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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】設計支援システム及び設計支援方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/00 20230101AFI20231011BHJP
   G06Q 50/06 20120101ALI20231011BHJP
【FI】
C02F1/00 Z
G06Q50/06
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020065221
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021159873
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2022-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100192773
【弁理士】
【氏名又は名称】土屋 亮
(74)【代理人】
【識別番号】100178847
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 映美
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 寿和
【審査官】松本 要
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-220389(JP,A)
【文献】特開2003-114989(JP,A)
【文献】特開2018-075539(JP,A)
【文献】特開2006-125001(JP,A)
【文献】特開2018-139035(JP,A)
【文献】国際公開第2015/133048(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/00
C02F 9/00-9/20
B01J 10/00-19/32
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
設計対象となる水処理システムの設計条件を取得し、被処理水に含まれる物質に対する処理を行う処理ユニットを、被処理水の各系統に対して配置するように判定することによって、水処理システムの仮の候補である仮候補を決定する仮候補決定部と、
前記仮候補において、複数の系統を合流させることが可能であるか否か判定し、可能である場合には合流するように前記仮候補を変更することによって水処理システムの最終的な候補を決定する合流判定部と、
を備える設計支援システム。
【請求項2】
前記仮候補決定部は、被処理水に含まれる物質に対して予め割り当てられた優先度が高いものから順に前記物質を処理する処理ユニットを配置することによって仮候補を決定するする、請求項1に記載の設計支援システム。
【請求項3】
同時に処理することができない他の物質が被処理水に含まれる可能性が高い物質から順に高い優先度が割り当てられる、請求項2に記載の設計支援システム。
【請求項4】
コンピューターが、設計対象となる水処理システムの設計条件を取得し、被処理水に含まれる物質に対する処理を行う処理ユニットを、被処理水の各系統に対して配置するように判定することによって、水処理システムの仮の候補である仮候補を決定する仮候補決定ステップと、
コンピューターが、前記仮候補において、複数の系統を合流させることが可能であるか否か判定し、可能である場合には合流するように前記仮候補を変更することによって水処理システムの最終的な候補を決定する合流判定ステップと、
を有する設計支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設計支援システム及び設計支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水処理システムとして様々な種類のシステムが提案されている。その用途や被処理水に含まれる物質の種類などに応じて、各水処理システムにおいて必要となる構成が異なる。そのため、新たに水処理システムを設計する際には、水に関する知識や処理ユニットに関する知識など、様々な知識が必要となる。そのため、水処理システムの設計には、時間や労力が多く必要となる。
このような問題を解決するための技術として、コンピューターを用いて水処理システムの設計を支援する技術が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-196007公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の支援装置では、設計条件として与えられる被処理水について、定められた水質の水を出力することが可能な水処理システムを設計できるものの、設計される水処理システムの構築に要するコストを抑えることは実現できていなかった。
