(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】コムギの分げつ促進方法及び栽培方法
(51)【国際特許分類】
A01G 22/20 20180101AFI20231011BHJP
A01G 7/06 20060101ALI20231011BHJP
C05F 11/00 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
A01G22/20
A01G7/06 A
C05F11/00
(21)【出願番号】P 2019220140
(22)【出願日】2019-12-05
【審査請求日】2022-10-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113000
【氏名又は名称】中山 亨
(74)【代理人】
【識別番号】100151909
【氏名又は名称】坂元 徹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 祐也
(72)【発明者】
【氏名】泉 和夫
(72)【発明者】
【氏名】草間 勝浩
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-040338(JP,A)
【文献】特開2002-238302(JP,A)
【文献】特開平08-225408(JP,A)
【文献】特開昭54-146766(JP,A)
【文献】特開2013-159516(JP,A)
【文献】特開昭61-270289(JP,A)
【文献】特開2019-123628(JP,A)
【文献】畑作全書 ムギ類編,社団法人 農山漁村文化協会,1989年,466-470
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 22/20
C05G 5/20
A01G 7/06
C05F 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コムギの麦踏みを行う工程Aと、メチオニンをコムギに施用する工程Bとを有するコムギの分げつ促進方法。
【請求項2】
前記メチオニンをコムギに施用する工程Bが、メチオニンを含有する液状複合肥料をコムギに施用する工程Bである請求項1に記載のコムギの分げつ促進方法。
【請求項3】
工程Aと工程Bとをコムギの2葉期から茎立ち期より前までの期間に行う請求項1又は2に記載のコムギの分げつ促進方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コムギの分げつ促進方法及び栽培方法に関する。
【背景技術】
【0002】
葉の内側基部(葉腋)から1つずつ発生する側枝を分げつと呼ぶ。コムギの栽培において、分げつを促進し、穂数を確保することは重要であり、安定した収量を確保するための栽培の要となっている。
作物の栽培に用いられる肥料として、メチオニンを含有する肥料が知られており、例えば、特許文献1には、メチオニンを含有する液体肥料を種々の作物に施用することにより良好な栽培が達成されることが記載されている。しかしながら、メチオニンを含有する肥料をコムギの栽培時に施用し、分げつを促進すること、及び安定した収量が得られることについては記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、コムギの分げつを促進する優れた方法と、コムギの分げつを促進し、高い収量でコムギが得られる栽培方法とを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の構成からなる。
[1] コムギの麦踏みを行う工程Aと、メチオニンをコムギに施用する工程Bとを有するコムギの分げつ促進方法。
[2] 前記メチオニンをコムギに施用する工程Bが、メチオニンを含有する液状複合肥料をコムギに施用する工程Bである[1]に記載のコムギの分げつ促進方法。
[3] 工程Aと工程Bとをコムギの2葉期から茎立ち期より前までの期間に行う[1]又は[2]に記載のコムギの分げつ促進方法。
[4] コムギの麦踏みを行う工程Aと、メチオニンを含有する液状複合肥料をコムギに施用する工程Bとを有するコムギの栽培方法。
