(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】食品の製造方法
(51)【国際特許分類】
A21D 13/28 20170101AFI20231011BHJP
A21D 6/00 20060101ALI20231011BHJP
A21D 10/04 20060101ALI20231011BHJP
A21D 13/13 20170101ALI20231011BHJP
A21D 13/24 20170101ALI20231011BHJP
A21D 13/40 20170101ALI20231011BHJP
A21D 13/60 20170101ALI20231011BHJP
A23G 3/34 20060101ALI20231011BHJP
A23L 29/219 20160101ALI20231011BHJP
【FI】
A21D13/28
A21D6/00
A21D10/04
A21D13/13
A21D13/24
A21D13/40
A21D13/60
A23G3/34 108
A23L29/219
(21)【出願番号】P 2019569028
(86)(22)【出願日】2019-01-22
(86)【国際出願番号】 JP2019001783
(87)【国際公開番号】W WO2019151034
(87)【国際公開日】2019-08-08
【審査請求日】2021-12-22
(31)【優先権主張番号】P 2018015566
(32)【優先日】2018-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】302042678
【氏名又は名称】株式会社J-オイルミルズ
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】野上 弘文
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 三四郎
(72)【発明者】
【氏名】ジャンナラム シリパット
(72)【発明者】
【氏名】スップート ナッタナン
(72)【発明者】
【氏名】ワンワロトーン ウィラヌット
(72)【発明者】
【氏名】リーラアモーン チャンヤ
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0302487(US,A1)
【文献】特表2002-505090(JP,A)
【文献】特開平10-225259(JP,A)
【文献】国際公開第2012/111199(WO,A1)
【文献】特開2011-103837(JP,A)
【文献】特開2003-070437(JP,A)
【文献】国際公開第2019/021606(WO,A1)
【文献】小林 功,食品のテクスチャー改良を目的とした加工澱粉の使い方,オレオサイエンス,2015年,Vol. 15, No. 9,pp. 407-414,https://andronavi.com/2014/329805/
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベーカリー食品を準備する工程と、
小麦粉および以下の成分(A):
1種以上の化工澱
粉を添加してバッターを調製する工程と、
前記ベーカリー食品の外側に前記バッターを付着させる工程と、
前記バッターが付着した前記ベーカリー食品を油ちょうして前記バッター由来の外層を形成する工程と、
を含む、食品の製造方法であって、
前記化工澱粉の原料澱
粉がタピオカ澱粉であり、
前記化工澱粉が、酸化澱粉、アセチル化澱粉およびアセチル化酸化澱粉からなる群から選択される1種または2種以上であり、
前記バッター中、前記小麦粉あたりの前記成分(A)の質量比が0.1以上6.0以下であり、
前記外層が最外層である、食品の製造方法。
【請求項2】
前記化工澱粉の原料澱
粉の糊化開始温度が50℃以上83℃以下である、請求項1に記載の食品の製造方法。
【請求項3】
前記バッター中、前記小麦粉あたりの前記成分(A)の質量比が0.2以上4.0以下である、請求項1または2に記載の食品の製造方法。
【請求項4】
前記成分(A)が、酸化澱粉およびアセチル化酸化澱粉を含む、請求項1乃至3いずれか1項に記載の食品の製造方法。
【請求項5】
前記成分(A)において、前記酸化澱粉1質量部に対し、前記アセチル化酸化澱粉の含有量が0.1質量部以上5質量部以下である、請求項4に記載の食品の製造方法。
【請求項6】
ベーカリー食品を準備する前記工程が、
ベーカリー生地の焼成、油ちょう、蒸気加熱およびマイクロ波加熱からなる群から選択される1または2以上の調理工程を含む、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の食品の製造方法。
【請求項7】
前記ベーカリー食品が、ドーナツ、パン、焼き菓子、および蒸し菓子からなる群から選択される1種である、請求項1乃至6いずれか1項に記載の食品の製造方法。
【請求項8】
ベーカリー生地を準備する工程と、
小麦粉および以下の成分(A):
1種以上の化工澱
粉を添加してバッターを調製する工程と、
前記ベーカリー生地の外側に前記バッターを付着させる工程と、
前記バッターが付着した前記ベーカリー生地を油ちょうして前記バッター由来の外層を形成する工程と、
を含む、食品の製造方法であって、
前記化工澱粉の原料澱
粉がタピオカ澱粉であり、
前記化工澱粉が、酸化澱粉、アセチル化澱粉およびアセチル化酸化澱粉からなる群から選択される1種または2種以上であり、
前記バッター中、前記小麦粉あたりの前記成分(A)の質量比が0.1以上6.0以下であり、
前記外層が最外層である、食品の製造方法。
【請求項9】
前記化工澱粉の原料澱
粉の糊化開始温度が50℃以上83℃以下である、請求項8に記載の食品の製造方法。
【請求項10】
前記バッター中、前記小麦粉あたりの前記成分(A)の質量比が0.2以上4.0以下である、請求項8または9に記載の食品の製造方法。
【請求項11】
