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特許7363135熱硬化性樹脂組成物、プリプレグ、銅張積層板、プリント配線板及び半導体パッケージ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】熱硬化性樹脂組成物、プリプレグ、銅張積層板、プリント配線板及び半導体パッケージ
(51)【国際特許分類】
   C08L 79/00 20060101AFI20231011BHJP
   C08L 35/06 20060101ALI20231011BHJP
   C08L 63/08 20060101ALI20231011BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20231011BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20231011BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20231011BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
C08L79/00 B
C08L35/06
C08L63/08
C08L63/00 A
C08J5/24 CEQ
C08J5/24 CET
C08J5/24 CFC
B32B15/08 J
H05K1/03 610H
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019126248
(22)【出願日】2019-07-05
(65)【公開番号】P2021011535
(43)【公開日】2021-02-04
【審査請求日】2022-06-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】串田 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】白男川 芳克
(72)【発明者】
【氏名】金子 辰徳
(72)【発明者】
【氏名】垣谷 稔
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-155122(JP,A)
【文献】特開2018-165340(JP,A)
【文献】特表2016-536403(JP,A)
【文献】特開2012-153896(JP,A)
【文献】特開2003-252958(JP,A)
【文献】特表2016-532759(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08J 5/24
B32B15/08
H05K 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)芳香族ビニル化合物に由来する構造単位と無水マレイン酸に由来する構造単位とを有する共重合樹脂と、
(B)エポキシ変性ポリブタジエンと、
(C)活性エステル化合物と、
(D)マレイミド化合物及びその変性物からなる群から選ばれる1種以上と、
(E)脂環式骨格を含むエポキシ樹脂と、
を含有し、
前記(B)成分の含有量が、固形分換算の(A)~(E)成分の総和100質量部に対して、1~7質量部であり、
前記(E)成分の含有量が、固形分換算の(A)~(E)成分の総和100質量部に対して、1~15質量部である、熱硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(A)成分が、下記一般式(A-i)で表される芳香族ビニル化合物に由来する構造単位と下記式(A-ii)で表される無水マレイン酸に由来する構造単位とを有する共重合樹脂である、請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【化1】

(式中、RA1は、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基であり、RA2は、炭素数1~5のアルキル基、炭素数2~5のアルケニル基、炭素数6~20のアリール基、水酸基又は(メタ)アクリロイル基である。xは、0~3の整数である。)
【請求項3】
前記(B)成分が、下記一般式(B-1)で表されるエポキシ変性ポリブタジエンである、請求項1又は2に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【化2】

(式中、a、b及びcはそれぞれ、括弧内の構造単位の比率を表しており、aは0.05~0.40、bは0.02~0.30、cは0.30~0.80であり、さらに、a+b+c=1.00、且つ(a+c)>bを満たす。yは、括弧内の構造単位の数を表し、10~250の整数である。)
【請求項4】
前記(C)成分が、多価カルボン酸化合物と、下記一般式(C1-1)~(C1-5)のいずれかで表されるフェノール性水酸基を有する芳香族化合物と、をエステル化してなる化合物である、請求項1~3のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【化3】

(式中、k1及びk2は、各々独立に、0又は1である。)
【請求項5】
前記(D)成分が、1分子中に少なくとも2個のN-置換マレイミド基を有するマレイミド化合物を、(d1)酸性置換基を有するモノアミン化合物及び(d2)ジアミン化合物と反応させてなる化合物である、請求項1~4のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記(E)成分が含む脂環式骨格が、ジシクロペンタジエン骨格である、請求項1~5のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
前記(A)成分の含有量が、固形分換算の(A)~(E)成分の総和100質量部に対して、1~20質量部である、請求項1~6のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
前記(B)成分の含有量が、固形分換算の(A)~(E)成分の総和100質量部に対して、3~7質量部である、請求項1~7のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
前記(E)成分の含有量が、固形分換算の(A)~(E)成分の総和100質量部に対して、3~15質量部である、請求項1~8のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項10】
さらに、(F)硬化促進剤、(G)難燃剤及び(H)無機充填材からなる群から選ばれる1種以上を含有してなる、請求項1~9のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物を含有してなるプリプレグ。
【請求項12】
請求項11に記載のプリプレグと銅箔とを積層してなる銅張積層板。
【請求項13】
請求項12に記載の銅張積層板を用いてなるプリント配線板。
【請求項14】
請求項13に記載のプリント配線板を用いてなる、半導体パッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性樹脂組成物、プリプレグ、銅張積層板、プリント配線板及び半導体パッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
熱硬化性樹脂は、その特有な架橋構造が高い耐熱性及び寸法安定性を発現するため、電子部品等の高い信頼性を要求される分野において広く使われている。特に銅張積層板及び層間絶縁材料においては、近年の配線の高密度化への要求から、微細配線形成のための高い銅箔接着性、レーザー等による穴あけ等の加工をする際の加工性も必要とされる。さらに近年、鉛フリーはんだによる電子部品の搭載により、従来よりも高い耐熱性が必要になってきている。
【0003】
移動体通信機器である、基地局装置、サーバー及びルーター等のネットワーク関連電子機器、大型コンピュータなどでは、低損失かつ高速で、大容量の情報を伝送及び処理することが要求されている。電気信号は高周波数の方が、情報を高速に伝送及び処理することができるが、電気信号は、高周波になるほど減衰しやすく、より短い伝送距離で出力が弱くなり、損失が大きくなりやすいという性質を有する。したがって、低損失かつ高速通信の要求を満たすためには、プリント配線板自体の誘電特性(比誘電率、誘電正接)、特に高周波帯域での比誘電率及び誘電正接を低減させることが求められている。
【0004】
従来、低損失で情報を伝送し得るプリント配線板を得るために、比誘電率及び誘電正接が低いフッ素系樹脂を使用した基板材料が使用されてきた。しかしながら、フッ素系樹脂は一般に溶融温度及び溶融粘度が高く、その流動性が比較的低いため、プレス成形時に高温高圧条件を設定する必要があるという問題点がある。しかも、上記の通信機器等に使用される高多層のプリント配線板用に使用するには、加工性、寸法安定性及び金属めっきとの接着性が不充分であるという問題点がある。
【0005】
そこで、高周波用プリント配線板用途に対応する、フッ素系樹脂に替わる熱硬化性樹脂材料が研究されている。例えば、特許文献1には、優れた誘電特性を達成し得る熱硬化性樹脂組成物として、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位と無水マレイン酸に由来する構造単位とを有する共重合樹脂と、分子両末端に水酸基を有するエポキシ変性ポリブタジエンと、活性エステル化合物と、マレイミド化合物及びその変性物からなる群から選ばれる1種以上と、を含有してなる熱硬化性樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-165340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の熱硬化樹脂組成物は、成形性に優れ、銅箔との高接着性を維持しつつ、高耐熱性及び優れた誘電特性を達成し得るという特徴を有するものである。しかしながら、近年の微細配線化の進展に伴い、プリント配線板には、優れた誘電特性と共に、より一層優れたレーザー加工性が要求される。本発明者等の検討によると、特許文献1の技術は誘電特性に優れるものの、レーザー加工性については更なる改善の余地があることが判明している。
【0008】
そこで、本発明の課題は、誘電特性及びレーザー加工性に優れる熱硬化性樹脂組成物、並びに該熱硬化性樹脂組成物を用いたプリプレグ、銅張積層板、プリント配線板及び半導体パッケージを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究した結果、(A)芳香族ビニル化合物に由来する構造単位と無水マレイン酸に由来する構造単位とを有する共重合樹脂と、(B)エポキシ変性ポリブタジエンと、(C)活性エステル化合物と、(D)マレイミド化合物及びその変性物からなる群から選ばれる1種以上と、(E)脂環式骨格を含むエポキシ樹脂と、を含有してなる熱硬化性樹脂組成物が、上記の課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明は、下記[1]~[14]に関する。
[1](A)芳香族ビニル化合物に由来する構造単位と無水マレイン酸に由来する構造単位とを有する共重合樹脂と、
(B)エポキシ変性ポリブタジエンと、
(C)活性エステル化合物と、
(D)マレイミド化合物及びその変性物からなる群から選ばれる1種以上と、
(E)脂環式骨格を含むエポキシ樹脂と、
を含有してなる熱硬化性樹脂組成物。
[2]前記(A)成分が、下記一般式(A-i)で表される芳香族ビニル化合物に由来する構造単位と下記式(A-ii)で表される無水マレイン酸に由来する構造単位とを有する共重合樹脂である、上記[1]に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【化1】

(式中、RA1は、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基であり、RA2は、炭素数1~5のアルキル基、炭素数2~5のアルケニル基、炭素数6~20のアリール基、水酸基又は(メタ)アクリロイル基である。xは、0~3の整数である。)
[3]前記(B)成分が、下記一般式(B-1)で表されるエポキシ変性ポリブタジエンである、上記[1]又は[2]に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【化2】

