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特許7363592コークス炉蓄熱室ピラーウォールの補修方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】コークス炉蓄熱室ピラーウォールの補修方法
(51)【国際特許分類】
   C10B 29/06 20060101AFI20231011BHJP
   F27D 1/16 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
C10B29/06
F27D1/16 T
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020038408
(22)【出願日】2020-03-06
(65)【公開番号】P2021138859
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100117400
【弁理士】
【氏名又は名称】北川 政徳
(72)【発明者】
【氏名】堂山 秀基
(72)【発明者】
【氏名】藤田 智一
【審査官】齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-178245(JP,A)
【文献】特開2019-035024(JP,A)
【文献】特開2008-163164(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10B 29/00
F27D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コークス炉の蓄熱室と隣接する蓄熱室とを仕切るピラーウォールを補修する方法であって、
補修対象の前記ピラーウォールを構成する煉瓦の少なくとも一部と、このピラーウォールの上方に配される燃焼室を構成する煉瓦を解体し、次いで、解体された部位に煉瓦を積み直すことにより、前記の補修が行われ、
解体される前記ピラーウォールを介して、煉瓦の解体が行われる前記燃焼室と連通した蓄熱室に隣接する蓄熱室の内部に間仕切り壁が補修開始前に設けられるコークス炉蓄熱室ピラーウォールの補修方法。
【請求項2】
前記間仕切り壁は、前記ピラーウォールを解体しても蓄熱室のガスが漏れない構造である請求項1に記載のコークス炉蓄熱室ピラーウォールの補修方法。
【請求項3】
前記間仕切り壁は、前記蓄熱室の上部天井煉瓦から下部にわたって垂直に形成された垂直壁部、前記垂直壁部の下部に、この垂直壁部と前記補修対象のピラーウォールとの間を閉塞するために配される下部壁部、及び前記垂直壁部側面であって、前記下部壁部が配された側に、前記垂直壁部と前記補修対象のピラーウォールとの間を閉塞するために配される側壁部から構成される請求項2に記載のコークス炉蓄熱室ピラーウォールの補修方法。
【請求項4】
前記間仕切り壁の上端は、前記蓄熱室の上部天井煉瓦の目地を覆う位置に設置する請求項1~3のいずれか1項に記載のコークス炉蓄熱室ピラーウォールの補修方法。
【請求項5】
前記垂直壁部の壁面であって、前記下部壁部が配された側と反対側の壁面の下部に、蓄熱煉瓦を設置する請求項3又は4に記載のコークス炉蓄熱室ピラーウォールの補修方法。
【請求項6】
前記間仕切り壁の厚みが30~80mmである請求項1~5のいずれか1項に記載のコークス炉蓄熱室ピラーウォールの補修方法。
【請求項7】
前記側壁部とピラーウォールの隙間は5mm以下である請求項3~6のいずれか1項に記載のコークス炉蓄熱室ピラーウォールの補修方法。
【請求項8】
