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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】ワイヤハーネスの製造装置
(51)【国際特許分類】
   H01B 13/012 20060101AFI20231011BHJP
   H02G 1/06 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
H01B13/012 D
H02G1/06
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022177919
(22)【出願日】2022-11-07
(62)【分割の表示】P 2019089966の分割
【原出願日】2019-05-10
(65)【公開番号】P2023022048
(43)【公開日】2023-02-14
【審査請求日】2022-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 賢司
【審査官】神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-55974(JP,A)
【文献】特開2018-98028(JP,A)
【文献】特開2007-18870(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 13/012
H02G 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のディスプレイに長さ方向の大きさが実寸大の布線図を表示させ、前記布線図に沿って電線を布線しワイヤハーネスを製造するワイヤハーネスの製造装置であって、
布線する前記電線の位置を示す布線位置表示と、前記布線された電線への作業内容を示す作業内容表示とを、前記ディスプレイに表示させる表示制御部を備え、
前記布線位置表示は、布線する前記電線の識別コードを含み、
前記作業内容表示は、前記識別コードを読み取りできないように前記識別コード上に表示される、
ワイヤハーネスの製造装置。
【請求項2】
前記作業内容表示は、前記布線された電線の導通チェックを指示する導通チェック表示である、
請求項1に記載のワイヤハーネスの製造装置。
【請求項3】
前記導通チェック表示は、前記導通チェックを行う電線の色も提示する、
請求項2に記載のワイヤハーネスの製造装置。
【請求項4】
前記表示制御部は、前記導通チェック後に前記導通チェック表示を消去し、前記識別コードを読み取り可能に表示する、
請求項2に記載のワイヤハーネスの製造装置。
【請求項5】
前記作業内容表示は、前記布線位置表示の一部が視認可能となるように表示される、
請求項1に記載のワイヤハーネスの製造装置。

















【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤハーネスの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電車等の鉄道車両に用いられるワイヤハーネスは、複数の電線を束ねて構成されている。ワイヤハーネスを製造する際には、予め設定した電線長となるように各電線を切断し、各電線を実寸大の布線図に沿って布線し、布線した電線や電線束の所定位置に付属部品を取り付けてワイヤハーネスの組立てを行う(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1では、ディスプレイに実寸大の布線図(布線画像)を表示し、布線画像に沿って電線を布線する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2016/0064121A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電車等の鉄道車両に用いられるワイヤハーネスは、多数の電線を用いて構成される。そのため、誤配線等のミスを起こしにくいように作業をガイドして作業者をサポートし、作業性を向上させることが望まれる。
【0006】
そこで、本発明は、布線作業等の作業性の改善を図ったワイヤハーネスの製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、複数のディスプレイに長さ方向の大きさが実寸大の布線図を表示させ、前記布線図に沿って電線を布線しワイヤハーネスを製造するワイヤハーネスの製造装置であって、布線する前記電線の位置を示す布線位置表示と、前記布線された電線への作業内容を示す作業内容表示とを、前記ディスプレイに表示させる表示制御部を備え、前記布線位置表示は、布線する前記電線の識別コードを含み、前記作業内容表示は、前記識別コードを読み取りできないように前記識別コード上に表示される、ワイヤハーネスの製造装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、布線作業等の作業性の改善を図ったワイヤハーネスの製造装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施の形態に係るワイヤハーネスの製造装置の概略構成図である。
図2】作業台を示す図であり、(a)は分解斜視図、(b)は斜視図である。
図3】作業レシピ情報の一例を示す図である。
図4】(a)はディスプレイの表示例を示す図であり、(b)はその要部拡大図、(c)はアイコンの他の例を示す図である。
図5】(a)~(c)は、誘導表示を説明する図である。
図6】リングマークとマークテープを付した電線の端部を示す図である。
図7】導通チェック作業時の表示例を示す図である。
図8】進捗状況表示画面の一例である。
図9】ワイヤハーネスを製造する際の手順を示すフロー図である。
図10】ワイヤハーネスを製造する際の手順を示すフロー図である。
図11】ワイヤハーネスを製造する際の手順を示すフロー図である。
図12】作業履歴情報の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0011】
図1は、本実施の形態に係るワイヤハーネスの製造装置の概略構成図である。本実施の形態で製造するワイヤハーネスは、例えば、電車の機器間配線に用いられるものである。
【0012】
