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特許7365025化合物及びその製造方法並びにその化合物を用いた有機半導体材料
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  • 特許-化合物及びその製造方法並びにその化合物を用いた有機半導体材料 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-11
(45)【発行日】2023-10-19
(54)【発明の名称】化合物及びその製造方法並びにその化合物を用いた有機半導体材料
(51)【国際特許分類】
   C07D 513/22 20060101AFI20231012BHJP
   C07D 495/22 20060101ALI20231012BHJP
   C07D 498/22 20060101ALI20231012BHJP
   C07D 517/22 20060101ALI20231012BHJP
   C07F 7/10 20060101ALI20231012BHJP
   C07F 7/12 20060101ALI20231012BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20231012BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20231012BHJP
【FI】
C07D513/22 CSP
C07D495/22
C07D498/22
C07D517/22
C07F7/10 V
C07F7/12 V
H01L29/78 618B
C07B61/00 300
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020553839
(86)(22)【出願日】2019-10-25
(86)【国際出願番号】 JP2019041840
(87)【国際公開番号】W WO2020090636
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2022-05-18
(31)【優先権主張番号】P 2018203735
(32)【優先日】2018-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000000354
【氏名又は名称】石原産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】家 裕隆
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 卓司
(72)【発明者】
【氏名】チャタジー シュレーヤム
(72)【発明者】
【氏名】森山 太一
(72)【発明者】
【氏名】工藤 俊
【審査官】谷尾 忍
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/123207(WO,A1)
【文献】特開2013-131716(JP,A)
【文献】国際公開第2015/133471(WO,A1)
【文献】特開2017-066069(JP,A)
【文献】SOLEIMAN, H. A.,Synthesis of polyfused heterocyclic compounds via reactivity 1,4-naphthoquinone,Organic Chemistry: An Indian Journal,2012年,8(8),pp.307-310
【文献】FILE REGISTRY ON STN, RN 1805797-56-1, Entered STN: 11 Sep 2015
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 495/22
C07D 498/22
C07D 513/22
C07D 517/22
C07F 7/10
C07F 7/12
H10K 10/40
H10K 85/60
H01L 29/786
C07B 61/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1):
【化1】
(一般式(1)中、A及びAは互いに独立して、CM又はNであり、Mは、水素原子、ハロゲン原子、Zで置換されていてもよいアルキル基、シアノ基、Zで置換されていてもよいアルコキシ基、Zで置換されていてもよいアルキルチオ基、Zで置換されていてもよいアルコキシカルボニル基、Zで置換されていてもよいアルキルカルボニル基、又は、Zで置換されていてもよいアリール基であり;
及びQは互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、Zで置換されていてもよいアリール基、Zで置換されていてもよい複素環基、ホルミル基、ボロン酸基、ボロン酸エステル基、ボロン酸ジアミノナフタレンアミド基、ボロン酸N-メチルイミノ二酢酸エステル基、トリフルオロボレート塩基、トリオールボレート塩基、トリアルキルシリル基、又はトリアルキルスタニル基であり;
及びXは互いに独立して、下式で表される基
【化2】
であり、M~Mは互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、Zで置換されていてもよいアルキル基、Zで置換されていてもよいアルコキシ基、Zで置換されていてもよいアルキルエステル基、Zで置換されていてもよいアルコキシカルボニル基、Zで置換されていてもよいアルキルアミノカルボニル基、Zで置換されていてもよいアシル基、Zで置換されていてもよいアミノ基、Zで置換されていてもよいアシルアミノ基、Zで置換されていてもよいアリールオキシ基、Zで置換されていてもよいアリールオキシカルボニル基、Zで置換されていてもよいアシルオキシ基、Zで置換されていてもよいアルコキシカルボニルアミノ基、Zで置換されていてもよいアリールオキシカルボニルアミノ基、Zで置換されていてもよいアルキルチオ基、Zで置換されていてもよいアリールチオ基、Zで置換されていてもよいアリール基、又は、Zで置換されていてもよい複素環基であり;
Zはアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、アルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、シリル基、スルホニル基、スルフィニル基、ウレイド基、リン酸アミド基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、メルカプト基、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、又はイミノ基である)
で表される化合物。
【請求項2】
一般式(2-1):
【化3】
(一般式(2-1)中、A、A、D、D、G及びGは互いに独立して、CM又はNであり、
は、水素原子、ハロゲン原子、Zで置換されていてもよいアルキル基、シアノ基、Zで置換されていてもよいアルコキシ基、Zで置換されていてもよいアルキルチオ基、Zで置換されていてもよいアルコキシカルボニル基、Zで置換されていてもよいアルキルカルボニル基、又は、Zで置換されていてもよいアリール基であり;
及びXは互いに独立して、下式で表される基
【化4】
であり、M~Mは互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、Zで置換されていてもよいアルキル基、Zで置換されていてもよいアルコキシ基、Zで置換されていてもよいアルキルエステル基、Zで置換されていてもよいアルコキシカルボニル基、Zで置換されていてもよいアルキルアミノカルボニル基、Zで置換されていてもよいアシル基、Zで置換されていてもよいアミノ基、Zで置換されていてもよいアシルアミノ基、Zで置換されていてもよいアリールオキシ基、Zで置換されていてもよいアリールオキシカルボニル基、Zで置換されていてもよいアシルオキシ基、Zで置換されていてもよいアルコキシカルボニルアミノ基、Zで置換されていてもよいアリールオキシカルボニルアミノ基、Zで置換されていてもよいアルキルチオ基、Zで置換されていてもよいアリールチオ基、Zで置換されていてもよいアリール基、又は、Zで置換されていてもよい複素環基であり;
Zはアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、アルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、シリル基、スルホニル基、スルフィニル基、ウレイド基、リン酸アミド基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、メルカプト基、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、又はイミノ基であり;
m及びnは互いに独立して、0又は1であり;
及びTは互いに独立して、下式で表される基
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
であり、R~Rは互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、又はアリール基であり、*は結合手を表す)
で表される化合物。
【請求項3】
一般式(2-2):
【化9】
(一般式(2-2)中、A、A、T、T、X、Xは、請求項2に定義される基と同様であり;
m及びnは、請求項2に定義される数と同様であり;
~Mは互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、又はアリール基である)
で表される請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の化合物を含有する有機半導体材料。
【請求項5】
請求項4に記載の有機半導体材料を含有する有機半導体デバイス。
【請求項6】
下記(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、又は(6)の何れかの方法による、一般式(1):
【化10】
(一般式(1)中、A及びAは互いに独立して、CM又はNであり、Mは、水素原子、ハロゲン原子、Zで置換されていてもよいアルキル基、シアノ基、Zで置換されていてもよいアルコキシ基、Zで置換されていてもよいアルキルチオ基、Zで置換されていてもよいアルコキシカルボニル基、Zで置換されていてもよいアルキルカルボニル基、又は、Zで置換されていてもよいアリール基であり;
及びQは互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、Zで置換されていてもよいアリール基、Zで置換されていてもよい複素環基、ホルミル基、ボロン酸基、ボロン酸エステル基、ボロン酸ジアミノナフタレンアミド基、ボロン酸N-メチルイミノ二酢酸エステル基、トリフルオロボレート塩基、トリオールボレート塩基、トリアルキルシリル基、又はトリアルキルスタニル基であり;
及びXは互いに独立して、下式で表される基
【化11】
であり、M~Mは互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、Zで置換されていてもよいアルキル基、Zで置換されていてもよいアルコキシ基、Zで置換されていてもよいアルキルエステル基、Zで置換されていてもよいアルコキシカルボニル基、Zで置換されていてもよいアルキルアミノカルボニル基、Zで置換されていてもよいアシル基、Zで置換されていてもよいアミノ基、Zで置換されていてもよいアシルアミノ基、Zで置換されていてもよいアリールオキシ基、Zで置換されていてもよいアリールオキシカルボニル基、Zで置換されていてもよいアシルオキシ基、Zで置換されていてもよいアルコキシカルボニルアミノ基、Zで置換されていてもよいアリールオキシカルボニルアミノ基、Zで置換されていてもよいアルキルチオ基、Zで置換されていてもよいアリールチオ基、Zで置換されていてもよいアリール基、又は、Zで置換されていてもよい複素環基であり;
Zはアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、アルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、シリル基、スルホニル基、スルフィニル基、ウレイド基、リン酸アミド基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、メルカプト基、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、又はイミノ基である)
で表される化合物の製造方法;
(1)(i)一般式(A5):
【化12】
(一般式(A5)中、Halは互いに独立して、ハロゲン原子であり;
及びXは、前述の通りである)
で表される化合物とトリアルキルシリルアセチレンとを反応させて、一般式(A6):
【化13】
(一般式(A6)中、TASはトリアルキルシリル基であり;
及びXは、前述の通りである)
で表される化合物を製造する第1a工程、
(ii)第1a工程で得た一般式(A6)の化合物と硫化剤とを反応させ、一般式(A7):
【化14】
(一般式(A7)中、TAS、X及びXは、前述の通りであり;
10及びR11は互いに独立して、Zで置換されていてもよいアルキル基であり;
Zは前述の通りである)
で表される化合物を製造する第2a工程、及び、
(iii)第2a工程で得た一般式(A7)の化合物とハロゲン化剤とを反応させ、一般式(1-1):
【化15】
(一般式(1-1)中、TAS、Hal、X及びXは、前述の通りである)
で表される化合物を製造する第3a工程を含む、上記一般式(1)に包含される上記一般式(1-1)で表される化合物の製造方法;
(2)上記第3a工程で得た一般式(1-1)の化合物とホウ素化合物とを反応させて、一般式(1-2):
【化16】
(一般式(1-2)中、TAS、M、X及びXは、前述の通りである)
で表される化合物を製造する第4a工程を含む、上記一般式(1)に包含される上記一般式(1-2)で表される化合物の製造方法;
(3)上記第4a工程で得た一般式(1-2)の化合物とハロゲン化剤とを反応させて、一般式(1-3):
【化17】
(一般式(1-3)中、M、X及びXは、前述の通りであり;
1a及びQ2aは互いに独立して、ハロゲン原子である)
で表される化合物を製造する第5a工程を含む、上記一般式(1)に包含される上記一般式(1-3)で表される化合物の製造方法;
(4)上記一般式(1-3)の化合物と、ホウ素化合物又はスズ化合物とを反応させて、一般式(1-4):
【化18】
(一般式(1-4)中、M、X及びXは、前述の通りであり;
1b及びQ2bは互いに独立して、水素原子、Zで置換されていてもよいアリール基、Zで置換されていてもよい複素環基、ボロン酸基、ボロン酸エステル基、ボロン酸ジアミノナフタレンアミド基、ボロン酸N-メチルイミノ二酢酸エステル基、トリフルオロボレート塩基、トリオールボレート塩基、トリアルキルシリル基、又はトリアルキルスタニル基である)
を製造する第6a工程を含む、上記一般式(1)に包含される上記一般式(1-4)で表される化合物の製造方法;
(5)上記一般式(1-4)の化合物と、上記一般式(1-4)の化合物のQ 1b 及びQ 2b をホルミル化する試薬とを反応させて、上記一般式(1)に包含される下記一般式(1-5):
【化19】
(一般式(1-5)中、M、X及びXは、前述の通りであり;Q1c及びQ2cは互いに独立して、ホルミル基である)で表される化合物の製造方法;
(6)(i)一般式(A9):
【化20】
(一般式(A9)中、X及びXは、前述の通りである)
で表される化合物とハロゲン化剤とを反応させて、一般式(A10):
【化21】
(一般式(A10)中、X、X及びHalは、前述の通りである)
で表される化合物を製造する第1b工程、
(ii)第1b工程で得た一般式(A10)の化合物とアミノ化剤とを反応させて、一般式(A11):
【化22】
(一般式(A11)中、X及びXは、前述の通りである)
で表される化合物を製造する第2b工程、
(iii)第2b工程で得た一般式(A11)の化合物と、Q-COClで表される化合物(Qは、前述の通りである)及びQ-COClで表される化合物(Qは、
前述の通りである)とを反応させて、一般式(A12):
【化23】
(一般式(A12)中、X、X、Q及びQは、前述の通りである)
で表される化合物を製造する第3b工程、及び、
(iv)第3b工程で得た一般式(A12)の化合物と硫化剤とを反応させて、一般式(1-6):
【化24】
(一般式(1-6)中、X、X、Q及びQは、前述の通りである)
で表される化合物を製造する第4b工程を含む、上記一般式(1)に包含される上記一般式(1-6)で表される化合物の製造方法。
【請求項7】
請求項1に記載の一般式(1)で表される化合物中のQ及びQとして、下式で表される基を導入することを特徴とする、請求項2に記載の一般式(2-1)で表される化合物の製造方法であり、下記(1)、(2)及び(3)の工程を含む、製造方法
【化25】
(上記式中、T 、T は、請求項2に定義される基と同様であり、D 、G 、D 、G は、後述の一般式(iv)中のD 及びG と、一般式(v)中のD 及びG と同様の基であり、m及びnは、請求項2に定義される数と同様である)
(1)前記一般式(1)で表される化合物と、
一般式(iv):
【化26】
(一般式(iv)中、D 及びG は互いに独立して、CM 又はNであり、M は、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、Zで置換されていてもよいアルキル基、又はZで置換されていてもよいアルコキシ基である。Zは請求項1に定義される通りである。)で表される化合物及び
一般式(v):
【化27】
(一般式(v)中、D 及びG は互いに独立して、CM 又はNであり、M は、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、Zで置換されていてもよいアルキル基、又はZで置換されていてもよいアルコキシ基である。Zは前述の通りである。)で表される化合物とを反応させて、
一般式(A13):
【化28】
