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  • 特許-配管支持部材及び配管の敷設方法 図1
  • 特許-配管支持部材及び配管の敷設方法 図2
  • 特許-配管支持部材及び配管の敷設方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】配管支持部材及び配管の敷設方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 23/00 20060101AFI20231011BHJP
   F16L 3/10 20060101ALI20231011BHJP
   C22B 3/08 20060101ALN20231011BHJP
【FI】
C22B23/00 102
F16L3/10 Z
C22B3/08
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019113931
(22)【出願日】2019-06-19
(65)【公開番号】P2021001359
(43)【公開日】2021-01-07
【審査請求日】2022-05-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067736
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100192212
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 貴明
(74)【代理人】
【識別番号】100204032
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100200001
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 明彦
(72)【発明者】
【氏名】石田 哲也
【審査官】菅原 愛
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/048927(WO,A1)
【文献】特開2010-185574(JP,A)
【文献】特開2013-117262(JP,A)
【文献】特開2014-152816(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 23/00
F16L 3/10
C22B 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニッケル酸化鉱石の湿式製錬で用いられる配管の配管支持部材であって、
前記配管の円周面の一部に沿って配管を支持する配管支持用半割クランプと、
前記配管支持用半割クランプと対になって前記配管を固定する配管固定用半割クランプと、
前記配管支持用半割クランプと接合され、前記配管を一定高さに保持する保持部と、
接地面との接合手段を備えないことで、底面で前記配管の伸縮に対応し、かつ支持を安定化させる底面部と
を備えることを特徴とする配管支持部材。
【請求項2】
前記配管は高密度ポリエチレン配管であることを特徴とする請求項1に記載の配管支持部材。
【請求項3】
前記配管支持用半割クランプは、水平面に対して所定の角度傾斜した状態で前記保持部に接合されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の配管支持部材。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の配管支持部材を用いてニッケル酸化鉱石の湿式製錬で用いられる配管を敷設する配管の敷設方法であって、
前記配管支持部材を用いて前記配管を固定し、
前記配管支持部材の前記底面部を地面又は前記配管支持部材を支持する部材上に接合せずに載置することを特徴とする配管の敷設方法。
【請求項5】
前記配管は、ニッケル酸化鉱石を硫酸浸出後に中和した後の溶液を送液するものであることを特徴とする請求項4に記載の配管の敷設方法。
【請求項6】
前記配管内の温度は70℃以下であることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の配管の敷設方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬で用いられる配管支持部材及び配管の敷設方法に関する。
【0002】
近年、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬法として、硫酸を用いた高圧酸浸出(HPAL:High Pressure Acid Leaching)法が注目されている。この方法は、乾燥及び焙焼工程等の乾式処理工程を含まず、一貫した湿式工程からなるので、エネルギー的及びコスト的に有利であるとともに、ニッケル品位を50重量%程度まで向上させたニッケル・コバルト混合硫化物を得ることができるという利点を有している。
