(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】ポリウレタン樹脂組成物、それを用いた成形体及び靴底
(51)【国際特許分類】
C08L 75/04 20060101AFI20231011BHJP
C08G 18/10 20060101ALI20231011BHJP
C08K 5/42 20060101ALI20231011BHJP
A43B 13/04 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
C08L75/04
C08G18/10
C08K5/42
A43B13/04 A
(21)【出願番号】P 2019182159
(22)【出願日】2019-10-02
【審査請求日】2022-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】竹中 雅美
(72)【発明者】
【氏名】岡元 武男
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-157883(JP,A)
【文献】特開2013-216738(JP,A)
【文献】特開2012-255120(JP,A)
【文献】特開2015-165027(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L1/00-101/14
C08K3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタン樹脂と、第4級アンモニウム塩(E1)と、イオン液体(E2)とを含み、
前記第4級アンモニウム塩(E1)が、アニオン成分として、硫酸エステルアニオン及びスルホン酸アニオンからなる群から選ばれる1種以上を含むものであり、前記イオン液体(E2)が、カチオン成分として、炭素原子数3以上のアルキル基を有するイミダゾリウムカチオン、炭素原子数3以上のアルキル基を有するピリジニウムカチオン、炭素原子数3以上のアルキル基を有するピロリジニウムカチオン、炭素原子数3以上のアルキル基を有するピペリジニウムカチオン及び炭素原子数3以上のアルキル基を有する第4級アンモニウムカチオンからなる群より選ばれる1種以上を含むものであり、前記イオン液体が、アニオン成分として、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)アニオン、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドアニオン、トリフルオロメタンスルホネートアニオン及びテトラフルオロボレートアニオンからなる群より選ばれる1種以上を含むものであるポリウレタン樹脂成形体。
【請求項2】
前記第4級アンモニウム塩(E1)と、イオン液体(E2)の含有量比((E1)/(E2))が、質量基準で、1/1以上20/1以下である請求項
1記載のポリウレタン樹脂成形体。
【請求項3】
前記第4級アンモニウム塩(E1)と、イオン液体(E2)との合計の含有量が、0.5質量%以上10質量%以下である請求項1記載のポリウレタン樹脂成形体。
【請求項4】
靴底である請求項1記載のポリウレタン樹脂成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタン樹脂組成物、それを用いた成形体及び靴底に関する。
【背景技術】
【0002】
コンビナート、化学工場、作業現場、危険物取扱場所、実験施設などのような危険物を扱う場所での静電気災害の防止策として、人体に着用する履物や衣料品などに帯電防止性(制電性ともいう。)を付与することが積極的に検討されている。帯電防止性を付与した履物や衣料品として、例えば、静電気帯電防止用安全靴、作業靴、クリーンルーム用靴等の靴底、医療用シューズ、安全手袋、安全作業服、安全帽等が提案されている。
【0003】
帯電防止性を付与する方法としては、導電性物質、イオン性物質等の帯電防止剤を表面に塗布又はスプレーする方法、内部添加する方法などが知られている。例えば、特許文献1には、イオン性の帯電防止化合物と極性有機溶媒とを含有する帯電防止剤組成物が記載されている。特許文献2には、アルキル硫酸第4級アンモニウムとトリフルオロメタンスルホン酸塩を含むポリウレタンが記載されている。特許文献3には、帯電防止剤とラクトン系単量体とを含む帯電防止助剤を用いたポリウレタン樹脂成形体が記載されている。特許文献4には、帯電防止剤として、アルキル置換第4級アンモニウム塩とアルキル置換イミダゾリウム塩とを含むウレタン樹脂組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-329253号公報
【文献】特開2000-103958号公報
【文献】特開2005-060682号公報
【文献】特開2013-053265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、本発明者らが検討したところ、従来から知られる樹脂組成物を用いて靴底を製造した場合、以下のような問題が生ずることが明らかになった。すなわち、各種靴の靴底は、靴底面(地面と接触する面)のアウトソールと、その内側(靴内面側)のミッドソール、インソールに分けられ、これらを成形することで製造されるところ、従来から知られる樹脂組成物を用いて靴底を製造した場合、高温高湿下では、アウトソールとミッドソールの剥離が生じやすくなることが明らかになった。
【0006】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、高温高湿下で靴底を製造した場合でもアウトソールとミッドソールの剥離を生じ難くすることのできるウレタン樹脂組成物、それを用いた成形体及び靴底を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のウレタン樹脂成形体は、ポリウレタン樹脂と、第4級アンモニウム塩(E1)と、イオン液体(E2)とを含み、前記第4級アンモニウム塩(E1)が、アニオン成分として、硫酸エステルアニオン及びスルホン酸アニオンからなる群から選ばれる1種以上を含むものであり、前記イオン液体(E2)が、カチオン成分として炭素原子数3以上のアルキル基を有するイミダゾリウムカチオン、炭素原子数3以上のアルキル基を有するピロリジニウムカチオン及び炭素原子数3以上のアルキル基を有する第4級アンモニウムカチオンからなる群より選ばれる1種以上を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高温高湿下で靴底を製造した場合でもアウトソールとミッドソールの剥離を生じ難くすることのできるウレタン樹脂組成物、それを用いた成形体及び靴底を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のポリウレタン樹脂成形体は、ポリウレタン樹脂と、第4級アンモニウム塩(E1)と、イオン液体(E2)とを含む。前記第4級アンモニウム塩(E1)と、前記特定のイオン液体(E2)とを組み合わせて用いることで、高温高湿下で製造した場合でもアウトソールとミッドソールの接着性を高めることができる。
【0010】
前記第4級アンモニウム塩(E1)は、アニオン成分として、硫酸エステルアニオン及びスルホン酸アニオンからなる群より選ばれる1種以上を含み、好ましくは硫酸エステルアニオンを含む。前記硫酸エステルアニオンとしては、メチル硫酸エステルアニオン、エチル硫酸エステルアニオン、プロピル硫酸エステルアニオン、ブチル硫酸エステルアニオン、ペンチル硫酸エステルアニオン、ヘキシル硫酸エステルアニオン、ヘプチル硫酸エステルアニオン及びオクチル硫酸エステルアニオン等の炭素原子数1~10(好ましくは炭素原子数1~5)のアルキル基を有するアルキル硫酸エステルアニオン等が挙げられる。前記スルホン酸アニオンとしては、メタンスルホン酸アニオン、エタンスルホン酸アニオン、プロパンスルホン酸アニオン、ブタンスルホン酸アニオン、ペンタンスルホン酸アニオン、ヘキサンスルホン酸アニオン、ヘプタンスルホン酸アニオン、オクタンスルホン酸アニオン等の炭素原子数1~10(好ましくは炭素原子数1~5)のアルキル基を有するアルカンスルホン酸アニオン等が挙げられる。
