(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】有機半導体層形成用溶液、有機半導体層、および有機薄膜トランジスタ
(51)【国際特許分類】
H10K 71/10 20230101AFI20231011BHJP
H10K 85/60 20230101ALI20231011BHJP
H10K 10/40 20230101ALI20231011BHJP
H01L 29/786 20060101ALI20231011BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20231011BHJP
H01L 21/368 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
H10K71/10
H10K85/60
H10K10/40
H01L29/78 618B
H01L29/78 618A
H01L21/368 L
(21)【出願番号】P 2019028528
(22)【出願日】2019-02-20
【審査請求日】2022-01-17
(31)【優先権主張番号】P 2018030497
(32)【優先日】2018-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】福田 貴
【審査官】酒井 康博
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-098490(JP,A)
【文献】特開2017-098491(JP,A)
【文献】特開2017-098489(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 71/10
H10K 85/60
H10K 10/40
H01L 29/786
H01L 21/336
H01L 21/368
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(3)で示される化合物である有機半導体材料、
テトラリン、シクロヘキシルベンゼン、ベンゾチアゾール、1,2-メチレンジオキシベンゼン、1,2-エチレンジオキシベンゼン、1-メチルナフタレン、2-メチルナフタレン及び2-エチルナフタレンからなる群より選ばれる1種以上の溶媒A及び
γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、γ-ヘキサノラクトン、δ-バレロラクトン、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、フェノキシエタノール、1,4-ベンゾジオキサンからなる群より選ばれる1種以上の溶媒Bを含み、前記溶媒Aの沸点<前記溶媒Bの沸点の関係にあり、かつ、前記溶媒Aが205℃~300℃の沸点を有し、前記溶媒Aの沸点Aと前記溶媒Bの沸点Bの沸点差(沸点B-沸点A)が5℃~30℃であることを特徴とする有機半導体形成用溶液。
【化1】
(ここで、R
1及びR
2は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数4~20のアリール基、炭素数2~20のアルケニル基、又は炭素数2~20のアルキニル基を示す。)
【請求項2】
溶媒Aが、25℃において有機半導体材料を0.1wt%以上溶解する良溶媒であることを特徴とする請求項1に記載の有機半導体形成用溶液。
【請求項3】
溶媒Bに対する有機半導体材料の溶解度<溶媒Aに対する有機半導体材料の溶解度の関係にあることを特徴とする請求項1または2に記載の有機半導体形成用溶液。
【請求項4】
有機半導体と該有機半導体の良溶媒である溶媒Aと該有機半導体の貧溶媒である溶媒Bを含み、前記溶媒A及び前記溶媒Bの沸点が沸点A<沸点Bの関係にあり、かつ、前記溶媒Aが205℃~300℃の沸点を有することを特徴とする請求項1乃至3いずれか一項に記載の有機半導体形成用溶液。
【請求項5】
前記溶媒Aの表面張力Aと前記溶媒Bの表面張力Bの20℃における表面張力差(表面張力B-表面張力A)が1mN/m~30mN/mであることを特徴とする請求項1乃至4いずれか一項に記載の有機半導体形成用溶液。
【請求項6】
前記溶媒Aが50~99.8体積%の割合で用いられ、前記溶媒Bが0.2~50体積%の割合で用いられることを特徴とする請求項1乃至5いずれか一項に記載の有機半導体形成用溶液。
【請求項7】
ポリマーバインダーを含有することを特徴とする請求項1乃至
6いずれか一項に記載の有機半導体形成用溶液。
【請求項8】
請求項1乃至
7いずれか一項に記載の有機半導体層形成用溶液により形成されることを特徴とする有機半導体層。
【請求項9】
請求項