【0003】
HPAL技術を用いた低品位ニッケル鉱の製錬では、ニッケル/コバルト混合硫化物(MS)を製造する過程にて、高圧酸浸出された粗硫酸ニッケル溶液中の亜鉛の除去を要する。この亜鉛を除去する工程(以下、脱亜鉛工程)では、粗硫酸ニッケル溶液を微加圧された反応槽に供給し、硫化水素ガス等の硫化剤を添加することで粗硫酸ニッケル溶液に含まれる亜鉛を硫化し、固液分離によって亜鉛硫化物と脱亜鉛終液を得る。
【0004】
脱亜鉛工程では、微加圧された反応槽にて粗硫酸ニッケル溶液に硫化水素ガス等の硫化剤を添加することで含まれる亜鉛を硫化し、ポンプと配管を用いてその亜鉛硫化物と粗硫酸ニッケル溶液のスラリーを固液分離を行う濾過機へ送液する。この時のプロセス液は液温が約65℃あり、大気温との温度差による配管の伸縮やポンプでの圧送による配管の動きによって、配管を支持している構造部材と配管下部が擦れて磨耗するため、最終的には配管の穴あきが発生する。
【0005】
配管の穴あきによる液漏れの防止に関して、例えば特許文献1には、輸送用鋼管や鋼製容器の外面に下地処理を行う下地処理工程と、下地処理された輸送用鋼管や鋼製容器の外面を樹脂含浸繊維で被覆し所定厚さの繊維強化樹脂層を形成する繊維強化樹脂層形成工程とを備えていることを特徴とする配管や鋼製容器の防食施工方法が記載されている。
【0006】
しかしながら、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬で用いる配管は長く、配管の全てに対して防食施工処理を施すことは困難である。また、従来は、配管下部にゴム板を敷いていたが、温度差による配管の伸縮や動きに起因した磨耗によりゴム板が破損及び脱落し、配管磨耗が起きてしまっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2006-57790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような状況を解決するためになされたものであり、簡易な構成で配管の摩耗による損傷(穴あきや割れなど、プロセス液の漏洩を生じるものを指す。以下同じ)を防止することのできる配管支持部材及び配管の敷設方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬で用いられる配管の配管支持部材であって、配管の円周面の一部に沿って配管を支持する配管支持用半割クランプと、配管支持用半割クランプと対になって配管を固定する配管固定用半割クランプと、配管支持用半割クランプと接合され、配管を一定高さに保持する保持部と、接地面との接合手段を備えないことで、底面で配管の伸縮に対応し、かつ支持を安定化させる底面部とを備える。
【0010】
本発明の一態様によれば、地面や配管を支持する部材と配管との間に本発明に係る配管支持部材を設けることで配管が直接摩耗により損傷することを防止できる。
【0011】
このとき、本発明の一態様では、配管は高密度ポリエチレン配管としてもよい。
【0012】
高密度ポリエチレン配管は、65℃前後の液温であるニッケル酸化鉱石の湿式製錬法のプロセス液を送液するのに適している。
【0013】
また、本発明の一態様では、配管支持用半割クランプは、水平面に対して所定の角度傾斜した状態で保持部に接合されていてもよい。
【0014】
配管支持用半割クランプを水平面より傾斜させることで、配管の設置や取り外しが容易になり、作業性が向上する。
【0015】
本発明の他の態様は、上述した配管支持部材を用いてニッケル酸化鉱石の湿式製錬で用いられる配管を敷設する配管の敷設方法であって、配管支持部材を用いて配管を固定し、配管支持部材の底面部を地面又は配管支持部材を支持する部材上に接合せずに載置する。
【0016】
このようにすることで、配管が地面や配管サポート部材により直接摩耗することはなくなるため、簡易な構成で配管の摩耗による損傷を防止することができる。
【0017】
このとき、本発明の他の態様では、配管は、ニッケル酸化鉱石を硫酸浸出後に中和した後の溶液を送液するものであるとしてもよい。
【0018】
ニッケル酸化鉱石の湿式製錬におけるプロセス液は、大気温との温度差が大きく配管の伸縮を起こしやすいため、本発明に係る配管の敷設方法を適用することにより、配管の摩耗を防止することができる。
【0019】
また、本発明の他の態様では、配管内の温度は70℃以下であるとしてもよい。
【0020】
