(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】導電性粘着シート及び携帯電子機器
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20231011BHJP
C09J 9/02 20060101ALI20231011BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20231011BHJP
C09J 133/00 20060101ALI20231011BHJP
H01B 1/22 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J9/02
C09J201/00
C09J133/00
H01B1/22 D
(21)【出願番号】P 2021124020
(22)【出願日】2021-07-29
(62)【分割の表示】P 2017117730の分割
【原出願日】2017-06-15
【審査請求日】2021-07-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】山崎 優
(72)【発明者】
【氏名】山川 大輔
(72)【発明者】
【氏名】今井 克明
(72)【発明者】
【氏名】山上 晃
【審査官】高崎 久子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/170371(WO,A1)
【文献】特開2015-010109(JP,A)
【文献】国際公開第2015/076174(WO,A1)
【文献】特開2013-245234(JP,A)
【文献】特開2015-232614(JP,A)
【文献】国際公開第2016/208716(WO,A1)
【文献】特開2005-183883(JP,A)
【文献】特開昭63-126299(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J
B32B
H01B1/02-1/24
H05K9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性基材と、当該導電性基材の両面に設けられた2層の導電性粘着剤層とを有する総厚さが50μm以下の導電性粘着シートであり、
前記導電性粘着剤層の各層中には少なくとも1種の導電性粒子が
0.1質量%~10質量%含有され、
前記導電性粒子の粒径d50が12μm~30μmであり、
前記導電性粘着剤層の各層の厚さがそれぞれ1μm~12μmであ
り、
前記導電性粒子の粒子径d50が当該粒子の含有する前記導電性粘着剤層の厚さに対して100%~500%である導電性粘着シート。
【請求項2】
前記導電性粒子の形状が数珠状である請求項1に記載の導電性粘着シート。
【請求項3】
前記導電性基材が金属基材である請求項1
又は2に記載の導電性粘着シート。
【請求項4】
前記導電性粘着剤層が、アクリル系重合体を含有するアクリル系粘着剤組成物を用いて形成される粘着剤層である請求項1~
3のいずれか1項に記載の導電性粘着シート。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか1項に記載の導電性粘着シートを備えたことを特徴とする、携帯電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性基材と導電性粒子を含有する導電性粘着剤層とを有する導電性粘着シート及びそれを備えた携帯電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
導電性粘着シートは、その取扱いの容易さから、電気・電子機器等から輻射する不要な漏洩電磁波のシールド用、電気・電子機器から発生する有害な空間電磁波のシールド用、静電気帯電防止の接地用などに用いられている。近年は、前記電気・電子機器の小型化、薄型化に伴って、これらに用いられる導電性粘着シートにも薄膜化が求められている。
【0003】
好適な導電性と接着性とを備えた薄型の導電性粘着シートとしては、導電性基材上に、導電性フィラーを粘着性物質中に分散させた導電性粘着剤からなる粘着剤層を有する粘着シートが知られている(特許文献1及び2参照。)。
【0004】
