(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】標示構造、並びに、路面標示、道路付属物および建造物
(51)【国際特許分類】
E01F 9/518 20160101AFI20231011BHJP
E01C 23/20 20060101ALI20231011BHJP
E01F 9/541 20160101ALI20231011BHJP
【FI】
E01F9/518
E01C23/20 A
E01F9/541
(21)【出願番号】P 2020516351
(86)(22)【出願日】2019-04-22
(86)【国際出願番号】 JP2019017081
(87)【国際公開番号】W WO2019208515
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2022-03-17
(31)【優先権主張番号】P 2018086021
(32)【優先日】2018-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(72)【発明者】
【氏名】原口 学
【審査官】亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-283243(JP,A)
【文献】特開平10-107540(JP,A)
【文献】特開2003-283242(JP,A)
【文献】特開2002-061130(JP,A)
【文献】特開2008-099266(JP,A)
【文献】特開2009-153095(JP,A)
【文献】特開2004-007456(JP,A)
【文献】特開2015-032969(JP,A)
【文献】特表2016-522338(JP,A)
【文献】特開2003-272087(JP,A)
【文献】特開平10-331122(JP,A)
【文献】特開平11-327642(JP,A)
【文献】特表平11-513762(JP,A)
【文献】特開2003-218581(JP,A)
【文献】特開平10-103964(JP,A)
【文献】特開2001-313521(JP,A)
【文献】特開2004-036215(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0169682(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 9/00-11/00
E01C 23/20
G01S 7/00-7/42
G01S 13/00-13/95
G08G 1/00-99/00
G05D 1/00-1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動運転システムまたは運転支援システムにおいてミリ波若しくは準ミリ波を用いたレーダーを用いたセンシングを行う対象物に設ける標示構造であって、
ミリ波または準ミリ波を反射する
平面視線状の反射部材を0.2mm以上40mm以下の間隔で
平面視線状の反射部材に交差する方向に繰り返し配置してなる繰り返し構造部を有
し、
前記反射部材は、長さが0.1mm以上で、幅が、前記繰り返し構造部内における反射部材の配置間隔の平均値の1/200以上2/3以下であり、
前記繰り返し構造部は、反射部材と、反射部材間に位置してミリ波または準ミリ波の反射率が反射部材とは異なる部分とを有し、且つ、下記(1)~(5)の何れかの形態である、標示構造。
(1)ミリ波または準ミリ波の反射率が反射部材とは異なる設置面の上に複数の反射部材を所定の間隔で設置した形態
(2)ミリ波または準ミリ波の反射率が反射部材とは異なる設置面の表層部に一部が表面に露出するように複数の反射部材を所定の間隔で埋設した形態
(3)設置面上に所定の間隔で配置した複数の反射部材の間にミリ波または準ミリ波の反射率が反射部材とは異なる部材を敷き詰めた形態
(4)ミリ波または準ミリ波を反射し得る設置面上にミリ波または準ミリ波を吸収する部材を設置面が所定の間隔で露出するように配置した形態
(5)設置面上に敷き詰めた反射部材の上にミリ波または準ミリ波の反射率が反射部材とは異なる部材を反射部材が所定の間隔で露出するように配置した形態
【請求項2】
前記繰り返し構造部は、前記(1)~(3)の何れかの形態であり、
前記反射部材は、
前記設置面からの高さが3mm以下である、請求項1に記載の標示構造。
【請求項3】
前記反射部材は、複素比誘電率の実部が負である
部材よりなる、請求項1または2に記載の標示構造。
【請求項4】
前記反射部材は、金属
よりなる、請求項3に記載の標示構造。
【請求項5】
前記反射部材は、複素比誘電率の実部が5以上である
部材よりなる、請求項1または2に記載の標示構造。
【請求項6】
前記反射部材は、複素比透磁率の実部が1超である
部材よりなる、請求項1または2に記載の標示構造。
【請求項7】
前記反射部材は、複素比透磁率の実部が負である
部材よりなる、請求項1または2に記載の標示構造。
【請求項8】
前記繰り返し構造部内で、前記反射部材が一定の周期で繰り返し配置されている、請求項1~7の何れかに記載の標示構造。
