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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】撮像素子および撮像装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 25/46 20230101AFI20231011BHJP
   H04N 25/78 20230101ALI20231011BHJP
【FI】
H04N25/46
H04N25/78
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022043916
(22)【出願日】2022-03-18
(62)【分割の表示】P 2020520346の分割
【原出願日】2019-05-22
(65)【公開番号】P2022078348
(43)【公開日】2022-05-24
【審査請求日】2022-03-18
(31)【優先権主張番号】P 2018099061
(32)【優先日】2018-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】安藤 良次
(72)【発明者】
【氏名】高木 徹
(72)【発明者】
【氏名】加藤 周太郎
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 佳之
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 崇志
【審査官】鈴木 明
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-085535(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 25/00-25/79
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を光電変換して電荷を生成し、行方向に配置される第1光電変換部と第2光電変換部と、
前記第1光電変換部で生成された電荷に基づく第1信号を出力する第1出力部と、
前記第2光電変換部で生成された電荷に基づく第2信号を出力する第2出力部と、
前記第1出力部と前記第2出力部とに電気的に接続可能であり、前記第1信号および前記第2信号の少なくとも1つが出力され、列方向に配線される出力線と、
前記第1出力部から前記出力線への前記第1信号の出力を制御するための第1制御線と、
前記第2出力部から前記出力線への前記第2信号の出力を制御するための第2制御線と、
を備える撮像素子。
【請求項2】
請求項1に記載の撮像素子において、
前記出力線は、行方向および列方向に配線される撮像素子。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の撮像素子において、
前記第2光電変換部と前記第2出力部とは、行方向と列方向とに複数配置され、
前記出力線は、前記第1出力部と複数の前記第2出力部とが接続され、前記第1信号および前記第2信号の少なくとも1つが出力される撮像素子。
【請求項4】
請求項に記載の撮像素子において、
前記第2制御線は、複数の前記第2出力部から前記出力線への前記第2信号の出力を制御するために制御線である撮像素子。
【請求項5】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の撮像素子において、
前記第1出力部は、前記第2出力部による前記第2信号の出力と異なるタイミングで、前記第1信号を出力する撮像素子。
【請求項6】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の撮像素子において、
前記第1出力部が前記第1信号を出力する間、前記第2出力部は前記第2信号を出力しないよう前記第2制御線を介して制御される撮像素子。
【請求項7】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の撮像素子において、
前記第2出力部が前記第2信号を出力する間、前記第1出力部は前記第1信号を出力しないよう前記第1制御線を介して制御される撮像素子。
【請求項8】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の撮像素子において、
前記第1出力部は、焦点検出に用いる前記第1信号を出力し、
前記第2出力部は、画像生成に用いる前記第2信号を出力する撮像素子。
【請求項9】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の撮像素子において、
前記第1光電変換部および前記第2光電変換部を有する第1基板と、
前記出力線から前記第1信号および前記第2信号の少なくとも1つをアナログ信号からデジタル信号に変換する変換部を有し、前記第1基板と積層される第2基板と、
を備える撮像素子。
【請求項10】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の撮像素子において、
前記第1出力部と前記第2出力部とは、選択トランジスタであり、
前記第1制御線と前記第2制御線は、前記選択トランジスタを制御するための制御線である撮像素子。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の撮像素子と、
前記第2信号に基づいて画像データを生成する生成部と、
を備える撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像素子および撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の画素の信号を加算して読み出す撮像素子が知られている(例えば特許文献1)。しかし、従来の撮像素子は、任意の複数の画素の信号を加算した信号が得られない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本国特開2013-143730号公報
