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特許7363901樹脂組成物、硬化物の製造方法、硬化物、パターン硬化物、層間絶縁膜、カバーコート層、表面保護膜及び電子部品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】樹脂組成物、硬化物の製造方法、硬化物、パターン硬化物、層間絶縁膜、カバーコート層、表面保護膜及び電子部品
(51)【国際特許分類】
   C08L 79/04 20060101AFI20231011BHJP
   C08K 5/20 20060101ALI20231011BHJP
   C08K 5/3472 20060101ALI20231011BHJP
   C08K 5/41 20060101ALI20231011BHJP
   C08K 5/541 20060101ALI20231011BHJP
   C08K 5/5455 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
C08L79/04 B
C08K5/20
C08K5/3472
C08K5/41
C08K5/541
C08K5/5455
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021537526
(86)(22)【出願日】2019-08-08
(86)【国際出願番号】 JP2019031420
(87)【国際公開番号】W WO2021024464
(87)【国際公開日】2021-02-11
【審査請求日】2022-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】398008295
【氏名又は名称】HDマイクロシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東 綾香
(72)【発明者】
【氏名】阿部 悟志
(72)【発明者】
【氏名】副島 和也
【審査官】久保田 葵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/043467(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/018290(WO,A1)
【文献】特開2016-069498(JP,A)
【文献】特開2011-128358(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 79/04
C08K 5/20
C08K 5/3472
C08K 5/41
C08K 5/541
C08K 5/5455
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)成分と、
下記(B)成分と、
下記(C)成分と、
下記(D)成分と、
下記(D3)成分と、を含有する樹脂組成物。
(A)ポリベンゾオキサゾール又はポリベンゾオキサゾール前駆体
(B)下記式(11)で表される化合物及び下記式(21)で表される化合物からなる群から選択される1以上
(C)防錆剤
(Dヒドロキシ基を有するシランカップリング剤
(D3)グリシジル基を有するシランカップリング剤
【化1】
(式(11)中、R31及びR32は、それぞれ独立に、炭素数1~のアルキル基である。)
【化2】
(式(21)中、R41~R43は、それぞれ独立に、炭素数1~のアルキル基である。)
【請求項2】
前記(A)成分がポリベンゾオキサゾール前駆体である請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリベンゾオキサゾール前駆体が、下記式(I)で表される構造単位を有するポリベンゾオキサゾール前駆体である請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【化3】
(式(I)中、Uは2価の有機基、単結合、-O-又は-SO-であり、Vは2価の有機基を示す。)
【請求項4】
前記(B)成分が、前記式(11)で表される化合物である請求項1~3のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記(C)成分が、含窒素複素環化合物である請求項1~4のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項6】
さらに(D2)ウレア結合を有するシランカップリング剤を含有する請求項1~5のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記(D1)成分の含有量が、前記(A)成分100質量部に対して、0.1~20質量部である請求項1~のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記(D1)成分の含有量が、前記(A)成分100質量部に対して、2.0~6.5質量部である請求項1~のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記(C)成分が、トリアゾール誘導体及びテトラゾール誘導体からなる群から選択される1以上である請求項~8のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項10】
感光性樹脂組成物である請求項1~9のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれかに記載の樹脂組成物を基板上に塗布、乾燥して樹脂膜を形成する工程と、
前記樹脂膜を加熱処理する工程と、を含む硬化物の製造方法。
【請求項12】
請求項1~10のいずれかに記載の樹脂組成物を硬化した硬化物。
【請求項13】
請求項10に記載の樹脂組成物を硬化したパターン硬化物。
【請求項14】
請求項12に記載の硬化物又は請求項13に記載のパターン硬化物を用いて作製された層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜。
【請求項15】
請求項14に記載の層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜を含む電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、硬化物の製造方法、硬化物、パターン硬化物、層間絶縁膜、カバーコート層、表面保護膜及び電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子の表面保護膜及び層間絶縁膜には、優れた耐熱性と電気特性、機械特性等を併せ持つポリイミドやポリベンゾオキサゾールが用いられている。近年、これらの樹脂自身に感光特性を付与した感光性樹脂組成物が用いられており、これを用いるとパターン硬化物の製造工程が簡略化でき、煩雑な製造工程を短縮できる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ポリイミドやポリベンゾオキサゾールを用いた感光性樹脂組成物として、特許文献2が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-265520号公報
【文献】国際公開第2014/115233号
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、現像後静置してもクラックの発生を抑制できる樹脂膜を形成できる樹脂組成物、硬化物の製造方法、硬化物、パターン硬化物、層間絶縁膜、カバーコート層、表面保護膜及び電子部品を提供することである。
【0006】
本発明によれば、以下の樹脂組成物等が提供される。
1.下記(A)成分と、
下記(B)成分と、
下記(C)成分及び下記(D)成分からなる群から選択される1以上と、を含有する樹脂組成物。
(A)ポリイミド、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール又はポリベンゾオキサゾール前駆体
(B)下記式(11)で表される化合物、下記式(21)で表される化合物及びN-メチル-2-ピロリドンからなる群から選択される1以上
(C)防錆剤
(D)シランカップリング剤
【化1】
(式(11)中、R31及びR32は、それぞれ独立に、炭素数1~10のアルキル基である。)
【化2】
(式(21)中、R41~R43は、それぞれ独立に、炭素数1~10のアルキル基である。)
2.前記(A)成分がポリベンゾオキサゾール前駆体である1に記載の樹脂組成物。
3.前記ポリベンゾオキサゾール前駆体が、下記式(I)で表される構造単位を有するポリベンゾオキサゾール前駆体である1又は2に記載の樹脂組成物。
【化3】
(式(I)中、Uは2価の有機基、単結合、-O-又は-SO-であり、Vは2価の有機基を示す。)