(一般式(A13)中、A 、A 、X 、X 、m、nは、請求項2に定義される基と同様であり;D 、G 、D 、G は、前述の通りである。)
で表される化合物を製造する工程;
(2)上記一般式(A13)の化合物と、ホルミル化する試薬とを反応させて
一般式(A14):
【化29】
(一般式(A14)中、A 、A 、X 、X 、m、n、D 、G 、D 、G は、前述の通りである。)
で表される化合物を製造する工程;
(3)上記一般式(A14)の化合物から前記一般式(2-1)で表される化合物を製造する工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体特性を有する化合物及びその製造方法、その中間体化合物及びその製造方法、並びにその化合物を用いた有機半導体材料、有機半導体デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体特性を有する化合物として、例えば、ナフトビスチアジアゾール(以下、「NTz」と称する場合がある)は、電子不足(アクセプタ性、又はn型半導体特性)の有機半導体骨格として広く用いられている。このNTz骨格の3位又は7位に芳香環や複素芳香環等のπ骨格を結合して共役拡張することで様々な材料展開が可能であり、NTz骨格を単結合で連結し、オリゴマーやポリマーの共役系に組み込んだ化合物をn型半導体、p型半導体、両性半導体に用いることが報告されている(例えば、特許文献1、非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本国公開特許公報「特開2013-131716号公報」
【非特許文献】
【0004】
【文献】Itaru Osaka, Kazuo Takimiya, Advanced Materials, 2017, 1605218.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記NTz骨格を分子構造中に含む化合物において、良好な半導体特性を有する化合物が見出されているものの、光電変換効率や電荷移動度等をより一層向上させる等、更なる半導体特性の改善が望まれている。
【0006】
本発明の一態様は、優れた半導体特性を有する化合物及びその製造方法、その中間体化合物及びその製造方法、並びにその化合物を用いた有機半導体材料、有機半導体デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、NTz骨格を分子構造中に含む化合物において、平面性の向上やアクセプタ性の向上をもたらす縮環構造の導入を鋭意研究したところ、NTz骨格にチオフェン環、チアゾール環等の5員環の複素芳香環を縮環させることにより、平面性に優れ、共役拡張が可能となってアクセプタ性が向上して、優れた半導体特性を有することを見出し、本発明を完成した。
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様に係る化合物は、一般式(1)で表されることを特徴とする。
【0009】
【化1】
(一般式(1)中、A及びAは互いに独立して、CM又はNであり、Mは、水素原子、ハロゲン原子、Zで置換されていてもよいアルキル基、シアノ基、Zで置換されていてもよいアルコキシ基、Zで置換されていてもよいアルキルチオ基、Zで置換されていてもよいアルコキシカルボニル基、Zで置換されていてもよいアルキルカルボニル基、又は、Zで置換されていてもよいアリール基であり;
及びQは互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、Zで置換されていてもよいアリール基、Zで置換されていてもよい複素環基、ホルミル基、ボロン酸基、ボロン酸エステル基、ボロン酸ジアミノナフタレンアミド基、ボロン酸N-メチルイミノ二酢酸エステル基、トリフルオロボレート塩基、トリオールボレート塩基、トリアルキルシリル基、又はトリアルキルスタニル基であり;
及びXは互いに独立して、
【0010】
【化2】
であり、M~Mは互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、Zで置換されていてもよいアルキル基、Zで置換されていてもよいアルコキシ基、Zで置換されていてもよいアルキルエステル基、Zで置換されていてもよいアルコキシカルボニル基、Zで置換されていてもよいアルキルアミノカルボニル基、Zで置換されていてもよいアシル基、Zで置換されていてもよいアミノ基、Zで置換されていてもよいアシルアミノ基、Zで置換されていてもよいアリールオキシ基、Zで置換されていてもよいアリールオキシカルボニル基、Zで置換されていてもよいアシルオキシ基、Zで置換されていてもよいアルコキシカルボニルアミノ基、Zで置換されていてもよいアリールオキシカルボニルアミノ基、Zで置換されていてもよいアルキルチオ基、Zで置換されていてもよいアリールチオ基、Zで置換されていてもよいアリール基、又は、Zで置換されていてもよい複素環基であり、M及びMは一緒になって環を形成していてもよく;Zはアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、アルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、シリル基、スルホニル基、スルフィニル基、ウレイド基、リン酸アミド基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、メルカプト基、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、又はイミノ基である)。
【0011】
また、上記一般式(1)において、
が、水素原子、ハロゲン原子、Zで置換されていてもよいアルキル基、シアノ基、又は、Zで置換されていてもよいアルコキシ基であり;
~Mが互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、Zで置換されていてもよいアルキル基、Zで置換されていてもよいアルコキシ基、Zで置換されていてもよいアルキルエステル基、Zで置換されていてもよいアルコキシカルボニル基、Zで置換されていてもよいアルキルアミノカルボニル基、Zで置換されていてもよいアシル基、Zで置換されていてもよいアミノ基、Zで置換されていてもよいアシルアミノ基、Zで置換されていてもよいアリール基、又は、Zで置換されていてもよい複素環基であり、M及びMがアルキル基又はアリール基である場合には、互いに結合して環を形成していてもよい場合の化合物も、本発明の第1の態様に係る化合物の一つである。
【0012】
本発明の第2の態様に係る化合物は、一般式(2)で表されることを特徴とする。
【0013】
【化3】
(一般式(2)中、A及びAは互いに独立して、CM又はNであり、Mは、水素原子、ハロゲン原子、Zで置換されていてもよいアルキル基、シアノ基、Zで置換されていてもよいアルコキシ基、Zで置換されていてもよいアルキルチオ基 、Zで置換されていてもよいアルコキシカルボニル基、Zで置換されていてもよいアルキルカルボニル基、又は、Zで置換されていてもよいアリール基であり;
及びJは互いに独立して、電子供与性又は電子受容性を付与する骨格であり;
及びXは互いに独立して、
【0014】
【化4】
であり、M~Mは互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、Zで置換されていてもよいアルキル基、Zで置換されていてもよいアルコキシ基、Zで置換されていてもよいアルキルエステル基、Zで置換されていてもよいアルコキシカルボニル基、Zで置換されていてもよいアルキルアミノカルボニル基、Zで置換されていてもよいアシル基、Zで置換されていてもよいアミノ基、Zで置換されていてもよいアシルアミノ基、Zで置換されていてもよいアリールオキシ基、Zで置換されていてもよいアリールオキシカルボニル基、Zで置換されていてもよいアシルオキシ基、Zで置換されていてもよいアルコキシカルボニルアミノ基、Zで置換されていてもよいアリールオキシカルボニルアミノ基、Zで置換されていてもよいアルキルチオ基、Zで置換されていてもよいアリールチオ基、Zで置換されていてもよいアリール基、又は、Zで置換されていてもよい複素環基であり、M及びMは一緒になって環を形成していてもよく;Zはアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、アルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、シリル基、スルホニル基、スルフィニル基、ウレイド基、リン酸アミド基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、メルカプト基、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、又はイミノ基である)。
【0015】
また、上記一般式(2)において、
が、水素原子、ハロゲン原子、Zで置換されていてもよいアルキル基、シアノ基、又は、Zで置換されていてもよいアルコキシ基であり;
~Mが互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、Zで置換されていてもよいアルキル基、Zで置換されていてもよいアルコキシ基、Zで置換されていてもよいアルキルエステル基、Zで置換されていてもよいアルコキシカルボニル基、Zで置換されていてもよいアルキルアミノカルボニル基、Zで置換されていてもよいアシル基、Zで置換されていてもよいアミノ基、Zで置換されていてもよいアシルアミノ基、Zで置換されていてもよいアリール基、又は、Zで置換されていてもよい複素環基であり、M及びMがアルキル基又はアリール基である場合には、互いに結合して環を形成していてもよい場合の化合物も、本発明の第2の態様に係る化合物の一つである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一態様に係る化合物は、ナフタレン環の両側に5員環の複素芳香環が縮合しており、平面性に優れると共に、チオフェン環、又はチアゾール環のα位を持つため、容易に共役拡張が可能となってアクセプタ性が向上して、光電変換効率や電荷移動度が向上し、優れた半導体特性を有する。
【0017】
また、本発明の一態様に係る化合物を用いた有機半導体材料は、光電変換効率や電荷移動度が高く、優れた半導体特性を有するため、光電変換素子、有機薄膜トランジスタ(電界効果トランジスタ等)、発光デバイス等の種々の半導体デバイスに用いられる。
【0018】
更に、本発明の一態様に係る化合物は、これを用いると種々の半導体特性を有する化合物を簡便に製造することができる。
【0019】
即ち、本発明の一態様によれば、優れた半導体特性を有する化合物及びその製造方法、その中間体化合物及びその製造方法、並びにその化合物を用いた有機半導体材料、有機半導体デバイスを提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1実施形態の有機薄膜トランジスタを模式的に示す断面図である。
図2】本発明の第2実施形態の有機薄膜トランジスタを模式的に示す断面図である。
図3】本発明の第3実施形態の有機薄膜トランジスタを模式的に示す断面図である。
図4】本発明の第4実施形態の有機薄膜トランジスタを模式的に示す断面図である。
図5】本発明の第5実施形態の有機薄膜トランジスタを模式的に示す断面図である。
図6】本発明の第6実施形態の有機薄膜トランジスタを模式的に示す断面図である。
図7】本発明の第7実施形態の有機薄膜トランジスタを模式的に示す断面図である。
図8】本発明の第8実施形態の有機薄膜太陽電池を模式的に示す断面図である。
図9】本発明の第9実施形態の有機薄膜太陽電池を模式的に示す断面図である。
図10】本発明の第10実施形態の有機薄膜太陽電池を模式的に示す断面図である。
図11】実施例3の有機薄膜太陽電池における電流密度-電圧特性を示すグラフである。
図12】実施例4の有機薄膜太陽電池における電流密度-電圧特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態に関して、詳細に説明する。
【0022】
(一般式(1)で表される化合物)
本発明の一態様に係る化合物は、一般式(1)で表される。
【0023】
【化5】
(一般式(1)中、A及びAは互いに独立して、CM又はNであり、Mは、水素原子、ハロゲン原子、Zで置換されていてもよいアルキル基、シアノ基、Zで置換されていてもよいアルコキシ基、Zで置換されていてもよいアルキルチオ基、Zで置換されていてもよいアルコキシカルボニル基、Zで置換されていてもよいアルキルカルボニル基、又は、Zで置換されていてもよいアリール基であり;
及びQは互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、Zで置換されていてもよいアリール基、Zで置換されていてもよい複素環基、ホルミル基、ボロン酸基、ボロン酸エステル基、ボロン酸ジアミノナフタレンアミド基、ボロン酸N-メチルイミノ二酢酸エステル基、トリフルオロボレート塩基、トリオールボレート塩基、トリアルキルシリル基、又はトリアルキルスタニル基であり;
及びXは互いに独立して、
【0024】
【化6】
であり、M~Mは互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、Zで置換されていてもよいアルキル基、Zで置換されていてもよいアルコキシ基、Zで置換されていてもよいアルキルエステル基、Zで置換されていてもよいアルコキシカルボニル基、Zで置換されていてもよいアルキルアミノカルボニル基、Zで置換されていてもよいアシル基、Zで置換されていてもよいアミノ基、Zで置換されていてもよいアシルアミノ基、Zで置換されていてもよいアリールオキシ基、Zで置換されていてもよいアリールオキシカルボニル基、Zで置換されていてもよいアシルオキシ基、Zで置換されていてもよいアルコキシカルボニルアミノ基、Zで置換されていてもよいアリールオキシカルボニルアミノ基、Zで置換されていてもよいアルキルチオ基、Zで置換されていてもよいアリールチオ基、Zで置換されていてもよいアリール基、又は、Zで置換されていてもよい複素環基であり、M及びMは一緒になって環を形成していてもよく;Zはアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、アルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、シリル基、スルホニル基、スルフィニル基、ウレイド基、リン酸アミド基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、メルカプト基、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、又はイミノ基である)。
【0025】
ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる(以下、本明細書において「ハロゲン原子」とは、特に断りの無い限り、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素から選ばれる少なくとも一種を表す)。
【0026】
アルキル基としては、炭素原子数1~30が好ましく、6~30がより好ましく、直鎖状又は分岐状であってもよい。アルコキシ基としては、炭素原子数1~30が好ましく、1~12がより好ましく、直鎖状又は分岐状であってもよい。アルキルエステル基としては、炭素原子数2~30が好ましく、2~12がより好ましく、直鎖状又は分岐状であってもよい。アルコキシカルボニル基としては、炭素原子数2~30が好ましく、2~12がより好ましく、直鎖状又は分岐状であってもよい。アルキルアミノカルボニル基としては、炭素原子数2~40が好ましく、2~12がより好ましく、直鎖状又は分岐状であってもよい。アシル基は、炭素原子数2~30が好ましく、2~12がより好ましく、直鎖状又は分岐状であってもよい。Zで置換されていてもよいアミノ基で、Zがアルキル基である基としては、アミノ基の他、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、トリアルキルアミノ基等が挙げられる。また、アミノ基を置換する置換基としてのアルキル基としては、炭素原子数1~30が好ましく、1~12がより好ましく、直鎖状又は分岐状であってもよい。アシルアミノ基としては、炭素原子数2~30が好ましく、2~12がより好ましく、直鎖状又は分岐状であってもよい。その他のアルキル部分を有する置換基の炭素原子数としては、1~30が好ましく、6~30がより好ましく、これらアルキル部分は直鎖状であっても分岐状であってもよい。アリール基又は各置換基中のアリール部分としては、炭素原子数6~30が好ましく、6~12がより好ましく、フェニル基が特に好ましい。シクロアルキル基又は各置換基中のシクロアルキル部分としては、炭素原子数3~40が好ましく、4~20がより好ましい。複素環基としては、炭素原子数3~30が好ましく、3~12がより好ましく、チエニル基が特に好ましい。
【0027】
一般式(1)で表される化合物(中間体化合物)(以下、「化合物(1)」と称する)は、剛直で高い平面性を持つ。そのため、この化合物を中間体化合物として用いて合成される後述する一般式(2)で表される化合物は、剛直で高い平面性を持ち、有機半導体材料として適用して、当該有機半導体材料を製膜して有機半導体層(半導体活性層)を作製したときに、有機半導体層中における分子間距離が短くなり、高い電荷移動度を発揮することができる。
【0028】
更に、化合物(1)は、チオフェン環、又はチアゾール環のα位を持つために、容易に共役拡張が可能である。その誘導化体、即ち、一般式(1)中、Q又はQが、水素原子、ハロゲン原子、Zで置換されていてもよいアリール基、Zで置換されていてもよい複素環基、ホルミル基、ボロン酸基、ボロン酸エステル基、ボロン酸ジアミノナフタレンアミド基、ボロン酸N-メチルイミノ二酢酸エステル基、トリフルオロボレート塩基、トリオールボレート塩基、トリアルキルシリル基、又はトリアルキルスタニル基である化合物は、後述のように共役拡張して一般式(2)で表される化合物等への展開が容易である。
【0029】
(一般式(2)で表される化合物)