しかし、近年の電気・電子機器のさらなる小型化及び薄型化に伴い、前記導電性粘着シートにもさらなる薄型化が求められてきている。また、導電性粘着シートの密着性が経時で低下し、導電性が低下するという問題もあった。しかしながら、優れた導電性および経時安定性と接着性とを備え、かつ、薄型の導電性粘着シートは、未だ見出されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-263030号公報
【文献】特開2009-79127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、薄型であっても良好な接着性、導電性を有し、導電性が経時で低下し難くい導電性粘着シート及びそれを備えた携帯電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、粘着シートの総厚さ、導電性粘着剤層中の導電性粒子の含有量、及び導電性粘着剤層の厚さを特定の範囲で組み合わせることによって上記課題を解決できることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、導電性基材と、当該導電性基材の両面に設けられた2層の導電性粘着剤層とを有する総厚さが50μm以下の導電性粘着シートであり、前記導電性粘着剤層の各層中には少なくとも1種の導電性粒子が0.01質量%~10質量%含有され、前記導電性粒子の粒径d50が12μm~30μmであり、前記導電性粘着剤層の各層の厚さがそれぞれ1μm~12μmである導電性粘着シートに関するものである。さらに、本発明は、前記導電性粘着シートを備えた携帯電子機器に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の導電性粘着シートは、極薄型でありながら、被着体への良好な接着性と導電性とを有しているため、導電性の経時安定性を有し、電気・電子機器等に用いる電磁波のシールド用途、電気・電子機器より発生する有害な空間電磁波のシールド用途、静電気帯電防止の接地固定用途で有用である。特に、薄型化が進み、筐体内での容積制限が厳しい携帯電子機器用途に好適に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の導電性粘着シートの好適な例である。
【
図2】本発明の導電性粘着シートの好適な例である。
【
図3】本発明の導電性粘着シートに好適に用いられる数珠状導電性粒子の電子顕微鏡写真の図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の導電性粘着シートは、導電性基材と1層又は2種以上の導電性粘着剤層とを有する総厚さが50μm以下の導電性粘着シートであり、前記導電性粘着剤層の各層中には少なくとも1種の導電性粒子が0.01質量%~10質量%含有しており、前記導電性粘着剤層の各層の厚さがそれぞれ1μm~12μmである導電性粘着シートである。
【0012】
以下に、本発明の導電性粘着シートを、その構成要素に基づいて、更に詳しく説明する。なお、本発明における「シート」とは、少なくとも一層の導電性粘着剤を用いて形成される薄型の粘着剤層を導電性基材上、あるいは剥離シート上に設けた形態を意味し、例えば、毎葉、ロール状、あるいは薄板状、帯状(テープ状)等の製品形態すべてを含む。
【0013】
(導電性粘着剤層)
本発明の導電性粘着シートは1層又は2層以上の導電性粘着剤層を有する。導電性粘着剤層は、特定の導電性粒子と粘着成分とを含有する。導電性粘着剤層の各層の厚さはそれぞれ1μm~12μmであるが、2.5μm~10μmが好ましく、4μm~8μmが好ましい。前記導電性粘着剤層は、前記した薄型であっても、優れた導電性と優れた接着性とを両立することができる。
【0014】
本発明の導電性薄型粘着シートは、上記したような非常に薄型であっても、優れた導電性と優れた接着性と導電性の経時安定性を両立することができる。
前記導電性粘着剤層は、前記導電性粒子と粘着成分とを含有する粘着剤組成物を用いることによって形成することができる。
【0015】
(導電性粒子)
前記導電性粘着剤層は少なくとも1種の導電性粒子を含有する。前記導電性粒子は、その粒子径d50が10μm~30μmの範囲であるものを使用する。これにより、優れた導電性と接着性と導電性の経時安定性とを両立した導電性薄型粘着シートを得ることができる。
【0016】
前記導電性粒子の粒子径d50は、12μm~30μmが好ましく、10μm~26μmの範囲であることがより好ましい。
なお、前記粒子径d50は粒度分布における50%累積値を指し、レーザー解析・散乱法により測定される値である。測定装置としては日機装社製マイクロトラックMT3000II、島津製作所製レーザー回折式粒度分布測定器SALD-3000等があげられる。
