IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社荏原製作所の特許一覧

<>
  • 特許-研磨ヘッドシステムおよび研磨装置 図1
  • 特許-研磨ヘッドシステムおよび研磨装置 図2
  • 特許-研磨ヘッドシステムおよび研磨装置 図3
  • 特許-研磨ヘッドシステムおよび研磨装置 図4
  • 特許-研磨ヘッドシステムおよび研磨装置 図5
  • 特許-研磨ヘッドシステムおよび研磨装置 図6
  • 特許-研磨ヘッドシステムおよび研磨装置 図7
  • 特許-研磨ヘッドシステムおよび研磨装置 図8
  • 特許-研磨ヘッドシステムおよび研磨装置 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-11
(45)【発行日】2023-10-19
(54)【発明の名称】研磨ヘッドシステムおよび研磨装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 37/32 20120101AFI20231012BHJP
   B24B 37/30 20120101ALI20231012BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20231012BHJP
   B24B 37/005 20120101ALI20231012BHJP
   B24B 37/10 20120101ALI20231012BHJP
   B24B 49/10 20060101ALI20231012BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20231012BHJP
【FI】
B24B37/32 A
B24B37/30 E
B24B37/00 K
B24B37/005 A
B24B37/10
B24B49/10
H01L21/304 622K
H01L21/304 622R
H01L21/304 622L
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2020056240
(22)【出願日】2020-03-26
(65)【公開番号】P2021154421
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【弁理士】
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【弁理士】
【氏名又は名称】金沢 充博
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 和英
(72)【発明者】
【氏名】小畠 厳貴
【審査官】マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-127024(JP,A)
【文献】特開2006-263903(JP,A)
【文献】特表2006-524588(JP,A)
【文献】特開2012-138442(JP,A)
【文献】特開2018-174229(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 37/32
B24B 37/30
B24B 37/00
B24B 37/005
B24B 37/10
B24B 49/10
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理膜を有するワークピースを研磨面に対して押し付けながら、研磨液の存在下において、該ワークピースと前記研磨面とを相対運動をさせることで該ワークピースを研磨するための研磨ヘッドシステムであって、
前記ワークピースに対して押付力を加えるアクチュエータ、前記アクチュエータの外側に配置されたリテーナ部材、および前記リテーナ部材に連結された複数の第一の圧電素子を有する研磨ヘッドと、
前記複数の第一の圧電素子に独立に電圧を印加する駆動電圧印加装置を備え、
前記研磨ヘッドは、前記複数の第一の圧電素子にそれぞれ連結された複数の連結部材を備えており、前記複数の連結部材の端面は前記リテーナ部材に接続されており、
前記研磨ヘッドは、前記複数の連結部材の、前記リテーナ部材の押付方向と垂直な方向の移動範囲を制限する第一の保持部材をさらに備えている、研磨ヘッドシステム。
【請求項2】
前記リテーナ部材は、前記複数の第一の圧電素子にそれぞれ連結された複数のリテーナ部材である、請求項1に記載の研磨ヘッドシステム。
【請求項3】
前記複数の第一の圧電素子および前記リテーナ部材の全体を前記研磨面に向かって移動させるリテーナ部材移動装置をさらに備えている、請求項1または2に記載の研磨ヘッドシステム。
【請求項4】
前記リテーナ部材移動装置は、内部に第一の圧力室を形成する弾性バッグと、前記第一の圧力室に連通する第一の気体供給ラインを備えている、請求項3に記載の研磨ヘッドシステム。
【請求項5】
前記研磨ヘッドは、前記複数の第一の圧電素子がそれぞれ発生した複数の押付力を測定する複数の押付力測定装置をさらに備えている、請求項に記載の研磨ヘッドシステム。
【請求項6】
前記複数の押付力測定装置は、前記複数の第一の圧電素子と前記複数の連結部材との間にそれぞれ配置されている、請求項に記載の研磨ヘッドシステム。
【請求項7】
前記研磨ヘッドは、電圧分配器をさらに有しており、前記電圧分配器は、前記駆動電圧印加装置および前記複数の第一の圧電素子に電気的に接続されており、前記駆動電圧印加装置から印加された電圧を該複数の第一の圧電素子に分配するように構成されている、請求項1乃至のいずれか一項に記載の研磨ヘッドシステム。
【請求項8】
前記アクチュエータは流体圧力式アクチュエータであり、前記流体圧力式アクチュエータは、複数の第二の圧力室を形成し、かつ前記ワークピースの裏面に接触する弾性膜と、前記複数の第二の圧力室にそれぞれ連通する複数の第二の気体供給ラインを有する、請求項1乃至のいずれか一項に記載の研磨ヘッドシステム。
【請求項9】
前記アクチュエータは複数の第二の圧電素子であり、前記ワークピースの複数の領域に押付力を加えるように配列されている、請求項1乃至のいずれか一項に記載の研磨ヘッドシステム。
【請求項10】
被処理膜を有するワークピースを研磨面に対して押し付けながら、研磨液の存在下において、該ワークピースと前記研磨面とを相対運動をさせることで該ワークピースを研磨するための研磨ヘッドシステムであって、
前記ワークピースに対して押付力を加えるアクチュエータ、前記アクチュエータの外側に配置されたリテーナ部材、および前記リテーナ部材に連結された複数の第一の圧電素子を有する研磨ヘッドと、
前記複数の第一の圧電素子に独立に電圧を印加する駆動電圧印加装置を備え、
前記アクチュエータは複数の第二の圧電素子であり、前記複数の第二の圧電素子は、前記ワークピースの複数の領域に押付力を加えるように配列されており、
前記研磨ヘッドは、前記複数の第二の圧電素子にそれぞれ連結された複数の押付部材をさらに備えている、研磨ヘッドシステム。
【請求項11】
前記研磨ヘッドは、前記複数の押付部材を前記ワークピースの押付方向と垂直な方向の移動範囲を制限する第二の保持部材をさらに備えている、請求項10に記載の研磨ヘッドシステム。
【請求項12】
前記第二の圧電素子は、電圧分配器に電気的に接続されており、前記電圧分配器は前記駆動電圧印加装置から印加された電圧を該複数の第二の圧電素子に分配するように構成されている、請求項乃至11のいずれか一項に記載の研磨ヘッドシステム。
【請求項13】
ワークピースの研磨装置であって、
研磨パッドを保持する研磨テーブルと、
研磨液を前記研磨パッド上に供給する研磨液供給ノズルと、
請求項1乃至12のいずれか一項に記載の研磨ヘッドシステムと、
前記研磨テーブル、前記研磨液供給ノズル及び前記研磨ヘッドシステムの動作を制御する動作制御部と、を備える、研磨装置。
【請求項14】
前記研磨装置は、前記ワークピースの被処理膜の膜厚を測定する膜厚センサをさらに備えており、前記膜厚センサは前記研磨テーブル内に配置されている、請求項13に記載の研磨装置。