前記間仕切り壁の材質は、けい酸カルシウム、アルミナファイバー、シリカファイバー、及び断熱煉瓦からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1~7のいずれか1項に記載のコークス炉蓄熱室ピラーウォールの補修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コークス炉の蓄熱室を仕切るコークス炉蓄熱室ピラーウォールを補修する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
室炉式コークス炉は、図4(a)に示すような耐火煉瓦を積んだ大きな長方形の乾留炉であり、上半分に多数の炭化室2aと燃焼室3とが交互に配置され、下半分には蓄熱室4を設けたコークス炉1である。炭化室2aは、その中に上部に設けられた装入口2bから原料炭が入れられる。燃焼室3は、多数の焔道に分かれ、そこで、高炉ガスや石炭ガスなどの燃焼用ガスが絶えず燃やされ、両側の煉瓦壁を所要温度に熱している。蓄熱室4は、燃焼用空気の顕熱を回収利用するものであり、これによって、乾留用燃料を著しく節約することができる。
【0003】
前記の炭化室2aと燃焼室3とは耐火煉瓦で作られた側壁5で隔てられており、燃焼室3内で燃料ガスを燃焼させることにより、側壁5を介して炭化室2aが加熱される。その状態で、炭化室2a内の石炭は十数時間程度乾留され、コークスとなる。コークスが生成すると、炭化室の炉長方向(長手方向)の両端にある窯口に設置された炉蓋をそれぞれ開放し、炭化室2aの一方の窯口側に設けられた押出機を用いて他方の窯口側へ押出すことにより、生成したコークスを排出する。
【0004】
図4(b)に示すように、前記蓄熱室4は、前記燃焼室3及び炭化室2aの下部に、炉長方向に伸びて設けられる。この蓄熱室4は、燃焼室3で燃焼したガスの廃熱を回収して利用するためのものであり、複数の蓄熱室4が炉団方向に並べて設置される。
【0005】
前記燃焼室3で燃焼させる燃焼空気は、ガス流路6を通って燃焼室3へ供給される。そして、燃焼室3で燃焼した後の燃焼排ガスは、別のガス流路(図示せず)を通って排出される。その際、燃焼排ガスと接触したガス流路6の周囲の煉瓦の温度が上昇することにより、燃焼排ガスの熱の一部が回収される。
【0006】
上記条件での燃焼を一定時間行った後、燃焼空気の流れを逆転させて燃焼を継続させる。逆転後は、燃焼排ガスによって温度が上昇した蓄熱室4を通って燃焼空気が燃焼室3へ供給されるため、前記燃焼空気を、燃焼前に予熱することができる。このように、燃焼空気の流れる方向を、一定時間おきに逆転させることにより、燃焼排ガスの有する熱を効果的に回収して、熱効率を上げることができる。
【0007】
しかし、コークス炉1では、乾留及びコークスの排出が繰り返し実施されるので、炭化室2a及び燃焼室3を形成する煉瓦は損耗や激しいヒートショックに曝される。ヒートショックで破損した煉瓦の破片などが落下し、蓄熱室4やガス流路6等の流路に侵入する場合がある。また、それ以外にも、補修材や灰分などの異物が蓄熱室4やガス流路6等の流路に落下することもある。このように異物が堆積すると、ガス流路6等の流路が閉塞し、ガスの流れが阻害される。ガスの流れが阻害されると、燃焼室3へのガスの供給量が減少するため、燃焼室3や炭化室2aの温度が低下し、乾留が適切に実施できなくなるという問題がある。
【0008】
この場合、燃焼室や蓄熱室の該当部位を補修する必要が生じる。ところで、このようなコークス炉1の蓄熱室4は、大量の煉瓦を用いており、かつ、前記の通り、多大な熱量を有している。そのため、コークス炉1の老朽化に伴い、蓄熱室4の煉瓦交換をする際に、蓄熱室の補修部位のみ解体し、補修の必要の無い部分の解体および積み直し作業を少なくすることが望ましい。
このような方法として、例えば、特許文献1においては、コークス炉の蓄熱室の煉瓦構造を工夫することにより、コークス炉の老朽化に伴い、蓄熱室内の煉瓦交換をする際に、煉瓦が構築された状態で仕切壁を築造することができ、かつガス流通防止のためのシールを行えるコークス炉蓄熱室の煉瓦構造が検討されている。
