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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】イネ科穀物粒含有液状食品
(51)【国際特許分類】
   A23L 5/00 20160101AFI20231011BHJP
   A23L 33/21 20160101ALI20231011BHJP
   A23L 7/10 20160101ALI20231011BHJP
【FI】
A23L5/00 K
A23L33/21
A23L7/10 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020539608
(86)(22)【出願日】2019-08-30
(86)【国際出願番号】 JP2019034049
(87)【国際公開番号】W WO2020045606
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2022-07-15
(31)【優先権主張番号】P 2018163136
(32)【優先日】2018-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】398012306
【氏名又は名称】株式会社日清製粉ウェルナ
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中井 朋恵
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-038559(JP,A)
【文献】国際公開第2014/136874(WO,A1)
【文献】特開2016-052251(JP,A)
【文献】特開平09-154545(JP,A)
【文献】小林 功,食品のテクスチャー改良を目的とした加工澱粉の使い方,オレオサイエンス,2015年,Vol. 15, No. 9,pp. 407-414,要旨, 第408頁左欄, 第409頁右欄最終段落-第410頁左欄第1段落
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イネ科穀物粒を含有する具材、ならびに、
地上系澱粉由来の架橋澱粉と、地下系澱粉由来のエステル化澱粉及びエーテル化澱粉からなる群より選択される1種以上とを含有する液状部、
を含む、液状食品。
【請求項2】
前記イネ科穀物粒を5~75質量%含む、請求項1記載の液状食品。
【請求項3】
前記イネ科穀物粒が、米、小麦及びトウモロコシ以外のイネ科穀物粒を95質量%以上含む、請求項1又は2記載の液状食品。
【請求項4】
前記米、小麦及びトウモロコシ以外のイネ科穀物粒が大麦である、請求項3記載の液状食品。
【請求項5】
前記液状部が、前記地上系澱粉由来の架橋澱粉を0.1~15質量%、ならびに前記地下系澱粉由来のエステル化澱粉及びエーテル化澱粉からなる群より選択される1種以上を合計で0.01~7質量%、を含有する、請求項1~4のいずれか1項記載の液状食品。
【請求項6】
前記地上系澱粉由来の架橋澱粉がワキシーコーンリン酸架橋澱粉である、請求項1~5のいずれか1項記載の液状食品。
【請求項7】
前記地下系澱粉由来のエステル化澱粉及びエーテル化澱粉からなる群より選択される1種以上が、アセチル化タピオカ澱粉、アセチル化リン酸架橋タピオカ澱粉、ヒドロキシプロピル化タピオカ澱粉、及びヒドロキシプロピル化リン酸架橋タピオカ澱粉からなる群より選択される1種以上である、請求項1~6のいずれか1項記載の液状食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イネ科穀物粒を含有する液状食品に関する。
【背景技術】
【0002】
食物繊維は、ヒトの消化酵素で消化されない成分であり、また消化管内での食品の吸収を遅らせる、腸内細菌叢を整えるなどの生理機能を有することから、健康の維持や増進等の保健機能(機能性)の観点で近年注目されている。近年の健康志向の増大に対応して、食物繊維による機能性を付与した様々な食品が提供されている。スープ、ソース、粥、リゾット等の液状食品についても例外ではない。
【0003】
