未反応のアルコールの残存を防止する効果が得られやすい。アルキル(メタ)アクリレートの使用量が30モル以下であると、反応設備が大きくなりすぎることによる生産性の低下を防止でき、反応終了後に過剰のアルキル(メタ)アクリレートを容易に回収しやすい。
【0038】
エステル交換反応には、通常、触媒を使用する。触媒としては、例えば、アルカリ金属系触媒、有機チタン系触媒、ジルコニウム系触媒等を使用することができ、有機チタン系触媒を用いることが好ましい。具体的には、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩;リチウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムt-ブトキシド等のアルカリ金属アルコキシド;リチウムアミド、ナトリウムアミド、カリウムアミド等のアルカリ金属アミド;チタン酸テトラメチル、チタン酸テトラエチル、チタン酸テトラプロピル、チタン酸テトライソプロピル、チタン酸テトラブチル等の炭素数1~4のアルキル基を有するチタン酸テトラアルキル;テトラメトキシジルコニウム、テトラエトキシジルコニウム、テトラノルマルプロポキシジルコニウム、テトライソプロポキシジルコニウム、テトラノルマルブトキシジルコニウム、テトライソブトキシジルコニウム等のジルコニウムアルコキシドなどが挙げられる。触媒は1種を単独で又は2種以上を組み合せて用いることができる。これらの中でも、反応終了後の後処理の点でアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属アルコキシド、炭素数1~4のアルキル基を有するチタン酸テトラアルキル、及びジルコニウムアルコキシドが好ましく、取り扱い易さの点で炭素数1~4のアルキル基を有するチタン酸テトラアルキルがより好ましい。
【0039】
触媒の使用量は、アルキル(メタ)アクリレートと(ポリ)アルキレングリコール系アルコールとの合計量100質量部に対して、0.01~5質量部が好ましく、0.01~1質量部がより好ましい。触媒の量が0.01質量部以上であると、触媒としての効果が十分に得られ、エステル交換反応が良好に進行しやすい。触媒の量が5質量部以下であると、触媒の量が過剰になることなく、経済的である。
【0040】
エステル交換反応には、重合防止剤を用いてもよい。重合防止剤としては、例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、tert-ブチルハイドロキノン、2,6-ジ-tert-ブチルハイドロキノン、2,5-ジ-tert-ブチルハイドロキノン、2,4-ジメチル-6-tert-ブチルフェノール、ハイドロキノンモノメチルエーテル、クレゾール、tert-ブチルカテコール等のフェノール化合物;チオジフェニルアミン、フェノチアジン等のアミン化合物などが挙げられる。
【0041】
エステル交換反応において、反応中の重合防止のために、少量の分子状酸素を吹き込むことが好ましい。分子状酸素は、希釈された状態で使用することが好ましく、空気を使用することがより好ましい。水分により失活しやすい触媒を用いる場合は乾燥空気を用いることが好ましい。
【0042】
エステル交換反応には、溶媒を使用することもできる。溶媒は、反応に関与しない不活性な溶媒であることが好ましい。溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、シクロヘキサン等の炭化水素類;ジオキサン等のエーテル類などが挙げられる。
【0043】
エステル交換反応は、常圧又は減圧下で60~130℃で行うことが好ましい。温度が60℃以上であると、十分な反応速度が得られ、効率がよい。温度が130℃以下であると、重合などの副反応の防止効果が得られやすい。
【0044】
エステル交換反応の装置としては特に限定されず、通常のエステル交換反応に用いる装置を採用することができる。反応は、通常、原料である(ポリ)アルキレングリコール系アルコールの転換率を高めるため、副生するアルコール(例えばROHで表されるアルコール(Rは式(1)におけるRと同じである。))とアルキル(メタ)アクリレート又は溶媒を共沸蒸留することにより、副生するアルコールを反応系外に留去しながら反応を行うことが好ましい。このため、反応装置としては、精留塔の付いた回分式反応槽を使用することが好ましい。
【0045】
副生成物の生成を抑えるという観点から、(ポリ)アルキレングリコール系(メタ)アクリレートの製造方法として、エステル交換法を好ましく使用することができる。
【0046】
[脱水エステル化法]
脱水エステル化法では、(メタ)アクリル酸と(ポリ)アルキレングリコール系アルコールとを脱水エステル化反応させ、(ポリ)アルキレングリコール系(メタ)アクリレートを得る。
【0047】
