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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-11
(45)【発行日】2023-10-19
(54)【発明の名称】AM装置
(51)【国際特許分類】
   B22F 12/45 20210101AFI20231012BHJP
   B22F 10/25 20210101ALI20231012BHJP
   B22F 10/28 20210101ALI20231012BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20231012BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20231012BHJP
   B29C 64/153 20170101ALI20231012BHJP
   B29C 64/209 20170101ALI20231012BHJP
   B29C 64/268 20170101ALI20231012BHJP
   B29C 64/245 20170101ALI20231012BHJP
   B29C 64/236 20170101ALI20231012BHJP
【FI】
B22F12/45
B22F10/25
B22F10/28
B33Y30/00
B33Y10/00
B29C64/153
B29C64/209
B29C64/268
B29C64/245
B29C64/236
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019160875
(22)【出願日】2019-09-04
(65)【公開番号】P2021038438
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【弁理士】
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】篠崎 弘行
【審査官】池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-075362(JP,A)
【文献】特開2018-104769(JP,A)
【文献】特開2017-030225(JP,A)
【文献】特開2002-038201(JP,A)
【文献】特表2016-535170(JP,A)
【文献】特表2006-519925(JP,A)
【文献】特表2016-533923(JP,A)
【文献】国際公開第2018/217903(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/180314(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 10/00 - 12/90
B33Y 30/00
B33Y 10/00
B29C 64/153
B29C 64/209
B29C 64/268
B29C 64/245
B29C 64/236
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
造形物を製造するためのAM装置であって、
造形対象物の輪郭を造形するための第1DEDノズルと、
前記輪郭の内側に粉体材料を供給するための供給装置と、
前記輪郭の内側に配置された粉体材料にビームを照射するための第1ビーム照射ヘッドと、
前記第1ビーム照射ヘッドから照射されるビームを、前記輪郭の内側に供給された粉体材料上に矩形に収束させるビームシェイパと、を有する、
AM装置。
【請求項2】
請求項1に記載のAM装置であって、
造形した造形物の表面にビームを照射するための第2ビームヘッドを有する、
AM装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のAM装置であって、
造形中の造形物の表面温度を測定する温度計を有する、
AM装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のAM装置であって、
造形対象物を支持するためのベースプレートを有し、
前記ベースプレートは、水平面内で直交する二方向に移動可能なXYステージ上に配置されている、
AM装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のAM装置であって、
造形中に造形された部分を冷却するための冷却装置を有する、
