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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】ゼオライト及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 39/48 20060101AFI20231011BHJP
   B01J 29/56 20060101ALI20231011BHJP
   B01J 29/76 20060101ALI20231011BHJP
   B01J 37/10 20060101ALI20231011BHJP
   C01B 39/30 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
C01B39/48
B01J29/56 A
B01J29/76 A
B01J37/10
C01B39/30
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019134388
(22)【出願日】2019-07-22
(65)【公開番号】P2021017386
(43)【公開日】2021-02-15
【審査請求日】2022-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】高光 泰之
【審査官】小野 久子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-193135(JP,A)
【文献】特表2018-531869(JP,A)
【文献】国際公開第2018/086975(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 37/00-39/54
B01J 29/00-29/90
B01J 37/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の表で示す粉末X線回折ピークを有し、結晶性アルミノシリケートであることを特徴とするゼオライト。
【表1】
【請求項2】
LEV構造、ERI構造及びOFF構造の連晶である、請求項1に記載のゼオライト。
【請求項3】
ERI/OFF比<1である、請求項2に記載のゼオライト。
【請求項4】
アルミナに対するシリカのモル比が5以上50以下である請求項1乃至3のいずれかに記載のゼオライト。
【請求項5】
銅又は鉄の少なくともいずれかを含有する請求項1乃至4のいずれかに記載のゼオライト。
【請求項6】
テトラエチルアンモニウムカチオン、N,N-ジメチルピペリジニウムカチオン、シリカ源、アルミナ源、カリウムカチオン及び水を含む原料組成物を結晶化する結晶化工程、を有する請求項1乃至5のいずれかに記載のゼオライトの製造方法。
【請求項7】
2段階に分けて原料組成物の調製をする請求項6に記載のゼオライトの製造方法であり、1段階目で、テトラエチルアンモニウムカチオン、シリカ源、アルミナ源、水を混合して80℃以上100℃未満で加熱し混合物を得て、2段階目で、1段階目で得られた混合物にN,N-ジメチルピペリジニウムカチオン、カリウムカチオン、水を加えて原料組成物を調製するゼオライトの製造方法。
【請求項8】
請求項1乃至5のいずれかに記載のゼオライトを含む触媒。
【請求項9】
請求項1乃至5のいずれかに記載のゼオライトを使用することを特徴とする窒素酸化物の還元方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は新規の構造を有するゼオライト及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸素八員環から形成される細孔を有する、いわゆる小細孔ゼオライトは、オレフィン製造触媒、窒素酸化物の選択還元反応(SCR反応)の触媒として利用されている。触媒反応の活性や耐久性はゼオライトの結晶構造によって異なるため、新規構造のゼオライトが求められている。
【0003】
新規構造の一つとして、結晶構造が連晶からなる小細孔ゼオライトが報告されている。
【0004】
例えば特許文献1には、ERI構造とLEV構造の連晶からなるゼオライトが報告されており、この連晶がオレフィン製造反応を触媒することが開示されている。
【0005】
例えば特許文献2には、ERI構造とOFF構造の連晶からなるゼオライトがSCR反応を触媒することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特表2018-531869号
【文献】WO2012/007914
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示は、新規構造の連晶からなるゼオライトを提供すること、金属を含有させることでSCR反応の触媒として使用した際に高い耐熱性及び窒素酸化物還元能を有する連晶からなるゼオライトを提供すること、この様なゼオライトの製造方法を提供すること、の少なくとも1つを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、連晶からなるゼオライトについて検討した。従来とは異なる構造を有する連晶からなるゼオライトが高い耐熱性及び窒素酸化物還元能を有することを見出した。