また、特許文献2においては、コークス炉蓄熱室の煉瓦の交換量を最小限にすることにより、コスト及び工期を削減できることが検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2008-163164号公報
【文献】特開2019-178244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、本発明者らの検討によれば、例えば、特許文献1は、室炉式コークス炉のピラーウォールの積み替えにおいて、炉長方向に関する補修のみを述べており、炉団方向に関する補修については、述べられていない。炉団方向のピラーウォールの補修の場合、図5に示すように、積み替え対象のピラーウォールを(n)番目のピラーウォール7(n)、ピラーウォール7(n)の積み替えにより、構造が絶たれる2つの蓄熱室4のうち、燃焼室3(n-1)と繋がった蓄熱室を(n-1)番目の蓄熱室4(n-1)、もう一方の蓄熱室を(n)番目の蓄熱室4(n)としたとき、室炉式コークス炉の(n―1)番の燃焼室3(n-1)と(n)番のピラーウォール7(n)の積み替えにおいて、ピラーウォール7(n)を解体してしまうと(n)番の蓄熱室4(n)の構造が絶たれる。そうなると蓄熱室4(n)と繋がっている(n)番の燃焼室3(n)を燃焼させることが出来なくなり、煉瓦で構築されたこれら構造物は割損してしまう。
従って、これまで燃焼室(n番)を燃焼させながら蓄熱室(n番)ピラーウォールを補修することはこれまで出来なかった。
【0011】
そこで、この発明は、コークス炉の補修中において、補修対象の燃焼室以外の燃焼室を稼働させることにより、燃焼室の側壁に割損が生じるのを抑制し、コークス炉の補修範囲を最小化することでコークスの生産性低下を抑制し、コークス炉を補修することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記問題点を解決する方法について検討を行った結果、特定の蓄熱室に間仕切り壁を設けることにより、上記課題を解決した。
即ち、本発明は以下を要旨とする。
【0013】
[1]コークス炉の蓄熱室と隣接する蓄熱室とを仕切るピラーウォールを補修する方法であって、補修対象の前記ピラーウォールを構成する煉瓦の少なくとも一部と、このピラーウォールの上方に配される燃焼室を構成する煉瓦を解体し、次いで、解体された部位に煉瓦を積み直すことにより、前記の補修が行われ、解体される前記ピラーウォールを介して、煉瓦の解体が行われる前記燃焼室と連通した蓄熱室に隣接する蓄熱室の内部に予め間仕切り壁が設けられるコークス炉蓄熱室ピラーウォールの補修方法。
[2]前記間仕切り壁は、前記ピラーウォールを解体しても蓄熱室のガスが漏れない構造である[1]に記載のコークス炉蓄熱室ピラーウォールの補修方法。
[3]前記間仕切り壁は、前記蓄熱室の上部天井煉瓦から下部にわたって垂直に形成された垂直壁部、前記垂直壁部の下部に、この垂直壁部と前記補修対象のピラーウォールとの間を閉塞するために配される下部壁部、及び前記垂直壁部側面であって、前記下部壁部が配された側に、前記垂直壁部と前記補修対象のピラーウォールとの間を閉塞するために配される側壁部から構成される[2]に記載のコークス炉蓄熱室ピラーウォールの補修方法。
[4]前記間仕切り壁の上端は、前記蓄熱室の上部天井煉瓦の目地を覆う位置に設置する[1]~[3]のいずれか1項に記載のコークス炉蓄熱室ピラーウォールの補修方法。
[5]前記垂直壁部の壁面であって、前記下部壁部が配された側と反対側の壁面の下部に、蓄熱煉瓦を設置する[3]又は[4]に記載のコークス炉蓄熱室ピラーウォールの補修方法。
[6]前記間仕切り壁の厚みが30~80mmである[1]~[5]のいずれか1項に記載のコークス炉蓄熱室ピラーウォールの補修方法。
[7]前記側壁部とピラーウォールの隙間は5mm以下である[3]~[6]のいずれか1項に記載のコークス炉蓄熱室ピラーウォールの補修方法。
