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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】センサ付きケーブル及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01P 1/02 20060101AFI20231011BHJP
   H02G 15/04 20060101ALI20231011BHJP
   H02G 1/14 20060101ALI20231011BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20231011BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
G01P1/02
H02G15/04
H02G1/14 050
H01B7/00 306
H01B13/00 521
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020019542
(22)【出願日】2020-02-07
(65)【公開番号】P2021124450
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐川 正憲
(72)【発明者】
【氏名】片岡 裕太
(72)【発明者】
【氏名】池田 幸雄
【審査官】岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-4694(JP,A)
【文献】特開2009-58524(JP,A)
【文献】特開2019-169287(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0256756(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01P 1/00- 3/80
H01B 7/00- 7/02
H01B 7/38- 7/40
H01B13/00-13/016
H01B13/34
H02G 1/14- 1/16
H02G15/00-15/196
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルの端部にセンサ部を設けたセンサ付きケーブルであって、
前記センサ部は、
前記ケーブルの端部に接続された検出部と、
前記ケーブルの端部及び前記検出部の周囲を覆うように設けられたホルダと、
前記ホルダの周囲を覆う樹脂モールド部と、を有し、
前記ホルダは、前記ケーブルをクランク状に曲げた状態で保持するように構成されると共に、前記樹脂モールド部を形成する際に前記ホルダ内に樹脂を流入させるための樹脂流入口を有し、
前記樹脂流入口は、前記ケーブルをクランク状に曲げた屈曲部において、前記ケーブルを谷状に屈曲している曲げの内側部分と対向するように形成されており、
前記ホルダ内には、前記樹脂流入口で前記樹脂モールド部と連通する樹脂充填部を有する、
センサ付きケーブル。
【請求項2】
前記樹脂充填部は、前記樹脂モールド部と同じ樹脂からなり、前記ホルダと、前記ホルダ内に収容された前記ケーブル及び前記検出部との間に充填されている、
請求項1に記載のセンサ付きケーブル。
【請求項3】
前記ケーブルは複数本の電線を有し、
前記複数本の電線が、前記ホルダ内でクランク状に曲げた状態で保持されている、
請求項1または2に記載のセンサ付きケーブル。
【請求項4】
前記ホルダは、並べて配置された前記複数本の電線を、その整列方向と垂直な方向から挟み込むように2分割して構成されており、
前記ホルダを2分割した2つの分割ホルダうち一方の下側分割ホルダは、前記複数本の電線を収容する電線収容溝を有し、
前記下側分割ホルダにおける電線延出部での前記電線収容溝の深さが、前記電線の半径よりも深い、
請求項3に記載のセンサ付きケーブル。
【請求項5】
前記下側分割ホルダは、前記電線をクランク状に曲げた屈曲部による前記電線のオフセット方向における前記検出部側に設けられている、
請求項4に記載のセンサ付きケーブル。
【請求項6】
前記検出部は、前記センサ部と対向して配置された被検出部材からの磁界を検出する磁気検出素子を含む、
