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特許73645763-(Z)-不飽和カルボン酸を3-(E)-異性体に異性化する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】3-(Z)-不飽和カルボン酸を3-(E)-異性体に異性化する方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 51/353 20060101AFI20231011BHJP
   C07C 57/03 20060101ALI20231011BHJP
   C12P 7/40 20060101ALI20231011BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20231011BHJP
   C12N 9/20 20060101ALN20231011BHJP
【FI】
C07C51/353
C07C57/03
C12P7/40
C07B61/00 300
C12N9/20
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020543043
(86)(22)【出願日】2019-02-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-10
(86)【国際出願番号】 EP2019053599
(87)【国際公開番号】W WO2019158611
(87)【国際公開日】2019-08-22
【審査請求日】2022-02-09
(31)【優先権主張番号】18156469.1
(32)【優先日】2018-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シェルヴィース,マティアス
(72)【発明者】
【氏名】ジーゲル,ヴォルフガング
(72)【発明者】
【氏名】パシエルロ,ロッコ
(72)【発明者】
【氏名】ケラー,アンドレアス
【審査官】長谷川 莉慧霞
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-537035(JP,A)
【文献】特表2016-505632(JP,A)
【文献】The Journal of Organic Chemistry,2007年06月07日,Vol. 72,No. 14,pp.5424-5426,DOI: 10.1021/jo0705263
【文献】Lipids,1986年10月,Vol. 21,No. 10,pp.662-665,DOI: 10.1007/BF02537218
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C12P
C07B
C12N
CAplus/REGISTRY/CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I-Z
【化1】
(式中、
R1は、水素、直鎖若しくは分枝C1-C24-アルキル、1個、2個、3個、若しくは3個超のC-C二重結合を有する直鎖若しくは分枝C2-C24-アルケニル、非置換C5-C12-シクロアルキル、若しくは1個、2個、若しくは3個のC1-C6-アルキル基で置換されたC5-C12-シクロアルキル、又は非置換C6-C20-アリール、若しくは1個、2個、若しくは3個のC1-C6-アルキル基で置換されたC6-C20-アリールであり、
R2は、直鎖若しくは分枝C1-C24-アルキル、1個、2個、3個、若しくは3個超のC-C二重結合を有する直鎖若しくは分枝C2-C24-アルケニル、非置換C5-C12-シクロアルキル、若しくは1個、2個、若しくは3個のC1-C6-アルキル基で置換されたC5-C12-シクロアルキル、又は非置換C6-C20-アリール、若しくは1個、2個、若しくは3個のC1-C6-アルキル基で置換されたC6-C20-アリールであり、
ただし、R2は、IUPACによれば、R1よりも高い優先度を有する)
の3-(Z)-不飽和カルボン酸又はそれらの塩を異性化して、式I-E
【化2】
の3-(E)-不飽和カルボン酸、又はそれらの塩を得る方法であって、
式I-Zの化合物若しくはそれらの塩の異性化を、有機酸の無水物及び塩基の存在下で行う、方法。
【請求項2】
式I-Zの化合物又はそれらの塩、及び式I-Eの化合物又はそれらの塩を含む組成物を使用し、式I-Zの化合物又はそれらの塩を、式I-Eの化合物又はそれらの塩に異性化し、式I-Eの化合物の含有量が、使用した組成物中の化合物I-Eの含有量と比べて増加した組成物を得る、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
使用される組成物中の化合物I-Z又はそれらの塩と化合物I-E又はそれらの塩の重量比が、50:50より大きい、請求項又はに記載の方法。
【請求項4】
使用される組成物中の化合物I-Z又はそれらの塩と化合物I-E又はそれらの塩の重量比が、85:15より大きい、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
使用される組成物が、式I-Zの化合物として、(3Z,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸を含み、式I-Eの化合物として、(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸を含む、請求項2~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
(a)(3Z,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸、及び(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸を含む第1の組成物を用意するステップと、
(b)ステップ(a)からの第1の組成物を、アルコール及びリパーゼ酵素の存在下で酵素触媒エステル化に供し、(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸エステル、未反応の(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸、及び未反応の(3Z,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸を含む組成物を得るステップと、(c)ステップ(b)で得られた組成物から、(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸エステルを含む組成物を分離し、(3Z,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸及び(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸を含む第2の組成物を得るステップであって、ここで、第2の組成物中の(3Z,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸の含有量が、ステップ(a)で用意した第1の組成物と比べて増加している、ステップと、
を含む方法により得られた組成物が異性化に使用される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
使用される組成物が、以下:
(d)(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸エステル、及び(3Z,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸エステルを含む組成物を用意するステップと、
(e)ステップ(d)で用意した組成物を、リパーゼ酵素の存在下で酵素触媒エステル開裂に供して、(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸、未反応の(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸エステル、及び未反応の(3Z,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸エステルを含む組成物を得るステップと、
(f)ステップ(e)で得られた組成物から、(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸を含む組成物を分離し、(3Z,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸エステル、及び(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸エステルを含む組成物を得るステップと、
(g)ステップ(f)で得られた、(3Z,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸エステル及び(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸エステルを含む組成物を、エステル開裂に供し、(3Z,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸又はそれらの塩、及び(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸又はそれらの塩を含む組成物を得るステップと、
を含む方法により得られる、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
異性化に使用される組成物が、(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸又はそれらの塩と、(3Z,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸又はそれらの塩を、1:99~50:50の重量比で含む、請求項5~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
60~175℃の範囲内の温度で行われる、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
70~160℃の範囲内の温度で行われる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
塩基が、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、アルカリ土類金属炭酸水素塩、アルカリ金属リン酸塩、アルカリ土類金属リン酸塩、アミン、塩基性N-複素芳香族系、塩基性イオン交換体、及びそれらの混合物から選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
塩基が、トリメチルアミン、ジメチルアミン、モノメチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルアミン、モノエチルアミン、トリプロピルアミン、ジプロピルアミン、トリブチルアミン、ジブチルアミン、トリヘキシルアミン、ジヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、モルホリン、ピペリジン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、N-エチルピペリジン、又はそれらの混合物から選択されるアミンである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
式I-Zの化合物又はそれらの塩及び式I-Eの化合物又はそれらの塩1mol当たり、0.1~5molの塩基を使用する、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
無水物が、脂肪族C1-C12-モノカルボン酸の無水物、脂肪族C4-C20-ジカルボン酸の無水物、脂環式C7-C20-ジカルボン酸の無水物、芳香族C8-C20-ジカルボン酸の無水物、脂肪族スルホン酸の無水物、及び芳香族スルホン酸の無水物から選択される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
無水物が、無水酢酸、無水マレイン酸、p-トルエンスルホン酸無水物、又はメタンスルホン酸無水物から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
化合物I-Z又はそれらの塩及び化合物I-E又はそれらの塩1mol当たり、0.05~0.8molの無水物を使用する、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