【0009】
すなわち、本開示の要旨は以下のとおりである。
[1] 以下の表で示す粉末X線回折ピークを有することを特徴とするゼオライト。
【0010】
【表1】
【0011】
[2] 結晶構造がLEV構造、ERI構造及びOFF構造の連晶からなる、上記[1]に記載のゼオライト。
[3] ERI/OFF比<1である、上記[1]又は[2]に記載のゼオライト。
[4] アルミナに対するシリカのモル比が5以上50以下である上記[1]乃至[3]のいずれかに記載のゼオライト。
[5] 銅又は鉄の少なくともいずれかを含有する上記[1]乃至[4]のいずれかに記載のゼオライト。
[6] テトラエチルアンモニウムカチオン源、N,N-ジメチルピペリジニウムカチオン源、シリカ源、アルミナ源、カリウムカチオン源、及び水を含む組成物を結晶化する結晶化工程、を有する上記[1]乃至[5]のいずれかに記載のゼオライトの製造方法。
[7] 前記組成物が、テトラエチルアンモニウムカチオン源、シリカ源、アルミナ源及び水を混合して80℃以上100℃未満で加熱し得られる混合物と、N,N-ジメチルピペリジニウムカチオン源、カリウムカチオン源及び水を混合して得られる組成物である上記[6]に記載のゼオライトの製造方法。
[8] 上記[1]乃至[5]のいずれかに記載のゼオライトを含む触媒。
[9] 上記[1]乃至[5]のいずれかに記載のゼオライトを使用することを特徴とする窒素酸化物の還元方法。
【発明の効果】
【0012】
本開示により、新規構造の連晶からなるゼオライトを提供すること、金属を含有させることでSCR反応の触媒として使用した際に高い耐熱性及び窒素酸化物還元能を有する連晶ゼオライトを提供すること、この様な連晶からなるゼオライトの製造方法を提供することの少なくとも1つができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】LEV構造、OFF構造及びERI構造を有する連晶のDIFFaXパターンである。
図2】LEV構造及びOFF構造を有する連晶のDIFFaXパターンである。
図3】LEV構造及びERI構造を有する連晶のDIFFaXパターンである。
図4】LEV比率とピーク位置との相関を示したグラフである。
図5】実施例1の走査型電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示のゼオライトについて説明する。
【0015】
本開示のゼオライトは、以下の表で示す粉末X線回折(以下、「XRD」ともいう。)ピークを有するゼオライトである。このようなXRDピークを有するゼオライトは、その結晶構造が連晶からなる。これに金属を含有させることで、SCR反応の触媒として使用した際に高い耐熱性及び窒素酸化物還元能を有するゼオライトを提供することができる。
【0016】
【表2】
【0017】
本開示のゼオライトは、これらのXRDピークに加え、2θ=23.6±0.2°のXRDピーク(以下、「基準ピーク」ともいう。)の強度に対する相対強度が10%未満のピークを有していてもよい。なお本明細書において、2θの角度はCuKα線を線源とした場合の数値を記載している。
【0018】
更に本開示のゼオライトは、下表に示すいずれか1以上のXRDピークを有していてもよい。
【0019】
【表3】
【0020】
本開示のゼオライトは、半値幅(以下、「FWHM」ともいう。)が下表に示す範囲であることが好ましい。
【0021】
【表4】
【0022】
本開示のゼオライトは結晶性アルミノシリケートである。結晶性アルミノシリケートは、アルミニウム(Al)とケイ素(Si)とが酸素(O)を介したネットワークの繰り返しからなる結晶構造を有する。
【0023】
本開示のゼオライトは連晶からなるゼオライトであり、例えば、LEV構造、ERI構造及びOFF構造を有する連晶(intergrowth)からなるゼオライトであることが挙げられる。
【0024】
本開示においてゼオライトの構造は、国際ゼオライト学会(International Zolite Association)のStructure Commisionが定めているIUPAC構造コード(以下、単に「構造コード」ともいう。)で表される各構造であり、LEV構造、ERI構造及びOFF構造は、構造コードでそれぞれ、LEV型、ERI型及びOFF型となる構造である。
【0025】
LEV構造、ERI構造及びOFF構造は、それぞれ、三次元的な周期構造を有する結晶構造である。一方、連晶は、少なくとも積層不整を有する結晶構造であり、三次元的規則性を有する2以上の周期構造が、二次元又は一次元の規則的な周期で積層している結晶構造である。例えばLEV構造、ERI構造及びOFF構造を有する連晶(以下、「LEV-ERI-OFF連晶」ともいい、また、連晶に含まれる各構造(LEV構造、ERI構造、OFF構造等)を示し、当該連晶を「LEV-ERI連晶」等ともいう。)は、a軸方向及びb軸方向にはLEV構造、ERI構造又はOFF構造いずれかの三次元的規則性を有する周期構造を有し、なおかつ、c軸方向にはLEV構造、ERI構造及びOFF構造が規則的な周期で積層している結晶構造であり、LEV構造、ERI構造及びOFF構造の積層不整を有する結晶構造である。