請求項1乃至5の何れか1項に記載のセンサ付きケーブル。
【請求項7】
ケーブルの端部にセンサ部を設けたセンサ付きケーブルの製造方法であって、
前記センサ部は、
前記ケーブルの端部に接続された検出部と、
前記ケーブルの端部及び前記検出部の周囲を覆うように設けられたホルダと、
前記ホルダの周囲を覆う樹脂モールド部と、を備え、
前記ホルダは、前記ケーブルをクランク状に曲げた状態で保持するように構成されると共に、前記樹脂モールド部を形成する際に前記ホルダ内に樹脂を流入させるための樹脂流入口を有し、
前記樹脂流入口は、前記ケーブルをクランク状に曲げた屈曲部において、前記ケーブルを谷状に屈曲している曲げの内側部分と対向するように形成されており、
前記樹脂モールド部の形成時に、前記樹脂流入口より、前記ホルダと、前記ホルダ内に収容された前記ケーブル及び前記検出部との間に樹脂を充填して、前記樹脂モールド部と同じ樹脂からなる樹脂充填部を形成する、
センサ付きケーブルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサ付きケーブル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ケーブルの端部にセンサ部を一体に設けたセンサ付きケーブルが知られている。例えば、回転部材に取り付けた環状の磁石による磁界の変化を、センサ付きケーブルのセンサ部に設けられた磁気センサで検出する回転検出装置等が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
センサ付きケーブルのセンサ部は、ケーブルの端部に接続されたセンシング用の電子部品である検出部と、ケーブルの端部とを覆うように樹脂モールド部を設けて構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-134139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
センサ付きケーブルでは、運搬時や取り付け作業時に作業者がケーブルを持つことが多く、センサ部に対してケーブルを引っ張る力がかかりやすい。ケーブルを引っ張る力が加えられると、センサ部内で検出部に対してケーブルが引き抜かれるように力が働き、ケーブルと検出部との接合部が破損してしまうおそれがある。そのため、ケーブルに引っ張る力が加えられた場合であっても、ケーブルと検出部との接合部を保護して、センサ部の故障を抑制することが望まれる。
【0006】
また、生産性を向上させるために、ケーブルの引っ張りによるセンサ部の故障を抑制しつつも、製造の容易なセンサ付きケーブルが望まれている。
【0007】
そこで、本発明は、ケーブルの引っ張りによるセンサ部の故障を抑制でき、かつ製造の容易なセンサ付きケーブル及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、ケーブルの端部にセンサ部を設けたセンサ付きケーブルであって、前記センサ部は、前記ケーブルの端部に接続された検出部と、前記ケーブルの端部及び前記検出部の周囲を覆うように設けられたホルダと、前記ホルダの周囲を覆う樹脂モールド部と、を有し、前記ホルダは、前記ケーブルをクランク状に曲げた状態で保持するように構成されると共に、前記樹脂モールド部を形成する際に前記ホルダ内に樹脂を流入させるための樹脂流入口を有し、前記ホルダ内には、前記樹脂流入口で前記樹脂モールド部と連通する樹脂充填部を有する、センサ付きケーブルを提供する。
【0009】
また、本発明は、上記課題を解決することを目的として、ケーブルの端部にセンサ部を設けたセンサ付きケーブルの製造方法であって、前記センサ部は、前記ケーブルの端部に接続された検出部と、前記ケーブルの端部及び前記検出部の周囲を覆うように設けられたホルダと、前記ホルダの周囲を覆う樹脂モールド部と、を備え、前記ホルダは、前記ケーブルをクランク状に曲げた状態で保持するように構成されると共に、前記樹脂モールド部を形成する際に前記ホルダ内に樹脂を流入させるための樹脂流入口を有し、前記樹脂モールド部の形成時に、前記樹脂流入口より、前記ホルダと、前記ホルダ内に収容された前記ケーブル及び前記検出部との間に樹脂を充填して、前記樹脂モールド部と同じ樹脂からなる樹脂充填部を形成する、センサ付きケーブルの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ケーブルに引っ張る力が加えられた場合のセンサ部の故障を抑制でき、かつ製造の容易なセンサ付きケーブル及びその製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】(a),(b)は、本発明の一実施の形態に係るセンサ付きケーブルを示す斜視図である。
