(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】加工システム及び検査システム
(51)【国際特許分類】
B23K 26/60 20140101AFI20231011BHJP
B23K 26/03 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
B23K26/60
B23K26/03
(21)【出願番号】P 2021515373
(86)(22)【出願日】2019-04-24
(86)【国際出願番号】 JP2019017402
(87)【国際公開番号】W WO2020217338
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2022-03-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100104765
【氏名又は名称】江上 達夫
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 真路
【審査官】黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-530443(JP,A)
【文献】特開2005-030822(JP,A)
【文献】特開2003-294418(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0144255(US,A1)
【文献】国際公開第2018/197555(WO,A1)
【文献】特開2017-161354(JP,A)
【文献】特開2005-169397(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 - 26/70
G01B 11/00 - 11/30
G01N 21/00 - 21/01
G01N 21/17 - 21/61
G01N 21/95 - 21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空力特性を変更する構造が表面に形成された物体の前記表面からの光を受光する受光装置と、
前記構造の特徴に関する設計情報と、前記受光装置からの出力情報とを用いて、前記物体の前記表面に形成された前記構造の特徴を評価する評価装置と
、
前記物体に対して前記受光装置を移動させる第1移動装置と、
前記受光装置を前記第1移動装置と共に前記物体に対して移動させる第2移動装置と
を備える検査システム。
【請求項2】
前記構造は立体構造である
請求項1に記載の検査システム。
【請求項3】
前記構造の特徴は、前記構造の形状、サイズ及び配置のうち少なくとも一つを含む
請求項1又は2に記載の検査システム。
【請求項4】
前記設計情報は、前記構造の形状、サイズ及び配置のうち少なくとも一つを含む
請求項3に記載の検査システム。
【請求項5】
前記評価装置は、前記設計情報と前記出力情報とを比較する
請求項1から4のいずれか一項に記載の検査システム。
【請求項6】
前記受光装置は、前記表面を撮像する撮像装置を備える
請求項1から5のいずれか一項に記載の検査システム。
【請求項7】
前記評価装置は、前記物体の表面の特徴に関する情報と、前記撮像装置による撮像結果とを用いて前記構造の特徴を評価する
請求項6に記載の検査システム。
【請求項8】
前記受光装置は、前記表面で散乱された散乱光及び前記表面で回折された回折光のうちの少なくとも一方を検査光として受光する
請求項1から7のいずれか一項に記載の検査システム。
【請求項9】
前記評価装置からの出力に関する情報を表示する表示装置をさらに備える
請求項1から8のいずれか一項に記載の検査システム。
【請求項10】
前記物体の表面の前記構造は、前記物体の表面に沿った第1方向に延在し、且つ前記物体の表面において前記第1方向と交差する第2方向に周期的な構造を含む
請求項1から9のいずれか一項に記載の検査システム。
【請求項11】
前記第2移動装置は自走装置を含む
請求項1から10のいずれか一項に記載の検査システム。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の検査システムと、
物体の表面に加工光を照射して空力特性を変更する構造を前記表面に形成する光照射装置と
を備える加工システム。
【請求項13】
前記第1移動装置は、前記光照射装置を前記物体に対して移動させ、
前記第2移動装置は、前記光照射装置を前記第1移動装置と共に前記物体に対して移動させる
請求項12に記載の加工システム。
【請求項14】
前記受光装置と前記光照射装置とが取り付けられる取付部材を備え、
前記第1移動装置は、前記取付部材を移動させる
請求項13に記載の加工システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、加工光で物体を加工可能な加工システム及び物体を検査する検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
物体を加工可能な加工システムとして、特許文献1には、物体の表面に加工光を照射して構造を形成する加工システムが記載されている。この種の加工システムでは、物体を適切に加工することが要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
第1の態様によれば、加工光で物体を加工する加工システムにおいて、前記物体の表面上の被検査領域において異物検査を行う検査装置と、前記被検査領域に加工光を照射する照射装置とを備える加工システムが提供される。
【0005】
第2の態様によれば、加工光で物体を加工する加工システムにおいて、前記物体の表面上の被検査領域において前記物体の表面の欠陥検査を行う検査装置と、前記被検査領域に加工光を照射する照射装置とを備える加工システムが提供される。
【0006】
第3の態様によれば、加工光で物体を加工する加工システムにおいて、前記物体の表面上の少なくとも一部内の異物を除去する異物除去装置と、前記物体の表面上の少なくとも一部に加工光を照射する照射装置とを備える加工システムが提供される。
【0007】
第4の態様によれば、空力特性を変更する構造が表面に形成された物体の前記表面からの光を受光する受光装置と、前記構造の特徴に関する設計情報と、前記受光装置からの出力情報とを用いて、前記物体の前記表面に形成された前記構造の特徴を評価する評価装置とを備える検査システムが提供される。
【0008】
第5の態様によれば、加工光で物体を加工する加工システムにおいて、前記物体上の第1領域に加工光を照射する照射装置と、前記加工光が照射された前記物体上の前記第1領域の位置を計測する位置計測装置とを備え、前記照射装置は、前記位置計測装置による前記第1領域の位置計測結果を用いて、前記物体上の前記第1領域と異なる第2領域に加工光を照射する加工システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1実施形態の加工システムの全体構造を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図2(a)及び
図2(b)のそれぞれは、加工対象物の表面に形成された塗装膜の加工の様子を模式的に示す断面図である。
【
図3】
図3(a)は、第1実施形態の加工システムが備える光照射装置を模式的に示す断面図であり、
図3(b)及び
図3(c)のそれぞれは、光照射装置が備える光源系の構成を示す断面図である。
【
図4】
図4は、異物計測装置が備える撮像装置を示す断面図である。
【
図5】
図5は、異物計測装置が備える受光装置を示す断面図である。
【
図6】
図6(a)は、第1実施形態の加工装置が形成するリブレット構造の断面を示す断面図であり、
図6(b)は、第1実施形態の加工装置が形成するリブレット構造を示す斜視図である。
【
図7】
図7(a)及び
図7(b)のそれぞれは、リブレット構造が形成される加工対象物の一例である航空機を示す正面図であり、
図7(c)は、リブレット構造が形成される加工対象物の一例である航空機を示す側面図である。
【
図8】
図8は、塗装膜の表面に設定される複数の加工ショット領域を示す平面図である。
【
図9】
図9は、リブレット構造を形成するための加工動作の一工程を行う加工装置を示す断面図である。
【
図10】
図10(a)は、リブレット構造を形成するための加工動作の一工程を行う加工装置を示す断面図であり、
図10(b)は、
図10(a)に示す加工動作の一工程が行われている塗装膜の表面を示す平面図である。
【
図11】
図11は、スキャン動作とステップ動作とが繰り返される期間中の加工光の走査軌跡(つまり、目標照射領域の移動軌跡)を示す平面図である。
【
図12】
図12は、リブレット構造を形成するための加工動作の一工程を行う加工装置を示す断面図である。
【
図13】
図13(a)は、リブレット構造を形成するための加工動作の一工程を行う加工装置を示す断面図であり、
図13(b)は、
図13(a)に示す加工動作の一工程が行われている塗装膜の表面を示す平面図である。
【
図14】
図14は、リブレット構造を形成するための加工動作の一工程を行う加工装置を示す断面図である。
【
図15】
図15は、リブレット構造を形成するための加工動作の一工程を行う加工装置を示す断面図である。
【
図16】
図16は、リブレット構造を形成するための加工動作の一工程を行う加工装置を示す断面図である。
【
図17】
図17は、リブレット構造を形成するための加工動作の一工程を行う加工装置を示す断面図である。
【
図18】
図18は、リブレット構造を形成するための加工動作の一工程を行う加工装置を示す断面図である。
【
図19】
図19は、リブレット構造を形成するための加工動作の一工程を行う加工装置を示す断面図である。
【
図20】
図20は、塗装膜上に設定される二つの加工ショット領域を示す平面図である。
【
図21】
図21は、ある加工ショット領域に対して行われる加工動作による目標照射領域の移動軌跡を示す平面図である。
【
図22】
図22は、第2実施形態の加工システムの全体構造を模式的に示す断面図である。
【
図23】
図23は、塗装膜上に設定される三つの加工ショット領域を示す平面図である。
【
図24】
図24は、ある加工ショット領域に対して行われる加工動作による目標照射領域の移動軌跡を示す平面図である。
【
図25】
図25は、第3実施形態の加工システムの全体構造を模式的に示す断面図である。
【
図26】
図26は、塗装膜の表面上における加工済み領域を示す平面図である。
【
図27】
図27は、八つの加工ショット領域が設定されている塗装膜の表面を示す平面図である。
【
図29】
図29は、位置計測装置と光照射装置との位置関係の一例を示す平面図である。
【
図30】
図30は、複数の加工済み領域が形成されている塗装膜を示す平面図である。
【
図31】
図31は、第3計測動作を行うための位置計測装置を含む加工システムの構造を示す断面図である。
【
図32】
図32(a)は、リブレット構造を構成する凹状構造及び凸状構造が延びる方向に直交する方向に沿ってリブレット構造を走査する計測光を示す平面図であり、
図32(b)は、リブレット構造を構成する凹状構造及び凸状構造が延びる方向に直交しないものの交差する方向に沿ってリブレット構造を走査する計測光を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、加工システム、検査システム、加工方法、検査方法、制御装置及びコンピュータプログラムの実施形態について説明する。以下では、加工光ELを用いて加工対象物Sの表面に形成された塗装膜SFを加工する加工動作を行う加工システムSYSを用いて、加工システム、検査システム、加工方法、検査方法、制御装置及びコンピュータプログラムの実施形態を説明する。但し、本発明が以下に説明する実施形態に限定されることはない。
【0011】
また、以下の説明では、互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸から定義されるXYZ直交座標系を用いて、加工システムSYSを構成する各種構成要素の位置関係について説明する。尚、以下の説明では、説明の便宜上、X軸方向及びY軸方向のそれぞれが水平方向(つまり、水平面内の所定方向)であり、Z軸方向が鉛直方向(つまり、水平面に直交する方向であり、実質的には上下方向)であるものとする。また、X軸、Y軸及びZ軸周りの回転方向(言い換えれば、傾斜方向)を、それぞれ、θX方向、θY方向及びθZ方向と称する。ここで、Z軸方向を重力方向としてもよい。また、XY平面を水平方向としてもよい。
【0012】
(1)第1実施形態の加工システムSYSa
初めに、第1実施形態の加工システムSYS(以降、第1実施形態の加工システムSYSを、“加工システムSYSa”と称する)について説明する。
【0013】
(1-1)加工システムSYSaの構造
初めに、
図1を参照しながら、第1実施形態の加工システムSYSaの構造について説明する。
図1は、第1実施形態の加工システムSYSaの構造を模式的に示す断面図である。
【0014】
図1に示すように、加工システムSYSは、加工対象物Sの表面に形成された(例えば、塗布された)塗装膜SFを加工する。加工対象物Sは、例えば、金属であってもよいし、合金(例えば、ジュラルミン等)であってもよいし、樹脂(例えば、CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastic)等)であってもよいし、ガラスであってもよいし、それ以外の任意の材料から構成される物体であってもよい。塗装膜SFは、加工対象物Sの表面を覆う塗料の膜である。このため、塗装膜SFは、塗料層と称してもよい。加工対象物Sは、塗装膜SFに対する基材となる。塗装膜SFの厚みは、例えば数十マイクロメートルから数百マイクロメートルであるが、その他の任意のサイズであってもよい。塗装膜SFを構成する塗料は、例えば、樹脂性の塗料を含んでいてもよいし、それ以外の種類の塗料を含んでいてもよい。樹脂製の塗料は、例えば、アクリル系の塗料(例えば、アクリルポリオールを含む塗料)、ポリウレタン系の塗料(例えば、ポリウレタンポリオールを含む塗料)、ポリエステル系の塗料(例えば、ポリエステルポリオールを含む塗料)、ビニル系の塗料、フッ素系の塗料(例えば、フッ素系ポリオールを含む塗料)、シリコン系の塗料及びエポキシ系の塗料のうちの少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0015】
図1は、水平面(つまり、XY平面)に沿った表面を有する加工対象物S上に加工システムSYSa(特に、加工システムSYSaが備える後述の加工装置1)が配置されている例を示している。しかしながら、加工システムSYSaは、水平面に沿った表面を有する加工対象物S上に配置されるとは限らない。例えば、
図7等を参照しながら後に詳述するように、加工システムSYSaは、水平面に交差する表面を有する加工対象物S上に配置されてもよい。加工システムSYSaは、加工対象物Sから吊り下がるように配置されてもよい。この場合には、X軸方向及びY軸方向は、便宜上、加工対象物Sの表面に沿った方向(典型的には、平行な方向)として定義されてもよく、Z軸方向は、便宜上、加工対象物Sの表面に交差する方向(典型的には、直交する方向)として定義されてもよい。
【0016】
加工システムSYSaは、塗装膜SFを加工するために、塗装膜SFに対して加工光ELを照射する。加工光ELは、塗装膜SFに照射されることで塗装膜SFを加工可能である限りは、どのような種類の光であってもよい。一例として、加工光ELは、レーザ光であってもよい。更に、加工光ELは、塗装膜SFに照射されることで塗装膜SFを加工可能である限りは、どのような波長の光であってもよい。第1実施形態では、加工光ELが不可視光(例えば、赤外光及び紫外光の少なくとも一方等)である例を用いて説明を進める。つまり、第1実施形態では、加工光ELが、可視光の波長帯域よりも短い波長帯域に含まれる波長の光、及び、可視光の波長帯域よりも長い波長帯域に含まれる波長の光の少なくとも一方である例を用いて説明を進める。但し、加工光ELは、可視光であってもよい。
【0017】
ここで、
図2(a)及び
図2(b)を参照しながら、加工光ELを用いた塗装膜SFの加工の様子について説明する。
図2(a)及び
図2(b)のそれぞれは、加工対象物Sの表面に形成された塗装膜SFの加工の様子を模式的に示す断面図である。
【0018】
図2(a)に示すように、加工システムSYSaは、塗装膜SFの表面に設定される目標照射領域EAに対して加工光ELを照射する。尚、目標照射領域EAは、加工システムSYSaが加工光ELを照射することが予定されている領域である。
図2(a)に示すように、目標照射領域EAに加工光ELが照射されると、目標照射領域EAと重なる塗装膜SF(つまり、目標照射領域EAの-Z側に位置する塗装膜)の一部が加工光ELによって蒸発する。このとき、塗装膜SFの厚み方向において、目標照射領域EAに重なる塗装膜SFの全てが蒸発しない。つまり、塗装膜SFの厚み方向において、目標照射領域EAに重なる塗装膜SFの一部(具体的には、塗装膜SFのうち目標照射領域EAに相対的に近い部分)が蒸発する一方で、目標照射領域EAに重なる塗装膜SFの他の一部(具体的には、塗装膜SFのうち目標照射領域EAから相対的に遠い部分)が蒸発しない。言い換えれば、塗装膜SFは、塗装膜SFから加工対象物Sが露出しない程度にしか蒸発しない。このため、加工光ELの特性は、塗装膜SFから加工対象物Sが露出しない程度にしか塗装膜SFを蒸発させることがない所望の特性に設定されていてもよい。加工光ELの特性は、加工光ELの照射によって加工対象物Sに影響を与えない所望の特性に設定されていてもよい。加工光ELの特性は、加工光ELの照射によって塗装膜SFのみに影響を与える所望の特性に設定されていてもよい。尚、加工光ELの特性は、加工光ELの波長、塗装膜SFの表面に対して加工光ELから伝達される単位時間当たりの及び/又は単位面積当たりのエネルギー量、塗装膜SFの表面における加工光ELの強度分布、塗装膜SFの表面に対する加工光ELの照射時間、及び、塗装膜SFの表面における加工光ELのサイズ(一例として、スポット径や面積)の少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0019】
このとき、塗装膜SFに照射される加工光ELのエネルギー(つまり、強度)は、加工光ELの照射によって加工対象物Sに影響を与えないように定められる。加工光ELのエネルギーは、加工光ELが塗装膜SFを貫通して加工対象物Sに到達しないように定められる。言い換えると、加工光ELのエネルギーは、加工光ELの照射によって塗装膜SFのみに影響を与えるように定められる。
【0020】
その結果、塗装膜SFが蒸発した部分では、塗装膜SFが除去される。一方で、塗装膜SFが蒸発しなかった部分では、塗装膜SFがそのまま残留する。つまり、
図2(b)に示すように、加工光ELが照射された部分において、塗装膜SFが部分的に除去される。その結果、
図2(b)に示すように、加工光ELが照射された部分において、加工光ELが照射されていない部分と比較して、塗装膜SFの厚みが薄くなる。言い換えれば、
図2(b)に示すように、加工対象物Sの表面上には、加工光ELが照射されていないがゆえに相対的に厚いままの塗装膜SFと、加工光ELが照射されたがゆえに相対的に薄くなった塗装膜SFとが存在することになる。つまり、加工光ELの照射により、塗装膜SFの厚みが少なくとも部分的に調整される。加工光ELの照射により、厚さ方向(
図2(b)に示す例では、Z軸方向)において塗装膜SFの一部が除去される。その結果、塗装膜SFの表面に、塗装膜SFが相対的に薄い部分に相当する凹部(言い換えれば、溝部)Cが形成される。従って、第1実施形態における「塗装膜SFを加工する動作」は、塗装膜SFの厚みを調整する動作、塗装膜SFの一部を除去する動作、及び、塗装膜SFに凹部Cを形成する動作の少なくとも一つを含む。
【0021】
塗装膜SFは、加工光ELを吸収することで蒸発する。つまり、塗装膜SFは、加工光ELのエネルギーが塗装膜SFに伝達されることで、例えば光化学的に分解されて除去される。尚、加工光ELがレーザ光である場合には、加工光ELのエネルギーが塗装膜SFに伝達されることで塗装膜SF等が光化学的に分解されて除去される現象を、レーザーアブレーションと称することもある。このため、塗装膜SFは、加工光ELを吸収可能な材料を含んでいる。具体的には、例えば、塗装膜SFは、加工光ELに関する吸収率(例えば、加工光ELが不可視光である場合には、可視光の波長帯域とは異なる波長を含む波長帯域の光に関する吸収率)が所定の第1吸収閾値以上となる材料を含んでいてもよい。逆に言えば、塗装膜SFによる吸収率が所定の第1吸収閾値以上となる波長帯域の光が、加工光ELとして用いられてもよい。
【0022】
塗装膜SFを構成する材料は、色素(具体的には、例えば、顔料及び染料の少なくとも一方)を含んでいてもよい。塗装膜SFが色素を含む場合には、当該色素は、可視光の照射時に所望色を呈する色素であってもよい。その結果、このような色素を含む塗装膜SFは、所望色を呈することとなる。この場合、当該色素は、塗装膜SFが所望色を呈するように、可視光の波長帯域のうち塗装膜SFによって反射されることで所望色の光として人間に認識される波長を含む第1波長帯域の光の吸収率と、可視光のうち第1波長帯域とは異なる第2波長帯域の光の吸収率とが異なるという特性を有していてもよい。例えば、色素は、第1波長帯域の光の吸収率が第2波長帯域の光の吸収率よりも小さくなるという特性を有していてもよい。例えば、色素は、第1波長帯域の光の吸収率が所定の第2吸収閾値(但し、第2吸収閾値は、第1吸収閾値よりも小さい)以下になり、且つ、第2波長帯域の光の吸収率が所定の第3吸収閾値(但し、第3吸収閾値は、第2吸収閾値よりも大きい)以上になるという特性を有していてもよい。このような不可視光である加工光ELを相応に吸収可能である一方で所望色を呈する色素の一例として、例えば、ウクライナ国キエフに所在するスペクトラムインフォ社製の近赤外線吸収色素(一例として、テトラフルオロホウ素化4-((E)-2-{(3E)-2-クロロ-3-[2-(2,6-ジフェニル-4H-チオピラン-4-イリデン)エチリデン]シクロヘキサ-1-エン-1-イル}ビニル)-2,6-ジフェニルチオピリリウム)があげられる。尚、塗装膜SFが透明である場合、塗装膜SFは色素を含んでいなくてもよい。
【0023】
塗装膜SFが色素を含む場合には、当該色素は、可視光に対して透明な色素であってもよい。その結果、このような色素を含む塗装膜SFは、透明な膜(いわゆる、クリアコート)となる。尚、ここでいう「透明な膜」は、可視光の波長帯域のうちの少なくとも一部の波長帯域の光が通過することが可能な膜を意味していてもよい。この場合、当該色素は、塗装膜SFが透明になるように、可視光をあまり吸収しない(つまり、相応に反射する)という特性を有していてもよい。例えば、色素は、可視光の吸収率が所定の第4吸収閾値よりも小さくなるという特性を有していてもよい。このような不可視光である加工光ELを相応に吸収可能である一方で可視光に対して透明になる色素の一例として、例えば、スペクトラムインフォ社製の近赤外線吸収色素(一例として、テトラフルオロホウ素化6-クロロ-2-[(E)-2-(3-{(E)-2-[6-クロロ-1-エチルベンゾ[cd]インドール-2(1H)-イリデン]エチリデン}-2-フェニル-1-シクロペンテン-1-イル)エテニル]-1-エチルベンゾ[cd]インドリウム)があげられる。
【0024】
再び
図1において、塗装膜SFを加工するために、加工システムSYSaは、加工装置1と、制御装置2と、異物計測装置31と、異物除去装置32と、ディスプレイ4とを備えている。更に、加工装置1は、光照射装置11と、駆動系12と、収容装置13と、支持装置14と、駆動系15と、排気装置16と、気体供給装置17とを備える。
【0025】
光照射装置11は、制御装置2の制御下で、塗装膜SFに対して加工光ELを照射可能である。塗装膜SFに対して加工光ELを照射するために、光照射装置11は、光照射装置11の構造を模式的に示す断面図である
図3(a)に示すように、加工光ELを射出可能な光源系111と、光源系111から射出された加工光ELを塗装膜SFに導く光学系112とを備える。
【0026】
光源系111は、例えば複数の加工光ELを同時に射出する。但し、光源系111は、単一の加工光ELを射出してもよい。このとき、光照射装置11は、単一の加工光ELを射出してもよい。複数の加工光ELを射出するために、光源系111は、光源系111の構造の一例を模式的に示す断面図である
図3(b)に示すように、複数の光源1111を備えている。複数の光源1111は、等間隔で一列に配列される。各光源1111は、パルス光を加工光ELとして射出する。パルス光の発光時間幅(以下、“パルス幅”と称する)が短くなると、加工精度(例えば、後述するリブレット構造の形成精度)が向上する。従って、各光源1111は、パルス幅が相対的に短いパルス光を、加工光ELとして射出してもよい。例えば、各光源1111は、パルス幅が1000ナノ秒以下となるパルス光を、加工光ELとして射出してもよい。例えば、各光源1111は、パルス幅がピコ秒のオーダーとなるパルス光を、加工光ELとして射出してもよく、パルス幅がフェムト秒のオーダーとなるパルス光を、加工光ELとして射出してもよい。或いは、光源系111の構造の他の例を模式的に示す断面図である
図3(c)に示すように、光源系111は、単一の光源1111と、当該単一の光源1111からの光を複数の加工光ELに分岐する分岐器1112とを備えていてもよい。分岐器1112が分岐した複数の加工光ELがそれぞれ射出される複数の射出口は、等間隔で一列に配列される。分岐器1112の一例として、光ファイバカプラ、導波路型スプリッタ、レンズアレイ、回折光学素子及び空間光変調器等の少なくとも一つがあげられる。
【0027】
光学系112は、フォーカスレンズ1121と、ガルバノミラー1122と、fθレンズ1123とを備える。複数の加工光ELは、フォーカスレンズ1121と、ガルバノミラー1122と、fθレンズ1123とを介して、塗装膜SFに照射される。
【0028】
フォーカスレンズ1121は、1以上のレンズで構成され、その少なくとも一部のレンズの光軸方向に沿った位置を調整することで、複数の加工光ELの収斂位置BF(言い換えれば、集光位置、或いは光軸方向における照射位置であり、つまりは光学系112の焦点位置)を調整するための光学素子である。ガルバノミラー1122は、複数の加工光ELが塗装膜SFの表面を走査する(つまり、複数の加工光ELがそれぞれ照射される複数の目標照射領域EAが塗装膜SFの表面を移動する)ように、複数の加工光ELを偏向する。つまり、ガルバノミラー1122は、塗装膜SF上での複数の加工光ELの照射位置を、光照射装置11に対して変更する照射位置変更装置として機能可能である。尚、ガルバノミラー1122によって、光学系112が射出する複数の加工光ELが塗装膜SFの表面を掃引してもよい。ガルバノミラー112は、X走査ミラー1122Xと、Y走査ミラー1122Yとを備える。X走査ミラー1122Xは、複数の加工光ELをY走査ミラー1122Yに向けて反射する。X走査ミラー1122Xは、θY方向(つまり、Y軸周りの回転方向)に揺動又は回転可能である。X走査ミラー1122Xの揺動又は回転により、複数の加工光ELは、塗装膜SFの表面をX軸方向に沿って走査する。X走査ミラー1122Xの揺動又は回転により、複数の目標照射領域EAは、塗装膜SF上をX軸方向に沿って移動する。X走査ミラー1122Xは、複数の目標照射領域EAと塗装膜SFとの間のX軸方向に沿った相対的な位置関係を変更する。Y走査ミラー1122Yは、複数の加工光ELをfθレンズ1123に向けて反射する。Y走査ミラー1122Yは、θX方向(つまり、X軸周りの回転方向)に揺動又は回転可能である。Y走査ミラー1122Yの揺動又は回転により、複数の加工光ELは、塗装膜SFの表面をY軸方向に沿って走査する。Y走査ミラー1122Yの揺動又は回転により、複数の目標照射領域EAは、塗装膜SF上をY軸方向に沿って移動する。Y走査ミラー1122Yは、複数の目標照射領域EAと塗装膜SFとの間のY軸方向に沿った相対的な位置関係を変更する。fθレンズ1123は、ガルバノミラー1122からの複数の加工光ELを塗装膜SF上に集光するための光学素子である。
【0029】
fθレンズ1123は、光学系112が備える光学素子のうち光学系112の最も光射出側に位置する(言い換えれば、塗装膜SFに最も近い、又は、複数の加工光ELの光路の終端に位置する)終端光学素子である。但し、光学系112は、fθレンズ1123よりも光射出側に設けられた光学素子(例えば、カバーレンズ等)を備えていてもよい。fθレンズ1123は、光学系112に対して脱着可能なように構成されていてもよい。その結果、光学系112から古いfθレンズ1123を取り外した後に、光学系112に別のfθレンズ1123を取り付けることが可能となる。但し、fθレンズ1123よりも射出側に設けられた光学素子(例えば、カバーレンズ等)を光学系112が備えている場合には、当該光学素子が終端光学素子となり、当該光学素子が光学系112に対して脱着可能なように構成されていてもよい。