【0026】
連晶からなるゼオライトは、そのXRDパターンと、DIFFaXを用いたシミュレーションにより得られるXRDパターン(以下、「DIFFaXパターン」ともいう。)とを比較することや、透過型電子顕微鏡による観察によって確認できる。
【0027】
DiFFaXパターンは、国際ゼオライト学会のホームページに掲載された構造データ(cifファイル)を用いた計算により得られる。計算で使用する各構造のTRANSITONパラメータは下記のようにすればよい。LEV構造、ERI構造、及びOFF構造を有する連晶の場合、
LEV型からLEV型へのTRANSITIONパラメータ・・・a
LEV型からERI型へのTRANSITIONパラメータ・・・b
LEV型からOFF型へのTRANSITIONパラメータ・・・c
ERI型からLEV型へのTRANSITIONパラメータ・・・d
ERI型からERI型へのTRANSITIONパラメータ・・・e
ERI型からOFF型へのTRANSITIONパラメータ・・・f
OFF型からLEV型へのTRANSITIONパラメータ・・・g
OFF型からERI型へのTRANSITIONパラメータ・・・h
OFF型からOFF型へのTRANSITIONパラメータ・・・i
としたとき、a=d=g、b=e=h、c=f=i、a+b+c=1、d+e+f=1、及びg+h+i=1とすればよい。
【0028】
LEV構造、ERI構造及びOFF構造を有し、OFF構造とERI構造の体積割合が等しい連晶のDIFFaXパターンを図1に、LEV構造及びOFF構造を有する連晶のDIFFaXパターンを図2に、並びに、LEV構造及びERI構造を有する連晶のDIFFaXパターンを図3に、それぞれ示す。各図中の100:0などの表記は各構造の体積割合である。
【0029】
図1乃至3で示すように、連晶からなるゼオライトのXRDパターンは、異なる結晶構造からなるゼオライトが2以上物理的に混合された混合物のXRDパターンとは異なるXRDパターンである。例えばLEV構造を有するゼオライト及びERI構造を有するゼオライトが物理的に混合された混合物のXRDパターンは、両構造のXRDピークが単に足し合わされたXRDパターンである。これに対し、図3で示すように、LEV構造とERI構造を有する連晶からなるゼオライトのXRDパターンは、両構造のXRDピークが単に足し合わされたXRDパターンではなく、連晶に由来するXRDピークを有するXRDパターンである。連晶に由来するXRDピークとして、各構造に由来するXRDピークの一部がブロード化したXRDピークや、各構造に由来するXRDピークがピークシフトしたXRDピーク、などが挙げられる。LEV構造を含む連晶に由来する具体的なXRDピークとして、例えば、LEV構造の(012)面に相当するXRDピークであって、当該ピークが低角側にピークシフトするとともにブロード化したものが挙げられる。
【0030】
本開示のゼオライトは、2θ=25.2±0.2°にXRDピークを有する。当該XRDピークはLEV構造に由来するピークであり、当該ゼオライトがLEV構造の三次元的規則性を有する周期構造を有することを示す。これにより、本開示のゼオライトは高い耐熱性を有する。基準ピークの強度に対する、2θ=25.2±0.2°のピークの強度の比は10以上50以下であり、20以上40以下であることが好ましい。
【0031】
本開示のゼオライトは2θ=9.7±0.2°にXRDピークを有することが好ましい。当該XRDピークはERI構造に由来するピークであり、当該ゼオライトがERI構造の三次元的規則性を有する周期構造を有することを示す。これにより、本開示のゼオライトはより優れた耐熱性を有しやすくなる。基準ピークの強度に対する、2θ=9.7±0.2°のピークの強度の比は10以上50以下であることが好ましく、20以上40以下であることがより好ましい。
【0032】
本開示のゼオライトの結晶構造におけるLEV構造、ERI構造及びOFF構造の合計に対するLEV構造の体積割合(以下、「LEV比率」ともいう。)は、好ましくは50%以上80%以下であり、より好ましくは60%以上80%以下である。
【0033】
本開示のゼオライトにおけるLEV比率は、ゼオライトのXRDパターンと、LEV構造、ERI構造及びOFF構造を有する連晶のDIFFaXパターンと、のXRDピーク強度(B)に対するXRDピーク強度(A)の強度比(A/B)、を比較することにより求めることができる。
【0034】
XRDピーク強度(A) :
2θ=20.75±0.7°の範囲で最も強いピーク強度を有するXRDピークの強度
XRDピーク強度(B) :
2θ=22.25±0.7°の範囲で最も強いピーク強度を有するXRDピークの強度
ここで、XRDピーク強度(A)は、LEV構造の(211)面及び(015)面、OFF構造の(210)面、並びにERI構造の(120)面及び(210)面に相当するピーク群のXRDピーク強度の最大値、XRDピーク強度(B)は、LEV構造の(122)面、並びにERI構造の(211)面及び(121)面に相当するピーク群のXRDピーク強度の最大値、に相当する。
【0035】