4.前記(B)成分が、前記式(11)で表される化合物である1~3のいずれかに記載の樹脂組成物。
5.前記(C)成分が、含窒素複素環化合物である1~4のいずれかに記載の樹脂組成物。
6.前記(D)成分が、(D1)ヒドロキシ基を有するシランカップリング剤及び(D2)ウレア結合を有するシランカップリング剤からなる群から選択される1以上を含有する1~5のいずれかに記載の樹脂組成物。
7.前記(D1)成分の含有量が、前記(A)成分100質量部に対して、0.1~20質量部である6に記載の樹脂組成物。
8.前記(D1)成分の含有量が、前記(A)成分100質量部に対して、2.0~6.5質量部である6に記載の樹脂組成物。
9.前記(C)成分及び(D)成分からなる群から選択される1以上が、トリアゾール誘導体、テトラゾール誘導体、前記(D1)成分及び前記(D2)成分からなる群から選択される1以上である6~8のいずれかに記載の樹脂組成物。
10.感光性樹脂組成物である1~9のいずれかに記載の樹脂組成物。
11.1~10のいずれかに記載の樹脂組成物を基板上に塗布、乾燥して樹脂膜を形成する工程と、
前記樹脂膜を加熱処理する工程と、を含む硬化物の製造方法。
12.1~10のいずれかに記載の樹脂組成物を硬化した硬化物。
13.10に記載の樹脂組成物を硬化したパターン硬化物。
14.12に記載の硬化物又は13に記載のパターン硬化物を用いて作製された層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜。
15.14に記載の層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜を含む電子部品。
【0007】
本発明によれば、現像後静置してもクラックの発生を抑制できる樹脂膜を形成できる樹脂組成物、硬化物の製造方法、硬化物、パターン硬化物、層間絶縁膜、カバーコート層、表面保護膜及び電子部品が提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明の樹脂組成物、硬化物の製造方法、硬化物、パターン硬化物、層間絶縁膜、カバーコート層、表面保護膜及び電子部品の実施の形態を詳細に説明する。尚、以下の実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0009】
本明細書において「A又はB」とは、AとBのどちらか一方を含んでいればよく、両方とも含んでいてもよい。また、本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。また、本明細書において組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。さらに、例示材料は特に断らない限り単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0010】
本発明の樹脂組成物は、下記(A)成分と、
下記(B)成分と、
下記(C)成分及び下記(D)成分からなる群から選択される1以上と、を含有する。
(A)ポリイミド、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール又はポリベンゾオキサゾール前駆体(以下、「(A)成分」ともいう。)
(B)下記式(11)で表される化合物、下記式(21)で表される化合物及びN-メチル-2-ピロリドンからなる群から選択される1以上(以下、「(B)成分」ともいう。)
(C)防錆剤(以下、「(C)成分」ともいう。)
(D)シランカップリング剤(以下、「(D)成分」ともいう。)
【化4】
(式(11)中、R31及びR32は、それぞれ独立に、炭素数1~10のアルキル基である。)
【化5】
(式(21)中、R41~R43は、それぞれ独立に、炭素数1~10のアルキル基である。)
【0011】
これにより、現像後静置してもクラックの発生を抑制できる樹脂膜を形成できる。
【0012】
また、任意の効果として、Cuとの接着性に優れる硬化物を形成できる。
任意の効果として、プレッシャークッカー試験(PCT)後に、Cuとの接着性に優れる硬化物を形成できる。
任意の効果として、高温保存(HTS)後に、Cuとの接着性に優れる硬化物を形成できる。
任意の効果として、SiNとの接着性に優れる硬化物を形成できる。
任意の効果として、PCT後に、SiNとの接着性に優れる硬化物を形成できる。
任意の効果として、HTS後に、SiNとの接着性に優れる硬化物を形成できる。
【0013】
任意の効果として、Cu上において、SAICAS(Surface And Interfacial Cutting Analysis System)評価に優れる硬化物を形成できる。
任意の効果として、Cu上において、PCT後に、SAICAS評価に優れる硬化物を形成できる。
任意の効果として、SiN上において、SAICAS評価に優れる硬化物を形成できる。
任意の効果として、SiN上において、PCT後に、SAICAS評価に優れる硬化物を形成できる。
【0014】
任意の効果として、パターニングされたCu上において、TEG(Test Element Group)評価に優れる硬化物を形成できる。
任意の効果として、パターニングされたCu上において、PCT後に、TEG評価に優れる硬化物を形成できる。
任意の効果として、パターニングされたCu上において、HTS後に、TEG評価に優れる硬化物を形成できる。
任意の効果として、パターニングされたSiN上において、TEG評価に優れる硬化物を形成できる。
任意の効果として、パターニングされたSiN上において、PCT後に、TEG評価に優れる硬化物を形成できる。
任意の効果として、パターニングされたSiN上において、HTS後に、TEG評価に優れる硬化物を形成できる。
【0015】
(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を含有する樹脂組成物が好ましい(さらに、後述の(D1)成分及び後述の(D2)成分からなる群から選択される1以上を含有することがより好ましく、
さらに、後述の(D1)成分及び後述の(D2)成分を含有することがさらに好ましい)。
【0016】
(A)成分、(B)成分、及び後述の(D1)成分を含有する樹脂組成物が好ましい(接着性向上の観点から、さらに、後述の(D2)成分を含有することがより好ましい)。
【0017】
(A)成分、(B)成分、及び後述の(D2)成分を含有する樹脂組成物が好ましい(接着性向上の観点から、さらに、後述の(D1)成分を含有することがより好ましい)。
【0018】
(A)成分は、パターニングの観点から、i線における透過率が高いものが好ましい。
【0019】
(A)成分は、ポリベンゾオキサゾール前駆体であることが好ましい。
ポリベンゾオキサゾール前駆体は、下記式(I)で表される構造単位を有するポリベンゾオキサゾール前駆体であることが好ましい。
【化6】
(式(I)中、Uは2価の有機基、単結合、-O-又は-SO-であり、Vは2価の有機基を示す。)
【0020】
式(I)のUが結合する2つのベンゼン環は、それぞれ独立に、置換基(例えば、メチル基、フッ素原子、アルキル基、フッ素化アルキル基)を有してもよい。
【0021】
式(I)のUの2価の有機基としては、置換基を有してもよい炭素数1~30(好ましくは2~30)の2価の脂肪族炭化水素基が好ましく、置換基を有してもよいメチレン基、置換基を有してもよいエチレン基がより好ましい。
式(I)のUの置換基を有してもよい炭素数1~30の2価の脂肪族炭化水素基は、鎖状でもよい。
置換基としては、メチル基、トリフルオロメチル基等が挙げられる。
【0022】
式(I)のUの2価の有機基は、下記式(UV1)で表される基が好ましい。
【化7】
【0023】
式(UV1)中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、炭素数1~6のアルキル基又は炭素数1~6のフッ素化アルキル基であり、a1は1~30(好ましくは1~10)の整数である。
【0024】
及びRが2以上存在する場合、2以上のR及びRのそれぞれは、同一でもよく、異なっていてもよい。
【0025】
式(UV1)のR及びRの炭素数1~6(好ましくは1~3)のアルキル基としては、メチル基、エチル基等が挙げられる。
式(UV1)のR及びRの炭素数1~6(好ましくは1~3)のフッ素化アルキル基としては、トリフルオロメチル基、パーフルオロブチル等が挙げられる。
式(UV1)のR及びRは、(A)成分の透明性の観点から、トリフルオロメチル基が好ましい。
【0026】
式(I)のVの2価の有機基としては、ジカルボン酸から2つのカルボキシ基を除いた基等が挙げられる。
【0027】
式(I)のVの2価の有機基としては、2価の脂肪族炭化水素基又は2価の芳香族炭化水素基等が挙げられる。
また、式(I)のVの2価の有機基は、2つの2価の芳香族炭化水素基が、
単結合、
酸素原子、硫黄原子、窒素原子及び珪素原子等のヘテロ原子、