8に記載の有機半導体層を用いて得られる有機薄膜トランジスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機半導体層形成用溶液、有機半導体層、および有機薄膜トランジスタに関するものであり、特に印刷プロセス法に適用可能な有機半導体材料を含む有機半導体層形成用溶液、これを用いて形成した有機半導体層、及び有機薄膜トランジスタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機薄膜トランジスタに代表される有機半導体デバイスは、省エネルギー、低コストおよびフレキシブルといった無機半導体デバイスにはない特徴を有することから近年注目されている。この有機半導体デバイスは、有機半導体層、基板、絶縁層、電極等の数種類の材料から構成され、有機半導体デバイスの電気特性(キャリア移動度、オン電流及びオン・オフ比、閾値電圧、電流ヒステリシス等)および信頼性(耐熱性、バイアスストレス耐性等)は、デバイスを構成する材料の特性により左右されることから、高い電気特性および高い信頼性を与える材料ならびに製造方法の開発が所望されている。
【0003】
中でも電荷のキャリア移動を担う有機半導体層は該デバイスの中心的な役割を有している。有機半導体層を作製する方法としては、高温真空下、有機半導体材料を気化させて実施する真空蒸着法、有機半導体材料を適当な溶媒に溶解させその溶液を塗布する塗布法等の方法が一般的に知られている。塗布は高温高真空条件を用いることなく印刷技術を用いても実施することができるため、経済的に好ましいプロセスと考えられており、塗工性が高く、キャリア移動度に優れた塗布型有機半導体層が望まれている。また、現在、有機半導体デバイスの微細化の要請から、印刷技術を適用する場合に、得られる塗布型有機半導体層の微細化が求められている。
【0004】
塗布法を適用した有機半導体層の電気物性は有機半導体の結晶性に大きく依存するため、結晶性を制御するための方法が知られている。
【0005】
例えば特許文献1には、良溶媒である有機溶媒Aと貧溶媒である有機溶媒Bとを含み、有機溶媒Aの沸点が有機溶媒Bの沸点より低い、溶液が開示されている。この溶液によれば、液滴端部での結晶化が抑制され均質な有機半導体薄膜を形成できるとしている。
【0006】
しかしながら、印刷技術を用いて得られる塗布型有機半導体層の微細化に適した溶液について、何らの記載がないものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、有機半導体の結晶性を高めることができ、かつ、印刷技術を用いて得られる塗布型有機半導体層の微細化に適した有機半導体層形成用溶液、該有機半導体層形成用溶液を用いて形成される有機半導体層、および該有機半導体層を用いた有機薄膜トランジスタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討の結果、特定の有機半導体形成用溶液を用いることで該溶液を用いて形成される有機半導体の結晶性が向上し、該有機半導体層を用いてなる有機薄膜トランジスタが良好な電気特性を発現することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、有機半導体材料、溶媒A及び溶媒Bを含み、前記溶媒Aの沸点<前記溶媒Bの沸点Bの関係にあり、かつ、前記溶媒Aが205℃~300℃の沸点を有することを特徴とする有機半導体層形成用溶液に関するものである。
【0011】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0012】
本発明の有機半導体層形成用溶液は、有機半導体材料、溶媒A及び溶媒Bを含み、かつ、前記溶媒A及び前記溶媒Bの沸点が沸点A<沸点B、すなわち前記溶媒Aの沸点<前記溶媒Bの沸点の関係にある。ここで、本発明において、溶媒Aは、有機半導体材料を25℃において0.1wt%以上溶解する溶媒であることが好ましい。一方、溶媒Bに対する、25℃における有機半導体材料の溶解度は、溶媒Aに対する有機半導体材料の溶解度より低いことが好ましい。すなわち、溶媒Bに対する有機半導体材料の溶解度<溶媒Aに対する有機半導体材料の溶解度の関係にあることが好ましい。
【0013】
特に、溶媒Aとしては、後述する一般式(1)で示される化合物を25℃で0.1wt%以上溶解する良溶媒であることが好ましい。
【0014】
一方、溶媒Bは一般式(1)で示される化合物を25℃で0.1wt%未満溶解する貧溶媒であることが好ましい。
【0015】
本発明の有機半導体層形成用溶液は、有機半導体と該有機半導体の良溶媒である溶媒Aと該有機半導体の貧溶媒である溶媒Bを含み、かつ、前記溶媒A及び前記溶媒Bの沸点が沸点A<沸点Bの関係にあることが好ましい。
【0016】
本発明は、良溶媒である溶媒Aと貧溶媒である溶媒Bを含み、かつ、前記溶媒A及び前記溶媒Bの沸点が沸点A<沸点Bの関係にあることで、有機半導体の結晶性が高いことを特徴とするものである。ここで、本発明において、良溶媒である溶媒Aとは有機半導体材料を25℃において0.1wt%以上溶解する溶媒を意味し、貧溶媒である溶媒Bは有機半導体材料を25℃において溶媒Aより溶解度が低い溶媒を意味する。特に、溶媒Aとしては、後述する一般式(1)で示される化合物を25℃で0.1wt%以上溶解する良溶媒であることが好ましく、同様に溶媒Bは一般式(1)で示される化合物に対する溶解度が溶媒Aより低い貧溶媒であることが好ましい。
【0017】
本発明で用いられる有機半導体は、半導体特性を有するものであれば特に制限はなく、低分子半導体、高分子半導体のいずれも使用することができる。
【0018】
本発明では、有機半導体が低分子半導体の場合、例えば、下記一般式(1)で示される化合物が挙げられる。
【0019】