本開示のゼオライトは、結晶構造におけるOFF構造に対するERI構造の体積割合(以下、「ERI/OFF比」ともいう。)が1を下回ること(ERI/OFF比<1)であることが好ましい。ERI/OFF比<1のとき、より高い耐熱性を示す傾向がある。
【0036】
ERI/OFF比の下限としては特に制限はないが、例えば0以上であること(0≦ERI/OFF比)が挙げられ、0を超えること(0<ERI/OFF比)が好ましい。
【0037】
ERI/OFF比は、DIFFaXパターンにおけるLEV構造の(012)面及びERI構造の(101)面に相当するXRDピーク(以下、「LEV(012)-ERI(101)ピーク」ともいう。)の2θと、本開示のゼオライトのLEV(012)-ERI(101)ピークの2θと、の比較により導出することができる。
【0038】
すなわち、LEV(012)-ERI(101)ピークは、2θ=11±0.4°にピークトップを有するXRDピークであり、LEV-ERI-OFF連晶においてはERI/OFF比により当該2θが変化する。そのため、LEV-ERI-OFF連晶(体積比 LEV:ERI:OFF=1:1:1)、LEV-ERI連晶(体積比 LEV:ERI:OFF=1:1:0)、及びLEV-OFF連晶(体積比 LEV:ERI:OFF=1:0:1)のDIFFaXパターンにおけるLEV(012)-ERI(101)ピークの2θであって、本開示のゼオライトと同じLEV比率に対応する2θ値をそれぞれ求めることにより、LEV構造、ERI構造及びOFF構造の合計に対するERI構造の体積割合(ERI比率)の変化に伴うLEV(012)-ERI(101)ピークの2θの変化を示す一次近似線が得られる。得られた一次近似線と、本開示のゼオライトのXRDパターンにおけるLEV(012)-ERI(101)ピークの2θと、を対比することで、ERI/OFF比が導出できる。
【0039】
本開示のゼオライトのアルミナに対するシリカのモル比(以下、「SiO/Al比」ともいう。)は5以上、更には10以上であることが好ましい。SiO/Al比が5以上であれば高温下での使用においてより高い耐熱性を有する。SiO/Al比は50以下、更には20以下であれば、触媒としてより十分な量の酸点を有する。
【0040】
好ましいSiO/Al比の範囲として5以上50以下、更には10以上20以下を挙げることができる。
【0041】
本開示のゼオライトの比表面積は300m/g以上800m/g以下、更には400m/g以上600m/g以下であることが挙げられる。比表面積がこの範囲であるとき、本開示のゼオライトは窒素酸化物還元触媒のみならず、各種の触媒、更には吸着剤としてもより十分な性能を示すことができる。
【0042】
本開示のゼオライトは金属を含有していること、更には金属で修飾されていることが好ましい。金属を含有することで窒素酸化物還元触媒として使用した場合に、実用的な窒素酸化物還元特性を示すことができる。含有する金属は銅又は鉄の少なくともいずれか、更には銅であることが好ましい。
【0043】
本開示のゼオライトが銅又は鉄の少なくともいずれか(以下、「銅等」ともいう。)を含有する場合、ゼオライト質量に対する銅等の質量割合として0.1質量%以上10質量%以下、更には1質量%以上5質量%以下であることが挙げられる。なお、ゼオライト質量に対する銅の質量割合の算出において、銅の重量は金属銅として計算するものである。
【0044】
次に、本開示のゼオライトの製造方法について説明する。
【0045】
本開示のゼオライトは、テトラエチルアンモニウムカチオン(以下、「TEA」ともいう。)源、N,N-ジメチルピペリジニウムカチオン(以下、「DMPy」ともいう。)源、シリカ源、アルミナ源、カリウムカチオン源及び水を含む組成物(以下、「原料組成物」ともいう。)を結晶化する結晶化工程、を有する製造方法により得ることができる。
【0046】
TEA源はTEAを含む塩であればよい。TEA源は、テトラエチルアンモニウム塩化物、テトラエチルアンモニウム臭化物及びテトラエチルアンモニウム水酸化物(以下、「TEAOH」ともいう。)からなる群の少なくとも1種が好ましく、TEAOHであることがより好ましい。
【0047】
DMPy源はDMPyを含む塩であればよい。DMPy源は、N,N-ジメチルピペリジニウム塩化物(以下、「DMPyCl」ともいう。)、N,N-ジメチルピペリジニウム臭化物及びN,N-ジメチルピペリジニウム水酸化物からなる群の少なくとも1種であることが好ましく、DMPyClであることがより好ましい。
【0048】
シリカ源はケイ素を含む化合物であり、シリカゾル、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ、沈降法シリカ、無定形ケイ酸、結晶性アルミノシリケート及び非晶質アルミノシリケートからなる群の少なくとも1種であることが好ましく、結晶性アルミノシリケート及び非晶質アルミノシリケートの少なくともいずれかがより好ましく、結晶性アルミノシリケートであることが更に好ましい。
【0049】
アルミナ源はアルミニウムを含む化合物であり、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、結晶性アルミノシリケート、非晶質アルミノシリケート、金属アルミニウム及びアルミニウムアルコキシドからなる群の少なくとも1種であることが好ましく、結晶性アルミノシリケート及び非晶質アルミノシリケートの少なくともいずれかであることがより好ましく、結晶性アルミノシリケートであることが更に好ましい。
