(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】熱伝導組成物及びその硬化物
(51)【国際特許分類】
C08L 83/04 20060101AFI20231011BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20231011BHJP
C08K 3/28 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
C08L83/04
C08K3/22
C08K3/28
(21)【出願番号】P 2023542691
(86)(22)【出願日】2022-11-02
(86)【国際出願番号】 JP2022041047
【審査請求日】2023-07-13
(31)【優先権主張番号】P 2021209266
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 光
(72)【発明者】
【氏名】舟橋 一
(72)【発明者】
【氏名】行武 初
【審査官】常見 優
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/262449(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/016566(WO,A1)
【文献】特開2020-090584(JP,A)
【文献】特開2017-210518(JP,A)
【文献】特開平11-307700(JP,A)
【文献】特開平10-110179(JP,A)
【文献】特開2000-109373(JP,A)
【文献】特開平11-049958(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/16
C08K 3/00- 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化型シリコーン樹脂(A)と、熱伝導性粉末(B)とを含む熱伝導組成物であって、
前記熱伝導性粉末(B)の含有量は、前記熱伝導組成物全量に対して70~98質量%であり、
前記熱伝導性粉末(B)は、前記熱伝導性粉末(B)全量に対して、積算体積50%粒径が50μm以上、150μm以下の窒化アルミニウム粒子(B-1)を30~75質量%、積算体積50%粒径が15μm以上、50μm未満の窒化アルミニウム粒子(B-2)を10~30質量%、積算体積50%粒径が1μm以上、20μm未満の酸化亜鉛以外の金属酸化物(B-3)を5~15質量%、及び積算体積50%粒径が0.1μm以上、1μm未満、かつBET比表面積9.0m2/g未満の酸化亜鉛(B-4)を10~40質量%含み、
前記酸化亜鉛以外の金属酸化物(B-3)及び前記酸化亜鉛(B-4)は、いずれも炭素数10~22のアルキル基を有するシランカップリング剤及びα-ブチル-ω-(2-トリメトキシシリルエチル)ポリジメチルシロキサンからなる群より選ばれる少なくとも1種の表面処理剤で表面処理されてなる熱伝導組成物。
【請求項2】
前記窒化アルミニウム粒子(B-2)は、非焼結の破砕状窒化アルミニウム粒子である請求項1に記載の熱伝導組成物。
【請求項3】
前記酸化亜鉛以外の金属酸化物(B-3)は、アルミナである請求項1又は2に記載の熱伝導組成物。
【請求項4】
前記窒化アルミニウム粒子(B-1)及び前記窒化アルミニウム粒子(B-2)からなる群より選ばれる少なくとも1種の窒化アルミニウム粒子は、表面に珪素含有酸化物被膜を有する
請求項1又は2に記載の熱伝導組成物。
【請求項5】
前記硬化型シリコーン樹脂(A)は、付加反応硬化型シリコーン樹脂である
請求項1又は2に記載の熱伝導組成物。
【請求項6】
前記付加反応硬化型シリコーン樹脂は、アルケニル基を有するオルガノポリシロキサン(a-1)、ヒドロシリル基を有するオルガノポリシロキサン(a-2)、及び白金族金属系硬化触媒(a-3)から構成される請求項5に記載の熱伝導組成物。
【請求項7】
さらにジメチルシリコーンオイル(C)を含む
請求項1又は2に記載の熱伝導組成物。
【請求項8】
25℃における粘度が50000Pa・s以下である
請求項1又は2に記載の熱伝導組成物。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の熱伝導組成物の硬化物。
【請求項10】
熱伝導率が10.0W/m・K以上である請求項9に記載の熱伝導組成物の硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導組成物及びその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器、部品の高性能化、小型化に伴い、電子機器等から発生する熱量が大きくなり、効率的に熱を逃がすための手法が盛んに研究されている。特に、発熱源からヒートシンクへ効率的に熱を逃がすために、その間に介在させる熱伝導組成物は高い熱伝導性、及び絶縁性が求められる。一般に熱伝導組成物の構成は、樹脂等のマトリックスに熱伝導性を付与する粉末(熱伝導性粉末)が充填されたものである。熱伝導性粉末としては、アルミナ等の金属酸化物、窒化アルミニウム等の金属窒化物が用いられる。
【0003】
発熱量の増加、機器の小型化に伴い、熱伝導組成物の熱伝導率を更に向上させることが求められており、熱伝導性粉末の充填量を増加することで対応している。
例えば、特許文献1には、熱伝導性充填剤、並びにアルコキシシリル基含有化合物及びジメチルポリシロキサンからなる群より選択される1種以上を含有し、前記熱伝導性充填剤は、平均粒径50μm以上150μm以下の特定形状の窒化アルミニウム粒子及び平均粒径10μm以上50μm未満の特定形状の窒化アルミニウム粒子を20~100質量%含み、かつ、平均粒径50μm以上150μm以下の特定形状の窒化アルミニウム粒子及び平均粒径10μm以上50μm未満の特定形状の窒化アルミニウム粒子の含有比率が質量基準で50:50~95:5である、熱伝導性ポリシロキサン組成物が開示されている。また、特許文献2には、オルガノポリシロキサンをベースポリマーとし、熱伝導性充填材として、平均粒径10~100μmの窒化アルミニウムと平均粒径0.1~5μmの破砕状アルミナとを含み、破砕状アルミナを窒化アルミニウムと破砕状アルミナとの合計量中15~55質量%含有すると共に、窒化アルミニウムと破砕状アルミナとを合計で熱伝導性シリコーン組成物中60~95質量%含有する熱伝導性シリコーン組成物が開示されている。特許文献3には、熱伝導性充填剤、並びにアルコキシシリル基含有化合物及びジメチルポリシロキサンからなる群より選択される1種以上を含有し、前記熱伝導性充填剤が、平均粒径の異なる2種類以上の熱伝導性充填剤からなり、かつ、平均粒径30μm以上150μm以下の不定形の窒化アルミニウム粒子を熱伝導性充填剤全体に対し20質量%以上含む熱伝導性ポリシロキサン組成物が開示されている。さらに、特許文献4には、オルガノポリシロキサンを6~40体積%、熱伝導性充填材を60~94体積%の比率で含有し、前記熱伝導性充填材は、平均粒径40μm以上、かつ粒径5μm以下の微粉が1質量%以下である非焼結の破砕状窒化アルミニウムと、該非焼結の破砕状窒化アルミニウム以外であって平均粒径1μm以上である熱伝導性物質とからなり、前記熱伝導性物質が30~65体積%である熱伝導性シリコーン組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2020/262449号
【文献】特開2017-210518号公報
【文献】国際公開第2018/016566号
【文献】特開2020-90584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、組成物中の充填材量が増えると、該組成物の粘度が高くなり、流動性が悪化するという問題が生じる。また、熱伝導組成物を熱発生源等に塗布する場合、作業性が悪くなり、場合によっては対象物に損傷を与えるおそれもある。
【0006】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、高い熱伝導性能と良好な流動性を両立した熱伝導組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決するべく鋭意検討した結果、下記の発明により前記課題を解決できることを見出した。
【0008】
すなわち、本願発明は、以下に関する。
[1] 硬化型シリコーン樹脂(A)と、熱伝導性粉末(B)とを含む熱伝導組成物であって、
前記熱伝導性粉末(B)の含有量は、前記熱伝導組成物全量に対して70~98質量%であり、
前記熱伝導性粉末(B)は、前記熱伝導性粉末(B)全量に対して、積算体積50%粒径が50μm以上、150μm以下の窒化アルミニウム粒子(B-1)を30~75質量%、積算体積50%粒径が15μm以上、50μm未満の窒化アルミニウム粒子(B-2)を10~30質量%、積算体積50%粒径が1μm以上、20μm未満の酸化亜鉛以外の金属酸化物(B-3)を5~15質量%、及び積算体積50%粒径が0.1μm以上、1μm未満、かつBET比表面積9.0m2/g未満の酸化亜鉛(B-4)を10~40質量%含み、
前記酸化亜鉛以外の金属酸化物(B-3)及び前記酸化亜鉛(B-4)は、いずれも炭素数10~22のアルキル基を有するシランカップリング剤及びα-ブチル-ω-(2-トリメトキシシリルエチル)ポリジメチルシロキサンからなる群より選ばれる少なくとも1種の表面処理剤で表面処理されてなる熱伝導組成物。
[2] 前記窒化アルミニウム粒子(B-2)は、非焼結の破砕状窒化アルミニウム粒子である上記[1]に記載の熱伝導組成物。
[3] 前記酸化亜鉛以外の金属酸化物(B-3)は、アルミナである上記[1]又は[2]に記載の熱伝導組成物。