【0020】
(ここで、環構造Ar1及びAr5は、それぞれ独立してチオフェン環、チアゾール環、又はベンゼン環を示し、環構造Ar2及びAr4は、それぞれ独立してチオフェン環、ベンゼン環、又はシクロブテン環を示し、環構造Ar3はベンゼン環、チオフェン環、又はシクロブテン環を示す。R1及びR2は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数4~20のアリール基、炭素数2~20のアルケニル基、又は炭素数2~20のアルキニル基を示し、R3およびR4は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、又はトリアルキルシリルエチニル基を示す。mは1又は2の整数、nは0~2の整数、oは0又は1の整数を示す。但し、環構造Ar3がチオフェン環又はシクロブテン環の場合、oは0である。)
【0021】
該有機半導体の環構造Ar1及びAr5は、それぞれ独立してチオフェン環、チアゾール環、又はベンゼン環を示し、高移動度のためチオフェン環、チアゾール環が好ましい。
【0022】
環構造Ar2及びAr4は、それぞれ独立してチオフェン環、ベンゼン環、又はシクロブテン環を示し、高い耐酸化性のため、チオフェン環が好ましい。
【0023】
環構造Ar3はベンゼン環、チオフェン環、又はシクロブテン環を示し、高い耐熱性のためベンゼン環が好ましい。
【0024】
R1及びR2は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数4~20のアリール基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数2~20のアルキニル基からなる群から選ばれ、溶解性の観点から炭素数1~20のアルキル基であることが好ましい。
【0025】
R1及びR2における炭素数1~20のアルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ドデシル基、n-テトラデシル基、n-オクタデシル基、2-エチルヘキシル基、3-エチルヘプチル基、3-エチルデシル、2-ヘキシルデシル基等の直鎖又は分岐アルキル基が挙げられる。そして、その中でも特に高移動度及び高溶解性を示すことから、炭素数3~12のアルキル基が好ましく、n-プロピル、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基がさらに好ましい。
【0026】
R1及びR2における炭素数4~20のアリール基は、例えば、フェニル基、p-トリル基、p-(n-ヘキシル)フェニル基、p-(n-オクチル)フェニル基、p-(2-エチルヘキシル)フェニル基等のアルキル置換フェニル基;2-フリル基;2-チエニル基;5-フルオロ-2-フリル基、5-メチル-2-フリル基、5-エチル-2-フリル基、5-(n-プロピル)-2-フリル基、5-(n-ブチル)-2-フリル基、5-(n-ペンチル)-2-フリル基、5-(n-ヘキシル)-2-フリル基、5-(n-オクチル)-2-フリル基、5-(2-エチルヘキシル)-2-フリル基、5-フルオロ-2-チエニル基、5-メチル-2-チエニル基、5-エチル-2-チエニル基、5-(n-プロピル)-2-チエニル基、5-(n-ブチル)-2-チエニル基、5-(n-ペンチル)-2-チエニル基、5-(n-ヘキシル)-2-チエニル基、5-(n-オクチル)-2-チエニル基、5-(2-エチルヘキシル)-2-チエニル基等のアルキル置換カルコゲノフェン基を挙げることができる。
【0027】
R1及びR2における炭素数2~20のアルケニル基は、例えば、エテニル基、n-プロペニル基、n-ブテニル基、n-ペンテニル基、n-ヘキセニル基、n-ヘプテニル基、n-オクテニル基、n-ノネル基、n-デセニル基、n-ドデセニル基等が挙げられる。
【0028】
R1及びR2における炭素数2~20のアルキニル基は、例えば、エチニル基、n-プロピニル基、n-ブチニル基、n-ペンチニル基、n-ヘキシニル基、n-ヘプチニル基、n-オクチニル基、n-ノニニル基、n-デシニル基、n-ドデシニル基等が挙げられる。
【0029】
R3及びR4は、それぞれ独立して水素原子、トリアルキルシリルエチニル基、炭素数1~20のアルキル基又は炭素数1~20のアルコキシ基を示し、高移動度のため水素原子であることが好ましい。
【0030】
R3及びR4におけるトリアルキルシリルエチニル基は、例えば、トリメチルシリルエチニル基、トリエチルシリルエチニル基、トリイソプロピルシリルエチニル基等が挙げられる。
【0031】
R3及びR4における炭素数1~20のアルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ドデシル基、n-テトラデシル基、n-オクタデシル基、2-エチルヘキシル基、3-エチルヘプチル基、3-エチルデシル、2-ヘキシルデシル基等の直鎖又は分岐アルキル基が挙げられる。そして、その中でも特に高移動度及び高溶解性を示すことから、炭素数1~8のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基がさらに好ましい。
【0032】