【請求項9】
前記繰り返し構造部内で、
繰り返し方向に隣接する反射部材間の平均距離が変調している、請求項1~7の何れかに記載の標示構造。
【請求項10】
前記繰り返し構造部内における前記反射部材の配設間隔が、配設間隔の平均値の0.7倍以上1.3倍以下の範囲内である、請求項9に記載の標示構造。
【請求項11】
前記反射部材が第一の周期で繰り返し配置されている第一繰り返し構造部と、前記反射部材が前記第一の周期とは異なる第二の周期で繰り返し配置されている第二繰り返し構造部とを有する、請求項1~7の何れかに記載の標示構造。
【請求項12】
繰り返し方向が異なる複数の繰り返し構造部を有する、請求項1~7の何れかに記載の標示構造。
【請求項13】
前記繰り返し構造部内に、5以上20未満の反射部材が含まれる、請求項12に記載の標示構造。
【請求項14】
前記線状部材が直線状部材である、
請求項1~13の何れかに記載の標示構造。
【請求項15】
前記線状部材が曲線状部材である、
請求項1~13の何れかに記載の標示構造。
【請求項16】
ミリ波または準ミリ波に対して透過性を有し、且つ、前記繰り返し構造部を覆うカバー層を有する、請求項1~
15の何れかに記載の標示構造。
【請求項17】
前記カバー層は、前記繰り返し構造部を可視光および赤外光の少なくとも一方に対して隠蔽する層である、請求項
16に記載の標示構造。
【請求項18】
前記カバー層は、可視光および赤外光の少なくとも一方を吸収する、請求項
16に記載の標示構造。
【請求項19】
請求項1~
18の何れかに記載の標示構造を備える、路面標示。
【請求項20】
請求項
16~18の何れかに記載の標示構造を備え、
前記カバー層は、設置面よりも、可視光および赤外光の少なくとも一方の反射率が高い、路面標示。
【請求項21】
請求項1~
18の何れかに記載の標示構造を備える、道路付属物。
【請求項22】
請求項
16~18の何れかに記載の標示構造を備え、
前記カバー層は、設置面よりも、可視光および赤外光の少なくとも一方の反射率が高い、道路付属物。
【請求項23】
請求項1~
18の何れかに記載の標示構造を備える、建造物。
【請求項24】
請求項
16~18の何れかに記載の標示構造を備え、
前記カバー層は、設置面よりも、可視光および赤外光の少なくとも一方の反射率が高い、建造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、標示構造、並びに、当該標示構造を用いた路面標示、道路付属物および建造物に関し、特には、自動運転システムや運転支援システムにおいてミリ波レーダーや準ミリ波レーダーなどのレーダーを用いたセンシングを行う際に有利に活用し得る標示構造、路面標示、道路付属物および建造物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車のドライバーの運転操作を支援する運転支援システムや、ドライバーが運転操作を行わなくとも自動車を自動で走行させる自動運転システムが注目されている。
【0003】
ここで、運転支援システムおよび自動運転システムにおいては、車載レーダー装置等を使用し、走行路の区画線や停止線等の路面標示;縁石、遮断機、防護柵(ガードレール、ガードパイプ等)、ラバーポール、距離標、照明灯、電柱、信号機、信号柱、道路標識および道路標識柱等の道路付属物;並びに、塀や外壁等の建造物;などを的確に検知する技術の開発が肝要である。
【0004】
そこで、例えば特許文献1では、路面との間の反射率強度の差が大きく、レーザーレーダーを用いた際の検知の誤作動を低減し得る路面ライン標示として、熱可塑性結合材と、体質材と、可塑剤と、着色顔料と、所定の屈折率および粒子径を有するガラスビーズとを必須とする溶融式の標示用塗料で形成された帯状ラインの表面に所定の屈折率および粒子径を有するガラスビーズを散布固着させてなる路面ライン標示が提案されている。
【0005】
また、例えば非特許文献1では、降雨、降雪および霧発生などの悪天候時、並びに、積雪時でも検知性能が低下し難い全天候型の白線検知技術として、ミリ波レーダーを使用し、例えば400mm程度の等間隔でリブを設けたリブ式白線を検知する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【文献】石本幸太郎、他5名、「ミリ波レーダによるリブ式白線検知」、富士通テン技報、2017年3月、Vol.34、No.1、p.9-17
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここで、天候等の影響を受け難い運転支援システムおよび自動運転システムを実現する観点からは、車載レーダーとしては、悪天候時および積雪時でも検知性能が低下し難いミリ波レーダーまたは準ミリ波レーダーを用いることが好ましい。しかし、上述した路面ライン標示やリブ式白線などの上記従来の標示構造では、ミリ波レーダーや準ミリ波レーダーを用いた際の反射波の受信強度が低かった。
【0009】
