(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】異方性導電材料
(51)【国際特許分類】
H01B 1/22 20060101AFI20231011BHJP
H01B 5/16 20060101ALI20231011BHJP
H01B 1/00 20060101ALI20231011BHJP
H01R 11/01 20060101ALI20231011BHJP
H01L 21/60 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
H01B1/22 Z
H01B5/16
H01B1/00 M
H01R11/01 501D
H01L21/60 311Z
(21)【出願番号】P 2021558357
(86)(22)【出願日】2020-11-16
(86)【国際出願番号】 JP2020042550
(87)【国際公開番号】W WO2021100641
(87)【国際公開日】2021-05-27
【審査請求日】2023-08-10
(31)【優先権主張番号】P 2019209497
(32)【優先日】2019-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田村 浩康
(72)【発明者】
【氏名】江原 和也
(72)【発明者】
【氏名】森山 彰治
【審査官】岩井 一央
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-50273(JP,A)
【文献】特開2019-131634(JP,A)
【文献】特開2016-85959(JP,A)
【文献】特開2014-77105(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 1/22
H01B 5/16
H01B 1/00
H01R 11/01
H01L 21/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂と、重合開始剤と、導電性粒子とを含み、
上記導電性粒子が、導電性コアと、該導電性コアを被覆する絶縁膜とを有し、該導電性コアが、60~250℃の融点を有し、かつ、その融点以下の温度で液体状態である過冷却金属で形成されていることを特徴とする異方性導電材料。
【請求項2】
上記導電性コアが、In-Bi-Sn系合金、Bi-Sn系合金またはSn-Ag-Cu系合金を含む請求項1記載の異方性導電材料。
【請求項3】
上記熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂、フェノール樹脂から選ばれる1種または2種である請求項1または2記載の異方性導電材料。
【請求項4】
上記重合開始剤が、アニオン重合開始剤またはカチオン重合開始剤である請求項1~3のいずれか1項記載の異方性導電材料。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項記載の異方性導電材料から得られる異方性導電層。
【請求項6】
請求項5記載の異方性導電層を有する電子素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異方性導電材料に関する。
【背景技術】
【0002】
異方性導電フィルム(ACF:anisotropic conductive film)は、樹脂と導電性粒子とを混合した材料をフィルム状に成形したものであり、当該フィルムを挟んで対向する位置に電極を配置することで、その水平方向(XY平面に平行な方向)には絶縁性を維持しながら、電極が対向している垂直方向(Z軸方向)には電気的接続を実現することができる素材である。接着機能、電気的接続機能および絶縁機能を同時に具現することができるという長所がある。
【0003】
ACFは電子デバイス、例えば、液晶ディスプレイ(LCD:liquid crystal display)のようなディスプレイ素子の製造時、基板上にチップやパッケージ等の電子部品を実装するための素材として使用されている。ディスプレイ素子の製造においては、通常、COG(chip-on-glass)およびCOF(chip-on-film)のような実装方式が使用されるが、ACFは、両方式のいずれの方式においても好適に使用することができる。しかし、近年では、素子の集積度が上昇し、電極間の間隔(ピッチ)がより短くなってきており、集積度が高い素子にACFによる電気的接続形成を適用した場合、目的とする電気的接続がなされなかったり、好ましくない方向に接続(短絡)が発生したりする等の様々な問題が生じることがあった。また、上記接続/接着処理を比較的高温かつ高圧力で行う場合には、基板の変形、電子部品の損傷や位置ずれ等の問題が発生することがあった。
【0004】
そこで、優れた電気的接続特性を確保しながら、微細なピッチで形成された電極を有する素子(例えば、半導体チップ)の実装に適用することができ、比較的低い温度および/または比較的低い圧力で、接続/接着処理を行うことができる異方性導電材料の検討がなされている。このような異方性導電材料としては、例えば、マトリックス物質層と、導電性コア部および絶縁性シェル部を含むカプセル構造を有し、前記コア部は、15℃より高く110℃以下の温度で液体状態である導電性物質を含む異方性導電材料が提案されている(特許文献1)。この材料では、導電性粒子が上述したカプセル構造を有しているため、比較的低い温度および/または比較的低い圧力によって内部の導電性コア部を流出させることができるため、素子等の接続/接着処理条件を改善することができる。
【0005】
しかし、上記の発明では、例えば、室温に融点をもつような液体金属(Ga)を導電性コア部に用いた場合は、コア部が粒子外部に流出した後も導電性コア部の金属は液体のままである。つまり、上述した液体金属を用いて接続/接着処理条件を低温にした場合、処理後の耐熱性も低温化することを意味し、後工程において取り付けた素子が位置ずれを起こす可能性が高く、耐熱信頼性において課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、比較的低い温度および圧力での接続/接着処理条件での優れた電気的接続特性を確保しつつ、電子デバイス製造時の耐熱信頼性も改善した異方性導電材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、熱硬化性樹脂と、硬化剤と、導電性粒子とを含み、上記導電性粒子が、導電性コアと、該導電性コアを被覆する絶縁膜とを有し、該導電性コアが、60~250℃の融点を有し、かつ、その融点以下の温度で液体状態である過冷却金属で形成されている異方性導電材料を用いて半導体チップ等の電子部品を実装した場合に、比較的低い温度および圧力での接続/接着処理条件での優れた電気的接続特性を確保し得ることを見出した。さらに、上記導電性コアは導電性粒子から流出した後、その際の刺激により過冷却状態の液状から凝固して、その金属本来のより高い融点(凝固点)を有する固体状となるため、電子デバイス製造時の耐熱信頼性を向上させることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は、下記の異方性導電材料を提供する。
1. 熱硬化性樹脂と、重合開始剤と、導電性粒子とを含み、
上記導電性粒子が、導電性コアと、該導電性コアを被覆する絶縁膜とを有し、該導電性コアが、60~250℃の融点を有し、かつ、その融点以下の温度で液体状態である過冷却金属で形成されていることを特徴とする異方性導電材料。
2. 上記導電性コアが、In-Bi-Sn系合金、Bi-Sn系合金またはSn-Ag-Cu系合金を含む1の異方性導電材料。
3. 上記熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂、フェノール樹脂から選ばれる1種または2種である1または2の異方性導電材料。
4. 上記重合開始剤が、アニオン重合開始剤またはカチオン重合開始剤である請求項1~3のいずれかの異方性導電材料。
5. 1~4のいずれかの異方性導電材料から得られる異方性導電層。
6. 5の異方性導電層を有する電子素子。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、比較的低い温度および圧力での接続/接着処理条件での優れた電気的接続特性を有し、電子デバイス製造時の耐熱信頼性が向上する異方性導電材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】過冷却金属で形成された導電性コアを有する導電性粒子の示差走査熱量測定のスペクトルである。