前記範囲の粒子径d50に調整する方法としては、例えば導電性粒子をジェットミルで粉砕する方法や篩等による篩分け法が挙げられる。
【0017】
前記導電性粒子の粒子径d50は、当該粒子の含有する前記導電性粘着剤層の厚さに対して100%~500%であることが好ましく、150%~470%であることが好ましく、さらには200%~450%であることが、より一層優れた導電性と接着性と導電性の経時安定性を両立するうえでさらに好ましい。
【0018】
前記導電性粒子としては、金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム等の金属粉粒子、カーボン、グラファイト等の導電性樹脂粒子、前記樹脂粒子や中実ガラスビーズや中空ガラスビーズの表面に金属被覆を有する粒子等を使用することができる。なかでも、前記導電性粒子としては、ニッケル粉粒子や銅粉粒子や銀粉粒子を使用することが、より一層優れた導電性と接着性とを両立するうえでさらに好ましく、カーボニル法で製造される粒子表面に多数の針状形状を有する表面針状形状のニッケル粒子や、当該表面針状粒子を平滑化(処理(粉砕処理)して球状粒子としたものや、超高圧旋回水アトマイズ法で製造される銅粉や銀粉等を使用することが特に好ましい。
【0019】
前記導電性粒子の形状としては、球状、スパイク状、フレーク状、
図3で示すような多数の導電性粒子間で結合等を形成し連なった数珠状などが上げられるが、なかでも数珠状が優れた導電性と接着性と導電性の経時安定性の両立という観点で好ましい。
【0020】
前記導電性粒子は、その粒子が含有する導電性粘着剤層の全質量に対して、0.01質量%~10質量%含有するが、0.1質量%~8質量%含まれることがより好ましく、0.5質量%~5質量%含まれることがより一層優れた導電性及び接着性、導電性の経時安定性を備えた導電性薄型粘着シートを得るうえで特に好ましい。
【0021】
(粘着成分)
前記導電性粘着剤層の形成に使用する粘着剤組成物としては、前記導電性粒子とともに粘着剤成分を含有するものを使用することができる。
【0022】
前記粘着剤組成物としては、例えば(メタ)アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤組成物、合成ゴム系粘着剤組成物、天然ゴム系粘着剤組成物、シリコーン系粘着剤組成物等のうち、導電性粒子を含有するものを使用することができ、クリル系重合体をベースポリマーとし、前記導電性微粒子と、必要に応じて粘着付与樹脂や架橋剤等の添加剤を含有するアクリル系粘着剤組成物を使用することが、耐候性や耐熱性に優れた導電性粘着剤層を形成するうえで好ましい。
【0023】
前記アクリル系重合体としては、例えば炭素原子数1~14のアルキル基を有する(メタ)アクリレートモノマーを含有する単量体成分を重合して得られるアクリル系重合体を好適に使用することができる。
【0024】
炭素原子数1~14のアルキル基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等を1種または2種以上組み合わせ使用することができる。
【0025】
なかでも、前記炭素原子数1~14のアルキル基を有する(メタ)アクリレートとしては、炭素原子数が4~12のアルキル基を有する(メタ)アクリレートを使用することが好ましく、炭素原子数が4~9の直鎖または分岐構造であるアルキル基を有する(メタ)アクリレートを使用することがより好ましく、n-ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレートを単独または組み合わせ使用することがさらに好ましい。
【0026】
前記アクリル系重合体の製造に使用する前記単量体成分の全量に対する前記炭素原子数1~14のアルキル基を有する(メタ)アクリレートの含有量は、80質量%~98.5質量%の範囲であることが好ましく、90質量%~98.5質量%の範囲であることがより好ましい。
【0027】
前記アクリル系重合体の製造に使用可能な単量体成分としては、前記したもののほかに、必要に応じて高極性ビニル単量体を使用することが好ましい。
【0028】
前記高極性ビニル単量体としては、カルボキシル基を有するビニル単量体、水酸基を有するビニル単量体、アミド基を有するビニル単量体等を単独または2種以上組み合わせ使用することができる。なかでも、前記高極性ビニル単量体としては、カルボキシル基を有するビニル単量体を使用することが、導電性粘着剤層の接着性を好適な範囲に調整しやすいため好ましい。