[8]前記間仕切り壁の材質は、けい酸カルシウム、アルミナファイバー、シリカファイバー、及び断熱煉瓦からなる群より選ばれる少なくとも1種である[1]~[7]のいずれか1項に記載のコークス炉蓄熱室ピラーウォールの補修方法。
【発明の効果】
【0014】
この発明は、以上のように、予め間仕切り壁をピラーウォールの解体前に特定の蓄熱室に設置することで、その後、ピラーウォールを解体しても、前記特定の蓄熱室につながっている燃焼室の燃焼を可能とし、ピラーウォールの積み替えを可能とした。そして、これにより、前記特定の燃焼室を燃焼させながらピラーウォールを補修することができ、コークス炉の補修時にも、コークスの生産性低下を抑制した状態で、コークス炉を補修することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】(a)この発明に係る、室炉式コークス炉の実施形態の例を示す部分斜視図、(b)(a)の部分側面断面図、(c)(b)に示す間仕切り壁の例を示す斜視図
図2図1(b)の間仕切り壁及び蓄熱室の部分拡大側面断面図
図3図2の蓄熱室の上部天井部分の部分拡大側面断面図
図4】(a)従来のコークス炉を示す正面断面図、(b)従来のコークス炉を示す部分側面断面図
図5】従来のコークス炉を示す部分側面断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、本発明は、以下の説明に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することが出来る。
この発明は、コークス炉の蓄熱室と隣接する蓄熱室とを仕切るピラーウォールを補修する方法にかかる発明である。
【0017】
この発明に用いられる室炉式コークス炉は、コッパース式、カールスチール式などが挙げられ、その構成としては、耐火煉瓦(以下、単に「煉瓦」と称することがある。)を積んだ大きな長方形の乾留炉であり、図1(a)(b)に示すように、上側に多数の炭化室12aと燃焼室13とが側壁15を介して交互に複数配列され、下側には蓄熱室14を設けたコークス炉11である。この炭化室12aは、通常、直方体の箱で、この中に、上部に設けられた装入口12bから原料炭、すなわち乾留させる石炭が投入される。前記燃焼室13は、多数の焔道に分かれ、そこで、高炉ガスや石炭ガスなどの燃焼ガスを絶えず燃やして、両側の煉瓦壁を熱する。前記蓄熱室14は、燃焼ガスの顕熱を回収利用するものであり、これによって、乾留用燃料を著しく節約することができる。さらに、蓄熱室14はガス流路16を介して燃焼室13に連通する。また、燃焼室点検口(図示せず)は、燃焼室13を点検するために設けられる。
なお、図1(a)(b)に示すように、炭化室12aの長さ方向を炉長方向、炭化室12aと燃焼室13とを交互に複数配列する方向、すなわち炉長方向と直角の方向を炉団方向という。
【0018】
図1(b)に示すように、コークス炉11の燃焼室13、側壁15は、激しいヒートショックに曝されるので、ピラーウォール17を構成する煉瓦に割れやひび、欠け等が生じ、破片等を取り除いたり、割れやひび、欠け等が生じた煉瓦の取り換え等を行ったりすること、すなわち、補修が行われる。
【0019】
前記の補修は、ピラーウォール17aを補修対象としたとき、この補修対象のピラーウォール17aを構成する煉瓦の少なくとも一部、すなわち、少なくとも、ピラーウォール17aの上部から補修が必要な部分までの間の煉瓦を解体し、次いで、解体された部位に割れやひび、欠け等のない煉瓦を積み直すことにより行われる。このとき、補修対象のピラーウォール17aの上方に配される燃焼室13aの側壁15aを構成する煉瓦も同時に解体され、次いで、積み直しが行われる。
【0020】
この補修対象のピラーウォール17aの両側の蓄熱室14a、14bは、それぞれガス流路16a、16bを介して燃焼室13a、13bを連通する。上記の解体によって、蓄熱室14a、14bは、その使用が困難となる。蓄熱室14aは、ガス流路16aを介して燃焼室13aに連通しており、この燃焼室13aは解体中なので、問題は生じない。しかし、蓄熱室14bは、ガス流路16bを介して燃焼室13bに連通しているため、燃焼室13bの使用が不可となる。