R3及びR4における炭素数1~20のアルコキシ基は、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、n-ペンチロキシ基、n-ヘキシリキシ基、イソヘキシロキシ基、n-ヘプチロキシ基、n-オクチロオキシ基、n-ノニロキシ基、n-デシロキシ基、n-ドデシロキシ基、n-テトラデシロキシ基、2-エチルヘキシロキシ基、3-エチルヘプチロキシ基、2-ヘキシルデシロキシ基等の直鎖又は分岐アルキル基が挙げられる。そして、その中でも特に高移動度及び高溶解性を示すことから、炭素数1~8のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、n-ペンチロキシ基、n-ヘキシロキシ基、イソヘキシロキシ基、n-ヘプチロキシ基、n-オクチロキシ基がさらに好ましい。
【0033】
mは1又は2の整数であるが、高溶解性のため、1であることが好ましい。
【0034】
nは0~2の整数を示し、πスタッキングが強固なため、1であることが好ましい。
【0035】
oは0又は1の整数を示し、高い耐熱性のため、0であることが好ましい。なお、環構造Ar3がチオフェン環又はシクロブテン環の場合、oは0である。
【0036】
本発明で用いられる有機半導体は高融点のため、5個以上の縮合環数を持つ構造が好ましい。
【0037】
本発明で用いられる有機半導体は、対称性が高く高移動度となるため、下記一般式(2)で示される化合物であることがさらに好ましい。
【0038】
【0039】
(ここで、Xは硫黄又は-CH=CH-を示し、Yは=CH-又は窒素を示す。R1及びR2は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数4~20のアリール基、炭素数2~20のアルケニル基、又は炭素数2~20のアルキニル基を示し、R3及びR4は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、又はトリアルキルシリルエチニル基を示す。mは1又は2の整数、nは0~2の整数を示す。但し、Xが-CH=CH-の場合、Yは=CH-を示す。)
【0040】
さらに本発明で用いられる有機半導体は、高溶解性であることから、下記一般式(3)で示される化合物であることが特に好ましい。
【0041】
【0042】
(ここで、R1及びR2は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数4~20のアリール基、炭素数2~20のアルケニル基、又は炭素数2~20のアルキニル基を示す。)
【0043】
本発明で用いられる有機半導体の具体的例示としては、以下の構造のものを挙げることができる。
【0044】
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
本発明では、有機半導体が高分子半導体の場合、該高分子半導体としては、例えば、下記(A)~(I)で示される構造の繰り返し単位のいずれかを含む高分子半導体が挙げられる。
【0049】
【0050】
(ここで、置換基R5~R28は、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素数1~20のアルキル基を示し、lは1~4の整数を示す。)
【0051】
R5~R28は、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素数1~20のアルキル基を示す。
【0052】
R5~R28における炭素数1~20のアルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ドデシル基、n-テトラデシル基、n-オクタデシル基、2-エチルヘキシル基、3-エチルヘプチル基、3-エチルデシル基、2-ヘキシルデシル基等の直鎖又は分岐アルキル基が挙げられる。lは1~4の整数である。
【0053】
該高分子半導体の分子量は、高分子半導体とポリマーが分離しやすく高移動度となることから、2,000~1,000,000であることが好ましく、10,000~1,000,000がさらに好ましく、20,000~500,000が特に好ましい。ここで、該高分子半導体の分子量は、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)をいうものである。
【0054】
本発明で使用される高分子半導体は高キャリア移動度の有機薄膜トランジスタが得られるため、(A)の構造を持つものがさらに好ましい。
【0055】
なお、本発明で用いる有機半導体は、1種類の有機半導体を単独で使用、または2種類以上の有機半導体の混合物として使用することが可能である。
【0056】
本発明の溶媒Aは、205℃~300℃の沸点を有することを特徴とする。本発明において、溶媒Aの沸点が205℃未満であるとき、印刷技術を用いて微細な塗布型有機半導体層を形成しようとする際、印刷される半導体溶液は数10pL以下の微小液量が必要とされることから、基材へ溶液が印刷される前における有機半導体の析出を防止するのが困難となる。
【0057】
ここで、本発明において、塗布型有機半導体層が微細であるとは、該層の表面が100μm×100μm(10000μm2)以下であり、好ましくは50μm×50μm(2500μm2)以下であり、かつ、厚みが200nm以下であることをいうものである。