図1に示すように、ワイヤハーネスの製造装置10は、表示部141と当該表示部141の周囲に配置されたベゼル部142とを有する複数のディスプレイ14を並べて配置し、複数のディスプレイ14に実寸大の布線図(布線画像)143を表示させ、布線図143に沿って電線を布線しワイヤハーネスを製造する装置である。
【0013】
ワイヤハーネスの製造装置10は、布線する電線11を供給する電線供給装置12と、電線供給装置12から供給された電線11を切断する電線切断機13と、複数のディスプレイ14を並べて構成される作業台15と、電線供給装置12や電線切断機13の制御、及びディスプレイ14の表示制御等を行う制御装置16と、を備えている。
【0014】
電線11は、線状の導体の外周に絶縁体を被覆したものであるが、電線11は、例えば、LANケーブルのように、複数本の線状の導体の外周にそれぞれ絶縁体を被覆し、それらを外部シースで一括被覆し一体化したものであってもよい。ここで、絶縁体は、絶縁性の樹脂からなり、1層もしくは複数層であってもよい。外部シースは、絶縁体の間を埋めるように充実式押出しにより形成されてもよいし、チューブ状であってもよい。
【0015】
電線供給装置12は、例えば、電線11が巻き付けられたリール121と、リール121を回転可能に支持する支持部材122と、リール121から供給された電線11を保持してレール123上を走行し電線を搬送する(引き出す)搬送ロボット124と、を有している。リール121には、巻き付けられている電線11の品種を識別するための電線識別コード(不図示)が付されている。レール123は、作業台15の上方に設けられており、作業台15に固定されている。
【0016】
電線切断機13は、内蔵された切断刃(不図示)を用い、搬送ロボット124により引き出された電線11を切断する。支持部材122に支持されるリール121を変更することにより、布線する電線11の種類を変更できる。図示していないが、リール121の後段にはフィーダが設けられており、このフィーダによって引き出される電線11の長さを測長している。なお、搬送ロボット124を備えておらず、フィーダから送り出された電線11を人の手で引出してもよい。また、フィーダも備えておらず、リール121から人の手で電線11を引出してもよい。
【0017】
作業台15は、電線11の布線作業を行うための台であり、その上面に、実寸大の布線図143を表示するディスプレイ14が設けられている。鉄道車両用のワイヤハーネスは例えば30mと非常に長いため、作業台15は、複数のディスプレイ14を一列に並べて構成されている。ここでは、24台のディスプレイ14を一列に並べて作業台15を構成した。なお、作業台15に並べるディスプレイ14の数はこれに限定されない。また、ディスプレイ14の配置についても、図示のものに限定されず、製造するワイヤハーネスの形状に応じて適宜変更可能である。例えば、ディスプレイ14を縦横にマトリクス状に配置してもよい。
【0018】
ディスプレイ14は、例えば液晶ディスプレイ等からなる。図2(a),(b)に示すように、作業台15は、ディスプレイ14を載置するための凹状の収容部151aを有するフレーム151を有し、フレーム151の上方からディスプレイ14を収容部151aに収容して構成される。ディスプレイ14上には、ディスプレイ14の表示部141を保護するための板状の透明保護カバー144が設けられている。透明保護カバー144は、アクリル等の透明な部材からなる。電線切断機13で切断された電線11を、透明保護カバー144上で、ディスプレイ14に表示された布線図143に沿わせるように布線し、テープ巻き、保護材の装着等を適宜行うことで、ワイヤハーネスの製造が行われる。
【0019】
透明保護カバー144は、ディスプレイ14上に、表示部141とベゼル部142間の段差を覆うように設けられている。透明保護カバー144は、ディスプレイ14の表示部141に傷がつかないように保護する役割と、布線する電線11が表示部141とベゼル部142間の段差に干渉して電線11に傷がつくことを抑制する役割とを果たしている。
【0020】
複数のディスプレイ14に1枚の透明保護カバー144を設けてもよいが、この場合、傷ついた透明保護カバー144を交換する際に無駄が多くなり、また故障したディスプレイ14を交換する際にも手間がかかってしまう。そこで、本実施の形態では、ディスプレイ14毎に個別に透明保護カバー144を設けている。透明保護カバー144は、上方に取り外すことができる。透明保護カバー144を取り外すことで、ディスプレイ14も、フレーム151から上方に取り外すことができる。よって、作業スペースが狭い場合であっても、透明保護カバー144やディスプレイ14の交換が容易である。なお、ディスプレイ14がマトリクス状に配置されている場合であっても、透明保護カバー144を適用できる。
【0021】
ディスプレイ14の配列方向における透明保護カバー144の長さは、ディスプレイ14と略同等とされる。また、ディスプレイ14の配列方向と垂直な幅方向における透明保護カバー144の幅は、ディスプレイ14よりも若干大きくされる。幅方向においてディスプレイ14から突出した透明保護カバー144の両端部をフレーム151の縁部151bにねじ等により固定することで、透明保護カバー144がフレーム151に固定されている。なお、透明保護カバー144は、ディスプレイ14のベゼル部142に当接していてもよいし、当接していなくともよい。
【0022】
透明保護カバー144同士の接続部は、ベゼル部142上に位置することが望ましい。これは、透明保護カバー144同士の接続部が表示部141上にあると、後述するコードリーダ19によるコード読込みが困難となる場合があるためである。また、隣り合う透明保護カバー144同士の接続部には、透明な保護テープが設けられていてもよい。保護テープは、透明保護カバー144同士の接続部に、製造公差等により段差が発生したり、あるいは何らかの理由で透明保護カバー144の端部同士が離間してしまった場合に、布線する電線11が透明保護カバー144の端部に干渉して電線11に傷がついてしまうことを抑制する役割を果たす。
【0023】
作業者の目の疲労を抑制するために、透明保護カバー144は、波長380nm以上500nm以下のブルーライト光を減衰あるいは遮断するブルーライトカット層を有していてもよい。また、透明保護カバー144は、その表面に、外部照明等の照り返しを抑制するための反射抑制層を有していてもよい。
【0024】