(メタ)アクリル酸と反応させるアルコールとしては、上述のとおりであり、(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルを含有し、(ポリ)アルキレングリコールの含有量が0.08質量%以下である(ポリ)アルキレングリコール系アルコールを使用する。(メタ)アクリル酸と(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルとが反応すると、(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルモノ(メタ)アクリレートが生成する。(メタ)アクリル酸と(ポリ)アルキレングリコールとが反応すると、(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートが生成する。[エステル交換法]における(ポリ)アルキレングリコール系アルコール、(ポリ)アルキレングリコール系(メタ)アクリレート等の説明は、脱水エステル化法にも適用される。
【0048】
脱水エステル化反応では、(ポリ)アルキレングリコール系アルコール1モルに対して、(メタ)アクリル酸を0.8~2モルの範囲で使用することが好ましく、1~1.5モルの範囲で使用することがより好ましい。(メタ)アクリル酸の使用量が0.8モル以上であると、反応時間を短縮化でき、副反応を抑制しやすい。(メタ)アクリル酸の使用量が2モル以下であると、副反応を抑制でき、また、反応終了後に未反応の(メタ)アクリル酸を容易に除去できる。
【0049】
脱水エステル化反応には、通常、触媒を使用する。触媒としては酸触媒を用いることができ、具体的には、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸及び硫酸等が挙げられる。触媒は1種を単独で又は2種以上を組み合せて用いることができる。
【0050】
触媒の使用割合は、(ポリ)アルキレングリコール系アルコールに含まれるヒドロキシル基のモル数に対して0.05モル%~10モル%が好ましく、より好ましくは0.5~5モル%である。触媒の量が0.05モル%以上であると、触媒としての効果が十分に得られ、脱水エステル化反応が良好に進行しやすい。触媒の量が10モル%以下であると、副反応を抑制し、また、反応終了後の触媒の除去を簡便にすることができる。
【0051】
脱水エステル化反応にも、重合防止剤を用いることができる。また、脱水エステル化反応においても、重合防止のために少量の分子状酸素を吹き込むことが好ましい。
【0052】
脱水エステル化反応では、水への溶解度が低い有機溶媒を使用し、生成する水を共沸させて留去しながら反応を行うことが好ましい。脱水エステル化反応は、70~140℃で行うことが好ましい。温度が70℃以上であると、十分な反応速度が得られ、効率がよい。温度が140℃以下であると、不純物の副生量を抑制でき、ゲル化が起こりにくいため好ましい。
【0053】
<(ポリ)アルキレングリコール系(メタ)アクリレート>
本発明の実施形態である(ポリ)アルキレングリコール系(メタ)アクリレートは、(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルモノ(メタ)アクリレートを含有する。(ポリ)アルキレングリコール系(メタ)アクリレート中の(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートの含有量は0.10質量%以下であり、好ましくは0.06質量%以下であり、より好ましくは0.04質量%以下であり、更に好ましくは0.02質量%以下である。0.10質量%以下である場合、(ポリ)アルキレングリコール系(メタ)アクリレートを用いて得た重合体の粘度を低く抑えることができる。(ポリ)アルキレングリコール系(メタ)アクリレートは、(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートを含まないことが好ましく、例えば、(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートの含有量の下限は0.00質量%であることが好ましい。微量の不純物として(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートが含まれ得ることを考慮すると、(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートの含有量の下限は0.00質量%超であってもよい。(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートの含有量は、(ポリ)アルキレングリコール系(メタ)アクリレートの質量を基準とする含有量である。
【0054】
(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルモノ(メタ)アクリレートを含有し、(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートの含有量が0.10質量%以下である(ポリ)アルキレングリコール系(メタ)アクリレートは、上述の製造方法により得ることができる。
【0055】