【0005】
上記事情に鑑み、本発明は、よりコストを抑えた水処理システムの候補を設計できる設計支援システム及び設計支援方法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、設計対象となる水処理システムの設計条件を取得し、被処理水に含まれる物質に対する処理を行う処理ユニットを、被処理水の各系統に対して配置するように判定することによって、水処理システムの仮の候補である仮候補を決定する仮候補決定部と、前記仮候補において、複数の系統を合流させることが可能であるか否か判定し、可能である場合には合流するように前記仮候補を変更することによって水処理システムの最終的な候補を決定する合流判定部と、を備える設計支援システムである。
【0007】
本発明の一態様は、上記の設計支援システムであって、前記仮候補決定部は、被処理水に含まれる物質に対して予め割り当てられた優先度が高いものから順に前記物質を処理する処理ユニットを配置することによって仮候補を決定する。
【0008】
本発明の一態様は、上記の設計支援システムであって、同時に処理することができない他の物質が被処理水に含まれる可能性が高い物質から順に高い優先度が割り当てられる。
【0009】
本発明の一態様は、設計対象となる水処理システムの設計条件を取得し、被処理水に含まれる物質に対する処理を行う処理ユニットを、被処理水の各系統に対して配置するように判定することによって、水処理システムの仮の候補である仮候補を決定する仮候補決定ステップと、前記仮候補において、複数の系統を合流させることが可能であるか否か判定し、可能である場合には合流するように前記仮候補を変更することによって水処理システムの最終的な候補を決定する合流判定ステップと、を有する設計支援方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、よりコストを抑えた水処理システムの候補を設計することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の設計支援システム10のシステム構成を示す概略ブロック図である。
図2】優先度テーブル131の具体例を示す図である。
図3A】処理ユニットテーブル132の具体例を示す。
図3B図3Aの物質種別の具体例を示す図である。
図4】設計支援システム10の処理の流れの具体例を示すフローチャートである。
図5】本実施形態の設計支援システム10の水処理システム候補の設計過程の具体例を示す図である。
図6】本実施形態の設計支援システム10の水処理システム候補の設計過程の具体例を示す図である。
図7】本実施形態の設計支援システム10の水処理システム候補の設計過程の具体例を示す図である。
図8】本実施形態の設計支援システム10の水処理システム候補の設計過程の具体例を示す図である。
図9】本実施形態の設計支援システム10の水処理システム候補の設計過程の具体例を示す図である。
図10】本実施形態の設計支援システム10の水処理システム候補の設計過程の具体例を示す図である。
図11】本実施形態の設計支援システム10の水処理システム候補の設計過程の具体例を示す図である。
図12】本実施形態の設計支援システム10の水処理システム候補の設計過程の具体例を示す図である。
図13】本実施形態の設計支援システム10の水処理システム候補の設計過程の具体例を示す図である。
図14】本実施形態の設計支援システム10の水処理システム候補の設計過程の具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の具体的な構成例について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の設計支援システム10のシステム構成を示す概略ブロック図である。設計支援システム10は、入力部11、出力部12、記憶部13及び制御部14を備える。設計支援システム10は、入力される設計条件に基づいて水処理システム候補を構築し、構築された水処理システム候補の情報を出力する。設計支援システム10は、1又は複数の処理ユニットを、被処理水が流入する各系統に対して設置することによって、水処理システム候補を構築する。処理ユニットは、被処理水に含まれる1又は複数の物質を処理する機構である。なお、図1に示される各部は、同一の筐体に実装されてもよいし、異なる筐体に実装されてもよいし、重複して複数の筐体に実装されてもよい。設計支援システム10は、1台の情報処理装置を用いて構成されてもよいし、複数第の情報処理装置を用いて構成されてもよい。複数の情報処理装置を用いて構成される場合には、各情報処理装置がネットワークを介して互いに通信し合うことによって動作するように構成されてもよい。
【0013】