【請求項15】
前記動作制御部は、前記膜厚センサにより取得された前記ワークピースの被処理膜の膜厚の測定値から膜厚プロファイルを作成し、該膜厚プロファイルをもとに、前記駆動電圧印加装置への複数の電圧の指令値を決定するように構成されている、請求項14に記載の研磨装置。
【請求項16】
前記動作制御部は、前記膜厚プロファイルと目標膜厚プロファイルとの差をもとに、前記駆動電圧印加装置への複数の電圧の指令値を決定するように構成されている、請求項15に記載の研磨装置。
【請求項17】
前記研磨装置は、前記ワークピースを前記研磨ヘッドに保持させるためのロード・アンロード装置をさらに備えている、請求項13乃至16のいずれか一項に記載の研磨装置。
【請求項18】
前記研磨装置は、前記ワークピースの周方向における向きを検出する指向検出器をさらに備えている、請求項13乃至17のいずれか一項に記載の研磨装置。
【請求項19】
ワークピースを処理する処理システムであって、
前記ワークピースを研磨する請求項13乃至18のいずれか一項に記載の研磨装置と、
前記研磨されたワークピースを洗浄する洗浄装置と、
前記洗浄されたワークピースを乾燥させる乾燥装置と、
前記研磨装置、前記洗浄装置、および前記乾燥装置間で前記ワークピースを搬送する搬送装置を有する、処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハ、基板、パネルなどのワークピースを研磨パッドの研磨面に押し付けて該ワークピースを研磨する研磨ヘッドシステムに関する。また、本発明は、そのような研磨ヘッドシステムを備えた研磨装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造では、ウェーハ上に様々な種類の膜が形成される。配線・コンタクトの形成工程では、成膜工程の後には、膜の不要な部分や表面凹凸を除去するために、ウェーハが研磨される。化学機械研磨(CMP)は、ウェーハ研磨の代表的な技術である。このCMPは、研磨面上に研磨液を供給しながら、ウェーハを研磨面に摺接させることにより行われる。ウェーハに形成された膜は、研磨液に含まれる砥粒または研磨パッドによる機械的作用と、研磨液の化学成分による化学的作用との複合により研磨される。
【0003】
ウェーハの研磨中、ウェーハの表面は回転する研磨パッドに摺接されるため、ウェーハには摩擦力が作用する。そこで、ウェーハの研磨中にウェーハが研磨ヘッドから外れないようにするために、研磨ヘッドはリテーナリング等のリテーナ部材を備えている(特許文献1参照)。このリテーナリングは、ウェーハを囲むように配置されており、ウェーハの研磨中、リテーナリングは回転しながらウェーハの外側で研磨パッドを押し付けている。
【0004】
リテーナリングは、ウェーハの研磨中にウェーハが研磨ヘッドから外れることを防止するのみならず、研磨パッドを押し付けることで、ウェーハのエッジ部近傍において研磨パッドの一部を変形させ、このパッド変形によりウェーハのエッジ部においてウェーハと研磨パッドとの接触状態を変化させることで、ウェーハのエッジ部の研磨レートを制御する機能も有している。具体的には、リテーナリングを研磨パッドに対して強く押し付けると、研磨パッドの一部はウェーハのエッジ部で隆起し、この隆起した部位はウェーハのエッジ部を上方に押す。結果として、ウェーハのエッジ部に対する研磨圧力は増加する。このようにして、リテーナリングの研磨パッドに対する押付力により、ウェーハのエッジ部の研磨レートを制御することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-047503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ウェーハの研磨中は、リテーナリングと研磨パッドとの摩擦に起因して、リテーナリングが傾き、リテーナリングの研磨パッドへの押付力の周方向分布が不均一になる。結果として、ウェーハのエッジ部の研磨パッドとウェーハ表面との接触状態が不均一になることで、ウェーハのエッジ部の周方向における研磨レート分布が不均一となる。また、リテーナリング自体の摩耗に起因して、リテーナリングの研磨パッドへの押付力の周方向分布が不均一になることもある。
【0007】
そこで、本発明は、リテーナリングなどのリテーナ部材の研磨パッドへの押付力をリテーナ部材の周方向において精密に制御することができる研磨ヘッドシステムを提供する。また、本発明は、そのような研磨ヘッドシステムを備えた研磨装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様では、被処理膜を有するワークピースを研磨面に対して押し付けながら、研磨液の存在下において、該ワークピースと前記研磨面とを相対運動をさせることで該ワークピースを研磨するための研磨ヘッドシステムであって、前記ワークピースに対して押付力を加えるアクチュエータ、前記アクチュエータの外側に配置されたリテーナ部材、および前記リテーナ部材に連結された複数の第一の圧電素子を有する研磨ヘッドと、前記複数の第一の圧電素子に独立に電圧を印加する駆動電圧印加装置と、を備えている、研磨ヘッドシステムが提供される。
【0009】
一態様では、前記リテーナ部材は、前記複数の第一の圧電素子にそれぞれ連結された複数のリテーナ部材である。
一態様では、前記研磨ヘッドシステムは、前記複数の第一の圧電素子および前記リテーナ部材の全体を前記研磨面に向かって移動させるリテーナ部材移動装置をさらに備えている。
一態様では、前記リテーナ部材移動装置は、内部に第一の圧力室を形成する弾性バッグと、前記第一の圧力室に連通する第一の気体供給ラインを備えている。
一態様では、前記研磨ヘッドは、前記複数の第一の圧電素子にそれぞれ連結された複数の連結部材をさらに備えており、前記複数の連結部材の端面は前記リテーナ部材に接続されている。
一態様では、前記研磨ヘッドは、前記複数の連結部材の、前記リテーナ部材の押付方向と垂直な方向の移動範囲を制限する第一の保持部材をさらに備えている。
【0010】
一態様では、前記研磨ヘッドは、前記複数の第一の圧電素子がそれぞれ発生した複数の押付力を測定する複数の押付力測定装置をさらに備えている。
一態様では、前記複数の押付力測定装置は、前記複数の第一の圧電素子と前記複数の連結部材との間にそれぞれ配置されている。
一態様では、前記研磨ヘッドは、電圧分配器をさらに有しており、前記電圧分配器は、前記駆動電圧印加装置および前記複数の第一の圧電素子に電気的に接続されており、前記駆動電圧印加装置から印加された電圧を該複数の第一の圧電素子に分配するように構成されている。
【0011】
一態様では、前記アクチュエータは流体圧力式アクチュエータであり、前記流体圧力式アクチュエータは、複数の第二の圧力室を形成し、かつ前記ワークピースの裏面に接触する弾性膜と、前記複数の第二の圧力室にそれぞれ連通する複数の第二の気体供給ラインを有する。
一態様では、前記アクチュエータは複数の第二の圧電素子であり、前記ワークピースの複数の領域に押付力を加えるように配列されている。
一態様では、前記研磨ヘッドは、前記複数の第二の圧電素子にそれぞれ連結された複数の押付部材をさらに備えている。
一態様では、前記研磨ヘッドは、前記複数の押付部材を前記ワークピースの押付方向と垂直な方向の移動範囲を制限する第二の保持部材をさらに備えている。
一態様では、前記第二の圧電素子は、電圧分配器に電気的に接続されており、前記電圧分配器は前記駆動電圧印加装置から印加された電圧を該複数の第二の圧電素子に分配するように構成されている。
【0012】
一態様では、ワークピースの研磨装置であって、研磨パッドを保持する研磨テーブルと、研磨液を前記研磨パッド上に供給する研磨液供給ノズルと、上記研磨ヘッドシステムと、前記研磨テーブル、前記研磨液供給ノズル及び前記研磨ヘッドシステムの動作を制御する動作制御部と、を備える、研磨装置が提供される。
【0013】
