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特許7364115水性樹脂組成物、水性塗料及び該水性塗料で塗装された物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】水性樹脂組成物、水性塗料及び該水性塗料で塗装された物品
(51)【国際特許分類】
   C08L 51/06 20060101AFI20231011BHJP
   C08F 255/02 20060101ALI20231011BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20231011BHJP
   C09D 151/06 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
C08L51/06
C08F255/02
C09D5/02
C09D151/06
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023508875
(86)(22)【出願日】2022-03-03
(86)【国際出願番号】 JP2022009015
(87)【国際公開番号】W WO2022202172
(87)【国際公開日】2022-09-29
【審査請求日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】P 2021048408
(32)【優先日】2021-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【弁理士】
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】岡田 朋大
(72)【発明者】
【氏名】大水 聡一郎
(72)【発明者】
【氏名】向井 隆
【審査官】谷合 正光
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-036076(JP,A)
【文献】特開平11-269206(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0235160(US,A1)
【文献】特開2014-185399(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 51/06
C08F 255/02
C09D 5/02
C09D 151/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン(A)及び不飽和単量体混合物(B)の反応物であるポリプロピレン変性アクリル樹脂と、水性媒体とを含有する水性樹脂組成物であって、前記ポリプロピレン(A)がホモポリマーであり、前記ポリプロピレン(A)の融点が40~120℃であり、前記不飽和単量体混合物(B)がカルボキシル基を有する不飽和単量体(b1)を含むものであり、前記不飽和単量体(b1)が、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、β-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルサクシネート、及び2-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸からなる群より選ばれる1以上の不飽和単量体であり、前記ポリプロピレン変性アクリル樹脂の酸価が20~80mgKOH/gであることを特徴とする水性樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリプロピレン変性アクリル樹脂の分子量分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が5~20である請求項1記載の水性樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリプロピレン(A)と前記不飽和単量体混合物(B)との質量比(A/B)が10/90~60/40である請求項1又は2記載の水性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項記載の水性樹脂組成物を含有することを特徴とする水性塗料。
【請求項5】
請求項4記載の水性塗料で塗装されたことを特徴とする物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性樹脂組成物、水性塗料及び該水性塗料で塗装された物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アクリル樹脂は、耐候性、柔軟性、強度、接着性等に優れていることから、塗料、インキ、接着剤、合成皮革等の用途に広く使用されている。特に、塗料用途においては、自動車、家庭電化製品、建材等の分野で、各種基材(例えば、金属、木材、紙、プラスチック)を塗装する塗料のベース樹脂として、それぞれの要求性能に併せたアクリル樹脂が開発されている。
【0003】
一方、プラスチック成形品としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン樹脂を素材としたものが、軽量であることと成形のしやすさから、多用されている。しかしながら、ポリエチレンやポリプロピレンは、極性が非常に小さいため、アクリル樹脂では十分な密着性を発現できないという問題があった。
【0004】
更に、近年は環境規制の厳格化に伴い、塗装工程で排出される揮発性有機化合物、所謂「VOC」の削減が強く求められている。この結果、従来用いられてきた有機溶剤を溶媒とする溶剤系塗料は使用が難しくなってきており、低VOCである水性塗料への代替の動きが全世界で顕著である。