[4] 前記窒化アルミニウム粒子(B-1)及び前記窒化アルミニウム粒子(B-2)からなる群より選ばれる少なくとも1種の窒化アルミニウム粒子は、表面に珪素含有酸化物被膜を有する上記[1]~[3]のいずれかに記載の熱伝導組成物。
[5] 前記硬化型シリコーン樹脂(A)は、付加反応硬化型シリコーン樹脂である上記[1]~[4]のいずれかに記載の熱伝導組成物。
[6] 前記付加反応硬化型シリコーン樹脂は、アルケニル基を有するオルガノポリシロキサン(a-1)、ヒドロシリル基を有するオルガノポリシロキサン(a-2)、及び白金族金属系硬化触媒(a-3)から構成される上記[5]に記載の熱伝導組成物。
[7] さらにジメチルシリコーンオイル(C)を含む上記[1]~[6]のいずれかに記載の熱伝導組成物。
[8] 25℃における粘度が50000Pa・s以下である上記[1]~[7]のいずれかに記載の熱伝導組成物。
[9] 上記[1]~[8]のいずれかに記載の熱伝導組成物の硬化物。
[10] 熱伝導率が10.0W/m・K以上である上記[9]に記載の熱伝導組成物の硬化物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高い熱伝導性能と良好な流動性を両立した熱伝導組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について、一実施形態を参照しながら詳細に説明する。
<熱伝導組成物>
本実施形態の熱伝導組成物は、硬化型シリコーン樹脂(A)と、熱伝導性粉末(B)とを含む熱伝導組成物であって、
前記熱伝導性粉末(B)の含有量は、前記熱伝導組成物全量に対して70~98質量%であり、
前記熱伝導性粉末(B)は、前記熱伝導性粉末(B)全量に対して、積算体積50%粒径が50μm以上、150μm以下の窒化アルミニウム粒子(B-1)を30~75質量%、積算体積50%粒径が15μm以上、50μm未満の窒化アルミニウム粒子(B-2)を10~30質量%、積算体積50%粒径が1μm以上、20μm未満の酸化亜鉛以外の金属酸化物(B-3)を5~15質量%、及び積算体積50%粒径が0.1μm以上、1μm未満、かつBET比表面積9.0m2/g未満の酸化亜鉛(B-4)を10~40質量%含み、
前記酸化亜鉛以外の金属酸化物(B-3)及び前記酸化亜鉛(B-4)は、いずれも炭素数10~22のアルキル基を有するシランカップリング剤及びα-ブチル-ω-(2-トリメトキシシリルエチル)ポリジメチルシロキサンからなる群より選ばれる少なくとも1種の表面処理剤で表面処理されてなる。
本実施形態の熱伝導組成物は、熱伝導性粉末(B)として、前記窒化アルミニウム粒子(B-1)、前記窒化アルミニウム粒子(B-2)、前記酸化亜鉛以外の金属酸化物(B-3)、及び前記酸化亜鉛(B-4)をそれぞれ特定の割合で含むことにより、高い熱伝導性能と良好な流動性を両立することができる。
【0011】
〔硬化型シリコーン樹脂(A)〕
本実施形態で用いる硬化型シリコーン樹脂(A)は、オルガノポリシロキサン構造を主鎖とする樹脂であり、付加反応硬化型シリコーン樹脂、縮合反応硬化型シリコーン樹脂、有機過酸化物硬化型シリコーン樹脂などが挙げられる。中でも、柔軟性を高める観点から、付加反応硬化型シリコーン樹脂が好ましい。
【0012】
付加反応硬化型シリコーン樹脂は、2種類のオルガノポリシロキサン中の官能基が付加反応により結合して架橋される構成であり、例えば、ベースポリマーであるアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン(a-1)、架橋剤であるヒドロシリル基を有するオルガノポリシロキサン(a-2)、及び白金族金属系硬化触媒(a-3)から構成されることが好ましい。
【0013】
[アルケニル基を有するオルガノポリシロキサン(a-1)]
アルケニル基を有するオルガノポリシロキサン(a-1)としては、例えば、一分子中に2個以上のケイ素原子に結合したアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン(以下、アルケニル基含有オルガノポリシロキサンともいう)が挙げられる。
前記アルケニル基含有オルガノポリシロキサンは、一分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基を好ましくは2~20個、より好ましくは2~10個有する。
前記アルケニル基含有オルガノポリシロキサンは、通常、主鎖部分が基本的にジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなり、これは分子構造の一部に分枝状の構造を含んだものであってもよく、環状体であってもよいが、硬化物の機械的強度の観点から、直鎖状のジオルガノポリシロキサンであることが好ましい。
【0014】
ケイ素原子に結合したアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。中でも、ヒドロシリル基を有するオルガノポリシロキサン(a-2)との反応性、及び入手し易さの観点から、ビニル基、アリル基等の低級アルケニル基が好ましく、特にビニル基が好ましい。
前記ケイ素原子に結合したアルケニル基は、前記オルガノポリシロキサン(a-1)の分子中において、分子鎖末端及び分子鎖非末端(即ち、分子鎖側鎖)のいずれかに存在しても、あるいはこれらの両方に存在してもよいが、少なくとも分子鎖両末端に存在することが好ましい。
【0015】
また、アルケニル基以外のケイ素原子に結合する有機基としては、酸素原子を介在してもよい非置換又は置換の1価炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基などのアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニリル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、メチルベンジル基等のアラルキル基;ならびにこれらの基に炭素原子が結合している水素原子の一部又は全部が、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子、シアノ基などで置換された基、例えば、クロロメチル基、2-ブロモエチル基、3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、クロロフェニル基、フルオロフェニル基、シアノエチル基等、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基などが挙げられる。代表的なものは炭素原子数が1~10、特に代表的なものは炭素原子数が1~6のものであり、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、クロロメチル基、ブロモエチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、シアノエチル基等の炭素原子数1~3の非置換又は置換のアルキル基、フェニル基、クロロフェニル基、フルオロフェニル基等の非置換又は置換のフェニル基、及びメトキシ基等のアルコキシ基である。また、ケイ素原子に結合したアルケニル基以外の官能基は全てが同一であることを限定するものではない。
【0016】
アルケニル基含有オルガノポリシロキサン(a-1)は、25℃における動粘度が、好ましくは10~100,000mm2/s、より好ましくは40~50,000mm2/s、更に好ましくは50~10,000mm2/s、より更に好ましくは60~5,000mm2/s、より更に好ましくは80~1,000mm2/sである。前記動粘度が10mm2/s以上であると熱伝導性粉末(B)を高充填することができ、100,000mm2/s以下であると熱伝導組成物の粘度上昇を抑制することができる。
なお、本明細書において、動粘度はオストワルド粘度計により測定することができ、具体的には実施例に記載の方法により測定することができる。
【0017】
[ヒドロシリル基を有するオルガノポリシロキサン(a-2)]
前記ヒドロシリル基を有するオルガノポリシロキサン(a-2)としては、ケイ素原子に直接結合した水素原子を2個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンが挙げられる。前記オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、一分子中に好ましくは2~100個のケイ素原子に直接結合する水素原子(Si-H基)を有し、前記アルケニル基含有オルガノポリシロキサン(a-1)の架橋剤として作用する。
【0018】
前記オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、下記一般式(I)で表されるものが好ましい。
【0019】
【0020】
式中、R1は、それぞれ独立に、脂肪族不飽和結合を含有しない非置換又は置換の1価炭化水素基あるいは水素原子である。但し、少なくとも2個は水素原子である。gは0以上の整数である。
【0021】
前記式(I)中、R1の水素原子以外の脂肪族不飽和結合を含有しない非置換又は置換の1価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基などのアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニリル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、メチルベンジル基等のアラルキル基;並びにこれらの基に炭素原子が結合している水素原子の一部又は全部が、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子、シアノ基などで置換された基、例えば、クロロメチル基、2-ブロモエチル基、3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、クロロフェニル基、フルオロフェニル基、シアノエチル基、3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロヘキシル基等が挙げられる。これらの中でも、入手容易性の観点から、メチル基、エチル基、プロピル基、クロロメチル基、ブロモエチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、シアノエチル基等の炭素原子数1~3の非置換又は置換のアルキル基、及びフェニル基、クロロフェニル基、フルオロフェニル基等の非置換又は置換のフェニル基が好ましい。また、R1は水素原子以外の全てが同一であることを限定するものではない。
