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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】冷却装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/36 20060101AFI20231011BHJP
   H01L 23/473 20060101ALI20231011BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
H01L23/36 Z
H01L23/46 Z
H05K7/20 N
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019227396
(22)【出願日】2019-12-17
(65)【公開番号】P2021097134
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100173598
【弁理士】
【氏名又は名称】高梨 桜子
(72)【発明者】
【氏名】田村 忍
【審査官】河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-216517(JP,A)
【文献】特開2013-165298(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/36
H01L 23/473
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状であって板面に直交する方向に並んだ複数のフィンを有する冷却装置であって、
前記フィンにおける、板面に平行な長手方向の端部であって冷却液の入口側の端部に、短手方向に並んだ複数の凹部であって当該長手方向の端面における前記複数のフィンの並び方向の全域から長手方向に凹んだ凹部が形成されている
冷却装置。
【請求項2】
前記凹部の前記短手方向の大きさは、前記複数のフィンのフィン間の距離よりも大きい請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
前記複数の凹部の合計面積をS、前記複数のフィンのフィン間の距離をw、前記フィンの短手方向の大きさをh、とした場合に、
S/2>w×h
である
請求項1又は2に記載の冷却装置。
【請求項4】
前記複数の凹部における前記長手方向の大きさは、前記短手方向の一方の端部側に配置される発熱体から遠ざかるに従って大きくなっている
請求項1から3のいずれか1項に記載の冷却装置。
【請求項5】
前記複数の凹部の内の隣り合う凹部にて形成される前記フィンの先端部は、前記板面に対して屈曲している
請求項1から4のいずれか1項に記載の冷却装置。
【請求項6】
前記フィンの複数の先端部の内の一の先端部の屈曲方向と、当該一の先端部とは異なる他の先端部の屈曲方向とは、板面に対して逆である
請求項5に記載の冷却装置。
【請求項7】
板状であって板面に直交する方向に並んだ複数のフィンを有する冷却装置であって、
前記フィンにおける、板面に平行な長手方向の端部であって冷却液の入口側の端部に、短手方向に並んだ複数の凹部が形成され、
前記凹部の前記短手方向の大きさは、前記複数のフィンのフィン間の距離よりも大きい冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車、ハイブリッド自動車、電車などに搭載される電力制御装置に用いられるIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などのパワーデバイス(半導体素子)を冷却する液冷式冷却装置として、複数のフィンを有する冷却装置が提案されている。そして、この種の冷却装置において、フィンに異物が詰まると冷媒の流量が少なくなり冷却効率が低下するため、冷却効率が低下することを抑制する技術が提案されている。
例えば、特許文献1に記載された冷却器は以下のように構成されている。第1フィン群と第2フィン群を備え、第1フィン群は、流路の上流側に配置されており、流路の横断面の長手方向に並んでいるとともに冷媒の流れ方向に延びている。第2フィン群は、第1フィン群の下流側に配置されており、長手方向に並んでいるとともに冷媒の流れ方向に延びており、各フィンが、流路断面の短手方向で対向する流路内面の夫々に接している。第2フィン群のピッチが第1フィン群のピッチよりも大きい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-45857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
冷却性能を向上させるために、隣接するフィン間の距離を小さくし、フィンの枚数を多くすることが考えられる。フィン間の距離を小さくする場合には、異物が詰まり易くなり、冷媒が流れ難くなり易くなる。冷媒が流れ難くなると、フィンの枚数を多くしたとしても、却って冷却性能が悪化するおそれがある。