配管を高密度ポリエチレン配管等で形成する場合には、上記温度範囲での運用が好ましい。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように本発明によれば、簡易な構成で配管の摩耗による損傷を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法を示す工程図である。
図2】(A)は、従来の配管支持の状態を示した正面図であり、(B)は、側面図である。
図3】(A)は、本発明の一実施形態に係る配管支持部材を示す正面図であり、(B)は、側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好適な実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0024】
先ず、配管支持部材及び配管の敷設方法のより具体的な説明に先立ち、本発明の一実施形態に係る配管支持部材及び配管の敷設方法が適用されるニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法について簡単に説明する。このニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法は、例えば高圧酸浸出法(HPAL法)を用いて、ニッケル酸化鉱石からニッケル及びコバルトを浸出させて回収する湿式製錬方法である。図1に、ニッケル酸化鉱石の高圧酸浸出法による湿式製錬方法の工程(プロセス)図の一例を示す。
【0025】
スラリー調製工程S1では、原料鉱石であるニッケル酸化鉱石を用いて、数種類のニッケル酸化鉱石を所定のNi品位、不純物品位となるように混合し、それらを水と混合してスラリー化し、篩にかけて所定の分級点で分級してオーバーサイズの鉱石粒子を除去した後に、アンダーサイズの鉱石のみを使用する。
【0026】
浸出工程S2では、スラリー調整工程S1で得られたニッケル酸化鉱石のスラリーに対して、例えば高圧酸浸出法を用いた浸出処理を施す。具体的には、原料となるニッケル酸化鉱石を混合等して得られた鉱石スラリーに硫酸を添加し、例えば耐熱耐圧容器(オートクレーブ)を用いて、220~280℃の高い温度条件下で加圧することによって鉱石からニッケル、コバルト等を浸出し、浸出液と浸出残渣とからなる浸出スラリーを形成する。
【0027】
浸出工程S2では、浸出率を向上させる観点から過剰の硫酸を加えるようにしている。そのため、得られた浸出スラリーには浸出反応に関与しなかった余剰の硫酸が含まれており、そのpHは非常に低い。
【0028】
このことから、予備中和工程S3では、次工程の固液分離工程S4における多段洗浄時に効率よく洗浄が行われるように、浸出工程S2にて得られた浸出スラリーのpHを高めて所定の範囲に調整する。pHの調整方法としては、例えば石灰石(炭酸カルシウム)スラリー等の中和剤を添加することによって所定の範囲のpHに調整する。
【0029】
固液分離工程S4では、予備中和工程S3にてpH調整された浸出スラリーを多段洗浄して、ニッケル及びコバルトのほか不純物元素として亜鉛を含む浸出液と浸出残渣とを得る。
【0030】
中和工程S5では、固液分離工程S4にて分離された浸出液のpHを調整し、不純物元素を含む中和澱物を分離して、ニッケル及びコバルトと共に亜鉛を含む中和終液を得る。浸出液のpHは、石灰石(炭酸カルシウム)スラリー等の中和剤を添加することで調整される。
【0031】
脱亜鉛工程S6では、中和工程S5から得られた中和終液に硫化水素ガス等の硫化剤を添加して硫化処理を施すことにより亜鉛硫化物を生成させ、その亜鉛硫化物を分離除去してニッケル及びコバルトを含むニッケル回収用母液(脱亜鉛終液)を得る。脱亜鉛工程では、微加圧された反応槽にて粗硫酸ニッケル溶液に硫化水素ガス等の硫化剤を添加することで含まれる亜鉛を硫化し、ポンプと配管を用いてその亜鉛硫化物を含む粗硫酸ニッケル溶液を固液分離を行う濾過機へ送液する。
【0032】
本発明の一実施形態に係る配管支持部材及び配管の敷設方法は、特にこの脱亜鉛工程S6において好適に用いることができる。その理由としては、脱亜鉛工程S6におけるプロセス液の液温が約65℃であり、大気温との温度差による配管の伸縮が起きやすく、また、ポンプでの圧送による配管の動きによる摩耗も生じやすいためである。
【0033】
なお、その後の硫化工程S7では、脱亜鉛工程S6後のニッケル回収用母液である脱亜鉛終液を硫化反応始液として、その硫化反応始液に対して硫化剤としての硫化水素ガスを吹き込むことによって硫化反応を生じさせ、不純物成分の少ないニッケル及びコバルトの混合硫化物と、ニッケル及びコバルトの濃度を低い水準で安定させた貧液とを生成させる。
【0034】
