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特許7365394導電性スポンジおよび導電性スポンジの製造方法
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  • 特許-導電性スポンジおよび導電性スポンジの製造方法 図1
  • 特許-導電性スポンジおよび導電性スポンジの製造方法 図2
  • 特許-導電性スポンジおよび導電性スポンジの製造方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-11
(45)【発行日】2023-10-19
(54)【発明の名称】導電性スポンジおよび導電性スポンジの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/42 20060101AFI20231012BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20231012BHJP
   B29C 44/56 20060101ALI20231012BHJP
   H01B 5/14 20060101ALI20231012BHJP
【FI】
C08J9/42 CER
C08J9/42 CEZ
C08K3/04
B29C44/56
H01B5/14 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021502060
(86)(22)【出願日】2020-02-19
(86)【国際出願番号】 JP2020006400
(87)【国際公開番号】W WO2020175256
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2022-10-19
(31)【優先権主張番号】P 2019035454
(32)【優先日】2019-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】514285911
【氏名又は名称】千葉 正毅
(73)【特許権者】
【識別番号】510244754
【氏名又は名称】和氣 美紀夫
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100103078
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100130650
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 泰光
(74)【代理人】
【識別番号】100168099
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 伸太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【弁理士】
【氏名又は名称】小淵 景太
(74)【代理人】
【識別番号】100200609
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 智和
(72)【発明者】
【氏名】千葉 正毅
(72)【発明者】
【氏名】和氣 美紀夫
(72)【発明者】
【氏名】上島 貢
(72)【発明者】
【氏名】竹下 誠
【審査官】石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-139866(JP,A)
【文献】特開2011-084604(JP,A)
【文献】特表2016-522268(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00-9/42
C08K 3/00-13/08
B29C 44/00-44/60、67/20
H01B 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縁性材料からなるスポンジ本体を用意する工程と、
ポリマー、カーボンナノチューブおよび溶剤を含むカーボンナノチューブ溶液を、前記スポンジ本体の少なくとも一部に染み込ませる工程と、
前記溶剤を除去する工程と、を備え
前記カーボンナノチューブ溶液を染み込ませる工程においては、前記スポンジ本体の一部に前記カーボンナノチューブ溶液の染み込みを阻止する部材を付着させておくことによって、前記スポンジ本体の他の一部のみに前記カーボンナノチューブ溶液を染み込ませる、導電性スポンジの製造方法。
【請求項2】
前記溶剤を除去する工程は、乾燥により行う、請求項に記載の導電性スポンジの製造方法。
【請求項3】
前記カーボンナノチューブ溶液を染み込ませる工程の後、前記溶剤を除去する工程の前に、前記スポンジ本体を絞ることにより前記スポンジ本体に染み込んだ前記カーボンナノチューブ溶液の一部を除去する工程をさらに備える、請求項またはに記載の導電性スポンジの製造方法。
【請求項4】
前記カーボンナノチューブ溶液を染み込ませる工程および前記溶剤を除去する工程を複数回繰り返す、請求項ないしのいずれかに記載の導電性スポンジの製造方法。
【請求項5】