入力部11は、キーボード、ポインティングデバイス(マウス、タブレット等)、ボタン、タッチパネル等の既存の入力装置を用いて構成される。入力部11は、ユーザーの指示を設計支援システム10に入力する際にユーザーによって操作される。入力部11は、入力装置を設計支援システム10に接続するためのインタフェースであっても良い。この場合、入力部11は、入力装置においてユーザーの入力に応じ生成された入力信号を設計支援システム10に入力する。入力部11は、マイク及び音声認識装置を用いて構成されてもよい。この場合、入力部11はユーザーによって発話された文言を音声認識し、認識結果の文字列情報を設計支援システム10に入力する。入力部11は、ユーザーの指示を設計支援システム10に入力可能な構成であればどのように構成されてもよい。
【0014】
出力部12は、設計支援システム10のユーザーに対してデータの出力を行う。出力部12は、例えば画像や文字を画面に出力する装置を用いて構成されても良い。例えば、出力部12は、CRT(Cathode Ray Tube)や液晶ディスプレイや有機EL(Electro-Luminescent)ディスプレイ等を用いて構成されてもよい。また、出力部12は、画像や文字をシートに印刷(印字)する装置を用いて構成されてもよい。このような装置の具体例として、インクジェットプリンタやレーザープリンタ等のプリンターがある。出力部12は、文字を音声に変換して出力する装置を用いて構成されてもよい。この場合、出力部12は例えば音声合成装置及び音声出力装置(スピーカー)を用いて構成される。出力部12は、通信装置を介して他の情報処理装置に対し出力データを送信するように構成されてもよい。
【0015】
記憶部13は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置などの記憶装置を用いて構成される。記憶部13は、設計支援システム10において処理に用いられるデータを記憶する。記憶部13は、例えば、優先度テーブル131及び処理ユニットテーブル132を記憶する。
【0016】
図2は、優先度テーブル131の具体例を示す図である。優先度テーブル131は、水処理システム候補が設置される施設の種別毎に設けられてもよい。例えば、水処理システム候補が設置される施設が製造施設である場合には、その製造プロセスの種別毎に優先度テーブル131が定義されてもよい。製造プロセスの種別の具体例として、例えば電子部品製造、食品製造、自動車製造などがある。同じ製造プロセスの種別であっても、さらにその製造品目に応じて異なる優先度テーブルが定義されてもよい。
【0017】
優先度テーブルは、設計支援システム10において構築される水処理システム候補において処理される対象となる物質と、各物質の処理の優先度と、を対応付けたテーブルである。優先度は、その値が低いほど、より上流側で処理される対象の物質であることを示す。図2の例では、物質aに対する処理は他のどの物質よりも上流で実施される。優先度テーブル131では、例えば、同時に処理することができない他の物質の種類が多い物質ほど高い優先度の物質として定義されてもよい。優先度テーブル131では、例えば、同時に処理することができない他の物質が被処理水に含まれる可能性が高い物質ほど高い優先度の物質として定義されてもよい。
【0018】
図3Aは、処理ユニットテーブル132の具体例を示す図である。処理ユニットテーブル132は、設計支援システム10において構築される水処理システム候補に用いられる処理ユニットに関する情報を含む。具体的には、処理ユニットテーブル132は、利用可能な処理ユニット毎に、その性能等に関する情報が登録されているテーブルである。図3Aの例では、処理ユニットテーブル132は、処理ユニット名と、物質種別と、物質名と、受入濃度と、除去性能と、受入可能流量と、の各値を有する。処理ユニット名は、処理ユニットの名称を示す。物質種別について、除去対象物質は、その処理ユニットで除去可能な物質のうち、その処理ユニットによる除去が主目的の物質である。一方、その処理ユニットにより受動的に除去される物質については受動除去物質として分けて示す。分別推奨物質は、その処理ユニットにおける処理を阻害するためその処理ユニットには流入しないことが推奨される物質である。必要物質は、その処理ユニットにおける処理の促進や阻害の抑制のため共存が好ましい物質であり、原水中に含まれる場合や処理前や処理時に添加する場合がある。副生物質は、その処理ユニットにおける処理の中で副次的に発生した物質である。なお物質種別の具体例としては処理ユニットごとに図3Bのように示される。なお、上記の物質種別としては物質そのものだけでなく、物質に相関する水質指標(例えば、pH、ORP、SS、BODなど)も含むものとする。
受入濃度については、各処理ユニットにおいて物質ごとに受入許容濃度が予め設定される。除去対象物質、受動除去物質、分別推奨物質については受入許容濃度より小さい必要があるが、必要物質については逆に受入許容濃度より大きい必要がある。なお受入濃度ではなく受入流入負荷で規定してもよい。
除去性能については、各処理ユニットにおいて物質ごとに処理水濃度として設定することができる。このとき処理水濃度は絶対値で設定することもできるし、受入濃度に除去率を乗じたものとすることや、受入濃度からの増減幅を加減したものとすることも可能である。副生物質については処理ユニットの給水に含まれる起因物質の濃度を基に算出することが可能である。受入可能流量は、その処理ユニットに流入させることが可能な流量の上限を示す。