上述の式(UV1)で表される基、又は
ケトン基、エステル基及びアミド基等の有機基で結合された2価の基でもよい。
2価の脂肪族炭化水素基及び2価の芳香族炭化水素基は、置換基を有してもよい。置換基としては、メチル基、エチル基等が挙げられる。
【0028】
2価の脂肪族炭化水素基(好ましくは、炭素数1~30、より好ましくは5~18の)は、例えば、アルキレン基(例えば、デシレン基、ドデシレン基)、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロオクチレン基及び2価のビシクロ環等が挙げられる。
【0029】
また、上記の2価の芳香族炭化水素基(好ましくは炭素数6~30)としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基等が挙げられる。
【0030】
式(I)のVにおいて、ジカルボン酸としては、ドデカン二酸、デカン二酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2,2-ビス(4-カルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、4,4’-ジカルボキシビフェニル、4,4’-ジカルボキシジフェニルエーテル、4,4’-ジカルボキシテトラフェニルシラン、ビス(4-カルボキシフェニル)スルホン、2,2-ビス(p-カルボキシフェニル)プロパン、5-tert-ブチルイソフタル酸、5-ブロモイソフタル酸、5-フルオロイソフタル酸、5-クロロイソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。
【0031】
式(I)で表される構造単位を有するポリベンゾオキサゾール前駆体は、式(II)で表される構造単位を有するポリベンゾオキサゾール前駆体であることが好ましい。
【化8】
(式(II)中、Uは式(I)で定義した通りである。Vは2価の有機基、単結合、-O-又は-SO-である。)
【0032】
式(II)のVの2価の有機基としては、式(I)のUの2価の有機基と同様のものが挙げられる。
式(II)のVが結合する2つのベンゼン環は、それぞれ独立に、置換基(例えば、メチル基、フッ素原子、アルキル基、フッ素化アルキル基)を有してもよい。
【0033】
(A)成分は、アルカリ水溶液に可溶であることが好ましく、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液に可溶であることがより好ましい。
【0034】
(A)成分がアルカリ水溶液に可溶であることの1つの基準を、以下に説明する。(A)成分を任意の溶剤に溶かして溶液とした後、シリコンウエハ等の基板上にスピン塗布して膜厚5μm程度の樹脂膜を形成する。これをテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液、金属水酸化物水溶液、有機アミン水溶液のいずれか1つに、20~25℃において浸漬する。この結果、溶解して溶液となったとき、用いた(A)成分はアルカリ水溶液に可溶であると判断する。
【0035】
(A)成分の分子量について、ポリスチレン換算での重量平均分子量が10,000~100,000であることが好ましく、15,000~100,000がより好ましく、17,000~85,000がさらに好ましい。
上記範囲の場合、適切なアルカリ現像液への溶解性を保ち、樹脂組成物の粘度を適切にすることができる。
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ法によって測定し、標準ポリスチレン検量線を用いて換算することによって求める。
また、重量平均分子量を数平均分子量で除した分散度は1.0~4.0が好ましく、1.0~3.5がより好ましい。
【0036】
ポリベンゾオキサゾールとしては、上述のポリベンゾオキサゾール前駆体を閉環して得られるポリベンゾオキサゾールが好ましい。
【0037】
(B)成分は、式(11)で表される化合物であることが好ましい。
【0038】
式(11)中におけるR31及びR32の炭素数1~10(好ましくは1~3、より好ましくは1又は3)のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等を挙げることができる。
式(11)で表される化合物は、ジメチルスルホキシドであることが好ましい。
式(11)で表される化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0039】
式(21)中におけるR41~R43の炭素数1~10(好ましくは1~3、より好ましくは1又は3)のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等を挙げることができる。
式(21)で表される化合物は、市販のものであると3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド(例えば、商品名「KJCMPA-100」(KJケミカルズ株式会社製))が挙げられる。
【0040】
式(21)で表される化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0041】
(B)成分の含有量は特に制限はないが、(A)成分100質量部に対して、3~40質量部であることが好ましく、5~30質量部がより好ましい。
【0042】
(C)成分は、接着性の観点から、含窒素複素環化合物が好ましい。
【0043】
(C)成分としては、例えば、ベンゾイミダゾール、
1,2,4-トリアゾール、1,2,3-トリアゾール、1,2,5-トリアゾール、3-メルカプト-4-メチル-4H-1,2,4-トリアゾール、3-メルカプト-1,2,4-トリアゾール、4-アミノ-3,5-ジメチル-4H-1,2,4-トリアゾール、4-アミノ-3,5-ジプロピル-4H-1,2,4-トリアゾール、3-アミノ-5-イソプロピル-1,2,4-トリアゾール、4-アミノ-3-メルカプト-5-メチル-4H-1,2,4-トリアゾール、3-アミノ-5-メルカプト-1,2,4-トリアゾール、3-アミノ-5-メチル-4H-1,2,4-トリアゾール、4-アミノ-1,2,4-トリアゾール、4-アミノ-3,5-ジメチル-1,2,4-トリアゾール、4-アミノ-5-メチル-4H-1,2,4-トリアゾール-3-チオール、3,5-ジアミノ-1H-1,2,4-トリアゾール、5-メチル-1H-ベンゾトリアゾール、5,6-ジメチルベンゾトリアゾール、5-アミノ-1H-ベンゾトリアゾール、ベンゾトリアゾール-4-スルホン酸、1,2,3-ベンゾトリアゾール等のトリアゾール誘導体、及び、
1H-テトラゾール、5-メチル-1H-テトラゾール、5-(メチルチオ)-1H-テトラゾール、5-(エチルチオ)-1H-テトラゾール、5-フェニル-1H-テトラゾール、5-ニトロ-1H-テトラゾール、1-メチル-1H-テトラゾール、5,5’-ビス-1H-テトラゾール、5-アミノ-1H-テトラゾール等のテトラゾール誘導体などが挙げられる。
【0044】
(C)成分は、ベンゾトリアゾール(1,2,3-ベンゾトリアゾール)又は5-アミノ-1H-テトラゾールであることが好ましい。
(C)成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0045】
(C)成分を用いる場合、(C)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.01~10質量部が好ましく、0.1~5質量部がより好ましく、0.3~5質量部がさらに好ましい。
【0046】
(D)成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0047】
(D)成分を用いる場合、(D)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.1~20質量部が好ましく、0.3~10質量部がより好ましく、1~10質量部がさらに好ましい。
【0048】
(D)成分は、接着性向上の観点から、(D1)ヒドロキシ基を有するシランカップリング剤(以下、「(D1)成分」ともいう。)及び(D2)ウレア結合(-NH-CO-NH-)を有するシランカップリング剤(以下、「(D2)成分」ともいう。)からなる群から選択される1以上を含有することが好ましい。
【0049】
(D)成分は、(D1)成分を含有することが好ましい。
(D1)成分としては、基板との接着性をより向上させるため、式(6)で表される化合物が好ましい。
【0050】
【化9】
