(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化性接着剤組成物、偏光板用接着剤組成物、偏光板用接着剤、およびそれを用いた偏光板
(51)【国際特許分類】
C09J 171/00 20060101AFI20231011BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20231011BHJP
C09J 163/00 20060101ALI20231011BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
C09J171/00
C09J11/06
C09J163/00
G02B5/30
(21)【出願番号】P 2020055363
(22)【出願日】2020-03-26
【審査請求日】2022-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】辻本 篤志
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/144260(WO,A1)
【文献】特開2019-035031(JP,A)
【文献】国際公開第2017/110951(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
G02B 5/30
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オキセタン化合物(A)、
脂環構造を有するエポキシ化合物(B)、および
シランカップリング化剤(C)
を含有してなる活性エネルギー線硬化性接着剤組成物であって、(A)、(B)、(C)
成分の合計100重量部に対して、
オキセタン化合物(A)の含有量が35~65重量部、かつシランカップリング剤(C
)の含有量が
15~30重量部である
ことを特徴とする活性エネルギー線硬化性接着剤組成物。
【請求項2】
オキセタン化合物(A)が、水酸基を含有せず2つ以上のオキセタニル基を有するオキ
セタン化合物であることを特徴とする請求項1記載の活性エネルギー線硬化性接着剤組成
物。
【請求項3】
脂環構造を有するエポキシ化合物(B)が、脂環構造に直接導入されたエポキシ基を2
つ以上含有するエポキシ化合物であることを特徴とする請求項1または2記載の活性エネ
ルギー線硬化性接着剤組成物。
【請求項4】
シランカップリング剤(C)が、エポキシ基を含有するシランカップリング剤であるこ
とを特徴とする請求項1~3いずれか記載の活性エネルギー線硬化性接着剤組成物。
【請求項5】
オキセタン化合物(A)とシランカップリング剤(C)の含有割合((A):(C)、
重量比)が、(A):(C)=80:20~50:50であることを特徴とする請求項1
~4いずれか記載の活性エネルギー線硬化性接着剤組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか記載の活性エネルギー線硬化性接着剤組成物を用いてなること
を特徴とする偏光板用接着剤組成物。
【請求項7】
請求項6記載の偏光板用接着剤組成物の硬化物からなることを特徴とする偏光板用接着
剤。
【請求項8】
請求項7記載の偏光板用接着剤を介して偏光子と保護フィルムが貼り合わされてなるこ
とを特徴とする偏光板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線硬化性接着剤組成物、偏光板用接着剤組成物、偏光板用接着剤、およびそれを用いた偏光板に関するものであり、さらに詳しくは、液晶表示装置等に用いられる偏光板を構成する偏光子と保護フィルムの貼り合せに好適な活性エネルギー線硬化性接着剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、液晶テレビ、コンピューターディスプレイ、携帯電話やデジタルカメラ等の画像表示装置として幅広く用いられている。かかる液晶表示装置は、液晶が封入されたガラス基板の両側に偏光板が積層された構成となっており、必要に応じて位相差板等の各種光学機能フィルムがこれに積層されている。
【0003】
従来より、偏光板は、ポリビニルアルコール系フィルムよりなる偏光子の少なくとも一方の面、好ましくは両方の面に保護フィルムを貼り合わせた構成として用いられている。
ここで、偏光子としては、高ケン化度のポリビニルアルコール系樹脂(以下、ポリビニルアルコールを「PVA」と略記する。)を用いて製膜してなるPVA系フィルム中にヨウ素等の二色性材料が分散、吸着され、好ましくはさらにホウ酸等の架橋剤によって架橋された、一軸延伸PVA系フィルムが広く用いられている。このような偏光子は、一軸延伸PVA系フィルムであるがゆえに、高湿度下においては収縮しやすくなるため、耐湿性や強度を補うことを目的に、偏光子に保護フィルムが貼り合わされる。
【0004】
かかる保護フィルムとしては、セルロース樹脂、ポリカーボネート樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、およびポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂が透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性等に優れる点で用いられているが、特にはトリアセチルセルロース(TAC)樹脂からなる保護フィルムが広く用いられてきた。
【0005】