【0022】
R1は、少なくとも2個、好ましくは2~100個、より好ましくは2~50個は水素原子であり、該水素原子は分子鎖末端及び分子鎖非末端(即ち、分子鎖側鎖)のいずれかに存在してもよく、あるいはこれらの両方に存在してもよい。
【0023】
前記オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、25℃における動粘度が、好ましくは10~100,000mm2/s、より好ましくは15~10,000mm2/s、更に好ましくは20~1,000mm2/s、より更に好ましくは25~500mm2/sである。前記動粘度が10mm2/s以上であると熱伝導性粉末(B)を高充填することができ、100,000mm2/s以下であると熱伝導組成物の粘度上昇を抑制することができる。
【0024】
前記オルガノハイドロジェンポリシロキサンのケイ素原子に直接結合した水素原子のmol量は、前記アルケニル基含有オルガノポリシロキサン(a-1)のケイ素原子に結合したアルケニル基1molに対して好ましくは0.05~1.5molであり、より好ましくは0.08~1.3molであり、更に好ましくは0.1~1.0molである。前記水素原子のmol量が0.05mol以上であると熱伝導組成物の硬化物が柔らかくなり過ぎず取り扱い易く、1.5mol以下であると熱伝導組成物の硬化物が硬くなり過ぎず放熱対象物への密着性が良好となり、熱伝導性を高めることができる。
【0025】
[白金族金属系硬化触媒(a-3)]
白金族金属系硬化触媒(a-3)は、前記アルケニル基含有オルガノポリシロキサン(a-1)中のアルケニル基と、前記ヒドロシリル基を有するオルガノポリシロキサン(a-2)中のSi-H基との付加反応を促進し、架橋構造を有する3次元網目構造を与える。
【0026】
前記白金族金属系硬化触媒(a-3)としては、ヒドロシリル化反応に用いられる触媒として公知の触媒が挙げられる。その具体例としては、例えば、白金(白金黒を含む)、ロジウム、パラジウム等の白金族金属単体、H2PtCl4・nH2O、H2PtCl6・nH2O、NaHPtCl6・nH2O、KaHPtCl6・nH2O、Na2PtCl6・nH2O、K2PtCl4・nH2O、PtCl4・nH2O、PtCl2、Na2HPtCl4・nH2O(但し、式中、nは0~6の整数であり、好ましくは0又は6である)等の塩化白金、塩化白金酸及び塩化白金酸塩、アルコール変性塩化白金酸(米国特許第3,220,972号明細書参照)、塩化白金酸とオレフィンとのコンプレックス(米国特許第3,159,601号明細書、同第3,159,662号明細書、同第3,775,452号明細書参照)、白金黒、パラジウム等の白金族金属をアルミナ、シリカ、カーボン等の担体に担持させたもの、ロジウム-オレフィンコンプレックス、クロロトリス(トリフェニルフォスフィン)ロジウム(ウィルキンソン触媒)、塩化白金、塩化白金酸又は塩化白金酸塩とビニル基含有シロキサン、特にビニル基含有環状シロキサンとのコンプレックスなどが挙げられる。
【0027】
前記白金族金属系硬化触媒(a-3)の添加量は、アルケニル基含有オルガノポリシロキサン(a-1)及びヒドロシリル基を有するオルガノポリシロキサン(a-2)の合計含有量に対する白金族金属元素質量換算で好ましくは0.1~1000ppmであり、より好ましくは1~700ppmであり、更に好ましくは5~500ppmである。前記白金族金属系硬化触媒(a-3)の添加量が前記範囲内であると前記アルケニル基含有オルガノポリシロキサン(a-1)中のアルケニル基と、前記ヒドロシリル基を有するオルガノポリシロキサン(a-2)中のSi-H基との付加反応を促進させることができる。
【0028】
前記付加反応硬化型シリコーン樹脂は、市販品を使うこともできる。前記付加反応硬化型シリコーン樹脂の市販品としては、例えば、DOWSILTM EG-3100(ダウ・東レ(株)製)等が挙げられる。
【0029】
[付加反応制御剤(a-4)]
前記硬化型シリコーン樹脂(A)として、付加反応硬化型シリコーン樹脂を用いる場合、本実施形態の熱伝導組成物は、さらに付加反応制御剤(a-4)を含んでもよい。付加反応制御剤(a-4)は、通常の付加反応硬化型シリコーン樹脂に用いられる公知の付加反応制御剤を用いることができる。例えば、1-エチニル-1-ヘキサノール、3-ブチン-1-オールなどのアセチレン化合物、各種窒素化合物、有機リン化合物、オキシム化合物、有機クロロ化合物等が挙げられる。
【0030】
前記付加反応制御剤(a-4)の添加量は、使用時の作業時間確保の観点から、アルケニル基含有オルガノポリシロキサン(a-1)及びヒドロシリル基を有するオルガノポリシロキサン(a-2)の合計含有量に対して好ましくは0.001~5質量%であり、より好ましくは0.005~4質量%であり、更に好ましくは0.01~3質量%である。
【0031】
前記硬化型シリコーン樹脂(A)の含有量は、熱伝導組成物全量に対して、好ましくは1.0~30質量%であり、より好ましくは1.5~20質量%であり、更に好ましくは2.0~10質量%である。前記硬化型シリコーン樹脂(A)の含有量が1.0質量%以上であると熱伝導組成物の粘度が高くなり過ぎず、作業性が良好となり、30質量%以下であると組成物の熱伝導率が向上する。
【0032】
〔熱伝導性粉末(B)〕
本実施形態で用いる熱伝導性粉末(B)は、前記熱伝導性粉末(B)全量に対して、積算体積50%粒径が50μm以上、150μm以下の窒化アルミニウム粒子(B-1)を30~75質量%、積算体積50%粒径が15μm以上、50μm未満の窒化アルミニウム粒子(B-2)を10~30質量%、積算体積50%粒径が1μm以上、20μm未満の酸化亜鉛以外の金属酸化物(B-3)を5~15質量%、及び積算体積50%粒径が0.1μm以上、1μm未満、かつBET比表面積9.0m2/g未満の酸化亜鉛(B-4)を10~40質量%含む。また、前記酸化亜鉛以外の金属酸化物(B-3)及び前記酸化亜鉛(B-4)は、いずれも炭素数10~22のアルキル基を有するシランカップリング剤及びα-ブチル-ω-(2-トリメトキシシリルエチル)ポリジメチルシロキサンからなる群より選ばれる少なくとも1種の表面処理剤で表面処理されてなる。
前記熱伝導性粉末(B)が前記窒化アルミニウム粒子(B-1)、前記窒化アルミニウム粒子(B-2)、前記酸化亜鉛以外の金属酸化物(B-3)、及び前記酸化亜鉛(B-4)をそれぞれ前記範囲内で含むことにより、高い熱伝導性能と良好な流動性を両立することができる。
【0033】
[窒化アルミニウム粒子(B-1)]
本実施形態で用いる窒化アルミニウム粒子(B-1)は、積算体積50%粒径が50μm以上、150μm以下であり、好ましくは55μm以上140μm以下であり、より好ましくは60μm以上130μm以下であり、更に好ましくは60μm以上100μm以下であり、より更に好ましくは60μm以上80μm以下である。前記窒化アルミニウム粒子(B-1)の積算体積50%粒径が前記範囲内であると熱伝導組成物の流動性が良好となり、また、高い熱伝導率を得ることができる。
なお、本明細書において、積算体積50%粒径(以下、D50と表記することがある)は、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定した粒度分布において積算体積が50%となる粒径から求めることができる。
【0034】
前記窒化アルミニウム粒子(B-1)は、前記積算体積50%粒径を満たせば特に限定されず、市販品など公知のものを使用することができる。前記窒化アルミニウム粒子(B-1)は、どのような製法で得られたものでもよく、例えば、金属アルミニウム粉と窒素又はアンモニアとを直接反応させる直接窒化法、アルミナを炭素還元しながら窒素又はアンモニア雰囲気下で加熱して同時に窒化反応を行う還元窒化法で得られたものでもよい。
【0035】
前記窒化アルミニウム粒子(B-1)は、焼結体であってもよく、非焼結体であってもよく、高充填性の観点から、焼結体であることが好ましい。また、その形状は特に限定されず、例えば、無定形(破砕状)、球状、楕円状、板状(鱗片状)などが挙げられる。中でも、熱伝導組成物の流動性確保の観点から、球状が好ましい。
ここで、「焼結体」とは、窒化アルミニウム粒子粉末に焼結助剤又は粒度制御剤を加えて高温焼結した後に粉砕又は分級することで得られるものをいい、「非焼結体」とは、直接窒化法、還元窒化法、気相法等のプロセスを用いて合成されたものをいう。また、「球状」とは、真球又は実質的に角のない丸味のある粒子状態であるものをいい、「破砕状」とは、破砕粒子が有する角のある任意の形状をもつ粒子状態であるものをいい、電子顕微鏡又は他の顕微鏡により確認することができる。
【0036】
前記窒化アルミニウム粒子(B-1)のBET比表面積は、硬化型シリコーン樹脂(A)への充填性の観点から、好ましくは0.01~1.0m2/gであり、より好ましくは0.02~0.8m2/gであり、更に好ましくは0.03~0.5m2/gである。
なお、本明細書において、BET比表面積は、ガス流動法による窒素吸着BET1点法から測定することができ、具体的には実施例に記載の方法により測定することができる。
