(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】成膜装置、成膜方法、及び電子デバイス製造方法
(51)【国際特許分類】
C23C 14/24 20060101AFI20231011BHJP
C23C 14/52 20060101ALI20231011BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20231011BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
C23C14/24 U
C23C14/24 C
C23C14/24 G
C23C14/52
H05B33/14 A
H05B33/10
(21)【出願番号】P 2019203955
(22)【出願日】2019-11-11
【審査請求日】2022-09-20
(31)【優先権主張番号】10-2019-0023490
(32)【優先日】2019-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591065413
【氏名又は名称】キヤノントッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 昌明
【審査官】▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-256843(JP,A)
【文献】特開2015-140458(JP,A)
【文献】特開2005-325391(JP,A)
【文献】特開2004-263299(JP,A)
【文献】特開2017-008409(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00-14/58
H10K 50/10
H05B 33/10
H01L 21/203
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空容器と、
前記真空容器内に設けられ、基板を保持する基板保持部と、
前記真空容器内に設置され、
夫々、基板に成膜される成膜材料が収納される複数のるつぼを含む第1蒸発源
及び第2蒸発源と、
前記
第1蒸発源の複数のるつぼを
前記基板保持部に保持された基板に成膜材料を成膜する蒸着位置と、成膜材料を予め加熱する予熱位置と、を含む複数の位置に移動させ
、前記第2蒸発源の複数のるつぼを前記基板に成膜材料を成膜する蒸着位置と、成膜材料を予め加熱する予熱位置と、を含む複数の位置に移動させる移動手段と、
水晶振動子を含み、前記
第1蒸発源における前記蒸着位置に位置するるつぼから蒸発する成膜材料のレートを測定する第1成膜レート測定部と、
水晶振動子を含み、前記
第1蒸発源における前記予熱位置に位置するるつぼから蒸発する成膜材料のレートを測定する第2成膜レート測定部と、
水晶振動子を含み、前記第2蒸発源における前記蒸着位置に位置するるつぼから蒸発する成膜材料のレートを測定する第3成膜レート測定部と、
水晶振動子を含み、前記第2蒸発源における前記予熱位置に位置するるつぼから蒸発する成膜材料のレートを測定する第4成膜レート測定部と、
を含み、
前記第1蒸発源における前記蒸着位置に位置するるつぼと前記第1成膜レート測定部との間の経路と、前記第2蒸発源における前記蒸着位置に位置するるつぼと前記第3成膜レート測定部との間の経路と、が交差するように設けられ、かつ、
前記第1蒸発源の前記蒸着位置に位置するるつぼと前記第1成膜レート測定部との間の第1距離が、
前記第1蒸発源における前記予熱位置に位置するるつぼと前記第2成膜レート測定部との間の第2距離より大きい
ことを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記
第1蒸発源における予熱位置に位置する
るつぼは、
前記第1蒸発源における前記蒸着位置に位置するるつぼが成膜に用いられる期間の少なくとも一部の期間中に予熱されることを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記第2蒸発源における前記予熱位置に位置するるつぼは前記第2蒸発源における前記蒸着位置に位置するるつぼが成膜に用いられる期間の少なくとも一部の期間中に予熱される
ことを特徴とする請求項2に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記
移動手段は、前記第1蒸発源を回転させることによって
前記第1蒸発源の前記複数のるつぼを前記蒸着位置と前記予熱位置とを含む複数の位置に移動させ
、前記第2蒸発源を回転させることによって前記第2蒸発源の前記複数のるつぼを前記蒸着位置と前記予熱位置とを含む複数の位置に移動させる
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記第1蒸発源における前記蒸着位置に位置するるつぼ以外のるつぼから蒸発する成膜材料が前記基板に到達することを防ぐ
カバー手段をさらに含み、
前記
カバー手段は、
前記第1蒸発源における前記蒸着位置に位置するるつぼに対応する位置に設置された第1開口部と、
前記第1蒸発源における前記予熱位置に位置するるつぼから前記第2成膜レート測定部に向かう経路上に設けられた第2開口部とを含むことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項6】
前記第1蒸発源と前記基板との間に設置され、前記第1蒸発源の前記蒸着位置を覆う第1閉鎖位置と、前記第1蒸発源の前記蒸着位置を開放する第1開放位置との間を移動可能な第1可動式開閉手段をさらに含み、
前記第1開放位置に位置する前記第1可動式開閉手段と
前記第1蒸発源における前記蒸着位置に位置するるつぼとの間の距離が、前記第1閉鎖位置に位置する前記第1可動式開閉手段と
前記第1蒸発源における前記蒸着位置に位置するるつぼとの間の距離より大きいことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項7】
前記第1距離は、前記第1蒸発源における前記蒸着位置に位置するるつぼと前記第3成膜レート測定部との間の第3距離より大きい