そして、これらの保護フィルムは、接着剤によって偏光子と貼り合わされるが、かかる接着剤としては、親水性表面をもつ偏光子に対する接着性の点から、PVA系樹脂水溶液、特に偏光子と同様の高ケン化度PVA系樹脂を主体とするPVA系樹脂水溶液が好ましく用いられている。
【0006】
ところで、近年では、偏光板の薄膜化が求められており、これまで保護フィルムとして最も一般的に使用されてきたトリアセチルセルロース(TAC)フィルムに替えて、偏光板の耐久性の観点からもアクリル系フィルムや環状オレフィン系樹脂(COP)フィルム、ポリエステル(PET)フィルムが使用されるようになってきた。しかし、これらトリアセチルセルロース(TAC)フィルムに替わる保護フィルムは、従来の水系のPVA系接着剤では偏光子と強固に貼り合せることが困難であったり、そもそも、これらの保護フィルムは水分を透過性が極めて低いことから貼りあわせ後の乾燥工程において水分を取り除くことができないため使用できないという問題があった。そのため、アクリル系フィルムや環状オレフィン系樹脂(COP)フィルム、ポリエステル(PET)フィルム等の保護フィルムの貼り合せにも好適な種々の接着剤の開発が行なわれている。
【0007】
例えば、特許文献1では、エポキシ化合物を主成分とし、酸素原子を2つ以上有する四員環状化合物を特定の割合で含有する光硬化性接着剤組成物が提案されている。そして、その組成物は特にトリアセチルセルロース(TAC)基材と偏光子の接着性において良好な接着性を示し、かつ、60℃90%RHの環境下においても良好な耐久性を示すことから、実用的な偏光子の両面に保護膜が貼合された偏光板を提供できる旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、近年では偏光板の使用環境が多様化し、透湿度が高いTACフィルムを使用した偏光板に代わり、透湿度の低いCOPフィルムやPETフィルム、アクリルフィルムの様な保護フィルムを使用したより高い湿熱耐久性偏光板が望まれているところ、上記特許文献1の接着剤組成物では、保護フィルムの種類等によっては、接着力や耐久性に関して充分満足のいくものではなかった。
【0010】
そこで、本発明ではこのような背景下において、接着力に優れる接着剤であり、種々の偏光板用保護フィルムと偏光子との貼り合わせに好適であり、また、耐湿熱性、及び、耐熱衝撃性等の耐久性に優れた活性エネルギー線硬化性接着剤組成物、偏光板用接着剤組成物、偏光板用接着剤、およびそれを用いた偏光板を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
しかるに本発明者等は、かかる事情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、オキセタン化合物(A)、脂環構造を有するエポキシ化合物(B)、およびシランカップリング化剤(C)を含有してなる活性エネルギー線硬化型の接着剤組成物において、特定量のオキセタン化合物(A)とともに、通常より多くのシランカップリング剤(C)を含有させることにより種々の偏光板用保護フィルムと偏光子との貼り合わせに良好な接着性を有しながら、耐湿熱性、及び、耐熱衝撃性等の耐久性に優れた接着剤が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0012】
即ち、本発明の要旨は、オキセタン化合物(A)、脂環構造を有するエポキシ化合物(B)、およびシランカップリング化剤(C) を含有してなる活性エネルギー線硬化性接着剤組成物であって、(A)、(B)、(C)成分の合計100重量部に対して、オキセタン化合物(A)の含有量が35~65重量部、かつシランカップリング剤(C)の含有量が10重量部以上であることを特徴とする活性エネルギー線硬化性接着剤組成物である。
【0013】
また、本発明は、かかる活性エネルギー線硬化性接着剤組成物を用いてなる偏光板用接着剤組成物、偏光板用接着剤組成物の硬化物からなる偏光板用接着剤、偏光板用接着剤を介して偏光子と保護フィルムが貼り合わされてなる偏光板も提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の活性エネルギー線硬化性接着剤組成物は、オキセタン化合物(A)、脂環構造を有するエポキシ化合物(B)、およびシランカップリング化剤(C) を含有してなる活性エネルギー線硬化性接着剤組成物であって、(A)、(B)、(C)成分の合計100重量部に対して、オキセタン化合物(A)の含有量が35~65重量部、かつシランカップリング剤(C)の含有量が10重量部以上である活性エネルギー線硬化性接着剤組成物である。このため、種々の偏光板用保護フィルムと偏光子とを充分に接着することができ、さらに、耐久性にも優れた偏光板を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明するが、これらは望ましい実施態様の一例を示すものである。
【0016】
本発明の活性エネルギー線硬化性接着剤組成物(以下、接着剤組成物と略す場合がある。)は、オキセタン化合物(A)、および、脂環構造を有するエポキシ化合物(B)、シランカップリング剤(C)を含有してなるものである。以下、順に接着剤組成物の各成分を説明する。
【0017】
<オキセタン化合物(A)>
本発明で用いられるオキセタン化合物(A)は、分子内にオキセタニル基を1個以上有する化合物であればよい。