制御装置16は、布線画像データ171、作業レシピ情報172等を記憶する記憶部17を有している。布線画像データ171は、ディスプレイ14に表示する布線図143の画像データである。作業レシピ情報172は、電線11の布線順序を時系列で並べたデータベースである。すなわち、作業レシピ情報172は、布線する全ての電線11の各種情報を、電線11の布線順にソートしたデータベースである。なお、これに限らず、電線11毎に布線順番が記憶してあればよく、データベース内において布線順にソートされていることは必須ではない。
【0025】
図3に示すように、作業レシピ情報172では、例えば、電線11の名称(Cable name)、電線11の電線長の設計値(Cut Length)、電線11の品種を表す製造番号(Cable P/N No.)が設定されている。また、作業レシピ情報172では、各電線11の両端部それぞれについて(From及びTo)、後述するアイコンの種類(Side Label Character)、後述するリングマークの番号(Ring mark)、端部の位置を示し接続先のエリア(接続先の機器等)を表すサイド(Side)等が設定されている。
【0026】
さらに、本実施の形態では、作業レシピ情報172は、後述する布線位置表示(識別コード)の表示位置を示す座標情報を含んでいる。作業レシピ情報172は、布線する電線11の両端部近傍の2つの座標情報を含んでいる。図3におけるX-From及びY-Fromは、布線する電線11の一端部における布線位置表示(識別コード)の表示位置を示すX座標及びY座標である。図3におけるX-To及びY-Toは、布線する電線11の他端部における布線位置表示(識別コード)の表示位置を示すX座標及びY座標である。なお、作業レシピ情報172の具体的な内容については、これに限定されるものではなく、適宜設定可能である。
【0027】
制御装置16は、作業台15のディスプレイ14の表示制御を行う表示制御部161と、電線11の切断制御を行う電線切断制御部162と、電線11の端部に取り付ける識別票をプリンタ18に印刷する印刷制御部163と、各電線11の導通チェック処理を行う導通チェック部164と、を有している。制御装置16には、作業台15のディスプレイ14、コードリーダ19、搬送ロボット124、電線切断機13、プリンタ18、及び導通チェック用のテスタ20が接続されている。
【0028】
表示制御部161は、記憶部17に記憶された布線画像データ171を基に、複数のディスプレイ14のそれぞれに実寸大の布線図143を表示する。表示制御部161から出力された布線画像データ171は、グラフィックカード167にて、2台のディスプレイ14毎に分割され、さらに、セパレータ168にて2分割されて、各ディスプレイ14の表示部141に表示される。
【0029】
また、本実施の形態では、表示制御部161は、作業レシピ情報172を参照して、ディスプレイ14に、電線11の布線順にしたがって布線位置表示を順次表示させるように構成されている。また、表示制御部161は、布線が終わった電線11に関する布線位置表示の表示を消去する。すなわち、表示制御部161は、現在、布線されている電線11に関する布線位置表示のみを表示する。布線位置表示は、布線する電線11の位置を作業者に知らせるための表示である。
【0030】
図4(a),(b)に示すように、本実施の形態では、布線位置表示145は、布線する電線11の識別コードとしてのバーコード146を含んでいる。
表示制御部161は、布線を行う電線11を特定可能なバーコード(ポップアップバーコード)を生成し、生成したバーコード146を含む布線位置表示145を、ディスプレイ14に表示する。バーコード146は、作業レシピ情報172の文字情報、例えばリングマークの番号の情報から生成される。また、バーコード146は、作業レシピ情報172に含まれる他の情報から生成されてもよく、複数の情報を含んでいてもよい。表示制御部161は、作業レシピ情報172を参照し、作業レシピ情報172の座標情報で示される表示位置に、布線図143上に重なるように、布線する電線11のバーコード146を含む布線位置表示145を表示させる。
【0031】
布線図143には、布線された状態の複数の電線11の電線画像11aが含まれる。電線11には端部が2つ存在するため、本実施の形態では、作業レシピ情報172内に電線11の両端部に対応する2つの座標情報が含むようにしている。表示制御部161は、2つの座標情報で示される表示位置、すなわち布線図143における電線11の両端部の付近に、それぞれ布線位置表示145を表示する。
【0032】
なお、作業レシピ情報172に予めバーコード146の画像情報を記憶させておき、その画像情報を取得して指定座標にバーコード146を含む布線位置表示145を表示するよう表示制御部161を構成してもよい。また、布線位置表示145に含まれる識別コードは、バーコード146に限らず、例えば二次元コード(QRコード(登録商標))であってもよい。
【0033】
なお、布線位置表示145が識別コード(バーコード146)を含むことは必須ではなく、布線位置表示145は、矢印等のマークやアイコン、文字等から構成されていてもよい。詳細は後述するが、本実施の形態では、識別コード(バーコード146)を読み込むことを作業開始や作業終了のトリガとしているが、布線位置表示145に識別コードを含めない場合には、例えば、ディスプレイをタッチパネルで構成して布線位置表示145を作業者がタッチすることを、作業開始や作業終了のトリガとすることができる。また、制御装置16に接続されたスイッチやマウス、キーボード等の入力装置を用い、当該入力装置により作業開始や作業終了のトリガを入力できるようにしてもよい。
【0034】
布線図143は、電線11の長さ(電線画像11aの長さ)が実寸大となるようにディスプレイ14に表示されている。なお、電線画像11aの太さについては、実寸より太くても、細くともよい。電線画像11aを実寸よりも太く表示することで、電線11を布線する際に電線画像11aが電線11により隠れてしまうことが抑制され、布線作業を行いやすくなる。
【0035】