【0037】
前記窒化アルミニウム粒子(B-1)の含有量は、前記熱伝導性粉末(B)全量に対して30~75質量%であり、好ましくは32~60質量%であり、より好ましくは35~55質量%である。前記窒化アルミニウム粒子(B-1)の含有量が30質量%以上であると熱伝導性を高めることができ、75質量%以下であると熱伝導組成物の流動性と取り扱い易さを確保することができる。
【0038】
[窒化アルミニウム粒子(B-2)]
本実施形態で用いる窒化アルミニウム粒子(B-2)は、積算体積50%粒径が15μm以上、50μm未満であり、好ましくは17μm以上45μm以下であり、より好ましくは20μm以上40μm以下であり、更に好ましくは30μm以上40μm以下である。前記窒化アルミニウム粒子(B-2)の積算体積50%粒径が前記範囲内であると組成物の高い熱伝導性能と良好な流動性を両立することができる。
【0039】
前記窒化アルミニウム粒子(B-2)は、前記積算体積50%粒径を満たせば特に限定されず、焼結体であってもよく、非焼結体であってもよい。前記窒化アルミニウム粒子(B-2)は、高熱伝導性の観点から、非焼結の破砕状窒化アルミニウム粒子が好ましい。
【0040】
前記窒化アルミニウム粒子(B-2)のBET比表面積は、硬化型シリコーン樹脂(A)への充填性の観点から、好ましくは0.01~1.0m2/gであり、より好ましくは0.03~0.8m2/gであり、更に好ましくは0.05~0.5m2/gである。
なお、窒化アルミニウム粒子(B-2)のBET比表面積の測定方法は、前記窒化アルミニウム粒子(B-1)で記載したとおりである。
【0041】
前記窒化アルミニウム粒子(B-2)の含有量は、前記熱伝導性粉末(B)全量に対して10~30質量%であり、好ましくは10~25質量%であり、より好ましくは15~20質量%である。前記窒化アルミニウム粒子(B-2)の含有量が10質量%以上であると熱伝導性を高めることができ、30質量%以下であると熱伝導組成物の流動性と取り扱い易さを確保することができる。
【0042】
(珪素含有酸化物被膜の形成)
前記窒化アルミニウム粒子(B-1)及び前記窒化アルミニウム粒子(B-2)からなる群より選ばれる少なくとも1種の窒化アルミニウム粒子は、その表面に珪素含有酸化物被膜を有することが耐湿性向上の観点から好ましい。珪素含有酸化物被膜は、窒化アルミニウム粒子の表面の一部を覆っていてもよく、全部を覆っていてもよいが、窒化アルミニウム粒子の表面の全部を覆っていることが好ましい。
窒化アルミニウム粒子は熱伝導性に優れるため、表面に珪素含有酸化物被膜を有する窒化アルミニウム粒子(以下、珪素含有酸化物被覆窒化アルミニウム粒子ともいう)も熱伝導性に優れる。
珪素含有酸化物被膜および珪素含有酸化物被覆窒化アルミニウム粒子の「珪素含有酸化物」としては、シリカ、並びに珪素およびアルミニウムを含む酸化物が挙げられる。
【0043】
珪素含有酸化物被覆窒化アルミニウム粒子は、窒化アルミニウム粒子の表面を覆う珪素含有酸化物被膜のLEIS分析による被覆率が、好ましくは70%以上100%以下であり、より好ましくは70%以上95%以下であり、更に好ましくは72%以上90%以下であり、特に好ましくは74%以上85%以下である。前記被覆率が70%以上100%以下であると、より耐湿性に優れる。また、95%を超えると熱伝導率が低下する場合がある。
【0044】
窒化アルミニウム粒子の表面を覆う珪素含有酸化物被膜(SiO2)のLEIS(Low Energy Ion Scattering)分析による被覆率(%)は、下記式で求められる。
(SAl(AlN)-SAl(AlN+SiO2))/SAl(AlN)×100
上記式中、SAl(AlN)は、窒化アルミニウム粒子のAlピークの面積であり、SAl(AlN+SiO2)は、珪素含有酸化物被覆窒化アルミニウム粒子のAlピークの面積である。Alピークの面積は、イオン源と希ガスとをプローブにする測定方法である低エネルギーイオン散乱(LEIS)による分析から求めることができる。LEISは、数keVの希ガスを入射イオンとする分析手法で、最表面の組成分析を可能とする評価手法である(参考文献:The TRC News 201610-04(October2016))。
【0045】
窒化アルミニウム粒子の表面に珪素含有酸化物被膜を形成する方法としては、例えば、窒化アルミニウム粒子の表面を、下記式(1)で表される構造を含むシロキサン化合物により覆う第1工程と、シロキサン化合物により覆われた窒化アルミニウム粒子を300℃以上800℃以下の温度で加熱する第2工程とを有する方法が挙げられる。
【0046】
【0047】
式(1)中、Rは炭素数が4以下のアルキル基である。
【0048】
式(1)で表される構造は、Si-H結合を有するハイドロジェンシロキサン構造単位である。式(1)中、Rは炭素数が4以下のアルキル基、すなわち、メチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基であり、好ましくはメチル基、エチル基、イソプロピル基又はt-ブチル基であり、より好ましくはメチル基である。
【0049】
前記シロキサン化合物としては、式(1)で表される構造を繰り返し単位として含むオリゴマー又はポリマーが好ましい。また、前記シロキサン化合物は、直鎖状、分岐鎖状又は環状のいずれであってもよい。前記シロキサン化合物の重量平均分子量は、均一な膜厚の珪素含有酸化物被膜の形成容易性の観点から、好ましくは100~2000であり、より好ましくは150~1000であり、さらに好ましくは180~500である。なお、前記重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算値とする。
【0050】
前記シロキサン化合物としては、下記式(2)で表される化合物及び/又は下記式(3)で表される化合物が好適に用いられる。
【0051】
【0052】
式(2)中、R2及びR3は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基であり、R2及びR3の少なくともいずれかは水素原子である。mは0~10の整数であり、好ましくは1~5、より好ましくは1である。
【0053】
【0054】
式(3)中、nは3~6の整数であり、好ましくは3~5、より好ましくは4である。
【0055】
前記シロキサン化合物としては、良好な珪素含有酸化物被膜の形成容易性の観点から、特に、式(3)においてnが4である環状ハイドロジェンシロキサンオリゴマーが好ましい。
【0056】
第1工程では、前記窒化アルミニウム粒子の表面を、前記式(1)で示される構造を含むシロキサン化合物により覆う。
第1工程では、前記窒化アルミニウム粒子の表面を、前記式(1)で示される構造を含むシロキサン化合物により覆うことができれば、特に方法は限定されない。第1工程の方法としては、一般的な粉体混合装置を用いて、原料の窒化アルミニウム粒子を撹拌しながら前記シロキサン化合物を噴霧などで添加して、乾式混合することで被覆する乾式混合法などが挙げられる。
前記粉体混合装置としては、例えば、ヘンシェルミキサー(日本コークス工業(株)製)、容器回転型のVブレンダー、ダブルコーン型ブレンダーなど、混合羽根を有するリボンブレンダー、スクリュー型ブレンダー、密閉型ロータリーキルン、マグネットカップリングを用いた密閉容器の撹拌子による撹拌などが挙げられる。温度条件は、特に限定されないが、好ましくは10℃以上200℃以下であり、より好ましくは20℃以上150℃以下であり、更に好ましくは40℃以上100℃以下である。
【0057】
また、前記シロキサン化合物の蒸気単独もしくは窒素ガスなどの不活性ガスとの混合ガスを、静置した窒化アルミニウム粒子表面に付着又は蒸着させる気相吸着法を用いることもできる。温度条件は、特に限定されないが、好ましくは10℃以上200℃以下であり、より好ましくは20℃以上150℃以下であり、更に好ましくは40℃以上100℃以下である。さらに必要な場合には、系内を加圧あるいは減圧させることもできる。この場合に使用できる装置としては、密閉系、且つ、系内の気体を容易に置換できる装置が好ましく、例えば、ガラス容器、デシケーター、CVD装置などを使用できる。
【0058】
前記シロキサン化合物の第1工程での使用量は、特に限定されない。第1工程で得られる、前記シロキサン化合物により覆われた窒化アルミニウム粒子において、前記シロキサン化合物の被覆量が、窒化アルミニウム粒子のBET法から求めた比表面積(m2/g)から算出した表面積1m2当たり0.1mg以上1.0mg以下であることが好ましく、より好ましくは0.2mg以上0.8mg以下であり、更に好ましくは0.3mg以上0.6mg以下である。前記シロキサン化合物の被覆量が前記範囲内であると均一な膜厚の珪素含有酸化物被膜を有する窒化アルミニウム粒子を得ることができる。
なお、前記窒化アルミニウム粒子のBET法から求めた比表面積(m2/g)から算出した表面積1m2当たりの、前記シロキサン化合物の被覆量は、シロキサン化合物で被覆する前後の窒化アルミニウム粒子の質量差を、窒化アルミニウム粒子のBET法から求めた比表面積(m2/g)から算出した表面積(m2)で除すことで求めることができる。
【0059】
第2工程では、第1工程で得られたシロキサン化合物により覆われた窒化アルミニウム粒子を、300℃以上800℃以下の温度で加熱する。これにより、窒化アルミニウム粒子表面に珪素含有酸化物被膜を形成することができる。加熱温度は、より好ましくは400℃以上であり、さらに好ましくは500℃以上である。
【0060】
加熱時間は、十分な反応時間を確保し、また、良好な珪素含有酸化物被膜の形成を効率的に行う観点から、30分以上6時間以下が好ましく、より好ましくは45分以上4時間以下であり、更に好ましくは1時間以上2時間以下である。
前記加熱処理時の雰囲気は、酸素ガスを含む雰囲気下、例えば大気中(空気中)で行うことが好ましい。