オキセタン化合物(A)としては、例えば、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、3-エチル-3-[(2-エチルヘキシルオキシメチル)]オキセタン、3-エチル-3-(フェノキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-(シクロヘキシルオキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-(オキシラニルメトキシ)オキセタン、(メタ)アクリル酸(3-エチルオキセタン-3-イル)メチル等の分子内にオキセタニル基を1個有するオキセタン化合物;
3-エチル-3{[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]メチル}オキセタン、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル]ベンゼン、4,4'-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル等の分子内にオキセタニル基を2個以上有するオキセタン化合物;
等があげられる。これらオキセタン化合物(A)は単独で、もしくは2種以上併せて用いることができる。
【0018】
なかでも、容易に入手可能であり、希釈性(低粘度)、相溶性に優れるなどの点から、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル]ベンゼン、3-エチル-3-[(2-エチルヘキシルオキシメチル)]オキセタン、3-エチル-3-(オキシラニルメトキシ)オキセタン、(メタ)アクリル酸(3-エチルオキセタン-3-イル)メチル、3-エチル-3{[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]メチル}オキセタン等が好ましく用いられる。
【0019】
また、塗工性や接着性、硬化性の点から、分子量500以下の室温で液状のものが好ましく、更に硬化性、耐久性にも優れる点から、水酸基を含有せず分子内に2個以上オキセタニル基を含有するオキセタン化合物が特に好ましく、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル]ベンゼン、3-エチル-3{[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]メチル}オキセタンが更に好ましく、耐久時の接着剤黄変性を鑑みると、 3-エチル-3{[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]メチル}オキセタンが殊に好ましい。
【0020】
上記オキセタン化合物(A)として、具体的には、市販品の、アロンオキセタンOXT-101、アロンオキセタンOXT-121、アロンオキセタンOXT-211、アロンオキセタンOXT-212、アロンオキセタンOXT-213、アロンオキセタンOXT-221(いずれも東亞合成社製)を用いることができる。特にはアロンオキセタンOXT-221が好ましい。
【0021】
オキセタン化合物(A)の含有量は、(A)、(B)、(C)成分の合計100重量部に対して、35~65重量部であることが必要であり、好ましくは37.5~62.5重量部、特に好ましくは 40~60重量部、更に好ましくは42.5~57.5重量部である。
かかる含有量が下限値以下であると低エネルギー量の紫外線照射時における硬化性が低下し接着性が劣ることとなり、耐久性が悪化し好ましくなく、上限値以上であると相対的に(B)、(C)成分の量が少なくなり、硬化物中の温度抵抗性を有する脂環構造部位が減少することとなることから冷熱耐久性が悪化するため好ましくない。
【0022】
<脂環構造を有するエポキシ化合物(B)>
脂環構造を有するエポキシ化合物(B)としては、例えば、脂環構造に直接エポキシ基が導入された構造を有するエポキシ化合物、それ以外の脂環構造に直接エポキシ基が導入された構造を有さない脂環構造含有エポキシ化合物等があげられる。
【0023】
上記脂環構造に直接エポキシ基が導入された構造を有するエポキシ化合物としては、例えば脂環構造に直接導入されたエポキシ基を1つ持つものとして1,2-エポキシ-4-ビニルシクロヘキサンリモネンジオキサイド、4-ビニルシクロヘキセンジオキサイドがあげられ、脂環構造に直接導入されたエポキシ基を2つ以上持つものとしてジシクロペンタジエンオキサイド、3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ε-カプロラクトン変性3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
上記脂環式エポキシ化合物として、具体的には、市販品の、いずれもダイセル社製「セロキサイド2021P」、「セロキサイド2000」等を用いることができる。
【0024】
また、脂環構造に直接エポキシ基が導入された構造を有さない脂環構造含有エポキシ化合物としては、例えば、水素化ビスフェノールAジグリシジルエーテルのような芳香環が水素化されているエポキシ化合物、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
上記脂環骨格含有エポキシ化合物として、具体的には、市販品の、ナガセケムテックス社製「デナコールEX-216L」等を用いることができる。
【0025】
これらの中でも、好ましくは脂環構造に直接エポキシ基が導入された構造を有するエポキシ化合物であり、特に好ましくは脂環構造に直接導入されたエポキシ基を2つ以上有するエポキシ化合物であり、更に好ましくは3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ε-カプロラクトン変性3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレートである。