【0005】
上述したポリエチレンやポリプロピレン基材への密着を目的として、プロピレン―エチレン及びまたはブテン共重合物したポリオレフィンに、さらにアクリル変性した樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この樹脂組成物を用いた塗膜は、オレフィン基材との密着性は向上するものの、電子機器などに使用されるポリカーボネートなどの他のプラスチックやアルミへの密着性が低いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2004-307849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、貯蔵安定性に優れ、各種基材との付着性に優れる塗膜を得ることができる水性樹脂組成物、塗料及び該塗料で塗装された物品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記の課題を解決するため鋭意研究した結果、特定のポリプロピレンと、不飽和単量体混合物との反応物であるポリプロピレン変性アクリル樹脂と水性媒体とを含有する水性樹脂組成物が、貯蔵安定性に優れ、各種基材との付着性に優れる塗膜を得られることを見出し、発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は、ポリプロピレン(A)及び不飽和単量体混合物(B)の反応物であるポリプロピレン変性アクリル樹脂と、水性媒体とを含有する水性樹脂組成物であって、前記ポリプロピレンがホモポリマーであり、前記ポリプロピレン変性アクリル樹脂の酸価が20~80mgKOH/gであることを特徴とする水性樹脂組成物に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の水性樹脂組成物は、貯蔵安定性に優れ、各種基材との付着性に優れる塗膜を得られることから、携帯電話、スマートフォン、タブレット端末、パソコン、デジタルカメラ、ゲーム機等の電子機器の筐体;テレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコン等の家電製品の筐体;自動車バンパー、自動車や鉄道車輌等の各種車輌の内装材などの各種物品を塗装する塗料に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の水性樹脂組成物は、ポリプロピレン(A)及び不飽和単量体混合物(B)の反応物であるポリプロピレン変性アクリル樹脂と、水性媒体とを含有する水性樹脂組成物であって、前記ポリプロピレンがホモポリマーであり、前記ポリプロピレン変性アクリル樹脂の酸価が20~80mgKOH/gであるものである。
【0012】
まず、ポリプロピレン(A)について説明する。このポリプロピレン(A)は、ホモポリマーであることが重要であり、これにより、各種基材との付着性に優れる塗膜が得られる。なお、ポリプロピレン(A)は、単独で用いることも2種以上併用することもできる
【0013】
前記ポリプロピレン(A)の重量平均分子量は、基材付着性がより向上することから、15,000~200, 000が好ましく、20,000~80,000の範囲がより好ましい。
【0014】
また、前記プロピレン(A)の融点は、基材付着性がより向上することから、40~120℃が好ましく、40~90℃がより好ましい。
【0015】
次に、前記不飽和単量体混合物(B)について説明する。この不飽和単量体混合物(B)は、カルボキシル基を有する不飽和単量体(b1)を必須成分として含有するものである。
【0016】
前記カルボキシル基を有する不飽和単量体(b1)としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、β-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルサクシネート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸等の不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸又はこれら不飽和ジカルボン酸のハーフエステルなどが挙げられる。これらの中でも、水への分散性がより優れることから、(メタ)アクリル酸が好ましい。なお、これらの不飽和単量体(b1)は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0017】
なお、本発明において、「(メタ)アクリル酸」とは、メタクリル酸とアクリル酸の一方又は両方をいい、「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレートとアクリレートの一方又は両方をいい、「(メタ)アクリロイル基」とは、メタクリロイル基とアクリロイル基の一方又は両方をいう。
【0018】