一態様では、前記研磨装置は、前記ワークピースの被処理膜の膜厚を測定する膜厚センサをさらに備えており、前記膜厚センサは前記研磨テーブル内に配置されている。
一態様では、前記動作制御部は、前記膜厚センサにより取得された前記ワークピースの被処理膜の膜厚の測定値から膜厚プロファイルを作成し、該膜厚プロファイルをもとに、前記駆動電圧印加装置への複数の電圧の指令値を決定するように構成されている。
一態様では、前記動作制御部は、前記膜厚プロファイルと目標膜厚プロファイルとの差をもとに、前記駆動電圧印加装置への複数の電圧の指令値を決定するように構成されている。
一態様では、前記研磨装置は、前記ワークピースを前記研磨ヘッドに保持させるためのロード・アンロード装置をさらに備えている。
一態様では、前記研磨装置は、前記ワークピースの周方向における向きを検出する指向検出器をさらに備えている。
【0014】
一態様では、ワークピースを処理する処理システムであって、前記ワークピースを研磨する上記研磨装置と、前記研磨されたワークピースを洗浄する洗浄装置と、前記洗浄されたワークピースを乾燥させる乾燥装置と、前記研磨装置、前記洗浄装置、および前記乾燥装置間で前記ワークピースを搬送する搬送装置を有する、処理システムが提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、複数の圧電素子は、リテーナ部材の研磨パッドへの押付力をリテーナ部材の周方向において精密に制御することができる。したがって、研磨ヘッドシステムは、ワークピースのエッジ部の研磨レートの周方向分布を精密に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】研磨装置の一実施形態を示す模式図である。
図2図1に示す研磨ヘッドを含む研磨ヘッドシステムの一実施形態を示す断面図である。
図3】押付部材、圧電素子、およびリテーナ部材を下から見たときの模式図である。
図4】押付部材、圧電素子、および複数のリテーナ部材を下から見たときの模式図である。
図5図2に示す圧電素子、保持部材、連結部材、およびリテーナ部材を示す断面図である。
図6】研磨ヘッドシステムの他の実施形態を示す断面図である。
図7】研磨ヘッドシステムの他の実施形態を示す断面図である。
図8】研磨ヘッドシステムの他の実施形態を示す断面図である。
図9】ワークピースを処理する処理システムの一実施形態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、研磨装置の一実施形態を示す模式図である。研磨装置1は、ウェーハ、基板、パネルなどワークピースを化学機械的に研磨する装置である。図1に示すように、この研磨装置1は、研磨面2aを有する研磨パッド2を支持する研磨テーブル5と、ワークピースWを研磨面2aに対して押し付ける研磨ヘッド7と、研磨液(例えば、砥粒を含むスラリー)を研磨面2aに供給する研磨液供給ノズル8と、研磨装置1の動作を制御する動作制御部10を備えている。研磨ヘッド7は、その下面にワークピースWを保持できるように構成されている。ワークピースWは被研磨膜を有する。
【0018】
動作制御部10は、プログラムが格納された記憶装置10aと、プログラムに含まれる命令に従って演算を実行する演算装置10bを備えている。記憶装置10aは、RAMなどの主記憶装置と、ハードディスクドライブ(HDD)、ソリッドステートドライブ(SSD)などの補助記憶装置を備えている。演算装置10bの例としては、CPU(中央処理装置)、GPU(グラフィックプロセッシングユニット)が挙げられる。ただし、動作制御部10の具体的構成はこれらの例に限定されない。
【0019】
動作制御部10は、少なくとも1台のコンピュータから構成されている。前記少なくとも1台のコンピュータは、1台のサーバまたは複数台のサーバであってもよい。動作制御部10は、エッジサーバであってもよいし、インターネットまたはローカルエリアネットワークなどの通信ネットワークに接続されたクラウドサーバであってもよいし、あるいはネットワーク内に設置されたフォグコンピューティングデバイス(ゲートウェイ、フォグサーバ、ルーターなど)であってもよい。動作制御部10は、インターネットまたはローカルエリアネットワークなどの通信ネットワークにより接続された複数のサーバであってもよい。例えば、動作制御部10は、エッジサーバとクラウドサーバとの組み合わせであってもよい。
【0020】
研磨装置1は、支軸14と、支軸14の上端に連結された研磨ヘッド揺動アーム16と、研磨ヘッド揺動アーム16の自由端に回転可能に支持された研磨ヘッドシャフト18と、研磨ヘッド7をその軸心を中心に回転させる回転モータ20をさらに備えている。回転モータ20は、研磨ヘッド揺動アーム16に固定されており、ベルトおよびプーリ等から構成されるトルク伝達機構(図示せず)を介して研磨ヘッドシャフト18に連結されている。研磨ヘッド7は、研磨ヘッドシャフト18の下端に固定されている。回転モータ20は、上記トルク伝達機構を介して研磨ヘッドシャフト18を回転させ、研磨ヘッド7は研磨ヘッドシャフト18とともに回転する。このようにして、研磨ヘッド7は、その軸心を中心として矢印で示す方向に回転モータ20により回転される。研磨ヘッド7の軸心は、研磨ヘッドシャフト18の軸心に一致する。
【0021】
回転モータ20は、研磨ヘッド7の回転角度を検出する回転角度検出器としてのロータリエンコーダ22に連結されている。このロータリエンコーダ22は、回転モータ20の回転角度を検出するように構成されている。回転モータ20の回転角度は、研磨ヘッド7の回転角度に一致する。したがって、ロータリエンコーダ22によって検出された回転モータ20の回転角度は、研磨ヘッド7の回転角度に相当する。ロータリエンコーダ22は動作制御部10に接続されており、ロータリエンコーダ22から出力された回転モータ20の回転角度の検出値(すなわち、研磨ヘッド7の回転角度の検出値)は、動作制御部10に送られる。
【0022】
研磨装置1は、研磨パッド2および研磨テーブル5をそれらの軸心を中心に回転させる回転モータ21をさらに備えている。回転モータ21は研磨テーブル5の下方に配置されており、研磨テーブル5は、回転軸5aを介して回転モータ21に連結されている。研磨テーブル5および研磨パッド2は、回転モータ21により回転軸5aを中心に矢印で示す方向に回転されるようになっている。研磨パッド2および研磨テーブル5の軸心は、回転軸5aの軸心に一致する。研磨パッド2は、研磨テーブル5のパッド支持面5bに貼り付けられている。研磨パッド2の露出面は、ウェーハなどのワークピースWを研磨する研磨面2aを構成している。
【0023】
研磨ヘッドシャフト18は、昇降機構24により研磨ヘッド揺動アーム16に対して相対的に上下動可能であり、この研磨ヘッドシャフト18の上下動により研磨ヘッド7が研磨ヘッド揺動アーム16および研磨テーブル5に対して相対的に上下動可能となっている。研磨ヘッドシャフト18の上端にはロータリコネクタ23およびロータリジョイント25が取り付けられている。
【0024】
研磨ヘッドシャフト18および研磨ヘッド7を昇降させる昇降機構24は、研磨ヘッドシャフト18を回転可能に支持する軸受26と、軸受26が固定されたブリッジ28と、ブリッジ28に取り付けられたボールねじ機構32と、支柱30により支持された支持台29と、支持台29に固定されたサーボモータ38とを備えている。サーボモータ38を支持する支持台29は、支柱30を介して研磨ヘッド揺動アーム16に連結されている。
【0025】
ボールねじ機構32は、サーボモータ38に連結されたねじ軸32aと、このねじ軸32aが螺合するナット32bとを備えている。ナット32bはブリッジ28に固定されている。研磨ヘッドシャフト18は、ブリッジ28と一体となって昇降(上下動)するようになっている。したがって、サーボモータ38がボールねじ機構32を駆動すると、ブリッジ28が上下動し、これにより研磨ヘッドシャフト18および研磨ヘッド7が上下動する。
【0026】