AM装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のAM装置であって、さらに、
前記輪郭の内側に配置されるブリッジ板を有する、
AM装置。
【請求項7】
請求項6に記載のAM装置であって、
前記ブリッジ板は冷却装置を有する、
AM装置。
【請求項8】
AM法により造形物を製造する方法であって、
造形対象物の輪郭をDEDにより造形するステップと、
前記輪郭の内側をPBFにより造形するステップと、を有し、
前記輪郭の内側をPBFにより造形するステップは、
前記輪郭の内側に粉体材料を供給するステップと、
前記輪郭の内側に供給された粉体材料上にビームを照射するステップと、
前記ビームを前記輪郭の内側に供給された粉体材料上に矩形に収束させるステップと、を有する、
方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、
造形された造形物の表面を再溶融させて、再凝固させるステップを有する、
方法。
【請求項10】
請求項8または9に記載の方法であって、
造形中に造形物の温度を制御するステップを有する、
方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、
造形中に造形物の温度を制御するステップは、
造形中に造形物の表面温度を測定するステップと、
造形中に造形された部分を冷却するステップと、を有する、
方法。
【請求項12】
請求項8から11のいずれか一項に記載の方法であって、
前記輪郭の内側をPBFにより造形するステップは、前記輪郭の内側にブリッジ板を配置するステップを有する、
方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法であって、
前記ブリッジ板は冷却装置を有し、
さらに、前記ブリッジ板の冷却装置により造形物を冷却するステップを有する、
方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、AM装置に関する。
【背景技術】
【0002】
三次元物体を表現したコンピュータ上の三次元データから、三次元物体を直接的に造形する技術が知られている。たとえば、Additive Manufacturing(AM)(付加製造)法が知られている。一例として、デポジション方式のAM法としてダイレクトエナジーデポジション(DED)がある。DEDは、金属材料を局所的に供給しながら適当な熱源を用いて基材と共に溶融、凝固させることで造形を行う技術である。また、AM法の一例として、パウダーベッドフュージョン(PBF)がある。PBFは、二次元的に敷き詰められた金属紛体に対して、造形する部分に熱源であるレーザービームや電子ビームを照射して、金属紛体を溶融・凝固または焼結させることで三次元物体の各層を造形する。PBFでは、このような工程を繰り返すことで、所望の三次元物体を造形することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第4724299号明細書
【文献】特表2019-500246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、PBFとDEDとを比較すると、DEDの方が造形速度を大きくすることができる。しかし、DEDにおいて、造形速度を大きくすると、入熱量を大きくするために局所的な温度上昇が発生しやすくなる。その結果、過剰な金属蒸気が発生し金属原料が減少して溶融・凝固した形状は意図した形状と異なる形状になりやすく、造形済の部分も熱の影響により変形することがある。また、DEDの場合、造形物の形状にばらつきが発生しやすいため、DEDで造形した後に機械加工が行われることが多い。本願は、AM法による造形中に過剰な金属蒸気の発生や変形の発生を抑制する技術を提供することを1つの目的としている。また、本願は、造形後の機械加工をできるだけ少なく、または不要にするための技術を提供することを1つの目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態によれば、造形物を製造するためのAM装置が提供され、かかるAM装置は、造形対象物の輪郭を造形するための第1DEDノズルと、前記輪郭の内側を造形するための第2DEDノズルと、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】一実施形態による、造形物を製造するためのAM装置を概略的に示す図である。
