(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】オニウム塩化合物、化学増幅レジスト組成物及びパターン形成方法
(51)【国際特許分類】
C07C 69/92 20060101AFI20231011BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20231011BHJP
G03F 7/039 20060101ALI20231011BHJP
G03F 7/038 20060101ALI20231011BHJP
G03F 7/32 20060101ALI20231011BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20231011BHJP
C07C 69/80 20060101ALI20231011BHJP
C07C 69/90 20060101ALI20231011BHJP
C07C 381/12 20060101ALI20231011BHJP
C07C 25/00 20060101ALI20231011BHJP
C07D 333/76 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
C07C69/92 CSP
G03F7/004 503A
G03F7/004 501
G03F7/039 601
G03F7/038 601
G03F7/32
G03F7/20 521
C07C69/80 A
C07C69/90
C07C381/12
C07C25/00
C07D333/76
(21)【出願番号】P 2020180100
(22)【出願日】2020-10-28
【審査請求日】2022-10-24
(31)【優先権主張番号】P 2019209432
(32)【優先日】2019-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤原 敬之
(72)【発明者】
【氏名】及川 健一
(72)【発明者】
【氏名】小林 知洋
(72)【発明者】
【氏名】福島 将大
【審査官】星 浩臣
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-169790(JP,A)
【文献】特開2017-120370(JP,A)
【文献】国際公開第2019/187445(WO,A1)
【文献】特開2016-108525(JP,A)
【文献】特開2019-003176(JP,A)
【文献】特開2017-058454(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
G03F
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されるオニウム塩化合物。
【化1】
(式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、水素原子又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~10のヒドロカルビル基である。また、R
1及びR
2が、互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよい。
R
f1及びR
f2は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又はトリフルオロメチル基であるが、少なくとも一方は、フッ素原子又はトリフルオロメチル基である。
L
1は、単結合又はカルボニル基である。
Arは、置換基を有していてもよい炭素数3~15の(n+1)価の芳香族基である。
nは、1≦n≦5を満たす整数である。
M
+は、アンモニウムカチオン、スルホニウムカチオン又はヨードニウムカチオンである。
Rは、下記式(R-1)、(R-2)、(R-3)、(R-4)又は(R-5)で表される基である。
【化2】
(式中、R
r1、R
r2、R
r3及びR
r4は、それぞれ独立に、炭素数1~10のヒドロカルビル基である。また、R
r1及びR
r2が、互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよい。
R
r5及びR
r6は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~5のヒドロカルビル基である。また、R
r4、R
r5及びR
r6のいずれか2つが、互いに結合してこれらが結合する原子と共に環を形成してもよい。
破線は、式(1)中のArとの結合手である。)
【請求項2】
下記式(2)で表される請求項1記載のオニウム塩化合物。
【化3】
(式中、R及びM
+は、前記と同じ。
n及びmは、1≦n≦5、0≦m≦4及び1≦n+m≦5を満たす整数である。
R
3は、水素原子又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~10のヒドロカルビル基である。
R
4は、水素原子、フッ素原子、ヨウ素原子、ヒドロキシ基、又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~10のヒドロカルビル基であり、該ヒドロカルビル基中の-CH
2-が、エーテル結合又はカルボニル基で置換されていてもよい。mが2以上のとき、各R
4は、互いに同一であっても異なっていてもよく、2つのR
4が互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよい。)
【請求項3】
R
3が、水素原子、イソプロピル基、アダマンチル基又は置換されていてもよいフェニル基である請求項2記載のオニウム塩化合物。
【請求項4】
Rが、式(R-1)又は(R-2)で表される基である請求項1~3のいずれか1項記載のオニウム塩化合物。
【請求項5】
M
+が、下記式(M-1)~(M-4)のいずれかで表されるカチオンである請求項1~4のいずれか1項記載のオニウム塩化合物。
【化4】
(式中、R
M1、R
M2、R
M3、R
M4及びR
M5は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~15のヒドロカルビル基であり、該ヒドロカルビル基中の-CH
2-が、エーテル結合、カルボニル基又はスルホニル基で置換されていてもよい。
L
2及びL
3は、それぞれ独立に、単結合、メチレン基、エーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル基、スルフィニル基、スルホニル基又は-N(R
N)-である。R
Nは、水素原子又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~10のヒドロカルビル基であり、該ヒドロカルビル基中の-CH
2-が、エーテル結合、カルボニル基又はスルホニル基で置換されていてもよい。
p、q、r、s及びtは、それぞれ独立に、0~5の整数である。pが2以上のとき、各R
M1は、互いに同一でも異なっていてもよく、2つのR
M1が互いに結合してこれらが結合するベンゼン環上の炭素原子と共に環を形成してもよい。qが2以上のとき、各R
M2は、互いに同一でも異なっていてもよく、2つのR
M2が互いに結合してこれらが結合するベンゼン環上の炭素原子と共に環を形成してもよい。rが2以上のとき、各R
M3は、互いに同一でも異なっていてもよく、2つのR
M3が互いに結合してこれらが結合するベンゼン環上の炭素原子と共に環を形成してもよい。sが2以上のとき、各R
M4は、互いに同一でも異なっていてもよく、2つのR
M4が互いに結合してこれらが結合するベンゼン環上の炭素原子と共に環を形成してもよい。tが2以上のとき、各R
M5は、互いに同一でも異なっていてもよく、2つのR
M5が互いに結合してこれらが結合するベンゼン環上の炭素原子と共に環を形成してもよい。)
【請求項6】
下記式(3)又は(4)で表される請求項5記載のオニウム塩化合物。
【化5】
(式中、R
r1、R
r2、R
r3、R
M1、R
M2、R
M3、L
2、p、q、r及びmは、前記と同じ。
R
5は、水素原子、フッ素原子、ヒドロキシ基又は炭素数1~5のヒドロカルビル基であり、該ヒドロカルビル基中の-CH
2-が、エーテル結合又はカルボニル基で置換されていてもよい。mが2以上のとき、各R
5は、互いに同一であっても異なっていてもよく、2つのR
5が互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよい。)
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項記載のオニウム塩化合物からなる酸拡散抑制剤。
【請求項8】
(A)酸の作用により現像液に対する溶解性が変化するベースポリマー、(B)光酸発生剤、(C)請求項1~6のいずれか1項記載のオニウム塩化合物を含む酸拡散抑制剤、及び(D)有機溶剤を含む化学増幅レジスト組成物。
【請求項9】
(A')酸の作用により現像液に対する溶解性が変化し、露光により酸を発生する機能を有する繰り返し単位を含むベースポリマー、(C)請求項1~6のいずれか1項記載のオニウム塩化合物を含む酸拡散抑制剤、及び(D)有機溶剤を含む化学増幅レジスト組成物。
【請求項10】
前記ベースポリマーが、下記式(a)で表される繰り返し単位又は下記式(b)で表される繰り返し単位を含むポリマーである請求項8又は9記載の化学増幅レジスト組成物。
【化6】
(式中、R
Aは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。
X
Aは、単結合、フェニレン基、ナフチレン基、又は(主鎖)-C(=O)-O-X
A1-である。X
A1は、ヒドロキシ基、エーテル結合、エステル結合又はラクトン環を含んでいてもよい炭素数1~15のヒドロカルビレン基である。
X
Bは、単結合又はエステル結合である。
AL
1及びAL
2は、それぞれ独立に、酸不安定基である。)
【請求項11】
前記酸不安定基が、下記式(L1)~(L3)のいずれかで表される基である請求項10記載の化学増幅レジスト組成物。
【化7】
(式中、R
11は、それぞれ独立に、炭素数1~7のヒドロカルビル基であり、該ヒドロカルビル基中の-CH
2-が、エーテル結合で置換されていてもよい。
aは、1又は2である。
破線は、結合手である。)
【請求項12】
前記ベースポリマーが、下記式(c)で表される繰り返し単位を含むポリマーである請求項8~11のいずれか1項記載の化学増幅レジスト組成物。
【化8】
(式中、R
Aは、水素原子又はメチル基である。
Y
Aは、単結合又はエステル結合である。
R
21は、フッ素原子、ヨウ素原子又は炭素数1~10のヒドロカルビル基であり、該ヒドロカルビル基中の-CH
2-が、エーテル結合又はカルボニル基で置換されていてもよい。
b及びcは、1≦b≦5、0≦c≦4及び1≦b+c≦5を満たす整数である。)
【請求項13】
露光により酸を発生する機能を有する繰り返し単位が、下記式(d1)~(d4)で表されるものから選ばれる少なくとも1種である請求項9記載の化学増幅レジスト組成物。
【化9】
(式中、R
Bは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
Z
Aは、単結合、フェニレン基、-O-Z
A1-、-C(=O)-O-Z
A1-又は-C(=O)-NH-Z
A1-である。Z
A1は、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビレン基である。
Z
B及びZ
Cは、それぞれ独立に、単結合、又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビレン基である。
Z
Dは、単結合、メチレン基、エチレン基、フェニレン基、フッ素化されたフェニレン基、-O-Z
D1-、-C(=O)-O-Z
D1-又は-C(=O)-NH-Z
D1-である。Z
D1は、置換されていてもよいフェニレン基である。
R
31~R
41は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビル基である。また、Z
A、R
31及びR
32のうちのいずれか2つが、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよく、R
33、R
34及びR
35のうちのいずれか2つ、R
36、R
37及びR
38のうちのいずれか2つ又はR
39、R
40及びR
41のうちのいずれか2つが、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよい。
R
HFは、水素原子又はトリフルオロメチル基である。
n
1は、0又は1であるが、Z
Bが単結合のときは0である。n
2は、0又は1であるが、Z
Cが単結合のときは0である。
Xa
-は、非求核性対向イオンである。)
【請求項14】
請求項8~13のいずれか1項記載の化学増幅レジスト組成物を用いて、基板上にレジスト膜を形成する工程と、前記レジスト膜をKrFエキシマレーザー光、ArFエキシマレーザー光、電子線又は極端紫外線で露光する工程と、前記露光したレジスト膜を、現像液を用いて現像する工程とを含むパターン形成方法。
【請求項15】
現像液としてアルカリ水溶液を用いて、露光部を溶解させ、未露光部が溶解しないポジ型パターンを得る請求項14記載のパターン形成方法。
【請求項16】
現像液として有機溶剤を用いて、未露光部を溶解させ、露光部が溶解しないネガ型パターンを得る請求項14記載のパターン形成方法。
【請求項17】
前記現像液が、2-オクタノン、2-ノナノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン、4-ヘプタノン、2-ヘキサノン、3-ヘキサノン、ジイソブチルケトン、メチルシクロヘキサノン、アセトフェノン、メチルアセトフェノン、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチル、酢酸ブテニル、酢酸イソペンチル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸ペンチル、ギ酸イソペンチル、吉草酸メチル、ペンテン酸メチル、クロトン酸メチル、クロトン酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル、乳酸イソブチル、乳酸ペンチル、乳酸イソペンチル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル、2-ヒドロキシイソ酪酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、酢酸フェニル、酢酸ベンジル、フェニル酢酸メチル、ギ酸ベンジル、ギ酸フェニルエチル、3-フェニルプロピオン酸メチル、プロピオン酸ベンジル、フェニル酢酸エチル及び酢酸2-フェニルエチルから選ばれる少なくとも1種である請求項16記載のパターン形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オニウム塩化合物、化学増幅レジスト組成物及びパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LSIの高集積化と高速度化に伴い、パターンルールの微細化が求められ、高解像性のレジストパターンが要求されるようになるにつれ、パターン形状やコントラスト、マスクエラーファクター(Mask Error Factor(MEF))、焦点深度(Depth of Focus(DOF))、寸法均一性(Critical Dimension Uniformity(CDU))ラインウィドゥスラフネス(Line Width Roughness(LWR))等に代表されるリソグラフィー特性に加えて、現像後のレジストパターンのディフェクト(欠陥)の改善が一層必要とされている。
【0003】
リソグラフィー性能の改善手段の1つとして、酸拡散抑制剤、特に弱酸のスルホニウム塩のような弱酸オニウム塩の修飾や構造最適化による酸拡散の抑制、溶剤溶解性の調整が挙げられる。また、ベースポリマー以外の添加剤成分にも酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する機能を持たせることで、コントラストを改善する試みも行われている。すなわち添加剤成分、例えば光酸発生剤成分や酸拡散抑制剤成分に3級エステル基やアセタール基を導入することでコントラストの改善を期待するものである。例えば、特許文献1に記載のスルホニウムカチオンに酸不安定基を有する光酸発生剤や、特許文献2に記載のアニオンに酸不安定基としてアセタール基を有する酸拡散抑制剤が例示できる。上記のように添加剤成分に酸不安定基を導入する場合、極性変化によるコントラスト改善の他に、脱離後に生じる極性基による酸拡散の制御も期待でき、種々のリソグラフィー性能の改善が期待できる。