本発明は、フィン間の距離を小さくすることでフィンの枚数を多くして冷却性能を向上させることができる冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的のもと完成させた本発明は、板状であって板面に直交する方向に並んだ複数のフィンを有する冷却装置であって、前記フィンにおける、板面に平行な長手方向の端部であって冷却液の入口側の端部に、短手方向に並んだ複数の凹部が形成されている冷却装置である。
ここで、前記凹部の前記短手方向の大きさは、前記複数のフィンのフィン間の距離よりも大きくても良い。
また、前記複数の凹部の合計面積をS、前記複数のフィンのフィン間の距離をw、前記フィンの短手方向の大きさをh、とした場合に、S/2>w×hであっても良い。
また、前記複数の凹部における前記長手方向の大きさは、前記短手方向の一方の端部側に配置される発熱体から遠ざかるに従って大きくなっていても良い。
また、前記複数の凹部の内の隣り合う凹部にて形成される前記フィンの先端部は、前記板面に対して屈曲していても良い。
また、前記フィンの複数の先端部の内の一の先端部の屈曲方向と、当該一の先端部とは異なる他の先端部の屈曲方向とは、板面に対して逆であっても良い。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、フィン間の距離を小さくして冷却性能を向上させることができる冷却装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施形態に係る液冷式冷却装置の斜視図である。
図2図1のII-II部の断面図である。
図3図2のIII-III部の断面図である。
図4】(a)は、放熱器における入口ジョイント側の端部の一例を示す斜視図である。(b)は、放熱器を、(a)のIVb方向に見た図である。
図5】放熱器における入口ジョイント側の端部に異物が詰まった状態の一例を示す斜視図である。
図6】(a)は、第2の実施形態に係る放熱器における入口ジョイント側の端部の一例を示す斜視図である。(b)は、放熱器を、(a)のVIb方向に見た図である。
図7】(a)は、第3の実施形態に係る放熱器における入口ジョイント側の端部の一例を示す斜視図である。(b)は、放熱器を、(a)のVIIb方向に見た図である。
図8】(a)及び(b)は、第3の実施形態に係る放熱器における入口ジョイント側の端部の変形例一例を示す斜視図である。
図9】(a)、(b)及び(c)は、放熱器における入口ジョイント側の端部の変形例の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、実施の形態について詳細に説明する。
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態に係る液冷式冷却装置1の斜視図である。
図2は、図1のII-II部の断面図である。
図3は、図2のIII-III部の断面図である。
実施の形態に係る液冷式冷却装置1は、矩形状の複数のフィン11を有する放熱器10と、放熱器10を収納するケース20と、を備えている。また、液冷式冷却装置1は、ケース20の外部から内部に冷却液を流入させる入口ジョイント30と、ケース20の内部から外部に冷却液を流出させる出口ジョイント40と、を備えている。以下では、矩形状のフィン11の長手方向を左右方向、フィン11の短手方向を上下方向、複数のフィン11の並び方向を前後方向と称する場合がある。
【0009】
液冷式冷却装置1は、平板状の絶縁部材Iを介してケース20の外面(本実施の形態においては上面)に装着された発熱体Pを、ケース20の内部に流通させる冷却液及び放熱器10を用いて冷却する装置である。発熱体Pは、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor))等のパワー半導体デバイスであることを例示することができる。また、発熱体Pは、IGBTと、このIGBTを制御する制御回路とがパッケージ化されたIGBTモジュールや、このIGBTモジュールと自己保護機能とがパッケージ化されたインテリジェントパワーモジュールであることを例示することができる。
【0010】
(ケース20)
ケース20は、絶縁部材Iを介して発熱体Pが装着されるケース本体21と、ケース本体21の開口部を覆うカバー22とを備えている。
ケース本体21は、平板状の頂部21aと、頂部21aにおける各端部から頂部21aに直交する方向に下方に突出した側部21bと、側部21bにおける各端部から側部21bに直交する方向に外側に突出したフランジ部21cとを有している。頂部21aにおける、側部21bが設けられた側と反対側の面(上面)の中央部に、絶縁部材Iを介して発熱体Pが装着される。そして、頂部21aにおける、絶縁部材I及び発熱体Pが配置される部位よりも左右方向それぞれの外側には、ケース20の内部と外部とを連通するように貫通された、入口用貫通孔21dと出口用貫通孔21eとが形成されている。