さらに、本実施の形態では、布線位置表示145は、作業内容を示すアイコン146aを含んでいる。表示制御部161は、識別コードとしてのバーコード146と共に、当該バーコード146の近傍に作業内容を示すアイコン146aを布線位置表示145として表示する。例えば、図4(a),(b)に示すハサミを模したアイコン146aは、電線11の供給及び切断の作業を表し、コードリーダ19によりバーコード146を読み込むと、電線11の供給及び切断が行われることを示している。また、図4(c)に示すコードリーダ19を模したアイコン146aは、布線後にコードリーダ19によりバーコード146を読み込むことを要求する表示となっている。バーコード146と共に作業内容を示すアイコン146aを表示することで、作業者が行うべき作業を直観的に判断することが可能となり、作業効率の向上に寄与する。
【0036】
さらにまた、本実施の形態では、表示制御部161は、布線位置表示145の表示を切替える際に、現在の布線位置表示145を消去すると共に、次の布線位置表示145を表示し、かつ、次の布線位置表示145の表示位置を作業者に知らせるための誘導表示を表示するよう構成されている。例えば、図5(a)の状態で電線11の布線作業が完了し、コードリーダ19によりバーコード146を読み込むと、図5(b)に示すように、現在の布線位置表示145が消去され、次に布線する電線11の端部近傍に布線位置表示145が表示される。この際に、本実施の形態では、消去した布線位置表示145の表示位置から、次の布線位置表示145の表示位置に至る矢印147aが、誘導表示147として表示される。
【0037】
図5(b)の例では、消去した布線位置表示145の表示位置から、次の布線位置表示145の表示位置まで直線状の矢印147aを表示したが、これに限らず、例えば図5(c)に示すように、布線図143における電線画像11aを迂回するように矢印147aを表示してもよい。図5(c)では、一例として、ディスプレイ14の図示上側の縁部を通るように矢印147aを表示した場合を示しているが、矢印147aの形状、経路等は適宜変更可能である。作業者が判別しやすいように、矢印147aには、布線図143の背景と異なる色で表示されるとよい。なお、誘導表示147は、矢印147aに限らず、例えば文字によりディスプレイ14の番号等を表示するものであってもよく、作業者に次のバーコード146の表示位置を示唆できるものであればどのような表示であってもよい。
【0038】
誘導表示147を表示することで、例えば現在作業しているディスプレイ14から離れたディスプレイ14に次の布線位置表示145が表示されるような場合であっても、作業者が直感的に次の布線位置表示145の位置を認識でき、作業効率の向上に寄与する。なお、誘導表示147は、消去する布線位置表示145を表示しているディスプレイ14と、次の布線位置表示145を表示するディスプレイ14とが異なるときのみ、表示するようにしてもよい。
【0039】
また、表示制御部161は、布線位置表示145を表示しているディスプレイ14の所定の領域に、当該ディスプレイ14に布線位置表示145を表示していることを示す作業中表示148を表示するよう構成されている。本実施の形態では、図4,5に示されるように、ディスプレイ14の図示上側の縁部設定された作業中表示領域148aに、作業中表示148を表示するように構成している。作業中表示148は、例えば、作業中表示領域148aの色を布線図143と異なる色とする(あるいは当該異なる色を点滅表示させる)ことで実現される。
【0040】
ディスプレイ14に作業中表示148を表示することで、作業者が作業すべきディスプレイ14を容易に把握でき、作業の効率化が図れる。また、ディスプレイ14に作業中表示148を表示することで、例えば工場の監視カメラ等で作業台15を撮像した際に、現在作業が行われているディスプレイ14を容易に特定することが可能になり、管理者が作業状況を把握し易くなる。
【0041】
本実施の形態では、後述する導通チェック作業時の際の作業中表示148の色を、布線作業時等の他の作業時の作業中表示148の色と異ならせるようにした。さらに、導通チェック作業時の際の作業中表示148中に、導通チェックを示す文字情報(Check Conductivity等の文字情報)を挿入するようにした(図7参照)。これは、導通チェック作業は電線11の両端部において同時に作業する必要があるために、電線11の両端部で作業をしている作業者のそれぞれに導通チェック作業を行うことを認識させ、作業者に速やかに作業を行うことを促すためである。
【0042】
作業者が布線する電線11の電線画像11aを識別し易くするために、表示制御部161は、布線する電線画像11aの端部のみ、あるいは布線する電線画像11aの全体を、他の電線画像11aの色と異なる色で表示するようにしてもよい。また、作業者が電線11の分岐位置を認識し易くするために、布線する電線画像11aの分岐部分の色を、他の電線画像11aと異なる色で表示するようにしてもよい。さらに、布線図143における各電線画像11aの色を、布線前、布線作業中、布線後で異なる色に表示するようにしてもよい。
【0043】
電線切断制御部162は、電線供給装置12及び電線切断機13を制御し、電線11を指定の長さに切断する制御を行う。電線切断制御部162は、作業レシピ情報172から、電線長の設計値を取得し、電線11を搬送ロボット124によって所定長さ引き出し、フィーダで測長した電線11の長さが、作業レシピ情報172の電線長の設計値と等しくなったときに、電線切断機13により引き出した電線11を切断することで、電線長の設計値で指定された長さの電線11を得る。
【0044】
印刷制御部163は、電線11の端部に取り付ける識別票をプリンタ18に印刷する。本実施の形態では、電線11の両端に識別票を取り付けるため、作業台15の両端部にそれぞれプリンタ18を配置している。また、本実施の形態では、プリンタ18を用いて、識別票としてのリングマーク、及び、電線11を特定可能な二次元コード(QRコード(登録商標))が付されたマークテープを印刷する。なお、コードリーダ19とテスタ20についても、電線11の両端で作業ができるように、2つずつ備えられている。
【0045】
図6に示すように、プリンタ18で印刷されたリングマーク181及びマークテープ182は、各電線11の両端部にそれぞれ付される。本実施の形態では、マークテープ182に二次元コード182aを印刷しているが、マークテープ182にバーコードを印刷してもよい。また、電線11の分岐部分の近傍には、当該分岐部分から延出された電線11の接続先のエリアを示すエリアラベルテープ183が取り付けられる。エリアラベルテープ183には、マークテープ182と同様に、エリアラベル接続先のエリアを特定可能な二次元コード183aが印刷されている。マークテープ182及びエリアラベルテープ183は、二次元コード182a,183aが印刷された粘着シールであり、その一部を電線11に巻き付けるようにして電線11に取り付けられる。マークテープ182の二次元コード182aは、作業レシピ情報172の文字情報から生成される。また、二次元コード182aは、作業レシピ情報172に含まれる複数の情報も含んでいてもよい。