そこで、本発明は、ミリ波または準ミリ波を用いたレーダーでセンシングを行った際に反射波の受信強度を高めることが可能な標示構造を提供することを目的とする。
また、本発明は、ミリ波または準ミリ波を用いたレーダーで良好にセンシングし得る路面標示、道路付属物および建造物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明によれば、下記<1>~<19>の標示構造、下記<20>~<21>の路面標示、下記<22>~<23>の道路付属物および下記<24>~<25>の建造物が提供される。
<1>ミリ波または準ミリ波を反射する反射部材を0.2mm以上40mm以下の間隔で繰り返し配置してなる繰り返し構造部を有する、標示構造。
<2>前記反射部材は、高さが3mm以下である、上記<1>に記載の標示構造。
<3>前記反射部材は、複素比誘電率の実部が負である、上記<1>または<2>に記載の標示構造。
<4>前記反射部材は、金属を含む、上記<3>に記載の標示構造。
<5>前記反射部材は、複素比誘電率の実部が5以上である、上記<1>または<2>に記載の標示構造。
<6>前記反射部材は、複素比透磁率の実部が1超である、上記<1>または<2>に記載の標示構造。
<7>前記反射部材は、複素比透磁率の実部が負である、上記<1>または<2>に記載の標示構造。
<8>前記繰り返し構造部内で、前記反射部材が一定の周期で繰り返し配置されている、上記<1>~<7>の何れかに記載の標示構造。
<9>前記繰り返し構造部内で、前記反射部材の配設間隔が変調している、上記<1>~<7>の何れかに記載の標示構造。
<10>前記繰り返し構造部内における前記反射部材の配設間隔が、配設間隔の平均値の0.7倍以上1.3倍以下の範囲内である、上記<9>に記載の標示構造。
<11>前記反射部材が第一の周期で繰り返し配置されている第一繰り返し構造部と、前記反射部材が前記第一の周期とは異なる第二の周期で繰り返し配置されている第二繰り返し構造部とを有する、上記<1>~<7>の何れかに記載の標示構造。
<12>繰り返し方向が異なる複数の繰り返し構造部を有する、上記<1>~<7>の何れかに記載の標示構造。
<13>前記繰り返し構造部内に、5以上20未満の反射部材が含まれる、上記<12>に記載の標示構造。
<14>前記反射部材が線状部材である、上記<1>~<13>の何れかに記載の標示構造。
<15>前記線状部材が直線状部材である、上記<14>に記載の標示構造。
<16>前記線状部材が曲線状部材である、上記<14>に記載の標示構造。
<17>ミリ波または準ミリ波に対して透過性を有し、且つ、前記繰り返し構造部を覆うカバー層を有する、上記<1>~<16>の何れかに記載の標示構造。
<18>前記カバー層は、前記繰り返し構造部を可視光および赤外光の少なくとも一方に対して隠蔽する層である、上記<17>に記載の標示構造。
<19>前記カバー層は、可視光および赤外光の少なくとも一方を吸収する、上記<17>に記載の標示構造。
<20>上記<1>~<19>の何れかに記載の標示構造を備える、路面標示。
<21>上記<17>~<19>の何れかに記載の標示構造を備え、
前記カバー層は、設置面よりも、可視光および赤外光の少なくとも一方の反射率が高い、路面標示。
<22>上記<1>~<19>の何れかに記載の標示構造を備える、道路付属物。
<23>上記<17>~<19>の何れかに記載の標示構造を備え、
前記カバー層は、設置面よりも、可視光および赤外光の少なくとも一方の反射率が高い、道路付属物。
<24>上記<1>~<19>の何れかに記載の標示構造を備える、建造物。
<25>上記<17>~<19>の何れかに記載の標示構造を備え、
前記カバー層は、設置面よりも、可視光および赤外光の少なくとも一方の反射率が高い、建造物。
【発明の効果】
【0011】
本発明の標示構造によれば、ミリ波または準ミリ波を用いたレーダーでセンシングを行った際に反射波の受信強度を高めることができる。
また、本発明によれば、ミリ波または準ミリ波を用いたレーダーで良好にセンシングし得る路面標示、道路付属物および建造物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】(a)および(b)は、標示構造の変形例の構成を示す平面図である。
【
図3】標示構造の他の例の構成を示す平面図である。
【
図4】(a)~(c)は、標示構造の別の例の構成を示す平面図である。
【
図5】標示構造の更に別の例の構成を示す平面図である。
【
図6】標示構造の更に別の例の構成を示す平面図である。
【
図7】標示構造の更に別の例の構成を示す平面図である。
【
図8】標示構造の更に別の例の構成を示す平面図である
【
図10】路面標示の一例の構成を示す断面図である。
【
図11】道路付属物の一例の構成を示す斜視図である。
【
図12】道路付属物の他の例の構成を示す斜視図である。
【