【0030】
光学系112からの複数の加工光ELの進行方向は、例えば互いに平行になる。その結果、第1実施形態では、塗装膜SFに、進行方向が互いに平行な複数の加工光ELが同時に照射される。つまり、塗装膜SF上には、複数の目標照射領域EAが同時に設定される。このため、塗装膜SFに単一の加工光ELが照射される場合と比較して、塗装膜SFの加工に関するスループットが向上する。尚、光学系112からの複数の加工光ELの進行方向は、互いに平行でなくてもよい。
【0031】
再び
図1において、駆動系12は、制御装置2の制御下で、光照射装置11を、塗装膜SFに対して(つまり、塗装膜SFが表面に形成された加工対象物Sに対して)移動させる。つまり、駆動系12は、光照射装置11と塗装膜SFとの相対的な位置関係を変更するように、光照射装置11を塗装膜SFに対して移動させる。光照射装置11と塗装膜SFとの間の相対的な位置関係が変更されると、複数の加工光ELがそれぞれ照射される複数の目標照射領域EAと塗装膜SFとの間の相対的な位置関係もまた変更される。このため、駆動系12は、複数の目標照射領域EAと塗装膜SFとの相対的な位置関係を変更するように、光照射装置11を塗装膜SFに対して移動させるとも言える。
【0032】
駆動系12は、塗装膜SFの表面に沿って、光照射装置11を移動させてもよい。
図1に示す例では、塗装膜SFの表面は、X軸及びY軸のうち少なくとも一方に平行な平面であるため、駆動系12は、X軸及びY軸の少なくとも一方に沿って、光照射装置11を移動させてもよい。その結果、塗装膜SF上で目標照射領域EAがX軸及びY軸の少なくとも一方に沿って移動する。つまり、光照射装置11が加工光ELを照射可能な範囲が変更される。駆動系12は、塗装膜SFの厚み方向(つまり、塗装膜SFの表面に交差する方向)に沿って、光照射装置11を移動させてもよい。
図1に示す例では、塗装膜SFの厚み方向は、Z軸に沿った方向であるため、駆動系12は、Z軸方向に沿って、光照射装置11を移動させてもよい。駆動系12は、X軸、Y軸及びZ軸の少なくとも一つに加えて、θX方向、θY方向及びθZ方向の少なくとも一つの回転方向に沿って、光照射装置11を移動させてもよい。
【0033】
駆動系12には、取付部材19を介して光照射装置11が取り付けられている。駆動系12は、取付部材19を介して、光照射装置11を支持する。駆動系12は、取付部材19に取り付けられた光照射装置11を移動させる。つまり、駆動系12は、取付部材19と共に光照射装置11を移動させる。但し、駆動系12には、取付部材19を介することなく光照射装置11が取り付けられていてもよい。
【0034】
収容装置13は、天井部材131と、隔壁部材132とを備えている。天井部材131は、光照射装置11の+Z側に配置される。天井部材131は、XY平面に沿った板状の部材である。天井部材131は、支持部材133を介して駆動系12を支持する。天井部材131の-Z側の面の外縁(或いは、その近傍)には、隔壁部材132が配置されている。隔壁部材132は、天井部材131から-Z側に向かって延伸する筒状(例えば、円筒状の又は矩形筒状の)の部材である。天井部材131と隔壁部材132とによって囲まれた空間は、光照射装置11及び駆動系12を収容するための収容空間SPとなる。従って、上述した駆動系12は、収容空間SP内で光照射装置11を移動させる。更に、収容空間SPは、光照射装置11と塗装膜SFとの間の空間(特に、加工光ELの光路を含む空間)を含んでいる。より具体的には、収容空間SPは、光照射装置11が備える終端光学素子(例えば、fθレンズ1123)と塗装膜SFとの間の空間(特に、加工光ELの光路を含む空間)を含んでいる。
【0035】
天井部材131及び隔壁部材132のそれぞれは、加工光ELを遮光可能な部材である。つまり、天井部材131及び隔壁部材132のそれぞれは、加工光ELの波長に対して不透明である。その結果、収容空間SP内を伝搬する加工光ELが収容空間SPの外部(つまり、収容装置13の外部)に漏れ出てくることはない。尚、天井部材131及び隔壁部材132のそれぞれは、加工光ELを減光可能な部材であってもよい。つまり、天井部材131及び隔壁部材132のそれぞれは、加工光ELの波長に対して半透明であってもよい。更に、天井部材131及び隔壁部材132のそれぞれは、加工光ELの照射によって発生した不要物質を透過させない(つまり、遮蔽可能な)部材である。不要物質の一例として、塗装膜SFの蒸気及びヒュームの少なくとも一方があげられる。その結果、収容空間SP内で発生した不要物質が収容空間SPの外部(つまり、収容装置13の外部)に漏れ出てくることはない。
【0036】
隔壁部材132の端部(具体的には、塗装膜SF側の端部であり、
図1に示す例では、-Z側の端部)134は、塗装膜SFの表面に接触可能である。端部134が塗装膜SFに接触する場合には、収容装置13(つまり、天井部材131及び隔壁部材132)は、塗装膜SFと協働して収容空間SPの密閉性を維持する。端部134は、塗装膜SFと接触した場合に、塗装膜SFの表面の形状に応じてその形状(特に、端部134のうち塗装膜SFに接触する接触面(
図1に示す例では、-Z側の面)の形状、以下同じ)を変化させることが可能である。例えば、表面が平面形状の塗装膜SFに端部134が接触する場合には、端部134の形状は、塗装膜SFと同様に平面形状になる。例えば、表面が曲面形状の塗装膜SFに端部134が接触する場合には、端部134の形状は、塗装膜SFと同様に曲面形状になる。その結果、端部134が塗装膜SFの表面の形状に応じてその形状を変化させることができない場合と比較して、収容空間SPの密閉性が向上する。形状を変化させることが可能な端部134の一例として、ゴム等の弾性を有する部材(言い換えれば、柔軟な部材)から形成されている端部134があげられる。尚、形状を変化させることが可能な端部134として、例えば弾性を有する構造である蛇腹状の端部が用いられてもよい。
【0037】
端部134は、塗装膜SFに接触した状態で塗装膜SFに付着可能であってもよい。例えば、端部134は、塗装膜SFに吸着可能な吸着機構を備えていてもよい。端部134が塗装膜SFに付着すると、端部134が塗装膜SFに付着していない場合と比較して、収容空間SPの密閉性がより一層向上する。但し、端部134が塗装膜SFに付着可能でなくてもよい。この場合であっても、端部134が塗装膜SFに接触する限りは、収容空間SPの密閉性が相応に維持されることに変わりはない。
【0038】
隔壁部材132は、制御装置2の制御下で動作する不図示の駆動系(例えば、アクチュエータ)によって、Z軸方向に沿って伸縮可能な部材である。例えば、隔壁部材132は、蛇腹状の部材(いわゆる、ベローズ)であってもよい。この場合、隔壁部材132は、蛇腹部分の伸縮によって伸縮可能である。或いは、例えば、隔壁部材132は、異なる径を有する複数の中空状の円筒部材が組み合わせられたテレスコピックパイプを備えていてもよい。この場合、隔壁部材132は、複数の円筒部材の相対的な移動によって伸縮可能である。隔壁部材132の状態は、少なくとも、隔壁部材132がZ軸方向に沿って伸びることでZ軸方向の長さが相対的に長い第1伸長状態と、隔壁部材132がZ軸方向に沿って縮小することでZ軸方向の長さが相対的に短い第1縮小状態とに設定可能である。
【0039】
隔壁部材132が第1伸長状態にある場合には、端部134は、塗装膜SFに接触可能な第1接触状態にある。一方で、隔壁部材132が第1縮小状態にある場合には、端部134は、塗装膜SFに接触しない第1非接触状態にある。つまり、隔壁部材132が第1縮小状態にある場合には、端部134は、塗装膜SFから+Z側に離れている第1非接触状態にある。尚、端部134の状態を第1接触状態と第1非接触状態との間で切り換えるための構成は、隔壁部材132を伸縮する構成には限定されない。例えば、収容装置13自体を±Z方向に沿って移動可能な構成とすることで、端部134の状態を第1接触状態と第1非接触状態との間で切り換えてもよい。
【0040】
収容装置13は更に、検出装置135を備えている。検出装置135は、収容空間SP内の不要物質(つまり、加工光ELの照射によって発生した物質)を検出する。検出装置135の検出結果は、後に詳述するように、隔壁部材132の状態を第1伸長状態から第1縮小状態へと変える際に制御装置2によって参照される。
【0041】
支持装置14は、収容装置13を支持する。収容装置13が駆動系12及び光照射装置11を支持しているため、支持装置14は、実質的には、収容装置13を介して駆動系12及び光照射装置11を支持している。収容装置13を支持するために、支持装置14は、梁部材141と、複数の脚部材142とを備えている。梁部材141は、収容装置13の+Z側に配置される。梁部材141は、XY平面に沿って延伸する梁状の部材である。梁部材141は、支持部材143を介して収容装置13を支持する。梁部材141には、複数の脚部材142が配置されている。脚部材142は、梁部材141から-Z側に向かって延伸する棒状の部材である。
【0042】
脚部材142の端部(具体的には、塗装膜SF側の端部であり、
図1に示す例では、-Z側の端部)144は、塗装膜SFの表面に接触可能である。その結果、支持装置14は、塗装膜SFによって(つまり、加工対象物Sによって)支持される。つまり、支持装置14は、端部144が塗装膜SFに接触した状態で(言い換えれば、支持装置14が塗装膜SFによって支持された状態で)収容装置13を支持する。端部144は、収容装置13の端部134と同様に、塗装膜SFと接触した場合に、塗装膜SFの表面の形状に応じてその形状(特に、端部144のうち塗装膜SFに接触する接触面(
図1に示す例では、-Z側の面)の形状、以下同じ)を変化させることが可能であってもよい。端部144は、塗装膜SFに接触した状態で塗装膜SFに付着可能であってもよい。例えば、端部144は、塗装膜SFに吸着可能な吸着機構を備えていてもよい。端部144が塗装膜SFに付着すると、端部144が塗装膜SFに付着していない場合と比較して、支持装置14の安定性が向上する。但し、端部144が塗装膜SFに付着可能でなくてもよい。
【0043】
梁部材141は、制御装置2の制御下で動作する駆動系15によって、X軸及びY軸の少なくとも一方に沿って(或いは、XY平面に沿った任意の方向に沿って)伸縮可能な部材である。例えば、梁部材141は、異なる径を有する複数の筒部材が組み合わせられたテレスコピックパイプを備えていてもよい。この場合、梁部材141は、複数の筒部材の相対的な移動によって伸縮可能である。
【0044】
脚部材142は、制御装置2の制御下で動作する駆動系15によって、Z軸方向に沿って伸縮可能な部材である。例えば、脚部材142は、異なる径を有する複数の筒部材が組み合わせられたテレスコピックパイプを備えていてもよい。この場合、脚部材142は、複数の筒部材の相対的な移動によって伸縮可能である。脚部材142の状態は、少なくとも、脚部材142がZ軸方向に沿って伸びることでZ軸方向の長さが相対的に長い第2伸長状態と、脚部材142がZ軸方向に沿って縮小することでZ軸方向の長さが相対的に短い第2縮小状態とに設定可能である。脚部材142が第2伸長状態にある場合には、端部144は、塗装膜SFに接触可能な第2接触状態にある。一方で、脚部材142が第2縮小状態にある場合には、端部144は、塗装膜SFに接触しない第2非接触状態にある。つまり、脚部材142が第2縮小状態にある場合には、端部144は、塗装膜SFから+Z側に離れている第2非接触状態にある。
【0045】
駆動系15は、制御装置2の制御下で、支持装置14を塗装膜SFに対して(つまり、塗装膜SFが表面に形成された加工対象物Sに対して)移動させる。つまり、駆動系15は、支持装置14と塗装膜SFとの相対的な位置関係を変更するように、支持装置14を塗装膜SFに対して移動させる。支持装置14が収容装置13を支持しているため、駆動系15は、実質的には、支持装置14を移動させることで、収容装置13を塗装膜SFに対して移動させる。つまり、駆動系15は、実質的には、収容装置13と塗装膜SFとの相対的な位置関係を変更するように、支持装置14を塗装膜SFに対して移動させる。更に、収容装置13は、駆動系12を介して光照射装置11を支持している。このため、駆動系15は、実質的には、支持装置14を移動させることで、光照射装置11を塗装膜SFに対して移動させることができる。つまり、駆動系15は、実質的には、光照射装置11と塗装膜SFとの相対的な位置関係を変更するように、支持装置14を塗装膜SFに対して移動させることができる。言い換えれば、駆動系15は、実質的には、複数の目標照射領域EAと塗装膜SFとの相対的な位置関係を変更するように、支持装置14を塗装膜SFに対して移動させることができる。
【0046】
駆動系15は、支持装置14を移動させるために、制御装置2の制御下で、梁部材141を伸縮させる。更に、駆動系15は、支持装置14を移動させるために、制御装置2の制御下で、複数の脚部材142を伸縮させる。尚、駆動系15による支持装置14の移動態様については、
図8から
図19を参照しながら後に詳述する。
【0047】
排気装置16は、排気管161を介して収容空間SPに連結されている。排気装置16は、収容空間SP内の気体を排気可能である。特に、排気装置16は、収容空間SP内の気体を排気することで、加工光ELの照射によって発生した不要物質を、収容空間SPから収容空間SPの外部に吸引可能である。特に、この不要物質が加工光ELの光路上に存在する場合、塗装膜SFに対する加工光ELの照射に影響を与える可能性がある。このため、排気装置16は特に、光学系112の終端光学素子と塗装膜SFとの間の加工光ELの光路を含む空間から、当該空間内の気体と共に不要物質を吸引する。排気装置16が収容空間SPから吸引した不要物質は、フィルタ162を介して加工装置1の外部へと排出される。フィルタ162は、不要物質を吸着する。尚、フィルタ162は、着脱可能であってもよいし、交換可能であってもよい。
【0048】
気体供給装置17は、吸気管171を介して収容空間SPに連結されている。気体供給装置17は、収容空間SPに気体を供給可能である。収容空間SPに供給する気体としては、大気、CDA(クリーン・ドライ・エア)及び不活性ガスの少なくとも一つがあげられる。不活性ガスの一例として、窒素ガスがあげられる。第1実施形態では、気体供給装置17はCDAを供給するものとする。このため、収容空間SPは、CDAによってパージされた空間となる。収容空間SPに供給されたCDAの少なくとも一部は、排気装置16によって吸引される。排気装置16が収容空間SPから吸引したCDAは、フィルタ162を通過して加工システムSYSaの外部へと排出される。
【0049】
気体供給装置17は特に、
図3に示すfθレンズ1123の収容空間SP側の光学面1124(つまり、光学系112の終端光学素子の収容空間SP側の光学面)にCDA等の気体を供給する。光学面1124は、収容空間SPに面しているがゆえに、加工光ELの照射によって発生した不要物質にさらされる可能性がある。その結果、光学面1124に不要物質が付着してしまう可能性がある。更に、加工光ELが光学面1124を通過するがゆえに、光学面1124を通過する加工光ELによって光学面1124に付着した不要物質が焼き付けられる(つまり、固着してしまう)可能性がある。光学面1124に付着した(更には、固着した)不要物質は、光学面1124の汚れとなって加工光ELの特性に影響を与えかねない。しかるに、光学面1124にCDA等の気体が供給されると、光学面1124と不要物質との接触が防止される。このため、光学面1124への汚れの付着が防止される。従って、気体供給装置17は、光学面1124への汚れの付着を防止する付着防止装置としても機能する。更には、光学面1124に汚れが付着(更には、固着)してしまった場合であっても、光学面1124に供給されたCDAによって汚れが除去される(例えば、吹き飛ばされる)可能性がある。従って、気体供給装置17は、光学面1124に付着した汚れを除去する付着防止装置としても機能し得る。
【0050】
制御装置2は、加工システムSYSaの全体の動作を制御する。特に、制御装置2は、後に詳述するように、所望の形状の凹部Cが所望の位置に形成されるように、光照射装置11、駆動系12、収容装置13及び駆動系15を制御する。
【0051】
制御装置2は、例えば、CPU(Central Processing Unit)(或いは、CPUに加えて又は代えてGPU(Graphics Processing Unit))と、メモリとを含んでいてもよい。制御装置2は、CPUがコンピュータプログラムを実行することで、加工システムSYSaの動作を制御する装置として機能する。このコンピュータプログラムは、制御装置2が行うべき後述する動作を制御装置2(例えば、CPU)に行わせる(つまり、実行させる)ためのコンピュータプログラムである。つまり、このコンピュータプログラムは、加工システムSYSaに後述する動作を行わせるように制御装置2を機能させるためのコンピュータプログラムである。CPUが実行するコンピュータプログラムは、制御装置2が備えるメモリ(つまり、記録媒体)に記録されていてもよいし、制御装置2に内蔵された又は制御装置2に外付け可能な任意の記憶媒体(例えば、ハードディスクや半導体メモリ)に記録されていてもよい。或いは、CPUは、実行するべきコンピュータプログラムを、ネットワークインタフェースを介して、制御装置2の外部の装置からダウンロードしてもよい。
【0052】
制御装置2は、加工システムSYSaの内部に設けられていなくてもよく、例えば、加工システムSYSa外にサーバ等として設けられていてもよい。この場合、制御装置2と加工システムSYSaとは、有線及び/又は無線のネットワーク(或いは、データバス及び/又は通信回線)で接続されていてもよい。有線のネットワークとして、例えばIEEE1394、RS-232x、RS-422、RS-423、RS-485及びUSBの少なくとも一つに代表されるシリアルバス方式のインタフェースを用いるネットワークが用いられてもよい。有線のネットワークとして、パラレルバス方式のインタフェースを用いるネットワークが用いられてもよい。有線のネットワークとして、10BASE-T、100BASE-TX及び1000BASE-Tの少なくとも一つに代表されるイーサネット(登録商標)に準拠したインタフェースを用いるネットワークが用いられてもよい。無線のネットワークとして、電波を用いたネットワークが用いられてもよい。電波を用いたネットワークの一例として、IEEE802.1xに準拠したネットワーク(例えば、無線LAN及びBluetooth(登録商標)の少なくとも一方)があげられる。無線のネットワークとして、赤外線を用いたネットワークが用いられてもよい。無線のネットワークとして、光通信を用いたネットワークが用いられてもよい。この場合、制御装置2と加工システムSYSaとはネットワークを介して各種の情報の送受信が可能となるように構成されていてもよい。また、制御装置2は、ネットワークを介して加工システムSYSaにコマンドや制御パラメータ等の情報を送信可能であってもよい。加工システムSYSaは、制御装置2からのコマンドや制御パラメータ等の情報を、上記ネットワークを介して受信する受信装置を備えていてもよい。或いは、制御装置2が行う処理のうちの一部を行う第1制御装置が加工システムSYSaの内部に設けられている一方で、制御装置2が行う処理のうちの他の一部を行う第2制御装置が加工システムSYSaの外部に設けられていてもよい。
【0053】
尚、CPUが実行するコンピュータプログラムを記録する記録媒体としては、CD-ROM、CD-R、CD-RWやフレキシブルディスク、MO、DVD-ROM、DVD-RAM、DVD-R、DVD+R、DVD-RW、DVD+RW及びBlu-ray(登録商標)等の光ディスク、磁気テープ等の磁気媒体、光磁気ディスク、USBメモリ等の半導体メモリ、及び、その他プログラムを格納可能な任意の媒体の少なくとも一つが用いられてもよい。記録媒体には、コンピュータプログラムを記録可能な機器(例えば、コンピュータプログラムがソフトウェア及びファームウェア等の少なくとも一方の形態で実行可能な状態に実装された汎用機器又は専用機器)が含まれていてもよい。更に、コンピュータプログラムに含まれる各処理や機能は、制御装置2(つまり、コンピュータ)がコンピュータプログラムを実行することで制御装置2内に実現される論理的な処理ブロックによって実現されてもよいし、制御装置2が備える所定のゲートアレイ(FPGA、ASIC)等のハードウェアによって実現されてもよいし、論理的な処理ブロックとハードウェアの一部の要素を実現する部分的ハードウェアモジュールとが混在する形式で実現してもよい。
【0054】
異物計測装置31は、制御装置2の制御下で、塗装膜SFの表面上における異物を計測する。具体的には、異物計測装置31は、制御装置2の制御下で、塗装膜SFの表面のうち異物計測装置31の計測範囲に含まれる領域(以降、“被計測領域AMA”と称する)における異物を計測する。尚、異物計測装置31は、制御装置2による制御とは関わりなく塗装膜SFの表面上における異物を計測してもよい。
【0055】
塗装膜SFの表面に異物が存在する場合には、加工光ELの少なくとも一部の塗装膜SFへの照射が異物によって妨げられる可能性がある。つまり、塗装膜SFの表面に異物が存在する場合には、加工光ELの少なくとも一部が塗装膜SFに適切に照射されなくなる可能性がある。その結果、加工光ELの照射による塗装膜SFの適切な加工に支障が生ずる可能性がある。つまり、加工光ELの照射による塗装膜SFの適切な加工が、異物によって妨げられる可能性がある。このため、塗装膜SFの表面に異物が存在する(典型的には、付着している)という事象は、加工光ELの照射による塗装膜SFの適切な加工にとって障害となり得る異常事象の一具体例に相当する。このような異物の一例として、ごみ、ちり、ほこり、微粒子、水分及び上述したヒュームの少なくとも一つがあげられる。
【0056】
異物計測装置31は、塗装膜SFの表面の状態を計測可能な計測装置であってもよい。つまり、異物計測装置31は、塗装膜SFの表面の状態を計測することで、塗装膜SFの表面上における異物を計測可能な計測装置であってもよい。なぜならば、異物が存在する塗装膜SFの表面の状態は、異物が存在しない塗装膜SFの表面の状態とは異なるからである。
【0057】
異物計測装置31は、光照射装置11が取り付けられている取付部材19に取り付けられている。このため、駆動系12による光照射装置11の移動に合わせて、異物計測装置31もまた移動する。つまり、異物計測装置31は、光照射装置11と共に、塗装膜SFに対して移動する。その結果、異物計測装置31が異物を計測する被計測領域AMAもまた、塗装膜SF上を移動する。従って、異物計測装置31は、塗装膜SF上の所望領域に設定可能な被計測領域AMAにおける異物を計測することができる。但し、異物計測装置31は、取付部材19に取り付けられていなくてもよい。異物計測装置31は、取付部材19に取り付けられていなくてもよい。異物計測装置31は、取付部材19とは異なる部材に取り付けられていてもよい。異物計測装置31は、光照射装置11に取り付けられていてもよい。異物計測装置31は、光照射装置11とは独立して移動可能であってもよい。異物計測装置31は、移動可能でなくてもよい。
【0058】
異物計測装置31の計測結果(以降、“異物計測情報”と称する)は、制御装置2に出力される。制御装置2は、異物計測情報に基づいて、被計測領域AMAに対する異物検査動作を行う。つまり、制御装置2は、異物計測装置31と共に、被計測領域AMAに対する異物検査動作を行う。このため、異物計測装置31及び制御装置2を含む装置(或いは、システム)を、異物検査動作を行う検査装置又は検査システムと称してもよい。この場合、被計測領域AMAは、被検査領域と称されてもよい。
【0059】
制御装置2は、異物検査動作の少なくとも一部として、異物検出動作を行ってもよい。つまり、制御装置2は、異物計測情報に基づいて、被計測領域AMAに異物が存在するか否かを判定してもよい。制御装置2は、異物計測情報に基づいて、被計測領域AMAにおいて異常事象(特に、塗装膜SFの表面に異物が存在するという異常事象)が発生しているか否かを判定してもよい。この場合、異物計測装置31は、被計測領域AMAにおける異物の有無を計測するための計測動作を行ってもよい。つまり、異物計測装置31は、被計測領域AMAにおける異物の有無を判定するために利用可能な異物計測情報を取得するための計測動作を行ってもよい。
【0060】
被計測領域AMAに異物が存在する場合には、制御装置2は、異物計測情報に基づいて、異物の特性(言い換えれば、異物の状態又は特徴)を算出してもよい。つまり、制御装置2は、異物検査動作の少なくとも一部として、異物の特性を算出するための特性算出動作を行ってもよい。例えば、制御装置2は、異物計測情報に基づいて、異物の特性の一例である異物の形状を算出してもよい。異物の形状は、異物の二次元形状(例えば、XY平面に沿った面内における形状)を含んでいてもよいし、異物の三次元形状を含んでいてもよい。例えば、制御装置2は、異物計測情報に基づいて、異物の特性の一例である異物のサイズを算出してもよい。異物のサイズは、X軸方向における異物のサイズ、Y軸方向における異物のサイズ、Z軸方向における異物のサイズの少なくとも一つを含んでいてもよい。この場合、異物計測装置31は、被計測領域AMAに存在する異物の特性を計測するための計測動作を行ってもよい。つまり、異物計測装置31は、被計測領域AMAにおける異物の特性を算出するために利用可能な異物計測情報を取得するための計測動作を行ってもよい。
【0061】
被計測領域AMAに異物が存在する場合には、制御装置2は、異物計測情報に基づいて、異物の数を特定してもよい。つまり、制御装置2は、異物検査動作の少なくとも一部として、異物の数を算出するための数算出動作を行ってもよい。この場合、異物計測装置31は、被計測領域AMAに存在する異物の数を計測するための計測動作を行ってもよい。つまり、異物計測装置31は、被計測領域AMAにおける異物の数を算出するために利用可能な異物計測情報を取得するための計測動作を行ってもよい。
【0062】
制御装置2は、異物計測情報と、塗装膜SFの表面の特徴(特に、塗装膜SFの表面のうちの被計測領域AMAの特徴)に関する特徴情報とに基づいて、異物検査動作を行ってもよい。例えば、被計測領域AMAに異物が存在していなければ、異物計測情報が示す被計測領域AMAの実際の特徴と、特徴情報が示す被計測領域AMAの設計上の特徴(或いは、理想的な特徴)とは一致するはずである。一方で、例えば、被計測領域AMAに異物が存在していれば、異物計測情報が示す被計測領域AMAの実際の特徴と、特徴情報が示す被計測領域AMAの設計上の特徴(或いは、理想的な特徴)とは一致しない可能性が高い。このため、制御装置2は、異物計測情報と特徴情報とを比較することで、異物検査動作を行ってもよい。
【0063】
異物計測装置31は、異物検査動作に利用可能な異物計測情報を取得可能である限りは、どのような計測装置であってもよい。例えば、異物計測装置31は、非接触で塗装膜SFの表面を計測可能であってもよい。非接触で塗装膜SFの表面を計測可能な計測装置の一例として、光学的に塗装膜SFの表面を計測可能な計測装置があげられる。非接触で被計測領域AMAを計測可能な計測装置の他の一例として、音波及び電波の少なくとも一方を用いて塗装膜SFを計測する計測装置があげられる。
【0064】
異物計測装置31は、光学的に塗装膜SFの表面を計測可能な計測装置の一例として、塗装膜SFの表面を撮像可能な撮像装置(つまり、カメラ)311を含んでいてもよい。例えば、
図4は、撮像装置311を含む異物計測装置31を示す断面図である。尚、ここで言う撮像装置311は、塗装膜SFの表面からの光を受光可能な受光素子(つまり、受光装置)が規則的に配置された撮像素子を用いて、塗装膜SFの表面の状態を画像として撮像可能な装置を意味する。撮像素子の一例として、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ及びCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサの少なくとも一方があげられる。この場合、制御装置2は、撮像装置311が撮像した画像を解析することで、異物検査動作を行ってもよい。尚、異物計測装置31が撮像装置311を含む場合には、塗装膜SFの表面のうち撮像装置311の撮像範囲に含まれる領域が、被計測領域AMAとなってもよい。
【0065】
異物計測装置31は、光学的に塗装膜SFの表面を計測可能な計測装置の一例として、塗装膜SFの表面からの光を受光可能な受光装置312を含んでいてもよい。例えば、
図5は、受光装置312を含む異物計測装置31を示す断面図である。ここで、塗装膜SFの表面に異物が存在する場合には、塗装膜SFの表面に異物が存在しない場合と比較して、塗装膜SFの表面(特に、異物)に照射された異物検査用の光が塗装膜SFの表面で散乱される及び/又は回折される可能性が高くなる。この場合、塗装膜SFの表面で散乱された散乱光及び/又は塗装膜SFの表面で回折された回折光は、異物検査用の光の正反射光が進行する方向とは異なる方向に進行する可能性が相対的に高くなる。従って、散乱光及び/又は回折光は、異物に関する情報を含む光である可能性がある。このため、異物計測装置31は、