【0026】
脂環構造を有するエポキシ化合物(B)の含有量は、(A)、(B)、(C)成分の合計100重量部に対して、20~50重量部であることが好ましく、特に好ましくは 21~45重量部、更に好ましくは22~40重量部である。
かかる含有量が多すぎると相対的に(A)成分の含有量が低下することとなり、低エネルギー量の紫外線照射時における硬化性が低下することとなり、接着性や耐久性が低下する傾向があり、少なすぎると硬化物中の温度抵抗性を有する脂環構造部位が減少することとなることから冷熱耐久性が低下する傾向がある。
【0027】
上記シランカップリング剤(C)は、通常、構造中に反応性官能基とケイ素原子結合アルコキシ基をそれぞれ1つ以上含有する有機ケイ素化合物であり、接着剤層と保護フィルムとの接着性を向上させることができる。
【0028】
上記シランカップリング剤の反応性官能基としては、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、メルカプト基、ビニル基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、イソシアネート基等が挙げられ、これらの中でも、エポキシ基、ビニル基、ラジカル基のようなカチオン重合性官能基を含むことが好ましく、特に好ましくはエポキシ基である。なお、ランカップリング剤は、反応性官能基およびアルコキシ基以外の有機官能基、例えば、アルキル基、フェニル基等を有していてもよい。
【0029】
シランカップリング剤として、具体的には、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシ基含有シランカップリング剤、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等の(メタ)アクリロイル基含有シランカップリング剤、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル基含有シランカップリング剤、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト基含有シランカップリング剤、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート等のイソシアヌレート基含有シランカップリング剤、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート基含有シランカップリング剤、等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
なかでも、接着力の点から、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランを用いることが好ましい。
【0030】
また、シランカップリング剤としては、上記のようなモノマー型のシラン化合物を用いてもよいし、一部が加水分解し重縮合したオリゴマー型シラン化合物を用いてもよい。
【0031】
シランカップリング剤(C)の含有量は、(A)、(B)、(C)成分の合計100重量部に対して、10重量以上であることが必要であり、好ましくは15~30重量部、特に好ましくは18~25重量部である。
かかる含有量が下限値以下であると、難接着性である基材に対して界面接着力が悪化し好ましくない。また含有量が多すぎても硬化性が弱くなるため耐久性が低下する傾向がある。
【0032】
ここで、本発明においては、オキセタン化合物(A)とシランカップリング剤(C)の含有割合((A):(C)、重量比)が、(A):(C)=80:20~50:50であることが好ましく、特に好ましくは(A):(C)=77:23~57:43、更に好ましくは(A):(C)=75:25~65:35である。
オキセタン化合物(A)に対するシランカップリング剤(C)の量が多すぎると硬化性が弱くなるため耐久性が低下する傾向があり、少なすぎると難接着性である基材に対して界面接着力の効果を得ることが困難となる傾向がある。
【0033】
本発明においては、オキセタン化合物(A)、および、脂環構造を有するエポキシ化合物(B)、シランカップリング剤(C)以外に、さらなる接着性の向上を図る目的で、脂環構造を有するエポキシ化合物(B)以外のエポキシ化合物(D)(以下、その他エポキシ化合物(D)と略記する)を用いることができる。
【0034】
上記その他エポキシ化合物(D)としては、例えば、トリアジン骨格含有エポキシ化合物、脂肪族系エポキシ化合物、分子内に少なくとも1個の芳香環を有するエポキシ化合物(芳香族系エポキシ化合物)等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0035】
上記トリアジン骨格含有エポキシ化合物としては、例えば、トリス(2,3-エポキシプロピル)-イソシアヌレート、トリス(3,4-エポキシブチル)-イソシアヌレート、トリス(4,5-エポキシペンチル)-イソシアヌレート、トリス-(5,6-エポキシヘキシル)-イソシアヌレート、トリス(6,7-エポキシヘプチル)-イソシアヌレート、トリス(7,8-エポキシオクチル)-イソシアヌレート等があげられる。
【0036】