(式(6)中、Rはヒドロキシ基を有する1価の基(例えば、ヒドロキシ基、ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ基、ビス(2-ヒドロキシメチル)アミノ基)であり、R及びRは、それぞれ独立に炭素数1~5のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基)である。cは1~10(好ましくは1、2、3又は4)の整数であり、dは0~3(好ましくは0又は1)の整数である。)
【0051】
式(6)で表される化合物としては、ヒドロキシメチルトリメトキシシラン、ヒドロキシメチルトリエトキシシラン、2-ヒドロキシエチルトリメトキシシラン、2-ヒドロキシエチルトリエトキシシラン、3-ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、3-ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、4-ヒドロキシブチルトリメトキシシラン、4-ヒドロキシブチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0052】
(D1)成分は、さらに、窒素原子を有する基を含むことが好ましく、さらにアミノ基又はアミド結合を有するシランカップリング剤が好ましい。
さらにアミノ基を有するシランカップリング剤としては、ビス(2-ヒドロキシメチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、ビス(2-ヒドロキシメチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0053】
さらにアミド結合を有するシランカップリング剤としては、R10-(CH-CO-NH-(CH-Si(OR10A(R10はヒドロキシ基であり、e及びfは、それぞれ独立に、1~3の整数であり、R10Aはメチル基、エチル基又はプロピル基である)で表される化合物等が挙げられる。
【0054】
(D1)成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0055】
(D1)成分を用いる場合、(D1)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.1~20質量部が好ましく、0.3~10質量部がより好ましく、1~8質量部がさらに好ましく、2.0~6.5質量部が特に好ましい。
【0056】
(D)成分は、(D2)成分を含有することが好ましい。
(D2)成分は、下記式(7)で表される化合物が好ましい。
【化10】
(式(7)中、R及びRは、それぞれ独立に炭素数1~5のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基)である。aは1~10(好ましくは1、2、3又は4)の整数であり、bは1~3(好ましくは2又は3)の整数である。)
【0057】
式(7)で表される化合物の具体例としては、ウレイドメチルトリメトキシシラン、ウレイドメチルトリエトキシシラン、2-ウレイドエチルトリメトキシシラン、2-ウレイドエチルトリエトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、4-ウレイドブチルトリメトキシシラン、4-ウレイドブチルトリエトキシシラン等が挙げられ、好ましくは3-ウレイドプロピルトリエトキシシランである。
【0058】
(D2)成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0059】
(D2)成分を用いる場合、(D2)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.1~20質量部が好ましく、0.3~10質量部がより好ましく、1~10質量部がさらに好ましい。
【0060】
(D)成分として、(D3)グリシジル基を有するシランカップリング剤(以下、「(D3)成分」ともいう。)を用いてもよい。
グリシドキシメチルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリエトキシシラン、2-グリシドキシエチルトリメトキシシラン、2-グリシドキシエチルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、4-グリシドキシブチルトリメトキシシラン、4-グリシドキシブチルトリエトキシシラン、ビス(2-グリシドキシメチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0061】
(D3)成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0062】
(D3)成分を用いる場合、(D)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.1~20質量部が好ましく、0.3~10質量部がより好ましく、0.4~10質量部がさらに好ましい。
【0063】
また、(D)成分として、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メチルフェニルシランジオール、エチルフェニルシランジオール、n-プロピルフェニルシランジオール、イソプロピルフェニルシランジオール、n-ブチルフェニルシランジオール、イソブチルフェニルシランジオール、tert-ブチルフェニルシランジオール、ジフェニルシランジオール、エチルメチルフェニルシラノール、n-プロピルメチルフェニルシラノール、イソプロピルメチルフェニルシラノール、n-ブチルメチルフェニルシラノール、イソブチルメチルフェニルシラノール、tert-ブチルメチルフェニルシラノール、エチルn-プロピルフェニルシラノール、エチルイソプロピルフェニルシラノール、n-ブチルエチルフェニルシラノール、イソブチルエチルフェニルシラノール、tert-ブチルエチルフェニルシラノール、メチルジフェニルシラノール、エチルジフェニルシラノール、n-プロピルジフェニルシラノール、イソプロピルジフェニルシラノール、n-ブチルジフェニルシラノール、イソブチルジフェニルシラノール、tert-ブチルジフェニルシラノール、フェニルシラントリオール、1,4-ビス(トリヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4-ビス(メチルジヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4-ビス(エチルジヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4-ビス(プロピルジヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4-ビス(ブチルジヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4-ビス(ジメチルヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4-ビス(ジエチルヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4-ビス(ジプロピルヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4-ビス(ジブチルヒドロキシシリル)ベンゼン等を用いてもよい。
【0064】
(C)成分及び(D)成分からなる群から選択される1以上は、接着性向上の観点から、トリアゾール誘導体、テトラゾール誘導体、(D1)成分及び(D2)成分からなる群から選択される1以上であることが好ましい。
【0065】
本発明の樹脂組成物は、さらに、感光剤を含有してもよい。
感光剤とは、感光性樹脂組成物(例えば、上述の樹脂組成物に感光剤を配合したもの)を基板上に塗布して形成した感光性樹脂膜に光を照射した場合に、光に反応して、照射部と未照射部の現像液に対する溶解性に差異を付与する機能を有するものである。
感光剤は特に制限はないが、光により酸を発生するもの(光酸発生剤)であることが好ましい。これにより、光を照射した部分のアルカリ水溶液への可溶性を増大させる機能を有する。
活性光線は、i線等の紫外線、可視光線及び放射線などが挙げられる。
【0066】
光酸発生剤としては、ジアゾナフトキノン化合物、アリールジアゾニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩等が挙げられ、中でもジアゾナフトキノン化合物は、良好な感度を発現するという観点から好ましい。
ジアゾナフトキノン化合物とは、ジアゾナフトキノン構造を有する化合物である。
【0067】
ジアゾナフトキノン化合物は、例えば、o-キノンジアジドスルホニルクロリド類と、ヒドロキシ化合物、アミノ化合物等(好ましくはヒドロキシ化合物)とを脱塩酸剤の存在下で縮合反応させることで得られる。
【0068】