【0004】
特許文献3には、ディフェクトが少なく、LWRに優れる酸拡散抑制剤として下記式で表されるオニウム塩が開示されている。しかし、下記オニウム塩を酸拡散抑制剤として用いた場合においても、ArFリソグラフィーや極端紫外線(EUV)リソグラフィーを用いる超微細加工が求められる世代においては、種々のリソグラフィー性能及びディフェクトの面で満足する結果は得られていない。
【化1】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-142620号公報
【文献】特開2018-135326号公報
【文献】特許第5904180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年の高解像性のレジストパターンの要求に対して、従来の酸拡散抑制剤を用いたレジスト組成物では、感度や、CDU、LWR等のリソグラフィー性能、現像後のレジストパターンのディフェクトが必ずしも満足できない場合がある。また、前述の酸の作用により極性が変化する構造を有する化合物を光酸発生剤や酸拡散抑制剤として使用したレジスト組成物においても、LWRやCDU等の改善には効果を示すものの、依然として満足する結果が得られていない。
【0007】
本発明は、前記事情に鑑みなされたもので、KrFエキシマレーザー光、ArFエキシマレーザー光、電子線(EB)、EUV等の高エネルギー線を光源としたフォトリソグラフィーにおいて、溶解コントラスト、酸拡散抑制能に優れ、CDUや、LWR、感度等のリソグラフィー性能に優れる化学増幅レジスト組成物、これに使用される酸拡散抑制剤、及び該化学増幅レジスト組成物を用いるパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、所定の酸不安定基を部分構造に含むアニオンを有するオニウム塩化合物を酸拡散抑制剤として用いる化学増幅レジスト組成物が、ディフェクトが少なく、CDU、LWR、感度等のリソグラフィー性能に優れ、化学増幅レジスト組成物として精密な微細加工に極めて有効であることを知見し、本発明をなすに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、下記オニウム塩化合物、化学増幅レジスト組成物及びパターン形成方法を提供する。
1.下記式(1)で表されるオニウム塩化合物。
【化2】
(式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、水素原子又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~10のヒドロカルビル基である。また、R
1及びR
2が、互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよい。
R
f1及びR
f2は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又はトリフルオロメチル基であるが、少なくとも一方は、フッ素原子又はトリフルオロメチル基である。
L
1は、単結合又はカルボニル基である。
Arは、置換基を有していてもよい炭素数3~15の(n+1)価の芳香族基である。
nは、1≦n≦5を満たす整数である。
M
+は、アンモニウムカチオン、スルホニウムカチオン又はヨードニウムカチオンである。
Rは、下記式(R-1)、(R-2)、(R-3)、(R-4)又は(R-5)で表される基である。
【化3】
(式中、R
r1、R
r2、R
r3及びR
r4は、それぞれ独立に、炭素数1~10のヒドロカルビル基である。また、R
r1及びR
r2が、互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよい。
R
r5及びR
r6は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~5のヒドロカルビル基である。また、R
r4、R
r5及びR
r6のいずれか2つが、互いに結合してこれらが結合する原子と共に環を形成してもよい。
破線は、式(1)中のArとの結合手である。)
2.下記式(2)で表される1のオニウム塩化合物。
【化4】
(式中、R及びM
+は、前記と同じ。
n及びmは、1≦n≦5、0≦m≦4及び1≦n+m≦5を満たす整数である。
R
3は、水素原子又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~10のヒドロカルビル基である。
R
4は、水素原子、フッ素原子、ヨウ素原子、ヒドロキシ基、又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~10のヒドロカルビル基であり、該ヒドロカルビル基中の-CH
2-が、エーテル結合又はカルボニル基で置換されていてもよい。mが2以上のとき、各R
4は、互いに同一であっても異なっていてもよく、2つのR
4が互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよい。)
3.R
3が、水素原子、イソプロピル基、アダマンチル基又は置換されていてもよいフェニル基である2のオニウム塩化合物。
4.Rが、式(R-1)又は(R-2)で表される基である1~3のいずれかのオニウム塩化合物。
5.M
+が、下記式(M-1)~(M-4)のいずれかで表されるカチオンである1~4のいずれかのオニウム塩化合物。
【化5】
(式中、R
M1、R
M2、R
M3、R
M4及びR
M5は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~15のヒドロカルビル基であり、該ヒドロカルビル基中の-CH
2-が、エーテル結合、カルボニル基又はスルホニル基で置換されていてもよい。
L
2及びL
3は、それぞれ独立に、単結合、メチレン基、エーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル基、スルフィニル基、スルホニル基又は-N(R
N)-である。R
Nは、水素原子又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~10のヒドロカルビル基であり、該ヒドロカルビル基中の-CH
2-が、エーテル結合、カルボニル基又はスルホニル基で置換されていてもよい。
p、q、r、s及びtは、それぞれ独立に、0~5の整数である。pが2以上のとき、各R
M1は、互いに同一でも異なっていてもよく、2つのR
M1が互いに結合してこれらが結合するベンゼン環上の炭素原子と共に環を形成してもよい。qが2以上のとき、各R
M2は、互いに同一でも異なっていてもよく、2つのR
M2が互いに結合してこれらが結合するベンゼン環上の炭素原子と共に環を形成してもよい。rが2以上のとき、各R
M3は、互いに同一でも異なっていてもよく、2つのR
M3が互いに結合してこれらが結合するベンゼン環上の炭素原子と共に環を形成してもよい。sが2以上のとき、各R
M4は、互いに同一でも異なっていてもよく、2つのR
M4が互いに結合してこれらが結合するベンゼン環上の炭素原子と共に環を形成してもよい。tが2以上のとき、各R
M5は、互いに同一でも異なっていてもよく、2つのR
M5が互いに結合してこれらが結合するベンゼン環上の炭素原子と共に環を形成してもよい。)
6.下記式(3)又は(4)で表される5のオニウム塩化合物。
【化6】
(式中、R
r1、R
r2、R
r3、R
M1、R
M2、R
M3、L
2、p、q、r及びmは、前記と同じ。
R
5は、水素原子、フッ素原子、ヒドロキシ基又は炭素数1~5のヒドロカルビル基であり、該ヒドロカルビル基中の-CH
2-が、エーテル結合又はカルボニル基で置換されていてもよい。mが2以上のとき、各R
5は、互いに同一であっても異なっていてもよく、2つのR
5が互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよい。)
7.1~6のいずれかのオニウム塩化合物からなる酸拡散抑制剤。
8.(A)酸の作用により現像液に対する溶解性が変化するベースポリマー、(B)光酸発生剤、(C)1~6のいずれかのオニウム塩化合物を含む酸拡散抑制剤、及び(D)有機溶剤を含む化学増幅レジスト組成物。
9.(A')酸の作用により現像液に対する溶解性が変化し、露光により酸を発生する機能を有する繰り返し単位を含むベースポリマー、(C)1~6のいずれかのオニウム塩化合物を含む酸拡散抑制剤、及び(D)有機溶剤を含む化学増幅レジスト組成物。
10.前記ベースポリマーが、下記式(a)で表される繰り返し単位又は下記式(b)で表される繰り返し単位を含むポリマーである8又は9の化学増幅レジスト組成物。
【化7】
(式中、R
Aは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。
X
Aは、単結合、フェニレン基、ナフチレン基、又は(主鎖)-C(=O)-O-X
A1-である。X
A1は、ヒドロキシ基、エーテル結合、エステル結合又はラクトン環を含んでいてもよい炭素数1~15のヒドロカルビレン基である。
X
Bは、単結合又はエステル結合である。
AL
1及びAL
2は、それぞれ独立に、酸不安定基である。)
11.前記酸不安定基が、下記式(L1)~(L3)のいずれかで表される基である10の化学増幅レジスト組成物。
【化8】
(式中、R
11は、それぞれ独立に、炭素数1~7のヒドロカルビル基であり、該ヒドロカルビル基中の-CH
2-が、エーテル結合で置換されていてもよい。
aは、1又は2である。
破線は、結合手である。)
12.前記ベースポリマーが、下記式(c)で表される繰り返し単位を含むポリマーである8~11のいずれかの化学増幅レジスト組成物。
【化9】
(式中、R
Aは、水素原子又はメチル基である。
Y
Aは、単結合又はエステル結合である。
R
21は、フッ素原子、ヨウ素原子又は炭素数1~10のヒドロカルビル基であり、該ヒドロカルビル基中の-CH
2-が、エーテル結合又はカルボニル基で置換されていてもよい。
b及びcは、1≦b≦5、0≦c≦4及び1≦b+c≦5を満たす整数である。)
13.露光により酸を発生する機能を有する繰り返し単位が、下記式(d1)~(d4)で表されるものから選ばれる少なくとも1種である9の化学増幅レジスト組成物。
【化10】
(式中、R
Bは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
Z
Aは、単結合、フェニレン基、-O-Z
A1-、-C(=O)-O-Z
A1-又は-C(=O)-NH-Z
A1-である。Z
A1は、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビレン基である。
Z
B及びZ
Cは、それぞれ独立に、単結合、又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビレン基である。
Z
Dは、単結合、メチレン基、エチレン基、フェニレン基、フッ素化されたフェニレン基、-O-Z
D1-、-C(=O)-O-Z
D1-又は-C(=O)-NH-Z
D1-である。Z
D1は、置換されていてもよいフェニレン基である。
R
31~R
41は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビル基である。また、Z
A、R
31及びR
32のうちのいずれか2つが、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよく、R
33、R
34及びR
35のうちのいずれか2つ、R
36、R
37及びR
38のうちのいずれか2つ又はR
39、R
40及びR
41のうちのいずれか2つが、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよい。
R
HFは、水素原子又はトリフルオロメチル基である。
n
1は、0又は1であるが、Z
Bが単結合のときは0である。n
2は、0又は1であるが、Z
Cが単結合のときは0である。
Xa
-は、非求核性対向イオンである。)
14.8~13のいずれかの化学増幅レジスト組成物を用いて、基板上にレジスト膜を形成する工程と、前記レジスト膜をKrFエキシマレーザー光、ArFエキシマレーザー光、EB又はEUVで露光する工程と、前記露光したレジスト膜を、現像液を用いて現像する工程とを含むパターン形成方法。
15.現像液としてアルカリ水溶液を用いて、露光部を溶解させ、未露光部が溶解しないポジ型パターンを得る14のパターン形成方法。
16.現像液として有機溶剤を用いて、未露光部を溶解させ、露光部が溶解しないネガ型パターンを得る14のパターン形成方法。
17.前記現像液が、2-オクタノン、2-ノナノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン、4-ヘプタノン、2-ヘキサノン、3-ヘキサノン、ジイソブチルケトン、メチルシクロヘキサノン、アセトフェノン、メチルアセトフェノン、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチル、酢酸ブテニル、酢酸イソペンチル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸ペンチル、ギ酸イソペンチル、吉草酸メチル、ペンテン酸メチル、クロトン酸メチル、クロトン酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル、乳酸イソブチル、乳酸ペンチル、乳酸イソペンチル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル、2-ヒドロキシイソ酪酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、酢酸フェニル、酢酸ベンジル、フェニル酢酸メチル、ギ酸ベンジル、ギ酸フェニルエチル、3-フェニルプロピオン酸メチル、プロピオン酸ベンジル、フェニル酢酸エチル及び酢酸2-フェニルエチルから選ばれる少なくとも1種である16のパターン形成方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明のオニウム塩化合物を酸拡散抑制剤として含む化学増幅レジスト組成物を用いてパターン形成を行った場合、ディフェクトが少なく、CDU、LWR、感度等のリソグラフィー性能に優れるパターンを形成することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、以下の説明中、化学式で表される構造によっては不斉炭素が存在し、エナンチオマーやジアステレオマーが存在し得るものがあるが、その場合は1つの式でそれらの異性体を代表して表す。これらの異性体は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0012】
[オニウム塩化合物]
本発明のオニウム塩化合物は、下記式(1)で表される。
【化11】
【0013】
式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~10のヒドロカルビル基である。また、R1及びR2が、互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよい。
【0014】
前記炭素数1~10のヒドロカルビル基は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、アダマンチル基等の環式飽和ヒドロカルビル基;フェニル基等のアリール基;及びこれらを組み合わせて得られる基等が挙げられる。また、これらの基の水素原子の一部が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子等のヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、これらの基の炭素原子の一部が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、その結果、ヒドロキシ基、シアノ基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合、ラクトン環、スルトン環、カルボン酸無水物、ハロアルキル基等を含んでいてもよい。また、R1及びR2が互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に形成する環としては、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、アダマンタン環等が挙げられる。リソグラフィー性能、合成容易性の観点から、R1及びR2のうち一方が水素原子であることが好ましい。一方が水素原子の場合、カルボキシレート部位の周辺が立体的に空いた状態になるので、本発明のオニウム塩化合物が効率よく酸拡散抑制剤として働くと推察される。