【0029】
カルボキシル基を有するビニル単量体としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、(メタ)アクリル酸2量体、クロトン酸、エチレンオキサイド変性琥珀酸アクリレート等を使用でき、なかでもアクリル酸を使用することが好ましい。
【0030】
カルボキシル基を有するビニル単量体を使用する場合、その含有量は、アクリル系重合体の製造に使用する単量体成分の全量に対して0.2質量%~15質量%であることが好ましく、0.4質量%~10質量%であることがより好ましく、0.5質量%~6質量%であることが、粘着剤の接着性を好適な範囲に調整しやすいためさらに好ましい。
【0031】
水酸基を有するビニル単量体としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等を使用することができる。
【0032】
アミド基を有するビニル単量体としては、例えばN-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、アクリロイルモルホリン、アクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド等を使用することができる。
【0033】
その他の高極性ビニル単量体としては、例えば酢酸ビニル、エチレンオキサイド変性琥珀酸アクリレート、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルフォン酸等のスルホン酸基含有モノマー、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の末端アルコキシ変性(メタ)アクリレート等を使用することができる。
【0034】
前記高極性ビニル単量体の含有量は、アクリル系重合体の製造に使用する単量体成分の全量に対して0.2質量%~15質量%であることが好ましく、0.4質量%~10質量%であることがより好ましく、0.5質量%~6質量%であることが、粘着剤の接着性を好適な範囲に調整しやすいためさらに好ましい。
【0035】
前記アクリル系重合体は、前記した単量体成分を、溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法など公知の方法で重合させることによって製造することができる。なかでも、前記溶液重合法を採用することが、その生産コストや生産性を向上するうえで好ましい。
【0036】
前記方法で得られたアクリル系重合体としては、30万~150万の範囲の重量平均分子量を有するものを使用することが好ましく、50万~120万の範囲の重量平均分子量を有するものを使用することがより好ましい。
【0037】
前記導電性粘着剤層の形成に使用可能な粘着剤組成物としては、必要に応じて各種添加剤を含有するものを使用することができる。
【0038】
前記添加剤としては、例えば導電性粘着剤層の粘着力をより一層向上させるために、粘着付与樹脂を含有するものを使用することができる。
【0039】
前記粘着付与樹脂としては、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、脂肪族(C5系)や芳香族(C9系)などの石油樹脂、スチレン系樹脂フェノール系樹脂、キシレン系樹脂、メタクリル系樹脂等を使用することができ、ロジン系樹脂を使用することが好ましく、重合ロジン系樹脂を使用することがより好ましい。
【0040】
前記粘着付与樹脂は、前記アクリル系重合体100質量部に対し、10質量部~50質量部の範囲で使用することが好ましい。
【0041】
前記添加剤としては、前記したもののほかに、必要に応じて分散剤、沈降防止剤、可塑剤、軟化剤、金属不活性剤、酸化防止剤、顔料、染料等を使用することができる。
【0042】
前記分散剤や沈降防止剤は、前記粘着剤組成物中に含まれる導電性粒子の経時的な沈降を防止するうえで使用することが好ましい。
【0043】
前記沈降防止剤としては、例えば、脂肪酸アミド樹脂、ウレタン樹脂等を使用することが好ましい。
【0044】
前記沈降防止剤は、粘着剤成分の固形分に対して0.5質量%~10質量%の範囲で使用することが好ましく、1質量%~6質量%の範囲で使用することがより好ましく、1.5質量%~3質量%の範囲で使用することがさらに好ましい。
【0045】