図5に示すように、塗装膜SFの表面で散乱された散乱光及び塗装膜SFの表面で回折された回折光の少なくとも一方を受光可能な受光装置312を含んでいてもよい。この場合、制御装置2は、受光装置312の受光結果から散乱光及び/又は回折光の特性(例えば、強度等)を算出し、算出した散乱光及び/又は回折光の特性に基づいて異物検査動作を行ってもよい。尚、異物計測装置31が受光装置312を含む場合には、塗装膜SFの表面のうち異物検査用の光が照射される領域(つまり、散乱光及び/又は回折光が射出する領域)が、被計測領域AMAとなってもよい。
【0066】
再び
図1において、異物除去装置32は、制御装置2の制御下で、塗装膜SFの表面上に存在する異物を除去する。つまり、異物除去装置32は、制御装置2の制御下で、異物を除去するための異物除去動作を行う。具体的には、異物除去装置32は、塗装膜SFの表面のうち異物除去装置32が異物除去動作を行うことが可能な除去範囲に含まれる領域(以降、“除去領域RA”と称する)における異物を除去する。尚、異物除去装置32は、制御装置2による制御とは関わりなく塗装膜SFの表面上に存在する異物を除去してもよい。
【0067】
除去領域RAは、上述した被計測領域AMAと一致していてもよい。つまり、異物計測装置31及び異物除去装置32は、除去領域RAと被計測領域AMAとが一致するように位置合わせされていてもよい。或いは、除去領域RAは、上述した被計測領域AMAと部分的に重複していてもよい。つまり、異物計測装置31及び異物除去装置32は、除去領域RAと被計測領域AMAとが部分的に重複するように位置合わせされていてもよい。或いは、除去領域RAは、上述した被計測領域AMAと重複していなくてもよい。つまり、異物計測装置31及び異物除去装置32は、除去領域RAと被計測領域AMAとが重複しないように位置合わせされていてもよい。尚、
図1は、除去領域RAと被計測領域AMAとが一致する例を示している。
【0068】
異物除去装置32は、光照射装置11が取り付けられている取付部材19に取り付けられている。このため、駆動系12による光照射装置11の移動に合わせて、異物除去装置32もまた移動する。つまり、異物除去装置32は、光照射装置11と共に、塗装膜SFに対して移動する。その結果、異物除去装置32が異物を除去する除去領域RAもまた、塗装膜SF上を移動する。従って、異物除去装置32は、塗装膜SF上の所望領域に設定可能な除去領域RAに存在する異物を除去することができる。但し、異物除去装置32は、取付部材19に取り付けられていなくてもよい。異物除去装置32は、取付部材19とは異なる部材に取り付けられていてもよい。異物除去装置32は、光照射装置11に取り付けられていてもよい。異物除去装置32は、光照射装置11とは独立して移動可能であってもよい。異物除去装置32は、異物計測装置31とは独立して移動可能であってもよい。異物除去装置32は、移動可能でなくてもよい。
【0069】
異物除去装置32は、異物を除去可能である限りは、どのような装置を含んでいてもよい。例えば、異物除去装置32は、除去領域RAに流体を供給することで、除去領域RAから異物を除去してもよい。
【0070】
具体的には、例えば、異物除去装置32は、除去領域RAに流体の一例である気体を供給することで、除去領域RAから異物を除去してもよい。より具体的には、例えば、異物除去装置32は、除去領域RAに対して気体を吹き付けてもよい。この場合、除去領域RAの異物は、除去領域RAに吹き付けられた気体によって吹き飛ばれる。その結果、除去領域RAから異物が除去される。
【0071】
或いは、例えば、異物除去装置32は、気体に加えて又は代えて、除去領域RAに流体の一例である液体を供給することで、除去領域RAから異物を除去してもよい。より具体的には、例えば、異物除去装置32は、除去領域RAに液体を吹き付けてもよい(或いは、噴出してもよい)。この場合、除去領域RAの異物は、除去領域RAに吹き付けられた液体によって洗い流される。その結果、除去領域RAから異物が除去される。或いは、異物の種類又は異物の塗装膜SFへの付着度合いによっては、異物除去装置32は、除去領域RAに洗浄液(例えば、界面活性剤等の洗浄剤を含む液体)を供給し、その後、洗浄液を洗い流すための液体(例えば、水等)を除去領域RAに供給してもよい。このように洗浄液が用いられる場合には、洗浄液が用いられない場合と比較して、水等では除去しにくい異物又は塗装膜SFに相対的に強固に付着している異物であっても除去される可能性が高くなる。また、異物の種類又は異物の塗装膜SFへの付着度合いによっては、除去領域RAに対して液体又は洗浄液を供給した後に又は液体の供給と並行して、塗装膜SFの表面のうち液体が供給された部分(典型的には、除去領域RA)に対して、異物の除去を促進するための処理が行われてもよい。異物の除去を促進するための処理は、塗装膜SFに超音波を照射することによる超音波洗浄処理、液体に気泡(例えば、マイクロバルブ)を生成することによるバブル洗浄、布片等の拭き取り部材を用いて塗装膜SFの表面を拭き取る拭き取り処理、多数の細い棒状部材(例えば、ブラシ)を用いて塗装膜SFの表面から異物をはがしとるブラシ処理、及び、研磨パッド等の研磨部材を用いて塗装膜SFの表面を研磨する研磨処理の少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0072】
尚、異物除去装置32は、除去領域RAに固体(一例として微小な固体粒子)を吹き付けてもよい。このとき、固体粒子を流体(気体、液体)と共に除去領域RAに吹き付けてもよい。
【0073】
但し、液体を用いて異物が除去される場合には、液体が塗装膜SF上に残留していると、当該液体が塗装膜SFの適切な加工を妨げる可能性がある。つまり、残留した液体が新たな異物となる可能性がある。そこで、液体を用いて異物が除去された後に、液体を塗装膜SFの表面から除去するための処理が行われ、その後、塗装膜SFが加工されてもよい。液体を塗装膜SFの表面から除去するための処理の一例として、液体で塗れた塗装膜SFの表面を乾燥させる処理、及び、塗装膜SFに気体を吹き付けて塗装膜SF上の液体を吹き飛ばす処理の少なくとも一方があげられる。
尚、異物計測装置31を用いた異物検査動作及び異物除去装置32を用いた異物除去動作の具体的な流れについては、後に詳述するため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0074】
ディスプレイ4は、制御装置2の制御下で所望の画像を表示可能な表示装置である。例えば、ディスプレイ4は、加工システムSYSaに関する情報を表示してもよい。例えば、ディスプレイ4は、加工対象物Sに関する情報を表示してもよい。例えば、ディスプレイ4は、塗装膜SFに関する情報を表示してもよい。例えば、ディスプレイ4は、加工動作、異物検査動作及び異物除去動作の少なくとも一つに関する情報を表示してもよい。
【0075】
尚、ディスプレイ4は、加工システムSYSaの内部に設けられていなくてもよい。例えば、ディスプレイ4は、加工システムSYSaの外部に、外部ディスプレイとして設けられていてもよい。この場合、ディスプレイ4と加工システムSYSaとは、有線及び/又は無線のネットワーク(或いは、ケーブル、データバス及び/又は通信回線)で接続されていてもよい。この場合、制御装置2は、ネットワークを介して、ディスプレイ4との間で各種の情報の送受信(つまり、入出力)が可能となるように構成されていてもよい。ディスプレイ4は、制御装置2との間で(更には、制御装置2を介して又は介することなく加工システムSYSが備えるその他の装置との間で)情報の送受信を行う送受信部(つまり、入出力部)と、画像を表示する表示部とを備えていてもよい。
【0076】
(1-2)加工システムSYSaによる動作の具体例
(1-2-1)加工システムSYSaによって形成される構造の具体例
図2を用いて説明したように、第1実施形態では、加工システムSYSaは、塗装膜SFに凹部Cを形成する。凹部Cは、塗装膜SFのうち加工光ELが実際に照射された部分に形成される。このため、塗装膜SF上で加工光ELが実際に照射される位置(つまり、加工光ELが照射されることが予定されている目標照射領域EAが設定される位置)を適切に設定すれば、塗装膜SFの所望位置に凹部Cが形成可能となる。つまり、加工対象物S上に、塗装膜SFによる構造を形成可能となる。
【0077】
具体的には、加工システムSYSaは、上述したように、ガルバノミラー1122及び駆動系12の少なくとも一方を用いて、目標照射領域EAに塗装膜SFの表面を移動させる。加工システムSYSaは、塗装膜SFの表面を目標照射領域EAが移動する期間中に、塗装膜SFの表面のうち加工光ELを実際に照射するべき領域(つまり、加工するべき領域)に目標照射領域EAが重なるタイミングで加工光ELを照射する。一方で、加工システムSYSaは、塗装膜SFの表面を目標照射領域EAが移動する期間中に、塗装膜SFの表面のうち加工光ELを実際に照射するべき領域に目標照射領域EAが重ならないタイミングでは加工光ELを照射しない。つまり、加工システムSYSaは、塗装膜SFの表面を目標照射領域EAが移動する期間中に、塗装膜SFの表面のうち加工光ELを実際に照射するべきでない領域(つまり、加工すべきでない領域)に目標照射領域EAが重なるタイミングでは加工光ELを照射しない。その結果、加工対象物S上に、塗装膜SFのうち加工光ELが実際に照射された領域のパターン(或いは分布)に応じた塗装膜SFによる構造(つまり、パターン構造)が形成される。
【0078】
第1実施形態では、加工システムSYSaは、制御装置2の制御下で、このような塗装膜SFによる構造の一例であるリブレット構造を加工対象物S上に形成する。リブレット構造は、塗装膜SFの表面の流体に対する抵抗(特に、摩擦抵抗、乱流摩擦抵抗)を低減可能な構造である。リブレット構造が形成された加工対象物Sの表面の流体に対する抵抗は、リブレット構造が形成されていない加工対象物Sの表面の流体に対する抵抗よりも小さくなる。このため、リブレット構造は、加工対象物Sの表面の流体に対する抵抗を低減可能な構造であるとも言える。つまり、リブレット構造は、加工対象物Sの空力特性を変更可能な構造であるとも言える。尚、ここでいう流体とは、塗装膜SFの表面に対して相対的に流れている媒質(気体、液体)であればよい。例えば、静止している加工対象物Sに対して流れている媒質、及び、移動している加工対象物Sの周囲に分布する静止している媒質のそれぞれは、流体の一例である。
【0079】
リブレット構造の一例が
図6(a)及び
図6(b)に示されている。
図6(a)及び
図7(b)に示すように、リブレット構造は、例えば、第1の方向(
図6(a)及び
図6(b)に示す例では、Y軸方向)に沿って凹部Cを連続的に形成することで形成される凹状構造CP1(つまり、第1の方向に沿って延伸するように直線状に形成された凹状構造CP1)が、第1の方向に交差する第2方向(
図6(a)及び
図6(b)に示す例では、X軸方向)に沿って複数配列された構造である。つまり、リブレット構造は、例えば、第1の方向に沿って延びる複数の凹状構造CP1が、第1の方向に交差する第2方向に周期方向を有する構造である。隣り合う二つの凹状構造CP1の間には、周囲から突き出た凸状構造CP2が実質的に存在する。従って、リブレット構造は、例えば、第1の方向(例えば、Y軸方向)に沿って直線状に延伸する凸状構造CP2が、第1の方向に交差する第2方向(例えば、X軸方向)に沿って複数配列された構造であるとも言える。つまり、リブレット構造は、例えば、第1の方向に沿って延びる複数の凸状構造CP2が、第1の方向に交差する第2方向に周期方向を有する構造であるとも言える。
図6(a)及び
図6(b)に示されるリブレット構造は、周期的な構造である。尚、リブレット構造は、非周期的な構造であってもよい。
【0080】
隣り合う二つの凹状構造CP1の間隔(つまり、凹状構造CP1の配列ピッチP1)は、例えば、数ミクロンから数百ミクロンであるが、その他のサイズであってもよい。更に、各凹状構造CP1の深さ(つまり、Z軸方向の深さ)Dは、例えば、数ミクロンから数百ミクロンであるが、その他のサイズであってもよい。各凹状構造CP1の深さDは、凹状構造CP1の配列ピッチP1以下であってもよい。各凹状構造CP1の深さDは、凹状構造CP1の配列ピッチP1の半分以下であってもよい。各凹状構造CP1のZ軸を含む断面(具体的には、XZ平面に沿った断面)の形状は、お椀型の曲線形状であるが、三角形であってもよいし、四角形であってもよいし、五角形以上の多角形であってもよい。
【0081】
隣り合う二つの凸状構造CP2の間隔(つまり、凸状構造CP2の配列ピッチP2)は、例えば、数ミクロンから数百ミクロンであるが、その他のサイズであってもよい。更に、各凸状構造CP2の高さ(つまり、Z軸方向の高さ)Hは、例えば、数ミクロンから数百ミクロンであるが、その他のサイズであってもよい。各凸状構造CP2の高さHは、凸状構造CP2の配列ピッチP2以下であってもよい。各凸状構造CP2の高さHは、凸状構造CP2の配列ピッチP2の半分以下であってもよい。各凸状構造CP2のZ軸を含む断面(具体的には、XZ平面に沿った断面)の形状は、斜面が曲線となる山形の形状であるが、三角形であってもよいし、四角形であってもよいし、五角形以上の多角形であってもよい。また、各凸状構造CP2は稜線を有していてもよい。
【0082】
尚、加工システムSYSaが形成するリブレット構造自体は、例えば、日本機械学会編『機械工学便覧基礎編 α4流体工学』第5章に記述されるような既存のリブレット構造であってもよいため、リブレット構造そのものについての詳細な説明は省略する。
【0083】
このようなリブレット構造は、上述したように、リブレット構造が形成された加工対象物Sの表面の流体に対する抵抗を低減可能である。リブレット構造は、上述したように、リブレット構造が形成された加工対象物Sの表面の流体に対する抵抗を低減可能である。このため、加工対象物Sは、流体に対する抵抗を低減することが望まれる物体(例えば、構造体)であってもよい。例えば、加工対象物Sは、少なくとも一部が流体(例えば、気体及び液体の少なくとも一方)内を進むように移動可能な物体(つまり、移動体)を含んでいてもよい。具体的には、例えば、加工対象物Sは、
図7(a)から
図7(c)に示すように、航空機PLの機体(例えば、胴体PL1、主翼PL2、垂直尾翼PL3及び水平尾翼PL4のうち少なくとも1つ)を含んでいてもよい。この場合、
図7(a)及び
図7(c)に示すように、加工装置1(或いは、加工システムSYSa、以下この段落において同じ)は、支持装置14により航空機PLの機体上で自立していてもよい。或いは、支持装置14の脚部材142の端部144が塗装膜SFに付着可能であるがゆえに、
図7(b)に示すように、加工装置1は、支持装置14により航空機PLの機体から吊り下がる(つまり、ぶら下がる)ように航空機PLの機体に付着してもよい。更に、支持装置14の脚部材142の端部144が塗装膜SFに付着可能であり且つ収容装置13の隔壁部材132の端部134が塗装膜SFに付着可能であるがゆえに、加工装置1は、塗装膜SFの表面が上方を向いている状態で水平面に対して傾斜している場合であっても、塗装膜SF上で自立可能である。更には、加工装置1は、塗装膜SFの表面が下方を向いている状態で水平面に対して傾斜している場合であっても、塗装膜SFから吊り下がるように塗装膜SFに付着可能である。いずれの場合であっても、光照射装置11は、駆動系12により及び/又は支持装置14の移動により、機体の表面に沿って移動可能である。従って、加工システムSYSaは、航空機の機体のような加工対象物S(つまり、表面が曲面となる、表面が水平面に対して傾斜している又は表面が下方を向いている加工対象物S)にも、塗装膜SFによるリブレット構造を形成可能である。
【0084】
その他、例えば、加工対象物Sは、自動車の車体や空力パーツを含んでいてもよい。例えば、加工対象物Sは、船舶の船体を含んでいてもよい。例えば、加工対象物Sは、ロケットの機体を含んでいてもよい。例えば、加工対象物Sは、タービン(例えば、水力タービン及び風力タービン等の少なくとも一つであり、特にそのタービンブレード)を含んでいてもよい。例えば、加工対象物Sは、少なくとも一部が流体内を進むように移動可能な物体を構成する部品を含んでいてもよい。例えば、加工対象物Sは、流動している流体内に少なくとも一部が固定される物体を含んでいてもよい。具体的には、例えば、加工対象物Sは、川又は海の中に設置される橋桁を含んでいてもよい。例えば、加工対象物Sは、内部を流体が流れる配管を含んでいてもよい。この場合、配管の内壁が上述した加工対象物Sの表面となり得る。
【0085】
尚、ここにあげた加工対象物Sの一例は、比較的に大きな物体(例えば、数メートルから数百メートルのオーダーのサイズの物体)である。この場合、
図7(a)から
図7(c)に示すように、光照射装置11の大きさは、加工対象物Sの大きさよりも小さい。しかしながら、加工対象物Sは、どのようなサイズの物体であってもよい。例えば、加工対象物Sは、キロメートル、センチメートル、ミリメートル又はマイクロメートルのオーダーのサイズの物体であってもよい。
【0086】
上述したリブレット構造の特性は、加工対象物Sがどのような物体であるかに応じて、摩擦の低減効果が適切に得られるような適切な特性に設定されてもよい。つまり、上述したリブレット構造の特性は、加工対象物Sがどのような物体であるかに応じて、摩擦の低減効果が適切に得られるように最適化されてもよい。より具体的には、リブレット構造の特性は、使用中の(つまり、運用中)の加工対象物Sの周囲に分布する流体の種類、加工対象物Sの流体に対する相対速度、及び、加工対象物Sの形状等の少なくとも一つに応じて、摩擦の低減効果が適切に得られる適切な特性に設定されてもよい。更に、上述したリブレット構造の特性は、加工対象物Sがどのような物体であり且つその物体のどの部分にリブレット構造が形成されるかに応じて、摩擦の低減効果が適切に得られるような適切な特性に設定されてもよい。例えば、加工対象物Sが航空機PLの機体である場合には、胴体PL1に形成されるリブレット構造の特性と、主翼PL2に形成されるリブレット構造の特性とが異なっていてもよい。
【0087】
リブレット構造の特性は、リブレット構造のサイズを含んでいてもよい。リブレット構造のサイズは、凹状構造CP1の配列ピッチP1、各凹状構造CP1の深さD、凸状構造CP2の配列ピッチP2、各凸状構造CP2の高さH等の少なくとも一つを含んでいてもよい。リブレット構造の特性は、リブレット構造の形状(例えば、Z軸を含む断面(具体的には、XZ平面に沿った断面)の形状)を含んでいてもよい。リブレット構造の特性は、リブレット構造の延伸方向(つまり、凹状構造CP1の延伸方向)を含んでいてもよい。リブレット構造の特性は、リブレット構造の形成位置を含んでいてもよい。
【0088】
一例として、例えば、加工対象物Sが、巡航時に10kmの高度を時速1000kmで飛行する航空機の機体である場合には、凹状構造CP1の配列ピッチP1(つまり、凸状構造CP2の配列ピッチP2)は、例えば約78マイクロメートルに設定されてもよい。
【0089】
(1-2-2)加工動作の流れ
続いて、
図8から
図19を参照しながら、リブレット構造を形成するための加工動作の流れについて説明する。
【0090】
まず、上述したように、複数の加工光ELは、ガルバノミラー1122によって偏向される。リブレット構造を形成するためには、ガルバノミラー1122は、塗装膜SFの表面上で複数の目標照射領域EAをY軸方向に沿って移動させながら所望のタイミングで複数の加工光ELのそれぞれを対応する目標照射領域EAに照射するスキャン動作と、塗装膜SFの表面上で複数の目標照射領域EAを少なくともX軸方向に沿って所定量だけ移動させるステップ動作とを交互に繰り返すように、複数の加工光ELを偏向する。この場合、Y軸を、スキャン軸と称してもよいし、X軸を、ステップ軸と称してもよい。
【0091】
ここで、塗装膜SFに対して光照射装置11を静止させたままガルバノミラー1122の制御で複数の加工光ELを走査させることができる塗装膜SFの表面上の領域のサイズには限界がある。従って、第1実施形態では、
図8に示すように、制御装置2は、塗装膜SFの表面(特に、塗装膜SFのうちリブレット構造を形成するべき領域)に、複数の加工ショット領域SAを設定する。各加工ショット領域SAは、塗装膜SFに対して光照射装置11を静止させたままガルバノミラー1122の制御で複数の加工光ELを走査させることができる塗装膜SF上の領域に相当する。各加工ショット領域SAの形状は四角形であるが、その形状は任意である。
【0092】
制御装置2は、ガルバノミラー1122によって偏向される複数の加工光ELを一の加工ショット領域SA(例えばSA1)の一部に照射するように光照射装置11を制御することで、当該一の加工ショット領域SA(SA1)にリブレット構造を形成する。その後、制御装置2は、塗装膜SFに対して光照射装置11を移動させるように駆動系12及び15の少なくとも一方を制御することで、光照射装置11を、他の加工ショット領域SA(例えばSA2)に複数の加工光ELを照射することが可能な位置に配置する。その後、制御装置2は、ガルバノミラー1122によって偏向される複数の加工光ELを他の加工ショット領域SA(SA2)に照射するように光照射装置11を制御することで、当該他の加工ショット領域SAにリブレット構造を形成する。制御装置2は以下の動作を全ての加工ショット領域SA1からSA16を対象に繰り返すことで、リブレット構造を形成する。
【0093】
以下、
図8に示す加工ショット領域SA1からSA4にリブレット構造を形成する動作を例にあげて説明を続ける。尚、以下では、X軸方向に沿って隣接する二つの加工ショット領域SAが収容空間SP内に位置する例を用いて説明をする。しかしながら、収容空間SP内に任意の数の加工ショット領域SAが位置する場合においても、同様の動作が行われることに変わりはない。また、以下に示すリブレット構造を形成する動作は、あくまで一例であって、加工システムSYSは、以下に示す動作とは異なる動作を行ってリブレット構造を形成してもよい。要は、加工システムSYSは、複数の加工光ELを加工対象物Sに照射して加工対象物Sにリブレット構造を形成することができる限りは、どのような動作を行ってもよい。
【0094】
図9に示すように、まず、制御装置2は、収容空間SP内に加工ショット領域SA1及びSA2が位置する第1収容位置に収容装置13が配置されるように、駆動系15を制御して塗装膜SFに対して支持装置14を移動させる。つまり、制御装置2は、収容装置13により加工ショット領域SA1及びSA2が覆われるように、支持装置14が支持する収容装置13を移動させる。更に、制御装置2は、光照射装置11が加工ショット領域SA1に複数の加工光ELを照射することが可能な第1照射位置に配置されるように、駆動系12を制御して塗装膜SFに対して光照射装置11を移動させる。収容装置13が第1収容位置に配置され且つ光照射装置11が第1照射位置に配置された後は、隔壁部材132は、第1伸長状態になる。従って、隔壁部材132の端部134は、塗装膜SFに接触し且つ付着する。同様に、複数の脚部材142は、第2伸長状態になる。従って、複数の脚部材142の端部144は、塗装膜SFに接触し且つ付着する。
【0095】
その後、
図10(a)及び
図10(b)に示すように、制御装置2は、複数の加工光ELが加工ショット領域SA1を走査するように、光照射装置11(特に、ガルバノミラー1122)を制御する。具体的には、制御装置2は、上述したスキャン動作を行うために、加工ショット領域SA1内のある領域を複数の加工光ELがY軸方向に沿って走査するように、ガルバノミラー1122のY走査ミラー1122Yを制御する。スキャン動作が行われている間は、光源系111は、複数の加工光ELを射出する。その後、制御装置2は、上述したステップ動作を行うために、少なくともガルバノミラー1122のX走査ミラー1122Xを単位ステップ量だけ回転させる。ステップ動作が行われている間は、光源系111は、複数の加工光ELを射出しない。その後、制御装置2は、上述したスキャン動作を行うために、加工ショット領域SA1内のある領域を複数の加工光ELがY軸方向に沿って走査するように、ガルバノミラー1122のY走査ミラー1122Yを制御する。このように、制御装置2は、スキャン動作とステップ動作とを交互に繰り返して加工ショット領域SA1の全体(或いは、加工ショット領域SA1のうちリブレット構造を形成するべき一部の領域)を複数の加工光ELが走査するように、ガルバノミラー1122を制御する。尚、ステップ動作が行われている間において、複数の加工光ELを射出してもよい。
【0096】
つまり、第1実施形態では、スキャン動作とステップ動作とが繰り返される期間中の加工光ELの走査軌跡(つまり、目標照射領域EAの移動軌跡)を示す平面図である
図11に示すように、加工装置1は、加工ショット領域SA内に設定される複数のスキャン領域SCAに対して順にスキャン動作を行う。
図11は、加工ショット領域SA内に6個のスキャン領域SCA#1からSCA#6が設定される例を示している。各スキャン領域SCAは、1回のスキャン動作(つまり、ステップ動作を挟まない一連のスキャン動作)で照射される複数の加工光ELによって走査される領域である。各スキャン領域SCAは、1回のスキャン動作で複数の目標照射領域EAが移動する領域である。この場合、1回のスキャン動作で、目標照射領域EAは、各スキャン領域SCAのスキャン開始位置SC_startからスキャン終了位置SC_endに向かって移動する。このようなスキャン領域SCAは、典型的には、Y軸方向(つまり、複数の加工光ELの走査方向)に沿って延びる領域となる。複数のスキャン領域SCAは、X軸方向(つまり、複数の加工光ELの走査方向に交差する方向)に沿って並ぶ。
【0097】
この場合、加工システムSYSaは、例えば、ある加工ショット領域SAに設定される複数のスキャン領域SCAのうち最も+X側又は最も-X側に位置する一のスキャン領域SCAからスキャン動作を開始する。例えば、
図11は、加工システムSYSaが、最も-X側に位置するスキャン領域SCA#1からスキャン動作を開始する例を示している。この場合、制御装置2は、スキャン領域SCA#1のスキャン開始位置SC_start#1(例えば、スキャン領域SCA#1内の-Y側の端部又はその近傍)に対して加工光ELを照射可能となるように、ガルバノミラー1122を制御する。つまり、制御装置2は、スキャン領域SCA#1のスキャン開始位置SC_start#1に目標照射領域EAが設定されるように、ガルバノミラー1122を制御する。その後、加工システムSYSaは、スキャン領域SCA#1に対してスキャン動作を行う。具体的には、制御装置2は、スキャン領域SCA#1のスキャン開始位置SC_start#1からスキャン領域SCA#1のスキャン終了位置SC_end#1(例えば、スキャン領域SCA#1内の+Y側の端部又はその近傍)に向かって複数の目標照射領域EAが移動するように、ガルバノミラー1122を制御する。更に、制御装置2は、所望のタイミングで複数の加工光ELのそれぞれが対応する目標照射領域EAに照射されるように光照射装置11を制御する。その結果、複数の加工光ELによってスキャン領域SCA#1が走査される。尚、
図11では、図面の簡略化のために、各スキャン領域SCA内における1つの目標照射領域EAの移動軌跡を示しているが、実際には、各スキャン領域SCA内で複数の目標照射領域EAが移動する。つまり、
図11では、図面の簡略化のために、各スキャン領域SCA内における1つの加工光ELの走査軌跡を示しているが、実際には、各スキャン領域SCAは複数の加工光ELによって走査される。
【0098】
スキャン領域SCA#1に対するスキャン動作が完了した後、加工システムSYSaは、スキャン領域SCA#1とは異なる他のスキャン領域SCAに対してスキャン動作を行うために、ステップ動作を行う。具体的には、制御装置2は、スキャン領域SCA#1に対してX軸方向に沿って隣接するスキャン領域SCA#2のスキャン開始位置SC_start#2(例えば、スキャン領域SCA#2内の-Y側の端部又はその近傍)に対して加工光ELを照射可能となるように、ガルバノミラー1122を制御する。つまり、制御装置2は、スキャン領域SCA#2のスキャン開始位置SC_start#2に目標照射領域EAが設定されるように、ガルバノミラー1122を制御する。その結果、
図11に示すように、目標照射領域EAは、X軸方向及びY軸方向のそれぞれに沿って移動する。この際、X軸方向における目標照射領域EAの移動量は、X軸方向におけるスキャン領域SCAのサイズと同じであってもよい。Y軸方向における目標照射領域EAの移動量は、Y軸方向におけるスキャン領域SCAのサイズと同じであってもよい。
【0099】