昇降機構24は、研磨ヘッド7の研磨テーブル5に対する相対的な高さを調節するための研磨ヘッド位置決め機構として機能する。ワークピースWを研磨するとき、昇降機構24は、研磨ヘッド7を予め定められた高さに位置させ、その高さに研磨ヘッド7が保たれたまま、研磨ヘッド7はワークピースWを研磨パッド2の研磨面2aに対して押し付ける。
【0027】
研磨装置1は、研磨ヘッド揺動アーム16を支軸14を中心に旋回させるアーム旋回モータ17を備えている。このアーム旋回モータ17が研磨ヘッド揺動アーム16を旋回させると、研磨ヘッド7は、研磨ヘッドシャフト18に垂直な方向に移動する。アーム旋回モータ17は、研磨ヘッド7を、研磨テーブル5の上方の研磨位置と、研磨テーブル5の外側のロード・アンロード位置との間を移動させることができる。
【0028】
研磨されるワークピースWは、ロード・アンロード位置でロード・アンロード装置39により研磨ヘッド7に取り付けられ、その後研磨位置に移動される。研磨されたワークピースWは、研磨位置からロード・アンロード位置に移動され、ロード・アンロード位置でロード・アンロード装置39により研磨ヘッド7から取り外される。図1では、ロード・アンロード装置39は模式的に示されており、ロード・アンロード装置39の位置および構成は、その意図した目的を達成できる限りにおいて特に限定されない。
【0029】
研磨装置1は、ワークピースWの周方向における向きを検出する指向検出器としてのノッチアライナー40を備えている。なお、本図では、ノッチアライナー40は独立して研磨装置1内に配置されているが、ロード・アンロード装置39と一体配置されていてもよい。ノッチアライナー40は、ワークピースWの縁部に形成されているノッチ(切り欠き)を検出するための装置である。ノッチアライナー40の具体的構成は、ノッチを検出することができるものであれば、特に限定されない。一例では、ノッチアライナー40は、ワークピースWを回転させながら、レーザ光をワークピースWの縁部に当て、反射したレーザ光を受光部により検出する光学式ノッチ検出器であり、ノッチ位置にて受光したレーザ光の強さが変化することからノッチの位置を検出するように構成される。他の例では、ワークピースWを回転させながら、純水などの液体の噴流を、ワークピースWの縁部に近づけたノズルからワークピースWの縁部に供給し、ノズルに向かって流れる液体の圧力または流量を検出する液体式ノッチ検出器であり、ノッチ位置にて液体の圧力または流量が変化することからノッチの位置を検出するように構成される。
【0030】
ノッチの検出、すなわちワークピースWの周方向における向きの検出は、ワークピースWの研磨前に実行される。ノッチの検出は、後述の圧電素子の配置に対するワークピースWの配置状態を認識・補正することを目的としている。ノッチの検出は、ワークピースWが研磨ヘッド7に保持される前に実行されてもよいし、またはワークピースWが研磨ヘッド7に保持された状態で実行されてもよい。例えば、ワークピースWを研磨ヘッド7へ保持する前にノッチ検出を実施する場合は、ロード・アンロード位置においてワークピースWのノッチ位置をノッチアライナー40にて検出する。そして、検出されたノッチ位置が研磨ヘッド7の特定の位置になるように、研磨ヘッド7を回転させた後、ワークピースWをロード・アンロード装置にて研磨ヘッド7に受渡しし、ワークピースWを研磨ヘッド7に吸着等の方式で保持させてもよい。
【0031】
ここで、ノッチアライナー40は動作制御部10に接続されている。動作制御部10は、ワークピースWのノッチの位置を、研磨ヘッド7の回転角度に関連付けるように構成されている。より具体的には、動作制御部10は、ノッチアライナー40によって検出されたノッチの位置をもとに、研磨ヘッド7の回転角度の基準位置を指定し、その回転角度の基準位置を記憶装置10a内に記憶する。そのうえで、ノッチアライナー40によって検出されたノッチ位置も同時に記憶装置10aに記憶し、これらの基準位置とノッチ位置とを比較することで、動作制御部10は、ワークピースWの表面上の位置を、研磨ヘッド7の回転角度の基準位置に基づいて特定することができる。
【0032】
そのうえで、例えば研磨ヘッド7を回転モータ20によりある角度だけ回転させ、ワークピースWのノッチ位置が研磨ヘッド7の基準位置に対して所定角度になるように補正した後、ワークピースWをロード・アンロード装置にて受渡しし、研磨ヘッド7に保持させる。ここで、研磨ヘッド7の回転角度の基準位置を後述する圧電素子の配置をもとに設定しておけば、研磨ヘッド7は、ワークピースWが圧電素子の特定の配置に対応した状態でワークピースWを保持することが可能となる。
【0033】
ワークピースWの研磨は次のようにして行われる。ワークピースWは、その被研磨面が下を向いた状態で、研磨ヘッド7に保持される。研磨ヘッド7および研磨テーブル5をそれぞれ回転させながら、研磨テーブル5の上方に設けられた研磨液供給ノズル8から研磨液(例えば、砥粒を含むスラリー)を研磨パッド2の研磨面2a上に供給する。研磨パッド2はその中心軸線を中心に研磨テーブル5と一体に回転する。研磨ヘッド7は昇降機構24により所定の高さまで移動される。さらに、研磨ヘッド7は上記所定の高さに維持されたまま、ワークピースWを研磨パッド2の研磨面2aに押し付ける。ワークピースWは研磨ヘッド7と一体に回転する。すなわち、ワークピースWは研磨ヘッド7と同じ速度で回転する。研磨液が研磨パッド2の研磨面2a上に存在した状態で、ワークピースWは研磨パッド2の研磨面2aに摺接される。ワークピースWの表面は、研磨液の化学的作用と、研磨液に含まれる砥粒または研磨パッド2の機械的作用との組み合わせにより、研磨される。
【0034】
研磨装置1は、研磨面2a上のワークピースWの膜厚を測定する膜厚センサ42を備えている。膜厚センサ42は、ワークピースWの膜厚を直接または間接に示す膜厚指標値を生成するように構成されている。この膜厚指標値は、ワークピースWの膜厚に従って変化する。膜厚指標値は、ワークピースWの膜厚自体を表す値であってもよいし、または膜厚に換算される前の物理量または信号値であってもよい。
【0035】
膜厚センサ42の例としては、渦電流センサ、光学式膜厚センサが挙げられる。膜厚センサ42は、研磨テーブル5内に設置されており、研磨テーブル5と一体に回転する。より具体的には、膜厚センサ42は、研磨テーブル5が一回転するたびに、研磨面2a上のワークピースWを横切りながら、ワークピースWの複数の測定点での膜厚を測定するように構成されている。複数の測定点での膜厚は、膜厚指標値として膜厚センサ42から出力され、膜厚指標値は動作制御部10に送られる。動作制御部10は、膜厚指標値に基づいて研磨ヘッド7の動作を制御するように構成されている。
【0036】
動作制御部10は、膜厚センサ42から出力された膜厚指標値から、ワークピースWの膜厚プロファイルを作成する。ワークピースWの膜厚プロファイルは、膜厚指標値の分布である。動作制御部10は、得られたワークピースWの現在の膜厚プロファイルと目標膜厚プロファイルとの差をなくすように研磨ヘッド7の動作を制御する。ワークピースWの目標膜厚プロファイルは、動作制御部10の記憶装置10a内に予め格納されている。ワークピースWの現在の膜厚プロファイルの例としては、図1に示す研磨装置1で研磨される前のワークピースWの初期膜厚プロファイル、および図1に示す研磨装置1でワークピースWを研磨しているときに膜厚センサ42から出力された膜厚指標値から作成された膜厚プロファイルが挙げられる。初期膜厚プロファイルは、例えば、図示しないスタンドアローン型の膜厚測定装置により取得された膜厚測定値、または膜厚センサを備えた他の研磨装置1により取得された膜厚測定値から作成される。初期膜厚プロファイルは、動作制御部10の記憶装置10a内に格納される。
【0037】