図2】センサ付きケーブルの破断面図である。
図3】樹脂モールド部を省略したセンサ付きケーブルを示す図であり、(a)は斜視図、(b)は側面図である。
図4】ホルダ、検出部、及びケーブルを示す分解斜視図である。
図5】ホルダ、検出部、及びケーブルを示す分解斜視図である。
図6】ホルダのケーブル延出部を示す図であり、(a)は分解斜視図、(b)はケーブル延出側から見た背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0013】
図1(a),(b)は、本実施の形態に係るセンサ付きケーブルを示す斜視図である。図2は、センサ付きケーブルの破断面図である。図1及び図2に示すように、センサ付きケーブル1は、ケーブル2の端部にセンサ部3を一体に設けて構成されている。
【0014】
本実施の形態では、センサ付きケーブル1が、自動車における車輪の回転速度、すなわち車輪速を検出するために用いられるものである場合について説明する。この場合、車輪が取り付けられ車輪と共に回転する内輪には、周方向に沿って複数の磁極が設けられている被検出部材(磁気エンコーダ)が設けられており、この被検出部材と対向するようにセンサ部3が設けられる。
【0015】
(ケーブル2)
ケーブル2は、複数本の電線21を有している。本実施の形態では、ケーブル2が2本の電線21により構成されている場合を説明するが、電線21の本数はこれに限定されない。また、本実施の形態では、2本の電線21がセンサ部3より直接延出される構成となっているが、これに限らず、例えば、2本の電線21を一括して被覆するシースを有し、シースの端部がセンサ部内に入り込んでいる構造となっていてもよい。
【0016】
電線21は、導体211と、導体211の周囲を被覆している絶縁体212と、を有している。導体211は、複数本の素線を撚り合わせた撚線導体からなる。導体211に用いる素線は、例えば、銅や銅合金からなる。絶縁体212は、例えば架橋ポリエチレンやPVC(ポリ塩化ビニル)等の絶縁性の樹脂からなる。なお、電線21の具体的な構造はこれに限定されず、例えば、絶縁体212の周囲に外部導体とシースを順次設けた同軸線であってもよい。また、本実施の形態では2本の電線21として同じ構造のものを用いているが、例えば導体断面積や外径が異なる電線21を含んでもよい。
【0017】
両電線21の端部では、絶縁体212から導体211が露出されている。絶縁体212から露出された導体211の先端部は、対応する検出部4の接続端子42(後述する)に、溶接により電気的に接続されている。
【0018】
本実施の形態では、電線21は、センサ部3内でクランク状に曲げた状態で配線されている。これにより、電線21(ケーブル2)を引っ張った際に、当該引張力が検出部4と電線21との接合部に直接作用することが抑制され、接合部の破損を抑制することが可能になる。なお、複数の電線21をシースで覆った状態でクランク状に曲げた場合、外径が大きくなり直線状に戻ろうとする復元力が大きくなってしまい、クランク状の曲げ形状を維持できなくなるおそれがあるため、シースを備える場合であっても、シースから露出させた電線21をクランク状に曲げることが望ましい。
【0019】
より詳細には、両電線21は、電線21の配列方向と垂直な面内で2回屈曲されている。2つの屈曲部のうち検出部4側を第1屈曲部21aと呼称し、センサ部3から電線21を延出している側(電線延出側)を第2屈曲部21bと呼称する。また、第1屈曲部21aと第2屈曲部21bと両屈曲部21a,21b間の電線21をあわせてクランク屈曲部21cと呼称する。また、第1屈曲部21aよりも検出部4側に配置される電線21を検出部側直線部21dと呼称し、第2屈曲部21bよりも電線延出側であってセンサ部3内に配置される電線21を延出側直線部21eと呼称する。