【0011】
カバー22は、平板状であり、かつ、矩形状であり、ケース本体21のフランジ部21cよりも大きい。カバー22における4つの角部には、液冷式冷却装置1を他の部材に取り付けるためのボルト等を通す貫通孔221が形成されている。
【0012】
ケース20は、ケース本体21のフランジ部21cとカバー22とがろう付されることで、内部に放熱器10を収納可能なように箱状に構成される。ケース本体21及びカバー22は、アルミニウムブレージングシートを使用して成形されることを例示することができる。その際、少なくとも、互いに対向する一面にろう材層が位置する。
そして、ケース本体21とカバー22とがろう付されることで、ケース20内における入口用貫通孔21dよりも下方には流入側空間23が形成され、ケース20内における出口用貫通孔21eよりも下方には流出側空間24が形成される。
【0013】
(入口ジョイント30)
入口ジョイント30は、円筒状の円筒状部31と、直方体状の直方体状部32とを有し、冷却液を流通させることが可能なように、内部が空洞に形成されている。円筒状部31の一方の端部(右端部)は開口しており、他方の端部は直方体状部32と接続している。直方体状部32における一面(下面)には、入口ジョイント30の内部と外部とを連通する貫通孔33が形成されている。入口ジョイント30は、貫通孔33が形成された面が、ケース本体21の頂部21aにおける発熱体Pが装着された面(上面)上に載せられた状態で、ケース本体21にろう付される。その際、入口ジョイント30の貫通孔33と、ケース本体21の入口用貫通孔21dとを介して、入口ジョイント30の内部とケース本体21の内部とが連通される。
【0014】
(出口ジョイント40)
出口ジョイント40は、円筒状の円筒状部41と、直方体状の直方体状部42とを有し、冷却液を流通させることが可能なように、内部が空洞に形成されている。円筒状部41の一方の端部(左端部)は開口しており、他方の端部は直方体状部42と接続している。直方体状部42における一面(下面)には、出口ジョイント40の内部と外部とを連通する貫通孔43が形成されている。出口ジョイント40は、貫通孔43が形成された面が、ケース本体21の頂部21aにおける発熱体Pが装着された面(上面)上に載せられた状態で、ケース本体21にろう付される。その際、出口ジョイント40の貫通孔43と、ケース本体21の出口用貫通孔21eとを介して、出口ジョイント40の内部とケース本体21の内部とが連通される。
【0015】
(放熱器10)
放熱器10は、板状であって板面に直交する方向に並んだ複数のフィン11を有している。上下方向に見た場合に、複数のフィン11が配置された領域は、絶縁部材Iよりも大きい。
フィン11は、矩形状であり、フィン11の短手方向が図1に示した上下方向、フィン11の長手方向が図1に示した左右方向となるように配置されている。また、複数のフィン11は、フィン11の表面に直交する方向に、隣接するフィン間の距離、言い換えれば、フィン11とフィン11との間の隙間が、予め定められた間隔w(以下、「所定間隔w」と称する場合がある。)で並べられている。複数のフィン11は、並び方向が図1に示した前後方向となるように配置されている。
【0016】
放熱器10は、複数のフィン11の上端部がケース本体21の頂部21aにおける、発熱体Pが装着される面とは反対側の面(下面)にろう付され、複数のフィン11の下端部がカバー22の上面にろう付されることで、ケース20内に固定される。ろう付する際には、複数のフィン11の下端部とカバー22とを接合した後に、ケース本体21とカバー22とをろう付するのと同時に、複数のフィン11の上端部とケース本体21とのろう付を行うことを例示することができる。なお、複数のフィン11の下端部とカバー22との接合は、圧着、接着、ろう付等の溶着であることを例示することができる。また、複数のフィン11の下端部とカバー22とのろう付、複数のフィン11の上端部とケース本体21とのろう付、ケース本体21とカバー22とのろう付を全て同時に行っても良い。
【0017】
図4(a)は、放熱器10における入口ジョイント30側の端部の一例を示す斜視図である。
図4(b)は、放熱器10を、図4(a)のIVb方向に見た図である。言い換えれば、図4(b)は、フィン11における入口ジョイント30側の端部の一例を、前後方向に見た図である。
【0018】
図4(a)及び図4(b)に示すように、フィン11における、長手方向の端部であって入口ジョイント30側の端部に、複数の凹部111が短手方向に等間隔で形成されている。各凹部111は、直方体状であることを例示することができる。つまり、各凹部111を前後方向に見た形状は、長方形である。そして、凹部111の短手方向の大きさである幅aは、隣接するフィン11間の距離である所定間隔wよりも大きい。つまり、幅a>所定間隔wである。