図2は、図1に示す研磨ヘッド7を含む研磨ヘッドシステムの一実施形態を示す断面図である。図2に示すように、研磨ヘッドシステムは、研磨ヘッド7、動作制御部10、および駆動電圧印加装置50を含む。研磨ヘッド7は、ワークピースWを研磨パッド2の研磨面2aに押し付けるように構成されている。研磨ヘッド7は、研磨ヘッドシャフト18の下端に固定されたキャリア45と、キャリア45に保持された複数の圧電素子47を備えている。研磨ヘッド7は、研磨ヘッドシャフト18の下端に剛的に固定されており、研磨ヘッドシャフト18に対する研磨ヘッド7の角度は固定されている。複数の圧電素子47は、ワークピースWの裏側に位置している。
【0038】
キャリア45は、複数の圧電素子47を保持するハウジング45Aと、ハウジング45Aに着脱可能に取り付けられたフランジ45Bを有している。フランジ45Bは、図示しないねじによりハウジング45Aに固定されている。図示しないがメンテナンス用の蓋をフランジ45Bに設けてもよい。蓋を外すと、ユーザーは圧電素子47にアクセスすることが可能となる。フランジ45Bの蓋は、圧電素子47の交換や圧電素子47の位置調節などのメンテナンスが必要なときに外される。
【0039】
研磨ヘッド7は、ワークピースWに複数の押付力を独立に加えることができる複数のアクチュエータを備えている。アクチュエータとしては、油圧シリンダ・モータのような油圧式アクチュエータ、空気圧モータや空気圧シリンダのような空気圧式アクチュエータ、電動モータのような電気式アクチュエータや後述の圧電素子を使ったアクチュエータ、磁歪素子を使った磁歪アクチュエータやリニアモータのような電磁アクチュエータや小型ピストン、等が挙げられる。
【0040】
本実施形態では、ワークピースWに複数の押付力を独立に加えることができる複数のアクチュエータとして、複数の圧電素子47が採用されている。圧電素子47は、駆動電圧印加装置50に電力線51を通じて電気的に接続されている。圧電素子47は、駆動源としての駆動電圧印加装置50によって作動される。電力線51は、ロータリコネクタ23を経由して延びている。駆動電圧印加装置50は、電源部50aと、圧電素子47に印加すべき電圧の指令値を電源部50aに送る電圧制御部50bを備えており、電圧を複数の圧電素子47にそれぞれ独立に印加するように構成されている。
【0041】
駆動電圧印加装置50は動作制御部10に接続されている。動作制御部10は、複数の圧電素子47にそれぞれ印加すべき電圧の複数の指令値を決定し、決定された複数の指令値を駆動電圧印加装置50の電圧制御部50bに送るように構成されている。電圧制御部50bは、これらの指令値に従って、電源部50aに指令を出すことで、電源部50aはそれぞれの圧電素子47に所定の電圧を印加するように構成されている。なお、電源部50aは直流電源、交流電源、もしくは電圧パターンを設定可能なプログラマブル電源のいずれかまたはその組合せからなる。
【0042】
研磨ヘッド7は、複数の圧電素子47にそれぞれ連結された複数の押付部材54と、複数の押付部材54を保持する保持部材56と、複数の圧電素子47がそれぞれ発生した複数の押付力を測定する複数の押付力測定装置57をさらに備えている。複数の押付部材54および保持部材56は、ワークピースWの裏側に対向している。
【0043】
駆動電圧印加装置50が複数の圧電素子47に電圧を印加すると、これら圧電素子47は押付部材54に向かって伸長する。この圧電素子47の伸長は、押付部材54を介してワークピースWを研磨パッド2の研磨面2aに対して押し付ける押付力を発生させる。このように、電圧が印加された圧電素子47は、複数の押付力を独立にワークピースWに加えることができ、ワークピースWの複数の部位(領域)を異なる押付力で研磨面2aに対して押し付けることができる。
【0044】
本実施形態では、複数の押付部材54の端面は、ワークピースWを研磨面2aに対して押し付けるための押圧面54aを構成する。複数の押付部材54の押圧面54aは、ワークピースWの裏側に接触している。押圧面54aはシリコーンゴムなどの弾性部材から構成されてもよい。押圧面54aの形状の具体例としては、正多角形、円形、扇形、円弧形状、楕円形、およびそれらの形状の組合せが挙げられる。押圧面54aの中心から各頂点までの距離が等しい正多角形の例としては、正三角形、正四角形、正六角形が挙げられる。
【0045】
保持部材56は、複数の押付部材54を限られた範囲内で移動可能にこれら押付部材54を保持している。より具体的には、保持部材56は、押付部材54が上下方向および水平方向に移動する範囲をクリアランスにより制限しつつ、複数の押付部材54が上下方向に移動することを許容する。この保持部材56により、複数の押付部材54の、ワークピースWの押付方向と垂直な方向の移動範囲が制限される。このように、押付部材54の上下方向の移動が制限されているので、押付部材54は、過度な衝撃または力が圧電素子47に伝わることを防止することができる。一実施形態では、複数の押付部材54と保持部材56を省略し、複数の圧電素子47で直接ワークピースWの裏面を加圧し、ワークピースWを研磨パッド2の研磨面2aに対して押し付けてもよい。
【0046】
研磨ヘッドシステムは、研磨ヘッド7がワークピースWを真空吸引により保持することを可能とする真空ライン60をさらに備えている。この真空ライン60は、ロータリジョイント25を経由して延び、研磨ヘッド7のワークピース接触面56aに連通している。より具体的には、真空ライン60の一端は、研磨ヘッド7のワークピース接触面56aで開口し、真空ライン60の他端は真空ポンプなどの真空源62に連結されている。真空ライン60には真空弁61が取り付けられている。真空弁61は、アクチュエータ駆動型開閉弁(例えば電動弁、電磁弁、エアオペレート弁)であり、動作制御部10に接続されている。真空弁61の動作は動作制御部10によって制御される。動作制御部10が真空弁61を開くと、真空ライン60は、研磨ヘッド7のワークピース接触面56aに真空を形成し、これにより研磨ヘッド7は真空吸引によりワークピースWを研磨ヘッド7のワークピース接触面56aに保持することができる。
【0047】
一実施形態では、ワークピースWの研磨中に、ワークピースWが研磨ヘッド7に対して相対的に回転してしまうことを防止するために(すなわち、ワークピースWの研磨ヘッド7に対する相対位置を固定するために)、真空ライン60により研磨ヘッド7のワークピース接触面56aに真空を形成し、ワークピースWを真空吸引により研磨ヘッド7のワークピース接触面56aに保持してもよい。なお、本図では、真空ライン60はワークピースWの中央に1個配置されているが、ワークピース接触面56a内の複数箇所に開口する複数の真空ライン60を設けてもよい。
【0048】
研磨ヘッド7は、複数の圧電素子47の外側に配置されたリテーナ部材66と、リテーナ部材66に連結された複数の圧電素子72をさらに備えている。各圧電素子72は、リテーナ部材66を研磨パッド2の研磨面2aに対して押し付けるためのアクチュエータである。リテーナ部材66は、ワークピースW、複数の押付部材54、および複数の圧電素子47を囲むように配置されている。本実施形態では、ワークピースWは円形であり、リテーナ部材66の全体は、ワークピースWを囲む環状である。なお、リテーナ部材66はPPSやPEEK等の樹脂材料で形成されており、また研磨面2aとの接触面には研磨液の流入を調整するための溝が形成されていてもよい。
【0049】
圧電素子72は、圧電素子47と同様に、キャリア45のハウジング45Aに保持されている。研磨ヘッド7は、複数の圧電素子72にそれぞれ連結された複数の連結部材80と、複数の連結部材80を保持する保持部材85と、複数の圧電素子72がそれぞれ発生した複数の押付力を測定する複数の押付力測定装置88をさらに備えている。保持部材85は環状であり、キャリア45に固定されている。複数の圧電素子72は、複数の連結部材80および複数の押付力測定装置88を介してリテーナ部材66に連結されている。
【0050】
圧電素子72は駆動電圧印加装置50に電気的に接続されている。動作制御部10は、複数の圧電素子72にそれぞれ印加すべき電圧の複数の指令値を決定し、決定された複数の指令値を駆動電圧印加装置50の電圧制御部50bに送るように構成されている。電圧制御部50bは、これらの指令値に従って、電源部50aに指令を出すことで、それぞれの圧電素子72に所定の電圧を印加するように構成されている。