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項8】
前記第2距離は前記第3距離より小さい
ことを特徴とする請求項7に記載の成膜装置。
【請求項9】
前記第1距離は、前記第1蒸発源における前記蒸着位置に位置するるつぼと前記第4成膜レート測定部との間の第4距離より小さい
ことを特徴とする請求項7または8に記載の成膜装置。
【請求項10】
前記
移動手段は、第2蒸発源を回転させることによって前記第2蒸発源の前記複数のるつぼを前記第2蒸発源における前記蒸着位置と前記予熱位置とを含む複数の位置に移動させる
ことを特徴とする請求項7~
9のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項11】
前記第2蒸発源と前記基板との間に設置され、前記第2蒸発源における前記蒸着位置を覆う第2閉鎖位置と、前記第2蒸発源における前記蒸着位置を開放する第2開放位置との間を移動可能な第2可動式開閉手段をさらに含み、
前記第2開放位置に位置する第2可動式開閉手段と前記第2蒸発源における前記蒸着位置に位置するるつぼとの間の距離が、前記第2閉鎖位置と前記第2蒸発源における前記蒸着位置に位置するるつぼとの間の距離より大きい
ことを特徴とする請求項7に記載の成膜装置。
【請求項12】
請求項1~
11のいずれか一項に記載の成膜装置を用いて、基板上に成膜材料を成膜する成膜方法。
【請求項13】
請求項
12の成膜方法を用いて、電子デバイスを製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜装置、成膜方法、及び電子デバイス製造方法に関するものであり、特に、成膜レート測定手段の配置構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近、フラットパネル表示装置として有機EL表示装置(有機ELディスプレイ)が脚光を浴びている。有機EL表示装置は、自発光ディスプレイであり、応答速度、視野角、薄型化などの特性が液晶パネルディスプレイより優れており、モニタ、テレビ、スマートフォンに代表される各種の携帯端末などで既存の液晶パネルディスプレイを早いスピードで代替している。また、自動車用ディスプレイ等にも、その応用分野を広げている。
【0003】
有機EL表示装置を構成する有機発光素子(有機EL素子:OLED)は、2つの向かい合う電極(カソード電極、アノード電極)の間に発光を起こす有機物層が形成された基本構造を持つ。有機発光素子の有機物層と金属電極層は、成膜装置において、成膜材料が収容された蒸発源を加熱し、成膜材料を蒸発させて、成膜材料の蒸発粒子を画素パターンが形成されたマスクを介して基板に堆積させることで製造される。
【0004】
特に、金属電極層を基板に成膜するための成膜装置の蒸溌源700は、
図8に示すように、複数のるつぼ710~770が円周上に配置され、複数のるつぼのうち蒸着位置にあるるつぼ710から電極材料が蒸発し、基板に成膜が行われる。蒸着位置のるつぼ710内の成膜材料が消耗すると、蒸発源700が回転して、予熱位置にあったるつぼ760が蒸着位置に移動することで、持続的に成膜が行われる(特許文献1)。
【0005】
成膜装置では、基板に成膜された成膜材料の厚さ及び成膜レートを測定及び制御するために、水晶振動子モニタを使う。すなわち、成膜装置においては、水晶振動子の共振周波数と水晶振動子の電極上に堆積される成膜材料の厚さとの関係を利用して、基板上に成膜される成膜材料の厚さ及び成膜レートを算出する。
ところが、水晶振動子の電極上に所定の厚さ以上に成膜材料が堆積すると、水晶振動子の共振振動が不安定となり、水晶振動子の共振周波数から膜厚を測定するのが不可能になる。このような現象が生じれば、水晶振動子の寿命が来たと判定して、水晶振動子を切り替える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
金属電極層を基板に成膜するための成膜装置では、蒸着位置にあるるつぼ710と予熱位置にあるるつぼ760のそれぞれに対して、蒸発レートあるいは成膜レートを監視するために、蒸着位置監視用の水晶振動子モニタと予熱位置監視用の水晶振動子モニタを設置する。
【0008】
ところで、蒸着位置監視用の水晶振動子モニタが予熱位置監視用の水晶振動子モニタより蒸発源のるつぼの成膜レートを監視する時間が長いので、蒸着位置監視用の水晶振動子の電極上に堆積される成膜材料の厚さが所定の厚さに達する時間が予熱位置監視用の水晶振動子の場合より短い。そのため、蒸着位置監視用の水晶振動子モニタが予熱位置監視用
の水晶振動子モニタより早く寿命が来ることとなる。これにより、蒸着位置監視用の水晶振動子モニタの交換周期が相対的に短くなる課題があった。
【0009】
本発明は上記課題に鑑み、蒸着位置監視用の成膜レート測定部の交換周期の短縮を抑制するための技術を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1態様による成膜装置は、
真空容器と、前記真空容器内に設けられ、基板を保持する基板保持部と、前記真空容器内に設置され、夫々、基板に成膜される成膜材料が収納される複数のるつぼを含む第1蒸発源及び第2蒸発源と、前記第1蒸発源の複数のるつぼを前記基板保持部に保持された基板に成膜材料を成膜する蒸着位置と、成膜材料を予め加熱する予熱位置と、を含む複数の位置に移動させ、前記第2蒸発源の複数のるつぼを前記基板に成膜材料を成膜する蒸着位置と、成膜材料を予め加熱する予熱位置と、を含む複数の位置に移動させる移動手段と、水晶振動子を含み、前記第1蒸発源における前記蒸着位置に位置するるつぼから蒸発する成膜材料のレートを測定する第1成膜レート測定部と、
水晶振動子を含み、前記第1蒸発源における前記予熱位置に位置するるつぼから蒸発する成膜材料のレートを測定する第2成膜レート測定部と、
水晶振動子を含み、前記第2蒸発源における前記蒸着位置に位置するるつぼから蒸発する成膜材料のレートを測定する第3成膜レート測定部と、
水晶振動子を含み、前記第2蒸発源における前記予熱位置に位置するるつぼから蒸発する成膜材料のレートを測定する第4成膜レート測定部と、を含み、