[5] 工程Aと工程Bとをコムギの2葉期から茎立ち期より前までの期間に行う[4]に記載のコムギの栽培方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明の促進方法により、コムギの分げつを促進することができる。また、本発明の栽培方法により、コムギの分げつを促進し、高い収量でコムギを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明のコムギの分げつ促進方法(以下、本発明方法1と記すことがある)は、コムギに麦踏みを行う工程Aと、メチオニンをコムギに施用する工程Bとを有する。本発明のコムギの栽培方法(以下、本発明方法2と記すことがある)は、コムギに麦踏みを行う工程Aと、メチオニンを含有する液状複合肥料をコムギに施用する工程Bとを有する。
【0008】
本発明方法1及び2におけるコムギは、一般に栽培される品種であれば特に限定はされない。自然交配で作出しうるコムギ、突然変異により発生しうるコムギ、ハイブリッド技術により育成されたコムギ、遺伝子組換え技術を用いて改変されたコムギであってもよい。
【0009】
コムギの播種量は、特に限定はされないが、例えば、コムギの栽培地1000m2あたり0.1kg~100kgである。
【0010】
まず、本発明方法1及び2における工程Aについて説明する。
【0011】
麦踏みは、踏圧とも呼ばれ、コムギ等のムギ類の栽培において鎮圧用ローラー等を用いて植物体及び土壌を踏みつける作業である。
麦踏みを実施する方法としては、例えば、鎮圧用ローラー等の麦踏みが可能な機械を使用して行う方法、手押し式の播種用鎮圧ローラーを用いて行う方法、足で踏む方法及びタイヤローラーを用いて鎮圧する方法が挙げられる。麦踏み時の加重は、コムギの根が切断されず、かつ茎葉部が鎮圧される程度であれば特に限定はされない。
【0012】
本発明方法1及び2においては、工程Aはコムギの2葉期~茎立ち期より前までの期間に実施することが好ましく、コムギの3葉期~4葉期に実施することがより好ましい。ここで、茎立ち期とは節間の伸長が開始する時期をいう。
【0013】
本発明方法1及び2においては、コムギの生育期間に培土(土寄せ)を行うことができる。
【0014】
次に、本発明方法1及び2における工程Bについて説明する。
【0015】
メチオニンとしてL―メチオニン、D-メチオニン及びDL-メチオニンを使用することができるが、中でも、L-メチオニン及びDL-メチオニンが好ましい。DL-メチオニンは飼料添加物として市販されており、市販されているDL-メチオニンとしては、例えば、住友化学株式会社製のDL-メチオニンが挙げられる。
【0016】
本発明方法1の工程Bにおいては、コムギにメチオニンそのものを施用してもよいし、メチオニンを含有する組成物を施用してもよい。
【0017】
メチオニンを含有する組成物としては、例えば、メチオニン水溶液、メチオニンを水に分散させた懸濁液、メチオニンを含有する液状複合肥料、メチオニンを含有する粉剤、メチオニンを含有する粒剤、メチオニンを含有する化成肥料が挙げられる。メチオニン水溶液におけるメチオニンの含有量は、メチオニンが水に溶解する限り特に限定はされないが、好ましくは0.0001重量%~10重量%の範囲である。
【0018】
本発明方法1及び2の工程Bにおいては、メチオニンとともに、アンモニア、硝酸、尿素、水溶性りん酸、りん酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、水酸化カリウム、塩化カリウム、メチオニン以外のアミノ酸等の他の肥料成分を併用することができる。メチオニン以外のアミノ酸としては、グルタミン酸、アラニン及びアスパラギン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種のアミノ酸(以下、アミノ酸Iと記すことがある)を使用することができる。かかる他の肥料成分はメチオニンと同時に施用してもよいし、別々に施用してもよい。別々に施用する場合は、施用する順番は特に限定されない。また、かかる他の肥料成分とメチオニンとの合計含有量は、窒素成分、りん酸成分及び加里成分の合計として、1.0重量%以上であることが好ましい。
【0019】
本発明方法1の工程Bに用いることができるメチオニンを含有する液状複合肥料及び本発明方法2の工程Bで用いられるメチオニンを含有する液状複合肥料(以下、総称して工程B液状複合肥料と記すことがある)において、液状複合肥料とは、肥料成分として、窒素、りん酸、加里のうち2成分以上を含有する液状肥料である。かかる肥料成分としては、例えば、アンモニア、硝酸、尿素、水溶性りん酸、りん酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、水酸化カリウム、塩化カリウム、メチオニン及びメチオニン以外のアミノ酸が挙げられる。工程B液状複合肥料における肥料成分の含有量は、窒素成分、りん酸成分及び加里成分の合計として、好ましくは8.0重量%~40.0重量%の範囲である。工程B液状複合肥料において、窒素成分の量はN(窒素原子)換算の重量であり、りん酸成分の量はP2O5(五酸化二りん)換算の重量であり、加里成分の量はK2O(酸化カリウム)換算の重量である。