本発明の一態様に係る化合物は、その構造に一般式(2)で表される骨格を有し、上記化合物(1)に電子供与性(ドナー性)或いは電子受容性(アクセプタ性)を付与する骨格を導入した構造を有する。又は、化合物(1)で表される骨格を繰り返し単位として有していてもよい。
【0030】
【化7】
一般式(2)中、A、A、X及びXは、前述の通りであり;
及びJは互いに独立して、電子供与性又は電子受容性を付与する骨格であり、公知の骨格を適宜付与することができる。
【0031】
具体的には、一般式(2)で表される化合物(以下、「化合物(2)」と称する)としては、一般式(2-1)で表される化合物が好ましい。
【0032】
【化8】
一般式(2-1)中、A、A、X及びXは、前述の通りであり;
、D、G及びGは互いに独立して、CM又はNであり、Mは、前述の通りであり;
m及びnは互いに独立して、0又は自然数であり;
及びTは互いに独立して、アルケニレン基を含む環状の官能基を表す。例えば、以下に表される構造の官能基が好ましい。R~Rは互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、又はアリール基を表す。R~Rであるアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、又はアルキルカルボニル基中のアルキル部分は、直鎖状又は分岐状であってもよく、炭素数は6~30であることが好ましく、8~24であることがより好ましい。また、アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アダマンチル基等が好ましい。なお、以下に表される構造における「*」は結合手を表す。
【化9】
【化10】
【化11】
【0033】
【化12】
上記一般式(2-1)で表される化合物としては、一般式(2-2)で表される化合物がより好ましい。
【0034】
【化13】
(一般式(2-2)中、A、A、T、T、X、X、m及びnは、前述の通りであり;
~Mは互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、又はアリール基である)。
【0035】
~Mであるアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、又はアルキルカルボニル基中のアルキル部分は、直鎖状又は分岐状であってもよく、炭素数は6~30であることが好ましく、8~24であることがより好ましい。また、アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アダマンチル基等が好ましい。
【0036】
(化合物(1)の製造方法1)
前述した化合物(1)(中間体化合物)の製造方法は、特に限定されない。一例として、市販の化合物から下記一般式(A1)で表される化合物を合成し、チオフェン環を縮環したナフトビスチアジアゾールを製造することができる。好ましい工程を以下の反応スキームに沿って説明し、より具体的な一例は、後述する実施例に記載する。
【0037】
【化14】
<工程A>
一般式(i)で表される市販のナフタレンから、国際公開第2018/123207号公報に記載の実施例に基づき、一般式(A1)で表される化合物(以下、「化合物(A1)」と称する)を製造する(工程A)。化合物(A1)中、Halは互いに独立して、ハロゲン原子を表す。
【0038】
下記工程B~工程Gは、化合物(A1)を用いた場合の第1a工程~第6a工程に相当する。
【0039】
<工程B>
次いで、化合物(A1)から、一般式(A2)で表される化合物(以下、「化合物(A2)」と称する)を製造する(工程B)。一般式(A2)中、TASはトリアルキルシリル基を表す。
【0040】
工程Bは、第1a工程であり、具体的には、例えば、化合物(A1)とトリアルキルシリルアセチレンとを触媒の存在下で反応させて化合物(A2)を生成させる工程である。トリアルキルシリルアセチレンとしては、当該反応が進行すれば特に限定されず、例えば、トリメチルシリルアセチレン、トリエチルシリルアセチレン等が挙げられる。トリアルキルシリルアセチレンは、化合物(A1)1当量に対して、好ましくは2~20当量、より好ましくは2~10当量の割合で使用することができる。触媒としては、Pd(PPh、Pd(PPhCl、Pd(dba)、CuI等が挙げられる。工程Bの反応は、通常、塩基及び溶媒の存在下で行うことができる。塩基としては、当該反応が進行する塩基であれば特に限定されない。塩基は、化合物(A1)1当量に対して、好ましくは1~40当量、より好ましくは1~20当量の割合で使用することができる。溶媒は、当該反応が進行する溶媒であれば特に限定されない。また、トリエチルアミンやピペリジンのように、塩基としての機能を兼ねる溶媒を使用してもよい。反応温度は、通常、0~200℃が好ましく、0~120℃がより好ましい。反応時間は、通常、1~48時間である。化合物(A2)は、下記工程Cに供する前に精製することが好ましい。
【0041】
<工程C>
次いで、化合物(A2)から、一般式(A3)で表される化合物(以下、「化合物(A3)」と称する)を製造する(工程C)。一般式(A3)中、R10及びR11は互いに独立して、置換されていてもよいアルキル基を表し、TASはトリアルキルシリル基を表す。
【0042】
工程Cは、第2a工程であり、具体的には、例えば、化合物(A2)と硫化剤とを反応させて化合物(A3)を生成させる工程である。硫化剤としては、当該反応が進行すれば特に限定されず、例えば、ナトリウムチオメトキシド、ナトリウムチオエトキシド等の硫化物塩;ローソン試薬;等が挙げられる。硫化剤は、化合物(A2)1当量に対して、好ましくは2~20当量、より好ましくは2~10当量の割合で使用することができる。工程Cの反応は、通常、溶媒の存在下で行うことができる。反応温度は、通常、0~200℃が好ましく、0~120℃がより好ましい。反応時間は、通常、1~48時間である。化合物(A3)は、下記工程Dに供する前に精製することが好ましい。
【0043】
<工程D>
次いで、化合物(A3)から、一般式(1-1a)で表される化合物(以下、「化合物(1-1a)」と称する)を製造する(工程D)。一般式(1-1a)中、Halは前述の通りであり、TASはトリアルキルシリル基を表す。なお、化合物(1-1a)は、本発明の化合物(1)に包含される。
【0044】
工程Dは、第3a工程であり、具体的には、例えば、化合物(A3)とハロゲン化剤とを反応させて化合物(1-1a)を生成させる工程である。ハロゲン化剤としては、当該反応が進行すれば特に限定されず、例えば、N-ブロモスクシンイミド;N-ヨードスクシンイミド;臭素、ヨウ素等のハロゲン、及びこのハロゲン化物塩;等が挙げられる。ハロゲン化剤は、化合物(A3)1当量に対して、好ましくは2~20当量、より好ましくは2~10当量の割合で使用することができる。工程Dの反応は、通常、溶媒の存在下で行うことができる。反応温度は、通常、0~200℃が好ましく、0~120℃がより好ましい。反応時間は、通常、1~48時間である。得られた化合物(1-1a)は精製してもよい。また、化合物(1-1a)は、下記工程Eに供する前に精製することが好ましい。
【0045】
<工程E>
次いで、化合物(1-1a)から、一般式(1-2a)で表される化合物(以下、「化合物(1-2a)」と称する)を製造する(工程E)。一般式(1-2a)中、Mは前述の通りであり、二つのMは互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。TASはトリアルキルシリル基を表す。なお、化合物(1-2a)は、本発明の化合物(1)に包含される。
【0046】
工程Eは、第4a工程であり、具体的には、例えば、化合物(1-1a)とホウ素化合物とを触媒の存在下で反応させて化合物(1-2a)を生成させる工程である。ホウ素化合物としては、当該反応が進行すれば特に限定されず、例えば、ボロン酸、ボロン酸エステル、ボロン酸ジアミノナフタレンアミド、ボロン酸N-メチルイミノ二酢酸エステル、トリフルオロボレート塩基、又はトリオールボレート塩基等が挙げられる。ホウ素化合物は、化合物(1-1a)1当量に対して、好ましくは2~20当量、より好ましくは2~10当量の割合で使用することができる。触媒としては、Pd(PPh、Pd(PPhCl、Pd(dba)、CuI等が挙げられ、適宜、配位子を使用してもよい。当該配位子としては、トリフェニルホスフィン、Sphos等が挙げられる。工程Eの反応は、通常、塩基及び溶媒の存在下で行うことができる。塩基としては、当該反応が進行する塩基であれば特に限定されない。塩基は、化合物(1-1a)に対して、好ましくは1~40当量、より好ましくは1~20当量の割合で使用することができる。溶媒は、当該反応が進行する溶媒であれば特に限定されない。また、トリエチルアミンやピペリジンのように、塩基としての機能を兼ねる溶媒を使用してもよい。反応温度は、通常、0~200℃が好ましく、0~120℃がより好ましい。反応時間は、通常、1~48時間である。得られた化合物(1-2a)は精製してもよい。また、化合物(1-2a)は、下記工程Fに供する前に精製することが好ましい。
【0047】
<工程F>
次いで、化合物(1-2a)から、一般式(1-3a)で表される化合物(以下、「化合物(1-3a)」と称する)を製造する(工程F)。一般式(1-3a)中、Mは前述の通りであり、Q1a及びQ2aは互いに独立して、ハロゲン原子を表す。なお、化合物(1-3a)は、本発明の化合物(1)に包含される。
【0048】
工程Fは、第5a工程であり、具体的には、例えば、化合物(1-2a)とハロゲン化剤とを反応させて化合物(1-3a)を生成させる工程である。ハロゲン化剤としては、当該反応が進行すれば特に限定されず、例えば、N-ブロモスクシンイミド;N-ヨードスクシンイミド;臭素、ヨウ素等のハロゲン、及びこのハロゲン化物塩;等が挙げられる。ハロゲン化剤は、化合物(1-2a)1当量に対して、好ましくは2~20当量、より好ましくは2~10当量の割合で使用することができる。工程Fの反応は、通常、溶媒の存在下で行うことができる。反応温度は、通常、0~200℃が好ましく、0~120℃がより好ましい。反応時間は、通常、1~48時間である。得られた化合物(1-3a)は精製してもよい。また、化合物(1-3a)は、下記工程Gに供する前に精製することが好ましい。
【0049】
<工程G>
次いで、化合物(1-3a)から、一般式(1-4a)で表される化合物(以下、「化合物(1-4a)」と称する)を製造する(工程G)。一般式(1-4a)中、Mは前述の通りであり、Q1b及びQ2bは互いに独立して、水素原子、アリール基、複素環基、ボロン酸基、ボロン酸エステル基、ボロン酸ジアミノナフタレンアミド基、ボロン酸N-メチルイミノ二酢酸エステル基、トリフルオロボレート塩基、トリオールボレート塩基、トリアルキルシリル基、又はトリアルキルスタニル基を表す。なお、化合物(1-4a)は、本発明の化合物(1)に包含される。
【0050】
工程Gは、第6a工程であり、具体的には、例えば、化合物(1-3a)とホウ素化合物又はスズ化合物とを触媒の存在下で反応させて化合物(1-4a)を生成させる工程である。ホウ素化合物としては、当該反応が進行すれば特に限定されず、例えば、ピナコールボラン等のヒドロホウ素化合物、ビス(ピナコラト)ジボロン等のジボラン化合物、アリールボロン酸、アリールボロン酸エステル、アリールボロン酸ジアミノナフタレンアミド、アリールボロン酸N-メチルイミノ二酢酸エステル、アリールトリフルオロボレート塩基、ヘテロアリールボロン酸、ヘテロアリールボロン酸エステル、ヘテロアリールボロン酸ジアミノナフタレンアミド、ヘテロアリールボロン酸N-メチルイミノ二酢酸エステル、ヘテロアリールトリフルオロボレート塩基、又はトリオールボレート塩基等が挙げられる。スズ化合物としては、当該反応が進行すれば特に限定されず、例えば、ビス(トリメチルスズ)やビス(トリブチルスズ)等の二スズ化合物、トリアルキルアリールスズ、トリアルキルヘテロアリールスズ等が挙げられる。ホウ素化合物又はスズ化合物はそれぞれ独立して、化合物(1-3a)1当量に対して、好ましくは2~20当量、より好ましくは2~10当量の割合で使用することができる。触媒としては、Pd(PPh、Pd(PPhCl、Pd(dba)、CuI等が挙げられる。工程Gの反応は、通常、塩基及び溶媒の存在下で行うことができる。塩基としては、当該反応が進行する塩基であれば特に限定されない。塩基は、化合物(1-3a)1当量に対して、好ましくは1~40当量、より好ましくは1~20当量の割合で使用することができる。溶媒は、当該反応が進行する溶媒であれば特に限定されない。また、トリエチルアミンやピペリジンのように、塩基としての機能を兼ねる溶媒を使用してもよい。反応温度は、通常、0~200℃が好ましく、0~120℃がより好ましい。反応時間は、通常、1~48時間である。得られた化合物(1-4a)は精製してもよい。
【0051】
(化合物(1)の製造方法2)
化合物(1)(中間体化合物)の製造方法は、前述した製造方法1に限定されない。他の一例として、上記工程Aにより一般式(A1)で表される化合物を合成し、チオフェン環を縮環したナフトビスチアジアゾールを製造することができる。好ましい工程を以下の反応スキームに沿って説明する。
【0052】
【化15】
<工程H>
化合物(A1)から、一般式(A4)で表される化合物(以下、「化合物(A4)」と称する)を製造する(工程H)。一般式(A4)中、Halは互いに独立して、ハロゲン原子を表す。
【0053】
工程Hは、具体的には、例えば、化合物(A1)と還元剤とを反応させて化合物(A4)を生成させる工程である。還元剤としては、当該反応が進行すれば特に限定されず、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、水素化アルミニウムリチウム等が挙げられる。還元剤は、化合物(A1)1当量に対して、好ましくは2~20当量、より好ましくは2~10当量の割合で使用することができる。溶媒は、当該反応が進行する溶媒であれば特に限定されない。反応温度は、通常、0~200℃が好ましく、0~120℃がより好ましい。反応時間は、通常、1~48時間である。化合物(A4)は、下記工程Iに供する前に精製することが好ましい。
【0054】
<工程I>
化合物(A4)から、一般式(A5)で表される化合物(以下、「化合物(A5)」と称する)を製造する(工程I)。一般式(A5)中、Halは前述の通りであり、-X-及び-X-は互いに独立して、-O-、-S-、-Se-、-NM-、又は-CM=CM-を表す。ここで、M、M、Mは互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、Zで置換されていてもよいアルキル基、Zで置換されていてもよいアルコキシ基、Zで置換されていてもよいアルキルエステル基、Zで置換されていてもよいアルコキシカルボニル基、Zで置換されていてもよいアルキルアミノカルボニル基、Zで置換されていてもよいアシル基、Zで置換されていてもよいアミノ基、Zで置換されていてもよいアシルアミノ基、Zで置換されていてもよいアリールオキシ基、Zで置換されていてもよいアリールオキシカルボニル基、Zで置換されていてもよいアシルオキシ基、Zで置換されていてもよいアルコキシカルボニルアミノ基、Zで置換されていてもよいアリールオキシカルボニルアミノ基、Zで置換されていてもよいアルキルチオ基、Zで置換されていてもよいアリールチオ基、Zで置換されていてもよいアリール基、又は、Zで置換されていてもよい複素環基を表し、M及びMは一緒になって環を形成していてもよく;Zは前述の通りである。
【0055】
工程Iは、具体的には、例えば、化合物(A4)とカルコゲン化剤、窒素化剤、又は1,2-ジケトンとを反応させて化合物(A5)を生成させる工程である。カルコゲン化剤としては、当該反応が進行すれば特に限定されず、例えば、過酸化水素、塩化チオニル、塩化セレニド等が挙げられる。カルコゲン化剤は、化合物(A4)1当量に対して、好ましくは2~20当量、より好ましくは2~10当量の割合で使用することができる。窒素化剤としては、当該反応が進行すれば特に限定されず、例えば、亜硝酸ナトリウム等が挙げられる。窒素化剤は、化合物(A4)1当量に対して、好ましくは2~20当量、より好ましくは2~10当量の割合で使用することができる。1,2-ジケトンとしては、当該反応が進行すれば特に限定されず、例えば、アセチル、ベンジル、塩化オキサリル、臭化オキサリル等が挙げられる。1,2-ジケトンは、化合物(A4)1当量に対して、好ましくは2~20当量、より好ましくは2~10当量の割合で使用することができる。上記反応においては、適宜、塩基を使用することもできる。当該塩基は、上記反応が進行する塩基であれば特に限定されない。溶媒は、上記反応が進行する溶媒であれば特に限定されない。また、トリエタノールアミンやピペリジンのように、塩基としての機能を兼ねる溶媒を使用してもよい。反応温度は、通常、0~200℃が好ましく、0~120℃がより好ましい。反応時間は、通常、1~48時間である。化合物(A5)は、下記工程Jに供する前に精製することが好ましい。
【0056】
なお、化合物(A5)において、-X-及び-X-が共に-S-の場合が化合物(A1)に該当する。但し、化合物(A1)以外の化合物(A5)を製造するには、工程H及び工程Iを経由することが好ましい。
【0057】
下記工程J~工程Oは、化合物(A5)を用いた場合の第1a工程~第6a工程であって、化合物(A1)を用いた場合の上記工程B~工程Gに相当する。
【0058】
<工程J>
次いで、化合物(A5)から、一般式(A6)で表される化合物(以下、「化合物(A6)」と称する)を製造する(工程J)。一般式(A6)中、TASはトリアルキルシリル基を表す。
【0059】