【0046】
リングマーク181は、リング状の部材であり、内周に電線11を挿入することで電線11に取り付けられる。本実施の形態では、リングマーク181の内径は電線11の外径よりも大きく形成され、電線11の長手方向に移動可能に取り付けられている。リングマーク181よりも電線11の端部側にマークテープ182が位置することにより、電線11の長手方向に移動可能なリングマーク181が電線11の端部より抜けてしまうことが抑制されている。
【0047】
なお、本実施の形態では、識別票としてリングマーク181及びマークテープ182を用いたが、例えばリングマーク181を省略してマークテープ182のみとしてもよい。また、識別票として、ICタグ、RFIDタグ等を用いることも当然に可能である。さらに、マークテープ182、リングマーク181、及びエリアラベルテープ183に印刷される情報は、電線11の外周上(外部シースの外周上)に印刷されていてもよい。
【0048】
導通チェック部164は、電線11の布線後に各電線11の導通をチェックするものであり、電線11の両端部において、電線11の導体にテスタ20のプローブを接触させた際の導体抵抗を求め、導体抵抗が所定の正常範囲内にあるかを判定することで、導通チェックを行うものである。本実施の形態では、導通チェック部164は、電線11の布線後に、表示制御部161を介してディスプレイ14に導通チェックの指示を表示し、導通チェック後に表示を消去するように構成されている。
【0049】
図7に示すように、導通チェック表示146bは、布線位置表示145のバーコード146と一部重なり合うように表示され、布線位置表示145の位置は作業者が確認できるものの、バーコード146の読み取りができない状態とされる。これにより、導通チェック前にバーコード146の読み取りがなされ次工程へと進んでしまうことが抑制される。また、布線位置表示145の一部が作業者に視認できるため、導通チェック後のバーコード146の読み取りをスムーズに行うことが可能になる。本実施の形態では、導通チェック表示146bとして、「Check Conductivity, black」といった表示を行っており、導通チェックを行う電線11の色(外皮の色、ここではblack)を提示することで、導通チェックの際のミスの抑制を図っている。
【0050】
図1及び図4(a)に示されるように、最も基準端部側に配置されたディスプレイ14には、製造するワイヤハーネスの情報や、作業者の情報、製造手順等を含む製造情報が表示される製造情報画面143aが表示され、ワイヤハーネスの画像は表示されないようになっている。この製造情報画面143aは、布線画像データ171の一部であってもよいし、布線画像データ171とは別に作成されたものであってもよい。
【0051】
また、制御装置16は、コードリーダ19によりバーコード146が読まれた時刻を進捗管理情報173として記憶部17に記憶させる時刻記憶部165を有している。進捗管理情報173は、後述する管理用サーバ21に送信され、進捗情報の管理に用いられる。
【0052】
また、制御装置16は、コードリーダ19により読み込まれた識別票(マークテープ182の二次元コード182a)のコード情報と、ディスプレイ14に表示された識別コード(バーコード146)のコード情報とが対応しているかを判定する対応判定部166を備えている。本実施の形態では、マークテープ182の二次元コード182aのコード情報と、ディスプレイ14に表示されたバーコード146のコード情報とを一致させるようにしており、対応判定部166は、コードリーダ19により読み込んだ二次元コード182aのコード情報と、バーコード146のコード情報とが一致しているかを判定するように構成されている。
【0053】
対応判定部166は、判定の結果、二次元コード182aとバーコード146のコード情報が一致しなかった場合には、表示制御部161を介して、ディスプレイ14にアラート情報を表示するように構成されている。なお、例えば作業台15の近傍に音や光等により警報を発する警報装置を備え、二次元コード182aとバーコード146コード情報が一致しなかった場合に警報装置を作動させるように対応判定部166を構成してもよい。
【0054】
時刻記憶部165は、時計機能を内蔵しており、電線11を布線する毎に、電線11を布線した後の時刻を記憶部17に記憶させる。本実施の形態では、時刻記憶部165は、コードリーダ19により識別コード(バーコード146)が読まれた時刻を記憶部17に記憶させる。時刻記憶部165は、対応判定部166の判定の結果、二次元コード182aのコード情報と、バーコード146のコード情報とが一致していると判定されたときに、バーコード146が読まれた時刻を記憶部17に進捗管理情報173として記憶する。
【0055】
なお、これに限らず、対応判定部166によって、二次元コード182aのコード情報とバーコード146のコード情報とが一致していると判定された時刻を、識別コードが読まれた時刻として記憶するようにしてもよい。つまり、「識別コードが読まれた時刻」とは、厳密に識別コードが読み込まれた時刻である必要はなく、識別コードが読まれたことにより発生する所定の判定処理等(本実施の形態においては、二次元コード182aのコード情報とバーコード146のコード情報とが一致していると判定する処理)が終了した時刻を、「識別コードが読まれた時刻」として記憶してもよい。
【0056】
さらに、時刻記憶部165は、上述のようにディスプレイ14がタッチパネルから構成され、布線位置表示145のタッチ操作が作業開始や作業終了のトリガとして設定されている場合には、布線位置表示145がタッチされた時刻を記憶部17に記憶させるように構成されていてもよい。
【0057】
また、ワイヤハーネスの製造装置10は、制御装置16と相互に通信可能に設けられた管理用サーバ21を備えている。図1では、制御装置16を1つのみ示しているが、実際には、制御装置16は、製造ライン毎(作業台15毎)に設けられており、管理用サーバ21は、各製造ラインの制御装置16と相互に通信可能に設けられている。