上記脂肪族系エポキシ化合物としては、例えば、ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、グリシドール、炭素数11~15のアルコールグリシジルエーテル、ラウリルアルコールグリシジルエーテル等の分子内にエポキシ基を1個有する脂肪族系エポキシ化合物や、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリブタジエンジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、ポリグリセリンポリグリシジルエーテル等の分子内にエポキシ基を2個以上有する2官能以上の脂肪族系エポキシ化合物等があげられる。
【0037】
上記芳香族系エポキシ化合物としては、例えば、フェニルグリシジルエーテル、p-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル、p-sec-ブチルフェニルグリシジルエーテル、ジブロモフェニルグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル等の分子内にエポキシ基を1個有する芳香族系エポキシ化合物、フタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、ヒドロキノンジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ブロモビスフェノールAジグリシジルエーテル、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂等の分子内にエポキシ基を2個以上有する芳香族系エポキシ化合物、等があげられる。
【0038】
<光カチオン重合開始剤(E)>
本発明においては、接着剤組成物にさらに光カチオン重合開始剤(E)を含有させることが好ましい。上記光カチオン重合開始剤(E)を使用することにより、接着剤組成物の常温での硬化が可能となり、保護フィルムを良好に接着することが可能となる。上記光カチオン重合開始剤(E)としては、活性エネルギー線の照射によりカチオン種やルイス酸を生じる化合物であり、例えば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩や芳香族スルホニウム塩のようなオニウム塩、鉄-アレン錯体等があげられる。
【0039】
上記芳香族ジアゾニウム塩としては、例えば、ベンゼンジアゾニウム・ヘキサフルオロアンチモネート、ベンゼンジアゾニウム・ヘキサフルオロホスフェート、ベンゼンジアゾニウム・ヘキサフルオロボレート等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0040】
上記芳香族ヨードニウム塩としては、例えば、ジフェニルヨードニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニルヨードニウム・ヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウム・ヘキサフルオロアンチモネート、ジ(4-ノニルフェニル)ヨードニウム・ヘキサフルオロホスフェート等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0041】
上記芳香族スルホニウム塩としては、例えば、トリフェニルスルホニウム・ヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウム・ヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニル〔4-(フェニルチオ)フェニル〕スルホニウム・ヘキサフルオロホスフェート、4,4'-ビス〔ジフェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィド・ビスヘキサフルオロホスフェート、4,4'-ビス〔ジ(β-ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィド・ビスヘキサフルオロアンチモネート、4,4'-ビス〔ジ(β-ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィド・ビスヘキサフルオロホスフェート、7-〔ジ(p-トルイル)スルホニオ〕-2-イソプロピルチオキサントン・ヘキサフルオロアンチモネート、7-〔ジ(p-トルイル)スルホニオ〕-2-イソプロピルチオキサントン・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4-フェニルカルボニル-4'-ジフェニルスルホニオ-ジフェニルスルフィド・ヘキサフルオロホスフェート、4-(p-tert-ブチルフェニルカルボニル)-4'-ジフェニルスルホニオ-ジフェニルスルフィド・ヘキサフルオロアンチモネート、4-(p-tert-ブチルフェニルカルボニル)-4'-ジ(p-トルイル)スルホニオ-ジフェニルスルフィド・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0042】
上記鉄-アレン錯体としては、例えば、キシレン-シクロペンタジエニル鉄(II)-ヘキサフルオロアンチモネート、クメン-シクロペンタジエニル鉄(II)-ヘキサフルオロホスフェート、キシレン-シクロペンタジエニル鉄(II)-トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メタナイド等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0043】