【0019】
また、隣接するフィン11間に形成される後述するフィン間流路14の流路面積よりも、隣接するフィン11に形成された凹部111を介して、当該隣接するフィン11間に形成される流路に流れるバイパス路の流路面積の(1/2)の方が大きくなるように各部位の大きさが設定されている。つまり、各フィン11に形成された凹部111の数をN、凹部111の長手方向の大きさを深さbとすると、各フィン11における複数の凹部111の合計面積Sは、「合計面積S=幅a×深さb×N個」となる。そして、フィン11の短手方向の大きさを高さhとした場合に、「合計面積S/2>所定間隔w×高さh」となるように各部位の大きさが設定されている。バイパス路の流路面積の(1/2)を基準としたのは、冷却液が、凹部111を介して、当該凹部111が形成されたフィン11の両側に形成されたフィン間流路14に流れ込み得るからである。
【0020】
なお、フィン11の材質は、アルミニウム又はアルミニウム合金等のアルミニウム材であることを例示することができる。また、フィン11の材質は、銅、アルミニウム又はアルミニウム合金とカーボンとの複合材であっても良い。
また、フィン11は、例えばアルミニウム材からなる板材にプレス加工を施すことによって成形されることを例示することができる。フィン11の厚さ(板材の板厚)は、0.3~1.2mmであることを例示することができる。フィン11の厚さは、液冷式冷却装置1全体の大きさや、ケース20を流通する冷却液の種類、又はフィン11の熱伝導率に応じて適宜変更される。
【0021】
以上のように構成された液冷式冷却装置1においては、入口ジョイント30の内部及び入口用貫通孔21dを通ってケース20内の流入側空間23に冷却液が流入する。そして、放熱器10における、複数のフィン11の内の互いに隣接するフィン11間の隙間にて形成されるフィン間流路14(図3参照)内を左方向に流れ、流出側空間24に至る。また、放熱器10における最も前側のフィン11とケース本体21の側部21bとの間にて形成される前側流路15(図3参照)、及び、放熱器10における最も後側のフィン11とケース本体21の側部21bとの間の隙間にて形成される後側流路16(図3参照)を通って左方向に流れ、流出側空間24に至る。流出側空間24に至った冷却液は、出口用貫通孔21e及び出口ジョイント40の内部を通ってケース20の外に流出する。
【0022】
そして、発熱体Pから発せられた熱は、絶縁部材I、ケース本体21の頂部21a、及び、放熱器10のフィン11を経て、フィン間流路14、前側流路15、及び、後側流路16を流れる冷却液に放熱される。これにより、発熱体Pが冷却される。
【0023】
図5は、放熱器10における入口ジョイント30側の端部に異物が詰まった状態の一例を示す斜視図である。
また、本実施の形態に係る液冷式冷却装置1においては、放熱器10のフィン11における入口ジョイント30側の端部に、複数の凹部111が形成されているので、冷却液に混入した異物を捕まえ易い。つまり、隣接する凹部111間は凸状の先端部112が設けられており、異物に対して、線ではなく点で接触し易くなるので、例えば糸状の異物も凸状の先端部112の最先端に引っ掛かり易くなる。それゆえ、異物が、フィン間流路14等の冷却液の流路における下流側の部位で詰まることを抑制することができる。なお、「異物」は、冷却液に混入したごみ、又は、モーターケース、ラジエータ、ウォーターポンプ等同一系統の冷却流路において、液冷式冷却装置1よりも上流で冷却液が流通する流路の内壁から剥がれた物であることを例示することができる。
【0024】
そして、放熱器10のフィン11においては、凹部111の幅aは、隣接するフィン11間の距離である所定間隔wよりも大きいので、放熱器10における入口ジョイント30側の端部に異物が詰まったとしても、幅a≦所定間隔wである場合よりも、冷却液が凹部111を通り易くなる。それゆえ、異物が詰まった部位においても冷却液の流路の閉塞を抑制することができる。また、「合計面積S/2>所定間隔w×高さh」となるように各部位の大きさが設定されている。これにより、冷却液が凹部111を通る際の抵抗を、フィン11間を通る抵抗よりも小さくすることができる。このように、本実施の形態に係る放熱器10においては、異物を捕まえつつも、冷却液の流れを図5に示す矢印のようにバイパスさせ、冷却液の流路が閉塞し難くなるようにすることができる。
【0025】
以上のことより、放熱器10を有する液冷式冷却装置1によれば、フィン11間の距離(所定間隔w)を小さくしても、異物が冷却液の流路における下流側の部位で詰まることを抑制することができるとともに、冷却液が流れる際の抵抗を抑制することができるので、フィン11の枚数をふやすことができ、冷却性能を向上させることができる
【0026】