【0050】
シリカ源及びアルミナ源は、結晶性アルミノシリケート及び非晶質アルミノシリケートの少なくともいずれかであることが好ましく、結晶性アルミノシリケートであることがより好ましく、FAU型ゼオライト(結晶性アルミノシリケート)であることが更に好ましい。
【0051】
カリウムカチオン源は、カリウムカチオンを含む塩であればよい。カリウムカチオン源としてフッ化カリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム及び水酸カリウムからなる群の少なくとも1種が挙げられ、水酸化カリウムであることが好ましい。
【0052】
原料組成物は、リチウムカチオン、ナトリウムカチオン、ルビジウムカチオン及びセシウムカチオンからなる群の少なくとも1種を含む塩(以下、「アルカリ源」ともいう。)を含んでいてもよい。
【0053】
アルカリ源は、リチウムカチオン、ナトリウムカチオン、ルビジウムカチオン及びセシウムカチオンからなる群の少なくとも1種を含むフッ素物、塩素物、臭素物、ヨウ素物及び水酸化物からなる群の少なくとも1種であることが好ましく、水酸化物であることがより好ましい。特に好ましいアルカリ源として、ナトリウムカチオンを含むフッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物及び水酸化物からなる群の少なくとも1種、更には水酸化ナトリウムが挙げられる。
【0054】
水は、例えば、純水であればよい。なお、原料組成物の各原料(水を除く)は、水溶液として使用することもできる。
【0055】
原料組成物は、各原料を任意の方法で混合して得られる組成物であればよいが、TEA源、シリカ源、アルミナ源及び水を混合して80℃以上100℃未満、好ましくは85℃以上95℃未満、で加熱して得られる混合物(以下、「前駆混合物」ともいう。)と、DMPy源、カリウムカチオン源及び水を混合し得て得られる組成物であることが好ましい。
【0056】
以下に前駆混合物及び原料組成物について、具体的に示す。
(前駆混合物)
前駆混合物は、TEA源、シリカ源、アルミナ源及び水を含む混合物を加熱して得られ、該混合物はTEA源、シリカ源、アルミナ源及び水に加えて、必要に応じてDMPy源、カリウムカチオン源及びアルカリ源からなる群の少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0057】
前駆混合物の組成として、以下のモル組成を上げることができる。
【0058】
SiO/Al比は10以上、更には15以上であることが好ましい。一方、SiO/Al比は50以下、更には30以下であることが好ましい。好ましいSiO/Al比として10以上30以下を挙げることができる。
【0059】
シリカに対するTEAのモル比(以下、「TEA/SiO比」ともいう。)は0.1以上、更には0.2以上であることが好ましい。一方、TEA/SiO比は1.0以下、更には0.5以下であることが好ましい。
【0060】
シリカに対する水酸化物イオンのモル比(以下、「OH/SiO比」ともいう。)は1.0以下、更には0.6以下であることが好ましい。一方、水酸化物イオンが含まれるとき、OH/SiO比が0.2以上、更には0.4以上であることが好ましい。
【0061】
シリカに対する水(HO)のモル比(以下、「HO/SiO比」ともいう。)は100以下、更には50以下であれば、より効率良くゼオライトが結晶化する。適度な流動性の観点から、HO/SiO比は3.0以上、更には5.0以上であることが好ましい。
【0062】
シリカに対するDMPyのモル比(以下、「DMPy/SiO比」ともいう。)は0であることが好ましい。
【0063】
シリカに対するカリウムカチオンのモル比(以下、「K/SiO比」ともいう。)は0以上0.02以下であることが好ましく、0以上0.01以下であることがより好ましい。
【0064】
シリカに対するアルカリカチオンのモル比(以下、「M/SiO比」ともいい、アルカリカチオンがナトリウムカチオン等である場合、それぞれ「Na/SiO比」等ともいう。)は0以上0.02以下が好ましく、0以上0.01以下であることがより好ましい。
【0065】
前駆混合物における組成のモル比として好ましい範囲を以下に挙げることができる。
【0066】
10≦SiO/Al比≦30
0.1≦TEA/SiO比≦0.5
DMPy/SiO比=0
0≦K/SiO比≦0.02
0≦Na/SiO比≦0.02
0.2≦OH/SiO比≦1
3≦HO/SiO比≦50
(原料組成物)
原料組成物は、前駆混合物と、DMPy源、カリウムカチオン源及び水を混合して得られる組成物であり、該組成物は必要に応じて、前駆混合物、DMPy源、カリウムカチオン源及び水に加え、シリカ源、アルミナ源、TEA源及びアルカリ源からなる群の少なくとも1種を混合して得られる組成物であってもよい。しかしながら、原料組成物の調製においては、追加のシリカ源、アルミナ源及びTEA源を、前駆混合物と混合しないことが好ましい。
【0067】