最終中和工程S8は、上述した固液分離工程S4から移送された遊離硫酸を含む浸出残渣と、硫化工程S7から移送されたマグネシウムやアルミニウム、鉄等の不純物を含むろ液(貧液)の中和を行う。浸出残渣やろ液は、中和剤によって所定のpH範囲に調整され、廃棄スラリー(テーリング)となる。この反応槽にて生成されたテーリングは、テーリングダム(廃棄物貯留場)に移送される。
【0035】
次に、本発明に係る配管支持部材について説明する。図2(A)は、従来の配管支持の状態を示した正面図であり、図2(B)は、側面図である。従来の配管支持は、図2(A)、(B)に示すように、配管101を直接配管サポート103に上架し、Uボルト102にて固定していた。しかしながら、この方法ではプロセス液の液温(約65℃)と大気温との温度差により配管101の伸縮が起き、またポンプによる圧送によっても配管が動き、配管サポート103と配管101との間、もしくはUボルト102と配管101との間で擦れ、配管101自体に磨耗が発生してしまう等の問題があった。
【0036】
図3(A)は、本発明の一実施形態に係る配管支持部材を示す正面図であり、図3(B)は、側面図である。本発明の一態様は、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬で用いられる配管の配管支持部材10であって、配管11の円周面の一部に沿って配管11を支持する配管支持用半割クランプ12と、配管支持用半割クランプ12と対になって配管を固定する配管固定用半割クランプ13と、配管支持用半割クランプ12と接合され、配管を一定高さに保持する保持部14と、底面で配管の伸縮に対応し、かつ支持を安定化させる底面部15とを備える。地面や配管を支持する部材と配管との間に本発明に係る配管支持部材を設けることで配管が直接摩耗により損傷することを防止できる。
【0037】
配管11としては、例えば、合成樹脂製のものを用いることが好ましく、特に高密度ポリエチレン(HDPE)配管を採用することが好ましい。高密度ポリエチレン(HDPE)配管は、適度な柔軟性を有し、脱亜鉛工程S6から来る硫化亜鉛や石膏(硫酸カルシウム)を主成分とするスケールを容易に除去することができる。また、高密度ポリエチレン(HDPE)配管は、内面の表面が平滑であるためスケールが付着しにくい。さらに、高密度ポリエチレン(HDPE)配管は、耐候性、耐磨耗性や耐薬品性にも優れている。なお、合成樹脂製の配管11は例えばフランジを用いて容器や他の配管などと接続される。
【0038】
配管支持用半割クランプ12は、配管11の円周面の一部に沿うように湾曲した部材であり、配管11を載置して支持する。配管支持用半割クランプ12は、外周面の一部が保持部14と接合されている。接合の態様は、例えば、溶接によるものであり、配管支持用半割クランプ12と保持部14を直接溶接してもよいし、配管支持用半割クランプ12の外周の形に湾曲した補強プレート等を間に介して溶接又は接着あるいはねじ止めしてもよい。
【0039】
配管固定用半割クランプ13は、配管支持用半割クランプ12と対になって配管を固定する。配管支持用半割クランプ12と配管固定用半割クランプ13とは、配管11を挟み込んだ状態でボルト締め等によって固定する。配管11が鋼管製の場合には、配管支持用半割クランプ12と配管固定用半割クランプ13の内側には、ゴムライニングが施されていても良い。
【0040】
配管支持用半割クランプ12と配管固定用半割クランプ13とは、例えばそれぞれのつば部分を締結用ボルトナット17により固定することができる。配管支持用半割クランプ12や配管固定用半割クランプ13には、耐腐食性に優れたものや加工しやすい部材を用いることが好ましく、例えば、鉄鋼材やステンレス鋼材などが用いられる。配管の太さによっては、配管支持用半割クランプ12や配管固定用半割クランプ13にリブを設けておくと、剛性が高く、固定作業が容易にできる。
【0041】
保持部14は、底面部15に対して配管11を一定高さに保持する。保持部14の材質は特に限定はなく、配管支持用半割クランプ12や底面部15と同一の部材で良い。保持部14は、図3に示すように配管支持部材10の側壁を構成するものでもよく、あるいは複数の支柱状の形状となっていてもよい。
【0042】
底面部15は、配管の伸縮による配管支持部材10の移動に対応し、かつ支持を安定化させる。配管支持部材10を用いて配管11を支持することにより、配管支持部材10の底面部15が地面や配管支持部材を支持する部材16との間で摩耗することになるため、底面部15は耐摩耗性に優れた部材で構成することが好ましい。
【0043】