o-キノンジアジドスルホニルクロリド類としては、例えば、1,2-ベンゾキノン-2-ジアジド-4-スルホニルクロリド、1,2-ナフトキノン-2-ジアジド-5-スルホニルクロリド、1,2-ナフトキノン-2-ジアジド-4-スルホニルクロリド等が使用できる。
【0069】
ヒドロキシ化合物としては、例えば、ヒドロキノン、レゾルシノール、ピロガロール、ビスフェノールA、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,3,4-トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,2’,3’-ペンタヒドロキシベンゾフェノン,2,3,4,3’,4’,5’-ヘキサヒドロキシベンゾフェノン、ビス(2,3,4-トリヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,3,4-トリヒドロキシフェニル)プロパン、4b,5,9b,10-テトラヒドロ-1,3,6,8-テトラヒドロキシ-5,10-ジメチルインデノ[2,1-a]インデン、トリス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、及び1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-{[2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル]フェニル}エタン等が使用できる。
【0070】
アミノ化合物としては、例えば、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、o-アミノフェノール、m-アミノフェノール、p-アミノフェノール、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジヒドロキシビフェニル、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン等が使用できる。
【0071】
感光剤を含有する場合、感光剤の含有量は、感光時の感度、解像度の観点から、(A)成分100質量部に対して、0.01~50質量部とすることが好ましく、0.1~30質量部がより好ましく、0.5~25質量部がさらに好ましく、3~20質量部が特に好ましい。
【0072】
本発明の樹脂組成物は、機械特性及び耐薬品性向上の観点から、さらに、架橋剤を含有してもよい。
架橋剤としては、下記式(2)で表される化合物等が挙げられる。
【0073】
【化11】
【0074】
式(2)中、R11は、それぞれ独立に、水素原子又は-CH-O-R12で表される基である。R11の少なくとも1つ(好ましくは全て)は、-CH-O-R12で表される基である。R12は、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基であり、R12が2以上の場合、2以上のR12は同一でもよく、異なってもよい。
【0075】
式(2)のR12について、炭素数1~6(好ましくは1,2又は3)のアルキル基としては、メチル基、エチル基又はブチル基等が挙げられる。
【0076】
また、架橋剤としては、例えば、下記式(3)で表される化合物が挙げられる。
【0077】
【化12】
(式(3)中、Y’は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1~10(好ましくは1~5)のアルキル基、一部又は全部がフッ素原子で置換された炭素数1~10(好ましくは1~5)のフルオロアルキル基(例えばトリフルオロメチル基)、一部がヒドロキシ基で置換された炭素数1~10(好ましくは1~5)のヒドロキシアルキル基、又は炭素数1~10(好ましくは1~5)のアルコキシ基であり、R13及びR14は、それぞれ独立に1価の有機基を示し、R15及びR16は、それぞれ独立に水素原子又は1価の有機基を示し、r及びtは、それぞれ独立に1~3(好ましくは1~2)の整数であり、s及びuは、それぞれ独立に0~3(好ましくは0~1)の整数である。)
【0078】
式(3)のR15及びR16の1価の有機基としては、炭素数1~10(好ましくは1~5)のアルキル基、炭素数1~10(好ましくは1~5)のヒドロキシアルキル基、一部又は全部がハロゲン原子で置換された炭素数1~10(好ましくは1~5)のアルキル基(例えばトリフルオロメチル基)、及び一部又は全部がハロゲン原子で置換された炭素数1~10(好ましくは1~5)のヒドロキシアルキル基が好ましい。
【0079】
式(3)のR13及びR14の1価の有機基としては、炭素数1~10(好ましくは1~5)のアルキル基、炭素数1~10(好ましくは1~5)のアルコキシ基、炭素数1~10(好ましくは1~5)のヒドロキシアルキル基、炭素数1~10(好ましくは1~5)のヒドロキシアルコキシ基、炭素数2~10(好ましくは2~5)のアルコキシアルキル基、一部又は全部がハロゲン原子で置換された炭素数1~10(好ましくは1~5)のアルキル基(例えばトリフルオロメチル基)、一部又は全部がハロゲン原子で置換された炭素数1~10(好ましくは1~5)のアルコキシ基、一部又は全部がハロゲン原子で置換された炭素数1~10(好ましくは1~5)のヒドロキシアルキル基、一部又は全部がハロゲン原子で置換された炭素数1~10(好ましくは1~5)のヒドロキシアルコキシ基、及び一部又は全部がハロゲン原子で置換された炭素数2~10(好ましくは2~5)のアルコキシアルキル基が好ましい。
【0080】
式(3)のY’及びR13~R16の1価の有機基の炭素数1~10のアルキル基としては、メチル基、エチル基等が挙げられる。
式(3)のY’及びR13~R16の1価の有機基の炭素数1~10のヒドロキシアルキル基としては、メチロール基等が挙げられる。
式(3)のY’及びR13~R16の1価の有機基の炭素数1~10のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基等が挙げられる。
式(3)のR13~R16の1価の有機基において、ハロゲン原子としては、フッ素原子等が挙げられる。
式(3)のR13~R16の1価の有機基の炭素数2~10のアルコキシアルキル基としては、メトキシメチル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基等が挙げられる。
【0081】
また、架橋剤として、例えば下記化合物を用いてもよい。
【化13】
(式中、Zは、それぞれ独立に炭素数1~6のアルキル基を表し、R17は、それぞれ独立に炭素数1~6のアルキル基を表す。)
【0082】
17及びZについて、炭素数1~6(好ましくは1,2又は3)のアルキル基としては、メチル基、エチル基又はブチル基等が挙げられる。
【0083】
架橋剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0084】
架橋剤を含有する場合、架橋剤の含有量は、(A)成分100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、1.5~50質量部がより好ましく、2~30質量部がさらに好ましい。
【0085】
本発明の樹脂組成物は、残膜率及び現像時間調整の観点から、さらに、溶解調整剤又は溶解阻害剤を含有してもよい。溶解調整剤又は溶解阻害剤を用いることで、露光部と未露光部の溶解速度のコントラストを大きくすることができるため、精密なパターンを形成することができる。
【0086】
溶解調整剤としては、ヨードニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩等が挙げられる。
【0087】
溶解調整剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0088】
溶解調整剤を含有する場合、溶解調整剤の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、0.2~15質量部がより好ましく、0.3~10質量部がさらに好ましい。
【0089】
本発明の樹脂組成物は、さらに、環化促進剤を含有してもよい。
環化促進剤としては、熱酸発生剤及び熱塩基発生剤等が挙げられる。
【0090】
熱酸発生剤について、発生する酸としては、強酸が好ましく、具体的には、例えば、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸のようなアリールスルホン酸、
カンファースルホン酸、
トリフルオロメタンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸のようなパーフルオロアルキルスルホン酸、及び
メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ブタンスルホン酸のようなアルキルスルホン酸等が好ましい。