【発明の概要】
【0004】
第1の態様によると、撮像素子は、光を光電変換して電荷を生成し、行方向に配置される第1光電変換部と第2光電変換部と、前記第1光電変換部で生成された電荷に基づく第1信号を出力する第1出力部と、前記第2光電変換部で生成された電荷に基づく第2信号を出力する第2出力部と、前記第1出力部と前記第2出力部とに電気的に接続可能であり、前記第1信号および前記第2信号の少なくとも1つが出力され、列方向に配線される出力線と、前記第1出力部から前記出力線への前記第1信号の出力を制御するための第1制御線と、前記第2出力部から前記出力線への前記第2信号の出力を制御するための第2制御線と、を備える。
の態様によると、撮像装置は、上述の撮像素子と、前記第2信号に基づいて画像データを生成する生成部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】撮像装置の構成を模式的に示す断面図。
図2】撮像素子を撮像面側から見た平面図。図2(a)は撮像素子の全体図であり、図2(b)はその一部を拡大した図。
図3】撮像素子の画素および読み出し回路の回路図。
図4】撮像素子の断面図。
図5】撮像画素および焦点検出用画素の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0006】
(撮像装置の実施形態)
図1は、第1の実施の形態に係る撮像素子を用いた撮像装置の構成を模式的に示す断面図である。撮像装置1は、撮像光学系2、撮像素子3、制御部4、レンズ駆動部5、および表示部6を備える。
【0007】
撮像光学系2は、撮像素子3の撮像面に被写体像を結像させる。撮像光学系2は、レンズ2a、フォーカシングレンズ2b、およびレンズ2cから成る。フォーカシングレンズ2bは、撮像光学系2の焦点調節を行うためのレンズである。フォーカシングレンズ2bは、光軸Z方向に移動可能に構成されている。
【0008】
レンズ駆動部5は、不図示のアクチュエータを有する。レンズ移動部5は、このアクチュエータにより、フォーカシングレンズ2bを光軸Z方向に移動させる。撮像素子3は、被写体像を撮像して信号を出力する。撮像素子3は、撮像画素とAF画素(焦点検出画素)とを有する。撮像画素は、画像生成に用いる信号(画像信号)を出力する。AF画素は、焦点検出に用いる信号(焦点検出信号)を出力する。制御部4は、撮像素子3等の各部を制御する。制御部4は、撮像素子3により出力された画像信号に画像処理等を施して画像データを生成する。制御部4は、不図示の記録媒体に画像データを記録したり、表示部6に画像データに基づく画像を表示したりする。制御部4は、画像信号に基づいて画像を生成する生成部と解釈することもできる。表示部6は、例えば液晶パネル等の表示部材を有する表示装置である。
【0009】
また、制御部4は、公知の位相差検出方式により、撮像光学系2の自動焦点調節(AF)に必要な焦点検出処理を行う。具体的に、制御部4は、撮像光学系2による像が撮像素子3の撮像面上に結像するためのフォーカシングレンズ2bの合焦位置を検出する。制御部4は、撮像素子3から出力される一対の焦点検出信号に基づき、第1及び第2の像の像ズレ量を検出する。制御部4は、検出した像ズレ量に基づいて、フォーカシングレンズ2bの現在の位置と合焦位置とのずれ量(デフォーカス量)を算出する。フォーカシングレンズ2bがデフォーカス量に応じて駆動されることにより、焦点調節が自動で行われる。
【0010】
(撮像素子の実施形態)
図2(a)は、本発明の実施形態の撮像素子3を撮像面側から、すなわち図1の-Z側から見た図である。撮像素子3は、図2のx方向およびy方向に配列される複数の画素30を有している。図2では一部を省略して描いているが、画素30は、x方向およびy方向にそれぞれ例えば1000個以上に渡って多数配列されていても良い。
複数の画素30が配列された領域(撮像領域)の、図中の左端には水平制御部HCが設けられ、図中の上端には垂直制御部VCが設けられている。
【0011】
撮像素子3は、複数の画素ブロックBCを有する。図2では、1つの画素ブロックBCは、破線で示した境界線BBにより囲まれる、x方向およびy方向に配列されている複数の画素30を有する。画素ブロックBCのそれぞれの中の複数の画素30は、後述するようにそれぞれの出力部が、1つの出力線に接続され、1つの読出部に接続されている。なお、画素ブロックBCのそれぞれの中の複数の画素30は、複数の出力線に接続され、複数の読出部に接続されていてもよい。
図2では、説明を容易にするために1つの画素ブロックBCに相当する部分にハッチング付している。ただし、破線で示した各境界線BBにより囲まれる各領域がそれぞれ画素ブロックBCである。複数の画素30は分割されて、複数の画素ブロックBCの中に配列されている。
【0012】
図2に示した例の場合には、x方向に4個およびy方向に4個配列される計16個の画素30が、1つの画素ブロックBCを構成している。
1つの画素ブロックBC内のx方向およびy方向の画素の配列数は、4個に限られるものではなく、6個や8個等の他の数であってもよい。x方向とy方向で配列数が異なっていても良い。
また、画素ブロックBCの外郭形状は図2に示した長方形に限られるものではなく、複数の画素30を包含する任意の形状であっても良い。この場合、境界線BBの形状は単純な直線ではなく、複数の直線が折れ曲がって接続された形状になる。
【0013】
図2(b)は、図2(a)に示した画素ブロックBCのうち、x方向に隣接する2つの画素ブロックBC1および画素ブロックBC2を拡大して示す図である。