前記成分(A)が、酸化澱粉およびアセチル化酸化澱粉を含む、請求項8乃至10いずれか1項に記載の食品の製造方法。
【請求項12】
前記成分(A)において、前記酸化澱粉1質量部に対し、前記アセチル化酸化澱粉の含有量が0.1質量部以上5質量部以下である、請求項11に記載の食品の製造方法。
【請求項13】
前記ベーカリー生地が、ドーナツ生地、パン生地、および焼き菓子用生地からなる群から選択される1種である、請求項8乃至12いずれか1項に記載の食品の製造方法。
【請求項14】
請求項1乃至13いずれか1項に記載の食品の製造方法により前記食品を得ることを含む、食品の外層にクリスピー感を付与する方法。
【請求項15】
請求項1乃至13いずれか1項に記載の食品の製造方法により前記食品を得ることを含む、食品の外層のクリスピー感を維持する方法。
【請求項16】
請求項1乃至13いずれか1項に記載の食品の製造方法により前記食品を得ることを含む、前記食品の中核となる前記ベーカリー食品もしくは前記ベーカリー生地のやわらかさと前記バッター由来の前記外層の硬さとの食感差を向上する方法。
【請求項17】
請求項1乃至13いずれか1項に記載の食品の製造方法に使用されるバッター用ミックスであって、
前記成分(A)および前記小麦粉を含む、バッター用ミックス。
【請求項18】
前記成分(A)および前記小麦粉の合計質量が当該バッター用ミックス全体に対して80質量%以上である、請求項17に記載のバッター用ミックス。
【請求項19】
前記小麦粉100質量部に対し、前記成分(A)の含有量が10質量部以上500質量部以下である、請求項17または18に記載のバッター用ミックス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品の製造に澱粉を用いる技術として、特許文献1および2に記載のものがある。
特許文献1(特開2007-236389号公報)には、未調理のまたは不完全に調理した食品の表面に脂肪を基礎とするコーティングを適用する、および脂肪コーティングされた食品を、特定の温度を有する過熱蒸気に、特定の時間接触させ、調理済み食品を得る、の各段階を含む調理済み食品を作製する方法について記載されており、食品の具体例としてドーナツが記載されている。
【0003】
また、特許文献2(特開2004-290023号公報)には、澱粉系粉体をまぶし、再フライする揚げ物の製造方法が記載されており、かかる製造方法により、特に、澱粉系紛体として小麦粉を用いたときに、密閉容器内で48時間以上保存しても、サクミのある食感を保持することができる揚げ物、特にドーナツを提供することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-236389号公報
【文献】特開2004-290023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献においては、バッターをベーカリー生地またはベーカリー食品の外側に付着させて油ちょうすることで外層を形成した食品について開示も示唆もされていない。そこで、本発明は、外層の調製直後および保管後のクリスピー感および歯切れが優れる食品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、
ベーカリー食品を準備する工程と、
成分(A)を添加してバッターを調製する工程と、
前記ベーカリー食品の外側に前記バッターを付着させる工程と、
前記バッターが付着した前記ベーカリー食品を油ちょうして前記バッター由来の外層を形成する工程と、
を含む、食品の製造方法であって、前記外層が最外層である、食品の製造方法が提供される。
成分(A):未化工澱粉および化工澱粉からなる群から選択される1種または2種
【0007】
また、本発明によれば、
ベーカリー生地を準備する工程と、
成分(A)を添加してバッターを調製する工程と、
前記ベーカリー生地の外側に前記バッターを付着させる工程と、
前記バッターが付着した前記ベーカリー生地を油ちょうして前記バッター由来の外層を形成する工程と、
を含む、食品の製造方法であって、前記外層が最外層である、食品の製造方法が提供される。
成分(A):未化工澱粉および化工澱粉からなる群から選択される1種または2種
【0008】
本発明によれば、前述した本発明における食品の製造方法により前記食品を得ることを含む、食品の外層にクリスピー感を付与する方法が提供される。
また、本発明によれば、前述した本発明における食品の製造方法により前記食品を得ることを含む、食品の外層のクリスピー感を維持する方法が提供される。
【0009】
本発明によれば、前述した本発明における食品の製造方法に使用されるバッター用ミックスであって、
前記成分(A)および小麦粉を含む、バッター用ミックスが提供される。
【0010】
なお、これらの各構成の任意の組み合わせや、本発明の表現を方法、装置などの間で変換したものもまた本発明の態様として有効である。
たとえば、本発明によれば、前述した本発明における食品の製造方法により得られる食品が提供される。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように本発明によれば、外層の調製直後および保管後のクリスピー感および歯切れが優れる食品を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、各成分の具体例を挙げて説明する。なお、各成分はいずれも単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0013】
本実施形態において、第1の食品の製造方法は、以下の工程を含む。
(工程11)ベーカリー食品を準備する工程
(工程12)成分(A)を添加してバッターを調製する工程
(工程13)ベーカリー食品の外側に成分(A)を含むバッターを付着させる工程
(工程14)バッターが付着したベーカリー食品を油ちょうしてバッター由来の外層を形成する工程
以下、各工程について説明する。