【0019】
図1に戻って説明を続ける。制御部14は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサーとメモリとを用いて構成される。制御部14は、CPUがプログラムを実行することによって、仮候補決定部141及び合流判定部142として機能する。なお、制御部14の各機能の全て又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されても良い。プログラムは、コンピューター読み取り可能な記録媒体に記録されても良い。コンピューター読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM、半導体記憶装置(例えばSSD:Solid State Drive)等の可搬媒体、コンピューターシステムに内蔵されるハードディスクや半導体記憶装置等の記憶装置である。プログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
【0020】
仮候補決定部141は、入力部11を介してユーザーから入力された設計条件に基づいて、各系統に処理ユニットを配置することによって仮候補を決定する。仮候補決定部141は、例えば設計条件に含まれる施設の種別や製造プロセスや製造品目に応じた優先度テーブルに基づいて仮候補を決定する。より具体的には、仮候補決定部141は、各系統において、優先度テーブルにおいて優先度が高い(値が低い)物質に関する処理ユニットから先に(上流に)配置していくことで仮候補を決定してもよい。また、仮候補決定部141は、各系統で排出される水の水質(以下「出口水質」という。)が所定の基準(以下「出口基準」という。)を満たすように処理ユニットを配置して仮候補を決定する。仮候補は、系統毎に独立した処理ユニットの配置となっており、合流などは含まれていない。なお、記憶部13は、各行政区画と、その行政区画において条例等で定められている出口基準と、を対応付けて予め記憶している。そのため、設計条件として行政区画の情報が与えられると、仮候補決定部141は、その行政区画に応じた出口基準の情報を取得できる。
【0021】
合流判定部142は、仮候補決定部141が生成する仮候補において、複数の系統が合流可能であるか否かを所定の基準に基づいて判定する。
このとき合流判定部142は、優先度の高い系統の上流側から下流方向に向かって順に、合流候補30の有無の確認を順次行い、合流候補30があれば合流判定を行い、合流可能であれば仮候補の更新を行う。その後また合流候補の有無確認、合流判定、仮候補の更新を行う、という演算を繰り返す。判定対象の系統が最下流まで完了したら次に優先順位の高い系統についても同様に上流側から下流方向に向かって順次判定する、といった流れで最終系統の最下流まで判定を行う。
また、合流候補30の有無の確認においては、処理ユニットの給水に含まれる除去対象物質が、他の系統の処理ユニットの給水の除去対象物質と共通であるか確認し、除去対象物質が共通の系統があれば合流候補30として合流判定を行う。また、共通の除去対象物質の有無の確認に加えて、処理ユニットが他の系統の処理ユニットと共通であるか確認し、処理ユニットが共通の系統があれば合流候補30として合流判定を行うようにしてもよい。この場合、合流判定部142が一連の判定をする順番は、後述の図6においてもしも仮候補の更新がなかったとすると、第1系統の処理ユニットA給水→処理ユニットA→処理ユニットE給水→処理ユニットE→処理ユニットF給水→処理ユニットF→第2系統の処理ユニットB給水→処理ユニットB→・・・、の順となる。
合流判定部142が用いる所定の基準は、例えば合流した後の被処理水が、仮候補において配置されている処理ユニットで処理可能であること(第一合流条件)や、たとえ仮候補において配置されている処理ユニットで処理可能でなかったとしても他の処理ユニットで処理可能であること(第二合流条件)、である。第一合流条件及び第二合流条件において、処理可能であるという判定基準は以下の通りである。
【0022】
合流判定部142は、一方の系統に含まれている各物質と、他方の系統に含まれている各物質と、について、判定対象の処理ユニットの分別推奨物質に含まれていないか判定する。もし、いずれの系統に含まれている物質も分別推奨物質に含まれていない場合には、処理可能であると判断する。一方、いずれかの系統に含まれている物質が分別推奨物質に含まれている場合には、処理可能ではないと判断してもよいし、次の判定を行ってもよい。つまり、合流判定部142は、一方の系統に含まれている除去対象物質と他方の系統に含まれている除去対象物質との、両系統の合流後の濃度が、判定対象の処理ユニットの除去性能の範囲内であるか否か判定するものであってもよい。もしいずれか一方の系統に含まれている物質が分別推奨物質に含まれている場合、両系統の合流後の除去対象物質の濃度が除去性能の範囲内である場合には、処理可能である。一方で、除去性能の範囲を超えている場合には、処理可能ではない。
