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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】二次電池用複合活物質および二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/38 20060101AFI20231011BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20231011BHJP
   C01B 33/00 20060101ALI20231011BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20231011BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20231011BHJP
【FI】
H01M4/38 Z
H01M4/36 A
C01B33/00
H01M4/58
H01M4/48
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023521875
(86)(22)【出願日】2022-08-25
(86)【国際出願番号】 JP2022031974
(87)【国際公開番号】W WO2023074099
(87)【国際公開日】2023-05-04
【審査請求日】2023-04-11
(31)【優先権主張番号】P 2021173871
(32)【優先日】2021-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【弁理士】
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】諸 培新
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 賢一
(72)【発明者】
【氏名】武田 紘太朗
【審査官】渡部 朋也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2023/053631(WO,A1)
【文献】特開2007-059213(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0227731(US,A1)
【文献】特開2019-043821(JP,A)
【文献】国際公開第2014/148043(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/38
H01M 4/36
H01M 4/58
H01M 4/48
C01B 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒径が150nm以下のシリコン粒子、前記シリコン粒子が分散したマトリクス相、およびLi、K、Na、Ca、MgおよびAlからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属のシリケート化合物を有し、
前記シリコン粒子の表面近傍に前記シリケート化合物を有し、
前記シリコン粒子の表面近傍におけるシリケート濃度が、前記マトリクス相におけるシリケート濃度より高濃度であり、
平均粒径が1μmから15μm、比表面積が1m /gから30m /gである二次電池用複合活物質。
【請求項2】
前記シリコン粒子の表面近傍に、さらに二酸化ケイ素を有する請求項1に記載の二次電池用複合活物質。
【請求項3】
前記二酸化ケイ素のモル比が、前記シリケート化合物と前記二酸化ケイ素の合計モル数を1として、0.9以下である請求項2に記載の二次電池用複合活物質。
【請求項4】
前記シリケート化合物が、マグネシウムシリケート化合物である請求項1または2に記載の二次電池用複合活物質。
【請求項5】
前記シリコン粒子の表面近傍の前記マグネシウムシリケート化合物の厚みが0.2nmから10nmである結晶質膜である請求項4に記載の二次電池用複合活物質。
【請求項6】
前記マトリクス相は少なくともSiOxCyNz(ただし、1≦x≦2、1≦y≦20、0≦z≦0.5)で表される化合物を含む請求項1または2に記載の二次電池用複合活物質。
【請求項7】
前記シリコン粒子がフレーク状結晶体であり、X線回折スペクトルにおける2θが28.4°のピークから得られる結晶子サイズが25nm以下である請求項1または2に記載の二次電池用複合活物質。
【請求項8】
請求項1または2に記載の二次電池用複合活物質を負極に含む二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池用複合活物質および二次電池に関する。より詳細には本発明は二次電池用複合活物質および前記二次電池用複合物質を負極に含む二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
非水電解質二次電池は、携帯機器を始め、ハイブリッド自動車や電気自動車、家庭用蓄電池などに用いられており、電気容量、安全性、作動安定性など複数の特性をバランスよく有することが要求されている。このような二次電池としては、主に、充放電時にリチウムイオンを結晶面間の層間に吸蔵放出できるリチウムインターカレーション化合物を負極活物質に用いた、各種リチウムイオン電池の開発が進み、実用化もされている。
さらに近年、各種電子機器・通信機器の小型化およびハイブリッド自動車等の急速な普及に伴い、これら機器等の駆動電源として、より高容量であり、かつサイクル特性や放電レート特性等の各種電池特性が更に向上したリチウムイオン電池の開発が強く求められている。
【0003】
しかしながら従来のリチウムイオン電池は主に黒鉛等が負極活物質として使用されており、黒鉛系負極材料の理論比容量では、さらに高エネルギー密度のリチウムイオン電池の開発には限界がある。そこで理論容量が高く、リチウムイオンを吸蔵および放出可能な元素であるシリコンやスズ等の金属、もしくは他の元素との合金を用いた 負極材料の開発が検討されている。
なかでも黒鉛系負極材料の理論容量より10倍以上の理論容量を有するケイ素や、ケイ素含有活物質が注目されている。しかしながらケイ素含有活物質は初期効率が低いことが知られている。
【0004】
前記ケイ素含有活物質の初期効率を改良する目的でLi化合物とケイ素含有活物質を含む負極活物質が検討されている。
例えば特許文献1には層状ポリシランに金属リチウムと多環芳香族化合物とを有機溶剤に溶解したリチウム錯体溶液を接触させ、前記層状ポリシランにリチウムをドープする方法によるリチウムドープ層状シリコンが記載されている。
【0005】
またLi以外の金属であるMgがドープされた酸化ケイ素として、特許文献2にはシリコン酸化物内に結晶サイズが1から25nmであるシリコン粒子およびMgSiO結晶を含み、表面に炭素被膜を含むケイ素化合物を含む負極活物質が開示されている。特許文献3ではケイ素酸化物およびケイ酸マグネシウムを含むケイ素酸化物複合体と、前記ケイ素酸化物複合体の表面に位置し、炭素系物質を含む炭素コーティング層とを備えた負極活物質が記載されている。
さらにはLiとMgの両方を含むケイ酸化合物として、特許文献4ではケイ素化合物粒子がLi化合物を含有し、ポリアクリル酸の塩またはカルボキシメチルセルロースの塩を含み、MgまたはAlから選ばれる少なくとも1種の金属を含む金属塩を含む負極活物質についても検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-202914号公報
【文献】特開2018-156922号公報
【文献】特表2020-529709号公報
【文献】特開2018-60771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ケイ素含有活物質を負極活物質として用いた場合、初期充電時にリチウムとケイ素含有活物質に存在する酸化ケイ素が反応してリチウム酸化物が生成される。生成されたリチウム酸化物は放電時に可逆的に正極に戻られなくなる。このような不可逆反応によりリチウムが損失され、初期の充放電効率が低下すると考えられている。
前記文献1から4に記載の方法は、ケイ素含有活物質に存在する酸化ケイ素にLiまたはMgを含有させることで初期段階でのリチウムと酸化ケイ素との反応を抑制し、初期の充放電効率の低下を抑制しようとするものである。
【0008】
しかしながら前記文献1から4の負極活物質は、ケイ素含有活物質中にLiおよび/またはMgの金属シリケート化合物が全体に分散していると考えられ、初期段階でのリチウムと酸化ケイ素の反応抑制には未だ不十分である。
またLiおよびMgのシリケートは、強い吸水性を有するのが一般的性状であるため、負極製膜用水系スラリーの調製に対して負極活物質の凝集が起こりやすくなる。
その結果、前記特許文献1から4の負極活物質を用いたリチウム二次電池は初期のクーロン効率および容量維持率の改良効果は不十分であった。
【0009】
本発明者らは初期の充放電時に生成するリチウム酸化物の生成を効率的に抑制する方法を検討し、その結果、負極活物質の初期のクーロン効率および容量維持率が改良される二次電池用複合活物質を見出した。
即ち本発明は、リチウムイオン二次電池に用いられる二次電池用複合活物質および前記二次電池用複合活物質を負極活物質として含む二次電池に関し、初期のクーロン効率および容量維持率に優れた二次電池を与える二次電池用負極活物質を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、下記の態様を有する。