その後、加工システムSYSaは、スキャン領域SCA#2に対してスキャン動作を行う。具体的には、制御装置2は、スキャン領域SCA#2のスキャン開始位置SC_start#2からスキャン領域SCA#2のスキャン終了位置SC_end#2(例えば、スキャン領域SCA#2内の+Y側の端部又はその近傍)に向かって複数の目標照射領域EAが移動するように、ガルバノミラー1122を制御する。更に、制御装置2は、所望のタイミングで複数の加工光ELのそれぞれが対応する目標照射領域EAに照射されるように光照射装置11を制御する。その結果、複数の加工光ELによってスキャン領域SCA#2が走査される。
【0100】
以降、スキャン領域SCA#3からSCA#6に対するスキャン動作が完了するまで、同様の動作が繰り返される。
【0101】
図11に示す例では、スキャン動作による加工光ELの走査方向は、+Y軸方向に固定されている。スキャン動作による目標照射領域EAの移動方向は、+Y軸方向に固定されている。つまり、
図11に示す例では、加工ショット領域SA内で複数回行われるスキャン動作による加工光ELの走査方向(つまり、目標照射領域EAの移動方向、以下同じ)は、互いに同じになる。複数のスキャン領域SCAをそれぞれ走査する複数の加工光ELの走査方向は、互いに同じになる。複数のスキャン領域SCA内での目標照射領域EAの移動方向は、互いに同じになる。具体的には、スキャン領域SCA#1に対して行われるスキャン動作による加工光ELの走査方向と、スキャン領域SCA#2に対して行われるスキャン動作による加工光ELの走査方向と、・・・、スキャン領域SCA#6に対して行われるスキャン動作による加工光ELの走査方向とは互いに同一である。
【0102】
このようなスキャン動作とステップ動作との繰り返しによって、加工ショット領域SA1にリブレット構造が形成される。尚、
図10(a)及び
図10(b)に示すように、加工光ELが走査する領域の幅(つまり、加工ショット領域SAの幅、特にX軸方向の幅)は、光照射装置11の幅(特に、X軸方向の幅)よりも大きい。
【0103】
このようなスキャン動作とステップ動作とが繰り返される過程で、ガルバノミラー1122の動作に起因して、目標照射領域EAの位置ずれが発生することがある。例えば、ガルバノミラー1122が動作し続けると、ガルバノミラー1122の温度が変わる(典型的には、上昇する)可能性がある。ガルバノミラー1122の温度が変わると、ガルバノミラー1122の温度が変わる前と比較して、ガルバノミラー1122の特性が変わる可能性がある。その結果、ガルバノミラー1122に対する目標照射領域EAの位置が変わる(つまり、目標照射領域EAの位置ずれが発生する)可能性がある。このような目標照射領域EAの位置ずれは、塗装膜SFの適切な加工の妨げとなる可能性がある。そこで、制御装置2は、目標照射領域EAの位置ずれを低減する(つまり、目標照射領域EAを本来の位置に近づける)ように、駆動系12を制御して塗装膜SFに対して光照射装置11を移動させてもよい。
【0104】
制御装置2は、光照射装置11が加工光ELを照射している期間中は、複数の脚部材142が第2伸長状態のまま維持されるように、駆動系15を制御する。その結果、複数の脚部材142の端部144は、塗装膜SFに付着し続ける。その結果、支持装置14の安定性が向上するため、支持装置14の不安定性に起因して加工光ELの目標照射領域EAが塗装膜SF上で意図せずにずれてしまう可能性が小さくなる。但し、光照射装置11が加工光ELを照射している期間の少なくとも一部において、支持装置14が塗装膜SF上で自立可能(或いは、塗装膜SFから吊り下がるように塗装膜SFに付着可能)である限りは、複数の脚部材142の一部が第2縮小状態にあってもよい。
【0105】
制御装置2は、光照射装置11が加工光ELを照射している期間中は、隔壁部材132が第1伸長状態のまま維持されるように、隔壁部材132を伸縮させる不図示の駆動系を制御する。その結果、隔壁部材132の端部134は、塗装膜SFに付着し続ける。その結果、収容空間SPの密閉性が維持されるため、収容空間SP内を伝搬する加工光ELが収容空間SPの外部(つまり、収容装置13の外部)に漏れ出てくることはない。更には、収容空間SP内で発生した不要物質が収容空間SPの外部(つまり、収容装置13の外部)に漏れ出てくることはない。
【0106】
尚、塗装膜SFに付着しているはずの端部134の少なくとも一部が、何らかの要因によって塗装膜SFから離れてしまう事態が生ずる可能性がある。この場合に光照射装置11が加工光ELを照射し続けると、加工光EL及び不要物質の少なくとも一方が収容装置13の外部に漏れ出てしまう可能性がある。そこで、制御装置2は、光照射装置11が加工光ELを照射している期間中に端部134の少なくとも一部が塗装膜SFから離れたことを検出した場合には、加工光ELの照射を停止するように光照射装置11を制御してもよい。
【0107】
その後、
図12に示すように、制御装置2は、光照射装置11が、第1照射位置から、光照射装置11が加工ショット領域SA2に複数の加工光ELを照射することが可能な第2照射位置へと移動するように、駆動系12を制御する。光照射装置11が移動している期間中は、制御装置2は、光照射装置11が加工光ELを照射しないように、光照射装置11を制御する。
【0108】
その後、
図13(a)及び
図13(b)に示すように、制御装置2は、複数の加工光ELが加工ショット領域SA2を走査するように、光照射装置11(特に、ガルバノミラー1122)を制御する。具体的には、制御装置2は、上述したスキャン動作と上述したステップ動作とを交互に繰り返して加工ショット領域SA2の全体(或いは、加工ショット領域SA2のうちリブレット構造を形成するべき一部の領域)を複数の加工光ELが走査するように、光照射装置11(特に、ガルバノミラー1122)を制御する。その結果、加工ショット領域SA2にリブレット構造が形成される。尚、加工ショット領域SA1内のリブレット構造を構成する複数の凹状構造CP1は、加工ショット領域SA1に隣接する加工ショット領域SA2(或いは、その他の加工ショット領域SA)内のリブレット構造を構成する複数の凹状構造CP1のそれぞれと、互いに連続に連結されるように形成されてもよい。或いは、加工ショット領域SA1内のリブレット構造を構成する複数の凹状構造CP1は、加工ショット領域SA2内のリブレット構造を構成する複数の凹状構造CP1のそれぞれと、互いに連結されないように形成されてもよい。例えば、加工ショット領域SA内で加工光ELを走査した結果として形成される1本の凹状構造CP1の連続長は、加工ショット領域SAのサイズ(特に、加工光ELの走査方向であるY軸方向のサイズ)に依存する。従って、加工ショット領域SAのサイズが、リブレット構造が上述した機能を果たしうる連続長を実現できるだけのサイズとなる場合には、加工ショット領域SA1内のリブレット構造を構成する複数の凹状構造CP1は、加工ショット領域SA2内のリブレット構造を構成する複数の凹状構造CP1のそれぞれと、互いに連結されないように形成されてもよい。一例として、加工対象物Sが航空機である場合には、リブレット構造が上述した機能を果たしうる連続長は、航空機の使用時(典型的には、巡航時)における対気速度と乱流現象の周波数とに基づく演算によれば、およそ数mmとなる。このため、Y軸方向のサイズがおよそ数mmよりも大きい加工ショット領域SAを塗装膜SFの表面に設定することができる場合には、加工ショット領域SA1内のリブレット構造を構成する複数の凹状構造CP1は、加工ショット領域SA2内のリブレット構造を構成する複数の凹状構造CP1のそれぞれと、互いに連結されないように形成されてもよい。
【0109】
加工ショット領域SA2にリブレット構造が形成された時点で、収容空間SPには、リブレット構造が未だ形成されていない加工ショット領域SAが残っていない。このため、駆動系12によって収容空間SP内で光照射装置11を移動させるだけでは、光照射装置11は、未だリブレット構造が形成されていない加工ショット領域SAに複数の加工光ELを照射してリブレット構造を形成することができない。そこで、リブレット構造が未だ形成されていない加工ショット領域SAが収容空間SPに残っていない状態になった場合には、制御装置2は、支持装置14を移動させることで(つまり、収容装置13を移動させることで)、リブレット構造が未だ形成されていない加工ショット領域SAが収容空間SP内に新たに位置するように、駆動系15を制御する。
【0110】
具体的には、まず、
図14に示すように、制御装置2は、隔壁部材132の状態が第1伸長状態から第1縮小状態に切り替わるように、隔壁部材132を伸縮させる不図示の駆動系を制御する。その結果、隔壁部材132の端部134が塗装膜SFから離れる。尚、支持装置14が移動する期間中は、制御装置2は、光照射装置11が加工光ELを照射しないように、光照射装置11を制御する。このため、端部134が塗装膜SFから離れたとしても、加工光EL及び不要物質の少なくとも一方が収容装置13の外部に漏れ出てくる可能性はない。
【0111】
但し、収容空間SPに存在していた不要物質は、上述した排気装置16によって収容空間SPの外部に吸引されるものの、何らかの要因によって、収容空間SPに存在していた不要物質の全てが排気装置16によって吸引されていない(つまり、収容空間SPに不要物質が残留してしまう)可能性がある。この場合には、端部134が塗装膜SFから離れると、不要物質が収容装置13の外部に漏れ出てくる可能性がある。このため、制御装置2は、収容空間SP内の不要物質を検出する検出装置135の検出結果に基づいて、隔壁部材132を第1伸長状態から第1縮小状態へと切り替えるか否かを判定してもよい。収容空間SPに不要物質が残留している場合には、制御装置2は、隔壁部材132を第1伸長状態から第1縮小状態へと切り替えなくてもよい。この場合、排気装置16によって、収容空間SPに残留している不要物質が吸引され続ける。一方で、収容空間SPに不要物質が残留していない場合には、制御装置2は、隔壁部材132を第1伸長状態から第1縮小状態へと切り替えてもよい。
【0112】
更に、制御装置2は、複数の脚部材142のうち支持装置14の移動(特に、後述するように、縮小していた梁部材141の伸長)に伴って塗装膜SFに対して移動する少なくとも一部の脚部材142の状態が、第2伸長状態から第2縮小状態に切り替わるように、駆動系15を制御する。縮小していた梁部材141の伸長に伴って塗装膜SFに対して移動する脚部材142は、典型的には、複数の脚部材142のうち支持装置14の移動方向(つまり、収容装置13の移動方向)の前方側に位置する脚部材142である。
図14に示す例では、支持装置14が+X側に向かって移動し、支持装置14の移動方向の前方側に位置する脚部材142は、+X側に位置する脚部材142である。以下、支持装置14の移動方向の前方側に位置する脚部材142を、“前方脚部材142”と称する。その結果、前方脚部材142の端部144が塗装膜SFから離れる。
【0113】
その後、
図15に示すように、制御装置2は、収容装置13が、第1収容位置から、収容空間SP内に加工ショット領域SA3及びSA4が位置する第2収容位置へと移動するように、駆動系15を制御する。具体的には、制御装置2は、支持装置14の移動方向に沿って梁部材141が伸長するように、駆動系15を制御する。その結果、梁部材141は、収容装置13を支持したまま(更には、収容装置13が支持する光照射装置11を支持したまま)伸長する。更に、支持装置14の移動と並行して、制御装置2は、光照射装置11が、第2照射位置から、光照射装置11が加工ショット領域SA3に複数の加工光ELを照射することが可能な第3照射位置へと移動するように、駆動系12を制御する。このように、第1実施形態では、支持装置14は、加工対象物Sによって支持された状態で自走可能である。このため、支持装置14は、自走装置と称されてもよい。
【0114】
支持装置14が移動している(つまり、縮小していた梁部材141が伸びている)期間中は、制御装置2は、隔壁部材132が第1縮小状態のまま維持されるように、隔壁部材132を伸縮させる不図示の駆動系を制御する。その結果、隔壁部材132の端部134と塗装膜SFとの接触によって支持装置14の移動(つまり、収容装置13の移動)が妨げられることはない。更には、支持装置14の移動中に端部134と塗装膜SFとの接触によって塗装膜SFが傷つけられることはない。但し、端部134と塗装膜SFとの接触によって支持装置14の移動が妨げられることがない場合には、支持装置14が移動している期間の少なくとも一部において、端部134の少なくとも一部が塗装膜SFに接触していてもよい。支持装置14の移動中に端部134と塗装膜SFとの接触によって塗装膜SFが傷つけられることがない場合には、支持装置14が移動している期間の少なくとも一部において、端部134の少なくとも一部が塗装膜SFに接触していてもよい。
【0115】
更に、支持装置14が移動している期間中は、制御装置2は、前方脚部材142が第2縮小状態のまま維持されるように、駆動系15を制御する。その結果、前方脚部材142の端部144と塗装膜SFとの接触によって支持装置14の移動(つまり、収容装置13の移動)が妨げられることはない。更には、支持装置14の移動中に端部144と塗装膜SFとの接触によって塗装膜SFが傷つけられることはない。但し、端部144と塗装膜SFとの接触によって支持装置14の移動が妨げられることがない場合には、支持装置14が移動している期間の少なくとも一部において、端部144の少なくとも一部が塗装膜SFに接触していてもよい。支持装置14の移動中に端部144と塗装膜SFとの接触によって塗装膜SFが傷つけられることがない場合には、支持装置14が移動している期間の少なくとも一部において、端部144の少なくとも一部が塗装膜SFに接触していてもよい。
【0116】
更に、支持装置14が移動している期間中は、制御装置2は、複数の脚部材142のうち前方脚部材142以外の他の脚部材142が第1伸長状態のまま維持されるように、駆動系15を制御する。その結果、前方脚部材142の端部144が塗装膜SFから離れたとしても、前方脚部材142以外の他の脚部材142の端部144が塗装膜SFに接触している。このため、複数の脚部材142の全ての端部144が塗装膜SFに接触している場合と同様に、支持装置14が塗装膜SF上で自立可能(或いは、塗装膜SFから吊り下がるように塗装膜SFに付着可能)であることに変わりはない。
【0117】
更に、支持装置14が移動している期間中は、制御装置2は、光照射装置11が加工光ELを照射しないように、光照射装置11を制御する。
【0118】
収容装置13が第2収容位置に配置された後、
図16に示すように、制御装置2は、隔壁部材132が第1縮小状態から第1伸長状態に切り替わるように、隔壁部材132を伸縮させる不図示の駆動系を制御する。その結果、隔壁部材132の端部134が塗装膜SFに接触し且つ付着する。更に、制御装置2は、前方脚部材142が第2縮小状態から第2伸長状態に切り替わるように、駆動系15を制御する。その結果、前方脚部材142の端部144が塗装膜SFに接触し且つ付着する。ここで、隔壁部材132の伸長動作と前方脚部材142の伸長動作とは同時に行われてもよいし、時間差をもって行われてもよい。
【0119】
その後、
図17に示すように、制御装置2は、複数の脚部材142のうち支持装置14の移動(特に、後述するように、伸長していた梁部材141の縮小)に伴って塗装膜SFに対して移動する少なくとも一部の脚部材142の状態が、第2伸長状態から第2縮小状態に切り替わるように、駆動系15を制御する。伸長していた梁部材141の縮小に伴って塗装膜SFに対して移動する脚部材142は、典型的には、複数の脚部材142のうち支持装置14の移動方向の後方側に位置する脚部材142である。
図17に示す例では、支持装置14の移動方向の後方側に位置する脚部材142は、-X側に位置する脚部材142である。以下、支持装置14の移動方向の後方側に位置する脚部材142を、“後方脚部材142”と称する。その結果、後方脚部材142の端部144が塗装膜SFから離れる。
【0120】
その後、
図18に示すように、制御装置2は、支持装置14の移動方向に沿って伸長していた梁部材141が縮小するように、駆動系15を制御する。
【0121】
梁部材141の縮小が完了した後、
図19に示すように、制御装置2は、後方脚部材142が第2縮小状態から第2伸長状態に切り替わるように、駆動系15を制御する。その結果、後方脚部材142の端部144が塗装膜SFに接触して付着する。
【0122】
その後は、制御装置2は、複数の加工光ELが加工ショット領域SA1及びSA2を走査する場合と同様に、複数の加工光ELが加工ショット領域SA3及びSA4を走査するように、光照射装置11を制御する。以下、同様の動作が繰り返されることで、塗装膜SFの表面(特に、塗装膜SFのうちリブレット構造を形成するべき領域)に複数の加工光ELが照射される。その結果、加工対象物S上に、塗装膜SFによるリブレット構造が形成される。
【0123】
(1-2-3)異物検査動作及び異物除去動作
上述したように、異物計測装置31及び制御装置2は、異物検査動作を行う。第1実施形態では、異物計測装置31及び制御装置2は、塗装膜SFの表面のうちの一の対象領域に対する加工動作が行われる前に、当該一の対象領域に対して異物検査動作を行う。つまり、加工装置1は、塗装膜SFの表面のうちの一の対象領域に対して異物検査動作が行われた後に、当該一の対象領域に対して加工動作を行う。加工装置1は、塗装膜SFの表面のうちの異物検査動作が行われた検査済み領域に対して加工動作を行う。加工装置1は、塗装膜SFの表面のうちの異物検査動作が行われていない未検査領域に対しては、加工動作を行わなくてもよい。但し、加工装置1は、塗装膜SFの表面のうちの異物検査動作が行われていない未検査領域の少なくとも一部に対して、加工動作を行なってもよい。
【0124】
例えば、異物計測装置31及び制御装置2は、複数の加工ショット領域SAのうちの一の加工ショット領域SAに対する加工動作が行われる前に、当該一の加工ショット領域SAに対して異物検査動作を行ってもよい。つまり、加工装置1は、一の加工ショット領域SAに対して異物検査動作が行われた後に、当該一の加工ショット領域SAに対して加工動作を行ってもよい。加工装置1は、塗装膜SFの表面のうちの異物検査動作が行われた加工ショット領域SAに対して加工動作を行ってもよい。加工装置1は、異物検査動作が行われていない加工ショット領域SAに対しては、加工動作を行わなくてもよい。
【0125】
例えば、異物計測装置31及び制御装置2は、一の加工ショット領域SA内の一の領域部分に対する加工動作が行われる前に、一の加工ショット領域SA内の一の領域部分に対して異物検査動作を行ってもよい。つまり、加工装置1は、一の加工ショット領域SA内の一の領域部分に対して異物検査動作が行われた後に、一の加工ショット領域SA内の一の領域部分に対して加工動作を行ってもよい。加工装置1は、一の加工ショット領域SAのうちの異物検査動作が行われた検査済み領域部分に対して加工動作を行ってもよい。加工装置1は、一の加工ショット領域SAのうちの異物検査動作が行われていない未検査領域部分に対しては、加工動作を行わなくてもよい。
【0126】
加工動作が行われる前に異物検査動作が行われる状態を実現するように、異物計測装置31と光照射装置11とが位置合わせされていてもよい。具体的には、異物計測装置31と光照射装置11とは、光照射装置11の移動方向に基づいて位置合わせされていてもよい。光照射装置11が移動すると目標照射領域EAが移動することから、異物計測装置31と光照射装置11とは、目標照射領域EAの移動方向に基づいて位置合わせされていてもよい。
【0127】
例えば、
図20は、塗装膜SF上に設定される二つの加工ショット領域SA#1及びSA#2を示す平面図である。特に、
図20は、二つの加工ショット領域SA#1及びSA#2がX軸方向に沿って並んでおり、且つ、加工ショット領域SA#1の+X側に加工ショット領域SA#2が設定される例を示している。ここで、光照射装置11が加工ショット領域SA#1からSA#2に対してこの順に加工動作を行う場合には、光照射装置11は、加工ショット領域SA#1の上方から加工ショット領域SA#2の上方に向かって移動する。つまり、光照射装置11は、塗装膜SFに対してX軸方向に沿って且つ+X側に向かって移動する。更には、光照射装置11の移動に合わせて、目標照射領域EAもまた、X軸方向に沿って且つ+X側に向かって移動する。この場合には、
図20に示すように、異物計測装置31と光照射装置11とは、異物計測装置31と光照射装置11とがX軸方向(つまり、光照射装置11の移動方向であり、目標照射領域EAの移動方向)に沿って並ぶように、位置合わせされていてもよい。更に、
図20に示すように、異物計測装置31と光照射装置11とは、光照射装置11の+X側(つまり、光照射装置11の移動方向における前方側であり、目標照射領域EAの移動方向における前方側)に異物計測装置31が配置されるように、位置合わせされていてもよい。その結果、
図20に示すように、塗装膜SF上において加工動作が行われる領域と、塗装膜SF上において異物検査動作が行われる領域とは、X軸方向(つまり、光照射装置11の移動方向であり、目標照射領域EAの移動方向)に沿って並ぶ。更に、
図20に示すように、加工動作が行われる領域の+X側(つまり、光照射装置11の移動方向における前方側であり、目標照射領域EAの移動方向における前方側)に異物検査動作が行われる領域が配置される。尚、
図20における加工動作が行われる領域は、典型的には、光照射装置11が加工光ELを照射する領域(
図20に示す例では、加工ショット領域SA#1を少なくとも部分的に含む領域)である。
図20における異物検査動作が行われる領域は、典型的には、被計測領域AMAの少なくとも一部が設定される領域(
図20に示す例では、加工ショット領域SA#2を少なくとも部分的に含む領域)である。その結果、異物計測装置31は、加工装置1が加工ショット領域SA#2に対して加工動作を行う前に、加工ショット領域SA#2に対して異物検査動作を行うことができる。加工装置1は、異物計測装置31が加工ショット領域SA#1に対して異物検査動作を行った後に、加工ショット領域SA#1に対して加工動作を行うことができる。このため、加工動作が行われる前に異物検査動作が行われる状態が実現可能である。
【0128】
図20に示す例において、異物計測装置31は、加工装置1が加工ショット領域SA#1に対して加工動作を行っている期間の少なくとも一部において、加工ショット領域SA#2に対して異物検査動作を行ってもよい。つまり、加工装置1による塗装膜SF上の一の領域に対する加工動作と、異物計測装置31による塗装膜SF上の他の領域に対する異物検査動作とが並行して行われてもよい。但し、加工装置1による塗装膜SF上の一の領域に対する加工動作と、異物計測装置31による塗装膜SF上の他の領域に対する異物検査動作とが並行して行われなくてもよい。例えば、異物計測装置31は、加工装置1が加工動作を行っていない期間(つまり、加工光ELを塗装膜SFに照射していない期間)の少なくとも一部において、異物検査動作を行ってもよい。
【0129】
尚、
図20に示す例において、加工動作が行われる領域と異物検査動作が行われる領域とがX軸方向に沿って並び且つ加工動作が行われる領域の+X側に異物検査動作が行われる領域が配置される限りは、光照射装置11と異物計測装置31とがX軸方向に沿って並んでいなくてもよいし、光照射装置11の+X側に異物計測装置31が配置されていなくてもよい。つまり、異物計測装置31と光照射装置11とは、加工動作が行われる領域と異物検査動作が行われる領域とがX軸方向に沿って並び且つ加工動作が行われる領域の+X側に異物検査動作が行われる領域が配置されるように、位置合わせされていてもよい。この場合であっても、加工動作が行われる前に異物検査動作が行われる状態が実現可能である。
【0130】
或いは、例えば、
図21は、ある加工ショット領域SAに対して行われる加工動作による目標照射領域EAの移動軌跡を示す平面図である。
図21に示すように(更には、
図11を参照しながら既に説明したように)、加工ショット領域SA内では、スキャン動作によって目標照射領域EAがY軸方向に沿って且つ-Y側から+Y側に向かって移動する。この場合には、
図21に示すように、異物計測装置31と光照射装置11とは、異物計測装置31と光照射装置11とがY軸方向(つまり、目標照射領域EAの移動方向)に沿って並ぶように、位置合わせされていてもよい。更に、
図21に示すように、異物計測装置31と光照射装置11とは、光照射装置11の+Y側(つまり、目標照射領域EAの移動方向における前方側)に異物計測装置31が配置されるように、位置合わせされていてもよい。その結果、
図21に示すように、塗装膜SF上において加工動作が行われる領域と、塗装膜SF上において異物検査動作が行われる領域とは、Y軸方向(つまり、目標照射領域EAの移動方向)に沿って並ぶ。更に、
図21に示すように、加工動作が行われる領域の+Y側(つまり、目標照射領域EAの移動方向における前方側)に異物検査動作が行われる領域が配置される。尚、
図21における加工動作が行われる領域は、典型的には、目標照射領域EAが設定されている領域である。
図21における異物検査動作が行われる領域は、典型的には、被計測領域AMAの少なくとも一部が設定される領域である。その結果、異物計測装置31は、加工装置1が加工ショット領域SA内の一の領域に対して加工動作を行う前に(具体的には、加工光ELを照射する前に)、加工ショット領域SA内の一の領域に対して異物検査動作を行うことができる。このため、加工動作が行われる前に異物検査動作が行われる状態が実現可能である。
【0131】
図21に示す例において、異物計測装置31は、加工装置1がある加工ショット領域SA内の一の領域に対して加工動作を行っている期間の少なくとも一部において、同じ加工ショット領域SA内の他の領域に対して異物検査動作を行ってもよい。
【0132】
尚、
図21に示す例において、加工動作が行われる領域と異物検査動作が行われる領域とがY軸方向に沿って並び且つ加工動作が行われる領域の+Y側に異物検査動作が行われる領域が配置される限りは、光照射装置11と異物計測装置31とがY軸方向に沿って並んでいなくてもよいし、光照射装置11の+Y側に異物計測装置31が配置されていなくてもよい。つまり、異物計測装置31と光照射装置11とは、加工動作が行われる領域と異物検査動作が行われる領域とがY軸方向に沿って並び且つ加工動作が行われる領域の+Y側に異物検査動作が行われる領域が配置されるように、位置合わせされていてもよい。この場合であっても、加工動作が行われる前に異物検査動作が行われる状態が実現可能である。
【0133】
図20及び
図21は、一の加工ショット領域SAに対する加工動作が終了してから他の加工ショット領域SAに対する加工動作を開始するために光照射装置11が移動する方向(
図20におけるX軸方向)と、加工ショット領域SA内におけるスキャン動作での目標照射領域EAの移動方向(
図21におけるY軸方向)とが異なる例を示している。しかしながら、一の加工ショット領域SAに対する加工動作が終了してから他の加工ショット領域SAに対する加工動作を開始するために光照射装置11が移動する方向と、加工ショット領域SA内におけるスキャン動作での目標照射領域EAの移動方向とが同じであってもよい。この場合、
図20に示す状況及び
図21に示す状況の双方において、加工動作が行われる前に異物検査動作が行われる状態が実現可能である。
【0134】
或いは、加工システムSYSaは、光照射装置11に対する相対位置が異なる複数の異物計測装置31を備えていてもよい。この場合、複数の異物計測装置31のうちの第1の異物計測装置31は、光照射装置11の移動方向に沿って光照射装置11と並んでおり、且つ、光照射装置11よりも、光照射装置11の移動方向における前方側に配置されていてもよい。例えば、第1の異物計測装置31は、X軸方向に沿って光照射装置11と並んでおり、且つ、光照射装置11の+X側に配置されていてもよい。一方で、複数の異物計測装置31のうちの第2の異物計測装置31は、目標照射領域EAの移動方向に沿って光照射装置11と並んでおり、且つ、光照射装置11よりも、目標照射領域EAの移動方向における前方側に配置されていてもよい。例えば、第2の異物計測装置31は、Y軸方向に沿って光照射装置11と並んでおり、且つ、光照射装置11の+Y側に配置されていてもよい。この場合であっても、
図20に示す状況及び
図21に示す状況の双方において(つまり、光照射装置11の移動方向と目標照射領域EAの移動方向とが異なる場合において)、加工動作が行われる前に異物検査動作が行われる状態が実現可能である。
【0135】
制御装置2は、異物検査動作の結果に基づいて、加工装置1を制御してもよい。例えば、制御装置2は、塗装膜SFの表面のうちの一の領域に異物が存在しないことが異物検査動作によって判明した場合には、当該一の領域に対する加工動作を開始するように加工装置1を制御してもよい。一方で、例えば、制御装置2は、塗装膜SFの表面のうちの一の領域に異物が存在することが異物検査動作によって判明した場合には、当該一の領域に対する加工動作を開始しないように加工装置1を制御してもよい。つまり、制御装置2は、塗装膜SFの表面のうちの一の領域に異物が存在することが異物検査動作によって判明した場合には、加工装置1を一時的に停止させてもよい。