図13】道路付属物の別の例の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の標示構造は、ミリ波または準ミリ波を用いたレーダーで好適にセンシングし得るものであり、例えば、自動運転システムや運転支援システムにおいてミリ波レーダーや準ミリ波レーダーなどのレーダーを用いたセンシングを行う対象物に設けることができる。また、本発明の路面標示、道路付属物および建造物は、本発明の標示構造を備えており、ミリ波または準ミリ波を用いたレーダーで好適にセンシングすることができる。
【0014】
(標示構造)
本発明の標示構造は、ミリ波または準ミリ波を反射する反射部材を0.2mm以上40mm以下の間隔で繰り返し配置してなる繰り返し構造部を有している。このように、反射部材を0.2mm以上40mm以下の間隔で繰り返し配置すれば、ミリ波または準ミリ波が反射部材で散乱・反射されてなる反射波が互いに強め合って伝搬するため、レーダーにおける反射波の受信強度を高めることができる。
なお、標示構造は、繰り返し構造部を覆うカバー層を更に有していてもよい。
【0015】
<ミリ波・準ミリ波>
ここで、ミリ波および準ミリ波としては、周波数が20GHz以上300GHz以下であり、波長が1mm以上15mm以下である電磁波が挙げられる。具体的には、ミリ波としては、周波数が30GHz以上300GHz以下であり、波長が1mm以上10mm以下である電磁波が挙げられ、準ミリ波としては、周波数が20GHz以上30GHz未満であり、波長が10mm超15mm以下である電磁波が挙げられる。
【0016】
<繰り返し構造部>
また、繰り返し構造部は、所定の間隔で繰り返し配置された反射部材と、反射部材間に位置してミリ波または準ミリ波の反射率が反射部材とは異なる部分とを有している。具体的には、繰り返し構造部の形態としては、特に限定されることなく、例えば、(1)ミリ波または準ミリ波の反射率が反射部材とは異なる設置面の上に複数の反射部材を所定の間隔で設置した形態、(2)ミリ波または準ミリ波の反射率が反射部材とは異なる設置面の表層部に一部が表面に露出するように複数の反射部材を所定の間隔で埋設した形態、(3)設置面上に所定の間隔で配置した複数の反射部材の間にミリ波または準ミリ波の反射率が反射部材とは異なる部材を敷き詰めた形態、(4)ミリ波または準ミリ波を反射し得る設置面上にミリ波または準ミリ波を吸収する部材を設置面が所定の間隔で露出するように配置した形態(ミリ波または準ミリ波を吸収する部材間に位置する設置面が反射部材となる形態)、(5)設置面上に敷き詰めた反射部材の上にミリ波または準ミリ波の反射率が反射部材とは異なる部材を反射部材が所定の間隔で露出するように配置した形態、等が挙げられる。
なお、「ミリ波または準ミリ波の反射率が反射部材とは異なる部分」は、ミリ波または準ミリ波を吸収するものであってもよい。また、標示構造は、繰り返し構造部を1つのみ有していてもよいし、複数有していてもよい。更に、上記(1)、(3)、(4)および(5)において、反射部材、反射率が反射部材とは異なる部材、並びに、ミリ波または準ミリ波を吸収する部材は、設置面上に直接設置または配置してもよいし、設置面上に接着層等を介して間接的に設置または配置してもよい。
【0017】
そして、上述した形態を有する繰り返し構造部は、通常、複素比誘電率および/または複素比透磁率が上述した間隔で繰り返し変化する分布を有する。
【0018】
[反射部材]
ここで、反射部材としては、反射部材間に位置する部分とミリ波または準ミリ波の反射率を異ならせることができる部材であれば特に限定されることなく、任意の部材を用いることができる。具体的には、反射部材としては、例えば、金属等の複素比誘電率の実部が負である材料よりなる部材、フォルステライト、酸化アルミニウム、ニオブ酸マグネシウム酸バリウム、チタン酸ネオジウム酸バリウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛等の複素比誘電率の実部が5以上、好ましくは10以上である材料よりなる部材、磁性体等の複素比透磁率の実部が1超である材料よりなる部材、および、メタマテリアル等の複素比透磁率の実部が負である材料よりなる部材などが挙げられる。中でも、ミリ波レーダーや準ミリ波レーダーを用いてセンシングを行った際の反射波の受信強度を高める観点からは、金属等の複素比誘電率の実部が負である材料よりなる反射部材が好ましい。また、標示構造の施工後に反射部材の設置位置を検知し易い観点からは、磁性体等の複素比透磁率の実部が1超である材料よりなる反射部材が好ましい。更に、ミリ波や準ミリ波の周波数に合わせて特性を設計し、高い反射率を得る観点からは、メタマテリアル等の複素比透磁率の実部が負である材料よりなる反射部材が好ましい。
なお、複素比誘電率の実部の値が5以上の材料または複素比誘電率の実部の値が負の材料によって反射できる偏波と、複素比透磁率の実部の値が1以上の材料または複素比透磁率の実部の値が負の材料によって反射できる偏波とは異なっているため、ミリ波レーダーまたは準ミリ波レーダーから出射する偏波に合わせて、材料の特性を選択することが好ましい。
【0019】