工程B液状複合肥料としては、市販されている液状複合肥料を使用することができ、市販されている液状複合肥料としては、例えば、住友化学株式会社製の住友液肥M441号及び住友液肥M862号が挙げられる。
工程B液状複合肥料におけるメチオニンの含有量は、好ましくは0.1重量%~50.0重量%、更に好ましくは1.0重量%~10.0重量%の範囲である。
【0020】
工程B液状複合肥料は尿素を含有することができる。工程B液状複合肥料の原料に尿素を使用する場合、含有量は、好ましくは0.5重量%~40.0重量%、より好ましくは1.0重量%~20.0重量%の範囲である。本発明方法1及び2においては、市販されている尿素を使用することができる。市販されている尿素としては、例えば、China BlueChemical Ltd.製の粒状尿素(粒径2mm~4mm)が挙げられる。
【0021】
工程B液状複合肥料は水を含有する。工程B液状複合肥料における水の含有量は、10.0重量%~95.0重量%、好ましくは30.0重量%~90.0重量%の範囲である。工程B液状複合肥料に使用される水は特に制限されることがなく、水道水、井水、及び脱イオン水等の通常の液体肥料に使用される水を使用することができる。
【0022】
工程B液状複合肥料は、25℃におけるpHが1.0~3.0の範囲であることが好ましい。工程B液状複合肥料のpHは、必要に応じ、恒温槽等を用いて工程B液状複合肥料の液温を25℃に調整し、ガラス電極式pHメータのガラス電極を工程B液状複合肥料の原液に浸漬し、pHメータの表示値が安定した時点で測定されるpH値である。より具体的には、液温を25℃に調整した工程B液状複合肥料をビーカーに100mL程度分取し、ガラス電極式pHメータのガラス電極の先端部から3cm程度液に浸かる状態で固定し、5分程度静置してpHメータの表示値が安定したことを確認した後、その値を記録する。pHの測定には、例えば堀場製作所製のガラス電極式pHメータを使用することができる。
【0023】
25℃におけるpHが1.0~3.0の範囲である工程B液状複合肥料を得るための方法としては、例えば、pHが1.0~3.0の範囲を呈するために必要な量の酸成分を添加する方法が挙げられる。かかる酸成分としては、例えば、硝酸及びりん酸が挙げられる。工程B液状複合肥料においては、酸成分として硝酸の使用が好ましい。工程B液状複合肥料における硝酸成分の含有量は、好ましくは1.0重量%~50.0重量%、更に好ましくは3.0重量%~40.0重量%の範囲である。
【0024】
工程B液状複合肥料は、メチオニン以外のアミノ酸を含有していてもよい。かかるアミノ酸として、アミノ酸Iを使用することができる。また、アミノ酸Iの結晶析出抑制の観点からは、その含有量が95重量%以上とるように精製されたアミノ酸Iの使用が好ましい。工程B液状複合肥料がアミノ酸Iを含有する場合、その合計含有量は、好ましくは0.1重量%~50.0重量%、更に好ましくは1.0重量%~10.0重量%の範囲である。
【0025】
工程B液状複合肥料の製造例について、以下に説明する。必要に応じて酸成分を添加した水に、メチオニン及び必要に応じ、アミノ酸Iを添加し、溶解して透明な状態になるまで混合する。固体原料を溶解させる前には、通常、溶液の温度が40℃程度になるように温度を調節する。必要に応じ、尿素及びその他の肥料成分を溶解させ、必要に応じて酸成分を添加し、溶液のpHを1.0~3.0の範囲に調整する。そして、通常は、含有される各成分の量を調整するために必要な量の水を添加して混合する。このようにして得られる溶液を通常4日間程度静置して不溶物を沈降させた後、その上澄み液を取り出し、目開きが1μm以下のフィルターを通過させて不溶物を除去することにより、工程B液状複合肥料を得ることができる。
【0026】
また、本発明方法1及び2においては、1種以上の農薬を施用することもできる。かかる農薬としては、例えば殺虫剤、殺線虫剤、殺菌剤、除草剤、植物生長調節剤及び薬害軽減剤が挙げられる。