[1] 平均粒径が150nm以下のシリコン粒子、前記シリコン粒子が分散したマトリクス相、およびLi、K、Na、Ca、MgおよびAlからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属のシリケート化合物を有し、前記シリコン粒子の表面近傍に前記シリケート化合物を有する二次電池用複合活物質。
[2] 前記シリコン粒子の表面近傍におけるシリケート濃度が、前記マトリクス相におけるシリケート濃度より高濃度である前記[1]に記載の二次電池用複合活物質。
[3] 前記シリコン粒子の表面近傍に、さらに二酸化ケイ素を有する前記[1]または[2]に記載の二次電池用複合活物質。
[4] 前記二酸化ケイ素のモル比が前記シリケート化合物と前記二酸化ケイ素の合モル数を1として、0.9以下である前記[3]に記載の二次電池用複合活物質。
[5] 前記シリケート化合物がマグネシウムシリケート化合物である前記[1]から[4]のいずれかに記載の二次電池用複合活物質。
[6] 前記シリコン粒子の表面近傍の前記マグネシウムシリケート化合物の厚みが0.2nmから10nmである結晶質膜である前記[5]に記載の二次電池用複合活物質。
[7] 前記マトリクス相は少なくともSiOxCyNz(ただし、1<x<2、1<y<20、0<z<0.5)で表される化合物を含む前記[1]から[6]のいずれかに記載の二次電池用複合活物質。
[8] 前記シリコン粒子がフレーク状結晶体であり、X線回折スペクトルにおける2θが28.4度のピークから得られる結晶子サイズが25nm以下である前記[1]から[7]のいずれかに記載の二次電池用複合活物質。
[9] 平均粒径が1μmから15μm、比表面積が1m/gから30m/gである前記[1]から[8]のいずれかに記載の二次電池用複合活物質。
【0011】
また本発明は、下記の態様を有する。
[10] 前記[1]から[9]のいずれかに記載の二次電池用複合活物質を負極に含む二次電池。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、初期のクーロン効率および容量維持率に優れた二次電池を与える二次電池用負極活物質が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の二次電池用複合活物質(以下、「本活物質」とも記す。)は、平均粒径が150nm以下のシリコン粒子(以下、「本シリコン粒子」とも称する。)、前記シリコン粒子が分散したマトリクス相、およびLi、K、Na、Ca、MgおよびAlからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属のシリケート化合物を有し、前記シリコン粒子の表面近傍に前記シリケート化合物を有する。
シリコン粒子表面上に酸化ケイ素膜が存在すると考えられ、初期充電時のリチウムと酸化ケイ素との反応によるリチウム酸化物の生成は酸化ケイ素の近傍で起こると考えられる。本活物質はLi、K、Na、Ca、MgおよびAlからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属のシリケート化合物をシリコン粒子の表面近傍に多く存在させることで効率的にリチウム酸化物の生成を抑制することができると考えられる。その結果、本活物質を負極活物質として用いた場合、負極活物質の初期のクーロン効率および容量維持率が改良されると考えられる。
【0014】
本シリコン粒子は0価のシリコンから構成され、平均粒径は150nm以下である。
ここで平均粒径はレーザー回折式粒度分析計などを用いて測定することができるD50の値である。D50は、レーザー粒度分析計などを用い動的光散乱法により測定することができる。本シリコン粒子の平均粒径は、粒子径分布において、小径側から体積累積分布曲線を描いた場合に、累積50%となるときの粒子径である。
【0015】
300nmを超える大サイズのシリコン粒子は、大きな塊となり、本活物質を負極活物質とした時、充放電時に微粉化現象が起りやすいため、負極活物質の容量維持率が低下する傾向がある。一方、10nm未満の小サイズのシリコン粒子は細かすぎるため、シリコン粒子同士が凝集しやすくなる。そのため、負極活物質中へのシリコン粒子の分散性が低下する可能性がある。また、シリコン粒子が細かすぎると、その表面活性エネルギーが高くなり、負極活物質の高温焼成でシリコン粒子の表面上に副生成物などが多くなる傾向もある。これらが充放電性能の低下に繋がるおそれがある。
したがって、本シリコン粒子は300nmを超える大サイズのシリコン粒子および10nm未満の小サイズのシリコン粒子の含有割合が出来るだけ小さいことが好ましい。
前記の観点から、平均粒径は120nm以下が好ましく、100nm以下がより好ましい。また平均粒径は20nm以上が好ましく、30nm以上がより好ましい。
【0016】
本シリコン粒子は、例えばシリコンの塊を平均粒径が前記範囲となるように粉砕などで粒子化し得ることができる。
シリコンの塊の粉砕に用いる粉砕機としては、ボールミル、ビーズミル、ジェットミルなどの粉砕機が例示できる。また、粉砕は有機溶剤を用いた湿式粉砕であってもよく、有機溶剤としては、例えば、アルコール類、ケトン類などを好適に用いることができるが、トルエン、キシレン、ナフタレン、メチルナフタレンなどの芳香族炭化水素系溶剤も用いることができる。
得られたシリコンの粒子を、ビーズ粒径、配合率、回転数または粉砕時間などのビーズミルの条件を制御し、分級等することで本シリコン粒子の平均粒径を前記範囲とすることができる。
【0017】
本シリコン粒子の形状は前記平均粒径を満たす範囲であれば、粒状、針状、フレーク状のいずれでもよいが、フレーク状が取り扱いの観点から好ましい。本シリコン粒子がフレーク状の場合、X線回折スペクトルにおける2θが28.4度のピーク半値幅から得られる結晶子サイズが35nm以下であれば、初期クーロン効率および容量維持率の観点から好ましい。結晶子サイズは25nm以下がより好ましい。
【0018】
本シリコン粒子は、負極活物質とした時の充放電性能の観点から、長軸方向の長さが70から300nmが好ましく、厚みは15から70nmが好ましい。負極活物質とした時の充放電性能の観点から、長さに対する厚みの比である、いわゆるアスペクト比が0.5以下であることが好ましい。
本シリコン粒子の形態は、動的光散乱法で平均粒径の測定が可能であるが、透過型電子顕微鏡(TEM)や電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)の解析手段を用いることで、前記アスペクト比のサンプルをより容易かつ精密に同定することができる。本発明の二次電池用材料を含有する負極活物質の場合は、サンプルを集束イオンビーム(FIB)で切断して断面をFE-SEM観察することができ、またはサンプルをスライス加工してTEM観察により本シリコン粒子の状態を同定することができる。
なお前記本シリコン粒子のアスペクト比は、TEM画像に映る視野内のサンプルの主要部分50粒子をベースにした計算結果である。
【0019】
前記本シリコン粒子はマトリクス相中に分散している。マトリクス相を構成する化合物は、二酸化ケイ素や酸化チタンなどが挙げられるが、ケイ素、酸素、炭素を含む化合物が好ましく、ケイ素、酸素、炭素を含む化合物はケイ素-酸素-炭素骨格の三次元ネットワーク構造とフリー炭素を含む構造が好ましい。ここでフリー炭素とは、ケイ素-酸素-炭素の三次元骨格に含まれていない炭素である。フリー炭素は炭素相として存在する炭素、炭素相の炭素同士で結合している炭素、およびケイ素-酸素-炭素骨格と炭素相が結合している炭素を含む。
【0020】
マトリクス相を構成する化合物がケイ素、酸素、炭素を含む化合物であり、ケイ素-酸素-炭素骨格の三次元ネットワーク構造とフリー炭素を含む構造の場合、マトリクス相中のケイ素-酸素-炭素骨格は化学安定性が高く、フリー炭素との複合構造となることで、電子遷移抵抗の低減に伴いリチウムイオンの拡散も容易になる。本シリコン粒子がケイ素-酸素-炭素骨格とフリー炭素との複合構造体に密に包まれることで、本シリコン粒子と電解液との直接な接触が阻止される。その結果、本活物質を負極とした場合、負極中の本シリコン粒子が充放電性能発現の主要成分とする役割を果たしながら、充放電時にケイ素と電解液との化学反応が回避されることによって本シリコン粒子の性能劣化が最大限に防がれる。
【0021】
マトリクス相を構成する化合物がケイ素-酸素-炭素骨格の三次元ネットワーク構造とフリー炭素を含む構造を有していると、ケイ素-酸素-炭素骨格は、リチウムイオンの接近によりケイ素-酸素-炭素骨格の内部の電子分布に変動が生じ、ケイ素-酸素-炭素骨格とリチウムイオンの間に静電的な結合や配位結合などが形成される。この静電的な結合や配位結合によりリチウムイオンがケイ素-酸素-炭素骨格中に貯蔵される。一方、配位結合エネルギーは比較的低いため、リチウムイオンの脱離反応が容易に行われる。つまりケイ素-酸素-炭素骨格が充放電の際にリチウムイオンの挿入と脱離反応を可逆的に起こすことができると考えられる。
【0022】
マトリクス相を構成する化合物がケイ素、酸素、炭素を含む化合物の場合、マトリクス相は下記式(1)で表される化合物を含有するのが好ましい。
SiOxCy (1)
式(1)中、xはケイ素に対する酸素のモル比、yはケイ素に対する炭素のモル比を表す。
本活物質を二次電池に用いた場合、充放電性能と容量維持率とのバランスが優位になるという観点から、1≦x<2が好ましく、1≦x≦1.9がより好ましく、1≦x≦1.8がさらに好ましい。
また、本活物質を二次電池に用いた場合、充放電性能と初回クーロン効率のバランスとの観点から、1≦y≦20が好ましく、1.2≦y≦15がより好ましい。
【0023】