(式中、a、b及びcはそれぞれ、括弧内の構造単位の比率を表しており、aは0.05~0.40、bは0.02~0.30、cは0.30~0.80であり、さらに、a+b+c=1.00、且つ(a+c)>bを満たす。yは、括弧内の構造単位の数を表し、10~250の整数である。)
[4]前記(C)成分が、多価カルボン酸化合物と、下記一般式(C1-1)~(C1-5)のいずれかで表されるフェノール性水酸基を有する芳香族化合物と、をエステル化してなる化合物である、上記[1]~[3]のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【化3】

(式中、k1及びk2は、各々独立に、0又は1である。)
[5]前記(D)成分が、1分子中に少なくとも2個のN-置換マレイミド基を有するマレイミド化合物を、(d1)酸性置換基を有するモノアミン化合物及び(d2)ジアミン化合物と反応させてなる化合物である、上記[1]~[4]のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
[6]前記(E)成分が含む脂環式骨格が、ジシクロペンタジエン骨格である、上記[1]~[5]のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
[7]前記(A)成分の含有量が、固形分換算の(A)~(E)成分の総和100質量部に対して、1~20質量部である、上記[1]~[6]のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
[8]前記(B)成分の含有量が、固形分換算の(A)~(E)成分の総和100質量部に対して、1~20質量部である、上記[1]~[7]のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
[9]前記(E)成分の含有量が、固形分換算の(A)~(E)成分の総和100質量部に対して、1~30質量部である、上記[1]~[8]のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
[10]さらに、(F)硬化促進剤、(G)難燃剤及び(H)無機充填材からなる群から選ばれる1種以上を含有してなる、上記[1]~[9]のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
[11]上記[1]~[10]のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物を含有してなるプリプレグ。
[12]上記[11]に記載のプリプレグと銅箔とを積層してなる銅張積層板。
[13]上記[12]に記載の銅張積層板を用いてなるプリント配線板。
[14]上記[13]に記載のプリント配線板を用いてなる、半導体パッケージ。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、誘電特性及びレーザー加工性に優れる熱硬化性樹脂組成物、並びに該熱硬化性樹脂組成物を用いたプリプレグ、銅張積層板、プリント配線板及び半導体パッケージを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[熱硬化性樹脂組成物]
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、
(A)芳香族ビニル化合物に由来する構造単位と無水マレイン酸に由来する構造単位とを有する共重合樹脂(以下、「(A)成分」又は「(A)共重合樹脂」ともいう)と、
(B)エポキシ変性ポリブタジエン(以下、「(B)成分」ともいう)と、
(C)活性エステル化合物(以下、「(C)成分」ともいう)と、
(D)マレイミド化合物及びその変性物からなる群から選ばれる1種以上(以下、「(D)成分」ともいう)と、
(E)脂環式骨格を含むエポキシ樹脂(以下、「(E)成分」ともいう)と、
を含有してなる熱硬化性樹脂組成物である。
以下、本発明の熱硬化性樹脂組成物が含有する各成分について詳細に説明する。
【0013】
<(A)共重合樹脂>
(A)成分は、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位と無水マレイン酸に由来する構造単位とを有する共重合樹脂である。本発明の熱硬化性樹脂組成物は、(A)成分を含有してなることにより、誘電特性に優れたものとなる。
(A)共重合樹脂は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記芳香族ビニル化合物としては、スチレン、1-メチルスチレン、4-メチルスチレン、ジメチルスチレン等が挙げられる。これらの中でも、スチレンが好ましい。
(A)成分としては、下記一般式(A-i)で表される芳香族ビニル化合物に由来する構造単位と下記式(A-ii)で表される無水マレイン酸に由来する構造単位とを有する共重合樹脂が好ましい。
【0014】
【化4】

(式中、RA1は、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基であり、RA2は、炭素数1~5のアルキル基、炭素数2~5のアルケニル基、炭素数6~20のアリール基、水酸基又は(メタ)アクリロイル基である。xは、0~3の整数である。)
【0015】
A1及びRA2が示す炭素数1~5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基等が挙げられる。該アルキル基の炭素数は、好ましくは1~3である。
A2が示す炭素数2~5のアルケニル基としては、アリル基、クロチル基等が挙げられる。該アルケニル基の炭素数は、好ましくは3又は4である。
A2が示す炭素数6~20のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ビフェニリル基等が挙げられる。該アリール基の炭素数は、好ましくは6~12、より好ましくは6~10である。
xは、0~3の整数であり、好ましくは0又は1、より好ましくは0である。xが2以上の整数である場合、複数のRA2は同一であっても異なっていてもよい。
上記一般式(A-i)で表される芳香族ビニル化合物に由来する構造単位においては、RA1が水素原子であり、且つxが0である下記式(A-i-1)で表される構造単位が好ましい。
【0016】
【化5】
【0017】
(A)共重合樹脂中における、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位と無水マレイン酸に由来する構造単位との含有量比[芳香族ビニル化合物に由来する構造単位/無水マレイン酸に由来する構造単位](モル比)は、好ましくは2~9、より好ましくは3~7、さらに好ましくは3~5である。該含有量比が2以上であると、誘電特性及び耐熱性の改善効果が十分となる傾向にあり、9以下であると、相容性が良好となる傾向にある。
(A)共重合樹脂中における、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位と無水マレイン酸に由来する構造単位との合計含有量は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、特に好ましくは実質的に100質量%である。
【0018】
(A)共重合樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは5,000~18,000、より好ましくは6,000~17,000、さらに好ましくは8,000~16,000、特に好ましくは10,000~16,000、最も好ましくは12,000~16,000である。なお、本明細書における重量平均分子量は、いずれも、溶離液としてテトラヒドロフランを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法(標準ポリスチレン換算)で測定された値である。
【0019】
(A)共重合樹脂は、芳香族ビニル化合物と無水マレイン酸とを共重合することにより製造することができる。また、芳香族ビニル化合物及び無水マレイン酸以外にも、各種の重合可能な成分を共重合させてもよい。各種の重合可能な成分としては、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソブチレン、アクリロニトリル等のビニル化合物;メチルアクリレート、メチルメタクリレート等の(メタ)アクリロイル基を有する化合物などが挙げられる。
また、上記共重合によって得られた共重合体に、フリーデル・クラフツ反応、又はリチウム等の金属系触媒を用いた反応を通じて、アリル基等のアルケニル基、(メタ)アクリロイル基、水酸基などの置換基(上記一般式(A-i)中のRA2に相当する。)を導入してもよい。
【0020】
(A)共重合樹脂としては、市販品を用いることもでき、市販品としては、「SMA(登録商標)EF30」(スチレン/無水マレイン酸=3、Mw=9,500)、「SMA(登録商標)EF40」(スチレン/無水マレイン酸=4、Mw=11,000)、「SMA(登録商標)EF60」(スチレン/無水マレイン酸=6、Mw=11,500)、「SMA(登録商標)EF80」(スチレン/無水マレイン酸=8、Mw=14,400)(以上、サートマー社製)等が挙げられる。これらの中でも、「SMA(登録商標)EF40」が好ましい。なお、上記「スチレン/無水マレイン酸」は、スチレンに由来する構造単位と無水マレインさんに由来する構造単位との含有量比[スチレン/無水マレイン酸]を意味する。
【0021】
<(B)エポキシ変性ポリブタジエン>
(B)成分は、エポキシ変性ポリブタジエンである。本発明の熱硬化性樹脂組成物は、(B)成分を含有してなることにより、誘電特性を維持したまま優れた銅箔との接着性を有するものとなる。
(B)成分は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0022】
(B)成分は、分子末端に水酸基を有するものが好ましく、分子両末端に水酸基を有するものがより好ましく、分子両末端にのみ水酸基を有するものがさらに好ましい。また、(B)成分が有する水酸基の数は、好ましくは1つ以上、より好ましくは1~5、さらに好ましくは1又は2、特に好ましくは2である。
(B)成分は、銅箔との接着性、耐熱性、熱膨張係数及び柔軟性の観点から、下記一般式(B-1)で表されるエポキシ変性ポリブタジエンであることが好ましい。
【0023】
【化6】

(式中、a、b及びcはそれぞれ、括弧内の構造単位の比率を表しており、aは0.05~0.40、bは0.02~0.30、cは0.30~0.80であり、さらに、a+b+c=1.00、且つ(a+c)>bを満たす。yは、括弧内の構造単位の数を表し、10~250の整数である。)
【0024】
上記一般式(B-1)中の各構造単位の結合順序は順不同である。つまり、左に示された構造単位と、中心に示された構造単位と、右に示された構造単位とは、入れ違っていてもよく、それぞれを、(a)、(b)、(c)で表すと、-[(a)-(b)-(c)]-[(a)-(b)-(c)-]-、-[(a)-(c)-(b)]-[(a)-(c)-(b)-]-、-[(b)-(a)-(c)]-[(b)-(a)-(c)-]-、-[(a)-(b)-(c)]-[(c)-(b)-(a)-]-、-[(a)-(b)-(a)]-[(c)-(b)-(c)-]-、-[(c)-(b)-(c)]-[(b)-(a)-(a)-]-など、種々の結合順序があり得る。
銅箔との接着性、耐熱性、熱膨張係数及び柔軟性の観点から、aは好ましくは0.10~0.30、bは好ましくは0.10~0.30、cは好ましくは0.40~0.80である。
【0025】
上記一般式(B-1)において、a=0.20、b=0.20、c=0.60、及びy=10~250の整数となるエポキシ化ポリブタジエンの市販品としては、「エポリード(登録商標)PB3600」(株式会社ダイセル製)等が挙げられ、柔軟性、耐衝撃性、機械的強度及び接着性の観点から、当該市販品を用いることが好ましい。
【0026】
(B)成分は、例えば、分子両末端に水酸基を有するポリブタジエンを、過酸化水素又は過酸類によりエポキシ化することによって容易に製造される。
原料である分子両末端に水酸基を有するポリブタジエンとしては、下記一般式(B’-1)で表される液状ポリブタジエンが好ましい。つまり、(B)エポキシ変性ポリブタジエンとしては、下記一般式(B’-1)で表される液状ポリブタジエンをエポキシ化して得られるものであることが好ましい。
【0027】
【化7】