【0015】
式(1)中、Rf1及びRf2は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又はトリフルオロメチル基であるが、少なくとも一方は、フッ素原子又はトリフルオロメチル基である。特に、Rf1及びRf2が、共にフッ素原子であることが好ましい。
【0016】
式(1)中、L1は、単結合又はカルボニル基であるが、好ましくはカルボニル基である。
【0017】
式(1)中、Arは、置換基を有していてもよい炭素数3~15の(n+1)価の芳香族基である。前記芳香族基は、炭素数3~15の芳香族化合物から芳香環上の(n+1)個の水素原子を取り除いて得られる基である。炭素数3~15の芳香族化合物としては、ベンゼン、ナフタレン、フラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、インドール、オキサゾール等が挙げられる。溶解性、保存安定性、感度の観点からベンゼンから誘導される基が好ましい。ベンゼンから誘導される基であると、適度に酸拡散が抑制され、高い感度を維持することが可能となる。前記芳香族基は置換基を有していてもよく、該置換基としては、フッ素原子、ヒドロキシ基又は炭素数1~10のヒドロカルビル基が挙げられる。前記ヒドロカルビル基は、その-CH2-が、エーテル結合又はカルボニル基で置換されていてもよい。
【0018】
式(1)中、nは、1≦n≦5を満たす整数であるが、好ましくは1又は2であり、より好ましくは1である。nが1又は2の場合、酸脱離反応において未反応の状態で残存するRの割合が少なくなるため、効率よく溶解コントラストが得られる。
【0019】
式(1)中、Rは、下記式(R-1)、(R-2)、(R-3)、(R-4)又は(R-5)で表される基である。
【化12】
【0020】
式(R-1)~(R-5)中、破線は、式(1)中のArとの結合手である。Rr1、Rr2、Rr3及びRr4は、それぞれ独立に、炭素数1~10のヒドロカルビル基である。また、Rr1及びRr2が、互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよい。Rr5及びRr6は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~5のヒドロカルビル基である。また、Rr4、Rr5及びRr6のいずれか2つが、互いに結合してこれらが結合する原子と共に環を形成してもよい。前記ヒドロカルビル基としては、R1及びR2の説明において例示したものと同様のものが挙げられる。
【0021】
式(R-1)で表される基としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、破線は結合手である。
【化13】
【0022】
式(R-2)で表される基としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、破線は結合手である。
【化14】
【0023】
式(R-3)で表される基としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、破線は結合手である。
【化15】
【0024】
式(R-4)で表される基としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、破線は結合手である。
【化16】
【0025】
式(R-5)で表される基としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、破線は結合手である。
【化17】
【0026】
Rとしては、式(R-1)又は(R-2)で表される基が好ましい。式(R-1)又は(R-2)で表される基であれば、適度な酸脱離能を有するため、本発明のオニウム塩化合物単体及び該オニウム塩化合物を含むレジスト組成物は、長期の保存安定性に優れる。
【0027】
Rとしては、特に下記式で表される基が好ましい。詳細は不明だが、Rが下記式で表される基の場合、アニオンとしての脂溶性と、酸脱離能のバランスがよく、LWR、CDU等のリソグラフィー性能の向上が期待できる。
【化18】
【0028】
式(1)で表されるオニウム塩化合物としては、下記式(2)で表されるものが好ましい。
【化19】
(式中、R及びM
+は、前記と同じ。)
【0029】
式(2)中、n及びmは、1≦n≦5、0≦m≦4及び1≦n+m≦5を満たす整数である。nは、1又は2が好ましく、1がより好ましい。mは、0、1又は2が好ましい。
【0030】
式(2)中、R3は、水素原子又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~10のヒドロカルビル基である。前記ヒドロカルビル基は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロへキシル基、アダマンチル基等の環式飽和ヒドロカルビル基;フェニル基等のアリール基;及びこれらを組み合わせて得られる基等が挙げられる。また、これらの基の水素原子の一部が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子等のヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、これらの基の炭素原子の一部が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、その結果、ヒドロキシ基、シアノ基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合、ラクトン環、スルトン環、カルボン酸無水物、ハロアルキル基等を含んでいてもよい。R3としては、水素原子、プロピル基、イソプロピル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、フェニル基、4-フルオロフェニル基、4-トリフルオロメチルフェニル基、4-ヨードフェニル基又は4-メトキシフェニル基が好ましく、水素原子、イソプロピル基、アダマンチル基、フェニル基又は4-ヨードフェニル基がより好ましい。
【0031】
式(2)中、R4は、水素原子、フッ素原子、ヨウ素原子、ヒドロキシ基、又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~10のヒドロカルビル基である。前記ヒドロカルビル基は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロへキシル基、アダマンチル基等の環式飽和ヒドロカルビル基;フェニル基等のアリール基;及びこれらを組み合わせて得られる基等が挙げられる。また、前記ヒドロカルビル基中の-CH2-が、エーテル結合又はカルボニル基で置換されていてもよい。なお、前記ヒドロカルビル基中の-CH2-は、式(2)中のベンゼン環の炭素原子に結合するものであってもよい。置換されたヒドロカルビル基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、フェノキシ基、2-メトキシエトキシ基、アセチル基、エチルカルボニル基、ヘキシルカルボニル基、アセトキシ基、エチルカルボニルオキシ基、プロピルカルボニルオキシ基、ペンチルカルボニルオキシ基、ヘキシルカルボニルオキシ基、ヘプチルカルボニルオキシ基、メトキシメチルカルボニルオキシ基、(2-メトキシエトキシ)メチルカルボニルオキシ基、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基、フェニルオキシカルボニル基、アセトキシメチル基、フェノキシメチル基、メトキシカルボニルオキシ基等が挙げられる。
【0032】
mが2以上のとき、各R
4は、互いに同一であっても異なっていてもよく、2つのR
4が互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよい。前記環としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、破線は、式(2)中のカルボニル基との結合手である。
【化20】
【0033】
式(1)及び(2)中、M+は、アンモニウムカチオン、スルホニウムカチオン又はヨードニウムカチオンである。好ましくは、少なくとも1つの芳香環を有する、スルホニウムカチオン又はヨードニウムカチオンである。
【0034】
前記アンモニウムカチオンとしては、例えば、テトラメチルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン、テトラブチルアンモニウムカチオン、トリメチルフェニルアンモニウムカチオン、トリメチルベンジルアンモニウムカチオン、トリエチルベンジルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオン等が挙げられる。
【0035】
前記スルホニウムカチオンとしては、下記式(M-1)又は(M-2)で表されるものが好ましく、前記ヨードニウムカチオンとしては、下記式(M-3)又は(M-4)で表されるものが好ましい。
【化21】
【0036】
式(M-1)~(M-4)中、RM1、RM2、RM3、RM4及びRM5は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~15のヒドロカルビル基であり、該ヒドロカルビル基中の-CH2-が、エーテル結合、カルボニル基又はスルホニル基で置換されていてもよい。なお、前記ヒドロカルビル基中の-CH2-は、式(M-1)~(M-4)中のベンゼン環の炭素原子と結合するものであってもよい。前記ヒドロカルビル基及び置換されたヒドロカルビル基としては、R4の説明において例示したものと同様のものが挙げられる。
【0037】
式(M-2)及び(M-4)中、L2及びL3は、それぞれ独立に、単結合、メチレン基、エーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル基、スルフィニル基、スルホニル基又は-N(RN)-である。RNは、水素原子又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~10のヒドロカルビル基であり、該ヒドロカルビル基中の-CH2-が、エーテル結合、カルボニル基又はスルホニル基で置換されていてもよい。
【0038】
式(M-1)~(M-4)中、p、q、r、s及びtは、それぞれ独立に、0~5の整数である。pが2以上のとき、各RM1は互いに同一でも異なっていてもよく、2つのRM1が互いに結合してこれらが結合するベンゼン環上の炭素原子と共に環を形成してもよい。qが2以上のとき、各RM2は互いに同一でも異なっていてもよく、2つのRM2が互いに結合してこれらが結合するベンゼン環上の炭素原子と共に環を形成してもよい。rが2以上のとき、各RM3は互いに同一でも異なっていてもよく、2つのRM3が互いに結合してこれらが結合するベンゼン環上の炭素原子と共に環を形成してもよい。sが2以上のとき、各RM4は互いに同一でも異なっていてもよく、2つのRM4が互いに結合してこれらが結合するベンゼン環上の炭素原子と共に環を形成してもよい。tが2以上のとき、各RM5は互いに同一でも異なっていてもよく、2つのRM5が互いに結合してこれらが結合するベンゼン環上の炭素原子と共に環を形成してもよい。
【0039】
式(M-1)で表されるスルホニウムカチオンとしては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、Meはメチル基であり、tBuはtert-ブチル基である。
【化22】
【0040】
【0041】
式(M-2)で表されるスルホニウムカチオンとしては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、Meはメチル基であり、tBuはtert-ブチル基である。
【化24】
【0042】
【0043】
式(M-3)で表されるヨードニウムカチオンとしては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、Meはメチル基であり、tBuはtert-ブチル基である。
【化26】
【0044】
式(M-4)で表されるヨードニウムカチオンとしては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化27】
【0045】
また、式(M-1)又は(M-2)で表されるスルホニウムカチオン以外のスルホニウムカチオンとしては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、Meはメチル基であり、tBuはtert-ブチル基である。
【化28】
【0046】
【0047】
式(2)で表される化合物のうち、下記式(3)又は(4)で表されるものが好ましい。
【化30】
(式中、R
r1、R
r2、R
r3、R
M1、R
M2、R
M3、L
2、p、q、r及びmは、前記と同じ。)
【0048】
式(3)及び(4)中、R5は、水素原子、フッ素原子、ヒドロキシ基又は炭素数1~5のヒドロカルビル基であり、該ヒドロカルビル基中の-CH2-が、エーテル結合又はカルボニル基で置換されていてもよい。なお、前記ヒドロカルビル基中の-CH2-は、式(3)又は(4)中のベンゼン環の炭素原子に結合するものであってもよい。mが2以上のとき、各R5は、互いに同一であっても異なっていてもよく、2つのR5が互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよい。
【0049】
R5で表されるヒドロカルビル基及び置換されたヒドロカルビル基としては、R4の説明において例示したもののうち炭素数1~5のものが挙げられる。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、メトキシエトキシ基、アセトキシ基、アセチル基、トリフルオロメチル基等が挙げられるが、これらに限定されない。また、環を形成する場合の構造としては、2つのR4が互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に形成される環として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0050】
式(1)で表されるオニウム塩化合物のアニオンとしては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化31】
【0051】
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
これらのうち、以下に示すものが特に好ましい。詳細は不明だが、以下に示すものは、酸脱離反応前の脂溶性と酸脱離反応後の親水性の差が適度に良く、また良好なCDUやLWRが得られる。
【化59】
【0079】
本発明のオニウム塩化合物の具体的な構造としては、前述したアニオンの具体例とカチオンの具体例とを組み合わせたものが挙げられる。
【0080】
本発明のオニウム塩化合物においてL
1がカルボニル基であるものは、例えば、下記スキームAに従って合成することができる。
【化60】
(式中、R
1、R
2、R
f1、R
f2、R、Ar、n及びM
+は、前記と同じ。X
0は、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子である。R
0は、炭素数1~5のヒドロカルビル基である。A
-は、アニオンである。)
【0081】
第1工程では、α-ハロ酢酸エステル(1a)とカルボニル化合物とを亜鉛存在下で反応させることにより、中間体化合物(1b)が合成される。この場合、X0が塩素原子又は臭素原子であり、R0がメチル基又はエチル基であるものは、市販品として容易に入手可能である。
【0082】
第2工程では、中間体化合物(1b)をカルボン酸と縮合させてエステル化を行うことにより、中間体化合物(1c)が合成される。エステル化反応には、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸等の縮合剤を用いることができる。反応に酸不安定基を有するカルボン酸を使用する場合は、酸性条件下での酸クロリドの調整は困難なため、縮合剤を使用するのが好ましい。前記スキームからは外れるが、エステル化後に酸不安定基を導入することも可能であり、その場合、エステル化の方法としては、酸クロリドとの反応のほか、例えば酸無水物との反応等、公知の有機化学的反応を用いることが可能である。