【0020】
第1屈曲部21aと第2屈曲部21bでは、互いに逆方向に電線21が屈曲されており、両屈曲部21a,21bの屈曲角度(絶対値)は同じ角度とされる。これにより、検出部側直線部21dと延出側直線部21eとは、略平行となるように配置される。また、クランク屈曲部21cを有することにより、延出側直線部21eは、検出部側直線部21dに対してオフセットした位置から延出されることになる。以下、検出部側直線部21dに対して延出側直線部21eがオフセットしている方向(電線21の配列方向及び電線21の延出方向に対して垂直な方向、図2における上下方向)を電線21のオフセット方向という。
【0021】
(センサ部3)
図3は、樹脂モールド部6を省略したセンサ付きケーブル1を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は側面図である。図4,5は、ホルダ5、検出部4、及びケーブル2を示す分解斜視図である。
【0022】
図2乃至5に示すように、センサ部3は、ケーブル2(電線21)の端部に接続されたセンシング用の電子部品である検出部4と、ケーブル2(電線21)の端部及び検出部4の周囲を覆うように設けられたホルダ5と、ホルダ5の周囲を覆う樹脂モールド部6と、を有している。センサ部3は、例えば、自動車の車体に連結され外輪を支持するナックル等の固定部材に取り付けられる。
【0023】
(検出部4)
本実施の形態では、検出部4は、センサ部3と対向して配置された被検出部材からの磁界を検出する磁気検出素子を含む磁気センサで構成されている。磁気検出素子としては、GMR(Giant Magneto Resistive effect)素子、AMR(Anisotropic Magneto Resistive)素子、TMR(Tunneling Magneto Resistive)素子、ホール素子等を用いることができる。
【0024】
検出部4は、磁気検出素子を含む板状の本体部41と、本体部41から延出された一対の接続端子42と、を有している。本体部41は、磁気検出素子(不図示)と、磁気検出素子から出力された信号を処理する信号処理回路(不図示)と、磁気検出素子と信号処理回路とを一括して覆う覆い体としての樹脂モールド41aと、を有している。本体部41は、平面視で略長方形の板状に形成されている。
【0025】
一対の接続端子42は、本体部41の一方の長辺から当該長辺と垂直な方向に延出されており、両接続端子42は互いに平行に形成されている。本実施の形態では、両接続端子42は帯状(細長い板状)に形成されており、その先端部(本体部41と反対側の端部)には、対応する電線21の導体211が電気的に接続されている。
【0026】
(ホルダ5)
ホルダ5は、樹脂モールド部6のモールド時に、検出部4及び検出部4と電線21との接合部を保護する役割と、ケーブル2(ここでは電線21)をクランク状に曲げた状態で保持する役割とを果たしている。
【0027】
本実施の形態では、ホルダ5は、並べて配置された電線21を、その整列方向と垂直な方向(すなわち電線21のオフセット方向)から挟み込むように2分割して構成されている。ホルダを2分割した2つの分割ホルダ51うち、電線21のオフセット方向における検出部4側(図2乃至5の下側)に配置される分割ホルダ51を下側分割ホルダ52と呼称し、電線21のオフセット方向における電線延出側(図2乃至5の上側)に配置される分割ホルダ51を上側分割ホルダ53と呼称する。以下、説明の簡略化のため、電線21のオフセット方向における電線延出側を上側、検出部4側を下側と呼称する。また、電線21の延出方向における検出部4側を前側、電線延出側を後側と呼称する。ただし、当該上下、前後の方向は便宜上のものであり、センサ付きケーブル1の使用状態における上下、前後の方向を規定するものではない。
【0028】
下側分割ホルダ52は、側面視で全体としてクランク状に形成されており、前後方向に延設された検出部収容部521と、検出部収容部521の後端部から上方に延びる垂直部522と、垂直部522の上端部から後方に延びる電線延出部523と、を一体に有している。
【0029】