【0136】
塗装膜SFの表面のうちの一の領域に異物が存在することが異物検査動作によって判明した場合には、制御装置2は、異物検査動作の結果に基づいて、一の領域から異物を除去する(つまり、一の領域に対して異物除去動作を行う)ように、異物除去装置32を制御してもよい。つまり、異物除去装置32は、異物検査動作の結果に基づいて、異物検査動作によって異物が存在すると判明した一の領域から異物を除去してもよい。異物除去装置32によって異物が除去されると、上述したように、加工光ELの照射による一の領域の適切な加工にとって障害となり得る異常事象が解消されたことになる。このため、制御装置2は、異物除去装置32によって一の領域から異物が除去された後に、一の領域に対する加工動作を開始するように加工装置1を制御してもよい。尚、異物除去装置32は、異物を除去することで異常事象を解消するがゆえに、異常事象を解消するための解消装置と称されてもよい。
【0137】
このように、塗装膜SFの表面のうちの一の領域に異物が存在することが異物検査動作によって判明した場合には、異物除去装置32は、加工動作が行われる前に、異物除去動作を行う。つまり、加工装置1は、異物除去動作が行われた後に、加工動作を行う。具体的には、異物除去装置32は、塗装膜SFの表面のうちの一の対象領域に対する加工動作が行われる前に、当該一の対象領域に対して異物除去動作を行う。つまり、加工装置1は、塗装膜SFの表面のうちの一の対象領域に対して異物除去動作が行われた後に、当該一の対象領域に対して加工動作を行う。加工装置1は、塗装膜SFの表面のうちの異物除去動作が行われた除去済み領域に対して加工動作を行う。加工装置1は、塗装膜SFの表面のうちの異物除去動作が行われていない未除去領域に対しては、加工動作を行わなくてもよい。
【0138】
加工動作が行われる前に異物除去動作が行われる状態を実現するように、異物除去装置32と光照射装置11とが位置合わせされていてもよい。具体的には、異物除去装置32と光照射装置11とは、異物計測装置31と光照射装置11との位置合わせの基準と同様の基準に従って位置合わせされていてもよい。具体的には、異物除去装置32と光照射装置11とは、異物除去装置32と光照射装置11とが、光照射装置11及び/又は目標照射領域EAの移動方向に沿って並ぶように、位置合わせされていてもよい。異物除去装置32と光照射装置11とは、異物除去装置32が、光照射装置11よりも、光照射装置11及び/又は目標照射領域EAの移動方向における前方側に配置されるように、位置合わせされていてもよい。塗装膜SF上において加工動作が行われる領域と、塗装膜SF上において異物除去動作が行われる領域とは、光照射装置11及び/又は目標照射領域EAの移動方向に沿って並んでいてもよい。異物除去動作が行われる領域は、加工動作が行われる領域よりも、光照射装置11及び/又は目標照射領域EAの移動方向における前方側に配置されてもよい。
【0139】
或いは、加工システムSYSaは、光照射装置11に対する相対位置が異なる複数の異物除去装置32を備えていてもよい。この場合、複数の異物除去装置32のうちの第1の異物除去装置32は、光照射装置11の移動方向に沿って光照射装置11と並んでおり、且つ、光照射装置11よりも、光照射装置11の移動方向における前方側に配置されていてもよい。一方で、複数の異物除去装置32のうちの第2の異物除去装置32は、目標照射領域EAの移動方向に沿って光照射装置11と並んでおり、且つ、光照射装置11よりも、目標照射領域EAの移動方向における前方側に配置されていてもよい。この場合であっても、
図20に示す状況及び
図21に示す状況の双方において(つまり、光照射装置11の移動方向と目標照射領域EAの移動方向とが異なる場合において)、加工動作が行われる前に異物除去動作が行われる状態が実現可能である。
【0140】
異物除去装置32によって異物が除去されたか否かを判定するために、制御装置2は、異物除去装置32が一の領域に対して異物除去動作を行った後に、一の領域に対する加工動作が開始される前に一の領域に対して異物検査動作を再度行うように、異物計測装置31を制御してもよい。一の領域に対して再度行われた異物検査動作によって一の領域から異物が除去されたと判定された場合には、制御装置2は、一の領域に対する加工動作を開始するように加工装置1を制御してもよい。一方で、一の領域に対して再度行われた異物検査動作によって一の領域から異物が未だ除去されてないと判定された場合には、制御装置2は、一の領域から異物を除去するように、異物除去装置32を制御してもよい。
【0141】
制御装置2は、塗装膜SFの表面のうちの一の領域に異物が存在することが異物検査動作によって判明した場合であっても、当該異物の特性によっては、当該一の領域から異物を除去することなく加工動作を開始するように加工装置1を制御してもよい。例えば、制御装置2は、一の領域に存在する異物のサイズが所定サイズ未満である場合には、当該一の領域から異物を除去することなく加工動作を開始するように加工装置1を制御してもよい。というのも、異物のサイズが小さくなるほど、加工光ELの照射による一の領域の適切な加工が異物によって妨げられる可能性は小さくなる。このため、異物のサイズが、加工光ELの照射による一の領域の適切な加工にとって支障とならないほどに小さければ、加工装置1は、異物の影響を受けることなく一の領域を加工することができるはずである。このため、異物のサイズと比較される閾値である所定サイズは、加工光ELの照射による一の領域の適切な加工にとって支障となる異物と、加工光ELの照射による一の領域の適切な加工にとって支障とならない異物とを、そのサイズに基づいて区別可能な適切な値に設定されていてもよい。一の領域から異物を除去することなく加工動作を開始する場合には、加工装置1は、異物ごと塗装膜SFを加工してもよい。つまり、加工装置1は、塗装膜SFと共に異物に加工光ELを照射することで塗装膜SFを加工してもよい。この場合、異物は、加工光ELの照射によって蒸発してもよいし、加工光ELの照射によって燃焼してもよい。
【0142】
制御装置2は、異物検査動作に関する情報を表示するように、ディスプレイ4を制御してもよい。例えば、制御装置2は、異物検査動作の結果に関する情報を表示するように、ディスプレイ4を制御してもよい。例えば、制御装置2は、異物検査動作によって異物が検出されたか否かを示す情報を表示するように、ディスプレイ4を制御してもよい。異物検査動作によって異物が検出された場合には、例えば、制御装置2は、異物に起因して加工動作を開始することができない警告を表示するように、ディスプレイ4を制御してもよい。例えば、制御装置2は、異物検査動作によって異物が検出された場所(つまり、塗装膜SF上の位置)に関する情報を表示するように、ディスプレイ4を制御してもよい。例えば、制御装置2は、異物検査動作によって検出された異物の特性に関する情報を表示するように、ディスプレイ4を制御してもよい。異物検査動作に関する情報がディスプレイ4に表示されると、加工システムSYSaのオペレータは、ディスプレイ4の表示結果から、塗装膜SFの表面上のどこにどのような異物が存在するかを把握することができる。この場合、オペレータは、オペレータ自身で異物を除去してもよい。つまり、異物除去装置32が必ずしも異物を除去しなくてもよい。
【0143】
制御装置2は、異物除去動作に関する情報を表示するように、ディスプレイ4を制御してもよい。例えば、制御装置2は、異物除去動作の結果に関する情報を表示するように、ディスプレイ4を制御してもよい。例えば、制御装置2は、異物除去動作によって異物が除去されたか否かを示す情報を表示するように、ディスプレイ4を制御してもよい。異物除去動作によって異物が除去された場合には、例えば、制御装置2は、異物が除去されたがゆえに加工動作が開始されることをオペレータに通知するための情報を表示するように、ディスプレイ4を制御してもよい。異物除去動作によって異物が除去されなかった場合には、例えば、制御装置2は、異物が除去できないことに起因して加工動作を開始することができない警告を表示するように、ディスプレイ4を制御してもよい。
【0144】
(1-4)加工システムSYSaの技術的効果
以上説明したように、第1実施形態の加工システムSYSaは、加工光ELを加工対象物S(特に、その表面に形成された塗装膜SF)に照射することで、加工対象物Sの表面に、塗装膜SFによるリブレット構造を形成することができる。このため、加工システムSYSaは、加工対象物Sの表面をエンドミル等の切削工具で削り取ることでリブレット構造を形成する加工装置と比較して、比較的容易に且つ相対的に短時間でリブレット構造を形成することができる。
【0145】
更に、加工システムSYSaは、複数の加工光ELを同時に照射して複数の凹状構造CP1を同時に形成することができる。このため、単一の加工光ELを照射して一度に単一の凹状構造CP1しか形成することができない加工装置と比較して、リブレット構造の形成に関するスループットが向上する。
【0146】
更に、加工システムSYSaは、ガルバノミラー1122で複数の加工光ELを偏向して、塗装膜SFを相対的に高速に走査することができる。このため、リブレット構造の形成に関するスループットが向上する。
【0147】
更に、加工システムSYSaは、加工対象物Sを直接的に加工することに代えて、加工対象物Sの表面に形成されている塗装膜SFを加工することで、加工対象物Sの表面にリブレット構造を形成することができる。このため、リブレット構造を形成するための特別な材料を加工対象物Sの表面(つまり、塗装膜SFの表面)に新たに付加する(例えば、貼り付ける)ことでリブレット構造を形成する加工システムと比較して、リブレット構造の形成に起因した加工対象物Sの重量の増加が回避可能である。
【0148】
更に、加工システムSYSaは、加工対象物Sを直接的に加工しないがゆえに、リブレット構造を比較的容易に再形成することができる。具体的には、リブレット構造の再形成の際には、まずは、塗装膜SFによるリブレット構造が一旦剥離され、その後、新たな塗装膜SFが塗布される。その後、加工システムSYSaは、新たに塗布された塗装膜SFを加工することで、新たなリブレット構造を形成することができる。従って、リブレット構造の劣化(例えば、破損等)に対して、リブレット構造の再形成によって相対的に容易に対処可能となる。
【0149】
更に、加工システムSYSaは、加工対象物Sを直接的に加工しないがゆえに、直接の加工が困難な又はリブレット構造がもともと形成されていない加工対象物Sの表面にもリブレット構造を形成することができる。つまり、加工対象物Sの表面に塗装膜SFが塗布された後に加工システムSYSaが塗装膜SFを加工すれば、リブレット構造を比較的容易に形成可能である。
【0150】
尚、加工対象物Sに塗装膜SFを塗布した後に塗装膜SFを加工する場合には、加工対象物Sを加工する動作は、加工対象物Sに塗装膜SFを塗布する(つまり、形成する)動作と、塗装膜SFを加工する(例えば、塗装膜SFを部分的に除去する)動作とを含んでいてもよい。加工対象物Sに塗装膜SFを塗布する動作は、加工システムSYSaによって行われてもよい。この場合、加工システムSYSaは、加工対象物Sに塗装膜SFを塗布するための塗布装置を備えていてもよい。或いは、加工対象物Sに塗装膜SFを塗布する動作は、加工システムSYSaの外部で行われてもよい。例えば、加工対象物Sに塗装膜SFを塗布する動作は、加工システムSYSaの外部の塗布装置によって行われてもよい。
【0151】
更に、加工システムSYSaは、塗装膜SFによるリブレット構造を形成することができる。塗装膜SFは、通常は、外部環境(例えば、熱、光、及び風等の少なくとも一つ)に対して相対的に高い耐久性を有している。このため、加工システムSYSaは、相対的に高い耐久性を有するリブレット構造を、比較的容易に形成することができる。
【0152】
更に、第1実施形態では、光学系112の終端光学素子と塗装膜SFとの間における加工光ELの光路が収容空間SP内に含まれている。このため、加工光ELの光路が収容空間SPに含まれていない(つまり、開放空間に開放されている)加工システムと比較して、塗装膜SFに照射された加工光EL(或いは、当該加工光ELの塗装膜SFからの散乱光ないしは反射光等)が加工システムSYSaの周囲へ伝搬する(言い換えれば、散乱してしまう)ことを適切に防止可能である。更には、加工光ELの照射によって発生した不要物質が加工システムSYSaの周囲へ伝搬する(言い換えれば、飛散してしまう)ことを適切に防止可能である。
【0153】
更に、第1実施形態では、塗装膜SF上を移動可能な支持装置14によって光照射装置11が支持されている。このため、加工システムSYSaは、相対的に広範囲に広がる塗装膜SFを比較的容易に加工することができる。つまり、加工システムSYSaは、加工対象物Sの表面の相対的に広い範囲に渡って塗装膜SFによるリブレット構造を形成することができる。更には、加工システムSYSaは、加工対象物Sを移動させなくてもよいため、相対的に大きな又は重い加工対象物Sの表面にも、相対的に容易にリブレット構造を形成することができる。
【0154】
更に、加工システムSYSaは、排気装置16を用いて、加工光ELの照射によって発生した不要物質を、収容空間SPの外部に吸引可能である。このため、塗装膜SFへの加工光ELの照射が、不要物質によって妨げられることは殆どない。このため、排気装置16を備えていない(つまり、塗装膜SFへの加工光ELの照射が不要物質によって妨げられる可能性がある)加工システムと比較して、加工光ELの照射精度が向上する。その結果、リブレット構造の形成精度が向上する。
【0155】
更に、加工装置1は、気体供給装置17を用いて、光学面1124(つまり、光学系112の終端光学素子の収容空間SP側の光学面)への汚れの付着を防止することができる。このため、気体供給装置17を備えていない加工装置と比較して、塗装膜SFへの加工光ELの照射が、光学面1124に付着してしまった汚れによって妨げられる可能性が小さくなる。このため、加工光ELの照射精度が向上する。その結果、リブレット構造の形成精度が向上する。
【0156】
また、第1実施形態では、加工システムSYSaは、異物計測装置31を用いて、塗装膜SFの表面上において異物検査動作を行うことができる。このため、異物検査動作が行われない場合と比較して、加工光ELの照射による塗装膜SFの適切な加工が、異物によって妨げられる可能性が低減される。具体的には、異物検査動作によって異物が存在すると判定された場合には、加工動作が開始されない。このため、異物が存在すると判定された場合であっても加工動作がそのまま開始される場合と比較して、加工光ELの照射による塗装膜SFの適切な加工が、異物によって妨げられる可能性が低減される。
【0157】
また、加工システムSYSaは、異物除去装置32を用いて、塗装膜SFの表面から異物を除去することができる。このため、異物が存在すると判定された場合であっても、加工システムSYSaは、異物の影響を受けることなく、塗装膜SFを適切に加工することができる。
【0158】
また、加工システムSYSaは、異物が存在すると判定された場合であっても、異物の特性によっては、異物を除去することなく加工動作を開始することができる。このため、異物の存在に起因して加工動作の実行が過度に制限されてしまうことはない。従って、異物の特性に係らず異物を除去しなければ加工動作が開始されない場合と比較して、加工システムSYSaのスループットが向上する。
【0159】
(1-5)加工システムSYSaの変形例
加工システムSYSaは、異物計測装置31を備えていなくてもよい。つまり、加工システムSYSaは、異物検査動作を行わなくてもよい。この場合、制御装置2は、異物検査動作の結果を用いることなく、異物除去動作を行うように異物除去装置32を制御してもよい。例えば、制御装置2は、塗装膜SFの表面の全体に対して異物除去動作を行うように異物除去装置32を制御してもよい。制御装置2は、塗装膜SFの表面のうち加工動作が行われる(特に、加工光ELが照射される)領域に対して異物除去動作を行うように異物除去装置32を制御してもよい。制御装置2は、塗装膜SFの表面のうち異物が実際に存在する領域(但し、異物検査動作が行われないがゆえに、その領域に異物が存在するかは判定できない領域)に対して異物除去動作を行うように異物除去装置32を制御してもよい。制御装置2は、塗装膜SFの表面のうち異物が実際には存在しない領域(但し、異物検査動作が行われないがゆえに、その領域に異物が存在しないかは判定できない領域)に対して異物除去動作を行うように異物除去装置32を制御してもよい。この場合には、制御装置2は、塗装膜SFの表面のうち異物除去動作が行われた領域には異物が存在しないものとみなして、異物除去動作が行われた領域に対して加工動作を行うように加工装置1を制御してもよい。
【0160】
加工システムSYSaは、異物除去装置32を備えていなくてもよい。この場合、塗装膜SFの表面のうちの一の領域に異物が存在することが異物検査動作によって判明した場合には、加工システムSYSaのオペレータが異物を除去してもよい。
【0161】
異物計測装置31は、異物に加えて又は代えて、塗装膜SFの表面に生じている欠陥を計測してもよい。具体的には、異物計測装置31は、被計測領域AMAに生じている欠陥を計測してもよい。特に、第1実施形態では、異物計測装置31は、リブレット構造が形成される前の塗装膜SFの表面に生じている欠陥(つまり、塗装膜SFそのものの欠陥)を計測してもよい。このような塗装膜SFそのものの欠陥の一例として、塗装膜SFの少なくとも部分的な剥離、塗装膜SFの少なくとも部分的な厚みムラ、塗装膜SFの表面の少なくとも一部に意図せず生じた凹部(例えば、窪み)、及び、塗装膜SFの表面の少なくとも一部に意図せず生じた凸部の少なくとも一つがあげられる。但し、後に第2実施形態で詳述するように、異物計測装置31は、リブレット構造が形成された後の塗装膜SFの表面に生じている欠陥(つまり、塗装膜SFそのものの欠陥及び塗装膜SFの表面に形成されたリブレット構造の欠陥の少なくとも一方)を計測してもよい。尚、異物計測装置31が欠陥を計測する場合には、異物計測装置31は、欠陥計測装置と称されてもよい。或いは、加工システムSYSaは、異物計測装置31に加えて又は代えて、塗装膜SFの表面に生じている欠陥を計測するための欠陥計測装置を備えていてもよい。
【0162】
塗装膜SFの表面に欠陥が生じている場合には、加工光ELの少なくとも一部が塗装膜SFに適切な状態で照射されなくなる可能性がある。その結果、加工光ELの照射による塗装膜SFの適切な加工に支障が生ずる可能性がある。つまり、加工光ELの照射による塗装膜SFの適切な加工が、欠陥によって妨げられる可能性がある。このため、塗装膜SFの表面に欠陥が生じているという事象は、加工光ELの照射による塗装膜SFの適切な加工にとって障害となり得る異常事象の一具体例に相当する。
【0163】
異物計測装置31は、異物を計測する場合と同様の動作を行うことで、欠陥を計測してもよい。なぜならば、異物が存在する場合と異物が存在しない場合とで塗装膜SFの表面の状態が異なる場合と同様に、欠陥が生じている場合と欠陥が生じていない場合とで塗装膜SFの表面の状態が異なるからである。従って、異物計測装置31による欠陥を計測する動作の詳細な説明については省略する。
【0164】
異物計測装置31が欠陥を計測する場合には、制御装置2は、異物計測装置31の計測結果(上述した説明では、“異物計測情報”と称していたが、ここでは“欠陥計測情報”と称する)に基づいて、被計測領域AMAに対する欠陥検査動作を行ってもよい。尚、欠陥検査動作は、欠陥を対象にしている動作であるという点で、異物を対象にしている動作である異物検査動作とは異なる。欠陥検査動作の内容は、動作の対象が欠陥であるという点を除いて、動作の対象が異物である異物検査動作の内容と同一であってもよい。例えば、制御装置2は、被計測領域AMAに欠陥が生じているか否かを判定する欠陥検出動作を行ってもよい。例えば、制御装置2は、欠陥の特性(つまり、欠陥の状態であり、例えば、欠陥の形状及びサイズの少なくとも一方)を算出してもよい。例えば、制御装置2は、欠陥の数を算出してもよい。制御装置2は、欠陥計測情報と、塗装膜SFの表面の特徴に関する特徴情報とに基づいて、欠陥検査動作を行ってもよい。このため、欠陥検査動作の詳細な説明については省略する。
【0165】
異物計測装置31が欠陥を計測する場合には、異物除去装置32は、欠陥を補修するための欠陥補修動作を行ってもよい。具体的には、異物除去装置32は、除去領域RA(但し、この場合には、除去領域は、補修領域と称されてもよい)に生じている欠陥を補修してもよい。尚、異物除去装置32が欠陥を補修する場合には、異物除去装置32は、欠陥補修装置と称されてもよい。或いは、加工システムSYSaは、異物除去装置32に加えて又は代えて、塗装膜SFの表面に生じている欠陥を補修するための欠陥補修装置を備えていてもよい。
【0166】
欠陥補修動作は、欠陥を補修可能である限りは、どのような動作を含んでいてもよい。つまり、異物除去装置32は、欠陥を補修可能である限りは、どのような装置であってもよい。例えば、異物除去装置32は、塗装膜SFの表面の状態が理想的な状態になるように、塗装膜SFの表面の少なくとも一部に材料を付加する(例えば、補修用の充填部材(例えば、パテ)を充填する)ことで、欠陥を補修してもよい。例えば、異物除去装置32は、塗装膜SFの表面の状態が理想的な状態になるように、塗装膜SFの表面の少なくとも一部を除去する(例えば、削り取る)ことで、欠陥を補修してもよい。
【0167】
(2)第2実施形態の加工システムSYSb
続いて、第2実施形態の加工システムSYS(以降、第2実施形態の加工システムSYSを、“加工システムSYSb”と称する)について説明する。
【0168】
(2-1)加工システムSYSbの構造
初めに、
図22を参照しながら、第2実施形態の加工システムSYSbの構造について説明する。
図22は、第2実施形態の加工システムSYSbの全体構造を模式的に示す断面図である。
【0169】
図22に示すように、第2実施形態の加工システムSYSbは、第1実施形態の加工システムSYSaと比較して、欠陥計測装置33bと、欠陥補修装置34bとを備えているという点で異なる。加工システムSYSbのその他の特徴は、加工システムSYSaのその他の特徴と同一であってもよい。但し、加工システムSYSbは、異物計測装置31及び異物除去装置32を備えていなくてもよい。
【0170】
欠陥計測装置33bは、制御装置2の制御下で、塗装膜SFの表面に生じている欠陥を計測する。具体的には、欠陥計測装置33bは、制御装置2の制御下で、塗装膜SFの表面のうち欠陥計測装置33bの計測範囲に含まれる領域(以降、“被計測領域DMA”と称する)に生じている欠陥を計測する。尚、欠陥検査装置33bは、制御装置2による制御とは関わりなく塗装膜SFの表面に生じている欠陥を計測してもよい。
【0171】
欠陥計測装置33bは、加工動作によってリブレット構造が形成される前の塗装膜SFの表面に生じている欠陥(つまり、塗装膜SFそのものの欠陥)を計測してもよい。塗装膜SFそのものの欠陥の一例は、上述した第1実施形態の変形例で説明済みである。
【0172】
欠陥計測装置33bは、加工動作によってリブレット構造が形成された後の塗装膜SFの表面に生じている欠陥を計測してもよい。リブレット構造が形成された後の塗装膜SFの表面に生じている欠陥は、塗装膜SFそのものの欠陥及び塗装膜SFの表面に形成されたリブレット構造の欠陥の少なくとも一方を含む。リブレット構造の欠陥は、リブレット構造の特性(つまり、特徴)の欠陥を含む。リブレット構造の特性は、リブレット構造の形成位置、リブレット構造の断面形状、リブレット構造の高さ(具体的には、上述した凸状構造CP2の高さH及び凹状構造CP1の深さDの少なくとも一方)、及び、リブレット構造の配列ピッチ(具体的には、上述した凸状構造CP2の配列ピッチP2H及び凹状構造CP1の配列ピッチP1の少なくとも一方)の少なくとも一つを含んでいてもよい。リブレット構造の特性の欠陥は、リブレット構造の実際の特性と設計上の特性(つまり、理想的な特性)との差分(つまり、誤差)が許容値を上回る状態を意味していてもよい。例えば、リブレット構造の形成位置の欠陥は、リブレット構造の実際の形成位置と設計上の形成位置との差分が第1許容値を上回る状態を意味していてもよい。例えば、リブレット構造の断面形状の欠陥は、リブレット構造の実際の断面形状と設計上の断面形状との差分が第2許容値を上回る状態を意味していてもよい。例えば、リブレット構造の形成位置の欠陥は、リブレット構造の実際の高さと設計上の高さとの差分が第3許容値を上回る状態を意味していてもよい。例えば、リブレット構造の配列ピッチの欠陥は、リブレット構造の実際の配列ピッチと設計上の配列ピッチとの差分が第4許容値を上回る状態を意味していてもよい。
【0173】
このような欠陥が生じているリブレット構造は、欠陥が生じていないリブレット構造と比較して、その品質が高くないリブレット構造であるとみなせる。このため、リブレット構造に生じている欠陥を計測する動作は、実質的には、リブレット構造の品質を計測する動作と等価であるとみなしてもよい。この場合、欠陥計測装置33bは、品質計測装置と称されてもよい。
【0174】
欠陥計測装置33bは、塗装膜SFの表面の状態を計測可能な計測装置であってもよい。つまり、欠陥計測装置33bは、塗装膜SFの表面の状態を計測することで、塗装膜SFの表面に生じている欠陥を計測可能な計測装置であってもよい。なぜならば、欠陥が生じている塗装膜SFの表面の状態は、欠陥が生じていない塗装膜SFの表面の状態とは異なるからである。
【0175】
欠陥計測装置33bは、光照射装置11が取り付けられている取付部材19に取り付けられている。このため、駆動系12による光照射装置11の移動に合わせて、欠陥計測装置33bもまた移動する。つまり、欠陥計測装置33bは、光照射装置11と共に、塗装膜SFに対して移動する。その結果、欠陥計測装置33bが欠陥を計測する被計測領域DMAもまた、塗装膜SF上を移動する。従って、欠陥計測装置33bは、塗装膜SF上の所望領域に設定可能な被計測領域DMAに生じている欠陥を計測することができる。但し、欠陥計測装置33bは、取付部材19に取り付けられていなくてもよい。欠陥計測装置33bは、取付部材19とは異なる部材に取り付けられていてもよい。欠陥計測装置33bは、光照射装置11に取り付けられていてもよい。欠陥計測装置33bは、光照射装置11とは独立して移動可能であってもよい。欠陥計測装置33bは、移動可能でなくてもよい。
【0176】
欠陥計測装置33bの計測結果(以降、“欠陥計測情報”と称する)は、制御装置2に出力される。制御装置2は、欠陥計測情報に基づいて、被計測領域DMAに対する欠陥検査動作を行う。つまり、制御装置2は、欠陥計測装置33bと共に、被計測領域DMAに対する欠陥検査動作を行う。このため、欠陥計測装置33b及び制御装置2を含む装置(或いは、システム)を、欠陥検査動作を行う検査装置又は検査システムと称してもよい。この場合、被計測領域DMAは、被検査領域と称されてもよい。尚、リブレット構造に生じている欠陥を計測する動作がリブレット構造の品質を計測する動作と等価であるとみなしてもよいことは上述したとおりである。この場合、制御装置2が行う欠陥検査動作は、実質的には、リブレット構造の品質を検査する品質検査動作(つまり、リブレット構造を形成するための加工動作の加工品質が良好か否かを判定する品質判定動作)と等価であるとみなしてもよい。つまり、制御装置2が行う欠陥検査動作は、リブレット構造の特性(特徴)を評価する評価動作と等価であるとみなしてもよい。このため、制御装置2は、評価装置と称されてもよい。
【0177】
制御装置2は、欠陥検査動作の少なくとも一部として、欠陥検出動作を行ってもよい。つまり、制御装置2は、欠陥計測情報に基づいて、被計測領域DMAに欠陥が生じているか否かを判定してもよい。制御装置2は、欠陥計測情報に基づいて、被計測領域DMAにおいて異常事象(特に、塗装膜SFの表面に欠陥が生じているという異常事象)が発生しているか否かを判定してもよい。この場合、欠陥計測装置33bは、被計測領域DMAにおける欠陥の有無を計測するための計測動作を行ってもよい。つまり、欠陥計測装置33bは、被計測領域DMAにおける欠陥の有無を判定するために利用可能な欠陥計測情報を取得するための計測動作を行ってもよい。
【0178】
被計測領域DMAに欠陥が存在する場合には、制御装置2は、欠陥計測情報に基づいて、欠陥の特性(言い換えれば、欠陥の状態又は特徴)を算出してもよい。つまり、制御装置2は、欠陥検査動作の少なくとも一部として、欠陥の特性を算出するための特性算出動作を行ってもよい。例えば、制御装置2は、欠陥計測情報に基づいて、欠陥の特性の一例である欠陥の形状を算出してもよい。欠陥の形状は、欠陥の二次元形状(例えば、XY平面に沿った面内における形状)を含んでいてもよいし、欠陥の三次元形状を含んでいてもよい。尚、制御装置2は、欠陥の形状として、欠陥が生じている塗装膜SF上の領域の形状(例えば、塗装膜SFの表面に沿った面内での形状)を算出してもよい。例えば、制御装置2は、欠陥計測情報に基づいて、欠陥の特性の一例である欠陥のサイズを算出してもよい。欠陥のサイズは、X軸方向における欠陥のサイズ、Y軸方向における欠陥のサイズ、Z軸方向における欠陥のサイズの少なくとも一つを含んでいてもよい。尚、制御装置2は、欠陥のサイズとして、欠陥が生じている塗装膜SF上の領域のサイズを算出してもよい。例えば、制御装置2は、欠陥計測情報に基づいて、欠陥の特性の一例として、欠陥が生じているリブレット構造の特性と設計上の特性との差分(つまり、リブレット構造の実際の特性の、許容値からのずれ量(誤差))を算出してもよい。この場合、欠陥計測装置33bは、被計測領域DMAに存在する欠陥の特性を計測するための計測動作を行ってもよい。つまり、欠陥計測装置33bは、被計測領域DMAにおける欠陥の特性を算出するために利用可能な欠陥計測情報を取得するための計測動作を行ってもよい。