穀物は、種子を食料とする植物の総称で、大きくはイネ科穀物とマメ科穀物に分けられる。イネ科穀物の中でも、米(稲)、小麦、トウモロコシは消費量が多く、三大穀物と呼ばれ、その他は雑穀と称される。穀物は本来食物繊維を多く含んでいるが、通常流通する精米や、小麦粉及びトウモロコシ粉の食物繊維量はそれほど多くない。一方、雑穀は、精製品や粉の流通がほとんどなく、全粒を食する場合が少なくない。このため、雑穀は、食物繊維量は多いものの、風味良く調理することが難しく、また硬い食感を有する。雑穀を食する場合、粥やリゾットのように充分にふやかした穀粒を食することが多い。
【0004】
特許文献1には、大麦粒を含むレトルト食品において、粘度上昇を抑制するため、ゼラチン、アラビアガム及びDE5以下のデキストリンから選択される1種以上の粘度調整剤を用いることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-52251号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、イネ科穀物粒、特に大麦粒等の雑穀を含む液状食品が、ベタつきやぬめりによって取扱い性や食感が低下するだけでなく、該液状食品を冷凍後に再加熱すると、流動性低下や、離水による品質低下が起こることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、イネ科穀物粒を含む液状食品における上記課題を改善すべく検討した結果、イネ科穀物粒を含む液状食品に、所定の種類の加工澱粉を配合することにより、ベタつきやぬめりが抑えられ、取扱い性や食感が改善すること、また冷凍後に再加熱したときの流動性低下や離水が抑えられることを見出した。
【0008】
本発明は、以下を提供する。
〔1〕イネ科穀物粒と、地上系澱粉由来の架橋澱粉と、地下系澱粉由来のエステル化澱粉及びエーテル化澱粉からなる群より選択される1種以上とを含有する液状食品。
〔2〕前記イネ科穀物粒を5~75質量%含む、〔1〕記載の液状食品。
〔3〕前記イネ科穀物粒が、米、小麦及びトウモロコシ以外のイネ科穀物粒を95質量%以上含む、〔1〕又は〔2〕記載の液状食品。
〔4〕前記米、小麦及びトウモロコシ以外のイネ科穀物粒が大麦である、〔3〕記載の液状食品。
〔5〕前記地上系澱粉由来の架橋澱粉を0.1~15質量%、ならびに前記地下系澱粉由来のエステル化澱粉及びエーテル化澱粉からなる群より選択される1種以上を合計で0.01~7質量%、を含有する液状部を含む、〔1〕~〔4〕のいずれか1項記載の液状食品。
〔6〕前記地上系澱粉由来の架橋澱粉がワキシーコーンリン酸架橋澱粉である、〔1〕~〔5〕のいずれか1項記載の液状食品。
〔7〕前記地下系澱粉由来のエステル化澱粉及びエーテル化澱粉からなる群より選択される1種以上が、アセチル化タピオカ澱粉、アセチル化リン酸架橋タピオカ澱粉、ヒドロキシプロピル化タピオカ澱粉、及びヒドロキシプロピル化リン酸架橋タピオカ澱粉からなる群より選択される1種以上である、〔1〕~〔6〕のいずれか1項記載の液状食品。
〔8〕液状食品の製造のための、イネ科穀物粒と、地上系澱粉由来の架橋澱粉と、地下系澱粉由来のエステル化澱粉及びエーテル化澱粉からなる群より選択される1種以上との使用。
〔9〕前記液状食品が前記イネ科穀物粒を5~75質量%含む、〔8〕記載の使用。
〔10〕前記液状食品が、前記地上系澱粉由来の架橋澱粉を0.1~15質量%、ならびに前記地下系澱粉由来のエステル化澱粉及びエーテル化澱粉からなる群より選択される1種以上を合計で0.01~7質量%、を含有する液状部を含む、〔8〕又は〔9〕記載の使用。
【発明の効果】
【0009】
本発明の液状食品は、イネ科穀物粒の配合に起因して起こるベタつきやぬめり、及び冷凍後に再加熱したときの流動性低下や離水を抑えることができる。したがって、本発明によれば、取り扱い性、食感、及び品質のよい液状食品を提供することができる。本発明の液状食品は、冷凍後に再加熱しても品質が低下しにくいので、冷凍食品としても有用である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、イネ科穀物粒含有液状食品を提供する。本発明により提供されるイネ科穀物粒含有液状食品は、イネ科穀物粒を含有する具材と、液状部とを含む食品であり、例えば、具材としてイネ科穀物粒を含むスープ、ソース、粥類などが挙げられる。