【0061】
第2工程の熱処理後に、珪素含有酸化物被覆窒化アルミニウム粒子同士が、部分的に融着することがあるが、このような場合には、例えば、ローラーミル、ハンマーミル、ジェットミル、ボールミル等の一般的な粉砕機を用いて解砕し、固着及び凝集のない珪素含有酸化物被覆窒化アルミニウム粒子を得ることができる。
【0062】
また、第2工程終了後に、さらに、第1工程及び第2工程を順に行ってもよい。すなわち、第1工程及び第2工程を順に行う工程を、繰り返し実行してもよい。
【0063】
[酸化亜鉛以外の金属酸化物(B-3)]
本実施形態で用いる酸化亜鉛以外の金属酸化物(B-3)は、積算体積50%粒径が1μm以上、20μm未満であり、好ましくは2μm以上15μm以下であり、より好ましくは3μm以上10μm以下であり、更に好ましくは3μm以上6μm以下である。前記酸化亜鉛以外の金属酸化物(B-3)の積算体積50%粒径が前記範囲内であると熱伝導組成物の流動性と取り扱い易さを確保することができる。
【0064】
前記酸化亜鉛以外の金属酸化物(B-3)は、炭素数10~22のアルキル基を有するシランカップリング剤(以下、単にシランカップリング剤ともいう)及びα-ブチル-ω-(2-トリメトキシシリルエチル)ポリジメチルシロキサンからなる群より選ばれる少なくとも1種の表面処理剤で表面処理されてなる。前記シランカップリング剤が有するアルキル基は、炭素数12~20が好ましく、炭素数16~18がより好ましい。
前記酸化亜鉛以外の金属酸化物(B-3)が前記表面処理剤で表面処理されていることにより、熱伝導組成物の流動性、及び熱伝導性粉末の充填性を高めることができる。
前記シランカップリング剤としては、例えば、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、テトラデシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、ヘプタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、イコシルトリメトキシシラン等が挙げられる。中でも、熱伝導組成物の流動性を高める観点から、デシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシランが好ましく、ヘキサデシルトリメトキシシランがより好ましい。
前記シランカップリング剤は単独で、または2種以上を混合して使用してもよい。
【0065】
α-ブチル-ω-(2-トリメトキシシリルエチル)ポリジメチルシロキサンは、ジメチルシロキサンの繰り返し単位が5~200の整数であり、好ましくは10~100、より好ましくは12~50である。ジメチルシロキサンの繰り返し単位が5以上であると、熱伝導組成物の流動性が良好になり、200以下であると、α-ブチル-ω-(2-トリメトキシシリルエチル)ポリジメチルシロキサンの粘度が高くなり過ぎず、熱伝導組成物の流動性が良好になる。また、酸化亜鉛以外の金属酸化物(B-3)及び後述する酸化亜鉛(B-4)の表面処理をする際に溶剤への溶解性が向上し、加水分解液の調整が容易になる。
【0066】
前記シランカップリング剤及びα-ブチル-ω-(2-トリメトキシシリルエチル)ポリジメチルシロキサンの使用量は、それぞれ前記酸化亜鉛以外の金属酸化物(B-3)全量に対して好ましくは0.1~10質量%であり、より好ましくは0.2~8質量%であり、更に好ましくは0.2~6質量%である。前記シランカップリング剤及びα-ブチル-ω-(2-トリメトキシシリルエチル)ポリジメチルシロキサンをそれぞれ前記範囲内で使用することにより、前記酸化亜鉛以外の金属酸化物(B-3)の表面処理を十分に行うことができる。
【0067】
前記酸化亜鉛以外の金属酸化物(B-3)の前記シランカップリング剤又はα-ブチル-ω-(2-トリメトキシシリルエチル)ポリジメチルシロキサンによる表面処理方法としては、乾式法、湿式法、インテグラルブレンド法などがあり、いずれの方法を用いてもよい。乾式法は、所定量のシランカップリング剤又はα-ブチル-ω-(2-トリメトキシシリルエチル)ポリジメチルシロキサンをそのまま、あるいは有機溶剤で希釈した溶液を酸化亜鉛以外の金属酸化物(B-3)に噴霧又は滴下しながら、機械的に混合することによって行い、その後必要に応じて乾燥とシランカップリング剤又はα-ブチル-ω-(2-トリメトキシシリルエチル)ポリジメチルシロキサンの焼き付けを行う方法である。湿式法は、所定量のシランカップリング剤又はα-ブチル-ω-(2-トリメトキシシリルエチル)ポリジメチルシロキサンを有機溶剤で希釈した溶液に酸化亜鉛以外の金属酸化物(B-3)を含浸させ、撹拌混合し、溶剤を揮発させる方法である。インテグラルブレンド法は、硬化型シリコーン樹脂(A)と酸化亜鉛以外の金属酸化物(B-3)とを混合しながら所定量のシランカップリング剤又はα-ブチル-ω-(2-トリメトキシシリルエチル)ポリジメチルシロキサンを添加する方法である。インテグラルブレンド法は一般的には酸化亜鉛以外の金属酸化物(B-3)との反応性から、前記好ましい範囲内において多めのシランカップリング剤又はα-ブチル-ω-(2-トリメトキシシリルエチル)ポリジメチルシロキサンを使うことが多く、さらに加熱しながら混合する場合が多い。
表面処理装置には自転・公転撹拌ミキサー、ブレンダー、ナウター、ヘンシェルミキサー、プラネタリーミキサーなどがあり、いずれを用いてもよい。
【0068】
前記酸化亜鉛以外の金属酸化物(B-3)のシランカップリング剤又はα-ブチル-ω-(2-トリメトキシシリルエチル)ポリジメチルシロキサンによる表面処理では混合後、温度100~170℃で1~12時間加熱処理を行うことが好ましく、温度110~150℃で1~8時間加熱処理を行うことがより好ましく、温度110~130℃で2~4時間加熱処理を行うことが更に好ましい。
【0069】
前記酸化亜鉛以外の金属酸化物(B-3)は、前述の表面処理剤で表面処理されており、前記積算体積50%粒径を満たせば特に限定されず、例えば、アルミナ(酸化アルミニウム)、酸化マグネシウム、二酸化ケイ素、酸化鉄等が挙げられる。中でも、高熱伝導性の観点から、アルミナが好ましい。
【0070】
アルミナは、熱伝導性を有し且つ耐湿性に優れる。アルミナは、α-アルミナ(α-Al2O3)が好ましい。α-アルミナ以外に、γ-アルミナ、θ-アルミナ、δ-アルミナ等が含まれていてもよい。
アルミナは、市販品など公知のものを使用することができる。
アルミナの製法は、どのような製法で得られたものでもよく、例えば、アンモニウムミョウバンの熱分解法、アンモニウムアルミニウム炭酸塩の熱分解法、アルミニウムの水中火花放電法、気相酸化法、及びアルミニウムアルコキシドの加水分解法などで得られたものでもよい。
【0071】
アルミナの形状は、特に限定されず、例えば、無定形(破砕状)、球形、丸み状、多面体状などが挙げられる。
【0072】
前記酸化亜鉛以外の金属酸化物(B-3)のBET比表面積は、硬化型シリコーン樹脂(A)への充填性の観点から、好ましくは0.05~2.0m2/gであり、より好ましくは0.1~1.5m2/gであり、更に好ましくは0.2~1.0m2/gである。
なお、酸化亜鉛以外の金属酸化物(B-3)のBET比表面積の測定方法は、前記窒化アルミニウム粒子(B-1)で記載したとおりである。
【0073】
前記酸化亜鉛以外の金属酸化物(B-3)の含有量は、前記熱伝導性粉末(B)全量に対して5~15質量%であり、好ましくは6~15質量%であり、より好ましくは8~14質量%である。前記酸化亜鉛以外の金属酸化物(B-3)の含有量が前記範囲内であると熱伝導組成物の流動性と取り扱い易さを確保することができる。
【0074】
[酸化亜鉛(B-4)]
本実施形態で用いる酸化亜鉛(B-4)は、積算体積50%粒径が0.1μm以上、1μm未満であり、かつBET比表面積が9.0m2/g未満である。
前記酸化亜鉛(B-4)の積算体積50%粒径が前記範囲内であると熱伝導組成物の流動性と取り扱い易さを確保することができる。このような観点から、前記酸化亜鉛(B-4)の積算体積50%粒径は、好ましくは0.2μm以上0.9μm以下であり、より好ましくは0.3μm以上0.8μm以下である。
【0075】
前記酸化亜鉛(B-4)のBET比表面積が9.0m2/g未満であると熱伝導組成物の粘度を低減することができる。このような観点から、前記酸化亜鉛(B-4)のBET比表面積は、好ましくは8.0m2/g以下であり、より好ましくは7.0m2/g以下であり、更に好ましくは6.0m2/g以下であり、より更に好ましくは5.8m2/g以下であり、より更に好ましくは5.5m2/g以下である。また、前記酸化亜鉛(B-4)のBET比表面積の下限は特に限定されないが、好ましくは1.0m2/g以上である。
なお、酸化亜鉛(B-4)のBET比表面積の測定方法は、前記窒化アルミニウム粒子(B-1)で記載したとおりであり、具体的には実施例に記載の方法により測定することができる。
【0076】
前記酸化亜鉛(B-4)は、炭素数10~22のアルキル基を有するシランカップリング剤及びα-ブチル-ω-(2-トリメトキシシリルエチル)ポリジメチルシロキサンからなる群より選ばれる少なくとも1種の表面処理剤で表面処理されてなる。前記酸化亜鉛(B-4)が前記表面処理剤で表面処理されていることにより、熱伝導組成物の流動性を高めることができる。
前記シランカップリング剤が有するアルキル基の好ましい炭素数は、前記酸化亜鉛以外の金属酸化物(B-3)で記載したとおりである。
前記シランカップリング剤又はα-ブチル-ω-(2-トリメトキシシリルエチル)ポリジメチルシロキサンは、前記酸化亜鉛以外の金属酸化物(B-3)で例示したものを用いることができる。また、前記酸化亜鉛(B-4)のシランカップリング剤又はα-ブチル-ω-(2-トリメトキシシリルエチル)ポリジメチルシロキサンによる表面処理方法としては、前記酸化亜鉛以外の金属酸化物(B-3)で説明した方法が挙げられる。