(ポリ)アルキレングリコール系(メタ)アクリレート中の(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートの含有量は、LC-MS法により測定することができる。検量線には、例えば、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートを用いて作成した検量線を使用すればよい。検量線に用いるポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートにおける「アルキレン」は、測定対象である(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートにおける「アルキレン」と同じであることが好ましい。
【0056】
(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルモノ(メタ)アクリレートとしては、例えば、下記式(3)で表される(メタ)アクリレートが好ましい。
【0057】
【化5】
【0058】
式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは炭素数2~4のアルキレン基を表し、Rは炭素数1~30の炭化水素基を表し、nは1~300の数を表す。nが2以上である場合、複数のRは、互いに同じでも異なってもよい。
【0059】
、R、R、及びnの例、好ましい形態等は、式(1)及び式(2)において説明したとおりである。
【0060】
(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルモノ(メタ)アクリレートの具体例としては、(ポリ)エチレングリコールモノメチルエーテルモノ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールモノメチルエーテルモノ(メタ)アクリレート、(ポリ)ブチレングリコールモノメチルエーテルモノ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコール(ポリ)プロピレングリコールモノメチルエーテルモノ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコール(ポリ)ブチレングリコールモノメチルエーテルモノ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコール(ポリ)ブチレングリコールモノメチルエーテルモノ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール(ポリ)ブチレングリコールモノメチルエーテルモノ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールモノエチルエーテルモノ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールモノエチルエーテルモノ(メタ)アクリレート、(ポリ)ブチレングリコールモノエチルエーテルモノ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコール(ポリ)プロピレングリコールモノエチルエーテルモノ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコール(ポリ)ブチレングリコールモノエチルエーテルモノ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコール(ポリ)ブチレングリコールモノエチルエーテルモノ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール(ポリ)ブチレングリコールモノエチルエーテルモノ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールモノプロピルエーテルモノ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールモノブチルエーテルモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0061】
(ポリ)アルキレングリコール系(メタ)アクリレートは、重合体の材料又は反応性希釈剤として使用することができる。重合体としては、塗料、被覆材料、接着剤、粘着剤、建築用材料、液晶用材料等に用いられるアクリル系ポリマーが挙げられる。本実施形態の(ポリ)アルキレングリコール系(メタ)アクリレートを用いることにより、低粘度の重合体を製造することができる。
【実施例
【0062】
本発明の実施形態について実施例により具体的に説明する。本発明の実施形態は以下の実施例に限定されない。
【0063】
[実施例1]
撹拌機、温度計、空気導入管及び精留塔(7段)を取り付けた1リットルのフラスコに、メトキシポリエチレングリコールと、0.05質量%のポリエチレングリコールとを含有するポリエチレングリコール系アルコール250g(0.59モル、日本乳化剤株式会社製)、メタクリル酸メチル400g(4.0モル、株式会社クラレ製)、及びヒドロキノンモノメチルエーテル0.03gを仕込み、常圧下、乾燥空気を100ml/minの速度で吹き込みながら加熱還流し、系内の水分を除去した。次に、チタン酸テトライソプロピル2.0g(富士フィルム和光純薬株式会社製)を加え、エステル交換反応を行なった。加熱還流を開始後、精留塔の塔頂温度はメタクリル酸メチルの沸点である100℃付近であったが、反応の進行と共に、メタノールとメタクリル酸メチルの共沸混合物の沸点に近づいた。その後、塔頂温度が80~90℃の範囲になるように還流比を調節し、メタノールをメタクリル酸メチルとの共沸物として留去しながら反応を行った。