図2】一実施形態による、造形物を製造するためのAM装置を概略的に示す図である。
図3】一実施形態による、造形物を製造するためのAM装置を概略的に示す図である。
図4】一実施形態による、冷却装置を備えるAM装置を概略的に示す図である。
図5】一実施形態による、DEDヘッドを概略的に示す図である。
図6】一実施形態による、DEDノズルの断面を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明に係る造形物を製造するためのAM装置の実施形態を添付図面とともに説明する。添付図面において、同一または類似の要素には同一または類似の参照符号が付され、各実施形態の説明において同一または類似の要素に関する重複する説明は省略することがある。また、各実施形態で示される特徴は、互いに矛盾しない限り他の実施形態にも適用可能である。
【0008】
図1は、一実施形態による、造形物を製造するためのAM装置を概略的に示す図である。図1に示されるように、AM装置100は、ベースプレート102を備える。ベースプレート102上に造形物Mが造形されることになる。ベースプレート102は、造形物Mを支持することができる任意の材料から形成されるプレートとすることができる。ベースプレート102は、XYステージ104の上に配置される。XYステージ104は、水平面内で直交する二方向(x方向、y方向)に移動可能なステージ104である。なお、XYステージ104は、高さ方向(z方向)に移動可能なリフト機構に連結されていてもよい。
【0009】
一実施形態において、図1に示されるように、AM装置100は、第1DEDヘッド200を備える。第1DEDヘッド200は、レーザー源202、材料粉体源204、およびガス源206に接続されている。第1DEDヘッド200は、DEDノズル210を有する。第1DEDノズル210は、レーザー源202、材料粉体源204、およびガス源206からのレーザー、材料粉体、およびガスを噴射するように構成される。第1DEDヘッド200は任意のものとすることができ、たとえば公知のDEDヘッドを使用することができる。第1DEDヘッド200は、移動機構220に連結されており、移動可能に構成される。移動機構220は、任意のものとすることができ、たとえば、レールなどの特定の軸に沿って第1DEDヘッド200を移動可能なものとしてもよく、あるいは、任意の位置および向きに第1DEDヘッド200を移動させることができるロボットから構成されてもよい。第1DEDヘッド200は、後述するが、造形物の輪郭を形成するために使用される。
【0010】
一実施形態において、図1に示されるように、AM装置100は、第2DEDヘッド300を備える。第2DEDヘッド300は、レーザー源302、材料粉体源304、およびガス源306に接続されている。なお、第2DEDヘッド300に接続されるレーザー源302、材料粉体源304、およびガス源306は、第1DEDヘッド200に接続されるレーザー源202、材料粉体源204、およびガス源206と同一のものを使用してもよいし、異なるものを使用してもよい。第2DEDヘッド300は、DEDノズル310を有する。DEDノズル310は、レーザー源302、材料粉体源304、およびガス源306からのレーザー、材料粉体、およびガスを噴射するように構成される。第2DEDヘッド300は任意のものとすることができ、たとえば公知のDEDヘッドを使用することができる。第2DEDヘッド300は、移動機構320に連結されており、移動可能に構成される。移動機構320は、任意のものとすることができ、たとえば、レールなどの特定の軸に沿って第2DEDヘッド300を移動可能なものとしてもよく、あるいは、任意の位置および向きに第2DEDヘッド300を移動させることができるロボットから構成されてもよい。第2DEDヘッド300は、後述するが、第1DEDヘッド200により形成された造形物の輪郭の内側を造形するために使用される。
【0011】
図6は一実施形態によるDEDノズル210の断面を概略的に示す図である。図示の実施形態によるDEDノズル210は、中心にレーザー250が通過する第1通路252を備える。また、DEDノズル210は、第1通路252の外側に、材料粉体および材料粉体を輸送するためのキャリアガスが通過する第2通路254を備える。さらに、DEDノズル210は、第2通路254の外側に、シールドガスが通過する第3通路256を備え