前記第1蒸発源における前記蒸着位置に位置するるつぼと前記第1成膜レート測定部との間の経路と、前記第2蒸発源における前記蒸着位置に位置するるつぼと前記第3成膜レート測定部との間の経路と、が交差するように設けられ、かつ、
前記第1蒸発源の前記蒸着位置に位置するるつぼと前記第1成膜レート測定部との間の第1距離が、前記第1蒸発源における前記予熱位置に位置するるつぼと前記第2成膜レート測定部との間の第2距離より大きいことを特徴とする。
本発明の第2態様による成膜方法は、本発明の第1態様による成膜装置を用いて基板上に成膜材料を成膜することを特徴とする。
本発明の第3態様による電子デバイス製造方法は、本発明の第2態様による成膜方法を用いて電子デバイスを製造することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、蒸着位置監視用の成膜レート測定部の交換周期の短縮を抑制するための技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の一実施例による電子デバイスの製造ラインの一部の模式図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施例による成膜装置の模式図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施例による成膜装置の蒸発源の模式図である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施例による防着部材の構造を示す模式図である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施例による成膜レート測定手段の構造を示す模式図である。
【
図6】
図6は、本発明の一実施例による成膜レート測定部と蒸発源の配置構造を示す模式図である。
【
図7】
図7は、有機EL表示装置の構造を示す模式図である。
【
図8】
図8は、金属電極層の成膜装置に使われる蒸発源の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態及び実施例を説明する。ただし、以下の実施形態及び実施例は本発明の好ましい構成を例示的に示すものにすぎず、本発明の範囲はそれらの構成に限定されない。また、以下の説明における、装置のハードウェア構成及びソフトウェア構成、処理フロー、製造条件、寸法、材質、形状などは、特に特定的な記載がないかぎりは、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0014】
本発明は、基板の表面に各種材料を堆積させて成膜を行う装置に適用することができ、真空蒸着によって所望のパターンの薄膜(材料層)を形成する装置に望ましく適用することができる。基板の材料としては、ガラス、高分子材料のフィルム、金属などの任意の材料を選択することができ、基板は、例えば、ガラス基板上にポリイミドなどのフィルムが積層された基板であってもよい。また、成膜材料としても、有機材料、金属性材料(金属
、金属酸化物など)などの任意の材料を選択してもよい。なお、以下の説明において説明する真空蒸着装置以外にも、スパッタ装置やCVD(Chemical Vapor Deposition)装置を含む成膜装置にも、本発明を適用することができる。本発明の技術は、具体的には、有機電子デバイス(例えば、有機EL素子、薄膜太陽電池)、光学部材などの製造装置に適用可能である。その中でも、成膜材料を蒸発させてマスクを介して基板に蒸着させることで有機EL素子を形成する有機EL素子の製造装置は、本発明の好ましい適用例の一つである。
【0015】
<電子デバイスの製造装置>
図1は、電子デバイスの製造装置の一部の構成を模式的に示す平面図である。
図1の製造装置は、例えば、スマートフォン用の有機EL表示装置の表示パネルの製造に用いられる。スマートフォン用の表示パネルの場合、例えば、4.5世代の基板(約700mm×約900mm)や6世代のフルサイズ(約1500mm×約1850mm)又はハーフカットサイズ(約1500mm×約925mm)の基板に、有機EL素子の形成のための成膜を行った後、該基板を切り抜いて複数の小さなサイズのパネルを製造する。電子デバイスの製造装置は、一般的に、複数のクラスタ装置1と、クラスタ装置の間を繋ぐ中継装置とを含む。
【0016】
クラスタ装置1は、基板Sに対する処理(例えば、成膜)を行う複数の成膜装置11と、使用前後のマスクMを収納する複数のマスクストック装置12と、その中央に配置される搬送室13と、を具備する。搬送室13は、
図1に示すように、複数の成膜装置11およびマスクストック装置12のそれぞれと接続されている。
【0017】
搬送室13内には、基板SおよびマスクMを搬送する搬送ロボット14が配置されている。搬送ロボット14は、上流側に配置された中継装置のパス室15から成膜装置11へと基板Sを搬送する。また、搬送ロボット14は、成膜装置11とマスクストック装置12との間でマスクMを搬送する。搬送ロボット14は、例えば、多関節アームに、基板S又はマスクMを保持するロボットハンドが取り付けられた構造を有するロボットである。成膜装置11(蒸着装置とも呼ぶ)では、蒸発源に収納された成膜材料がヒータによって加熱されて蒸発し、マスクを介して基板上に成膜される。搬送ロボット14との基板S/マスクMの受け渡し、基板SとマスクMの相対位置の調整(アライメント)、マスクM上への基板Sの固定、成膜(蒸着)などの一連の成膜プロセスは、成膜装置11によって行われる。
【0018】
マスクストック装置12には、成膜装置11での成膜工程に使われる新しいマスクと、使用済みのマスクとが、二つのカセットに分けて収納される。搬送ロボット14は、使用済みのマスクを成膜装置11からマスクストック装置12のカセットに搬送し、マスクストック装置12の他のカセットに収納された新しいマスクを成膜装置11に搬送する。
【0019】