【0011】
本発明で用いられるイネ科穀物粒としては、食用に供することができるものであれば、いずれのものでもよい。一方で、食物繊維量の観点からは、該イネ科穀物粒は、精米などの精製穀粒やその粉砕物よりも、玄米、全粒小麦、トウモロコシ全粒、雑穀、及びそれらの粉砕物などが好ましい。さらに食物繊維量の観点からは、本発明で用いられるイネ科穀物粒は、好ましくはその95質量%以上、より好ましくは97質量%以上、さらに好ましくは全量が、米、小麦及びトウモロコシ以外の雑穀であることが好ましい。該雑穀の例としては、大麦(裸麦、もち麦を含む)、ハト麦、エン麦、アワ、ヒエ、キビ、ソルガムなどが挙げられ、このうち、食感の点で大麦が好ましい。本発明で用いられるイネ科穀物粒に含まれる雑穀は、具材として含有されている限り、全粒であっても、その粉砕物であってもよい。
【0012】
本発明のイネ科穀物粒含有液状食品において、具材として含まれるイネ科穀物粒の含有量は、湿重量基準で、該液状食品全量中、好ましくは5~75質量%、より好ましくは30~75質量%、さらに好ましくは30~70質量%、なお好ましくは45~65質量%である。一方、本発明のイネ科穀物粒含有液状食品の液状部の含有量は、該液状食品全量中、好ましくは20~95質量%、より好ましくは20~70質量%、さらに好ましくは25~70質量%、なお好ましくは30~55質量%である。本明細書において、液状食品の液状部とは、該液状食品から具材を除いた液状部分をいい、具体的には、該液状食品(20℃)を目開き5mmの篩で濾して得られる濾過分をいう。一方、該篩上に残った部分は、該液状食品の具材である。
【0013】
本発明の液状食品は、地上系澱粉由来の架橋澱粉と、地下系澱粉由来の加工澱粉とを含有する液状部を含む。本発明で用いられる地上系澱粉由来の架橋澱粉において、該地上系澱粉は、植物地上部に由来する澱粉であり、例えば小麦澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチなどが挙げられ、このうちワキシーコーンスターチが好ましい。該架橋澱粉としては、澱粉に通常用いられる架橋処理を施されたもの、例えばリン酸架橋澱粉、アジピン酸架橋澱粉などが挙げられる。澱粉の架橋処理は、公知の方法で行うことができる。例えば、リン酸架橋澱粉は、澱粉をトリメタリン酸ナトリウムで処理することで得ることができ、アジピン酸架橋澱粉は、澱粉を無水アジピン酸で処理することで得ることができる。本発明で用いられる該地上系澱粉由来の架橋澱粉の例としては、好ましくはワキシーコーンスターチ由来の架橋澱粉、より好ましくはワキシーコーンリン酸架橋澱粉が挙げられる。
【0014】
本発明の液状食品における地上系澱粉由来の架橋澱粉の含有量は、該液状食品の液状部の全質量中、好ましくは0.1~15質量%、より好ましくは0.5~10質量%、さらに好ましくは1~7質量%である。該液状食品における該架橋澱粉の量が少ないと、液状食品の取り扱い性や、冷凍後の品質が低下することがある。一方で、該液状食品における該架橋澱粉の量が多すぎると、液状食品がぼってりとした性状になり口当たりが低下することがある。
【0015】
本発明で用いられる地下系澱粉由来の加工澱粉は、地下系澱粉由来のエステル化澱粉及びエーテル化澱粉からなる群より選択される1種以上である。該地下系澱粉は、植物の地下茎又は根などの地下部器官に由来する澱粉であり、例えば馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、甘藷澱粉などが挙げられ、このうちタピオカ澱粉が好ましい。該エステル化澱粉としては、澱粉に通常用いられるエステル化処理を施されたもの、例えばアセチル化澱粉、オクテニルコハク酸化澱粉などが挙げられる。該エーテル化澱粉としては、澱粉に通常用いられるエーテル化処理を施されたもの、例えばヒドロキシプロピル化澱粉などが挙げられる。澱粉のエステル化及びエーテル化処理は、公知の方法で行うことができる。例えば、アセチル化又はオクテニルコハク酸化澱粉は、澱粉を無水酢酸又は無水オクテニルコハク酸でエステル化することで得ることができ、ヒドロキシプロピル化澱粉は、澱粉を酸化プロピレンでエーテル化することで得ることができる。