熱酸発生剤としては、上記の強酸のオニウム塩、上記強酸とピリジン誘導体との塩、及び上記強酸が共有結合したイミドスルホナートが好ましい。
上記オニウム塩としては、例えば、ジフェニルヨードニウム塩等のジアリールヨードニウム塩、
ジ(t-ブチルフェニル)ヨードニウム塩等のジ(アルキルアリール)ヨードニウム塩、
トリメチルスルホニウム塩等のトリアルキルスルホニウム塩、
ジメチルフェニルスルホニウム塩等のジアルキルモノアリールスルホニウム塩、及び
ジフェニルメチルスルホニウム塩等のジアリールモノアルキルヨードニウム塩が好ましい。
【0091】
熱酸発生剤として、p-トルエンスルホン酸シクロヘキシル、p-トルエンスルホン酸イソプロピル、2,4,6-トリメチルピリジニウムp-トルエンスルホネート、及びメタンスルホン酸イソプロピル等が挙げられる。
【0092】
熱塩基発生剤について、発生する塩基は、例えばアミン化合物が挙げられる。2級アミン又は3級アミンが好ましく、塩基性が高く、樹脂膜の加熱処理温度をより低下できるため、3級アミンがより好ましい。
また、熱塩基発生剤ついて、発生する塩基の沸点は、80℃以上であることが好ましく、100℃以上がより好ましく、140℃以上が最も好ましい。
【0093】
熱塩基発生剤として、例えばN-フェニルイミノ二酢酸等のカルボン酸化合物や、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)の塩等が挙げられる。
【0094】
環化促進剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0095】
環化促進剤を含有する場合、環化促進剤の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、0.3~10質量部がより好ましく、0.5~5質量部がさらに好ましい。
【0096】
本発明の樹脂組成物は、さらに、溶剤を含有してもよい。
【0097】
溶剤としては、通常、他の成分を充分に溶解できるものであれば特に制限はないが、γ-ブチロラクトン、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸ベンジル、n-ブチルアセテート、エトキシエチルプロピオネート、3-メチルメトキシプロピオネート、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホリルアミド、テトラメチレンスルホン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、メチルアミルケトン等が挙げられる。
中でも、各成分の溶解性の観点及び塗布性の観点から、γ-ブチロラクトン、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミドが好ましい。
【0098】
溶剤は、1種単独でも、2種以上を組み合わせてもよい。
【0099】
溶剤の含有量に、特に制限はないが、(A)成分100質量部に対して、通常1~1000質量部であり、50~300質量部が好ましく、100~200質量部がより好ましい。
【0100】
本発明の樹脂組成物は、さらに、溶解促進剤、界面活性剤及びレベリング剤等を含有してもよい。
【0101】
溶解促進剤を含むことで、(A)成分のアルカリ水溶液に対する溶解性をより促進させることができる。
溶解促進剤としては、例えばフェノール性水酸基を有する化合物が挙げられる。これにより、アルカリ水溶液を用いて現像する場合に、露光部の溶解速度が増加し、感度を向上することができる。また、パターン形成後の樹脂膜の硬化時に、樹脂膜の溶融を防ぐことができる。
【0102】
フェノール性水酸基を有する化合物に特に制限はないが、比較的分子量の小さい化合物が好ましい。
フェノール性水酸基を有する化合物としては、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、2,4-キシレノール、2,5-キシレノール、2,6-キシレノール、ビスフェノールA、ビスフェノールB、ビスフェノールC、ビスフェノールE、ビスフェノールF、ビスフェノールG、4,4’,4’’-メチリジントリスフェノール、2,6-[(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)メチル]-4-メチルフェノール、4,4’-[1-[4-[1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール、4,4’-[1-[4-[2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール、4,4’,4’’-エチリジントリスフェノール、4-[ビス(4-ヒドロキシフェニル)メチル]-2-エトキシフェノール、4,4’-[(2-ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2,3-ジメチルフェノール]、4,4’-[(3-ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2,6-ジメチルフェノール]、4,4’-[(4-ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2,6-ジメチルフェノール]、2,2’-[(2-ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[3,5-ジメチルフェノール]、2,2’-[(4-ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[3,5-ジメチルフェノール]、4,4’-[(3,4-ジヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2,3,6-トリメチルフェノール]、4-[ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシ-6-メチルフェニル)メチル]-1,2-ベンゼンジオール、4,6-ビス[(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)メチル]-1,2,3-ベンゼントリオール、4,4’-[(2-ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[3-メチルフェノール]、4,4’,4’’-(3-メチル-1-プロパニル-3-イリジン)トリスフェノール、4,4’,4’’,4’’’-(1,4-フェニレンジメチリジン)テトラキスフェノール、2,4,6-トリス[(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)メチル]-1,3-ベンゼンジオール、2,4,6-トリス[(3,5-ジメチル-2-ヒドロキシフェニル)メチル]-1,3-ベンゼンジオール、4,4’-[1-[4-[1-(4-ヒドロキシフェニル)-3,5-ビス[(ヒドロキシ-3-メチルフェニル)メチル]フェニル]-フェニル]エチリデン]ビス[2,6-ビス(ヒドロキシ-3-メチルフェニル)メチル]フェノール等が挙げられる。
【0103】
溶解促進剤を含む場合、溶解促進剤の含有量は、現像時間及び感度の点から、(A)成分100質量部に対して1~30質量部が好ましく、3~25質量部がより好ましい。
【0104】
界面活性剤又はレベリング剤を含むことで、塗布性(例えばストリエーション(膜厚のムラ)の抑制)及び現像性を向上させることができる。
【0105】
界面活性剤又はレベリング剤としては、例えば、ポリオキシエチレンウラリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル等が挙げられ、市販品としては、商品名「メガファックスF171」、「F173」、「R-08」(以上、DIC株式会社製)、商品名「フロラードFC430」、「FC431」(以上、住友スリーエム株式会社製)、商品名「オルガノシロキサンポリマーKP341」、「KBM303」、「KBM403」、「KBM803」(以上、信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0106】
界面活性剤及びレベリング剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0107】
界面活性剤又はレベリング剤を含む場合、界面活性剤又はレベリング剤の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.01~10質量部が好ましく、0.05~5質量部がより好ましく、0.05~3質量部がさらに好ましい。
【0108】
本発明の樹脂組成物は、溶剤を除いて、本質的に、(C)成分及び(D)成分からなる群から選択される1以上、(A)成分、及び(B)成分、並びに任意に、感光剤、架橋剤、溶解調整剤、環化促進剤、溶解促進剤、界面活性剤及びレベリング剤からなっており(consisting essentially of)、本発明の効果を損なわない範囲で他に不可避不純物を含んでもよい。