また、合流判定部142は、両系統の合流後の流量が、判定対象の処理ユニットの受入可能流量の範囲内であるか否か判定する。もし受入可能流量の範囲内である場合には、処理可能である。一方で、受入可能流量の範囲を超えている場合には、処理可能ではない。
なお上記実施形態においては物質種別のうち分別推奨物質のみ判定基準としたが、受動除去物質、必要物質、副生物質についても考慮して水処理システム候補を構築してもよい。これにより精度の高い構築が可能となる。副生物質については合流後の下流側の処理ユニットにおける除去対象物質、分別推奨物質、必要物質の許容濃度との兼ね合いによって合流可否が判断される。
【0023】
図4は、設計支援システム10の処理の流れの具体例を示すフローチャートである。まず、ユーザーは入力部11を操作することによって設計条件を入力する。入力される設計条件には、被処理水が流入する全系統について、被処理水の情報(以下「被処理水情報」という。)が含まれる。例えば、被処理水が4つの系統から流入する場合には、4つの系統それぞれについて被処理水情報が入力される。被処理水情報には、被処理水の水量、被処理水に含まれる物質、被処理水に含まれる物質毎の濃度、を示す情報が含まれる。被処理水の水量を示す情報は、例えば1分当たりの流入量を示す情報であってもよいし、1時間当たりの流入量を示す情報であってもよいし、他の形式で水量が示されてもよい。仮候補決定部141は、入力された設計条件に基づいて、全系統の被処理水情報を取得する(ステップS101)。
【0024】
次に、仮候補決定部141は、優先度テーブル131に基づいて、各系統で優先度順に処理対象物質を処理可能な処理ユニットを配置することで仮候補を決定する(ステップS102)。
【0025】
次に、合流判定部142は、ステップS102において各系統に対して決定された仮候補に基づいて、所定の処理順つまり優先度の高い系統の上流側から下流方向に向かって順に、合流候補30の有無の確認を順次行って合流候補30を設定し(ステップS103)、合流可能であるか否か判定する(ステップS104)。合流判定部142は、合流可能であると判定した場合(ステップS104-YES)、合流を決定し(ステップS105)、合流候補30の位置で複数の系統を合流させる(ステップS106)。一方、合流判定部142は、合流可能ではないと判定した場合(ステップS104-NO)、上記ステップS105とステップS106をスキップする。すなわち、合流判定部142は、合流候補30において合流を行わないことを決定する。
【0026】
次に、合流判定部142は、所定の処理順における最終の合流候補30まで合流判定が完了したか否か判定する(ステップS107)。最終の合流候補30まで判断が行われていない場合(ステップS107-NO)、合流判定部142は所定の処理順における次の合流候補についてステップS104以降の処理を実行する。最終の合流候補30まで判断が行われていた場合(ステップS107-YES)、合流判定部142はその時点の仮候補を水処理システム候補として決定する(ステップS108)。そして、合流判定部142は、水処理システムを出力する。
【0027】
図5図14は、本実施形態の設計支援システム10の水処理システム候補の設計過程の具体例を示す図である。以下、図5図14を用いて水処理システム候補の設計過程について説明する。この具体例では、全部で4つの系統で被処理水が処理される。各系統には第1系統、第2系統、第3系統及び第4系統という名前を付している。図5は、各系統から排出される被処理水に含まれる除去対象物質を示す。第1系統からは、除去対象物質として物質aと物質bとを含む被処理水が排出される。第2系統からは、除去対象物質として物質dを含む被処理水が排出される。第3系統からは、除去対象物質として物質aを含む被処理水が排出される。第4系統からは、除去対象物質として物質cを含む被処理水が排出される。
【0028】
図6は、仮候補決定部141によって決定された各系統の仮候補である。図6に示されるように、各系統の順番は、各系統の被処理水に含まれる除去対象物質の優先度に基づいてソートされてもよい。このソートにおいて、同じ優先度の除去対象物質が含まれている場合には、除去対象物質の種類の数が多いほど高い優先度としてソートされてもよい。図6に示される例では、高い優先度の系統ほど上方に配置されており、第1系統、第3系統、第4系統、第2系統の順番で配置されている。
【0029】
以下に合流判定部142による一連の判定について説明する。なお、本実施形態では処理ユニットの給水に含まれる除去対象物質について系統間での共通する物質の有無の確認のみから判定するものとし、系統間での共通する処理ユニットの有無の確認は行わないものとした。