前記マトリクス相を構成する化合物はケイ素、酸素、炭素以外に窒素を含んでもよい。窒素は後述する本活物質の製造方法において、使用する原料、例えばフェノール樹脂、分散剤、ポリシロキサン化合物、その他の窒素化合物、および焼成プロセスで用いる窒素ガス等がその分子内に官能基として窒素を含む原子団を有することで、マトリクス相に導入することができる。マトリクス相が窒素を含むことで、本活物質を負極活物質とした時の充放電性能や容量維持率に優れる傾向にある。
マトリクス相を構成する化合物がケイ素、酸素、炭素および窒素を含む化合物の場合、マトリクス相は下記式(2)で表される化合物を含有するのが好ましい。
SiOxCyNz (2)
式(2)中、xおよびyは前記と同じ意味であり、zはケイ素に対する窒素のモル比を表す。
マトリクス相が前記式(2)で表される化合物を含む場合、本活物質を二次電池に用いた際の充放電性能や容量維持率の観点から、1≦x≦2、1≦y≦20、0<z≦0.5が好ましく、1≦x≦1.9、1.2≦y≦15、0<z≦0.4がより好ましい。
【0024】
前記x、yおよびzはそれぞれの元素の質量含有量を測定した後、モル比(原子数比)に換算することにより求めることができる。この際、酸素と炭素は無機元素分析装置を使用することによって、その含有量を定量でき、ケイ素の含有量はICP発光分析装置(ICP-OES)を使用することによって定量できる。
なお、前記x、yおよびzの測定は前記記載方法によって実施することが好ましいが、本活物質の局所的な分析を行い、それにより得られた含有比データの測定点数を多く取得して、本活物質全体の含有比を類推することでも可能である。局所的な分析としては、例えばエネルギー分散型X線分光法(SEM-EDX)や電子線プローブマイクロアナライザ(EPMA)が挙げられる。
【0025】
本活物質は本シリコン粒子および前記マトリクス相に加えて、Li、K、Na、Ca、MgおよびAlからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属のシリケート化合物(以下、「本シリケート化合物」とも記す。)を本シリコン粒子の表面近傍に有する。
シリケート化合物は一般に1個または数個のケイ素原子を中心とし、電気陰性な配位子がこれを取り囲んだ構造を持つアニオンを含む化合物であるが、本シリケート化合物はLi、K、Na、Ca、MgおよびAlからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属と前記アニオンを含む化合物との塩である。
前記アニオンを含む化合物としてはオルトケイ酸イオン(SiO 4-)、メタケイ酸イオン(SiO 2-)、ピロケイ酸イオン(Si 6-)、環状ケイ酸イオン(Si 6-またはSi18 12-)等のケイ酸イオンが知られている。本シリケート化合物はメタケイ酸イオンとLi、K、Na、Ca、MgおよびAlからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属との塩であるシリケート化合物が好ましい。前記金属の中ではLiまたはMgが好ましい。
本シリケート化合物はLi、K、Na、Ca、MgおよびAlからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属を有しており、これら金属の2種以上を有していてもよい。2種以上の金属を有する場合、一つのケイ酸イオンが複数種の金属を有していてもよいし、異なる金属を有するシリケート化合物の混合物であってもよい。また本シリケート化合物はLi、K、Na、Ca、MgおよびAlからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属を有する限り、他の金属を有してもよい。
本シリケート化合物はリチウムシリケート化合物またはマグネシウムシリケート化合物が好ましく、メタケイ酸リチウム(LiSiO)またはメタケイ酸マグネシウム(MgSiO)がより好ましく、メタケイ酸マグネシウム(MgSiO)が特に好ましい。
【0026】
本活物質は前記本シリケート化合物を前記本シリコン粒子の表面近傍に有する。すなわち、本シリケート化合物は本シリコン粒子の表面に化学的または物理的に直接接着していてもよく、本シリケート化合物は本シリコン粒子の表面近傍に存在していればよい。なお本シリコン粒子の表面近傍とは、表面から例えば10nm以内であり、好ましくは5nm以内である。
本シリケート化合物は、効率的にリチウム酸化物の生成を抑制する観点から、本シリコン粒子の表面近傍に多く存在するのが好ましく、本活物質に含まれる本シリケート化合物の全質量の50質量%以上が表面近傍に存在するのがより好ましく、60質量%以上が表面近傍に存在するのがより好ましい。
本シリコン粒子の表面近傍に本シリケート化合物が存在していることの確認は高分解能透過型電子顕微鏡(以下、「HR-TEM」とも記す。)にて確認することができる。詳しくはサンプルを集束イオンビーム(FIB)でスライス加工してHR-TEM観察により確認することができる。
【0027】
また本シリコン粒子の表面近傍における本シリケート化合物の濃度(シリケート濃度)は、前記マトリクス相を構成する化合物の濃度(シリケート濃度)より高濃度であるのが好ましい。表面近傍とは前記のとおりであり、本シリコン粒子の表面近傍における本シリケート化合物の濃度(シリケート濃度)とは前記範囲での本シリケート化合物の濃度である。例えば、表面近傍における本シリケート化合物の濃度(シリケート濃度)とは前記範囲内の本シリケート化合物の単位体積当たりの質量である。
【0028】
本シリケート化合物が結晶状態の場合、前記HR-TEMの測定では本シリケート化合物の結晶子の格子構造が観察される。従って、本シリコン粒子の表面近傍における本シリケート化合物の濃度は、HR-TEMの100万倍の観察視野において、単位面積当たりのシリケート化合物の結晶子に帰属される格子構造の面積と全視野の面積との比であり、下記式にて求められる。
面積比=結晶子に帰属される格子構造の面積/全視野の面積
この面積比は5か所以上の異なる視野の平均値を用いて求められる。
また、STEM―EDS(Scanning Transmission Electron Microscope Energy-Dispersive-Spectroscopy)を用いてシリコン粒子近傍に存在するMg元素、Si元素、O元素の濃度をマッピング像で検出することができる。Mg元素、Si元素、O元素を合わせてシリケート化合物の濃度を判断できる。
【0029】
本シリケート化合物の表面近傍の濃度(シリケート濃度)は前記マトリクス相を構成する化合物の濃度(シリケート濃度)の2倍が好ましく、3倍がより好ましく、本シリコン粒子が本シリケート化合物で被覆されているのがさらに好ましい。
また、HR-TEMを用いて本シリコン粒子の表面近傍の範囲内で本シリケート化合物と前記マトリクス相を構成する化合物との濃度を比較した場合、本シリケート化合物の表面近傍にあるシリケート化合物結晶子の格子構造の面積は、観察視野の単位面積あたり、前記マトリクス相を構成する化合物の結晶格子構造の面積の2倍以上が好ましく、3倍以上がより好ましく。
本シリケート化合物がマグネシウムシリケート化合物の場合、マグネシウムシリケート化合物が結晶質膜であり本シリコン粒子の表面の少なくとも一部を被覆しているのが好ましい。マグネシウムシリケート化合物が本シリコン粒子の表面の少なくとも一部を被覆している場合、被覆率は50%以上がより好ましく、80%以上が特に好ましい。マグネシウムシリケート化合物が本シリコン粒子の少なくとも一部を被覆している場合、結晶質膜の厚みは0.2nmから10nmが好ましく、1nmから8nmがより好ましい。前記被覆率および結晶質膜の厚みは前記HR-TEMにより測定することができる。被覆率はシリコン粒子とマグネシウムシリケート化合物との量比から求めることができる。
【0030】
本活物質は本シリコン粒子の表面近傍に前記本シリケート化合物以外に二酸化ケイ素を有しているのが、初期クーロン効率と容量維持率とのバランスに優れる観点から好ましい。
本活物質が二酸化ケイ素を有する場合、本シリコン粒子の表面近傍に本シリケート化合物と二酸化ケイ素が存在している。本シリケート化合物と二酸化ケイ素とのモル比は、本シリケート化合物と二酸化ケイ素の合計モル数を1として、二酸化ケイ素のモル比は0.9以下が好ましく、0.5以下がより好ましい。また本シリケート化合物と二酸化ケイ素とのモル比は、本シリケート化合物と二酸化ケイ素の合計モル数を1として、二酸化ケイ素のモル比は0.05以上が好ましく、0.1以上がより好ましい。
【0031】
本活物質が二酸化ケイ素を有する場合、本シリコン粒子の表面がシリコンの酸化膜である二酸化ケイ素膜で被覆されているのが好ましい。本シリコン粒子の表面が二酸化ケイ素膜で被覆されている場合、前記本シリケート化合物は二酸化ケイ素膜の表面に存在するのが好ましい。本シリケート化合物がマグネシウムシリケート化合物の結晶膜の場合、本シリコン粒子を被覆している二酸化ケイ素膜をさらにマグネシウムシリケート化合物の結晶膜が被覆しているのが好ましい。
【0032】
前記本シリコン粒子、マトリクス相および本シリコン粒子の表面近傍に本シリケート化合物を有する本活物質の平均粒径は、1μmから15μmが好ましく、2μmから8μmがより好ましい。平均粒径は前記と同じくD50の値であり、測定方法も前記と同じである。
平均粒径が小さすぎると、比表面積の大幅な上昇につれ、本活物質を二次電池とした時、充放電時に固相界面電解質分解物(以下、「SEI」とも記す。)の生成量が増えることで単位体積当たりの可逆充放電容量が低下することがある。平均粒径が大きすぎると、電極膜作製時に集電体から剥離するおそれがある。
【0033】