工程Jは、第1a工程であり、具体的には、例えば、化合物(A5)とトリアルキルシリルアセチレンとを触媒の存在下で反応させて化合物(A6)を生成させる工程である。トリアルキルシリルアセチレンとしては、当該反応が進行すれば特に限定されず、例えば、トリメチルシリルアセチレン、トリエチルシリルアセチレン等が挙げられる。トリアルキルシリルアセチレンは、化合物(A5)1当量に対して、好ましくは2~20当量、より好ましくは2~10当量の割合で使用することができる。触媒としては、Pd(PPh、Pd(PPhCl、Pd(dba)、CuI等が挙げられる。工程Jの反応は、通常、塩基及び溶媒の存在下で行うことができる。塩基としては、当該反応が進行する塩基であれば特に限定されない。塩基は、化合物(A5)1当量に対して、好ましくは1~40当量、より好ましくは1~20当量の割合で使用することができる。溶媒は、当該反応が進行する溶媒であれば特に限定されない。また、トリエチルアミンやピペリジンのように、塩基としての機能を兼ねる溶媒を使用してもよい。反応温度は、通常、0~200℃が好ましく、0~120℃がより好ましい。反応時間は、通常、1~48時間である。化合物(A6)は、下記工程Kに供する前に精製することが好ましい。
【0060】
<工程K>
次いで、化合物(A6)から、一般式(A7)で表される化合物(以下、「化合物(A7)」と称する)を製造する(工程K)。一般式(A7)中、R10及びR11は互いに独立して、置換されていてもよいアルキル基を表し、TASはトリアルキルシリル基を表す。
【0061】
工程Kは、第2a工程であり、具体的には、例えば、化合物(A6)と硫化剤とを反応させて化合物(A7)を生成させる工程である。硫化剤としては、当該反応が進行すれば特に限定されず、例えば、ナトリウムチオメトキシド、ナトリウムチオエトキシド等の硫化物塩;ローソン試薬;等が挙げられる。硫化剤は、化合物(A6)1当量に対して、好ましくは2~20当量、より好ましくは2~10当量の割合で使用することができる。工程Kの反応は、通常、溶媒の存在下で行うことができる。反応温度は、通常、0~200℃が好ましく、0~120℃がより好ましい。反応時間は、通常、1~48時間である。化合物(A7)は、下記工程Lに供する前に精製することが好ましい。
【0062】
<工程L>
次いで、化合物(A7)から、一般式(1-1)で表される化合物(以下、「化合物(1-1)」と称する)を製造する(工程L)。一般式(1-1)中、Halは前述の通りであり、TASはトリアルキルシリル基を表す。なお、化合物(1-1)は、本発明の化合物(1)に包含される。
【0063】
工程Lは、第3a工程であり、具体的には、例えば、化合物(A7)とハロゲン化剤とを反応させて化合物(1-1)を生成させる工程である。ハロゲン化剤としては、当該反応が進行すれば特に限定されず、例えば、N-ブロモスクシンイミド;N-ヨードスクシンイミド;臭素、ヨウ素等のハロゲン、及びこのハロゲン化物塩;等が挙げられる。ハロゲン化剤は、化合物(A7)1当量に対して、好ましくは2~20当量、より好ましくは2~10当量の割合で使用することができる。工程Lの反応は、通常、溶媒の存在下で行うことができる。反応温度は、通常、0~200℃が好ましく、0~120℃がより好ましい。反応時間は、通常、1~48時間である。得られた化合物(1-1)は精製してもよい。また、化合物(1-1)は、下記工程Mに供する前に精製することが好ましい。
【0064】
<工程M>
次いで、化合物(1-1)から、一般式(1-2)で表される化合物(以下、「化合物(1-2)」と称する)を製造する(工程M)。一般式(1-2)中、Mは前述の通りであり、二つのMは互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。TASはトリアルキルシリル基を表す。なお、化合物(1-2)は、本発明の化合物(1)に包含される。
【0065】
工程Mは、第4a工程であり、具体的には、例えば、化合物(1-1)とホウ素化合物とを触媒の存在下で反応させて化合物(1-2)を生成させる工程である。ホウ素化合物としては、当該反応が進行すれば特に限定されず、例えば、ボロン酸、ボロン酸エステル、ボロン酸ジアミノナフタレンアミド、ボロン酸N-メチルイミノ二酢酸エステル、トリフルオロボレート塩基、又は、トリオールボレート塩基等が挙げられる。ホウ素化合物は、化合物(1-1)1当量に対して、好ましくは2~20当量、より好ましくは2~10当量の割合で使用することができる。触媒としては、Pd(PPh、Pd(PPhCl、Pd(dba)、CuI等が挙げられ、適宜、配位子を使用してもよい。当該配位子としては、トリフェニルホスフィン、Sphos等が挙げられる。工程Mの反応は、通常、塩基及び溶媒の存在下で行うことができる。塩基としては、当該反応が進行する塩基であれば特に限定されない。塩基は、化合物(1-1)1当量に対して、好ましくは1~40当量、より好ましくは1~20当量の割合で使用することができる。溶媒は、当該反応が進行する溶媒であれば特に限定されない。また、トリエチルアミンやピペリジンのように、塩基としての機能を兼ねる溶媒を使用してもよい。反応温度は、通常、0~200℃が好ましく、0~120℃がより好ましい。反応時間は、通常、1~48時間である。得られた化合物(1-2)は精製してもよい。また、化合物(1-2)は、下記工程Nに供する前に精製することが好ましい。
【0066】
<工程N>
次いで、化合物(1-2)から、一般式(1-3)で表される化合物(以下、「化合物(1-3)」と称する)を製造する(工程N)。一般式(1-3)中、Mは前述の通りであり、Q1a及びQ2aは互いに独立して、ハロゲン原子を表す。なお、化合物(1-3)は、本発明の化合物(1)に包含される。
【0067】
工程Nは、第5a工程であり、具体的には、例えば、化合物(1-2)とハロゲン化剤とを反応させて化合物(1-3)を生成させる工程である。ハロゲン化剤としては、当該反応が進行すれば特に限定されず、例えば、N-ブロモスクシンイミド;N-ヨードスクシンイミド;臭素、ヨウ素等のハロゲン、及びこのハロゲン化物塩;等が挙げられる。ハロゲン化剤は、化合物(1-2)1当量に対して、好ましくは2~20当量、より好ましくは2~10当量の割合で使用することができる。工程Nの反応は、通常、溶媒の存在下で行うことができる。反応温度は、通常、0~200℃が好ましく、0~120℃がより好ましい。反応時間は、通常、1~48時間である。得られた化合物(1-3)は精製してもよい。また、化合物(1-3)は、下記工程Oに供する前に精製することが好ましい。
【0068】
<工程O-a>
次いで、化合物(1-3)から、一般式(1-4)で表される化合物(以下、「化合物(1-4)」と称する)を製造する(工程O)。一般式(1-4)中、Mは前述の通りであり、Q1b及びQ2bは互いに独立して、水素原子、Zで置換されていてもよいアリール基、Zで置換されていてもよい複素環基、ボロン酸基、ボロン酸エステル基、ボロン酸ジアミノナフタレンアミド基、ボロン酸N-メチルイミノ二酢酸エステル基、トリフルオロボレート塩基、トリオールボレート塩基、トリアルキルシリル基、又はトリアルキルスタニル基を表す。なお、化合物(1-4)は、本発明の化合物(1)に包含される。
【0069】
工程O-aは、第6a工程であり、具体的には、例えば、化合物(1-3)とホウ素化合物又はスズ化合物とを触媒の存在下で反応させて化合物(1-4)を生成させる工程である。ホウ素化合物としては、当該反応が進行すれば特に限定されず、例えば、ピナコールボラン等のヒドロホウ素化合物、ビス(ピナコラト)ジボロン等のジボラン化合物、アリールボロン酸、アリールボロン酸エステル、アリールボロン酸ジアミノナフタレンアミド、アリールボロン酸N-メチルイミノ二酢酸エステル、アリールトリフルオロボレート塩基、ヘテロアリールボロン酸、ヘテロアリールボロン酸エステル、ヘテロアリールボロン酸ジアミノナフタレンアミド、ヘテロアリールボロン酸N-メチルイミノ二酢酸エステル、ヘテロアリールトリフルオロボレート塩基、又はトリオールボレート塩基等が挙げられる。スズ化合物としては、当該反応が進行すれば特に限定されず、例えば、ビス(トリメチルスズ)やビス(トリブチルスズ)等の二スズ化合物、トリアルキルアリールスズ、トリアルキルヘテロアリールスズ等が挙げられる。ホウ素化合物又はスズ化合物はそれぞれ独立して、化合物(1-3)1当量に対して、好ましくは2~20当量、より好ましくは2~10当量の割合で使用することができる。触媒としては、Pd(PPh、Pd(PPhCl、Pd(dba)、CuI等が挙げられる。工程Oの反応は、通常、塩基及び溶媒の存在下で行うことができる。塩基としては、当該反応が進行する塩基であれば特に限定されない。塩基は、化合物(1-3)1当量に対して、好ましくは1~40当量、より好ましくは1~20当量の割合で使用することができる。溶媒は、当該反応が進行する溶媒であれば特に限定されない。また、トリエチルアミンやピペリジンのように、塩基としての機能を兼ねる溶媒を使用してもよい。反応温度は、通常、0~200℃が好ましく、0~120℃がより好ましい。反応時間は、通常、1~48時間である。得られた化合物(1-4)は精製してもよい。
【0070】
<工程O-b>
次いで、化合物(1-4)をホルミル化することにより、一般式(1-5)で表される化合物(以下、「化合物(1-5)」と称する)を製造する(工程O-b)。一般式(1-5)中、Mは前述の通りであり、Q1c及びQ2cは互いに独立して、ホルミル基を表す。なお、化合物(1-5)は、本発明の化合物(1)に包含される。工程O-bでは常法により、ホルミル化が行われる。
【0071】
(化合物(1)の製造方法3)
化合物(1)(中間体化合物)の製造方法は、前述した製造方法1,2に限定されない。更に他の一例として、市販の化合物から下記一般式(A8)で表される化合物を合成し、チアゾール環を縮環したナフトビスチアジアゾールを製造することができる。好ましい工程を以下の反応スキームに沿って説明する。
【0072】
【化16】
<工程P>
一般式(i)で表される市販のナフタレンから、国際公開第2018/123207号公報に記載の実施例に基づき、一般式(A8)で表される化合物(以下、「化合物(A8)」と称する)を製造する。
【0073】
<工程Q>
化合物(A8)から、一般式(A9)で表される化合物(以下、「化合物(A9)」と称する)を製造する(工程Q)。一般式(A9)中、-X-及び-X-は互いに独立して、-O-、-S-、-Se-、-NM-、又は-CM=CM-を表す。ここで、M、M、Mは互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、Zで置換されていてもよいアルキル基、Zで置換されていてもよいアルコキシ基、Zで置換されていてもよいアルキルエステル基、Zで置換されていてもよいアルコキシカルボニル基、Zで置換されていてもよいアルキルアミノカルボニル基、Zで置換されていてもよいアシル基、Zで置換されていてもよいアミノ基、Zで置換されていてもよいアシルアミノ基、Zで置換されていてもよいアリールオキシ基、Zで置換されていてもよいアリールオキシカルボニル基、Zで置換されていてもよいアシルオキシ基、Zで置換されていてもよいアルコキシカルボニルアミノ基、Zで置換されていてもよいアリールオキシカルボニルアミノ基、Zで置換されていてもよいアルキルチオ基、Zで置換されていてもよいアリールチオ基、Zで置換されていてもよいアリール基、又は、Zで置換されていてもよい複素環基を表し、M及びMは一緒になって環を形成していてもよく;Zは前述の通りである。
【0074】
工程Qは、具体的には、例えば、化合物(A8)とカルコゲン化剤、窒素化剤又は1,2-ジケトンとを反応させて化合物(A9)を生成させる工程である。カルコゲン化剤としては、当該反応が進行すれば特に限定されず、例えば、過酸化水素、塩化チオニル、塩化セレニド等が挙げられる。カルコゲン化剤は、化合物(A8)1当量に対して、好ましくは2~20当量、より好ましくは2~10当量の割合で使用することができる。窒素化剤としては、当該反応が進行すれば特に限定されず、例えば、亜硝酸ナトリウム等が挙げられる。窒素化剤は、化合物(A8)1当量に対して、好ましくは2~20当量、より好ましくは2~10当量の割合で使用することができる。1,2-ジケトンとしては、当該反応が進行すれば特に限定されず、例えば、アセチル、ベンジル、塩化オキサリル、臭化オキサリル等が挙げられる。1,2-ジケトンは、化合物(A8)1当量に対して、好ましくは2~20当量、より好ましくは2~10当量の割合で使用することができる。上記反応においては、適宜、塩基を使用することもできる。当該塩基は、上記反応が進行する塩基であれば特に限定されない。溶媒は、上記反応が進行する溶媒であれば特に限定されない。また、トリエタノールアミンやピペリジンのように、塩基としての機能を兼ねる溶媒を使用してもよい。反応温度は、通常、0~200℃が好ましく、0~120℃がより好ましい。反応時間は、通常、1~48時間である。化合物(A9)は、下記工程Rに供する前に精製することが好ましい。
【0075】
下記工程R~工程Uは、化合物(A9)を用いた場合の第1b工程~第4b工程に相当する。
【0076】
<工程R>
次いで、化合物(A9)から、一般式(A10)で表される化合物(以下、「化合物(A10)」と称する)を製造する(工程R)。
【0077】
工程Rは、第1b工程であり、具体的には、例えば、化合物(A9)とハロゲン化剤とを反応させて化合物(A10)を生成させる工程である。ハロゲン化剤としては、当該反応が進行すれば特に限定されず、例えば、N-ブロモスクシンイミド;N-ヨードスクシンイミド;臭素、ヨウ素等のハロゲン、及びこのハロゲン化物塩;等が挙げられる。ハロゲン化剤は、化合物(A9)1当量に対して、好ましくは2~20当量、より好ましくは2~10当量の割合で使用することができる。溶媒は、当該反応が進行する溶媒であれば特に限定されない。反応温度は、通常、0~200℃が好ましく、0~120℃がより好ましい。反応時間は、通常、1~48時間である。化合物(A10)は、下記工程Sに供する前に精製することが好ましい。
【0078】
<工程S>
次いで、化合物(A10)から、一般式(A11)で表される化合物(以下、「化合物(A11)」と称する)を製造する(工程S)。
【0079】
工程Sは、第2b工程であり、具体的には、例えば、化合物(A10)とアミノ化剤とを反応させて化合物(A11)を生成させる工程である。アミノ化剤としては、当該反応が進行すれば特に限定されず、例えば、アンモニア水溶液、液体アンモニア等が挙げられる。アミノ化剤は、化合物(A10)1当量に対して、好ましくは2~20当量、より好ましくは2~10当量の割合で使用することができる。溶媒は、当該反応が進行する溶媒であれば特に限定されない。反応温度は、通常、0~200℃が好ましく、0~120℃がより好ましい。反応時間は、通常、1~48時間である。化合物(A11)は、下記工程Tに供する前に精製することが好ましい。
【0080】
<工程T>
次いで、化合物(A11)と一般式(ii)(Q-COCl)で表されるカルボン酸塩化物(以下、「化合物(ii)」と称する)及び一般式(iii)(Q-COCl)で表されるカルボン酸塩化物(以下、「化合物(iii)」と称する)とから、一般式(A12)で表される化合物(以下、「化合物(A12)」と称する)を製造する(工程T)。上記一般式(ii)、一般式(iii)及び一般式(A12)中、Q及びQは互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、アリール基、複素環基、ボロン酸基、ボロン酸エステル基、ボロン酸ジアミノナフタレンアミド基、ボロン酸N-メチルイミノ二酢酸エステル基、トリフルオロボレート塩基、トリオールボレート塩基、トリアルキルシリル基、又はトリアルキルスタニル基を表す。化合物(ii)及び化合物(iii)は、市販のカルボン酸を用いて、例えば、文献:Synthesis 2003, 18, 2795-2798.を参考にして合成することができる。
【0081】
工程Tは、第3b工程であり、具体的には、例えば、化合物(A11)と化合物(ii)及び化合物(iii)とを反応させて化合物(A12)を生成させる工程である。化合物(ii)及び化合物(iii)はそれぞれ独立して、化合物(A11)1当量に対して、好ましくは1~20当量、より好ましくは1~10当量の割合で使用することができる。工程Tの反応は、通常、塩基及び溶媒の存在下で行うことができる。塩基としては、当該反応が進行する塩基であれば特に限定されない。塩基は、化合物(A11)1当量に対して、好ましくは1~40当量、より好ましくは1~20当量の割合で使用することができる。溶媒は、当該反応が進行する溶媒であれば特に限定されない。また、トリエチルアミンやピペリジンのように、塩基としての機能を兼ねる溶媒を使用してもよい。反応温度は、通常、0~200℃が好ましく、0~120℃がより好ましい。反応時間は、通常、1~48時間である。化合物(A12)は、下記工程Uに供する前に精製することが好ましい。
【0082】
<工程U>
次いで、化合物(A12)から、一般式(1-6)で表される化合物(以下、「化合物(1-6)」と称する)を製造する(工程U)。なお、化合物(1-6)は、本発明の化合物(1)に包含される。
【0083】
工程Uは、第4b工程であり、具体的には、例えば、化合物(A12)と硫化剤とを反応させて化合物(1-6)を生成させる工程である。硫化剤としては、当該反応が進行すれば特に限定されず、例えば、ナトリウムチオメトキシド、ナトリウムチオエトキシド等の硫化物塩;ローソン試薬;等が挙げられる。硫化剤は、化合物(A12)1当量に対して、好ましくは2~20当量、より好ましくは2~10当量の割合で使用することができる。工程Uの反応は、通常、溶媒の存在下で行うことができる。反応温度は、通常、0~200℃が好ましく、0~120℃がより好ましい。反応時間は、通常、1~48時間である。得られた化合物(1-6)は精製してもよい。
【0084】
(化合物(2)の製造方法)
前述した化合物(2)の製造方法は、特に限定されない。化合物(2)は、前述した化合物(1)のQ及びQとして、電子供与性又は電子受容性を付与する骨格であるJ及びJを通常の方法により導入する工程を行うことによって製造することができる。好ましい工程を以下の反応スキームに沿って説明する。
【0085】
【化17】
<工程V>
化合物(1)と一般式(iv)で表される化合物(以下、「化合物(iv)」と称する)及び一般式(v)で表される化合物(以下、「化合物(v)」と称する)とから、一般式(A13)で表される化合物(以下、「化合物(A13)」と称する)を製造する(工程V)。
【0086】
一般式(1)中、A及びAは互いに独立して、CM又はNであり、Mは、水素原子、ハロゲン原子、Zで置換されていてもよいアルキル基、シアノ基、Zで置換されていてもよいアルコキシ基、Zで置換されていてもよいアルキルチオ基、Zで置換されていてもよいアルコキシカルボニル基、Zで置換されていてもよいアルキルカルボニル基、又は、Zで置換されていてもよいアリール基であり;