前記不飽和単量体混合物(B)は、前記不飽和単量体(b1)を必須成分とするものであるが、その他の不飽和単量体(b2)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-ヘプチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4-tert-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシ-n-ブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-n-ブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシ-n-ブチル(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレンモノ(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレンモノ(メタ)アクリレート、ポリオキシブチレンモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2-ヒドロキシエチルフタレート、ポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチルモノ(メタ)アクリレート、アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、グリシジル(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-メトキシスチレン、エチレングリコールジアクリレート等が挙げられる。また、これらの不飽和単量体(b2)は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0019】
前記不飽和単量体混合物(B)中の不飽和単量体(b1)は、水分散性及び保存安定性がより向上することから、2~40質量%が好ましく、5~20質量%がより好ましい。
【0020】
前記不飽和単量体混合物(B)中の不飽和単量体(b2)は、100質量%から上記の不飽和単量体(b1)の使用比率を除いた残部となるが、基材付着性がより向上することから、n-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4-tert-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の炭素原子数が6~12のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート;スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-メトキシスチレン等のスチレン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1以上の単量体を5質量%以上含有することがより好ましい。
【0021】
前記ポリプロピレン変性アクリル樹脂は、前記ポリプロピレン(A)の存在下、前記不飽和単量体混合物(B)を重合した反応物であることが好ましい。
【0022】
前記ポリプロピレン変性アクリル樹脂を得る方法としては、前記ポリプロピレン(A)及び溶剤の存在下、前記不飽和単量体混合物(B)をラジカル重合する方法が簡便であることから好ましい。
【0023】
上記のラジカル重合法は、原料である各単量体を溶剤に溶解し、重合開始剤存在下で重合反応を行う方法である。この際に用いることができる溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素化合物;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素化合物;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン化合物;酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル化合物;n-ブタノール、イソプロピルアルコール、シクロヘキサノール等のアルコール化合物;エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のグリコール化合物;ヘプタン、ヘキサン、オクタン、ミネラルターペン等の脂肪族炭化水素化合物などが挙げられる。これらの中でも、本発明の水性樹脂組成物中に含有する水性媒体としてそのまま利用できることから、水混和性有機溶剤を使用することが好ましい。なお、これらの溶剤は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0024】
前記重合開始剤としては、例えば、シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド化合物;1,1-ビス(tert-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(tert-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(tert-ブチルパーオキシ)バレレート、2,2-ビス(4,4-ジtert-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジtert-アミルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジtert-ヘキシルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジtert-オクチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジクミルパーオキシシクロヘキシル)プロパン等のパーオキシケタール化合物;クメンハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド化合物;1,3-ビス(tert-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジイソプロピルベンゼンパーオキサイド、tert-ブチルクミルパーオキサイド、ジtert-ブチルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド化合物;デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド化合物;ビス(tert-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート等のパーオキシカーボネート化合物;tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン等のパーオキシエステル化合物などの有機過酸化物と、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチル)ブチロニトリル、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)等のアゾ化合物とが挙げられる。
【0025】
また、前記ポリプロピレン(A)と前記不飽和単量体混合物(B)との質量比(A/B)は、得られる塗膜の基材付着性がより向上することから、10/90~70/40が好ましく、20/80~50/50がより好ましい。
【0026】
前記ポリプロピレン変性アクリル樹脂の酸価は、水性樹脂組成物の貯蔵安定性、及び得られる塗膜の基材付着性がより向上することから、20~80mgKOH/gの範囲が好ましく、25~65mgKOH/gの範囲がより好ましい。
【0027】
なお、本発明の樹脂の酸価は、原料組成から得られる計算値である。
【0028】
前記ポリプロピレン変性アクリル樹脂の重量平均分子量は、得られる塗膜の基材付着性がより向上することから、7,000~150,000が好ましく、10,000~60,000の範囲がより好ましい。
【0029】
前記ポリプロピレン変性アクリル樹脂の分子量分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は、得られる塗膜の基材付着性がより向上することから、5~20が好ましい。
【0030】
本発明の平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィー(以下、「GPC」と略記する。)測定に基づきポリスチレン換算した値である。
【0031】
前記水性媒体としては、例えば、水、親水性有機溶剤、及びこれらの混合物が挙げられる。前記親水性有機溶剤としては水と分離することなく混和する水混和性有機溶剤が好ましく、中でも水に対する溶解度(水100gに溶解する有機溶剤のグラム数)が25℃において3g以上の有機溶剤が好ましい。これら水混和性有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、3-メトキシブタノール、3-メチル-3-メトキシブタノール等のアルコール系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、モノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤などが挙げられる。これら水混和性有機溶剤は、それぞれ単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0032】
本発明の水性樹脂組成物は、ポリプロピレン変性アクリル樹脂、及び水性媒体を含有するものであるが、上記した方法で得られたポリプロピレン変性アクリル樹脂が水性媒体に溶解または分散したものが好ましく、分散体がより好ましい。
【0033】
前記ポリプロピレン変性アクリル樹脂を前記水性媒体に溶解または分散する方法としては、前記ポリプロピレン変性アクリル樹脂の有する酸基を塩基性化合物で中和したものと、前記水性媒体とを混合する方法が好ましい。
【0034】
前記塩基性化合物としては、例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、2-アミノエタノール等のモノアルカノールアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、ジブタノールアミン等の有機アミン;アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基性化合物;テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラ-n-ブチルアンモニウムハイドロオキサイド、トリメチルベンジルアンモニウムハイドロオキサイド等の四級アンモニウムハイドロオキサイドなどが挙げられる。これらの中でも有機アミンおよびアンモニア(アンモニア水でもよい。)を使用することが好ましい。なお、これらの塩基性化合物は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0035】
また、前記塩基性化合物の使用量としては、水性樹脂組成物の貯蔵安定性がより向上することから、前記ポリプロピレン変性アクリル樹脂の有するカルボキシル基の中和率が、50~100%の範囲となる量であることが好ましい。
【0036】
本発明の塗料は、本発明の水性樹脂組成物を含有するものであるが、その他の配合物として、消泡剤、粘度調整剤、耐光安定剤、耐候安定剤、耐熱安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、レベリング剤、顔料分散剤等の添加剤を使用することができる。また、酸化チタン、炭酸カルシウム、アルミニウム粉末、銅粉末、雲母粉末、酸化鉄、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、トルイジンレッド、ペリレン、キナクリドン、ベンジジンイエロー等の顔料を使用することもできる。
【0037】