【0058】
一方で、沸点が300℃より高いとき、有機半導体層を形成後に残留溶媒を、完全に除去することは困難となる。溶媒Aの沸点は、205℃~250℃の範囲であることが好ましく、205℃~240℃の範囲であることが特に好ましい。
【0059】
溶媒Bの沸点は、有機半導体の析出の防止により好適であり、かつ、残留溶媒の完全除去により好適であることから、210℃~300℃の範囲であることが好ましく、210℃~290℃の範囲であることがさらに好ましく、210~270℃の範囲であることが特に好ましい。
【0060】
溶媒Aと溶媒Bとの沸点の差(沸点B-沸点A)は、連続性の高い結晶膜(層)を形成するのにより好適であることから、5℃~90℃の範囲であることが好ましく、5℃~50℃の範囲であることがさらに好ましく、5~30℃の範囲であることが特に好ましい。
【0061】
溶媒Aの表面張力は、印刷を適用する際の液だれを防止し、かつ、印刷された溶液を均一に拡げるのにより好適であることから、25mN/m~50mN/mの範囲であることが好ましく、25mN/m~45mN/mであることがさらに好ましく、30mN/m~45mN/mであることが特に好ましい。溶媒Bの表面張力は、溶媒Aと同様の理由により26mN/m~50mN/mであることが好ましく、31mN/m~50mN/mであることがさらに好ましい。
【0062】
溶媒Aの表面張力Aと溶媒Bの表面張力Bとの表面張力差(表面張力B-表面張力A)は、混合した溶媒が蒸発するにつれ液滴中心方向への凝集力が強くなることで連続した均一な有機半導体層の形成により好適であるため、1mN/m~25mN/mの範囲が好ましく、1mN/m~15mN/mの範囲がさらに好ましく、1mN/m~10mN/mの範囲が特に好ましい。
【0063】
ここで「表面張力」とは、20℃で液面が静止しているときの静止表面張力をいい、該表面張力は、一般に表面張力測定計(ペンダント・ドロップ法)により確認することができる。
【0064】
本発明で用いることが可能な溶媒Aとして、有機半導体の良溶媒であり沸点が205℃~300℃であれば特に制限はなく、例えば、テトラリン、ペンチルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、1,2,4-トリメチルベンゼン、ベンゾチアゾール、ブチルフェニルエーテル、1,2-エチレンジオキシベンゼン、1-メチルナフタレン、2-メチルナフタレン、2-エチルナフタレン、2-メトキシナフタレン等の芳香族化合物;イソホロン等のケトン類などを挙げられることができ、その中でも有機半導体に対して高溶解性を示すことから、テトラリン、シクロヘキシルベンゼン、ベンゾチアゾール、1,2-メチレンジオキシベンゼン、1,2-エチレンジオキシベンゼン、1-メチルナフタレン、2-メチルナフタレン、2-エチルナフタレンが好ましい。
【0065】
本発明で用いることが可能な溶媒Bとして、有機半導体の貧溶媒であり沸点が溶媒Aより高ければ特に制限はなく、例えば、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、γ-ヘキサノラクトン、γ-ヘプタノラクトン、γ-ノナノラクトン、γ-デカノラクトン、δ-バレロラクトン等の環状エステル化合物;1-メチルピロリドン、2-ピロリドン等ピロリドン化合物;エチレングリコール、プロピレングリコール(1,2-プロパンジオール)、ジエチレングリコール等のグリコール系化合物;ドデカン、テトラデカン等の飽和脂肪族化合物;1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール等のジオール系化合物;フェノキシエタノール、1-フェノキシ-2-プロパノール、デカヒドロ-2-ナフトール、1,2,3,4-テトラヒドロ-1-ナフトール等のアルコール系化合物;1,4-ベンゾジオキサン、2-ヒドロキシメチル-1,4-ベンゾジオキサン等のベンゾジオキサン系化合物;トリアセチンなどを挙げることができる、その中でも、有機半導体の溶解性が低いこと、また、表面張力が大きいことから、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、γ-ヘキサノラクトン、δ-バレロラクトン、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、フェノキシエタノール、1,4-ベンゾジオキサンが好ましい。
【0066】
溶媒Aおよび溶媒Bの組成比は、有機半導体層の形成により好適であることから、溶媒Aと溶媒Bとの合計100質量部に対して溶媒Aの含有割合が50~99質量部の範囲であることが好ましく、60~99質量部の範囲であることがさらに好ましく、70~99質量部の範囲が特に好ましい。
【0067】
溶媒Aおよび溶媒Bの組成比は、前記溶媒Aが50~99.8体積%の割合で用いられ、前記溶媒Bが0.2~50体積%の割合で用いられることが好ましい。これにより、より好適に有機半導体層を形成することが可能となる。
【0068】