本発明の樹脂組成物の、例えば、80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、98質量%以上又は100質量%が、溶剤を除いて、
(C)成分及び(D)成分からなる群から選択される1以上、(A)成分、及び(B)成分、又は
(C)成分及び(D)成分からなる群から選択される1以上、(A)成分、及び(B)成分、並びに任意に感光剤、架橋剤、溶解調整剤、環化促進剤、溶解促進剤、界面活性剤及びレベリング剤からなっていてもよい(consisting of)。
【0109】
本発明の樹脂組成物は、感光性樹脂組成物であることが好ましく、ポジ型感光性樹脂組成物であることがより好ましい。
【0110】
本発明の硬化物は、上述の樹脂組成物の硬化することで得ることができる。
本発明の硬化物は、パターン硬化物として用いてもよく、パターンがない硬化物として用いてもよい。
本発明の硬化物の膜厚は、3~30μmが好ましい。
【0111】
本発明の硬化物の製造方法では、上述の樹脂組成物を基板上に塗布、乾燥して樹脂膜を形成する工程と、樹脂膜を加熱処理する工程と、を含む。さらに、露光(例えば、パターンなしで)、現像する工程を備えてもよい。
これにより、本発明の硬化物を得ることができる。
【0112】
上述のパターン硬化物の製造方法では、例えば、上述の樹脂組成物(さらに感光剤及び架橋剤を含むことが好ましい。)を基板上に塗布、乾燥して樹脂膜を形成する工程と、樹脂膜をパターン露光して、パターン露光後の樹脂膜を得る工程と、パターン露光後の樹脂膜を、アルカリ水溶液を用いて、現像し、パターン樹脂膜を得る工程と、パターン樹脂膜を加熱処理する工程と、を含む。
これにより、パターン硬化物を得ることができる。
【0113】
基板としては、Si基板(シリコンウエハ)、ガラス基板、炭化ケイ素基板、タンタル酸リチウム基板、ニオブ酸リチウム基板等の半導体基板、TiO基板、SiO基板等の金属酸化物絶縁体基板、Cuめっきウエハ、窒化ケイ素基板(例えば、SiN層形成ウエハ)、アルミニウム基板、銅基板、銅合金基板などが挙げられる。
【0114】
樹脂組成物を基板上に塗布する方法としては、浸漬法、スプレー法、スクリーン印刷法、スピンコート法等が挙げられる。塗布方法に特に制限はないが、スピナー等を用いて行うことができる。
【0115】
乾燥は、ホットプレート、オーブン等を用いて行うことができる。
乾燥温度は70~150℃が好ましく、溶解コントラスト確保の観点から、90~120℃がより好ましい。乾燥時間は、30秒間~5分間が好ましい。
乾燥は、2回以上行ってもよい。これにより、上述の樹脂組成物を膜状に形成した樹脂膜を得ることができる。
【0116】
樹脂膜の膜厚は、2~100μmが好ましく、3~50μmがより好ましく、5~30μmがさらに好ましい。
【0117】
パターン露光は、例えばフォトマスクを介して所定のパターンに露光する。
パターンなしで行う露光は、例えばフォトマスクを介さず、露光する。
露光の際、i線露光が好適であるが、照射する活性光線としては、紫外線、遠紫外線、可視光線、電子線、X線等を用いることができる。
露光装置としては、平行露光機、投影露光機、ステッパ、スキャナ露光機、プロキシミティ露光機等を用いることができる。
【0118】
現像することで、パターン形成された樹脂膜(パターン樹脂膜)を得ることができる。
現像液としては、特に制限はないが、1,1,1-トリクロロエタン等の難燃性溶媒、炭酸ナトリウム水溶液、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液等のアルカリ水溶液、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、シクロペンタノン、γ-ブチロラクトン、酢酸エステル類等の良溶媒、これら良溶媒と低級アルコール、水、芳香族炭化水素等の貧溶媒との混合溶媒などが用いられる。現像後は必要に応じて貧溶媒等でリンス洗浄を行ってもよい。
【0119】
現像液に界面活性剤を添加してもよい。添加量としては、現像液100質量部に対して、0.01~10質量部が好ましく、0.1~5質量部がより好ましい。
【0120】
現像時間は、例えば現像後の未露光部の膜厚が、乾燥後の膜厚の60~90%となる時間とすることができる。
現像時間は、用いる(A)成分によっても異なるが、10秒間~15分間が好ましく、10秒間~5分間より好ましく、生産性の観点からは、20秒間~5分間がさらに好ましい。
【0121】
現像後、リンス液により洗浄を行ってもよい。
リンス液としては、蒸留水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、トルエン、キシレン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル等を単独又は適宜混合して用いてもよく、また段階的に組み合わせて用いてもよい。
【0122】
パターン樹脂膜を加熱処理することにより、パターン硬化物を得ることができる。
また、樹脂膜を加熱処理することにより、硬化物を得ることができる。
(A)成分のポリベンゾオキサゾール前駆体が、加熱処理工程によって、脱水閉環反応を起こし、対応するポリベンゾオキサゾールとなってもよい。
【0123】
加熱処理の温度は、400℃以下が好ましく、150~350℃がより好ましい。180℃以上であると環化反応が充分に進行し、良好な耐熱性が得られる傾向にある。
上記範囲内であることにより、基板又はデバイスへのダメージを小さく抑えることができ、デバイスを歩留り良く生産することが可能となり、プロセスの省エネルギー化を実現することができる。
【0124】
加熱処理の時間は、5時間以下が好ましく、30分間~3時間がより好ましい。
上記範囲内であることにより、架橋反応又は脱水閉環反応を充分に進行することができる。
加熱処理の雰囲気は大気中であっても、窒素等の不活性雰囲気中であってもよいが、樹脂膜又はパターン樹脂膜、基板の酸化を防ぐことができる観点から、窒素雰囲気下が好ましい。
【0125】
加熱処理に用いられる装置としては、石英チューブ炉、ホットプレート、ラピッドサーマルアニール、縦型拡散炉、赤外線硬化炉、電子線硬化炉、マイクロ波硬化炉等が挙げられる。
【0126】
本発明の硬化物は、パッシベーション膜、バッファーコート膜、層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜等として用いることができる。
上記パッシベーション膜、バッファーコート膜、層間絶縁膜、カバーコート層及び表面保護膜等からなる群から選択される1以上を用いて、信頼性の高い、半導体装置、多層配線板、各種電子デバイス等の電子部品などを製造することができる。
【実施例
【0127】
以下、実施例及び比較例に基づき、本発明についてさらに具体的に説明する。尚、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0128】
合成例1[ポリベンゾオキサゾール前駆体A1の合成]
撹拌機、温度計を備えた0.5リットルのフラスコ中に、4,4’-ジカルボキシジフェニルエーテル15.48g(60mmol)、N-メチル-2-ピロリドン90gを仕込み、フラスコを5℃に冷却した。その後、塩化チオニル23.9g(120mmol)を滴下し、30分間反応させて、4,4’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸クロリドの溶液を得た。
次いで、撹拌機、温度計を備えた0.5リットルのフラスコ中に、N-メチル-2-ピロリドン87.5gを仕込み、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン18.30g(50mmol)、p-アミノフェノール2.2g(20mmol)を投入し、撹拌溶解した。その後、ピリジン9.48g(120mmol)を添加し、温度を0~5℃に保ちながら、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸クロリドの溶液を30分間で滴下し、フラスコ中の溶液を30分間撹拌した。上記溶液を3リットルの水に投入し、析出物を回収し、これを純水で3回洗浄した後、減圧してポリベンゾオキサゾール前駆体A1を得た。
得られたポリベンゾオキサゾール前駆体A1の重量平均分子量は19,810であった。
【0129】
尚、分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により測定し、標準ポリスチレン検量線により換算して得た値である。重量平均分子量の測定条件は以下のとおりである。
測定装置:検出器 株式会社島津製作所社製SPD-M20A