図2(b)に示したとおり、複数の画素30には、例えばR(赤)、G(緑)、B(青)の異なる分光特性を有する3つのカラーフィルタ(色フィルタ)のいずれかが設けられる。Rのカラーフィルタは主に赤色の波長域の光を透過し、Gのカラーフィルタは主に緑色の波長域の光を透過し、Bのカラーフィルタは主に青色の波長域の光を透過する。画素は、配置されたカラーフィルタによって異なる分光特性を有する。画素30には、赤(R)の光に感度を有する画素(以下、R画素Rと称する)と、緑(G)の光に感度を有する画素(以下、G画素Gと称する)と、青(B)の光に感度を有す画素(以下、B画素Bと称する)とがある。これらの画素30は、いわゆるベイヤー配列で配列されている。G画素GbはB画素Bと同じx方向に配置されたG画素であり、G画素GrはR画素Rと同じx方向に配置されたG画素である。
【0014】
画素ブロックBC1は、ベイヤー配列で配列された、各4個のG画素Gb、G画素Gr、R画素R、B画素Bを有する。これらの画素30は、いずれも撮像素子3の撮像面に形成された光学像の撮像のために使用される撮像画素Gb、Gr、R、B(以下、総称して撮像画素30cとも呼ぶ)である。
【0015】
画素ブロックBC2は、その内部の画素30の配列は画素ブロックBC1とほぼ同様であるが、画素ブロックBC1ではB画素Bが配置されている箇所の一部の画素が、上述の撮像画素30cとは異なる特殊画素Z1およびZ2(総称して、特殊画素ZZとも呼ぶ)に置き換わっている。
【0016】
特殊画素ZZは、例えば、AF画素であり、その構成については後述する。
特殊画素ZZは、AF画素に限らず、感度が上述の撮像画素30cのいずれとも異なる画素であっても良い。また、分光特性が上述の撮像画素30cのいずれとも異なるカラーフィルタを有する画素であってもよい。
特殊画素ZZは、第1画素と解釈することもできる。これに対し、撮像画素30cは、第2画素と解釈することもできる。
【0017】
画素ブロックBC2は、複数の画素30として、特殊画素ZZを少なくとも1つ含み、撮像画素30cを複数有する。
複数の画素ブロックBCのうち少なくとも1つの画素ブロックBCは、画素ブロックBC2のように少なくとも1つの特殊画素ZZと複数の撮像画素30cで構成される。複数の画素ブロックBCのうち少なくとも1つの画素ブロックBCは、画素ブロックBC1のように全てが撮像画素30cで構成されていても良い。
【0018】
図2(a)に示した垂直制御部VCからは、各画素30の後述する選択部TVに接続されている垂直選択線VS1~VS8(総称して、垂直選択線VSとも呼ぶ)がy方向に延びている。水平制御部HCからは、各撮像画素30cの後述する選択部TH2に接続されている水平選択線HS1~HS4(総称して、水平選択線HSとも呼ぶ)がx方向に延びている。水平制御部HCからは、各特殊画素Z1およびZ2の後述する選択部に接続されている特殊水平選択線ZSがx方向に延びている。
【0019】
図2(b)に示したとおり、垂直選択線VS1~VS8のそれぞれは、y方向に並ぶ複数の画素30で共用されており、水平選択線HS1~HS4のそれぞれは、x方向に並ぶ複数の撮像画素30cで共用されている。特殊水平選択線ZSは、x方向に並ぶ複数の特殊画素ZZで共用されている。
【0020】
図3は、図2(b)に示した画素ブロックBC2内の右下にある、2点鎖線PBで囲った4つの画素30(縦方向に2個、横方向に2個配列)について、その電気回路の概要を示す拡大図である。この4つの画素30は、図2(b)の2点鎖線PB内に示したとおり、左上がG画素Gb、右上が特殊画素Z2、左下がR画素R、右下がG画素Grである。
4つの画素(Gb,Z2,R,Gr)は、いずれも基本的にはいわゆる4トランジスタ型のCMOS型撮像素子であるが、後述するとおり、いわゆる選択トランジスタの構成が通常の4トランジスタ型のCMOS型撮像素子とは異なっている。
【0021】
各画素(Gb,Z2,R,Gr)において、光電変換部であるフォトダイオードPDは入射光を光電変換して電荷を生成し、生成した電荷を一時的に蓄積する。転送トランジスタTXは、不図示の転送制御線よりそのゲートに送られる転送信号に基づいて、フォトダイオードPDに蓄積された電荷を、容量CCが形成されるフローティングデフュージョン(FD)領域FDに転送する。増幅トランジスタTAは、転送された電荷によりFD領域FDに生じた電圧がそのゲートに印加されることにより、フォトダイオードPDで生成された電荷に応じた信号を出力する。
【0022】
増幅トランジスタTAの入力側(ドレイン)には、電源電圧VDDが印加されている。リセットトランジスタTRは、FD領域FDの電荷を電源電圧VDD側に排出することで、FD領域FDの電圧を電源電圧VDDにリセットする。
【0023】
各画素(Gb,Z2,R,Gr)の増幅トランジスタTAの出力側(ソース側)は、垂直選択トランジスタTVの入力側に接続されている。垂直選択トランジスタTVのゲートは、垂直選択線VS7またはVS8に接続されており、図2(a)に示した垂直制御部VCから送られてくる制御信号により、垂直選択トランジスタTVは導通または非導通となる。
【0024】
撮像画素(Gb,R,Gr)の垂直選択トランジスタTVの出力側は、水平選択トランジスタTH2の入力側に接続されている。水平選択トランジスタTH2のゲートは、水平選択線HS3またはHS4に接続されており、図2(a)に示した水平制御部HCから送られてくる制御信号により、水平選択トランジスタTH2は導通または非導通となる。
【0025】
実施形態の撮像素子3の撮像用画素(Gb,R,Gr)において、水平選択トランジスタTH2および垂直トランジスタTVの一方または両方は、撮像画素(Gb,R,Gr)の出力部(第2画素の出力部として、第2出力部)と解釈することができる。
あるいは、増幅トランジスタTAを、出力部(第2出力部)と解釈することもできる。第2出力部は、増幅トランジスタTAと、水平選択トランジスタTH2および垂直トランジスタTVの一方または両方を含めてもよい。
【0026】
一方、特殊画素Z2の垂直選択トランジスタTVの出力側は、特殊水平選択トランジスタTH1の入力側に接続されている。特殊水平選択トランジスタTH1のゲートは、特殊水平選択線ZSに接続されており、図2(a)に示した水平制御部HCから送られてくる制御信号により、特殊水平選択トランジスタTH1は導通または非導通となる。