前記導電性粘着剤層の形成に使用可能な粘着剤組成物としては、必要に応じて架橋剤を含有するものを使用することができる。
【0046】
前記架橋剤としては、例えばイソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、キレート系架橋剤、アジリジン系架橋剤等を使用することができる。
【0047】
前記架橋剤の種類及び使用量は、前記アクリル系重合体等の粘着成分が有する官能基の種類及び官能基量に応じて適宜選択することが好ましい。
【0048】
前記架橋剤は、導電性粘着剤層のゲル分率が25質量%~60質量%の範囲となるよう適宜調整し使用することができる。
【0049】
(導電性粘着剤層のゲル分率)
前記導電性粘着剤層は、より一層優れた凝集力を発現するうえで、3次元架橋構造を形成するのが好ましい。架橋構造形成の指標としては、前記導電性粘着剤層を、例えば(メタ)アクリル系粘着剤の良溶媒であるトルエンに24時間浸漬した際の不溶分を表すゲル分率が挙げられる。前記導電性粘着剤層のゲル分率は、10質量%~40質量%であることが好ましく、15質量%~30質量%であることが、せん断方向の凝集力をより一層向上するとともに耐剥がれ性を向上できるためより好ましい。
【0050】
ゲル分率は、以下の式で算出する。
ゲル分率(質量%)={(トルエンに浸漬した後の導電性粘着剤層の質量)/(トルエンに浸漬する前の導電性粘着剤層の質量)}×100
導電性粘着剤層の質量=(導電性薄型粘着シートの質量)-(導電性基材の質量)
【0051】
前記導電性粘着剤層の形成に使用可能な粘着剤組成物は、例えば前記アクリル系重合体を含有する組成物と、前記導電性粒子とを混合することによって製造することができる。
【0052】
前記混合方法としては、例えば前記アクリル系重合体等を含有する組成物と、導電性粒子と、必要に応じて添加剤等とを、例えば分散攪拌機等を用いて混合し分散させる方法が挙げられる。前記分散攪拌機としては、井上製作所製ディゾルバー、バタフライミキサー、BDM2軸ミキサー、プラネタリーミキサーが挙げられ、金属粉等の導電性粒子を増粘させることなく均一に分散しやすいディゾルバーやバタフライミキサーを使用することが好ましい。
【0053】
前記導電性粘着剤層の形成に使用可能な粘着剤組成物としては、100mPa・s~8000mPa・sの範囲の粘度を有するものを使用することが好ましく、200mPa・s~4000mPa・sの範囲の粘度を有するものを使用することがより好ましく、200Pa・s~1000mPa・sの範囲の粘度を有するものを使用することが、導電性粒子の経時的な沈降を防止し、かつ、粘着剤組成物を塗工する際に塗工スジが発生することを防止するうえで好ましい。
【0054】
前記粘着剤組成物の粘度を前記範囲に調整する方法としては、溶剤の種類や使用量、アクリル系重合体等の粘着性物質の種類やその分子量等を調整する方法が挙げられ、溶剤の種類や使用量を調整する方法が好ましい。
【0055】
前記粘着剤組成物の不揮発分としては、特に限定されるものではないが、10質量%~35質量%の範囲であることが好ましく、10質量%~30質量%の範囲であることがより好ましく、10質量%~20質量%の範囲であることがさらに好ましい。
【0056】
(導電性基材)
本発明の導電性薄型粘着シートの製造に使用する導電性基材としては、金属基材やグラファイト基材等があげられる。
【0057】
前記金属基材としては、例えば金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄、錫やこれらの合金等からなる基材を使用することができ、アルミニウムや銅からなる基材を使用することが、導電性基材の加工性に優れ、かつ比較的低コストであるため好ましい。
前記銅からなる基材としては、例えば電解銅からなる基材、圧延銅からなる基材等を使用することができる。
【0058】
前記電解銅からなる基材としては、福田金属箔粉工業株式会社製のCF-T9FZ-HS-12(厚さ12μm)、CF-T8G-DK-18(厚さ18μm)、CF-T8G-DK-35(厚さ35μm)等を使用することができる。
【0059】
前記圧延銅箔としては、日本製箔株式会社製のTCU-H-8-RT(厚さ8μm)やJX日鉱日石金属株式会社製のTPC(厚さ6μm)等を使用することができる。
【0060】
導電性基材としては、厚さ1μm~30μmであることが好ましく、厚さ3μm~25μmであることがより好ましく、厚さ5μ~20μmである金属箔等を使用することが、薄型で、かつ、加工性に優れた導電性薄型粘着シートを得るうえでさらに好ましい。