また本活物質の比表面積は、1m/gから30m/gが好ましく、2m/gから15m/gがより好ましい。比表面積が前記範囲であると、電極作製時における溶媒の吸収量を適切に保つことができ、結着性を維持するための結着剤の使用量も適切に保つことができる。なお前記比表面積はBET法により求めた値であり、窒素ガス吸着測定により求めることができ、例えば比表面積測定装置を用いて測定することができる。
【0034】
本活物質の平均粒径は1μmから15μm、かつ比表面積は1m/gから30m/gがさらに好ましい。本活物質の平均粒径は2μmから8μm、かつ比表面積は2m/gから15m/gが特に好ましい。
【0035】
本活物質は前記以外に他の必要な第三成分を含んでもよい。
また本活物質は被覆材により表面が被覆されていてもよい。被覆材としては、電子伝導性、リチウムイオン伝導性、電解液の分解抑制効果が期待出来る物質が好ましい。
【0036】
本活物質の表面が前記被覆材により被覆されている場合、被覆層の平均厚みは10nm以上300nm以下が好ましい。前記平均厚みは、より好ましくは20nm以上200nm以下である。本活物質が前記平均厚みの被覆層を有することで、本活物質の表面上に露出した本シリコン粒子を保護することができ、これにより本活物質を負極活物質として用いた場合、負極活物質の化学安定性や熱安定性が改善される。結果として得られる二次電池の充放電性能の低下をさらに抑制することができる。
また本活物質の表面が前記被覆材により被覆されている場合、負極活物質の化学安定性や熱安定性の改善の観点から、被覆材の含有量は前記本活物質の全量を100質量%として、1から30質量%が好ましく、3から25質量%がより好ましい。なお本活物質の全量とは、本活物質を構成する本シリコン粒子、マトリクス相、本シリケート化合物および前記被覆材の合計量である。マトリクス相が窒素を含む場合は、窒素も含む合計量である。
【0037】
前記被覆材としては、炭素、チタン、ニッケル等の電子伝導性物質が挙げられる。これらの中でも、負極活物質の化学安定性や熱安定性改善の観点から、炭素が好ましく、低結晶性炭素がより好ましい。
被覆材が低結晶性炭素の場合、被覆層の平均厚みは10nm以上300nm以下、または、低結晶性炭素の含有量は本活物質の全量を100質量%として、1から30質量%が好ましい。
【0038】
本活物質は、充放電容量、初期効率および容量維持率に優れていることから、本活物質を含む電池負極として用いた二次電池は、良好な充放電特性を発揮する。
具体的には、本活物質と有機結着剤と、必要に応じてその他の導電助剤などの成分を含んで構成されるスラリーを集電体銅箔上へ薄膜状に塗付して負極とすることができる。また、前記のスラリーに黒鉛など炭素材料を加えて負極を作製することもできる。
炭素材料としては、天然黒鉛、人工黒鉛、ハードカーボンまたはソフトカーボンのような非晶質炭素などが挙げられる。
【0039】
例えば、本活物質と、有機結着材であるバインダーとを、溶媒とともに撹拌機、ボールミル、スーパーサンドミル、加圧ニーダ等の分散装置により混練して、負極材スラリーを調製し、これを集電体に塗布して負極層を形成することで得ることができる。また、ペースト状の負極材スラリーをシート状、ペレット状等の形状に成形し、これを集電体と一体化することでも得ることができる。
【0040】
前記有機結着剤としては、例えば、スチレン-ブタジエンゴム共重合体(以下、「SBR」とも記す。);メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、およびヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和カルボン酸エステル、および、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸からなる(メタ)アクリル共重合体等の不飽和カルボン酸共重合体;ポリ弗化ビニリデン、ポリエチレンオキサイド、ポリエピクロヒドリン、ポリホスファゼン、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリアミドイミド、カルボキシメチルセルロース(以下、「CMC」とも記す。)などの高分子化合物が挙げられる。
【0041】
これらの有機結着剤は、それぞれの物性によって、水に分散、あるいは溶解したもの、また、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)などの有機溶剤に溶解したものがある。リチウムイオン二次電池負極の負極層中の有機結着剤の含有比率は、1質量%から30質量%であることが好ましく、2質量%から20質量%であることがより好ましく、3質量%から15質量%であることがさらに好ましい。
【0042】
有機結着剤の含有比率が1質量%以上であることで密着性がより良好で、充放電時の膨張または収縮によって負極構造の破壊がより抑制される。一方、30質量%以下であることで、電極抵抗の上昇がより抑えられる。
かかる範囲において、本活物質は、化学安定性が高く、水性バインダーも採用することができる点で、実用化面においても取り扱い容易である。
【0043】
また、前記負極材スラリーには、必要に応じて、導電助材を混合してもよい。導電助材としては、例えば、カーボンブラック、グラファイト、アセチレンブラック、あるいは導電性を示す酸化物や窒化物等が挙げられる。導電助剤の使用量は、本発明の負極活物質に対して1質量%から15質量%程度とすればよい。
【0044】
また前記集電体の材質および形状については、例えば、銅、ニッケル、チタン、ステンレス鋼等を、箔状、穴開け箔状、メッシュ状等にした帯状のものを用いればよい。また、多孔性材料、たとえばポーラスメタル(発泡メタル)やカーボンペーパーなども使用できる。
【0045】
前記負極材スラリーを集電体に塗布する方法としては、例えば、メタルマスク印刷法、静電塗装法、ディップコート法、スプレーコート法、ロールコート法、ドクターブレード法、グラビアコート法、スクリーン印刷法などが挙げられる。塗布後は、必要に応じて平板プレス、カレンダーロール等による圧延処理を行うことが好ましい。
【0046】
また、前記負極材スラリーをシート状またはペレット状等として、これと集電体との一体化は、例えば、ロール、プレス、もしくはこれらの組み合わせ等により行うことができる。
【0047】
前記集電体上に形成された負極層または集電体と一体化した負極層は、用いた有機結着剤に応じて熱処理することが好ましい。例えば、水系のスチレン-ブタジエンゴム共重合体(SBR)などを用いた場合には100から130℃で熱処理すればよく、ポリイミド、ポリアミドイミドを主骨格とした有機結着剤を用いた場合には150から450℃で熱処理することが好ましい。
【0048】
この熱処理により溶媒の除去、バインダーの硬化による高強度化が進み、粒子間および粒子と集電体間の密着性が向上できる。なお、これらの熱処理は、処理中の集電体の酸化を防ぐため、ヘリウム、アルゴン、窒素等の不活性雰囲気、真空雰囲気で行うことが好ましい。
【0049】
また、熱処理した後に、負極は加圧処理しておくことが好ましい。本活物質を用いた負極では、電極密度が1g/cmから1.8g/cmであることが好ましく、1.1g/cmから1.7g/cmであることがより好ましく、1.2g/cmから1.6g/cmであることがさらに好ましい。電極密度については、高いほど密着性および電極の体積容量密度が向上する傾向がある。一方、電極密度が高すぎると、電極中の空隙が減少することでケイ素など体積膨張の抑制効果が弱くなり、容量維持率が低下することがある。そのため電極密度の最適な範囲が選択される。
【0050】
本発明の二次電池は前記本活物質を負極に含む。本活物質を含む負極を有する二次電池としては、非水電解質二次電池と固体型電解質二次電池が好ましく、特に非水電解質二次電池の負極として用いた際に優れた性能を発揮するものである。
【0051】
前記本発明の二次電池は、例えば、湿式電解質二次電池に用いる場合、正極と、本発明の負極活物質を含む負極とを、セパレータを介して対向して配置し、電解液を注入することにより構成することができる。
【0052】
正極は、負極と同様にして、集電体表面上に正極層を形成することで得ることができる。この場合の集電体はアルミニウム、チタン、ステンレス鋼等の金属や合金を、箔状、穴開け箔状、メッシュ状等にした帯状のものを用いることができる。
【0053】
正極層に用いる正極材料としては、特に制限されない。非水電解質二次電池の中でも、リチウムイオン二次電池を作製する場合には、例えば、リチウムイオンをドーピングまたはインターカレーション可能な金属化合物、金属酸化物、金属硫化物、または導電性高分子材料を用いればよい。例えば、コバルト酸リチウム(LiCoO)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、マンガン酸リチウム(LiMnO)、およびこれらの複合酸化物(LiCoxNiyMnzO、x+y+z=1)、リチウムマンガンスピネル(LiMn)、リチウムバナジウム化合物、V、V13、VO、MnO、TiO、MoV、TiS、V、VS、MoS、MoS、Cr、Cr、オリビン型LiMPO(ただし、MはCo、Ni、MnまたはFe)、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセン等の導電性ポリマー、多孔質炭素等などを単独或いは混合して使用することができる。
【0054】
セパレータとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンを主成分とした不織布、クロス、微孔フィルムまたはそれらを組み合わせたものを使用することができる。なお、作製する非水電解質二次電池の正極と負極が直接接触しない構造にした場合は、セパレータを使用する必要はない。