【
図2】低融点金属からなる導電性粒子の示差走査熱量測定のスペクトルである。
【
図3】過冷却金属で形成された導電性コアを有する導電性粒子を示す走査電子顕微鏡写真である。
【
図4】
図3に示した導電性粒子を破壊した後の状態を示す走査電子顕微鏡写真である。
【
図5】
図5(A)は、Cu電極付きガラス基板の上面図、
図5(B)は、Cu電極付きシリコンウエハ基板の上面図である。
【
図6】Cu電極付きガラス基板およびCu電極付きシリコンウエハ基板の断面を模式的に示す断面図である。
【
図7】イオンマイグレーション評価に用いたCu電極が形成されたガラス基板の上面図である。
【
図8】イオンマイグレーション評価に用いた試験片の作製過程を示す上面図である。
【
図9】イオンマイグレーション評価に用いた試験片の上面図である。
【
図10】
図10(A)は、ITO電極付きガラス基板の上面図、
図10(B)は、Au電極付きシリコンウエハ基板の上面図である。
【
図11】ITO電極付きガラス基板およびAu電極付きシリコンウエハ基板の断面を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の異方性導電材料は、熱硬化性樹脂と、硬化剤と、導電性粒子とを含み、上記導電性粒子が、導電性コアと、該導電性コアを被覆する絶縁膜とを有し、該導電性コアが、60~250℃の融点を有し、かつ、その融点以下の温度で液体状態である過冷却金属で形成されているものである。
【0013】
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂が挙げられる。本発明では、接着性や絶縁性を考慮すると、エポキシ樹脂、フェノール樹脂がより好ましく、エポキシ樹脂がより一層好ましい。
エポキシ樹脂としては、特に制限されないが、分子内にエポキシ基を平均で2個以上有する化合物であることが好ましい。
【0014】
エポキシ樹脂としては、特に制限されないが、例えば、1,2,7,8-ジエポキシオクタン、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-へキサンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ジメチロールパーフルオロヘキサンジグリシジルエーテル、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールジグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、1,4-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエンジメタノールジグリシジルエーテル、ジブロモフェニル=グリシジル=エーテル、2,6-ジグリシジルフェニル=グリシジル=エーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ビス(2,7-ジグリシジルオキシナフタレン-1-イル)メタン、1,1,2,2-テトラキス(4-グリシジルオキシフェニル)エタン、1,1,3-トリス(4-グリシジルオキシフェニル)プロパン、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールヘキサフルオロアセトンジグリシジルエーテル、ビス(2,3-エポキシシクロペンチル)エーテル、1,2-ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメトキシ)エタン、エチレングリコールビス(3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、3,4-エポキシシクロヘキサンカルボン酸(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル、4,5-エポキシ-2-メチルシクロヘキサンカルボン酸4,5-エポキシ-2-メチルシクロヘキシルメチル、アジピン酸ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)、1,2-エポキシ-4-(エポキシエチル)シクロヘキサン、4-(スピロ[3,4-エポキシシクロヘキサン-1,5’-[1,3]ジオキサン]-2’-イル)-1,2-エポキシシクロヘキサン、アジピン酸ジグリシジル、フタル酸ジグリシジル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジル、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジル、トリス(2,2-ビス(グリシジルオキシメチル)ブチル)3,3’,3’’-(2,4,6-トリオキソ-1,3,5-トリアジナン-1,3,5-トリイル)トリプロピオネート、N,N-ジグリシジル-4-グリシジルオキシアニリン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、4,4’-メチレンビス(N,N-ジグリシジルアニリン)、2-(4,4-ジメチルペンタン-2-イル)-5,7,7-トリメチルオクチル=グリシジル=エーテル、2-(4,4-ジメチルペンタン-2-イル)-5,7,7-トリメチルオクタン酸グリシジル、2-(4,4-ジメチルペンタン-2-イル)-5,7,7-トリメチルオクタン酸2,2-ビス(グリシジルオキシメチル)ブチル、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、テトラフェノールエタン型エポキシ樹脂及び脂環式ポリグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレンノボラック型エポキシ樹脂、アントラセンノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニレンノボラック型エポキシ樹脂、キシリレンノボラック型エポキシ樹脂、トリフェノールメタンノボラック型エポキシ樹脂、テトラキスフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂、イソシアヌル酸系エポキシ樹脂等のイソシアヌル酸系エポキシ樹脂等のトリス(2,3-エポキシブチル)イソシアヌレート、トリス(3,4-エポキシブチル)イソシアヌレート、トリス(4,5-エポキシペンチル)イソシアヌレート、トリス(5,6-エポキシヘキシル)イソシアヌレート、トリス(6,7-エポキシヘプチル)イソシアヌレート、トリス(7,8-エポキシオクチル)イソシアヌレート、トリス(8,9-エポキシノニル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス[2-〔2,2-ビス(2,3-エポキシプロピルオキシメチル)ブチルオキシ〕カルボニルエチル]イソシアヌレート、1,3,5-トリス[2-〔2,2-ビス(2,3-エポキシプロピルオキシメチル)-3-(2,3-エポキシプロピルオキシ)プロピルオキシ〕カルボニルエチル]イソシアヌレート、1,3,5-トリス[2-〔1-(2,3-エポキシプロピルオキシメチル)-2-(2,3-エポキシプロピルオキシ)エチルオキシ〕カルボニルエチル]イソシアヌレート等が挙げられる。中でも、1,3,5-トリス[2-〔2,2-ビス(2,3-エポキシプロピルオキシメチル)-3-(2,3-エポキシプロピルオキシ)プロピルオキシ〕カルボニルエチル]イソシアヌレートが挙げられる。また、本発明では、エポキシ樹脂は、そのハロゲン化物や水素添加物であってもよく、ウレタン変性、ゴム変性、シリコーン変性等の変性された樹脂であってもよい。本発明では、これらの中でも、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、イソシアヌル酸系エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂が好ましい。
【0015】
上記のエポキシ樹脂は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合せて用いてもよい。
【0016】
重合開始剤としては、熱硬化性樹脂の種類等に応じて適宜選択することができ、例えば、ラジカル重合開始剤、アニオン重合開始剤およびカチオン重合開始剤が挙げられ、本発明では、これらの中でもカチオン重合開始剤が好ましい。
【0017】
カチオン重合開始剤としては、光によってカチオン種が発生する光カチオン重合開始剤、熱によってカチオン種が発生する熱カチオン重合開始剤、光、熱のどちらでもカチオン種が発生する光・熱カチオン重合開始剤を用いることができる。