【0014】
(工程11)
工程11では、ベーカリー食品を準備する。工程11は、たとえばベーカリー生地を準備する工程を含む。また、工程11は、たとえばベーカリー生地を焼成、油ちょう、蒸気加熱およびマイクロ波加熱からなる群から選択される1または2以上の調理工程を含む。また、ベーカリー食品として市販品を用いることもできる。
【0015】
ベーカリー食品の具体例として、ドーナツ、パン、焼き菓子、および蒸し菓子からなる群から選択される1種が挙げられる。ドーナツとしては焼ドーナツ、揚げドーナツおよび蒸しドーナツ等が挙げられ、パンとしてはオーブン等で焼成した通常のパンの他、揚げパン、および蒸しパン等が挙げられ、焼き菓子としてはスポンジケーキ、カステラ、フィナンシェ、マドレーヌ、ワッフル、バームクーヘンおよびシフォンケーキ等が挙げられる。蒸し菓子としては蒸しケーキ、蒸しまんじゅう等が挙げられる。本実施形態の製造方法により得られるバッター由来の外層はクリスピー感および歯切れの良さに優れるものであり、また中核となるベーカリー食品のやわらかさとバッター由来の外層の硬さとの食感差に優れるため、ベーカリー食品は食感がやわらかいものが好適である。その観点から、ベーカリー食品は、好ましくはドーナツ、パン、蒸しケーキ、スポンジケーキ、カステラ、フィナンシェ、マドレーヌ、ワッフル、バームクーヘン、シフォンケーキであり、より好ましくはドーナツであり、さらに好ましくは揚げドーナツである。
【0016】
(工程12)
工程12は、成分(A)を添加してバッターを調製する工程である。
【0017】
バッター中の成分(A)の含有量は、食品の製造直後および保管後のクリスピー感および歯切れを向上させる観点から、バッター中の全固形分に対して好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上、さらにより好ましくは35質量%以上である。
また、同様の観点から、バッター中の成分(A)の含有量は、バッター中の全固形分に対して100質量%以下であり、好ましくは80質量%以下、より好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下、さらにより好ましくは45質量%以下である。
【0018】
以下、バッターに配合される成分(A)について説明する。
本実施形態において、成分(A)の化工澱粉の原料澱粉、および、未化工澱粉の糊化開始温度は、食品の製造直後および保管後のクリスピー感および歯切れを向上させる観点から、好ましくは50℃以上であり、より好ましくは55℃以上であり、また、好ましくは83℃以下であり、より好ましくは70℃以下である。ここで、糊化開始温度とは、澱粉の糊化が始まる温度であり、糊化により発現する粘度を測定することで知ることができ、たとえばブラベンダービスコグラフEもしくは同等の測定装置により測定することができる。糊化開始温度が50℃以上83℃以下の原料澱粉としては、たとえば、タピオカ澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、馬鈴薯澱粉、および甘藷澱粉が挙げられる。
【0019】
本実施形態における成分(A)の化工澱粉の原料澱粉、および、未化工澱粉は、好ましくはタピオカ澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、馬鈴薯澱粉、および甘藷澱粉から選ばれる1種または2種以上であり、より好ましくはタピオカ澱粉およびコーンスターチから選ばれる1種または2種であり、さらに好ましくはタピオカ澱粉である。
【0020】
また、成分(A)は、未化工澱粉および化工澱粉のいずれを含んでいてもよいが、食品の製造直後および保管後のクリスピー感および歯切れを向上させる観点から、化工澱粉を含むことが好ましく、化工澱粉を成分(A)全体に対して10質量%以上100質量%以下含むことがより好ましく、50質量%以上100質量%以下含むことがさらに好ましく、80質量%以上100質量%以下含むことがさらにより好ましい。化工澱粉は、同様の観点から、好ましくは酸化澱粉、アセチル化澱粉、アセチル化酸化澱粉、リン酸架橋澱粉からなる群から選ばれる1種または2種以上であり、より好ましくは酸化澱粉、アセチル化澱粉、アセチル化酸化澱粉からなる群から選ばれる1種または2種以上であり、さらにより好ましくは酸化澱粉、アセチル化酸化澱粉から選ばれる1種または2種である。また、成分(A)が酸化澱粉およびアセチル化酸化澱粉を含むことが好ましい。ここで、アセチル化酸化澱粉は、アセチル化処理と酸化処理をした澱粉であって、処理の順番は問わない。
【0021】
また、外層が酸化澱粉およびアセチル化酸化澱粉を含むとき、バッター中の成分(A)において、アセチル化酸化澱粉の含有量は、酸化澱粉1質量部に対し、食品の製造直後および保管後のクリスピー感および歯切れを向上させる観点から、好ましくは0.1質量部以上であり、より好ましくは0.2質量部以上、さらに好ましくは0.3質量部以上である。
また、同様の観点から、バッター中の成分(A)において、アセチル化酸化澱粉の含有量は、酸化澱粉1質量部に対し、好ましくは5質量部以下であり、より好ましくは3質量部以下、さらに好ましくは2質量部以下である。
また、成分(A)が酸化澱粉およびアセチル化酸化澱粉を含むとき、成分(A)中の酸化澱粉およびアセチル化酸化澱粉の合計量の含有量は、10質量%以上100質量%以下含むことがより好ましく、50質量%以上100質量%以下含むことがさらに好ましく、80質量%以上100質量%以下含むことがさらにより好ましい。
【0022】
また、バッターは、成分(A)以外の固形分を含んでもよい。澱粉以外の固形分の具体例として、小麦粉、砂糖等の甘味料、調味料等が挙げられる。好ましくは、バッターは小麦粉を含み、より好ましくは薄力粉を含む。