ここで溶媒Aおよび溶媒Bの組成比は、例えばガスクロマトグラフィー質量分析法(GCMS)、液体クロマトグラフィー質量分析法(LCMS)で測定することができる。また、溶媒Aおよび溶媒Bの同定は、例えばGCMS、LCMS、または、液体クロマトグラフィーなどによる分離精製後に核磁気共鳴分光法、赤外分光法により測定することができる。
【0069】
本発明の有機半導体層形成用溶液における有機半導体の濃度に特に制限はないが、溶媒Aと溶媒Bからなる混合溶媒に対して0.001~50.0重量%の範囲であると、取り扱いがより容易になり、有機半導体層を形成する際の効率により優れるものとなる。また、有機半導体層形成用溶液の粘度が0.3~100mPa・sの範囲であると、より好適な塗工性を発現するものとなる。
【0070】
ここで有機半導体の濃度は、例えばGCMS、LCMSで測定することができる。また、有機半導体の同定は、例えばGCMS、LCMS、または、液体クロマトグラフィーなどによる分離精製後に核磁気共鳴分光法、赤外分光法により測定することができる。
【0071】
さらに該溶液は、例えば、ポリスチレン、ポリ(α-メチルスチレン)、ポリ(4-メチルスチレン)、ポリ(1-ビニルナフタレン)、ポリ(2-ビニルナフタレン)、ポリ(スチレン-ブロック-ブタジエン-ブロック-スチレン)、ポリ(スチレン-ブロック-イソプレン-ブロック-スチレン)、ポリ(ビニルトルエン)、ポリ(スチレン-コ-2,4-ジメチルスチレン)、ポリ(クロロスチレン)、ポリ(スチレン-コ-α-メチルスチレン)、ポリ(スチレン-コ-ブタジエン)、ポリ(エチレン-コ-ノルボルネン)、ポリフェニレンエーテル、ポリカーボネート、ポリカルバゾール、ポリトリアリールアミン、ポリ(9,9-ジオクチルフルオレン-コ-ジメチルトリアリールアミン)、ポリ(N-ビニルカルバゾール)、ポリメタクリル酸メチル、ポリ(スチレン-コ-メタクリル酸メチル)、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸n-プロピル、ポリメタクリル酸イソプロピル、ポリメタクリル酸n-ブチル、ポリメタクリル酸フェニル、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸n-プロピル、環状ポリオレフィン等が挙げることができ、好ましくはポリスチレン、ポリ(α-メチルスチレン)、ポリ(エチレン-コ-ノルボルネン)、ポリメタクリル酸メチル、環状ポリオレフィン等のポリマーをバインダーとして存在させることもできる。これらのポリマーバインダーの濃度は、適度な溶液の粘度のため、0.001~10.0重量%であることが好ましい。
【0072】
本発明の有機半導体層形成用溶液を用いて有機半導体層を形成する際の塗布方法としては、有機半導体層を形成可能な方法であれば特に制限はなく、例えば、ディスペンサー、インクジェット、スリットコート、ブレードコート、フレキソ印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷等の印刷法などを挙げることができ、中でも容易に効率よく有機半導体層とすることが可能となることから、インクジェット、フレキソ印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷であることが好ましい。また、その際の有機半導体層の膜厚については特に制限はなく、例えば、1nm~1,000nmが挙げられ、膜厚の制御のし易さのため10nm~300nmが好ましく、20nm~100nmがさらに好ましい。
【0073】
本発明の有機半導体層形成用溶液を塗布後、有機溶媒を乾燥除去することにより有機半導体層を形成することが可能である。
【0074】
塗布した有機半導体層から有機溶媒を乾燥除去する際、乾燥する条件に特に制限はなく、例えば、常圧下、又は減圧下で有機溶媒の乾燥除去を行うことが可能である。
【0075】
塗布した有機半導体層から有機溶媒を乾燥除去する温度に特に制限はないが、効率よく塗布した有機半導体層から有機溶媒を乾燥除去することができ、有機半導体層を形成することが可能であるため、10~150℃の温度範囲で行うことが好ましい。
【0076】
塗布した有機半導体層から有機溶媒を乾燥除去する際、除去する有機溶媒の気化速度を調節することで、有機半導体の結晶成長を制御することが可能である。
【0077】
本発明の有機半導体層形成用溶液より形成される有機半導体層は、有機半導体デバイス、特に有機薄膜トランジスタの有機半導体層として使用することが可能である。
【0078】
有機薄膜トランジスタは、基板上に、ソース電極およびドレイン電極を付設した有機半導体層とゲート電極とを絶縁層を介し積層することにより得ることができ、該有機半導体層に本発明の有機半導体層形成用溶液により形成した有機半導体層を用いることにより、優れた半導体・電気特性を発現する有機薄膜トランジスタとすることが可能である。
【0079】
図1に一般的な有機薄膜トランジスタの断面形状による構造を示す。ここで、(A)は、ボトムゲート-トップコンタクト型、(B)は、ボトムゲート-ボトムコンタクト型、(C)は、トップゲート-トップコンタクト型、(D)は、トップゲート-ボトムコンタクト型の有機薄膜トランジスタであり、1は有機半導体層、2は基板、3はゲート電極、4はゲート絶縁層、5はソース電極、6はドレイン電極を示し、本発明の有機半導体層形成用溶液より形成される有機半導体層は、いずれの有機薄膜トランジスタにも適用することが可能である。