【0027】
実施形態の撮像素子3の特殊画素Z2において、特殊水平選択トランジスタTH1および垂直トランジスタTVの一方または両方は、出力部(第1画素の出力部として、第1出力部)と解釈することもできる。
あるいは、増幅トランジスタTAを、出力部(第1出力部)と解釈することもできる。第2出力部は、増幅トランジスタTAと、水平選択トランジスタTH1および垂直トランジスタTVの一方または両方を含めてもよい。
【0028】
特殊水平選択線ZSは、第1画素(特殊画素ZZ)の出力部である第1出力部(選択トランジスタTH1)を制御するので、第1制御線と解釈することもできる。
また、水平選択線HSは、第2画素(撮像画素30c)の出力部である第2出力部(選択トランジスタTH2)を制御するので、第2制御線と解釈することもできる。
さらに、垂直選択線VSは、第3制御線と解釈することもできる。
【0029】
画素ブロックBC2内の撮像画素(Gb,R,Gr)の水平選択トランジスタTH2の出力部、および画素ブロックBC2内の特殊画素Z2内の特殊水平選択トランジスタTH1の出力部は、いずれも1つの出力線RWに接続されている。出力線RWは、画素30の信号を読み出す読出部に接続されている。読出部は、例えば、画素30から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換するAD変換部を有する。また出力線RWは、画素30内の増幅トランジスタTA等に電流を供給する電流源CSと接続されている。
【0030】
以上述べたように、垂直制御部VCおよび水平制御部HCは、垂直選択線VSおよび水平選択線HSへの制御信号の電圧を制御することにより、画素ブロックBC2内の任意の1つ以上の画素(Gb,Z2,R,Gr)の信号(増幅トランジスタTAの出力)を出力線RWに出力させる。読出部は、画素ブロックBC2内の画素(Gb,Z2,R,Gr)の信号を読み出す。
【0031】
本実施形態の撮像素子3の画素30のリセット動作を含む撮像動作は、従来の4トランジスタ型のCMOS型撮像素子とほぼ同様である。すなわち、撮像または焦点検出のための露光動作に先立って、リセットトランジスタTRおよび転送トランジスタTXが電源電圧VDDと導通して、FD領域FDおよびフォトダイオードPDが電源電圧VDDにリセットされる。その後、転送トランジスタTXが非導通とされ、フォトダイオードPDで撮像または焦点検出のための露光が行われる。
【0032】
本実施形態の撮像素子3の読出部は、1つの画素ブロックBC内の任意の数の画素30の信号を加算(合算、ビニング)した加算信号を読み出すことができる。
例えば、表示部6にスルー画像(ライブビュー画像)を表示する場合や動画撮影を行う場合、制御部4は、複数の画素30の信号を加算した加算信号に基づいて画像データを生成する。加算信号に基づいた画像データは、撮像素子の総画素数よりも少ない画素数の画像データとなる。また、複数の画素30の信号を加算することにより各画素30の信号に混入するノイズが平滑化されるため、制御部4はよりノイズの少ない画像を生成することができる。画素ブロックBC内の任意の数の画素30の信号を加算するため、垂直制御部VCおよび水平制御部HCは、任意の数の画素30の信号を同時に出力線RWに出力させる。読出部は、同時に出力線RWに出力された、画素ブロックBC内の任意の数の画素30の信号を加算信号として読み出す。なお、任意の数の画素30は同時に出力線RWに信号を出力しなくともよい。任意の数の画素30は互いの信号が出力線RWに出力されている間に、互いの信号を出力すればよい。
【0033】
なお、本実施形態の撮像素子3において、複数の画素30の信号は、いわゆるソースフォロワ加算される。従って、読出部が読み出す信号の値は、各画素30の信号値の和ではなく、各画素30の信号値の平均値に近いものとなる。
【0034】
加算信号を出力する複数の画素30は、同色の画素であることが好ましい。垂直制御部VCおよび水平制御部HCは、垂直選択線VSおよび水平選択線HSへの制御信号の電圧を制御して、1つの画素ブロックBC内の複数の同色の画素30を選択し、それらの信号を、垂直選択トランジスタTV,水平選択トランジスタTHを介して出力線RWに出力させる。読出部は、出力線RWに出力された、選択された同色の画素30の信号を加算信号として読み出す。
【0035】
図2(b)を参照して、垂直制御部VCおよび水平制御部HCによる制御と、読出部による信号の読み出しについて説明する。
例えば、図2(b)に示す画素ブロックBC2内の全てのR画素Rの信号を加算して出力させる場合、垂直制御部VCは、R画素に接続されている垂直選択線VS5およびVS7に、垂直選択トランジスタTVを導通させる信号を送る。垂直制御部VCは、例えば、電源電圧を供給する。一方、垂直制御部VCは、R画素に接続されていない垂直選択線VS6およびVS8に、垂直選択トランジスタTVを非導通にさせる信号を送る。垂直制御部VCは、例えば、接地電圧を供給する。
【0036】
そして、水平制御部HCは、R画素に接続されている水平選択線HS2およびHS4に、水平選択トランジスタTH2を導通させる信号を送り、R画素に接続されていない水平選択線HS1およびHS3に、水平選択トランジスタTH2を非導通にさせる信号を送る。
以上の垂直制御部VCおよび水平制御部HCの制御により、垂直選択線VS5およびVS7と、水平選択線HS2およびHS4とが交差する位置に配置されている4つのR画素Rは、垂直選択トランジスタTVおよび水平選択トランジスタTH2が共に導通状態となる。従って、これらの4つのR画素Rの信号は同時に出力線RWに出力される。4つのR画素Rの信号は出力線RWに同時に出力されることで加算される。読出部は、出力線RWに出力された、4つのR画素Rの信号を加算信号として読み出す。
【0037】