【0011】
前記第4級アンモニウム塩(E1)は、カチオン成分として、第4級アンモニウムカチオンを含むものであり、前記第4級アンモニウムカチオンは、以下の式(1)で表されるカチオンであることが好ましい。
【0012】
【0013】
[式(1)中、R1~R4は、それぞれ独立に、炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基を表す。]
【0014】
R1、R2、R3、R4で表される脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、ブタデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基等の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基;エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、ブタデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基等のアルケニル基(以下、「前記アルキル基に相応するアルケニル基」ともいう。)などが挙げられ、アルキル基が好ましく、直鎖状のアルキル基がより好ましい。
【0015】
R1、R2、R3、R4で表される脂肪族炭化水素基の炭素原子数は、好ましくは1~15、より好ましくは1~12である。また、R1、R2、R3、R4で表される脂肪族炭化水素基の合計の炭素原子数は、好ましくは4~40、より好ましくは6~30、さらに好ましくは10~20である。R1、R2、R3、R4の少なくとも1つは、炭素原子数3~20(好ましくは4~15)の脂肪族炭化水素基であることが好ましい。
【0016】
前記第4級アンモニウム塩(E1)は、硫酸エステルアニオンと、式(1)で表される第4級アンモニウムカチオンとの組合せであることが好ましい。
【0017】
なお前記第4級アンモニウム塩(E1)と後述するイオン液体(E2)とは、いずれも、カチオン成分とアニオン成分とから構成されるものであるが、第4級アンモニウム塩は、分子性の溶媒に溶解し、溶媒を介してのみイオン伝導性が発現するのに対して、イオン液体は、分子性の溶媒を添加しなくともイオン伝導性を発現するという点で異なる。
【0018】
前記第4級アンモニウム塩(E1)の含有率は、前記ポリウレタン樹脂成形体中、好ましくは0.5質量部%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは2質量%以上であり、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは7質量%以下である。
【0019】
前記イオン液体(E2)は、大気圧(1013hPa)下において、融点が100℃以下である塩を表し、大気圧(1013hPa)下、常温(25℃)で液体であることが好ましい。前記イオン液体(E2)は、カチオン成分として、炭素原子数3以上のアルキル基を有するイミダゾリウムカチオン、炭素原子数3以上のアルキル基を有するピリジニウムカチオン、炭素原子数3以上のアルキル基を有するピロリジニウムカチオン、炭素原子数3以上のアルキル基を有するピペリジニウムカチオン及び炭素原子数3以上のアルキル基を有する第4級アンモニウムカチオンからなる群より選ばれる1種以上を含む。ただし、前記イオン液体(E2)は、前記第4級アンモニウム塩(E1)とは異なる。
【0020】
炭素原子数3以上のアルキル基を有するイミダゾリウムカチオン、炭素原子数3以上のアルキル基を有するピリジニウムカチオン、炭素原子数3以上のアルキル基を有するピロリジニウムカチオン、炭素原子数3以上のアルキル基を有するピペリジニウムカチオン及び炭素原子数3以上のアルキル基を有する第4級アンモニウムカチオンの少なくとも1種を用いることで、高温高湿下で靴底を製造した場合でも、静電性能を維持しつつ、アウトソールとミッドソールの接着性を向上することができる。
【0021】
前記イミダゾリウムカチオンとしては、炭素原子数3以上のアルキル基を有するものであればよく、例えば、以下の式(2)で表されるカチオンが好ましい。前記式(2)で表されるカチオンには、その互変異性体や、式(2)と共鳴関係にある構造式で表されるカチオンも含まれる。
【0022】
【0023】
[式(2)中、
R5、R7は、それぞれ独立に、炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基を表す。
R6、R8~R9は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基を表す。
ただし、R5~R9の少なくとも1つは、炭素原子数3以上のアルキル基を表す。]
【0024】
R5~R9で表される脂肪族炭化水素基としては、R1で表される脂肪族炭化水素基として例示した基と同様の基、すなわち直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、前記アルキル基に相応するアルケニル基などが挙げられ、アルキル基が好ましく、直鎖状のアルキル基がより好ましい。
【0025】
R5~R9で表される脂肪族炭化水素基の炭素原子数は、好ましくは1~15、より好ましくは1~12である。また、R5、R6、R7、R8、R9で表される脂肪族炭化水素基の合計の炭素原子数は、好ましくは2~20、より好ましくは2~15、さらに好ましくは4~10である。R5、R6、R7、R8、R9の少なくとも1つは、炭素原子数3~20(好ましくは4~15)の脂肪族炭化水素基であることが好ましく、R6及びR9の少なくとも1つが、炭素原子数3~20(好ましくは4~15)の脂肪族炭化水素基であることが好ましい。
【0026】
R8~R9は、水素原子であることが好ましい。また、R5、R7は、脂肪族炭化水素基であることが好ましい。
【0027】
R5~R9の少なくとも1つは炭素原子数3以上のアルキル基であり、好ましくはR5~R7の少なくとも1つは炭素原子数3以上のアルキル基であり、より好ましくはR5、R7の少なくとも1つは炭素原子数3以上のアルキル基である。
【0028】
前記イミダゾリウムカチオンとしては、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムが特に好ましい。
【0029】
前記ピリジニウムカチオンは、炭素原子数3以上のアルキル基を有するものであればよく、例えば、以下の式(3)で表されるカチオンであることが好ましい。前記式(3)で表されるカチオンには、その互変異性体や、式(3)と共鳴関係にある構造式で表されるカチオンも含まれる。
【0030】
【0031】
[式(3)中、
R10は、炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基を表す。
R11~R15は、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基を表す。]
【0032】
R10~R15で表される脂肪族炭化水素基としては、R1で表される脂肪族炭化水素基として例示した基と同様の基、すなわち直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、前記アルキル基に相応するアルケニル基などが挙げられ、アルキル基が好ましく、直鎖状のアルキル基がより好ましい。