る。第2通路254は、DEDノズル210から排出される材料粉体がレーザー250のフォーカス位置と実質的に同一の位置に収束するように構成される。なお、図6において材料粉体およびキャリアガスの流れは破線で示されている。キャリアガスは、たとえばアルゴンガスや窒素ガスなどの不活性ガスとすることができる。なお、キャリアガスに不活性ガスを用いることで、材料粉体が溶融して形成される溶融池を不活性ガスで覆うことで酸化を防止することができる。ただし、キャリアガスの流れにより、その外側の空気が巻き込まれることがある。そこで、図6に示されるDEDノズル210は、粉体材料およびキャリアガスが排出される第2通路254の外側に配置された第3通路256からシールドガスを低速で供給することで、周囲の空気が巻き込まれることを防止することができる。キャリアガスにより周囲の空気(特に酸素)が巻き込まれることを防止することで、金属酸化膜が生成されることを抑制でき、また、濡れ性の良い溶融池を形成することができる。図6において、シールドガスの流れは矢印で示されている。なお、図6は、一例としてDEDノズル210の実施形態を示しているが、同様の構成をDEDノズル310に採用してもよい。
【0012】
一実施形態において、図1に示されるように、AM装置100は温度計150を備える。一実施形態において、温度計150は、造形中の造形物の表面温度を測定できるものとすることができ、たとえば放射温度計とすることができる。
【0013】
図1に示される実施形態において、AM装置100は制御装置170を有する。制御装置170は、AM装置100の各種の動作機構、たとえば上述の第1DEDヘッド200、第2DEDヘッド300や各種の動作機構などの動作を制御するように構成される。制御装置170は、一般的なコンピュータまたは専用コンピュータから構成することができる。
【0014】
図1に示される実施形態によるAM装置100で三次元物体を造形する場合、概略、以下の手順で行われる。まず、造形対象物の三次元データが制御装置170に入力される。制御装置170は、入力された造形物の三次元データから、造形用のスライスデータを作成する。また、制御装置170は、造形条件やレシピを含む実行データを作成する。造形条件およびレシピは、たとえば、ビーム条件、および積層条件を含む。ビーム条件は、レーザー源202、302の電圧条件やレーザー出力などを含み、走査条件は、走査パターン、走査ルート、走査速度、および走査間隔などを含む。走査パターンとしては、たとえば、一方向に走査する場合、往復方向に走査する場合、ジグザグに走査する場合、小さい円を描きながら横方向に移動する場合などがある。走査ルートは、たとえばどのような順序で走査を行うか、などを決定する。積層条件は、たとえば、材料の種類、粉末材料の平均粒径、粒形状、粒度分布、粒子供給速度(単位時間当たりの供給重量)、キャリアガス流量などを含む。なお、上述の造形条件およびレシピの一部は、入力された造形物の三次元データに応じて作成および変更してもよく、入力された造形物の三次元データにかかわらず予め決定されていてもよい。
【0015】
第1DEDヘッド200を使用して、三次元物体の第1層の輪郭部分M1を造形する。輪郭部分M1を造形するときは、輪郭を正確に造形できる条件で、また造形した部分が変形しないような条件で造形を行う。輪郭部分M1の厚さは、次の工程で輪郭部分の内側M2を造形するときに、造形済みの輪郭部分M1が変形しない程度の厚さとすることが望ましい。
【0016】
第1層の輪郭部分M1が造形できたら、次に造形された輪郭部分M1の内側M2を第2DEDヘッド300を使用して造形する。内側M2を造形するときは、既に輪郭部分M1が形成されているため、造形中に変形するリスクが小さいので、輪郭部分を造形するときよりも高速で造形できる条件で造形を行うことができる。
【0017】
第1層が造形できたら、次に第2層の輪郭部分M1および内側部分M2を造形し、さらに第3層、第4層と造形を繰り返して三次元物体の造形を完成させる。なお、造形中、特に輪郭部分M1の造形中には、温度計150により造形された部分の温度を監視しながら行うことが望ましい。造形物Mの表面の温度が高いと過剰な金属蒸気が発生しやすく、また、造形済の部分も熱の影響により形状が変形することがある。そのため、造形された部分の温度を監視して、下の層が十分に凝固する温度になってから次の層の造形を開始するようにすることが望ましい。また、各層において、輪郭部分M1の全体の造形が完了する前に内側部分M2の造形を開始してもよい。輪郭部分M1の一部が造形できたら内側部分M2の造形を開始し、輪郭部分M1と内側部分M2の造形を同時に進行させることで、全体の造形時間を短縮することができる。