好ましいSiO/Al比及びTEA/SiO比は前駆混合物と同じ範囲である。
【0068】
DMPy/SiO比は0.1以上、更には0.2以上であることが好ましい。一方、DMPy/SiO比は1.0以下、更には0.6以下であることが好ましい。
【0069】
K/SiO比は0.01以上、更には0.02以上であればよい。K/SiOは0.2以下、更には0.1以下であることが好ましい。
【0070】
Na/SiO比は、0.05以上であることが好ましい。Na/SiOは0.5以下、更には0.3以下であることが好ましい。
【0071】
OH/SiO比は1.0以下、更には0.6以下であることが好ましい。OH/SiO比が1.0以下であることで、ゼオライトの収率が高くなりやすい。一方、原料組成物に水酸化物イオンが含まれるとき、OH/SiO比が0.2以上、更には0.4以上であることが好ましい。
【0072】
O/SiO比は100以下、更には50以下であれば、より効率良くゼオライトが結晶化する。適度な流動性を有する原料組成物とするため、HO/SiO比は3.0以上、更には5.0以上であることが好ましい。
【0073】
原料組成物における組成のモル比として好ましい範囲を以下に挙げることができる。
【0074】
10≦SiO/Al比≦30
0.1≦TEA/SiO比≦0.5
0.1≦DMPy/SiO比≦1.0
0.01≦K/SiO比≦0.1
0≦Na/SiO比≦0.5
0.2≦OH/SiO比≦1
3≦HO/SiO比≦50
本開示の製造方法では結晶化工程を経ることでゼオライトが得られる。結晶化工程では、上記の原料組成物を水熱合成することにより、これを結晶化する。結晶化の方法としては、例えば、原料組成物を密閉容器に充填し、これを加熱することが挙げられる。
【0075】
結晶化工程において、原料組成物に種晶を混合してもよい。種晶を混合することで、ゼオライトの核発生が促進され、より短い時間で結晶化することができる。
【0076】
結晶化を促進する観点から、結晶化温度は100℃以上とすればよい。結晶化温度が高いほど結晶化が促進されるため、結晶化温度は130℃以上が好ましく、140℃以上がより好ましい。一方、原料組成物が結晶化すれば必要以上に結晶化温度を高くする必要はない。そのため、結晶化温度は200℃以下、更には170℃以下であることが好ましい。また、結晶化は原料組成物を攪拌した状態又は静置した状態のいずれの状態で行うことができる。
【0077】
結晶化工程における結晶化の時間は、12時間以上100時間未満であることが好ましく、15時間以上80時間未満であることがより好ましい。
【0078】
本開示のゼオライトを触媒や吸着剤とする場合、本開示の製造方法は洗浄工程、乾燥工程、焼成工程、イオン交換工程や金属含有工程などを含んでいてもよい。
【0079】
洗浄工程では、ゼオライトと液相とを固液分離し、不純物を除去する。固液分離は、公知の方法を使用することができる。固液分離後、固相として得られるゼオライトを純水で洗浄することができる。
【0080】
乾燥工程はゼオライトの吸着水等の水分を除去する。乾燥工程の処理条件は任意であるが、ゼオライトを、大気中、50℃以上150℃以下、好ましくは60℃以上140℃以下で2時間以上処理することが例示できる。
【0081】
焼成工程は、ゼオライトに含まれる有機物を燃焼除去する。焼成工程の処理条件は任意であるが、具体的な処理としては、ゼオライトを、大気中、500℃以上900℃以下、好ましくは550℃以上850℃以下で処理することが例示できる。
【0082】
イオン交換工程では、ゼオライトを任意のカチオンタイプとする。例えば、金属イオンをアンモニウムイオン(NH )や、プロトン(H)等の非金属カチオンにイオン交換することが挙げられる。アンモニウムイオンへのイオン交換の具体的な処理としては、ゼオライトを塩化アンモニウム水溶液に混合して、攪拌することが挙げられる。また、プロトンへのイオン交換の具体的な処理としては、ゼオライトをアンモニアでイオン交換した後、これを焼成することが挙げられる。
【0083】
金属含有工程では、金属とゼオライトとを接触させてゼオライトに金属を修飾することで、これを含有させる。含有させる金属としては特に制限はなく、銅(Cu)及び鉄(Fe)の少なくともいずれかであることが好ましい。
【0084】
本開示のゼオライトに銅(Cu)及び鉄(Fe)の少なくともいずれかを含有させる場合、銅及び鉄の少なくともいずれかを含む化合物(以下、「銅化合物等」ともいう。)を用いることが好ましく、銅及び鉄の少なくともいずれかを含む無機酸塩、更には銅及び鉄の少なくともいずれかを含む硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩及び塩化物からなる群の少なくとも1種を用いることがより好ましい。
【0085】
金属含有工程は、ゼオライトのイオン交換サイト及び細孔の少なくともいずれかに金属が含有又は修飾される方法であればよい。具体的な方法として、イオン交換法、蒸発乾固法及び含浸担持法からなる群の少なくとも1種を挙げることができ、含浸担持法、更には遷移金属化合物を含む水溶液とゼオライトとを混合する方法であることが好ましい。
【0086】
金属含有工程の後、洗浄工程、乾燥工程、又は活性化工程の少なくともいずれか1以上の工程を含んでいてもよい。