ポンプ:株式会社島津製作所社製LC-20AD
測定条件:カラム Gelpack GL-S300MDT-5 x2本
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)/ジメチルホルムアミド(DMF)=1/1 (容積比)
LiBr(0.03mol/l)、HPO(0.06mol/l)
流速:1.0ml/min、検出器:UV270nm
試料(前駆体)5mgに対して溶媒[THF/DMF=1/1(容積比)]1mlの溶液を用いて測定した。
【0130】
実施例1~8及び比較例1~4
(樹脂組成物の調製)
表1に示した成分及び配合量にて、実施例1~8及び比較例1~4の樹脂組成物を調製した。表1の配合量は、100質量部のA1に対する、各成分の質量部である。
【0131】
用いた各成分は以下の通りである。(A)成分として、合成例1で得られたA1を用いた。
【0132】
(B)成分
B1:ジメチルスルホキシド(東京化成工業株式会社製)
B2::KJCMPA-100(KJケミカルズ株式会社製、下記式E2で表される化合物)
【化14】
【0133】
(C)成分
C1:1,2,3-ベンゾトリアゾール(東京化成工業株式会社製)
C2:5-アミノ-1H-テトラゾール(東京化成工業株式会社製)
【0134】
(D)成分
D1:ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン
D2:3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン
D3:3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(KBM-403、信越化学工業株式会社製)
【0135】
(E)成分
E1:下記式で表される化合物
【化15】
【0136】
架橋剤((F)成分)
F1:5,5’-[2,2,2-トリフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチリデン]ビス[2-ヒドロキシ-1,3-ベンゼンジメタノール
F2:下記式で表される化合物
【化16】
【0137】
溶剤((G)成分)
G1:γ-ブチロラクトン
【0138】
【表1】
【0139】
(クラック評価)
得られた樹脂組成物を、Si基板上にスピンコートし、ホットプレート上で、110℃で180秒間加熱乾燥し、乾燥後の膜厚が15μmになるように樹脂膜を形成した。
得られた樹脂膜を、i線ステッパFPA-3000iW(キヤノン株式会社製)でマスクを用いて露光を行った。露光後の樹脂膜について、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの2.38質量%水溶液にて現像を行い、現像後膜厚11.5umのパターン付き樹脂膜を得た。得られたパターン樹脂膜を168時間静置した後、静置後のパターン樹脂膜を金属顕微鏡により観察した。樹脂膜にクラックが生じなかった場合を○、クラックが生じた場合を×とした。
結果を表2に示す。
【0140】
(硬化物の製造1)
実施例1~8について、クラック評価で得られたパターン樹脂膜を、縦型拡散炉μ-TF(光洋サーモシステム株式会社製)を用いて、窒素雰囲気下、320℃で1時間加熱し、パターン硬化物(硬化後膜厚7μm)を得た。
良好なパターン硬化物が得られた。
【0141】
(硬化物の製造2)
上述の樹脂組成物を、塗布装置Act8(東京エレクトロン株式会社製)を用いて、Cuめっきウエハ(厚さ10μmのCuめっきを形成したSiウエハ)上に、乾燥後の膜厚が11.2μmになるようにスピンコートし、120℃で4分30秒間乾燥して樹脂膜を形成した。
得られた樹脂膜を、縦型拡散炉μ-TFを用いて、窒素雰囲気下、320℃で1時間加熱し、硬化物(Cuめっき上)(硬化後膜厚約9μm)を得た。
【0142】
(硬化物の製造3)
Cuめっきウエハを、SiN層形成ウエハ(厚さ10μmのSiN層を形成したSiウエハ)に変更した以外、硬化物の製造2と同様に硬化物を製造し、硬化物(SiN層上)(硬化後膜厚約9μm)を得た。
【0143】
(PCT1)
上述の硬化物の製造2で得られた硬化物(Cuめっきウエハ上)を、PCT(プレッシャークッカー試験)試験装置HASTEST(株式会社平山製作所製、PC-R8D)を用いて、121℃、100RH(Relative Humidity)%、2atmで168時間処理した。
PCT試験装置から硬化物を取り出し、PCT後の硬化物(Cuめっきウエハ上)を得た。
【0144】
(PCT2)
上述の硬化物の製造3で得られた硬化物(SiNウエハ上)を、PCT1と同様に処理し、PCT後の硬化物(SiNウエハ上)を得た。
【0145】
(HTS1)
上述の硬化物の製造2で得られた硬化物(Cuめっきウエハ上)を、クリーンオーブンDT-41(ヤマト科学株式会社製)に配置し、温度150℃の条件で、168時間保存処理した後に取り出し、高温保存試験(HTS(High Temperature Storage) Test)後の硬化物(Cuめっきウエハ上)を得た。
【0146】
(HTS2)
上述の硬化物の製造3で得られた硬化物(SiNウエハ上)を、HTS1と同様に処理し、HTS後の硬化物(SiNウエハ上)を得た。
【0147】
(Cu接着性評価1)
上述の硬化物の製造2で得られた硬化物(Cuめっきウエハ上)、上述のPCT後の硬化物(Cuめっきウエハ上)、及び上述のHTS後の硬化物(Cuめっきウエハ上)について、それぞれを、アルミニウム製スタッドの先端にあるエポキシ樹脂層を硬化物表面に固定して、150℃のオーブン中で1時間加熱してエポキシ樹脂層と硬化物を接着した。そして、薄膜密着強度測定装置ロミュラス(QUAD Group社製)を用いて、スタッドを引張り、剥離時の荷重を測定し、剥離時の剥離モードを観察した。
エポキシ凝集破壊であったもの(硬化物とCuめっきウエハとの間での剥離なし)を○とした。硬化物とCuめっきウエハとの間で剥離したものを×とした。
エポキシ凝集破壊の場合、硬化物の凝集破壊強さよりも、硬化物とCuめっきウエハの接着強さが強いことを示す。
結果を表2に示す。表中、「‐」は測定しなかったことを示す。
【0148】
(Cu接着性評価2)
上述の硬化物の製造2で得られた硬化物(Cuめっきウエハ上)、上述のPCT後の硬化物(Cuめっきウエハ上)、及び上述のHTS後の硬化物(Cuめっきウエハ上)について、それぞれを、JIS K 5600-5-6規格のクロスカット法に準じて、Cuめっきウエハに対する硬化物の接着性を以下の基準に基づき、評価した。具体的には、10×10の格子のうち、Cuめっきウエハに接着している硬化物の格子数を評価した。結果を表2に示す。
「〇」:Cuめっきウエハに接着している硬化物の格子数が100
「×」:Cuめっきウエハに接着している硬化物の格子数が99以下
【0149】
(SiN接着性評価1)
上述の硬化物の製造3で得られた硬化物(SiNウエハ上)、上述のPCT後の硬化物(SiNウエハ上)、及び上述のHTS後の硬化物(SiNウエハ上)について、それぞれを、CuめっきウエハをSiNウエハとした以外、Cu接着性評価1と同様に評価した。
結果を表2に示す。
【0150】
(SiN接着性評価2)
上述の硬化物の製造3で得られた硬化物(SiNウエハ上)、上述のPCT後の硬化物(SiNウエハ上)、及び上述のHTS後の硬化物(SiNウエハ上)について、それぞれを、CuめっきウエハをSiNウエハとした以外、Cu接着性評価2と同様に評価した。
結果を表2に示す。
【0151】
(Cuめっきウエハ上のSAICAS評価)
上述の硬化物の製造2で得られた硬化物(Cuめっきウエハ上)、上述のPCT後の硬化物(Cuめっきウエハ上)、及び上述のHTS後の硬化物(Cuめっきウエハ上)について、それぞれを、SAICAS EN型(ダイプラ・ウィンテス株式会社製)を用いて、SAICAS(Surface And Interfacial Cutting Analysis System)評価を以下の条件で行った。
【0152】
mode:定速度モード
測定時間:300秒間
刃先の種類:BN
刃先のスクイ角:20°
刃先のニゲ角度:10°
歯幅:1mm
水平移動速度:3um/秒
垂直移動速度:0.1um/秒
【0153】
SAICAS評価後のCuめっきウエハ表面を、顕微鏡を用いて観察し、硬化物の凝集破壊が見られた場合を〇とした。硬化物の凝集破壊が見られず、Cuめっきウエハの表面で剥離している場合を×とした。結果を表2に示す。表中、「‐」は測定しなかったことを示す。
【0154】
【表2】
【0155】
上記に本発明の実施形態及び/又は実施例を幾つか詳細に説明したが、当業者は、本発明の新規な教示及び効果から実質的に離れることなく、これら例示である実施形態及び/又は実施例に多くの変更を加えることが容易である。従って、これらの多くの変更は本発明の範囲に含まれる。
この明細書に記載の文献の内容を全てここに援用する。