【0018】
かかる実施形態によるAM装置100においては、正確に造形できる条件で造形物の輪郭部分M1を造形してから、より高速な条件で輪郭部分M1の内側M2を造形するので、造形物Mの形状を正確に造形しながら、全体の造形時間を短縮することができる。
【0019】
図2は、一実施形態による、造形物を製造するためのAM装置を概略的に示す図である。図2に示されるAM装置100は、図1に示される実施形態と同様に、ベースプレート102およびXYステージ104を備え、ベースプレート102上に造形物Mが造形されることになる。
【0020】
一実施形態において、図2に示されるように、AM装置100は、第1DEDヘッド200を備える。図2に示される第1DEDヘッド200は、図1に示される第1DEDヘッド200と同様の構成とすることができる。
【0021】
図2に示される実施形態において、AM装置100は、造形物の材料を供給するための、材料供給機構400を備える。材料供給機構400は、造形物の材料となる粉末、たとえば金属粉末を保持するための貯蔵容器402と、貯蔵容器402を移動させるための移動機構404と、を備える。貯蔵容器402には、材料粉末をベースプレート102上に排出するための開口406を備える。開口406は、たとえば、ベースプレート102の一辺より長い直線状の開口406とすることができる。この場合、移動機構404を、開口406の直線に直交する方向にベースプレート102の他方の辺より長い範囲で移動させるように構成することで、ベースプレート102の全面に材料粉末を供給することができる。また、貯蔵容器402は、開口406の開閉を制御するための弁408を備える。材料供給機構400は、貯蔵容器402から供給された材料粉末を均すためのブレード(図示せず)を備えてもよい。
【0022】
一実施形態において、図2に示されるように、AM装置100は、第1ビーム照射ヘッド500を備える。第1ビーム照射ヘッド500は、レーザー源502に接続されているか、あるいはレーザー502を内蔵している。また、第1ビーム照射ヘッド500は、任意の光学系を備えることができ、レーザーを造形面に集光することができるように構成されている。第1ビーム照射ヘッド500は、移動機構520に連結されており、移動可能に構成される。移動機構520は、任意のものとすることができ、たとえば、レールなどの特定の軸に沿って第1ビーム照射ヘッド500を移動可能なものとしてもよい。あるいは、AM装置100は、移動機構520に代えて、または移動機構520に加えて、ガルバノミラー等の任意の光学系により第1ビーム照射ヘッド500からのレーザーを造形面上で走査可能に構成してもよい。なお、第1ビーム照射ヘッド500から照射されるレーザーは、任意のビームシェイパなどを用いて矩形に集光され、フラットなビームプロファイルを備えることが望ましい。そのようなレーザーの特徴を備えることで、効率的に粉体材料を溶融、焼結させることができる。
【0023】
図2に示される実施形態によるAM装置100で三次元物体を造形する場合、概略、以下の手順で行われる。まず、造形対象物の三次元データが制御装置170に入力される。制御装置170は、入力された造形物の三次元データから、造形用のスライスデータを作成する。また、制御装置170は、造形条件やレシピを含む実行データを作成する。造形条件およびレシピは、たとえば、ビーム条件、および積層条件を含む。ビーム条件は、レーザー源202、302の電圧条件やレーザー出力などを含み、走査条件は、走査パターン、走査ルート、走査速度、および走査間隔などを含む。走査パターンとしては、たとえば、一方向に走査する場合、往復方向に走査する場合、ジグザグに走査する場合、小さい円を描きながら横方向に移動する場合などがある。走査ルートは、たとえばどのような順序で走査を行うか、などを決定する。積層条件は、たとえば、材料の種類、粉末材料の平均粒径、粒形状、粒度分布、粒子供給速度(単位時間当たりの供給重量)、キャリアガス流量などを含む。なお、上述の造形条件およびレシピの一部は、入力された造形物の三次元データに応じて作成および変更してもよく、入力された造形物の三次元データにかかわらず予め決定されていてもよい。
【0024】
第1DEDヘッド200を使用して、三次元物体の第1層の輪郭部分M1を造形する。輪郭部分M1を造形するときは、輪郭を正確に造形できる条件で、また造形した部分が変形しないような条件で造形を行う。輪郭部分M1の厚さは、次の工程で輪郭部分M1の内側M2を造形するときに、造形済みの輪郭部分M1が変形しない程度の厚さとすることが望ましい。