【0018】
光カチオン重合開始剤としては、例えば、トリアリールスルホニウム塩、ベンジルスルホニウム塩、トリフェニルスルホニウム塩、ジフェニル-4-チオフェノキシフェニルスルホニウム塩、トリアリールヨードニウム塩,ジアリールヨードニウム塩、ジフェニルヨードニウム塩、4-メトキシジフェニルヨードニウム塩、ビス(4-メチルフェニル)ヨードニウム塩、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウム塩、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウム塩、1,3-ジケト-2-ジアゾ化合物、ジアゾベンゾキノン化合物、ジアゾナフトキノン化合物、ヘキサクロロアンチモネート、ビス(ドデシルフェニル)ヘキサフルオロアンチモネート(4,4´-ビス[ジ(β-ヒドロキシエトキシ)フェニルスルフォニオ]フェニルスルフィド、ビス〔4-(ジフェニルスルフォニオ)-フェニル〕スルフィド、ビス〔4-(ジ(4-(2-ヒドロキシエチル)フェニル)スルホニオ)-フェニル〕スルフィド、およびη5-2,4-(シクロペンタジェニル)〔1,2,3,4,5,6-η-(メチルエチル)ベンゼン〕-鉄(1+)が挙げられる。
【0019】
熱カチオン重合開始剤としては、例えば、トリフェニルスルホニウム四フッ化ホウ素、トリフェニルスルホニウム六フッ化アンチモン、トリフェニルスルホニウム六フッ化ヒ素、トリ(4-メトキシフェニル)スルホニウム六フッ化ヒ素、ジフェニル(4-フェニルチオフェニル)スルホニウム六フッ化ヒ素、p-t-ブチルベンジルテトラヒドロチオフェニウム六フッ化アンチモン、N,N-ジメチル-N-ベンジルアニリニウム六フッ化アンチモン、N,N-ジメチル-N-ベンジルアニリニウム四フッ化ホウ素、N,N-ジメチル-N-(4-クロロベンジル)アニリニウム六フッ化アンチモン、N,N-ジメチル-N-(1-フェニルエチル)アニリニウム六フッ化アンチモン、N-ベンジル-4-ジメチルアミノピリジニウム六フッ化アンチモン、N-ベンジル-4-ジエチルアミノピリジニウムトリフルオロメタンスルホン酸、N-(4-メトキシベンジル)-4-ジメチルアミノピリジニウム六フッ化アンチモン、N-(4-メトキシベンジル)-4-ジエチルアミノピリジニウム六フッ化アンチモン、N,N-ジメチル-N-(4-メトキシベンジル)トルイジニウム六フッ化アンチモン、N,N-ジエチル-N-(4-メトキシベンジル)トルイジニウム六フッ化アンチモン、エチルトリフェニルホスホニウム六フッ化アンチモン、テトラブチルホスホニウム六フッ化アンチモン、ジフェニルヨードニウム六フッ化ヒ素、ジ-4-クロロフェニルヨードニウム六フッ化ヒ素、ジ-4-ブロムフェニルヨードニウム六フッ化ヒ素、ジ-p-トリルヨードニウム六フッ化ヒ素、およびフェニル(4-メトキシフェニル)ヨードニウム六フッ化ヒ素が挙げられる。
【0020】
また、潜在型硬化剤として機能し、かつ熱硬化剤として機能し得るカチオン重合開始剤としては、第4級アンモニウム塩またはスルホニウム塩を含むことが好ましく、スルホニウム塩を含むことがより好ましい。第4級アンモニウム塩としては、アンチモンアニオンからなる塩を含有する第4級アンモニウム塩が好ましい。スルホニウム塩としては、芳香族スルホニウム塩が好ましく、SbF6-を含有する芳香族スルホニウム塩またはPF6-を含有する芳香族スルホニウム塩、B(C6F5)4
-を含有する芳香族スルホニウム塩がより好ましく、SbF6-を含有する芳香族スルホニウム塩がさらに好ましい。
【0021】
さらに、潜在性硬化剤としては、イミダゾール潜在性硬化剤を用いることもできる。イミダゾール潜在性硬化剤としては、例えば、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-プロピルイミダゾール、2-ドデシルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾールおよび4-メチルイミダゾールが挙げられる。
【0022】
なお、上記の潜在性硬化剤とは、常温では硬化性を発現せずに、材料に含まれるエポキシ樹脂の硬化を進行させないが、加熱すると硬化性を発揮してエポキシ樹脂を所望の水準まで硬化させることが可能な硬化剤を意味する。
【0023】
重合開始剤は、市販品を用いてもよく、熱重合開始剤として機能し得る硬化剤の市販品としては、例えば、三新化学工業株式会社製 サンエイド(登録商標)SI-45、SI-60、SI-80、SI-100、SI-110、SI-150、SI-180、SI-300、SI-360、SI-B2A、SI-B7、SI-B3A、SI-B3、SI-B4、SI-B5が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0024】
上記の重合開始剤は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
上記重合開始剤の配合量は、反応性と安定性のバランスの観点から、熱硬化性樹脂100質量部に対し、0.1~10質量部が好ましく、0.5~8質量部がより好ましく、1~5質量部がより一層好ましい。
【0026】
導電性粒子は、導電性コアと、該導電性コアを被覆する絶縁膜とを有し、該導電性コアが、60~250℃の融点を有し、かつ、その融点以下の温度で液体状態である過冷却金属で形成されているものである。
本発明において、「過冷却」とは、物質が液体から固体に変わる温度(融点)以下の温度でも液体のままでいる状態を意味する。この過冷却状態は、示差走査熱量測定により、所定の温度領域にて昇温・降温を繰り返した際の発熱ピークおよび吸熱ピークを観測することにより確認することができる(例えば、
図1を参照)。
【0027】
なお、本発明に係る異方性導電材料は、使用する熱硬化性樹脂の種類によっては室温以下の温度で保管され、必要な場合は冷凍保管されることもある。材料が冷凍保管されるような場合において、上記導電性粒子は、保管中に凝固することが想定されるが、本発明では、材料を使用する際の接続/接着処理条件において過冷却状態となっていればよい。
【0028】
本発明において、導電性粒子は、電子部品を接着および固定する際に比較的低い温度および圧力で破壊され、内部の導電性コアを流出させることができるものである。
【0029】
上記過冷却金属としては、例えば、In、In-Al系合金、In-Al-Ge系合金、In-Sn系合金、In-Bi-Sn系合金、In-Bi系合金、In-Sn-Zn系合金、Bi-In系合金、Bi-Sn系合金、Bi-Sn-Sb-Ni系合金、Bi-Pb系合金、Bi-In-Sn系合金、Bi-Pb-Sn系合金、Bi-Pb-Sn-Cd系合金、Sn、Sn-Sb系合金、Sn-Bi系合金、Sn-Bi-Ag-Cu-In系合金、Sn-Bi-Ag-Cu系合金、Sn-In系合金、Sn-In-Ag-Bi系合金、Sn-Pb系合金、Sn-Ag系合金、Sn-Au系合金、Sn-Zn系合金、Sn-Zn-Bi系合金、Sn-Cu系合金、Sn-Cu-Ni系合金、Sn-Cu-Ag系合金、Sn-Cu-Ag-P-Ga系合金、Sn-Cu-Ni-P系合金、Sn-Cu-Ni-P-Ga系合金、Sn-Cu-Bi-P系合金、Sn-Cu-Bi-Ag-Ni系合金、Sn-Cu-Bi-Ni系合金、Sn-Ag-Cu系合金、Sn-Ag-Cu-Ni系合金、Sn-Ag-Cu-In系合金、Sn-Ag-Cu-Ni-Ge系合金、Sn-Ag-Cu-Bi-Ni系合金、Sn-Ag-Sb-Cu系合金、Sn-Bi-Cu-In系合金、Sn-Ag-Bi系合金、Sn-Ag-Bi-Cu系合金、Sn-Ag-In系合金、Sn-Zn-Bi系合金、Sn-Pb-Bi系合金、Sn-Pb-Ag系合金、Sn-Ag-In-Bi系合金、Sn-Ag-Ni-Co系合金、Sn-Bi-Ag系合金、Pb-Sn系合金等のはんだに用いられる金属、合金等が挙げられる。In-Bi-Sn系合金の具体例としては、51%In-32.5%Bi-16.5%Snが挙げられる。Bi-Sn系合金の具体例としては、58%Bi-42%Snが挙げられる。Sn-Ag-Cu系合金の具体例としては、96.5%Sn-3%Ag-0.5%Cuが挙げられる。
【0030】
上記導電性コアは、Biベースのはんだ、Snベースのはんだ、および60~250℃の融点を有する他のはんだ合金等のはんだ合金を含んでもよい。
【0031】