【0179】
被計測領域DMAに欠陥が存在する場合には、制御装置2は、欠陥計測情報に基づいて、欠陥の数を特定してもよい。つまり、制御装置2は、欠陥検査動作の少なくとも一部として、欠陥の数を算出するための数算出動作を行ってもよい。この場合、欠陥計測装置33bは、被計測領域DMAに存在する欠陥の数を計測するための計測動作を行ってもよい。つまり、欠陥計測装置33bは、被計測領域DMAにおける欠陥の数を算出するために利用可能な欠陥計測情報を取得するための計測動作を行ってもよい。
【0180】
制御装置2は、欠陥計測情報と、塗装膜SFの表面の特徴(特に、塗装膜SFの表面のうちの被計測領域DMAの特徴)に関する特徴情報とに基づいて、欠陥検査動作を行ってもよい。例えば、被計測領域DMAに欠陥が生じていなければ、欠陥計測情報が示す被計測領域DMAの実際の特徴と、特徴情報が示す被計測領域DMAの設計上の特徴(或いは、理想的な特徴)とは一致するはずである。一方で、例えば、被計測領域DMAに欠陥が生じていれば、欠陥計測情報が示す被計測領域DMAの実際の特徴と、特徴情報が示す被計測領域DMAの設計上の特徴(或いは、理想的な特徴)とは一致しない可能性が高い。このため、制御装置2は、欠陥計測情報と特徴情報とを比較することで、欠陥検査動作を行ってもよい。
【0181】
制御装置2は、欠陥計測情報と、リブレット構造の設計上の特性(つまり、特徴であり、例えば、形状、サイズ及びピッチや間隔等の配置の少なくとも一つ)に関する設計情報とに基づいて、欠陥検査動作を行ってもよい。例えば、被計測領域DMAに欠陥が生じていなければ、欠陥計測情報が示す塗装膜SFの表面の実際の状態(より具体的には、塗装膜SFの表面に形成されたリブレット構造の実際の特性)と、設計情報が示すリブレット構造の設計上の特性とは一致するはずである。一方で、例えば、被計測領域DMAに欠陥が生じていれば、欠陥計測情報が示すリブレット構造の実際の特性と、設計情報が示すリブレット構造の設計上の特性とは一致しない可能性が高い。このため、制御装置2は、欠陥計測情報と設計情報とを比較することで、欠陥検査動作を行ってもよい。このように設計情報が欠陥検査動作に用いられる場合には、設計情報が欠陥検査動作に用いられない場合と比較して、制御装置2は、リブレット構造の欠陥をより適切に検査することができる。つまり、制御装置2は、リブレット構造の加工品質をより適切に検査することができる。言い換えれば、制御装置2は、リブレット構造の特性(特徴)をより適切に評価することができる。
【0182】
欠陥計測装置33bは、欠陥検査動作に利用可能な欠陥計測情報を取得可能である限りは、どのような計測装置であってもよい。例えば、欠陥計測装置33bは、非接触で塗装膜SFの表面を計測可能であってもよい。非接触で塗装膜SFの表面を計測可能な計測装置の一例として、光学的に塗装膜SFの表面を計測可能な計測装置があげられる。非接触で被計測領域DMAを計測可能な計測装置の他の一例として、音波及び電波の少なくとも一方を用いて塗装膜SFを計測する計測装置があげられる。
【0183】
上述した異物計測装置31もまた、非接触で塗装膜SFの表面を計測可能な計測装置であってもよいことは上述したとおりである。このため、欠陥計測装置33bは、異物計測装置31と同様の計測装置であってもよい。例えば、欠陥計測装置33bは、異物計測装置31と同様に、塗装膜SFの表面を撮像可能な撮像装置(つまり、カメラ)311を含んでいてもよい(上述した
図4参照)。この場合、制御装置2は、撮像装置311が撮像した画像を解析することで、欠陥検査動作を行ってもよい。尚、欠陥計測装置33bが撮像装置311を含む場合には、塗装膜SFの表面のうち撮像装置311の撮像範囲に含まれる領域が、被計測領域DMAとなってもよい。或いは、欠陥計測装置33bは、異物計測装置31と同様に、塗装膜SFの表面からの光(特に、塗装膜SFの表面で散乱された散乱光及び塗装膜SFの表面で回折された回折光の少なくとも一方)を受光可能な受光装置312を含んでいてもよい(
図5参照)。尚、塗装膜SFの表面に異物が存在する場合と同様に、塗装膜SFの表面に欠陥が生じている場合には、塗装膜SFの表面で散乱された散乱光及び/又は塗装膜SFの表面で回折された回折光は、検査光の正反射光が進行する方向とは異なる方向に進行する可能性が相対的に高くなる。従って、散乱光及び/又は回折光は、欠陥に関する情報を含む光である可能性がある。この場合、制御装置2は、受光装置312の受光結果から散乱光及び/又は回折光の特性(例えば、強度等)を算出し、算出した散乱光及び/又は回折光の特性に基づいて欠陥検査動作を行ってもよい。尚、欠陥計測装置33bが受光装置312を含む場合には、塗装膜SFの表面のうち欠陥検査用の光が照射される領域(つまり、散乱光及び/又は回折光が射出する領域)が、被計測領域DMAとなってもよい。
【0184】
欠陥補修装置34bは、制御装置2の制御下で、塗装膜SFの表面上に生じている欠陥を補修する。つまり、欠陥補修装置34bは、制御装置2の制御下で、欠陥を補修するための欠陥補修動作を行う。具体的には、欠陥補修装置34bは、塗装膜SFの表面のうち欠陥補修装置34bが欠陥補修動作を行う補修範囲に含まれる領域(以降、“補修領域PA”と称する)に生じている欠陥を補修する。尚、欠陥補修装置34bは、制御装置2による制御とは関わりなく塗装膜SFの表面上に生じている欠陥を補修してもよい。
【0185】
補修領域PAは、上述した被計測領域DMAと一致していてもよい。つまり、欠陥計測装置33b及び欠陥補修装置34bは、補修領域PAと被計測領域DMAとが一致するように位置合わせされていてもよい。或いは、補修領域PAは、上述した被計測領域DMAと部分的に重複していてもよい。つまり、欠陥計測装置33b及び欠陥補修装置34bは、補修領域PAと被計測領域DMAとが部分的に重複するように位置合わせされていてもよい。或いは、補修領域PAは、上述した被計測領域DMAと重複していなくてもよい。つまり、欠陥計測装置33b及び欠陥補修装置34bは、補修領域PAと被計測領域DMAとが重複しないように位置合わせされていてもよい。尚、
図22は、補修領域PAと被計測領域DMAとが一致する例を示している。
【0186】
欠陥補修装置34bは、光照射装置11が取り付けられている取付部材19に取り付けられている。このため、駆動系12による光照射装置11の移動に合わせて、欠陥補修装置34bもまた移動する。つまり、欠陥補修装置34bは、光照射装置11と共に、塗装膜SFに対して移動する。その結果、欠陥補修装置34bが欠陥を補修する補修領域PAもまた、塗装膜SF上を移動する。従って、欠陥補修装置34bは、塗装膜SF上の所望領域に設定可能な補修領域PAに存在する欠陥を除去することができる。但し、欠陥補修装置34bは、取付部材19に取り付けられていなくてもよい。欠陥補修装置34bは、取付部材19とは異なる部材に取り付けられていてもよい。欠陥補修装置34bは、光照射装置11に取り付けられていてもよい。欠陥補修装置34bは、光照射装置11とは独立して移動可能であってもよい。欠陥補修装置34bは、欠陥計測装置33bとは独立して移動可能であってもよい。欠陥補修装置34bは、移動可能でなくてもよい。
【0187】
欠陥補修装置34bは、欠陥を補修可能である限りは、どのような装置を含んでいてもよい。例えば、欠陥補修装置34bは、塗装膜SFの表面の状態が理想的な状態になるように、塗装膜SFの表面の少なくとも一部に材料を付加する(例えば、補修用の充填部材(例えば、パテ)を充填する)ことで、欠陥を補修してもよい。例えば、欠陥補修装置34bは、塗装膜SFの表面の状態が理想的な状態になるように、塗装膜SFの表面の少なくとも一部を除去する(例えば、削り取る)ことで、欠陥を補修してもよい。例えば、欠陥補修装置34bは、リブレット構造の特性が設計上の特性になるように、リブレット構造の少なくとも一部に材料を付加する(例えば、補修用の充填部材(例えば、パテ)を充填する)ことで、欠陥を補修してもよい。例えば、欠陥補修装置34bは、リブレット構造の特性が設計上の特性になるように、リブレット構造の少なくとも一部を除去する(例えば、削り取る)ことで、欠陥を補修してもよい。
【0188】
尚、欠陥が生じているリブレット構造が補修されると、リブレット構造の品質は向上するはずである。このため、リブレット構造の欠陥を補修する動作は、実質的には、リブレット構造の品質(つまり、加工動作による加工品質)を改善する動作と等価であるとみなしてもよい。
【0189】
尚、リブレット構造が加工光ELの照射によって形成されることを考慮すれば、加工光ELを照射することで塗装膜SFの表面に生じている欠陥(特に、リブレット構造の欠陥)を補修できるはずである。このため、制御装置2は、欠陥補修装置34bに加えて又は代えて、加工装置1を制御することで、欠陥(特に、リブレット構造の欠陥)を補修してもよい。つまり、制御装置2は、加工光ELを塗装膜SFの表面に照射して欠陥(特に、リブレット構造の欠陥)を補修するように、加工装置1を制御してもよい。このように加工装置1を用いて欠陥が補修される場合には、加工システムSYSbは、欠陥補修装置34bを備えていなくてもよい。
【0190】
(2-2)欠陥検査動作及び欠陥補修動作
続いて、欠陥計測装置34bを用いた欠陥検査動作及び欠陥補修装置34bを用いた欠陥補修動作の具体的な流れについて説明する。
【0191】
上述したように、欠陥計測装置33b及び制御装置2は、欠陥検査動作を行う。第2実施形態では、欠陥計測装置33b及び制御装置2は、塗装膜SFの表面のうちの一の対象領域に対する加工動作が行われた後に、当該一の対象領域に対して欠陥検査動作を行う。欠陥計測装置33b及び制御装置2は、塗装膜SFの表面のうちの加工動作が行われた加工済み領域に対して欠陥検査動作を行う。欠陥計測装置33b及び制御装置2は、塗装膜SFの表面のうちの加工動作が行われていない未加工領域に対しては、欠陥検査動作を行わなくてもよい。その結果、欠陥計測装置33b及び制御装置2は、塗装膜SFそのものの欠陥に加えて、加工動作によって形成されたリブレット構造の欠陥を適切に検査することができる。つまり、欠陥計測装置33b及び制御装置2は、加工動作によって形成されたリブレット構造の品質を適切に検査することができる。欠陥計測装置33b及び制御装置2は、加工動作によって形成されたリブレット構造の特性を適切に評価することができる。
【0192】
例えば、欠陥計測装置33b及び制御装置2は、複数の加工ショット領域SAのうちの一の加工ショット領域SAに対する加工動作が行われた後に、当該一の加工ショット領域SAに対して欠陥検査動作を行ってもよい。欠陥計測装置33b及び制御装置2は、塗装膜SFの表面のうちの加工動作が行われた加工ショット領域SAに対して欠陥検査動作を行ってもよい。欠陥計測装置33b及び制御装置2は、塗装膜SFの表面のうちの加工動作が行われていない加工ショット領域SAに対しては、欠陥検査動作を行わなくてもよい。
【0193】
例えば、欠陥計測装置33b及び制御装置2は、一の加工ショット領域SA内の一の領域部分に対する加工動作が行われた後に、一の加工ショット領域SA内の一の領域部分に対して欠陥検査動作を行ってもよい。欠陥計測装置33b及び制御装置2は、一の加工ショット領域SAのうちの加工動作が行われた加工済み領域部分に対して欠陥検査動作を行ってもよい。欠陥計測装置33b及び制御装置2は、一の加工ショット領域SAのうちの加工動作が行われていない未加工領域部分に対しては、欠陥検査動作を行わなくてもよい。
【0194】
加工動作が行われた後に欠陥検査動作が行われる状態を実現するように、欠陥計測装置33bと光照射装置11とが位置合わせされていてもよい。具体的には、欠陥計測装置33bと光照射装置11とは、光照射装置11の移動方向に基づいて位置合わせされていてもよい。光照射装置11が移動すると目標照射領域EAが移動することから、欠陥計測装置33bと光照射装置11とは、目標照射領域EAの移動方向に基づいて位置合わせされていてもよい。
【0195】
例えば、
図23は、塗装膜SF上に設定される三つの加工ショット領域SA#1からSA#3を示す平面図である。特に、
図23は、三つの加工ショット領域SA#1からSA#3がX軸方向に沿って並んでおり、加工ショット領域SA#1の+X側に加工ショット領域SA#2が設定され、且つ、加工ショット領域SA#2の+X側に加工ショット領域SA#3が設定される例を示している。ここで、光照射装置11が加工ショット領域SA#1からSA#3に対してこの順に加工動作を行う場合には、光照射装置11は、加工ショット領域SA#1の上方から加工ショット領域SA#2の上方に移動し、その後、加工ショット領域SA#2の上方から加工ショット領域SA#3の情報に向かって移動する。つまり、光照射装置11は、塗装膜SFに対してX軸方向に沿って且つ+X側に向かって移動する。更には、光照射装置11の移動に合わせて、目標照射領域EAもまた、X軸方向に沿って且つ+X側に向かって移動する。この場合には、
図23に示すように、欠陥計測装置33bと光照射装置11とは、欠陥計測装置33bと光照射装置11とがX軸方向(つまり、光照射装置11の移動方向であり、目標照射領域EAの移動方向)に沿って並ぶように、位置合わせされていてもよい。更に、
図23に示すように、欠陥計測装置33bと光照射装置11とは、光照射装置11の-X側(つまり、光照射装置11の移動方向における後方側であり、目標照射領域EAの移動方向における後方側)に欠陥計測装置33bが配置されるように、位置合わせされていてもよい。その結果、
図23に示すように、塗装膜SF上において加工動作が行われる領域と、塗装膜SF上において欠陥検査動作が行われる領域とは、X軸方向(つまり、光照射装置11の移動方向であり、目標照射領域EAの移動方向)に沿って並ぶ。更に、
図23に示すように、加工動作が行われる領域の-X側(つまり、光照射装置11の移動方向における後方側であり、目標照射領域EAの移動方向における後方側)に欠陥検査動作が行われる領域が配置される。尚、
図23における加工動作が行われる領域は、典型的には、光照射装置11が加工光ELを照射する領域(
図23に示す例では、加工ショット領域SA#2を少なくとも部分的に含む領域)である。
図23における欠陥検査動作が行われる領域は、典型的には、被計測領域DMAの少なくとも一部が設定される領域(
図23に示す例では、加工ショット領域SA#1を少なくとも部分的に含む領域)である。その結果、欠陥計測装置33bは、加工装置1が加工ショット領域SA#1に対して加工動作を行った後に、加工ショット領域SA#1に対して欠陥検査動作を行うことができる。このため、加工動作が行われた後に欠陥検査動作が行われる状態が実現可能である。
【0196】
図23に示す例において、欠陥計測装置33bは、加工装置1が加工ショット領域SA#2に対して加工動作を行っている期間の少なくとも一部において、加工ショット領域SA#1に対して欠陥検査動作を行ってもよい。つまり、加工装置1による塗装膜SF上の一の領域に対する加工動作と、欠陥計測装置33bによる塗装膜SF上の他の領域に対する欠陥検査動作とが並行して行われてもよい。但し、加工装置1による塗装膜SF上の一の領域に対する加工動作と、欠陥計測装置33bによる塗装膜SF上の他の領域に対する欠陥検査動作とが並行して行われなくてもよい。例えば、欠陥計測装置33bは、加工装置1が加工動作を行っていない期間(つまり、加工光ELを塗装膜SFに照射していない期間)の少なくとも一部において、欠陥検査動作を行ってもよい。一例として、欠陥計測装置33bは、塗装膜SFの定期的なメンテナンス(特に、リブレット構造の定期的なメンテナンス)の際に、欠陥検査動作を行ってもよい。
【0197】
尚、
図23に示す例において、加工動作が行われる領域と欠陥検査動作が行われる領域とがX軸方向に沿って並び且つ加工動作が行われる領域の-X側に欠陥検査動作が行われる領域が配置される限りは、光照射装置11と欠陥計測装置33bとがX軸方向に沿って並んでいなくてもよいし、光照射装置11の-X側に欠陥計測装置33bが配置されていなくてもよい。つまり、欠陥計測装置33bと光照射装置11とは、加工動作が行われる領域と欠陥検査動作が行われる領域とがX軸方向に沿って並び且つ加工動作が行われる領域の-X側に欠陥検査動作が行われる領域が配置されるように、位置合わせされていてもよい。この場合であっても、加工動作が行われた後に欠陥検査動作が行われる状態が実現可能である。
【0198】
或いは、例えば、
図24は、ある加工ショット領域SAに対して行われる加工動作による目標照射領域EAの移動軌跡を示す平面図である。
図24に示すように(更には、
図11を参照しながら既に説明したように)、加工ショット領域SA内では、スキャン動作によって目標照射領域EAは、Y軸方向に沿って且つ-Y側から+Y側に向かって移動する。この場合には、
図24に示すように、欠陥計測装置33bと光照射装置11とは、欠陥計測装置33bと光照射装置11とがY軸方向(つまり、目標照射領域EAの移動方向)に沿って並ぶように、位置合わせされていてもよい。更に、
図24に示すように、欠陥計測装置33bと光照射装置11とは、光照射装置11の-Y側(つまり、目標照射領域EAの移動方向における後方側)に欠陥計測装置33bが配置されるように、位置合わせされていてもよい。その結果、
図24に示すように、塗装膜SF上において加工動作が行われる領域と、塗装膜SF上において欠陥検査動作が行われる領域とは、Y軸方向(つまり、目標照射領域EAの移動方向)に沿って並ぶ。更に、
図24に示すように、加工動作が行われる領域の-Y側(つまり、目標照射領域EAの移動方向における後方側)に欠陥検査動作が行われる領域が配置される。尚、
図24における加工動作が行われる領域は、典型的には、目標照射領域EAが設定されている領域である。
図24における欠陥検査動作が行われる領域は、典型的には、被計測領域DMAの少なくとも一部が設定される領域である。その結果、欠陥計測装置33bは、加工装置1が加工ショット領域SA内の一の領域に対して加工動作を行った後に(具体的には、加工光ELを照射した後に)、加工ショット領域SA内の一の領域に対して欠陥検査動作を行うことができる。このため、加工動作が行われた後に欠陥検査動作が行われる状態が実現可能である。
【0199】
図24に示す例において、欠陥計測装置33bは、加工装置1が加工ショット領域SA内の一の領域に対して加工動作を行っている期間の少なくとも一部において、加工ショット領域SA内の他の領域に対して欠陥検査動作を行ってもよい。
【0200】
尚、
図24に示す例において、加工動作が行われる領域と欠陥検査動作が行われる領域とがY軸方向に沿って並び且つ加工動作が行われる領域の-Y側に欠陥検査動作が行われる領域が配置される限りは、光照射装置11と欠陥計測装置33bとがY軸方向に沿って並んでいなくてもよいし、光照射装置11の-Y側に欠陥計測装置33bが配置されていなくてもよい。つまり、欠陥計測装置33bと光照射装置11とは、加工動作が行われる領域と欠陥検査動作が行われる領域とがY軸方向に沿って並び且つ加工動作が行われる領域の-Y側に欠陥検査動作が行われる領域が配置されるように、位置合わせされていてもよい。この場合であっても、加工動作が行われた後に欠陥検査動作が行われる状態が実現可能である。
【0201】
図23及び
図24は、一の加工ショット領域SAに対する加工動作が終了してから他の加工ショット領域SAに対する加工動作を開始するために光照射装置11が移動する方向(
図23におけるX軸方向)と、加工ショット領域SA内におけるスキャン動作での目標照射領域EAの移動方向(
図24におけるY軸方向)とが異なる例を示している。しかしながら、一の加工ショット領域SAに対する加工動作が終了してから他の加工ショット領域SAに対する加工動作を開始するために光照射装置11が移動する方向と、加工ショット領域SA内におけるスキャン動作での目標照射領域EAの移動方向とが同じであってもよい。この場合、
図23に示す状況及び
図24に示す状況の双方において、加工動作が行われた後に欠陥検査動作が行われる状態が実現可能である。
【0202】
或いは、加工システムSYSbは、光照射装置11に対する相対位置が異なる複数の欠陥計測装置33bを備えていてもよい。この場合、複数の欠陥計測装置33bのうちの第1の欠陥計測装置33bは、光照射装置11の移動方向に沿って光照射装置11と並んでおり、且つ、光照射装置11よりも、光照射装置11の移動方向における後方側に配置されていてもよい。例えば、第1の欠陥計測装置33bは、X軸方向に沿って光照射装置11と並んでおり、且つ、光照射装置11の-X側に配置されていてもよい。一方で、複数の欠陥計測装置33bのうちの第2の欠陥計測装置33bは、目標照射領域EAの移動方向に沿って光照射装置11と並んでおり、且つ、光照射装置11よりも、目標照射領域EAの移動方向における後方側に配置されていてもよい。例えば、第2の欠陥計測装置33bは、Y軸方向に沿って光照射装置11と並んでおり、且つ、光照射装置11の-Y側に配置されていてもよい。この場合であっても、
図23に示す状況及び
図24に示す状況の双方において(つまり、光照射装置11の移動方向と目標照射領域EAの移動方向とが異なる場合において)、加工動作が行われた後に欠陥検査動作が行われる状態が実現可能である。
【0203】
また、
図23及び
図24は、光照射装置11と欠陥計測装置33bとの位置関係に加えて、
図20及び
図21で説明した光照射装置11と異物計測装置31との位置関係(つまり、加工動作が行われる領域と異物検査動作が行われる領域との位置関係)も示している。
図23及び
図24に示すように、欠陥計測装置33bと異物計測装置31とは、X軸方向(つまり、光照射装置11の移動方向であり、目標照射領域EAの移動方向)に沿って光照射装置11を間に挟み込むように並んでいてもよい。また、欠陥検査動作が行われる領域と異物検査動作が行われる領域とは、X軸方向(つまり、光照射装置11の移動方向であり、目標照射領域EAの移動方向)に沿って加工動作が行われる領域を間に挟み込むように並んでいてもよい。その結果、加工動作が行われる前に異物検査動作が行われ且つ加工動作が行われた後に欠陥検査動作が行われる状態が実現される。つまり、塗装膜SF上のある領域に対して、異物検査動作、加工動作及び欠陥検査動作がこの順に行われる状態が実現される。
【0204】
但し、欠陥計測装置33b及び制御装置2は、塗装膜SFの表面のうちの一の対象領域に対する加工動作が行われる前に、当該一の対象領域に対して欠陥検査動作を行ってもよい。つまり、加工装置1は、塗装膜SFの表面のうちの一の対象領域に対して欠陥検査動作が行われた後に、当該一の対象領域に対して加工動作を行ってもよい。このような欠陥検査動作は、実質的には、第1実施形態の変形例で説明した異物計測装置31及び制御装置2が行う欠陥検査動作と等価であるとみなしてもよい。
【0205】
塗装膜SFの表面のうちの一の領域に欠陥が生じていることが欠陥検査動作によって判明した場合には、制御装置2は、欠陥検査動作の結果に基づいて、一の領域に生じた欠陥を補修する(つまり、一の領域に対して欠陥補修動作を行う)ように、欠陥補修装置34bを制御してもよい。つまり、欠陥補修装置34bは、欠陥検査動作の結果に基づいて、欠陥検査動作によって欠陥が生じていると判明した一の領域の欠陥を補修してもよい。欠陥補修装置34bによって欠陥が補修されると、塗装膜SFの表面に欠陥が生じているという異常事象が解消されたことになる。このため、欠陥補修装置34bは、異常事象を解消するための解消装置と称されてもよい。
【0206】
上述したように加工動作が行われた後に欠陥検査動作が行われるがゆえに、欠陥補修装置34bは、加工動作が行われた後に、欠陥補修動作を行うことになる。つまり、欠陥補修装置34bは、塗装膜SFの表面のうちの一の対象領域に対する加工動作が行われた後に、必要に応じて、当該一の対象領域に対して欠陥補修動作を行う。加工動作が行われた後に欠陥除去動作が行われる状態を実現するように、欠陥補修装置34bと光照射装置11とが位置合わせされていてもよい。具体的には、欠陥補修装置34bと光照射装置11とは、欠陥計測装置33bと光照射装置11との位置合わせの基準と同様の基準に従って位置合わせされていてもよい。具体的には、欠陥補修装置34bと光照射装置11とは、欠陥補修装置34bと光照射装置11とが、光照射装置11及び/又は目標照射領域EAの移動方向に沿って並ぶように、位置合わせされていてもよい。欠陥補修装置34bと光照射装置11とは、欠陥補修装置34bが、光照射装置11よりも、光照射装置11及び/又は目標照射領域EAの移動方向における後方側に配置されるように、位置合わせされていてもよい。塗装膜SF上において加工動作が行われる領域と、塗装膜SF上において欠陥補修動作が行われる領域とは、光照射装置11及び/又は目標照射領域EAの移動方向に沿って並んでいてもよい。欠陥補修動作が行われる領域は、加工動作が行われる領域よりも、光照射装置11及び/又は目標照射領域EAの移動方向における後方側に配置されてもよい。
【0207】
或いは、加工システムSYSbは、光照射装置11に対する相対位置が異なる複数の欠陥補修装置34bを備えていてもよい。この場合、複数の欠陥補修装置34bのうちの第1の欠陥補修装置34bは、光照射装置11の移動方向に沿って光照射装置11と並んでおり、且つ、光照射装置11よりも、光照射装置11の移動方向における後方側に配置されていてもよい。一方で、複数の欠陥補修装置34bのうちの第2の欠陥補修装置34bは、目標照射領域EAの移動方向に沿って光照射装置11と並んでおり、且つ、光照射装置11よりも、目標照射領域EAの移動方向における後方側に配置されていてもよい。この場合であっても、
図23に示す状況及び
図24に示す状況の双方において(つまり、光照射装置11の移動方向と目標照射領域EAの移動方向とが異なる場合において)、加工動作が行われた後に欠陥補修動作が行われる状態が実現可能である。
【0208】
塗装膜SFの表面のうちの一の領域に欠陥が生じていることが欠陥検査動作によって判明した場合には、制御装置2は、欠陥検査動作の結果に基づいて、一の領域に生じた欠陥を補修する(つまり、一の領域に対して欠陥補修動作を行う)ように、加工装置1を制御してもよい。なぜならば、上述したように、塗装膜SFへの加工光ELの照射によっても欠陥が補修可能であるからである。このため、加工装置1は、欠陥検査動作の結果に基づいて、欠陥検査動作によって欠陥が生じていると判明した一の領域の欠陥を補修するように、当該一の領域に加工光ELを照射してもよい。
【0209】
欠陥補修装置34b及び/又は加工装置1によって欠陥が補修されたか否かを判定するために、制御装置2は、欠陥補修装置34b及び/又は加工装置1が一の領域に対して欠陥補修動作を行った後に、一の領域に対して欠陥検査動作を再度行うように、欠陥計測装置33bを制御してもよい。一の領域に対して再度行われた欠陥検査動作によって一の領域の欠陥が未だ補修されていない(つまり、未だ欠陥が存在している)と判定された場合には、制御装置2は、一の領域の欠陥を補修するように、欠陥補修装置34b及び/又は加工装置1を制御してもよい。
【0210】
欠陥補修動作の内容によっては、制御装置2は、欠陥補修動作が行われた後に、欠陥補修動作が行われた領域に対して加工動作を行う(つまり、リブレット構造を形成する)ように、加工装置1を制御してもよい。例えば、上述したように、欠陥補修装置34bは、欠陥補修動作として、塗装膜SFの表面を充填部材(例えば、パテ等)で充填する動作を行うことがある。この場合、欠陥補修装置34bは、充填部材によって塗装膜SF上に形成される新たな層の表面が平坦となるように、塗装膜SFの表面を充填部材で充填してもよい。その後、加工装置1は、充填部材によって塗装膜SF上に形成される新たな層の表面に対して加工動作を行ってもよい。つまり、加工装置1は、充填部材によって塗装膜SF上に形成される新たな層の表面に、リブレット構造を形成してもよい。
【0211】