【0055】
電解液としては、例えば、LiClO、LiPF、LiAsF、LiBF、LiSOCF等のリチウム塩を、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、シクロペンタノン、スルホラン、3-メチルスルホラン、2,4-ジメチルスルホラン、3-メチル-1,3-オキサゾリジン-2-オン、γ-ブチロラクトン、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、ブチルメチルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、ブチルエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,3-ジオキソラン、酢酸メチル、酢酸エチル等の単体もしくは2成分以上の混合物の非水系溶剤に溶解した、いわゆる有機電解液を使用することができる。
【0056】
本発明の二次電池の構造は、特に限定されないが、通常、正極および負極と、必要に応じて設けられるセパレータとを、扁平渦巻状に巻回して巻回式極板群としたり、これらを平板状として積層して積層式極板群としたりし、これら極板群を外装体中に封入した構造とするのが一般的である。なお、本発明の実施例で用いるハーフセルは、負極に本活物質を主体とする構成とし、対極に金属リチウムを用いた簡易評価を行っているが、これはより活物質自体のサイクル特性を明確に比較するためである。
【0057】
本活物質を用いた二次電池は、特に限定されないが、ペーパー型電池、ボタン型電池、コイン型電池、積層型電池、円筒型電池、角型電池などとして使用される。上述した本発明の負極活物質は、リチウムイオンを挿入脱離することを充放電機構とする電気化学装置全般、例えば、ハイブリッドキャパシタ、固体リチウム二次電池などにも適用することが可能である。
【0058】
前記本活物質は、例えば、下記工程1から4を含む方法で製造できる。なお下記工程は、マトリクス相となるケイ素含有化合物としてポリシロキサン化合物と炭素源樹脂を使用する方法を例示しているが、これら方法に限定されるものではない。
工程1: 湿式法粉砕したケイ素(0価)スラリーを、ポリシロキサン化合物と炭素源樹脂を含む集合体と混合させ、懸濁液を得る。
工程2:得られた懸濁液にLi、K、Na、Ca、MgおよびAlからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属の塩を添加、混合後、脱溶媒して前駆体を得る。
工程3: 前記工程2で得られた前駆体を不活性雰囲気中、最高到達温度1000℃から1180℃の温度範囲内で焼成して焼成物を得る。
工程4: 前記工程3で得られた焼成物を粉砕して本活物質を得る。
【0059】
以下、各工程について説明する。
<工程1>
(ケイ素(0価)スラリー)
工程1で用いる湿式法粉砕したケイ素(0価)スラリーの調製は、有機溶媒を用い、シリコン粒子を湿式粉末粉砕装置にて粉砕しながら行うことができる。有機溶媒においてシリコン粒子の粉砕を促進させるために分散剤を用いても良い。湿式粉砕装置としては、特に限定されるものでなく、ローラーミル、高速回転粉砕機、容器駆動型ミル、ビーズミルなどが挙げられる。
湿式粉砕ではシリコン粒子が本シリコン粒子の粒径となるまで粉砕するのが好ましい。
【0060】
湿式法で用いる有機溶媒は、シリコンと化学反応しない有機溶媒が挙げられる。例えば、ケトン類のアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン;アルコール類のエタノール、メタノール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール;芳香族のベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。
【0061】
前記分散剤の種類は、水系や非水系の分散剤が挙げられる。本シリコン粒子の表面に対する過剰酸化を抑制するため、非水系分散剤の使用が好ましい。非水系分散剤の種類は、ポリエーテル系、ポリアルキレンポリアミン系、ポリカルボン酸部分アルキルエステル系などの高分子型、多価アルコールエステル系、アルキルポリアミン系などの低分子型、ポリリン酸塩系などの無機型が例示される。ケイ素(0価)スラリーにおけるケイ素の濃度は特に限定されないが、前記溶媒および、必要に応じて分散剤を含む場合は分散剤とケイ素の合計量を100質量%として、ケイ素の量は5質量%から40質量%の範囲が好ましく、10質量%から30質量%がより好ましい。
【0062】
(ポリシロキサン化合物)
工程1で用いるポリシロキサン化合物としては、ポリカルボシラン構造、ポリシラザン構造、ポリシラン構造およびポリシロキサン構造を少なくとも1つ含む樹脂である。これらの構造のみを含む樹脂であっても良く、これら構造の少なくとも一つをセグメントとして有し、他の重合体セグメントと化学的に結合した複合型樹脂でも良い。複合化の形態はグラフト共重合、ブロック共重合、ランダム共重合、交互共重合などがある。例えば、ポリシロキサンセグメントと重合体セグメントの側鎖に化学的に結合したグラフト構造を有する複合樹脂があり、重合体セグメントの末端にポリシロキサンセグメントが化学的に結合したブロック構造を有する複合樹脂等が挙げられる。
【0063】
ポリシロキサンセグメントが、下記一般式(S-1)および/または下記一般式(S-2)で表される構造単位を有するものが好ましい。なかでもポリシロキサン化合物が、シロキサン結合(Si-O-Si)主骨格の側鎖または末端に、カルボキシ基、エポキシ基、アミノ基、またはポリエーテル基を有することがより好ましい。
【0064】
【化1】
【0065】
【化2】
(前記一般式(S-1)および(S-2)中、Rは置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基またはアルキル基、エポキシ基、カルボキシ基などを表す。RおよびRは、それぞれアルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはアラルキル基、エポキシ基、カルボキシ基などを示す。)
【0066】
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、1,2-ジメチルプロピル基、1-エチルプロピル基、ヘキシル基、イソヘシル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、1,1-ジメチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、1-エチルブチル基、1,1,2-トリメチルプロピル基、1,2,2-トリメチルプロピル基、1-エチル-2-メチルプロピル基、1-エチル-1-メチルプロピル基等が挙げられる。前記のシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0067】
アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、2-メチルフェニル基、3-メチルフェニル基、4-メチルフェニル基、4-ビニルフェニル基、3-イソプロピルフェニル基等が挙げられる。
【0068】
アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、ジフェニルメチル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。
【0069】
ポリシロキサン化合物が有するポリシロキサンセグメント以外の重合体セグメントとしては、例えば、アクリル重合体、フルオロオレフィン重合体、ビニルエステル重合体、芳香族系ビニル重合体、ポリオレフィン重合体等のビニル重合体セグメントや、ポリウレタン重合体セグメント、ポリエステル重合体セグメント、ポリエーテル重合体セグメント等の重合体セグメント等が挙げられる。中でも、ビニル重合体セグメントが好ましい。
【0070】
ポリシロキサン化合物が、ポリシロキサンセグメントと重合体セグメントとが下記の構造式(S-3)で示される構造で結合した複合樹脂でもよく、三次元網目状のポリシロキサン構造を有してもよい。
【0071】
【化3】
(式中、炭素原子は重合体セグメントを構成する炭素原子であり、2個のケイ素原子はポリシロキサンセグメントを構成するケイ素原子である)
【0072】
ポリシロキサン化合物が有するポリシロキサンセグメントは、ポリシロキサンセグメント中に重合性二重結合など加熱により反応が可能な官能基を有していてもよい。熱分解前にポリシロキサン化合物を加熱処理することにより、架橋反応が進行し、固体状とすることにより、熱分解処理を容易に行うことができる。
【0073】
重合性二重結合としては、例えば、ビニル基や(メタ)アクリロイル基等が挙げられる。重合性二重結合は、ポリシロキサンセグメント中に2つ以上存在することが好ましく3から200個存在することがより好ましく、3から50個存在することが更に好ましい。また、ポリシロキサン化合物として重合性二重結合が2個以上存在する複合樹脂を使用することによって、架橋反応が容易に進行させることができる。
【0074】
ポリシロキサンセグメントは、シラノール基および/または加水分解性シリル基を有してもよい。加水分解性シリル基中の加水分解性基としては、例えば、ハロゲン原子、アルコキシ基、置換アルコキシ基、アシロキシ基、フェノキシ基、メルカプト基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、イミノオキシ基、アルケニルオキシ基等が挙げられ、これらの基が加水分解されることにより加水分解性シリル基はシラノール基となる。前記熱硬化反応と並行して、シラノール基中の水酸基や加水分解性シリル基中の前記加水分解性基の間で加水分解縮合反応が進行することで、固体状のポリシロキサン化合物を得ることができる。