なお、水平制御部HCが、水平選択線HS2にのみ水平選択トランジスタTH2を導通させる信号を送り、水平選択線HS2以外の水平選択線HSに水平選択トランジスタTH2を非導通にさせる信号を送ることで、水平選択線HS2と、垂直選択線VS5およびVS7とが交差する位置に配置されている2つのR画素Rの信号を同時に出力線RWに出力させることができる。上述2つのR画素Rの信号は同時に出力線RWに出力されることで加算される。これにより、読出部は上述2つのR画素Rの加算信号を読み出すことができる。
【0038】
あるいは、垂直制御部VCが、垂直選択線VS5にのみ垂直選択トランジスタTVを導通させる信号を送ることで、垂直選択線VS5と、水平選択線HS2およびHS4とが交差する位置に配置されている2つのR画素Rの信号を同時に出力線RWに出力させることができる。上述2つのR画素Rの信号は同時に出力線RWに出力されることで加算される。これにより、読出部は上述2つのR画素Rの加算信号を読み出すことができる。
【0039】
さらに、垂直制御部VCおよび水平制御部HCは、1つの画素ブロックBC2内の1つのR画素Rのみの信号を出力線RWに出力させることができる。これにより、読出部は1つのR画素Rのみの信号を読み出すことができる。この場合、垂直制御部VCは、垂直選択線VS5またはVS7に垂直選択トランジスタTVを導通させる信号を送ると共に、2本の水平線HS2またはHS4に水平選択トランジスタTH2を導通させる信号を送ればよい。
【0040】
画素ブロックBC2において、4つのB画素Bのうち2つの画素が特殊画素Z1およびZ2に置き換わっているが、B画素Bの信号の読み出しは、上述のR画素Rの信号の読み出しとほぼ同様である。
画素ブロックBC2内の全てのB画素Bの信号を加算して出力させる場合、水平制御部HCは、水平選択トランジスタTH2を導通させる信号を水平選択線HS1に送る。さらに、水平制御部HCは、水平選択線HS1以外の水平選択線HSに水平選択トランジスタTH2を非導通にする信号を送ると共に、特殊水平選択線ZSに特殊水平選択トランジスタTH1を非導通にする信号を送る。
【0041】
そして、垂直制御部VCが、垂直選択トランジスタTVを導通させる信号を垂直選択線VS6およびVS8に送ることで、2つのB画素Bの信号は同時に出力線RWに出力される。2つのB画素Bの信号は同時に出力線RWに出力されることで加算される。読出部は2つのB画素Bの加算信号を読み出す。また、垂直制御部VCが、垂直選択トランジスタTVを導通させる信号を垂直選択線VS6またはVS8に送ることで、読出部は1つのB画素Bの信号を読み出すことができる。
【0042】
水平制御部HCが、特殊水平選択線ZSに特殊水平選択トランジスタTH1を非導通にする信号を送ることで、特殊画素Z1およびZ2の信号は、出力線RWには出力されない。従って、特殊画素Z1およびZ2の信号が、B画素Bの信号に混入することはない。
【0043】
なお、特殊水平選択線ZSと並行して配置される水平選択線HS3は、特殊画素Z1およびZ2内の特殊水平選択トランジスタTH1と接続されていない。従って、水平制御部HCが、水平選択線HS3にどのような信号を送っても、B画素Bの信号に特殊画素Z1およびZ2の信号が混入することはない。
ただし、水平選択線HS3は、画素ブロックBC2とx方向に隣接する画素ブロックBC1等の他の画素ブロックBCと共用されているので、水平制御部HCが水平選択線HS3に送る信号は、他の画素ブロックBCでの読み出しに適した信号を送ることが好ましい。
【0044】
画素ブロックBC2内のG画素G(G画素GbおよびG画素Gr)の信号の読み出しも、上述のR画素RおよびB画素Bの信号の読み出しと同様である。垂直制御部VCおよび水平制御部HCが、垂直選択線VSおよび水平選択線HSのうち読み出すG画素Gに接続される選択線に、垂直選択トランジスタTVおよび水平選択トランジスタTH2を制御する信号を送る。これにより、読出部は、1つのG画素Gの信号、または複数のG画素Gの加算信号を読み出すことができる。
このとき、出力線RWに出力されるG画素Gの信号に特殊画素Z1およびZ2の信号が混入しないように、水平制御部HCは特殊水平選択線ZSに特殊水平選択トランジスタTH1を非導通にする信号を送る。
【0045】
特殊画素Z1の信号を読み出す場合、垂直制御部VCおよび水平制御部HCは、特殊画素Z1に接続されている垂直選択線VS6および特殊水平選択線ZSに、それぞれ垂直選択トランジスタTVおよび特殊水平選択トランジスタTH1を導通させる信号を送り、特殊画素Z1の信号を出力線RWに出力させる。また、特殊画素Z2の信号を読み出す場合、垂直制御部VCおよび水平制御部HCは、特殊画素Z2に接続されている垂直選択線VS8および特殊水平選択線ZSに、それぞれ垂直選択トランジスタTVおよび特殊水平選択トランジスタTH1を導通させる信号を送り、特殊画素Z2の信号を出力線RWに出力させる。読み出し部は、出力線RWに出力された特殊画素Z1またはZ2の信号を読み出す。特殊画素Z1またはZ2の信号を読み出す場合、垂直制御部VCおよび水平制御部HCは、垂直選択線VS6および垂直選択線VS8以外の垂直選択線VSおよび水平選択線HSに、それぞれ垂直選択トランジスタTVおよび水平選択トランジスタTH2を非導通にする信号を送る。
【0046】
特殊画素Z1およびZ2の信号を加算して読み出す場合、垂直制御部VCおよび水平制御部HCは、垂直選択線VS6および垂直選択線VS8と特殊水平選択線ZSとに、それぞれ垂直選択トランジスタTVおよび特殊水平選択トランジスタTH1を導通させる信号を送り、特殊画素Z1およびZ2の信号を同時に出力線RWに出力させる。特殊画素Z1およびZ2の信号は同時に出力線RWに出力されることで加算される。これにより、読出部は特殊画素Z1およびZ2の加算信号を読み出す。
【0047】
以上、画素ブロックBC2内の画素30の信号の読み出しについて説明したが、これは他の画素ブロックBCにおいても同様である。各画素ブロックBC内の各画素30の信号は、各画素ブロックBC内にそれぞれ設けられている出力線RWに出力され、読出部により読み出される。なお、垂直選択線VS、水平選択線HS、および特殊水平選択線ZSは、複数の画素ブロックBCで共有されていてよい。例えば、水平選択線HS1~HS4は、画素ブロックBC1の様に、画素ブロックBC2に対してx方向に並ぶ他の画素ブロックBC内の各画素30に接続されていてもよい。また、垂直選択線VS5~VS8は、画素ブロックBC2に対してy方向に並ぶ他の画素ブロックBC内の各画素30にh¥接続されていてもよい。