また、繰り返し配置されている各反射部材は、通常、ミリ波または準ミリ波の波長に対して十分に長い長さを有し、ミリ波または準ミリ波の波長に対して十分に短い幅を有する。具体的には、反射部材は、例えば、長さが0.1mm以上である。また、反射部材の幅は、例えば、繰り返し構造部内における反射部材の配置間隔の平均値の1/200以上2/3以下、好ましくは1/50以上1/5以下である。
【0020】
更に、設置面上に設ける反射部材の高さは、3mm以下であることが好ましく、10μm以上100μm以下であることがより好ましい。反射部材の高さが上記上限値以下であれば、標示構造を付与した構造物に過度な凹凸が形成されるのを抑制することができる。従って、例えば標示構造を用いて路面標示を形成した場合には、バイク等の車両の走行に支障をきたすのを防止することができると共に、除雪グレーダー等による除雪時に路面標示が削り取られるのを防止することができる。また、反射部材の高さが上記下限値以上であれば、ミリ波レーダーや準ミリ波レーダーを用いてセンシングを行った際の反射波の受信強度を十分に高めることができる。
【0021】
また、繰り返し配置されている各反射部材の平面視形状は、特に限定されることなく、例えば、直線状や曲線状等の線状の他、円状、楕円状、十字状、多角形状などが挙げられる。
そして、反射部材が線状の場合、反射部材の繰り返し方向は、線状の部材に交差する方向であることが好ましい。
【0022】
[反射部材の間隔]
そして、繰り返し配置されている反射部材の配置間隔は、0.2mm以上40mm以下であることが必要であり、0.5mm以上40mm以下であることが好ましく、1mm以上10mm以下であることがより好ましい。反射部材の間隔が上記範囲外の場合、反射波の受信強度を十分に高めることができない。
なお、本発明において、繰り返し方向に隣接する反射部材間で間隔が一定でない場合(例えば、隣接する反射部材同士が互いに平行に配置されておらず、反射部材の中央部同士の間と、反射部材の端部同士の間とで間隔が異なる場合など)には、反射部材の間隔とは、繰り返し方向に隣接する反射部材間の平均距離を指すものとする。
【0023】
[反射率が反射部材とは異なる部材]
任意に使用し得る、反射率が反射部材とは異なる部材としては、特に限定されることなく、反射率が反射部材とは異なる材料からなる部材を使用することができる。ここで、反射部材の反射率は、反射部材を構成する材料の混合比および/または反射部材中の空隙率を変更することによっても変化させることができる。
なお、反射率が反射部材とは異なる部材は、ミリ波または準ミリ波を吸収する部材であってもよい。
【0024】
[ミリ波または準ミリ波を吸収する部材]
ミリ波または準ミリ波を吸収する部材としては、特に限定されることなく、ミリ波または準ミリ波の吸収率が通常10%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは80%以上の材料からなる部材を使用することができる。
なお、吸収率は、自由空間法で測定することができる。
【0025】
[設置面]
上述した部材を配置し得る設置面は、標示構造を付与する構造物の表面であってもよいし、標示構造を付与する構造物の表面に設けた下塗り層の表面であってもよい。即ち、繰り返し構造部は、構造物の表面または表層部、或いは、下塗り層の表面または表層部に上述した部材を配置して構成されている。
【0026】
ここで、下塗り層としては、特に限定されることなく、例えば、標示構造を付与する構造物の表面の凹凸を平滑化する樹脂層、上述した部材と構造物の表面との接着性を向上させる樹脂層、並びに、ミリ波または準ミリ波の不要な反射を抑制する樹脂層などが挙げられる。
【0027】
<標示構造の例>
そして、上述した繰り返し構造部を有する標示構造としては、特に限定されることなく、例えば
図1~7に示すような標示構造が挙げられる。
【0028】
ここで、
図1に示す標示構造の繰り返し構造部10は、設置面S上に設置面Sとは反射率が異なる材料からなる直線状の反射部材1が上述した所定の間隔で互いに平行に配置されてなる。即ち、反射部材1は、一定の周期で繰り返し配置されている。なお、各反射部材1は、繰り返し方向(
図1では左右方向)に直交する方向(
図1では上下方向)に延在している。
【0029】
また、
図2(a)に示す標示構造の繰り返し構造部10Aは、設置面S上に設置面Sとは反射率が異なる材料からなる直線状の反射部材1Aが上述した所定の間隔で互いに平行に配置されてなる。即ち、反射部材1Aは、一定の周期で繰り返し配置されている。なお、各反射部材1Aは、繰り返し方向(
図1では左右方向)に直交する方向に対して傾斜して延在している。そして、反射部材1Aが繰り返し方向に対して傾斜している場合、標示構造の横を走行する車両からミリ波レーダーや準ミリ波レーダーを用いたセンシングを行ってミリ波や準ミリ波が標示構造に斜め方向から入射しても、入射方向に向かって反射させることができる。
【0030】
更に、
図2(b)に示す標示構造の繰り返し構造部10Bは、設置面S上に設置面Sとは反射率が異なる材料からなる曲線状の反射部材1Bが上述した所定の間隔で互いに平行に配置されてなる。即ち、反射部材1Bは、一定の周期で繰り返し配置されている。なお、各反射部材1Bは、中央部が繰り返し方向の一方(