なかでも、長波長の光源に対して高感度で反応するという点から、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩を用いることが好ましい。
【0044】
上記光カチオン重合開始剤(E)の含有量は、オキセタン化合物(A)、脂環構造を有するエポキシ化合物(B)とともに、シランカップリング剤(C)の合計量100重量部に対して0.5~20重量部であることが好ましく、特には1.0~10重量部、さらには1.5~5重量部が好ましい。光カチオン重合開始剤(E)の含有量が多すぎると、溶解性が低下したり、深部まで硬化することが難しくなるため耐久性が低下する傾向がある。また、光カチオン重合開始剤(E)の含有量が少なすぎると、硬化が不充分となり、接着強度や耐湿熱性が低下する傾向がある。
【0045】
本発明においては、上記各成分以外に、本発明の効果を損なわない範囲において、ラジカル重合成分として、分子内に少なくとも1個のエチレン性不飽和基を有する不飽和化合物(以下、エチレン性不飽和化合物と略す場合がある。)、光ラジカル重合開始剤、光増感剤、ポリオール類、帯電防止剤、その他の接着剤、アクリル系樹脂、ウレタン樹脂、ロジン、ロジンエステル、水添ロジンエステル、フェノール樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、脂肪族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、スチレン系樹脂、キシレン系樹脂等の粘着付与剤、可塑剤、着色剤、充填剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、機能性色素等の他の添加剤や、紫外線あるいは放射線照射により呈色あるいは変色を起こすような化合物を配合することができる。これら添加剤の配合量は、添加剤毎に適宜設定されるが、例えば、接着剤組成物全体の30重量%以下であることが好ましく、特に好ましくは20重量%以下である。
また、上記添加剤の他にも、接着剤組成物の構成成分の製造原料等に含まれる不純物等が少量含有されたものであっても良い。
【0046】
上記エチレン性不飽和化合物として、例えば、分子内に少なくとも1個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル系化合物をあげることができ、例えば、(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド類、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリルアルデヒド等があげられる。また、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートおよびエポキシ(メタ)アクリレート等のオリゴマーも、(メタ)アクリル系化合物として使用できる。さらに、(メタ)アクリロイル基とともにそれ以外のエチレン性不飽和結合を有する化合物も、(メタ)アクリル系化合物として使用でき、その具体例として、アリル(メタ)アクリレート、N,N-ジアリル(メタ)アクリルアミド等があげられる。
【0047】
上記光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-2-モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノンオリゴマー等のアセトフェノン類;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン類;ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチル-ジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-N,N-ジメチル-N-[2-(1-オキソ-2-プロペニルオキシ)エチル]ベンゼンメタナミニウムブロミド、(4-ベンゾイルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリド等のベンゾフェノン類;2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン、2-(3-ジメチルアミノ-2-ヒドロキシ)-3,4-ジメチル-9H-チオキサントン-9-オンメソクロリド等のチオキサントン類;2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフォンオキサイド類;等があげられる。
【0048】
上記光増感剤は、これを使用することにより、反応性が向上し、硬化物の機械強度や接着強度を向上させることができる。光増感剤としては、例えば、9,10-ジエトキシアントラセン、9,10-ジブトキシアントラセン等のアントラセン誘導体;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、α,α-ジメトキシ-α-フェニルアセトフェノン等のベンゾイン誘導体;ベンゾフェノン、2,4-ジクロロベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体;2-クロロアントラキノン、2-メチルアントラキノン等のアントラキノン誘導体などのカルボニル化合物;2-クロロチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサンテン-9-オン、等のチオキサントン誘導体などの有機硫黄化合物;過硫化物、レドックス系化合物、アゾおよびジアゾ化合物、ハロゲン化合物、光還元性色素等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。なかでも、アントラセン誘導体、チオキサントン誘導体を用いることが好ましい。