クラスタ装置1には、基板Sの流れ方向において上流側からの基板Sを当該クラスタ装置1に伝達するパス室15と、当該クラスタ装置1で成膜処理が完了した基板Sを下流側の他のクラスタ装置に伝えるためのバッファー室16が連結される。搬送室13の搬送ロボット14は、上流側のパス室15から基板Sを受け取って、当該クラスタ装置1内の成膜装置11の一つ(例えば、成膜装置11a)に搬送する。また、搬送ロボット14は、当該クラスタ装置1での成膜処理が完了した基板Sを複数の成膜装置11の一つ(例えば、成膜装置11b)から受け取って、下流側に連結されたバッファー室16に搬送する。
【0020】
バッファー室16とパス室15との間には、基板の向きを変える旋回室17が設置される。旋回室17には、バッファー室16から基板Sを受け取って基板Sを180°回転させ、パス室15に搬送するための搬送ロボット18が設けられる。これにより、上流側の
クラスタ装置と下流側のクラスタ装置で基板Sの向きが同じくなり、基板処理が容易になる。
パス室15、バッファー室16、旋回室17は、クラスタ装置の間を連結する、いわゆる中継装置であり、クラスタ装置の上流側及び/又は下流側に設置される中継装置は、パス室、バッファー室、旋回室のうち少なくとも1つを含む。
【0021】
成膜装置11、マスクストック装置12、搬送室13、バッファー室16、旋回室17などは、有機発光素子の製造の過程で、高真空状態に維持される。パス室15は、通常低真空状態に維持されるが、必要に応じて高真空状態に維持されてもよい。
【0022】
本実施例では、
図1を参照して、電子デバイスの製造装置の構成について説明したが、本発明はこれに限定されず、他の種類の装置やチャンバーを有してもよく、これらの装置やチャンバー間の配置が変わってもよい。
例えば、本発明は、基板SとマスクMを、成膜装置11ではなく、別の装置またはチャンバーで合着させた後、これをキャリアに乗せて、一列に並んだ複数の成膜装置を通して搬送させながら成膜工程を行うインラインタイプの製造装置にも適用することができる。
【0023】
<成膜装置>
以下、
図2から
図5を参照して、本発明の一実施形態に係る成膜装置について説明する。
【0024】
図2は、成膜装置、特に、金属電極層を成膜するのに使われる金属性成膜材料の成膜装置11の構成を模式的に示す断面図である。
成膜装置11は、真空容器20と、基板保持ユニット21と、マスク保持ユニット22と、蒸発源23を備える。真空容器20の内部は、真空などの減圧雰囲気、あるいは、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気に維持される。ここで「真空」という用語は、成膜に応じて必要な真空度を満たした状態を指し、ここで言う「真空容器」も容器内部を成膜に必要な雰囲気に保つことができるものを指す。
【0025】
図2に示すように、真空容器20の内部の上部には、基板保持ユニット21とマスク保持ユニット22とが設けられ、真空容器20の内部の下部または底面には、蒸発源23が設置される。
基板保持ユニット21は、搬送室13の搬送ロボット14から受け取った基板Sを保持する手段であり、基板ホルダとも呼ぶ。
マスク保持ユニット22は、真空容器20内に搬入されたマスクMを保持する手段であり、基板保持ユニット21の下方に設置される。マスク保持ユニット22にはマスクMが載置される。マスクMは、基板S上に形成される薄膜パターンに対応する開口パターンを有する。
【0026】
成膜時には、例えば、基板保持ユニット21がマスク保持ユニット22に対して相対的に下降し、基板保持ユニット21によって保持された基板SがマスクM上に載置される。また、真空容器20の上部(外部)から導入された回転シャフト24によって、基板保持ユニット21及びマスク保持ユニット22が一緒に回転することで、マスクM及びマスクMの上に載置された基板Sが回転する。これによって、基板S上に金属性成膜材料を均一な厚さで成膜することができる。
【0027】
蒸発源23は、基板に成膜される成膜材料が収納されるるつぼ231と、るつぼ231を加熱するためのヒータ(不図示)と、を含む。
金属性成膜材料の成膜装置11の蒸発源23は、
図3に示すように、複数設けられ、各蒸発源23は複数のるつぼ(収納部)231を含む。一つの蒸発源23に含まれるるつぼ
231の数は、通常、5個あるいは7個であり、それぞれの蒸発源23は回転駆動機構(不図示)によって回転(例えば、自転)して、るつぼ231を所望の位置に移動させることができる。そのため、金属性成膜材料の成膜装置11の蒸発源23をリボルバ(revolver)とも称する。
【0028】
成膜の際には、複数の蒸発源23(23a,23b)それぞれの蒸着位置232(232a,232b、成膜位置)にあるるつぼ231をヒータによって高温に加熱して、るつぼ231内に収納された成膜材料を蒸発させ、基板10に成膜する。蒸着位置232に来たるつぼ231を加熱し始めた後、適切な時点で、予熱位置237(237a,237b)にあるるつぼ231を予熱し始める。予熱位置237は、次に蒸着位置232に移動し、成膜に用いられるるつぼ231が予め加熱される位置である。予熱の開始時点は、蒸着位置232のるつぼ231の成膜材料がなくなる前に、予熱位置237のるつぼ231からの蒸発レート(あるいは予熱位置237にあるるつぼ231が蒸着位置232に移動したときに当該るつぼによって基板S上に成膜される膜の成膜レート、以下同様である)が所定値に到達することができるように設定される。つまり、予熱位置237のるつぼは、蒸着位置232のるつぼが成膜に使用される期間の少なくとも一部の期間中に予熱される。
【0029】
蒸着位置232のるつぼ231内の成膜材料がなくなると、蒸発源23を回転(例えば、自転)駆動して、蒸着位置232にあったるつぼ231を蒸着後位置234に移動させ、予熱位置237にあったるつぼ231を蒸着位置232に回転移動させる。予熱位置237は、次に蒸着位置232に移動するるつぼを予め加熱しておく位置であり、このように、次に蒸着位置232に移動するるつぼを予め加熱しておくことで、蒸着位置232に移動された後に当該るつぼを加熱するためにかかる時間を減らすことができ、全体的な成膜時間を短縮することができる。
【0030】