及びQは互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、Zで置換されていてもよいアリール基、Zで置換されていてもよい複素環基、ホルミル基、ボロン酸基、ボロン酸エステル基、ボロン酸ジアミノナフタレンアミド基、ボロン酸N-メチルイミノ二酢酸エステル基、トリフルオロボレート塩基、トリオールボレート塩基、トリアルキルシリル基、又はトリアルキルスタニル基であり;
及びXは互いに独立して、
【0087】
【化18】
であり、M~Mは互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、Zで置換されていてもよいアルキル基、Zで置換されていてもよいアルコキシ基、Zで置換されていてもよいアルキルエステル基、Zで置換されていてもよいアルコキシカルボニル基、Zで置換されていてもよいアルキルアミノカルボニル基、Zで置換されていてもよいアシル基、Zで置換されていてもよいアミノ基、Zで置換されていてもよいアシルアミノ基、Zで置換されていてもよいアリールオキシ基、Zで置換されていてもよいアリールオキシカルボニル基、Zで置換されていてもよいアシルオキシ基、Zで置換されていてもよいアルコキシカルボニルアミノ基、Zで置換されていてもよいアリールオキシカルボニルアミノ基、Zで置換されていてもよいアルキルチオ基、Zで置換されていてもよいアリールチオ基、Zで置換されていてもよいアリール基、又は、Zで置換されていてもよい複素環基であり、M及びMは一緒になって環を形成していてもよく;Zはアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、アルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、シリル基、スルホニル基、スルフィニル基、ウレイド基、リン酸アミド基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、メルカプト基、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、又はイミノ基である。
【0088】
上記化合物(iv)及び化合物(v)は、市販のチオフェンとスズ化合物とから合成することができる。化合物(iv)中のD及びG、並びに化合物(v)中のD及びGは互いに独立して、CM又はNであり、Mは、水素原子、ハロゲン原子、Zで置換されていてもよいアルキル基、シアノ基、又は置換されていてもよいアルコキシ基である。Zは前述の通りである。また、alkylはアルキル基を表す。上記アルキル基は、直鎖状又は分岐状であってもよく、その炭素原子数は1~30であることが好ましく、1~12であることがより好ましく、メチル、エチル、プロピル、ブチル、又はペンチルであることが更に好ましい。m及びnは互いに独立して、0又は自然数である。
【0089】
工程Vは、具体的には、例えば、化合物(1)と化合物(iv)及び化合物(v)とを触媒の存在下で反応させて化合物(A13)を生成させる工程である。化合物(iv)及び化合物(v)はそれぞれ独立して、化合物(1)1当量に対して、好ましくは1~20当量、より好ましくは1~10当量の割合で使用することができる。触媒としては、Pd(PPh、Pd(PPhCl、Pd(dba)、CuI等が挙げられる。溶媒は、当該反応が進行する溶媒であれば特に限定されない。反応温度は、通常、0~200℃が好ましく、0~120℃がより好ましい。反応時間は、通常、1~48時間である。化合物(A13)は、下記工程Wに供する前に精製することが好ましい。
【0090】
<工程W>
次いで、化合物(A13)から、一般式(A14)で表される化合物(以下、「化合物(A14)」と称する)を製造する(工程W)。化合物(A14)中のD、D、G及びGは、前述の通りである。また、m及びnも、前述の通りである。
【0091】
工程Wは、具体的には、例えば、化合物(A13)とN,N-ジメチルホルムアミド及び塩化ホスホリルとを反応させて化合物(A14)を生成させる工程である。N,N-ジメチルホルムアミド及び塩化ホスホリルはそれぞれ独立して、化合物(A13)1当量に対して、好ましくは1~100当量、より好ましくは1~50当量の割合で使用することができる。工程Wの反応は、通常、溶媒の存在下で行うことができる。反応温度は、通常、0~200℃が好ましく、0~120℃がより好ましい。反応時間は、通常、1~48時間である。化合物(A14)は、下記工程Xに供する前に精製することが好ましい。
【0092】
<工程X>
化合物(A14)と一般式(vi)で表される市販の化合物(以下、「化合物(vi)」と称する)及び一般式(vii)で表される市販の化合物(以下、「化合物(vii)」と称する)とから、一般式(2-1)で表される化合物(以下、「化合物(2-1)」と称する)を製造する(工程X)。化合物(vi)中のT、並びに化合物(vii)中のTは、前述の通りであり、互いに独立して、アルケニレン基を含む環状の官能基である前述の何れかの構造を表す。化合物(2-1)中のD、D、G及びGは、前述の通りである。また、m及びnも、前述の通りである。なお、化合物(2-1)は、本発明の化合物(2)に包含される。
【0093】
工程Xは、具体的には、例えば、化合物(A14)と化合物(vi)及び化合物(vii)とを塩基存在下で反応させて化合物(2-1)を生成させる工程である。化合物(vi)及び化合物(vii)はそれぞれ独立して、化合物(A14)1当量に対して、好ましくは1~20当量、より好ましくは1~10当量の割合で使用することができる。塩基としては、当該反応が進行する塩基であれば特に限定されない。塩基は、化合物(A14)1当量に対して、好ましくは1~40当量、より好ましくは1~20当量の割合で使用することができる。溶媒は、当該反応が進行する溶媒であれば特に限定されない。また、トリエチルアミンやピペリジンのように、塩基としての機能を兼ねる溶媒を使用してもよい。反応温度は、通常、0~200℃が好ましく、0~120℃がより好ましい。反応時間は、通常、1~48時間である。得られた化合物(2-1)は精製してもよい。
【0094】
上記製造方法により、化合物(2-1)、より好ましくは下記一般式(2-2)で表される化合物(以下、「化合物(2-2)」と称する)を製造することができる。
【0095】
【化19】
一般式(2-2)中、A、A、T、T、X、X、m及びnは、前述の通りであり;
~Mは互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、又はアリール基である。
【0096】
(有機半導体材料)
化合物(2)を含有する本発明の一態様に係る有機半導体材料は、前述したように、剛直で高い平面性を持つので、当該有機半導体材料を製膜して有機半導体層(半導体活性層)を作製したときに、有機半導体層中における分子間距離が短くなり、高い電荷移動度を発揮することができる。
【0097】
また、本発明の一態様に係る有機半導体材料には、化合物(2)の他に、有機半導体層の製膜性等の物性の向上を目的として、或いはドーピング等を行うために、添加剤や他の半導体材料等のその他の成分が添加されていてもよい。化合物(2)の他に、必要に応じて添加剤や他の半導体材料等のその他の成分が添加されることにより、有機半導体膜形成用組成物が形成される。
【0098】
(有機半導体デバイス)
前述した本発明の一態様に係る有機半導体材料は、これを備えた有機半導体デバイスとすることができる。即ち、基板等の上に有機半導体材料を用いて製膜された有機半導体層(半導体活性層)を備えた有機半導体デバイスを製造することができる。本発明の一態様に係る有機半導体デバイスとしては、例えば、有機半導体層を有する光電変換素子、有機薄膜トランジスタ(電界効果トランジスタ等)、発光デバイス等、種々のデバイスが挙げられる。
【0099】
有機半導体デバイスにおける有機半導体層の製造方法としては、特に限定されず、従来公知の種々の製造方法を用いることができる。当該製造方法としては、例えば、蒸着法、或いは、スピンコート法等の塗布法、インクジェット法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、又はマイクロコンタクト印刷法等の溶液法が挙げられる。
【0100】
(有機半導体膜形成用組成物)
有機半導体膜形成用組成物は、本発明の一態様に係る化合物を含有し、有機半導体膜の形成に好ましく用いられる。
【0101】
本発明の一態様に係る化合物は、前述の通りであり、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。有機半導体膜形成用組成物に占める上記化合物の含有率は、特に限定されず、例えば、後述する溶媒を除いた固形分中の含有率で表したとき、後述する有機半導体膜中の化合物の含有率と同じ範囲であることが好ましい。また、有機半導体膜形成用組成物は、バインダーポリマーを含有していてもよい。
【0102】
(バインダーポリマー)
有機半導体膜形成用組成物がバインダーポリマーを含有していると、膜質の高い有機半導体膜が得られる。
【0103】
このようなバインダーポリマーとしては、特に限定されず、例えば、ポリスチレン、ポリ(α-メチルスチレン)、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリシロキサン、ポリスルフォン、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、セルロース、ポリエチレン、又はポリプロピレン等の絶縁性ポリマー、或いはこれらの共重合体が挙げられる。これらポリマー以外にも、例えば、エチレン-プロピレンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、水素化されたニトリルゴム、フッ素ゴム、パーフルオロエラストマー、テトラフルオロエチレンプロピレン共重合体、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体、スチレン-ブタジエンゴム、ポリクロロプレン、ポリネオプレン、ブチルゴム、メチルフェニルシリコーン樹脂、メチルフェニルビニルシリコーン樹脂、メチルビニルシリコーン樹脂、フルオロシリコーン樹脂、アクリルゴム、エチレンアクリルゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、クロロポリエチレン、エピクロロヒドリン共重合体、ポリイソプレン-天然ゴム共重合体、ポリイソプレンゴム、スチレン-イソプレンブロック共重合体、ポリエステルウレタン共重合体、ポリエーテルウレタン共重合体、ポリエーテルエステル熱可塑性エラストマー、又はポリブタジエンゴム等のゴム或いは熱可塑性エラストマー重合体が挙げられる。更には、バインダーポリマーとしては、例えば、ポリビニルカルバゾール又はポリシラン等の光伝導性ポリマー、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン又はポリパラフェニレンビニレン等の導電性ポリマー、或いは、Chemistry of Materials, 2014, 26, 647.等に記載されている半導体ポリマー等も挙げられる。
【0104】
バインダーポリマーは、電荷移動度を考慮すると、極性基を含まない構造を有することが好ましい。ここで、極性基とは、炭素原子及び水素原子以外のヘテロ原子を有する官能基をいう。極性基を含まない構造を有するバインダーポリマーとしては、前述した中でも、ポリスチレン又はポリ(α-メチルスチレン)が好ましい。また、半導体ポリマーも好ましい。
【0105】
バインダーポリマーの質量平均分子量は、特に限定されないものの、例えば、1,000~1,000万が好ましく、3,000~500万がより好ましく、5,000~300万が更に好ましい。
【0106】
バインダーポリマーのガラス転移温度は、特に限定されず、用途等に応じて適宜設定される。例えば、有機半導体膜に強固な機械的強度を付与する場合には、ガラス転移温度を高くすることが好ましい。一方、有機半導体膜にフレキシビリティーを付与する場合には、ガラス転移温度を低くすることが好ましい。
【0107】
バインダーポリマーは、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。有機半導体膜形成用組成物に占めるバインダーポリマーの含有率は、特に限定されず、例えば、後述する溶媒を除いた固形分中の含有率で表したとき、後述する有機半導体膜中のバインダーポリマーの含有率と同じ範囲であることが好ましい。バインダーポリマーの含有率が上記範囲にある有機半導体膜形成用組成物を用いて、有機薄膜トランジスタの有機半導体膜を形成すると、キャリア移動度及び耐久性が更に向上する。
【0108】
有機半導体膜形成用組成物において、本発明の一態様に係る化合物は、バインダーポリマーに対して均一に混合していてもよく、その一部又は全部が相分離していてもよい。塗布容易性又は塗布均一性の点から、有機半導体膜形成用組成物においては、少なくとも塗布時に上記化合物とバインダーポリマーとが均一に混合していることが好ましい。
【0109】
(溶媒)
有機半導体膜形成用組成物は、溶媒を含有していてもよい。このような溶媒としては、前述の化合物を溶解又は分散させる溶媒であれば特に限定されず、無機溶媒又は有機溶媒が挙げられる。中でも、有機溶媒が好ましい。溶媒は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0110】
有機溶媒は、特に限定されないが、例えば、ヘキサン、オクタン、デカン、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、アミルベンゼン、デカリン、1-メチルナフタレン、1-エチルナフタレン、1,6-ジメチルナフタレン、又はテトラリン等の炭化水素溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン、プロピオフェノン、又はブチロフェノン等のケトン溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、クロロベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン、1,2,4-トリクロロベンゼン、クロロトルエン、又は1-フルオロナフタレン等のハロゲン化炭化水素溶媒、ピリジン、ピコリン、キノリン、チオフェン、3-ブチルチオフェン、又はチエノ[2,3-b]チオフェン等の複素環溶媒、2-クロロチオフェン、3-クロロチオフェン、2,5-ジクロロチオフェン、3,4-ジクロロチオフェン、2-ブロモチオフェン、3-ブロモチオフェン、2,3-ジブロモチオフェン、2,4-ジブロモチオフェン、2,5-ジブロモチオフェン、3,4-ジブロモチオフェン、又は3,4-ジクロロ-1,2,5-チアジアゾール等のハロゲン化複素環溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸-2-エチルヘキシル、γ-ブチロラクトン、又は酢酸フェニル等のエステル溶媒、メタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、又はエチレングリコール等のアルコール溶媒、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン、アニソール、エトキシベンゼン、プロポキシベンゼン、イソプロポキシベンゼン、ブトキシベンゼン、2-メチルアニソール、3-メチルアニソール、4-メチルアニソール、4-エチルアニソール、ジメチルアニソール(2,3-、2,4-、2,5-、2,6-、3,4-、3,5-、3,6-の何れか)、又は1,4-ベンゾジオキサン等のエーテル溶媒、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、1-メチル-2-ピロリドン、1-メチル-2-イミダゾリジノン、又は1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等のアミド又はイミド溶媒、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド溶媒、リン酸トリメチル等のリン酸エステル溶媒、アセトニトリル又はベンゾニトリル等のニトリル溶媒、ニトロメタン又はニトロベンゼン等のニトロ溶媒が挙げられる。
【0111】
中でも、炭化水素溶媒、ケトン溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、複素環溶媒、ハロゲン化複素環溶媒、又はエーテル溶媒が好ましく、トルエン、キシレン、メシチレン、アミルベンゼン、テトラリン、アセトフェノン、プロピオフェノン、ブチロフェノン、ジクロロベンゼン、アニソール、エトキシベンゼン、プロポキシベンゼン、イソプロポキシベンゼン、ブトキシベンゼン、2-メチルアニソール、3-メチルアニソール、4-メチルアニソール、1-フルオロナフタレン、3-クロロチオフェン、又は2,5-ジブロモチオフェンがより好ましく、トルエン、キシレン、テトラリン、アセトフェノン、プロピオフェノン、ブチロフェノン、アニソール、エトキシベンゼン、プロポキシベンゼン、ブトキシベンゼン、2-メチルアニソール、3-メチルアニソール、4-メチルアニソール、1-フルオロナフタレン、3-クロロチオフェン、又は2,5-ジブロモチオフェンが特に好ましい。
【0112】
有機半導体膜形成用組成物中に占める溶媒の含有量は、90~99.95質量%であることが好ましく、95~99.9質量%であることがより好ましく、96~99.9質量%であることが更に好ましい。従って、有機半導体膜形成用組成物に占める固形分の含有率は、10~0.05質量%であることが好ましく、5~0.1質量%であることがより好ましく、4~0.1質量%であることが更に好ましい。
【0113】
(その他の成分)