(式中、a、b、c及びyは、上記記一般式(B-1)中のものと同じである。)
【0028】
原料である分子両末端に水酸基を有するポリブタジエンとしては、市販品を使用できる。市販品としては、「Poly.BD R-15HT」、「Poly.BD R-45HT」(以上、出光興産株式会社製のポリブタジエン)等が挙げられる。
このような水酸基を有するポリブタジエンは、水酸基を有し、且つ、ブタジエンの1,4-ビニル結合構造が1,2-ビニル結合構造よりも多く含まれること[(a+c)>b]により、接着剤に強靱性が付与されて、耐衝撃性及び銅箔との接着性が向上する傾向がある。
【0029】
<(C)活性エステル化合物>
(C)成分は活性エステル化合物である。本発明の熱硬化性樹脂組成物は、(C)成分を含有してなることにより、成形時の溶融粘度を低減することができ、特に優れた成形性が得られる傾向にある。
(C)活性エステル化合物としては、フェノールエステル化合物、チオフェノールエステル化合物、N-ヒドロキシアミンエステル化合物、複素環ヒドロキシ化合物のエステル化化合物等の反応活性の高いエステル基を有するものが挙げられる。
(C)活性エステル化合物は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
(C)活性エステル化合物は、1分子中に2個以上のエステル基を有する化合物が好ましい。
【0030】
(C)活性エステル化合物は、(c1)多価カルボン酸化合物(以下、「(c1)成分」ともいう)と(c2)フェノール性水酸基を有する芳香族化合物(以下、「(c2)成分」ともいう)と、をエステル化してなる化合物であることが好ましい。
なお、(c1)成分と(c2)成分とをエステル化してなる化合物とは、少なくとも(c1)成分が有する1つ以上の水酸基と、(c2)成分が有する1つ以上のカルボキシ基とがエステル化反応(縮合反応)をすることでエステル結合を形成してなる化合物である。このような(C)活性エステル化合物は、直鎖状又は多分岐状であってもよい。
【0031】
(c1)多価カルボン酸化合物は、1分子中に2個以上のカルボキシ基を有する化合物であり、該(c1)成分が、芳香族環を有する化合物であれば耐熱性を高くすることができる。(c1)多価カルボン酸化合物としては、安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。これらの中でも、耐熱性の観点から、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸が好ましく、イソフタル酸、テレフタル酸がより好ましい。
(c2)フェノール性水酸基を有する芳香族化合物としては、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、カテコール、α-ナフトール、β-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラック等が挙げられる。
【0032】
(c2)成分は、下記一般式(C1-1)~(C1-5)のいずれかで表されるフェノール性水酸基を有する芳香族化合物であることが好ましい。すなわち、(C)成分は、(c1)成分と、下記一般式(C1-1)~(C1-5)のいずれかで表されるフェノール性水酸基を有する芳香族化合物と、をエステル化してなる化合物であることが好ましく、下記一般式(C-1)で表される化合物であることがより好ましい。
【0033】
【化8】

(式中、k1及びk2は、各々独立に、0又は1である。)
【0034】
【化9】

(式中、RC1及びRC2は、各々独立に、上記一般式(C1-1)の残基、上記一般式(C1-2)の残基、上記一般式(C1-4)においてk1が1である化合物の残基、又は上記一般式(C1-5)においてk2が0である化合物の残基であり、nは1~5の整数である。なお、本明細書中、残基とは、原料成分から結合に供された官能基を除いた部分の構造を意味し、例えば、上記一般式(C1-1)~(C1-5)のいずれかで表されるフェノール性水酸基を有する芳香族化合物の残基とは、該芳香族化合物から、フェノール性水酸基を除いた部分の構造である。)
【0035】
(C)活性エステル化合物は、公知の方法により製造することができる。具体的には、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物との縮合反応によって得ることができる。また、(C)活性エステル化合物としては、特開2004-277460号公報に記載の活性エステル化合物を使用することもでき、市販のものを用いることもできる。
市販されている活性エステル化合物としては、ジシクロペンタジエニルジフェノール構造を含むもの、フェノールノボラックのアセチル化物、フェノールノボラックのベンゾイル化物等が好ましく、ジシクロペンタジエニルジフェノール構造を含むものがより好ましい。具体的には、「HPC-8000-65T」(DIC株式会社製、エステル基当量223g/mol)、「SHC-5600TM65」(SHIN-A社製、エステル基当量238g/mol)、「EXB9460S-65T」(DIC株式会社製、エステル基当量223g/mol)、「DC808」(三菱ケミカル株式会社製、エステル基当量149g/mol)、「YLH1026」(三菱ケミカル株式会社製、エステル基当量200g/mol)、「YLH1030」(三菱ケミカル株式会社製、エステル基当量201g/mol)、「YLH1048」(三菱ケミカル株式会社製、エステル基当量245g/mol)等が挙げられる。
【0036】
<(D)マレイミド化合物及びその変性物からなる群から選ばれる1種以上>
(D)成分は、マレイミド化合物及びその変性物からなる群から選ばれる1種以上である。本発明の熱硬化性樹脂組成物は、(D)成分を含有してなることにより、特に銅箔との接着性が向上する傾向にある。
(D)成分としては、1分子中に少なくとも2個のN-置換マレイミド基を有する化合物及びその変性物からなる群から選ばれる1種以上が好ましい。
(D)成分は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、以下、「(D)マレイミド化合物」との表記は、(D)成分であるマレイミド化合物と、(D)成分であるマレイミド化合物の変性物の原料として用いられる変性前のマレイミド化合物の両者を指すものとする。
【0037】
(D)成分の重量平均分子量(Mw)は、有機溶媒への溶解性の観点及び機械強度の観点から、好ましくは400~3,000、より好ましくは500~2,000、さらに好ましくは700~1,500である。
【0038】
(D)マレイミド化合物としては、例えば、複数のマレイミド基のうちの任意の2個のマレイミド基の間に脂肪族炭化水素基を有するマレイミド化合物(以下、「脂肪族炭化水素基含有マレイミド」ともいう)、複数のマレイミド基のうちの任意の2個のマレイミド基の間に芳香族炭化水素基を含有するマレイミド化合物(以下、「芳香族炭化水素基含有マレイミド」ともいう)等が挙げられる。これらの中でも、銅箔との接着性、耐熱性及びガラス転移温度の観点から、芳香族炭化水素基含有マレイミドが好ましい。芳香族炭化水素基含有マレイミドは、任意に選択した2つのマレイミド基の組み合わせのいずれかの間に芳香族炭化水素基を含有していればよい。
(D)マレイミド化合物としては、銅箔との接着性、耐熱性及びガラス転移温度の観点から、1分子中に2個~5個のN-置換マレイミド基を有するマレイミド化合物が好ましく、1分子中に2個のN-置換マレイミド基を有するマレイミド化合物がより好ましい。
【0039】
(D)マレイミド化合物としては、N,N’-エチレンビスマレイミド、N,N’-ヘキサメチレンビスマレイミド、ビス(4-マレイミドシクロヘキシル)メタン、1,4-ビス(マレイミドメチル)シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素基含有マレイミド;m-フェニレンビスマレイミド、N,N’-(2-メチル-1,3-フェニレン)ビスマレイミド、N,N’-(4-メチル-1,3-フェニレン)ビスマレイミド、N,N’-(1,4-フェニレン)ビスマレイミド、4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、ビス(3-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、ビス(4-マレイミドフェニル)エーテル、ビス(4-マレイミドフェニル)スルホン、ビス(4-マレイミドフェニル)スルフィド、ビス(4-マレイミドフェニル)ケトン、1,4-ビス(4-マレイミドフェニル)シクロヘキサン、1,4-ビス(マレイミドメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(4-マレイミドフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-マレイミドフェノキシ)ベンゼン、ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]メタン、1,1-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、1,1-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、1,2-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、1,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、2,2-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、4,4-ビス(3-マレイミドフェノキシ)ビフェニル、4,4-ビス(4-マレイミドフェノキシ)ビフェニル、ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]ケトン、2,2’-ビス(4-マレイミドフェニル)ジスルフィド、ビス(4-マレイミドフェニル)ジスルフィド、ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]エーテル、1,4-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)-3,5-ジメチル-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)-3,5-ジメチル-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)-3,5-ジメチル-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)-3,5-ジメチル-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、ポリフェニルメタンマレイミド等の芳香族炭化水素基含有マレイミドなどが挙げられる。
【0040】
(D)マレイミド化合物は、銅箔との接着性、耐熱性及びガラス転移温度の観点から、下記一般式(D1-1)で表されるマレイミド化合物(D1)を含有することが好ましい。
【0041】
【化10】