本発明の塗料の塗装方法としては、例えば、スプレー、アプリケーター、バーコーター、グラビアコーター、ロールコーター、コンマコーター、ナイフコーター、エアナイフコーター、カーテンコーター、キスコーター、シャワーコーター、ホイーラーコーター、スピンコーター、ディッピング、スクリーン印刷等の方法が挙げられる。また、塗装後、塗膜とする方法としては、常温~120℃の範囲で乾燥させる方法が挙げられる。
【0038】
本発明の塗料は、プラスチック基材との高い付着性を有することから、各種プラスチック成形品を塗装する塗料として好適に用いることができるが、本発明の塗料を塗装することのできるプラスチック成形品としては、携帯電話、スマートフォン、タブレット端末、パソコン、デジタルカメラ、ゲーム機等の電子機器の筐体;テレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコン等の家電製品の筐体;自動車バンパー、自動車や鉄道車輌等の各種車輌の内装材などが挙げられる。
【実施例
【0039】
以下に本発明を具体的な実施例を挙げてより詳細に説明する。
【0040】
[GPC測定条件]
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC-8220GPC」)
カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。
「TSKgel G5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度4mg/mLのテトラヒドロフラン溶液)
標準試料:下記の単分散ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
【0041】
(単分散ポリスチレン)
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-1000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-2500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-5000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-1」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-2」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-4」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-10」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-20」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-40」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-80」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-128」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-288」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-550」
【0042】
以下で使用する不飽和単量体及び重合開始剤の略号は、それぞれ下記のものである。
MMA:メチルメタクリレート
St:スチレン
BA:ブチルアクリレート
CHMA:シクロヘキシルメタクリレート
AA:アクリル酸
SLMA:ドデシルメタクリレートとトリデシルメタクリレートの混合物(三菱ケミカル株式会社製「アクリエステルSL」)
EA:エチルアクリレート
IBXMA:イソボルニルメタクリレート
2EHMA:2-エチルヘキシルメタクリレート
AM-130G:メトキシポリエチレングリコールアクリレート(新中村化学工業株式会社製「NKエステルAM-130G」)
HEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート
P-O:t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート
ABN-E:2,2’-アゾビス(2-メチル)ブチロニトリル
P-E:tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート
【0043】
(実施例1:水性樹脂組成物(1)の製造)
容量2Lの4つ口フラスコに、トルエン250g、ポリプロピレンホモポリマー(出光興産製「L-MODU S600」、融点80℃、重量平均分子量75,000;以下、「ポリプロピレン(A-1)」と略記する。)60gを加え、不活性ガス雰囲気下で100℃に昇温した。
次に重合工程として、MMA 29.5g、St 50g、BA 40.5g、CHMA 4.6g、AA 15.4g、P-O 5.2gからなる混合液を4時間かけて滴下し、更に3時間攪拌した。
次に水分散工程として、上述の反応液を75℃に冷却し、メチルシクロヘキサン100g、イソプロピルアルコール400g、N,N-ジメチルエタノールアミン19.1g、水440gを逐次投入して水分散粒子溶液を得た。
得られた水分散粒子溶液からエバポレーターでトルエンとメチルシクロヘキサンとイソプロピルアルコールを減圧除去し、固形分濃度30質量%の水分散体として、水性樹脂組成物(1)を得た。
【0044】
(実施例2:水性樹脂組成物(2)の製造)