【0051】
圧電素子72に電圧が印加されると、圧電素子72は押付力測定装置88および連結部材80を研磨パッド2の研磨面2aに向かって押し、連結部材80は、リテーナ部材66を、圧電素子72に印加された電圧に応じた押付力で、研磨パッド2の研磨面2aに対して押し付ける。押付力の測定値は、押付力測定装置88から動作制御部10に送られる。動作制御部10は、押付力の測定値に基づき、圧電素子72に印加すべき電圧の指令値を調整する。
【0052】
図3は、押付部材54、圧電素子72、およびリテーナ部材66を下から見たときの模式図である。図3に示すように、圧電素子72は、押付部材54(および圧電素子47)を囲むように配置されている。リテーナ部材66は、ワークピースW(図3には示さず)の外周部に沿って配置されている。圧電素子72は、リテーナ部材66に沿って配列されている。
【0053】
図3に示す例では、複数の押付部材54はハニカム状に配列されており、各押付部材54の押圧面54aは正六角形である。図3から分かるように、ハニカム配列を構成する正六角形の押圧面54aは、隣接する押圧面54a間の隙間を最小にできる。さらに、正六角形は、正三角形および正四角形に比べて、各頂点の角度が大きく、応力集中が発生しにくいという利点もある。
【0054】
図3に示す各押付部材54は、各圧電素子47に連結されている。したがって、図3に示す押付部材54の配列は、圧電素子47の配列と実質的に同じである。複数の圧電素子47および複数の押付部材54は、研磨ヘッド7の径方向および周方向に沿って分布している。したがって、研磨ヘッドシステムは、ワークピースWの膜厚プロファイルを精密に制御することができる。特に、研磨ヘッドシステムは、ワークピースWの周方向にばらつく膜厚を解消することができる。
【0055】
押付部材54の配列は、図3に示す例に限られず、格子状、同心円状、千鳥状などの他の配列であってもよい。また、各押付部材54の押圧面54aも正六角形に限られず、円形、矩形状、扇形、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0056】
図4に示すように、一実施形態では、研磨ヘッド7は、複数のリテーナ部材66を備えてもよい。複数のリテーナ部材66は、ワークピースW、複数の押付部材54、および複数の圧電素子47を囲むように配列される。複数の圧電素子72は、複数の連結部材80(図5参照)および複数の押付力測定装置88(図5参照)を介して複数のリテーナ部材66にそれぞれ連結される。
【0057】
図5は、図2に示す圧電素子72、保持部材85、連結部材80、およびリテーナ部材66を示す断面図である。図5を参照する以下の説明は、図4の実施形態にも適用される。図5に示すように、キャリア45のハウジング45Aは、複数の段付き穴90を有しており、複数の圧電素子72はこれら段付き穴90にそれぞれ収容されている。各圧電素子72はストッパー突起72aを有している。ストッパー突起72aが段付き穴90の段部90aに当接することにより、圧電素子72のキャリア45に対する相対的な位置決めが達成される。
【0058】
本実施形態では、各押付力測定装置88は、圧電素子72および連結部材80と直列に配置されている。より具体的には、各押付力測定装置88は、圧電素子72と連結部材80との間に配置されている。このように配置された押付力測定装置88は、圧電素子72がそれぞれ発生した複数の押付力を別々に測定することができる。押付力測定装置88の配置は、図5に示す実施形態に限られない。圧電素子72がそれぞれ発生した複数の押付力を別々に測定することができる限りにおいて、押付力測定装置88は、リテーナ部材66と連結部材80との間に配置されてもよいし、あるいは連結部材80の横に配置されてもよい。
【0059】
押付力測定装置88は、測定した押付力[N]を圧力[Pa]に換算するように構成されてもよい。押付力測定装置88の例として、複数の圧電素子72に連結されたロードセル、圧電シートが挙げられる。圧電シートは、複数の圧電センサを有しており、これら圧電シートに加えられた力に応じた電圧を発生し、電圧の値を力または圧力に変換するように構成されている。
【0060】
複数の連結部材80の端面は、リテーナ部材66に接続されている。保持部材85は、複数の連結部材80を限られた範囲内で移動可能にこれら連結部材80を保持している。より具体的には、各連結部材80は、その上端および下端に位置する突出部80b,80cと、これら突出部80b,80cの間に位置する胴部80dを有している。胴部80dの幅は、突出部80b,80cの幅よりも小さい。保持部材85は、胴部80dと一定のクリアランスを有し、連結部材80を移動可能に支持する支持部85aを有している。各連結部材80の突出部80b,80cと、保持部材85の支持部85aは、連結部材80が上下方向および水平方向に移動する範囲をクリアランスにより制限しつつ、各連結部材80が上下方向に移動することを許容する。保持部材85の支持部85aは、連結部材80の、リテーナ部材66の押付方向と垂直な方向の移動範囲を制限する。連結部材80の上下方向の移動が制限されているので、連結部材80は、過度な衝撃または力が圧電素子72に伝わることを防止することができる。
【0061】
リテーナ部材66に押された研磨パッド2は変形し、研磨パッド2の一部はリテーナ部材66の周囲で上方に隆起する。これにより、ワークピースWのエッジ部にて研磨パッド2の接触圧力が増加することで、ワークピースWのエッジ部に対する研磨レートを高めることができる。本実施形態によれば、複数の圧電素子72は、リテーナ部材66を独立に研磨パッド2の研磨面2aに対して押し付けることができるので、ワークピースWのエッジ部の研磨レート分布を精密に制御することができる。
【0062】
次に、研磨ヘッド7の動作の一例を説明する。動作制御部10は、ワークピースWの現在の膜厚プロファイルと、記憶装置10a内に予め格納されている目標膜厚プロファイルとの差を算定し、ワークピースWの被研磨面での目標研磨量の分布を作成する。さらに、動作制御部10は、作成された目標研磨量の分布に基づき、所定の研磨時間内に目標研磨量を達成するために、圧電素子72および圧電素子47に印加すべき電圧の指令値を決定する。例えば、動作制御部10は、目標研磨量の分布と、上記所定の研磨時間とから、目標研磨レートの分布を作成し、目標研磨レートを達成できる電圧の指令値を研磨レート相関データから決定する。研磨レート相関データは、研磨レートと電圧の指令値との関係を示すデータである。
【0063】
動作制御部10は、電圧の指令値を駆動電圧印加装置50の電圧制御部50bに送る。電圧制御部50bは、これら電圧の指令値に従って、電源部50aに指令を出すことで、電源部50aは圧電素子72および圧電素子47に所定の電圧を印加し、ワークピースWの膜厚プロファイルの調整を行う。なお、ワークピースWの研磨中においては、例えば一定時間ごと、または研磨テーブル5の一回転周期ごとに、膜厚プロファイルの調整を行う。
【0064】
研磨ヘッド7の動作の別の例では、動作制御部10は、目標研磨量の分布を作成せずに、膜厚センサ42により得られたワークピースWの現在の膜厚プロファイルに基づいて、圧電素子72および圧電素子47に印加すべき電圧の指令値を決定する。例えば、目標膜厚プロファイルが平坦な膜厚プロファイルである場合、動作制御部10は、現在の膜厚プロファイルを平坦な膜厚プロファイルに近づけるために、膜厚指標値の大きい領域に対応する圧電素子72および圧電素子47には、現在印加している電圧よりも所定の変更量だけ高い電圧を印加し、膜厚指標値の小さい領域に対応する圧電素子72および圧電素子47には、現在印加している電圧よりも所定の変更量だけ低い電圧を印加するような電圧の指令値を決定する。なお、これらの電圧の変更量は、パラメータとして予め動作制御部10に設定される。
【0065】