【0025】
第1層の輪郭部分M1が造形できたら、材料供給機構400により、造形された輪郭部分M1の内側M2に粉体材料を供給する。次に、第1ビーム照射ヘッド500から、造形された輪郭部分M1の内側M2の粉体材料にレーザーを照射して、所定の位置の粉体材料を溶融、焼結させて輪郭部分M1の内側M2を造形する。なお、第1層の輪郭部分M1の内側部分M2を複数の層から造形してもよい。この場合、内側部分M2の各層を形成するたびに、ベースプレート102を1層分だけ下降させて、材料供給機構400から新たな粉末材料を供給して粉体材料にレーザーを照射することを繰り返して、第1層の輪郭部分M1の内側部分M2を形成することができる。あるいは、ベースプレート102を下降させる代わりに、内側部分M2の各層を形成するたびに、1層分だけ第1ビーム照射ヘッド500を上方に移動させてもよい。
【0026】
輪郭部分M1の第1層およびその内側部分M2が造形できたら、次に第2層の輪郭部分M1および内側部分M2を造形し、さらに第3層、第4層と造形を繰り返して三次元物体の造形を完成させる。なお、造形中、特に輪郭部分M1の造形中には、温度計150により造形された部分の温度を監視しながら行うことが望ましい。造形物Mの表面の温度が高いと金属蒸気が発生しやすく、供給した金属原料が減少したり、造形済の部位への熱の影響により造形物Mの形状が変形したりすることがある。そのため、造形された部分の温度を監視して、下の層が十分に凝固する温度になってから次の層の造形を開始するようにすることが望ましい。また、各層において、輪郭部分M1の全体の造形が完了する前に内側部分M2の造形を開始してもよい。輪郭部分M1の一部が造形できたら内側部分M2の造形を開始し、輪郭部分M1と内側部分M2の造形を同時に進行させることで、全体の造形時間を短縮することができる。
【0027】
図2に示される実施形態においては、造形物の輪郭部分M1をDED方式で造形し、内側部分M2をPBF方式で造形している。なお、一実施形態において、AM装置100は、図1に示され第1DEDヘッド200および第2DEDヘッド300に加えて、さらに、図2に示される材料供給機構400および第1ビーム照射ヘッド500を備えるように構成してもよい。
【0028】
図3は、一実施形態による、造形物を製造するためのAM装置を概略的に示す図である。一実施形態において、AM装置100は、図3に示されるように第2ビーム照射ヘッド600を備える。第2ビーム照射ヘッド600は、レーザー源602に接続されているか、あるいはレーザー602を内蔵している。第2ビーム照射ヘッド600は、形成された造形物Mの表面にレーザーを照射できるように構成される。第2ビーム照射ヘッド600は、移動機構620に連結されており、移動可能に構成される。移動機構620は、任意のものとすることができ、たとえば、レールなどの特定の軸に沿って第2ビーム照射ヘッド600を移動可能なものとしてもよく、あるいは、任意の位置および向きに第2ビーム照射ヘッド600を移動させることができるロボットから構成されてもよい。形成された造形物Mの表面にレーザーを照射することにより、造形物Mの表面を再溶融および凝固させることができ、各層を積層させて造形させたときの段差を解消したり、表面粗さを小さくしたりすることができる。造形物Mの表面の段差や粗さを小さくすることで、造形後の機械加工を少なくすることが可能になる。
【0029】
図3においては、AM装置100は、第2ビーム照射ヘッド600とともに、図1に示される第1DEDヘッド200および第2DEDヘッド300を備えるものとしているが、図2に示されるような第1DEDヘッド200および第1ビーム照射ヘッド500を備えるものとしてもよく、第1DEDヘッド200、第2DEDヘッド300、および第1ビーム照射ヘッド500を備えるものとしてもよい。また、第2ビーム照射ヘッド600によう造形物Mの表面へのビーム照射は、他の部分を造形しながら同時に実行するにしてもよい。
【0030】
一実施形態において、AM装置100は、造形された部分を冷却するための冷却装置700を備える。図4は、一実施形態による、冷却装置700を備えるAM装置100を示している。冷却装置700は、造形された部分の周囲に接触するように配置された冷却部材702と、冷却部材702の内部を通る冷却管路704と、を備える、冷却管路704は、冷媒流体が流れるように構成されている。冷却管路704は、冷媒流体の温度を制御するための熱交換器706に接続されている。
【0031】