化合物I-Z又はそれらの塩及び化合物I-E又はそれらの塩1mol当たり、0.1~0.5molの無水物を使用する、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3-(Z)-不飽和カルボン酸を、塩基、及びアシル化剤、例えば有機酸の無水物、又はケテン化合物の存在下で、3-(E)-不飽和カルボン酸に異性化する方法に関し、特に、(3Z,7E)-ホモファルネシル酸及び(3E,7E)-ホモファルネシル酸を含む組成物から出発して、(3E,7E)-ホモファルネシル酸の含有量が増加した組成物を調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アリルアルコールのカルボニル化生成物は、多数の市販製品の調製のための貴重な中間体である。アリルアルコールであるネロリドール及びファルネソールのカルボニル化により、例えば、カルボン酸を得ることが可能であり、このカルボン酸を、対応するアルコールへ還元した後、環化して貴重なアロマケミカルを得ることができる。例えば、E-ネロリドールのカルボニル化による(3E,7E)-ホモファルネシル酸を還元に供して、(3E,7E)-ホモファルネソール
【0003】
【化1】
を得ることができ、これをさらに環化に供して、(-)-アンブロクス
【0004】
【化2】
を得ることができる。
【0005】
(-)-アンブロクスは、重要なアロマケミカルであり、したがって、(3E,7E)-ホモファルネシル酸は、(-)-アンブロクスを調製するための重要な中間体である。
【0006】
(3E,7E)-ホモファルネシル酸を直接調製するための様々な方法が文献に記載されている。(3E,7E)-ホモファルネシル酸及び(3Z,7E)-ホモファルネシル酸を含む組成物は工業的に入手可能であり、安価である。
【0007】
例えば、WO2014/079691には、水、及びホスフィンリガンドを含む二塩化パラジウム錯体の存在下においてβ-ファルネセンをカルボニル化することにより、E/Z-ホモファルネシル酸を調製する方法が記載されている。
【0008】
例えば、WO92/06063には、触媒量の塩化パラジウム(II)を添加して(E)-ネロリドールをカルボニル化することによりE/Z-ホモファルネシル酸を調製する方法が記載されている。E/Z-ホモファルネシル酸は、異性体混合物として得られる。
【0009】
WO2018/153727には、対応するアリルアルコール又はアシル化アルコールをカルボニル化することにより、例えば、遷移金属触媒の存在下及び有機酸の無水物の存在下で、最大100℃の温度で(E)-ネロリドールをカルボニル化することにより、3-不飽和カルボン酸を調製する方法が記載されている。この場合、通常、3-(E)-異性体に加えて、3-(Z)-異性体も多量に含むE/Z異性体混合物、例えば、(3E,7E)-ホモファルネシル酸及び(3Z,7E)-ホモファルネシル酸を、通常、50:50~70:30の比で含む異性体混合物が得られる。各異性体混合物は、多大な努力さえすれば、クロマトグラフィー又は蒸留によって分離することが可能である。
【0010】
WO2018/154048には、特定のリパーゼ及びアルコールを用いて、(3Z,7E)-ホモファルネシル酸及び(3E,7E)-ホモファルネシル酸を含む組成物から、立体化学的に純粋な(3E,7E)-ホモファルネシル酸を部分的に分離するための第1の方法が記載されている。第1の方法において、出発組成物と比較して、(3Z,7E)-ホモファルネシル酸の含有量が増加し、(3E,7E)-ホモファルネシル酸の含有量が減少した組成物が得られる。特定のリパーゼ及び水を用いて、(3Z,7E)-ホモファルネシル酸エステル及び(3E,7E)-ホモファルネシル酸エステルを含む組成物から、立体化学的に純粋な(3E,7E)-ホモファルネシル酸を部分的に分離するための第2の方法も記載されている。第2の方法において、出発組成物と比較して、(3Z,7E)-ホモファルネシル酸エステルの含有量が増加し、(3E,7E)-ホモファルネシル酸エステルの含有量が減少した組成物が得られる。こうして得られたホモファルネシル酸エステル混合物は、次いで、(酸触媒、塩基触媒、又は酵素触媒の)エステル開裂により、(3E,7E)-ホモファルネシル酸及び(3Z,7E)-ホモファルネシル酸の混合物に変換される。したがって、両方の方法による(3E,7E)-ホモファルネシル酸の単離において、多量の(3Z,7E)-ホモファルネシル酸が得られ、これは(-)-アンブロクスの調製には用いることができない。
【0011】
経済的に実行可能な手順のためには、価値ある生成物、すなわち(3E,7E)-ホモファルネシル酸の割合を高めるために、従来技術による組成物中に存在する望まれない生成物、すなわち3-(Z)-異性体を、少なくとも部分的に3-(E)-異性体に変換することが望ましい。
【0012】
原則として、(Z)-アルケンを(E)-アルケンに異性化するための方法が知られている。熱的変換、光化学的変換、触媒を用いた変換、及び試薬により媒介される変換が、可能且つ既知である。
【0013】
M. Yus及びF. Foubeloは、Science of Synthesis、47 (2009)、1076頁において、Z-アルケンを、例えば、遷移金属触媒(例えば、トリヒドリド(トリホス)ロジウム(III))の存在下で、熱力学的により安定な(E)-アルケンに異性化するための様々な方法を記載している。変換は、100℃未満であっても、部分的に可能である。
【0014】
Jungらは、J. Org. Chem. 2007、72、5424-5426において、パラジウム触媒及び化学量論を超える量のトリブチルスズヒドリドを必要とする異性化方法を記載している。
【0015】
(Z)-アルケンの純粋な熱的変換は、高温のために、通常、経済的に実行可能な選択肢ではない。なぜなら、多くの(Z)-アルケンは、180℃未満の温度で安定な配置であるためである。したがって、熱異性化は、J. Org. Chem. 1987、52、5636~5638頁に記載されるように、多くの場合、180℃を超える温度を必要とする。
【0016】
しかしながら、文献中には、温和な反応条件下で効率的かつ経済的に進行する熱Z/E異性化のための手順は見出されない。ここで、異性化は、光化学的には進行せず、180℃未満の温度で且つ遷移金属触媒無しで、熱的に進行することが理解されるべきである。
【0017】
従来技術から知られた方法は、非常に一般的な場合に限っては、二重結合の異性化に適しているが、場合によっては二重結合(複数可)のシフトを伴うことがある。例えば、二重結合のシフトを引き起こす触媒が、C. Mazetらにより、Acc. Chem. Res. 2016、49、 1232頁、又はJACS 2014、136、16882頁に記載されている。
【発明の概要】
【0018】
したがって、温和な反応条件下で、3-(Z)-不飽和カルボン酸を3-(E)-不飽和カルボン酸に変換する方法が求められている。具体的には、この方法は、その他の二重結合を異性化することなく、(3Z,7E)-ホモファルネシル酸を選択的に(3E,7E)-ホモファルネシル酸に変換することが可能であるべきである。この変換は、効率的に且つ1つの合成ステップで起こるべきである。
【0019】
したがって、本発明の目的は、3-(Z)-不飽和カルボン酸を3-(E)-不飽和カルボン酸に、温和な反応条件下で変換するための方法を提供することである。具体的には、この方法は、(3Z,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸又はそれらの塩を、(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸又はそれらの塩に、温和な反応条件下で変換することを意図する。
【0020】
驚くべきことに、3-(Z)-不飽和カルボン酸が、塩基、及びアシル化剤、例えば有機酸の無水物又はケテン化合物の存在下で、少なくとも部分的に、3-(E)-不飽和カルボン酸に異性化されることが見出された。また、異性化を、180℃未満の温度で、遷移金属触媒無しで、行うことができることも見出された。
【0021】
本発明の主題は、式I-Z
【0022】
【化3】
(式中、
R1は、水素、直鎖若しくは分枝C1-C24-アルキル、1個、2個、3個、若しくは3個超のC-C二重結合を有する直鎖若しくは分枝C2-C24-アルケニル、非置換C5-C12-シクロアルキル、若しくは1個、2個、若しくは3個のC1-C6-アルキル基で置換されたC5-C12-シクロアルキル、又は非置換C6-C20-アリール、若しくは1個、2個、若しくは3個のC1-C6-アルキル基で置換されたC6-C20-アリールであり、
R2は、直鎖若しくは分枝C1-C24-アルキル、1個、2個、3個、若しくは3個超のC-C二重結合を有する直鎖若しくは分枝C2-C24-アルケニル、非置換C5-C12-シクロアルキル、若しくは1個、2個、若しくは3個のC1-C6-アルキル基で置換されたC5-C12-シクロアルキル、又は非置換C6-C20-アリール、若しくは1個、2個、若しくは3個のC1-C6-アルキル基で置換されたC6-C20-アリールであり、
ただし、R2は、IUPACによれば、R1よりも高い優先度を有する)
の3-(Z)-不飽和カルボン酸又はそれらの塩を異性化して、式I-E
【0023】
【化4】
の3-(E)-不飽和カルボン酸又はそれらの塩を得る方法であって、
式I-Zの化合物若しくはそれらの塩の異性化を、有機酸の無水物及び塩基の存在下で行うか、又は、
式I-Zの化合物若しくはそれらの塩の異性化を、塩基及び式V
【0024】
【化5】
(式中、
R11及びR12は、互いに独立して、水素、直鎖若しくは分枝C1-C24-アルキル、非置換C5-C12-シクロアルキル、若しくは1個、2個、若しくは3個のC1-C6-アルキル基で置換されたC5-C12-シクロアルキル、又は非置換C6-C14-アリール、若しくは1個、2個、若しくは3個のC1-C6-アルキル基で置換されたC6-C14-アリールから選択される)
のケテンの存在下で行う、方法である。
【0025】
具体的な実施形態において、本発明の主題事項は、式I-Z
【0026】
【化6】
(式中、
R1は、水素、直鎖若しくは分枝C1-C24-アルキル、1個、2個、3個、若しくは3個超のC-C二重結合を有する直鎖若しくは分枝C2-C24-アルケニル、非置換C5-C12-シクロアルキル、若しくは1個、2個、若しくは3個のC1-C6-アルキル基で置換されたC5-C12-シクロアルキル、又は非置換C6-C20-アリール、若しくは1個、2個、若しくは3個のC1-C6-アルキル基で置換されたC6-C20-アリールであり、
R2は、直鎖若しくは分枝C1-C24-アルキル、1個、2個、3個、若しくは3個超のC-C二重結合を有する直鎖若しくは分枝C2-C24-アルケニル、非置換C5-C12-シクロアルキル、若しくは1個、2個、若しくは3個のC1-C6-アルキル基で置換されたC5-C12-シクロアルキル、又は非置換C6-C20-アリール、若しくは1個、2個、若しくは3個のC1-C6-アルキル基で置換されたC6-C20-アリールであり、
ただし、R2は、IUPACによれば、R1よりも高い優先度を有する)
の3-(Z)-不飽和カルボン酸又はそれらの塩を異性化して、式I-E
【0027】
【化7】
の3-(E)-不飽和カルボン酸又はそれらの塩を得る方法であって、
式I-Zの化合物若しくはそれらの塩の異性化を、有機酸の無水物及び塩基の存在下で行う、方法である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
化合物I-Z及び化合物I-Eの一般式
【0029】
【化8】
において、2種の異なる置換基R1及びR2が二重結合に結合されている場合にのみ、E-及びZ-異性体が存在することができることは自明である。本発明との関連において、置換基R2は、IUPAC(国際純正・応用化学連合)によれば、より高い優先度を有する。置換基は、Cahn-Ingold-Prelog規則に従って順に優先順位付けされる(「E/Z notation」、https://en.wikipedia.org/wiki/E-Z_notationを参照されたい)。
【0030】
一般式(I)、(II.2)、(III.2)、及び(IV.2)
【0031】
【化9】
の化合物において、波状の結合は、純粋なZ-異性体、純粋なE-異性体、又は任意の所望のE/Z-混合物のそれぞれの場合における形態をとり得ることを示すことが意図される。
【0032】
本発明による方法は、式I-Zの3-(Z)-不飽和カルボン酸又はそれらの塩を、3-(E)-不飽和カルボン酸又はそれらの塩に、温和な反応条件下で、少なくとも部分的に異性化することを可能にする。
【0033】