また、放熱器10のフィン11は、例えばアルミニウム材からなる板材にプレス加工を施すことによって成形されるが、凹部111も、フィン11の外形を成形するのと同時に加工できる。それゆえ、フィン11に凹部111を形成することに起因して、フィン11の製造コストは高くなり難い。
【0027】
なお、上述した実施の形態においては、放熱器10のフィン11の凹部111の形状は、「幅a>所定間隔w」であり、かつ、「合計面積S/2>所定間隔w×高さh」であることを例示したが、特にかかる態様に限定されない。「幅a>所定間隔w」か、「合計面積S/2>所定間隔w×高さh」のいずれか一方を満たす形状であっても良い。
【0028】
<第2の実施形態>
図6(a)は、第2の実施形態に係る放熱器50における入口ジョイント30側の端部の一例を示す斜視図である。
図6(b)は、放熱器50を、図6(a)のVIb方向に見た図である。
第2の実施形態に係る放熱器50は、第1の実施形態に係る放熱器10に対して、フィン11に相当するフィン60が異なる。以下、放熱器10と異なる点について説明する。第2の実施形態と第1の実施形態とで、同じ機能を有する物については同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0029】
フィン60は、長手方向の大きさである深さが異なる凹部61、凹部62、凹部63、凹部64、凹部65、凹部66が、絶縁部材Iを介して発熱体Pが装着されたケース本体21側からカバー22にかけて順に形成されている。そして、凹部61、凹部62、凹部63、凹部64、凹部65、凹部66における深さを、それぞれb1、b2、b3、b4、b5、b6とすると、図6に示すように、b1<b2<b3<b4<b5<b6と、ケース本体21から遠ざかるに従って深くなるように形成されている。言い換えれば、発熱体Pから発せられた熱は、図6に二点鎖線で示したように、上に絶縁部材Iが存在しない領域においては、絶縁部材Iの端部から放射状にフィン60に伝達されるため、ケース本体21の頂部21aに近いほど、冷却液との接触面積を大きくするべく、深さが小さくなるように形成されている。
【0030】
第2の実施形態に係るフィン60によれば、例えば、深さがb1で一定である場合よりも、冷却液がバイパス路を流れる際の抵抗を小さくすることができる。このように、フィン60によれば、異物を捕まえつつも、冷却液の流路が閉塞し難くなるようにすることができる。
その結果、第2の実施形態に係る放熱器50によれば、フィン60間の距離を小さくすることでフィン60の枚数を多くして冷却性能を向上させることができる。
【0031】
<第3の実施形態>
図7(a)は、第3の実施形態に係る放熱器70における入口ジョイント30側の端部の一例を示す斜視図である。
図7(b)は、放熱器70を、図7(a)のVIIb方向に見た図である。言い換えれば、図7(b)は、フィン71における入口ジョイント30側の端部の一例を、入口ジョイント30側から出口ジョイント40側の方へ見た図である。
第3の実施形態に係る放熱器70は、第1の実施形態に係る放熱器10に対して、フィン11に相当するフィン71の形状が異なる。以下、放熱器10と異なる点について説明する。第3の実施形態と第1の実施形態とで、同じ機能を有する物については同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0032】
第3の実施形態に係るフィン71は、長手方向の端部であって入口ジョイント30側の端部に、複数の凹部711が短手方向に等間隔で形成されているとともに、複数の凹部711の内の隣り合う凹部711にて形成されるフィン71の先端部712は、板面に対して屈曲している。そして、フィン71の先端部712における最先端が、図7(b)に示すように、フィン71の長手方向に見た場合に、隣接するフィン71間に形成されるフィン間流路14と重複する位置となるように先端部712が形成されている。また、複数の先端部712の内の一の先端部713の屈曲方向と、一の先端部713と隣り合う他の先端部714の屈曲方向とは、フィン71の板面に対して逆である。さらに、図7(a)及び図7(b)に示した例においては、一の先端部713と他の先端部714とは、短手方向に交互になるように成形されている。
【0033】
第3の実施形態に係る放熱器70は、フィン71の先端部712が、フィン71の長手方向に見た場合に、フィン間流路14と重複するように位置する。言い換えれば、入口ジョイント30から出口ジョイント40へと流れる冷却液の流路の一部であるフィン間流路14の入り口の一部を塞ぐように先端部712が存在する。それゆえ、放熱器70によれば、所定間隔wよりも少し小さい異物をも先端部712にて捕まえ易いので、異物が、フィン間流路14等の冷却液の流路における下流側の部位で詰まることを抑制することができる。
【0034】