検出部収容部521の上面には、検出部4を収容する検出部収容溝54が形成されている。検出部収容溝54は、本体部41を収容する本体部収容溝54aと、本体部41と連通され一対の接続端子42をそれぞれ収容する一対の端子収容溝54bと、を有している。本体部収容溝54aは、前方に開口している。また、検出部収容部521は、本体部収容溝54aに本体部41を収容した状態において、本体部41よりも前方に突出するように形成されている。これは、後述する樹脂充填部7により本体部41の前面が覆われた状態とするためである。
【0030】
端子収容溝54bの後端部と連通し、かつ、垂直部522の前面、及び電線延出部523の上面とにわたるように、一対の電線21をそれぞれ収容する一対の電線収容溝55が形成されている。
【0031】
図6(a),(b)に示すように、本実施の形態では、下側分割ホルダ52における電線延出部523での電線収容溝55の深さdは、電線21の半径rよりも深く形成されている。本実施の形態では、下側分割ホルダ52の検出部収容溝54及び電線収容溝55に、検出部4及び電線21を収容した後に、下側分割ホルダ52の上方から上側分割ホルダ53をかぶせて、検出部4及び電線21をホルダ5に保持させる。その際、下側分割ホルダ52の電線収容溝55が浅いと、電線21が電線収容溝55から浮き上がり、両分割ホルダ52,53の間に電線21が挟み込まれてしまうおそれが生じる。特に、本実施の形態では電線21がクランク状に曲げられているため、電線21が電線収容溝55から浮いてしまいやすい。
【0032】
電線収容溝55の深さdを電線21の半径rよりも深くすることで、組立時にたとえ電線収容溝55の底から電線21が多少浮いてしまった場合であっても、両分割ホルダ52,53の間に電線21が挟み込まれにくくなる。電線21の挟み込みをより抑制するために、電線延出部523の電線収容溝55は、底から開口(下側から上側)に向かって、徐々に開口幅が広くなるテーパ状に形成されていることがより望ましい。
【0033】
上側分割ホルダ53は、前後方向に延設された検出部側蓋部531と、検出部側蓋部531の後端部から斜め上方に延びる傾斜部532と、傾斜部532の後端部から上方に延びる垂直蓋部533と、垂直蓋部533の上端部から後方に延びる電線延出側蓋部534と、を一体に有している。
【0034】
検出部側蓋部531は、下側分割ホルダ52の検出部収容部521の上面に当接し、検出部収容溝54及び電線収容溝55の開口を塞ぐように設けられる。検出部側蓋部531には、検出部4の本体部41の上部を収容する上側本体部収容溝531aが形成されている。また、検出部側蓋部531の後端部と傾斜部532の前端部とにわたるように、電線21の絶縁体212との干渉を避けるための絶縁体回避溝531bが形成されている。
【0035】
傾斜部532は、電線21の第1屈曲部21aと対向するように設けられており、両分割ホルダ52,53を一体とした状態において、傾斜部532と電線21との間には隙間が形成されるようになっている。傾斜部532には、樹脂モールド部6を形成する際にホルダ5内に樹脂を流入させるための樹脂流入口56が形成されている。樹脂流入口56は、傾斜部532の幅方向(上下方向及び前後方向に対して垂直な方向)における中央部に形成されており、傾斜部532を貫通するように設けられている。
【0036】
樹脂モールド部6の形成時に樹脂流入口56から流入した樹脂は、両分割ホルダ52,53間の空間に流入するが、この際、樹脂の流入による樹脂圧によって電線21は下側分割ホルダ52に押し付けられ、第1屈曲部21aの屈曲角度が90度に近い角度に保たれる。その結果、ケーブル2を引っ張る力が検出部4と電線21との接合部に直接作用することが抑制され、接合部の破損を抑制することが可能になる。
【0037】
なお、樹脂流入口56を形成する位置はこれに限らず、例えば、図3(b)に破線矢印で示すように、第2屈曲部21bにおける曲げの内側へと樹脂を流入させるように、下側分割ホルダ52における垂直部522と電線延出部523の境界部分に樹脂流入口56を形成してもよい。すなわち、樹脂流入口56は、電線21をクランク状に曲げた第1及び第2屈曲部21a,21bにおいて、電線21を谷状に屈曲している曲げの内側部分と対向するように形成されていることが望ましい。ここで、本実施の形態では、樹脂流入口56は上面視において2本の電線21の間(幅方向中央)に位置するため、厳密には第1屈曲部21aと対向していないが、本実施の形態では、「電線21を谷状に屈曲している曲げの内側部分と対向する」位置とは、側面視(図3(b)参照)において第1屈曲部21aの曲げの内側と対向する位置を表すものとする。