本発明との関連において、「脂肪族」という表現は、炭素原子が直鎖又は分枝鎖に配置された炭化水素基を含む。
【0034】
本発明との関連において、「脂環式」という表現は、環式の飽和又は不飽和炭素基を含み、芳香族基を除く。
【0035】
本発明との関連において、「アルキル」という表現、並びにアルコキシ、アルキルアミノ、及びジアルキルアミノにおける全てのアルキル部分は、1~4個(「C1-C4-アルキル」)、1~6個(「C1-C6-アルキル」)、1~10個(「C1-C10-アルキル」)、1~20個(「C1-C20-アルキル」)、又は1~24個(「C1-C24-アルキル」)の炭素原子を有する、飽和の、直鎖、又は分枝の炭化水素基を含む。直鎖又は分枝C1-C4-アルキルの例として、メチル、エチル、n-プロピル、1-メチルエチル、n-ブチル、1-メチルプロピル、2-メチルプロピル、1,1-ジメチルエチルが挙げられる。直鎖又は分枝C1-C6-アルキルの例として、C1-C4-アルキルについて記載した定義に加えて、n-ペンチル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、2,2-ジメチルプロピル、1-エチルプロピル、n-ヘキシル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、1,1-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、1-エチルブチル、2-エチルブチル、1,1,2-トリメチルプロピル、1,2,2-トリメチルプロピル、1-エチル-1-メチルプロピル、及び1-エチル-2-メチルプロピルが挙げられる。直鎖又は分枝C1-C10-アルキルの例として、C1-C6-アルキルについて記載した定義に加えて、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、及びそれらの位置異性体が挙げられる。C1-C20-アルキルの例として、C1-C10-アルキルについて記載した定義に加えて、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、エイコシル、ヘンエイコシル、ドコシル、トリコシル、テトラコシル、ペンタコシル、ヘキサコシル、ヘプタコシル、オクタコシル、ノナコシル、エイコシル、及びそれらの位置異性体が挙げられる。
【0036】
本発明との関連において、「アルケニル」という表現は、2~4個(C2-C4-アルケニル)、最大6個まで、最大8個まで、最大10個まで、最大16個まで、最大20個まで、又は最大24個までの炭素原子、及び1個、2個、3個又は3個超の二重結合を任意の位置に有する不飽和の、直鎖又は分枝の炭化水素基を含む。1個の二重結合を有する直鎖又は分枝C2-C24-アルケニルの例として、ビニル、アリル(2-プロペン-1-イル)、1-メチルプロパ-2-エン-1-イル、2-ブテン-1-イル、3-ブテン-1-イル、n-ペンテニル、n-ヘキセニル、n-ヘプテニル、n-オクテニル、n-ノネニル、n-デセニル、n-ウンデセニル、n-ドデセニル、n-トリデセニル、n-テトラデセニル、n-ペンタデセニル、n-ヘキサデセニル、n-ヘプタデセニル、n-オクタデセニル、オレイル、n-ノナデセニル、n-エイコセニル、n-ヘンエイコセニル、n-ドコセニル、n-トリコセニル、n-テトラコセニル、及びそれらの構造異性体が挙げられる。2個又は3個の二重結合を任意の位置に有する直鎖又は分枝C4-C24-アルケニルの例として、n-ブタジエニル、n-ペンタジエニル、n-ヘキサジエニル、n-ヘプタジエニル、n-オクタジエニル、n-オクタトリエニル、n-ノナジエニル、n-ノナトリエニル、n-デカジエニル、n-デカトリエニル、n-ウンデカジエニル、n-ウンデカトリエニル、n-ドデカジエニル、n-ドデカトリエニル、n-トリデカジエニル、n-トリデカトリエニル、n-テトラデカジエニル、n-テトラデカトリエニル、n-ペンタデカジエニル、n-ペンタデカトリエニル、n-ヘキサデカジエニル、n-ヘキサデカトリエニル、n-ヘプタデカジエニル、n-ヘプタデカトリエニル、n-オクタデカジエニル、n-オクタデカトリエニル、n-ノナデカジエニル、n-ノナデカトリエニル、n-エイコサジエニル、n-エイコサトリエニル、n-ヘンエイコサジエニル、n-ヘンエイコサトリエニル、n-ドコサジエニル、n-ドコサトリエニル、n-トリコサジエニル、n-トリコサトリエニル、n-テトラコサジエニル、n-テトラコサトリエニル、リノレニル、及びそれらの構造異性体が挙げられる。C2-C24-アルケニルにおける任意の二重結合は(別段に明記されていない限り)、互いに独立して、E配置又はZ配置でそれぞれ存在してよい。
【0037】
本発明の関連において、「シクロアルキル」という表現は、3~8個(「C3-C8-シクロアルキル」)、好ましくは5~7個の炭素環員(「C5-C7-シクロアルキル」)を有する単環式飽和炭化水素基を含む。C3-C8-シクロアルキルの例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、及びシクロオクチルが挙げられる。
【0038】
本発明との関連において、「ヘテロシクリル」という表現(ヘテロシクロアルキルとも称される)は、一般に5~8個の環原子、好ましくは5個又は6個の環原子を有する単環式飽和脂環式基を包含し、ここで、環炭素原子の1個又は2個は、酸素、窒素、NH及びN(C1-C4-アルキル)から選択されるヘテロ原子又はヘテロ原子含有基によって置き換えられる。このようなヘテロ脂環式基の例として、ピロリジニル、ピペリジニル、テトラヒドロフラニル及びテトラヒドロピラニルが挙げられる。
【0039】
本発明との関連において、「アリール」という表現は、6~20個の炭素環員を含む単核、二核、又は三核芳香環系を含む。非置換C6-C10-アリールの例としては、フェニル及びナフチルが挙げられる。C6-C14-アリールの例としては、フェニル、ナフチル、アントラセニル及びフェナントレニルが挙げられる。置換アリール基は、一般に1個、2個、3個、4個、又は5個、好ましくは1個、2個、又は3個の、同一の又は異なる置換基を有する。適した置換基は、特に、アルキル、シクロアルキル、アリール、アルコキシ、ジアルキルアミノから選択される。C1-C6-アルキルから選択される1個、2個、又は3個の置換基を有するアリールの例としては、トリル、キシリル、及びメシチルが挙げられる。
【0040】
本発明との関連において、「ヘタリール」という表現は、酸素、窒素、及び硫黄からなる群から選択される1個、2個、3個又は4個のヘテロ原子を含む5~6員の芳香族ヘテロ単環、並びに9員又は10員の芳香族ヘテロ二環、例えば、環員として1~3個の窒素原子、又は1個若しくは2個の窒素原子及び1個の硫黄原子若しくは酸素原子を含む炭素結合5員ヘテロアリール、例えばフリル、チエニル、ピロリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、4-イミダゾリル、1,2,4-オキサジアゾリル、1,2,4-チアジアゾリル、1,2,4-トリアゾリル、1,3,4-オキサジアゾリル;環員として1~3個の窒素原子を含む窒素を介して結合された5員のヘテロアリール、例えばピロール-1-イル、ピラゾール-1-イル、イミダゾール-1-イル、1,2,3-トリアゾール-1-イル、及び1,2,4-トリアゾール-1-イル;環員として1~3個の窒素原子を含む6員のヘテロアリール、例えばピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、1,3,5-トリアジニル、及び1,2,4-トリアジニルを含む。
【0041】
ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素である。ハロゲン化物は、フッ化物、塩化物、臭化物、又はヨウ化物である。
【0042】
アルカリ金属は、IUPACによる元素周期表の1族元素、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、又はセシウム、好ましくは、リチウム、ナトリウム、又はカリウム、特に、ナトリウム又はカリウムに対応する。
【0043】
アルカリ土類金属は、IUPACによる元素周期表の2族元素、例えばベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、又はバリウム、好ましくは、マグネシウム又はカルシウムに対応する。
【0044】
IUPACによる元素周期表の8族は、特に、鉄、ルテニウム、及びオスミウムを含む。IUPACによる元素周期表の9族は、特に、コバルト、ロジウム、イリジウムを含む。IUPACによる元素周期表の10族は、特に、ニッケル、パラジウム、及び白金を含む。
【0045】
本発明との関連において、「それらの塩」という表現は、カルボキシル基の塩を意味する。カルボキシル基の塩は、既知の方法で生成することができ、例えばナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム等の無機塩、アミン等の有機塩基を有する塩、並びに酸付加塩、例えば塩酸又は硫酸のような無機酸を有する塩及び酢酸のような有機酸を有する塩を含む。
【0046】
本発明との関連において、「アンモニウム塩」という表現は、NH4 +に由来する塩、並びにモノ、ジ、トリ及びテトラオルガニルアンモニウム塩の両方を含む。アンモニウム窒素に結合される基は、一般に、それぞれの場合において独立して、水素、並びに脂肪族、脂環式及び芳香族の炭化水素基から選択される。好ましくは、アンモニウム窒素に結合される基は、それぞれ独立して、水素及び脂肪族基から選択され、特に水素及びC1-C20-アルキルから選択される。
【0047】
本発明との関連において、「アシル」という表現は、一般に1~11個、好ましくは2~8個の炭素原子を有するアルカノイル基又はアロイル基、例えばホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ペンタノイル基、ベンゾイル基、又はナフトイル基を含む。
【0048】
「立体異性体」は、同じ構造であるが三次元空間において異なる原子配置を有する化合物である。
【0049】
「エナンチオマー」は、互いに像と鏡像のように挙動する立体異性体である。「エナンチオマー的に純粋な」とは、具体的に指定したエナンチオマーの他に、少なくとも1つの不斉中心を有する化合物のさらなるエナンチオマー形態が分析的に検出可能でないことを意味する。
【0050】
本発明との関連において、「テルペン様炭化水素基」という用語は、1個、2個、3個又は3個超のイソプレン単位から形式的に誘導される炭化水素基を含む。テルペン様炭化水素基は、この場合、さらに二重結合を有してもよく、又は完全に飽和されていてもよい。この場合の二重結合は、任意の位置であってよいが、累積二重結合は除かれる。
【0051】
本発明との関連において、「ファルネソール(3,7,11-トリメチル-2,6,10-ドデカトリエン-1-オール)」という用語は、(2E),(6E)-異性体、(2Z),(6Z)-異性体、(2Z),(6E)-異性体、及び(2E),(6Z)-異性体、並びに上述のファルネソールの2種、3種、又は全ての異性体の混合物を含む。ファルネソールは市販されている。
【0052】
ネロリドールは、1つのキラル中心を有し、E/Z混合物として存在し得、したがって、4種の立体異性体がある。本発明との関連において、「ネロリドール(3,7,11-トリメチル-1,6,10-ドデカトリエン-3-オール)」という用語は、(3S),(6Z)異性体、(3R),(6Z)異性体、(3S),(6E)異性体、(3R),(6E)異性体、及びこれらの任意の所望の混合物を含む。ネロリドールは市販されている。ネロリジルアセタート(3,7,11-トリメチル-1,6,10-オクタトリエニルアセタート)は、ネロリドールのアセチル化生成物である。それは市販されている。
【0053】
ホモファルネシル酸の別名は、4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸である。したがって、(3Z,7E)-ホモファルネシル酸の別名は、(3Z,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸である。したがって、(3E,7E)-ホモファルネシル酸の別名は(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸である。
【0054】
本発明による方法について以下に記載する適した好ましい条件は、別段の記載がない限り、塩基及び有機酸の無水物の存在下での異性化、並びに塩基及び式Vのケテン化合物の存在下での異性化に適用される。
【0055】
以下の実施形態は、別段の記載がない限り、純粋な(Z)-異性体、(Z)-異性体を含む組成物の使用、並びに(E)-異性体及び(Z)-異性体を含む組成物の使用の両方に適用される。