【0075】
本発明でいうシラノール基とはケイ素原子に直接結合した水酸基を有するケイ素含有基である。本発明で言う加水分解性シリル基とはケイ素原子に直接結合した加水分解性基を有するケイ素含有基であり、具体的には、例えば、下記の一般式(S-4)で表される基が挙げられる。
【0076】
【化4】
(式中、Rはアルキル基、アリール基またはアラルキル基等の1価の有機基を、Rはハロゲン原子、アルコキシ基、アシロキシ基、アリルオキシ基、メルカプト基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、イミノオキシ基またはアルケニルオキシ基である。またbは0から2の整数である。)
【0077】
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、1,2-ジメチルプロピル基、1-エチルプロピル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、1,1-ジメチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、1-エチルブチル基、1,1,2-トリメチルプロピル基、1,2,2-トリメチルプロピル基、1-エチル-2-メチルプロピル基、1-エチル-1-メチルプロピル基等が挙げられる。
【0078】
アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、2-メチルフェニル基、3-メチルフェニル基、4-メチルフェニル基、4-ビニルフェニル基、3-イソプロピルフェニル基等が挙げられる。
【0079】
アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、ジフェニルメチル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。
【0080】
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0081】
アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、第二ブトキシ基、第三ブトキシ基等が挙げられる。
【0082】
アシロキシ基としては、例えば、ホルミルオキシ基、アセトキシ基、プロパノイルオキシ基、ブタノイルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ペンタノイルオキシ基、フェニルアセトキシ基、アセトアセトキシ基、ベンゾイルオキシ基、ナフトイルオキシ基等が挙げられる。
【0083】
アリルオキシ基としては、例えば、フェニルオキシ基、ナフチルオキシ基等が挙げられる。
【0084】
アルケニルオキシ基としては、例えば、ビニルオキシ基、アリルオキシ基、1-プロペニルオキシ基、イソプロペニルオキシ基、2-ブテニルオキシ基、3-ブテニルオキシ基、2-ペテニルオキシ基、3-メチル-3-ブテニルオキシ基、2-ヘキセニルオキシ基等が挙げられる。
【0085】
前記一般式(S-1)および/または前記一般式(S-2)で示される構造単位を有するポリシロキサンセグメントとしては、例えば以下の構造を有するもの等が挙げられる。
【0086】
【化5】
【0087】
【化6】
【0088】
【化7】
【0089】
重合体セグメントは、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要に応じて各種官能基を有していても良い。かかる官能基としては、例えばカルボキシル基、ブロックされたカルボキシル基、カルボン酸無水基、3級アミノ基、水酸基、ブロックされた水酸基、シクロカーボネート基、エポキシ基、カルボニル基、1級アミド基、2級アミド基、カーバメート基、下記の構造式(S-5)で表される官能基等を使用することができる。
【0090】
【化8】
【0091】
また、前記重合体セグメントは、ビニル基、(メタ)アクリロイル基等の重合性二重結合を有していてもよい。
【0092】
前記ポリシロキサン化合物は、例えば、下記(1)から(3)に示す方法で製造することが好ましい。
【0093】
(1)前記重合体セグメントの原料として、シラノール基および/または加水分解性シリル基を含有する重合体セグメントを予め調製しておき、この重合体セグメントと、シラノール基および/または加水分解性シリル基、並びに重合性二重結合を併有するシラン化合物とを混合し、加水分解縮合反応を行う方法。
【0094】
(2)前記重合体セグメントの原料として、シラノール基および/または加水分解性シリル基を含有する重合体セグメントを予め調製する。また、シラノール基および/または加水分解性シリル基、並びに重合性二重結合を併有するシラン化合物を加水分解縮合反応してポリシロキサンも予め調製しておく。そして、重合体セグメントとポリシロキサンとを混合し、加水分解縮合反応を行う方法。
【0095】
(3)前記重合体セグメントと、シラノール基および/または加水分解性シリル基、並びに重合性二重結合を併有するシラン化合物と、ポリシロキサンとを混合し、加水分解縮合反応を行う方法。
上述方法によりポリシロキサン化合物が得られる。
ポリシロキサン化合物としては、例えば、セラネート(登録商標)シリーズ(有機・無機ハイブリッド型コーティング樹脂;DIC株式会社製)やコンポセランSQシリーズ(シルセスキオキサン型ハイブリッド;荒川化学工業株式会社製)が挙げられる。
【0096】
(炭素源樹脂)
前記工程1で用いる炭素源樹脂は、ポリシロキサン化合物との混和性が良く、また、不活性雰囲気中、高温焼成により炭化され、芳香族官能基を有する合成樹脂や天然化学原料を用いることが好ましい。
【0097】
合成樹脂としては、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸などの熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、フラン樹脂などの熱硬化性樹脂が挙げられる。天然化学原料としては、重質油、特にはタールピッチ類としては、コールタール、タール軽油、タール中油、タール重油、ナフタリン油、アントラセン油、コールタールピッチ、ピッチ油、メソフェーズピッチ、酸素架橋石油ピッチ、ヘビーオイルなどが挙げられるが、安価入手や不純物排除の観点からフェノール樹脂の使用がより好ましい。
【0098】
特に、前記工程1においては、炭素源樹脂が、芳香族炭化水素部位を含む樹脂であることが好ましく、前記の芳香族炭化水素部位を含む樹脂が、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、または熱硬化性樹脂であることが好ましく、フェノール樹脂はレゾール型が好ましい。
フェノール樹脂としては、例えばスミライトレジンシリーズ(レゾール型フェノール樹脂,住友ベークライト株式会社製)が挙げられる。
【0099】
<工程2>
前記工程2で用いるLi、K、Na、Ca、MgおよびAlからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属の塩(以下、「本金属塩」と記す。)としては、これら金属のフッ化物、塩化物、臭化物等のハロゲン化物、水酸化物、炭酸塩等が挙げられる。
本金属塩は2種以上の金属の塩でもよく、一つの塩が複数種の金属を有していてもよいし、異なる金属を有する塩の混合物であってもよい。
本金属塩を前記工程1で得られた懸濁液に添加する際の本金属塩の添加量は、特に制限がないが、シリコン粒子全量のモル数に対して金属塩化合物添加量のモル比が、0.01から0.4が好ましい。
混合の方法は、有機溶媒に可溶の場合に前記金属塩を有機溶媒に溶かして前記懸濁液に加えて混合する方法が挙げられる。有機溶媒に不溶の場合、本金属塩の粒子を有機溶媒に分散してから前記懸濁液に加えて混合すればよい。前記金属塩は、分散効果向上の観点から平均粒径が100nm以下のナノ粒子が好ましい。前記有機溶媒は、アルコール類、ケトン類などを好適に用いることができるが、トルエン、キシレン、ナフタレン、メチルナフタレンなどの芳香族炭化水素系溶剤も用いることができる。
【0100】
(前駆体)
前記工程1で得られた懸濁液と前記本金属塩とを均一に混合し、攪拌した後、脱溶媒と乾燥を経て本活物質の前駆体(以下、「前駆体」とも記す。)が得られる。ポリシロキサン化合物と炭素源樹脂を含む集合体は、ポリシロキサン化合物と炭素源樹脂とが均一に混合した状態であることが好ましい。前記混合は分散および混合の機能を有する装置を用いて行われる。例えば、攪拌機、超音波ミキサー、プリミックス分散機などが挙げられる。有機溶媒を溜去することを目的とする脱溶剤と乾燥の作業では、乾燥機、減圧乾燥機、噴霧乾燥機などを用いることができる。
【0101】
前駆体は、ケイ素(0価)である本シリコン粒子を3質量%から50質量%、ポリシロキサン化合物の固形分を15質量%から85質量%、炭素源樹脂の固形分を3質量%から70質量%含有するのが好ましく、本シリコン粒子の固形分含有量を8質量%から40質量%、ポリシロキサン化合物の固形分を20から70質量%、炭素源樹脂の固形分を3質量%から60質量%含有するのがより好ましい。
【0102】