【0080】
基板の具体例としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、環状ポリオレフィン、ハロゲン化環状ポリオレフィン、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリビニルフェノール、ポリビニルアルコール、ポリ(ジイソプロピルフマレート)、ポリ(ジエチルフマレート)、ポリ(ジイソプロピルマレエート)、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、セルローストリアセテート等のプラスチック基板;ガラス、石英、酸化アルミニウム、シリコン、ハイドープシリコン、酸化シリコン、二酸化タンタル、五酸化タンタル、インジウム錫酸化物等の無機材料基板;金、銅、クロム、チタン、アルミニウム等の金属基板等を挙げることができる。なお、ハイドープシリコンを基板に用いた場合、その基板はゲート電極を兼ねることができる。
【0081】
本発明に係るゲート電極としては特に制限はなく、例えば、アルミニウム、金、銀、銅、ハイドープシリコン、スズ酸化物、酸化インジウム、インジウムスズ酸化物、クロム、チタン、タンタル、グラフェン、カーボンナノチューブ等の無機材料;ドープされた導電性高分子(例えばPEDOT-PSS)等の有機材料を挙げることができる。
【0082】
また、上記の無機材料は、金属のナノ粒子インクとしても差し支えなく使用することができる。この場合の溶媒は、適度の分散性のため、水、メタノール、エタノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール等の極性溶媒;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、テトラデカン等の炭素数6~14の脂肪族炭化水素溶媒;トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、ペンチルベンゼン、ヘキシルベンゼン、オクチルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、テトラリン、インダン、アニソール、1,2-ジメトキシベンゼン、1,3-ジメトキシベンゼン、1,2-ジメチルアニソール、2,3-ジメチルアニソール、3,4-ジメチルアニソール等の炭素数7~14の芳香族炭化水素溶媒であることが好ましい。該ナノ粒子インクを塗布後、導電性向上のため、80℃~200℃の温度範囲でアニール処理することが好ましい。
【0083】
本発明に係るゲート絶縁層としては特に制限はなく、例えば、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化チタン、二酸化タンタル、五酸化タンタル、インジウム錫酸化物、酸化スズ、酸化バナジウム、チタン酸バリウム、チタン酸ビスマス等の無機材料;ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリビニルフェノール、ポリビニルアルコール、ポリ(ジイソプロピルフマレート)、ポリ(ジエチルフマレート)、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリけい皮酸エチル、ポリけい皮酸メチル、ポリクロトン酸エチル、ポリエーテルスルホン、ポリプロピレン-コ-1-ブテン、ポリイソブチレン、ポリプロピレン、ポリシクロペンタン、ポリシクロヘキサン、ポリシクロヘキサン-エチレン共重合体、ポリハロゲン化シクロペンタン、ポリハロゲン化シクロヘキサン、ポリハロゲン化シクロヘキサン-エチレン共重合体、ハロゲン化環状ポリオレフィン、BCB樹脂(商品名:サイクロテン、ダウ・ケミカル社製)、Cytop(商標)、Teflon(商標)、パリレンC等のパリレン(商標)類のポリマー絶縁材料を挙げることができる。
【0084】
また、これらのゲート絶縁層の表面は、例えば、オクタデシルトリクロロシラン、デシルトリクロロシラン、デシルトリメトキシシラン、オクチルトリクロロシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、β-フェネチルトリクロロシラン、β-フェネチルトリメトキシシラン、フェニルトリクロロシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等のシラン類;ヘキサメチルジシラザン等のシリルアミン類で修飾処理したものであっても使用することができる。
【0085】
ソース電極およびドレイン電極の材料としては、ゲート電極と同様の材料を用いることができ、ゲート電極の材料と同じであっても異なっていてもよく、異種材料を積層してもよい。また、キャリアの注入効率を上げるために、これらの電極材料に表面処理を実施することもできる。表面処理に用いる表面処理剤としては、例えば、ベンゼンチオール、ペンタフルオロベンゼンチオール、4-フルオロベンゼンチオール、4-メトキシベンゼンチオール等を挙げることができる。
【0086】
本発明の有機半導体層形成用溶液を用いて得られる有機薄膜トランジスタは、速い動作性のため、キャリア移動度が、0.5cm2/V・s以上であることが好ましい。