【0056】
式I-Z及び式I-Eの化合物において、R1は、好ましくは、水素、直鎖若しくは分枝C1-C16-アルキル、又は1個若しくは2個の非共役二重結合を有する直鎖若しくは分枝C2-C16-アルケニルである。R1は、特に、水素、又はC1-C4-アルキル、特にC1-C2-アルキルである。式I-Z及び式I-Eの化合物において、R2は、好ましくは、直鎖若しくは分枝C1-C16-アルキル、又は1個若しくは2個の非共役二重結合を有する直鎖若しくは分枝C2-C16-アルケニル、特に、テルペン様炭化水素基である。R2は、特に、直鎖若しくは分枝C6-C16-アルキル、又は1個若しくは2個の非共役二重結合を有する直鎖若しくは分枝C6-C16-アルケニルである。R2は、好ましくは、R1よりも1個多い炭素原子を有する。
【0057】
式I-Zの3-(Z)-不飽和カルボン酸として適しているのは、純粋な3-(Z)-不飽和カルボン酸;3-(Z)-不飽和カルボン酸を含む組成物;3-(Z)-不飽和カルボン酸及び3-(E)-不飽和カルボン酸を含む組成物である。好ましい実施形態において、提供される組成物中の3-(Z)-不飽和カルボン酸の割合は、3-(E)-不飽和カルボン酸の割合よりも高い。
【0058】
本発明の第1の実施形態によれば、本発明による方法において、式I-Zの純粋な異性体又はそれらの塩が使用される。
【0059】
本発明のさらに好ましい実施形態によれば、本発明による方法において、式I-Zの化合物又はそれらの塩、及び式I-Eの化合物又はそれらの塩を含む組成物が使用される。本発明による方法は、使用した組成物における化合物I-Eの含有量と比較して、式I-Eの化合物の含有量が増加した組成物を生じさせる。
【0060】
好ましくは、使用する組成物において、化合物I-Z又はそれらの塩と化合物I-E又はそれらの塩の重量比は、50:50より大きく、好ましくは85:15より大きい。
【0061】
本発明による方法は、式I-Zの化合物として(3Z,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸を含み、式I-Eの化合物として(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸を含む組成物において、(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸又はそれらの塩の含有量を増加させるのに特に適している。
【0062】
3-不飽和カルボン酸又はそれらの塩のE/Z混合物、特に、(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸又はそれらの塩、及び(3Z,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸又はそれらの塩を含む組成物は、例えばWO2018/153727に記載の方法により得られる。一般式I
【0063】
【化10】
(式中、R1及びR2は、上記で定義した通りである)
の不飽和カルボン酸又はそれらの塩の少なくとも一種のE/Z混合物を含む組成物を調製するための第1の実施形態(変形1)によれば、一般式(II.1)及び一般式(II.2)
【0064】
【化11】
の化合物から選択されるアリルアルコールが、元素周期表の8族、9族又は10族の少なくとも1種の金属を含む遷移金属触媒の存在下で一酸化炭素との反応により、カルボニル化に供され、ここで、この反応は、付加的に、リガンドとして少なくとも一種の有機リン化合物の存在下で、及びアリルアルコールに対して準化学量論の化合物A)の存在下で行われ、化合物A)は、脂肪族C1-C12-モノカルボン酸の無水物、脂肪族C4-C20-ジカルボン酸の無水物、脂環式C7-C20-ジカルボン酸の無水物、芳香族C8-C20-ジカルボン酸の無水物、及び式(III.1)及び式(III.2)
【0065】
【化12】
(式中、
R5はC1-C5-アルキルであり、
R6及びR7は、R1及びR2について記載した定義の1種を有する)
のアシル化アリルアルコールから選択され、この反応は、最大100℃の温度で行われる。
【0066】
一般式(I)
【0067】
【化13】
(式中、R1及びR2は、上記で定義した通りである)
の不飽和カルボン酸又はそれらの塩の少なくとも一種のE/Z混合物を含む組成物を調製するための第2の実施形態(変形2)によれば、一般式(IV.1)及び一般式(IV.2)
【0068】
【化14】
(式中、R8はC1-C5-アルキルである)
の化合物から選択されるアシル化アルコールが、元素周期表の8族、9族又は10族の少なくとも1種の金属を含む遷移金属触媒の存在下で一酸化炭素との反応により、カルボニル化に供され、ここで、この反応は、付加的に、リガンドとして少なくとも一種の有機リン化合物の存在下で、及び水の存在下で行われ、この反応は、最大100℃の温度で行われる。
【0069】
一般式(I)
【0070】
【化15】
(式中、R1及びR2は、上記で定義した通りである)
の不飽和カルボン酸又はそれらの塩の少なくとも一種のE/Z混合物を含む組成物を調製するための第3の実施形態(変形3)によれば、一般式(II.1)及び一般式(II.2)
【0071】
【化16】
の化合物から選択されるアリルアルコールが、元素周期表の8族、9族又は10族の少なくとも1種の金属を含む遷移金属触媒の存在下で一酸化炭素との反応により、カルボニル化に供され、ここで、この反応は、付加的に、リガンドとして少なくとも一種の有機リン化合物の存在下で、及びアリルアルコールに対して準化学量論の化合物B)
【0072】
【化17】
(式中、
R9及びR10は、それぞれ独立して、C1-C6-アルキル、C1-C6-フルオロアルキル、又は非置換フェニル、若しくは臭素、ニトロ、及びC1-C4-アルキルから選択される1種の置換基により置換されたフェニルである)
の存在下で行われ、この反応は、最大100℃の温度で行われる。
【0073】
上記の3つの変形によれば、カルボニル化は、元素周期表の8族、9族又は10族の少なくとも1種の金属を含む遷移金属触媒の存在下で行われる。使用する遷移金属は、好ましくは、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、及び鉄、特に好ましくは、パラジウムである。単座及び二座のリンリガンドが、有機リン化合物として適している。原則的に、どの種類の有機リン化合物を使用するかは重要ではなく、したがって、費用効率の高い第三級単座ホスフィンを使用することが一般に可能である。さらに、使用するカルボニル化触媒は、少なくとも一種のさらなるリガンドを有することができる。
【0074】
上述した変形1及び変形3によるカルボニル化は、求核試薬の存在下で行うことが適切であり得る。求核試薬の例としては、4-(C1-C4-アルキル)ピリジン、4-(1-ピロリジニル)ピリジン、及び4-(ジ-(C1-C4-アルキル)アミノ)ピリジンが挙げられる。上記のすべての変形によれば、カルボニル化は、塩基の存在下又は非存在下で行うことができ、ここで、塩基は求核試薬とは異なる。しかしながら、カルボニル化は、好ましくは塩基の存在下で行う。適した塩基は、有機塩基及び無機塩基である。適した塩基は、特に、アミンである。大気酸素を排除して又は大気酸素量を低減してカルボニル化を行うことも有利である。全ての上述した変形によれば、カルボニル化は、広い圧力範囲、例えば大気圧から最大90bar(9MPa)まで、好ましくは最大30bar(3MPa)まで、好ましくは最大25bar(2.5MPa)まで、より好ましくは最大20bar(2MPa)まで、特に最大15bar(1.5MPa)までの圧力範囲にわたって行うことができる。適した圧力範囲は、例えば、1.1~90bar(0.11~9MPa)、1.1~30bar(0.11~3MPa)、2~20bar(0.2~2MPa)、5~15bar(0.5~1.5MPa)である。上記の変形による反応温度は、室温(20℃)から100℃の広い範囲にわたって選択することができるが、好ましくは、最大80℃まで、特に、75℃以下である。カルボニル化の反応生産物は、蒸留により後処理(work-up)することができる。蒸留の後、(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸、(3Z,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸、及び低含有量の(2E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸を含み、さらなる化合物を含んでもよい組成物が得られる。
【0075】
上記の方法は、市販の物質、例えば、ファルネソール又はネロリドールから開始して、温和な反応条件下で、(3E,7E)-及び(3Z,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸又はそれらの塩を調製することを可能にする。具体的には、上記の方法は、(E)-ネロリドールから開始して、(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸又はそれらの塩、及び(3Z,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸又はそれらの塩を、一般に80:20~50:50、好ましくは70:30~50:50の重量比で含む組成物を調製することを可能にする。生じる異性体混合物における(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸の割合は、一般に、(3Z,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸の割合よりも高い。生じる組成物は、以下に記載する異性体分離、又は例えば蒸留によって、1種の異性体の少なくとも部分的な富化に供することができる。
【0076】
最初に得られる、3-(Z)-不飽和カルボン酸及び3-(E)-不飽和カルボン酸を含む混合物の、可能な異性体分離は、WO2018/154048に記載されている。具体的には、WO2018/154048には、(3E,7E)-及び(3Z,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸を含む混合物を異性体分離して、(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸が富化された第1のストリームを得るとともに、(3Z,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸が富化された第2のストリームを得ることが記載されている。
【0077】
3-(Z)-不飽和カルボン酸及び3-(E)-不飽和カルボン酸から開始する酵素的に触媒されたエステル化は、3-(Z)-不飽和カルボン酸の割合が、3-(E)-不飽和カルボン酸の割合よりも高い、3-(Z)-不飽和カルボン酸及び3-(E)-不飽和カルボン酸を含む組成物の調製を可能にする。このような組成物は、例えば、WO2018/154048の方法において得られる。
【0078】
本発明による方法では、式I-Zの化合物として(3Z,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸を含み、式I-Eの化合物として(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸を含む組成物であって、以下の方法、すなわち、
(a)(3Z,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸及び(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸を含む第1の組成物を用意するステップと、
(b)ステップ(a)からの第1の組成物を、アルコール及びリパーゼ酵素の存在下で酵素触媒エステル化に供し、(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸エステル、未反応の(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸、及び未反応の(3Z,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸を含む組成物を得るステップと、
(c)ステップ(b)で得られた組成物から、(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸エステルを含む組成物を分離し、(3Z,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸及び(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸を含む第2の組成物を得るステップであって、ここで、第2の組成物中の(3Z,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸の含有量が、ステップ(a)で用意した第1の組成物と比べて増加している、ステップと、