【0061】
(剥離ライナー)
本発明の導電性薄型粘着シートを構成する導電性粘着剤層の表面には、必要に応じて剥離ライナーが積層されていてもよい。
【0062】
前記剥離ライナーとしては、特に限定されず、例えばクラフト紙、グラシン紙、上質紙などの紙類、ポリエチレン、ポリプロピレン(OPP、CPP)、ポリエチレンテレフタレートなどの樹脂フィルム、前記紙類と樹脂フィルムとが積層されたラミネート紙、前記紙類の表面がクレーやポリビニルアルコール等によって目止め処理されたもの、また、前記目止め処理された片面または両面がシリコン系樹脂等によって剥離処理されたもの等の従来公知のものを用いることができる。
【0063】
本発明の導電性薄型粘着シートは、例えば前記導電性基材の片面または両面に、導電性粒子を含有する前記粘着剤組成物を塗工し、乾燥することによって製造することができる(いわゆる、直塗り法)。
【0064】
また、本発明の導電性薄型粘着シートは、予め離型ライナーの表面に前記導電性粒子を含有する前記粘着剤組成物を塗工し、乾燥することによって、導電性粘着剤層を形成し、次に、前記導電性粘着剤層を、前記導電性基材の片面または両面に転写する方法によって製造することもできる(いわゆる、転写法)。
【0065】
前記いずれの方法で製造した導電性薄型粘着シートも、その後、20℃~50℃の範囲で48時間以上養生することが、前記導電性粘着剤層の架橋反応を進行させるうえで好ましい。
【0066】
前記導電性粘着剤組成物を、前記剥離ライナーまたは導電性基材に塗工する方法としては、例えばコンマコーターを用いて塗工する方法、グラビアコーターを用いて塗工する方法、リップコーターを用いて塗工する方法等が挙げられる。なかでも、前記塗工方法としては、グラビアコーターを用いて塗工する方法またはリップコーターを用いて塗工する方法を採用することが好ましく、マイクログラビアコーターで塗工する方法を採用することが、導電性粘着剤層の厚さを精度よく形成することができ、その結果、より一層優れた導電性と接着性とを両立するうえでより好ましい。
【0067】
本発明の導電性薄型粘着シートの好適な構成の例を
図1及び
図2に示す。
図1は、導電性基材1上に導電性粘着剤層2を積層した片面粘着シートである。また、
図2は、導電性基材1の両面に導電性粘着剤層2を積層した両面粘着シートである。これら構成においては、粘着剤層2の表面に、剥離ライナーが設けられた構成を好ましく使用できる。
【実施例】
【0068】
以下に実施例について具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0069】
(アクリル系粘着剤組成物1の調製)
冷却管、撹拌機、温度計及び滴下漏斗を備えた反応容器にn-ブチルアクリレート75.0質量部、2-エチルヘキシルアクリレート19.0質量部、酢酸ビニル3.9質量部、アクリル酸2.0質量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート0.1質量部、及び、重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチルニトリル0.1質量部を、酢酸エチル100質量部に溶解し、窒素置換した後、80℃で12時間重合することによって、重量平均分子量60万のアクリル系重合体の酢酸エチル溶液を得た。
【0070】
前記アクリル系重合体の酢酸エチル溶液の固形分100質量部に対し、ペンセルD-135(荒川化学工業株式会社製、重合ロジンペンタエリスリトールエステル、軟化点135℃)10質量部、スーパーエステルA-100(荒川化学工業株式会社製、不均化ロジングリセリンエステル、軟化点100℃)10質量部を配合し、酢酸エチルを用いて、アクリル系重合体の固形分濃度を40質量%に調整することによってアクリル系粘着剤組成物1を得た。
【0071】
[導電性粘着剤組成物の調製]
(導電性粘着剤組成物Aの調製)
前記アクリル系粘着剤組成物1 100質量部と、数珠状導電性粒子として福田金属箔粉工業社製ニッケル粉NI255T(d50:26.0μm)0.4質量部と、架橋剤としてバーノックNC40(DIC株式会社製のイソシアネート系架橋剤、固形分40質量%)2質量部と、希釈溶剤として酢酸エチルを70質量部とを、分散攪拌機を用いて10分混合することによって導電性粘着剤組成物Aを調製した。
【0072】
(導電性粘着剤組成物Bの調製)