【0033】
R10で表される脂肪族炭化水素基の炭素原子数は、好ましくは1~12、より好ましくは1~10である。R11~R15で表される脂肪族炭化水素基の炭素原子数は、好ましくは1~5、より好ましくは1~3である。
【0034】
前記ピリジニウムカチオンは、1つ又は2つ以上の置換基を有するものであってもよく、窒素原子に置換した1つ又は2つの置換基を少なくとも有するものであることが好ましく、窒素原子に置換した2つの置換基を少なくとも有するものであることが好ましい。前記置換基としては、炭素原子数1~10の脂肪族炭化水素基が挙げられる。前記脂肪族炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基などが挙げられる。前記脂肪族炭化水素基の炭素原子数は、好ましくは1~8、より好ましくは1~6である。
【0035】
前記ピリジニウムカチオンとしては、1-オクチル-4-メチルピリジニウムカチオンが特に好ましい。
【0036】
前記ピロリジニウムカチオンは、炭素原子数3以上のアルキル基を有するものであればよく、例えば、以下の式(4)で表されるカチオンであることが好ましい。前記式(4)で表されるカチオンには、その互変異性体も含まれる。
【0037】
【0038】
[式(4)中、
R16~R17は、それぞれ独立に、炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基を表す。
R18~R25は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基を表す。
ただし、R16~R25の少なくとも1つは、炭素原子数3以上のアルキル基を表す。
【0039】
R16~R25で表される脂肪族炭化水素基としては、R1で表される脂肪族炭化水素基として例示した基と同様の基、すなわち直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、前記アルキル基に相応するアルケニル基などが挙げられ、アルキル基が好ましく、直鎖状のアルキル基がより好ましい。
【0040】
R16~R25で表される脂肪族炭化水素基の炭素原子数は、好ましくは1~12、より好ましくは1~10である。R16~R17は、脂肪族炭化水素基であることが好ましい。また、R18~R25は、水素原子であることが好ましい。
【0041】
R16~R25の少なくとも1つは炭素原子数3以上のアルキル基であり、好ましくはR16~R17の少なくとも1つは炭素原子数3以上のアルキル基である。
【0042】
前記ピロリジニウムカチオンとしては、1-ブチル-1-メチルピロリジニウムカチオンが特に好ましい。
【0043】
前記ピペリジニウムカチオンとしては、炭素原子数3以上のアルキル基を有するものであればよく、例えば、以下の式(5)で表されるカチオンが好ましい。前記式(5)で表されるカチオンには、その互変異性体も含まれる。
【0044】
【0045】
[式(5)中、
R26~R27は、それぞれ独立に、炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基を表す。
R28~R37は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基を表す。
ただし、R26~R37の少なくとも1つは、炭素原子数3以上のアルキル基を表す。]
【0046】
R26~R37で表される脂肪族炭化水素基としては、R1で表される脂肪族炭化水素基として例示した基と同様の基、すなわち直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、前記アルキル基に相応するアルケニル基などが挙げられ、アルキル基が好ましく、直鎖状のアルキル基がより好ましい。
【0047】
R26~R37で表される脂肪族炭化水素基の炭素原子数は、好ましくは1~15、より好ましくは1~12である。R26~R27は、脂肪族炭化水素基であることが好ましい。また、R28~R37は、水素原子であることが好ましい。
【0048】
R26~R37の少なくとも1つは炭素原子数3以上のアルキル基であり、好ましくはR26~R27の少なくとも1つは炭素原子数3以上のアルキル基である。
【0049】
前記ピペリジニウムカチオンとしては、1-ブチル-1-メチルピペリジニウムカチオンが好ましい。
【0050】
前記第4級アンモニウムカチオンとしては、炭素原子数3以上のアルキル基を有するものであればよく、例えば、以下の式(6)で表されるカチオンが好ましい。前記式(6)で表されるカチオンには、その互変異性体も含まれる
【0051】
【0052】
[式(6)中、R38~R41は、それぞれ独立に、炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基を表す。
ただし、R38~R41の少なくとも1つは、炭素原子数3以上のアルキル基を表す。]
【0053】
R38~R41で表される脂肪族炭化水素基としては、R1で表される脂肪族炭化水素基として例示した基と同様の基、すなわち直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、前記アルキル基に相応するアルケニル基などが挙げられ、アルキル基が好ましく、直鎖状のアルキル基がより好ましい。
【0054】
R38~R41で表される脂肪族炭化水素基の炭素原子数は、好ましくは1~15、より好ましくは1~12である。また、R38~R41で表される脂肪族炭化水素基の合計の炭素原子数は、好ましくは4~50、より好ましくは4~40、さらに好ましくは4~40である。R38~R41の少なくとも1つ(好ましくは2つ、より好ましくは3つ)は、炭素原子数3以上のアルキル基であり、好ましくはR38~R41の少なくとも2つは炭素原子数3以上のアルキル基であり、より好ましくはR38~R41の少なくとも3つは炭素原子数3以上のアルキル基である。
【0055】
前記第4級アンモニウムカチオンとしては、ブチルトリメチルアンモニウムカチオン、トリオクチルメチルアンモニウムカチオンが特に好ましい。
【0056】
前記炭素原子数3以上のアルキル基を有するイミダゾリウムカチオン、炭素原子数3以上のアルキル基を有するピリジニウムカチオン、炭素原子数3以上のアルキル基を有するピロリジニウムカチオン、炭素原子数3以上のアルキル基を有するピペリジニウムカチオン及び炭素原子数3以上のアルキル基を有する第4級アンモニウムカチオンの合計の含有率は、前記カチオン成分中、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上であり、好ましくは100質量%以下である。
【0057】
前記イオン液体(E2)は、アニオン成分として、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドアニオン、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドアニオン、トリフルオロメタンスルホネートアニオン及びテトラフルオロボレートアニオンからなる群より選ばれる1種以上を含むものであることが好ましく、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン、トリフルオロメタンスルホネートアニオン及びテトラフルオロボレートアニオンからなる群より選ばれる1種以上を含むものであることが好ましい。上記カチオン成分と前記アニオン成分とを組み合わせることで、静電性能を維持しつつ、高温高湿下で靴底を製造した場合でもアウトソールとミッドソールの剥離を生じ難くすることが可能となる。