絶縁膜は、導電性粒子において上記導電性コアを被覆し、該導電性コアの導通を妨げる層であり、この絶縁膜が形成されていることにより、複数の導電性粒子同士が接触しても、粒子間の電気的連結が形成されず、絶縁特性を維持することができる。そして、電子部品の接続/接着処理時において、温度や圧力による刺激を受けて破壊されることで内部の導電性コアを流出させる機能も有する。上記絶縁膜は、特に微細なピッチを有する電極を含む電子素子の製造時において、必要な箇所には確実な導通を実現するとともに、短絡による不良可能性を防止または抑制するのに有効なものである。
【0032】
ここで絶縁とは、対象とする2箇所の間で電気抵抗が大きく、電圧を掛けても電流が流れない状態を指す。上記絶縁膜としては、上記導電性コアを構成する金属合金の酸化物からなる酸化膜を挙げることができる。上記酸化膜を構成する酸化物としては、導電性コアを構成する金属合金の酸化物が挙げられる。当該酸化膜は、導電性コアの表面を酸化することにより得られる。
【0033】
さらに、上記酸化膜の表面は、酢酸塩またはリン酸塩などにより修飾されていてもよい。この場合、導電性粒子は、導電性コアの表面に絶縁膜である酸化膜と有機膜とを有するものとなる。
【0034】
導電性粒子の粒径は、接続対象となる電極のピッチや形成される薄膜(異方性導電層)の膜厚等を考慮して適宜設定することができ、10nm~900μmが好ましく、0.1~100μmがより好ましく、0.5~10μmがより一層好ましい。本発明において、上記導電性粒子の粒径は、走査電子顕微鏡観察により測定することができる。
【0035】
導電性粒子の配合量は、接続対象となる電極のピッチや異方性導電層の膜厚等を考慮して適宜設定することができ、熱硬化性樹脂100質量部に対し、5~340質量部が好ましく、30~200質量部がより好ましく、30~100質量部がより一層好ましい。
【0036】
上記導電性粒子は、例えば、特表2018-529018号公報に開示されている液体剪断による複合粒子作製法(Shearing Liquids Into Complex ParticlEs process:SLICEプロセス)など公知の合成方法にしたがって合成することができる。特に上記SLICEプロセスは、過冷却金属からなる導電性コアの形成と同時に、上述した酸化膜、または酸化膜および有機膜を一体的に形成することができるため、上記導電性粒子の合成において好適に採用し得る。また、導電性粒子は、SAFI-Tech, Inc.からLiquital(登録商標)62(In-Bi-Snをコア部として過冷却させたコア-シェル粒子)、Liquital(登録商標)139(以下、Liq.139ともいう)(Bi-Snをコア部として過冷却させたコア-シェル粒子)としても入手できる。
【0037】
本発明の異方性導電材料は、発明の効果を損なわない範囲において、さらに、硬化剤、有機溶媒、反応性希釈剤、フラックス(はんだ付け促進剤)、フィラー等のその他の成分を含んでもよい。
【0038】
硬化剤としては、例えば、酸無水物、アミン、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、イミダゾールまたはポリメルカプタンが挙げられる。これらの中でも、特に酸無水物およびアミンが好ましい。これら硬化剤は、固体であっても溶剤に溶解することによって使用することができる。しかし、溶剤の蒸発により硬化物の密度低下や細孔の生成により強度低下、耐水性の低下を生ずるため、硬化剤自体が常温、常圧下で液状のものが好ましい。
【0039】
硬化剤の配合量は、エポキシ樹脂の全体における、エポキシ基1当量に対して好ましくは0.5~1.5当量、より好ましくは0.8~1.2当量である。エポキシ化合物に対する硬化剤の当量は、エポキシ基に対する硬化剤の硬化性基の当量比で示される。
【0040】
酸無水物としては一分子中に複数のカルボキシ基を有する化合物の無水物が好ましい。これらの酸無水物としては、例えば、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、エチレングリコールビストリメリテート、グリセロールトリストリメリテート、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルブテニルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水コハク酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物、クロレンド酸無水物が挙げられる。これらの中でも、常温、常圧で液状であるメチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチル-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物(メチルナジック酸無水物、無水メチルハイミック酸)、水素化メチルナジック酸無水物、メチルブテニルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸とヘキサヒドロ無水フタル酸との混合物が好ましい。これら液状の酸無水物は、粘度が25℃での測定で10~1,000mPa・s程度である。酸無水物基において、1つの酸無水物基は1当量として計算される。
【0041】
アミンとしては、例えば、ピペリジン、N,N-ジメチルピペラジン、トリエチレンジアミン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ベンジルジメチルアミン、2-(ジメチルアミノメチル)フェノール、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジエチルアミノプロピルアミン、N-アミノエチルピペラジン、ジ(1-メチル-2-アミノシクロヘキシル)メタン、メンセンジアミン、イソフオロンジアミン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、1,3-ジアミノメチルシクロヘキサン、キシレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホンが挙げられる。これらの中でも、液状であるジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジエチルアミノプロピルアミン、N-アミノエチルピペラジン、ジ(1-メチル-2-アミノシクロヘキシル)メタン、メンセンジアミン、イソフオロンジアミンおよびジアミノジシクロヘキシルメタンが好ましい。
【0042】
フェノール樹脂としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂が挙げられる。
【0043】
ポリアミド樹脂は、ダイマー酸とポリアミンの縮合により生成するもので、分子中に一級アミンと二級アミンを有するポリアミドアミンである。
【0044】
イミダゾール類としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテートおよびエポキシイミダゾールアダクトが挙げられる。
【0045】
ポリメルカプタンは、例えば、ポリプロピレングリコール鎖の末端にメルカプタン基が存在するものや、ポリエチレングリコール鎖の末端にメルカプタン基が存在するものであり、液状のものが好ましい。
【0046】
有機溶媒としては、例えば、トルエン、p-キシレン、o-キシレン、m-キシレン、エチルベンゼン、スチレン、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコ-ルモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール、1-オクタノール、エチレングリコール、ヘキシレングリコール、トリメチレングリコール、1-メトキシ-2-ブタノール、シクロヘキサノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、プロピレングリコール、ベンジルアルコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、γ-ブチロラクトン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルn-ブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸n-プロピル、酢酸イソブチル、酢酸n-ブチル、乳酸エチル、メタノール、エタノール、イソプロパノール、tert-ブタノール、アリルアルコール、n-プロパノール、2-メチル-2-ブタノール、イソブタノール、n-ブタノール、2-メチル-1-ブタノール、1-ペンタノール、2-メチル-1-ペンタノール、2-エチルヘキサノール、1-メトキシ-2-プロパノール、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、およびN-シクロヘキシル-2-ピロリジノンが挙げられるが、特に限定されるものではない。上記有機溶媒は1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