バッターが小麦粉を含むとき、バッター中の小麦粉の含有量は、食品の外側にバッター由来の外層を安定的に形成する観点から、バッター中の全固形分に対して好ましくは20質量%以上であり、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上、さらにより好ましくは50質量%以上、よりいっそう好ましくは55質量%以上である。
また、食品の製造直後および保管後のクリスピー感および歯切れを向上させる観点から、バッター中の小麦粉の含有量は、バッター中の全固形分に対して好ましくは90質量%以下であり、より好ましくは80質量%以下であり、さらに好ましくは70質量%以下であり、さらにより好ましくは65質量%以下である。
また、バッターが小麦粉を含むとき、小麦粉あたりの成分(A)の質量比は、食品の製造直後および保管後のクリスピー感および歯切れを向上させる観点から、好ましくは0.1以上であり、より好ましくは0.2以上、さらに好ましくは0.4以上である。また、食品の外側にバッター由来の外層を安定的に形成する観点から、小麦粉あたりの成分(A)の質量比は、たとえば6.0以下であり、好ましくは5.0以下、より好ましくは4.0以下、さらに好ましくは2.0以下、さらにより好ましくは1.5以下、よりいっそう好ましくは1.0以下である。
【0023】
また、バッターは、具体的には、固形分の他に水を含む。バッター中の水の含有量は、たとえば、40質量%以上80質量%以下である。ここで、水の含有量は、バッターの全組成に対する質量割合である。
【0024】
(工程13)
工程13は、ベーカリー食品の外側に、成分(A)を含むバッターを付着させる工程である。
【0025】
(工程14)
工程14における油ちょう条件に制限はなく、ベーカリー食品の種類に応じて設定できるが、たとえば、140℃以上200℃以下であり、60秒以上480秒以下とする。
【0026】
本実施形態において、第2の食品の製造方法は、以下の工程を含む。
(工程21)ベーカリー生地を準備する工程
(工程22)成分(A)を添加してバッターを調製する工程
(工程23)ベーカリー生地の外側に成分(A)を含むバッターを付着させる工程
(工程24)バッターが付着したベーカリー生地を油ちょうしてバッター由来の外層を形成する工程
以下、各工程について説明する。
【0027】
(工程21)
工程21では、ベーカリー生地を準備する。工程21は、たとえばベーカリー生地を調製する工程を含む。また、ベーカリー生地として市販品を用いることもできる。
【0028】
ベーカリー生地の具体例として、ドーナツ生地、パン生地および、焼き菓子用生地からなる群から選択される1種が挙げられる。ドーナツ生地としてはケーキドーナツ生地およびイーストドーナツ生地等が挙げられ、パン生地としては通常のパン生地の他、中にフィリングなどの入った惣菜パン用生地および菓子パン用生地等が挙げられる。本実施形態の製造方法により得られるバッター由来の外層はクリスピー感および歯切れの良さに優れるものであり、また中核となる調理後のベーカリー生地のやわらかさとバッター由来の外層の硬さとの食感差に優れるため、調理後のベーカリー生地は食感がやわらかいものが好適である。
また、バッターを付着させる作業性を向上させる観点から、ベーカリー生地が、手で持ち上げてバッターを付着させることが可能な程度の保形性と硬さを有していることが好ましい。また、イーストを含むものは、発酵後にバッターを付着させることが好ましい。ベーカリー生地は、好ましくはケーキドーナツ生地、イーストドーナツ生地、パン生地、惣菜パン用生地および菓子パン用生地であり、より好ましくはケーキドーナツ生地およびイーストドーナツ生地であり、さらに好ましくはケーキドーナツ生地である。また、上記ベーカリー生地は、適度な保形性を有するために、冷蔵や冷凍されていてもよく、冷凍されていることが好ましい。
【0029】
(工程22)
工程22は、成分(A)を添加してバッターを調製する工程である。
【0030】
バッター中の成分(A)の含有量は、食品の製造直後および保管後のクリスピー感および歯切れを向上させる観点から、バッター中の全固形分に対して好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上、さらにより好ましくは35質量%以上である。
また、同様の観点から、バッター中の成分(A)の含有量は、バッター中の全固形分に対して100質量%以下であり、好ましくは80質量%以下、より好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下、さらにより好ましくは45質量%以下である。
【0031】
以下、バッターに配合される成分(A)について説明する。
本実施形態において、成分(A)の未化工澱粉、および、化工澱粉の原料澱粉の糊化開始温度は、食品の製造直後および保管後のクリスピー感および歯切れを向上させる観点から、好ましくは50℃以上であり、より好ましくは55℃以上であり、また、好ましくは83℃以下であり、より好ましくは70℃以下である。ここで、糊化開始温度とは、澱粉の糊化が始まる温度であり、糊化により発現する粘度を測定することで知ることができ、たとえばブラベンダービスコグラフEもしくは同等の測定装置により測定することができる。糊化開始温度が50℃以上83℃以下の原料澱粉としては、たとえば、タピオカ澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、馬鈴薯澱粉、および甘藷澱粉が挙げられる。
【0032】
本実施形態における成分(A)の化工澱粉の原料澱粉、および、未化工澱粉は、好ましくはタピオカ澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、馬鈴薯澱粉、および甘藷澱粉から選ばれる1種または2種以上であり、より好ましくはタピオカ澱粉およびコーンスターチから選ばれる1種または2種であり、さらに好ましくはタピオカ澱粉である。
【0033】