【0087】
本発明の有機半導体層形成用溶液およびそれより形成される有機半導体層は、電子ペーパー、有機ELディスプレイ、液晶ディスプレイ、ICタグ(RFIDタグ)、メモリー、センサー用等の有機薄膜トランジスタ用途;有機ELディスプレイ材料;有機半導体レーザー材料;有機薄膜太陽電池材料;フォトニック結晶材料等の電子材料に利用することができ、有機半導体が結晶性の薄膜となるため、有機薄膜トランジスタの半導体層用途として用いられることが好ましい。
【発明の効果】
【0088】
本発明の有機半導体層形成用溶液を用いることで、良好な電気特性を発現する有機半導体層および該有機半導体層を用いてなる有機薄膜トランジスタを提供することが可能となる。
【実施例】
【0089】
以下実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
【0090】
(ゲート電極の形成)
ガラス基板上(イーグルXG、コーニング社製)にシャドウマスクを取り付け真空蒸着装置内に設置し、装置内の真空度が3.0×10-4Pa以下になるまで排気し、抵抗加熱蒸着法によって50nmの厚みのアルミニウム電極、すなわちゲート電極を形成した。(絶縁層の形成)
上述のゲート電極を形成した基板にジクロロ-ジ-p-キシリレン(商品名:DPX-C,SCS社製)600mgをラボコーター(日本パリレン合同会社製、PDS2010)を用いて、真空蒸着し膜厚420nmのパリレンCの絶縁層を形成した。
(ソース・ドレイン電極の形成)
上述の絶縁層を形成した基板を真空蒸着装置に設置し、装置内の真空度が3.0×10-4Pa以下になるまで排気し、抵抗加熱蒸着法によって厚み50nmの金を形成した。その後、フォトリソグラフおよびエッチング処理によりチャネル長10μm、チャネル幅100μmの櫛形ソース・ドレイン電極を形成した。
(隔壁層の形成)
上述のソース・ドレイン電極を形成した基板全面に下記式(4)
【0091】
【0092】
で示されるフッ素系樹脂のプロピレングリコール-1-モノメチルエーテ-2-アセタート溶液(3wt%)を500rpm×5秒、1500rpm×20秒の条件でスピンコートし、50℃で1分間乾燥した。その後、50μm×50μmの正方形状の遮光部を有するマスクを、上記の遮光部の中心部が上記のソース電極およびドレイン電極間の中心部と合致するように位置合わせを行った後、基板と接触させ250mJ/cm2の紫外線を照射することで上記遮光部以外の範囲を架橋させた。基板をPGMEAに1分間浸漬し、つづけてテトラヒドロフランに1分間浸漬した後、窒素ガスでブロー乾燥し、前記マスク遮光部に存在したフッ素系樹脂を除去し、隔壁層を形成した。
(電極表面修飾)
上記のソース・ドレイン電極を形成した基板をペンタフルオロベンゼンチオールのイソプロピルアルコール溶液に、5分間浸漬することにより、基板上に形成した電極の表面を修飾した。
(有機半導体層形成用溶液の調製)
空気下、10mlサンプル管に、テトラリン(沸点207℃、表面張力36mN/m)1.125g、γ-ヘキサノラクトン(沸点220℃、表面張力39mN/m)0.375g、2,7-ジ(n-ヘキシル)ジチエノベンゾジチオフェン(化合物1)12mgを加え、50℃に加熱して溶解させることで、有機半導体層形成用溶液の調製を行った。
(半導体層の形成)
上述で調製した有機半導体層形成用溶液を基本液滴量10pLのカートリッジに充填し、インクジェット装置(富士フィルムDimatix社製、DMP-2831、ステージ温度30℃、カートリッジ温度30℃)を用いて前記電極修飾したソース・ドレイン電極間のチャネル部に印刷し、ホットプレート上で90℃×20分間乾燥することで有機半導体層を形成した(表面:50μm×50μm、厚み:120nm)。
(電気物性評価)
実施例中、電気物性については、半導体パラメータアナライザー(ケースレー社製4200SCS)を用い、ドレイン電圧(Vd=-20V)、ゲート電圧(Vg)を+20~-20Vまで0.5V刻みで走査し、伝達特性(Id-Vg)の評価を行った。正孔のキャリア移動度は1.0cm2/Vsと高い移動度を示した。
【0093】
実施例2~7
表1に示した有機半導体、溶媒を用いた以外は実施例1と同様の方法により有機薄膜トランジスタを作製し、電気物性の測定を行った。結果を表1に示す。ここで、化合物1は前記化学式5における化合物1を示す。化合物2は前記化学式7における化合物2を示す。化合物3は前記化学式4における化合物3を示す。
【0094】
比較例1~4
溶媒として表1に示した溶媒を用いた以外は実施例1と同様の方法により有機薄膜トランジスタを作製し、電気物性の測定を行った。結果を表1に示す。
【0095】
【図面の簡単な説明】
【0096】
【
図1】;有機薄膜トランジスタの断面形状による構造を示す図である。
【符号の説明】
【0097】
(A):ボトムゲート-トップコンタクト型有機薄膜トランジスタ
(B):ボトムゲート-ボトムコンタクト型有機薄膜トランジスタ
(C):トップゲート-トップコンタクト型有機薄膜トランジスタ
(D):トップゲート-ボトムコンタクト型有機薄膜トランジスタ
1:有機半導体層
2:基板
3:ゲート電極
4:ゲート絶縁層
5:ソース電極
6:ドレイン電極