AM法による造形においては、DEDおよびPBFのいずれの方式であっても、金属粉末を高温にして溶融し、凝固させることで任意の形状の三次元物体を造形する。このようなAM法においては、温度の低下速度によって造形物の組織が変わり、造形物の強度や耐食性に影響を与える。そのため、AM法において、温度の低下速度を制御することが望ましい。AM法においては、レーザーを照射して材料を溶融させているので、全体として高温環境になりやすい。図4に示される実施形態においては、冷却装置700を備えているので、造形物Mの温度の低下速度を制御することが可能になる。たとえば、温度計150により造形物Mの温度を監視しながら、冷却装置700を制御することで造形物の温度および温度の低下速度を制御することができる。なお、図4においては、第1DEDヘッド200および第2DEDヘッド200を備えるAM装置100としているが、図2に示されるような第1ビーム照射ヘッド500を利用するAM装置100としてもよい。
【0032】
また、図4には、ブリッジ構造M3を備える造形物を造形する様子が示されている。ブリッジ構造M3を造形するときは、対応する形状のブリッジ板180を挿入して造形を行ってもよい。たとえば、ブリッジ板180が所定の位置に配置された状態で、上述のように第1DEDヘッド200を用いてブリッジ構造M3を含む輪郭部分M1を造形し、その後に内側部分M2を第2DEDヘッド200または第1ビーム照射ヘッド500により造形することができる。なお、一実施形態において、ブリッジ板180に冷却装置700の機能を持たせてもよい。たとば、ブリッジ板180に冷却管路704を設けることでブリッジ板180に冷却装置700の機能を持たせることができる。また、所定の位置に配置
されるブリッジ板180に代えて、レールやロボットアームなどの移動機構に連結されるガイド板を用いてもよい。ブリッジ構造M3を造形するときに溶融部位の下や側面にガイド板を当てて溶融・凝固を支持することができる。また、ブリッジ板180およびガイド板は、凝固面の表面粗さを小さくする作用も備える。
【0033】
図5は、一実施形態によるDEDヘッドを概略的に示す図である。図5に示されるDEDヘッド800は、図1に示されるDEDヘッド200、300と同様に、レーザー源802、材料粉体源804、ガス源806に接続されている。DEDヘッド800は、DEDノズル810を有する。DEDノズル810は、レーザー源202、材料粉体源204、およびガス源206からのレーザー、材料粉体、およびガスを噴射するように構成される。図5に示される実施形態によるDEDヘッドは、レーザー源802からのレーザー光がDEDヘッド800内に配置されるハーフミラー808などで分岐されて、一方はDEDノズル810から照射され、他方はDEDノズル810の前方から照射されるように構成されている。なお、DEDノズル810の前方とは、造形する際にDEDヘッド800が移動する進行方向(図5中の矢印で示される)の前方である。前方に照射されるレーザーは、造形する表面(下層)を溶融させない程度の強度とする。なお、図5に示される実施形態においては、レーザー源802からのレーザーをハーフミラー808により分岐させてDEDノズル810の前方に照射できるように構成されているが、DEDノズル810の前方に照射するレーザーをレーザー源802から独立した別のレーザー源を用いてもよい。
【0034】
DEDヘッド800を用いて造形を行う場合、DEDノズル810から材料粉体を所定位置に供給しながらレーザーを照射することで、所定の位置に材料を積層させることができる。図5に示されるDEDヘッド800においては、進行方向前方にレーザーが照射されるので、材料粉末および造形用のレーザーが供給される直前にレーザーが照射される。そのため、造形される部分(下層)の表面がレーザーにより加熱される。一般に、温度が低いと濡れ性が悪くなる。そのため、本実施形態のように造形される部分(下層)の表面をレーザーで予熱することで、造形される部分(下層)の表面の濡れ性をよくすることができる。濡れ性が改善されると、DEDノズル810から供給されて溶融した材料が意図した箇所にとどまりやすく、安定した造形を行うことができる。
【0035】
図5に示されるDEDヘッド800の特徴は、本明細書に開示のAM装置100に採用することができる。たとえば、本明細書に開示の第1DEDヘッド200、第2DEDヘッド300に図5に示されるDEDヘッド800を使用してもよい。また、図4に示される実施形態のように、冷却装置700を含むAM装置100の場合、造形済の部分については冷却装置700により適切に冷却される一方で、造形される表面のごく一部だけがレーザーにより一時的に予熱されて表面の濡れ性が改善され、安定した造形を行うことができる。