制御装置2は、欠陥検査動作に関する情報を表示するように、ディスプレイ4を制御してもよい。例えば、制御装置2は、欠陥検査動作の結果に関する情報を表示するように、ディスプレイ4を制御してもよい。例えば、制御装置2は、欠陥検査動作によって欠陥が検出されたか否かを示す情報を表示するように、ディスプレイ4を制御してもよい。例えば、制御装置2は、欠陥検査動作によって判明したリブレット構造の品質(つまり、リブレット構造の特徴の評価結果)に関する情報を表示するように、ディスプレイ4を制御してもよい。例えば、制御装置2は、欠陥検査動作によって欠陥が検出された場所(つまり、塗装膜SF上の位置)に関する情報を表示するように、ディスプレイ4を制御してもよい。例えば、制御装置2は、欠陥検査動作によって検出された欠陥の特性に関する情報を表示するように、ディスプレイ4を制御してもよい。欠陥検査動作に関する情報がディスプレイ4に表示されると、加工システムSYSbのオペレータは、ディスプレイ4の表示結果から、塗装膜SFの表面上のどこにどのような欠陥が生じているかを把握することができる。この場合、オペレータは、オペレータ自身で欠陥を補修してもよい。つまり、欠陥補修装置34bが必ずしも欠陥を補修しなくてもよい。
【0212】
制御装置2は、欠陥補修動作に関する情報を表示するように、ディスプレイ4を制御してもよい。例えば、制御装置2は、欠陥補修動作の結果に関する情報を表示するように、ディスプレイ4を制御してもよい。例えば、制御装置2は、欠陥補修動作によって欠陥が補修されたか否かを示す情報を表示するように、ディスプレイ4を制御してもよい。欠陥補修動作によって欠陥が補修されなかった(つまり、欠陥補修動作が行われたにも係らず、欠陥が未だ存在する)場合には、例えば、制御装置2は、欠陥の補修が不可能だったことを示す警告を表示するように、ディスプレイ4を制御してもよい。
【0213】
尚、制御装置2は、欠陥検査動作に関わりなく欠陥補修動作を行うように欠陥補修装置34b及び加工装置1の少なくとも一方を制御してもよい。
【0214】
(2-3)加工システムSYSbの技術的効果
以上説明した第2実施形態の加工システムSYSbは、上述した第1実施形態の加工システムSYSaが享受可能な効果と同様の効果を享受することができる。また、第2実施形態では、加工システムSYSaは、欠陥計測装置33bを用いて、塗装膜SFの表面上において欠陥検査動作を行うことができる。このため、欠陥検査動作が行われない場合と比較して、加工システムSYSbは、欠陥検査動作(更には、必要に応じて欠陥補修動作)を経て塗装膜SF上に最終的に形成されるリブレット構造の品質を向上させることができる。
【0215】
(2-4)加工システムSYSbの変形例
加工システムSYSaは、欠陥補修装置34bを備えていなくてもよい。この場合、塗装膜SFの表面のうちの一の領域に欠陥が生じていることが欠陥検査動作によって判明した場合には、加工システムSYSbのオペレータが欠陥を補修してもよい。
【0216】
(3)第3実施形態の加工システムSYSc
続いて、第3実施形態の加工システムSYS(以降、第3実施形態の加工システムSYSを、“加工システムSYSc”と称する)について説明する。
【0217】
(3-1)加工システムSYScの構造
初めに、
図25を参照しながら、第3実施形態の加工システムSYScの構造について説明する。
図25は、第3実施形態の加工システムSYScの全体構造を模式的に示す断面図である。
【0218】
図25に示すように、第3実施形態の加工システムSYScは、第1実施形態の加工システムSYSa又は第2実施形態の加工システムSYSbと比較して、加工装置1に代えて加工装置1cを備えているという点で異なる。加工システムSYScのその他の特徴は、加工システムSYSa又はSYSbのその他の特徴と同一であってもよい。但し、加工システムSYScは、異物計測装置31、異物除去装置32、欠陥計測装置33b及び欠陥補修装置34bの少なくとも一つを備えていなくてもよい。
図25は、図面の簡略化のために、異物計測装置31、異物除去装置32、欠陥計測装置33b及び欠陥補修装置34bを備えていない加工システムSYScの例を示している。
【0219】
加工装置1cは、加工装置1と比較して、位置計測装置18cを更に備えているという点で異なる。加工装置1cのその他の特徴は、加工装置1のその他の特徴と同一であってもよい。
【0220】
位置計測装置18cは、塗装膜SFと光照射装置11との相対的な位置関係を計測する。つまり、位置計測装置18cは、加工対象物Sと光照射装置11との相対的な位置関係を計測する。第1実施形態では、位置計測装置18cは、光照射装置11に対する塗装膜SFの位置を計測する。つまり、位置計測装置18cは、光照射装置11に対する加工対象物Sの位置を計測する。
【0221】
光照射装置11に対する塗装膜SFの位置(つまり、加工対象物Sの位置、以下同じ)を計測するために、位置計測装置18cは、塗装膜SFを計測してもよい。つまり、位置計測装置18cは、加工対象物Sを計測してもよい。この場合、位置計測装置18cは、塗装膜SF及び加工対象物Sの少なくとも一方を含む物体を計測するがゆえに、物体計測装置と称されてもよい。
【0222】
位置計測装置18cは、光照射装置11(特に、光学系112)に対して固定された位置に配置されてもよい。位置計測装置18cは、光照射装置11に対する相対位置が固定された位置に配置されてもよい。位置計測装置18cは、駆動系12が光照射装置11を移動させたとしても光照射装置11と位置計測装置18cとの相対位置が変わらない位置に配置されてもよい。例えば、
図25は、位置計測装置18cが、光照射装置11が取り付けられる取付部材19に取り付けられている例を示している。但し、位置計測装置18cは、取付部材19とは異なる部材に取り付けられてもよい。例えば、位置計測装置18cは、光照射装置11に取り付けられてもよい。
【0223】
光照射装置11に対して固定された位置に位置計測装置18cが配置される場合には、位置計測装置18cからの出力(つまり、位置計測装置18cの計測結果)は、光照射装置11に対する塗装膜SFの位置に関する情報を含むことになる。具体的には、位置計測装置18cの計測結果は、位置計測装置18cに対する塗装膜SFの位置に関する情報を含む。つまり、位置計測装置18cの計測結果は、位置計測装置18cの計測座標系における塗装膜SFの位置に関する情報を含む。ここで、光照射装置11に対して固定された位置に位置計測装置18cが配置されている場合には、位置計測装置18cに対する塗装膜SFの位置に関する情報は、実質的には、位置計測装置18cに対して固定された位置に配置されている光照射装置11に対する塗装膜SFの位置に関する情報を含むことになる。従って、制御装置2は、光照射装置11に対する塗装膜SFの位置を適切に特定することができる。
【0224】
位置計測装置18cは、塗装膜SFを計測可能である限りは、どのような種類の計測装置であってもよい。例えば、位置計測装置18cは、塗装膜SF等の物体を撮像可能な撮像装置(つまり、カメラ)を含んでいてもよい。位置計測装置18cは、塗装膜SF上で所定のパターンを描く計測光を塗装膜SFに照射する照射装置と、計測光によって塗装膜SFに描かれたパターンを撮像する撮像装置とを含んでいてもよい。このように、位置計測装置18cは、非接触方式(一例として、光検出方式、音波検出方式及び電波検出方式等の少なくとも一つ)で塗装膜SFを計測する計測装置であってもよい。
【0225】
尚、加工装置1cは、複数の位置計測装置18cを備えていてもよいこの場合、複数の位置計測装置18cの計測軸(例えば、撮像方式等の光計測方式では、典型的には光軸)は、互いに交差する(或いは、ねじれ)関係であってもよいし、互いに平行(又は同軸)であってもよい。
【0226】
制御装置2は、位置計測装置18cの計測結果に基づいて、駆動系12を制御してもよい。つまり、制御装置2は、位置計測装置18cの計測結果に基づいて、塗装膜SFと光照射装置11との相対位置を変更するように駆動系12を制御してもよい。具体的には、制御装置2は、位置計測装置18cの計測結果に基づいて塗装膜SFと光照射装置11との相対的な位置関係に関する情報を取得し、塗装膜SFと光照射装置11との相対的な位置関係に関する情報に基づいて、駆動系12を制御してもよい。尚、位置計測装置18cが撮像装置を備えている場合には、制御装置2は、位置計測装置18cの計測結果(つまり、撮像装置が撮像した画像)に基づく視覚サーボ(ビジュアルサーボ)を利用して、駆動系12を制御してもよい。尚、視覚サーボをビジョンサーボと称してもよい。
【0227】
制御装置2は、位置計測装置18cの計測結果に基づいて、塗装膜SF上の所望の加工ショット領域SAに加工光ELが照射されるように、塗装膜SFと光照射装置11との相対位置を変更してもよい。例えば、制御装置2は、位置計測装置18cの計測結果に基づいて、塗装膜SF上の所望の加工ショット領域SA内の所望の領域部分に加工光ELが照射されるように、塗装膜SFと光照射装置11との相対位置を変更してもよい。加工光ELが目標照射領域EAに照射されるがゆえに、塗装膜SFと光照射装置11との相対位置を変更する動作は、塗装膜SF上での目標照射領域EAの位置を変更する動作と等価であるとみなしてもよい。
【0228】
(3-2)位置計測装置18cによる計測動作
続いて、位置計測装置18cによる塗装膜SFと光照射装置11との相対的な位置関係を計測するための計測動作について説明する。第3実施形態では、位置計測装置18cは、第1の計測動作、第2の計測動作及び第3の計測動作の少なくとも一つを行うことができる。このため、以下、第1の計測動作から第3の計測動作について順に説明する。
【0229】
(3-2-1)第1の計測動作
第1の計測動作は、塗装膜SFの表面のうち加工動作によって加工された加工済み領域FA1の位置を計測することで、塗装膜SFと光照射装置11との相対的な位置関係を計測する動作である。つまり、第1の計測動作は、塗装膜SFの表面のうち加工動作によってリブレット構造が形成された加工済み領域FA1の位置を計測することで、塗装膜SFと光照射装置11との相対的な位置関係を計測する動作である。
【0230】
具体的には、
図26は、塗装膜SFの表面上における加工済み領域FA1を示す平面図である。
図26に示すように、加工動作が完了していない時点では、塗装膜SFの表面上には、通常、加工済み領域FA1に加えて、加工動作によって未だ加工されていない(つまり、リブレット構造が未だ形成されていない)未加工領域FA2が存在する。加工済み領域FA1と未加工領域FA2とは、通常は、隣接するという所定の位置関係にある。このため、加工済み領域FA1の位置を計測する動作は、実質的には、未加工領域FA2の位置を計測する動作と等価であるとみなすことができる。加工済み領域FA1の位置を計測する動作は、実質的には、加工済み領域FA1の位置に加えて未加工領域FA2の位置を計測する動作と等価であるとみなすことができる。このため、制御装置2は、加工済み領域FA1の位置を計測する第1計測動作の結果に基づいて、未加工領域FA2の位置(具体的には、光照射装置11に対する未加工領域FA2の位置)を特定することができる。その結果、制御装置2は、加工済み領域FA1の位置の計測結果に基づいて、未加工領域FA2の少なくとも一部に加工光ELを照射するように、塗装膜SFと光照射装置11との相対位置を変更することができる。つまり、制御装置2は、未加工領域FA2内において目標照射領域EAが移動するように、塗装膜SFと光照射装置11との相対位置を変更することができる。
【0231】
加工済み領域FA1と未加工領域FA2とは、通常は、加工済み領域FA1と未加工領域FA2との間の境界Bを介して隣接するという所定の位置関係にある。つまり、加工済み領域FA1と未加工領域FA2とは、通常は、境界Bを構成する加工済み領域FA1の境界と、同じ境界Bを構成する未加工領域FA2の境界とが重なった状態で隣接するという所定の位置関係にある。このため、位置計測装置18cは、境界Bの位置を計測することで、加工済み領域FA1の位置を計測してもよい。
【0232】
加工済み領域FA1と未加工領域FA2とは、その特性(例えば、光学的特性)が異なる。位置計測装置18cは、加工済み領域FA1の特性と未加工領域FA2の特性とが異なることを利用して、加工済み領域FA1の位置を計測してもよい。例えば、位置計測装置18cが撮像装置を備えている場合には、位置計測装置18cの計測結果(つまり、撮像装置が撮像した画像)には、加工済み領域FA1と未加工領域FA2とが光学的に区別可能な状態で写り込んでいる。従って、制御装置2は、位置計測装置18cの計測結果を解析する(例えば、画像解析する)ことで、加工済み領域FA1の位置を特定することができる。
【0233】
このような加工済み領域FA1の位置の計測結果に基づいて塗装膜SFと光照射装置11との相対的な位置関係を変更する動作の一具体例について、
図27を参照しながら説明する。
図27は、八つの加工ショット領域SA#1からSA#8が設定されている塗装膜SFの表面を示す平面図である。八つの加工ショット領域SA#1からSA#8は、加工ショット領域SA#1からSA#4がX軸方向に沿ってこの順に並び、加工ショット領域SA#5からSA#8がX軸方向に沿ってこの順に並び、且つ、加工ショット領域SA#1からSA#4の+Y側に、それぞれ、加工ショット領域SA#5からSA#8が隣接するように設定されているものとする。
【0234】
このような八つの加工ショット領域SA#1からSA#8に対して、加工装置1は、この順に加工動作を行うものとする。
図27に示す例では、加工ショット領域SA#1からSA#5は、加工動作が既に行われた加工済み領域FA1である。一方で、加工ショット領域SA#6からSA#8は、加工動作が未だ行われていない未加工領域FA2である。この場合には、加工装置1は、次に加工ショット領域SA#6に対して加工動作を行う。そこで、加工ショット領域SA#6に対して加工動作を行う際に行われる第1の計測動作について説明する。但し、加工ショット領域SA#6以外の加工ショット領域SAに対して加工動作を行う際に行われる第1の計測動作についても、加工ショット領域SA#6に対して加工動作を行う際に行われる第1の計測動作と同様に行われてもよい。
【0235】
この場合には、
図27に示すように、位置計測装置18cは、例えば、加工済み領域FA1と未加工領域FA2との境界Bの位置を計測する。加工済み領域FA1と未加工領域FA2との境界Bは、加工ショット領域SA#6と加工ショット領域SA#2及びSA#5との境界、加工ショット領域SA#7と加工ショット領域SA#3との境界、並びに、加工ショット領域SA#8と加工ショット領域SA#8との境界を含む。ここで、加工ショット領域SA#6に対して次に加工動作が行われることを考慮すれば、位置計測装置18cは、特に、加工ショット領域SA#6と加工ショット領域SA#2及びSA#5との境界の位置を計測してもよい。その結果、制御装置2は、位置計測装置18cの計測結果に基づいて、次に加工動作を行う加工ショット領域SA#6の位置を特定することができる。このため、制御装置2は、加工ショット領域SA#6に対して加工光ELを照射することができる位置に光照射装置11が位置するように、塗装膜SFと光照射装置11との相対位置を変更することができる。その後、加工ショット領域SA#6に対して加工光ELを照射することができる位置に光照射装置11が位置した後に、加工装置1は、加工ショット領域SA#6に対する加工動作を開始する。
【0236】
尚、
図27に示すように、位置計測装置18cの計測範囲IAは、加工ショット領域SAよりも広くなるように設定されてもよい。位置計測装置18cの計測範囲IAは、加工ショット領域SAを包含できるように設定されてもよい。この場合、制御装置2は、位置計測装置18cの計測結果に基づいて、次に加工動作を行う加工ショット領域SAの位置を適切に特定することができる。
【0237】
境界Bを介して隣接する加工済み領域FA1と未加工領域FA2とは、同じ形状及び同じサイズであってもよい。より具体的には、未加工領域FA2のうち次に加工動作を行うべき加工予定領域(例えば、ある加工ショット領域SA)は、加工済み領域FA1のうち加工予定領域と境界Bを介して隣接する隣接領域(例えば、ある加工ショット領域SA)と同じ形状及び同じサイズであってもよい。例えば、
図27に示す例において加工ショット領域SA#1からSA#4が設定されていないと仮定すると、未加工領域FA2のうち次に加工動作を行うべき加工ショット領域SA#6は、加工済み領域FA1のうち加工ショット領域SA#6と境界Bを介して隣接する加工ショット領域SA#5と同じ形状及び同じサイズである。但し、未加工領域FA2は、境界Bを介して未加工領域FA2に隣接する加工済み領域FA1よりも小さくてもよい。より具体的には、未加工領域FA2のうち次に加工動作を行うべき加工予定領域(例えば、ある加工ショット領域SA)は、加工済み領域FA1のうち加工予定領域と境界Bを介して隣接する隣接領域(例えば、ある加工ショット領域SA)とよりも小さくてもよい。例えば、
図27に示す例では、未加工領域FA2のうち次に加工動作を行うべき加工ショット領域SA#6は、加工済み領域FA1のうち加工ショット領域SA#6と境界Bを介して隣接する加工ショット領域SA#2及びSA#5を含む領域よりも小さい。
【0238】
加工ショット領域SA#6に対する加工動作が開始された後には、ガルバノミラー1122によって加工光ELが加工ショット領域SA#6を走査する。その結果、加工ショット領域SA#6の周辺を拡大した平面図である
図28に示すように、加工ショット領域SA#6内において加工済み領域FA1が占める割合が増加していく。つまり、塗装膜SFの表面における加工済み領域FA1の範囲が実質的に移動してなく。このように加工ショット領域SA#6に対して加工動作が行われている場合においても、位置計測装置18cは、例えば、加工済み領域FA1と未加工領域FA2との境界Bの位置を計測してもよい。特に、位置計測装置18cは、加工ショット領域SA#6内での加工済み領域FA1と未加工領域FA2との境界Bの位置を計測してもよい。その結果、制御装置2は、位置計測装置18cの計測結果に基づいて、加工ショット領域SA#6内での未加工領域FA2の位置を特定することができる。このため、制御装置2は、加工ショット領域SA#6内の未加工領域FA2に対して加工光ELを照射することができる位置に光照射装置11が位置するように、塗装膜SFと光照射装置11との相対位置を変更することができる。或いは、加工ショット領域SA#6内での加工光ELの照射位置(つまり、目標照射領域EAの位置)が主としてガルバノミラー1122によって制御されることを考慮すれば、制御装置2は、加工ショット領域SA#6内の未加工領域FA2に対して加工光ELを照射するように、ガルバノミラー1122を制御してもよい。
【0239】
或いは、加工ショット領域SA#6に対する加工動作が開始された後には、加工ショット領域SA#6内において加工光ELを次に照射するべき位置は、加工光ELの走査に起因して移動する加工済み領域FA1の移動方向側の部位(つまり、移動方向における前方側の部位であり、
図28中の部位FA1s)に隣接しているはずである。このため、加工ショット領域SA#6に対する加工動作が開始された後には、位置計測装置18cは、境界Bの位置を計測することに加えて又は代えて、加工ショット領域SA#6内を移動する加工済み領域FA1の移動方向側の部位の位置を計測してもよい。この場合であっても、制御装置2は、位置計測装置18cの計測結果に基づいて、加工ショット領域SA#6内の未加工領域FA2(特に、次に加工光ELを照射するべき位置)に対して加工光ELを照射するように、塗装膜SFと光照射装置11との相対位置を変更してもよい及び/又はガルバノミラー1122を制御してもよい。
【0240】
また、加工ショット領域SA#6に対する加工動作が開始された後には、加工ショット領域SA#6内において加工光ELが実際に照射されるがゆえに、位置計測装置18cは、加工光ELの照射位置を計測することが可能となる。つまり、位置計測装置18cは、加工光ELが照射される目標照射領域EAの位置を計測することが可能になる。その結果、制御装置2は、加工ショット領域SA#6内で移動する目標照射領域EA(つまり、加工光ELの照射位置)の移動方向側の部位(つまり、移動方向における前方側の部位であり、
図28中の部位EAs)を特定することができる。ここで、加工ショット領域SA#6内において加工光ELを次に照射するべき位置は、目標照射領域EA(つまり、加工光ELの照射位置)の移動方向側の部位EAsに隣接しているはずである。このため、加工ショット領域SA#6に対する加工動作が開始された後には、位置計測装置18cは、境界Bの位置を計測することに加えて又は代えて、加工ショット領域SA#6内を移動する加工済み領域FA1の移動方向側の部位の位置を計測してもよい。この場合であっても、制御装置2は、位置計測装置18cの計測結果に基づいて、加工ショット領域SA#6内の未加工領域FA2(特に、次に加工光ELを照射するべき位置)に対して加工光ELを照射するように、塗装膜SFと光照射装置11との相対位置を変更してもよい及び/又はガルバノミラー1122を制御してもよい。
【0241】
また、位置計測装置18cが加工光ELの照射位置(つまり、目標照射領域EAの位置)を計測する場合には、制御装置2は、位置計測装置18cの計測結果が示す加工光ELの実際の照射位置に基づいて、加工ショット領域SA#6内の未加工領域FA2(特に、今まさに加工光ELを照射するべき位置)に加工光ELが実際に照射されているか否かを判定することができる。加工ショット領域SA#6内の未加工領域FA2(特に、今まさに加工光ELを照射するべき位置)に加工光ELが照射されていないと判定された場合には、制御装置2は、加工ショット領域SA#6内の未加工領域FA2(特に、今まさに加工光ELを照射するべき位置)に加工光ELが照射されるように、塗装膜SFと光照射装置11との相対位置を変更してもよい及び/又はガルバノミラー1122を制御してもよい。
【0242】
このように、加工ショット領域SA#6に対して加工動作が行われている期間の少なくとも一部において、位置計測装置18cは、加工ショット領域SA#6の位置(特に、加工ショット領域SA#6内での未加工領域FA2の位置)を計測してもよい。一方で、加工ショット領域SA#6に対する加工動作が完了すると、加工装置1は、次に加工ショット領域SA#7に対して加工動作を開始することになる。この場合、位置計測装置18cは、加工ショット領域SA#6に対して加工動作が行われている期間の少なくとも一部において、加工ショット領域SA#7の位置を予め計測しておいてもよい。この場合、位置計測装置18cと光照射装置11とは、一の加工ショット領域SAに対する加工動作が完了する前に一の加工ショット領域SAの次に加工動作が行われる他の加工ショット領域SAの位置を計測する計測動作が行われる状態を実現するように、位置合わせされていてもよい。例えば、位置計測装置18cと光照射装置11との位置関係の一例である
図29に示すように、位置計測装置18cと光照射装置11とは、位置計測装置18cと光照射装置11とがX軸方向(つまり、光照射装置11の移動方向であり、加工ショット領域SAが並ぶ方向)に沿って並ぶように、位置合わせされていてもよい。更に、
図29に示すように、位置計測装置18cと光照射装置11とは、光照射装置11の+X側(つまり、光照射装置11の移動方向における前方側)に位置計測装置18cが配置されるように、位置合わせされていてもよい。その結果、
図29に示すように、塗装膜SF上において第1の計測動作が行われる領域は、塗装膜SF上において加工動作が行われる領域の+X側(つまり、光照射装置11の移動方向における前方側)の領域を含む。尚、
図29における計測動作が行われる領域は、典型的には、計測範囲IAの少なくとも一部を含む領域である。或いは、第1の計測動作が行われる領域が、加工動作が行われる領域の+X側の領域を含む限りは、光照射装置11と位置計測装置18cとがX軸方向に沿って並んでいなくてもよいし、光照射装置11の+X側に位置計測装置18cが配置されていなくてもよい。つまり、位置計測装置18cと光照射装置11とは、第1の計測動作が行われる領域が、加工動作が行われる領域の+X側の領域を含むように、位置合わせされていてもよい。その結果、一の加工ショット領域SAに対する加工動作が完了する前に一の加工ショット領域SAの次に加工動作が行われる他の加工ショット領域SAの位置を計測する第1の計測動作が行われる状態が実現される。
【0243】
尚、上述した説明では、塗装膜SFの表面上に一つの加工済み領域FA1と一つの加工済み領域FA1が形成される例について説明している。しかしながら、加工動作の内容によっては、塗装膜SFの表面上に複数の加工済み領域FA1が形成されてもよい。また、加工動作の内容によっては、塗装膜SFの表面上に複数の未加工領域FA2が形成されてもよい。この場合には、位置計測装置18cは、複数の加工済み領域FA1のうちの少なくとも二つの位置を計測してもよい。位置計測装置18cは、複数の未加工領域FA2のうちの少なくとも二つの位置を計測してもよい。位置計測装置18cは、少なくとも一つの加工済み領域FA1と少なくとも一つの未加工領域FA2とが規定する単一の境界Bの位置を計測してもよい。位置計測装置18cは、少なくとも一つ加工済み領域FA1と少なくとも一つの未加工領域FA2とが規定する少なくとも二つの境界Bの位置を計測してもよい。
【0244】
塗装膜SFの表面上に複数の加工済み領域FA1が形成される状態の一例として、
図30に示すように、間に未加工領域FA2が位置する二つの加工済み領域FA1が塗装膜SFの表面上に形成される状態があげられる。このような状況において、制御装置2は、二つの加工済み領域FA1の位置(例えば、二つの加工済み領域FA1と一つの未加工領域FA2とが規定する二つの境界Bの位置)の計測結果に基づいて、二つの加工済み領域FA1の間に位置する未加工領域FAに対して加工動作を行うように、加工装置1を制御してもよい。この場合の加工動作は、例えば、実質的にはほぼ隣接しているとみなせるほどに近接している二つの加工済み領域FA1の間の未加工領域FAに対して追い加工を行う加工動作であってもよい。例えば、この場合の加工動作は、二つの加工済み領域FA1を実質的に一つの加工済み領域FA1にする加工動作であってもよい。
【0245】
(3-2-2)第2の計測動作
第2の計測動作は、塗装膜SFの表面の特徴点(つまり、加工対象物Sの特徴点)の位置を計測することで、塗装膜SFと光照射装置11との相対的な位置関係を計測する動作である。ある塗装膜SFの表面の特徴点は、塗装膜SFの表面上の位置を示す点の集合である点群データによって示される物体の3次元形状のうちの特徴的な位置の点を含んでいてもよい。特徴点の一例として、塗装膜SFにおける頂点、角、境界、最も+Z側に位置する点、最も-Z側に位置する点、最も+X側に位置する点、最も-X側に位置する点、最も+Y側に位置する点、及び、最も-Y側に位置する点の少なくとも一つがあげられる。
【0246】
この場合、制御装置2は、位置計測装置18cの計測結果に基づいて、基準座標系(例えば、位置計測装置18cの計測座標系)内での光照射装置11に対する特徴点の位置を特定することができる。更に、制御装置2は、加工対象物Sの3次元モデルデータ(或いは、塗装膜SFの3次元モデルデータ)を参照することで、当該3次元モデルデータの座標系における特徴点の座標を特定することができる。このため、制御装置2は、位置計測装置18cの計測結果及び加工対象物Sの3次元モデルデータ(或いは、塗装膜SFの3次元モデルデータ)に基づいて、基準座標系内での加工対象物S(つまり、塗装膜SF)の任意の部位の位置を特定することができる。その結果、制御装置2は、基準座標系内において、塗装膜SF上の所望の位置に加工光ELを照射することができる位置に光照射装置11が位置するように、塗装膜SFと光照射装置11との相対位置を変更することができる。
【0247】
但し、第2の計測動作では、第1の計測動作と比較して、未加工領域FA2(特に、未加工領域FA2のうち次に加工動作を行うべき加工予定領域)の位置を高精度に特定することが難しい。このため、制御装置2は、塗装膜SF上に加工済み領域FA1が存在しないがゆえに第1の計測動作を行うことが難しい場合に、第2の計測動作を行ってもよい。例えば、加工装置1が塗装膜SFに対して初めて加工動作を行う場合には、塗装膜SF上に加工済み領域FA1が存在しない可能性が高い。このため、制御装置2は、加工装置1が塗装膜SFに対して初めて加工動作を行う場合には、第2の計測動作を行ってもよい。一方で、制御装置2は、塗装膜SF上に加工済み領域FA1が存在するがゆえに第1の計測動作を行うことが可能である場合には、第1の計測動作を行ってもよい。制御装置2は、塗装膜SF上に加工済み領域FA1が存在するがゆえに第1の計測動作を行うことが可能である場合には、第2の計測動作を行わなくてもよい。
【0248】
(3-2-3)第3の計測動作
第3の計測動作は、塗装膜SFの表面に形成されたリブレット構造を計測することで、塗装膜SFと光照射装置11との相対的な位置関係を計測する動作である。つまり、第3の計測動作は、加工済み領域FA1に形成されたリブレット構造を計測することで、塗装膜SFと光照射装置11との相対的な位置関係を計測する動作である。
【0249】
具体的には、
図6(a)及び
図6(b)を参照しながら既に説明したように、リブレット構造は、第1の方向(例えば、Y軸方向)に沿って延びる複数の凹状構造CP1又は複数の凸状構造CP2が、第1の方向に交差する第2方向(例えば、X軸方向)に周期方向を有する構造である。つまり、リブレット構造は、周期的な構造である。このため、リブレット構造は、位置計測のためのいわゆるエンコーダスケールとして利用可能である。第3計測動作は、リブレット構造をエンコーダスケールとして利用することで、塗装膜SFと光照射装置11との相対的な位置関係を計測する動作である。