また、成分(A)は、未化工澱粉および化工澱粉のいずれを含んでいてもよいが、食品の製造直後および保管後のクリスピー感および歯切れを向上させる観点から、化工澱粉を含むことが好ましく、化工澱粉を成分(A)全体に対して10質量%以上100質量%以下含むことがより好ましく、50質量%以上100質量%以下含むことがさらに好ましく、80質量%以上100質量%以下含むことがさらにより好ましい。化工澱粉は、同様の観点から、好ましくは酸化澱粉、アセチル化澱粉、アセチル化酸化澱粉、リン酸架橋澱粉からなる群から選ばれる1種または2種以上であり、より好ましくは酸化澱粉、アセチル化澱粉、アセチル化酸化澱粉からなる群から選ばれる1種または2種以上であり、さらにより好ましくは酸化澱粉、アセチル化酸化澱粉から選ばれる1種または2種であり、さらに好ましくは酸化澱粉およびアセチル化酸化澱粉である。また、成分(A)が酸化澱粉およびアセチル化酸化澱粉を含むことが好ましい。ここで、アセチル化酸化澱粉は、アセチル化処理と酸化処理をした澱粉であって、処理の順番は問わない。
【0034】
また、外層が酸化澱粉およびアセチル化酸化澱粉を含むとき、バッター中の成分(A)において、アセチル化酸化澱粉の含有量は、酸化澱粉1質量部に対し、食品の製造直後および保管後のクリスピー感および歯切れを向上させる観点から、好ましくは0.1質量部以上であり、より好ましくは0.2質量部以上、さらに好ましくは0.3質量部以上である。
また、同様の観点から、バッター中の成分(A)において、アセチル化酸化澱粉の含有量は、酸化澱粉1質量部に対し、好ましくは5質量部以下であり、より好ましくは3質量部以下、さらに好ましくは2質量部以下である。
また、成分(A)が酸化澱粉およびアセチル化酸化澱粉を含むとき、成分(A)中の酸化澱粉およびアセチル化酸化澱粉の合計量の含有量は、10質量%以上100質量%以下含むことがより好ましく、50質量%以上100質量%以下含むことがさらに好ましく、80質量%以上100質量%以下含むことがさらにより好ましい。
【0035】
また、バッターは、成分(A)以外の固形分を含んでもよい。澱粉以外の固形分の具体例として、小麦粉、砂糖等の甘味料、調味料等が挙げられる。好ましくは、バッターは小麦粉を含み、より好ましくは薄力粉を含む。
バッターが小麦粉を含むとき、バッター中の小麦粉の含有量は、食品の外側にバッター由来の外層を安定的に形成する観点から、バッター中の全固形分に対して好ましくは20質量%以上であり、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上、さらにより好ましくは50質量%以上、よりいっそう好ましくは55質量%以上である。
また、食品の製造直後および保管後のクリスピー感および歯切れを向上させる観点から、バッター中の小麦粉の含有量は、バッター中の全固形分に対して好ましくは90質量%以下であり、より好ましくは80質量%以下であり、さらに好ましくは70質量%以下であり、さらにより好ましくは65質量%以下である。
また、バッターが小麦粉を含むとき、小麦粉あたりの成分(A)の質量比は、食品の製造直後および保管後のクリスピー感および歯切れを向上させる観点から、好ましくは0.1以上であり、より好ましくは0.2以上、さらに好ましくは0.4以上である。また、食品の外側にバッター由来の外層を安定的に形成する観点から、小麦粉あたりの成分(A)の質量比は、たとえば6.0以下であり、好ましくは5.0以下、より好ましくは4.0以下、さらに好ましくは2.0以下、さらにより好ましくは1.5以下、よりいっそう好ましくは1.0以下である。
【0036】
また、バッターは、具体的には、固形分の他に水を含む。バッター中の水の含有量は、たとえば、40質量%以上80質量%以下である。ここで、水の含有量は、バッターの全組成に対する質量割合である。
【0037】
(工程23)
工程23は、ベーカリー生地の外側に、成分(A)を含むバッターを付着させる工程である。
【0038】
(工程24)
工程24における油ちょう条件に制限はなく、ベーカリー生地の種類に応じて設定できるが、たとえば、140℃以上200℃以下であり、60秒以上900秒以下である。
【0039】
以上の、第1または第2の食品の製造方法の工程により、食品が得られる。
本実施形態において得られる食品は、ベーカリー食品またはベーカリー生地の外側に成分(A)を含むバッターを付着させて油ちょうすることにより形成された外層を備えるものであるため、外層の製造直後および保管後のクリスピー感および歯切れに優れたものである。さらに具体的には、本実施形態により、室温保存後のクリスピー感および歯切れに優れた食品を得ることができる。また、本実施形態によれば、中核となるベーカリー食品および調理後のベーカリー生地のやわらかさとバッター由来の外層の硬さとの食感差に優れる食品を得ることができる。
室温における保存温度は、たとえば10℃超40℃以下とすることができる。
また、本実施形態において、食品の外層にクリスピー感を付与する方法は、前述した食品の製造方法により食品を得ることを含む。
また、本実施形態において、食品の外層のクリスピー感を維持する方法は、前述した食品の製造方法により食品を得ることを含む。
【0040】
本実施形態における製造方法により得られる食品は、具体的には油ちょう食品であり、食品の最外層に設けられたバッター由来の外層を含むものである。
【0041】
ベーカリー食品は、本実施形態において得られる食品の中核となる部分である。ベーカリー食品は、好ましくは食品全体の体積の80%以上を構成し、より好ましくは食品全体の体積の90%以上を構成する。
また、ベーカリー食品は、好ましくはベーカリー生地に焼成、油ちょう、蒸気加熱およびマイクロ波加熱からなる群から選択される1または2以上の加熱調理を施してなるものである。
【0042】
ベーカリー生地は、本実施形態において得られる食品の中核となる部分である。ベーカリー生地は、油ちょう後、好ましくは食品全体の体積の80%以上を構成し、より好ましくは食品全体の体積の90%以上を構成する。
【0043】