前記カーボンナノチューブ溶液の染み込みを阻止する部材として、ロウを用いる、請求項1ないし4のいずれかに記載の導電性スポンジの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、導電性スポンジおよび導電性スポンジの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の産業分野において、導電性と柔軟性とを兼ね備えた材料として、導電性スポンジが利用されている。特許文献1には、プリンタの導電性ローラに導電性スポンジが用いられた例が開示されている。この導電性スポンジは、導電性発泡ゴムを成形したものからなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-155263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
導電性発泡ゴムを用いて、導電性ローラをはじめとする導電性と柔軟性とが求められる物体を製造する場合、導電性と柔軟性とのそれぞれを高めることが困難である場合がある。また、スポンジの一部のみに導電性を付与することは、たとえば導電性発泡ゴムと通常の絶縁性発泡材料とを混在させた製造が強いられる。
【0005】
本開示は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、導電性と柔軟性とをより高めることが可能な導電性スポンジおよび導電性スポンジの製造方法を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の側面によって提供される導電性スポンジは、絶縁性材料からなるスポンジ本体と、前記スポンジ本体の外表面に積層されたカーボンナノチューブを含む導電層と、を備える。
【0007】
本開示の第2の側面によって提供される導電性スポンジの製造方法は、絶縁性材料からなるスポンジ本体を用意する工程と、ポリマー、カーボンナノチューブおよび溶剤を含むカーボンナノチューブ溶液を、前記スポンジ本体の少なくとも一部に染み込ませる工程と、前記溶剤を除去する工程と、を備える。
【0008】
本開示の好ましい実施の形態においては、前記溶剤を除去する工程は、乾燥により行う。
【0009】
本開示の好ましい実施の形態においては、前記カーボンナノチューブ溶液を染み込ませる工程の後、前記溶剤を除去する工程の前に、前記スポンジ本体を絞ることにより前記スポンジ本体に染み込んだ前記カーボンナノチューブ溶液の一部を除去する工程をさらに備える。
【0010】
本開示の好ましい実施の形態においては、前記カーボンナノチューブ溶液を染み込ませる工程および前記溶剤を除去する工程を複数回繰り返す。
【0011】
本開示の好ましい実施の形態においては、前記カーボンナノチューブ溶液を染み込ませる工程においては、前記スポンジ本体の一部のみに前記カーボンナノチューブ溶液を染み込ませる。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、導電性スポンジの導電性と柔軟性とをより高めることができる。
【0013】
本開示のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本開示の第1実施形態に係る導電性スポンジを示す正面図および要部拡大断面図である。
図2】本開示の第1実施形態に係る導電性スポンジの製造方法を示すフロー図である。
図3】本開示の第2実施形態に係る導電性スポンジを示す正面図および要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0016】
図1は、本開示の第1実施形態に係る導電性スポンジを示している。本実施形態の導電性スポンジA1は、スポンジ本体1および導電層2を備える。
【0017】
スポンジ本体1は、従来公知のスポンジと称される物体であり、通常、ウレタン、ポリエチレン、ゴム等の絶縁材料からなる。また、スポンジ本体1は、液体を染み込ませ且つ柔軟性を生じさせる多数の細孔が形成されている。これにより、スポンジ本体1の外表面は、スポンジ本体1の外観に表れる部分だけでなく、スポンジ本体1の外観に表れない内部にも存在している。
【0018】
導電層2は、スポンジ本体1の外表面の少なくとも一部に積層されている。導電層2は、カーボンナノチューブを含むことにより、良好な導電性を有する。導電層2は、スポンジ本体1の外表面に設けられることにより、スポンジ本体1の外観に表れる部分の外表面だけでなく、スポンジ本体1の外観に表れない内部の外表面にも形成されている。本実施形態においては、導電層2は、スポンジ本体1の外表面の略全体に積層されている。
【0019】
図2は、導電性スポンジA1の製造方法の一例を示している。本製造方法は、スポンジ本体用意工程、カーボンナノチューブ溶液を染み込ませる工程、カーボンナノチューブ溶液の一部を除去する工程および溶剤を除去する工程を備える。
【0020】
スポンジ本体用意工程においては、スポンジ本体1を用意する。スポンジ本体1としては、従来公知のスポンジを用いることが可能であり、市販等されている通常のスポンジを用いることができる。
【0021】