【0016】
本発明で用いられる地下系澱粉由来のエステル化澱粉及びエーテル化澱粉は、それぞれ、エステル化架橋澱粉及びエーテル化架橋澱粉を含んでいてもよい。該架橋処理は上述の方法で行うことができ、好ましくはリン酸架橋である。澱粉に対するエステル化又はエーテル化処理と架橋処理は、同時に行ってもよく、順番に行ってもよい。該地下系澱粉由来のエステル化架橋澱粉及びエーテル化架橋澱粉の例としては、好ましくは、アセチル化架橋タピオカ澱粉、及びヒドロキシプロピル化架橋タピオカ澱粉が挙げられる。
【0017】
本発明で用いられる地下系澱粉由来の加工澱粉の例としては、好ましくは、エステル化タピオカ澱粉及びエーテル化タピオカ澱粉からなる群より選択される1種以上が挙げられる。該エステル化タピオカ澱粉は、好ましくはアセチル化タピオカ澱粉及びアセチル化リン酸架橋タピオカ澱粉からなる群より選択される1種以上であり、該エーテル化タピオカ澱粉は、好ましくはヒドロキシプロピル化タピオカ澱粉及びヒドロキシプロピル化リン酸架橋タピオカ澱粉からなる群より選択される1種以上である。したがって、本発明で用いられる該地下系澱粉由来の加工澱粉は、好ましくは、アセチル化タピオカ澱粉、アセチル化リン酸架橋タピオカ澱粉、ヒドロキシプロピル化タピオカ澱粉、及びヒドロキシプロピル化リン酸架橋タピオカ澱粉からなる群より選択される1種以上であり、より好ましくは、アセチル化タピオカ澱粉、ヒドロキシプロピル化タピオカ澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋タピオカ澱粉、又はそれらのいずれか2種以上の組み合わせである。
【0018】
本発明の液状食品における地下系澱粉由来の加工澱粉の含有量は、該地下系澱粉由来のエステル化澱粉及びエーテル化澱粉の合計含有量として、該液状食品の液状部の全質量中、好ましくは0.01~7質量%、より好ましくは0.05~5質量%、さらに好ましくは0.1~3.5質量%である。該液状食品における該加工澱粉の含有量が少ないと、冷凍後の液状食品の品質が低下することがある。一方で、該液状食品における該加工澱粉の含有量が多すぎると、液状食品がぼってりとした性状になり口当たりが低下することがある。
【0019】
本発明の液状食品の種類、風味及び形態は、特に制限されない。例えば、該液状食品がスープである場合、その例としては、みそ汁、だし汁、つゆ、チャウダー、ミネストローネ、フォンデュ、サンラータン、ファッチョーチュン、トムヤムクンなどが挙げられる。該液状食品がソースである場合、その例としては、ホワイトソース、クリームソース、カルボナーラソース、オイルソース、トマトソース、バターソース、醤油ソースなどが挙げられる。例えば、該ソースは、ソース含有食品(例えばスープ、シチュー、リゾット、グラタン、パスタ等)に含まれるソースとして、又は単独で食品にかけたりつけたりするためのソース(例えば、フレイバーソース、ディップソース等)として使用され得る。該液状食品が粥類である場合、その例としては、粥、おじや、雑炊、リゾットなどが挙げられる。
【0020】
本発明の液状食品は、液状食品に通常使用される材料、例えば、水、出汁、フォン、乳、塩、砂糖、卵、バター、クリーム、油脂、食材(肉、野菜、豆類、穀類等)のペースト又はピューレ状物、穀粉、上述した地上系澱粉由来の架橋澱粉及び地下系澱粉由来の加工澱粉以外の澱粉、醤油、酢、ブイヨン、コンソメなど、及び必要に応じて酸味料、乳化剤、増粘剤、安定剤、着色料等の添加剤、を含有していてもよい。使用する材料の種類及びその配合量は、液状食品の種類に応じて適宜選択することができる。
【0021】
食物繊維量の観点からは、本発明の液状食品は、難消化性デキストリンを含有していてもよい。本発明で用いられる難消化性デキストリンは、天然由来のものでも人工のものでもよい。好ましくは、本発明で用いられる難消化性デキストリンとしては、天然の澱粉から酵素処理や焙炒処理等で製造したもの、又は市販品を用いることができる。本発明で用いられる難消化性デキストリンとしては、食物繊維含量80質量%以上、好ましくは85~95質量%のものを好適に利用することができる。食物繊維含量が高いものを用いることで、良好な保健効果が期待できる。ここで食物繊維含量とは、AOAC 2001.3に準拠し、酵素-HPLC法で定量された値である。該難消化性デキストリンは、好ましくは本発明の液状食品の液状部に含有される。