図7は、合流判定部142による最初の合流候補30を示す図である。合流判定部142は、優先度が高い系統から順に、且つ、上流側から下流に向けて順に合流候補30の有無を確認して、合流候補30を設定して合流可能か否か判定する。図7では、第1系統と第3系統とについて最も上流の地点で合流可能か否か合流判定部142が判定する。
【0030】
具体的には以下の通りである。合流判定部142は、各系統(第1系統及び第3系統)において合流候補30の地点よりも下流に位置する処理ユニットについて第一合流条件を満たすか否か判定する。図7では、第一合流条件を満たすか否か判定する対象となっている処理ユニット20を太線で示している。図7の例では、まず処理ユニットAと処理ユニットBとについて、合流後の被処理水について処理可能であるという判定基準を満たすか否か判定される。図7の例では、処理ユニットBが判定基準を満たす。次に、処理ユニットBから排出される被処理水を処理ユニットEが処理可能であるか否か(判定基準を満たすか否か)判定される。図7の例では、処理ユニットEも判定基準を満たす。次に、処理ユニットEから排出される被処理水を処理ユニットFが処理可能であるか否か(判定基準を満たすか否か)判定される。図7の例では、処理ユニットFも判定基準を満たす。このように、合流後の被処理水について、仮候補の各処理ユニットが処理可能であるため、第一合流条件が満たされる。その結果、合流判定部142は、図7に示される合流候補30において合流可能であると判定し、合流することを決定する。図8は、図7に示される合流候補30において合流された後の仮候補を示す図である。仮候補を図8のものに更新する。
【0031】
図9は、更新された仮候補における次の合流候補30を示す図である。合流判定部142は、更新された仮候補に対して、優先度が高い系統から順に、且つ、上流側から下流に向けて順に合流候補30の有無を確認して、合流候補30を設定して合流可能か否か判定する。図9では、第3系統と第4系統とについて最も上流の地点(第1系統が合流する地点よりも下流の地点)で合流可能か否か合流判定部142が判定する。
【0032】
具体的には以下の通りである。合流判定部142は、各系統(第3系統及び第4系統)において合流候補30の地点よりも下流に位置する処理ユニットについて第一合流条件を満たすか否か判定する。図9では、第一合流条件を満たすか否か判定する対象となっている処理ユニット20を太線で示している。図9の例では、まず処理ユニットBと処理ユニットCとについて、合流後の被処理水について処理可能であるという判定基準を満たすか否か判定される。図9の例では、処理ユニットB及び処理ユニットCのいずれもが判定基準を満たさない。そのため、第一合流条件は満たされない。次に、合流判定部142は、処理ユニットB及び処理ユニットCを他の処理ユニットに置き換えることによって、合流後の被処理水について処理可能であるという判定基準を満たすことになるか否か判定する。図9の例では、他のいずれの処理ユニットにも置き換えることができない。そのため、第二合流条件も満たされない。その結果、合流判定部142は、図9に示される合流候補30において合流可能ではないと判定し、合流しないことを決定する。
【0033】
図10は、上記合流候補30の次の合流候補30を示す図である。合流判定部142は、優先度が高い系統から順に、且つ、上流側から下流に向けて順に合流候補30の有無を確認して、合流候補30を設定して合流可能か否か判定する。図10では、第3系統と第4系統とについて、それぞれ1つ目の処理ユニット20を通過した後の地点で合流可能か否か合流判定部142が判定する。
【0034】
具体的には以下の通りである。合流判定部142は、各系統(第3系統及び第4系統)において合流候補30の地点よりも下流に位置する処理ユニットについて第一合流条件を満たすか否か判定する。図10では、第一合流条件を満たすか否か判定する対象となっている処理ユニット20を太線で示している。図10の例では、まず処理ユニットEについて、合流後の被処理水について処理可能であるという判定基準を満たすか否か判定される。図10の例では、処理ユニットEは判定基準を満たさない。そのため、第一合流条件は満たされない。次に、合流判定部142は、処理ユニットEを他の処理ユニットに置き換えることによって、合流後の被処理水について処理可能であるという判定基準を満たすことになるか否か判定する。図10の例では、他のいずれの処理ユニットにも置き換えることができない。そのため、第二合流条件も満たされない。その結果、合流判定部142は、図10に示される合流候補30において合流可能ではないと判定し、合流しないことを決定する。
【0035】
図11は、上記合流候補30の次の合流候補30を示す図である。合流判定部142は、優先度が高い系統から順に、且つ、上流側から下流に向けて順に合流候補30の有無を確認して、合流候補30を設定して合流可能か否か判定する。図11では、第3系統に関しては2つ目の処理ユニットを通過した後の地点、第4系統に関しては1つ目の処理ユニットを通過した後の地点、で合流可能か否か合流判定部142が判定する。
【0036】