【0058】
管理用サーバ21は、布線画像データの作成、及び進捗情報の管理を行うものであり、演算素子、メモリ、インターフェイス、ハードディスク、ソフトウェア等を適宜組み合わせて実現されている。管理用サーバ21の記憶部22には、工場内で製造する全ての種類のワイヤハーネスの布線画像データ171及び作業レシピ情報172が記憶されている。各製造ラインの制御装置16には、当該製造ラインに割り振られたワイヤハーネスの布線画像データ171及び作業レシピ情報172が、管理用サーバ21より送信される。
【0059】
管理用サーバ21は、進捗状況管理部211を有している。進捗状況管理部211は、制御装置16の記憶部17に記憶された時刻、すなわち進捗管理情報173を取得し、取得した進捗管理情報173を管理用サーバ21の記憶部22に記憶すると共に、進捗管理情報173を基にワイヤハーネスの製造の進捗状況を求め、求めた進捗状況を管理用表示器23に表示する。本実施の形態では、管理用表示器23として、管理用サーバ21に取り付けられたモニタを用いたが、管理用サーバ21とは別体に設けられたモニタ、例えば工場等に設けられた大画面のモニタを、管理用表示器23として用いてもよい。
【0060】
より具体的には、進捗状況管理部211は、進捗管理情報を基に、各製造ラインにおける布線済みの電線11の本数、未布線の電線11の本数、布線する電線11の総本数に対する布線済みの電線11の本数の割合、予め設定された標準作業時間(目標作業時間)、作業開始からの経過時間等を求め、進捗状況表示画面として管理用表示器23に表示する。
【0061】
図8は、進捗状況表示画面の一例である。図8に示すように、進捗状況表示画面51では、例えば、工場の製造ラインごとに、進捗状況を表示するように構成されている。ここでは、一例として、ラインA,Bの2つの製造ラインの個別進捗状況表示部52を表示する場合を示しているが、表示する製造ライン数はこれに限定されない。また、各個別進捗状況表示部52の表示形態についても、例えば棒グラフや円グラフを用いて進捗状況を表示する等、様々な表示形態を採用することができる。各個別進捗状況表示部52の表示内容についても、図示のものに限定されず、例えば、標準作業時間(目標作業時間)に対する経過時間の割合を表示する等、適宜設定可能である。
【0062】
(制御装置16における制御フロー)
図9~11は、ワイヤハーネスを製造する際の手順を示すフロー図である。
【0063】
図9~11に示すように、まず、ステップS1にて、表示制御部161が、記憶部17に記憶された布線画像データ171を基に、ディスプレイ14に布線図143を表示する。その後、ステップS10にて、コードリーダ19で作業者IDをスキャンする。作業者IDとは、作業者毎に割り当てられた作業者を特定するためのコードであり、例えば名札等にバーコードとして表示されている。スキャンした作業者IDの情報は、記憶部17に記憶される。この際、表示制御部161が、ディスプレイ14に、作業者IDを読み込む指示を表示するようにしてもよい。この場合、表示制御部161は、作業者IDを読み込む指示を表示しているディスプレイ14に作業中表示148を表示する。作業者IDがスキャンされると、表示制御部161が、最初に布線する電線11のバーコード146を含む布線位置表示145をディスプレイ14に表示する。布線位置表示145は、布線する電線11の両端部それぞれに表示される。表示制御部161は、布線位置表示145を表示しているディスプレイ14に作業中表示148を表示する。
【0064】
その後、ステップS11にて、作業者は、ディスプレイ14に表示された最初のバーコード146(最初の布線位置表示145に含まれるバーコード146)をスキャンする。その後、ステップS12にて、最初に布線する電線11の製造番号の二次元コードをスキャンする。具体的には、リール121に付された電線識別コードをコードリーダ19で読み込む。この際、電線識別コードの情報に含まれる電線11の製造番号が、作業レシピ情報172における電線11の製造番号と一致していない場合、表示制御部161が、ディスプレイ14に、リール交換指示を表示する等してもよい。
【0065】
その後、ステップS13にて、ディスプレイ14に表示された最初のバーコード146を再度スキャンすると、ステップS14にて、電線切断制御部162が、電線供給装置12及び電線切断機13を制御して、第n電線11を作業レシピ情報172に設定された電線長に切断する。また、ステップS14と並行して、ステップS15a,15bにて、電線11の一端側と他端側の両方のプリンタ18にて、リングマーク181とマークテープ182が印刷される。作業者は、切断された電線11を、ディスプレイ14に表示された布線画像データ171、及びバーコード146を目印にして配置すると共に、電線11の両端部にリングマーク181とマークテープ182を取り付ける。
【0066】
その後、ステップS16にて、導通チェックを行う。表示制御部161は、導通チェック時用の作業中表示14を表示する。また、導通チェック部164が、表示制御部161を介して、ディスプレイ14に、導通チェック表示146bを表示する(図7参照)。作業者は、電線11の両端において、テスタ20のプローブを電線11の導体に接触させる。導通チェック部164は、テスタ20の出力を基に、電線11の導電率を演算し、演算した導電率が所定の正常値範囲に含まれる場合に、導通チェックが合格であると判定する。導通チェックが不合格であった場合、導通チェック部164が、表示制御部161を介して、ディスプレイ14にアラート情報を表示してもよい。導通チェックで不合格となった場合、再度ステップS16に戻り導通チェックを行う。また、ステップS16の導通チェックにて所定回数不合格を繰り返した場合には、ステップS13に戻り、電線11の布線をやり直すように構成してもよい。この場合、導通チェックに不合格となった電線11は破棄される。
【0067】
ステップS16で導通チェックに合格した後、電線11の両端部のそれぞれにおいて、マークテープ182の二次元コード182aのスキャン(ステップS17a,S17b)、及び、ディスプレイ14に表示されたエリアラベルのバーコード146のスキャンを行う(ステップS18a,S18b)。すると、プリンタ18によりエリアラベルテープ183の印刷が行われる(ステップS19a,S19b)ので、作業者は、エリアラベルテープ183を電線11の所定箇所に取り付けた後、エリアラベル183の二次元コード183aをスキャンする(ステップS20a,S20b)。以上により、最初の電線11の布線作業が完了する。