前記アクリル系粘着剤組成物1 100質量部と、数珠状導電性粒子として福田金属箔粉工業社製ニッケル粉NI255T(d50:26.0μm)2.0質量部と、架橋剤としてバーノックNC40(DIC株式会社製のイソシアネート系架橋剤、固形分40質量%)2質量部と、希釈溶剤として酢酸エチルを70質量部とを、分散攪拌機を用いて10分混合することによって導電性粘着剤組成物Bを調製した。
【0073】
(導電性粘着剤組成物Cの調製)
前記アクリル系粘着剤組成物1 100質量部と、数珠状導電性粒子として福田金属箔粉工業社製ニッケル粉NI255T-280(d50:15.0μm)0.4質量部と、架橋剤としてバーノックNC40(DIC株式会社製のイソシアネート系架橋剤、固形分40質量%)2質量部と、希釈溶剤として酢酸エチルを70質量部とを、分散攪拌機を用いて10分混合することによって導電性粘着剤組成物Cを調製した。
【0074】
(導電性粘着剤組成物Dの調製)
前記アクリル系粘着剤組成物1 100質量部と、数珠状導電性粒子として福田金属箔粉工業社製ニッケル粉NI255T-350(d50:13.0μm)0.4質量部と、架橋剤としてバーノックNC40(DIC株式会社製のイソシアネート系架橋剤、固形分40質量%)2質量部と、希釈溶剤として酢酸エチルを70質量部とを、分散攪拌機を用いて10分混合することによって導電性粘着剤組成物Dを調製した。
【0075】
(導電性粘着剤組成物Eの調製)
前記アクリル系粘着剤組成物1 100質量部と、球状導電性粒子として福田金属箔粉工業社製ニッケル粉NI123(d50:12.0μm)4.0質量部と、架橋剤としてバーノックNC40(DIC株式会社製のイソシアネート系架橋剤、固形分40質量%)2質量部とを、希釈溶剤として酢酸エチルを70質量部とを、分散攪拌機を用いて10分混合することによって導電性粘着剤組成物Eを調製した。
【0076】
(導電性粘着剤組成物Fの調製)
前記アクリル系粘着剤組成物1 100質量部と、福田金属箔粉工業社製ニッケル粉NI255T(d50:26.0μm)6.0質量部と、架橋剤としてバーノックNC40(DIC株式会社製のイソシアネート系架橋剤、固形分40質量%)2質量部と、希釈溶剤として酢酸エチルを70質量部とを、分散攪拌機を用いて10分混合することによって導電性粘着剤組成物Eを調製した。
【0077】
(導電性粘着剤組成物Gの調製)
前記アクリル系粘着剤組成物1 100質量部と、球状導電性粒子として福田金属箔粉工業社製ニッケル粉NI123(d50:12.0μm)6.0質量部と、架橋剤としてバーノックNC40(DIC株式会社製のイソシアネート系架橋剤、固形分40質量%)2質量部と、希釈溶剤として酢酸エチルを70質量部とを、分散攪拌機を用いて10分混合することによって導電性粘着剤組成物Gを調製した。
【0078】
(導電性粘着剤組成物Hの調製)
前記アクリル系粘着剤組成物1 100質量部と、福田金属箔粉工業社製ニッケル粉NI255T(d50:26.0μm)0.02質量部と、架橋剤としてバーノックNC40(DIC株式会社製のイソシアネート系架橋剤、固形分40質量%)2質量部と、希釈溶剤として酢酸エチルを70質量部とを、分散攪拌機を用いて10分混合することによって導電性粘着剤組成物Hを調製した。
【0079】
(実施例1)
[導電性薄型粘着シートの作製]
導電性粘着剤組成物Aを、ニッパ株式会社製の剥離フィルム「PET38×1 A3」上に、乾燥後の導電性粘着剤層の厚さが6μmとなるようにコンマコーターを用いて塗工し、80℃の乾燥器中で2分間乾燥させた後、厚さ12μmの電解銅箔(福田金属箔粉工業株式会社製、CF-T9FZ-HS-12)の両面に貼り合わせたのち、40℃で48時間養生することによって導電性薄型粘着シートを得た。
【0080】
(実施例2)
導電性粘着剤組成物Aの代わりに導電性粘着剤組成物Bを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で導電性薄型粘着シートを得た。
【0081】
(実施例3)
導電性粘着剤組成物Aの代わりに導電性粘着剤組成物Cを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で導電性薄型粘着シートを得た。
【0082】
(実施例4)
導電性粘着剤組成物Aの代わりに導電性粘着剤組成物Dを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で導電性薄型粘着シートを得た。