を含む方法により得られる組成物が好ましくは使用される。
【0079】
ステップ(b)における適したリパーゼの例としては、カンジダ・アンタルクチカ(Candida antarctica)リパーゼ(CALB)、及びポリマー担体上に固定された形態、例えばNovozym 435(登録商標)が挙げられる。酵素触媒エステル化は、好ましくは、脂肪族アルコールの存在下で行う。適した脂肪族アルコールは、C1-C20-アルカノール、例えばメタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、n-ペンタノール、n-ヘキサノール、n-ヘプタノール、及びn-オクタノールである。酵素触媒エステル化は、任意選択的に、希釈剤又は溶媒の存在下で行うことができる。適した希釈剤又は溶媒の例としては、特に、脂肪族炭化水素、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、へプタン、オクタン;芳香族炭化水素、例えば、トルエン、キシレン;ジアルキルエーテル、例えば、メチルtert-ブチルエーテル、及びジイソプロピルエーテルが挙げられる。典型的には、(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸1当量当たり、1~5当量のアルコールが使用される。エステル化は、典型的には、0~80℃の範囲内の温度で行われる。
【0080】
リパーゼは、3E,7E-異性体を、対応する3Z,7E-異性体よりもはるかに迅速に、アルコールでエステル化し、(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸エステル、(3Z,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸、及び(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸を含む分離可能な組成物を生じさせる。
【0081】
ステップ(b)で得られた組成物は、抽出又は蒸留によって分離することができ、(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸エステルを含む組成物が分離され、(3Z,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸及び(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸を含む第2の組成物が得られる。ここで、第2の組成物中の(3Z,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸の含有量は、ステップ(a)で用意した第1の組成物と比べて増加される。
【0082】
3-(Z)-不飽和カルボン酸エステル及び3-(E)-不飽和カルボン酸エステルを含む組成物から開始する酵素的に触媒された鹸化も、同様に、3-(Z)-不飽和カルボン酸の割合が、3-(E)-不飽和カルボン酸の割合よりも高い、3-(Z)-不飽和カルボン酸及び3-(E)-不飽和カルボン酸を含む組成物の調製を可能にする。このような組成物は、例えば、WO2018/154048の方法において得られる。
【0083】
したがって、本発明による方法において、式I-Zの化合物として(3Z,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸を含み、式I-Eの化合物として(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸を含む組成物であって、以下の方法、すなわち、
(d)(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸エステル及び(3Z,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸エステルを含む組成物を用意するステップと、
(e)ステップ(d)で用意した組成物を、リパーゼ酵素の存在下で酵素触媒エステル開裂に供して、(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸、未反応の(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸エステル、及び未反応の(3Z,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸エステルを含む組成物を得るステップと、
(f)ステップ(e)で得られた組成物から、(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸を含む組成物を分離し、
(3Z,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸エステル及び(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸エステルを含む組成物を得るステップと、
(g)ステップ(f)で得られた、(3Z,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸エステル及び(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸エステルを含む組成物を、エステル開裂に供し、(3Z,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸又はそれらの塩、及び(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸又はそれらの塩を含む組成物を得るステップと、
を含む方法により得られる組成物も、同様に好ましく使用される。
【0084】
ステップ(d)で用意する組成物は、(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸及び(3Z,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸をアルコールでエステル化することにより得ることができる。
【0085】
ステップ(d)で用意した組成物は、ステップ(e)において、リパーゼ酵素の存在下で酵素触媒エステル開裂に供され、(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸、未反応の(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸エステル、及び未反応の(3Z,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸エステルを含む組成物が得られる。適したリパーゼの例としては、カンジダ・アンタルクチカ(Candida antarctica)リパーゼ(CALB)、及びポリマー担体上に固定された形態、例えばNovozym 435(登録商標)が挙げられる。酵素触媒エステル開裂は、典型的に、水の存在下で行う。
【0086】
ステップ(e)で得られた組成物は、蒸留又は抽出によって分離することができる。したがって、ステップ(e)で得られた組成物から、ステップ(f)において、(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸を含む組成物が分離され、(3Z,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸エステル及び(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸エステルを含む組成物が得られる。
【0087】
ステップ(g)におけるエステル開裂は、酸で、塩基で、又は酵素で触媒されることができ、(3Z,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸又はそれらの塩、及び(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸又はそれらの塩を含む組成物が得られる。
【0088】
本発明による方法で使用される組成物は、好ましくは、(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸又はそれらの塩、及び(3Z,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸又はそれらの塩を、1:99~50:50の重量比で含む。特に、本発明による方法では、(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸又はそれらの塩と、(3Z,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸又はそれらの塩の重量比が15:85~50:50、好ましくは15:85~50:50の範囲内である組成物が使用される。
【0089】
式I-Zの3-(Z)-不飽和カルボン酸の異性化は、本発明によれば、塩基の存在下で行われる。適した塩基は、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、アルカリ土類金属炭酸水素塩、アルカリ金属リン酸塩、アルカリ土類金属リン酸塩、アミン、塩基性N-複素芳香族系、塩基性イオン交換体、及びそれらの混合物から選択される。
【0090】
適したアルカリ金属炭酸塩は、例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、又は炭酸カリウムである。適したアルカリ金属炭酸水素塩は、例えば、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、又は炭酸水素カリウムである。適したアルカリ土類金属炭酸塩は、例えば、炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウムである。適したアルカリ土類金属炭酸水素塩は、例えば、炭酸水素カルシウム及び炭酸水素マグネシウムである。適したアルカリ金属リン酸塩は、リン酸ナトリウム及びリン酸カリウムである。適したアルカリ土類金属リン酸塩は、リン酸マグネシウム及びリン酸カルシウムである。適した塩基性イオン交換体は、例えば、第二級若しくは第三級アミノ基若しくは第四級アンモニウム基を有する塩基性アニオン交換体又はそれらの混合物である。本明細書で特に好ましいのは、アルカリ金属炭酸塩、例えば、炭酸ナトリウム及び炭酸カリウムである。
【0091】
適したアミンは、モノアルキルアミン、ジアルキルアミン、トリアルキルアミン、具体的には、モノ-(C1-C20-アルキル)アミン、例えばモノ-(C1-C15-アルキル)アミン、ジ-(C1-C20-アルキル)アミン、例えばジ-(C1-C15-アルキル)アミン、トリ-(C1-C20-アルキル)アミン、例えばトリ-(C1-C15-アルキル)アミン、例えば、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノプロピルアミン、ジプロピルアミン、トリプロピルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、トリヘキシルアミン、ジヘキシルアミン、トリオクチルアミン、トリデシルアミン、N,N-ジメチルエチルアミン、ジメチルプロピルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(ヒューニッヒ塩基)、並びに、脂環式アミン、例えば、ジシクロヘキシルアミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、及びN,N-ジメチルドデシルアミンである。適したアミンのさらなる例は、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)、ピペリジン、N-(C1-C6-アルキル)ピペリジン、例えばN-メチルピペリジン及びN-エチルピペリジン、モルホリン、N-(C1-C6-アルキル)モルホリン、例えばN-エチルモルホリン及びN-メチルモルホリンである。適したアミンのさらなる例は、ピペラジン及び1-(C1-C4-アルキル)ピペラジンである。適した塩基性N-複素芳香族系は、非置換の塩基性N-複素芳香族系、例えば、ピリジン、イミダゾール、N-(C1-C6-アルキル)イミダゾール、例えばN-メチルイミダゾール、及びキノリン、並びに、C1-C4-アルキル、ジ-(C1-C4-アルキル)アミノ及びピロリジニルから選択される置換基を炭素環員において有する塩基性N-複素芳香族系、例えば、4-メチルピリジン、4-(1-ピロリジニル)ピリジン、及び4-ジメチルアミノピリジンである。