反応性希釈剤としては、例えば、エポキシ系反応性希釈剤としてグリシジルエーテル等が挙げられる。また、上記エポキシ系反応性希釈剤としては、エポキシ基を1つのみ有する単官能エポキシ系反応性希釈剤であっても、エポキシ基を2つ以上有する多官能エポキシ系反応性希釈剤であってもよい。上記エポキシ系反応性希釈剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
単官能エポキシ系反応性希釈剤としては、例えば、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、イソブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、デシルグリシジルエーテル、ステアリルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、2-メチルオクチルグリシジルエーテル、メトキシポリエチレングリコールモノグリシジルエーテル、エトキシポリエチレングリコールモノグリシジルエーテル、ブトキシポリエチレングリコールモノグリシジルエーテル、フェノキシポリエチレングリコールモノグリシジルエーテル、p-ターシャリーブチルフェニルグリシジルエーテル、sec-ブチルフェニルグリシジルエーテル、n-ブチルフェニルグリシジルエーテル、フェニルフェノールグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル、およびジブロモクレジルグリシジルエーテルが挙げられる。
【0049】
エポキシ基を2つ有する多官能エポキシ系反応性希釈剤としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂およびこれらを水添したものである水添ビスフェノール型エポキシ樹脂;ビスフェノールA型エポキシ樹脂と2官能イソシアネートを反応させて得られるオキサゾリドン型エポキシ樹脂;エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,2-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,3-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、2,3-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,5-ペンタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、および1,4-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル等のアルキレングリコール型エポキシ樹脂;ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、およびポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル等のアルキレンオキサイドジオール型エポキシ樹脂;レゾルシンジグリシジルエーテル、ヒドロキノンジグリシジルエーテル、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’,5,5’-テトラメチルビフェニルジグリシジルエーテル、1,6-ジヒドロキシナフタレンのジグリシジルエーテル、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレンのジグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ビフェニル型エポキシ樹脂、およびナフタレン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0050】
エポキシ基を3つ以上有する多官能エポキシ系反応性希釈剤としては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、およびナフトールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;トリス(p-ヒドロキシフェニル)メタンのトリグリシジルエーテル、テトラキス(p-ヒドロキシフェニル)エタンのテトラグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート、グリセリンのトリグリシジルエーテル、およびペンタエリスリトールのテトラグリシジルエーテル;テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン、トリグリシジル-m-アミノフェノール、およびトリグリシジル-p-アミノフェノール等のグリシジルアミン化合物が挙げられる。
【0051】
上記反応性希釈剤を配合する場合、その配合量は、熱硬化性樹脂100質量部に対し、10~50質量部が好ましく、15~45質量部がより好ましく、20~40質量部がより一層好ましい。希釈剤の配合量を上記範囲とすることで、異方性導電材料を任意の粘度に調整することが可能となる。
【0052】
上記異方性導電材料は、フラックスを含んでいてもよい。フラックスを用いることで、はんだを電極上により一層効率的に配置することができる。上記フラックスは特に限定されない。上記フラックスとして、はんだ接合等に一般的に用いられているフラックスを用いることができる。上記フラックスとしては、例えば、塩化亜鉛、塩化亜鉛と無機ハロゲン化物との混合物、塩化亜鉛と無機酸との混合物、溶融塩、リン酸、リン酸の誘導体、有機ハロゲン化物、ヒドラジン、有機酸、有機酸塩、有機酸化合物および松脂が挙げられる。上記フラックスは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
上記溶融塩としては、例えば、塩化アンモニウムが挙げられる。上記有機酸としては、例えば、カルボン酸類が挙げられ、このカルボン酸類としては、脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸のいずれであってもよく、室温で固体のものが好適である。
【0054】
脂肪族カルボン酸としては、例えば、マロン酸、メチルマロン酸、ジメチルマロン酸、エチルマロン酸、アリルマロン酸、2,2-チオジ酢酸、3,3-チオジプロピオン酸、2,2-(エチレンジチオ)ジ酢酸、3,3-ジチオジプロピオン酸、2-エチル-2-ヒドロキシ酪酸、ジチオジグリコール酸、ジグリコール酸、アセチレンジカルボン酸、マレイン酸、リンゴ酸、2-イソプロピルリンゴ酸、酒石酸、イタコン酸、1,3-アセトンジカルボン酸、トリカルバリン酸、ムコン酸、β-ヒドロムコン酸、コハク酸、メチルコハク酸、ジメチルコハク酸、グルタル酸、α-ケトグルタル酸、2-メチルグルタル酸、3-メチルグルタル酸、2,2-ジメチルグルタル酸、3,3-ジメチルグルタル酸、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、クエン酸、アジピン酸、3-t-ブチルアジピン酸、ピメリン酸、フェニルシュウ酸、フェニル酢酸、ニトロフェニル酢酸、フエノキシ酢酸、ニトロフェノキシ酢酸、フェニルチオ酢酸、ヒドロキシフェニル酢酸、ジヒドロキシフェニル酢酸、マンデル酸、ヒドロキシマンデル酸、ジヒドロキシマンデル酸、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸、スベリン酸、4,4-ジチオジ酪酸、桂皮酸、ニトロ桂皮酸、ヒドロキシ桂皮酸、ジヒドロキシ桂皮酸、クマリン酸、フェニルピルビン酸、ヒドロキシフェニルピルビン酸、カフェ酸、ホモフタル酸、トリル酢酸、フェノキシプロピオン酸、ヒドロキシフェニルプロピオン酸、ベンジルオキシ酢酸、フェニル乳酸、トロパ酸、3-(フェニルスルホニル)プロピオン酸、3,3-テトラメチレングルタル酸、5-オキソアゼライン酸、アゼライン酸、フェニルコハク酸、1,2-フェニレンジ酢酸、1,3-フェニレンジ酢酸、1,4-フェニレンジ酢酸、ベンジルマロン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ウンデカン二酸、ジフェニル酢酸、ベンジル酸、ジシクロヘキシル酢酸、テトラデカン二酸、2,2-ジフェニルプロピオン酸、3,3-ジフェニルプロピオン酸、4,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)吉草酸、ピマール酸、パラストリン酸、イソピマル酸、アビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、ネオアビエチン酸およびアガト酸が挙げられる。