【0038】
なお、樹脂流入口56は、第1屈曲部21aや第2屈曲部21bと対向しない位置に形成されていてもよい。ただし、この場合、第1屈曲部21aや第2屈曲部21bのなるべく近傍に樹脂流入口56を設けることが望ましく、樹脂流入口56から流入した樹脂の樹脂圧により、屈曲部21a,21bにおける曲げの内側から外側のホルダ5へと電線21を押し付ける力が作用するように、樹脂流入口56の位置や角度を適宜調整する必要がある。
【0039】
また、本実施の形態では、傾斜部532の下面と、下側分割ホルダ52(検出部収容部521の上面及び垂直部522の前面)との間に側面視で三角形状の隙間57が形成され、この隙間57からもホルダ5内に樹脂が流入することになる。これにより、隙間57からホルダ5内に流れ込んだ樹脂と樹脂流入口56から流れ込んだ樹脂とが電線21上で合流し、電線21を下側分割ホルダ52に押し付ける力がより強くなる。ただし、この隙間57は必須ではなく、省略可能である。
【0040】
垂直蓋部533は、下側分割ホルダ52の垂直部522の上部における前面に当接し、電線収容溝55の開口を塞ぐように設けられる。
【0041】
電線延出側蓋部534には、電線21の上部を収容する上側電線収容溝534aが形成されている。上側電線収容溝534aの側縁部(上側電線収容溝534aを幅方向に挟み込む縁部)には下方に突出するリブ534bが形成されており、このリブ534bが下側分割ホルダ52の電線延出部523における電線収容溝55に挿入されるように構成されている。リブ534bは、樹脂流入口56からホルダ5内に流入した樹脂が、電線21とホルダ5との間から後方へと漏れてしまわないように、電線21の周囲の隙間を埋める役割を果たしている。このリブ534bが存在することにより、電線延出部523と電線延出側蓋部534との間の隙間が埋められるため、電線延出部523と電線延出側蓋部534との間には後述する樹脂充填部7は形成されない。
【0042】
なお、本実施の形態では、上側分割ホルダ53の電線延出側蓋部534以外の部分、すなわち、検出部側蓋部531、傾斜部532、及び垂直蓋部533には、絶縁体212を避けるための絶縁体回避溝531bを除き、電線21を収容するための溝が形成されていない。そのため、下側分割ホルダ52の検出部収容部521及び垂直部522に形成された電線収容溝55は、少なくとも電線21の導体211の外径よりも深く形成されており、電線延出部523に形成された電線収容溝55と同様に、電線21の半径rよりも深く形成されている。
【0043】
また、図示していないが、下側分割ホルダ52と上側分割ホルダ53とを係合する機構、例えば、ラッチ機構や突起と穴による嵌合機構を設けてもよい。
【0044】
(樹脂モールド部6)
図1及び図2に戻り、樹脂モールド部6は、ホルダ5の周囲を覆う本体部61と、センサ部3をナックル等の固定部材に固定するためのフランジ部62と、を一体に有している。フランジ部62には、センサ部3を固定部材に固定するボルト(不図示)を通すためのボルト穴63が形成されており、ボルト穴63には、当該ボルト穴63の内周面に沿うように、ボルト固定の際にフランジ部62の変形を抑制するための金属からなるカラー64が設けられている。
【0045】
本実施の形態では、ホルダ5に樹脂流入口56が形成されているため、樹脂モールド部6の形成時に、ホルダ5内に樹脂が流入する。樹脂流入口56からホルダ5内に樹脂を流入させることで、ホルダ5と、ホルダ5内に収容されたケーブル2(電線21)及び検出部4との間に樹脂充填部7が形成される。すなわち、本実施の形態では、ホルダ5内に、樹脂流入口56で樹脂モールド部6と連通する樹脂充填部7を有している。樹脂充填部7は、樹脂モールド部6と同じ樹脂から構成される。
【0046】
樹脂充填部7を有さない場合、ホルダ5のみで電線21を保持することになるため、ホルダ5による電線21の把持力が小さいと、電線21を引っ張った際に、当該引張力が電線21と検出部4との接合部にかかり、接合部が破損してしまうおそれが生じる。これを抑制するためは、ホルダ5と電線21間のクリアランスを非常に小さくすることも考えられるが、その場合、両分割ホルダ52,53を組立てる際に電線21の絶縁体212を挟み込んでしまいやすくなり、作業性が低下してしまうおそれがある。