【0036】
上述の実施形態から少なくとも以下の技術的思想が把握される。
[形態1]形態1によれば、造形物を製造するためのAM装置が提供され、かかるAM装置は、造形対象物の輪郭を造形するための第1DEDノズルと、前記輪郭の内側を造形するための第2DEDノズルと、を有する。
【0037】
[形態2]形態2によれば、形態1によるAM装置において、前記輪郭の内側に粉体材料を供給するための供給装置と、前記輪郭の内側に配置された粉体材料にビームを照射するための第1ビーム照射ヘッドと、を有する。
【0038】
[形態3]形態3によれば、形態1または形態2によるAM装置において、造形した造形物の表面にビームを照射するための第2ビームヘッドを有する。
【0039】
[形態4]形態4によれば、形態1から形態3のいずれか1つの形態によるAM装置において、造形中の造形物の表面温度を測定する温度計を有する。
【0040】
[形態5]形態5によれば、形態1から形態4のいずれか1つの形態によるAM装置において、造形対象物を支持するためのベースプレートを有し、前記ベースプレートは、水平面内で直交する二方向に移動可能なXYステージ上に配置されている。
【0041】
[形態6]形態6によれば、形態1から形態5のいずれか1つの形態によるAM装置において、造形中に造形された部分を冷却するための冷却装置を有する。
【0042】
[形態7]形態7によれば、造形物を製造するためのAM装置が提供され、かかるAM装置は、造形対象物の輪郭を造形するための第1DEDノズルと、前記輪郭の内側に粉体材料を供給するための供給装置と、前記輪郭の内側に配置された粉体材料にビームを照射するための第1ビーム照射ヘッドと、を有する。
【0043】
[形態8]形態8によれば、形態7によるAM装置において、前記輪郭の内側を造形するための第2DEDノズルを有する。
【0044】
[形態9]形態9によれば、形態7または形態8によるAM装置において、造形した造形物の表面にビームを照射するための第2ビームヘッドを有する。
【0045】
[形態10]形態10によれば、形態7から形態9のいずれか1つの形態によるAM装置において、造形中の造形物の表面温度を測定する温度計を有する。
【0046】
[形態11]形態11によれば、形態7から形態10のいずれか1つの形態によるAM装置において、造形対象物を支持するためのベースプレートを有し、前記ベースプレートは、水平面内で直交する二方向に移動可能なXYステージ上に配置されている。
【0047】
[形態12]形態12によれば、形態7から形態11のいずれか1つの形態によるAM装置において、造形中に造形された部分を冷却するための冷却装置を有する。
【0048】
[形態13]形態13によれば、AM法により造形物を製造する方法が提供され、かかる方法は、DEDにより造形対象物の輪郭を造形するステップと、前記輪郭の内側を造形するステップと、を有する。
【0049】
[形態14]形態14によれば、形態13による方法において、前記輪郭の内側を造形するステップはDEDにより行われる。
【0050】
[形態15]形態15によれば、形態13による方法において、前記輪郭の内側を造形するステップはPBFにより行われる。
【0051】
[形態16]形態16によれば、形態13から形態15のいずれか1つの形態による方法において、造形された造形物の表面を再溶融させて、再凝固させるステップを有する。
【0052】
[形態17]形態17によれば、形態13から形態16のいずれか1つの形態による方法において、造形中に造形物の温度を制御するステップを有する。
【0053】
[形態18]形態18によれば、形態17による方法において、造形中に造形物の温度を制御するステップは、造形中に造形物の表面温度を測定するステップと、造形中に造形
された部分を冷却するステップと、を有する。
【符号の説明】
【0054】
100…AM装置
102…ベースプレート
104…XYステージ
150…温度計
170…制御装置
200…第1DEDヘッド
210…DEDノズル
220…移動機構
300…第2DEDヘッド
310…DEDノズル
320…移動機構
400…材料供給機構
500…第1ビーム照射ヘッド
600…第2ビーム照射ヘッド
700…冷却装置
800…DEDヘッド
810…DEDノズル
M1…輪郭部分
M2…内側部分
M…造形物
図1
図2
図3
図4
図5
図6