【0058】
前記アニオン成分中、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドアニオン、トリフルオロメタンスルホネートアニオン及びテトラフルオロボレートアニオンの合計の含有率は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上であり、好ましくは100質量%以下である。
【0059】
前記イオン液体(E2)は、前記カチオン成分と前記アニオン成分とを任意に組み合わせたものであってよく、例えば、イミダゾリウムカチオン、ピロリジニウムカチオン又は第4級アンモニウムカチオンと、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンとの組合せ;イミダゾリウムカチオンと、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドアニオン、トリフルオロメタンスルホネートアニオン又はテトラフルオロボレートアニオンの組合せが好ましい。
【0060】
前記イオン液体(E2)の含有率は、ポリウレタン樹脂成形体中、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。
【0061】
前記第4級アンモニウム塩(E1)と、前記イオン液体(E2)の含有量の比率(E1/E2)は、質量基準で、好ましくは2以上、より好ましくは4以上であり、好ましくは30以下、より好ましくは20以下、さらに好ましくは15以下である。
【0062】
前記ポリウレタン樹脂成形体は、さらに、帯電防止剤(E3)を含んでいてもよい。前記帯電防止剤(E3)としては、メタンスルホン酸エステル誘導体、p-トルエンスルホン酸エステル誘導体等のカチオン性制電性化合物;ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド金属塩、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メタン金属塩、スルホン酸金属塩、アルカンスルホン酸金属塩、パーフルオロアルカンスルホン酸金属塩(トリフルオロメタンスルホン酸金属塩等)、ベンゼンスルホン酸金属塩、又はアルキルベンゼンスルホン酸金属塩等の有機金属塩アニオン性制電化合物などが挙げられる。
【0063】
前記ポリウレタン樹脂成形体は、さらに、帯電防止助剤(E4)を含んでいてもよい。前記帯電防止助剤(E4)としては、環状ケトン類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ラクトン系単量体類などが挙げられる。前記環状ケトン類としては、例えばシクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン等及びその誘導体等、あるいはソルビタン脂肪酸エステル類としては、例えばソルビタンセスキオレエート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等、あるいはラクトン系単量体類としては、例えばβ-プロピオラクトン、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン、γ-クロトノラクトン等のラクトンモノマー等が挙げられる。
【0064】
前記ウレタン樹脂としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、ポリエーテル系ウレタン樹脂、ポリエステル系ウレタン樹脂、ポリカーボネート系ウレタン樹脂等が挙げられる。本発明において、例えば、ポリエステル系ウレタン樹脂とは、分子鎖中に、ポリエステルに由来する単位を有するウレタン樹脂を表すものとする。
【0065】
前記ポリウレタン樹脂成形体は、ポリウレタン樹脂発泡成形体であることが好ましい。
【0066】
前記ポリウレタン樹脂成形体の密度は、好ましくは0.2g/cm3以上、より好ましくは0.3g/cm3以上であり、好ましくは1.8g/cm3以下、より好ましくは1.5g/cm3以下、さらに好ましくは1.3g/cm3以下である。前記ポリウレタン樹脂成形体の密度は、用途により異なっていてもよく、例えば、前記ポリウレタン樹脂成形体をアウトソールに用いる場合、その密度は、好ましくは0.4g/cm3以上、より好ましくは0.6g/cm3以上、さらに好ましくは0.7g/cm3以上であり、好ましくは1.8g/cm3以下、より好ましくは1.5g/cm3以下、さらに好ましくは1.3g/cm3以下である。また、前記ポリウレタン樹脂成形体をミッドソールに用いる場合、その密度は、好ましくは0.2g/cm3以上、より好ましくは0.3g/cm3以上であり、好ましくは1.2g/cm3以下、より好ましくは1g/cm3以下、さらに好ましくは0.8g/cm3以下である。
【0067】
前記ポリウレタン樹脂成形体の硬度は、日本工業規格 JIS K 7312-1996(硬さ試験)に準拠して、スプリング硬さ試験(タイプC)で測定した場合、好ましくは50以上、より好ましくは60以上であり、好ましくは100以下、より好ましくは80以下である。
【0068】
前記ポリウレタン樹脂成形体は、自動車内装材、靴底(安全靴、作業靴、クリーンルーム用靴、特に静電気帯電防止用靴底)、安全手袋、安全作業服、安全帽、複写機用ローラ、緩衝材、シール材、パッキン(特に電子材料用パッキン)、ホース、シート、緩衝剤、包装部材等に用いることができ、特に、靴底に好適に用いることができる。
【0069】
前記ポリウレタン樹脂成形体は、主剤(i)及び硬化剤(ii)を含むポリウレタン樹脂組成物であって、前記主剤(i)が、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(A)を含むものであり、前記硬化剤(ii)が、イソシアネート基と反応しうる官能基を2個以上有する化合物(B)と、前記第4級アンモニウム塩(E1)及び前記イオン液体(E2)を含むものであるポリウレタン樹脂組成物を用いて製造することができ、該ポリウレタン樹脂組成物も本発明の技術的範囲に包含される。
【0070】
前記ウレタンプレポリマー(A)は、ポリオール(A1)及びポリイソシアネート(A2)の反応物であることが好ましく、イソシアネート基を有する。前記イソシアネート基は、ウレタンプレポリマー(A)の末端にあることが好ましい。
【0071】
前記ポリオール(A1)としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール等の高分子量ポリオール;低分子量ポリオール等が挙げられる。前記ポリオール(A1)は、2官能又は3官能以上のポリオールであってもよい。
【0072】
前記ポリエステルポリオールとしては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、低分子量ポリオールと、ポリカルボン酸とを反応して得られるポリエステルポリオール;ε-カプロラクトン等の環状エステル化合物を開環重合反応して得られるポリエステルポリオール;これらを共重合して得られるポリエステルポリオール等が挙げられる。
【0073】