具体的には以下の通りである。合流判定部142は、各系統(第3系統及び第4系統)において合流候補30の地点よりも下流に位置する処理ユニットについて第一合流条件を満たすか否か判定する。図11では、第一合流条件を満たすか否か判定する対象となっている処理ユニット20を太線で示している。図11の例では、処理ユニットFについて、合流後の被処理水について処理可能であるという判定基準を満たすか否か判定される。図11の例では、処理ユニットFは判定基準を満たす。そのため、第一合流条件は満たされる。その結果、合流判定部142は、図11に示される合流候補30において合流可能であると判定し、合流することを決定する。図12は、図11に示される合流候補30において合流された後の仮候補を示す図である。仮候補を図12のものに更新する。
【0037】
図13は、更新された仮候補における次の合流候補30を示す図である。合流判定部142は、更新された仮候補に対して、優先度が高い系統から順に、且つ、上流側から下流に向けて順に合流候補30の有無を確認して、合流候補30を設定して合流可能か否か判定する。図13では、第4系統と第2系統とについて、それぞれ最も下流の地点(最後の処理ユニット20よりも上流の地点)で合流可能か否か合流判定部142が判定する。
【0038】
具体的には以下の通りである。合流判定部142は、各系統(第4系統及び第2系統)において合流候補30の地点よりも下流に位置する処理ユニットについて第一合流条件を満たすか否か判定する。図13では、第一合流条件を満たすか否か判定する対象となっている処理ユニット20を太線で示している。図13の例では、処理ユニットFについて、合流後の被処理水について処理可能であるという判定基準を満たすか否か判定される。図13の例では、処理ユニットEは判定基準を満たさない。そのため、第一合流条件は満たされない。次に、合流判定部142は、処理ユニットFを他の処理ユニットに置き換えることによって、合流後の被処理水について処理可能であるという判定基準を満たすことになるか否か判定する。図13の例では、処理ユニットGに置き換えることによって判定基準が満たされる。そのため、第二合流条件が満たされる。その結果、合流判定部142は、処理ユニットFを処理ユニットGに置き換えることによって、図13に示される合流候補30において合流可能であると判定し、合流することを決定する。図14は、図13に示される合流候補30において合流された後の仮候補を示す図である。仮候補を図14のものに更新する。
合流判定部142は、更新された仮候補に対して、優先度が高い系統から順に、且つ、上流側から下流に向けて順に合流候補30の有無を確認し、合流候補30が存在しないため最終の合流候補30まで判断が行われことを確認し、その時点の仮候補を水処理システム候補として決定し、水処理システムの最終候補として出力する。
【0039】
このように構成された設計支援システム10では、よりコストを抑えた水処理システムの候補を設計できる。詳細は以下の通りである。
【0040】
設計支援システム10では、まず各排水系統にて設計条件を満たすように仮候補が決定され、系統間の複数の合流候補30のそれぞれにおいて、合流可能であるか否か判定し、合流可能であると判定された場合にはその合流候補30において合流するよう水処理システムが再構成していくことで水処理システム候補が決定される。そのため、設計される水処理システム候補において、使用される処理ユニット20の数を削減させることができ、水処理システムの構築に要するコストを削減することが可能となる。また、このようなコストの削減を図りつつ、水処理の精度を高く維持することが可能となる。
【0041】
設計支援システム10では、優先度テーブル131において優先度が高いと定義されている処理対象物質に対する処理ユニット20から順に各系統の上流側に配置される。優先度テーブル131では、例えば同時に処理することができない他の物質の種類が多い物質や、同時に処理することができない他の物質が被処理水に含まれる可能性が高い物質、から順に高い優先度として定義される。このように優先度が定義され、優先度が高い物質の処理ユニット20から順に上流側に配置されることによって、合流が実現される可能性を高めることが可能となる。その結果、水処理システムの構築に要するコストを削減することが可能となる。
【0042】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0043】
10…設計支援システム, 11…入力部, 12…出力部, 13…記憶部, 131…優先度テーブル, 132…処理ユニットテーブル, 14…制御部, 141…仮候補決定部, 142…合流判定部, 20…処理ユニット
図1
図2
図3A
図3B
図4
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図8
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図10
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図14