【0049】
上記光増感剤は、光カチオン重合開始剤(E)の総量を100重量部とした場合に、0.01~20重量部の範囲で含有することが好ましい。光増感剤の含有量が多すぎると、組成物や、得られる接着剤層が着色する傾向があり、少なすぎると、反応性が低下し、増感効果が得られない傾向がある。
【0050】
本発明の接着剤組成物は、上記各成分を用いて所定割合にて配合し、混合することにより得られる。
【0051】
このようにして、本発明の活性エネルギー線硬化性接着剤組成物が得られる。本発明の接着剤組成物は、活性エネルギー線照射により硬化することにより、接着剤として機能するものであり、偏光子と保護フィルムを接着するための偏光板用接着剤として好適に用いることができるものである。
【0052】
<偏光板>
本発明の偏光板は、偏光板用接着剤を介して偏光子と保護フィルムが貼り合わされたものであり、詳しくは、偏光子の少なくとも一方の面、好ましくは両面に、本発明の偏光板用接着剤を用いて保護フィルムが貼り合わされたものであり、通常は、液状の偏光板接着剤組成物を偏光子面あるいは保護フィルム面、あるいはその両方の面に均一に塗布した後、両者を貼り合わせ、圧着し、活性エネルギー線照射を行なうことで偏光板が形成される。
【0053】
上記偏光子としては、通常、平均重合度が1,500~10,000、ケン化度が85~100モル%のポリビニルアルコール系樹脂からなるフィルムを原反フィルムとして、ヨウ素-ヨウ化カリウムの水溶液あるいは二色性染料により染色された一軸延伸フィルム(通常、2~10倍、好ましくは3~7倍程度の延伸倍率)が用いられる。
【0054】
上記ポリビニルアルコール系樹脂は、通常、酢酸ビニルを重合したポリ酢酸ビニルをケン化して製造されるが、少量の不飽和カルボン酸(塩、エステル、アミド、ニトリル等を含む)、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸塩等、酢酸ビニルと共重合可能な成分を含有していてもよい。また、ポリビニルアルコールを酸の存在下でアルデヒド類と反応させた、例えば、ポリブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂等のいわゆるポリビニルアセタール樹脂およびポリビニルアルコール誘導体があげられる。
【0055】
上記偏光板の保護フィルムとしては、従来のTAC系フィルムに加えアクリル系フィルム(PMMA)、ポリエステル系フィルム(PET)シクロオレフィン系フィルム(COP)なども用いることができ、本発明の接着剤組成物は、TAC系フィルム、アクリル系フィルム、シクロオレフィン系フィルム(COP)、ポリエステル系フィルム(PET)系フィルム等から選ばれるいずれの保護フィルムに対しても好適に用いられる。
【0056】
本発明の接着剤組成物を偏光子上あるいは保護フィルム上に塗工するにあたっては、例えば、リバースコーター、グラビアコーター(ダイレクト,リバースやオフセット)、バーリバースコーター、ロールコーター、ダイコーター、バーコーター、ロッドコーター等を用いたり、ディッピング方式による塗工を行うことができる。
【0057】
上記貼り合わせ,圧着の際には、例えばロールラミネーター等を用いることができ、その圧力は通常0.1~10MPaの範囲から選択される。
【0058】
上記活性エネルギー線には、遠紫外線、紫外線、近紫外線、赤外線等の光線、X線、γ線等の電磁波の他、電子線、プロトン線、中性子線等が利用できるが、硬化速度、照射装置の入手のし易さ、価格等から紫外線照射による硬化が有利である。
【0059】
上記紫外線照射を行なう際の光源としては、高圧水銀灯、無電極ランプ、超高圧水銀灯カーボンアーク灯、キセノン灯、メタルハライドランプ、ケミカルランプ、ブラックライト、LEDランプ等が用いられる。
上記紫外線照射は、通常2~1000mJ/cm2、好ましくは10~500mJ/cm2、生産性に優れる点から15~300mJ/cm2の条件で行われる。
【0060】
上記活性エネルギー線(紫外線、電子線等)の照射方向は、任意の適切な方向から照射することができるが、生産性の観点から一方の透明保護フィルム側から照射することが好ましい。
【0061】
上記により得られる本発明の偏光板における接着剤層の厚さは、通常0.01~10μm、好ましくは0.5~8μm、特に好ましくは1~5μm、である。上記厚さが薄すぎると接着力自体の凝集力が得られず、接着強度が得られない傾向があり、厚すぎると打ち抜き加工時の割れ等により偏光板の加工性が低下する傾向がある。
【0062】
本発明の接着剤組成物は、初期および経時での接着力に優れる接着剤となり、種々の用途に利用可能であるが、とりわけ、種々の偏光板用保護フィルムと偏光子との貼り合せに好適であり、良好な接着性を示すものである。また、接着剤層の耐久性にも優れたものである。
【実施例】
【0063】
以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中、「部」、「%」とあるのは、重量基準を意味する。
【0064】
実施例および比較例に先立って、下記に示す接着剤組成物の各成分を用意した。
【0065】
〔オキセタン化合物(A)〕