【0055】
芳香族カルボン酸としては、例えば、安息香酸、2-ヒドロキシ安息香酸、3-ヒドロキシ安息香酸、4-ヒドロキシ安息香酸、2,3-ジヒドロキシ安息香酸、2,4-ジヒドロキシ安息香酸、2,5-ジヒドロキシ安息香酸、2,6-ジヒドロキシ安息香酸、3,4-ジヒドロキシ安息香酸、2,3,4-トリヒドロキシ安息香酸、2,4,6-トリヒドロキシ安息香酸、3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸、1,2,3-ベンゼントリカルボン酸、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、1,3,5-ベンゼントリカルボン酸、2-[ビス(4-ヒドロキシフェニル)メチル]安息香酸、1-ナフトエ酸、2-ナフトエ酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、2-ヒドロキシ-1-ナフトエ酸、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、1,4-ジヒドロキシ-2-ナフトエ酸、3,5-ジヒドロキシ-2-ナフトエ酸、3,7-ジヒドロキシ-2-ナフトエ酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2-フェノキシ安息香酸、ビフェニル-4-カルボン酸、ビフェニル-2-カルボン酸および2-ベンゾイル安息香酸が挙げられる。
【0056】
フラックスを配合する場合、その配合量は、熱硬化性樹脂100質量部に対し、0.5~30質量部が好ましく、0.5~25質量部がより好ましく、1~10質量部がより一層好ましい。フラックスの配合量を上記範囲とすることで、温度および/または圧力が加わったときに導電性粒子が崩壊しやすくなるとともに、流出した導電性コアの電極に対する濡れ性を向上させることができる。
【0057】
上記異方性導電材料は、フィラーを含んでいてもよい。フィラーは、有機フィラーであってもよく、無機フィラーであってもよい。フィラーの添加により、導電性粒子の凝集する距離を抑制し、基板の全電極上に対して、導電性粒子を均一に凝集させることができる。
【0058】
フィラーを配合する場合、その配合量は、当該フィラー以外の他の成分の総量100質量部に対し、好ましくは5質量部以下、より好ましくは2質量部以下、更に好ましくは1質量部以下である。また、上記フィラーの配合量の下限は、特に限定されないが、当該フィラー以外の他の成分の総量100質量部に対し、0.1質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましい。上記フィラーの含有量が上記上限以下であると、はんだが電極上により一層効率的に配置される。
【0059】
本発明の異方性導電材料は、公知の方法を用いて製造することができる。例えば、上述した熱硬化性樹脂、硬化剤、導電性粒子、および必要に応じて配合される各種成分を公知の混合装置を用いて、室温あるいは加熱下において混合した後、必要に応じてさらに溶剤希釈して得られる。上記混合装置としては、導電性粒子に対する刺激が少なく、混合中に導電性粒子の破壊を起こさないものが好ましく、例えば、自転・公転ミキサー、3本ロールミルが挙げられる。
【0060】
以上説明した異方性導電材料を、基材上に塗布し加熱することで、本発明の異方性導電膜を形成できる。
塗布の際、異方性導電材料の粘度と表面張力、所望する薄膜の厚さ等を考慮し、ディスペンサー法、印刷法(凸版、凹版、平版、スクリーン印刷等)、インクジェット法、ドロップキャスト法、スピンコート法、ブレードコート法、ディップコート法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法、スリットコート法、スプレーコート法およびカーテンコート法等の各種ウェットプロセス法の中から最適なものを採用すればよい。
【0061】
前記塗布方法にて基板上に本発明の異方性導電材料を塗布後、好ましくは続いてホットプレートまたはオーブン等で塗膜を加熱処理することにより、硬化膜が形成される。この加熱処理の条件としては、例えば、温度80~200℃、時間0.1~300分間の範囲の中から適宜選択された加熱温度および加熱時間が採用される。硬化反応は、常圧、加圧密閉下、または減圧下で行われるが、装置および操作の簡便さから常圧下で行うのが好ましい。また、上記硬化反応は、必要に応じてN2等の不活性ガス雰囲気下で行ってもよい。
【0062】
膜厚は、通常用いる用途に応じて異なるため、一概に規定できないが、1~100μmの範囲内で適宜決定される。膜厚を変化させる方法としては、異方性導電性材料の粘度を変化させたり、塗布時の溶液量を変化させたりするなどの方法がある。
【0063】
本発明の電子素子は、上述した本発明の異方性導電膜を有する。電子素子は、LED、mini-LED、μ-LED、CMOSイメージセンサ、ICチップ、トランジスタ、ダイオード、発光素子等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0064】
本発明の電子素子は、例えば、上記異方性導電材料を電子部品の接合面に塗布、または、後述の異方性導電フィルムを貼付して異方性導電層を形成し、当該異方性導電層上の適宜な位置(例えば、プリント基板の電極部分と電子部品の電極部分とが合う位置)に電子部品を配置し、所定の温度および圧力の条件で加熱/加圧して、材料を硬化させることにより製造できる。本発明の異方性導電材料では、上述した導電性粒子を用いているため、素子に過剰な負荷がかからない温度および圧力で上記の加熱/加圧工程を実施することができる。その条件としては、例えば、80~200℃、0.1~10MPa、0.1~300分の条件を採用し得る。より好ましい条件としては、80~160℃、1~5MPa、0.1~3分の条件が挙げられる。さらに、必要に応じて、基板側の温度と電子部品側の温度とを上記範囲内で異なる設定にしてもよい。
【0065】
また、材料の取り扱い性を高める点から、上記異方性導電材料を所定の厚さのフィルム状に成形し、異方性導電フィルム(ACF)として用いてもよい。
【0066】
上記ACFは、例えば、本発明の異方性導電材料の粘度を0.5~2Pa・s程度に調整し、その後、支持フィルム上にバーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等の公知の方法により塗布し、乾燥処理し、半硬化状態とすることにより得られる。
【0067】
支持フィルムとしては、片面に離型剤層を設けた、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアリレートおよびポリアクリロニトリル等のプラスチックフィルムが使用される。この支持フィルムの厚みは、ハンドリング性の点から、通常10~50μm、好ましくは25~38μmである。
【0068】
また、上記方法により得られるACFは、乾燥後の厚みが5~100μmとなるように塗布することが好ましく、10~50μmであることがより好ましい。
【実施例】
【0069】
以下、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。なお、実施例において、試料の調製および物性の分析に用いた装置および条件は、以下のとおりである。
【0070】
(1)示差走査熱計
装置:Perkin Elmer社製 Diamond DSC
測定条件:窒素雰囲気下
昇温速度:20℃/分(-65~100℃)
(2)自転・公転ミキサー
装置:(株)シンキー製 泡とり錬太郎 ARE-310
(3)走査電子顕微鏡(SEM)
装置:サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)製 Helios G3
(4)異方性導電材料の塗布
装置:マイクロ-テック(株)製 高精度スクリーン印刷機 MT-320T
【0071】
また、略記号は以下の意味を表す。