【0092】
以下では、アミンが特に好ましい。トリメチルアミン、ジメチルアミン、モノメチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルアミン、モノエチルアミン、トリプロピルアミン、ジプロピルアミン、トリブチルアミン、ジブチルアミン、トリヘキシルアミン、ジヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、モルホリン、ピペリジン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、及びN-エチルピペリジン、並びにそれらの混合物が特に好ましい。
【0093】
上記の塩基の2種以上の混合物を用いることも可能であることは自ずと明らかである。
【0094】
出発物質が式I-Zの化合物又はそれらの塩、及び式I-Eの化合物又はそれらの塩を含む組成物である場合、塩基は、典型的に、式I-Zの化合物又はそれらの塩、及び式I-Eの化合物又はそれらの塩の総量1mol当たり、塩基0.1mol以上5mol以下の量で使用される。塩基は、好ましくは、式I-Zの化合物及び式I-Eの化合物の総量1mol当たり、塩基0.2~3molの量で使用される。式I-Zの純粋なZ-異性体若しくはそれらの塩、又は式I-Zの化合物若しくはそれらの塩を含む組成物が使用される場合、塩基は、典型的に、式I-Zの化合物又はそれらの塩1mol当たり、塩基0.1~5molの量で使用される。
【0095】
本発明の実施形態において、3-(Z)-不飽和カルボン酸I-Zの異性化は、塩基及び有機酸の無水物の存在下で行う。適した有機酸は、特に、カルボン酸及び有機スルホン酸である。無水物は、好ましくは、脂肪族C1-C12-モノカルボン酸の無水物、脂肪族C4-C20-ジカルボン酸の無水物、脂環式C7-C20-ジカルボン酸の無水物、芳香族C8-C20-ジカルボン酸の無水物、脂肪族スルホン酸の無水物、又は芳香族スルホン酸の無水物から選択される。
【0096】
適した脂肪族C1-C12-モノカルボン酸の無水物は、直鎖又は分枝の一塩基性C1-C12-アルカンカルボン酸の無水物である。その例は、無水酢酸、プロピオン酸無水物、イソプロピオン酸無水物、酪酸無水物、n-吉草酸無水物、ギ酸及び酢酸等の混合無水物である。これらの中で、最大5個までの炭素原子を有するアルカンモノカルボン酸の対称無水物が好ましい。これらは、さらに、直鎖又は分枝の一塩基性C3-C12-アルケンカルボン酸の無水物を含む。その例は、メタアクリル酸無水物、クロトン酸無水物、及びイソクロトン酸無水物である。適した脂肪族C4-C20-ジカルボン酸の無水物の例は、直鎖又は分枝二塩基性C4-C20-アルカンカルボン酸の無水物、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、ヘプタデカン二酸、オクタデカン二酸の無水物である。これらは、さらに、直鎖又は分枝の二塩基性C4-C20-アルケンカルボン酸の無水物、例えば、無水マレイン酸又はイタコン酸無水物を含む。適した脂環式C7-C20-ジカルボン酸の無水物の例は、シクロペンタンジカルボン酸無水物及びシクロヘキサンカルボン酸無水物である。芳香族C8-C20-ジカルボン酸の無水物、例えばフタル酸無水物、1,8-ナフタレンカルボン酸無水物、又は2,3-ナフタレンカルボン酸無水物も同様に適している。以下では、無水酢酸、プロピオン酸無水物、イソプロピオン酸無水物、酪酸無水物、スクシン酸無水物、無水マレイン酸、及びフタル酸無水物、特に、無水酢酸及び無水マレイン酸が好ましい。
【0097】
式III
【0098】
【化18】
(式中、
R3及びR4は、それぞれ独立して、C1-C6-アルキル、C1-C6-フルオロアルキル、非置換フェニル、又は臭素、ニトロ、及びC1-C4-アルキルから選択される置換基により置換されたフェニルである。)
の有機スルホン酸の無水物も適している。
【0099】
式IIIの無水物において、R3及びR4は、好ましくは同じ定義を有する。R3及びR4は、特に、C1-C4-アルキル、C1-C4-フルオロアルキル、及び非置換フェニル、又は臭素、ニトロ、及びC1-C4-アルキルから選択される置換基により置換されたフェニルである。以下では、メタンスルホン酸無水物、トリフルオロメタンスルホン酸無水物、フェニルスルホン酸無水物、p-トルエンスルホン酸無水物、4-ブロモフェニルスルホン酸無水物、及び4-ニトロフェニルスルホン酸無水物が好ましく、メタンスルホン酸無水物、及びp-トルエンスルホン酸無水物が特に好ましい。
【0100】
無水物は、有利には、式I-Z及びI-Eの化合物又はそれらの塩の総量に対して、準化学量論量から最大で化学量論量までの量で使用することができる。式I-Zの化合物又はそれらの塩及び式I-Eの化合物又はそれらの塩の総量1mol当たり、0.05~0.8molの無水物を使用することが好ましい。無水物は、特に、化合物I-Z又はそれらの塩及び化合物I-E又はそれらの塩の総量1mol当たり、無水物0.1~0.5molの量で使用される。式I-Zの純粋なZ-異性体若しくはそれらの塩、又は式I-Zの化合物若しくはそれらの塩を含む組成物が使用される場合、無水物は、典型的に、式I-Zの化合物又はそれらの塩1mol当たり、無水物0.1~5molの量で使用される。
【0101】
本発明の別の実施形態において、3-(Z)-不飽和カルボン酸I-Zの異性化は、塩基及び式V
【0102】
【化19】
(式中、
R11及びR12は、互いに独立して、水素、直鎖若しくは分枝C1-C24-アルキル、非置換C5-C12-シクロアルキル、若しくは1個、2個、若しくは3個のC1-C6-アルキル基によって置換されたC5-C12-シクロアルキル、又は非置換C6-C14-アリール、若しくは1個、2個、若しくは3個のC1-C6-アルキル基によって置換されたC6-C14-アリールから選択される。)
のケテンの存在下で行う。
【0103】
式Vのケテンにおいて、R11及びR12が、互いに独立して、水素、C1-C10-アルキル、及び1個、2個、又は3個の二重結合を有するC10-C18-アルケニルから選択されることが好ましい。特に、R11及びR12の両方が水素である。ホモファルネシル酸のケテン、すなわち、R11が水素であり、R12が2,6,10-トリメチルウンデカ-1,5,9-トリエニルである式Vの化合物も、同様に特に好ましい。
【0104】
式Vのケテン化合物の最も単純な代表物は、CH2=C=O(エテノン)である。エテノンは、好ましくは、一般的に650℃より高い温度におけるアセトン又は酢酸の高温熱分解により生成される。エテノンを生成するための温度は、好ましくは、650~1000℃の範囲内であり、特に好ましくは、700~900℃である。
【0105】
特定の実施形態において、エテノンは、減圧下で調製される。圧力は、好ましくは、約100~900mbar(10~90kPa)、特に好ましくは300~500mbar(30~50kPa)、特に350~450mbar(35~45kPa)の範囲内である。代替の実施形態において、エテノンは周囲圧力(非加圧)で調製される。この場合、圧力は、好ましくは約950~1050mbar(95~105kPa)の範囲内である。
【0106】
エテノンを調製するための方法及び装置は、例えば、Organic Syntheses,Coll.1巻、330頁(1941)、及び4巻、39頁(1925)、並びにChemiker Zeitung [The Chemists Journal] 97、No.2、67~73頁(1979)において記載されている。式Vのケテン化合物CR11R12=C=Oを本発明による方法において使用する場合、R11及びR12が水素とは異なるときは、調製は、原則的に既知の方法により行ってよい。これらは、例えば、隣接する水素を有するハロゲン化カルボニルからのハロゲン化水素の除去を含む。このような方法は、例えば、Organikum、VEB Deutscher Verlag der Wissenschaften、第16版、Berlin 1986、3.1.5章、特に、234頁において記載されている。ケテン化合物の調製は、ハロゲン化カルボニルをジアゾメタンと反応させることによるアルント-アイステルト(Arndt-Eistert)合成を経由しても可能である。
【0107】
式Vのケテン化合物、特にエテノンは、二量化してジケテンを形成する強い傾向を有する非常に反応性の高い化合物であるため、好ましくは、使用する少しだけ前に調製されたケテン化合物が本発明による方法において使用される。例えば、アセトン、酢酸、若しくは無水酢酸の熱開裂により、又は塩基、例えばトリエチルアミンを用いた塩化アセチルの脱塩化水素により、使用する直前に調製されたエテノンを使用する場合、本発明による方法は、特に有利である。
【0108】
式Vのケテンは、任意の適した装置によって導入することができる。良好な分布及び速い混合が有利である。適した装置は、例えば、位置が固定されていてよいスパージングランス(sparging lances)、又は好ましくはノズルである。ノズルは、反応器の底部又はその近傍に設けることができる。この目的で、ノズルを、反応器を囲む中空チャンバーからの開口として構成してもよい。しかしながら、適した供給ラインを有する浸漬ノズルを使用することが好ましい。複数のノズルを、例えば、リング形状に配置することができる。ノズルは上方又は下方に向いていてよい。ノズルは、好ましくは斜め下方を向いている。
【0109】
式Vのケテンは、有利には、式I-Z及びI-Eの化合物又はそれらの塩の総量に対して、準化学量論量から最大で化学量論量までの量で使用することができる。式I-Zの化合物又はそれらの塩及び式I-Eの化合物又はそれらの塩の総量1mol当たり、0.05~0.8molの式Vのケテンを使用することが好ましい。式Vのケテンは、特に、化合物I-Z又はそれらの塩及び化合物I-E又はそれらの塩の総量1mol当たり、0.1~0.5molの量で使用される。
【0110】
本発明による方法における好ましい実施形態において、異性化は、上記のように、塩基及び有機酸の無水物の存在下で行う。
【0111】
本発明による方法は、無溶媒で、又は不活性溶媒若しくは希釈剤中のいずれかで行うことができる。適した希釈剤又は溶媒の例は、特に、脂肪族炭化水素、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、へプタン、オクタン;芳香族炭化水素、例えばトルエン、キシレン;ジアルキルエーテル、例えばメチルtert-ブチルエーテル及びジイソプロピルエーテルである。この方法を溶媒無しで行う場合、無水物及び/又は塩基が溶媒又は希釈剤として働くことができる。
【0112】
本発明による方法は、典型的に、20℃を超える反応温度で行われる。この方法は、好ましくは、60~175℃の範囲内、特に70~160℃の範囲内の温度で行われる。
【0113】
本発明による方法は、正圧、負圧、又は大気圧中で行うことができる。本発明による方法は、標準圧力における沸点が反応温度未満である塩基及び/又は無水物を使用する場合、圧力反応器中で行う。本発明による方法は、標準圧力における沸点が反応温度より高い塩基及び有機酸の無水物を使用する場合、典型的に、ガラス反応器又はガラス容器中で行う。
【0114】
本発明による方法は、標準圧力における沸点が反応温度未満である塩基及び/又はケテンを使用する場合、圧力反応器中で行う。
【0115】
本発明による方法は、好ましくは、1~25bar(0.1~2.5MPa)、好ましくは1.1~25bar(0.11~2.5MPa)の圧力で行う。
【0116】
特に、本発明による方法は、60~175℃の温度且つ1~25bar(0.1~2.5MPa)、例えば1.1~25bar(0.11~2.5MPa)の圧力中で行う。
【0117】
適した耐圧反応器は、当業者に知られており、例えば、Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry、1巻、第3版、1951,769頁以下に記載されている。本発明による方法にオートクレーブを使用することが有利であり得、オートクレーブは、所望の場合、攪拌装置及びインナーライニングを備えてもよい。
【0118】
70~160℃の範囲内の温度における反応時間は、典型的に、3~24時間の範囲内である。
【0119】
本発明による方法は、大気酸素若しくは一酸化炭素の存在下で、又は任意選択的に保護ガス雰囲気下で、行うことができる。
【0120】