図1では左方向)に凸となるように湾曲して延在している。そして、反射部材1Bが曲線状である場合、ミリ波レーダーや準ミリ波レーダーを用いてセンシングを行った際の反射方向を広げ、ロバスト性を高めることができる。
【0031】
また、
図3に示す標示構造の繰り返し構造部10Cは、設置面S上に設置面Sとは反射率が異なる材料からなる直線状の反射部材1が間隔を異ならせつつ互いに平行に配置されている。即ち、反射部材1は、上述した所定の間隔の範囲内で配設間隔が変調するように配置されており、
図3では、反射部材1の配設間隔が疎になる部分と、反射部材1の配設間隔が密になる部分とが繰り返し方向に交互に存在している。なお、各反射部材1は、繰り返し方向(
図1では左右方向)に直交する方向(
図1では上下方向)に延在している。そして、反射部材1の配設間隔が変調している場合、広い波長帯域のミリ波または準ミリ波に対して高い反射率を得ることができる。
【0032】
ここで、
図3に示す標示構造のように繰り返し構造部10C内における反射部材1の配設間隔を変調させる場合、反射部材1の配設間隔は、それぞれ、配設間隔の平均値の0.7倍以上1.3倍以下の範囲内であることが好ましい。配設間隔のバラツキが上記範囲内であれば、ミリ波レーダーや準ミリ波レーダーを用いてセンシングを行った際の反射波の受信強度を十分に高めることができる。
【0033】
更に、上述した例では標示構造が繰り返し構造部を1つのみ有する場合について説明したが、標示構造は、
図4に示すように、互いに離隔して配置された複数の繰り返し構造部を有していてもよい。標示構造が互いに離隔した複数の繰り返し構造部を有している場合、反射する波長帯域、ミリ波または準ミリ波の反射方向を広げ、ロバスト性を高めることができる。
【0034】
ここで、
図4(a)に示す標示構造は、
図4(a)では左右方向に互いに離隔して配置された複数(図示例では3つ)の繰り返し構造部10D,10E,10Fを有している。そして、各繰り返し構造部10D,10E,10Fは、設置面S上に設置面Sとは反射率が異なる材料からなる直線状の反射部材1が互いに平行に配置されてなる。即ち、反射部材1は、一定の周期で繰り返し配置されている。なお、各反射部材1は、繰り返し方向(
図4(a)では左右方向)に直交する方向(
図4(a)では上下方向)に延在している。そして、標示構造が反射部材の繰り返し方向に互いに離隔した複数の繰り返し構造部を有している場合、広い波長帯域のミリ波または準ミリ波に対して高い反射率を得ることができる。
【0035】
また、
図4(b)に示す標示構造は、
図4(b)では上下方向に互いに離隔して配置された複数(図示例では3つ)の繰り返し構造部10H,10G,10Iを有している。そして、繰り返し構造部10H,10Iは、設置面S上に設置面Sとは反射率が異なる材料からなる直線状の反射部材1Aが上述した所定の間隔で互いに平行に配置されてなる。具体的には、反射部材1Aは、一定の周期で繰り返し配置されており、各反射部材1Aは、繰り返し方向(
図4(b)では左右方向)に直交する方向に対して傾斜して延在している。また、繰り返し構造部10H,10Iの間に位置する繰り返し構造部10Gは、設置面S上に設置面Sとは反射率が異なる材料からなる直線状の反射部材1が上述した所定の間隔で互いに平行に配置されてなる。具体的には、反射部材1は、一定の周期で繰り返し配置されており、各反射部材1は、繰り返し方向(
図4(b)では左右方向)に直交する方向に延在している。そして、標示構造が有する複数の繰り返し構造部間で反射部材の延在方向が異なる場合、ミリ波レーダーや準ミリ波レーダーを用いてセンシングを行った際の反射方向を広げ、ロバスト性を高めることができる。
【0036】
更に、
図4(c)に示す標示構造は、反射部材1の繰り返し方向が異なる複数の繰り返し構造部10Jを有している。具体的には、各繰り返し構造部10Jは、設置面S上に設置面Sとは反射率が異なる材料からなる直線状の反射部材1が上述した所定の間隔で互いに平行に配置されてなり、一定の周期で繰り返し配置された各反射部材1は、繰り返し方向に直交する方向に延在している。そして、標示構造が有する複数の繰り返し構造部間で反射部材の繰り返し方向が異なる場合、ミリ波レーダーや準ミリ波レーダーを用いてセンシングを行った際にあらゆる方向に高い反射率を得ることができる。
【0037】
なお、反射部材の繰り返し方向が異なる複数の繰り返し構造部を有する場合、各繰り返し構造が有する反射部材の数は、5以上20未満であることが好ましい。繰り返し構造部間で反射部材の繰り返し方向が異なる場合に、反射部材の数が5以上であれば、ミリ波レーダーや準ミリ波レーダーでのセンシングに必要な反射の指向性を十分に持たせることができる。また、反射部材の数が20未満であれば、反射波の波長帯域と指向性に冗長性を与えることができる。
【0038】
また、