(式中、RD1及びRD2は、各々独立に、炭素数1~5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子であり、XD1は、炭素数1~5のアルキレン基、炭素数2~5のアルキリデン基、-O-、-C(=O)-、-S-、-S-S-又はスルホニル基である。p及びqは、各々独立に、0~4の整数である。)
【0042】
D1及びRD2が示す炭素数1~5の脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基等が挙げられる。これらの中でも、銅箔との接着性、耐熱性、ガラス転移温度の観点から、好ましくはメチル基、エチル基である。該脂肪族炭化水素基の炭素数は、好ましくは1~3である。
D1及びRD2が示すハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0043】
D1が示す炭素数1~5のアルキレン基としては、メチレン基、1,2-ジメチレン基、1,3-トリメチレン基、1,4-テトラメチレン基、1,5-ペンタメチレン基等が挙げられる。これらの中でも、銅箔との接着性、耐熱性、誘電特性、ガラス転移温度、熱膨張係数及び成形性の観点から、好ましくはメチレン基である。該アルキレン基の炭素数は、好ましくは1~3である。
D1が示す炭素数2~5のアルキリデン基としては、エチリデン基、プロピリデン基、イソプロピリデン基、ブチリデン基、イソブチリデン基、ペンチリデン基、イソペンチリデン基等が挙げられる。これらの中でも、銅箔との接着性、耐熱性、誘電特性、ガラス転移温度、熱膨張係数及び成形性の観点から、イソプロピリデン基が好ましい。
D1としては、上記選択肢の中でも、炭素数1~5のアルキレン基、炭素数2~5のアルキリデン基が好ましく、炭素数1~5のアルキレン基がより好ましい。さらに好ましいものは前述の通りである。
p及びqは、各々独立に、0~4の整数であり、銅箔との接着性、耐熱性、誘電特性、ガラス転移温度、熱膨張係数及び成形性の観点から、いずれも、好ましくは0~2の整数、より好ましくは0又は1、さらに好ましくは0である。p又はqが2以上の整数である場合、複数のRD1同士又は複数のRD2同士は、同一であっても異なっていてもよい。
【0044】
さらに、(D)マレイミド化合物は、銅箔との接着性、耐熱性、ガラス転移温度、誘電特性、熱膨張係数及び成形性の観点から、下記一般式(D2-1)~(D2-3)のいずれかで表されるマレイミド化合物(D2)を含有することが好ましい。
【0045】
【化11】

(式中、sは、0~10の整数である。)
【0046】
上記一般式(D2-1)中、sは、0~10の整数であり、入手容易性の観点から、好ましくは0~5の整数、より好ましくは0~3の整数である。特に、上記一般式(D2-1)で表される芳香族炭化水素基含有マレイミド化合物は、s=0~3の混合物であることが好ましい。
【0047】
(D)マレイミド化合物が、上記一般式(D1-1)で表されるマレイミド化合物(D1)と、上記一般式(D2-1)~(D2-3)のいずれかで表されるマレイミド化合物(D2)と、を含有する場合、マレイミド化合物(D1)とマレイミド化合物(D2)との含有量比(質量比)は、30:70~97:3が好ましく、50:50~95:5がより好ましく、70:30~90:10がさらに好ましい。なお、後述するプレ反応を行う場合においても、その原料として使用する(D)マレイミド化合物の組成が上記含有量比を満たすことが好ましい。
【0048】
(D)成分は、銅箔との接着性、耐熱性、誘電特性、ガラス転移温度、熱膨張係数及び成形性の観点から、上記マレイミド化合物の変性物であってもよい。
マレイミド化合物の変性物としては、(D)マレイミド化合物を、(d1)酸性置換基を有するモノアミン化合物(以下、「(d1)成分」ともいう)及び(d2)ジアミン化合物(以下、「(d2)成分」ともいう)からなる群から選ばれる1種以上と反応(以下、「プレ反応」ともいう)させてなるものが好ましく、マレイミド化合物(D1)及びマレイミド化合物(D2)からなる群から選ばれる1種以上のマレイミド化合物を、(d1)成分及び(d2)成分からなる群から選ばれる1種以上と反応させてなる化合物がより好ましく、マレイミド化合物(D1)及びマレイミド化合物(D2)を、(d1)成分及び(d2)成分と反応させてなる化合物がさらに好ましい。
【0049】
((d1)酸性置換基を有するモノアミン化合物)
(d1)成分は、下記一般式(d1-1)で表される化合物であることが好ましい。
【0050】
【化12】

(式中、Rd1は、水酸基、カルボキシ基及びスルホン酸基からなる群から選ばれる酸性置換基であり、Rd2は、炭素数1~5のアルキル基又はハロゲン原子である。tは1~5の整数、uは0~4の整数であり、且つ、1≦t+u≦5を満たす。)
【0051】
d1が示す酸性置換基としては、溶解性及び反応性の観点から、好ましくは水酸基、カルボキシ基であり、耐熱性も考慮すると、より好ましくは水酸基である。
tは1~5の整数であり、銅箔との接着性、耐熱性、誘電特性、ガラス転移温度、熱膨張係数及び成形性の観点から、好ましくは1~3の整数、より好ましくは1又は2、さらに好ましくは1である。tが2以上の整数である場合、複数のRd1は同一であっても異なっていてもよい。
d2が示す炭素数1~5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基等が挙げられる。該アルキル基の炭素数は、好ましくは1~3である。
d2が示すハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
uは0~4の整数であり、銅箔との接着性、耐熱性、誘電特性、ガラス転移温度、熱膨張係数及び成形性の観点から、好ましくは0~3の整数、より好ましくは0~2の整数、さらに好ましくは0又は1、特に好ましくは0である。uが2以上の整数である場合、複数のRd2は同一であっても異なっていてもよい。
(d1)成分としては、銅箔との接着性、耐熱性、誘電特性、ガラス転移温度、熱膨張係数及び成形性の観点から、より好ましくは下記一般式(d1-1’)又は(d1-1’’)で表されるモノアミン化合物であり、さらに好ましくは下記一般式(d1-1’’)で表されるモノアミン化合物である。但し、一般式(d1-1’)又は(d1-1’’)中のRd1、Rd2及びuは、一般式(d1-1)中のものと同じであり、好ましいものも同じである。
【0052】
【化13】
【0053】
(d1)成分としては、o-アミノフェノール、m-アミノフェノール、p-アミノフェノール、o-アミノ安息香酸、m-アミノ安息香酸、p-アミノ安息香酸、o-アミノベンゼンスルホン酸、m-アミノベンゼンスルホン酸、p-アミノベンゼンスルホン酸、3,5-ジヒドロキシアニリン、3,5-ジカルボキシアニリン等が挙げられる。これらの中でも、溶解性及び反応性の観点からは、m-アミノフェノール、p-アミノフェノール、p-アミノ安息香酸、3,5-ジヒドロキシアニリンが好ましく、耐熱性の観点からは、o-アミノフェノール、m-アミノフェノール、p-アミノフェノールが好ましく、誘電特性、熱膨張係数及び製造コストも考慮すると、p-アミノフェノールがより好ましい。
(d1)成分は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0054】
((d2)ジアミン化合物)
(d2)成分は、少なくとも2個のベンゼン環を有するジアミン化合物が好ましく、2つのアミノ基の間に少なくとも2個のベンゼン環を直鎖状に有するジアミン化合物がより好ましく、下記一般式(d2-1)~(d2-3)のいずれかで表されるジアミン化合物がさらに好ましい。すなわち、マレイミド化合物(D1)及びマレイミド化合物(D2)を、(d1)成分及び(d2)成分と反応させてなる化合物は、(d1)成分が上記一般式(d1-1)で表され、(d2)成分が下記一般式(d2-1)~(d2-3)のいずれかで表されるものであることが好ましい。
【0055】
【化14】