【0064】
触媒を加えてから3時間経過した頃から塔頂温度が上昇し始め、約100℃まで上昇したので、触媒を加えてから4時間経過した時点の反応液中のポリエチレングリコール系メタクリレートの収率を測定した。収率から反応率が98%であることを確認し、冷却を開始した。
【0065】
反応液を75℃まで冷却したところで食塩水65gを加えて触媒を加水分解し、不溶化した。30分間静置後、油層の過酸化物量を測定したところ、得られたポリエチレングリコール系メタクリレートに対して3.4ppm(過酸化水素換算値)であった。
【0066】
続いて、デカンテーションにより油層を1リットルのナス型フラスコにとり、系内の水分量を測定したところ0.1質量%であった(なお、水分測定は、電量滴定式のカールフィッシャー法により測定した。以下の水分測定も同じである。)。引き続き、吸着剤としてキョーワード(登録商標)500SH(協和化学工業株式会社製ハイドロタルサイト、組成式MgAl(OH)16CO・4HO)を1.0g添加した後、80℃で1時間処理した。
【0067】
その後、ロータリエバポレーターを用いて過剰のメタクリル酸メチルを減圧下で留去し、減圧吸引ろ過によりナスフラスコ内液をろ過し、目的物であるポリエチレングリコール系メタクリレートを得た(収量303g)。ポリエチレングリコール系メタクリレートに含まれるポリエチレングリコールジメタクリレートの含有量を測定した結果、0.06質量%であった。
【0068】
[比較例1]
撹拌機、温度計、空気導入管及び精留塔(7段)を取り付けた1リットルのフラスコに、アルコールとして、メトキシポリエチレングリコールと、0.10質量%のポリエチレングリコールとを含有するポリエチレングリコール系アルコール250g(0.59モル、日本乳化剤株式会社製)、メタクリル酸メチル400g(4.0モル、株式会社クラレ製)、及びヒドロキノンモノメチルエーテル0.03gを仕込み、常圧下、乾燥空気を100ml/minの速度で吹き込みながら加熱還流し、系内の水分を除去した。次に、チタン酸テトライソプロピル2.0g(富士フィルム和光純薬株式会社製)を加え、エステル交換反応を行なった。加熱還流を開始後、精留塔の塔頂温度はメタクリル酸メチルの沸点である100℃付近であったが、反応の進行と共に、メタノールとメタクリル酸メチルの共沸混合物の沸点に近づいた。その後、塔頂温度が80~90℃の範囲になるように還流比を調節し、メタノールをメタクリル酸メチルとの共沸物として留去しながら反応を行った。
【0069】
触媒を加えてから3時間経過した頃から塔頂温度が上昇し始め、約100℃まで上昇したので、触媒を加えてから4時間経過した時点の反応液中のポリエチレングリコール系メタクリレートの収率を測定した。収率から反応率が98%であることを確認し、冷却を開始した。
【0070】
反応液を75℃まで冷却したところで食塩水65gを加えて触媒を加水分解し、不溶化した。30分間静置後、油層の過酸化物量を測定したところ、得られたポリエチレングリコール系メタクリレートに対して3.4ppm(過酸化水素換算値)であった。
【0071】
続いて、デカンテーションにより油層を1リットルのナス型フラスコにとり、系内の水分量を測定したところ0.1質量%であった。引き続き、吸着剤としてキョーワード(登録商標)500SH(協和化学工業株式会社製ハイドロタルサイト、組成式MgAl(OH)16CO・4HO)を1.0g添加した後、80℃で1時間処理した。
【0072】
その後、ロータリエバポレーターを用いて過剰のメタクリル酸メチルを減圧下で留去し、減圧吸引ろ過によりナスフラスコ内液をろ過し、目的物であるポリエチレングリコール系メタクリレートを得た(収量303g)。ポリエチレングリコール系メタクリレートに含まれるポリエチレングリコールジメタクリレートの含有量を測定した結果、0.13質量%であった。
【0073】
反応に用いたポリエチレングリコール系アルコールに含まれるポリエチレングリコールの含有量は、LC-MS法により以下の条件に従って測定した。
【0074】
ポリエチレングリコール#400(東京化成工業株式会社製、オキシエチレン基の数の平均値=9)をメタノールに添加し、1ppm、0.1ppm、及び0.01ppmの溶液を調製し、標準試料とした。上記で用いたポリエチレングリコール系アルコールを用い、同様の方法で10ppmの溶液を調製し、サンプルとした。標準試料及びサンプルについて、以下の条件にてLC-MS測定を実施した。
【0075】
分析法:LC-MS法
イオン化法:ESI法、正イオンモード
LC装置:Waters Corporation製「ACQUITY UPLC I-class/eλPDA」
MS装置:Waters Corporation製「Xevo G2 QTof MS」
カラム:Waters Corporation製「ACQUITY UPLC HSS T3」(2.1 mmφ×100 mm)
カラム温度:40℃
グラジエント条件:
Solvent A:メタノール
Solvent B:酢酸アンモニウムaq(2mM)