【0250】
リブレット構造をエンコーダスケールとして利用する場合には、第3計測動作を行うための位置計測装置18cを含む加工システムSYScの構造を示す
図31に示すように、位置計測装置18cは、光照射部181cと、受光部182cとを備える。光照射部181cは、リブレット構造に対して計測光MLを照射する装置である。光照射部181cは、リブレット構造に向けて計測光MLを射出する装置である。受光部182cは、リブレット構造を介した計測光MLを受光する受光装置(つまり、計測光MLを検出する検出装置)である。受光部182cは、リブレット構造からの計測光MLを受光する受光装置である。特に、リブレット構造が周期的な構造であるがゆえに、リブレット構造は、実質的には回折格子として機能可能である。この場合、リブレット構造を介した計測光ML(つまり、リブレット構造からの計測光ML)は、リブレット構造で回折された回折光となる。従って、受光部182cは、リブレット構造で回折された回折光を受光する。
【0251】
制御装置2は、受光部182cの受光結果に基づいて、塗装膜SFと光照射装置11との相対的な位置関係を特定することができる。その結果、制御装置2は、受光部182cの受光結果に基づいて、塗装膜SFの表面の所望の位置に加工光ELを照射するように、塗装膜SFと光照射装置11との相対位置を変更することができる。
【0252】
但し、リブレット構造の周期に応じた周期的な信号が受光部182cの受光結果に含まれていない場合には、リブレット構造の周期に応じた周期的な信号が受光部182cの受光結果に含まれている場合と比較して、受光部182cの受光結果に基づいて塗装膜SFと光照射装置11との相対的な位置関係を特定することが困難になる可能性がある。このため、制御装置2は、塗装膜SFと光照射装置11との相対的な位置関係を特定するために、リブレット構造を構成する凹状構造CP1及び凸状構造CP2が延びる方向に交差する方向に沿って計測光MLがリブレット構造を走査させてもよい。例えば、制御装置2は、凹状構造CP1及び凸状構造CP2が延びる方向に交差する方向に沿って計測光MLがリブレット構造を走査可能となるように、塗装膜SFと位置計測装置18cとの相対位置を変更してもよい。例えば、制御装置2は、凹状構造CP1及び凸状構造CP2が延びる方向に交差する方向に沿って計測光MLがリブレット構造を走査可能となるように、塗装膜SFに対する位置計測装置18cの姿勢を変更してもよい。尚、凹状構造CP1及び凸状構造CP2が延びる方向に交差する方向に沿って計測光MLがリブレット構造を走査する例は、
図32(a)及び
図32(b)に示されている。例えば、
図32(a)は、リブレット構造を構成する凹状構造CP1及び凸状構造CP2が延びる方向(
図32(a)に示す例では、Y軸方向)に直交する方向に沿ってリブレット構造を走査する計測光MLを示している。例えば、
図32(b)は、リブレット構造を構成する凹状構造CP1及び凸状構造CP2が延びる方向(
図32(b)に示す例では、Y軸方向)に直交しないものの交差する方向に沿ってリブレット構造を走査する計測光MLを示している。
【0253】
(3-4)加工システムSYScの技術的効果
以上説明した第3実施形態の加工システムSYScは、上述した第1実施形態の加工システムSYSa又は第2実施形態の加工システムSYSbが享受可能な効果と同様の効果を享受することができる。また、第3実施形態では、加工システムSYScは、位置計測装置18cの計測結果に基づいて、駆動系12を制御する。このため、加工システムSYScは、光照射装置11の位置決め精度を高めることができる。つまり、加工システムSYScは、塗装膜SF上の所望の位置に加工光ELが照射されるように、塗装膜SFと光照射装置11との相対位置を適切に変更することができる。その結果、加工システムSYScは、塗装膜SFをより適切に加工することができる。
【0254】
例えば、加工システムSYScは、加工済み領域FA1に形成されたリブレット構造の位相と、新たに形成されるリブレット構造(例えば、未加工領域FA2に新たに形成されるリブレット構造)の位相とを、所望の関係にすることができる。典型的には、加工システムSYScは、加工済み領域FA1に形成されたリブレット構造の位相と、新たに形成されるリブレット構造の位相とを、互いに一致させることができる。また、加工システムSYScは、2つの加工ショット領域SA(例えば、加工ショット領域SA#1及びSA#2)に形成されるリブレット構造の位相を互いに所望の関係(典型的には、位相同士が一致する関係)にすることができる。なお、このとき、加工済み領域FA1に形成されたリブレット構造の周期と、新たに形成されるリブレット構造の周期とは互いに同じ周期であってもよい。2つの加工ショット領域(例えば、加工ショット領域SA#1及びSA#2)に形成されるリブレット構造の周期は同じ周期であってもよい。
【0255】
(4)その他の変形例
上述した説明では、加工システムSYSは、複数の加工光ELに塗装膜SFの表面を走査させるために、ガルバノミラー1122で加工光ELを偏向している。しかしながら、加工装置1は、ガルバノミラー1122で加工光ELを偏向することに加えて又は代えて、塗装膜SFに対して光照射装置11を相対的に移動させることで、複数の加工光ELに塗装膜SFの表面を走査させてもよい。つまり、制御装置2は、駆動系12を制御して、塗装膜SFの表面を加工光ELが走査するように光照射装置11を塗装膜SFに対して相対的に移動させてもよい。
【0256】
駆動系12が光照射装置11を塗装膜SFに対して相対的に移動させる目的の一つは、上述したように加工光ELに塗装膜SFの表面を走査させることである。このため、光照射装置11が移動しなくても加工光ELによる塗装膜SFの走査が実現できる場合には、光照射装置11は移動しなくてもよい。つまり、加工システムSYSは、駆動系12を備えていなくてもよい。一例として、光照射装置11に対して加工対象物Sが移動すれば、光照射装置11が移動しなくても加工光ELによる塗装膜SFの走査が実現できる。このため、加工システムSYSは、加工対象物Sを移動させる駆動系を備えていてもよい。例えば、加工システムSYSは、加工対象物Sを支持するステージを移動させる駆動系を備えていてもよい。
【0257】
駆動系12が光照射装置11を塗装膜SFに対して相対的に移動させる目的の一つは、収容装置13の収容空間SPに複数の加工ショット領域SAが収容される場合において、収容装置13及び支持装置14を移動させることなく、複数の加工ショット領域SAを順に加工光ELで走査するためである。このため、収容空間SPに単一の加工ショット領域SAが収容される場合には、光照射装置11は移動しなくてもよい。つまり、加工装置1は、駆動系12を備えていなくてもよい。
【0258】
上述した説明では、加工装置1は、収容装置13と、支持装置14と、駆動系15と、排気装置16と、気体供給装置17とを備えている。しかしながら、加工装置1は、加工対象物Sを加工可能である限りは、収容装置13、支持装置14、駆動系15、排気装置16及び気体供給装置17の少なくとも一つを備えていなくてもよい。加工装置1は、加工対象物Sを加工可能である限りは、収容装置13、支持装置14、駆動系15、排気装置16及び気体供給装置17の少なくとも一部を備えていなくてもよい。加工装置1が収容装置13を備えていない場合には、駆動系12は、支持装置14に取り付けられていてもよい。更に、上述した収容装置13、支持装置14、駆動系15、排気装置16及び気体供給装置17のそれぞれの構造は一例に過ぎず、加工装置1は、上述した構造とは異なる構造を有する収容装置13、支持装置14、駆動系15、排気装置16及び気体供給装置17の少なくとも一つを備えてもよい。
【0259】
上述した説明では、加工システムSYSは、ディスプレイ4を備えている。しかしながら、加工システムSYSは、ディスプレイ4を備えていなくてもよい。
【0260】
上述した説明では、加工システムSYSは、加工対象物Sの表面上に、塗装膜SFによるリブレット構造を形成している。しかしながら、加工システムSYSは、加工対象物Sの表面上に、任意の形状を有する塗装膜SFによる任意の構造を形成してもよい。この場合であっても、形成するべき構造に応じた走査軌跡に沿って塗装膜SFの表面を加工光ELが走査するように制御装置2が光照射装置11等を制御すれば、任意の形状を有する任意の構造が形成可能である。任意の構造の一例としては、規則的又は不規則的に形成されたマイクロ・ナノメートルオーダの微細テクスチャ構造(典型的には、凹凸構造)があげられる。このような微細テクスチャ構造は、流体(気体及び/又は液体)による抵抗を低減させる機能を有するサメ肌構造及びディンプル構造の少なくとも一方を含んでいてもよい。微細テクスチャ構造は、撥液機能及びセルフクリーニング機能の少なくとも一方を有する(例えば、ロータス効果を有する)ハスの葉表面構造を含んでいてもよい。微細テクスチャ構造は、液体輸送機能を有する微細突起構造(米国特許公開第2017/0044002号公報参照)、親液性機能を有する凹凸構造、防汚機能を有する凹凸構造、反射率低減機能及び撥液機能の少なくとも一方を有するモスアイ構造、特定波長の光のみを干渉で強めて構造色を呈する凹凸構造、ファンデルワールス力を利用した接着機能を有するピラーアレイ構造、空力騒音低減機能を有する凹凸構造、及び、液滴捕集機能を有するハニカム構造等の少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0261】
上述した説明では、加工システムSYSは、加工光ELの照射によって塗装膜SFを蒸発させることで、塗装膜SFを除去している。しかしながら、加工システムSYSは、加工光ELの照射によって塗装膜SFを蒸発させることに加えて又は代えて、加工光ELの照射によって塗装膜SFの性質を変えることで塗装膜SFを除去してもよい。例えば、加工システムSYSは、加工光ELの照射によって塗装膜SFを溶融させ、溶融させた塗装膜SFを除去することで塗装膜SFを除去してもよい。例えば、加工システムSYSは、加工光ELの照射によって塗装膜SFを脆くし、脆くした塗装膜SFを剥離することで塗装膜SFを除去してもよい。上述した説明では、加工システムSYSは、加工対象物Sの表面に形成された塗装膜SFをアブレーション加工している。しかしながら、加工システムSYSは、加工対象物Sの表面に形成された塗装膜SFの一部を熱加工によって除去してもよい。
【0262】
上述した説明では、加工システムSYSは、塗装膜SFを除去することで凹部C(或いは、凹状構造CP1、又は、当該凹状構造CP1によるリブレット構造等の任意の構造)を形成している。つまり、加工システムSYSは、塗装膜SFを部分的に薄くするように塗装膜SFを加工している。しかしながら、加工システムSYSは、塗装膜SFを部分的に薄くすることに加えて又は代えて、塗装膜SFを部分的に厚くするように塗装膜SFを加工してもよい。つまり、加工システムSYSは、塗装膜SFを除去することで凹部Cを形成することに加えて又は代えて、塗装膜SFを付加することで凸部(或いは、凸状構造CP2又は、当該凸状構造CP2による任意の構造)を形成してもよい。例えば、加工システムSYSは、塗装膜SFの第1部分に加工光ELを照射することで第1部分の塗装膜SFを除去し、その後、除去した塗装膜SFを塗装膜SFの第2部分に定着させることで、当該第2部分における塗装膜SFを相対的に厚くしてもよい(つまり、第2部分に凸部を形成してもよい)。
【0263】
上述した説明では、加工システムSYSは、加工対象物Sの表面に形成された塗装膜SFを加工している。しかしながら、加工システムSYSは、加工対象物Sの表面に形成された、塗装膜SF以外の任意の被膜を加工してもよい。或いは、加工システムSYSは、複数の層が積層された構造体を加工してもよい。具体的には、加工システムSYSは、構造体を構成する複数の層のうちの少なくとも一つの層(典型的には、最も表面側の層を含む少なくとも一つの層)を加工してもよい。加工システムSYSは、構造体を構成する複数の層のうちの少なくとも一つの層を加工して、当該層による構造を形成してもよい。この場合、加工される少なくとも一つの層が上述した塗装膜SFに相当し、当該少なくとも一つの層以外の他の層が加工対象物Sに相当する。或いは、加工システムSYSは、加工対象物Sそのものを加工してもよい。つまり、加工システムSYSは、表面に塗装膜SF又は任意の被膜が形成されていない加工対象物Sを加工してもよい。
【0264】
上述した説明では、加工システムSYSは、加工対象物Sの表面の流体に対する抵抗を低減させるためのリブレット構造を加工対象物Sに形成している。しかしながら、加工システムSYSは、表面の流体に対する抵抗を低減させるためのリブレット構造とは異なるその他の構造を加工対象物Sに形成してもよい。例えば、加工システムSYSは、流体と加工対象物Sの表面とが相対的に移動するときに発生する騒音を低減するためのリブレット構造を加工対象物Sに形成してもよい。例えば、加工システムSYSは、加工対象物Sの表面上の流体の流れに対して渦を発生する構造を加工対象物Sに形成してもよい。例えば、加工システムSYSは、加工対象物Sの表面に疎水性を与えるための構造を加工対象物Sに形成してもよい。
【0265】
(5)付記
以上説明した実施形態に関して、更に以下の付記を開示する。
[付記1]
加工光で物体を加工する加工方法において、
前記物体の表面上の被検査領域において異物検査を行うことと、
前記被検査領域に加工光を照射することと
を含む加工方法。
[付記2]
加工光で物体を加工する加工方法において、
前記物体の表面上の被検査領域において前記物体の表面の欠陥検査を行うことと、
前記被検査領域に加工光を照射することと
を含む加工方法。
[付記3]
加工光で物体を加工する加工方法において、
前記物体の表面上の少なくとも一部内の異物を除去することと、
前記物体の表面上の少なくとも一部に加工光を照射することと
を含む加工方法。
[付記4]
空力特性を変更する構造が表面に形成された物体の前記表面からの光を受光することと、
前記構造の形状に関する設計情報と、前記光の受光結果に関する情報とを用いて、前記物体の前記表面に形成された前記構造の特徴を評価することと
を含む検査方法。
[付記5]
加工光で物体を加工する加工方法において、
前記物体上の第1領域に加工光を照射することと、
前記加工光が照射された前記物体上の前記第1領域の位置を計測することと
を含み、
前記照射することは、前記第1領域の位置計測結果を用いて、前記物体上の前記第1領域と異なる第2領域に加工光を照射することを含む
加工方法。
[付記6]
加工光で物体を加工する加工システムに接続される制御装置において、
前記物体の表面上の被検査領域において異物検査を検査装置に行わせる処理と、
照射装置によって前記被検査領域に加工光を照射する処理と
を前記加工システムに実行させる
制御装置。
[付記7]
加工光で物体を加工する加工システムに接続される制御装置において、
前記物体の表面上の被検査領域において前記物体の表面の欠陥検査を検査装置に行わせる処理と、
照射装置によって前記被検査領域に加工光を照射する処理と
を前記加工システムに実行させる
制御装置。
[付記8]
加工光で物体を加工する加工システムに接続される制御装置において、
前記物体の表面上の少なくとも一部内の異物を異物除去装置によって除去する処理と、
照射装置によって前記物体の表面上の少なくとも一部に加工光を照射する処理と
を前記加工システムに実行させる
制御装置。
[付記9]
物体を検査する検査システムに接続される制御装置において、
空力特性を変更する構造が表面に形成された物体の前記表面からの光を受光装置によって受光する処理と、
前記構造の形状に関する設計情報と、前記受光装置からの出力情報とを用いて、前記物体の前記表面に形成された前記構造の特徴を評価する処理と
を前記検査システムに実行させる
制御装置。
[付記10]
加工光で物体を加工する加工システムに接続される制御装置において、
照射装置によって前記物体上の第1領域に加工光を照射する処理と、
位置計測装置によって前記加工光が照射された前記物体上の前記第1領域の位置を計測する処理と、
前記位置計測装置による前記第1領域の位置計測結果を用いて、前記物体上の前記第1領域と異なる第2領域に前記照射装置によって加工光を照射する処理と
を前記加工システムに実行させる
制御装置。
[付記11]
加工光で物体を加工する加工システムを制御するコンピュータに実行させるコンピュータプログラムにおいて、
前記物体の表面上の被検査領域において異物検査を検査装置に行わせる処理と、
照射装置によって前記被検査領域に加工光を照射する処理と
を前記コンピュータに実行させる
コンピュータプログラム。
[付記12]
加工光で物体を加工する加工システムを制御するコンピュータに実行させるコンピュータプログラムにおいて、
前記物体の表面上の被検査領域において前記物体の表面の欠陥検査を検査装置に行わせる処理、
照射装置によって前記被検査領域に加工光を照射する処理と
を前記コンピュータに実行させる
コンピュータプログラム。
[付記13]
加工光で物体を加工する加工システムを制御するコンピュータに実行させるコンピュータプログラムにおいて、
前記物体の表面上の少なくとも一部内の異物を異物除去装置によって除去する処理と、
照射装置によって前記物体の表面上の少なくとも一部に加工光を照射する処理と
を前記コンピュータに実行させる
コンピュータプログラム。
[付記14]
物体を検査する検査システムを制御するコンピュータに実行させるコンピュータプログラムにおいて、
空力特性を変更する構造が表面に形成された物体の前記表面からの光を受光装置によって受光する処理と、
前記構造の形状に関する設計情報と、前記受光装置からの出力情報とを用いて、前記物体の前記表面に形成された前記構造の特徴を評価する処理と
を前記コンピュータに実行させる
コンピュータプログラム。
[付記15]
加工光で物体を加工する加工システムを制御するコンピュータに実行させるコンピュータプログラムにおいて、
照射装置によって前記物体上の第1領域に加工光を照射する処理と、
位置計測装置によって前記加工光が照射された前記物体上の前記第1領域の位置を計測する処理と、
前記位置計測装置による前記第1領域の位置計測結果を用いて、前記物体上の前記第1領域と異なる第2領域に前記照射装置によって加工光を照射する処理と
を前記コンピュータに実行させる
コンピュータプログラム。
[付記16]
物体を加工するための加工光を前記物体に照射する照射装置と、
前記物体を計測することで前記物体と前記照射装置との相対位置を計測する物体計測装置と、
前記物体計測装置の計測結果に基づいて、前記物体と前記照射装置との相対位置を変更する制御装置と
を備える加工システム。
[付記17]
前記物体計測装置の前記照射装置に対する相対位置は固定されている
付記16に記載の加工システム。
[付記18]
前記物体計測装置は、撮像装置を含む
付記16又は17に記載の加工システム。
[付記19]
前記撮像装置は、前記物体を撮像可能である
付記18に記載の加工システム。
[付記20]
前記撮像装置は、前記物体上における前記加工光の照射領域を撮像可能である
付記18又は19に記載の加工システム。
[付記21]
前記物体計測装置は、前記物体の表面の特徴点の位置を計測する
付記16から20のいずれか一項に記載の加工システム。
[付記22]
前記物体計測装置は、前記物体の表面のうち前記加工光の照射によって加工された加工済み領域の位置を計測する
付記16から21のいずれか一項に記載の加工システム。
[付記23]
前記物体計測装置は、前記物体の表面のうち前記加工光の照射によって加工された加工済み領域の位置と、前記物体の表面のうち未だ加工されていない未加工領域の位置とを計測する
付記16から22のいずれか一項に記載の加工システム。
[付記24]
前記物体計測装置は、前記物体の表面のうち前記加工光の照射によって加工された加工済み領域と前記物体の表面のうち未だ加工されていない未加工領域との境界の位置を計測する
付記16から23のいずれか一項に記載の加工システム。
[付記25]
前記物体計測装置は、前記加工光の照射によって前記物体の表面に形成された加工パターンを計測する
付記16から24のいずれか一項に記載の加工システム。
[付記26]
前記物体計測装置は、前記加工パターンに対して計測光を射出する射出装置と、前記加工パターンからの前記計測光を検出する検出装置とを含む
付記25に記載の加工システム。
[付記27]
前記加工パターンは、前記物体の表面に沿った第1の方向に延びる単位パターンが、前記物体の表面に沿っており且つ前記第1の方向に交差する第2の方向に沿って複数配列されたパターンを含み、
前記物体計測装置は、前記第2の方向に沿って前記計測光に前記加工パターンを走査させることで、前記加工パターンを計測する
付記26に記載の加工システム。
[付記28]
前記物体計測装置は、前記加工パターンをエンコーダスケールとして用いる
付記25から27のいずれか一項に記載の加工システム。
[付記29]
前記照射装置が前記加工光を前記物体の一の領域に照射する前に、前記一の領域の状態を計測する状態計測装置を更に備え、
前記制御装置は、前記状態計測装置の測定結果に基づいて、前記一の領域に前記加工光を照射するように前記照射装置を制御する
付記16から28のいずれか一項に記載の加工システム。
[付記30]
物体を加工するための加工光を前記物体に照射する照射装置と、
前記照射装置が前記加工光を前記物体の一の領域に照射する前に、前記一の領域の状態を計測する状態計測装置と、
前記状態計測装置の計測結果に基づいて、前記一の領域に前記加工光を照射するように前記照射装置を制御する制御装置と
を備える加工システム。
[付記31]
前記状態計測装置は、前記物体の表面を撮像可能な撮像装置を含む
付記29又は30に記載の加工システム。
[付記32]
前記制御装置は、前記状態計測装置の計測結果に基づいて、前記一の領域に、前記加工光の照射による加工にとって障害となり得る異常事象が発生しているか否かを判定する
付記29から31のいずれか一項に記載の加工システム。
[付記33]
前記異常事象は、異物が前記一の領域に付着しているという事象を含む
付記32に記載の加工システム。
[付記34]
前記制御装置は、前記一の領域に前記異常事象が発生していると判定した場合には、前記異常事象が解消された後に、前記一の領域に前記加工光を照射するように前記照射装置を制御する
付記32又は33に記載の加工システム。
[付記35]
前記異常事象は、異物が前記一の領域に付着しているという事象を含み、
前記制御装置は、前記一の領域に前記異常事象が発生していると判定した場合には、前記異物が前記一の領域から除去された後に、前記一の領域に前記加工光を照射するように前記照射装置を制御する
付記32から34のいずれか一項に記載の加工システム。
[付記36]
前記制御装置は、前記一の領域に前記異常事象が発生していると判定した場合には、前記異常事象を解消するための解消装置を制御して、前記異常事象を解消する
付記32から35のいずれか一項に記載の加工システム。
[付記37]
前記異常事象は、異物が前記一の領域に付着しているという事象を含み、
前記解消装置は、前記異物を前記一の領域から除去する除去装置を含む
付記36に記載の加工システム。
[付記38]
前記除去装置は、気体及び/又は液体を前記一の領域に吹き付けることで前記異物を前記一の領域から除去する
付記37に記載の加工システム。
[付記39]
前記照射装置は、前記物体の表面に沿った一の方向に沿って前記加工光の照射領域が前記物体の表面を移動するように、前記加工光を照射し、
前記物体の表面において、前記加工光が照射される照射領域と、前記状態計測装置によって計測される被計測領域とは、前記一の方向に沿って並ぶ
付記29から38のいずれか一項に記載の加工システム。
[付記40]
前記被計測領域は、前記照射領域に対して、前記照射領域の移動方向における前方側に位置する
付記39に記載の加工システム。
[付記41]
前記状態計測装置は、前記照射装置が前記物体の表面の第1領域に前記加工光を照射している期間の少なくとも一部において、前記物体の表面の第2領域の状態を計測する
付記29から40のいずれか一項に記載の加工装置。
[付記42]
前記照射装置は、前記物体の表面に沿った一の方向に沿って前記加工光の照射領域が前記物体の表面を移動するように、前記加工光を照射し、
前記第2領域は、前記第1領域に対して、前記照射領域の移動方向における前方側に位置する
付記41に記載の加工システム。
[付記43]
前記状態計測装置は、第1の状態計測装置であり、
前記照射装置が前記加工光を前記物体の他の領域に照射した後に、前記他の領域の状態を計測する第2の状態計測装置を更に備える
付記29から42のいずれか一項に記載の加工システム。
[付記44]
前記第2の状態計測装置は、前記物体の表面を撮像可能な撮像装置を含む
付記43に記載の加工システム。
[付記45]
前記制御装置は、前記第2の状態計測装置の測定結果に基づいて、前記他の領域における加工品質が適切か否か判定する
付記43又は44に記載の加工システム。
[付記46]
前記制御装置は、前記第2の状態計測装置の計測結果に基づいて、前記他の領域における加工品質が適切か否かに関する情報を出力する
付記43から45のいずれか一項に記載の加工システム。
[付記47]
前記制御装置は、前記第2の状態計測装置の計測結果に基づいて、前記加工光を前記他の領域に照射するように前記照射装置を制御する
付記43から46のいずれか一項に記載の加工システム。
[付記48]
前記制御装置は、前記他の領域に前記加工光を照射して前記他の領域における加工品質を改善するように、前記照射装置を制御する
付記47に記載の加工装置。
[付記49]
前記照射装置は、前記物体の表面に沿った一の方向に沿って前記加工光の照射領域が前記物体の表面を移動するように、前記加工光を照射し、
前記物体の表面において、前記加工光の照射領域と、前記第2の状態計測装置の計測領域とは、前記一の方向に沿って並ぶ
付記43から48のいずれか一項に記載の加工システム。
[付記50]
前記計測領域は、前記照射領域に対して、前記照射領域の移動方向における後方側に位置する
付記49に記載の加工システム。
[付記51]
前記第2の状態計測装置は、前記照射装置が前記物体の表面の第3領域に前記加工光を照射している期間の少なくとも一部において、前記物体の表面の第4領域の状態を計測する
付記43から50のいずれか一項に記載の加工装置。
[付記52]
前記照射装置は、前記物体の表面に沿った一の方向に沿って前記加工光の照射領域が前記物体の表面を移動するように、前記加工光を照射し、
前記第4領域は、前記第3領域に対して、前記照射領域の移動方向における後方側に位置する
付記51に記載の加工システム。
[付記53]
照射装置から、物体を加工するための加工光を前記物体に照射することと、
前記物体を計測することで前記物体と前記照射装置との相対位置を計測することと、
前記物体と前記照射装置との相対位置の計測結果に基づいて、前記物体と前記照射装置との相対位置を変更することと
を含む加工方法。
[付記54]
物体を加工するための加工光が前記物体の一の領域に照射される前に、前記一の領域の状態を計測することと、
前記一の領域の状態の計測結果に基づいて、前記一の領域に前記加工光を照射することと
を含む加工方法。
[付記55]
物体を加工するための加工光を前記物体に照射して、前記物体上の第1領域に第1周期構造を形成することと、
物体を加工するための加工光を前記物体に照射して、前記物体上の前記第1領域と異なる第2領域に第2周期構造を形成することと
を含み、
前記第1周期構造の位相は、前記第2周期構造の位相と等しい
加工方法。
[付記56]
前記第1周期構造の周期と前記第2周期構造の周期とは等しい
付記55に記載の加工方法。
【0266】
上述の各実施形態の要件は、適宜組み合わせることができる。上述の各実施形態の要件のうちの一部が用いられなくてもよい。上述の各実施形態の要件は、適宜他の実施形態の要件と置き換えることができる。また、法令で許容される限りにおいて、上述の各実施形態で引用した装置等に関する全ての公開公報及び米国特許の開示を援用して本文の記載の一部とする。
【0267】
また、本発明は、請求の範囲及び明細書全体から読み取るこのできる発明の要旨又は思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う加工システム、検査システム、加工方法、検査方法、制御装置及びコンピュータプログラムもまた本発明の技術思想に含まれる。
【符号の説明】
【0268】
1、1c 加工装置
11 光照射装置
111 光源系
1111 光源
112 光学系
1122 ガルバノミラー
12 駆動系
18c 位置計測装置
2 制御装置
31 異物計測装置
311 撮像装置
312 受光装置
32 異物除去装置
33b 欠陥計測装置
34b 欠陥補修装置
4 ディスプレイ
C 凹部
CP1 凹状構造
CP2 凸状構造
EA 目標照射領域
EL 加工光
S 加工対象物
SF 塗装膜
SYS 加工システム
SA 加工ショット領域
AMA、DMA 被計測領域