前記シランカップリング剤及びα-ブチル-ω-(2-トリメトキシシリルエチル)ポリジメチルシロキサンの使用量は、それぞれ前記酸化亜鉛(B-4)全量に対して好ましくは0.1~10質量%であり、より好ましくは0.2~8質量%であり、更に好ましくは0.2~6質量%である。前記シランカップリング剤及びα-ブチル-ω-(2-トリメトキシシリルエチル)ポリジメチルシロキサンをそれぞれ前記範囲内で使用することにより、前記酸化亜鉛(B-4)の表面処理を十分に行うことができる。
【0077】
前記酸化亜鉛(B-4)の含有量は、前記熱伝導性粉末(B)全量に対して10~40質量%であり、好ましくは15~38質量%であり、より好ましくは20~35質量%である。前記酸化亜鉛(B-4)の含有量が10質量%以上であると熱伝導組成物の流動性を高めることができ、40質量%以下であると熱伝導率の低下を抑えることができる。
【0078】
前記熱伝導性粉末(B)は、前記窒化アルミニウム粒子(B-1)、前記窒化アルミニウム粒子(B-2)、前記酸化亜鉛以外の金属酸化物(B-3)、及び前記酸化亜鉛(B-4)以外の熱伝導性粉末(b)を含んでもよい。
前記熱伝導性粉末(b)としては、金属酸化物(酸化亜鉛以外の金属酸化物(B-3)、酸化亜鉛(B-4)を除く)、金属窒化物(窒化アルミニウム粒子(B-1)、窒化アルミニウム粒子(B-2)を除く)、金属水酸化物等が挙げられる。
金属窒化物としては、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等が挙げられる。金属酸化物としては、酸化亜鉛、アルミナ、酸化マグネシウム、二酸化ケイ素、酸化鉄等が挙げられる。金属水酸化物としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。
前記熱伝導性粉末(B)が熱伝導性粉末(b)を含む場合、その含有量は、前記熱伝導性粉末(B)全量に対して好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは20質量%以下であり、更に好ましくは10質量%以下である。
【0079】
前記熱伝導性粉末(B)の含有量は、前記熱伝導組成物全量に対して70~98質量%であり、好ましくは80~98質量%であり、より好ましくは85~98質量%であり、更に好ましくは90~98質量%であり、より更に好ましくは95~97質量%である。前記熱伝導性粉末(B)の含有量が70質量%以上であると十分な熱伝導性能を確保することができ、98質量%以下であると熱伝導組成物の流動性が良好で、吐出し易くすることができる。
【0080】
〔ジメチルシリコーンオイル(C)〕
本実施形態の熱伝導組成物は、さらにジメチルシリコーンオイル(C)を含有することが熱伝導組成物の粘度をより低減する観点から好ましい。
前記ジメチルシリコーンオイル(C)は、硬化性官能基を持たないオルガノポリシロキサンであり、非反応性シリコーンオイルである。
前記ジメチルシリコーンオイル(C)は、25℃における動粘度が、好ましくは10~100,000mm2/s、より好ましくは20~10,000mm2/s、更に好ましくは30~1,000mm2/s、より更に好ましくは40~500mm2/s、より更に好ましくは40~200mm2/sである。前記動粘度が10mm2/s以上であると熱伝導性粉末(B)を高充填することができ、100,000mm2/s以下であると熱伝導組成物の粘度上昇を抑制することができる。なお、前記動粘度は、前述のとおりオストワルド粘度計により測定することができる。
【0081】
前記ジメチルシリコーンオイル(C)は、市販品として入手することができ、例えば、KF-96-100cs(25℃における動粘度=100mm2/s)(信越化学工業(株)製)、TSF-458-50(25℃における動粘度=50mm2/s)、ELEMENT14PDMS100-J(25℃における動粘度=100mm2/s)(以上、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズジャパン合同会社製)等が挙げられる。
【0082】
前記ジメチルシリコーンオイル(C)の含有量は、熱伝導組成物全量に対して好ましくは0.1~2.0質量%であり、より好ましくは0.2~1.8質量%であり、更に好ましくは0.3~1.5質量%である。前記ジメチルシリコーンオイル(C)の含有量が0.1質量%以上であると熱伝導組成物の粘度をより低減することができ、2.0質量%以下であるとジメチルシリコーンオイルのブリードを抑えることができる。
【0083】
本実施形態の熱伝導組成物は、以上の各成分の他に、本発明の効果を阻害しない範囲で、可撓性付与剤、無機イオン捕捉剤、顔料、染料、希釈剤などの添加剤を必要に応じて配合することができる。
【0084】
本実施形態の熱伝導組成物中、硬化型シリコーン樹脂(A)、及び熱伝導性粉末(B)の合計含有量は、熱伝導性を高める観点から、好ましくは85質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上であり、更に好ましくは95質量%以上である。
【0085】
本実施形態の熱伝導組成物は、前記硬化型シリコーン樹脂(A)、熱伝導性粉末(B)、並びに必要に応じて配合される付加反応制御剤(a-4)、ジメチルシリコーンオイル(C)、及び各種添加剤を一括又は分割して、分散・溶解装置へ供給し、必要に応じて加熱しながら混合、溶解、混練することで得ることができる。分散・溶解装置としては、例えば、らいかい器、プラネタリーミキサー、自転・公転ミキサー、ニーダー、ロールミル等が挙げられる。
【0086】
本実施形態の熱伝導組成物は、25℃における粘度が好ましく50,000Pa・s以下であり、より好ましくは45,000Pa・s以下であり、更に好ましくは40,000a・s以下である。前記粘度の下限値は、好ましくは50Pa・s以上であり、より好ましくは100Pa・s以上であり、更に好ましくは150Pa・s以上である。
前記粘度は、フロー粘度計を用いてJIS K7210:2014に準拠した方法で測定することができ、具体的には実施例に記載の方法により測定することができる。
【0087】
本実施形態の熱伝導組成物を硬化させる方法としては、例えば、放熱を要する被着体に該組成物を塗布後、該組成物を室温(23℃)で放置する方法、所定の温度で加熱する方法が挙げられる。
前記加熱は、温度50℃以上150℃以下で、5分間以上10時間以下の条件で行うことが好ましく、温度60℃以上130℃以下で、10分間以上5時間以下の条件で行うことがより好ましい。迅速に硬化させる観点から、加熱する方法を採ることが好ましい。
【0088】
本実施形態の熱伝導組成物の硬化物は、熱伝導率が好ましくは10.0W/m・K以上であり、より好ましくは10.5W/m・K以上である。
前記熱伝導率は、ISO22007-2に準拠した方法で測定することができ、具体的には実施例に記載の方法により測定することができる。
【0089】
本実施形態の熱伝導組成物の硬化物は、 JIS K7312:1996の硬さ試験(タイプC)に準拠して測定したC硬度が、好ましくは15~95であり、より好ましくは18~90であり、更に好ましくは20~85であり、より更に好ましくは20~80である。前記C硬度が前記範囲内であると適度な硬さを有する硬化物とすることができる。
前記C硬度は、具体的には実施例に記載の方法により測定することができる。
【0090】
本実施形態の熱伝導組成物は、高い熱伝導性能と良好な流動性を両立することができるため、電子機器の発熱源とヒートシンクの間に介在される放熱シート、放熱ゲル、放熱グリース、及び接着剤等の放熱部材として好適に用いることができる。
【実施例】
【0091】
次に実施例により、本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
【0092】
[合成例1:珪素含有酸化物被覆窒化アルミニウム粒子(B-1)の作製]
第1工程は、板厚20mmのアクリル樹脂製で内寸法が260mm×260mm×100mmであり、貫通孔を有する仕切りで上下二段に分けられた構造の真空デシケーターを使用して、窒化アルミニウム粒子の表面被覆を行った。真空デシケーターの上段に、球状の焼結体窒化アルミニウム粒子(FAN-f80-A1、古河電子(株)製、D50=76μm、BET比表面積=0.05m2/g)200gをステンレストレーに均一に広げて静置した。次に、真空デシケーターの下段には、式(3)においてn=4であるシロキサン化合物(環状メチルハイドロジェンシロキサン4量体:東京化成工業(株)製)を20g、ガラス製シャーレに入れて静置した。その後、真空デシケーターを閉じ、80℃のオーブンで8時間の加熱を行った。なお、反応により発生する水素ガスは、真空デシケーターに付随する開放弁から逃がすなどの安全対策を取って操作を行った。第1工程を終了した後、デシケーターから取り出したサンプルをアルミナ製のるつぼに入れ、大気中で、サンプルを850℃、6時間の条件で第2工程の熱処理を行うことで珪素含有酸化物被覆窒化アルミニウム粒子(B-1)を得た。
【0093】
[合成例2:珪素含有酸化物被覆窒化アルミニウム粒子(B-2a)の作製]
第1工程において、FAN-f80-A1の代わりに球状の焼結体窒化アルミニウム粒子(FAN-f30-A1、古河電子(株)製、D50=34μm、BET比表面積=0.12m2/g)100gを用いた以外は合成例1と同様にして、珪素含有酸化物被覆窒化アルミニウム粒子(B-2a)を得た。
【0094】
[合成例3:珪素含有酸化物被覆窒化アルミニウム粒子(B-2b)の作製]
第1工程において、FAN-f80-A1の代わりに非焼結の破砕状窒化アルミニウム粒子(TFZ-S30P、東洋アルミニウム(株)製、D50=33μm、BET比表面積=0.12m2/g)100gを用いた以外は合成例1と同様にして、珪素含有酸化物被覆窒化アルミニウム粒子(B-2b)を得た。