殺菌剤の有効成分としては、例えば、イソプロチオラン、エディフェンホス、エポキシコナゾール、オキサジキシル、キノキシフェン、クレソキシムメチル、ジエトフェンカルブ、スピロキサミン、ゾキサミド、チフルザミド、ベノミル、チオファネートメチル、メトコナゾール、トリフルミゾール、クロロタロニル、テブコナゾール、クロロタロニル、イミノクタジン酢酸塩、テブコナゾール、トリシクラゾール、トリフロキシストロビン、トルクロホスメチル、ニトロタールイソプロピル、ピラゾホス、ピリブチカルブ、ピロキロン、ビンクロゾリン、フェノキサニル、フェンブコナゾール、フェンプロピモルフ、フサライド、ブピリメート、フルキンコナゾール、フルジオキソニル、フルシラゾール、フルトラニル、フルトリアホール、プロシミドン、プロピコナゾール、エニルコナゾール、ベナラキシル、ペンコナゾール、ミクロブタニル、メプロニル、アゾキシストロビン、イプロバリカルブ、オキシカルボキシン、カルプロパミド、シアゾファミド、シフルフェナミド、シメコナゾール、ジメトモルフ、トリチコナゾール、ビテルタノール、ピラクロストロビン、フェナリモル、フェンアミドン、ペンシクロン、ベンダイオカルブ、ボスカリド、メパニピリム、アザコナゾール、イプロベンホス、クロゾリネート、ジクロラン、ジフェノコナゾール、シプロコナゾール、テトラコナゾール、トリアジメノール、トリアジメホン、メタラキシル、メトミノストロビン、メトミノストロビンが挙げられる。
かかる農薬の施用時期は特に限定されず、例えば、工程Aの前で施用してもよいし、工程Aで施用してもよいし、工程Aと工程Bとの間で施用してもよいし、工程Bにおいてメチオニンと同時又は別々に施用してもよいし、工程Bの後で施用してもよい。工程Bにおいてメチオニンと農薬とを別々に施用する場合は、施用する順番は特に限定されない。
【0027】
本発明方法1及び2の工程Bにおいて、メチオニンは、コムギの植物体全体に施用してもよいし、一部分(茎葉、芽等)のみに施用してもよい。また、コムギの栽培地に施用することもできる。ここで、コムギの栽培地とは、コムギを栽培する土壌であれば特に限定されない。
【0028】
具体的な施用方法としては、例えば、メチオニンをコムギの栽培地及び/又はコムギの茎葉に散布する方法が挙げられる。コムギの茎葉に散布する方法においては、メチオニン水溶液や、工程B液状複合肥料を水で希釈した溶液を用いることができる。工程B液状複合肥料を水で希釈する場合、その希釈倍率は、10倍~10000倍が好ましい。散布方法としては、例えば、ブームスプレーヤ等の機械を使用する方法、噴霧器等を用いて手散布する方法、及び動力散布機を用いて手散布する方法が挙げられる。
また、コムギの栽培地に施用する方法としては、例えば、土壌散布、土壌混和及び土壌への薬液潅注が挙げられる。
【0029】
コムギへのメチオニンの施用量は、コムギの栽培地1000m2あたり、例えば、0.001kg~10kgの範囲である。
【0030】
本発明方法1及び2においては、工程Bは、コムギの2葉期~茎立ち期より前までの期間に実施することが好ましく、コムギの3葉期~4葉期に実施することがより好ましい。
【0031】
本発明方法1及び2においては、元肥を施用することができる。元肥とは、作物の播種や移植に先立って施される肥料であり、例えば、単肥、普通化成肥料、高度化成肥料、及び有機肥料が挙げられる。その施用量は、特に限定はされないが、好ましくは、コムギの栽培地1000m2あたり1kg~1000kgである。
【0032】
本発明方法1及び2においては、工程Aと工程Bは同時に実施してもよいし、別々に実施してもよい。
例えば、麦踏み及び散布の同時作業が可能な機械(鎮圧ローラーを付けたブームスプレーヤ等)を使用することにより、工程Aと工程Bとを同時に実施することができる。
工程Aと工程Bとを別々に実施する場合、工程Aに次いで工程Bを実施してもよく、工程Bに次いで工程Aを実施してもよい。
【0033】
本発明方法1及び2においては、工程Aと工程Bの両方を、コムギの2葉期から茎立ち期より前までの期間に行うことが好ましく、3葉期から4葉期に行うことがより好ましい。
また、一方の工程を実施した後、7日以内にもう一方の工程を実施することが好ましい。
【0034】
本発明方法1及び2においては、工程Aと工程Bは、それぞれ複数回実施してもよい。
【実施例】
【0035】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0036】
実施例1
直径30cmの大型黒ポリポットに土壌を入れ、コムギ(品種:チクゴイズミ)の種子10粒を播種した。発芽後、1ポットあたり5株になるように間引いて、雨よけ栽培ハウス内で通常の方法により栽培を行った。