【0083】
第3工程では、中間体化合物(1c)を常法により加水分解処理してR0のエステル部分を切断した後、生じたカルボン酸塩又はカルボン酸を、式M+A-で表される所望のカチオンを有するオニウム塩と塩交換することで、目的物であるオニウム塩化合物(1')が合成される。なお、A-としては、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、メチル硫酸アニオン又はメタンスルホン酸アニオンが、交換反応が定量的に進行しやすいことから好ましい。第3工程の塩交換は、公知の方法で容易に達成され、例えば、特開2007-145797号公報を参考にすることができる。
【0084】
本発明のオニウム塩化合物は、例えば、下記スキームBに従って合成することもできる。
【化61】
(式中、R
1、R
2、R
f1、R
f2、R、R
0、Ar、L
1、n、M
+及びA
-は、前記と同じ。X
00は、脱離基である。)
【0085】
前記方法で中間体化合物(1b)を合成した後、ヒドロキシ基を脱離基X00へと変換し、中間体化合物(1d)とする。脱離基としては、メタンスルホン酸エステルやp-トルエンスルホン酸エステル等が挙げられ、公知の有機化学的反応を用いて誘導可能である。中間体化合物(1d)を塩基性条件下、フェノール又はベンゼンカルボン酸と反応させ、求核置換反応を行うことで中間体化合物(1e)が合成される。塩基としては、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等のアミン類、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水素化ナトリウム等の強塩基を使用することができる。中間体化合物(1e)からオニウム塩化合物(1)への誘導は、前記と同様の方法で可能である。
【0086】
なお、前記製造方法は、あくまでも一例であり、これらに限定されない。
【0087】
[化学増幅レジスト組成物]
本発明の化学増幅レジスト組成物は、
(A)酸の作用により現像液に対する溶解性が変化するベースポリマー、
(B)光酸発生剤、
(C-1)本発明のオニウム塩化合物からなる酸拡散抑制剤、及び
(D)有機溶剤
を必須成分として含み、必要に応じて、
(C-2)本発明のオニウム塩化合物以外の酸拡散抑制剤、
(E)界面活性剤、及び
(F)その他の成分
を含んでもよい。
【0088】
または、(A')酸の作用により現像液に対する溶解性が変化し、露光により酸を発生する機能を有する繰り返し単位を含むベースポリマー、
(C-1)本発明のオニウム塩化合物からなる酸拡散抑制剤、及び
(D)有機溶剤
を必須成分として含み、必要に応じて、
(B)光酸発生剤、
(C-2)本発明のオニウム塩化合物以外の酸拡散抑制剤、
(E)界面活性剤、及び
(F)その他の成分
を含んでもよい。
【0089】
[(A)ベースポリマー]
(A)成分のベースポリマーとしては、下記式(a)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位aともいう。)又は下記式(b)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位bともいう。)を含むポリマーが好ましい。
【化62】
【0090】
式(a)及び(b)中、RAは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。XAは、単結合、フェニレン基、ナフチレン基、又は(主鎖)-C(=O)-O-XA1-である。XA1は、ヒドロキシ基、エーテル結合、エステル結合又はラクトン環を含んでいてもよい炭素数1~15のヒドロカルビレン基である。XBは、単結合又はエステル結合である。AL1及びAL2は、それぞれ独立に、酸不安定基である。前記ヒドロカルビレン基は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。
【0091】
酸不安定基AL1及びAL2としては、特に限定されないが、例えば、炭素数4~20の第3級ヒドロカルビル基、各アルキル基がそれぞれ炭素数1~6のアルキル基であるトリアルキルシリル基、炭素数4~20のオキソアルキル基等である。これら酸不安定基の具体的構造に関する詳細な説明は、特開2014-225005公報の段落[0016]~[0035]が詳しい。
【0092】
酸不安定基AL
1及びAL
2としては、下記式(L1)~(L3)のいずれかで表される基が好ましい。
【化63】
【0093】
式(L1)~(L3)中、R11は、それぞれ独立に、炭素数1~7のヒドロカルビル基であり、該ヒドロカルビル基中の-CH2-が、エーテル結合で置換されていてもよい。aは、1又は2である。破線は、結合手である。
【0094】
酸不安定基AL
1及びAL
2としては、以下に示す基が特に好ましい。
【化64】
(式中、破線は結合手である。)
【0095】
前記酸不安定基を有する繰り返し単位a又はbを含むベースポリマーと本発明のオニウム塩化合物とを含むレジスト組成物は、種々のリソグラフィー性能に優れる。これは、詳細は分からないが以下のように推察できる。式(L1)~(L3)のいずれかで表される第3級脂環式ヒドロカルビル基がエステル部位に結合する場合、立体反発に起因して他の鎖状の第3級アルキル基、例えばtert-ブチル基、tert-ペンチル基と比較して酸分解能が高くなる。また、アダマンタン環を有する酸不安定基と比較して、式(L1)~(L3)のいずれかで表される酸不安定基は、酸脱離反応が容易に進むため高感度になる傾向がある。そのため、前記第3級脂環式ヒドロカルビル基をレジスト組成物のベースポリマーの極性変化単位に用いた場合、露光部と未露光部との溶解コントラストが増大する。本発明のオニウム塩化合物は、酸拡散抑制剤として作用するが、強酸をクエンチした後に発生するカルボン酸としては比較的酸性度が高いため、高反応性の酸不安定基単位と併用した場合、僅かではあるがクエンチ後に生じる酸が脱離反応を促進し、コントラストの改善に繋がり、結果としてリソグラフィー性能が改善されると推察される。式(b)で表されるような第3級エーテル型の酸不安定基は、通常酸脱離反応性が低いが、フェノールのような酸性度の高いプロトン性ヒドロキシ基共存下では、脱離反応が促進されるため、結果として前記第3級エステル型と同様の効果が得られると推察される。
【0096】
式(a)中のX
Aを変えた構造の具体例としては、特開2014-225005公報の段落[0015]に記載のものが挙げられるが、以下に示すものが好ましい。
【化65】
(式中、R
A及びAL
1は、前記と同じ。)
【0097】
繰り返し単位aとしては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、R
Aは前記と同じである。
【化66】
【0098】
【0099】
【0100】
【0101】
【0102】
繰り返し単位bとしては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、R
Aは前記と同じである。
【化71】
【0103】
【0104】
【0105】
【0106】
なお、前記具体例はXA及びXBが単結合の場合であるが、単結合以外の場合においても同様の酸不安定基と組み合わせることができる。XAが単結合以外のものである場合の具体例は、前述したとおりである。XBがエステル結合であるものの具体例としては、前記具体例において、主鎖とベンゼン環との間の単結合をエステル結合に置き換えたものが挙げられる。
【0107】
前記ベースポリマーは、下記式(c)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位cともいう。)を含むことが好ましい。
【化75】
【0108】
式(c)中、RAは、水素原子又はメチル基である。YAは、単結合又はエステル結合である。
【0109】
式(c)中、R21は、フッ素原子、ヨウ素原子又は炭素数1~10のヒドロカルビル基である。前記ヒドロカルビル基は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロへキシル基、アダマンチル基等の環式飽和ヒドロカルビル基;フェニル基等のアリール基;これらを組み合わせて得られる基等が挙げられる。
【0110】
また、前記ヒドロカルビル基中の-CH2-が、エーテル結合又はカルボニル基で置換されていてもよい。なお、前記ヒドロカルビル基中の-CH2-は、式(c)中のベンゼン環の炭素原子に結合するものであってもよい。置換されたヒドロカルビル基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、フェノキシ基、2-メトキシエトキシ基、アセチル基、エチルカルボニル基、ヘキシルカルボニル基、アセトキシ基、エチルカルボニルオキシ基、プロピルカルボニルオキシ基、ペンチルカルボニルオキシ基、ヘキシルカルボニルオキシ基、ヘプチルカルボニルオキシ基、メトキシメチルカルボニルオキシ基、(2-メトキシエトキシ)メチルカルボニルオキシ基、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基、フェニルオキシカルボニル基、アセトキシメチル基、フェノキシメチル基、メトキシカルボニルオキシ基等が挙げられるが、これらに限定されない。R21としては、フッ素原子、ヨウ素原子、メチル基、アセチル基又はメトキシ基が好ましい。
【0111】
式(c)中、b及びcは、1≦b≦5、0≦c≦4及び1≦b+c≦5を満たす整数である。bは1、2又は3が好ましく、cは0、1又は2が好ましい。
【0112】
繰り返し単位cは、基板や下層膜との密着性を向上させる働きを有する。また、酸性度の高いフェノール性ヒドロキシ基を有することから、露光により発生する酸の働きを促進し、高感度化に寄与するとともに、EUV露光においては露光により生じる酸のプロトン供給源となるため、感度の改善が期待できる。
【0113】
繰り返し単位cとしては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、R
Aは前記と同じであり、Meはメチル基である。
【化76】
【0114】
【0115】
【0116】
これらのうち、繰り返し単位cとしては、以下に示すものが好ましい。なお、下記式中、R
Aは前記と同じであり、Meはメチル基である。
【化79】
【0117】
前記ベースポリマーは、下記式(d1)、(d2)、(d3)及び(d4)のいずれかで表される繰り返し単位(以下、それぞれ繰り返し単位d1~d4ともいう。)を含んでいてもよい。
【化80】
【0118】
式(d1)~(d4)中、RBは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。ZAは、単結合、フェニレン基、-O-ZA1-、-C(=O)-O-ZA1-又は-C(=O)-NH-ZA1-である。ZA1は、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビレン基である。ZB及びZCは、それぞれ独立に、単結合、又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビレン基である。ZDは、単結合、メチレン基、エチレン基、フェニレン基、フッ素化されたフェニレン基、-O-ZD1-、-C(=O)-O-ZD1-又は-C(=O)-NH-ZD1-である。ZD1は、置換されていてもよいフェニレン基である。
【0119】
ZA1で表されるヒドロカルビレン基は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。その具体例としては、メチレン基、エタン-1,1-ジイル基、エタン-1,2-ジイル基、プロパン-1,2-ジイル基、プロパン-2,2-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、2-メチルプロパン-1,3-ジイル基、ブタン-1,3-ジイル基、ブタン-2,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,3-ジイル基、ペンタン-1,4-ジイル基、2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基等のアルカンジイル基;シクロペンタン-1,2-ジイル基、シクロペンタン-1,3-ジイル基、シクロヘキサン-1,6-ジイル基、アダマンタン-1,3-ジイル基等の環式飽和ヒドロカルビレン基;エテン-1,2-ジイル基、1-プロペン-1,3-ジイル基、2-ブテン-1,4-ジイル基、1-メチル-1-ブテン-1,4-ジイル基等のアルケンジイル基;2-シクロヘキセン-1,4-ジイル基等の環式不飽和脂肪族ヒドロカルビレン基;フェニレン基等の芳香族ヒドロカルビレン基;これらを組み合わせて得られる基等が挙げられる。また、これらの基の水素原子の一部が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子等のヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、これらの基の炭素原子の一部が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、その結果、ヒドロキシ基、シアノ基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合、ラクトン環、スルトン環、カルボン酸無水物、ハロアルキル基等を含んでいてもよい。
【0120】
ZB及びZCで表されるヒドロカルビレン基は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。その具体例としては、ZA1で表されるヒドロカルビレン基として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0121】
式(d1)~(d4)中、R31~R41は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビル基である。前記ヒドロカルビル基は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。その具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基等のアルキル基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロプロピルメチル基、4-メチルシクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等の環式飽和ヒドロカルビル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基;シクロヘキセニル基等の環式不飽和脂肪族ヒドロカルビル基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基;チエニル基等のヘテロアリール基;ベンジル基、1-フェニルエチル基、2-フェニルエチル基等のアラルキル基;これらを組み合わせて得られる基等が挙げられる。これらのうち、アリール基が好ましい。また、これらの基の水素原子の一部が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子等のヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、これらの基の炭素原子の一部が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、その結果、ヒドロキシ基、シアノ基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合、ラクトン環、スルトン環、カルボン酸無水物、ハロアルキル基等を含んでいてもよい。
【0122】
ZA及びR31~R41は、フェニル基を含み、かつ該フェニル基が式中のS+と結合している構造が好ましい。
【0123】
また、ZA、R31及びR32のうちのいずれか2つが、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよく、R33、R34及びR35のうちのいずれか2つ、R36、R37及びR38のうちのいずれか2つ又はR39、R40及びR41のうちのいずれか2つが、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよい。