【0047】
本実施の形態のように、樹脂充填部7を有する構成とすることで、樹脂充填部7により電線21を強固に保持し、電線21を引っ張った際に、当該引張力が電線21と検出部4との接合部分にかかってしまうことを抑制し、接合部分の破損を抑制することが可能になる。さらに、ホルダ5と電線21間の隙間は樹脂充填部7により埋められるために、ホルダ5と電線21との間のクリアランスを大きくすることが可能になり、組立作業時の作業性が向上する。
【0048】
本実施の形態では、ホルダ5の後端部は、樹脂モールド部6から後方に突出しており、樹脂モールド部6から露出している。このホルダ5の露出部分は、樹脂モールド部6の成型時に金型で挟み込むための部分として用いられる。なお、ホルダ5の全体を樹脂モールド部6で覆うように構成してもよいが、この場合、ケーブル2(電線21)を金型で挟み込む必要が生じ、ケーブル2(電線21)が損傷してしまうおそれが生じる。
【0049】
なお、図1及び図2では、センサ部3の先端部においてホルダ5が樹脂モールド部6から露出しているように示しているが、センサ部3の先端部においては、ホルダ5の前端部を樹脂モールド部6に覆い、ホルダ5を樹脂モールド部6から露出させなくてもよい。
【0050】
(センサ付きケーブルの製造方法)
センサ付きケーブル1を製造する際には、まず、電線21の導体211を、検出部4の接続端子42に溶接により接続する。その後、専用の治具を用いて電線21をクランク状に曲げて、電線21にクランク状の曲げ癖を付ける。
【0051】
その後、検出部4と電線21を下側分割ホルダ52の検出部収容溝54及び電線収容溝55に収容すると共に、下側分割ホルダ52の上部に上側分割ホルダ53を取り付け、ホルダ5内に検出部4及び電線21を収容する。
【0052】
その後、検出部4及び電線21を収容したホルダ5を金型にセットし、金型内に樹脂を流し込んで樹脂モールド部6を形成する。この際、樹脂流入口56から流れ込んだ樹脂の樹脂圧により電線21が下側分割ホルダ52に押し付けられ、電線21の曲げが維持される。また、ホルダ5内に樹脂が流れ込むことで、ホルダ5、電線21、及び検出部4間の隙間を埋めるように樹脂充填部7が形成され、センサ部3が得られる。その後、センサ部3を金型から取り出せば、センサ付きケーブル1が得られる。
【0053】
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明したように、本実施の形態に係るセンサ付きケーブル1では、ホルダ5は、ケーブル2(電線21)をクランク状に曲げた状態で保持するように構成されると共に、樹脂モールド部6を形成する際にホルダ5内に樹脂を流入させるための樹脂流入口56を有し、ホルダ5内には、樹脂流入口56で樹脂モールド部6と連通する樹脂充填部7を有している。
【0054】
樹脂充填部7を有することで、樹脂充填部7により電線21を強固に保持し、ケーブル2(電線21)の引っ張りによる電線21と検出部4との接合部分の破損、すなわちセンサ部3の故障を抑制することが可能になる。さらに、ホルダ5と電線21との間のクリアランスを大きくすることで、組立作業時の作業性を向上させることができ、製造の容易なセンサ付きケーブル1を実現できる。
【0055】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0056】
[1]ケーブル(2)の端部にセンサ部(3)を設けたセンサ付きケーブル(1)であって、前記センサ部(3)は、前記ケーブル(2)の端部に接続された検出部(4)と、前記ケーブル(2)の端部及び前記検出部(4)の周囲を覆うように設けられたホルダ(5)と、前記ホルダ(5)の周囲を覆う樹脂モールド部(6)と、を有し、前記ホルダ(5)は、前記ケーブル(2)をクランク状に曲げた状態で保持するように構成されると共に、前記樹脂モールド部(6)を形成する際に前記ホルダ(5)内に樹脂を流入させるための樹脂流入口(56)を有し、前記ホルダ(5)内には、前記樹脂流入口(56)で前記樹脂モールド部(6)と連通する樹脂充填部(7)を有する、センサ付きケーブル(1)。