【0068】
その後、ステップS21にて、次に布線する電線11の切断が行われると共に、ステップS22a,22bにて、当該電線11のリングマーク181とマークテープ182の印刷が行われる。また、この際、布線する電線11の両端部の近傍にバーコード146が表示されると共に、誘導表示147としての矢印147aが表示される。作業者は、切断された電線11を、ディスプレイ14に表示された布線画像データ171、及びバーコード146を目印にして配置すると共に、電線11の両端部にリングマーク181とマークテープ182を取り付ける。その後、ステップS23にて、導通チェックを行う。導通チェックで不合格となった場合、再度ステップS23に戻り導通チェックを行う。
【0069】
ステップS23で導通チェックに合格した後、ステップS24にて、制御装置16は、作業レシピ情報172を参照し、導通チェックを行った電線11が布線する最後の電線11であるかを判定する。ステップS24でYESと判定された場合、ステップS29に進む。
【0070】
ステップS24でNOと判定された場合、ステップS25にて、制御装置16は、作業レシピ情報172を参照し、次に布線する電線11が、現在布線している電線11、すなわちステップS23で導通チェックを行った電線11と同じエリアであるか(エリアラベルが同じであるか)を判定する。ステップS25でYESと判定された場合、ステップS21,S22a,及びS22bへと戻り、次の電線11の布線作業を行う。
【0071】
ステップS25でNOと判定された場合、表示制御部161は、ディスプレイ14における電線11の両端部の近傍に、それぞれエリアラベルのバーコード146を表示する。作業者は、電線11の両端部のそれぞれにおいて、ディスプレイ14に表示されたエリアラベルのバーコード146のスキャンを行う(ステップS26a,S26b)。すると、プリンタ18によりエリアラベルテープ183の印刷が行われる(ステップS27a,S27b)ので、作業者は、エリアラベルテープ183を電線11の所定箇所に取り付けた後、エリアラベル183の二次元コード183aをスキャンする(ステップS28a,S28b)。その後、ステップS21,S22a,及びS22bへと戻り、次の電線11の布線作業を行う。
【0072】
全ての電線11の布線を終えた後、ステップS29にて、作業者は、ディスプレイに表示されたP/Nラベルのバーコードをスキャンする。なお、ステップS29に先立ち、表示制御部161は、ディスプレイ14にP/Nラベルのバーコードを表示する。作業者がP/Nラベルのバーコードをスキャンすると、ステップS30にて、プリンタ18によりP/Nラベルが印刷される。なお、P/Nラベルとは、ワイヤハーネスの製造番号(part number)を表すラベルであり、作業レシピ情報172に含まれる製造番号、製品名、図面番号等が文字情報及び二次元コードとして印刷されたものである。P/Nラベルは、ワイヤハーネス全体を識別するために用いられるものであるから、ワイヤハーネスの幹部に取り付けられる。作業者は、P/Nラベルをワイヤハーネスの所定箇所に取り付けた後、ステップS31にて、P/Nラベルの二次元コードをスキャンする。
【0073】
その後、表示制御部161が、ディスプレイ14に、テープ巻き作業開始のバーコードを表示する。作業者は、ステップS32にて、ディスプレイ14に表示されたテープ巻き作業開始のバーコードをスキャンする。このとき、テープを巻く位置がディスプレイ14に表示される。テープを巻く位置は、例えば、色または枠等で表示される。また、表示制御部161が、ディスプレイ14に、テープ巻き作業終了のバーコードを表示する。作業者は、テープ巻き作業を行った後、ステップS33にて、テープ巻き作業終了のバーコードをスキャンする。
【0074】
作業者がテープ巻き作業終了のバーコードをスキャンすると、ステップS34にて、誤った電線の発見プログラム(Incorrect wire detection program)が開始される。誤った電線の発見プログラムとは、作業履歴情報(進捗管理情報173)を基に、予め設定した標準作業時間に対して作業時間が極端に早い、または遅いことがないかをチェックし、作業順の誤りや作業の抜けをチェックするプログラムである。
【0075】
その後、表示制御部161が、ディスプレイ14に、保護材装着作業開始のバーコードを表示する。作業者は、ステップS35にて、ディスプレイ14に表示された保護材装着作業開始のバーコードをスキャンする。このとき、保護材を装着する位置がディスプレイ14に表示される。保護材を装着する位置は、例えば、色または枠等で表示される。また、表示制御部161が、ディスプレイ14に、保護材装着作業終了のバーコードを表示する。作業者は、保護材装着作業を行った後、ステップS36にて、保護材装着作業終了のバーコードをスキャンする。
【0076】
その後、表示制御部161が、ディスプレイ14に、検査作業開始のバーコードを表示する。作業者は、ステップS37にて、ディスプレイ14に表示された検査作業開始のバーコードをスキャンする。作業者は、所定の検査作業を行った後、ステップS38にて、検査作業終了のバーコードをスキャンする。以上により、ワイヤハーネスが得られる。
【0077】
上記各ステップにおいてバーコード146や二次元コード等をスキャンした時刻は、時刻記憶部165により、進捗管理情報173として記憶部17に記憶される。進捗状況管理部211は、進捗管理情報173を基に、進捗状況表示画面51の進捗情報を適宜更新する。例えば、進捗状況管理部211は、バーコード146や二次元コード等がスキャンされる度に進捗情報を更新してもよいし、適宜な時間間隔で進捗情報を更新してもよい。
【0078】
また、記憶部17あるいは記憶部22に記憶された進捗管理情報173を基に、作業履歴情報を作成し記憶するようにしてもよい。作業履歴情報は、作業の履歴や作業にかかった時間をまとめたデータログである。例えば図12に示すように、作業履歴情報174は、端部の位置を示し接続先のエリア(接続先の機器等)を表すSide、電線11や作業内容を表すItem/Operation、時刻を表すDate、作業内容の詳細等を示すAdditional Info、電線長を表すlength、開始・終了・確認等のスキャン内容、あるいは導通チェック時の導電率の測定結果等を表すScanned、作業時間を表すTime、その他付加情報を表すMore Info等の情報を含んでいる。図16において、Part Numberはワイヤハーネスの製造番号、Startはワイヤハーネスの製造開始時刻、Finishはワイヤハーネスの製造終了時刻、Operatorsは作業者ID、Totalはワイヤハーネスの製造にかかった時間を表している。なお、作業履歴情報174が含む情報については、適宜変更可能である。