本実施形態におけるバッター由来の外層は、ベーカリー食品もしくはベーカリー生地の外側に設けられている。外層が複数設けられている場合には、バッター由来の外層が最外層、すなわち最も外側の層になるよう設けられる。外層は、ベーカリー食品もしくはベーカリー生地に接して設けられていてもよいし、外層とベーカリー食品もしくはベーカリー生地との間に介在層が設けられていてもよい。食品の製造工程を簡素化する観点から、好ましくは、外層はベーカリー食品もしくはベーカリー生地に接して設けられる。
また、外層は、ベーカリー食品もしくはベーカリー生地の外側全体にわたって設けられていてもよいし、ベーカリー食品もしくはベーカリー生地の外側の一部に設けられていてもよい。本実施形態により得られる食品の中核となるベーカリー食品もしくはベーカリー生地のやわらかさとバッター由来の外層の硬さとの食感差を向上させる観点から、好ましくは、外層はベーカリー食品もしくはベーカリー生地の外側全体にわたって設けられる。
【0044】
また、バッター由来の外層の平均の厚さは、食品の製造直後および保管後のクリスピー感および歯切れを安定的に向上させる観点から、好ましくは0mm超であり、より好ましくは0.1mm以上であり、より好ましくは0.5mm以上である。また、同様の観点から、バッター由来の外層の平均の厚さは好ましくは15mm以下であり、より好ましくは10mm以下である。
ここで、バッター由来の外層の厚さは、ベーカリー食品もしくはベーカリー生地の外側において異なっていてもよい。
【0045】
本実施形態のバッター用ミックスは、上述した本実施形態の第1または第2の食品の製造方法に使用される。具体的には、前述の成分(A)および小麦粉を含む。成分(A)および小麦粉の合計質量が80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましい。また、バッター用ミックス中の成分(A)および小麦粉の合計質量は100質量%以下である。
【0046】
また、小麦粉100質量部に対し、成分(A)の含有量は、好ましくは10質量部以上であり、より好ましくは20質量部以上、さらに好ましくは40質量部以上、さらにより好ましくは50質量部以上であり、また、たとえば600質量部以下であり、好ましくは500質量部以下であり、より好ましくは200質量部以下、さらに好ましくは150質量部以下、さらにより好ましくは100質量部以下、さらにより好ましくは80質量部以下である。
【実施例】
【0047】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明の趣旨はこれらに限定されるものではない。
【0048】
(原材料)
原材料として、主に以下のものを使用した。
(ドーナツおよびドーナツ生地)
冷凍ドーナツ生地:「タマゴドーナツ」、オーランドフーズ社製
揚げドーナツ:「ポンデリング」、Mister Donut Thailand社製
(成分(A))
タピオカ澱粉:株式会社J-オイルミルズ製(糊化開始温度:64℃)
コーンスターチ:株式会社J-オイルミルズ製(糊化開始温度:79℃)
アセチル化酸化タピオカ澱粉:「ジェルコールSP-2」、株式会社J-オイルミルズ製(原料澱粉の糊化開始温度:64℃)
酸化タピオカ澱粉:製造例1に記載の方法で得られた酸化澱粉(原料澱粉の糊化開始温度:64℃)
アセチル化タピオカ澱粉:「アクトボディー A700」、株式会社J-オイルミルズ製(原料澱粉の糊化開始温度:64℃)
(その他)
小麦粉1:薄力粉、「フラワー」、日清製粉株式会社製
小麦粉2:薄力粉、「All purpose flour」(Kite Brand)、United Flour Mill Public社製
砂糖1:「上白糖」、大日本明治製糖社製
砂糖2:「Pure Refined Sugar」、Mitr-Phol社製
フライ油1:「FryUp 201」、株式会社J-オイルミルズ製
フライ油2:大豆油、Thai Vegetable Oil Public Company Limited製
【0049】
ここで、タピオカ澱粉およびコーンスターチの糊化開始温度は以下の方法で測定した。
(糊化開始温度の測定方法)
各澱粉の糊化開始温度をブラベンダービスコグラフE(ブラベンダー社製)により測定した。蒸留水450mLを入れたビーカー中に乾物換算で6%になるように澱粉を投入、 攪拌したのち、澱粉スラリーを装置付属の金属製円筒容器に移した。装置付属の撹拌棒(ブレードタイプ)を75回転/分で回転させながら澱粉溶液を加熱し、1分間に1.5℃ずつ温度を上昇させながら澱粉溶液の粘度を測定した。澱粉溶液の粘度が10BUに達した時の温度を糊化開始温度とした。
【0050】
(製造例1)
本例では、酸化タピオカ澱粉の製造をおこなった。
セパラブルフラスコにタピオカ澱粉150gと蒸留水190gを加えて分散し、乾物換算質量濃度が38.2質量%のスラリーを調製した。
得られたスラリーの温度を37℃にした後、次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度14.3%)18.2mLを一度に投入し、澱粉換算質量に対する有効塩素濃度を2質量%/gとした。
次亜塩素酸ナトリウム水溶液を投入後、3質量%水酸化ナトリウム水溶液を滴下して、pHを9.9とした。
その後、適時水酸化ナトリウム水溶液を滴下して、反応終了までpHを9.9±0.03以内に維持し、酸化澱粉を得た。
反応終了は、適時スラリーの一部をサンプリングし、飽和ヨウ化カリウム溶液に滴下して紫色を呈しなくなった時点とした。
反応終了を確認後、スラリーに3質量%塩酸を添加してpH6まで中和した後、スラリー中の酸化澱粉を洗浄脱水した。
その後、40℃で1晩乾燥し、粉砕して60メッシュの篩(目開き250μm)で篩ったものを酸化タピオカ澱粉として用いた。
【0051】
(実施例1~7、比較例1)
冷凍ドーナツ生地を、凍ったまま180℃に加熱したフライ油1にて2分間油ちょうし、上下を返してさらに1分間油ちょうし、本例の中具であるベーカリー食品を得た。
油ちょう後、室温でベーカリー食品の粗熱を取った後、表1または表2に記載の各例の配合のバッターを付け、180℃で片面75秒ずつ油ちょうした。