【0057】
[2]前記樹脂充填部(7)は、前記樹脂モールド部(6)と同じ樹脂からなり、前記ホルダ(5)と、前記ホルダ(5)内に収容された前記ケーブル(2)及び前記検出部(4)との間に充填されている、[1]に記載のセンサ付きケーブル(1)。
【0058】
[3]前記樹脂流入口(56)は、前記ケーブル(2)をクランク状に曲げた屈曲部(21a,21b)において、前記ケーブル(2)を谷状に屈曲している曲げの内側部分と対向するように形成されている、[1]または[2]に記載のセンサ付きケーブル(1)。
【0059】
[4]前記ケーブル(2)は複数本の電線(21)を有し、前記複数本の電線(21)が、前記ホルダ(5)内でクランク状に曲げた状態で保持されている、[1]乃至[3]の何れか1項に記載のセンサ付きケーブル(1)。
【0060】
[5]前記ホルダ(5)は、並べて配置された前記複数本の電線(21)を、その整列方向と垂直な方向から挟み込むように2分割して構成されており、前記ホルダ(5)を2分割した2つの分割ホルダ(51)うち一方の下側分割ホルダ(52)は、前記複数本の電線(21)を収容する電線収容溝(55)を有し、前記下側分割ホルダ(52)における電線延出部(523)での前記電線収容溝(55)の深さが、前記電線(21)の半径よりも深い、[4]に記載のセンサ付きケーブル(1)。
【0061】
[6]前記下側分割ホルダ(52)は、前記電線(21)をクランク状に曲げた屈曲部による前記電線(21)のオフセット方向における前記検出部(4)側に設けられている、[5]に記載のセンサ付きケーブル(1)。
【0062】
[7]前記検出部(4)は、前記センサ部(3)と対向して配置された被検出部材からの磁界を検出する磁気検出素子を含む、[1]乃至[6]の何れか1項に記載のセンサ付きケーブル(1)。
【0063】
[8]ケーブル(2)の端部にセンサ部(3)を設けたセンサ付きケーブル(1)の製造方法であって、前記センサ部(3)は、前記ケーブル(2)の端部に接続された検出部(4)と、前記ケーブル(2)の端部及び前記検出部(4)の周囲を覆うように設けられたホルダ(5)と、前記ホルダ(5)の周囲を覆う樹脂モールド部(6)と、を備え、前記ホルダ(5)は、前記ケーブル(2)をクランク状に曲げた状態で保持するように構成されると共に、前記樹脂モールド部(6)を形成する際に前記ホルダ(5)内に樹脂を流入させるための樹脂流入口(56)を有し、前記樹脂モールド部(6)の形成時に、前記樹脂流入口(56)より、前記ホルダ(5)と、前記ホルダ(5)内に収容された前記ケーブル(2)及び前記検出部(4)との間に樹脂を充填して、前記樹脂モールド部(6)と同じ樹脂からなる樹脂充填部(7)を形成する、センサ付きケーブルの製造方法。
【0064】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0065】
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。例えば、上記実施の形態では、ホルダ5を全体としてクランク状に形成する場合について説明したが、ホルダ5の外形はクランク状となっている必要はない。
【0066】
また、上記実施の形態では、下側分割ホルダ52の電線延出部523における電線収容溝55の深さdを、電線21の半径rよりも大きくしたが、例えば、上側分割ホルダ53に電線収容溝を形成し、組み立て時に上側分割ホルダ53に検出部4と電線21を保持させた状態で下側分割ホルダ52をかぶせる組み立て順とする場合には、上側分割ホルダ53の電線延出部における電線収容溝の深さを、電線21の半径rよりも大きくすればよい。つまり、組み立て工程を考慮し、組み立て時に最初に検出部4と電線21を保持させる(載置する)側の分割ホルダ51において、電線延出部における電線収容溝の深さを、電線21の半径rよりも大きくすればよい。
【符号の説明】
【0067】
1…センサ付きケーブル
2…ケーブル
21…電線
3…センサ部
4…検出部
42…接続端子
5…ホルダ
51…分割ホルダ
52…下側分割ホルダ
53…上側分割ホルダ
54…検出部収容溝
54a…本体部収容溝
54b…端子収容溝
55…電線収容溝
56…樹脂流入口
6…樹脂モールド部
7…樹脂充填部
図1
図2
図3
図4
図5
図6