有機半導体膜形成用組成物は、前述したように、本発明の一態様に係る化合物及び溶媒の他に、必要に応じて添加剤や他の半導体材料等のその他の成分を含有してもよい。上記添加剤としては、有機半導体膜形成用組成物に通常用いられる添加剤を用いることができ、特に限定されない。上記添加剤としては、例えば、界面活性剤、酸化防止剤、結晶化制御剤、又は結晶配向制御剤等が挙げられる。界面活性剤及び酸化防止剤としては、例えば、特開2015-195362号公報の段落〔0136〕及び〔0137〕に記載されている界面活性剤及び酸化防止剤が挙げられ、当該段落の記載がそのまま本明細書に好ましく取り込まれる。
【0114】
有機半導体膜形成用組成物に占める添加剤の含有率は、特に限定されず、例えば、溶媒を除いた固形分中の含有率で表したとき、後述する有機半導体膜中の添加剤の含有率と同じ範囲であることが好ましい。添加剤の含有率が上記範囲にある有機半導体膜形成用組成物を用いて、有機薄膜トランジスタの有機半導体膜を形成すると、膜形成性に優れ、キャリア移動度及び耐熱性が更に向上する。
【0115】
(調製方法)
有機半導体膜形成用組成物の調製方法としては、特に限定されず、通常の調製方法を採用することができる。例えば、所定量の各成分を混合機や撹拌機等を用いて適宜、混合処理することにより、有機半導体膜形成用組成物を調製することができる。
【0116】
必要に応じて、各成分を混合処理中又は混合処理後に加熱することもできる。加熱温度は、特に限定されないものの、例えば、40~150℃の範囲とすることが好ましい。溶媒を用いる場合は、上記加熱温度の範囲であって溶媒の沸点未満の温度で加熱することが好ましい。
【0117】
(有機半導体膜)
次に、有機半導体膜に関して説明する。有機半導体膜は、本発明の一態様に係る化合物を含んでいる。有機半導体膜の膜厚は、1nm~1000nmであることが好ましく、2nm~1000nmであることがより好ましく、5nm~500nmであることが更に好ましく、20nm~200nmであることが特に好ましい。
【0118】
有機半導体膜を製造する工程には、本発明の一態様に係る化合物を配向させる工程が含まれていてもよい。この工程によって当該化合物を配向させてなる有機半導体膜は、本発明の一態様に係る化合物の主鎖部分又は側鎖部分が一方向に並ぶので、電子移動度又はホール移動度が更に向上する。
【0119】
本発明の一態様に係る化合物を配向させる方法としては、液晶の配向手法として知られている方法を用いることができる。液晶の配向手法の中でも、ラビング法、光配向法、シェアリング法(ずり応力印加法)、又は引き上げ塗布法が簡便かつ有用であるために利用し易く、ラビング法、シェアリング法がより好ましい。
【0120】
有機半導体膜は、電子輸送性又はホール輸送性を有することから、電極から注入された電子又はホール、或いは吸収した光によって発生した電荷を輸送制御することにより、有機薄膜トランジスタ、有機光電変換素子(有機太陽電池、光センサ等)等の有機半導体デバイスに用いることができる。有機半導体膜をこれら有機半導体デバイスに用いる場合は、本発明の一態様に係る化合物を配向処理によって配向させて用いることが、電子輸送性又はホール輸送性を向上させる上でより好ましい。
【0121】
有機半導体膜は、電子輸送性及び動作安定性に優れた有機半導体であり、特に、有機薄膜トランジスタ、有機太陽電池、光センサ等の有機半導体デバイスの材料として好適に利用可能である。
【0122】
(有機半導体膜の製造方法)
有機半導体膜の製造方法は、前述した有機半導体膜形成用組成物を基板上に塗布する工程を有する方法であれば、特に限定されない。
【0123】
本発明において、有機半導体膜形成用組成物を基板上に塗布するとは、有機半導体膜形成用組成物を基板上に直接塗布する態様のみならず、基板上に設けられた別の層を介して基板の上方に有機半導体膜形成用組成物を塗布する態様(基板と有機半導体膜形成用組成物との間に別の層が存在する状態で当該有機半導体膜形成用組成物を塗布する態様)も含むこととする。上記別の層(有機半導体膜に接して有機半導体膜の土台となる層)は、有機薄膜トランジスタの構造によって必然的に定まる。例えば、当該構造がボトムゲート型の場合には、上記別の層はゲート絶縁膜であり、トップゲート型(トップゲート-ボトムコンタクト型及びトップゲート-トップコンタクト型)の場合には、上記別の層はソース電極又はドレイン電極である。
【0124】
有機半導体膜を形成するときに、基板を加熱又は冷却してもよい。基板の温度を変化させることで、膜質、又は、膜中における本発明の一態様に係る化合物のパッキングを制御することができる。
【0125】
基板の材料は、例えば有機薄膜トランジスタとしての特性を阻害しない材料であればよく、特に限定されない。基板としては、例えば、ガラス基板、シリコン基板、フレキシブルであってもよいフィルム基板、及びプラスチック基板を用いることができる。
【0126】
基板の温度は、特に限定されない。当該温度は、例えば、0~200℃の範囲内で設定されることが好ましく、15~100℃の範囲内で設定されることがより好ましく、20~95℃の範囲内で設定されることが特に好ましい。
【0127】
有機半導体膜を形成する方法は、特に限定されず、真空プロセス又は溶液プロセスが挙げられ、何れの方法も好ましい。真空プロセスとしては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、又は分子ビームエピタキシー(Molecular Beam Epitaxy:MBE)法等の物理気相成長法、又は、プラズマ重合等の化学気相蒸着(Chemical Vapor Deposition:CVD)法が挙げられる。中でも、真空蒸着法が好ましい。溶液プロセスにおいては、上記溶媒を含有する有機半導体膜形成用組成物を用いることが好ましい。
【0128】
本発明の一態様に係る化合物は、大気下(空気中)においても安定である。従って、溶液プロセスは大気下において行うことができ、更には、本発明の有機半導体膜形成用組成物を大面積で塗布することができる。
【0129】
溶液プロセスにおける、有機半導体膜形成用組成物の塗布方法としては、通常の方法を用いることができる。塗布方法としては、例えば、ドロップキャスト法、キャスト法、ディップコート法、ダイコーター法、ロールコーター法、バーコーター法、又はスピンコート法等の塗布法、インクジェット法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、フレキソグラフィー印刷法、オフセット印刷法、又はマイクロコンタクト印刷法等の各種印刷法、又は、Langmuir-Blodgett(LB)法等の方法が挙げられる。中でも、ドロップキャスト法、キャスト法、スピンコート法、インクジェット法、グラビア印刷法、フレキソグラフィー印刷法、オフセット印刷法、又はマイクロコンタクト印刷法が好ましい。
【0130】
溶液プロセスにおいては、好ましくは、基板上に塗布した有機半導体膜形成用組成物を乾燥させる。乾燥は徐々に行うことが更に好ましい。
【0131】
有機半導体膜形成用組成物の乾燥は、加熱した基板上で、自然乾燥又は加熱乾燥させてから減圧乾燥することが、膜質の点でより好ましい。自然乾燥又は加熱乾燥時の基板の温度は、20~100℃であることが好ましく、20~80℃であることがより好ましい。自然乾燥又は加熱乾燥時間は、0.5~20時間であることが好ましく、1~10時間であることがより好ましい。
【0132】
減圧乾燥時の温度は、20~100℃であることが好ましく、20~80℃であることがより好ましい。減圧乾燥時間は、1~20時間であることが好ましく、2~10時間であることがより好ましい。減圧乾燥時の圧力は、10-6~10-2Paであることが好ましく、10-5~10-3Paであることがより好ましい。
【0133】
このようにして乾燥した有機半導体膜形成用組成物を必要により成形等して、所定形状又は所定パターンとすることもできる。
【0134】
(有機薄膜トランジスタ)
次に、本発明の一態様に係る化合物を用いた前述の有機半導体デバイスの中でもより好ましい形態である、有機薄膜トランジスタ(有機TFTとも称する)に関して説明する。
【0135】
有機薄膜トランジスタは、前述した有機半導体膜を備えている。これにより、本発明の一態様に係る有機薄膜トランジスタは、高いキャリア移動度を示し、しかも大気下(空気中)に置いても経時による特性の低下を効果的に抑えられ、安定駆動する。
【0136】
本発明において、大気下での周辺温度及び湿度は、有機薄膜トランジスタの使用環境での温度及び湿度であれば特に限定されず、例えば、温度としては室温(25±15℃)、湿度としては10~90RH%が挙げられる。
【0137】
本発明の一態様に係る有機薄膜トランジスタは、電界効果型トランジスタ(Field Effect Transistor、FET)として用いられることが好ましく、ゲート-チャンネル間が絶縁されている絶縁ゲート型FETとして用いられることがより好ましい。
【0138】
本発明の一態様に係る有機薄膜トランジスタの厚さは、特に限定されないものの、より薄いトランジスタとする場合には、トランジスタ全体の厚さを例えば0.1~0.5μmとすることが好ましい。
【0139】
有機薄膜トランジスタは、有機半導体膜(有機半導体層又は半導体活性層とも称する)を有し、更に、ソース電極、ドレイン電極、ゲート電極、及びゲート絶縁膜を有することができる。
【0140】
本発明の一態様に係る有機薄膜トランジスタは、基板上に、ゲート電極と、有機半導体膜と、ゲート電極及び有機半導体膜の間に設けられたゲート絶縁膜と、有機半導体膜に接して設けられ、有機半導体膜を介して連結されたソース電極及びドレイン電極とを有する。この態様に係る有機薄膜トランジスタにおいては、有機半導体膜とゲート絶縁膜とが隣接して設けられる。
【0141】
本発明の一態様に係る有機薄膜トランジスタは、上記各層を備えていればその構造に関しては特に限定されない。有機薄膜トランジスタは、例えば、ボトムコンタクト型(ボトムゲート-ボトムコンタクト型及びトップゲート-ボトムコンタクト型)、又はトップコンタクト型(ボトムゲート-トップコンタクト型及びトップゲート-トップコンタクト型)等の何れの構造を有していてもよい。本発明の一態様に係る有機薄膜トランジスタは、より好ましくは、ボトムゲート-ボトムコンタクト型又はボトムゲート-トップコンタクト型(これらの型をボトムゲート型と総称する)である。
【0142】
以下、有機薄膜トランジスタの構造の一例に関して、図面を参照して説明する。
【0143】
図1は、本発明の第1実施形態の有機薄膜トランジスタ(電界効果型有機薄膜トランジスタ)を模式的に示す断面図である。図1に示すように、有機薄膜トランジスタ100は、基板1と、基板1上に所定の間隔を持って形成されたソース電極5及びドレイン電極6と、ソース電極5及びドレイン電極6を覆うようにして基板1上に形成された有機半導体層2と、有機半導体層2上の一部に形成された絶縁層3と、ソース電極5とドレイン電極6との間における絶縁層3の領域を覆うように当該絶縁層3上の一部に形成されたゲート電極4と、を備えている。
【0144】
図2は、本発明の第2実施形態の有機薄膜トランジスタ(電界効果型有機薄膜トランジスタ)を模式的に示す断面図である。図2に示すように、有機薄膜トランジスタ110は、基板1と、基板1上に形成されたソース電極5と、ソース電極5を覆うようにして基板1上に形成された有機半導体層2と、ソース電極5と所定の間隔を持って有機半導体層2上に形成されたドレイン電極6と、ドレイン電極6の一部を覆うようにして有機半導体層2上の一部に形成された絶縁層3と、ソース電極5とドレイン電極6との間における絶縁層3の領域を覆うように当該絶縁層3上の一部に形成されたゲート電極4と、を備えている。
【0145】
図3は、本発明の第3実施形態の有機薄膜トランジスタ(電界効果型有機薄膜トランジスタ)を模式的に示す断面図である。図3に示すように、有機薄膜トランジスタ120は、基板1と、基板1上に形成された有機半導体層2と、有機半導体層2上に所定の間隔を持って形成されたソース電極5及びドレイン電極6と、ソース電極5及びドレイン電極6の一部を覆うようにして有機半導体層2上の一部に形成された絶縁層3と、ソース電極5とドレイン電極6との間における上記絶縁層3の領域の一部を覆うように当該絶縁層3上の一部に形成されたゲート電極4と、を備えている。
【0146】
図4は、本発明の第4実施形態の有機薄膜トランジスタ(電界効果型有機薄膜トランジスタ)を模式的に示す断面図である。図4に示すように、有機薄膜トランジスタ130は、基板1と、基板1上に形成されたゲート電極4と、ゲート電極4を覆うようにして基板1上に形成された絶縁層3と、絶縁層3の一部を覆うようにして当該絶縁層3上に所定の間隔を持って形成されたソース電極5及びドレイン電極6と、ソース電極5及びドレイン電極6の一部を覆うようにして絶縁層3上に形成された有機半導体層2と、を備えている。
【0147】
図5は、本発明の第5実施形態の有機薄膜トランジスタ(電界効果型有機薄膜トランジスタ)を模式的に示す断面図である。図5に示すように、有機薄膜トランジスタ140は、基板1と、基板1上に形成されたゲート電極4と、ゲート電極4を覆うようにして基板1上に形成された絶縁層3と、絶縁層3の一部を覆うように当該絶縁層3上に形成されたソース電極5と、ソース電極5の一部を覆うようにして絶縁層3上の一部に形成された有機半導体層2と、有機半導体層2の一部を覆うと共にソース電極5と所定の間隔を持って絶縁層3上の一部を覆うようにして形成されたドレイン電極6と、を備えている。
【0148】
図6は、本発明の第6実施形態の有機薄膜トランジスタ(電界効果型有機薄膜トランジスタ)を模式的に示す断面図である。図6に示すように、有機薄膜トランジスタ150は、基板1と、基板1上に形成されたゲート電極4と、ゲート電極4を覆うようにして基板1上に形成された絶縁層3と、絶縁層3上の一部に形成された有機半導体層2と、有機半導体層2の一部を覆うと共に絶縁層3上の一部を覆うようにして形成されたソース電極5と、有機半導体層2の一部を覆うと共にソース電極5と所定の間隔を持って絶縁層3上の一部を覆うようにして形成されたドレイン電極6と、を備えている。
【0149】
図7は、本発明の第7実施形態の有機薄膜トランジスタ(静電誘導型有機薄膜トランジスタ)を模式的に示す断面図である。図7に示すように、有機薄膜トランジスタ160は、基板1と、基板1上に形成されたソース電極5と、ソース電極5上に形成された有機半導体層2と、有機半導体層2上に所定の間隔を持って複数形成されたゲート電極4と、全てのゲート電極4を覆うようにして有機半導体層2上に形成された有機半導体層2aと、有機半導体層2a上に形成されたドレイン電極6と、を備えている。有機半導体層2aを構成する材料は、有機半導体層2を構成する材料と同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0150】
上記第1~第7実施形態の有機薄膜トランジスタにおいては、有機半導体層2(及び有機半導体層2a)は、前述した好適な本発明の一態様に係る化合物を含んでおり、ソース電極5とドレイン電極6との間の電流通路(チャネル)となっている。また、ゲート電極4は、電圧が印加されることによって、電流通路(チャネル)となっている有機半導体層2(及び有機半導体層2a)を通る電流量を制御するようになっている。
【0151】
前述したように、基板1の材料は、例えば有機薄膜トランジスタとしての特性を阻害しない材料であればよく、特に限定されない。基板1としては、例えば、ガラス基板、シリコン基板、フレキシブルであってもよいフィルム基板、及びプラスチック基板を用いることができる。
【0152】
有機半導体層2の形成においては、塗布が可能なように、つまり、有機薄膜トランジスタを製造する上で有利なように、有機溶媒に対して可溶性を示す化合物を用いることが好ましい。本発明の一態様に係る化合物は、優れた溶解性を有していることから、前述した有機半導体膜の製造方法を採用することにより、有機半導体層2となる有機薄膜を良好に形成することができる。
【0153】
絶縁層3の材料は、電気の絶縁性が高い材料であればよく、公知の材料を用いることができる。絶縁層3の材料としては、例えば、SiOx、SiNx、Ta、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、有機ガラス、及びフォトレジストが挙げられる。低電圧化を達成するという観点から、絶縁層3は、誘電率の高い材料で形成されていることが望ましい。
【0154】
絶縁層3上に有機半導体層2を形成する場合は、絶縁層3と有機半導体層2との界面特性を改善するために、絶縁層3の表面をシランカップリング剤等の表面処理剤で処理して表面改質した後に、有機半導体層2を形成することも可能である。表面処理剤としては、長鎖アルキルクロロシラン類、長鎖アルキルアルコキシシラン類、アリールアルキルクロロシラン類、アリールアルキルアルコキシシラン類、フッ素化アルキルクロロシラン類、フッ素化アルキルアルコキシシラン類、又はヘキサメチルジシラザン等のシリルアミン化合物が挙げられる。表面処理剤で処理する前に、絶縁層3の表面を、オゾンUV、又はOプラズマで処理しておくことも可能である。
【0155】
ゲート電極4、ソース電極5、及びドレイン電極6の材料としては、例えば、アルミニウム、金、銀、銅、アルカリ金属、アルカリ土類金属等の金属、及びそれらの半透明膜、透明導電膜が挙げられる。
【0156】
また、作製された有機薄膜トランジスタを保護するために、当該有機薄膜トランジスタ上に保護膜を形成することが好ましい。これにより、有機薄膜トランジスタが大気(空気)から遮断され、有機薄膜トランジスタの特性の低下を抑えることができる。また、保護膜により、有機薄膜トランジスタによって駆動する表示デバイスを当該有機薄膜トランジスタ上に形成する工程における、当該有機薄膜トランジスタへの外部からの影響を低減することができる。
【0157】
保護膜の材料としては、例えば、UV硬化樹脂、熱硬化樹脂、及び無機化合物であるSiONxが挙げられる。有機薄膜トランジスタを保護する方法としては、例えば、当該有機薄膜トランジスタ表面に、UV硬化樹脂、熱硬化樹脂、又はSiONxからなる保護膜を形成する(有機薄膜トランジスタを保護膜でカバーする)方法が挙げられる。大気との遮断を効果的に行うため、有機薄膜トランジスタを作製後、保護膜を形成するまでの工程は、有機薄膜トランジスタを大気に曝すことのない雰囲気下、例えば乾燥した窒素雰囲気下、又は真空下で行うことが好ましい。
【0158】