前記ポリエステルポリオールの原料である低分子量ポリオールとしては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、分子量が50以上300未満のポリオールが挙げられ、例えばエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等の脂肪族ポリオール(ジオール又は3官能以上のポリオール);1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA等の脂環式ポリオール(ジオール又は3官能以上のポリオール);ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールAF、ビスフェノールSi2、ジヒドロキシナフタレン及びビスフェノールF等の芳香族ポリオール(ジオール又は3官能以上のポリオール);前記芳香族ポリオールのアルキレンオキサイド付加物;ソルビトール、ショ糖、アコニット糖等の糖類;アミン化合物などが挙げられる。中でも、脂肪族ポリオールが好ましく、前記脂肪族ポリオールの炭素原子数は、好ましくは2~8、より好ましくは2~6、さらに好ましくは2~4である。前記脂肪族ポリオールの含有率は、前記ポリエステルポリオールの原料である低分子量ポリオール中、好ましくは60質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量以上であり、上限は100質量%である。
【0074】
前記ポリエステルポリオールの原料であるポリカルボン酸としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸等の脂肪族ポリカルボン酸;1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ポリカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、1,2-ビス(フェノキシ)エタン-p,p’-ジカルボン酸、p-ヒドロキシ安息香酸、p-(2-ヒドロキシエトキシ)安息香酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族ポリカルボン酸;無水マレイン酸等のそれらの無水物又はエステル化物等が挙げられる。中でも、脂肪族ポリカルボン酸が好ましく、アジピン酸が特に好ましい。
【0075】
前記ポリエーテルポリオールとしては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(PEPG)、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)、ポリオキシブチレングリコール、ポリオキシペンチレングリコール、ポリオキシヘキシレングリコール等の炭素原子数2~6(好ましくは炭素原子数2~4)のオキシアルキレン単位を有するポリエーテルポリオール等が挙げられる。前記ポリエーテルポリオールは、直鎖、分岐、環状の何れの構造を有していてもよい。
【0076】
前記ポリエーテルポリオールは、2官能ポリオール又は3官能以上のポリオールであってもよく、2官能ポリオールであることが好ましい。
【0077】
前記ポリカーボネートポリオールは、炭酸及び炭酸エステルと、多価アルコールとをエステル化反応させて得られるものである。前記多価アルコールとしては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。
【0078】
前記炭酸エステルとしては、例えば、メチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルカーボネート、ジエチルカーボネート、シクロカーボネート、ジフェニルカーボネート等が挙げられる。
【0079】
前記高分子量ポリオールとしては、前記ポリエーテルポリオールにε-カプロラクトン等のラクトン化合物が開環付加重合したポリオール;カプロラクトンモノマーの開環重合により得られるポリカプロラクトンポリオール;ポリエーテルエステルポリオール;芳香族ポリエステルポリオール;アクリルポリオール;ポリオレフィンポリオール;ポリブタジエンポリオール;ひまし油系ポリオール;ポリエーテルエステルポリオールの存在下、アクリロニトリルやスチレン等のエチレン性不飽和単量体を重合したポリマーポリオールなども使用できる。
【0080】
前記高分子量ポリオール中、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール及びポリカーボネートポリオール(好ましくはポリエステルポリオール)の合計の含有率は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは85質量%以上であり、好ましくは100質量%以下である。
【0081】
前記高分子量ポリオールの水酸基価は、好ましくは20mgKOH/g以上、より好ましくは35mgKOH/g以上、さらに好ましくは55mgKOH/g以上であり、好ましくは225mgKOH/g以下、より好ましくは120mgKOH/g以下である。前記ポリエステルポリオールの水酸基価が前記範囲にあると、後述するウレタンプレポリマー(A)の粘度を抑制することができる。本発明において、高分子量ポリオールの水酸基価は、JIS K 1557-1に準拠して測定することができる。
【0082】
前記ポリオール(A1)中、高分子量ポリオールの含有率は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは75質量%以上であり、好ましくは100質量%以下である。
【0083】
前記低分子量ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール(EG)、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,3-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール等の脂肪族ジオール類;1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA等の脂環族ジオール類;グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の3官能以上の水酸基含有化合物などが挙げられ、これらの中でも、ジエチレングリコール(DEG)が好ましい。前記低分子量グリコールは、直鎖、分岐、環状の何れの構造を有していてもよい。
【0084】
前記低分子量ポリオールの分子量は、好ましくは50以上であり、好ましくは300以下、より好ましくは200以下である。前記低分子量グリコールの分子量がかかる範囲であるならば、ポリオール成分として併用した場合に、目標とした硬度の成形品が得られやすい。
【0085】
前記ポリイソシアネート(A2)としては、1種又は2種以上を用いることができ、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネートのいずれであってもよい。前記脂肪族ポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ダイマー酸ジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられ;前記脂環式ポリイソシアネートとしては、あるいはイソホロンジイソシアネート(IPDI)、水添ジフェニルメタンジイソシアネート(水添MDI)、水添キシリレンジイソシアネート(水添XDI)、シクロヘキサンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等が挙げられ;前記芳香族ポリイソシアネートとしては、ジフェニルメタンジイソシアネ-ト(MDI;その4,4’体、2,4’体又は2,2’体、若しくはそれらの混合物、クルードMDI)、カルボジイミド変性MDI(変性MDI)、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、カルボジイミド化ジフェニルメタンポリイソシアネート、キシレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネ-ト(TDI;その2,4体、又は2,6体、若しくはそれらの混合物)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)、テトラメチルキシレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート等が挙げられる。中でも、ポリオール成分との反応性、湿気(水)との反応性、及び作業性等に優れることから、芳香族ポリイソシアネートが好ましく、MDI、TDIがより好ましく、加熱溶融させて使用する際の蒸気圧が低いMDIが特に好ましい。