(式中、Xd1は、単結合、炭素数1~5のアルキレン基、炭素数2~5のアルキリデン基、-O-、スルホニル基、-C(=O)-、フルオレニレン基又はフェニレンジオキシ基であり、Rd3及びRd4は、各々独立に、炭素数1~5のアルキル基、炭素数1~5のアルコキシ基、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基又はスルホン酸基である。v及びwは、各々独立に、0~4の整数である。
d2及びXd3は、各々独立に、単結合、炭素数1~5のアルキレン基、炭素数2~5のアルキリデン基、-O-又はスルホニル基である。)
【0056】
d1が示す炭素数1~5のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、プロピリデン基等が挙げられる。該アルキレン基としては、炭素数1~3のアルキレン基が好ましく、メチレン基がより好ましい。
d1が示す炭素数2~5のアルキリデン基としては、エチリデン基、プロピリデン基、イソプロピリデン基、ブチリデン基、イソブチリデン基、ペンチリデン基、イソペンチリデン基等が挙げられる。該アルキリデン基としては、イソプロピリデン基が好ましい。
d1としては、単結合、炭素数1~5のアルキレン基、-O-が好ましく、メチレン基、-O-がより好ましい。
【0057】
d3及びRd4が示す炭素数1~5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基等が挙げられる。該アルキル基の炭素数は、好ましくは1~3である。
d3及びRd4が示す炭素数1~5のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等が挙げられる。該アルコキシ基としては、メトキシ基が好ましい。
d3及びRd4が示すハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
v及びwは、各々独立に、好ましくは0~2の整数、より好ましくは0又は1、さらに好ましくは0である。
【0058】
d2及びXd3が示す炭素数1~5のアルキレン基、炭素数2~5のアルキリデン基としては、上記一般式(d2-1)中のXd1と同様に説明される。
d2としては、単結合、炭素数2~5のアルキリデン基、スルホニル基が好ましい。
d3としては、炭素数2~5のアルキリデン基が好ましく、イソプロピリデン基がより好ましい。
【0059】
(d2)成分としては、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチル-ジフェニルメタン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジエチル-ジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルケトン、ベンジジン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジヒドロキシベンジジン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンジアミン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、1,3-ビス[1-(4-アミノフェニル)-1-メチルエチル]ベンゼン、1,4-ビス[1-(4-アミノフェニル)-1-メチルエチル]ベンゼン等が挙げられる。これらの中でも、反応性、銅箔との接着性及び誘電特性の観点からは、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチル-ジフェニルメタン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジエチル-ジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、1,3-ビス[1-(4-アミノフェニル)-1-メチルエチル]ベンゼン、1,4-ビス[1-(4-アミノフェニル)-1-メチルエチル]ベンゼンが好ましく、4,4’-ジアミノジフェニルメタンがより好ましい。また、製造コストの観点からは、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチル-ジフェニルメタン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジエチル-ジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテルが好ましく、4,4’-ジアミノジフェニルメタンがより好ましい。
(d2)成分は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0060】
上記プレ反応は、好ましくは後述の有機溶媒の存在下、反応温度70~200℃で0.1~10時間反応させることにより実施することが好ましい。
反応温度は、より好ましくは70~160℃、さらに好ましくは70~130℃、特に好ましくは80~120℃である。反応時間は、より好ましくは1~6時間、さらに好ましくは2~5時間である。
【0061】
上記プレ反応における(d1)成分の使用量は、(D)マレイミド化合物のモル数を合計で1とすると、(d1)成分のモル数が、0.2~0.5の範囲で使用されることが好ましい。(d1)成分の使用量が0.2以上であると、反応性の低下を抑制できる傾向にあり、0.5以下であると、耐熱性、誘電特性及びガラス転移温度が良好となる傾向にある。
(d2)成分の使用量は、(D)マレイミド化合物のモル数を合計で1とすると、(d2)成分のモル数が、0.05~0.25の範囲で使用されることが好ましい。(d2)成分の使用量が0.05以上であると、反応性の低下を抑制できる傾向にあり、0.25以下であると、耐熱性及び誘電特性が良好となる傾向にある。
【0062】
(D)マレイミド化合物、(d1)成分及び(d2)成分の反応において、三者の使用量は、(d1)成分及び(d2)成分が有する第1級アミノ基当量[-NH基当量と記す]の総和と、(D)マレイミド化合物のマレイミド基当量の総和との関係が、下記式を満たすことが好ましい。
1.5≦〔マレイミド基当量の総和〕/〔-NH基当量の総和〕≦10
〔マレイミド基当量総和〕/〔-NH基当量の総和〕を1.5以上とすることにより、ゲル化し難く、且つ耐熱性が低下し難い傾向にあり、また、10以下とすることにより、有機溶媒への溶解性、銅箔との接着性及び耐熱性が低下し難い傾向にあるため、好ましい。
同様の観点から、より好ましくは、
2≦〔マレイミド基当量の総和〕/〔-NH基当量の総和〕≦8 を満たし、
より好ましくは、
3≦〔マレイミド基当量の総和〕/〔-NH基当量の総和〕≦6 を満たす。
さらに好ましくは、
4≦〔マレイミド基当量の総和〕/〔-NH基当量の総和〕≦6 を満たす。
【0063】
(有機溶媒)
上記プレ反応に用いる有機溶媒としては、当該反応に悪影響を及ぼさない限り特に制限はない。有機溶媒としては、エタノール、プロパノール、ブタノール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族系溶媒;ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド系溶媒を包含する窒素原子含有溶媒;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒を包含する硫黄原子含有溶媒;酢酸エチル、γ-ブチロラクトン等のエステル系溶媒などが挙げられる。これらの中でも、溶解性に優れ、揮発性が高く、プリプレグの製造時に残溶媒として残り難いという観点から、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、N,N-ジメチルアセトアミドが好ましく、N,N-ジメチルアセトアミドがより好ましい。
有機溶媒は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0064】
有機溶媒の使用量は、溶解性及び反応効率の観点から、(D)マレイミド化合物、(d1)成分及び(d2)成分の合計100質量部に対して、好ましくは25~1,000質量部、より好ましくは40~250質量部、さらに好ましくは50~150質量部である。有機溶媒の使用量が上記下限値以上であると、溶解性を確保し易くなる傾向にあり、上記上限値以下であると、反応効率の大幅な低下を抑制し易い傾向にある。
【0065】
上記プレ反応は、必要に応じて、反応触媒の存在下で実施してもよい。反応触媒としては、トリエチルアミン、ピリジン、トリブチルアミン等のアミン系触媒;メチルイミダゾール、フェニルイミダゾール等のイミダゾール系触媒;トリフェニルホスフィン等のリン系触媒などが挙げられる。
反応触媒は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0066】
<(E)脂環式骨格を含むエポキシ樹脂>
(E)成分は脂環式骨格を含むエポキシ樹脂である。本発明の熱硬化性樹脂組成物は、(E)成分を含有することにより、誘電特性及びレーザー加工性に優れたものとなる。
(E)成分は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0067】
(E)成分が有する脂環式骨格としては、環形成炭素数5~20の脂環式骨格が好ましく、環形成炭素数5~18の脂環式骨格がより好ましく、環形成炭素数6~18の脂環式骨格がさらに好ましく、環形成炭素数8~14の脂環式骨格が特に好ましく、環形成炭素数8~12の脂環式骨格が最も好ましい。
また、上記脂環式骨格は、2環以上からなることが好ましく、2~4環からなることがより好ましく、3環からなることがさらに好ましい。2環以上の脂環式骨格としては、ノルボルナン骨格、デカリン骨格、ビシクロウンデカン骨格、ジシクロペンタジエン骨格等が挙げられる。
上記脂環式骨格としては、ジシクロペンタジエン骨格が好ましく、下記一般式(E-1)で表される脂環式骨格がより好ましい。
【0068】
【化15】

(式中、RE1は炭素数1~12のアルキル基であり、上記脂環式骨格中のどこに置換していてもよい。mE1は0~6の整数である。*は他の構造への結合部位である。)
【0069】
上記一般式(E-1)中、RE1が表す炭素数1~12のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基等が挙げられる。該アルキル基としては、炭素数1~6のアルキル基が好ましく、炭素数1~3のアルキル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。
E1は0~6の整数であり、0~2の整数が好ましく、0がより好ましい。
E1が2~6の整数である場合、複数のRE1はそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。さらに、複数のRE1は、可能な範囲で同一炭素原子上に置換していてもよいし、異なる炭素原子上に置換していてもよい。
*は他の構造への結合部位であり、脂環式骨格上のいずれの炭素原子で結合されていてもよいが、下記一般式(E-1’)中の1又は2で示される炭素原子と、3~4のいずれかで示される炭素原子にて結合されていることが好ましい。
【0070】
【化16】

(式中、RE1、mE1及び*は、上記一般式(E-1)中のものと同じである。)
【0071】
(E)成分は、脂環式骨格を有するエポキシ樹脂であれば特に限定されないが、2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であることが好ましい。(E)成分は、グリシジルエーテルタイプのエポキシ樹脂、グリシジルアミンタイプのエポキシ樹脂、グリシジルエステルタイプのエポキシ樹脂等に分類される。これらの中でも、グリシジルエーテルタイプのエポキシ樹脂が好ましい。
【0072】
(E)成分としては、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂が好ましい。
ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂としては、下記一般式(E-2)で表される構造単位を有するものが好ましい。
【0073】
【化17】
【0074】
上記一般式(E-2)で表される構造単位を有するエポキシ樹脂中の該構造単位の構造単位数は、1以上の数であり、好ましくは1~10の数、より好ましくは3~7の数である。
ここで構造単位数は、単一の分子においては整数値を示し、複数種の分子の集合体においては平均値である有理数を示す。以下、構造単位数については同様である。
【0075】
上記一般式(E-2)で表される構造単位を有するエポキシ樹脂としては、下記一般式(E-3)で表されるものが好ましい。
【0076】
【化18】