【0124】
式(d2)中、RHFは、水素原子又はトリフルオロメチル基である。
【0125】
式(d2)中、n1は、0又は1であるが、ZBが単結合のときは0である。式(d3)中、n2は、0又は1であるが、ZCが単結合のときは0である。
【0126】
式(d1)中、Xa
-は、非求核性対向イオンである。前記非求核性対向イオンとしては、特に限定されないが、例えば、塩化物イオン、臭化物イオン等のハロゲン化物イオン;トリフレートイオン、1,1,1-トリフルオロエタンスルホネートイオン、ノナフルオロブタンスルホネートイオン等のフルオロアルキルスルホネートイオン;トシレートイオン、ベンゼンスルホネートイオン、4-フルオロベンゼンスルホネートイオン、1,2,3,4,5-ペンタフルオロベンゼンスルホネートイオン等のアリールスルホネートイオン;メシレートイオン、ブタンスルホネートイオン等のアルキルスルホネートイオン;ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドイオン、ビス(パーフルオロエチルスルホニル)イミドイオン、ビス(パーフルオロブチルスルホニル)イミドイオン等のイミドイオン;トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチドイオン、トリス(パーフルオロエチルスルホニル)メチドイオン等のメチドイオン等が挙げられ、好ましくは、下記式(d1-1)又は(d1-2)で表されるアニオンである。
【化81】
【0127】
式(d1-1)及び(d1-2)中、R51及びR52は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~40のヒドロカルビル基である。RHFは、水素原子又はトリフルオロメチル基である。
【0128】
式(d1-1)で表されるアニオンとしては、特開2014-177407号公報の段落[0100]~[0101]に記載されたものや、下記式で表されるものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、R
HFは前記と同じである。
【化82】
【0129】
【0130】
【0131】
式(d1-2)で表されるアニオンとしては、特開2010-215608号公報の段落[0080]~[0081]に記載されたものや、下記式で表されるものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、Acはアセチル基である。
【化85】
【0132】
【0133】
繰り返し単位d2中のアニオンとしては、特開2014-177407号公報の段落[0021]~[0026]に記載されたものが挙げられる。また、RHFが水素原子であるアニオンの具体的な構造としては、特開2010-116550号公報の段落[0021]~[0028]に記載されたもの、RHFがトリフルオロメチル基の場合のアニオンの具体的な構造としては、特開2010-77404号公報の段落[0021]~[0027]に記載されたものが挙げられる。
【0134】
繰り返し単位d3中のアニオンとしては、繰り返し単位d2中のアニオンの具体例において、-CH(RHF)CF2SO3
-の部分を-C(CF3)2CH2SO3
-に置き換えたものが挙げられる。
【0135】
繰り返し単位d2~d4のアニオンの好ましい例としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、R
Bは前記と同じである。
【化87】
【0136】
繰り返し単位d2~d4中のスルホニウムカチオンの具体的な構造としては、特開2008-158339号公報の段落[0223]に記載されたものや、式(1)中のM
+で表されるスルホニウムカチオンとして例示したものと同様のものが挙げられる。これらのうち、以下に示すものが好ましいが、これらに限定されない。なお、下記式中、Meはメチル基であり、tBuはtert-ブチル基である。
【化88】
【0137】
繰り返し単位d1~d4は、光酸発生剤の機能を有する。繰り返し単位d1~d4を含むベースポリマーを用いる場合、後述する添加型光酸発生剤の配合を省略し得る。
【0138】
前記ベースポリマーは、更に、他の密着性基として、フェノール性ヒドロキシ基以外のヒドロキシ基、ラクトン環、エーテル結合、エステル結合、カルボニル基、シアノ基又はカルボキシ基を含む繰り返し単位(以下、繰り返し単位eともいう。)を含んでいてもよい。
【0139】
繰り返し単位eとしては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、R
Aは、前記と同じであり、Meはメチル基である。
【化89】
【0140】
【0141】
【0142】
【0143】
繰り返し単位eとしては、これら以外にも、特開2014-225005号公報の段落[0045]~[0053]に記載されたものを挙げることができる。
【0144】
これらのうち、繰り返し単位eとしてはヒドロキシ基又はラクトン環を有するものが好ましく、例えば、以下に示すものが好ましい。なお、下記式中、R
Aは、前記と同じであり、Meはメチル基である。
【化93】
【0145】
前記ベースポリマーは、更に他の繰り返し単位として、酸不安定基によりヒドロキシ基が保護された構造を有する繰り返し単位を含んでもよい。このような繰り返し単位としては、酸不安定基によりヒドロキシ基が保護された構造を1つ以上有し、酸の作用により保護基が分解し、ヒドロキシ基が生成するものであれば特に限定されないが、具体的には特開2014-225005号公報の段落[0055]~[0065]に記載されたものや、特開2015-214634号公報の段落[0110]~[0115]に記載されたものが挙げられる。
【0146】
前記ベースポリマーは、更に前述したもの以外の他の繰り返し単位を含んでもよい。他の繰り返し単位としては、オキシラン環又はオキセタン環を有する繰り返し単位が挙げられる。オキシラン環又はオキセタン環を有する繰り返し単位を含むことによって、露光部が架橋するために、露光部分の残膜特性とエッチング耐性が向上する。
【0147】
前記ベースポリマーは、更に他の繰り返し単位として、クロトン酸メチル、マレイン酸ジメチル、イタコン酸ジメチル等の置換アクリル酸エステル類;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸;ノルボルネン、ノルボルネン誘導体、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデセン誘導体等の環状オレフィン類;無水イタコン酸等の不飽和酸無水物;スチレン、tert-ブトキシスチレン、ビニルナフタレン、アセトキシスチレン、アセナフチレン等のビニル芳香族類;その他の単量体から得られる繰り返し単位を含んでいてもよい。
【0148】
前記ベースポリマーの重量平均分子量(Mw)は、1,000~500,000が好ましく、3,000~100,000がより好ましく、4,000~20,000が更に好ましい。Mwが前記範囲であれば、エッチング耐性が極端に低下することがなく、露光前後の溶解速度差が確保できるため解像性が良好である。なお、本発明においてMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算測定値である。また、分散度(Mw/Mn)は、1.20~2.50が好ましく、1.30~2.00がより好ましい。
【0149】
前記ポリマーの合成方法としては、例えば、各種繰り返し単位を与えるモノマーのうち、所望のモノマー1種あるいは複数種を、有機溶剤中、ラジカル重合開始剤を加えて加熱して重合を行う方法が挙げられる。このような重合方法は、特開2015-214634号公報の段落[0134]~[0137]に詳しい。また、酸不安定基は、モノマーに導入されたものをそのまま用いてもよいし、重合後保護化あるいは部分保護化してもよい。
【0150】
前記ポリマーにおいて、各繰り返し単位の好ましい含有割合は、例えば以下に示す範囲(モル%)とすることができるが、これに限定されない。
(I)繰り返し単位a及びbから選ばれる1種又は2種以上を好ましくは10~70モル%、より好ましくは20~65モル%、更に好ましくは30~60モル%含み、必要に応じ、
(II)繰り返し単位cの1種又は2種以上を好ましくは0~90モル%、より好ましくは15~80モル%、更に好ましくは30~60モル%含み、必要に応じ、
(III)繰り返し単位d1~d4から選ばれる1種又は2種以上を好ましくは0~30モル%、より好ましくは0~20モル%、更に好ましくは0~15モル%含み、必要に応じ、
(IV)繰り返し単位e及び他の繰り返し単位から選ばれる1種又は2種以上を好ましくは0~80モル%、より好ましくは0~70モル%、更に好ましくは0~50モル%含むことができる。
【0151】
(A)成分のベースポリマーは、1種単独で、又は組成比率、Mw及び/又はMw/M
nが異なる2種以上を組み合わせて使用することができる。また、(A)成分のベースポリマーとして、前記ポリマーに加えて、開環メタセシス重合体の水素添加物を含んでいてもよい。開環メタセシス重合体の水素添加物としては、特開2003-66612号公報に記載のものを用いることができる。
【0152】
[(B)光酸発生剤]
本発明のレジスト組成物は、前記ベースポリマーが繰り返し単位d1~d4から選ばれる少なくとも1つを含まない場合、必須成分として(B)光酸発生剤(以下、添加型光酸発生剤ともいう。)を含む。なお、前記ベースポリマーが繰り返し単位d1~d4から選ばれる少なくとも1つを含む場合であっても、添加型光酸発生剤は含まれていてもよい。
【0153】
前記添加型光酸発生剤としては、高エネルギー線照射により酸を発生する化合物であれば特に限定されない。好適な光酸発生剤としては、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニルジアゾメタン、N-スルホニルオキシジカルボキシイミド、O-アリ-ルスルホニルオキシム、O-アルキルスルホニルオキシム等の光酸発生剤等が挙げられる。具体的には、例えば、特開2007-145797号公報の段落[0102]~[0113]に記載された化合物、特開2008-111103号公報の段落[0122]~[0142]に記載された化合物、特開2014-001259号公報の段落[0081]~[0092]に記載された化合物、特開2012-41320号公報に記載された化合物、特開2012-153644号公報に記載された化合物、特開2012-106986号公報に記載された化合物、特開2016-018007号公報に記載された化合物等が挙げられる。これらの公報に記載の部分フッ素化スルホン酸発生型の光酸発生剤は、特にArFリソグラフィーにおいて、発生酸の強度や拡散長が適度であり、好ましく使用される。
【0154】
(B)成分の光酸発生剤の好ましい例として、下記式(5A)で表されるスルホニウム塩又は下記式(5B)で表されるヨードニウム塩が挙げられる。
【化94】
【0155】
式(5A)及び(5B)中、R101、R102、R103、R104及びR105は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビル基である。前記ヒドロカルビル基としては、式(d1)~(d4)中のR31~R41の説明において例示したものと同様のものが挙げられる。また、R101、R102及びR103のうちのいずれか2つが、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよく、R104及びR105が、互いに結合してこれらが結合するヨウ素原子と共に環を形成してもよい。このとき形成される環としては、式(M-1)の説明において、RM1、RM2及びRM3のいずれか2つが互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に形成する環として例示したものや、式(M-2)の説明において、RM4及びRM5が互いに結合してこれらが結合するヨウ素原子と共に形成する環として例示したものと同様のものが挙げられる。R101~R105は、フェニル基を含み、かつ該フェニル基が式中のS+又はI+に結合している構造が好ましい。
【0156】
式(5A)で表されるスルホニウム塩のスルホニウムカチオンに関しては、特開2014-001259号公報の段落[0082]~[0085]に詳しい。また、その具体例としては、特開2007-145797号公報の段落[0027]~[0033]に記載されたもの、特開2010-113209号公報の段落[0059]に記載されたもの、特開2012-41320号公報に記載されたもの、特開2012-153644号公報に記載されたもの、特開2012-106986号公報に記載されたものや、式(1)中のM+で表されるスルホニウムカチオンとして例示したものと同様のものが挙げられる。
【0157】
式(5A)で表されるスルホニウム塩のカチオンとしては、以下に示すものが好ましいが、これらに限定されない。なお、下記式中、Meはメチル基であり、tBuはtert-ブチル基である。
【化95】
【0158】
式(5A)で表されるスルホニウム塩のカチオンとしては、特に、トリフェニルスルホニウムカチオン、S-フェニルジベンゾチオフェニウムカチオン、(4-tert-ブチルフェニル)ジフェニルスルホニウムカチオン、(4-フルオロフェニル)ジフェニルスルホニウムカチオン、(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルスルホニウムカチオンが好ましい。
【0159】
式(5B)で表されるヨードニウム塩のカチオンとしては、式(1)中のM+で表されるヨードニウムカチオンとして例示したものと同様のものが挙げられ、ジフェニルヨードニウムカチオン又はジ-tert-ブチルフェニルヨードニウムカチオンが特に好ましい。
【0160】
式(5A)及び(5B)中、Xb
-は、下記式(6A)又は(6B)で表されるアニオンである。
【化96】
【0161】
式(6A)及び(6B)中、Rfaは、フッ素原子、炭素数1~4のパーフルオロアルキル基、又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~40のヒドロカルビル基であり、該ヒドロカルビル基中の-CH2-が、エーテル結合又はカルボニル基で置換されていてもよい。Rfbはヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~40のヒドロカルビル基であり、該ヒドロカルビル基中の-CH2-が、エーテル結合又はカルボニル基で置換されていてもよい。
【0162】
式(6A)で表されるアニオンとしては、トリフルオロメタンスルホネートアニオン、ノナフルオロブタンスルホネートアニオン又は下記式(6A')で表されるアニオンが好ましい。
【化97】
【0163】
式(6A')中、R111は、水素原子又はトリフルオロメチル基であるが、好ましくはトリフルオロメチル基である。R112は、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~35のヒドロカルビル基であり、該ヒドロカルビル基中の-CH2-が、エーテル結合又はカルボニル基で置換されていてもよい。式(6A')で表されるアニオンに関しては、特開2007-145797号公報、特開2008-106045号公報、特開2009-007327号公報、特開2009-258695号公報、特開2012-181306号公報に詳しい。式(6A)で表されるアニオンとしては、これらの公報に記載されたアニオンや、式(d1-1)で表されるアニオンとして例示したものと同様のものが挙げられる。
【0164】
式(6B)で表されるアニオンに関しては、特開2010-215608号公報や、特開2014-133723号公報に詳しい。式(6B)で表されるアニオンとしては、これらの公報に記載のアニオンや、式(d1-2)で表されるアニオンとして例示したものと同様のものが挙げられる。なお、式(6B)で表されるアニオンを有する光酸発生剤は、スルホ基のα位にフッ素原子を有していないが、β位に2つのトリフルオロメチル基を有していることに起因して、ベースポリマー中の酸不安定基を切断するのに十分な酸性度を有している。そのため、光酸発生剤として使用することができる。
【0165】
Xb
-で表されるアニオンとしては、以下に示すものが好ましいが、これらに限定されない。なお、式中、R
HFは、水素原子又はトリフルオロメチル基である。
【化98】
【0166】
【0167】
式(5A)又は(5B)で表される光酸発生剤の具体的な構造としては、前述したアニオンの具体例とカチオンの具体例との任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0168】