蒸着位置232と予熱位置237は、当該位置のるつぼが互いに熱干渉しないように、一個飛ばしの関係にあるように設定する。このようにして、蒸発源23内のすべてのるつぼ231の成膜材料が消耗するまで蒸発源23a,23bそれぞれを回転させながら成膜を行う。
【0031】
蒸着位置232にあるるつぼだけではなく予熱位置237や蒸着後位置234にあるるつぼも相対的に温度が高く維持されるので、予熱位置237や蒸着後位置234にあるるつぼからも成膜材料が蒸発されるが、これら位置(237,234)のるつぼから蒸発した成膜材料が基板Sまたは真空容器20内の他の部品に向かって飛散することを抑制するため、防着部材(カバー手段)25をそれぞれの蒸発源23上に設ける。例えば、本実施例に係る防着部材25は、第1蒸発源23a上に設けられた第1防着部材25a(第1カバー手段)と、第2蒸発源23b上に設置された第2防着部材25b(第2カバー手段)とを含む。第1防着部材は第1予熱位置(後述)に位置するるつぼと基板との間に配置されており、第2防着部材は第2予熱位置(後述)に位置するるつぼと基板との間に配置されている。
【0032】
また、防着部材25は、成膜装置11の真空容器20に固定されるように設置される。本発明の一実施例による防着部材25は、
図4に示すように、蒸発源23の蒸着位置232に対応する位置に第1開口251を有する。これにより、蒸着位置232に来たるつぼ231から蒸発された成膜材料の粒子が基板に向かって飛ぶことができる。
【0033】
また、防着部材25は、予熱位置237のるつぼ231からの蒸発粒子が基板Sに向かって飛ぶことを防止するとともに、予熱位置237のるつぼ231からの蒸発レートを測定するために、予熱位置237のるつぼ231からの蒸発粒子が成膜レート測定手段27
に到達することができるように構成される。例えば、防着部材25は、予熱位置237のるつぼから成膜レート測定部27に向かって飛散する蒸発粒子をガイドするガイド部252と、ガイド部252に沿って成膜レート測定手段27に向かって飛散する蒸発粒子が通過することができる第2開口253とを有する。すなわち、第2開口253は、予熱位置237のるつぼ231から成膜レート測定手段27に向かう経路上に設置される。
【0034】
防着部材25には予熱位置237及び蒸着後位置234のるつぼから蒸発した成膜材料が堆積される。本実施例による防着部材25は、防着部材25に堆積された成膜材料が反射ないし再蒸発して、真空容器20内の他の構成部分を汚染させることを低減するために、予熱位置237及び/または蒸着後位置234に対応する位置に凸部254、255を形成してもよい。
【0035】
蒸着位置232のるつぼ231から蒸発した成膜材料の蒸発粒子が基板Sに堆積することを一時的に(例えば、蒸着位置232のるつぼ231の蒸発レートが所定値に到達するまでに)防ぐために、蒸発源シャッタ(可動式開閉手段)26がそれぞれの蒸発源23の上方に回転可能に設置される。例えば、本実施例に係る蒸発源シャッタ26は、第1蒸発源23aの上方に設置された第1蒸発源シャッタ26a(第1可動式開閉手段)と、第2蒸発源23bの上方に設置された第2蒸発源シャッタ26b(第2可動式開閉手段)とを含む。第1可動開閉手段は第1蒸着位置(後述)に位置するるつぼと基板との間に配置されており、第2可動開閉手段は第2蒸着位置(後述)に位置するるつぼと基板との間に配置されている。
【0036】
基板Sへの成膜が開始する時点で、蒸発源シャッタ26は、回転移動して、蒸着位置232のるつぼ231の上方を開放し、蒸着位置232のるつぼ231からの成膜材料の蒸発粒子が基板Sに向かって飛ぶようにする。つまり、蒸発源シャッタ26は、蒸着位置232のるつぼ231の上方を防ぐ閉鎖位置(
図2の実線)と、蒸着位置232のるつぼ231からの蒸発粒子が基板に向かって飛散することができるよう退避する開放位置(
図2の破線)との間を回動する。
【0037】
成膜装置11の真空容器20内には、複数の蒸発源23からの成膜材料の蒸発レート、または、成膜材料の粒子が基板S上に成膜される成膜レートを測定するための複数の成膜レート測定手段27が設置される。
例えば、第1成膜レート測定手段27aは、第1蒸発源23aの蒸発レートおよび/または成膜レートを測定し、第2成膜レート測定手段27bは、第2蒸発源23bの蒸発レートおよび/または成膜レートを測定する。
【0038】
本発明の一実施例によるそれぞれの蒸発レート測定手段27(27a,27b)は、蒸着位置232のるつぼからの蒸発レート及び/又は基板上への成膜レートを測定するための成膜レート測定部271(271a,271b)と、予熱位置237のるつぼからの蒸発レートを測定するための成膜レート測定部272(272a,272b)とを含む。
例えば、第1成膜レート測定手段27aの第1成膜レート測定部271aは、第1蒸発源23aにおいて蒸着位置232にあるるつぼ231の蒸発レートまたは成膜レートを測定し、第1成膜レート測定手段27aの第2成膜レート測定部272aは、第1蒸発源23aにおいて予熱位置237にあるるつぼ231の蒸発レートを測定する。
【0039】
成膜装置は、装置の各構成要素の動作制御や、そのために必要な各種演算、例えば水晶振動子30から得られる情報に基づく膜厚や成膜レートの算出処理などを行うための、制御部800を備える。成膜装置ごとに制御部を備えていてもよいし、成膜クラスタごとに制御部を備えていてもよい。制御部800としては、プロセッサやメモリなどの演算資源を備える情報処理装置や、専用の処理回路を用いてもよい。
【0040】
本発明の一実施例による成膜レート測定手段27は、
図5の(a)に示すような水晶振動子30を含む。制御部800は、蒸発源23からの成膜材料の堆積に応じた水晶振動子30の共振周波数の変化に基づいて、基板S上に成膜された成膜材料の膜厚及び成膜レートを間接的に算出する。
【0041】
水晶振動子30は、一定の結晶方向に切断された水晶板31の表面及び裏面に電極膜32、33を形成した構造を持つ。
水晶振動子30に用いられる水晶板31は、比較的温度特性が優れたAT-カット(AT-cut)をした水晶を使うことが望ましい。
図5の(a)に示すように、電極膜33側の裏面を曲面にし、成膜材料が堆積される電極膜32側の表面は平面にする方が水晶振動子30の振動の安定性を高めることができる。