Liq.62:In-Bi-Snをコア部として過冷却させたコア-シェル粒子(80質量%酢酸エチル分散体)[SAFI-Tech, Inc.製、Liquital(登録商標)62]
Liq.139:Bi-Snをコア部として過冷却させたコア-シェル粒子[SAFI-Tech, Inc.製、Liquital(登録商標)139]
Field’s metal:(In51質量%、Bi32.5質量%、Sn16.5質量%よりなる合金) [Alfa Aesar製]
EPN:フェノールノボラック型エポキシ樹脂[三菱ケミカル(株)製、jER(登録商標)-152]
ECA:脂環式エポキシ樹脂[(株)ダイセル製、エポリード GT401]
TEPeIC:トリス(4,5-エポキシペンチル)イソシアヌレート[日産化学(株)製、TEPIC(登録商標)-VL]
TEOIC:トリス(7,8-エポキシオクチル)イソシアヌレート[日産化学(株)製、TEPIC(登録商標)-FL]
SI-100:カチオン重合開始剤[三新化学工業(株)製、サンエイドSI-100]
2EHGE:2-エチルヘキシルグリシジルエーテル
【0072】
[導電性粒子の示差走査熱量測定]
(1)過冷却状態をとる粒子の示差走査熱量測定
風乾したLiq.62を17.3mg測量し、DSCにて-65℃と90℃の温度領域にて昇温・降温を2回繰り返した。得られた示差走査熱量測定のスペクトルを
図1に示す。
【0073】
図1の結果より、Liq.62について以下のことが確認された。
1回目の昇温では吸熱ピークが観測されたが非常に小さいピークであった。降温では室温以下の温度で凝固の発熱を観測した。2回目の昇温では融点となる吸熱のピークを観測し、降温では室温以下の温度で凝固の発熱を観測した。2回目の昇温にて融点の吸熱ピークが観測されたことは、Liq.62の導電性コアが常温では過冷却状態の液体金属であることを示唆している。この結果は、より低い温度および圧力で導電性コアの流出が可能となることを意味する。
【0074】
(2)Field’s metalの示差走査熱量測定
Field’s metalを10.9mg測量し、DSCにて-65℃と90℃の温度領域にて昇温・降温を2回繰り返した。得られた示差走査熱量測定のスペクトルを
図2に示す。
【0075】
図2の結果より、Field’s metalについて以下のことが確認された。
Field’s metalでは、1回目および2回目の昇温・降温のいずれにおいても、室温以上で融点・凝固点が観測された。この結果は、Field’s metalが通常の低融点金属であることを示唆しており、電子部品の接続/接着処理時には、この低融点金属を溶解させる温度まで加熱する必要があることを意味する。
【0076】
[導電性粒子の電子顕微鏡観察]
(1)導電性粒子の形状
風乾したLiq.62を加速電圧10kVで観察した走査電子顕微鏡写真を
図3に示す。画像からは、導電性粒子が数μm程度の球形またはそれと類似した形態を有していることが分かる。
【0077】
(2)導電性粒子からの過冷却金属の流出および固化の確認
導電性粒子の導電性コアに過冷却状態の液体金属が含まれていることを確認するために、シリコンウエハ上に粒子をローディングし、風乾後、エアブロー(4mm口径、0.4MPa)することで人為的に破壊した。エアブロー後の粒子の状態を加速電圧3kVで観察した走査電子顕微鏡写真を
図4に示す。
図4の結果から、導電性粒子が破壊され、過冷却状態のIn-Bi-Snが流れ出た後、固化していることが確認された。これは、流出した過冷却金属が凝固して、金属本来の融点を有する固体状となることを示しており、これにより高い耐熱信頼性が発現可能となると示している。
【0078】
[圧着時の温度および圧力の検討]
本発明の異方性導電材料に用いる導電性粒子に関し、破壊のために必要な条件を確認した。
【0079】
[調製例1]
過冷却粒子を含む樹脂配合物
硬化性エポキシ樹脂としてBADGEを100質量部、反応性希釈剤として2EHGEを30質量部、風乾したLIq.62を37質量部配合し、自転・公転ミキサーにて樹脂配合物を調製した。
【0080】
[参考例1]
シリコンウエハ基板上にCu電極を連続的に配置した後、基板上に調製例1で得た樹脂配合物をおよそ100mg垂らし、その上に、上部ガラスを配置した。次いで、3MPaの圧力を印荷しながら80℃に加温し、Cu電極とガラスを圧着させた。ガラス越しにCu電極を顕微鏡観察し、金属光沢の有無を確認した。
【0081】
[参考例2]
参考例2における上部ガラスへの印加圧力を1.5MPaに変更したこと以外は参考例2と同様に操作し評価した。
【0082】
[参考例3]
参考例2における上部ガラスへの印加圧力を0.3MPaに変更したこと以外は参考例2と同様に操作し評価した。結果を表1に併せて示す。
【0083】
参考例1~3の結果を表1に示す。
【0084】
【0085】
表1の結果より、参考例1および2では、200℃以下、数MPaという低い温度および圧力での圧着条件で金属光沢が確認された。この金属光沢は、導電性粒子が破壊されて、その内部から流出した導電性コアが固化して、固体上の金属になったことを示す。一方、参考例3では金属光沢が確認されず、0.3MPa程度の非常に低い圧力では導電性粒子が潰れないことが確認された。
【0086】
[実施例1]
熱硬化性樹脂としてEPNを100質量部、カチオン重合開始剤としてSI-100を1質量部、および導電性粒子としてLiq.62を68質量部(固形分換算量)配合し、エバポレーターにて溶媒を留去し、自転・公転ミキサーにて混合して異方性導電材料を調製した。
【0087】
[実施例2]
実施例1にて調製した異方性導電材料をスクリーン印刷にてガラス基板上に塗布した。印刷条件は表2に示した。塗膜をホットプレート上で160℃、3分加熱することで厚さ6.9μmの硬化膜を作製した。作製した塗膜の導電性を抵抗テスターにて確認したところ、測定不能であり絶縁性であることを確認した。結果を表2に示す。
【0088】
[実施例3]
熱硬化性樹脂としてECAを100質量部、希釈剤として2EHGEを4質量部、およびカチオン重合開始剤としてSI-100を1質量部、ならびに導電性粒子としてLiq.62を68質量部(固形分換算量)配合し、エバポレーターにて溶媒を留去し、自転・公転ミキサーにて混合して異方性導電材料を調製した。
【0089】
[実施例4]
実施例3にて調製した異方性導電材料をスクリーン印刷にてガラス基板上に塗布した。印刷条件は表2に示した。塗膜をホットプレート上で160℃、3分加熱することで厚さ8.8μmの硬化膜を作製した。作製した塗膜の導電性を抵抗テスターにて確認したところ、測定不能であり絶縁性であることを確認した。結果を表2に示す。
【0090】
[実施例5]
熱硬化性樹脂としてTEPeICを100質量部、カチオン重合開始剤としてSI-100を1質量部、ならびに導電性粒子Liq.62を68質量部(固形分換算量)配合し、エバポレーターにて溶媒を留去し、自転・公転ミキサーにて混合して異方性導電材料を調製した。
【0091】
[実施例6]
実施例5にて調製した異方性導電材料をスクリーン印刷にてガラス基板上に塗布した。印刷条件は表2に示した。塗膜をホットプレート上で160℃、3分加熱することで厚さ4.9μmの硬化膜を作製した。作製した塗膜の導電性を抵抗テスターにて確認したところ、測定不能であり絶縁性であることを確認した。結果を表2に示す。
【0092】
[実施例7]
熱硬化性樹脂としてTEOICを100質量部、希釈剤として2EHGEを4質量部、およびカチオン重合開始剤としてSI-100を1質量部、ならびに導電性粒子Liq.62を68質量部(固形分換算量)配合し、エバポレーターにて溶媒を留去し、自転・公転ミキサーにて混合して異方性導電材料を調製した。
【0093】
[実施例8]
実施例7にて調製した異方性導電材料をスクリーン印刷にてガラス基板上に塗布した。印刷条件は表2に示した。塗膜をホットプレート上で160℃、3分加熱することで厚さ3.3μmの硬化膜を作製した。作製した塗膜の導電性を抵抗テスターにて確認したところ、測定不能であり絶縁性であることを確認した。結果を表2に示す。
【0094】
【0095】
[作製例1]
図5(A)に示すように、ガラス基板1上に500個(100個×5列)のCu電極3と、隣接するCu電極3,3同士を接続するCu配線4を配置した後、両端の電極3,3(図中、ガラス基板1上の左下および右上に位置する電極)のそれぞれにCuからなる末端配線5を接続してCu電極付きガラス基板Aを作製した。別途、
図5(B)に示すように、シリコンウエハ基板2上に500個(100個×5列)のCu電極3と、隣接するCu電極3,3同士を接続する配線4を配置し、Cu電極付きシリコンウエハ基板Bを作製した。両基板をCu電極3を配置した面同士で貼り合わせるときの断面のイメージを