(A-1):3-エチル-3{[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]メチル}オキセタン(分子内にオキセタニル基を2個有するオキセタン化合物:東亞合成社製、アロンオキセタンOXT-221)
【0066】
〔脂環構造を有するエポキシ化合物(B)〕
(B-1):3‘,4’-エポキシシクロヘキシルメチル 3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート;セロキサイド2021P(ダイセル社製)
【0067】
[シランカップリング剤(C)]
(C-1):3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業製KBM-403)
【0068】
〔光カチオン重合開始剤(E)〕
(E-1):ジフェニル〔4-(フェニルチオ)フェニル〕スルホニウム・ヘキサフルオロホスフェートとプロピレンカーボネートの(1:1)混合物(芳香族スルホニウム塩:サンアプロ社製、CPI-100P)
【0069】
〔実施例1~2、比較例1~4〕
<接着剤組成物の調製>
上記各配合成分を、後記の表1に示す割合で配合し、混合することにより接着剤組成物を調製した。
【0070】
<偏光子の作製>
まず、60μmのPVAフィルムを、水温30℃の水槽に浸漬しつつ、1.5倍に延伸した。つぎに、ヨウ素0.2g/L、ヨウ化カリウム15g/Lよりなる染色槽(30℃)にて240秒間浸漬しつつ1.3倍に延伸した。さらに、ホウ酸50g/L、ヨウ化カリウム30g/Lの組成のホウ酸処理槽(50℃)に浸漬すると共に、同時に3.08倍に一軸延伸しつつ5分間にわたってホウ酸処理を行った。その後、90℃で乾燥して総延伸倍率6倍の偏光子を製造した。なお、偏光子の水分率は1%であった。
【0071】
<偏光板試験片の作製>
大きさ200mm×150mm、厚み80μmのPETフィルム(東洋紡社製、商品名「コスモシャインSRF」)および、大きさ200mm×150mm、厚み50μmの環状オレフィン系樹脂(COP)フィルム(日本ゼオン社製、商品名「ZEONOR」)の各フィルムにコロナ処理(KASUGA DENKI社製、TEC-4AX 67W 2.0m/min 2pass)を行い、それぞれ上記で得られた接着剤組成物をバーコーターで膜厚4μmとなるように塗工し、接着剤組成物付きフィルムを得た。そして、大きさ180mm×120mmの上記偏光子の両面に、各接着剤組成物層付きフィルムをそれぞれ重ね合わせ、ロール機(MUROMACHI KAGAKU社製、「MDL601」)を用いて2.5kg/cm2、3.0m/minで貼り合わせ、積層フィルムを得た。
【0072】
ついで、積層フィルムのCOPフィルム側から、無電極ランプ(Dバルブ)の取り付けられた紫外線照射装置(ヘレウス社製)にてピーク照度:要確認400mW/cm2、積算露光量:200mJ/cm2(UVA領域)で紫外線照射を行ない、接着剤組成物を硬化させて偏光板試験片を作製した。
上記で得られた偏光板試験片を用いて、下記の通り性能評価を行った。
【0073】
<性能評価>
[接着力〕
偏光板試験片を120mm×25mmにカットし、90°方向の応力をかけた際のCOPフィルムと偏光子、および、PETフィルムと偏光子の接着具合(接着力)を、測定機器:オートグラフにて測定した。そして、上記測定値に基づき、下記基準に従い評価した。
(評価基準)
○…いずれも強固に接着していた。
△…いずれも弱く接着していた。
×…いずれも接着していなかった。
【0074】
[湿熱耐久性]
試験片を40mm×40mmにカットし、85℃85%RH環境下に100時間放置し湿熱耐久試験を実施した。試験後、下記基準に従い評価した。
(評価基準)
○…透過率変化量が1%未満
△…透過率変化量が1%以上5%未満
×…透過率変化量が5%以上
【0075】
[冷熱耐久性〕
試験片を100mm×100mmにカットし、-40℃に30分間放置し、ついで85℃に30分間放置するサイクルを100回繰り返す熱衝撃試験を実施した。試験後、下記基準に従い評価した。
(評価基準)
○…外観不良が全く確認されなかった。
×…外観不良(偏光子層にクラックが発生)が確認された。
【0076】
【0077】
上記結果から、オキセタン化合物(A)および脂環構造を有するエポキシ化合物(B)、シランカップリング剤(C)を含有してなる実施例1および2の接着剤組成物は、良好な硬化性を有し、偏光子と保護フィルムを高い接着力にて貼り合せることができるうえに、耐水性や耐久性においても優れた結果が得られた。このことから、バランスに優れた偏光板用接着剤組成物として実用に適するものであった。
【0078】
一方、比較例1~4の接着剤組成物では、硬化性および耐水性に関しては良好な結果が得られたが、接着力あるいは耐久性において劣る結果が得られた。このことから、偏光板用接着剤組成物として実用に供すること等ができないものであるといえる。従って、本発明の接着剤組成物が特に偏光板用接着剤用途において非常に優れていることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の接着剤組成物、さらに上記接着性組成物からなる偏光板用接着剤組成物は、偏光子と保護フィルムとの接着性に優れるものであり、種々の偏光板用保護フィルムと偏光子との貼り合わせに好適である。また、偏光板の耐久性、特に耐熱衝撃性に関しても優れたものである。また、本発明の接着剤組成物は、上記偏光板用接着剤用途の他にも、例えば、各種光学フィルムまたはシートの貼り合わせや、電子部品、精密機器、包装材料、表示材料等の貼り合わせに用いることもできる。