【0042】
水晶振動子30の電極膜32、33は、アルミニウム(Al)を主成分とする合金、あるいは、金(Au)からなることが好ましい。これはアルミニウム合金あるいは金の電極膜32、33が成膜材料との密着性がよく、水晶振動子30の電極膜32上に堆積された膜が水晶振動子30の共振振動をよく追従することができるからである。
図5の(a)では、電極膜32上に直接成膜材料が堆積することと図示したが、電極膜32上には電極材料との密着性がもっと良いつつ、成膜材料との境界が連続的に変わる第3の膜(例えば、成膜材料と異なる有機材料)を追加的に形成しても良い。
【0043】
水晶振動子30の電極膜32、33に交流電圧を印加すると、水晶の圧電特性によって水晶振動子30は振動し、水晶板の厚さが決まった条件を満たす場合、共振周波数で振動をするようになる。このような水晶振動子30の共振周波数は、電極膜32上に堆積された成膜材料の質量変動によって変わる。水晶振動子30の共振周波数の変動値と成膜材料の質量の変動値との間には以下のような関係式(Sauerbrey式)が成り立つ。
【数1】
ここで、Δfは、共振周波数の変動値、Δmは、水晶振動子の電極膜32上に堆積された成膜材料の質量変動値、fは、水晶の基本周波数、μは、水晶のせん断係数(shear modulus)、ρQは、水晶の密度、Aは、電極面積である。すなわち、水晶振動子30の電極32上に成膜材料が堆積されて、その質量が増加するにつれて、水晶振動子30の共振周波数は小さくなる。
【0044】
このような関係を利用して、測定された水晶振動子30の共振周波数の変動値から電極膜32上に堆積された膜の質量の変動値、さらに膜厚及び成膜レートを求めることができる。
【0045】
本発明の一実施例による成膜レート測定手段27のそれぞれの成膜レート測定部は、
図5の(b)に示すように、複数の(例えば、10個の)水晶振動子30を含む。複数の水晶振動子30のうち、開口34に対応する位置にある水晶振動子30だけが蒸発源23に露出され、蒸発源23から飛散してきた成膜材料が堆積される。この間、残りの水晶振動子30は、蒸発源23に露出しない状態で維持され、蒸発源23に露出されていた水晶振動子30が寿命に達すれば、他の水晶振動子30を開口34に対応する位置に、例えば、回転移動させて、同様に膜厚及び成膜レートの測定を続ける。このようにして、成膜レート測定部に含まれた水晶振動子30のすべてが使用できなくなると、成膜レート測定部を入れ替る。これによって、成膜レート測定部の全体的な寿命を長くすることができ、成膜
レート測定部の交替によって成膜工程が中止される時間を減らすことで、生産ラインの全体的なスループットを増加させることができる。
【0046】
本発明の一実施例による成膜レート測定部には、
図5の(b)に示すように、回転可能なチョッパ35を用いて、開口34に対応する位置にある水晶振動子30に堆積される成膜材料の量を調節することができる。すなわち、開口部356を有するチョッパ35を一定の速度で回転させ、開口34に対応する位置にある水晶振動子30が周期的に蒸発源23から遮られるようにすることによって、当該水晶振動子30に堆積される成膜材料の量を調節することができる。
【0047】
<成膜レート測定手段と蒸発源の相対的な配置構造>
以下、
図6を参照して、本発明の一実施例による成膜レート測定手段27と蒸発源23の配置構造について説明する。
【0048】
図6は、
図3に破線で囲んだ第1蒸発源23a及び第2蒸発源23bと、これらの蒸発源23a、23bのそれぞれからの蒸発レートや成膜レートを測定するための第1成膜レート測定手段27a及び第2成膜レート測定手段27bを示す。
【0049】
本発明の一実施例による成膜装置11において、複数の蒸発源23のいずれかの蒸発源、例えば、第1蒸発源23aの第1蒸着位置(第1位置、232a)のるつぼ231からの蒸発レート/成膜レートを測定するために、第1蒸発源23aの第1蒸着位置232aに向けて設置された第1成膜レート測定手段27aの第1成膜レート測定部271aと、第1蒸発源23aの第1予熱位置(第2位置、237a)のるつぼ231からの蒸発レート/成膜レートを測定するために、第1蒸発源23aの第1予熱位置237aに向けて設置された第1成膜レート測定手段27aの第2成膜レート測定部272aは、第1成膜レート測定部271aと第1蒸着位置232aあるいは第1蒸着位置232aのるつぼ231との間の距離が、第2成膜レート測定部272aと第1予熱位置237aあるいは第1予熱位置237aのるつぼ231との間の距離と異なるように設置される。
【0050】
例えば、第1成膜レート測定部271a及び第2成膜レート測定部272aは、第1成膜レート測定部271aと第1蒸着位置232a又は第1蒸着位置232aのるつぼ231との間の距離である第1距離Aが、第2成膜レート測定部272aと第1予熱位置237a又は第1予熱位置237aのるつぼ231との間の距離である第2距離Bより大きくなるように設置される。
【0051】
このように、第1蒸着位置232aのるつぼ231に向けられた第1成膜レート測定部271aを第1予熱位置237aのるつぼ231に向けられた第2成膜レート測定部272aより第1蒸発源23aの該当位置のるつぼから遠い位置に設置することで、第1蒸着位置232aのるつぼ231から蒸発して、第1成膜レート測定部271aに堆積される成膜材料の成膜レートを下げることができる。これは、るつぼから蒸発した成膜材料の粒子の一部は、成膜レート測定部に到達する前に他の粒子との衝突などによって成膜レート測定部まで到達できないからである。第1蒸発源23aの第1蒸着位置232aのるつぼ231から蒸発した成膜材料の粒子の一部も、第1成膜レート測定部271aに向かって飛ぶ過程で他の粒子との衝突などを起こして脱落するため、実際に第1成膜レート測定部271aに到達する粒子の量が減る。
【0052】
したがって、第1成膜レート測定部271aが第2成膜レート測定部272aに比べて、第1蒸発源23aのるつぼに露出される時間が相対的に長い場合にも、第1成膜レート測定部271aに堆積する成膜材料の成膜レートが、第2成膜レート測定部272aに堆積する成膜材料の成膜レートよりも低いことにより、第1成膜レート測定部271aと第