(B)成分の光酸発生剤の他の好ましい例として、下記式(7)で表される化合物が挙げられる。
【化100】
【0169】
式(7)中、R201及びR202は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~30のヒドロカルビル基である。R203は、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~30のヒドロカルビレン基である。また、R201、R202及びR203のうちのいずれか2つが、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよい。LAは、単結合、エーテル結合、エステル結合、又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビレン基であり、該ヒドロカルビレン基中の-CH2-が、エーテル結合又はカルボニル基で置換されていてもよい。なお、前記ヒドロカルビレン基中の-CH2-は、式(7)中の炭素原子及び/又はR203に結合するものであってもよい。X1、X2、X3及びX4は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又はトリフルオロメチル基であるが、少なくとも1つはフッ素原子又はトリフルオロメチル基である。
【0170】
式(7)で表される化合物としては、特に、下記式(7')で表されるものが好ましい。
【化101】
【0171】
式(7')中、RHFは、水素原子又はトリフルオロメチル基であるが、好ましくはトリフルオロメチル基である。R301、R302及びR303は、それぞれ独立に、ヘテロ原子で置換されていてもよい炭素数1~20のヒドロカルビル基であり、該ヒドロカルビル基中の-CH2-が、エーテル結合又はカルボニル基で置換されていてもよい。なお、前記ヒドロカルビル基中の-CH2-は、式(7')中のベンゼン環の炭素原子に結合するものであってもよい。x及びyは、それぞれ独立に、0~5の整数であり、zは、0~4の整数である。
【0172】
式(7)又は(7')で表される光酸発生剤に関しては、特開2011-16746号公報に詳しい。また、これらの具体例としては、前記公報に記載されたスルホニウム塩や、特開2015-214634号公報の段落[0149]~[0150]に記載されたスルホニウム塩が挙げられる。
【0173】
式(7)で表される光酸発生剤としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、R
HFは、前記と同じであり、Meはメチル基であり、tBuはtert-ブチル基である。
【化102】
【0174】
(B)成分の含有量は、(A)ベースポリマー100質量部に対し、1~30質量部が好ましく、2~25質量部がより好ましく、4~20質量部が更に好ましい。含有量が前記範囲であれば、解像性の劣化や、レジスト現像後又は剥離時において異物の問題が生じるおそれがない。(B)成分の光酸発生剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0175】
[(C)酸拡散抑制剤]
本発明のレジスト組成物は、(C)成分として酸拡散抑制剤(クエンチャー)を含む。(C)成分は、式(1)で表されるオニウム塩化合物を必須成分(C-1)として含むが、式(1)で表されるオニウム塩化合物以外の酸拡散抑制剤(C-2)を含んでもよい。なお、本発明において酸拡散抑制剤とは、光酸発生剤より発生する酸がレジスト膜中に拡散する際の拡散速度を抑制することができる化合物を意味する。
【0176】
酸拡散抑制剤(C-2)としては、アミン化合物や、α位がフッ素化されていないスルホン酸又はカルボン酸等の弱酸オニウム塩が挙げられる。
【0177】
前記アミン化合物としては、第1級、第2級又は第3級アミン化合物、特に、ヒドロキシ基、エーテル結合、エステル結合、ラクトン環、シアノ基及びスルホン酸エステル結合のいずれかを有するアミン化合物が挙げられる。また、酸拡散抑制剤としてカーバメート基で保護された第1級又は第2級アミン化合物も挙げることができる。このような保護されたアミン化合物は、レジスト組成物中、塩基に対して不安定な成分があるときに有効である。このような酸拡散抑制剤としては、例えば、特開2008-111103号公報の段落[0146]~[0164]に記載された化合物、特許第3790649号公報に記載された化合物や、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化103】
【0178】
【0179】
α位がフッ素化されていないスルホン酸又はカルボン酸のオニウム塩としては、下記式(8A)又は(8B)で表されるオニウム塩化合物が挙げられる。
【化105】
【0180】
式(8A)中、Rq1は、水素原子、メトキシ基、又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~40のヒドロカルビル基である。ただしスルホ基のα位の炭素原子上の水素原子が、フッ素原子又はフルオロアルキル基に置換されたものを除く。
【0181】
式(8B)中、Rq2は、水素原子、ヒドロキシ基、又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~40のヒドロカルビル基である。
【0182】
式(8A)及び(8B)中、Mq
+は、オニウムカチオンである。前記オニウムカチオンとしては、下記式(9A)、(9B)又は(9C)で表されるものが好ましい。
【化106】
【0183】
式(9A)~(9C)中、R401~R409は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~40のヒドロカルビル基である。また、R401及びR402、R404及びR405又はR406及びR407は、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子、ヨウ素原子又は窒素原子と共に環を形成してもよい。
【0184】
Rq1で表されるヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~40のヒドロカルビル基は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、tert-ペンチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、n-ノニル基、n-デシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロペンチルブチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロヘキシルブチル基、ノルボルニル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル基、アダマンチル基、アダマンチルメチル基等の環式飽和ヒドロカルビル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基;シクロヘキセニル基等の環式不飽和ヒドロカルビル基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;チエニル基等のヘテロアリール基;4-ヒドロキシフェニル基等のヒドロキシフェニル基;4-メトキシフェニル基、3-メトキシフェニル基、2-メトキシフェニル基、4-エトキシフェニル基、4-tert-ブトキシフェニル基、3-tert-ブトキシフェニル基等のアルコキシフェニル基;2-メチルフェニル基、3-メチルフェニル基、4-メチルフェニル基、4-エチルフェニル基、4-tert-ブチルフェニル基、4-n-ブチルフェニル基、2,4-ジメチルフェニル基、2,4,6-トリイソプロピルフェニル基等のアルキルフェニル基;メチルナフチル基、エチルナフチル基等のアルキルナフチル基;メトキシナフチル基、エトキシナフチル基、n-プロポキシナフチル基、n-ブトキシナフチル基等のアルコキシナフチル基;ジメチルナフチル基、ジエチルナフチル基等のジアルキルナフチル基;ジメトキシナフチル基、ジエトキシナフチル基等のジアルコキシナフチル基;ベンジル基、1-フェニルエチル基、2-フェニルエチル基等のアラルキル基;2-フェニル-2-オキソエチル基、2-(1-ナフチル)-2-オキソエチル基、2-(2-ナフチル)-2-オキソエチル基等の2-アリール-2-オキソエチル基等のアリールオキソアルキル基;これらを組み合わせて得られる基等が挙げられる。また、これらの基の水素原子の一部が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子等のヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、これらの基の炭素-炭素結合間に、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子を含む基が介在していてもよく、その結果、ヒドロキシ基、シアノ基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合、ラクトン環、スルトン環、カルボン酸無水物、ハロアルキル基等を含んでいてもよい。
【0185】
Rq2で表されるヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~40のヒドロカルビル基は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。その具体例としては、Rq1の具体例として例示した置換基のほか、トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、2,2,2-トリフルオロ-1-メチル-1-ヒドロキシエチル基、2,2,2-トリフルオロ-1-(トリフルオロメチル)-1-ヒドロキシエチル基等の含フッ素アルキル基、ペンタフルオロフェニル基、4-トリフルオロメチルフェニル基等の含フッ素アリール基が挙げられる。
【0186】
式(8A)で表されるスルホン酸オニウム塩及び式(8B)で表されるカルボン酸オニウム塩に関しては、特開2008-158339号公報、特開2010-155824号公報に詳しい。また、これらの化合物の具体例としては、これらの公報に記載されたものが挙げられる。
【0187】
式(8A)で表されるスルホン酸オニウム塩のアニオンとしては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化107】
【0188】
式(8B)で表されるカルボン酸オニウム塩のアニオンとしては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化108】
【0189】
式(9A)で表されるカチオン及び式(9B)で表されるカチオンとしては、それぞれ式(M-1)で表されるカチオン及び式(M-2)で表されるカチオンとして例示したものと同様のものが挙げられるが、これらに限定されない。特に好ましいカチオンとしては、以下に示すものが挙げられる。なお、下記式中、Meはメチル基であり、tBuはtert-ブチル基である。
【化109】
【0190】
式(8A)で表されるスルホン酸オニウム塩及び式(8B)で表されるカルボン酸オニウム塩の具体例としては、前述したアニオン及びカチオンの任意の組み合わせが挙げられる。なお、これらのオニウム塩は、既知の有機化学的方法を用いたイオン交換反応によって容易に調製される。イオン交換反応ついては、例えば特開2007-145797号公報を参考にすることができる。
【0191】
式(8A)又は(8B)で表されるオニウム塩は、本発明において酸拡散抑制剤として作用する。これは、前記オニウム塩化合物の各カウンターアニオンが、弱酸の共役塩基であることに起因する。ここでいう弱酸とは、ベースポリマーに含まれる酸不安定基含有単位の酸不安定基を脱保護させることができない酸性度のものを意味する。式(8A)又は(8B)で表されるオニウム塩は、α位がフッ素化されているスルホン酸のような強酸の共役塩基をカウンターアニオンとして有するオニウム塩型光酸発生剤と併用させたときに、クエンチャーとして機能する。すなわち、α位がフッ素化されているスルホン酸のような強酸を発生するオニウム塩と、フッ素置換されていないスルホン酸や、カルボン酸のような弱酸を発生するオニウム塩を混合して用いた場合、高エネルギー線照射により光酸発生剤から生じた強酸が未反応の弱酸アニオンを有するオニウム塩と衝突すると、塩交換により弱酸を放出して強酸アニオンを有するオニウム塩を生じる。この過程で強酸がより触媒能の低い弱酸に交換されるため、見掛け上、酸が失活して酸拡散の制御を行うことができる。
【0192】
式(8A)又は(8B)で表されるオニウム塩化合物において、Mq+がスルホニウムカチオン(9A)又はヨードニウムカチオン(9B)であるオニウム塩は、特に光分解性があるため、光強度が強い部分のクエンチ能が低下するとともに、光酸発生剤由来の強酸の濃度が増加する。これにより露光部分のコントラストが向上し、LWRやCDUに優れたパターンを形成することが可能となる。
【0193】
また、酸不安定基が酸に対して特に敏感なアセタール基である場合は、保護基を脱離させるための酸は必ずしもα位がフッ素化されたスルホン酸、イミド酸、メチド酸でなくてもよく、α位がフッ素化されていないスルホン酸でも脱保護反応が進行する場合がある。この場合の酸拡散抑制剤としては、アミン化合物や、式(8B)で表されるカルボン酸オニウム塩を用いることが好ましい。
【0194】
また、酸拡散抑制剤として、前記オニウム塩のほかに、弱酸のベタイン型化合物を使用することもできる。その具体例としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化110】
【0195】
また、酸拡散抑制剤として、前述した化合物のほかに、アニオンとしてCl-、Br-、NO3
-を有するスルホニウム塩又はヨードニウム塩を使用することもできる。その具体例としては、トリフェニルスルホニウムクロリド、ジフェニルヨードニウムクロリド、トリフェニルスルホニウムブロミド、トリフェニルスルホニウムナイトレート等が挙げられる。これらのアニオンは共役酸の沸点が低いため、強酸のクエンチ後に生じる酸がポストエクスポージャーベーク(PEB)等で容易にレジスト膜から除去される。レジスト膜中から酸が系外に除去されるため、高度に酸拡散が抑制され、コントラストが改善できる。
【0196】
前記酸拡散抑制剤として、含窒素置換基を有する光分解性オニウム塩を使用することもできる。前記光分解性オニウム塩は、未露光部では酸拡散抑制剤として機能し、露光部は自身からの発生酸との中和によって酸拡散抑制能を失う、いわゆる光崩壊性塩基として機能する。光崩壊性塩基を用いることによって、露光部と未露光部のコントラストをより強めることができる。光崩壊性塩基としては、例えば特開2009-109595号公報、特開2012-46501号公報、特開2013-209360号公報等を参考にすることができる。
【0197】
前記光分解性オニウム塩のアニオンの具体例としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、R
HFは、水素原子又はトリフルオロメチル基である。
【化111】
【0198】
前記光分解性オニウム塩のカチオンの具体例としては、式(1)中のM
+で表されるカチオンとして例示したものと同様のものが挙げられる。これらのうち、以下に示すものが好ましいが、これらに限定されない。なお、下記式中、Meはメチル基であり、tBuはtert-ブチル基である。
【化112】
【0199】
前記光分解性オニウム塩の具体例としては、前記アニオンとカチオンとを組み合わせたものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0200】
(C)成分の含有量は、(A)ベースポリマー100質量部に対し、2~30質量部が好ましく、2.5~20質量部がより好ましく、4~15質量部が更に好ましい。前記範囲で酸拡散抑制剤を配合することで、レジスト感度の調整が容易となることに加え、レジスト膜中での酸の拡散速度が抑制されて解像度が向上し、露光後の感度変化を抑制したり、基板や環境依存性を少なくし、露光余裕度やパターンプロファイル等を向上させたりすることができる。また、酸拡散抑制剤を添加することで、基板密着性を向上させることもできる。なお、(C)成分の含有量とは、式(1)で表されるオニウム塩化合物からなる酸拡散抑制剤に加えて、式(1)で表されるオニウム塩化合物以外の酸拡散抑制剤の含有量も合わせた合計の含有量のことである。(C)酸拡散抑制剤中、式(1)で表されるオニウム塩化合物は、50~100質量%含まれることが好ましい。(C)成分の酸拡散抑制剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0201】