【0021】
補修中であっても、補修以外の部分は稼働しているので、補修中においては、解体されていない部分のうち、燃焼室13b以外の燃焼室は加熱状態にあるが、燃焼室13bのみが加熱されない状態となる。このため、この燃焼室13bにおいて、割損が生じる恐れが高くなる。これを防止するため、解体されるピラーウォール17aを介して、煉瓦の解体が行われる燃焼室13aと連通した蓄熱室14aに隣接する蓄熱室14bの内部、すなわち、補修対象のピラーウォール17aの両側の蓄熱室14a、14bうち、解体対象の燃焼室13aに連通した蓄熱室14aではなく、解体対象ではない燃焼室(図1においては、燃焼室13b)に連通した蓄熱室14bの内部に予め、すなわち、補修開始前に、間仕切り壁18を設ける。この間仕切り壁18により、ピラーウォール17aの解体によって蓄熱室14b内の熱及びガスが逃げるのを防止でき、有効に燃焼室13bに送ることが可能となる。
【0022】
この間仕切り壁18は、ピラーウォール17aを解体しても蓄熱室のガスが漏れない構造を有する。具体的には、蓄熱室14bの上部天井煉瓦から下部にわたって垂直に形成された垂直壁部18a、及びこの垂直壁部18aの下端部等の下部に、この垂直壁部18aと前記補修対象のピラーウォール17aとの間を閉塞するために配される下部壁部18bから構成される。この垂直壁部18aの両側面部は、蓄熱室14bの両端面に至るまで設けることにより、下部壁部18bの両側面部も同様に蓄熱室14bの両端面に至るまで設けられ、蓄熱室14bを2つの区画に分けることができ、両区画間の直接的なガス等の流通を防止できる。また、垂直壁部18aの一方の側面部のみを蓄熱室14bの一方の端面に至るように設ける場合は、図1(c)に示すように、垂直壁部18aの他方の側面であって、下部壁部18bが配された側に、前記垂直壁部18aとピラーウォール17aとの間を閉塞するための側壁部18cを設けてもよい。これにより、この蓄熱室14b内のガスや熱を、ガス流路16bを経由して燃焼室13bに送ることができる。
なお、下部壁部18bの下部には、蓄熱煉瓦(図示せず)が配される。
【0023】
ところで、図2図3に示すように、前記間仕切り壁18とピラーウォール17aとの間、具体的には、前記の側壁部18cとピラーウォール17aとの間、下部壁部18bとピラーウォール17aとの間等は、目地19により封じられる。このため、これらの間の隙間(r)は、目地19として十分な強度を発揮するため、5mm以下とするのがよく、3.5mm以下とするのが好ましい。
【0024】
また、図3に示すように、上記間仕切り壁18の上端、具体的には、垂直壁部18aの上端は、蓄熱室14bの上部天井煉瓦の目地19aを覆う位置に設置することが好ましい。間仕切り壁18を設置しようとすると、蓄熱室14bを大気開放してしまいどうしても天井煉瓦を冷やしてしまうこととなるので、目地19aが、上記間仕切り壁18の上端で隠れるようにすることがよい。このようにすることで、天井煉瓦の弛み(落下)という問題点を解消することができ、好ましい。
【0025】
また、前記間仕切り壁18の厚みは、30mm以上がよく、40mm以上が好ましい。30mmより薄いと、蓄熱室14bの上部天井煉瓦の目地を十分に覆えなくおそれがあり、当該目地の保全が不十分となるおそれがある。一方、厚みの上限は、80mmがよく70mmが好ましい。80mmより厚いと、蓄熱室の流路断面積が小さくなり十分な燃焼用空気を送気できないという問題を生じるおそれがある。
【0026】
前記間仕切り壁18の垂直壁部18aの壁面であって、下部壁部18bが配された側と反対側の壁面の下部に、蓄熱煉瓦20を設置することができる。この蓄熱煉瓦20を設置することにより、垂直壁部18aがズレたり倒れたりするのを防止でき、好ましい。