このような電界効果型有機薄膜トランジスタは、公知の方法、例えば、特開平5-110069号公報に記載の方法に準じて製造することができる。また、静電誘導型有機薄膜トランジスタは、公知の方法、例えば、特開2004-006476号公報に記載の方法に準じて製造することができる。
(有機薄膜トランジスタの用途)
前述の有機薄膜トランジスタは、その用途に関しては特に限定されず、例えば、電子ペーパー、ディスプレイデバイス、センサ、電子タグ等に使用することができる。
【0159】
有機薄膜太陽電池は、有機半導体膜(有機半導体層又は半導体活性層ともいう)を有し、更に、陽極電極と、陰極電極と、正孔輸送層と、電子輸送層とを有することができる。
【0160】
本発明の有機薄膜太陽電池は、上記各層を備えていればよく、その構造に関しては、特に限定されない。有機薄膜太陽電池は、例えば、順層型、逆層型、又は、タンデム型(多接合型)等の何れの構造を有していてもよい。
【0161】
以下、有機薄膜太陽電池に供される有機光電変換素子の一例を、図面を参照して説明する。
【0162】
図8は、本発明の第8実施形態に係る、順層型の有機光電変換素子を模式的に示す断面図である。具体的には、図8の有機光電変換素子は、基板25上に、陽極11、正孔輸送層26、光電変換層14、電子輸送層27、及び陰極12がこの順に積層されてなる構成を有している。なお、基板25は、主に、その上の陽極11を塗布方式で形成することを容易にするために、任意に設けられる部材である。
【0163】
図8に示す有機光電変換素子の作動時において、光は基板25側から照射される。本実施形態において、陽極11は、照射された光が光電変換層14に届くように、透明な電極材料(例えば、ITO)で構成される。基板25側から照射された光は、透明な陽極11及び正孔輸送層26を経て光電変換層14へと届く。
【0164】
光電変換層14は、p型有機半導体及びn型有機半導体を含む。この光電変換層14に光が入射されると、p型有機半導体の電子が最高被占有軌道(以下、「HOMO」と称する場合がある)から最低空軌道(以下、「LUMO」と称する場合がある)に励起され、次いでこの電子はn型有機半導体の伝導帯に移動する。その後、当該電子は、電子輸送層27及び陰極12を経た後、外部回路を経由して共役系高分子化合物の伝導帯に移動する。そして、p型有機半導体の伝導帯で生じた電子は、LUMOのレベルに移動する。
【0165】
一方、光電変換層14に光が入射されると、p型有機半導体のHOMOのレベルに発生した正孔は、正孔輸送層26及び陽極11を経た後、外部回路を経由してn型有機半導体の価電子帯に移動する。こうして光電変換層14において光電流が流れ、発電が行われる。このような光電荷分離は、p型有機半導体とn型有機半導体の接触界面が大きいほど促進されると考えられていることから、本発明では、p型有機半導体とn型有機半導体とが一様に混合されたバルクヘテロジャンクション型の光電変換層(図示は省略する)が用いられることが特に好ましい。但し、光電変換層14は、このような形態のみに限定されない。
【0166】
なお、正孔輸送層26は、正孔の移動度が高い材料で形成されており、光電変換層14のpn接合界面で精製した正孔を、効率よく陽極11へと輸送する機能を担っている。一方、電子輸送層27は、電子の移動度が高い材料で形成されており、光電変換層14のpn接合界面で生成した電子を、効率よく陰極12へと輸送する機能を担っている。
【0167】
図9は、本発明の第9実施形態に係る、逆層型の有機光電変換素子を模式的に示す断面図である。図9の有機光電変換素子は、図8の有機光電変換素子と比較して、陽極11と陰極12とが逆の位置に配置され、また、正孔輸送層26と電子輸送層27とが逆の位置に配置されている点が異なる。即ち、図9の有機光電変換素子は、基板25上に、陰極12、電子輸送層27、光電変換層14、正孔輸送層26、及び陽極11がこの順に積層されてなる構成を有している。このような構成を有することにより、光電変換層14のpn接合界面で生成される電子は、電子輸送層27を経て陰極12へと輸送され、正孔は、正孔輸送層26を経て陽極11へと輸送される。
【0168】
図10は、本発明の第10実施形態に係る、タンデム型(多接合型)の光電変換層を備えた有機光電変換素子を模式的に示す断面図である。図10の有機光電変換素子は、図8の有機光電変換素子と比較して、光電変換層14に替えて、第1の光電変換層14aと、第2の光電変換層14bと、これら二つの光電変換層の間に介在する電荷再結合層38との積層体が配置されている点が異なる。図10に示すタンデム型の有機光電変換素子では、第1の光電変換層14a及び第2の光電変換層14bに、それぞれ吸収波長の異なる光電変換材料(p型有機半導体及びn型有機半導体)を用いることにより、より広い波長域の光を効率よく電気に変換することが可能となる。
【0169】
本発明は前述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態に関しても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0170】
上述した通り、本発明の一実施形態には下記〔1〕~〔8〕で示される発明が含まれる。
【0171】
〔1〕本発明の第1の態様に係る化合物は、一般式(1)で表されることを特徴とする。
【0172】
【化20】
(一般式(1)中、A及びAは互いに独立して、CM又はNであり、Mは、水素原子、ハロゲン原子、Zで置換されていてもよいアルキル基、シアノ基、Zで置換されていてもよいアルコキシ基、Zで置換されていてもよいアルキルチオ基、Zで置換されていてもよいアルコキシカルボニル基、Zで置換されていてもよいアルキルカルボニル基、又は、Zで置換されていてもよいアリール基であり;
及びQは互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、Zで置換されていてもよいアリール基、Zで置換されていてもよい複素環基、ホルミル基、ボロン酸基、ボロン酸エステル基、ボロン酸ジアミノナフタレンアミド基、ボロン酸N-メチルイミノ二酢酸エステル基、トリフルオロボレート塩基、トリオールボレート塩基、トリアルキルシリル基、又はトリアルキルスタニル基であり;
及びXは互いに独立して、
【0173】
【化21】
であり、M~Mは互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、Zで置換されていてもよいアルキル基、Zで置換されていてもよいアルコキシ基、Zで置換されていてもよいアルキルエステル基、Zで置換されていてもよいアルコキシカルボニル基、Zで置換されていてもよいアルキルアミノカルボニル基、Zで置換されていてもよいアシル基、Zで置換されていてもよいアミノ基、Zで置換されていてもよいアシルアミノ基、Zで置換されていてもよいアリールオキシ基、Zで置換されていてもよいアリールオキシカルボニル基、Zで置換されていてもよいアシルオキシ基、Zで置換されていてもよいアルコキシカルボニルアミノ基、Zで置換されていてもよいアリールオキシカルボニルアミノ基、Zで置換されていてもよいアルキルチオ基、Zで置換されていてもよいアリールチオ基、Zで置換されていてもよいアリール基、又は、Zで置換されていてもよい複素環基であり、M及びMは一緒になって環を形成していてもよく;Zはアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、アルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、シリル基、スルホニル基、スルフィニル基、ウレイド基、リン酸アミド基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、メルカプト基、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、又はイミノ基である)。
【0174】
〔2〕本発明の第2の態様に係る化合物は、一般式(2)で表されることを特徴とする。
【0175】
【化22】
(一般式(2)中、A及びAは互いに独立して、CM又はNであり、Mは、水素原子、ハロゲン原子、Zで置換されていてもよいアルキル基、シアノ基、Zで置換されていてもよいアルコキシ基、Zで置換されていてもよいアルキルチオ基 、Zで置換されていてもよいアルコキシカルボニル基、Zで置換されていてもよいアルキルカルボニル基、又は、Zで置換されていてもよいアリール基であり;
及びJは互いに独立して、電子供与性又は電子受容性を付与する骨格であり;
及びXは互いに独立して、
【0176】
【化23】
であり、M~Mは互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、Zで置換されていてもよいアルキル基、Zで置換されていてもよいアルコキシ基、Zで置換されていてもよいアルキルエステル基、Zで置換されていてもよいアルコキシカルボニル基、Zで置換されていてもよいアルキルアミノカルボニル基、Zで置換されていてもよいアシル基、Zで置換されていてもよいアミノ基、Zで置換されていてもよいアシルアミノ基、Zで置換されていてもよいアリールオキシ基、Zで置換されていてもよいアリールオキシカルボニル基、Zで置換されていてもよいアシルオキシ基、Zで置換されていてもよいアルコキシカルボニルアミノ基、Zで置換されていてもよいアリールオキシカルボニルアミノ基、Zで置換されていてもよいアルキルチオ基、Zで置換されていてもよいアリールチオ基、Zで置換されていてもよいアリール基、又は、Zで置換されていてもよい複素環基であり、M及びMは一緒になって環を形成していてもよく;Zはアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、アルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、シリル基、スルホニル基、スルフィニル基、ウレイド基、リン酸アミド基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、メルカプト基、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、又はイミノ基である)。
【0177】
〔3〕上記一般式(2)で表される化合物は、一般式(2-1)で表される化合物であることがより好ましい。
【0178】
【化24】
(一般式(2-1)中、A、A、X及びXは、前述の通りであり;
、D、G及びGは互いに独立して、CM又はNであり、Mは、前述の通りであり;
m及びnは互いに独立して、0又は自然数であり;
及びTは互いに独立して、
【化25】
【化26】
【化27】
【0179】
【化28】
であり、R~Rは互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、又はアリール基であり、*は結合手を表す)。
【0180】
〔4〕上記一般式(2-1)で表される化合物は、一般式(2-2)で表される化合物であることがより好ましい。
【0181】
【化29】
(一般式(2-2)中、A、A、T、T、X、X、m及びnは、前述の通りであり;
~Mは互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、又はアリール基である)。
【0182】
〔5〕本発明の第3の態様に係る有機半導体材料は、本発明の第1の態様又は第2の態様に係る化合物を含有することを特徴とする。
【0183】
〔6〕本発明の第4の態様に係る有機半導体デバイスは、本発明の第3の態様に係る有機半導体材料を含有することを特徴とする。
【0184】
〔7〕本発明の第5の態様に係る一般式(1)で表される化合物の製造方法は、下記(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、又は(6)の何れかの方法によることを特徴とする;
(1)(i)一般式(A5):
【0185】
【化30】
(一般式(A5)中、Halは互いに独立して、ハロゲン原子であり;
及びXは、前述の通りである)
で表される化合物とトリアルキルシリルアセチレンとを反応させて、一般式(A6):
【0186】
【化31】
(一般式(A6)中、TASはトリアルキルシリル基であり;
及びXは、前述の通りである)
で表される化合物を製造する第1a工程、
(ii)第1a工程で得た一般式(A6)の化合物と硫化剤とを反応させ、一般式(A7):
【0187】
【化32】
(一般式(A7)中、TAS、X及びXは、前述の通りであり;
10及びR11は互いに独立して、Zで置換されていてもよいアルキル基であり、Zは前述の通りである)
で表される化合物を製造する第2a工程、及び、
(iii)第2a工程で得た一般式(A7)の化合物とハロゲン化剤とを反応させ、一般式(1-1):
【0188】
【化33】
(一般式(1-1)中、TAS、Hal、X及びXは、前述の通りである)
で表される化合物を製造する第3a工程を含む、上記一般式(1)に包含される上記一般式(1-1)で表される化合物の製造方法;
(2)上記第3a工程で得た一般式(1-1)の化合物とホウ素化合物とを反応させて、一般式(1-2):
【0189】
【化34】
(一般式(1-2)中、TAS、M、X及びXは、前述の通りである)
で表される化合物を製造する第4a工程を含む、上記一般式(1)に包含される上記一般式(1-2)で表される化合物の製造方法;
(3)上記第4a工程で得た一般式(1-2)の化合物とハロゲン化剤とを反応させて、一般式(1-3):
【0190】
【化35】
(一般式(1-3)中、M、X及びXは、前述の通りであり;
1a及びQ2aは互いに独立して、ハロゲン原子である)
で表される化合物を製造する第5a工程を含む、上記一般式(1)に包含される上記一般式(1-3)で表される化合物の製造方法;
(4)上記一般式(1-3)の化合物と、ホウ素化合物又はスズ化合物とを反応させて、一般式(1-4):
【0191】
【化36】
(一般式(1-4)中、M、X及びXは、前述の通りであり;
1b及びQ2bは互いに独立して、水素原子、Zで置換されていてもよいアリール基、Zで置換されていてもよい複素環基、ボロン酸基、ボロン酸エステル基、ボロン酸ジアミノナフタレンアミド基、ボロン酸N-メチルイミノ二酢酸エステル基、トリフルオロボレート塩基、トリオールボレート塩基、トリアルキルシリル基、又はトリアルキルスタニル基である)
を製造する第6a工程を含む、上記一般式(1)に包含される上記一般式(1-4)で表される化合物の製造方法;
(5)上記一般式(1-4)の化合物をホルミル化することによる、一般式(1-5):
【0192】
【化37】
(一般式(1-5)中、M、X及びXは、前述の通りであり;Q1c及びQ2cは互いに独立して、ホルミル基である)で表される化合物の製造方法:
(6)(i)一般式(A9):
【0193】
【化38】
(一般式(A9)中、X及びXは、前述の通りである)
で表される化合物とハロゲン化剤とを反応させて、一般式(A10):
【0194】
【化39】
(一般式(A10)中、X、X及びHalは、前述の通りである)
で表される化合物を製造する第1b工程、
(ii)第1b工程で得た一般式(A10)の化合物と、アミノ化剤とを反応させて、一般式(A11):
【0195】
【化40】
(一般式(A11)中、X及びXは、前述の通りである)
で表される化合物を製造する第2b工程、
(iii)第2b工程で得た一般式(A11)の化合物と、Q-COClで表される化合物(Qは、前述の通りである)及びQ-COClで表される化合物(Qは、前述の通りである)とを反応させて、一般式(A12):
【0196】
【化41】
(一般式(A12)中、X、X、Q及びQは、前述の通りである)
で表される化合物を製造する第3b工程、及び、
(iv)第3b工程で得た一般式(A12)の化合物と硫化剤とを反応させて、一般式(1-6):
【0197】
【化42】
(一般式(1-6)中、X、X、Q及びQは、前述の通りである)
で表される化合物を製造する第4b工程を含む、上記一般式(1)に包含される上記一般式(1-6)で表される化合物の製造方法。
【0198】
〔8〕本発明の第6の態様に係る一般式(2)で表される化合物の製造方法は、上記一般式(1)で表される化合物中のQ及びQとして、電子供与性又は電子受容性を付与する骨格であるJ及びJを導入することを特徴とする。
【実施例
【0199】
以下、実施例に基づき、有機半導体材料を構成する本発明の一態様に係る化合物の各種合成方法、並びに、当該化合物を含有する有機半導体材料を用いた有機半導体デバイスとしての有機太陽電池の特性に関して、更に詳しく説明する。なお、これら合成方法及び特性に関する記載は、本発明の実施形態の例示であって、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0200】
<測定条件等>
核磁気共鳴(NMR)スペクトルは、JEOL(日本電子株式会社)製の商品名「JMM-ECS400(1H測定時400MHz)」を用いて測定した。ケミカルシフトは、百万分率(ppm)で表される。内部標準(0ppm)には、テトラメチルシラン(TMS)を用いた。結合定数(J)は、ヘルツで表され、略号「s」、「d」、「t」、「q」、「m」、及び「br」は、それぞれ、一重線(singlet)、二重線(doublet)、三重線(triplet)、四重線(quartet)、多重線(multiplet)、及び広幅線(broad)を表す。また、質量分析(MALDI TOFMS)は、株式会社島津製作所製の商品名「AXIMA」を用いて測定した。元素分析は、株式会社ジェイ・サイエンス・ラボ製の商品名「JM10」を用いて測定した。カラムクロマトグラフィー分離におけるシリカゲルは、関東化学株式会社製の商品名「シリカゲル 60N」(40~50μm)を用いた。実施例で用いた全ての化学物質は試薬級であり、和光純薬工業株式会社、東京化成工業株式会社、関東化学株式会社、ナカライテスク株式会社、又はシグマアルドリッチジャパン株式会社より購入した。
【0201】
[実施例1]
(化合物1の合成)
国際公開第2018/123207号公報に記載の実施例に基づき、下記化合物1を合成した。
【0202】
(化合物2の合成)