2成膜レート測定部272aの間の成膜レートの差を縮めることができる。その結果、第1成膜レート測定部271aが第2成膜レート測定部272aより先に寿命に到達し、交換周期が短くなる問題を低減することができ、第1成膜レート測定部271aが第1蒸発源23aの第1蒸着位置232aから近い場合に比べて、相対的に長い時間の間、監視を行うことができる。
【0053】
一方、第1蒸発源23aに露出される時間が相対的に短い第2成膜レート測定部272aは、第1蒸発源23aの第1予熱位置237aから近くに設置されるので、他の成膜材料の粒子から受ける影響が少ないため、高感度で、第1蒸発源23aの第1予熱位置237aのるつぼ231の蒸発レートを監視することができる。
【0054】
図6に示した本発明の一実施例において、第2成膜レート測定手段27bの第3成膜レート測定部271bと第4成膜レート測定部272bも、第1成膜レート測定手段27aの測定部らと同様に配置される。すなわち、第2蒸発源23bの第2蒸着位置(第3位置、232b)に向けられる第3成膜レート測定部271bと第2蒸発源23bの第2予熱位置(第4位置、237b)に向けられる第4成膜レート測定部272bは、第3成膜レート測定部271bと第2蒸着位置232bまたは第2蒸着位置232bのるつぼ231との間の距離が、第4成膜レート測定部272bと第2の予熱位置237bまたは第2予熱位置237bのるつぼ231との間の距離より大きくなるように設置される。
【0055】
さらに、本発明の一実施例において、第1成膜レート測定部271aと第3成膜レート測定部271bは、第1成膜レート測定部271aと第1蒸着位置232aとの間の第1距離Aが、第3成膜レート測定部271bと第1蒸着位置232aとの間の第3距離Cより大きくなるように設けられる。つまり、平面上から見た際、第1成膜レート測定部271aと第3成膜レート測定部271bとの間に第1蒸発源23aの第1蒸着位置232aがあり、第1成膜レート測定部271aと第1蒸発源23aの第1蒸着位置232aとの間の経路と、第3成膜レート測定部271bと第2蒸発源23bの第2蒸着位置232bとの間の経路とが互いに交差することになる。
これにより、第1成膜レート測定部271aと第3成膜レート測定部271bを連結する方向(例えば、成膜装置11に搬入される基板Sの短辺方向)における成膜装置11のサイズを小さくすることができる。
【0056】
また、第2成膜レート測定部272aと第1予熱位置237aとの間の距離である第2距離Bが、第3成膜レート測定部271bと第1蒸着位置232aとの間の距離である第3距離Cより短くなるように成膜レート測定部らが設置される。同様に、第4成膜レート測定部272bと第2予熱位置237bとの間の距離が、第1成膜レート測定部271aと第2蒸着位置232bとの間の距離より短くなるように、該当成膜レート測定部らが設置される。
【0057】
これにより、各蒸発源23の蒸着位置232に向けられた成膜レート測定部が予熱位置237に向けられた成膜レート測定部より成膜装置の鉛直方向において高い位置に設置され、蒸発源シャッタ26の妨害を受けずに蒸発源23の蒸着位置232にあるるつぼ231からの蒸発レート/成膜レートを高精度で測定することができる。各成膜レート測定部は、対応する蒸発源シャッタ26が開放位置にある場合であっても、閉鎖位置にある場合であっても、蒸発レート/成膜レートを測定することができる。
【0058】
例えば、第1成膜レート測定部271aと第3成膜レート測定部271bが、第1蒸発源シャッタ26aまたは第2蒸発源シャッタ26bの妨害を受けずに、第1蒸発源23aの第1蒸着位置232a又は第2蒸発源23bの第2蒸着位置232bのるつぼ231からの蒸発レート/成膜レートを高精度で測定することができる。
【0059】
さらに、本発明の一実施例においては、第1成膜レート測定部271aと第1蒸発源23aの第1蒸着位置232aとの間の第1距離Aが、第4成膜レート測定部272bと第1蒸発源23aの第1蒸着位置232aとの間の第4距離Dより小さくなるように、該当成膜レート測定部が設置される。
【0060】
本発明の一実施例において、第1蒸発源シャッタ26aは、第1蒸発源シャッタ26aの開放位置である第1開放位置と第1蒸発源23aの第1蒸着位置232aとの間の距離が、第1蒸発源シャッタ26aの閉鎖位置である第1閉鎖位置と第1蒸発源23aの第1蒸着位置232aとの間の距離より大きくなるように、第1開放位置と、第1閉鎖位置との間を移動可能である。
同様に、第2蒸発源シャッタ26bは、第2蒸発源シャッタ26bの開放位置である第2開放位置と第2蒸発源23bの第2蒸着位置232bとの間の距離が、第2蒸発源シャッタ26bの閉鎖位置である第2閉鎖位置と第2の蒸発源23bの第2蒸着位置232bとの間の距離より大きくなるように、第2開放位置と第2閉鎖位置との間を移動可能である。
【0061】
本実施例においては、複数の蒸発源23のうち、第1蒸発源23a及び第2蒸発源23bと、これらの蒸発源からの蒸発レート/成膜レートを測定するための成膜レート測定手段の測定部らとの相対的な配置位置を中心に説明したが、本発明はこれに限定されず、複数の蒸発源23のうち、第3蒸発源23c及び第4蒸発源23dと、これらの蒸発源からの蒸発レート/成膜レートを測定するのための成膜レート測定手段の測定部らとの相対的な配置位置も同様に決めることができる。
また、複数の蒸発源23のうち、第5蒸発源23eにおいても、第5蒸発源23eの蒸着位置に向けられる成膜レート測定部が第5蒸発源23eの予熱位置に向けられる成膜レート測定部より遠い位置に設置されるようにすることが好ましい。
【0062】
<電子デバイスの製造方法>
次に、本実施形態の成膜装置を用いた電子デバイスの製造方法の一例を説明する。以下、電子デバイスの例として有機EL表示装置の構成及び製造方法を例示する。
まず、製造する有機EL表示装置について説明する。
図7の(a)は、有機EL表示装置60の全体図であり、
図7の(b)は、一画素の断面構造を示している。
【0063】