【0095】
[表面処理1:アルミナの表面処理]
表面処理剤としてヘキサデシルトリメトキシシラン(東京化成工業(株)製、最小被覆面積:226m2/g)1.0gを溶媒(エタノール/水=25/1)2.6gに溶かし、加水分解液-1を調製した。
容器にアルミナ AA-3(住友化学(株)製、D50=3μm、BET比表面積=0.54m2/g)100gを投入し、下記式(i)で算出されるヘキサデシルトリメトキシシラン量に相当する加水分解液-1の1/3量をスポイトで加え、自転・公転ミキサー((株)シンキー製、ARE-310)で、回転数2000rpm、20秒間の撹拌混合を行い、これを3回繰り返した。得られた混合物をステンレスバットに入れ、熱風オーブンで温度120℃、2時間の加熱処理を行い、ヘキサデシルトリメトキシシランで表面処理されてなるアルミナ(B-3a)を得た。
【0096】
【0097】
[表面処理2:アルミナの表面処理]
表面処理剤としてKBM-3103C(デシルトリメトキシシラン、信越化学工業(株)製、最小被覆面積:297m2/g)1.0gを溶媒(エタノール/水=9/1)9.0gに溶かし、加水分解液-2を調製した。
容器にアルミナ AA-3(住友化学(株)製、D50=3μm、BET比表面積=0.54m2/g)100gを投入し、前記式(i)で算出されるデシルトリメトキシシラン量に相当する加水分解液-2の1/3量をスポイトで加え、自転・公転ミキサー((株)シンキー製、ARE-310)で、回転数2000rpm、20秒間の撹拌混合を行い、これを3回繰り返した。得られた混合物をステンレスバットに入れ、熱風オーブンで温度120℃、2時間の加熱処理を行い、デシルトリメトキシシランで表面処理されてなるアルミナ(B-3b)を得た。
【0098】
[表面処理3:酸化亜鉛の表面処理]
表面処理剤として、ヘキサデシルトリメトキシシラン(東京化成工業(株)製、最小被覆面積:226m2/g)5.0gを溶媒(エタノール/水=25/1)13.0gに溶かし、加水分解液-3を調製した。
酸化亜鉛JIS1種(ハクスイテック(株)製)500gをボールミルで粉砕するため、直径10mmのアルミナボール5Kgとともに、5LのPE製容器に入れ、回転数90rpmで3時間回転させ、前記酸化亜鉛を粉砕した。得られた酸化亜鉛のD50は0.5μm、BET比表面積=4.1m2/gであった。
前記表面処理1において、アルミナ AA-3の代わりに酸化亜鉛JIS1種のボールミル粉砕品(D50=0.5μm、BET比表面積=4.1m2/g)100g、及び加水分解液-1の代わりに加水分解液-3を用いた以外は表面処理1と同様にして、ヘキサデシルトリメトキシシランで表面処理されてなる酸化亜鉛(B-4a)を得た。
【0099】
[表面処理4:酸化亜鉛の表面処理]
表面処理剤として、KBM-3103C(デシルトリメトキシシラン、信越化学工業(株)製、最小被覆面積:297m2/g)2.0gを溶媒(エタノール/水=9/1)18.0gに溶かし、加水分解液-4を調製した。
前記表面処理2において、アルミナ AA-3の代わりに酸化亜鉛JIS1種のボールミル粉砕品(D50=0.5μm、BET比表面積=4.1m2/g)100g、及び加水分解液-2の代わりに加水分解液-4を用いた以外は表面処理2と同様にして、デシルトリメトキシシランで表面処理されてなる酸化亜鉛(B-4b)を得た。
【0100】
[表面処理5:酸化亜鉛の表面処理]
前記表面処理3において、酸化亜鉛JIS1種のボールミル粉砕品(D50=0.5μm)の代わりに、酸化亜鉛JIS1種(ハクスイテック(株)製、D50=0.8μm、BET比表面積=4.0m2/g)100gを用いた以外は表面処理3と同様にして、ヘキサデシルトリメトキシシランで表面処理されてなる酸化亜鉛(B-4c)を得た。
【0101】
[表面処理6:アルミナの表面処理]
表面処理剤としてα-ブチル-ω-(2-トリメトキシシリルエチル)ポリジメチルシロキサン(分子量1400 最小被覆面積:55.9m2/g)0.97gを溶媒(イソプロパノール/水=25/1)2.53gに溶かし、加水分解液-5を調製した。なおα-ブチル-ω-(2-トリメトキシシリルエチル)ポリジメチルシロキサン量は、前記式(i)で算出される50質量%相当量とした。
容器にアルミナ AA-3(住友化学(株)製、D50=3μm、BET比表面積=0.54m2/g)100gを投入し、前記加水分解液-5の1/3量をスポイトで加え、自転・公転ミキサー((株)シンキー製、ARE-310)で、回転数2000rpm、20秒間の撹拌混合を行い、これを3回繰り返した。得られた混合物をステンレスバットに入れ、熱風オーブンで温度120℃、2時間の加熱処理を行い、α-ブチル-ω-(2-トリメトキシシリルエチル)ポリジメチルシロキサンで表面処理されてなるアルミナ(B-3c)を得た。
【0102】
[表面処理7:酸化亜鉛の表面処理]
表面処理剤として、α-ブチル-ω-(2-トリメトキシシリルエチル)ポリジメチルシロキサン(分子量1400 最小被覆面積:55.9m2/g)3.57gを溶媒(イソプロパノール/水=25/1)9.28gに溶かし、加水分解液-6を調製した。なおα-ブチル-ω-(2-トリメトキシシリルエチル)ポリジメチルシロキサン量は、前記式(i)で算出される50質量%相当量とした。
酸化亜鉛JIS1種(ハクスイテック(株)製)500gをボールミルで粉砕するため、直径10mmのアルミナボール5Kgとともに、5LのPE製容器に入れ、回転数90rpmで3時間回転させ、前記酸化亜鉛を粉砕した。得られた酸化亜鉛のD50は0.5μm、BET比表面積=4.1m2/gであった。それを容器に100g投入し、前記加水分解液-6の1/3量をスポイトで加え、自転・公転ミキサー((株)シンキー製、ARE-310)で、回転数2000rpm、20秒間の撹拌混合を行い、これを3回繰り返した。得られた混合物をステンレスバットに入れ、熱風オーブンで温度120℃、2時間の加熱処理を行い、α-ブチル-ω-(2-トリメトキシシリルエチル)ポリジメチルシロキサンで表面処理されてなる酸化亜鉛(B-4d)を得た。
【0103】
[表面処理8:酸化亜鉛の表面処理]
表面処理剤として、α-ブチル-ω-(2-トリメトキシシリルエチル)ポリジメチルシロキサン(分子量1400 最小被覆面積:55.9m2/g)3.57gを溶媒(イソプロパノール/水=25/1)9.28gに溶かし、加水分解液-7を調製した。なおα-ブチル-ω-(2-トリメトキシシリルエチル)ポリジメチルシロキサン量は、前記式(i)で算出される50質量%相当量とした。
容器に酸化亜鉛JIS1種(ハクスイテック(株)製、D50=0.8μm、BET比表面積=4.0m2/g)100gを投入し、前記加水分解液-7の1/3量をスポイトで加え、自転・公転ミキサー((株)シンキー製、ARE-310)で、回転数2000rpm、20秒間の撹拌混合を行い、これを3回繰り返した。得られた混合物をステンレスバットに入れ、熱風オーブンで温度120℃、2時間の加熱処理を行い、α-ブチル-ω-(2-トリメトキシシリルエチル)ポリジメチルシロキサンで表面処理されてなる酸化亜鉛(B-4e)を得た。
【0104】
[表面処理9:酸化亜鉛の表面処理]
前記表面処理3において、酸化亜鉛JIS1種(ハクスイテック(株)製)のボールミル粉砕品の代わりに酸化亜鉛JIS1種(堺化学工業(株)製、D50=0.45μm、BET比表面積=9.0m2/g、)100gを用いた以外は表面処理3と同様にして、ヘキサデシルトリメトキシシランで表面処理されてなる酸化亜鉛-1を得た。
【0105】
[表面処理10:酸化亜鉛の表面処理]
前記表面処理7において、酸化亜鉛JIS1種(ハクスイテック(株)製)のボールミル粉砕品の代わりに酸化亜鉛JIS1種(堺化学工業(株)製、D50=0.45μm、BET比表面積=9.0m2/g)100gを用いた以外は表面処理7と同様にして、α-ブチル-ω-(2-トリメトキシシリルエチル)ポリジメチルシロキサンで表面処理されてなる酸化亜鉛-2を得た。
【0106】
[表面処理11:酸化亜鉛の表面処理]
表面処理剤として、KBM-3033(n-プロピルトリメトキシシラン、信越化学工業(株)製、最小被覆面積:475m2/g)1.0gを溶媒(エタノール/水=9/1)9.0gに溶かし、加水分解液-8を調製した。
酸化亜鉛JIS1種(ハクスイテック(株)製)500gをボールミルで粉砕するため、直径10mmのアルミナボール5Kgとともに、5LのPE製容器に入れ、回転数90rpmで3時間回転させ、前記酸化亜鉛を粉砕した。得られた酸化亜鉛のD50は0.5μm、BET比表面積=4.1m2/gであった。
前記表面処理2において、アルミナ AA-3の代わりに酸化亜鉛JIS1種のボールミル粉砕品(D50=0.5μm、BET比表面積=4.1m2/g)100g、及び加水分解液-2の代わりに加水分解液-8を用いた以外は表面処理2と同様にして、n-プロピルトリメトキシシランで表面処理されてなる酸化亜鉛-3を得た。
【0107】
[表面処理12:アルミナの表面処理]
前記表面処理3において、酸化亜鉛JIS1種のボールミル粉砕品の代わりにアルミナ AKP-30(住友化学(株)製、D50=0.3μm、BET比表面積=6.7m2/g)100gを用いた以外は表面処理3と同様にして、ヘキサデシルトリメトキシシランで表面処理されてなるアルミナ-1を得た。
【0108】
[表面処理13:アルミナの表面処理]
前記表面処理4において、酸化亜鉛JIS1種のボールミル粉砕品の代わりにアルミナ AKP-30(住友化学(株)製、D50=0.3μm、BET比表面積=6.7m2/g)100gを用いた以外は表面処理4と同様にして、デシルトリメトキシシランで表面処理されてなるアルミナ-2を得た。
【0109】
(実施例1~7、及び比較例1~6)
(1)熱伝導組成物の調製