図4に示す例では、全ての繰り返し構造部において反射部材が一定の周期で配置されていたが、標示構造が反射部材の繰り返し方向が異なる複数の繰り返し構造部を有する場合、繰り返し配置された反射部材の周期は、少なくとも2つの繰り返し構造部間で異なっていてもよい。即ち、標示構造は、反射部材が第一の周期で繰り返し配置されている第一繰り返し構造部と、反射部材が第一の周期とは異なる第二の周期で繰り返し配置されている第二繰り返し構造部とを有していてもよい。反射部材が異なる周期で配置された第一繰り返し構造部および第二繰り返し構造部を有する場合、各繰り返し構造部がそれぞれの周期に応じたミリ波または準ミリ波を反射するため、広い波長帯域のミリ波または準ミリ波に対して高い反射率を得ることができる。
【0039】
更に、上述した例では、各繰り返し構造部内の反射部材が、同一の長さおよび幅を有する線状部材であったが、繰り返し構造部内の反射部材は、例えば
図5~7に示すような形状であってもよい。
【0040】
ここで、
図5に示す標示構造の繰り返し構造部10Kは、設置面Sとは反射率が異なる材料からなり、且つ、互いに長さが異なる直線状の反射部材1,1Cが、設置面S上に上述した所定の間隔で交互に配置されてなる。具体的には、反射部材1,1Cは、互いに平行に、且つ、長さ方向中央が同一直線上に位置するように、一定の周期で繰り返し配置されている。なお、各反射部材1,1Cは、繰り返し方向(
図5では左右方向)に直交する方向(
図5では上下方向)に延在している。そして、長さが異なる反射部材が交互に配置されている場合、ミリ波レーダーや準ミリ波レーダーを用いてセンシングを行った際の反射波の受信強度を更に高めることができる。
なお、反射波の受信強度を高める観点からは、反射部材1と反射部材1Cとは等間隔で配置することが好ましい。また、同様の理由により、反射部材1の長さは、ミリ波または準ミリ波の波長の半分よりも長く、反射部材1Cの長さは、ミリ波または準ミリ波の波長の半分よりも短いことが好ましい。
【0041】
また、
図6に示す標示構造の繰り返し構造部10Lは、設置面Sとは反射率が異なる材料からなるドット状の反射部材1Dが、設置面S上に上述した所定の間隔で配置されてなる。具体的には、反射部材1Dは、
図6では上下方向および左右方向の双方に、一定の周期で繰り返し配置されている。そして、ドット状の反射部材1Dが一定の周期で配置されている場合、ミリ波または準ミリ波を複数の方向に対して良好に反射することができる。
【0042】
更に、
図7に示す標示構造の繰り返し構造部10Mは、設置面Sとは反射率が異なる材料からなる直線状の反射部材1Eが上述した所定の間隔で繰り返し配置されてなる。具体的には、繰り返し構造部10Mでは、
図7では上下方向(繰り返し方向(
図7では左右方向)に直交する方向)に並置された4つの反射部材1E(第1の反射部材列)と、
図7では上下方向に並置された3つの反射部材1E(第2の反射部材列)とが、交互に、一定の周期で繰り返し配置されている。なお、
図7の上下方向において、第2の反射部材列を構成する各反射部材1Eは、第1の反射部材列を構成する反射部材1Eの間に位置している。また、反射部材1Eは、
図7では左右方向(繰り返し方向)に沿う方向に延在している。そして、
図7に示す標示構造の繰り返し構造部10Mによれば、左右方向に振動する偏波に対して、高い反射率を得ることができる。
【0043】
更に、上述した例では、各反射部材が独立して存在している場合について示したが、繰り返し構造部内の反射部材は、例えば
図8に示すように交差していてもよい。
【0044】
ここで、
図8に示す標示構造では、設置面Sとは反射率が異なる材料からなる直線状の反射部材1を
図8では左右方向に繰り返し配置してなる繰り返し構造部10Nの反射部材1と、設置面Sとは反射率が異なる材料からなる直線状の反射部材1を
図8では上下方向に繰り返し配置してなる繰り返し構造部10Pの反射部材1とが格子状に交差している。即ち、
図8に示す標示構造は、反射部材1の繰り返し方向が異なる複数の(
図8では2つの)繰り返し構造部10N,10Pを有している。そして、標示構造が有する複数の繰り返し構造部間で反射部材の繰り返し方向が異なり、且つ、反射部材同士が交差して格子状になっている場合、ミリ波または準ミリ波を複数の方向(図示例では2方向)に対して良好に反射することができる。
【0045】
<カバー層>
そして、本発明の標示構造において、繰り返し構造部は、ミリ波または準ミリ波に対して透過性を有するカバー層で覆われていてもよい。
【0046】
具体的には、
図9に反射部材1の繰り返し方向に沿う断面の構造を示すように、反射部材1を繰り返し配置してなる繰り返し構造部は、カバー層3で覆われていてもよい。なお、
図9では、標示構造を付与する構造物の表面Sの上に設けられた下塗り層2上に反射部材1が設けられている場合を示しているが、本発明は
図9に示す形態に限定されるものではない。
【0047】
ここで、カバー層としては、特に限定されることなく、例えば、接着層を有するシートや、合成樹脂、顔料、体質材および可塑剤を含む塗料からなる層などが挙げられる。