【0086】
前記ポリイソシアネート(A2)に含まれるイソシアネート基と、前記ポリオール(A1)に含まれる水酸基のモル比(NCO/OH)は、好ましくは2以上、より好ましくは3以上であり、好ましくは20以下、より好ましくは15以下である。
【0087】
前記ポリオール(A1)と、前記ポリイソシアネート(A2)との反応は、無溶剤下で行なってもよく、有機溶剤中で行ってもよい。前記有機溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸n-ブチル等のエステル溶剤;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン溶剤;トルエン等の芳香族炭化水素溶剤などが挙げられる。前記有機溶剤は、反応途中又は反応終了後に、減圧加熱や薄膜留去等により除去することが望ましい。
【0088】
前記ポリオール(A1)と、前記ポリイソシアネート(A2)との反応温度は、例えば、50~90℃が好ましく、反応時間は、例えば2~24時間が好ましく、反応圧力は、常圧、加圧、減圧のいずれでもよい。反応方式は、例えば、バッチ、半連続、連続など、公知の反応方式を選択することができる。
【0089】
前記ポリオール(A1)と、前記ポリイソシアネート(A2)との反応雰囲気は、窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気であってもよく、乾燥空気雰囲気であってもよく、密閉条件下などの水分が混入しない条件であってもよい。
【0090】
前記ポリオール(A1)と、前記ポリイソシアネート(A2)とを反応させる際、必要に応じてウレタン化触媒を共存させてもよい。前記触媒は、原料仕込工程、反応工程の任意の段階で適宜加えることができる。また、触媒の添加方法は、一括、分割、連続などであってよい。
【0091】
前記ウレタン化触媒としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ベンジルジブチルアミン、トリエチレンジアミン、N-メチルモルホリン等の含窒素化合物;チタンテトラブトキシド、ジブチルスズオキシド、ジラウリン酸ジブチルスズ、2-エチルカプロン酸スズ、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、2-エチルカプロン酸亜鉛、グリコール酸モリブデン、酢酸カリウム、ステアリン酸亜鉛、オクチル酸錫、ジブチル錫ジラウレート等の有機金属化合物;塩化鉄、塩化亜鉛等の無機化合物などが挙げられる。
【0092】
前記ウレタンプレポリマー(A)は、末端にイソシアネート基を有する。前記ウレタンプレポリマー(A)のイソシアネート基当量は、好ましくは150~350g/mol、より好ましくは200~300g/molである。ウレタンプレポリマーのイソシアネート基当量が前記範囲にあることで、ウレタンプレポリマーの粘度を抑制することができる。前記ウレタンプレポリマーのイソシアネート基当量は、JIS K1603-2007 プラスチック-ポリウレタン原料芳香族イソシアネート試験方法第一部:イソシアネート基含有率の求め方に準拠して測定することができる。
【0093】
前記硬化剤(ii)は、イソシアネート基と反応しうる官能基を2個以上有する化合物(B)(以下、「化合物(B)」という場合がある。)と、第4級アンモニウム塩(E1)と、イオン液体(E2)とを含む。
【0094】
前記化合物(B)としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、ポリオールやポリアミンなどの活性水素原子含有化合物等が挙げられる。
【0095】
前記化合物(B)としてのポリオール(B1)としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、前記ポリオール(A1)として例示した化合物と同様の化合物が挙げられる。中でも、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオールが好ましく、ポリエステルポリオールがより好ましい。
【0096】
前記高分子量ポリオール中、3官能以上のポリオールの含有率は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは7質量%以下である。
【0097】
前記ポリオール(B1)中、高分子量ポリオールの含有率は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは85質量%以上であり、好ましくは100質量%以下である。
【0098】
前記ポリオール(B1)中、低分子量ポリオールの含有量は、前記高分子量ポリオール100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは3質量部以上であり、好ましくは10質量部以下、より好ましくは7質量部以下である。
【0099】
前記化合物(B)中、ポリオール(B1)の含有率は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上であり、好ましくは100質量%以下である。
【0100】
前記化合物(B)としてのポリアミン(B2)としては、エチレンジアミン、プロパンジアミン、ヘキサンジアミン、イソホロンジアミン等の脂肪族又は脂環式アミン化合物;フェニレンジアミン、3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、ポリアミノクロロフェニルメタン化合物等の芳香族アミン化合物などが挙げられる。
【0101】
前記化合物(B)としては、ポリオール(B1)が好ましい。
【0102】
前記第4級アンモニウム塩(E1)の含有率は、ポリウレタン樹脂組成物中、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは2質量%以上であり、好ましくは12質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは7質量%以下、いっそう好ましくは5質量%以下である。
【0103】
前記第4級アンモニウム塩(E1)と、前記イオン液体(E2)の含有量の比率(E1/E2)は、質量基準で、好ましくは2以上、より好ましくは4以上であり、好ましくは30以下、より好ましくは20以下、さらに好ましくは15以下である。
【0104】
前記硬化剤(ii)は、前記帯電防止剤(E3)、帯電防止助剤(E4)を含んでいてもよい。
【0105】
前記第4級アンモニウム塩(E1)、イオン液体(E2)及び必要に応じて用いる帯電防止剤(E3)及び帯電防止助剤(E4)の全部又は一部は、主剤(i)に含まれていてもよく、均一混合性及び硬化反応制御の観点から、全部が硬化剤(ii)に含まれていることが好ましい。
【0106】