工程2により、前記懸濁液に前記本金属塩を均一に分散させることで本金属塩の分子と本シリコン粒子を十分に接触させることができる。本シリコン粒子の表面や周辺に酸化ケイ素が存在する場合、前記本金属塩の分子と本シリコン粒子が固相反応する条件で、本金属塩の分子と本シリコン粒子を十分に接触させることで本シリコン粒子の表面近傍に本シリケート化合物を存在させることができる。本シリコン粒子の表面近傍における本シリケート化合物の濃度を、前記マトリクス相を構成する化合物の濃度より高濃度とするためには前記本金属塩と本シリコン粒子の接触状態を向上させるのが重要である。
また、有機添加物を用いて前記本金属塩の分子を表面修飾することで、本シリコン粒子の表面付近に付着させることができる。有機添加物の分子構造は、特に制限はないが、本シリコン粒子の表面上に存在している分散剤との物理的または化学的な結合ができれば良い。前記物理的または化学的結合は、静電作用、水素結合、分子間ファンデルワールス力、イオン結合、共有結合などが挙げられる。高温焼成の時、前記本金属塩の分子が本シリコン粒子の表面の酸化ケイ素と固相反応することにより、本シリコン粒子の表面を本シリケート化合物で被覆することができる。
【0103】
<工程3>
工程3は、前記工程2で得られた前駆体を不活性雰囲気中、最高到達温度900℃から1200℃の温度範囲内で焼成することで、熱分解可能な有機成分を完全分解させ、その他の主成分を焼成条件の精密制御により本活物質に適した焼成物とする工程である。具体的にいうと、原料のポリシロキサン化合物および炭素源樹脂が高温処理のエネルギーによってケイ素-酸素-炭素骨格とフリー炭素に転化される。
【0104】
前記焼成は昇温速度、一定温度での保持時間等により規定される焼成のプログラムに沿って行われる。最高到達温度は、設定する最高温度であり、焼成物である二次電池用複合活物質の構造や性能に強く影響を与えるものである。本発明では最高到達温度を900℃から1200℃とすることにより、前記ケイ素と炭素の化学結合状態を保有する二次電池用活物質の微細構造が精密に制御でき、過高温焼成での本シリコン粒子の酸化も回避できることでより優れた充放電特性が得られる。
【0105】
焼成方法は、特に限定されないが、不活性雰囲気中にて加熱機能を有する反応装置を用いればよく、連続法、回分法での処理が可能である。焼成用装置については、流動層反応炉、回転炉、竪型移動層反応炉、トンネル炉、バッチ炉、ロータリーキルン等をその目的に応じ適宜選択することができる。
【0106】
<工程4>
工程4は、前記工程3で得られた焼成物を粉砕し、必要に応じて分級することで本活物質を得る工程である。粉砕は、目的とする粒径まで一段で行っても良いし、数段に分けて行っても良い。例えば10mm以上の塊または凝集粒子の焼成物から、10μm程度の活物質を作製する場合はジョークラッシャー、ロールクラッシャー等で粗粉砕を行い、1mm程度の粒子にした後、グローミル、ボールミル等で100μm程度とし、ビーズミル、ジェットミル等で10μm程度まで粉砕する。粉砕で作製した粒子には粗大粒子が含まれる場合がありそれを取り除くため、または、微粉を取り除いて粒度分布を調整する場合は分級を行う。使用する分級機は風力分級機、湿式分級機等目的に応じて使い分けるが、粗大粒子を取り除く場合、篩を通す分級方式が確実に目的を達成できるために好ましい。なお、焼成前に前駆体混合物を噴霧乾燥等により目標粒子径付近の形状に制御し、その形状で焼成を行った場合は、粉砕工程を省くことも可能である。
【0107】
本シリコン粒子が前記二酸化ケイ素を有する場合、前記工程2の脱溶媒および乾燥の過程、および前記工程3の過程で、本シリコン粒子の表面を酸化し、二酸化ケイ素膜を形成させることができる。
【0108】
前記のとおり、本活物質を二次電池の負極活物質とした時、初期のクーロン効率および容量維持率に優れた二次電池を与える。
本活物質は前記方法により負極として用い、前記負極を有する二次電池とすることができる。
以上、本活物質、本活物質を負極に含む二次電池に関して説明したが、本発明は前記の実施形態の構成に限定されない。
本活物質および本活物質を負極に含む二次電池は前記実施形態の構成において、他の任意の構成を追加してもよいし、同様の機能を発揮する任意の構成と置換されていてもよい。
【実施例
【0109】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
なお、本発明の実施例で用いるハーフセルは、負極に本発明のケイ素含有活物質を主体とする構成とし、対極に金属リチウムを用いた簡易評価を行っているが、これはより活物質自体のサイクル特性を明確に比較するためである。
【0110】
合成例1:シリコン粒子の作製
150mlの小型ビーズミル装置の容器中に60%の充填率で粒径が0.1mmから0.2mmのジルコニアビーズおよび100mlのメチルエチルケトン溶媒(MEK)を入れた。その後、平均粒径が5μmのシリコン粉体(市販品)とカチオン性分散剤液(ビックケミー・ジャパン株式会社:BYK145)を入れ、表1に記載の条件下にてビーズミル湿式粉砕を行い、固形物濃度が30質量%の濃い褐色液体状のシリコンスラリーを得た。TEM観察でシリコン粉砕品の形態およびサイズを確認し、表1に示したように、それぞれをSi1、Si2、Si3、Si4およびSi5とした。
【0111】
【表1】
【0112】
合成例2:ポリシロキサン化合物の作製
(メチルトリメトキシシランの縮合物(a1)の合成)
攪拌機、温度計、滴下ロート、冷却管および窒素ガス導入口を備えた反応容器に、1、421質量部のメチルトリメトキシシラン(以下、「MTMS」と略記する。)を仕込んで、60℃まで昇温した。次いで、前記反応容器中に0.17質量部のiso-プロピルアシッドホスフェート(SC有機化学株式会社製「Phoslex A-3」)と207質量部の脱イオン水との混合物を5分間で滴下した後、80℃の温度で4時間撹拌して加水分解縮合反応させた。
前記の加水分解縮合反応によって得られた縮合物を、温度40から60℃および40から1.3kPaの減圧下で蒸留した。なお、「40から1.3kPaの減圧下」とは、メタノールの留去開始時の減圧条件が40kPaで、最終的に1.3kPaとなるまで減圧することを意味する。以下の記載においても同様である。前記反応過程で生成したメタノールおよび水を除去することによって、数平均分子量1,000から5,000のMTMSの縮合物(a1)を含有する液を1、000質量部得た。得られた液の有効成分は70質量%であった。
なお、前記有効成分とは、MTMS等のシランモノマーのメトキシ基が全て縮合反応した場合の理論収量(質量部)を、縮合反応後の実収量(質量部)で除した値、〔シランモノマーのメトキシ基が全て縮合反応した場合の理論収量(質量部)/縮合反応後の実収量(質量部)〕、により算出したものである。
【0113】
(硬化性樹脂組成物(1)の製造)
撹拌機、温度計、滴下ロート、冷却管および窒素ガス導入口を備えた反応容器に、150質量部のブタノール(以下、「BuOH」とも記す。)、105質量部のフェニルトリメトキシシラン(以下、「PTMS」とも記す。)、277質量部のジメチルジメトキシシラン(以下、「DMDMS」とも記す。)を仕込んで80℃まで昇温した。
次いで、同温度で21質量部のメチルメタアクリレート(以下、「MMA」とも記す。)、4質量部のブチルメタアクリレート(以下、「BMA」とも記す。)、3質量部の酪酸(以下、「BA」とも記す。)、2質量部のメタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(以下、「MPTS」とも記す。)、3質量部のBuOHおよび0.6質量部のブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート(以下、「TBPEH」とも記す。)を含有する混合物を、前記反応容器中へ6時間で滴下した。滴下終了後、更に同温度で20時間反応させて加水分解性シリル基を有する数平均分子量が10,000のビニル重合体(a2-1)の有機溶剤溶液を得た。
【0114】
次いで、0.04質量部のiso-プロピルアシッドホスフェート(SC有機化学株式会社製「Phoslex A-3」)と112質量部の脱イオン水との混合物を、5分間で滴下し、更に同温度で10時間撹拌して加水分解縮合反応させることで、ビニル重合体(a2-1)を有する加水分解性シリル基と、前記PTMSおよびDMDMS由来のポリシロキサンを有する加水分解性シリル基およびシラノール基とが結合した複合樹脂を含有する液を得た。
次いで、この液に472質量部の合成例2で得られたMTMSの縮合物(a1)、80質量部の脱イオン水を添加し、同温度で10時間撹拌して加水分解縮合反応させ、合成例1と同様の条件で蒸留することによって生成したメタノールおよび水を除去した。次いで、250質量部のBuOHを添加し、不揮発分が60.1質量%の硬化性樹脂組成物(1)を1、000質量部得た。
【0115】
(硬化性樹脂組成物(2)の製造)
撹拌機、温度計、滴下ロート、冷却管および窒素ガス導入口を備えた反応容器に、150質量部のBuOH、249質量部のPTMS、263質量部のDMDMSを仕込んで80℃まで昇温した。
次いで、同温度で18質量部のMMA、14質量部のBMA、7質量部のBA、1質量部のアクリル酸(以下、「AA」とも記す。)、2質量部のMPTS、6質量部のBuOHおよび0.9質量部のTBPEHを含有する混合物を、前記反応容器中へ5時間で滴下した。滴下終了後、更に同温度で10時間反応させて加水分解性シリル基を有する数平均分子量が20、100のビニル重合体(a2-2)の有機溶剤溶液を得た。
【0116】