容量2Lの4つ口フラスコに、トルエン150g、ポリプロピレン(A-1)90gを加え、不活性ガス雰囲気下で100℃に昇温した。
次に重合工程として、MMA 10g、St 40g、CHMA 24g、SLMA 20g、AA 15.4g、P-O 5.2gからなる混合液を4時間かけて滴下し、更に3時間攪拌した。
次に水分散工程として、上述の反応液を75℃に冷却し、メチルシクロヘキサン100g、イソプロピルアルコール400g、N,N-ジメチルエタノールアミン19.1g、水440gを逐次投入して水分散粒子溶液を得た。
得られた水分散粒子溶液からエバポレーターでトルエンとメチルシクロヘキサンとイソプロピルアルコールを減圧除去し、固形分濃度30質量%の水分散体として、水性樹脂組成物(2)を得た。
【0045】
(実施例3:水性樹脂組成物(3)の製造)
容量2Lの4つ口フラスコに、トルエン80g、ポリプロピレンホモポリマー(出光興産製「L-MODU S400」、融点80℃、重量平均分子量45,000;以下、「ポリプロピレン(A-2)」と略記する。)120gを加え、不活性ガス雰囲気下で100℃に昇温した。
次に重合工程として、St25g、CHMA 24g、SLMA 20g、無水マレイン酸12g、ABN-E 5.2gからなる混合液を4時間かけて滴下し、更に3時間攪拌した。
次に水分散工程として、上述の反応液を75℃に冷却し、メチルシクロヘキサン200g、イソプロピルアルコール400g、トリエチルアミン28g、水440gを逐次投入して水分散粒子溶液を得た。
得られた水分散粒子溶液からエバポレーターでトルエンとメチルシクロヘキサンとイソプロピルアルコールを減圧除去し、固形分濃度25質量%の水分散体として、水性樹脂組成物(3)を得た。
【0046】
(実施例4:水性樹脂組成物(4)の製造)
容量2Lの4つ口フラスコに、酢酸ブチル225g、ポリプロピレン(A-2)60gを加え、不活性ガス雰囲気下で120℃に昇温した。
次に重合工程として、MMA 50g、St10g、EA 68g、AA 11.2g、P-O8.5gからなる混合液を4時間かけて滴下し、更に3時間攪拌した。
次に水分散工程として、上述の反応液を75℃に冷却し、メチルシクロヘキサン180g、イソプロピルアルコール510g、N,N-ジメチルエタノールアミン13.9g、水510gを逐次投入して水分散粒子溶液を得た。
得られた水分散粒子溶液からエバポレーターで酢酸ブチルとメチルシクロヘキサンとイソプロピルアルコールを減圧除去し、固形分濃度27質量%の水分散体として、水性樹脂組成物(4)を得た。
【0047】
(実施例5:水性樹脂組成物(5)の製造)
容量2Lの4つ口フラスコに、酢酸ブチル270g、ポリプロピレン(A-2)90gを加え、不活性ガス雰囲気下で120℃に昇温した。
次に重合工程として、MMA 5.4g、EA 42.5g、IBXMA 48.6g、AA 11.5g、P-E 4gからなる混合液を4時間かけて滴下し、更に3時間攪拌した。
次に水分散工程として、上述の反応液を75℃に冷却し、メチルシクロヘキサン190g、イソプロピルアルコール400g、N,N-ジメチルエタノールアミン14.2g、水540gを逐次投入して水分散粒子溶液を得た。
得られた水分散粒子溶液からエバポレーターで酢酸ブチルとメチルシクロヘキサンとイソプロピルアルコールを減圧除去し、固形分濃度26質量%の水分散体として、水性樹脂組成物(5)を得た。
【0048】
(実施例6:水性樹脂組成物(6)の製造)
容量2Lの4つ口フラスコに、ブチルセロソルブ70g、ポリプロピレンホモポリマー(出光興産製「L-MODU S901」、融点80℃、重量平均分子量130,000;以下、「ポリプロピレン(A-3)」と略記する。)30gを加え、不活性ガス雰囲気下で140℃に昇温した。
次に重合工程として、St 15g、IBXMA 40g、2EHMA 20g、SLMA 30g、AM-130G 60g、AA 3g、P-E 4.5gからなる混合液を4時間かけて滴下し、更に3時間攪拌した。
次に水分散工程として、上述の反応液を75℃に冷却し、N,N-ジメチルエタノールアミン3.7g、水380gを逐次投入し、固形分濃度30質量%の水分散体として、水性樹脂組成物(6)を得た。
【0049】
(実施例7:水性樹脂組成物(7)の製造)
容量2Lの4つ口フラスコに、ジエチレングリコールジメチルエーテル70g、ポリプロピレン(A-2)60gを加え、不活性ガス雰囲気下で120℃に昇温した。
次に重合工程として、St35g、IBXMA 40g、2EHMA 20g、SLMA 30g、HEMA 15g、AA 8g、P-E 4.5gからなる混合液を4時間かけて滴下し、更に3時間攪拌した。
次に水分散工程として、上述の反応液を75℃に冷却し、25%アンモニア水42g、水380gを逐次投入し、固形分濃度30質量%の水分散体として、水性樹脂組成物(7)を得た。
【0050】
(実施例8:水性樹脂組成物(8)の製造)
容量2Lの4つ口フラスコに、トルエン250g、ポリプロピレン(A-2)18gを加え、不活性ガス雰囲気下で100℃に昇温した。
次に重合工程として、MMA 29.5g、St47g、BA 25.5g、CHMA 64.6g、AA 11g、P-E 4.5gからなる混合液を4時間かけて滴下し、更に3時間攪拌した。
次に水分散工程として、上述の反応液を75℃に冷却し、メチルシクロヘキサン100g、イソプロピルアルコール400g、N,N-ジメチルエタノールアミン13.6g、水440gを逐次投入して水分散粒子溶液を得た。
得られた水分散粒子溶液からエバポレーターでトルエンとメチルシクロヘキサンとイソプロピルアルコールを減圧除去し、固形分濃度30質量%の水分散体として、水性樹脂組成物(8)を得た。
【0051】
(比較例1:水性樹脂組成物(R1)の製造)