中でも、カバー層は、繰り返し構造部を可視光および赤外光の少なくとも一方に対して隠蔽する層であることが好ましい。繰り返し構造部を可視光および赤外光の少なくとも一方に対して隠蔽すれば、運転者、並びに、自動車に搭載された他のセンサ(例えば、可視光カメラ、赤外線カメラ、赤外光のレーザーレーダー等)に誤認識を与えることを防ぐことができる。なお、繰り返し構造部を可視光および赤外光の少なくとも一方に対して隠蔽する層は、染料、顔料または光散乱性を有する材料を含有させることで形成することができる。
また、カバー層は、可視光および赤外光の少なくとも一方を吸収する層であることが好ましい。可視光および赤外光の少なくとも一方を吸収すれば、運転者、並びに、自動車に搭載された他のセンサ(例えば、可視光カメラ、赤外線カメラ、赤外光のレーザーレーダー等)に誤認識を与えることを防ぐことができる。なお、可視光および赤外光の少なくとも一方を吸収する層は、染料または顔料を含有させることで形成することができる。
【0048】
<構造物>
そして、上述した標示構造を設ける構造物としては、特に限定されることなく、例えば、走行路の区画線や停止線等の路面標示;縁石、遮断機、防護柵(ガードレール、ガードパイプ等)、ラバーポール、距離標、照明灯、電柱、信号機、信号柱、道路標識および道路標識柱等の道路付属物;並びに、塀や外壁等の建造物;などが挙げられる。
【0049】
なお、これらの構造物に対してカバー層を有する標示構造を設ける場合、カバー層は、設置面よりも、可視光および赤外光の少なくとも一方の反射率が高いことが好ましい。カバー層の可視光および赤外光の少なくとも一方に対する反射率が設置面よりも高ければ、カバー層が可視光および/または赤外光に対する標示構造としての機能を兼ね備えることができ、運転者、並びに、可視光カメラ、赤外光カメラおよび赤外光のレーザーレーダー等でも検知が可能な冗長性の高い標示構造となる。
【0050】
また、標示構造をミリ波レーダーや準ミリ波レーダーなどのレーダーを用いたセンシングの対象として自動運転システムや運転支援システムに活用する場合には、標示構造は、反射部材の繰り返し方向が車両の走行方向と平行な繰り返し構造部を少なくとも一つ有することが好ましい。
【0051】
(路面標示)
ここで、上述した標示構造を用いた路面標示としては、例えば、
図10に車両の走行方向と平行な断面を示すような路面標示が挙げられる。
図10に示す路面標示は、路面20上に設けた下塗り層2の表面に反射部材1を車両の走行方向が繰り返し方向になるように繰り返し配置し、更に、カバー層となる白線4を下塗り層2および反射部材1の上に設けてなる。また、白線4の表層部には、白線4の視認性を高める観点から、ガラスビーズ5等の可視光の再帰反射材や赤外光反射材(図示せず)が設けられている。
【0052】
そして、この路面標示では、走行する車両からミリ波レーダーや準ミリ波レーダーなどのレーダーを用いてセンシングを行うことにより、強度の高い反射波を得ることができる。
【0053】
(道路付属物)
また、上述した標示構造を用いた道路付属物としては、特に限定されることなく、例えば、
図11に示すようなガードレール30、
図12に示すような縁石40、
図13に示すような電柱50が挙げられる。
【0054】
ここで、
図11に示すガードレール30は、反射部材の繰り返し方向が車両の走行方向と平行な繰り返し構造部10がビーム部分に設けられている。
そして、このガードレール30では、走行する車両からミリ波レーダーや準ミリ波レーダーなどのレーダーを用いてセンシングを行うことにより、強度の高い反射波を得ることができる。
【0055】
また、
図12に示す縁石40は、反射部材の繰り返し方向が車両の走行方向と平行な繰り返し構造部10が表面および側面に設けられている。
そして、この縁石40では、走行する車両からミリ波レーダーや準ミリ波レーダーなどのレーダーを用いてセンシングを行うことにより、強度の高い反射波を得ることができる。
【0056】
更に、
図13に示す電柱50は、反射部材の繰り返し方向が車両の走行方向と平行な繰り返し構造部10が周方向に沿って表面に設けられている。
そして、この電柱50では、走行する車両からミリ波レーダーや準ミリ波レーダーなどのレーダーを用いてセンシングを行うことにより、強度の高い反射波を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の標示構造によれば、ミリ波または準ミリ波を用いたレーダーでセンシングを行った際に反射波の受信強度を高めることができる。
また、本発明によれば、ミリ波または準ミリ波を用いたレーダーで良好にセンシングし得る路面標示、道路付属物および建造物を提供することができる。
【符号の説明】
【0058】
1,1A,1B,1C,1D,1E 反射部材
2 下塗り層
3 カバー層
4 白線
5 ガラスビーズ
10,10A,10B,10C,10D,10E,10F,10G,10H,10I,10J,10K,10L,10M,10N,10P 繰り返し構造部
20 路面
30 ガードレール
40 縁石
50 電柱
S 設置面