表1及び表2に記載の種類及び配合量の各成分をポリエチレン容器に量り取り、自転・公転ミキサー((株)シンキー製)に投入して、回転数2000rpm、90秒間の条件で撹拌混合を行った。冷却後、混合物をほぐし、さらに自転・公転ミキサーで回転数2000rpm、90秒間の条件で撹拌混合し、各実施例及び比較例の熱伝導組成物を得た。なお、比較例6では、表2に記載の種類及び配合量の各成分を混合しても粉の状態であり、シート化できず、後述する各評価を行うことができなかった。
【0110】
(2)シートの作製
シリコーン離型処理を施した厚み0.1mmのポリエステルフィルム上に、脱泡した熱伝導組成物を載せ、そのうえから厚み0.1mmのポリエステルフィルムを空気の混入がないように被せ、圧延ロールにて成形し、120℃で60分間硬化させ、さらに一日室温(23℃)で放置後、厚み2.0mmのシートを得た。
【0111】
熱伝導組成物の調製に使用した表1及び表2に記載の各成分の詳細は以下のとおりである。
【0112】
<硬化型シリコーン樹脂(A)>
硬化型シリコーン樹脂(A)として、下記に示す(a-1)~(a-4)成分により構成される付加反応硬化型シリコーン樹脂を用いた。
・アルケニル基を有するオルガノポリシロキサン(a-1):DMS-V21(GelSet社製、動粘度(25℃)=98.4mm2/s)、97.9g
・オルガノハイドロジェンポリシロキサン(a-2):DMS-H21(GelSet社製、動粘度(25℃)=100.5mm2/s)、1.8g
・白金族金属系硬化触媒(a-3):SIP6830.3(GelSet社)、0.1g
・付加反応抑制剤(a-4):ME75:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社、0.2g
【0113】
<熱伝導性粉末(B)>
〔窒化アルミニウム粒子(B-1)〕
・珪素含有酸化物被覆窒化アルミニウム粒子(B-1):合成例1で得られた珪素含有酸化物被覆窒化アルミニウム粒子、D50=76μm、BET比表面積=0.05m2/g
【0114】
〔窒化アルミニウム粒子(B-2)〕
・珪素含有酸化物被覆窒化アルミニウム粒子(B-2a):合成例2で得られた珪素含有酸化物被覆窒化アルミニウム粒子、D50=34μm、BET比表面積=0.12m2/g
・珪素含有酸化物被覆窒化アルミニウム粒子(B-2b):合成例3で得られた珪素含有酸化物被覆窒化アルミニウム粒子、D50=33μm、BET比表面積=0.12m2/g
【0115】
〔酸化亜鉛以外の金属酸化物(B-3)〕
・アルミナ(B-3a):表面処理1で得られたアルミナの表面処理品、D50=3μm、BET比表面積=0.54m2/g
・アルミナ(B-3b):表面処理2で得られたアルミナの表面処理品、D50=3μm、BET比表面積=0.54m2/g
・アルミナ(B-3c):表面処理6で得られたアルミナの表面処理品、D50=3μm、BET比表面積=0.54m2/g
【0116】
〔酸化亜鉛(B-4)〕
・酸化亜鉛(B-4a):表面処理3で得られた酸化亜鉛の表面処理品、D50=0.5μm、BET比表面積=4.1m2/g
・酸化亜鉛(B-4b):表面処理4で得られた酸化亜鉛の表面処理品、D50=0.5μm、BET比表面積=4.1m2/g
・酸化亜鉛(B-4c):表面処理5で得られた酸化亜鉛の表面処理品、D50=0.8μm、BET比表面積=4.0m2/g
・酸化亜鉛(B-4d):表面処理7で得られた酸化亜鉛の表面処理品、D50=0.5μm、BET比表面積=4.1m2/g
・酸化亜鉛(B-4e):表面処理8で得られた酸化亜鉛の表面処理品、D50=0.8μm、BET比表面積=4.0m2/g
【0117】
〔BET比表面積が9.0m2/g以上である酸化亜鉛〕
・酸化亜鉛-1:表面処理9で得られた酸化亜鉛の表面処理品、D50=0.45μm、BET比表面積=9.0m2/g
・酸化亜鉛-2:表面処理10で得られた酸化亜鉛の表面処理品、D50=0.45μm、BET比表面積=9.0m2/g
【0118】
〔n-プロピルトリメトキシシランで表面処理した酸化亜鉛〕
・酸化亜鉛-3:表面処理11で得られた酸化亜鉛の表面処理品、D50=0.5μm、BET比表面積=4.1m2/g
【0119】
〔表面処理を施していない酸化亜鉛〕
・酸化亜鉛-4:酸化亜鉛JIS1種(ハクスイテック(株)製)をボールミルで粉砕した、ボールミル粉砕品、D50=0.5μm、BET比表面積=4.1m2/g
【0120】
〔積算体積50%粒径が1μm未満のアルミナ〕
・アルミナ-1:表面処理12で得られたアルミナの表面処理品、D50=0.3μm、BET比表面積=6.7m2/g
・アルミナ-2:表面処理13で得られたアルミナの表面処理品、D50=0.3μm、BET比表面積=6.7m2/g
【0121】
<ジメチルシリコーンオイル(C)>
・TSF-458-50:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズジャパン合同会社製、動粘度(25℃)=50mm2/s
【0122】
アルケニル基を有するオルガノポリシロキサン(a-1)、ヒドロシリル基を有するオルガノポリシロキサン(a-2)、及びジメチルシリコーンオイル(C)の25℃における動粘度は、オストワルド粘度計(柴田科学(株)製)を用いて測定した。
【0123】
熱伝導性粉末(B)の積算体積50%粒径(D50)、及びBET比表面積は、下記の測定方法により測定した。
(1)積算体積50%粒径(D50)
レーザー回折式粒度分布測定装置(マイクロトラック・ベル(株)製、商品名:MT3300EXII)を用いて測定した粒度分布において積算体積が50%となる粒径から求めた。
【0124】
(2)比表面積
比表面積測定装置((株)マウンテック製、商品名:Macsorb HM model-1210)を用いて、窒素吸着によるBET 1点法により測定した。吸着ガスとして、He70体積%とN230体積%の混合ガスを用いた。
【0125】
<評価項目>
(1)熱伝導率
得られた厚み2.0mmのシートを幅20mm×長さ30mmで短冊状に切り出し、それを3枚重ねてブロックを作ったものを2個準備し、表面をラップで覆って、ISO22007-2に準拠するホットディスク法測定装置(京都電子工業(株)製、TPS-2500)のプローブを上下から挟み込む形でセットし、熱伝導率を測定した。
【0126】
(2)アスカーC硬度
得られた厚み2.0mmのシートを幅20mm×長さ30mmで短冊状に切り出し、それを3枚重ねてブロックをつくり、測定サンプルとした。アスカーC 硬度計(アスカー Cゴム硬度計、高分子計器(株)製)を用いて、JIS K7312:1996の硬さ試験(タイプC)に準拠して前記測定サンプルのアスカーC硬度を測定した。
【0127】
(3)粘度
JIS K7210:2014に準拠して、フロー粘度計(GFT-100EX、(株)島津製作所製)を用いて、温度30℃、ダイ穴径(直径)1.0mm、試験力10(重り1.8kg)の条件で測定した。
【0128】
【0129】
【0130】
表1及び表2から、熱伝導性粉末(B)として、窒化アルミニウム粒子(B-1)、窒化アルミニウム粒子(B-2)、酸化亜鉛以外の金属酸化物(B-3)、及び酸化亜鉛(B-4)を含む実施例1~7の熱伝導組成物は、いずれも25℃における粘度が50000Pa・s以下と低く、また、その硬化物の熱伝導率は10.0W/m・K以上と高く、高い熱伝導性能と良好な流動性を両立できることがわかる。また、実施例1~7の熱伝導組成物の硬化物はアスカーC硬度が20~55であり、適度な硬さを有する。一方、熱伝導性粉末(B)として、酸化亜鉛(B-4)を含まず、積算体積50%粒径が1μm未満のアルミナを含む比較例1、及び2の熱伝導組成物は、熱伝導率が高いものの25℃における粘度が94000Pa・s、95000Pa・sと非常に高い。更に、熱伝導性粉末(B)として、酸化亜鉛(B-4)の代わりにBET比表面積が9.0m2/gであり、ヘキサデシルトリメトキシシランで表面処理されてなる酸化亜鉛を含む比較例3の熱伝導組成物は、25℃における粘度が200000Pa・sと非常に高い。また、熱伝導性粉末(B)として、酸化亜鉛(B-4)の代わりにBET比表面積が9.0m2/gであり、α-ブチル-ω-(2-トリメトキシシリルエチル)ポリジメチルシロキサンで表面処理されてなる酸化亜鉛を含む比較例4の熱伝導組成物は、25℃における粘度は低いが、熱伝導率が9.5W/m・Kと低い。さらに、熱伝導性粉末(B)として、酸化亜鉛(B-4)の代わりにn-プロピルトリメトキシシランで表面処理した酸化亜鉛を含む比較例5の熱伝導組成物は硬すぎるためフロー粘度計のダイ穴から吐出できず粘度を測定することができなかった。また、熱伝導性粉末(B)として、酸化亜鉛(B-4)の代わりに表面処理がされていない酸化亜鉛を含む比較例6は、各成分の混合後の状態が粉状でありシート化できなかった。
【要約】
硬化型シリコーン樹脂(A)と、熱伝導性粉末(B)とを含む熱伝導組成物であって、
前記熱伝導性粉末(B)の含有量は、前記熱伝導組成物全量に対して70~98質量%であり、
前記熱伝導性粉末(B)は、前記熱伝導性粉末(B)全量に対して、積算体積50%粒径が50μm以上、150μm以下の窒化アルミニウム粒子(B-1)を30~75質量%、積算体積50%粒径が15μm以上、50μm未満の窒化アルミニウム粒子(B-2)を10~30質量%、積算体積50%粒径が1μm以上、20μm未満の酸化亜鉛以外の金属酸化物(B-3)を5~15質量%、及び積算体積50%粒径が0.1μm以上、1μm未満、かつBET比表面積9.0m2/g未満の酸化亜鉛(B-4)を10~40質量%含み、
前記酸化亜鉛以外の金属酸化物(B-3)及び前記酸化亜鉛(B-4)は、いずれも炭素数10~22のアルキル基を有するシランカップリング剤及びα-ブチル-ω-(2-トリメトキシシリルエチル)ポリジメチルシロキサンからなる群より選ばれる少なくとも1種の表面処理剤で表面処理されてなる熱伝導組成物。