さらに、第3の実施形態に係る放熱器70においては、一の先端部713と他の先端部714とは、短手方向に交互になるように成形されている。それゆえ、図7(b)に示すように、複数のフィン71の内の一のフィン71aの一の先端部713と、当該一のフィン71aに隣接する他のフィン71bの他の先端部714とで、一のフィン71aと他のフィン71bにて形成されるフィン間流路14の入口の開口面積が狭められている。それゆえ、放熱器70によれば、冷却液に混入した異物を捕まえ易いので、異物が、フィン間流路14等の冷却液の流路における下流側の部位で詰まることを抑制することができる。
【0035】
また、第3の実施形態に係る放熱器70においても、放熱器10と同様に、フィン71の凹部711の短手方向の大きさである幅aは、隣接するフィン71間の大きさである所定間隔wよりも大きい。また、「合計面積S/2>所定間隔w×高さh」となるように各部位の大きさが設定されている。それゆえ、放熱器70における入口ジョイント30側の端部に異物が詰まったとしても、幅a≦所定間隔wである場合よりも、冷却液が凹部711を通り易くなる。それゆえ、異物が詰まった部位においても流路の閉塞を抑制することができる。また、「合計面積S/2>所定間隔w×高さh」であるので、冷却液が凹部111を通る際の抵抗を、フィン71間を通る抵抗よりも小さくすることができる。このように、第3の実施形態に係る放熱器70においては、異物を捕まえつつも、冷却液の流れをバイパスさせ、流路が閉塞し難くなるようにすることができる。
その結果、第3の実施形態に係る放熱器70によれば、フィン60間の距離を小さくすることでフィン60の枚数を多くして冷却性能を向上させることができる。
【0036】
また、フィン71は、例えばアルミニウム材からなる板材にプレス加工を施すことによって成形される際に、凹部711、先端部712も、フィン71の外形を成形するのと同時に加工できる。それゆえ、フィン71に凹部711、先端部712を形成することに起因して、フィン71の製造コストは高くなり難い。
【0037】
(変形例)
図8(a)及び図8(b)は、第3の実施形態に係る放熱器70における入口ジョイント30側の端部の変形例の一例を示す斜視図である。
図7(a)及び図7(b)を用いて例示したフィン71においては、屈曲方向が異なる一の先端部713と他の先端部714とが、短手方向に交互になるように成形されているが、特にかかる態様に限定されない。先端部712の屈曲方向は、図8(a)及び図8(b)に示す方向であっても良い。
【0038】
例えば、図8(a)に例示するように、先端部712は、フィン71の板面に対して全て同じ方向に屈曲し、全ての先端部712が、フィン71の長手方向に見た場合に、フィン間流路14と重複するように位置していても良い。先端部712がかかる形状であっても、所定間隔wよりも少し小さい異物をも先端部712にて捕まえ易いので、異物が、フィン間流路14等の冷却液の流路における下流側の部位で詰まることを抑制することができる。
【0039】
また、図8(b)に例示するように、先端部712は、フィン71の板面に対して異なる方向に屈曲した一の先端部715及び他の先端部716と、フィン71の板面に対して屈曲していない平行な先端部717とを有するとともに、一の先端部715と他の先端部716とが、平行な先端部717を介して交互に設けられていても良い。そして、一の先端部715と他の先端部716とが、フィン71の長手方向に見た場合に、フィン間流路14と重複するように位置することで、所定間隔wよりも少し小さい異物をも先端部712にて捕まえ易いので、異物が、フィン間流路14等の冷却液の流路における下流側の部位で詰まることを抑制することができる。
【0040】
図9(a)、図9(b)及び図9(c)は、放熱器70における入口ジョイント30側の端部の変形例の一例を示す斜視図である。
図9(a)、図9(b)及び図9(c)に示すように、図7(a)及び図7(b)に例示した第3の実施形態に係る放熱器70、図8(a)及び図8(b)に例示した変形例に係る放熱器70においても、第2の実施形態に係る放熱器50と同様に、凹部711における深さを、ケース本体21の頂部21aから遠ざかるに従って深くなるように形成しても良い。これにより、深さが一定である場合よりも、冷却液がバイパス路を流れる際の抵抗を小さくすることができ、異物を捕まえつつも、冷却液の流路が閉塞し難くなるようにすることができる。その結果、第2の実施形態に係る放熱器50によれば、フィン60間の距離を小さくすることでフィン60の枚数を多くして冷却性能を向上させることができる。
【符号の説明】
【0041】
1…液冷式冷却装置、10,50,70…放熱器、11,60,71…フィン、20…ケース、30…入口ジョイント、40…出口ジョイント、111,61,62,63,64,65,66,711…凹部、112,712…先端部、P…発熱体、I…絶縁部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9