(式中、nE1は、1以上の数である)
【0077】
上記一般式(E-3)中のnE1は、1以上の数であり、好ましくは1~10、より好ましくは3~7である。nE1が上記範囲内であると、解像性及び内層回路との密着性がより向上する傾向にある。
【0078】
上記一般式(E-3)で表されるエポキシ樹脂は、例えば、HP-7200H(DIC株式会社製、商品名)、XD-1000(日本化薬株式会社製、商品名)として商業的に入手可能である。
【0079】
また、(E)成分としては、下記一般式(E-4)で表されるエポキシ樹脂も好ましく挙げられる。
【0080】
【化19】
【0081】
上記一般式(E-4)で表されるエポキシ樹脂は、例えば、アデカレジンEP-4088S、EP-4088L(いずれも株式会社ADEKA製、商品名)として商業的に入手可能である。
【0082】
〔熱硬化性樹脂組成物中の(A)成分~(E)成分の含有量〕
本発明の熱硬化性樹脂組成物中における各成分の含有量について説明する。以下の含有量の説明において、各成分は必ずしもそのままの構造で熱硬化性樹脂組成物中に含有されているわけではなく、つまり反応している成分もあるが、ここでは便宜上、各成分の使用量を「含有量」と称する。
本発明の熱硬化性樹脂組成物中における(A)成分の含有量は、固形分換算の(A)~(E)成分の総和100質量部に対して、好ましくは1~20質量部、より好ましくは3~15質量部、さらに好ましくは4~10質量部、特に好ましくは5~9質量部である。(A)成分の含有量が上記下限値以上であると、誘電特性が良好となる傾向にあり、さらに溶解性が確保されて樹脂ワニス製作時に析出し難い傾向にあり、上記上限値以下であると、未反応成分が残り難いため、銅箔との接着性の低下を抑制できる傾向にある。
本発明の熱硬化性樹脂組成物中における(B)成分の含有量は、固形分換算の(A)~(E)成分の総和100質量部に対して、好ましくは1~20質量部、より好ましくは2~15質量部、さらに好ましくは3~12質量部、特に好ましくは4~7質量部である。(B)成分の含有量が上記下限値以上であると、銅箔との接着性が良好となる傾向にあり、上記上限値以下であると、耐熱性が良好となる傾向にある。
本発明の熱硬化性樹脂組成物中における(C)成分の含有量は、固形分換算の(A)~(E)成分の総和100質量部に対して、好ましくは1~25質量部、より好ましくは3~20質量部、さらに好ましくは4~17質量部である。(C)成分の含有量が上記下限値以上であると、成形性が良好となる傾向にあり、上記上限値以下であると、銅箔との接着性が良好となる傾向にある。
本発明の熱硬化性樹脂組成物中における(D)成分の含有量は、固形分換算の(A)~(E)成分の総和100質量部に対して、好ましくは40~85質量部、より好ましくは45~80質量部、さらに好ましくは50~75質量部である。(D)成分の含有量が上記下限値以上であると、耐熱性に優れる傾向にあり、上記上限値以下であると、熱硬化性樹脂組成物の流動性及び成形性が良好となる傾向にある。
本発明の熱硬化性樹脂組成物中における(E)成分の含有量は、固形分換算の(A)~(E)成分の総和100質量部に対して、好ましくは1~30質量部、より好ましくは2~20質量部、さらに好ましくは3~15質量部、特に好ましくは3~12質量部である。(E)成分の含有量が上記下限値以上であると、耐熱性に優れる傾向にあり、上記上限値以下であると、熱硬化性樹脂組成物の流動性及び成形性が良好となる傾向にある。
【0083】
<その他の成分>
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、(A)~(E)成分以外のその他の成分を含有してなるものであってもよい。その他の成分としては、例えば、(F)硬化促進剤、(G)難燃剤、(H)無機充填材、着色剤、酸化防止剤、還元剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、密着性向上剤、有機充填材等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、(A)~(E)成分に加えて、さらに、(F)硬化促進剤、(G)難燃剤及び(H)無機充填材からなる群から選ばれる1種以上を含有してなるものであることが好ましい。
【0084】
((F)硬化促進剤)
本発明の熱硬化性樹脂組成物に、(F)硬化促進剤(以下、「(F)成分」ともいう)を含有させることにより、硬化反応を促進させることができる。
(F)成分としては、イミダゾール類及びその誘導体;ホスフィン類及びホスホニウム塩、第三級ホスフィンとキノン類との付加物等の有機リン系化合物;第二級アミン、第三級アミン、第四級アンモニウム塩などが挙げられる。これらの中でも、銅箔との接着性、耐熱性及び難燃性の観点から、イミダゾール類及びその誘導体が好ましい。
(F)成分は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明の熱硬化性樹脂組成物が(F)成分を含有してなるものである場合、その含有量は、硬化促進効果及び保存安定性の観点から、固形分換算の(A)成分、(C)成分及び(E)成分の総和100質量部に対して、好ましくは0.01~3質量部、より好ましくは0.1~2質量部、さらに好ましくは0.5~1.5質量部である。
【0085】
((G)難燃剤)
本発明の熱硬化性樹脂組成物に、難燃剤を含有させることにより、難燃性が向上する。
(G)難燃剤としては、熱分解温度が300℃未満の水酸化アルミニウム及び水酸化マグネシウム等の金属水和物;臭素、塩素等を含有する含ハロゲン系難燃剤;リン系難燃剤;スルファミン酸グアニジン、硫酸メラミン、ポリリン酸メラミン、メラミンシアヌレート等の窒素系難燃剤;シクロホスファゼン、ポリホスファゼン等のホスファゼン系難燃剤;三酸化アンチモン、モリブデン酸亜鉛等の無機系難燃助剤などが挙げられる。これらの中でも、環境保護の観点から、含ハロゲン系難燃剤以外の難燃剤が好ましく、耐熱性、銅箔との接着性、弾性率、熱膨張係数等の低下が少なく、且つ高難燃性を付与する観点からは、リン系難燃剤がより好ましい。
リン系難燃剤としては、無機系のリン系難燃剤と、有機系のリン系難燃剤がある。
無機系のリン系難燃剤としては、赤リン;リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等のリン酸アンモニウム;リン酸アミド等の無機系含窒素リン化合物;リン酸;ホスフィンオキシドなどが挙げられる。
有機系のリン系難燃剤としては、芳香族リン酸エステル、1置換ホスホン酸ジエステル、2置換ホスフィン酸エステル、2置換ホスフィン酸の金属塩、有機系含窒素リン化合物、環状有機リン化合物、リン含有フェノール樹脂等が挙げられる。これらの中でも、芳香族リン酸エステル、2置換ホスフィン酸の金属塩が好ましい。ここで、金属塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩、チタン塩、亜鉛塩のいずれかが好ましく、アルミニウム塩がより好ましい。
これらのリン系難燃剤の中でも、誘電特性及びガラス転移温度の観点から、芳香族リン酸エステル及び2置換ホスフィン酸の金属塩からなる群から選ばれる1種以上がより好ましい。
【0086】
芳香族リン酸エステルとしては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、クレジルジ-2,6-キシレニルホスフェート、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、1,3-フェニレンビス(ジ-2,6-キシレニルホスフェート)、ビスフェノールA-ビス(ジフェニルホスフェート)、1,3-フェニレンビス(ジフェニルホスフェート)等が挙げられる。
2置換ホスフィン酸の金属塩としては、ジアルキルホスフィン酸の金属塩、ジアリルホスフィン酸の金属塩、ジビニルホスフィン酸の金属塩、ジアリールホスフィン酸の金属塩等が挙げられる。
(G)難燃剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0087】
本発明の熱硬化性樹脂組成物が(G)難燃剤を含有してなるものである場合、その含有量は、難燃性の観点から、固形分換算の(A)~(E)成分の総和100質量部に対して、好ましくは0.01~15質量部、より好ましくは0.1~10質量部、さらに好ましくは1~8質量部である。
【0088】
((H)無機充填材)
本発明の熱硬化性樹脂組成物に、(H)無機充填材を含有させることにより、熱膨張係数を低減し、弾性率、耐熱性及び難燃性を向上させることができる。
(H)無機充填材としては、シリカ、アルミナ、酸化チタン、マイカ、ベリリア、チタン酸バリウム、チタン酸カリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、炭酸アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、焼成クレー等のクレー、タルク、ホウ酸アルミニウム、炭化ケイ素、石英粉末、ガラス短繊維、ガラス微粉末、中空ガラスなどが挙げられる。ガラスとしては、Eガラス、Tガラス、Dガラス等が好ましく挙げられる。これらの中でも、銅箔との接着性、耐熱性及び難燃性の観点からは、シリカ、アルミナ、マイカ、タルクが好ましく、シリカ、アルミナがより好ましく、シリカがさらに好ましい。
シリカとしては、破砕シリカ、フュームドシリカ、球状シリカ等が挙げられる。シリカは、熱膨張係数、及び熱硬化性樹脂組成物へ充填した際の流動性の観点から、球状シリカが好ましい。