前記ポリウレタン樹脂組成物は、発泡剤を含むことが好ましい。発泡剤を含むことで、ポリウレタン樹脂組成物を発泡させることができる。発泡剤としては、水が好ましい。前記発泡剤の含有量は、前記化合物(B)100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上であり、好ましくは0.8質量部以下、より好ましくは0.4質量部以下である。発泡剤の含有量が前記範囲にあると、安定した発泡状態の実現が容易である。
【0107】
前記ポリウレタン樹脂組成物は、さらに、発泡助剤を含んでいてもよい。前記発泡助剤としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、1,1-ジクロロ-1-フルオロエタン、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン、メチレンクロライド、ペンタン等の低沸点(例えば50℃以下、好ましくは40℃以下)の化合物(炭化水素化合物又はハロゲン化炭化水素化合物、好ましくはハロゲン化炭化水素化合物)が挙げられる。
【0108】
前記発泡剤及び前記発泡助剤は、一部又は全部が、主剤(i)及び硬化剤(ii)の少なくとも一方に含まれていればよく、全部が硬化剤(ii)に含まれていることが好ましい。
【0109】
前記ポリウレタン樹脂組成物は、さらに、触媒(D)を含むことが好ましい。前記触媒(D)としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、パルミチルジメチルアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N-ジメチルアミノエチルエーテル、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N-メチルイミダゾール、N-エチルモルフォリン、トルエンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン等のアミン化合物、あるいはジオクチルチンジラウレート、スタナスオクトエート、ジブチル錫ジラウレート等の有機金属化合物などが挙げられる。前記触媒(D)としては、発泡性制御の観点から、トリエチレンジアミン、N,N-ジメチルアミノエチルエーテルがより好ましい。
【0110】
前記触媒(D)の含有量は、前記化合物(B)100質量部に対して、好ましくは0.15質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上であり、好ましくは2質量部以下、より好ましくは1.5質量部以下である。前記触媒(D)の含有量が前記範囲にあることで、発泡状態の安定化が容易となる。
【0111】
前記触媒(D)は、一部又は全部が、主剤(i)及び硬化剤(ii)の少なくとも一方に含まれていればよく、全部が、硬化剤(ii)に含まれていることがより好ましい。
【0112】
前記ポリウレタン樹脂組成物は、他の添加剤を含んでいてもよい。前記他の添加剤としては、難燃剤、整泡剤、鎖伸長剤、可塑剤、充填剤、着色剤、耐候安定剤、耐光安定剤、酸化防止剤等が挙げられる。前記整泡剤としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、ポリジメチルシロキサンやポリシロキサン-ポリアルキレンオキシドブロック共重合体等のシリコン系化合物、金属石鹸、アルキルフェノールや脂肪酸のエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド付加物等の界面活性剤などが挙げられる。前記可塑剤としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、アジペート系ポリエステル可塑剤、安息香酸系ポリエステル可塑剤等が挙げられる。前記他の添加剤は、主剤(i)に含まれていてもよく、硬化剤(ii)に含まれていてもよい。
【0113】
前記ポリウレタン樹脂組成物は、前記主剤(i)と、前記硬化剤(ii)を混合することにより製造することができる。主剤(i)及び硬化剤(ii)に含まれる全成分中、イソシアネート基と、水酸基及び-NH-基等の活性水素原子含有基とのモル比(NCO/活性水素原子含有基)は、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.85以上であり、好ましくは1.2以下、より好ましくは1.1以下である。前記モル比(NCO/活性水素原子含有基)が前記範囲にあることで、得られるポリウレタン樹脂成形体の強度、屈曲性及び耐摩耗性を高めることができる。
【0114】
前記ポリウレタン樹脂組成物を発泡させる場合、前記発泡剤を用いてもよく、中空ビーズを添加してもよく、機械的発泡又は化学的発泡を行ってもよい。また、低圧発泡成形機、射出発泡成形機等の発泡成形機を使用することができる。
【0115】
前記ポリウレタン樹脂組成物は、モールド成形法(成形機より吐出した混合発泡液をモールドにオープン注入する)、インジェクション成形法(成形機の吐出口に直結したクローズドモールドに混合発泡液を直接射出する)等により成形することができる。
【0116】
前記成形型(モールド)としては、上型、下型からなるオープン型;平面状型;筒状型;凹型クローズドモールド等を用いることができる。前記成形型の材質としては、鉄、アルミ等の金属;エポキシ樹脂等の樹脂を採用することができる。
【実施例】
【0117】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0118】
〔主剤(X)の調製〕
反応容器に、イソシアネート(A2)として、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(以下「4,4’MDI」と略称。商標:ミリオネート MT、日本ポリウレタン工業株式会社製。)560部を仕込み、攪拌を開始した。
次いで、ポリオール(A1)として、ポリオールa(エチレングリコール(EG)/1,4-ブチレングリコール(1,4BG)とアジピン酸(AA)から合成された水酸基価56.1mgKOH/gのポリエステルポリオール。EG/1,4BG=5/5モル比のもの。)443.5質量部を分割で仕込み混合し、窒素気流下60℃で8時間反応を行い、NCO当量250のイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)を含有する主剤(X)を得た。
【0119】
〔アウトソール用硬化剤(Y1)の調製〕
イソシアネート基と反応しうる官能基を2個以上有する化合物(B1)としてポリオールb(EG/1,4BGとAAから合成された水酸基価112mgKOH/gのポリエステルポリオール。EG/1,4BG=5/5モル比のもの。)65.0質量部と、ポリオールc(ジエチレングリコール(DEG)/トリメチロールプロパン(TMP)とAAから合成された水酸基価60mgKOH/gのポリエステルポリオール。DEG/TMP=15/1モル比のもの。)5.0質量部と、ポリオールd(2-メチル-1,3―プロパンジオールとAAから合成された水酸基価56mgKOH/gのポリエステルポリオール。)30.0質量部と、EG7.0質量部、発泡剤として水(C)0.18質量部、触媒(D)としてトリエチレンジアミン(TEDA)1.0質量部を配合し、充分に撹拌、混合して、硬化剤(Y1)を調製した。
【0120】
〔ミッドソール用硬化剤(Y2)の調製〕
イソシアネート基反応性化合物(B2)としてポリオールe(EG/1,4BGとAAから合成された水酸基価66mgKOH/gのポリエステルポリオール。EG/1,4BG=5/5モル比のもの。)91.5質量部と、ポリオールc(ジエチレングリコール(DEG)/トリメチロールプロパン(TMP)とAAから合成された水酸基価60mgKOH/gのポリエステルポリオール。DEG/TMP=15/1モル比のもの。)4.8質量部と、EG10.7質量部、発泡剤として水(C)0.40質量部、触媒(D)としてトリエチレンジアミン(TEDA)1.0質量部を配合し、充分に撹拌、混合して、硬化剤(Y2)を調製した。