配管支持部材10の長手方向の長さLは、上述したように、配管11が温度差による配管の伸縮や溶液の圧送によって送液方向の前後にずれるように移動するため、前後の移動によって配管支持部材を支持する部材16から脱落しない程度の長さが必要である。この長さは直線の配管長と液温と外気温との温度差によって規定される熱収縮計算ΔL=α×L×Δtによって導かれる。このときΔLは伸縮長を示し、αは材料の線膨張率、Lは配管長、Δtは温度差を示す。例えば今回設置した配管支持部材10の長手方向の長さは、敷設した配管の最大直線長が49mあり、液温65℃で外気温30℃である場合は液の有無により35℃までの温度差が生じ、今回使用したHDPEの製品データに規定される線膨張率α=10.8×10-5m/m・℃から得られる最大伸縮長さはΔL=10.8×10-5×49×(65-30)=185mmとなり、これが前後に収縮されることからその2倍の370mmが必要となり、結果400mmの底面部を備えた。
【0044】
なお、配管支持部材10は、送液方向を前後とした場合の左右方向に動くことはほとんどないが、図3(A)に示すように配管支持部材を支持する部材16に配管支持部材10が左右方向に動かないようにするためのガイド18を設置するのが望ましい。
【0045】
本発明の一実施形態に係る配管支持部材10では、配管支持用半割クランプ12は、水平面に対して所定の角度傾斜した状態で保持部14に接合されていてもよい。所定の角度としては、例えば、水平面に対して30度~60度傾斜した角度とすることが好ましい。このようにすることで、配管11を配管支持用半割クランプ12に載置したり、取り外したりする作業が斜め方向からできるため容易になり、作業性が向上する。
【0046】
次に、本発明の一実施形態に係る配管の敷設方法について説明する。本発明の一態様は、上述した配管支持部材10を用いてニッケル酸化鉱石の湿式製錬で用いられる配管11を敷設する配管の敷設方法であって、配管支持部材10を用いて配管11を固定し、配管支持部材10の底面部15を地面又は配管支持部材を支持する部材16上に接合せずに載置する。
【0047】
このように、地面や配管支持部材を支持する部材16と配管11との間に配管支持部材10を設け、配管11と配管支持部材10とを固定し、配管支持部材10の底面部15と地面又は配管支持部材を支持する部材16とは接合しないようにすることで、配管伸縮時等には、配管支持部材10が配管11とともに移動するため、配管支持部材10と地面や配管支持部材を支持する部材16との間でのみ摩耗が生じる。これにより、配管11が直接摩耗するのを防止することができる。なお、配管支持部材を支持する部材16とは、配管による送液経路を構成する配管サポートであり、例えば、H鋼もしくはチャンネル鋼などを接合又は組み合わせることにより構成される。
【0048】
また、上述の本発明の一実施形態に係る配管支持部材10では、配管支持用半割クランプ12と保持部14を接合する態様としたが、この態様に必ずしも限定されず、接合個所を溶接又は接着せず自由に動かせる態様、接合個所のかわりに底面部15と配管支持部材を支持する部材16を溶接又は接着する態様であってもよい。
【0049】
上述したように、本発明の一実施形態に係る配管の敷設方法は、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬における脱亜鉛工程S6において好適に実施することができる。脱亜鉛工程S6におけるプロセス液の液温が約65℃であり、大気温との温度差による配管の伸縮が起きやすく、また、ポンプでの圧送に伴う配管の動きによる摩耗も生じやすいため、配管の摩耗による損傷を防止することができる本発明が適しているためである。
【0050】
以上説明したように本発明の配管支持部材及び配管の敷設方法によれば、簡易な構成で配管の摩耗による損傷を防止することができる。
【0051】
なお、上記のように本発明の各実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは、当業者には、容易に理解できるであろう。したがって、このような変形例は、全て本発明の範囲に含まれるものとする。
【0052】
例えば、明細書または図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書または図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また、配管支持部材及び配管の敷設方法の構成も本発明の各実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0053】
10 配管支持部材、11 配管、12 配管支持用半割クランプ、13 配管固定用半割クランプ、14 保持部、15 底面部、16 配管支持部材を支持する部材、17 締結用ボルトナット、18 ガイド、101 配管、102 Uボルト、103 配管サポート

図1
図2
図3