【0022】
本発明の液状食品に含有される具材は、上述したイネ科穀物粒以外の他の材料を含んでいてもよい。該具材に含まれ得る当該他の材料としては、食品として喫食され得るものであればよく、牛肉、豚肉等の肉類、タラ、イカ等の魚介類、ホウレンソウ、ゴボウ、ニンジン等の野菜類、ジャガイモ、サツマイモ等のイモ類、シイタケ、シメジ等のキノコ類、アズキ、エンドウ豆等の豆類、アーモンド、クルミ等の木の実類、グレープフルーツ、キウイ等の果実類等を例示でき、これらの1種以上を組み合わせて用いることができる。具材中の当該他の材料の大きさや形状は、適宜常用の液状食品の製造方法を参考に決定すればよく、特に限定されない。本発明の液状食品における、具材である当該他の材料の含有量は、湿重量基準で、該液状食品の全量中0~30質量部であればよい。
【0023】
本発明の液状食品は、20℃における液状部の粘度が100~10000mPa・sであると、具材であるイネ科穀物粒の分散性の点で好ましい。なお、本発明における液状食品の粘度は、JIS Z 8803「液体の粘度-測定方法」に準拠し、B型粘度計で測定された値である。
【0024】
本発明の液状食品は、通常の液状食品の製法に準じて製造することができる。上述したイネ科穀物粒、地上系澱粉由来の架橋澱粉、及び地下系澱粉由来の加工澱粉は、製造の途中や製造後に配合し、必要に応じて加熱や攪拌等の操作を行って液状食品全体に行きわたるようにすればよい。
【実施例
【0025】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例などによって何ら限定されるものではない。
【0026】
試験例1
(もち麦粒含有おじやの製造)
もち麦粒を3倍量の水に加えて加熱し、炊き上げた。市販の鳥鍋の素を規定通りに希釈してだし汁を製造した。該だし汁を加熱しながら、表1の量で各種澱粉を加え、均一に分散した。これに、上記の炊いたもち麦粒を加え、ひと煮立ちしてから5分間加熱し、おじやを製造した。製造したおじやを目開き5mmの篩で濾して固形物を除き、粘度(20℃の)を測定したところ、いずれも480mPa・s~750mPa・sの範囲であった。さらに、得られた各おじやの取り扱い性、及び冷凍保存して再加熱した後の品質を下記の手順で評価した。結果を表1に示す。
【0027】
(取り扱い性の評価)
椀に入れたおじやをスプーンですくった際の取り扱い性を、訓練された10名のパネラーにより下記基準で評価し、10名の評価の平均値を求めた。
5:おじやに糸曳き、ぬめりが全くなく、非常に良好
4:おじやに糸曳き、ぬめりがあまりなく、良好
3:おじやに糸曳き、ぬめりがややあり、やや不良
2:おじやに糸曳き、ぬめりがあるか、ぼってりとした感じがあり、不良
1:おじやに糸曳き、ぬめりが強いか、ぼってりとしており、非常に不良
【0028】
(再加熱後の品質の評価)
おじや60gを耐熱性の容器にとり、蓋をして冷凍庫内にて-15℃で1週間保存した。保存後のおじやを容器ごと電子レンジにて600Wで5分間加熱した。加熱直後のおじやの離水の状態を評価した。さらに、容器をゆすった際の内部のおじやの流動性を、冷凍前と比較して評価した。評価は、訓練された10名のパネラーにより下記基準にて行い、10名の評価の平均値を求めた。
5:離水が全くなく、冷凍前と比べて流動性低下がなく、非常に良好
4:離水がほとんどなく、冷凍前と比べて流動性低下もほとんどなく、良好
3:離水がややあり、冷凍前と比べて流動性低下が若干感じられ、やや不良
2:離水があり、冷凍前と比べて流動性低下が感じられ、不良
1:離水が著しく、冷凍前と比べて流動性低下が強く感じられ、非常に不良
【0029】
【表1】
【0030】
試験例2
澱粉又はもち麦粒の添加量を表2~4のように変えた以外は、試験例1と同様の手順でおじやを製造して評価した。結果を表2~4に示す。
【0031】
【表2】
【0032】
【表3】
【0033】
【表4】