容量2Lの4つ口フラスコに、ブチロセロソルブ70g、ポリプロピレン共重合体(エボニック社製「ベストプラスト750」、プロピレン/エチレン/1-ブテン共重合物、融点107℃)30g加え、不活性ガス雰囲気下で140℃に昇温した。
次に重合工程として、St 15.0g、IBXMA 40g、2EHMA 20g、SLMA 30g、AM-130G 60g、AA 3g、P-E 4.5gからなる混合液を4時間かけて滴下し、更に3時間攪拌した。
次に水分散工程として、上述の反応液を75℃に冷却し、N,N-ジメチルエタノールアミン 3.7g、水380gを逐次投入して固形分濃度30質量%の水分散体として、水性樹脂組成物(R1)を得た。
【0052】
(比較例2:水性樹脂組成物(R2)の製造)
容量2Lの4つ口フラスコに、ジエチレングリコールジメチルエーテル70g、ポリプロピレン(A-2)60g加え、不活性ガス雰囲気下で120℃に昇温した。
次に重合工程として、St 35g、IBXMA 23g、2EHMA 20g、SLMA 30g、HEMA 15g、AA 25g、P-E 4.5gからなる混合液を4時間かけて滴下し、更に3時間攪拌した。
次に水分散工程として、上述の反応液を75℃に冷却し、25%アンモニア水124g、水380gを逐次投入して固形分濃度30質量%の水分散体として、水性樹脂組成物(R2)を得た。
【0053】
(比較例3:水性樹脂組成物(R3)の製造)
容量2Lの4つ口フラスコに、ブチルセロソルブ70g、ポリプロピレン(A-2)60gを加え、不活性ガス雰囲気下で120℃に昇温した。
次に重合工程として、MMA 30g、St 50g、BA 40g、CHMA 20g、AA 2.6g、P-E 4.5gからなる混合液を4時間かけて滴下し、更に3時間攪拌した。
次に水分散工程として、上述の反応液を75℃に冷却し、N,N-ジメチルエタノールアミン 3.2g、水380gを逐次投入して固形分濃度30質量%の水分散体として、水性樹脂組成物(R3)を得た。
【0054】
[貯蔵安定性の評価]
上記で得た水性樹脂組成物を、40℃で3か月間静置保存し、その外観を目視で観察して、下記の基準により貯蔵安定性を評価した。◎、○であれば、実用上差支えない性能であると見做す。
◎:外観に有意差なし
○:溶液最表面に僅かな溶媒分離が認められるが、軽く混合すると均一になる。
×:樹脂分が沈降分離しており、激しく混合しても再び分離する。
【0055】
上記で得た水性樹脂組成物(1)~(8)の組成及び評価結果を表1及び2に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
上記で得た比較用水性樹脂組成物(R1)~(R3)の組成及び評価結果を表3に示す。
【0059】
【表3】
【0060】
(実施例9:水性塗料(1)の調製及び評価)
上記で得た水性樹脂組成物(1) 100gに、レベリング剤としてBYK-348(BYK Chemie製)0.2g、消泡剤としてSNデフォーマー777(サンノプコ株式会社製)0.1gを加え、15分間攪拌した。次に、塗料粘度が粘度カップNK-2(アネスト岩田株式会社製)で12秒になるまでイオン交換水を用いて希釈し、水性塗料(1)を得た。
【0061】
[評価用硬化塗膜の作製]
上記で得た水性塗料を、PC(ポリカーボネート)板、PP(ポリプロピレン、TSOP6)板、Al5052P板、ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体)板、ナイロン(6ナイロン)板にスプレーガンを用いて、乾燥膜厚が20μmとなるように塗装した。その後乾燥機にて95℃、20分間加熱乾燥処理を施し、評価用塗膜を作製した。
【0062】
[基材付着性の評価]
スプレー塗装で得られた乾燥塗膜をJIS K-5600の碁盤目試験法に基づいて評価した。前記塗膜の上にカッターで2mm幅の切込みを入れ碁盤目の数を25個とし、全ての碁盤目を覆うようにセロハンテープを貼り付け、素早く引き剥がした。JIS規格の試験結果2以下の付着が認められれば実用上差支えない性能である。
【0063】
(実施例10~16:水性塗料(2)~(8)の調製及び評価)
水性樹脂組成物(1)を水性樹脂組成物(2)~(8)に変更した以外は、実施例9と同様にして、水性塗料(2)~(8)を調製し、基材付着性の評価を行った。
【0064】
(比較例4~6:水性塗料(R1)~(R3)の調製及び評価)
水性樹脂組成物(1)を水性樹脂組成物(R1)~(R3)に変更した以外は、実施例14と同様にして、水性塗料(R1)~(R3)を調製し、基材付着性の評価を行った。
【0065】
上記の実施例9~16及び比較例4~6の評価結果を表4~6に示す。
【0066】
【表4】
【0067】
【表5】
【0068】
【表6】
【0069】
本発明の水性樹脂組成物は貯蔵安定性に優れ、得られる塗膜は、各種基材の付着性に優れることが確認された。
【0070】
一方、比較例1は、本発明の必須成分であるポリプロピレンのホモポリマーを使用しなかった例であるが、貯蔵安定性が不十分であり、得られる塗膜は、アルミ基材やナイロン基材への付着性が不十分であった。
【0071】
比較例2は、ポリプロピレン変性アクリル樹脂の酸価が、本発明の上限である80mgKOH/gより大きい例であるが、得られる塗膜は、ポリプロピレン基材、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体基材、ナイロン基材への付着性が不十分であった。
【0072】
比較例3は、ポリプロピレン変性アクリル樹脂の酸価が、本発明の下限である20mgKOH/gより小さい例であるが、貯蔵安定性が不十分であり、得られる塗膜は、ナイロン基材への付着性が不十分であった。