【0083】
(実施例5)
乾燥後の導電性粘着剤層の厚さを10μmにしたこと以外は、実施例1と同様の方法で導電性薄型粘着シートを得た。
【0084】
(実施例6)
導電性粘着剤組成物Aの代わりに導電性粘着剤組成物Eを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で導電性薄型粘着シートを得た。
【0085】
(実施例7)
貼り合わせる電解銅箔を福田金属箔粉工業株式会社製CF-T9FZ-HS-12の代わりに福田金属箔粉工業株式会社製CF-T8G-DK-18(厚さ18μm)にし、貼り合わせる面を片面のみに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で導電性薄型粘着シートを得た。
【0086】
(比較例1)
導電性粘着剤組成物Aの代わりに導電性粘着剤組成物Fを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で導電性薄型粘着シートを得た。
【0088】
(比較例3)
導電性粘着剤組成物Aの代わりに導電性粘着剤組成物Gを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で導電性薄型粘着シートを得た。
【0089】
(比較例4)
導電性粘着剤組成物Aの代わりに導電性粘着剤組成物Eを用い、乾燥後の導電性粘着剤層の厚さを15μmにしたこと以外は、実施例1と同様の方法で導電性薄型粘着シートを得た。
【0090】
(比較例5)
導電性粘着剤組成物Aの代わりに導電性粘着剤組成物Hを用い、貼り合わせる銅箔をJX日鉱日石金属株式会社製のTPC(厚さ6μm)以外は、実施例1と同様の方法で導電性薄型粘着シートを得た。
【0091】
(比較例6)
乾燥後の導電性粘着剤層の厚さを0.5μmにしたこと以外は、実施例1と同様の方法で導電性薄型粘着シートを得た。
【0092】
(評価)
実施例及び比較例で得た導電性粘着シートについて、その総厚さ、導電性、接着力を評価した。
【0093】
[導電性粘着シートの総厚さ]
厚さ計「TH-102」(テスター産業株式会社製)を用い、前記導電性粘着シートの総厚さを測定した。
【0094】
[粘着剤層の厚さ]
上記実施例及び比較例において導電性粘着シートを作製する際に使用した、前記離型ライナーの表面に形成された導電性粘着剤層の一部を抽出し、その片面をS25(ユニチカ株式会社製、ポリエチレンテレフタレートフィルム、厚さ25μm)で裏打ちした試料を作製した。
【0095】
前記試料から離型ライナーを剥がし、その厚さを、厚さ計「TH-102」(テスター産業株式会社製)を用いて測定し、S25の厚さを減じた値を、導電性粘着剤層の厚さとした。
【0096】
[導電性の評価方法(抵抗値の測定)]
10mm幅×10mm幅の導電性粘着シートの一方の導電性粘着剤層からなる面に、縦10mm×横10mmの真鍮製電極を貼付した。
【0097】
前記導電性粘着シートの他方の面に縦7.5mm×横7.5mmの銅箔(厚さ35μm)を貼付した。
【0098】
23℃及び50%RHの環境下、前記真鍮製電極の上面から、面圧20Nの荷重をかけた状態で、真鍮製電極と銅箔とに端子を接続し、ミリオームメーター(株式会社エヌエフ回路設計ブロック製)を用いて10μAの電流を流し、その抵抗値を測定した。前記抵抗値が40mΩ以下である場合を、導電性に優れるものと評価した。また、30日経過後に、再度抵抗値を測定した。抵抗値が120mΩ以下である場合を、導電性の経時安定性に優れると評価した。
【0099】
(接着性の評価方法)
360番の耐水研磨紙を用いてヘアライン研磨処理したステンレス板(以下、「ステンレス板」)の表面に、20mm幅の導電性粘着シートを、23℃及び60%RHの環境下で2.0kgローラ1往復加圧することで貼付した。
【0100】
前記貼付物を常温で1時間放置した後、引っ張り試験機(テンシロンRTA-100、エーアンドディー社製)を用い、常温下、引張速度300mm/minで180度剥離接着力を測定した。なお、導電性粘着シートとして両面粘着シートを使用する場合、前記ステンレス板に貼付した面の反対側の導電性粘着剤層は、S25(ユニチカ株式会社製、ポリエチレンテレフタレートフィルム、厚さ25μm)で裏打ちした。
(接着力の評価基準)
◎:7N/20mm以上
○:5N/20mm以上、7N/20mm未満
×:4N/20mm未満
【0101】
【0102】
【符号の説明】
【0103】
1 導電性基材
2 導電性粘着剤層