[(D)有機溶剤]
本発明の化学増幅レジスト組成物は、(D)成分として有機溶剤を含んでもよい。前記有機溶剤としては、前述した各成分や後述する各成分が溶解可能な有機溶剤であれば特に限定されない。このような有機溶剤としては、例えば、特開2008-111103号公報の段落[0144]~[0145]に記載のシクロヘキサノン、メチル-2-n-ペンチルケトン等のケトン類;3-メトキシブタノール、3-メチル-3-メトキシブタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール、ジアセトンアルコール等のアルコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert-ブチル、プロピオン酸tert-ブチル、プロピレングリコールモノtert-ブチルエーテルアセテート等のエステル類;γ-ブチロラクトン等のラクトン類及びこれらの混合溶剤が挙げられる。アセタール系の酸不安定基を用いる場合は、アセタールの脱保護反応を加速させるために高沸点のアルコール系溶剤、具体的にはジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール等を加えることもできる。
【0202】
本発明においては、これらの有機溶剤の中でも、光酸発生剤の溶解性が特に優れている1-エトキシ-2-プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジアセトンアルコール、シクロヘキサノン、γ-ブチロラクトン及びその混合溶剤が好ましく使用される。特に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(X成分)を含み、1-エトキシ-2-プロパノール、ジアセトンアルコール、シクロヘキサノン及びγ-ブチロラクトンの4種の溶剤(Y成分)のうち、1種又は2種を混合した溶剤系であり、X成分とY成分との比が90:10~60:40の範囲にある混合溶剤が好ましい。
【0203】
(D)成分の含有量は、(A)ベースポリマー100質量部に対し、100~8,000質量部が好ましく、400~6,000質量部がより好ましい。
【0204】
[(E)界面活性剤]
本発明のレジスト組成物は、前記成分以外に、(E)成分として、塗布性を向上させるために慣用されている界面活性剤を含んでもよい。
【0205】
(E)成分の界面活性剤は、好ましくは、水及びアルカリ現像液に不溶又は難溶な界面活性剤、あるいは水に不溶又は難溶でアルカリ現像液に可溶な界面活性剤である。このような界面活性剤としては、特開2010-215608号公報や特開2011-16746号公報に記載のものを参照することができる。
【0206】
前記水及びアルカリ現像液に不溶又は難溶な界面活性剤としては、前記公報に記載の界面活性剤の中でもFC-4430(スリーエム社製)、サーフロン(登録商標)S-381(AGCセイミケミカル(株)製)、オルフィン(登録商標)E1004(日信化学工業(株)製)、KH-20、KH-30(AGCセイミケミカル(株)製)、及び下記式(surf-1)で表されるオキセタン開環重合物等が好ましい。
【化113】
【0207】
ここで、R、Rf、A、B、C、m、nは、前述の記載にかかわらず、式(surf-1)のみに適用される。Rは、2~4価の炭素数2~5の脂肪族基である。前記脂肪族基としては、2価のものとしてはエチレン基、1,4-ブチレン基、1,2-プロピレン基、2,2-ジメチル-1,3-プロピレン基、1,5-ペンチレン基等が挙げられ、3価又は4価のものとしては下記のものが挙げられる。
【化114】
(式中、破線は、結合手であり、それぞれグリセロール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールから派生した部分構造である。)
【0208】
これらの中でも、1,4-ブチレン基、2,2-ジメチル-1,3-プロピレン基等が好ましい。
【0209】
Rfは、トリフルオロメチル基又はペンタフルオロエチル基であり、好ましくはトリフルオロメチル基である。mは、0~3の整数であり、nは、1~4の整数であり、nとmの和はRの価数であり、2~4の整数である。Aは、1である。Bは、2~25の整数であり、好ましくは4~20の整数である。Cは、0~10の整数であり、好ましくは0又は1である。また、式(surf-1)中の各構成単位は、その並びを規定したものではなく、ブロック的に結合してもランダム的に結合してもよい。部分フッ素化オキセタン開環重合物系の界面活性剤の製造に関しては、米国特許第5650483号明細書等に詳しい。
【0210】
水に不溶又は難溶でアルカリ現像液に可溶な界面活性剤は、ArF液浸露光においてレジスト保護膜を用いない場合、レジスト膜の表面に配向することによって水のしみ込みやリーチングを低減させる機能を有する。そのため、レジスト膜からの水溶性成分の溶出を抑えて露光装置へのダメージを下げるために有用であり、また、露光後、PEB後のアルカリ水溶液現像時には可溶化し、ディフェクトの原因となる異物にもなり難いため有用である。このような界面活性剤は、水に不溶又は難溶でアルカリ現像液に可溶な性質であり、ポリマー型の界面活性剤であって、疎水性樹脂とも呼ばれ、特に撥水性が高く滑水性を向上させるものが好ましい。
【0211】
このようなポリマー型界面活性剤としては、下記式(10A)~(10E)で表される繰り返し単位から選ばれる少なくとも1種を含むものが挙げられる。
【化115】
【0212】
式(10A)~(10E)中、RCは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。W1は、-CH2-、-CH2CH2-若しくは-O-、又は互いに分離した2個の-Hである。Rs1は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~10のヒドロカルビル基である。Rs2は、単結合又は炭素数1~5のアルカンジイル基である。Rs3は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~15のヒドロカルビル基、炭素数1~15のフッ素化ヒドロカルビル基又は酸不安定基である。Rs3がヒドロカルビル基又はフッ素化ヒドロカルビル基の場合、炭素-炭素結合間に、エーテル結合又はカルボニル基が介在していてもよい。Rs4は、炭素数1~20の(u+1)価の炭化水素基又はフッ素化炭化水素基である。uは1~3の整数である。Rs5は、それぞれ独立に、水素原子又は下記式
-C(=O)-O-Rs5A
(式中、Rs5Aは、炭素数1~20のフッ素化ヒドロカルビル基である。)
で表される基である。Rs6は、炭素数1~15のヒドロカルビル基又は炭素数1~15のフッ素化ヒドロカルビル基であり、炭素-炭素結合間に、エーテル結合又はカルボニル基が介在していてもよい。
【0213】
前記ポリマー型界面活性剤は、更に、式(10A)~(10E)で表される繰り返し単位以外のその他の繰り返し単位を含んでいてもよい。その他の繰り返し単位としては、メタクリル酸やα-トリフルオロメチルアクリル酸誘導体等から得られる繰り返し単位が挙げられる。ポリマー型界面活性剤中、式(10A)~(10E)で表される繰り返し単位の含有量は、全繰り返し単位中、20モル%以上が好ましく、60モル%以上がより好ましく、100モル%が更に好ましい。
【0214】
前記水に不溶又は難溶でアルカリ現像液に可溶な界面活性剤は、特開2008-122932号公報、特開2010-134012号公報、特開2010-107695号公報、特開2009-276363号公報、特開2009-192784号公報、特開2009-191151号公報、特開2009-98638号公報、特開2010-250105号公報、特開2011-42789号公報も参照できる。
【0215】
(E)成分の含有量は、(A)ベースポリマー100質量部に対し、0~20質量部が好ましい。(E)成分を含む場合は、好ましくは0.001~15質量部、より好ましくは0.01~10質量部である。(D)成分の界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。前記界面活性剤は、特開2007-297590号公報に詳しい。
【0216】
[(F)その他の成分]
本発明の化学増幅レジスト組成物は、(F)その他成分として、酸により分解して酸を発生する化合物(酸増殖化合物)、有機酸誘導体、フッ素置換アルコール、架橋剤、酸の作用により現像液への溶解性が変化する重量平均分子量3,000以下の化合物(溶解阻止剤)、アセチレンアルコール類等を含んでいてもよい。具体的には、前記酸増殖化合物に関しては、特開2009-269953号公報、特開2010-215608号公報に詳しく、その含有量は、(A)ベースポリマー100質量部に対し、0~5質量部が好ましく、0~3質量部がより好ましい。含有量が多すぎると、酸拡散制御が難しく、解像性の劣化やパターン形状の劣化を招く可能性がある。その他の添加剤に関しては、特開2008-122932号公報の段落[0155]~[0182]、特開2009-269953号公報、特開2010-215608号公報に詳しい。
【0217】
式(1)で表されるオニウム塩化合物を酸拡散抑制剤として含む本発明の化学増幅レジスト組成物であれば、KrFエキシマレーザー光、ArFエキシマレーザー光、EB、EUV等の高エネルギー線を光源としたフォトリソグラフィーにおいて、高い酸拡散抑制能を示し、かつ高コントラストなパターン形成が可能となり、CDUや、LWR、感度等のリソグラフィー性能に優れた化学増幅レジスト組成物となる。
【0218】
[パターン形成方法]
本発明のパターン形成方法は、前述したレジスト組成物を用いて、基板上にレジスト膜を形成する工程、前記レジスト膜を、高エネルギー線で露光する工程、及び前記露光したレジスト膜を、現像液を用いて現像する工程を含む。
【0219】
前記基板としては、例えば、集積回路製造用の基板(Si、SiO2、SiN、SiON、TiN、WSi、BPSG、SOG、有機反射防止膜等)、あるいはマスク回路製造用の基板(Cr、CrO、CrON、MoSi2、SiO2等)を用いることができる。
【0220】
レジスト膜は、例えば、スピンコーティング等の方法で膜厚が好ましくは10~2,000nmとなるようにレジスト組成物を基板上に塗布し、これをホットプレート上で好ましくは60~180℃、10~600秒間、より好ましくは70~150℃、15~300秒間プリベークすることで形成することができる。
【0221】
レジスト膜の露光は、KrFエキシマレーザー光、ArFエキシマレーザー光又はEUVを用いる場合は、目的のパターンを形成するためのマスクを用いて、露光量が好ましくは1~200mJ/cm2、より好ましくは10~100mJ/cm2となるように照射することで行うことができる。EBを用いる場合は、目的のパターンを形成するためのマスクを用いて又は直接、露光量が好ましくは1~300μC/cm2、より好ましくは10~200μC/cm2となるように照射する。
【0222】
なお、露光は、通常の露光法のほか、屈折率1.0以上の液体をレジスト膜と投影レンズとの間に介在させて行う液浸法を用いることも可能である。その場合には、水に不溶な保護膜を用いることも可能である。
【0223】
前記水に不溶な保護膜は、レジスト膜からの溶出物を防ぎ、膜表面の滑水性を上げるために用いられ、大きく分けて2種類ある。1つはレジスト膜を溶解しない有機溶剤によってアルカリ水溶液現像前に剥離が必要な有機溶剤剥離型と、もう1つはアルカリ現像液に可溶でレジスト膜可溶部の除去とともに保護膜を除去するアルカリ水溶液可溶型である。後者は特に水に不溶でアルカリ現像液に溶解する1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール残基を有するポリマーをベースとし、炭素数4以上のアルコール系溶剤、炭素数8~12のエーテル系溶剤、及びこれらの混合溶剤に溶解させた材料が好ましい。前述した水に不溶でアルカリ現像液に可溶な界面活性剤を炭素数4以上のアルコール系溶剤、炭素数8~12のエーテル系溶剤、又はこれらの混合溶剤に溶解させた材料とすることもできる。
【0224】
露光後、必要に応じて加熱処理(PEB)を行ってもよい。PEBは、例えば、ホットプレート上で、好ましくは60~150℃、1~5分間、より好ましくは80~140℃、1~3分間加熱することで行うことができる。
【0225】
現像は、例えば、好ましくは0.1~5質量%、より好ましくは2~3質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)等のアルカリ水溶液の現像液、又は有機溶剤現像液を用い、好ましくは0.1~3分間、より好ましくは0.5~2分間、浸漬(dip)法、パドル(puddle)法、スプレー(spray)法等の常法により行うことができる。
【0226】
アルカリ水溶液を現像液として用いてポジ型パターンを形成する方法に関しては、特開2011-231312号公報の段落[0138]~[0146]に詳しく、有機溶剤を現像液として用いてネガ型パターンを形成する方法に関しては、特開2015-214634号公報の段落[0173]~[0183]に詳しい。
【0227】
また、パターン形成方法の手段として、レジスト膜形成後に、純水リンス(ポストソーク)を行うことによって膜表面からの酸発生剤等の抽出、あるいはパーティクルの洗い流しを行ってもよいし、露光後に膜上に残った水を取り除くためのリンス(ポストソーク)を行ってもよい。
【0228】
更に、ダブルパターニング法でパターンを形成することもできる。ダブルパターニング法としては、1回目の露光とエッチングで1:3トレンチパターンの下地を加工し、位置をずらして2回目の露光によって1:3トレンチパターンを形成して1:1のパターンを形成するトレンチ法、1回目の露光とエッチングで1:3孤立残しパターンの第1の下地を加工し、位置をずらして2回目の露光によって1:3孤立残しパターンを第1の下地の下に形成された第2の下地を加工してピッチが半分の1:1のパターンを形成するライン法が挙げられる。
【0229】
また、有機溶剤含有現像液を用いたネガティブトーン現像によってホールパターンを形成する場合、X軸及びY軸方向の2回のラインパターンのダイポール照明を用いて露光を行うことで、最もコントラストが高い光を用いることができる。また、X軸及びY軸方向の2回のラインパターンのダイポール照明にs偏光照明を加えると、更にコントラストを上げることができる。これらのパターン形成方法は、特開2011-221513号公報に詳しい。
【0230】
本発明のパターン形成方法の現像液に関して、アルカリ水溶液の現像液としては、例えば、前述したTMAH水溶液や、特開2015-180748号公報の段落[0148]~[0149]に記載のアルカリ水溶液が挙げられ、好ましくは2~3質量%TMAH水溶液である。
【0231】
有機溶剤現像の現像液としては、例えば、2-オクタノン、2-ノナノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン、4-ヘプタノン、2-ヘキサノン、3-ヘキサノン、ジイソブチルケトン、メチルシクロヘキサノン、アセトフェノン、メチルアセトフェノン、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチル、酢酸ブテニル、酢酸イソペンチル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸ペンチル、ギ酸イソペンチル、吉草酸メチル、ペンテン酸メチル、クロトン酸メチル、クロトン酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル、乳酸イソブチル、乳酸ペンチル、乳酸イソペンチル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル、2-ヒドロキシイソ酪酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、酢酸フェニル、酢酸ベンジル、フェニル酢酸メチル、ギ酸ベンジル、ギ酸フェニルエチル、3-フェニルプロピオン酸メチル、プロピオン酸ベンジル、フェニル酢酸エチル、酢酸2-フェニルエチル等が挙げられる。これらの溶剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0232】