図7の(a)に示すように、有機EL表示装置60の表示領域61には、発光素子を複数備える画素62がマトリクス状に複数配置されている。詳細は後で説明するが、発光素子のそれぞれは、一対の電極に挟まれた有機層を備えた構造を有している。なお、ここでいう画素とは、表示領域61において所望の色の表示を可能とする最小単位を指している。本実施例にかかる有機EL表示装置の場合、互いに異なる発光を示す第1発光素子62R、第2発光素子62G、第3発光素子62Bの組合せにより画素62が構成されている。画素62は、赤色発光素子と緑色発光素子と青色発光素子の組合せで構成されることが多いが、黄色発光素子とシアン発光素子と白色発光素子の組み合わせでもよく、少なくとも1色以上であれば特に制限されるものではない。
【0064】
図7の(b)は、
図7の(a)のA-B線における部分断面模式図である。画素62は、基板63上に、第1電極(陽極)64と、正孔輸送層65と、発光層66R、66G、66Bのいずれかと、電子輸送層67と、第2電極(陰極)68と、を備える有機EL素子を有している。これらのうち、正孔輸送層65、発光層66R、66G、66B、電子輸送層67が有機層に当たる。また、本実施形態では、発光層66Rは赤色を発する有機EL層、発光層66Gは緑色を発する有機EL層、発光層66Bは青色を発する有機EL層である。発光層66R、66G、66Bは、それぞれ赤色、緑色、青色を発する発光素
子(有機EL素子と記述する場合もある)に対応するパターンに形成されている。また、第1電極64は、発光素子ごとに分離して形成されている。正孔輸送層65と電子輸送層67と第2電極68は、複数の発光素子62R、62G、62Bと共通で形成されていてもよいし、発光素子毎に形成されていてもよい。なお、第1電極64と第2電極68とが異物によってショートするのを防ぐために、第1電極64間に絶縁層69が設けられている。さらに、有機EL層は水分や酸素によって劣化するため、水分や酸素から有機EL素子を保護するための保護層70が設けられている。
【0065】
図7の(b)では正孔輸送層65や電子輸送層67が一つの層で示されているが、有機EL表示素子の構造によって、正孔ブロック層や電子ブロック層を含む複数の層で形成されてもよい。また、第1電極64と正孔輸送層65との間には、第1電極64から正孔輸送層65への正孔の注入が円滑に行われるようにすることのできるエネルギーバンド構造を有する正孔注入層を形成することもできる。同様に、第2電極68と電子輸送層67の間にも電子注入層が形成されことができる。
【0066】
次に、有機EL表示装置の製造方法の例について具体的に説明する。
まず、有機EL表示装置を駆動するための回路(不図示)および第1電極64が形成された基板63を準備する。
【0067】
第1電極64が形成された基板63の上にアクリル樹脂をスピンコートで形成し、アクリル樹脂をリソグラフィ法により、第1電極64が形成された部分に開口が形成されるようにパターニングし絶縁層69を形成する。この開口部が、発光素子が実際に発光する発光領域に相当する。
【0068】
絶縁層69がパターニングされた基板63を第1の有機材料成膜装置に搬入し、基板保持ユニット21及び/又は静電チャック(不図示)にて、基板を保持し、正孔輸送層65を、表示領域の第1電極64の上に共通する層として成膜する。正孔輸送層65は真空蒸着により成膜される。実際には、正孔輸送層65は表示領域61よりも大きなサイズに形成されるため、高精細なマスクは不要である。
【0069】
次に、正孔輸送層65までが形成された基板63を第2の有機材料成膜装置に搬入し、基板保持ユニット21及び/又は静電チャックにて保持する。基板とマスクとのアライメントを行い、基板をマスクの上に載置し、基板63の赤色を発する素子を配置する部分に、赤色を発する発光層66Rを成膜する。
【0070】
発光層66Rの成膜と同様に、第3の有機材料成膜装置により緑色を発する発光層66Gを成膜し、さらに第4の有機材料成膜装置により青色を発する発光層66Bを成膜する。発光層66R、66G、66Bの成膜が完了した後、第5の成膜装置により表示領域61の全体に電子輸送層67を成膜する。電子輸送層67は、3色の発光層66R、66G、66Bに共通の層として形成される。
【0071】
電子輸送層67まで形成された基板を金属性成膜材料の成膜装置に移動させて第2電極68を成膜する。
本発明の一実施例によれば、金属性膜材料の成膜装置において、蒸発源の蒸着位置に向けられた成膜レート測定部を蒸発源の予熱位置に向けられた成膜レート測定部より遠く設置することで、蒸発源の蒸着位置に向けられた成膜レートの測定部の交換周期が短くなることを抑制することができる。
その後プラズマCVD装置に移動して保護層70を成膜して、有機EL表示装置60が完成する。
【0072】
絶縁層69がパターニングされた基板63を成膜装置に搬入してから保護層70の成膜が完了するまでは、水分や酸素を含む雰囲気にさらしてしまうと、有機EL材料からなる発光層が水分や酸素によって劣化してしまうおそれがある。従って、本例において、成膜装置間の基板の搬入搬出は、真空雰囲気または不活性ガス雰囲気の下で行われる。
前記実施例は本発明の一例を示したものであり、本発明は前記実施例の構成に限定されないし、その技術思想の範囲内で適切に変形しても良い。
【符号の説明】
【0073】
11:成膜装置
20:真空容器(容器)
21:基板保持ユニット
23:蒸発源
23a:第1蒸発源
23b:第2蒸発源
25:防着部材(カバー手段)
25a:第1防着部材(カバー手段)
25b:第2防着部材(カバー手段)
26:蒸発源シャッタ(可動式開閉手段)
26a:第1蒸発源シャッタ(可動式開閉手段)
26b:第2蒸発源シャッタ(可動式開閉手段)
27:成膜レート測定手段
231:るつぼ(収納部)
232:蒸着位置
232a:第1蒸着位置(第1位置)
232b:第2蒸着位置(第3位置)
237:予熱位置
237a:第1予熱位置(第2位置)
237b:第2予熱位置(第4位置)
271、272:成膜レート測定部
271a:第1成膜レート測定部
272a:第2成膜レート測定部
271b:第3成膜レート測定部
272b:第4成膜レート測定部
A:第1距離
B:第2距離