【0089】
(H)無機充填材の平均粒子径に特に制限はないが、0.01~30μmが好ましく、0.1~10μmがより好ましく、0.5~6μmがさらに好ましい。シリカの平均粒子径を0.01μm以上にすることで、高充填した際にも流動性を良好に保てる傾向にあり、また、30μm以下にすることで、粗大粒子の混入確率を減らして粗大粒子に起因する不良の発生を抑えることができる傾向にある。ここで、平均粒子径とは、粒子の全体積を100%として粒子径による累積度数分布曲線を求めたとき、体積50%に相当する点の粒子径のことであり、レーザー回折散乱法を用いた粒度分布測定装置等で測定することができる。
また、(H)無機充填材の比表面積は、好ましくは4m/g以上、より好ましくは4~9m/g、さらに好ましくは5~7m/gである。
(H)無機充填材は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0090】
(H)無機充填材は、カップリング剤で表面処理されたものであってもよい。つまり、直接、シリカ等の(H)無機充填材に乾式又は湿式で表面処理した後、配合時にそのまま又はスラリー化して用いる方法を採用することも好ましい。一方、樹脂組成物中に表面未処理のシリカ等の(H)無機充填材を配合した後、表面処理剤を樹脂組成物中に添加する、いわゆるインテグラルブレンド処理方式を採用してもよい。
【0091】
本発明の熱硬化性樹脂組成物が(H)無機充填材を含有してなるものである場合、その含有量は、難燃性の観点から、固形分換算の(A)~(E)成分の総和100質量部に対して、好ましくは20~110質量部、より好ましくは30~90質量部、さらに好ましくは40~80質量部、特に好ましくは45~75質量部である。
【0092】
(有機溶媒)
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、希釈することによって取り扱いを容易にするという観点及び後述するプリプレグを製造し易くするという観点から、有機溶媒を含有させてもよい。なお、本明細書では、有機溶媒を含有させた熱硬化性樹脂組成物を、樹脂ワニスと称することがある。
該有機溶媒としては、メタノール、エタノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族系溶媒;ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等の窒素原子含有溶媒;ジメチルスルホキシド等の硫黄原子含有溶媒;メトキシエチルアセテート、エトキシエチルアセテート、ブトキシエチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸エチル、γ-ブチロラクトン等のエステル系溶媒などが挙げられる。
これらの中でも、溶解性の観点から、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、芳香族系溶媒、窒素原子含有溶媒が好ましく、メチルエチルケトンがより好ましい。
有機溶媒は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明の熱硬化性樹脂組成物における有機溶媒の含有量は、熱硬化性樹脂組成物の取り扱いが容易になる程度に適宜調整すればよく、また、樹脂ワニスの塗工性が良好となる範囲であれば特に制限はないが、熱硬化性樹脂組成物の固形分濃度(有機溶媒以外の成分の濃度)が、好ましくは30~90質量%、より好ましくは40~80質量%、さらに好ましくは50~70質量%となるようにする。
【0093】
(熱硬化性樹脂組成物の物性及び特性)
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、Bステージ状態で低い溶融粘度を有し、プレス成形性が良好かつ銅箔との接着性、誘電特性等に優れている。また、該熱硬化性樹脂組成物は、有機溶媒に対する溶解性にも優れている。
本発明の熱硬化性樹脂組成物の誘電特性は、実施例に記載の方法によって測定した比誘電率でいうと、好ましくは4.05以下、より好ましくは4.00以下、さらに好ましくは3.98以下である。また、実施例に記載の方法によって測定した誘電正接は、好ましくは0.0080以下、より好ましくは0.0070以下、さらに好ましくは0.0068以下である。
本発明の熱硬化性樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)は、実施例に記載の方法によって測定したTgでいうと、好ましくは180℃以上、より好ましくは200℃以上、さらに好ましくは210℃以上である。
【0094】
[プリプレグ]
本発明のプリプレグは、本発明の熱硬化性樹脂組成物を含有してなるものである。
本発明のプリプレグは、上記熱硬化性樹脂組成物をシート状補強基材に含浸又は塗工し、加熱等により半硬化(Bステージ化)させて製造することができる。
プリプレグのシート状補強基材としては、各種の電気絶縁材料用積層板に用いられている周知のものが使用できる。シート状補強基材の材質としては、紙、コットンリンター等の天然繊維;ガラス繊維及びアスベスト等の無機物繊維;アラミド、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン、アクリル等の有機繊維;これらの混合物などが挙げられる。これらの中でも、難燃性の観点から、ガラス繊維が好ましい。ガラス繊維基材としては、Eガラス、Cガラス、Dガラス、Sガラス等を用いた織布又は短繊維を有機バインダーで接着したガラス織布;ガラス繊維とセルロース繊維とを混沙したもの等が挙げられる。より好ましくは、Eガラスを使用したガラス織布である。
これらのシート状補強基材は、織布、不織布、ロービンク、チョップドストランドマット、サーフェシングマット等の形状を有する。なお、材質及び形状は、目的とする成形物の用途及び性能により選択され、1種を単独で使用してもよいし、必要に応じて、2種以上の材質及び形状を組み合わせることもできる。
【0095】
熱硬化性樹脂組成物をシート状補強基材に含浸又は塗工させる方法としては、次のホットメルト法又はソルベント法が好ましい。
ホットメルト法は、熱硬化性樹脂組成物に実質的に有機溶媒を含有させず、(1)該組成物との剥離性の良い塗工紙に一旦コーティングし、それをシート状補強基材にラミネートする方法、又は(2)ダイコーターによりシート状補強基材に直接塗工する方法である。
一方、ソルベント法は、熱硬化性樹脂組成物に有機溶媒を含有させて樹脂ワニスを調製し、該樹脂ワニスにシート状補強基材を浸漬して、樹脂ワニスをシート状補強基材に含浸させ、その後、乾燥させる方法である。
【0096】
シート状補強基材の厚さは、例えば、約0.03~0.5mmを使用することができ、シランカップリング剤等で表面処理したもの又は機械的に開繊処理を施したものが、耐熱性、耐湿性及び加工性の観点から好ましい。熱硬化性樹脂組成物を基材に含浸又は塗工した後、通常、好ましくは100~200℃の温度で1~30分間加熱乾燥して半硬化(Bステージ化)させることにより、本発明のプリプレグを得ることができる。
得られるプリプレグは、1枚を用いるか、又は必要に応じて好ましくは2~20枚を重ね合わせて用いる。
【0097】
[銅張積層板]
本発明の銅張積層板は、上記プリプレグと銅箔とを積層してなるものである。例えば、上記プリプレグを1枚用いるか又は必要に応じて2~20枚重ね、その片面又は両面に銅箔を配置した構成で積層成形することにより製造することができる。
銅張積層板の成形条件としては、電気絶縁材料用積層板及び多層板の公知の成形手法を適用することができ、多段プレス、多段真空プレス、連続成形、オートクレーブ成形機等を使用し、例えば、温度100~250℃、圧力0.2~10MPa、加熱時間0.1~5時間の条件で成形することができる。
また、本発明のプリプレグと内層用プリント配線板とを組合せ、積層成形して、多層板を製造することもできる。
銅箔の厚さは、プリント配線板の用途等により適宜選択すればよく、特に限定されないが、好ましくは0.5~150μm、より好ましくは1~100μm、さらに好ましくは5~50μm、特に好ましくは5~30μmである。
【0098】
なお、銅箔にめっきをすることによりめっき層を形成することも好ましい。
めっき層の金属は、めっきに使用し得る金属であれば特に制限されない。めっき層の金属は、好ましくは、銅、金、銀、ニッケル、白金、モリブデン、ルテニウム、アルミニウム、タングステン、鉄、チタン、クロム、又はこれらの金属元素のうちの少なくとも1種を含む合金の中から選択されることが好ましい。
めっき方法としては特に制限はなく、公知の方法、例えば電解めっき法及び無電解めっき法が利用できる。
【0099】
[プリント配線板]
本発明のプリント配線板は、本発明の銅張積層板を用いてなるものである。
本発明のプリント配線板は、銅張積層板の金属箔に回路加工を施すことにより製造することができる。回路加工は、例えば、銅箔表面にレジストパターンを形成後、エッチングにより不要部分の銅箔を除去し、レジストパターンを剥離後、ドリルにより必要なスルーホールを形成し、再度レジストパターンを形成後、スルーホールに導通させるためのメッキを施し、最後にレジストパターンを剥離することにより行うことができる。このようにして得られたプリント配線板の表面にさらに上記の銅張積層板を上記したのと同様の条件で積層し、さらに、上記と同様にして回路加工して多層プリント配線板とすることができる。この場合、必ずしもスルーホールを形成する必要はなく、バイアホールを形成してもよく、両方を形成してもよい。このような多層化は必要枚数行えばよい。