各画素ブロックBCの読出部で読み出された信号は、不図示の出力回路を経て、撮像素子3から出力される。
【0048】
なお、特殊画素ZZと撮像画素30cとの各信号を読み出す順序は、任意である。例えば、垂直制御部VCおよび水平制御部HCは、垂直選択線VSおよび水平選択線HSを介して、始めに特殊画素Z1およびZ2を順に選択し、読出部はその信号を読み出す。その後、垂直制御部VCおよび水平制御部HCは、垂直選択線VSおよび水平選択線HSを介して、撮像画素30cを選択し、読出部はその信号を読み出す。
【0049】
画素ブロックBC2内の特殊画素ZZの画素数(Z1およびZ2の2個)は撮像画素30cの画素数(Gb、Gr、R、Bを合わせて14個)よりも少ないので、特殊画素ZZの信号の読み出しに要する時間は撮像画素の信号の読み出しに要する時間よりも短い。つまり、特殊画素ZZの信号の読み出しは、撮像画素30cの信号の読み出しよりも高速に行える。例えば、特殊画素ZZがAF画素である場合、特殊画素ZZの信号の読み出しが、撮像画素30cの信号の読み出しよりも先に行われることで、制御部4は焦点検出を高速に行うことができる。
また、1つの画素ブロックBCに、2つの読出部を設けてもよい。1つの出力線RWに2つの読出部を接続させることで、2つの読出部それぞれが特殊画素ZZの信号と撮像画素30cの信号とを読み出すようにしてもよい。これにより、読出部は、特殊画素ZZの信号と撮像画素30cの信号とを、それぞれ最適のゲイン等の読出条件で読み出すことができる。
【0050】
図4は、本実施形態の撮像素子3の画素30部分の断面を示す図である。なお図4では、撮像素子3の全体のうち、一部の断面のみを示している。図4中に示したx方向およびz方向は、図1中に示した各方向と同じである。撮像素子3は、いわゆる裏面照射型の撮像素子である。撮像素子3は、紙面上方向から入射した光を光電変換する。撮像素子3は、第1半導体基板7と、第2半導体基板8とを備える。
【0051】
上述のとおり、撮像素子3は複数の画素30を有している。1つの画素30は、第1半導体基板7に設けられた画素上部30xと、第2半導体基板8に設けられた画素下部30yとを含む。1つの画素上部30xは、1つのマイクロレンズ74、1つのカラーフィルタ73、1つのフォトダイオードPDの受光部31等が含まれる。
【0052】
第1半導体基板7は、画素上部30xに含まれるフォトダイオードPDの受光部31を含む受光層71と、転送トランジスタTX、増幅トランジスタTA等のトランジスタが形成されている配線層72とを備える。受光層71は、第1半導体基板7の配線層72とは反対側(裏面側)に配置される。受光層71には、複数の受光部31が二次元状に配置されている。
【0053】
画素上部30xは、入射光を光電変換する部分である受光部31を含むので、撮像部と解釈することもできる。
第2半導体基板8には、画素下部30yに含まれる垂直選択トランジスタTV、水平選択トランジスタTH2、特殊水平選択トランジスタTH1、垂直選択線VS、水平選択線HS、特殊水平選択線ZSと、読出部および電流源CSなどが配置されている。
【0054】
配線層72の表面には複数のバンプ75が配置される。第2半導体基板8の、配線層72に対向する面には、複数のバンプ75に対応する複数のバンプ76が配置される。複数のバンプ75と複数のバンプ76とは互いに接合されている。複数のバンプ75と複数のバンプ76とを介して、第1半導体基板7と第2半導体基板8とが電気的に接続されている。
【0055】
なお、上述した第1半導体基板7および第2半導体基板8にそれぞれ配置される回路要素の構成は一例であって、そのうちのいくつかの構成物は、第1半導体基板7および第2半導体基板8のどちらに配置してもよい。例えば、フォトダイオードPDの受光部31を含む受光層71と、転送トランジスタTX、増幅トランジスタTA、および垂直選択トランジスタTAを第1半導体基板7に形成し、水平選択トランジスタTH2、特殊水平選択トランジスタTH1、水平選択線HS、特殊水平選択線ZSと、読出部および電流源CSを、第2半導体基板8に配置してもよい。
【0056】
フォトダイオードPDの受光部31を含む受光層71と、転送トランジスタTX、増幅トランジスタTA、および垂直選択トランジスタTA、水平選択トランジスタTH2、特殊水平選択トランジスタTH1、水平選択線HS、特殊水平選択線ZSを第1半導体基板7に形成し、読出部および電流源CSを第2半導体基板8に配置してもよい。
垂直制御部VCおよび水平制御部HCは、第1半導体基板7および第2半導体基板8のどちらに配置してもよい。
【0057】
ただし、第1半導体基板7に多くの回路要素を配置すると、第1半導体基板7に受光部31を配置する面積または体積が十分に確保できなくなるので、読出部ADCおよび電流源CSは、第2半導体基板8に配置することが好ましい。
各画素30のカラーフィルタ73には、各画素の分光感度特性に合わせたカラーフィルタが配置されている。
【0058】
また、画素30のうち特殊画素ZZにも、カラーフィルタ73が配置される。特殊画素ZZがAF画素である場合、Gのカラーフィルタがカラーフィルタ73として設けられる。なお、特殊画素ZZに設けられるカラーフィルタ73は、入射光の全波長域を透過するフィルタであってもよい。また、特殊画素ZZに設けられるカラーフィルタ73は、撮像画素30cに配置されるカラーフィルタ73のいずれとも分光特性が異なるカラーフィルタであってもよい。
【0059】
特殊画素ZZが、赤外光を受光するための画素である場合、カラーフィルタ73は、赤外光の透過率が高く可視光の透過率が低いものは。また、特殊画素ZZが、可視光を受光するための画素である場合、カラーフィルタ73は、可視光の全波長域について透過率の高いものとなる。