【0027】
なお、蓄熱室14bを間仕切り壁18で2つの区画に分けたとき、ガス流路16bの蓄熱室14b側開口部は、解体されるピラーウォール17aがある側と反対側に配される。
【0028】
前記間仕切り壁18(垂直壁部18a、下部壁部18b、側壁部18c)の材質は、コークス炉11を稼働させても、高温下での保持が可能となり、間仕切り壁18が溶けたり、倒壊したり、崩れたりするのを防止できる材料からなる耐火物が好ましい。
【0029】
このような耐火物としては、けい酸カルシウム、アルミナファイバー、シリカファイバー、及び断熱煉瓦からなる群より選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。
【実施例
【0030】
図1(b)に示すコークス炉の蓄熱室14aと隣接する蓄熱室14bとを仕切るピラーウォール17aを補修した。
まず、補修対象のピラーウォール17aを構成する煉瓦と、このピラーウォール17aの上方に配される燃焼室13aの側壁15aを構成する煉瓦を解体した。
補修対象のピラーウォール17aの両側の蓄熱室14a、14bのうち、側壁15aの煉瓦の解体が行われる燃焼室13aと連通した蓄熱室14aと反対側の蓄熱室14bの内部に予め間仕切り壁18として、珪酸カルシウムボードを用いて設けた。
その際、間仕切り壁18は、ピラーウォール17aを解体しても蓄熱室14bのガスが漏れない構造とした。すなわち、間仕切り壁18は、蓄熱室14bの上部天井煉瓦から下部にわたって垂直に形成された垂直壁部18a、及び垂直壁部18aの下部に、この垂直壁部18aと補修対象のピラーウォール17aとの間を閉塞するために配される下部壁部18b、並びに、垂直壁部18aの一方の壁面であって、下部壁部18bが配された側に、垂直壁部18aとピラーウォール17aとの間を閉塞するために配される側壁部18cから構成した。さらに、間仕切り壁18の上端は、蓄熱室14bの上部天井煉瓦の目地を覆う位置に設置した。さらにまた、側壁部18cとピラーウォール17aの目地隙間を5mmとし、その間をシリカファイバーバルクからなる目地材で封じた。
なお、垂直壁部18aの壁面であって、下部壁部18bが配された側と反対側の壁面の下部に、蓄熱煉瓦20を設置した。また、間仕切り壁18の厚みを50mmとした。
なお、前記間仕切り壁18の材質は、珪酸カルシウムボードとした。
この間仕切り壁18を設置した後、補修対象の燃焼室13a以外の燃焼室を稼働させると共に、解体された部位に煉瓦を積み直す補修作業を行った。
このとき、補修対象の燃焼室13a以外の燃焼室を稼働させても、燃焼室13bに割損が生じなかった。このため、コークス炉の補修範囲を最小化することができ、コークスの生産性低下を抑制し、コークス炉を補修できることがわかった。
これにより、コークス炉の補修中において、補修対象の燃焼室以外の燃焼室を稼働させることにより、燃焼室に割損が生じるのを抑制し、コークス炉の補修範囲を最小化することでコークスの生産性低下を抑制し、コークス炉を補修できることがわかった。
【符号の説明】
【0031】
1 コークス炉
2a、2(n-1)、2(n)、2(n+1)炭化室
2b 装入口
3、3a、3b、3(n-1)、3(n)、3(n+1) 燃焼室
4、4a、4b、4(n-1)、4(n)、4(n+1) 蓄熱室
5、5a 側壁
6、6a、6b ガス流路
7、7(n-1)、7(n)、7(n+1) ピラーウォール
7a 補修対象のピラーウォール
11 コークス炉
12a 炭化室
12b 装入口
13、13a、13b 燃焼室
14、14a、14b 蓄熱室
15、15a側壁
16、16a、16b ガス流路
17 ピラーウォール
17a 補修対象のピラーウォール
18 間仕切り壁
18a 垂直壁部
18b 下部壁部
18c 側壁部
19、19a 目地
20 蓄熱煉瓦
図1
図2
図3
図4
図5