【0100】
[半導体パッケージ]
本発明の半導体パッケージは、本発明のプリント配線板を用いてなるものである。
本発明の半導体パッケージは、本発明のプリント配線板の所定の位置に半導体チップ、メモリ等を搭載して製造することができる。
【実施例
【0101】
次に、下記の実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、これらの実施例は本発明をいかなる意味においても制限するものではない。
【0102】
[評価方法]
<1.最低溶融粘度温度、2.最低溶融粘度>
各例で作製したプリプレグを揉みほぐして採取した熱硬化性樹脂成分の粉末をタブレットとし、TMA試験装置「Q400EM」(TAインスツルメンツ社製)を用いて、100℃から180℃(昇温速度:10℃/分)まで上昇させながら所定の圧力で押し出したときの流れ値を測定し、下記式により算出した見掛けの溶融粘度の最低溶融粘度及び最低溶融粘度が得られた温度(最低溶融粘度温度)を測定した。
【0103】
【数1】
【0104】
η=見かけの最低溶融粘度(単位:Pa・s)
P:押出圧力(単位:Pa)
R:押出型プラストメーターのノズルの半径(単位:cm)
L:押出型プラストメーターのノズルの長さ(単位:cm)
Q=流れ値(単位:cm/s)
【0105】
<3.はんだ耐熱性>
各例で作製した銅張積層板を25mm角に切断し、これを288℃のはんだ浴に浮かべ、目視にて観察し、基板が膨れるまでの時間(単位:秒)を測定した。なお、最長で1800秒の観察とし、1800秒経っても膨れが観察されなかった場合は、一律、「>1800」と示す。時間が長いほど、耐熱性に優れることを示す。
【0106】
<4.ガラス転移温度(Tg)>
各例で作製した銅張積層板を銅エッチング液「過硫酸アンモニウム(APS)」(株式会社ADEKA製)に浸漬することにより銅箔を取り除いた5mm角の評価基板を作製し、TMA試験装置「Q400EM」(TAインスツルメンツ社製)を用い、評価基板の面方向(Z方向)の25~280℃(昇温速度:10℃/分)における熱膨張特性を観察し、膨張量の変曲点をガラス転移温度とした。
【0107】
<5.銅箔との接着性(銅箔ピール強度)>
各例で作製した銅張積層板を銅エッチング液「過硫酸アンモニウム(APS)」(株式会社ADEKA製)に浸漬することにより3mm幅の銅箔を形成して評価基板を作製し、引張り試験機「Ez-Test」(株式会社島津製作所製)を用いて銅箔のピール強度を測定し、銅箔との接着性の指標とした。
(評価基準)
A:0.80kN/m以上
B:0.70kN/m以上、0.80kN/m未満
【0108】
<6.誘電特性(比誘電率Dk、誘電正接Df)>
各例で作製した銅張積層板を銅エッチング液「過硫酸アンモニウム(APS)」(株式会社ADEKA製)に浸漬することにより銅箔を取り除いた後、2mm×85mmに切断し、ネットワークアナライザ「E8364B」(Aglient Technologies社製)を用い、空洞共振器摂動法により、5GHzでの銅張積層板の比誘電率及び誘電正接を測定した。
【0109】
<7.レーザー加工性>
(1)ビアホール形成
各例で得られた両面銅張積層板に対して、COレーザー加工機(日立ビアメカニクス株式会社製、商品名:LC-2E21B/1C)を使用し、マスク径1.60mm、フォーカスオフセット値0.050、パルス幅18μs、パワー0.66W、アパーチャー2、ショット数5、バーストモードの条件で穴あけして、積層板表面におけるビアホールのトップ径(直径)が50μmのビアホールを形成した。
(2)デスミア処理
ビアホールを形成した積層板を、膨潤液である、「スエリングディップ・セキュリガントP」(グリコールエーテル類、水酸化ナトリウムの水溶液、アトテックジャパン株式会社製)に60℃で10分間浸漬し、次に粗化液として、「コンセントレート・コンパクトP」(KMnO:60g/L、NaOH:40g/Lの水溶液、アトテックジャパン株式会社製)に80℃で20分間浸漬し、最後に中和液として、「リダクションショリューシン・セキュリガントP」(硫酸の水溶液、アトテックジャパン株式会社製)に40℃で5分間浸漬し、その後80℃で10分間乾燥したものを評価基板とした。
(3)最大スミア長の計測
上記で得られた評価基板のビアホール底部の周囲を走査電子顕微鏡(SEM)にて観察し、その画像からビアホール底部の壁面からの最大スミア長を測定し、ビアホール直径に対する最大スミア長の比率を求め、レーザー加工性の評価の指標とした。該比率が小さい程、レーザー加工性に優れる。
【0110】
[製造例1]
(BMIとBMI-4000変性物の調製)
マレイミド化合物として、4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド(上記一般式(D1-1)で表される化合物に相当)627g(1.75mol)及び2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン(上記一般式(D2-2)で表される化合物に相当)143g(0.25mol)、p-アミノフェノール[(d1)成分]55g(0.50mol)、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジエチルジフェニルメタン[(d2)成分]48g(0.19mol)及びN,N-ジメチルアセトアミドを固形分濃度が60質量%になるように混合し、125℃で240分間反応させ、BMIとBMI-4000の変性物の溶液を得た。なお、マレイミド化合物由来のマレイミド基当量と、(d1)成分及び(d2)成分由来の-NH基当量の総和との比(〔マレイミド基当量〕/〔-NH基当量の総和〕は4.57とした。
【0111】
[実施例1~5、比較例1]
上記に示した各成分を表1に示す組成で配合(単位:質量部。但し、溶液の場合は固形分換算量を示す。)し、さらに固形分濃度(無機充填材を含む。)が65.5質量%になるようにメチルエチルケトンを追加し、各実施例及び各比較例の熱硬化性樹脂組成物(樹脂ワニス)を調製した。
得られた各熱硬化性樹脂組成物を厚さ0.1mmのEガラスクロス「#3313」(型番、日東紡積株式会社製)に含浸させ、135℃で3.5分間、加熱乾燥してプリプレグ(熱硬化性樹脂組成物の含有量:56±2質量%)を得た。
このプリプレグ8枚を重ねたものの両面に18μmの銅箔「YGP-18」(日本電解株式会社製)を重ね、温度210℃、圧力25kgf/cm(=2.45MPa)にて80分間加熱加圧成形し、厚さ0.8mm(プリプレグ8枚分)の両面銅張積層板を作製した。作製した銅張積層板を用いて、上記方法に従って各評価を実施した。結果を表1に示す。
【0112】
以下、各例で使用した各成分について説明する。
【0113】
(A)成分:共重合樹脂
・SMA-EF40(スチレンと無水マレイン酸との共重合樹脂、スチレン/無水マレイン酸=4、Mw=11,000、サートマー社製、商品名)
【0114】
(B)成分:エポキシ変性ポリブタジエン
・PB3600(分子両末端に水酸基を有するエポキシ変性ポリブタジエン、株式会社ダイセル製、商品名)
【0115】
(C)成分:活性エステル化合物
・HPC-8000-65T(ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物、DIC株式会社製、商品名)
【0116】
(D)成分:マレイミド化合物及びその変性物からなる群から選ばれる1種以上
・BMIとBMI-4000の変性物:製造例1で合成したマレイミド化合物の変性物
【0117】
(E)成分:脂環式骨格を含むエポキシ樹脂
・HP-7200H(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、エポキシ当量280g/eq、DIC株式会社製、商品名)
【0118】
(F)成分:硬化促進剤
・G-8009L(イソシアネートマスクイミダゾール、第一工業製薬株式会社製、製品名)
【0119】
(G)成分:難燃剤
・OP935(ジアルキルホスフィン酸アルミニウム塩、2置換ホスフィン酸の金属塩、クラリアント社製、商品名)
・PX-200(1,3-フェニレンビス(ジ-2,6-キシレニルホスフェート)、リン含有量=9質量%、大八化学工業株式会社製)
【0120】
(H)成分:無機充填材
・溶融シリカ(平均粒子径=1.9μm、比表面積=5.8m/g)
【0121】
その他の成分:
・ヨシノックスBB(4,4’-ブチリデンビス-(6-t-ブチル-3-メチルフェノール、三菱ケミカル株式会社製、商品名)
【0122】
【表1】
【0123】
表1より、実施例1~5で得られた熱硬化性樹脂組成物は、良好な誘電特性を有しながらも、比較例1で得られた熱硬化性樹脂組成物よりも、レーザー加工性に優れていることが分かる。また、実施例1~5の熱硬化性樹脂組成物は、最低溶融粘度、はんだ耐熱性、ガラス転移温度及び銅箔ピール強度も良好であった。
以上より、本発明によると、誘電特性及びレーザー加工性に優れる熱硬化性樹脂組成物、並びに該熱硬化性樹脂組成物を用いたプリプレグ、銅張積層板、プリント配線板及び半導体パッケージを提供できることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明の熱硬化性樹脂組成物及び該熱硬化性樹脂組成物を用いて形成されるプリプレグは、誘電特性及びレーザー加工性に優れるため、電子機器用の銅張積層板、プリント配線板及び半導体パッケージとして有用である。