【0060】
なお、特殊画素ZZのカラーフィルタ73の平均透過率を、撮像画素30cのカラーフィルタ73の平均透過率と異ならせること等により、特殊画素ZZの感度を、撮像画素30cの感度と異ならせてもよい。ここで、平均透過率とは、受光部31が光電変換する光の全波長に対する透過率の平均をいう。
特殊画素ZZの感度は、特殊画素ZZの受光部31の面積を撮像画素30cの受光部31の面積と異ならせる、または受光部31へのイオン注入の条件を異ならせることによって、撮像画素30cの感度と異ならせてもよい。
特殊画素ZZと撮像画素30cとの感度を異ならせることにより、特殊画素ZZおよび撮像画素30cは互いに異なる信号を出力する。異なる信号に基づいて画像データを生成することで、画像の画質(解像度、諧調、色)を向上させることができる。
【0061】
図5は、特殊画素ZZがAF画素である場合の一例を示す図である。図5では、図4に示した撮像素子3の断面図から第2半導体基板8を省略している。
特殊画素Z1は、カラーフィルタ73と第1半導体基板7の境界部に、受光部31の右側を遮光する遮光部75Rが設けられる。一方、特殊画素Z2は、その境界部に、受光部31の左側を遮光する遮光部75Lが設けられる。
【0062】
特殊画素Z1に入射する光のうち、撮像素子3の入射面に垂直な方向PLに対して-x方向に傾いて入射する光LLは、遮光部75Rに遮光される。一方、特殊画素Z2に入射する光のうち、撮像素子3の入射面に垂直な方向PLに対して+x方向に傾いて入射する光LRは、遮光部75Lに遮光される。
この結果、特殊画素Z1およびZ2は、それぞれ異なる入射方向から入射する光に対する感度が低下し、逆に言えば、それぞれ異なる入射方向から入射する光に対する感度が相対的に高くなる。
【0063】
この撮像素子3を、図1の撮像装置に適用すれば、特殊画素Z1およびZ2は、撮像光学系2の瞳面でそれぞれ異なる位置を通る光に対する感度が高い素子となるため、像面位相差合焦検出のための画素として機能する。
なお、遮光部75R、75Lを設ける位置は、上述のカラーフィルタ73と第1半導体基板7の境界部に限られるわけではなく、マイクロレンズ74から第1半導体基板7までの間のどこかに設ければよい。
【0064】
以上の撮像素子の実施形態において、各画素30の配列は、必ずしもベイヤー配列に限られるものではない。また、水平選択線HS、特殊水平選択線ZSは、撮像素子3の長辺方向ではなく短辺方向に延びていてもよく、垂直選択線VSは、撮像素子3の短辺方向ではなく長辺方向に延びていてもよい。
また、各画素30の信号の出力を制御する水平選択線HS、特殊水平選択線ZS、および垂直選択線VSは、水平方向(x方向)および垂直方向(y方向)に延在するものでなくてもよい。そして、水平選択線HS、特殊水平選択線ZS、および垂直選択線VSは、複数の画素30で共有されていなくもよい。
【0065】
上述した実施の形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)以上の実施形態の撮像素子3は、光を光電変換して電荷を生成する第1光電変換部(第1画素ZZ中のフォトダイオードPD)と、第1光電変換部で生成された電荷に基づく第1信号を出力する第1出力部TH1と、光を光電変換して電荷を生成する複数の第2光電変換部(撮像画素30c中のフォトダイオードPD)と、第2光電変換部で生成された電荷に基づく第2信号を出力する複数の第2出力部TH2と、第1出力部TH1と複数の第2出力部TH2とが接続され、第1信号および第2信号の少なくとも1つが出力される出力線RWと、第1出力部TH1から出力線RWへの第1信号の出力を制御するための第1制御線(特殊水平選択線ZS)と、複数の第2出力部TH2から出力線RWへの第2信号の出力を制御するための第2制御線(水平選択線HS)と、を有している。
このような構成としたので、出力線RWに接続された複数の画素のうち、任意の1つまたは複数の画素の30の出力を選択して、出力線RWに出力させることができる。
【0066】
(2)さらに、第1出力部TH1は、第2出力部TH2による第2信号の出力と異なるタイミングで、第1信号を出力する構成とすることで、第1光電変換部に基づく第1信号または第2光電変換部に基づく第2信号の読み出しを、任意の順で行うことができる。
(3)さらに、第1出力部TH1が第1信号を出力する間、第2出力部TH2は第2信号を出力しないよう第2制御線(水平選択線HS)を介して制御される構成とすることで、第1光電変換部に基づく第1信号の出力への、第2光電変換部に基づく第2信号の混入を防ぎ、より正確な信号を出力することができる。
【0067】
(4)さらに、第2出力部TH2が第2信号を出力する間、第1出力部TH1は第1信号を出力しないよう第1制御線(特殊水平選択線ZS)を介して制御される構成とすることで、第2光電変換部に基づく第2信号の出力への、第1光電変換部に基づく第1信号の混入を防ぎ、より正確な信号を出力することができる。
(5)さらに、複数の第2出力部TH2が複数の第2信号を同時に出力する間、第1出力部TH1は第1信号を出力しないよう第1制御線(特殊水平選択線ZS)を介して制御される構成とすることで、第2光電変換部に基づく第2信号の出力への、第1光電変換部に基づく第1信号の混入を防ぎ、より正確な信号を出力することができる。
【0068】
(6)さらに、第1出力部TH1から出力線RWへの第1信号の出力、および第2出力部TH2から出力線RWへの第2信号の出力の少なくとも一方を制御するための第3制御線(垂直選択線VS)を備え、第1出力部TH1は、第1制御線(特殊水平選択線ZS)と第3制御線(垂直選択線VS)とを介して制御され、第2出力部TH2は、第2制御線(水平選択線HS)と第3制御線(垂直選択線VS)とを介して制御される構成とすることで、出力線RWから出力を読み出す画素30を、より任意に選択することができる。