図6に示す。
図6中、両基板上のCu電極3は、互いに、対向する基板上の隣接する2個の電極を接続できる位置に交互に配置されており、Cu電極付きガラス基板Aの電極3上には本発明の異方性導電材料からなる異方性導電層(図示せず)が形成されている。そして、この図示しない異方性導電層が両基板上のCu電極3により上下方向から挟み込まれ、当該異方性導電層を介して導電経路が形成される。電極間の導通は、末端配線5,5に抵抗テスターをあてて抵抗値を測定することで確認することができる。
【0096】
[実施例9]
作製例1にて作製したCu電極付きガラス基板AのCu電極3上に実施例1にて調製した異方性導電材料を少量のせた(図示せず)。次いで、その上から、Cu電極付きシリコンウエハ基板Bを、当該基板BのCu電極3とCu電極付きガラス基板AのCu電極3とが向かい合うように配置した。180℃に加熱しながら、2MPaの圧力を印荷し、180秒保持してCu電極付きガラス基板AとCu電極付きシリコンウエハ基板Bとを圧着させるとともに、圧着面上の全てのCu電極3を含む範囲に異方性導電層(図示せず)を形成した。電極3,3から延長された末端配線5,5に抵抗テスターをあてて抵抗値を測定し、導通することを確認した。
【0097】
[比較例1]
熱硬化性樹脂としてEPNを100質量部、反応性希釈剤として2EHGEを4質量部、およびカチオン重合開始剤としてSI-100を1質量部配合し、自転・公転ミキサーにて混合して異方性導電材料を調製した。
【0098】
[比較例2]
実施例9における異方性導電材料を、比較例1にて調製したものに変更したこと以外は、実施例9と同様にして異方性導電層を形成した。電極から延長された末端配線に抵抗テスターをあてて抵抗値を測定し、導通しないことを確認した。
【0099】
【0100】
[実施例10]
図7に示す形状の2つのCu電極3’が形成されたガラス基板1’上に、
図8に示すように、厚さ100μmのシリコーンゴム製スペーサー6を置き、両電極3’,3’を覆うように実施例1にて調製した異方性導電材料7を塗布し、塗布基板Cを得た。この塗布基板Cに、予めオプツール(登録商標)DSX[ダイキン工業(株)製]で離型処理した、塗布基板Cと同サイズの石英ガラス基板(図示せず)を被せた。この状態で塗布基板Cをホットプレート上で160℃、3分間加熱し、塗布した異方性導電材料7を硬化させ、厚さ100μmの硬化物とした。その後、石英ガラス基板(図示せず)およびスペーサー6を取り去り、
図9に示すような、両電極3’,3’が硬化物8で封止された試験片Dを得た。
【0101】
[比較例3]
実施例10における異方性導電材料を、比較例1にて調製したものに変更したこと以外は、実施例10と同様にして試験片を作製した。
【0102】
表4に記載の温度、湿度に設定した恒温恒湿装置内で、得られた試験片の両電極に表4に記載の直流電圧を300時間まで印加し、イオンマイグレーションが発生するか(両電極間の抵抗値が105Ω以下となればイオンマイグレーションが発生したと判断)を評価した。結果を表4に併せて示す。
【0103】
【0104】
[実施例11]
熱硬化性樹脂としてEPNを100質量部、カチオン重合開始剤としてSI-100を1質量部、および導電性粒子としてLiq.139を75質量部配合し、自転・公転ミキサーにて混合して異方性導電材料を調製した。
【0105】
[実施例12]
実施例11にて調製した異方性導電材料をスピンコートにて3,000rpmでガラス基板上に塗布した。塗膜をホットプレート上で250℃、3分加熱することで厚さ9.3μmの硬化膜を作製した。作製した塗膜の導電性を抵抗テスターにて確認したところ、測定不能であり絶縁性であることを確認した。
【0106】
[作製例2]
図10(A)に示すように、ガラス基板1”上に2個のITO電極9を配置した後、これらの電極9,9のそれぞれにITOからなる末端配線10を接続してITO電極付きガラス基板Eを作製した。別途、
図10(B)に示すように、シリコンウエハ基板2”上に2個のAu電極11と、これらのAu電極11,11同士を接続する配線12を配置し、Au電極付きシリコンウエハ基板Fを作製した。両基板をITO電極9とAu電極11を配置した面同士で貼り合わせるときの断面のイメージを
図11に示す。ITO電極付きガラス基板Eの電極9上には本発明の異方性導電材料からなる異方性導電層(図示せず)が形成されている。そして、この図示しない異方性導電層がITO電極付きガラス基板EのITO電極9とAu電極付きシリコンウエハ基板FのAu電極11により上下方向から挟み込まれ、当該異方性導電層を介して導電経路が形成される。電極間の導通は、末端配線10,10に抵抗テスターをあてて抵抗値を測定することで確認することができる。
【0107】
[実施例13]
作製例2にて作製したITO電極付きガラス基板EのITO電極9上に実施例11にて調製した異方性導電材料を少量のせた(図示せず)。次いで、その上から、Au電極付きシリコンウエハ基板Fを、当該基板FのAu電極11とAu電極付きガラス基板EのITO電極9とが向かい合うように配置した。180℃に加熱しながら、2MPaの圧力を印荷し、30秒保持してAu電極付きガラス基板EとAu電極付きシリコンウエハ基板Fとを圧着させ異方性導電層(図示せず)を形成した。電極9,9から延長された末端配線10,10に抵抗テスターをあてて抵抗値を測定し、導通することを確認した。
【0108】
[比較例4]
熱硬化性樹脂としてEPNを100質量部、カチオン重合開始剤としてSI-100を1質量部配合し、自転・公転ミキサーにて混合して異方性導電材料を調製した。
【0109】
[比較例5]
実施例13における異方性導電材料を、比較例4にて調製したものに変更したこと以外は、実施例13と同様にして異方性導電層を形成した。電極から延長された末端配線に抵抗テスターをあてて抵抗値を測定し、導通しないことを確認した。
【0110】
【0111】
[実施例14]
図7に示す形状の2つのCu電極3’が形成されたガラス基板1’上に、
図8に示すように、厚さ200μmのシリコーンゴム製スペーサー6を置き、両電極3’,3’を覆うように実施例11にて調製した異方性導電材料7を塗布し、塗布基板Cを得た。この塗布基板Cに、予めオプツール(登録商標)DSX[ダイキン工業(株)製]で離型処理した、塗布基板Cと同サイズの石英ガラス基板(図示せず)を被せた。この状態で塗布基板Cをホットプレート上で250℃、30秒加熱し、塗布した異方性導電材料7を硬化させ、厚さ200μmの硬化物とした。その後、石英ガラス基板(図示せず)およびスペーサー6を取り去り、
図9に示すような、両電極3’,3’が硬化物8で封止された試験片Dを得た。
【0112】
[比較例6]
実施例14における異方性導電材料を、比較例4にて調製したものに変更し、硬化条件を250℃、180秒に変更した以外は、実施例14と同様にして試験片を作製した。
【0113】
表6に記載の温度、湿度に設定した恒温恒湿装置内で、得られた試験片の両電極に表6に記載の直流電圧を500時間まで印加し、イオンマイグレーションが発生するか(両電極間の抵抗値が105Ω以下となればイオンマイグレーションが発生したと判断)を評価した。結果を表6に併せて示す。
【0114】
【0115】
表2~6の結果より、本発明の異方性導電材料は、塗膜において絶縁性であり、かつ、イオンマイグレーション耐性に優れることが示された。さらに180℃、2MPaという低い温度および圧力で圧着することで導電性が発現することが確認された。これは、材料に含まれる導電性粒子が破壊され、粒子内部から過冷却金属の導電性コアが流出して固化したことを示すものであり、異方性導電材料であることを示すものである。
【0116】
このように、本発明の異方性導電材料は、低い応力では導電性コアの流出がなく高い絶縁耐性を示し(表1、表2、表4、表6参照)、素子への負荷が小さい温度および圧力で電極の接続/接着処理を行うことができる。さらに、導電性粒子から流出した過冷却金属が処理時の刺激により固化して、その金属本来の融点を有する固体状となるため、電子部品の固定をより確実なものとするとともに、耐熱信頼性の改善も期待できる。
【符号の説明】
【0117】
1、1’、1” ガラス基板
2、2” シリコンウエハ基板
3、3’ Cu電極
4 Cu配線
5 末端配線
6 スペーサー
7 異方性導電材料
8 硬化物
9 ITO電極
10 末端配線
11 Au電極
12 Au配線
A Cu電極付きガラス基板
B Cu電極付きシリコンウエハ基板
C 塗布基板
D 試験片
E ITO電極付きガラス基板
F Au電極付きシリコンウエハ基板