図2に戻り、本実施形態では、各押付力測定装置57は、圧電素子47および押付部材54と直列に配置されている。より具体的には、各押付力測定装置57は、圧電素子47と押付部材54との間に配置されている。このように配置された押付力測定装置57は、圧電素子47がそれぞれ発生した複数の押付力を別々に測定することができる。押付力測定装置57の配置は、図2に示す実施形態に限られない。圧電素子47がそれぞれ発生した複数の押付力を別々に測定することができる限りにおいて、押付力測定装置57は、ワークピースWと押付部材54との間に配置されてもよいし、あるいは押付部材54の横に配置されてもよい。
【0066】
押付力測定装置57は、測定した押付力[N]を圧力[Pa]に換算するように構成されてもよい。押付力測定装置57の例として、複数の圧電素子47に連結されたロードセル、圧電シートが挙げられる。圧電シートは、複数の圧電センサを有しており、これら圧電シートに加えられた力に応じた電圧を発生し、電圧の値を力または圧力に変換するように構成されている。
【0067】
圧電素子47に電圧が印加されると、圧電素子47は押付力測定装置57および押付部材54を研磨パッド2の研磨面2aに向かって押し、押付部材54は、ワークピースWの対応する部位(領域)を、圧電素子47に印加された電圧に応じた押付力で、研磨面2aに対して押し付ける。押付力の測定値は、押付力測定装置57から動作制御部10に送られる。動作制御部10は、押付力の測定値に基づき、圧電素子47に印加すべき電圧の指令値を調整する。
【0068】
図6は、研磨ヘッドシステムの他の実施形態を示す断面図である。特に説明しない本実施形態の構成および動作は、図1乃至図5を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
【0069】
研磨ヘッドシステムは、複数の圧電素子72およびリテーナ部材66の全体を、圧電素子47に対して相対的に研磨パッド2の研磨面2aに向かって移動させるリテーナ部材移動装置100を備えている。リテーナ部材移動装置100は、内部に圧力室102を形成する弾性バッグ103と、圧力室102に連通している気体供給ライン105と、気体供給ライン105に接続された圧力レギュレータ108を備えている。複数の圧電素子72は、キャリア45のハウジング45Aに上下動可能に支持されている。
【0070】
弾性バッグ103は、研磨ヘッド7のキャリア45内に設置されており、弾性バッグ103の一部はキャリア45に保持されている。弾性バッグ103は、伸縮可能な柔軟な弾性材料から構成されている。弾性バッグ103は、リテーナ部材66の全体に沿って延びている。本実施形態では、リテーナ部材66は環状であり、弾性バッグ103も環状である。
【0071】
気体供給ライン105は、ロータリジョイント25を経由して圧縮気体供給源110まで延びている。圧縮気体供給源110は、研磨装置1が配置されている工場に設置されたユーティリティ設備としての圧縮気体供給源であってもよいし、あるいは圧縮気体を送るポンプであってもよい。圧縮空気などの圧縮気体は、圧縮気体供給源110から気体供給ライン105を通って圧力室102内に供給される。
【0072】
圧力レギュレータ108は、気体供給ライン105に取り付けられており、圧力室102内の圧縮気体の圧力を調節するように構成されている。圧力レギュレータ108は、動作制御部10に接続されており、圧力レギュレータ108の動作(すなわち圧力室102内の圧縮気体の圧力)は動作制御部10によって制御される。より具体的には、動作制御部10は、圧力指令値を圧力レギュレータ108に送り、圧力レギュレータ108は圧力室102内の圧力が圧力指令値に維持されるように動作する。
【0073】
圧縮気体が圧力室102内に供給されると、弾性バッグ103が膨らみ、圧電素子72およびリテーナ部材66の全体を研磨パッド2の研磨面2aに向かって移動させ、その一方で、キャリア45およびアクチュエータとしての圧電素子47の位置は変わらない。したがって、リテーナ部材移動装置100は、圧電素子47からワークピースWに加えられる押付力とは独立した均一な押付力を、圧電素子72およびリテーナ部材66の全体に加えることができる。
【0074】
本実施形態によれば、リテーナ部材移動装置100は、圧電素子72およびリテーナ部材66の全体を研磨パッド2の研磨面2aに向かって移動させ、リテーナ部材66を均一な力で研磨面2aに対して押し付けることができる。さらに、複数の圧電素子72は、リテーナ部材66を局所的に異なる圧力で研磨面2aに対して押し付けることができる。動作制御部10は、リテーナ部材移動装置100および圧電素子72の両方を同時に作動させてもよく、またはいずれか一方のみを選択的に作動させてもよい。
【0075】
図6では、弾性バッグ103は圧電素子72を直接押すように配置されているが、圧電素子72が図示しないケーシング内に配置され、弾性バッグ103がケーシングを加圧することで、圧電素子72およびリテーナ部材66の全体を研磨パッド2の研磨面2aに向かって移動させてもよい。ケーシングを設けることで、弾性バッグ103からの過度な力が圧電素子72に直接伝わることを防止することができる。
【0076】
図7は、研磨ヘッドシステムの他の実施形態を示す断面図である。特に説明しない本実施形態の構成および動作は、図1乃至図6を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
【0077】
本実施形態の研磨ヘッドシステムは、研磨ヘッド7内に配置された電圧分配器121を備えている。電圧分配器121は、電圧を圧電素子47,72に分配する分岐装置125と、分岐装置125に接続された通信装置128を備えている。分岐装置125および通信装置128は、キャリア45に固定されている。分岐装置125は、電力線51およびロータリコネクタ23を介して駆動電圧印加装置50の電源部50aに電気的に接続されている。電力は電力線51を通じて駆動電圧印加装置50の電源部50aから分岐装置125に供給され、さらに分岐装置125から圧電素子47,72に分配される。
【0078】
分岐装置125は、電力線51およびロータリコネクタ23を通じて駆動電圧印加装置50の電源部50aに接続されており、電力は電源部50aから分岐装置125に供給される。通信装置128は、通信線130を介して動作制御部10に接続されている。通信線130は、通信装置128からロータリコネクタ23および電圧制御部50bを経由して動作制御部10に延びている。動作制御部10は、圧電素子47および圧電素子72に印加すべき電圧の指令値を電圧制御部50bおよび通信装置128に送り、通信装置128は電圧の指令値を分岐装置125に送る。分岐装置125は、通信装置128から得た指令値と、同じく電圧制御部50bからの指令値をもとに、電源部50aから印加された電圧をそれぞれの圧電素子47および圧電素子72に分配し、印加する。本実施形態によれば、圧電素子47,72から電源部50aまで延びる電力線51の本数を減らすことができる。
【0079】
図8は、研磨ヘッドシステムの他の実施形態を示す断面図である。特に説明しない本実施形態の構成および動作は、図1乃至図7を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
【0080】
本実施形態では、ワークピースWを研磨パッド2の研磨面2aに押し付けるアクチュエータとして、圧電素子47に代えて、流体圧力式アクチュエータが採用されている。より具体的には、流体圧力式アクチュエータは、複数の圧力室C1~C4を形成する弾性膜135と、これらの圧力室C1~C4にそれぞれ連通する複数の気体供給ラインF1~F4と、これら気体供給ラインF1~F4にそれぞれ接続された複数の圧力レギュレータR1~R4を備えている。弾性膜135の露出面は、ワークピースWを研磨パッド2の研磨面2aに対して押し付けるワークピース接触面を構成する。
【0081】