20mL試験管に、化合物1(172mg,0.393mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(45mg,0.039mmol)、ヨウ化銅(7mg,0.04mmol)、トリエチルシリルアセチレン(551mg,3.93mmol)、トルエン(7mL)、及びトリエチルアミン(3.5mL)を加えて反応液とし、試験管内を窒素置換した。その後、反応液を110℃で18時間撹拌した。反応液を室温まで冷却した後に、反応液にクロロホルムを加え、セライトで濾過後、溶媒を減圧下で留去した。得られた反応混合物を、ヘキサン:塩化メチレン(10:1)溶媒を移動層とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製して下記化合物2を得た(黄褐色固体,170mg,収率78%)。反応式を以下に示す。
【0203】
【化43】
得られた化合物2の物性データは次の通りであった。
H-NMR(400MHz,CDCl,TMS)δ=1.15(t,J=8.2Hz,18H),0.81(q,J=8.2Hz,12H)。
【0204】
(化合物3の合成)
200mLナス型フラスコに、化合物2(186mg,0.334mmol)及びテトラヒドロフラン(15mL)を入れ、化合物2を溶解させた。次に、氷浴下でナトリウムチオメトキシド(70mg,1.0mmol)を加え、0℃で3時間撹拌した。その後、反応液に氷水を加え、クロロホルムで抽出し、有機層を飽和食塩水、及び水で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過した後、溶媒を減圧下で留去して下記化合物3を得た(赤褐色固体,170mg,収率83%)。反応式を以下に示す。
【0205】
【化44】
得られた化合物3の物性データは次の通りであった。
H-NMR(400MHz,CDCl,TMS)δ=2.76(s,6H),1.17(t,J=7.8Hz,18H),0.83(q,J=7.8Hz,12H)。
【0206】
(化合物4の合成)
200mLナス型フラスコに、化合物3(170mg,0.277mmol)及び塩化メチレン(50mL)を入れ、化合物3を溶解させた。次に、ヨウ素(353mg,1.39mmol)を加え、室温で17時間撹拌した。その後、溶媒を減圧下で留去した。得られた反応混合物にメタノールを加え、析出した固体を濾取し、当該固体をメタノールで洗浄して下記化合物4を得た(褐色固体,214mg,収率92%)。反応式を以下に示す。
【0207】
【化45】
得られた化合物4の物性データは次の通りであった。
H-NMR(400MHz,CDCl,TMS)δ=1.24(q,J=7.8Hz,12H),1.11(t,J=7.8Hz,18H)。
【0208】
(化合物5の合成)
50mL試験管に、化合物4(221mg,0.252mmol)、オクチルボロン酸(199mg,1.26mmol)、SPhos(2-Dicyclohexylphosphino-2’,6’-dimethoxybiphenyl)(8mg,0.02mmol)、酢酸パラジウム(2mg,0.01mmol)、及びトルエン10mLを加えて反応液とし、試験管内を窒素置換した。その後、反応液を100℃で16時間撹拌した。反応液を室温まで冷却した後に、反応液に水を加え、トルエンで抽出し、有機層を飽和食塩水、及び水で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過した後、溶媒を減圧下で留去した。得られた反応混合物を、ヘキサンを移動層とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製して下記化合物5を得た(黄色固体,94mg,収率46%)。反応式を以下に示す。
【0209】
【化46】
得られた化合物5の物性データは次の通りであった。
HNMR(400MHz,CDCl,TMS)δ=3.49-3.45(m,4H),1.82-1.72(m,4H),1.66-1.59(m,4H),1.45-1.33(m,16H),1.10(s,30H),0.91(t,J=7.0Hz,6H)。
【0210】
(化合物6の合成)
100mLナス型フラスコに、化合物5(67mg,0.083mmol)及びクロロホルム(8mL)を入れ、化合物5を溶解させた。次に、臭素(66mg,0.41mmol)を加え、室温で30分間撹拌した後、40℃で1時間撹拌した。反応液を室温まで冷却した後に、反応液にメタノールを加えた。得られた反応混合物を濾過し、メタノールで洗浄することで下記化合物6を得た(黄褐色固体,54mg,収率88%)。反応式を以下に示す。
【0211】
【化47】
得られた化合物6の物性データは次の通りであった。
H-NMR(400MHz,CDCl,TMS)δ=3.42(t,J=7.8Hz,4H),1.77(q,7.8Hz,4H),1.44-1.24(m,16H),0.89(t,J=7.0Hz,6H)。MS(MALDI)m/z=737.79(M)。
【0212】
(化合物7の合成)
反応容器に、化合物6(30mg,0.04mmol)、4-(2-エチルヘキシル)-2-トリブチルスタニルチオフェン(60mg,0.12mmol)、触媒であるテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(5mg,0.004mmol)、及びトルエン(2mL)を加えて反応液とし、反応容器を窒素置換した。その後、μ-ウェーブリアクターを用いて反応液を180℃で10分間反応させた。反応液を室温まで冷却した後に、反応液に水を加え、クロロホルムで抽出し、有機層を飽和食塩水、及び水で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過した後、溶媒を減圧下で留去した。得られた反応混合物を、ヘキサン/クロロホルムを移動層とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製して下記化合物7を得た(赤色固体,30mg,収率75%)。反応式を以下に示す。
【0213】
【化48】
得られた化合物7の物性データは次の通りであった。
H-NMR(400MHz,CDCl,TMS)δ=7.19(s,2H),7.02(s,2H),3.43-3.35(m,4H),2.69-2.60(m,4H),1.80-1.65(m,6H),1.5-1.2(m,36H),1.0-0.89(m,18H)。
【0214】
(化合物8の合成)
反応容器に、化合物7(30mg,0.03mmol)と1,2-ジクロロエタン(3mL)とを加えて反応液とした。次に、反応液を0℃に冷却した後に、氷浴下でN,N-ジメチルホルムアミド(68mg)、及び塩化ホスホリル(120mg,0.80mmol)を加えた。その後、反応液を95℃に昇温して12時間反応させた。反応液を室温まで冷却した後に、反応液に水を加え、クロロホルムで抽出し、有機層を飽和食塩水、及び水で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過した後、溶媒を減圧下で留去した。得られた反応混合物を、ヘキサン/クロロホルムを移動層とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製して下記化合物8を得た(橙色固体,25mg,収率80%)。反応式を以下に示す。
【0215】
【化49】
得られた化合物8の物性データは次の通りであった。
H-NMR(400MHz,CDCl,TMS)δ=10.06(s,2H),7.19(s,2H),3.35(t,J=8.0Hz,4H),2.93(d,J=6.8Hz,2H),1.8-1.2(m,36H),1.0-0.90(m,18H)。
【0216】
(化合物9の合成)
反応容器に、化合物8(25mg,0.02mmol)、3-エチルロダニン(24mg,0.15mmol)、及びクロロホルム(2mL)を加えて反応液とした。次に、反応液に一滴のピペリジンを加えた後、反応容器を窒素置換した。その後、反応液を12時間還流させた。反応液を室温まで冷却した後に、反応液に水を加え、クロロホルムで抽出し、有機層を飽和食塩水、及び水で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過した後、溶媒を減圧下で留去した。得られた反応混合物を、クロロホルムを移動層とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製した後、メタノールを加えて再沈殿させて下記化合物9を得た(橙色固体,20mg,収率65%)。反応式を以下に示す。
【0217】
【化50】
得られた化合物9の物性データは次の通りであった。
H-NMR(400MHz,CDCl,TMS)δ=7.95(s,2H),7.37(s,2H),4.3-4.2(m,4H),2.79(d,J=7.2Hz,4H),2.0-1.8(m,6H),1.8-1.6(m,6H),1.4-1.2(m,40H),1.00-0.80(m,18H)。MS(MALDI)m/z=1311.68(M)。
【0218】
[実施例2]
(化合物11の合成)
反応容器に、化合物(12mg,0.016mmol)、化合物10(18mg,0.036mmol)、1mol/L炭酸カリウム水溶液(0.2mL,0.2mmol)、触媒であるテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(2mg,0.002mmol)、及びトルエン(2mL)を加えて反応液とし、反応容器を窒素置換した。その後、μ-ウェーブリアクターを用いて、反応液を150℃で10分間反応させた。反応液を室温まで冷却した後に、反応液に水を加え、クロロホルムで抽出し、有機層を飽和食塩水、及び水で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過した後、溶媒を減圧下で留去した。得られた反応混合物を、ヘキサン/クロロホルムを移動層とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製して下記化合物11を得た(橙色固体,10mg,収率48%)。反応式を以下に示す。
【0219】
【化51】
得られた化合物11の物性データは次の通りであった。
H-NMR(400MHz,CDCl,TMS)δ=8.23(s,2H),8.11-8.08(m,4H),8.04-7.96(m,2H),7.95-7.87(m,2H),7.83(d,J=7.2Hz,2H),7.60-7.52(m,2H),4.45-4.36(m,2H),3.40-3.20(m,4H),2.18-2.06(m,2H),1.88-1.76(m,2H),1.70-1.58(m,8H),1.42-0.92(m,28H),0.88-0.85(m,6H),0.70(t,J=7.2Hz,6H)。
【0220】
<最高被占有軌道及び最低空軌道の軌道エネルギー>
続いて、一般式(1)で表される本発明の一態様に係る化合物に包含される、以下に示す化合物(i-1)~(i-20)の基本骨格の最高被占有軌道(以下、「HOMO」と称する場合がある)及び最低空軌道(以下、「LUMO」と称する場合がある)の軌道エネルギーを算出した。その結果を第1表に示す。
【0221】
算出方法及び条件:DFT法(密度汎関数理論)にて最低空軌道エネルギーを算出した。基底関数、汎関数は、下記関数を使用した。
B3LYP/6-31G(d,p)
【化52】
【化53】
【0222】
【表1】
続いて、合成した化合物9を用いて有機太陽電池を作製し、光電変換効率等の性能を評価した。化合物9は、本発明の一態様に係る一般式(2)で表される化合物に包含される。一般式(2)で表される化合物としては、例えば、以下の第2表に示した化合物が挙げられる。これら化合物は、前述した化合物(2)の製造方法、並びに、実施例1及び実施例2に記載の方法に準じて製造することができる。なお、表中のMeはメチル基を、Etはエチル基を、*は結合手を表す。また、化合物(2)-11、(2)-12、(2)-23及び(2)-24は、前述した化合物(i-17)~(i-20)と同様に、電子の共鳴により、2種類の表記が可能であるものの、本願の明細書中の他の部分の記載と同様に、表中では1種類の表記で代表させている。
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【0223】
[実施例3]
(有機太陽電池の性能評価)
合成した化合物9をn型有機半導体材料として用いて有機太陽電池を作製し、得られた有機太陽電池の評価を行った。
【0224】
基板としてガラス基板を、p型有機半導体材料としてP3HT(ポリ(3-ヘキシルチオフェン))を、電極としてITO(陰極)及びアルミニウム(陽極)を、正孔輸送材料としてPEDOT:PSS(ポリ(4-スチレンスルホン酸)をドープしたポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン))を、電子輸送材料としてCaを、それぞれ用いた。また、事前に、P3HT(20mg)及び化合物9(20mg)をクロロホルム(1mL)に溶解させた溶液を準備した。
【0225】
先ず、ITO膜がパターニングされたガラス基板を、トルエン、アセトン、水、及びイソプロパノールで順にそれぞれ15分間、超音波洗浄した後、プラズマ洗浄機に入れた。そして、プラズマ洗浄機に酸素ガスを流入しながら、発生したプラズマによってガラス基板表面を20分間、洗浄処理した。更に、オゾンUVを90分間照射して、ガラス基板表面を洗浄した。その後、スピンコート法製膜装置を用い、上記ITO膜上にPEDOT:PSS薄膜を形成した。次いで、ガラス基板を、135℃で10分間、アニール処理した。形成したPEDOT:PSSの薄膜は30nmであった。更に、スピンコート法製膜装置を用い、事前に準備した前述の溶液を、上記PEDOT:PSS薄膜上にスピンコート(3000rpm,1分間)して有機半導体層を形成させた。これにより、積層体を得た。その後、積層体を、120℃で10分間、アニール処理した。続いて、小型高真空蒸着装置を用い、作製した積層体を小型高真空蒸着装置のマスクの上に置き、電子輸送層としてのCa(20nm)、及び金属電極としてのアルミニウム層(80nm)を順次製膜し、3mm角の有機太陽電池を作製した。
【0226】
得られた有機太陽電池に、ソーラーシュミレーター(AM1.5Gフィルター、放射強度:100mW/cm)を用いて一定の光を照射して、発生する電流と電圧とを測定した。図11は、上記有機太陽電池における電流密度-電圧特性を示すグラフである。
【0227】
図11のグラフに基づいて、短絡電流密度Jsc(mA/cm)、開放電圧Voc(V)、及び形状因子FFを求めたところ、Jsc=2.0mA/cm、Voc=0.58V、FF=0.44であった。「光電変換効率(η)=(Jsc×Voc×FF)/100」であるので、この式を用いて算出したところ、上記有機太陽電池の光電変換効率は0.51%であった。
【0228】
[実施例4]
(有機太陽電池の性能評価)
合成した化合物11を、n型有機半導体材料として用いて有機太陽電池を作製し、得られた有機太陽電池の評価を行った。
【0229】
基板としてガラス基板を、p型有機半導体材料としてP3HT(ポリ(3-ヘキシルチオフェン))を、電極としてITO(陰極)及びアルミニウム(陽極)を、正孔輸送材料としてPEDOT:PSS(ポリ(4-スチレンスルホン酸)をドープしたポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン))を、電子輸送材料としてCaを、それぞれ用いた。また、事前に、P3HT(10mg)及び化合物11(10mg)をクロロホルム(1mL)に溶解させた溶液を準備した。
【0230】
先ず、ITO膜がパターニングされたガラス基板を、トルエン、アセトン、水、及びイソプロパノールで順にそれぞれ15分間、超音波洗浄した後、プラズマ洗浄機に入れた。そして、プラズマ洗浄機に酸素ガスを流入しながら、発生したプラズマによってガラス基板表面を20分間、洗浄処理した。更に、オゾンUVを90分間照射して、ガラス基板表面を洗浄した。その後、スピンコート法製膜装置を用い、上記ITO膜上にPEDOT:PSS薄膜を形成した。次いで、ガラス基板を、135℃で10分間、アニール処理した。形成したPEDOT:PSSの薄膜は30nmであった。更に、スピンコート法製膜装置を用い、事前に準備した前述の溶液を、上記PEDOT:PSS薄膜上にスピンコート(3000rpm,1分間)して有機半導体層を形成させた。これにより、積層体を得た。その後、積層体を、120℃で10分間、アニール処理した。続いて、小型高真空蒸着装置を用い、作製した積層体を小型高真空蒸着装置のマスクの上に置き、電子輸送層としてのCa(20nm)、及び金属電極としてのアルミニウム層(80nm)を順次製膜し、3mm角の有機太陽電池を作製した。
【0231】
得られた有機太陽電池に、ソーラーシュミレーター(AM1.5Gフィルター、放射強度:100mW/cm)を用いて一定の光を照射して、発生する電流と電圧とを測定した。図12は、上記有機太陽電池における電流密度-電圧特性を示すグラフである。
【0232】
図12のグラフに基づいて、短絡電流密度Jsc(mA/cm)、開放電圧Voc(V)、及び形状因子FFを求めたところ、Jsc=4.4mA/cm、Voc=0.90V、FF=0.51であった。「光電変換効率(η)=(Jsc×Voc×FF)/100」であるので、この式を用いて算出したところ、上記有機太陽電池の光電変換効率は2.0%であった。
【0233】
このように、本発明の一態様に係る化合物は、n型有機半導体材料として、例えばフラーレン誘導体の代替品となり得る高い光電変換効率を達成することができることが実証された。
【産業上の利用可能性】
【0234】
本発明の一態様に係る化合物を用いた有機半導体材料は、光電変換効率や電荷移動度が高く、優れた半導体特性を有するため、光電変換素子、有機薄膜トランジスタ(電界効果トランジスタ等)、発光デバイス等の種々の半導体デバイスに利用することができる。
【符号の説明】
【0235】
1 基板
2 有機半導体層
3 絶縁層
4 ゲート電極
5 ソース電極
6 ドレイン電極
100、110、120、130、140、150、160 有機薄膜トランジスタ
11 陽極
12 陰極
14 光電変換層
25 基板
26 正孔輸送層
27 電子輸送層
38 電荷再結合層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12