現像後のホールパターンやトレンチパターンを、サーマルフロー、RELACS(Resolution Enhancement Lithography Assisted by Chemical Shrink)技術、DSA(Directed Self-Assembly)技術等でシュリンクすることもできる。ホールパターン上にシュリンク剤を塗布し、ベーク中のレジスト層からの酸触媒の拡散によってレジストの表面でシュリンク剤の架橋が起こり、シュリンク剤がホールパターンの側壁に付着する。ベーク温度は、好ましくは70~180℃、より好ましくは80~170℃で、ベーク時間は10~300秒である。最後に、余分なシュリンク剤を除去し、ホールパターンを縮小させる。
【0233】
本発明の式(1)で表されるオニウム塩化合物を酸拡散抑制剤として含む化学増幅レジスト組成物を用いることで、CDUや、LWR、感度等のリソグラフィー性能に優れた微細なパターンを容易に形成することができる。
【実施例】
【0234】
以下、合成例、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例等に限定されない。なお、下記例において、Mwは、テトラヒドロフラン(THF)を溶剤として用いたGPCによるポリスチレン換算測定値である。
【0235】
[実施例1-1]酸拡散抑制剤Q-1の合成
(1)化合物SM-2の合成
【化116】
【0236】
化合物SM-1 354.7g、p-tert-ブトキシ安息香酸437.2g、N,N-ジメチルアミノピリジン66.5g及び塩化メチレン3,400gを混合した後、N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N'-エチルカルボジイミド塩酸塩450.9gを加え、室温で21時間撹拌した。19F-NMRで反応が完了したことを確認した後、5質量%NaHCO3水溶液1,600gを加えて撹拌し、反応をクエンチした。有機層を分取した後、純水1,600g及び飽和食塩水400gを加えて1回洗浄した。得られた有機層を減圧濃縮した後、ヘキサン2,000gを加えて再溶解し、有機層を純水1,000g、5質量%塩酸1,000g及び純水1,000gで洗浄した。得られた有機層を減圧濃縮し、粗体を減圧蒸留することで、目的の化合物SM-2を得た(収量601.1g、収率89%)。
【0237】
【0238】
化合物SM-2 91.8g及びジオキサン184gの混合溶液中に、25質量%TMAH水溶液93.4gを滴下した。35℃で終夜撹拌した後、反応液を減圧濃縮した。濃縮液に塩化メチレン500g、純水200g及びベンジルトリメチルアンモニウムクロリド50gを加えて10分間撹拌した後、有機層を分取した。得られた有機層を、10質量%ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド水溶液200g及び純水200gで洗浄した。有機層を減圧濃縮した。濃縮液にジイソプロピルエーテル300gを加えて撹拌し、結晶を析出させた後、濾過し、固体をジイソプロピルエーテルで洗浄した。得られた固体を減圧乾燥することで、目的の化合物SM-3を得た(収量104.7g、収率88%)。
【0239】
【0240】
化合物SM-3 186.6g、塩化メチレン1,200g及びメタノール80gを加えて撹拌した後、トリフェニルスルホニウムメチルサルフェート156g及び純水400gを加え、30分間撹拌し、有機層を分取した。得られた有機層に、トリフェニルスルホニウムメチルサルフェート14.2g、29質量%アンモニア水2.2g及び純水400gの混合液を加え、追加塩交換を2回行った。有機層を純水400gで5回、20質量%メタノール水溶液で3回洗浄した。有機層を減圧濃縮し、目的の酸拡散抑制剤Q-1を油状物として得た(収量210.5g、収率91.8%)。Q-1のスペクトルデータを以下に示す。
【0241】
1H-NMR(500MHz, DMSO-d6): δ= 0.87 (3H, d), 0.92 (3H, d), 1.36 (9H, s), 2.12 (1H, m), 5.45 (1H, m), 7.10 (2H, m), 7.76-7.91 (17H, m) ppm
19F-NMR(500MHz, DMSO-d6): δ= -115.2 (1F, dd), -107.5 (1F, dd) ppm
IR(D-ATR): ν= 3061, 2975, 2953, 2878, 1716, 1658, 1604, 1505, 1477, 1448, 1392, 1369, 1315, 1269, 1257, 1212, 1158, 1098, 1036, 997, 927, 897, 850, 805, 751, 701, 685, 504 cm-1
飛行時間型質量分析(TOFMS; MALDI)
POSITIVE M+263.1 (C18H15S+相当)
NEGATIVE M-343.1 (C17H21F2O5
-相当)
【0242】
[実施例1-2]酸拡散抑制剤Q-22の合成
(1)化合物SM-5の合成
【化119】
【0243】
化合物SM-1 11.8g、化合物SM-4 14.8g、N,N-ジメチルアミノピリジン0.73g及び塩化メチレン70gを混合した後、N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N'-エチルカルボジイミド塩酸塩13.8gを加え、室温で60時間撹拌した。19F-NMRで反応が完了したことを確認した後、純水40gを加えて撹拌し、反応をクエンチした。有機層を分取した後、2質量%塩酸40gで洗浄した。更に有機層を、純水40gと飽和炭酸水素ナトリウム水溶液40gの混合液で1回、純水40gで1回、飽和食塩水40gで1回洗浄した。得られた有機層に活性炭素1.2gを加えて60時間撹拌した後、活性炭素を濾別し、得られた濾液を減圧濃縮することで、目的の化合物SM-5を得た(収量23.6g、収率95%)。
【0244】
【0245】
化合物SM-5 23.5g及びジオキサン24gの混合溶液中に、25質量%TMAH水溶液19.8gを滴下した。30℃で終夜撹拌した後、19F-NMRで反応が完了したことを確認し、反応液を減圧濃縮した。濃縮液に塩化メチレン70g、純水35g及びベンジルトリメチルアンモニウムクロリド15.9gを加えて10分間撹拌した後、有機層を分取した。得られた有機層を、10質量%ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド水溶液40gで1回、10質量%メタノール水溶液40gで2回洗浄した。有機層を減圧濃縮した後、メタノール60gを加えて溶解し、活性炭素1.5gを加えて終夜撹拌した。活性炭素を濾別した後、濾液を減圧濃縮した。濃縮液にヘキサン100mLを加えて晶析を行い、濾過後、得られた固体を減圧乾燥することで、目的の化合物SM-6を得た(収量26.7g、収率87%)。
【0246】
【0247】
化合物SM-6 8.0g、化合物SM-7 6.7g、塩化メチレン50g及び純水50gを加えて10分間撹拌し、有機層を分取した。得られた有機層に、化合物SM-7 0.6g及び純水60gの混合液を加え、追加塩交換を2回行った。有機層を純水60gで5回洗浄した。有機層を減圧濃縮した後、塩化メチレン50gに溶解し、活性炭素0.5gを加えて終夜撹拌した。活性炭素を濾別した後、濾液を減圧濃縮した。濃縮液にジイソプロピルエーテル100mLを加えて撹拌後、上澄み液を除去した。更に、ヘキサン100mLを加えて撹拌し、固体を析出させた後、濾過、減圧乾燥することで、目的の酸拡散抑制剤Q-22を固体として得た(収量9.1g、収率92.5%)。Q-22のスペクトルデータを以下に示す。
【0248】
1H-NMR(500MHz, DMSO-d6): δ= 0.87 (3H, d), 0.93 (3H, d), 1.27 (1H, m), 1.32 (3H, s), 1.37-1.61 (7H, m), 1.89 (2H, m), 2.13 (1H, m), 5.46 (1H, m), 7.10 (2H, m), 7.55-7.63 (4H, m), 7.68 (1H, tt), 7.74 (2H, dt), 7.89 (2H, m), 7.94 (2H, dt), 8.39 (2H, d), 8.52 (2H, dd) ppm
19F-NMR(500MHz, DMSO-d6): δ= -115.2 (1F, dd), -107.6 (1F, dd) ppm
IR(D-ATR): ν= 3369, 3086, 2966, 2935, 2860, 1718, 1653, 1603, 1505, 1475, 1464, 1448, 1429, 1389, 1341, 1313, 1265, 1243, 1153, 1098, 1036, 1012, 998, 964, 896, 849, 798, 767, 739, 708, 680, 526, 489 cm-1
飛行時間型質量分析(TOFMS; MALDI)
POSITIVE M+261.1 (C18H13S+相当)
NEGATIVE M-383.2 (C20H25F2O5
-相当)
【0249】
[実施例1-3~1-22]酸拡散抑制剤Q-2~Q-21の合成
実施例1-1~1-2を参考に、以下に示す酸拡散抑制剤Q-2~Q-21を合成した。
【化122】
【0250】
【0251】
[合成例1]ポリマーP-1の合成
窒素雰囲気下、メタクリル酸1-tert-ブチルシクロペンチル22g、メタクリル酸2-オキソテトラヒドロフラン-3-イル17g、V-601(和光純薬工業(株)製)0.48g、2-メルカプトエタノール0.41g及びメチルエチルケトン50gをとり、単量体-重合開始剤溶液を調製した。窒素雰囲気とした別のフラスコにメチルエチルケトン23gをとり、撹拌しながら80℃まで加熱した後、前記単量体-重合開始剤溶液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、重合液の温度を80℃に保ったまま2時間撹拌を続け、次いで室温まで冷却した。得られた重合液を激しく撹拌したメタノール640g中に滴下し、析出した固体を濾別した。前記固体をメタノール240gで2回洗浄した後、50℃で20時間真空乾燥することで、白色粉末状のポリマーP-1を得た(収量36g、収率90%)。ポリマーP-1のMwは8,200、Mw/Mnは1.63であった。
【化124】
【0252】
[合成例2~4]ポリマーP-2~P-4の合成
各単量体の種類及び配合比を変えた以外は、合成例1と同様の方法で、下記ポリマーP-2~P-4を合成した。
【化125】
【0253】
[実施例2-1~2-55、比較例1-1~1-20]化学増幅レジスト組成物の調製
下記表1~5に示す各成分を、界面活性剤Polyfox636(オムノバ社製)0.01質量%を含む溶剤中に溶解させ、得られた溶液を0.2μmのテフロン(登録商標)製フィルターで濾過することで、レジスト組成物を調製した。
【0254】
なお、表1~5中、光酸発生剤PAG-1~PAG-4、溶剤、比較用の酸拡散抑制剤Q-A~Q-J、及びアルカリ可溶型界面活性剤SF-1は、以下のとおりである。
【0255】
【0256】
・溶剤
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
GBL:γ-ブチロラクトン
CyHO:シクロヘキサノン
DAA:ジアセトンアルコール
【0257】
【0258】
・アルカリ可溶型界面活性剤SF-1:ポリ(メタクリル酸2,2,3,3,4,4,4-へプタフルオロ-1-イソブチル-1-ブチル・メタクリル酸9-(2,2,2-トリフルオロ-1-トリフルオロメチルエチルオキシカルボニル)-4-オキサトリシクロ[4.2.1.0
3,7]ノナン-5-オン-2-イル)
Mw=7,700
Mw/Mn=1.82
【化128】
【0259】
【0260】
【0261】
【0262】
【0263】
【0264】
[実施例3-1~3-22、比較例2-1~2-10]ArFリソグラフィー評価
シリコン基板上に反射防止膜溶液(日産化学(株)製ARC-29A)を塗布し、180℃で60秒間ベークして反射防止膜(膜厚100nm)を形成した。各レジスト組成物(R-1~R-21、R-54、CR-1~CR-10)を前記反射防止膜上にスピンコーティングし、ホットプレートを用いて100℃で60秒間ベークし、膜厚90nmのレジスト膜を形成した。ArFエキシマレーザースキャナー((株)ニコン製NSR-S610C、NA=1.30、σ0.94/0.74、Dipole-35deg照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク)を用いて液浸露光を行った。なお、液浸液としては水を用いた。その後、90℃で60秒間ベーク(PEB)を施し、2.38質量%TMAH水溶液で60秒間現像を行い、ラインアンドスペース(LS)パターンを形成した。
【0265】
得られたLSパターンを、(株)日立ハイテクノロジーズ製測長SEM(CG5000)で観察し、感度、LWR及び欠陥密度を下記方法に従って評価した。結果を表6に示す。
【0266】
[感度評価]
感度として、ライン幅40nm、ピッチ80nmのLSパターンが得られる最適露光量Eop(mJ/cm2)を求めた。この値が小さいほど感度が高い。
【0267】
[LWR評価]
Eopで照射して得たLSパターンを、ラインの長手方向に10箇所の寸法を測定し、その結果から標準偏差(σ)の3倍値(3σ)をLWRとして求めた。この値が小さいほど、ラフネスが小さく均一なライン幅のパターンが得られる。本評価においては、LWRが2.5nm以下のものを良好とし、2.5nmを超えるものを不良とした。
【0268】
[欠陥密度評価]
現像後に形成されたパターン中の欠陥数を欠陥検査装置KLA2905(KLA-Tencor社製)により検査し、次式に従って欠陥密度を求めた。
欠陥密度(個/cm2)=検出された総欠陥数/検査面積
欠陥検査条件:光源UV、検査ピクセルサイズ0.22μm、アレイモード
本評価においては、◎:0.03個/cm2未満、△:0.03個/cm2以上0.05個/cm2未満、×:0.05個/cm2以上とした。
【0269】
【0270】
表6に示した結果より、本発明の化学増幅レジスト組成物は、感度、LWRに優れ、かつディフェクトも少なく、ArF液浸リソグラフィーの材料として好適であることが示された。
【0271】
[実施例4-1~4-33、比較例3-1~3-10]EUVリソグラフィー評価
各レジスト組成物(R-22~R-53、R-55、CR-11~CR-20)を、信越化学工業(株)製ケイ素含有スピンオンハードマスクSHB-A940(ケイ素の含有量が43質量%)を膜厚20nmで形成したシリコン基板上にスピンコートし、ホットプレートを用いて105℃で60秒間プリベークして膜厚50nmのレジスト膜を作製した。これを、ASML社製EUVスキャナーNXE3300(NA0.33、σ0.9/0.6、クアドルポール照明、ウエハー上寸法がピッチ46nm、+20%バイアスのホールパターンのマスク)を用いて露光(露光量20~40mJ/cm2)し、ホットプレート上で85℃で60秒間PEBを行い、2.38質量%TMAH水溶液で30秒間現像を行い、寸法23nmのホールパターンを形成した。
【0272】
現像後のホールパターンを、(株)日立ハイテクノロジーズ製測長SEM(CG5000)で観察し、感度、CDU及び欠陥密度を下記方法に従って評価した。結果を表7及び8に示す。
【0273】
[感度評価]
感度として、ホール寸法が23nmで形成されるときの最適露光量Eop(mJ/cm2)を求めた。この値が小さいほど感度が高い。
【0274】
[CDU評価]
Eopで照射して得たホールパターンを、同一露光量ショット内50箇所の寸法を測定し、その結果から標準偏差(σ)の3倍値(3σ)をCDUとして求めた。この値が小さいほど、ホールパターンの寸法均一性が優れる。本評価においては、CDUが3.0nm以下のものを良好とし、3.0nmを超えるものを不良とした。
【0275】
[欠陥密度評価]
現像後に形成されたパターン中の欠陥数を欠陥検査装置KLA2905(KLA-Tencor社製)により検査し、次式に従って欠陥密度を求めた。
欠陥密度(個/cm2)=検出された総欠陥数/検査面積
欠陥検査条件:光源UV、検査ピクセルサイズ0.22μm、アレイモード
本評価においては、◎:0.04個/cm2未満、△:0.04個/cm2以上0.06個/cm2未満、×:0.06個/cm2以上とした。
【0276】
【0277】
【0278】
表7及び8に示した結果より、本発明の化学増幅レジスト組成物は、感度、CDUに優れ、かつディフェクトも少なく、EUVリソグラフィーの材料として好適であることが示された。