コムギが3葉期に達した時期に、コムギの上から小型カーペットクリーナー(コロコロ(登録商標))の本体を用いて、約1.5kgの加重を加えて手で鎮圧し、麦踏みの代わりとした。鎮圧は7日間隔で計3回実施し、3回の鎮圧のそれぞれについて、鎮圧の1日前に、溶液中のメチオニン(特級L-メチオニン、富士フイルム和光純薬株式会社製)含有量が表1の記載の通りになるようにメチオニンを水と混合して調製した溶液を、土壌1000m2あたりのメチオニン施用量が表1の記載の通りになるように、1ポットあたり1回につき14mlを手散布にて茎葉散布した。3回の鎮圧及びメチオニンの散布はいずれも茎立ち期よりも前に行った。
その後は、通常の方法により栽培を続けた。コムギの分げつが完了した節間伸長期に分げつ数を調べた。試験は3反復で行い、各ポットから平均的な生育の3株を選び、分げつ数を測定した。3反復合計9株の平均分げつ数を表1に示す。
【0037】
実施例2
3回の鎮圧のそれぞれについて、鎮圧の1日前ではなく、鎮圧の1日後に、溶液中のメチオニン含有量が表1の記載の通りになるようにメチオニンを水と混合して調製した溶液を、土壌1000m2あたりのメチオニン施用量が表1の記載の通りになるように、1ポットあたり1回につき14mlを手散布にて茎葉散布したこと以外は、実施例1と同様の方法で試験を行い、分げつ数を測定した。3反復合計9株の平均分げつ数を表1に示す。
【0038】
比較例1
メチオニンを水と混合して調製した溶液の代わりに、水のみを1ポットあたり1回につき14mlを手散布にて茎葉散布したこと以外は、実施例1と同様の方法で試験を行い、分げつ数を測定した。3反復合計9株の平均分げつ数を表1に示す。
【0039】
比較例2
鎮圧及びメチオニンを水と混合して調製した溶液の茎葉散布を行わなかったこと以外は、実施例1と同様の方法で試験を行い、分げつ数を測定した。3反復合計9株の平均分げつ数を表1に示す。
【0040】
比較例3
コムギが3葉期に達した時期に、鎮圧を行わず、溶液中のメチオニン含有量が表1の記載の通りになるようにメチオニンを水と混合して調製した溶液を、7日間隔で計3回、土壌1000m2あたりのメチオニン施用量が表1の記載の通りになるように、1ポットあたり1回につき14mlを手散布にて茎葉散布したこと以外は、実施例1と同様の方法で試験を行い、分げつ数を測定した。3反復合計9株の平均分げつ数を表1に示す。
【0041】
【0042】
実施例3
元肥として元肥一発肥料のスーパーSRコートムギ用077(商品名)(N:P:K=30:7:7、住友化学株式会社製)をコムギの栽培地1000m2あたり30.3kg(元肥窒素量として1000m2あたり9.1kg)施用した圃場に、コムギ(品種:チクゴイズミ)を、1区(畝長4m×畝幅1m)に条間25cmで4条まきした。播種量はコムギの栽培地1000m2あたり6kgとした。播種後は通常の方法により栽培を行った。
コムギが3葉期に達した時期に、液状複合肥料として住友液肥M441号(N:P:K=4:4:1、DL-メチオニン2重量%含有、L-グルタミン酸4重量%含有、尿素2.2重量%含有、肥料成分(窒素成分、りん酸成分及び加里成分の合計)9重量%含有、pH2.0、住友化学株式会社製)を水で500倍希釈した希釈液を、コムギの栽培地1000m2あたり1回につき250Lの液量で動力散布機を用いて手散布にて茎葉散布した。散布直後に手押し式の播種用鎮圧ローラーにトラクター用のウエイト30kgを乗せて鎮圧(麦踏み)及び培土を行った。散布、麦踏み及び培土は10日間隔で合計3回実施した。3回目の散布は茎立ち期前に行った。
コムギが出穂期に達した時期に赤かび病用殺菌剤を、コムギの栽培地1000m2あたり1回につき250Lの液量で、7日間隔で合計3回(1回目:「ワークアップフロアブル」(商品名)(メトコナゾール18.0重量%含有、北興化学工業株式会社製)を水に2000倍希釈した希釈液、2回目:「ベンレート水和剤」(商品名)(ベノミル50.0重量%含有、住友化学株式会社製)を水に2000倍希釈した希釈液、3回目:「ワークアップフロアブル」を水に2000倍希釈した希釈液)散布した。
その後は、通常の方法により栽培を続けた。コムギが収穫期に達した時期に平均的な生育の10株を選び、10株平均の分げつ数及び穂数、並びに10株合計の子実重量(収量)を測定した。結果を表2に示す。
【0043】
比較例4
住友液肥M441号を500倍希釈した希釈液を茎葉散布することなく、コムギが3葉期に達した時期に、麦踏み及び培土を行い、10日間隔で麦踏み及び培土を合計3回実施したこと以外は、実施例3と同様の方法で試験を行い、10株平均の分げつ数及び穂数、並びに10株合計の子実重量(収量)を測定した。結果を表2に示す。
【0044】