弾性膜135は、キャリア45の下面に保持されている。この弾性膜135は、同心状の複数の隔壁135a~135dを有している。これら隔壁135a~135dは、弾性膜135の内側の空間を複数の圧力室C1~C4に分割する。これら圧力室C1~C4の配列は同心状である。本実施形態では4つの圧力室C1~C4が設けられているが、4つよりも少ない、または4つよりも多い圧力室が設けられてもよい。リテーナ部材66は、弾性膜135および圧力室C1~C4を囲むように配置されている。
【0082】
気体供給ラインF1~F4は、ロータリジョイント25を経由して圧縮気体供給源140まで延びている。圧縮気体供給源140は、研磨装置1が配置されている工場に設置されたユーティリティ設備としての圧縮気体供給源であってもよいし、あるいは圧縮気体を送るポンプであってもよい。圧縮空気などの圧縮気体は、圧縮気体供給源140から気体供給ラインを通って圧力室C1~C4内に供給される。
【0083】
圧力レギュレータR1~R4は、気体供給ラインF1~F4にそれぞれ取り付けられており、圧力室C1~C4内の圧縮気体の圧力を独立に調節するように構成されている。圧力レギュレータR1~R4は、動作制御部10に接続されており、圧力レギュレータR1~R4の動作(すなわち圧力室C1~C4内の圧縮気体の圧力)は動作制御部10によって制御される。より具体的には、動作制御部10は、複数の圧力指令値を圧力レギュレータR1~R4にそれぞれ送り、圧力レギュレータR1~R4は圧力室C1~C4内の圧力が対応する圧力指令値に維持されるように動作する。研磨ヘッド7は、ワークピースWの異なる領域を異なる押圧力で押し付けることができる。
【0084】
次に、図8に示す研磨ヘッド7の動作の一例を説明する。動作制御部10は、ワークピースWの現在の膜厚プロファイルと、記憶装置10a内に予め格納されている目標膜厚プロファイルとの差を算定し、ワークピースWの被研磨面での目標研磨量の分布を作成する。さらに、動作制御部10は、作成された目標研磨量の分布に基づき、所定の研磨時間内に目標研磨量を達成するために、圧電素子72に印加すべき電圧の指令値と、圧力レギュレータR1~R4に送るべき圧力指令値を決定する。例えば、動作制御部10は、目標研磨量の分布と、上記所定の研磨時間とから、目標研磨レートの分布を作成し、目標研磨レートを達成できる電圧の指令値および圧力指令値を研磨レート相関データから決定する。研磨レート相関データは、研磨レートと電圧の指令値との関係を示すデータ、および研磨レートと圧力指令値との関係を示すデータを含む。
【0085】
動作制御部10は圧力指令値を圧力レギュレータR1~R4にそれぞれ送り、電圧の指令値を駆動電圧印加装置50の電圧制御部50bに送る。圧力レギュレータR1~R4は、圧力室C1~C4内の圧力が圧力指令値にそれぞれ維持されるように動作する。電圧制御部50bは、電圧の指令値に従って、電源部50aに指令を出すことで、電源部50aは圧電素子72に所定の電圧を印加する。このようにして、研磨ヘッド7はワークピースWの膜厚プロファイルの調整を行う。なお、ワークピースWの研磨中においては、例えば一定時間ごと、または研磨テーブル5の一回転周期ごとに、膜厚プロファイルの調整を行う。
【0086】
研磨ヘッド7の動作の別の例では、動作制御部10は、目標研磨量の分布を作成せずに、膜厚センサ42により得られたワークピースWの現在の膜厚プロファイルに基づいて、圧電素子72に印加すべき電圧の指令値と、圧力レギュレータR1~R4に送るべき圧力指令値を決定する。例えば、目標膜厚プロファイルが平坦な膜厚プロファイルである場合、動作制御部10は、現在の膜厚プロファイルを平坦な膜厚プロファイルに近づけるために、膜厚指標値の大きい領域に対応する圧電素子72には、現在印加している電圧よりも所定の変更量だけ高い電圧を印加し、膜厚指標値の小さい領域に対応する圧電素子72には、現在印加している電圧よりも所定の変更量だけ低い電圧を印加するような電圧の指令値を決定する。同様に、動作制御部10は、膜厚指標値の大きい領域に対応する圧力室には、現在の圧力よりも所定の変更量だけ高い圧力を形成し、膜厚指標値の小さい領域に対応する圧力室には、現在の圧力よりも所定の変更量だけ低い圧力を形成するような圧力指令値を決定する。なお、これらの電圧の変更量および圧力の変更量は、パラメータとして予め動作制御部10に設定される。
【0087】
上述した実施形態は、適宜組み合わせることができる。例えば、図6に示す実施形態は、図7に示す実施形態、および図8に示す実施形態に適用することができる。
【0088】
本発明は、円形のワークピースのみならず、矩形状、四角形などの多角形状のワークピースの研磨にも適用することができる。例えば、四角形のワークピースを研磨するための研磨ヘッドシステムは、四角形のワークピースを囲むようにリテーナ部材が構成される。
【0089】
図9は、ワークピースを処理する処理システムの一実施形態を示す平面図である。図示の処理システム1000は、本明細書で説明されるような、ワークピースWを研磨処理する研磨装置1-A~1-Cと、ワークピースWを洗浄するための洗浄装置350-A,350-Bと、ワークピースWの搬送装置としてのロボット400と、ワークピースWのロードポート500と、乾燥装置600と、を有する。かかるシステム構成において、処理されるワークピースWは、ロードポート500に入れられる。ロードポート500にロードされたワークピースWは、ロボット400により研磨装置1-A~1-Cのいずれかに搬送され、研磨処理が行われる。基板などのワークピースWは、複数の研磨装置で順次研磨処理されてもよい。研磨処理が行われたワークピースWは、ロボット400により洗浄装置350-A,350-Bのいずれかに搬送され、洗浄される。ワークピースWは、洗浄装置350-A,350-Bで順次洗浄されてもよい。洗浄処理が行われたワークピースWは、乾燥装置600へ搬送されて、乾燥処理が行われる。乾燥したワークピースWは、再びロードポート500に戻される。
【0090】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0091】
1 研磨装置
1-A~1-C 研磨装置
2 研磨パッド
2a 研磨面
5 研磨テーブル
5a 回転軸
5b パッド支持面
7 研磨ヘッド
8 研磨液供給ノズル
10 動作制御部
10a 記憶装置
10b 演算装置
14 支軸
16 研磨ヘッド揺動アーム
17 アーム旋回モータ
18 研磨ヘッドシャフト
20 回転モータ
21 回転モータ
22 ロータリエンコーダ
23 ロータリコネクタ
24 昇降機構
25 ロータリジョイント
26 軸受
28 ブリッジ
29 支持台
30 支柱
32 ボールねじ機構
32a ねじ軸
32b ナット
38 サーボモータ
39 ロード・アンロード装置
40 ノッチアライナー
42 膜厚センサ
45 キャリア
45A ハウジング
45B フランジ
47 圧電素子
50 駆動電圧印加装置
50a 電源部
50b 電圧制御部
51 電力線
54 押付部材
54a 押付面
56 保持部材
56a ワークピース接触面、端面
57 押付力測定装置
60 真空ライン
61 真空弁
62 真空源
66 リテーナ部材
72 圧電素子
72a ストッパー突起
80 連結部材
80b,80c 突出部
80d 胴部
85 保持部材
85a 支持部
88 押付力測定装置
90 段付き穴
90a 段部
100 リテーナ部材移動装置
102 圧力室
103 弾性バッグ
105 気体供給ライン
108 圧力レギュレータ
110 圧縮気体供給源
121 電圧分配器
125 分岐装置
128 通信装置
130 通信線
135 弾性膜
135a~135d 隔壁
140 圧縮気体供給源
350A~350B 洗浄装置
400 ロボット(搬送装置)
500 ロードポート
600 乾燥装置
1000 処理システム
C1~C4 圧力室
F1~F4 気体供給ライン
R1~R4 圧力レギュレータ
W ワークピース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9