【0079】
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明したように、本実施の形態に係るワイヤハーネスの製造装置10では、作業レシピ情報172は、布線位置表示145の表示位置を示す座標情報を含み、表示制御部161は、ディスプレイ14の座標情報で示される表示位置に、布線位置表示145を表示させる。
【0080】
これにより、布線する電線11の端部に近い位置に布線位置表示145を表示するなど、布線する電線11毎に布線位置表示145の表示位置を設定することが可能になる。作業者は、布線位置表示145の表示位置を目安に電線11の布線を行うことが可能になり、これにより、布線作業等を行う際の作業性が大きく改善すると共に、布線間違いを抑制できる。電車等の鉄道車両に用いられるワイヤハーネスは、多数の電線を用いて構成されるため、布線する電線11毎に布線位置表示145の表示位置を変え、作業者を適切にナビゲートすることで、布線作業等を効率よく行うことが可能となり、ワイヤハーネスを効率的に製造することが可能になる。また、作業レシピ情報172で設定された布線順に応じて、布線位置表示145(すなわち作業指示)が表示されるため、作業順番を標準化し、作業者の経験やスキルに依らず、作業の効率化を図ることができる。
【0081】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0082】
[1]複数のディスプレイ(14)に長さ方向の大きさが実寸大の布線図(143)を表示させ、前記布線図(143)に沿って電線(11)を布線しワイヤハーネスを製造するワイヤハーネスの製造装置(10)であって、前記電線(11)の布線順序を特定可能なデータベースである作業レシピ情報(172)を参照し、前記ディスプレイ(14)に、布線する前記電線(11)の位置を示す布線位置表示(145)を、布線順にしたがって順次表示させる表示制御部(161)を備え、前記作業レシピ情報(172)は、前記布線位置表示(145)の表示位置を示す座標情報を含み、前記表示制御部(161)は、前記ディスプレイ(14)の前記座標情報で示される表示位置に、前記布線位置表示(145)を表示させる、ワイヤハーネスの製造装置(10)。
【0083】
[2]前記作業レシピ情報(172)は、布線する前記電線(11)の両端部近傍の2つの前記座標情報を含み、前記表示制御部(161)は、前記ディスプレイ(14)の2つの前記座標情報で示される表示位置に、それぞれ前記布線位置表示(145)を表示させる、[1]に記載のワイヤハーネスの製造装置(10)。
【0084】
[3]前記布線位置表示(145)が、布線する前記電線(11)の識別コード(146)を含む、[1]または[2]に記載のワイヤハーネスの製造装置(10)。
【0085】
[4]前記識別コード(146)が読まれた時刻を記憶部(17)に記憶させる時刻記憶部(165)を備えた、[3]に記載のワイヤハーネスの製造装置(10)。
【0086】
[5]前記ディスプレイ(14)がタッチパネルから構成され、前記布線位置表示(145)がタッチされた時刻を記憶部(17)に記憶させる時刻記憶部(165)を備えた、
請求項1乃至3の何れか1項に記載のワイヤハーネスの製造装置。
【0087】
[6]前記表示制御部(161)は、前記布線位置表示(145)を切替える際に、現在の前記布線位置表示(145)を消去すると共に、次の前記布線位置表示(145)を表示し、かつ、次の前記布線位置表示(145)の位置を作業者に知らせるための誘導表示(147)を表示する、[1]乃至[5]の何れか1項に記載のワイヤハーネスの製造装置(10)。
【0088】
[7]前記誘導表示(147)は、消去した前記布線位置表示(145)の表示位置から、次の前記布線位置表示(145)の表示位置に至る矢印(147a)からなる、[6]に記載のワイヤハーネスの製造装置(10)。
【0089】
[8]前記表示制御部(161)は、前記布線位置表示(145)を表示している前記ディスプレイ(14)の所定の領域に、当該ディスプレイ(14)に前記布線位置表示(145)を表示していることを示す作業中表示(148)を表示する、[1]乃至[7]の何れか1項に記載のワイヤハーネスの製造装置(10)。
【0090】
[9]前記布線位置表示(145)は、作業内容を示すアイコン(146a)を含む、[1]乃至[8]の何れか1項に記載のワイヤハーネスの製造装置(10)。
【0091】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。
【0092】
例えば、上記実施の形態では、作業中表示148により作業中(バーコード146を表示中)のディスプレイ14を特定できるようにしたが、これに限らず、例えば、作業中のディスプレイ14の輝度を高く(明るく)し、作業中でないディスプレイ14の輝度を低く(暗く)することで、作業中のディスプレイ14を特定できるようにしてもよい。また、各ディスプレイ14に設けたLED等の発光装置を発光させることで、作業中のディスプレイ14を特定できるようにしてもよい。
【0093】
また、上記実施の形態では、鉄道車両用のワイヤハーネスを製造する場合について説明したが、これに限らず、鉄道車両以外の用途のワイヤハーネスも製造可能である。
【符号の説明】
【0094】
10…ワイヤハーネスの製造装置
11…電線
14…ディスプレイ
143…布線図
143a…製造情報画面
145…布線位置表示
146…バーコード(識別コード)
146a…アイコン
146b…導通チェック表示
147…誘導表示
147a…矢印
148…作業中表示
148a…作業中表示領域
16…制御装置
161…表示制御部
165…時刻記憶部
171…布線画像データ
172…作業レシピ情報
211…進捗状況管理部






図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12