得られた食品の油ちょう直後ならびに室温(21℃)4時間後のバッター由来の外層の食感を、以下の評価基準で4名の専門パネラーの評点の平均値で評価し、2.1点以上を合格とした。
【0052】
(クリスピー感)
5点:非常にクリスピーである
4点:かなりクリスピーである
3点:クリスピーである
2点:ややクリスピーである
1点:全くクリスピーでない
(歯切れ)
5点:非常に歯切れが良い
4点:かなり歯切れが良い
3点:歯切れが良い
2点:やや歯切れが良い
1点:かなり歯切れが悪い
(中具と外層の食感差)
5点:中具のやわらかさと外層の硬さとの食感差が非常にある
4点:中具のやわらかさと外層の硬さとの食感差がある
3点:中具のやわらかさと外層の硬さとの食感差がややある
2点:中具のやわらかさと外層の硬さとの食感差があまりない
1点:中具のやわらかさと外層の硬さとの食感差がない
【0053】
【0054】
表1に示した各実施例の食品の外層は、揚げ直後ならびに室温保存後のいずれにおいても、クリスピー感、歯切れが好ましく、中具と外層の食感差にも優れていた。
成分(A)ごとに比較すると、油ちょう直後のバッター由来の外層の食感のうち、クリスピー感において、とりわけ酸化タピオカ澱粉、アセチル化酸化タピオカ澱粉、アセチル化タピオカ澱粉およびコーンスターチの順に優れており、歯切れについては酸化タピオカ澱粉、アセチル化タピオカ澱粉、タピオカ澱粉、の順に優れていた。また、室温保存後のバッター由来の外層の食感のうち、クリスピー感において、酸化タピオカ澱粉とアセチル化酸化タピオカ澱粉が同等で、次にアセチル化タピオカ澱粉およびコーンスターチ、の順に優れており、歯切れについては酸化タピオカ澱粉、アセチル化酸化タピオカ澱粉、コーンスターチ、の順に優れていた。
また、表1において、ほぼすべての評価項目で、酸化タピオカ澱粉を含む実施例4が最も優れていた。
一方、比較例1で得られた食品は、中具と外層の食感差はあるものの、外層がサクッとしておらず、歯切れも悪かった。
【0055】
【0056】
表2に示した各実施例の食品の外層は、揚げ直後ならびに室温保存後のいずれにおいても、クリスピー感、歯切れが好ましく、中具と外層の食感差にも優れていた。
中でも、油ちょう直後のバッター由来の外層の食感は、クリスピー感については酸化タピオカ澱粉を単独で配合した場合(実施例4)が優れており、歯切れについては酸化タピオカ澱粉単独の場合(実施例4)ならびに酸化タピオカ澱粉とアセチル化酸化タピオカ澱粉とを1:2.33の比率で混合した場合(実施例6)が優れていた。
また、室温保存後のバッター由来の外層の食感は、クリスピー感および歯切れいずれも、酸化タピオカ澱粉とアセチル化酸化タピオカ澱粉とを1:1の比率で混合した場合(実施例7)が最も優れており、より優れた継時劣化耐性が認められた。
【0057】
(実施例8)
凍ったままの冷凍ドーナツ生地を中具とし、これに、直接表3に記載の各例の配合のバッターを付け、フライ油1にて180℃で2分油ちょうし、ひっくり返してさらに1分油ちょうした。
得られた食品の油ちょう直後ならびに室温(21℃)4時間後のバッター由来の外層の食感を、以下の評価基準で4名の専門パネラーの評点の平均値で評価し、2.1点以上を合格とした。
【0058】
【0059】
表3に示した実施例8の食品の外層は、揚げ直後ならびに室温保存後のいずれにおいても、クリスピー感、歯切れが好ましく、中具と外層の食感差にも優れていた。
【0060】
(実施例9~11)
揚げドーナツを中具とし、これに、表4に記載の各例の配合のバッターを付け、フライ油2にて170~180℃で140秒間油ちょうし本例の食品を得た。
揚げはじめから70秒後に1回上下を返し、両面70秒ずつ油ちょうした。
得られた食品の油ちょう直後と27℃で4時間後のバッター由来の外層の食感を、前述した評価基準で2名の専門パネラーが評価し、各評点の平均値を算出し、2.1点以上を合格とした。
【0061】
【0062】
表4に示した各実施例の食品の外層は、揚げ直後ならびに室温保存後のいずれにおいても、クリスピー感、歯切れが好ましく、中具と外層の食感差にも優れていた。中でも、実施例11の酸化タピオカ澱粉とアセチル化酸化タピオカ澱粉とを1:1の比率で混合したバッターを付着させた食品は、室温保存後のバッター由来の外層のクリスピー感および歯切れのいずれにも優れており、より優れた継時劣化耐性が認められた。
【0063】
(実施例12~16)
市販のベーカリー食品を中具とし、これに、表5に記載の各例の配合のバッターを付け、フライ油2にて180℃で150秒間油ちょうし本例の食品を得た。
ベーカリー食品として、以下のものを使用した。
(ベーカリー食品)
ワッフル:マネケン ベルギーワッフル(株式会社ローゼン販売)
バウムクーヘン:しっとりふんわりバウムクーヘン(イオン株式会社販売)
カステラ:かすてら(イオン株式会社販売)
蒸しケーキ:北海道チーズ蒸しケーキ(山崎製パン株式会社製造)
パン:毎日の食卓バターロール(イオン株式会社販売)
【0064】
得られた食品の油ちょう直後と25℃で4時間後のバッター由来の外層の食感を、前述した評価基準で3名の専門パネラーが評価し、各評点の平均値を算出し、2.1点以上を合格とした。
【0065】
【0066】
表5に示した各実施例の食品の外層は、揚げ直後ならびに室温保存後のいずれにおいても、クリスピー感、歯切れが好ましく、中具と外層の食感差にも優れていた。また、内層の食品にワッフル、バウムクーヘン、カステラなどの焼き菓子を用いた場合でも、内層と外層の食感差に優れていた。また、蒸しケーキやパンを中具に用いても、内層と外層の食感差が好ましいものであった。
【0067】
(実施例17~19)
市販のベーカリー食品を中具とし、これに、表6に記載の各例の配合のバッターを付け、フライ油2にて180℃で150秒間油ちょうし本例の食品を得た。
ベーカリー食品として、以下のものを使用した。また成分(A)として上記以外に以下のものを使用した。