【0076】
【表1】
【0077】
各標準試料を測定し、エチレンオキシド鎖長に応じたポリエチレングリコール#400のピークを含むESI-positiveモードにおけるトータルイオンクロマトグラムを得た。各クロマトグラムについて、保持時間3.0~12.0min程度に現れるピークから、各ポリエチレングリコールのアンモニウムイオン付加体の精密質量より目的のピークを抽出し、ピークの面積の総和を求めた。ピークの面積の総和と標準試料の濃度から検量線を作成した。別途、サンプルを測定し、保持時間3.0~12.0min程度に現れる各ポリエチレングリコールのアンモニウムイオン付加体の精密質量より目的のピークを抽出し、ピークの面積の総和を求めた。得られたピーク面積の総和と検量線とから、サンプルに含まれるポリエチレングリコールの含有量を求め、更に得られた含有量を利用し、反応に用いたポリエチレングリコール系アルコールに含まれるポリエチレングリコールの含有量を算出した。
【0078】
なお、LC-MS法に用いたポリエチレングリコール#400に含まれるオキシエチレン基の数の平均値は、H NMR法により測定した。下記条件において、ポリエチレングリコール#400に含まれるヒドロキシル基及びメチレン基に相当するピークの積分値の比から、オキシエチレン基の数の平均値を算出した。
【0079】
分析法:H NMR法
分析装置:Bruker株式会社製「Bruker AVANCE NEO 400MHz+CryoProbe TM」
対象各種:
測定周波数:400MHz
重溶媒:重ジメチルスルホキシド
基準物質:テトラメチルシラン(TMS)
試料濃度:15mg/0.6ml
積算回数:16回
試料温度:23℃
【0080】
反応により得られたポリエチレングリコール系メタクリレートに含まれるポリエチレングリコールジメタクリレートの含有量は、LC-MS法により以下の条件に従って測定した。
【0081】
ポリエチレングリコール#400ジメタクリレート(日立化成株式会社製「FA-240M」、オキシエチレン基の数の平均値=9)をアセトニトリルに添加し、1ppm、0.1ppm、及び0.01ppmの溶液を調製し、標準試料とした。上記で得たポリエチレングリコール系メタクリレートを用い、同様の方法で100ppmの溶液を調製し、サンプルとした。標準試料及びサンプルについて、以下の条件にてLC-MS測定を実施した。
【0082】
分析法:LC-MS法
イオン化法:ESI法、正イオンモード
LC装置:Waters Corporation製「ACQUITY UPLC I-class/eλPDA」
MS装置:Waters Corporation製「Xevo G2 QTof MS」
カラム:Waters Corporation製「ACQUITY UPLC BEH C18」(2.1 mmφ×100 mm)
カラム温度:40℃
グラジエント条件:
Solvent A:アセトニトリル
Solvent B:酢酸アンモニウムaq(2mM)
【0083】
【表2】
【0084】
各標準試料を測定し、エチレンオキシド鎖長に応じたポリエチレングリコール#400ジメタクリレートのピークを含むESI-positiveモードにおけるトータルイオンクロマトグラムを得た。各クロマトグラムについて、保持時間10.0~11.5min程度に現れるピークから、各ポリエチレングリコールジメタクリレートのアンモニウムイオン付加体の精密質量より目的のピークを抽出し、ピークの面積の総和を求めた。ピークの面積の総和と標準試料の濃度から検量線を作成した。別途、サンプルを測定し、保持時間10.0~11.5min程度に現れるピークから、各ポリエチレングリコールジメタクリレートのアンモニウムイオン付加体の精密質量より目的のピークを抽出し、ピークの面積の総和を求めた。得られたピーク面積の総和と検量線とから、サンプルに含まれるポリエチレングリコールジメタクリレートの含有量を求め、更に得られた含有量を利用し、ポリエチレングリコール系メタクリレートに含まれるポリエチレングリコールジメタクリレートの含有量を算出した。
【0085】
なお、LC-MS法に用いたポリエチレングリコール#400ジメタクリレートに含まれるオキシエチレン基の数の平均値は、H NMR法により測定した。下記条件において、ポリエチレングリコール#400ジメタクリレートに含まれるメチル基及びメチレン基に相当するピークの積分値の比から、オキシエチレン基の数の平均値を算出した。
【0086】
分析法:H NMR法
分析装置:Bruker株式会社製「Bruker AVANCE NEO 400MHz+CryoProbe TM」
対象各種:
測定周波数:400MHz
重溶媒:重ジメチルスルホキシド
基準物質:テトラメチルシラン(TMS)
試料濃度:15mg/0.6ml
積算回数:16回
試料温度:23℃
【0087】
実施例1及び比較例1の結果から分かるように、(メタ)アクリル系化合物との反応に、(ポリ)アルキレングリコールの含有量が少ない(ポリ)アルキレングリコール系アルコールを用いることにより、生成する(ポリ)アルキレングリコール系(メタ)アクリレート中の(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートの含有量を低く抑えることができる。