【0087】
金属含有工程後の洗浄工程は、不純物等が除去されれば、任意の洗浄方法を用いることができる。例えば、ゼオライトを十分量の純水で洗浄することが挙げられる。
【0088】
金属含有工程後の乾燥工程は水分を除去すればよく、大気中で、100℃以上200℃以下、好ましくは110℃以上190℃以下で処理することが例示できる。
【0089】
金属含有工程後の活性化工程は有機物を除去する。金属含有ゼオライトを、大気中、200℃を超え、600℃以下で処理することが例示でき、大気中、300℃を超え、600℃以下で処理することが好ましい。
【0090】
本開示のゼオライトは触媒として用いることができ、例えば、アルコールやケトンからの低級オレフィン製造用触媒、クラッキング触媒、脱ろう触媒、異性化触媒、及び排気ガスからの窒素酸化物還元触媒として使用することできる。特に、窒素酸化物還元触媒として使用することが好ましい。
【0091】
本開示のゼオライトは、窒素酸化物の還元方法において、好適に使用することができる。
【実施例
【0092】
以下、実施例を挙げて本開示を説明する。しかしながら、本開示はこれら実施例に限定されるものではない。なお、「比」は特に断らない限り、「モル比」である。
【0093】
(結晶構造の同定)
一般的なX線回折装置(装置名:UltimaIV、リガク社製)を使用し、試料のXRD測定をした。線源にはCuKα線(λ=1.5405Å)を用い、測定範囲は2θとして3°から43°の範囲で測定した。得られた回折プロファイルをPseudo voigt関数でピーク分離し、それぞれのピークの角度、格子面間隔(以下「d」ともいう。)、ピーク高さ、FWHMを求めた。
【0094】
得られたXRDパターンのXRDピーク群をDIFFaXパターンと比較することによって、LEV比率、ERI/OFF比を求めた。ここで、比較に用いたDIFFaXパターンは図1図3で示したシミュレーションパターンであり、LEV構造、ERI構造及びOFF構造の合計に対する各構造の体積割合は0~100%として作成した。
【0095】
(組成分析)
フッ酸と硝酸の混合水溶液に試料を溶解して試料溶液を調製した。一般的なICP装置(装置名:OPTIMA5300DV、PerkinElmer社製)を使用して、該試料溶液を誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-AES)で測定した。得られたSi、Alの測定値から、試料のSiO/Al比を求めた。
【0096】
(比表面積の測定)
試料の比表面積は、窒素吸着測定により算出した。窒素吸着測定には一般的な窒素吸着装置(装置名:BelsorpMax、マイクロトラックベル株式会社製)を用いた。試料を真空下350℃で2時間前処理し、液体窒素温度で窒素ガスを吸着させた。値の算出にはBET法を用いた。
【0097】
実施例1(ゼオライトの作製)
FAU型アルミノシリケート(SiO/Al比=20)及びTEAOH水溶液を混合して、以下の組成の前駆混合物を得た。
【0098】
SiO/Al比=20
TEA/SiO比=0.4
DMPy/SiO比=0
K/SiO比=0
Na/SiO比=0
OH/SiO比=0.4
O/SiO比=6.5
得られた前駆混合物を密閉容器内に充填し、この容器を100rpmで攪拌しながら90℃で12時間反応させた。密閉容器を冷却・開放し、純水、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及びDMPyCl水溶液を混合して、以下の組成を有する原料組成物を得た。
【0099】
SiO/Al比=20
TEA/SiO比=0.4
DMPy/SiO比=0.2
K/SiO比=0.05
Na/SiO比=0.1
OH/SiO比=0.55
O/SiO比=20
また、原料組成物の主な組成を表5に示す。
【0100】
【表5】
【0101】
得られた原料組成物を密閉容器内に充填し、この容器を100rpmで攪拌しながら150℃で72時間反応させた。結晶化後の原料組成物を固液分離し、純水で洗浄した後、110℃で乾燥させた。
【0102】
得られた乾燥粉を空気中、550℃、2時間焼成して本実施例のゼオライトを得た。本実施例のゼオライトのXRDパターンを表6に示す。なお、本実施例においては、2θ=23.6°のピークを基準ピークとしてピーク強度を算出した。
【0103】
【表6】
【0104】
本実施例のゼオライトは、SiO/Al比が14、及び比表面積が526m/gであった。
【0105】
2θ=9.7°及び25.2°のXRDピークの存在から、本実施例のゼオライトはERI構造及びLEV構造が連続した領域が存在すると考えられる。一方、2θ=24.8°のXRDピーク等、その他のERI構造に由来するXRDピークが存在しないことから、ERI構造のみの結晶構造からなるゼオライトは含まれていないと考えられる。また、LEV構造及びERI構造のみの連晶からなるゼオライトのXRDパターンとも異なるため、本実施例のゼオライトは、LEV構造及びERI構造を有し、かつ他の結晶構造を有する連晶からなるゼオライトである。
【0106】
LEV(012)-ERI(101)ピークの2θからOFF構造の存在が確認できる。従って、本実施例のゼオライトは、LEV構造、ERI構造及びOFF構造を有する連晶からなるゼオライトである。