【0121】
〔実施例1〕
≪2液硬化型発泡ポリウレタン樹脂組成物(P1)の製造≫
混合容器に、前記硬化剤(Y1)107.0質量部、帯電防止剤としてN-エチル-N,N-ジメチル-N-ドデシルアンモニウムエチル硫酸塩(E1)8.2質量部と(E2K1)1-ブチル-3-メチルーイミダゾリウムと(E2A1)ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドからなるイオン液体(E2)を1.26質量部配合し、充分に撹拌、混合し、硬化剤(Y1)と帯電防止剤を含むアウトソール用ポリオールコンパウンド(PCA1)を得た。
【0122】
混合容器に、前記硬化剤(Y2)107.0質量部、帯電防止剤としてN-エチル-N,N-ジメチル-N-ドデシルアンモニウムエチル硫酸塩(E1)6.5質量部と(E2K1)1-ブチル-3-メチルーイミダゾリウムと(E2A1)ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドからなるイオン液体(E2)を1.0質量部配合し、充分に撹拌、混合し、硬化剤(Y2)と帯電防止剤を含むアウトソール用ポリオールコンパウンド(PCM1)を得た。
【0123】
混合容器に前記主剤(X)と前記ポリオールコンパウンド(PCA1)を、(X)/(PCA1)=89/100質量比で配合し攪拌、混合して、本発明の2液硬化型発泡ポリウレタン樹脂組成物(PA1)を調製して、40℃に予め加熱した金型(100mm×200mm×5mm)中に100gを注入し、直ちに金型の蓋をした後、40℃で2.5分間放置し、その後に、できあがったアウトソール発泡成形品を取り出した。成形品を30℃80%RH雰囲気下に3分静置し、その後、(100mm×200mm×15mm)の金型内にアウトソールを入れた。
【0124】
温度30℃、相対湿度80%RHの条件下、混合容器に前記主剤(X)と前記ポリオールコンパウンド(PCM1)を、(X)/(PCM1)=109/100質量比で配合し攪拌、混合して、本発明の2液硬化型発泡ポリウレタン樹脂組成物(PM1)を調製して、アウトソールを入れた(100mm×200mm×15mm)中に100gを注入し、直ちに金型の蓋をした後、40℃で3.5分間放置し、その後に、できあがった発泡成形品を取り出した。3分後、(100mm×200mm×15mm)の金型内にアウトソール発泡成形品を入れた。
【0125】
〔実施例2~8〕
イオン液体(E2)のカチオン成分とアニオン成分の組合せ及び量と、主剤と前記ポリオールコンパウンドとの質量比を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、発泡成形品を得た。
【0126】
〔比較例1〕
≪2液硬化型発泡ポリウレタン樹脂組成物(P8)の製造≫
イオン液体として(E2K5)1-エチル-3-メチル-
イミダゾリウムと(E2A4)エチルスルファートからなるイオン液体(E2)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、発泡成形品を得た。
【0127】
〔比較例2~7〕
イオン液体(E2)のカチオン成分とアニオン成分の組合せ及び量と、主剤と前記ポリオールコンパウンドとの質量比を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、発泡成形品を得た。
【0128】
[ウレタン成形体の密度の測定方法]
得られたウレタン成形体の質量を体積で割ることにより、密度(g/cm3)を算出した。
【0129】
[ウレタン成形体の硬度の測定方法]
得られたウレタン成形体の硬度を日本工業規格 JIS K 7312-1996(硬さ試験)に準拠して、スプリング硬さ試験(タイプC)にて評価した。
【0130】
[剥離強度測定]
温度30℃、相対湿度80%RHの条件下、アウトソール樹脂を100mm×200mm×5mm金型内に注入し、2.5分脱型後、金型から取り出した。成形品を30℃、相対湿度80%の雰囲気下に3分静置し、その後、100mm×200mm×15mm金型にアウトソールを入れ、空間にミッドソール樹脂を射出成形した。3.5分後に脱型し、常温にて24時間静置した。成形品を25mm×150mmに打ち抜き、アウトソールとミッドソールの剥離強度を株式会社島津オートグラフ AG-1にて剥離試験速度100mm/minで剥離強度を測定した。
【0131】
[帯電防止性の評価方法]
電池式絶縁抵抗計(横河電機株式会社製、2604 01型)を使用し、上記で作成した測定試料(75mm×75mm×10mm)の下面に鉄板(300mm×200mm×1mm)を上面に鉄板(75mm×75mm×3mm)をそれぞれ接触させて、成形後7費時点の電気抵抗値を測定し、帯電防止性を評価した。なお、成形後の試料は温度23℃、相対湿度50%の室内環境下で保存し、ついで常温条件(23℃、相対湿度65%)、及び低温低湿条件(0℃)の2条件にて電気抵抗値(単位:MΩ)を測定した。
【0132】
表1、2に、イオン液体(E2)のカチオン成分、イオン液体(E2)のアニオン成分、樹脂組成物中のアンモニウム塩(E1)とイオン液体(E2)の含有量比(質量基準。表中、「(E1)/(E2)」と略記。)、樹脂組成物中のアンモニウム塩(E1)とイオン液体(E2)の含有率の和(質量基準。表中、「(E1)+(E2)」と略記。)、前記主剤とポリオールコンパウンドの質量比(表中、「主剤(i)/硬化剤(ii)」と略記。)アウトソール及びミッドソールの密度(g/cm3)と硬度、アウトソールとミッドソールの剥離強度(表中、「剥離強度」と略記。)、23℃、相対湿度65%の電気抵抗値(表中、「常温常圧の電気抵抗値」と略記。)及び0℃、相対湿度40%での電気抵抗値(表中、「低温低湿の電気抵抗値」と略記。)を示す。
【0133】
【0134】
【0135】
尚、実施例及び比較例に記載の略号と名称は下記のとおりである。
4,4’MDI:4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート
EG :エチレングリコール
1,4BG :1,4-ブチレングリコール
AA :アジピン酸
DEG :ジエチレングリコール
TMP :トリメチロールプロパン
TEDA :トリエチレンジアミン
(E1) :アルキル置換第4級アンモニウム塩
(AM1):N-エチル-N,N-ジメチル-N-ドデシルアンモニウムエチル硫酸塩
(E2) :イオン液体
カチオン成分として
(E2K1)1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム
(E2K2)1-ブチル-1-メチルピロリジニウム
(E2K3)ブチルトリメチルアンモニウム
(E2K4)トリオクチルメチルアンモニウム
(E2K5)1-エチル-3-メチルイミダゾリウム
アニオン成分として
(E2A1)ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド
(E2A2)トリフルオロメチルスルホネート
(E2A3)テトラフルオロボレート
(E2A4)エチルスルファート
【0136】
実施例1~9は、本発明の実施例であり、高温高湿下で製造した場合でも、静電性能を維持しつつ、アウトソールとミッドソールの接着性を高めることが可能であった。比較例1~2は、イオン液体(E2)に該当しないイオン液体を用いた例であり、アウトソールとミッドソールの接着性が十分に満足できるものではなかった。比較例3は、イオン液体を含まない例であり、静電性能が十分に満足できるものではなかった。比較例4は、アンモニウム塩を含まない例であり、静電性能が十分に満足できるものではなかった。