本発明による方法は、有利には、遷移金属触媒の存在下及び有機酸無水物の存在下で、アリルアルコール又はアシル化アルコールのカルボニル化により、3-不飽和カルボン酸を調製するための条件下で行うこともできる。このような方法は、WO2018/153727に記載されている。
【0121】
本発明による方法は、上記のように少なくとも部分的に3-(E)異性体を分離した後、反復バッチプロセス又は連続プロセスとして行うことができる。
【0122】
得られた反応混合物は、副生成物を除去するために、例えば、水、酸、酸の水溶液、又は塩基の水溶液と混合し、相を分離し、任意選択的にクロマトグラフィーで又は蒸留により粗生成物を精製することにより、任意選択的に精製することができる。
【実施例
【0123】
本発明を、以下の実施例により、より詳細に説明する、
【0124】
HPLC-分析:
分光計:Agilentシリーズ1100
カラム:ダイセル(登録商標)のChiralpak AD-RH 5μm 150*4.6mm
溶離液:A:水中0.1vol%H3PO4
B:アセトニトリル中0.1vol%H3PO4
【0125】
【表1】
【0126】
# A+B=100%を基準とする
検出器:UV検出器λ=205nm、BW=5nm
流量:1.2mL/min
注入:5μL
温度:40℃
時間:45分
圧力:約70bar(7MPa)
【0127】
本明細書で以下に使用される次の略語は、以下の意味を有する:
ホモファルネシル酸:4,8,12,-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸。
3Z,7E-ホモファルネシル酸:(3Z,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸。
3E,7E-ホモファルネシル酸:(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸。
2E,7E-ホモファルネシル酸:(2E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-2,7,11-トリエン酸。
Ac2O:無水酢酸。
eq:当量。
【0128】
例1:ホモファルネシル酸を含む組成物の調製
スチールオートクレーブを、アルゴン下で、酢酸パラジウム(II)(46mg、0.2mmol)、トリフェニルホスフィン(120mg、0.46mmol)、及び4-ジメチルアミノピリジン(DMAP、56mg、0.46mmol)で満たした。(E)-ネロリドール(34g、152.6mmol)、トリエチルアミン(17g、167mmol)、及び無水酢酸(3.6g、35mmol)をアルゴン向流にて加えた。次いで、10bar(1MPa)のCOを適用し、混合物を、1000rpmにて、この圧力で、内部温度70℃で、24時間撹拌した。24時間後、混合物を室温に冷却し、脱圧した。反応生産物のGC分析は、(3E,7E)-ホモファルネシル酸、(2E,7E)-ホモファルネシル酸)、及び(3Z,7E)-ホモファルネシル酸生成物について81%の選択率で、95%の転化率を示した。
【0129】
反応が終了した後、粗生成物をクーゲルロール蒸留(1mbar(0.1kPa)、最大170℃まで)により精製した。これにより、97%の純度(GC)で、(3E,7E-ホモファルネシル酸及び2E,7E-ホモファルネシル酸):(3Z,7E-ホモファルネシル酸)の異性体比が64:36(GC)に等しい、23g(61%)のE/Z-ホモファルネシル酸を得た。
【0130】
得られた混合物をn-ヘプタン(100g)中に溶解し、イソプロパノール(10g)及びNovozym 435(0.5g)を添加し、混合物を60℃で約17時間撹拌した。次いで、酵素を濾別した。0℃の温度で、メタノール及び水を添加し、反応混合物のpHを12~13に、10℃未満の温度でNaOH水溶液を添加することによって調整した。相を分離させて、(3E,7E)-ホモファルネシル酸イソプロピルエステルを主な構成成分として含む有機相、及び3Z,7E-ホモファルネシル酸:3E,7E-ホモファルネシル酸:2E,7E-ホモファルネシル酸:その他の化合物を68%:14%:17%:1%の比(HPLC)で含む組成物を有する水相を得た。この組成物を、以下の実施例で用いた。
【0131】
例2:
スチールオートクレーブに、アルゴン下で、酢酸パラジウム(II)(22mg、0.098mmol)、トリフェニルホスフィン(58mg、0.22mmol)、及び4-ジメチルアミノピリジン(25mg、0.2mmol)を投入した。例1による(3E,7E)-ホモファルネシル酸、(2E,7E)-ホモファルネシル酸)、及び(3Z,7E)-ホモファルネシル酸を含む組成物(17.5g)、トリエチルアミン(8.1g、80mmol)、並びに無水酢酸(1.7g、17mmol)を、アルゴン向流にて加え、20bar(2MPa)のCOを適用した。次いで、混合物を、内部温度14O℃で14時間撹拌した(1000rpm)。圧力は、20bar(2MPa)に一定に保った。次いで、混合物を室温に冷却し、脱圧した。これにより、3Z,7E-ホモファルネシル酸:3E,7E-ホモファルネシル酸:2E,7E-ホモファルネシル酸:その他の化合物を22%:33%:21%:24%の比(HPLC)で含む組成物を得た。
【0132】
例3:
スチールオートクレーブに、例1による(3E,7E)-ホモファルネシル酸、(2E,7E)-ホモファルネシル酸)、及び(3Z,7E)-ホモファルネシル酸を含む組成物(35g)、トリエチルアミン(16g、158mmol)、並びに無水酢酸(3.4g、33mmol)を、20bar(2MPa)のCO下で投入した。混合物を、内部温度14O℃で14時間撹拌した(1000rpm)。次いで、混合物を室温に冷却し、脱圧した。得られた組成物は、3Z,7E-ホモファルネシル酸:3E,7E-ホモファルネシル酸:2E,7E-ホモファルネシル酸:その他の化合物を22%:34%:21%:23%の比(HPLCによる)で含んでいた。
【0133】
例4a:3bar(0.3MPa)の窒素における、トリエチルアミンを塩基として用いた、混合物の異性化
スチールオートクレーブに、例1による(3E,7E)-ホモファルネシル酸、(2E,7E)-ホモファルネシル酸)、及び(3Z,7E)-ホモファルネシル酸を含む組成物(17.5g)、トリエチルアミン(8g、79mmol)、並びに無水酢酸(1.7g、16mmol)を、3bar(0.3MPa)の窒素下で投入した。混合物を、内部温度14O℃で14時間撹拌した(1000rpm)。次いで、混合物を室温に冷却し、脱圧した。得られた組成物は、3Z,7E-ホモファルネシル酸:3E,7E-ホモファルネシル酸:2E,7E-ホモファルネシル酸:その他の化合物を20%:29%:23%:28%の比(HPLCによる)で含んでいた。
【0134】
例4b:3bar(0.3MPa)の窒素における、ジイソプロピルエチルアミンを塩基として用いた、混合物の異性化
スチールオートクレーブに、例1による(3E,7E)-ホモファルネシル酸、(2E,7E)-ホモファルネシル酸)、及び(3Z,7E)-ホモファルネシル酸を含む組成物(17.5g)、ジイソプロピルエチルアミン(10g、78mmol)、並びに無水酢酸(1.7g、16mmol)を、3bar(0.3MPa)の窒素下で投入した。混合物を、内部温度14O℃で14時間撹拌した(1000rpm)。次いで、混合物を室温に冷却し、脱圧した。得られた組成物は、3Z,7E-ホモファルネシル酸:3E,7E-ホモファルネシル酸:2E,7E-ホモファルネシル酸:その他の化合物を22%:31%:24%:23%の比(HPLCによる)で含んでいた。
【0135】
例4c:3bar(0.3MPa)の窒素における、N-エチルピペリジンを塩基として用いた、140℃における混合物の異性化
スチールオートクレーブに、例1による(3E,7E)-ホモファルネシル酸、(2E,7E)-ホモファルネシル酸)、及び(3Z,7E)-ホモファルネシル酸を含む組成物(17.5g)、N-エチルピペリジン(9g、79mmol)、並びに無水酢酸(1.7g、16mmol)を、3bar(0.3MPa)の窒素下で投入した。混合物を、内部温度14O℃で14時間撹拌した(1000rpm)。次いで、混合物を室温に冷却し、脱圧した。得られた組成物は、3Z,7E-ホモファルネシル酸:3E,7E-ホモファルネシル酸:2E,7E-ホモファルネシル酸:その他の化合物を22%:33%:23%:22%の比(HPLCによる)で含んでいた。
【0136】
例4d:3bar(0.3MPa)の窒素における、N-エチルピペリジンを塩基として用いた、120℃における混合物の異性化
スチールオートクレーブに、例1による(3E,7E)-ホモファルネシル酸、(2E,7E)-ホモファルネシル酸)、及び(3Z,7E)-ホモファルネシル酸を含む組成物(17.5g)、N-エチルピペリジン(9g、79mmol)、並びに無水酢酸(1.7g、16mmol)を、3bar(0.3MPa)の窒素下で投入した。混合物を、内部温度12O℃で14時間撹拌した(1000rpm)。次いで、混合物を室温に冷却し、脱圧した。得られた組成物は、3Z,7E-ホモファルネシル酸:3E,7E-ホモファルネシル酸:2E,7E-ホモファルネシル酸:その他の化合物を24%:35%:26%:15%の比(HPLCによる)で含んでいた。
【0137】
例4e:3bar(0.3MPa)の窒素における、N-エチルピペリジンを塩基として用いた、100℃における混合物の異性化
スチールオートクレーブに、例1による(3E,7E)-ホモファルネシル酸、(2E,7E)-ホモファルネシル酸)、及び(3Z,7E)-ホモファルネシル酸を含む組成物(17.5g)、N-エチルピペリジン(9g、79mmol)、並びに無水酢酸(1.7g、16mmol)を、3bar(0.3MPa)の窒素下で投入した。混合物を、内部温度10O℃で14時間撹拌した(1000rpm)。次いで、混合物を室温に冷却し、脱圧した。得られた組成物は、3Z,7E-ホモファルネシル酸:3E,7E-ホモファルネシル酸:2E,7E-ホモファルネシル酸:その他の化合物を29%:32%:26%:13%の比(HPLCによる)で含んでいた。
【0138】
例4f1~4f4:N-エチルピペリジンを塩基として用いた、異なる濃度における、及び溶媒キシレンの存在下又は非存在下における、混合物の異性化
例4f1~4f4の典型的な実験手順を、以下に、例えば4f1に記載する。
【0139】
例4f1:
閉鎖した25mLのガラスフラスコに、例1による(3E,7E)-ホモファルネシル酸、(2E,7E)-ホモファルネシル酸)、及び(3Z,7E)-ホモファルネシル酸を含む組成物(5.0g)、N-エチルピペリジン(2.5g、22mmol=1.5eq)、並びに無水酢酸(0.5g、4.9mmol)を投入した。混合物を、下記表1に示した特定の内部温度で加熱し、14時間撹拌した。次いで、混合物を室温に冷却した。得られた組成物は、3E,7E-ホモファルネシル酸:3Z,7E-ホモファルネシル酸:2E,7E-ホモファルネシル酸:その他の化合物を32%:22%:23%:23%の比(HPLCによる)で含んでいた。
【0140】
例4f2~4f4は、N-エチルピペリジンの濃度及び/又は内部温度を下記表1に示したように変更したこと以外は例4f1と同様に行った。また、例4f2及び4f3は、下記表1に示したように、溶媒の存在下で行った。
【0141】
【表2】
【0142】
例5:
スチールオートクレーブに、例1による(3E,7E)-ホモファルネシル酸、(2E,7E)-ホモファルネシル酸)、及び(3Z,7E)-ホモファルネシル酸を含む組成物(17.5g)、トリエチルアミン(8g、79mmol)、並びに無水酢酸(0.5g、5mmol)を、20bar(2MPa)のCO下で投入した。混合物を、内部温度14O℃で14時間撹拌した(1000rpm)。次いで、混合物を室温に冷却し、脱圧した。得られた組成物は、3Z,7E-ホモファルネシル酸:3E,7E-ホモファルネシル酸:2E,7E-ホモファルネシル酸:その他の化合物を28%:29%:27%:16%の比(HPLCによる)で含んでいた。
【0143】
例6:
スチールオートクレーブに、例1による(3E,7E)-ホモファルネシル酸、(2E,7E)-ホモファルネシル酸)、及び(3Z,7E)-ホモファルネシル酸を含む組成物(17.5g)、トリエチルアミン(1g、9.9mmol)、並びに無水酢酸(1.7g、16mmol)を、20bar(2MPa)のCO下で投入した。混合物を、内部温度14O℃で14時間撹拌した(1000rpm)。次いで、混合物を室温に冷却し、脱圧した。得られた組成物は、3Z,7E-ホモファルネシル酸:3E,7E-ホモファルネシル酸:2E,7E-ホモファルネシル酸:その他の化合物を20%:22%:25%:33%の比(HPLCによる)で含んでいた。
【0144】
例7:
スチールオートクレーブに、例1による(3E,7E)-ホモファルネシル酸、(2E,7E)-ホモファルネシル酸)、及び(3Z,7E)-ホモファルネシル酸を含む組成物(17.5g)、トリエチルアミン(8.1g、80mmol)、並びに無水酢酸(1.7g、17mmol)を、20bar(2MPa)のCO下で投入した。混合物を、圧力を20bar(2MPa)に一定に保ちながら、内部温度10O℃で14時間撹拌した(1000rpm)。次いで、混合物を室温に冷却し、脱圧した。得られた組成物は、3Z,7E-ホモファルネシル酸:3E,7E-ホモファルネシル酸:2E,7E-ホモファルネシル酸:その他の化合物を20%:22%:26%:32%の比(HPLCによる)で含んでいた。
【0145】
例8:無水物無しでの混合物の異性化
スチールオートクレーブに、例1による(3E,7E)-ホモファルネシル酸、(2E,7E)-ホモファルネシル酸)、及び(3Z,7E)-ホモファルネシル酸を含む組成物(17.5g)、並びにトリエチルアミン(8g、79mmol)を、20bar(2MPa)のCO下で投入した。混合物を、内部温度14O℃で14時間撹拌した(1000rpm)。次いで、混合物を室温に冷却し、脱圧した。得られた組成物は、3Z,7E-ホモファルネシル酸:3E,7E-ホモファルネシル酸:2E,7E-ホモファルネシル酸:その他の化合物を42%:7%:19%:30%の比(HPLCによる)で含んでいた。
【0146】
例9:無水酢酸の代わりに酢酸の存在下での異性化
スチールオートクレーブに、例1による(3E,7E)-ホモファルネシル酸、(2E,7E)-ホモファルネシル酸)、及び(3Z,7E)-ホモファルネシル酸を含む組成物(17.5g)、トリエチルアミン(8g、79mmol)、並びに酢酸(1g、16.6mmol)を、3bar(0.3MPa)の窒素下で投入した。混合物を、内部温度14O℃で14時間撹拌した(1000rpm)。次いで、混合物を室温に冷却し、脱圧した。得られた組成物は、3Z,7E-ホモファルネシル酸:3E,7E-ホモファルネシル酸:2E,7E-ホモファルネシル酸:その他の化合物を44%:18%:23%:15%の比(HPLCによる)で含んでいた。
【0147】
例10:純粋に熱的な手段の比較例
スチールオートクレーブに、例1による(3E,7E)-ホモファルネシル酸、(2E,7E)-ホモファルネシル酸)、及び(3Z,7E)-ホモファルネシル酸を含む組成物(17.5g)を投入し、組成物を、内部温度14O℃で24時間撹拌した(1000rpm)。次いで、混合物を室温に冷却し、脱圧した。出発混合物の組成物中で使用した3Z,7E-ホモファルネシル酸:3E,7E-ホモファルネシル酸:2E,7E-ホモファルネシル酸:その他の化合物の比は、変化しないままであった。
本開示の態様として、以下のものを挙げることができる。
[1]
式I-Z
【化20】
(式中、
R 1 は、水素、直鎖若しくは分枝C 1 -C 24 -アルキル、1個、2個、3個、若しくは3個超のC-C二重結合を有する直鎖若しくは分枝C 2 -C 24 -アルケニル、非置換C 5 -C 12 -シクロアルキル、若しくは1個、2個、若しくは3個のC 1 -C 6 -アルキル基で置換されたC 5 -C 12 -シクロアルキル、又は非置換C 6 -C 20 -アリール、若しくは1個、2個、若しくは3個のC 1 -C 6 -アルキル基で置換されたC 6 -C 20 -アリールであり、
R 2 は、直鎖若しくは分枝C 1 -C 24 -アルキル、1個、2個、3個、若しくは3個超のC-C二重結合を有する直鎖若しくは分枝C 2 -C 24 -アルケニル、非置換C 5 -C 12 -シクロアルキル、若しくは1個、2個、若しくは3個のC 1 -C 6 -アルキル基で置換されたC 5 -C 12 -シクロアルキル、又は非置換C 6 -C 20 -アリール、若しくは1個、2個、若しくは3個のC 1 -C 6 -アルキル基で置換されたC 6 -C 20 -アリールであり、
ただし、R 2 は、IUPACによれば、R 1 よりも高い優先度を有する)
の3-(Z)-不飽和カルボン酸又はそれらの塩を異性化して、式I-E
【化21】
の3-(E)-不飽和カルボン酸、又はそれらの塩を得る方法であって、
式I-Zの化合物若しくはそれらの塩の異性化を、有機酸の無水物及び塩基の存在下で行うか、又は、
式I-Zの化合物若しくはそれらの塩の異性化を、塩基及び式V
【化22】
(式中、
R 11 及びR 12 は、互いに独立して、水素、直鎖若しくは分枝C 1 -C 24 -アルキル、非置換C 5 -C 12 -シクロアルキル、若しくは1個、2個、若しくは3個のC 1 -C 6 -アルキル基で置換されたC 5 -C 12 -シクロアルキル、又は非置換C 6 -C 14 -アリール、若しくは1個、2個、若しくは3個のC 1 -C 6 -アルキル基で置換されたC 6 -C 14 -アリールから選択される)
のケテンの存在下で行う、方法。
[2]
式I-Zの化合物又はそれらの塩の異性化を、有機酸の無水物及び塩基の存在下で行う、態様1に記載の方法。
[3]
式I-Zの化合物又はそれらの塩、及び式I-Eの化合物又はそれらの塩を含む組成物を使用し、式I-Zの化合物又はそれらの塩を、式I-Eの化合物又はそれらの塩に異性化し、式I-Eの化合物の含有量が、使用した組成物中の化合物I-Eの含有量と比べて増加した組成物を得る、態様1又は2に記載の方法。
[4]
使用される組成物中の化合物I-Z又はそれらの塩と化合物I-E又はそれらの塩の重量比が、50:50より大きく、好ましくは85:15より大きい、態様2又は3に記載の方法。
[5]
使用される組成物が、式I-Zの化合物として、(3Z,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸を含み、式I-Eの化合物として、(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸を含む、態様3又は4に記載の方法。
[6]
(a)(3Z,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸、及び(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸を含む第1の組成物を用意するステップと、
(b)ステップ(a)からの第1の組成物を、アルコール及びリパーゼ酵素の存在下で酵素触媒エステル化に供し、(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸エステル、未反応の(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸、及び未反応の(3Z,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸を含む組成物を得るステップと、(c)ステップ(b)で得られた組成物から、(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸エステルを含む組成物を分離し、(3Z,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸及び(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸を含む第2の組成物を得るステップであって、ここで、第2の組成物中の(3Z,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸の含有量が、ステップ(a)で用意した第1の組成物と比べて増加している、ステップと、
を含む方法により得られた組成物が異性化に使用される、態様5に記載の方法。
[7]
使用される組成物が、以下:
(d)(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸エステル、及び(3Z,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸エステルを含む組成物を用意するステップと、
(e)ステップ(d)で用意した組成物を、リパーゼ酵素の存在下で酵素触媒エステル開裂に供して、(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸、未反応の(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸エステル、及び未反応の(3Z,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸エステルを含む組成物を得るステップと、
(f)ステップ(e)で得られた組成物から、(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸を含む組成物を分離し、(3Z,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸エステル、及び(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸エステルを含む組成物を得るステップと、
(g)ステップ(f)で得られた、(3Z,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸エステル及び(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸エステルを含む組成物を、エステル開裂に供し、(3Z,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸又はそれらの塩、及び(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸又はそれらの塩を含む組成物を得るステップと、
を含む方法により得られる、態様5に記載の方法。
[8]
異性化に使用される組成物が、(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸又はそれらの塩と、(3Z,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン酸又はそれらの塩を、1:99~50:50の重量比で含む、態様5~7のいずれか一つに記載の方法。
[9]
60~175℃、好ましくは70~160℃の範囲内の温度で行われる、態様1~8のいずれか一つに記載の方法。
[10]
塩基が、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、アルカリ土類金属炭酸水素塩、アルカリ金属リン酸塩、アルカリ土類金属リン酸塩、アミン、塩基性N-複素芳香族系、塩基性イオン交換体、及びそれらの混合物から選択される、態様1~9のいずれか一つに記載の方法。
[11]
塩基が、トリメチルアミン、ジメチルアミン、モノメチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルアミン、モノエチルアミン、トリプロピルアミン、ジプロピルアミン、トリブチルアミン、ジブチルアミン、トリヘキシルアミン、ジヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、モルホリン、ピペリジン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、N-エチルピペリジン、又はそれらの混合物から選択されるアミンである、態様10に記載の方法。
[12]
式I-Zの化合物又はそれらの塩及び式I-Eの化合物又はそれらの塩1mol当たり、0.1~5molの塩基を使用する、態様1~11のいずれか一つに記載の方法。
[13]
無水物が、脂肪族C 1 -C 12 -モノカルボン酸の無水物、脂肪族C 4 -C 20 -ジカルボン酸の無水物、脂環式C 7 -C 20 -ジカルボン酸の無水物、芳香族C 8 -C 20 -ジカルボン酸の無水物、脂肪族スルホン酸の無水物、及び芳香族スルホン酸の無水物から選択され、好ましくは、無水物が、無水酢酸、無水マレイン酸、p-トルエンスルホン酸無水物、又はメタンスルホン酸無水物から選択される、態様1~12のいずれか一つに記載の方法。
[14]
化合物I-Z又はそれらの塩及び化合物I-E又はそれらの塩1mol当たり、0.05~0.8molの無水物を使用し、好ましくは、化合物I-Z又はそれらの塩及び化合物I-E又はそれらの塩1mol当たり、0.1~0.5molの無水物を使用する、態様1~13のいずれか一つに記載の方法。
[15]
式Vの化合物において、R 11 及びR 12 が、互いに独立して、水素、C 1 -C 10 -アルキル、又は1個、2個、若しくは3個の二重結合を有するC 10 -C 18 -アルケニルから選択され、好ましくは、R 11 及びR 12 がいずれも水素であるか、又は、R 11 が水素で且つR 12 が2,6,10-トリメチルウンデカ-1,5,9-トリエニルである、態様1~12のいずれか一つに記載の方法。