【0107】
2θ=20.75±0.7°の範囲で最も強いピーク強度(A)(ピーク強度:125(20.8°)と、2θ=22.25±0.7°の範囲で最も強いピーク強度(B)(ピーク強度:131(22.4°)の比(A/B)値は0.98であり、DIFFaXパターンにおける当該比(A/B)値との比較から、LEV比率は60~80%である。
【0108】
さらに、LEV(012)-ERI(101)ピークの2θは11.1°であり、ERI/OFF比<1である。
【0109】
以上の事実から、本実施例のゼオライトはLEV構造、ERI構造及びOFF構造の連晶からなるゼオライトであり、ERI/OFF比<1である。
【0110】
本実施例のゼオライトのSEM写真を図5に示した。
【0111】
比較例1
実施例1と同様な方法で前駆混合物を得た後に、原料組成物を以下の組成としたこと以外は、実施例1と同様の方法で本比較例のゼオライトを得た。
【0112】
SiO/Al比=20
TEA/SiO比=0.4
DMPy/SiO比=0.2
K/SiO比=0
Na/SiO比=0.1
OH/SiO比=0.5
O/SiO比=20
本比較例のゼオライトは*BEA構造のゼオライトとLEV構造のゼオライトの混合物であり、本開示のゼオライトとは異なる物質であった。原料組成物の主な組成を表5に合わせて示す。
【0113】
表5から、カリウムカチオンを含有することで本開示のゼオライトが得られることが確認できた。
【0114】
比較例2
実施例1と同様な方法で前駆混合物を得た後に、原料組成物を以下の組成としたこと以外は、実施例1と同様の方法で本比較例のゼオライトを得た。
【0115】
SiO/Al比=20
TEA/SiO比=0.4
DMPy/SiO比=0
K/SiO比=0.05
Na/SiO比=0.1
OH/SiO比=0.55
O/SiO比=20
本比較例のゼオライトは*BEA構造からなるゼオライトであり、本開示のゼオライトとは異なる物質であった。原料組成物の主な組成を表5に合わせて示す。
【0116】
表5から、DMPyを含有することで本開示のゼオライトが得られることが確認できた。
【0117】
実施例2(金属含有ゼオライトの作製)
実施例1のゼオライトを20重量%のNHCl水溶液に懸濁させ、固液分離及び温水洗浄することでカチオンタイプをNH型にした。
【0118】
得られたNH型のゼオライトを1.1g秤量し、これに硝酸銅水溶液を添加して乳鉢で混合した。硝酸銅水溶液には硝酸銅3水和物127mgを純水0.5gに溶解して硝酸銅水溶液を調製したものを使用した。
【0119】
混合後の試料を110℃で一晩乾燥した後、空気中、550℃で1時間焼成することで銅をゼオライトに修飾させ、3質量%の銅を含有する銅含有連晶ゼオライトを得た。
【0120】
参考例1
米国特許4544538号の記載に従い、SiO/Al比=25のCHA型ゼオライトを調製した。得られた乾燥粉を空気中、550℃、2時間焼成、実施例2と同様の方法で処理することによって、1.7質量%の銅を含有する銅含有CHA型ゼオライトを得た。
【0121】
測定例1
実施例2で得られた銅含有連晶ゼオライト及び参考例1で得られた銅含有CHA型ゼオライトを窒素酸化物還元触媒とし、以下に示すアンモニアSCR方法により、窒素酸化物還元特性を評価した。
【0122】
(試料の前処理)
試料をプレス成形した後、凝集径12~20メッシュの凝集粒子とした。得られた凝集粒子体を1.5mL量りとり、これを反応管に充填した。
【0123】
(窒素酸化物還元特性の評価)
200℃、300℃、400℃及び500℃のいずれかの温度で、窒素酸化物を含む以下の組成からなる処理ガスを当該反応管に流通させた。処理ガスの流量は1.5L/分、及び空間速度(SV)は60,000h-1として測定を行った。
【0124】
<処理ガス組成>
NO :200ppm
NH :200ppm
:10体積%
O :3体積%
残部 :N
反応管に流通させた処理ガス中の窒素酸化物濃度(200ppm)に対する、触媒流通後の処理ガス中の窒素酸化物濃度(ppm)を求め、以下の式に従って、窒素酸化物還元率を求めた。
【0125】
窒素酸化物還元率(%)={1-(接触後の処理ガス中の窒素酸化物濃度/接触前の処理ガス中の窒素酸化物濃度)}×100
結果を表7に示す。
【0126】
【表7】
【0127】
表7より、本開示の銅含有ゼオライトは、SCR触媒として実用されているCHA型ゼオライトと同等の窒素酸化物還元特性を有することが確認できた。
【0128】
測定例2
実施例2で得られた銅含有連晶ゼオライトを窒素酸化物還元触媒とし、測定例1で示すアンモニアSCR方法と同様の条件で、水熱耐久処理後の窒素酸化物還元特性を評価した。水熱耐久処理条件を以下に示す。
【0129】
(水熱耐久処理条件)
処理温度 :900℃
処理時間 :1時間
処理雰囲気 :含水空気流通下(水10体積%、空気90体積%)
昇温速度 :20℃/分
昇温雰囲気 :室温から200℃までは空気流通下、
200℃超は含水空気流通下
水熱耐久処理後の200℃、300℃、400℃及び500℃における窒素酸化物還元率は、それぞれ48%、82%、65%及び48%であった。
図1
図2
図3
図4
図5