(ベーカリー食品)
スポンジケーキ:(山崎製パン株式会社、「イチゴスペシャル」のクリームを除いて3cm×3cm×3.5cmにカット)
成分(A)
リン酸架橋タピオカ澱粉:「アクトボディーTP-1」、株式会社J-オイルミルズ製
(原料澱粉の糊化開始温度:64℃)
【0068】
得られた食品の油ちょう直後と25℃で4時間後のバッター由来の外層の食感を、前述した評価基準で3名の専門パネラーが評価し、各評点の平均値を算出し、2.1点以上を合格とした。
【0069】
【0070】
表6に示したように、スポンジケーキを内層にした各実施例の食品の外層は、揚げ直後ならびに室温保存後のいずれにおいても、クリスピー感、歯切れが好ましく、中具と外層の食感差にも優れていた。
成分(A)としてリン酸架橋澱粉を使用しても、好ましい食品が得られた。また、実施例18のように、小麦粉あたりの成分(A)の質量比が2.1の場合も、揚げ直後ならびに室温保存後のいずれにおいて外層の食感が好ましい食品が得られた。さらに、成分(A)を含む一方、小麦粉を含まない場合も、好ましい食品が得られた。
【0071】
(バッター用ミックスの製造例1)
タピオカ澱粉200gと小麦粉1を800g混合し、バッター用ミックスを製造した。
【0072】
(バッター用ミックスの製造例2)
アセチル化酸化タピオカ澱粉240g、酸化タピオカ澱粉160gおよび小麦粉1を600g混合し、バッター用ミックスを製造した。
【0073】
(バッター用ミックスの製造例3)
アセチル化タピオカ澱粉110g、砂糖1を1.2gおよび小麦粉1を88.8g混合し、バッター用ミックスを製造した。
【0074】
この出願は、2018年1月31日に出願された日本出願特願2018-015566号を基礎とする優先権を主張し、その開示のすべてをここに取り込む。
以下、参考形態の例を付記する。
1. ベーカリー食品を準備する工程と、
以下の成分(A)を添加してバッターを調製する工程と、
前記ベーカリー食品の外側に前記バッターを付着させる工程と、
前記バッターが付着した前記ベーカリー食品を油ちょうして前記バッター由来の外層を形成する工程と、
を含む、食品の製造方法であって、前記外層が最外層である、食品の製造方法。
成分(A):未化工澱粉および化工澱粉からなる群から選択される1種または2種
2. 前記化工澱粉の原料澱粉、および、前記未化工澱粉の糊化開始温度が50℃以上83℃以下である、1.に記載の食品の製造方法。
3. 前記化工澱粉が、酸化澱粉、アセチル化澱粉およびアセチル化酸化澱粉からなる群から選択される1種または2種以上である、1.または2.に記載の食品の製造方法。
4. 前記化工澱粉の原料澱粉、および、前記未化工澱粉がタピオカ澱粉である、1.乃至3.いずれか1つに記載の食品の製造方法。
5. 前記成分(A)が、酸化澱粉およびアセチル化酸化澱粉を含む、1.乃至4.いずれか1つに記載の食品の製造方法。
6. 前記成分(A)において、前記酸化澱粉1質量部に対し、前記アセチル化酸化澱粉の含有量が0.1質量部以上5質量部以下である、5.に記載の食品の製造方法。
7. ベーカリー食品を準備する前記工程が、
ベーカリー生地の焼成、油ちょう、蒸気加熱およびマイクロ波加熱からなる群から選択される1または2以上の調理工程を含む、1.乃至6.のいずれか1つに記載の食品の製造方法。
8. 前記ベーカリー食品が、ドーナツ、パン、焼き菓子、および蒸し菓子からなる群から選択される1種である、1.乃至7.いずれか1つに記載の食品の製造方法。
9. 前記バッターが、さらに小麦粉を含む、1.乃至8.いずれか1つに記載の食品の製造方法。
10. 前記バッター中、前記小麦粉あたりの前記成分(A)の質量比が0.1以上6.0以下である、9.に記載の食品の製造方法。
11. ベーカリー生地を準備する工程と、
以下の成分(A)を添加してバッターを調製する工程と、
前記ベーカリー生地の外側に前記バッターを付着させる工程と、
前記バッターが付着した前記ベーカリー生地を油ちょうして前記バッター由来の外層を形成する工程と、
を含む、食品の製造方法であって、前記外層が最外層である、食品の製造方法。
成分(A):未化工澱粉および化工澱粉からなる群から選択される1種または2種
12. 前記化工澱粉の原料澱粉、および、前記未化工澱粉の糊化開始温度が50℃以上83℃以下である、11.に記載の食品の製造方法。
13. 前記化工澱粉が、酸化澱粉、アセチル化澱粉およびアセチル化酸化澱粉からなる群から選択される1種または2種以上である、11.または12.に記載の食品の製造方法。
14. 前記化工澱粉の原料澱粉、および、前記未化工澱粉がタピオカ澱粉である、11.乃至13.いずれか1つに記載の食品の製造方法。
15. 前記成分(A)が、酸化澱粉およびアセチル化酸化澱粉を含む、11.乃至14.いずれか1つに記載の食品の製造方法。
16. 前記成分(A)において、前記酸化澱粉1質量部に対し、前記アセチル化酸化澱粉の含有量が0.1質量部以上5質量部以下である、15.に記載の食品の製造方法。
17. 前記ベーカリー生地が、ドーナツ生地、パン生地、および焼き菓子用生地からなる群から選択される1種である、11.乃至16.いずれか1つに記載の食品の製造方法。
18. 1.乃至17.いずれか1つに記載の食品の製造方法により前記食品を得ることを含む、食品の外層にクリスピー感を付与する方法。
19. 1.乃至17.いずれか1つに記載の食品の製造方法により前記食品を得ることを含む、食品の外層のクリスピー感を維持する方法。
20. 1.乃至17.いずれか1つに記載の食品の製造方法に使用されるバッター用ミックスであって、
前記成分(A)および小麦粉を含む、バッター用ミックス。
21. 前記成分(A)および前記小麦粉の合計質量が当該バッター用ミックス全体に対して80質量%以上である、20.に記載のバッター用ミックス。
22. 前記小麦粉100質量部に対し、前記成分(A)の含有量が10質量部以上500質量部以下である、20.または21.に記載のバッター用ミックス。