次に、カーボンナノチューブ溶液を染み込ませる工程においては、まず、カーボンナノチューブ溶液を用意する。カーボンナノチューブ溶液は、ポリマー、カーボンナノチューブおよび溶剤を含む。このような、カーボンナノチューブ溶液としては、たとえば、トルエンにスチレン-イソプレン-スチレンのブロックポリマを溶解させたものにカーボンナノチューブを分散させたものが挙げられる。次に、カーボンナノチューブ溶液をスポンジ本体1に染み込ませる。これは、たとえば所定の容器にカーボンナノチューブ溶液を滞留させ、このカーボンナノチューブ溶液にスポンジ本体1を浸漬させる等により行う。
【0022】
次に、カーボンナノチューブ溶液の一部を除去する工程を行う。本工程においては、スポンジ本体1に染み込ませたカーボンナノチューブ溶液のうち、導電性スポンジA1を適切に製造する観点から、過度に染み込んだカーボンナノチューブ溶液を除去する。カーボンナノチューブ溶液を除去する手法は特に限定されず、たとえば、スポンジ本体1を圧縮することにより、カーボンナノチューブ溶液を絞り出すことにより行う。
【0023】
次に、溶剤を除去する工程を行う。溶剤を除去する手法は特に限定されず、たとえば乾燥によって行う。本工程を行うことにより、スポンジ本体1の外表面に導電層2が積層される。
【0024】
図2に示すように、カーボンナノチューブ溶液を染み込ませる工程、カーボンナノチューブ溶液の一部を除去する工程および溶剤を除去する工程は、形成すべき導電層2によって、複数回繰り返してもよい。本実施形態においては、これらの工程を所定回数(たとえば、2~3回)繰り返すことにより、図1に示す導電性スポンジA1が得られる。
【0025】
次に、導電性スポンジA1の作用について説明する。
【0026】
本実施形態によれば、通常使用され、あるいは市販される従来公知のスポンジを用いて、導電性を有する導電性スポンジA1を構成することができる。これは、導電性が付与された樹脂材料等を発泡等させることにより導電性スポンジを製造する場合と比べて、より容易かつ低コストで導電性スポンジを製造することができる。
【0027】
また、導電層2に含まれるカーボンナノチューブの量を適宜調整することにより、導電性スポンジA1の導電性を調節することが可能である。たとえば、導電性スポンジA1の体積抵抗値は、103~106Ω・cmの範囲で調節可能である。また、導電性スポンジA1の導電性は、導電層2によって担保されるため、スポンジ本体1は、導電性材料を含む必要がない。このため、スポンジ本体1の柔軟性を従来公知のスポンジと同様に高めることが可能である。したがって、導電性スポンジA1によれば、導電性と柔軟性とをより高めることが可能である。たとえば、導電性発泡ゴムを用いた導電性スポンジと体積抵抗値が同等である導電性スポンジA1を製造した場合、この導電性スポンジA1の柔軟性を導電性発泡ゴムを用いた導電性スポンジよりも高めることができる。
【0028】
カーボンナノチューブ溶液を染み込ませる工程を経ることによって導電性スポンジA1を製造することにより、導電性スポンジA1の外観に表れる部分だけでなく、外観に表れない内部の外表面にも、導電層2を積層することができる。これは、導電性スポンジA1の導電性を高めるのに有利である。また、カーボンナノチューブ溶液を染み込ませる工程、カーボンナノチューブ溶液の一部を除去する工程および溶剤を除去する工程を複数回繰り返すことにより、より厚い導電層2や、より均一な厚さの導電層2を形成することができる。また、導電層2の導電性は、カーボンナノチューブ溶液に分散させるカーボンナノチューブの量によって適宜調整することができる。
【0029】
図3は、本開示の他の実施形態を示している。なお、これらの図において、上記実施形態と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付している。
【0030】
図3は、本開示の第2実施形態に係る導電性スポンジを示している。本実施形態の導電性スポンジA2は、スポンジ本体1の外表面の一部のみに導電層2が積層されている。すなわち、スポンジ本体1の外表面の他の部分は、外部に露出している。
【0031】
導電性スポンジA2においては、導電層2が積層された部分のみが導電性を有し、導電層2が積層されていない部分は、絶縁性を有する。このような導電性スポンジA2は、たとえばカーボンナノチューブ溶液を染み込ませる工程において、あらかじめスポンジ本体1の一部にカーボンナノチューブ溶液の染み込みを阻止する部材を付着させておくことによって製造することが可能である。カーボンナノチューブ溶液の染み込みを阻止する部材としては、たとえばロウが挙げられる。
【0032】
このような実施形態によっても、導電性スポンジA2の導電性と柔軟性とをより高めることが可能である。また、導電性スポンジA2は、導電性を有する部分と絶縁性を有する部分との双方を有するものの、その製造において、導電性を有する樹脂材料やゴム材料と、絶縁性を有する樹脂材料やゴム材料を使い分けて、2つの部分(導電性部分と絶縁性部分)とを製造するといった必要がない。これは、導電性スポンジA2の製造効率を高める上で有利である。
【0033】
本開示に係る導電性スポンジおよび導電性スポンジの製造方法は、上述した実施形態に限定されるものではない。本開示に係る導電性スポンジおよび導電性スポンジの製造方法の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
図1
図2
図3