(7)さらに、第1制御線(特殊水平選択線ZS)と第2制御線(水平選択線HS)とは、第1方向に設けられ、第3制御線(垂直選択線VS)は、第1方向と交差する第2方向に設けられる構成とすることで、出力線RWから出力を読み出す画素30の選択を、簡便に行うことができる。
【0069】
(8)さらに、第1光電変換部に入射する光の一部を遮光する遮光部を有する構成とすることで、入射光の第1光電変換部への入射角度と感度との関係を、入射光の第2光電変換部への入射角度と感度との関係とは異ならせることができる。
(9)さらに、第1出力部TH1は、焦点検出に用いる第1信号を出力し、第2出力部TH2は、画像生成に用いる第2信号を出力する構成とすることで、第1画素ZZを像面位相差合焦検出のための画素として使用することができる。
【0070】
(10)さらに、第1光電変換部は、第2光電変換部と異なる感度を有する光電変換部である構成とすることで、第1画素ZZと第2画素(撮像画素30c)のそれぞれに最適な感度を持たせることができる。
(11)さらに、第2光電変換部は、第1分光特性を有する第1フィルタを透過した光を光電変換する構成とすることで、撮像素子3に所望の分光感度を持たせることができる。
(12)さらに、第1光電変換部は、第1分光特性と異なる第2分光特性を有する第2フィルタを透過した光を光電変換する構成とすることで、第1画素(特殊画素ZZ)には、それに最適な分光感度を持たせることができる。
【0071】
(13)さらに、第1制御線(特殊水平選択線ZS)と第2制御線(水平選択線HS)とが接続され、第1出力部TH1から出力線RWへの第1信号の出力と、第2出力部TH2から出力線RWへの第2信号の出力を制御する制御部(選択トランジスタTV、TH1、TH2)を備える構成とすることで、第1出力部TH1から出力線RWへの出力の制御と、第2出力部TH2から出力線RWへの出力の制御とを、より簡便に行うことができる。
(14)さらに、制御部(選択トランジスタTV、TH1、TH2)は、第1光電変換部および複数の第2光電変換部を有する撮像部(画素上部30x)と積層されている構成としても良い。これにより、撮像部(画素上部30x)が配置される第1半導体基板7上に制御部(選択トランジスタTV、TH1、TH2)を配置する必要がなくなり、撮像部(画素上部30x)内の受光部31の面積および体積を十分な大きさに確保でき、撮像素子3の感度を向上することができる。
【0072】
(15)さらに、第1光電変換部および複数の第2光電変換部を有する撮像部(画素上部30x)と積層され、出力線RWから第1信号および第2信号の少なくとも1つを読み出す読出部ADCを備える構成としても良い。この構成では、読出部ADCが、撮像部(画素上部30x)を有する第1半導体基板7とは別の第2半導体基板8等に積層されて配置されるため、撮像部(画素上部30x)内の受光部31の面積および体積を十分な大きさに確保でき、撮像素子3の感度を向上することができる。
(16)さらに、読出部ADCは、第1信号および第2信号の少なくとも1つをアナログ信号からデジタル信号に変換する変換部である構成とすることにより、読出部ADCがデジタル信号を生成するため、読出部ADC以降の信号処理系の設計等が容易になる。
【0073】
(17)さらに、第1光電変換部および複数の第2光電変換部を有する撮像部(画素上部30x)と積層され、出力線RWから第1信号を読み出す第1読出部と、出力線RWから第2信号を読み出す第2読出部とを備える構成とすることもできる。この構成により、第1光電変換部と複数の第2光電変換部とを別々の読出部で読み出すことができるため、それぞれの画素に対して最適な読み出しを行うことができる。
(18)さらに、第1読出部は第1信号をアナログ信号からデジタル信号に変換する第1変換部であり、第2読出部は第2信号をアナログ信号からデジタル信号に変換する第2変換部である構成とすることができる。この構成により、第1光電変換部と複数の第2光電変換部との出力を別々のアナログデジタルコンバータで変換することができ、それぞれの画素に対して最適な読み出しを行うことができる。
【0074】
(19)さらに、第1出力部TH1と第2出力部TH2とは、選択トランジスタであり、第1制御線(特殊水平選択線ZS)と第2制御線(水平選択線HS)は、選択トランジスタを制御するための制御線である構成とすることができる。この構成により、簡便な構成で第1出力部TH1と第2出力部TH2とを形成することができる。
(20)実施形態の撮像装置は、以上の(1)から(19)のいずれかの構成の撮像素子3と、第2信号に基づいて画像データを生成する生成部4とを備えている。
この構成により、撮像素子3の出力線RWに接続された画素30のうち、任意の1つまたは複数の画素30の出力を選択して、その出力を出力線RWに出力させ、読み出すことができる。
【0075】
上述では、種々の実施形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。また、各実施形態および変形例は、それぞれ単独で適用しても良いし、組み合わせて用いても良い。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【0076】
次の優先権基礎出願の開示内容は引用文としてここに組み込まれる。
日本国特許出願2018年第99061号(2018年5月23日出願)
【符号の説明】
【0077】
1:撮像装置、2:撮像レンズ、3:撮像素子、4:生成部、5:レンズ駆動部、7:第1半導体基板、8:第2半導体基板、BC,BC1,BC2:画素ブロック、HC:水平制御部、VC:垂直制御部、画素30、Gr,Gb:G画素、R:R画素、B:B画素、Z1,Z2:特殊画素、VS,VS1~HS8:垂直選択線、HS,HS1~HS4:水平選択線、ZS:特殊水平選択線、PD:フォトダイオード、TX:転送トランジスタ、TR:リセットトランジスタ、TA:増幅トランジスタ、TV:垂直選択トランジスタ、TH1:特殊水平選択トランジスタ、TH2:水平選択トランジスタ、RW:読み出し線、ADC:読出部、31:感光部、73:カラーフィルタ
図1
図2
図3
図4
図5