次いで、0.05質量部のiso-プロピルアシッドホスフェート(SC有機化学株式会社製「Phoslex A-3」)と147質量部の脱イオン水との混合物を、5分間で滴下し、更に同温度で10時間撹拌して加水分解縮合反応させることで、ビニル重合体(a2-2)を有する加水分解性シリル基と、前記PTMSおよびDMDMS由来のポリシロキサンの有する加水分解性シリル基およびシラノール基とが結合した複合樹脂を含有する液を得た。
次いで、この液に76質量部の3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、231質量部の合成例2で得られたMTMSの縮合物(a1)、56質量部の脱イオン水を添加し、同温度で15時間撹拌して加水分解縮合反応させ、合成例1と同様の条件で蒸留することによって生成したメタノールおよび水を除去した。次いで、250質量部のBuOHを添加し、不揮発分が60.0質量%の硬化性樹脂組成物(2)を1,000質量部得た。
【0117】
実施例1
前記合成例2で作製した平均分子量3500のポリシロキサン樹脂(硬化性樹脂組成物(1))および平均分子量3000のフェノール樹脂を45/55の樹脂固形物の重量比で加え、高温焼成後の生成物中のシリコン粒子含有量が50質量%となるように合成例1で得られたSi3のシリコンスラリーと、適量のメチルエチルケトン溶媒を添加し、撹拌機中にて十分に混合した。その結果、固形物濃度が10質量%のシリコン粒子含有樹脂の混合懸濁液を得た。シリコン粒子の量に対してMg2+/Si(モル比)=2.5/100となるようにMgClを原料として前記シリコン粒子含有樹脂の混合懸濁液に加え、充分に混合後に120℃のオイルバース中、窒素フロー条件下にて脱溶媒を行った。
【0118】
その後、真空乾燥機を用いて110℃で減圧乾燥を10時間行い、最後に窒素雰囲気中、1100℃で4時間、高温焼成することで黒色固形物の複合粒子を得た。遊星型ボールミルで粉砕後に活物質複合粒子を作製した。
得られた活物質複合粒子のD50は約5.5μmであり、比表面積が3.6m/gであった。Cu-Kα線による粉末X線回折(XRD)の測定結果によりシリコン(111)結晶面に帰属する回折ピーク(2θ=28.4度)の半値幅に基づき、シェラー式により求めた。シリコン結晶子サイズは21nmであった。
29Si-NMR(JEOL RESONANCE社製)スペクトル測定から、MgSiO構造体に帰属の-85ppm付近のピークとSiO構造体に帰属の-110ppm付近のピークの面積比が10/90であった。HR-TEM(High―Resolution Transmission Electron Microscopy)観察結果からシリコン粒子表面上にMgSiO層の厚みは約0.8nmであり、シリコン粒子から離れたマトリクス相中にMgSiOと見られる結晶体の格子構造が存在しないことが判明した。また、エネルギー分散型X線分析(Energy dispersive X―ray spectroscopy、EDS)の結果からシリコン粒子の添加量を除いた後のマトリクス相の元素組成比がSiO1.75.60.1であった。
【0119】
80質量部の前記で得られた活物質複合粒子と導電助剤として10質量部のアセチレンブラックおよびバインダーとして10質量部のCMCとSBRとの混合物とを混合してスラリーを調製した。得られたスラリーを銅箔上に製膜した。110℃で減圧乾燥後、Li金属箔を対極としてハーフセルとしてコイン型リチウムイオン電池を作製した。二次電池充放電試験装置(北斗(株)製) を用い、作製したハーフセルの充放電特性の評価を行った。カットオフ電圧範囲は0.005から1.5Vとした。充放電の測定結果は、初回放電容量が1545mAh/g、初回クーロン効率が85%であった。
フルセルの評価は、正極材料としてLiCoOを正極活物質、集電体としてアルミ箔を用いた単層シートを用いて、正極膜を作製し、450mAh/gの放電容量設計値にて黒鉛粉体と活物質粉末を混合して負極膜を作製した。非水電解質には六フッ化リン酸リチウムをエチレンカーボネートとジエチルカーボネートを体積比で1/1の混合液に1mol/Lの濃度で溶解した非水電解質溶液を用い、セパレータに厚さ30μmのポリエチレン製微多孔質フィルムを用いたラミ型リチウムイオン二次電池を作製した。ラミ型リチウムイオン二次電池を室温下、テストセルの電圧が4.2Vに達するまで1.2mA(正極基準で0.25c)の定電流で充電を行い、4.2Vに達した後は、セル電圧を4.2Vに保つように電流を減少させて充電を行い、放電容量を求めた。45℃で100サイクル後の容量維持率が91%であった。結果を表2に示した。
【0120】
実施例2から5
シリコン粒子の量に対してMg2+/Si(モル比)をそれぞれ4.0/100(実施例2)、5.5/100(実施例3)、7.5/100(実施例4)、12/100(実施例5)となるようにMgClを原料として前記シリコン粒子含有樹脂の混合懸濁液に加えた。その他の条件は実施例1と同様にして活物質複合粒子を得た。得られた活物質複合粒子を含む負極活物質を用いた二次電池の評価を行った。結果を表2に示した。
【0121】
実施例6
前駆体作製条件などを実施例5と同様に、焼成温度を1180℃にして活物質複合粒子を得た。得られた活物質複合粒子を含む負極活物質を用いた二次電池の評価を行った。結果を表2に示した。
【0122】
実施例7から8
MgClの代わりにLiClをシリケート化合物の原料として用いた。シリコン粒子の量に対してLi/Si(モル比)をそれぞれ10/100(実施例7)、24/100(実施例8)にしてLiClを前記シリコン粒子含有樹脂混合懸濁液に加え、焼成温度は1000℃にした。その他の条件は実施例1と同様にして活物質複合粒子を得た。得られた活物質複合粒子を含む負極活物質を用いた二次電池の評価を行った。結果を表2に示した。
【0123】
実施例9から11
前記合成例2と同様にして作製した平均分子量3500のポリシロキサン樹脂(硬化性樹脂組成物(2))および平均分子量3000のフェノール樹脂を樹脂固形物の重量比として10/90(実施例9)、20/80(実施例10)、80/20(実施例11)とした。MgCl添加量は、実施例4と同様にしてシリコン粒子の量に対してMg2+/Si(モル比)を7.5/100となるようにMgCl原料を前記シリコン粒子含有樹脂の混合懸濁液に加えた。その他の条件は実施例1と同様にして、活物質複合粒子を得た。得られた活物質複合粒子を含む負極活物質を用いた二次電池の評価を行った。結果を表2に示した。
【0124】
実施例12から14
実施例1に記載のシリコン粒子含有樹脂の混合懸濁液のシリコン粒子を、合成例1で得られたシリコン粒子Si4(実施例12)、Si2(実施例13)、およびSi1(実施例14)に替え、その他の条件は実施例1と同様にして、活物質複合粒子を得た。得られた活物質複合粒子を含む負極活物質を用いた二次電池の評価を行った。結果を表2に示した。
【0125】
実施例15
MgClの添加量をシリコン粒子の量に対してMg2+/Si(モル比)が2.0/100となるようにした以外は実施例4と同様にして。活物質複合粒子を得た。得られた活物質複合粒子を含む負極活物質を用いた二次電池の評価を行った。結果を表2に示した。
【0126】
実施例16
市販品シリコン粒子(Alfa Aesar社製、50nm)とピッチ(炭素源)を用い、高温焼成後にシリコン粒子含有量が50重量%になるようにシリコン粒子含有樹脂の混合懸濁液を調製した。その他の条件は、実施例1と同様にして、活物質複合粒子を得た。得られた活物質複合粒子を含む負極活物質を用いた二次電池の評価を行った。結果を表2に示した。
【0127】
比較例1
シリケート化合物としてLiまたはMg2+の化合物を添加せず、その他の条件は実施例1と同様に前駆体乾燥物を調製後、窒素雰囲気下、1100℃にて4時間焼成して活物質粉末を得た。活物質粉末のD50は約5.4μmであり、比表面積は4.1m/gであった。充放電測定結果は、ハーフセルにて充放電容量が1935mAh/g、放電容量が1587mAh/g、初回効率が80.1%であり、45℃でのフルセルでの100サイクル後の容量維持率が90%であった。
【0128】
比較例2
前記シリコン粒子含有樹脂の混合懸濁液に合成例1のシリコン粒子Si5を用いて前駆体を作製した。その他の条件は実施例1と同様にして、活物質複合粒子を得た。得られた活物質複合粒子を含む負極活物質を用いた二次電池の評価を行った。結果を表2に示した。
【0129】
【表2】
【0130】
[評価方法]
表2中、各評価方法は以下のとおりである。
D50:レーザー回折式粒度分布測定装置(マルバーン・パナリティカル社製、マスターサイザー3000)を用いて測定した。
比表面積:比表面積測定装置(BELJAPAN社製、BELSORP-mini)を用いて窒素吸着測定より、BET法で測定した。29Si-NMR:JEOL RESONANCE社製、JNM-ECA600を用いた。
【0131】
電池特性評価:二次電池充放電試験装置(北斗電工株式会社製)を用いて電池特性を測定し、室温25℃、カットオフ電圧範囲が0.005から1.5Vに、充放電レートが0.1C(1から3回)と0.2C(4サイクル以後)にし、定電流・定電圧式充電/定電流式放電の設定条件下で充放電特性の評価試験を行った。各充放電時の切り替え時には、30分間、開回路で放置した。初回クーロン効率とサイクル特性(本願では100サイクル時の容量維持率を指す)は以下のようにして求めた。初回(クーロン)効率(%)=初回放電容量(mAh/g)/初回充電容量(mAh/g)容量維持率(%@100回目)=100回目の放電容量(mAh/g)/初回放電容量(mAh/g)
【0132】
前記結果から明らかなように、本活物質を負極活物質として用いた場合、初回クーロン効率は83%以上、容量維持率が85%以上と全体的に高く、またこれら二次電池の特性のバランスに優れる。また本活物質を負極活物質として含む二次電池はその電池特性に優れている。