(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-12
(45)【発行日】2023-10-20
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20231013BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20231013BHJP
【FI】
H01L29/78 652F
H01L29/78 652D
H01L29/78 652H
H01L29/78 652P
H01L29/78 652S
(21)【出願番号】P 2019086844
(22)【出願日】2019-04-26
【審査請求日】2022-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】須藤 陽平
(72)【発明者】
【氏名】松枝 斉
【審査官】上田 智志
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-204796(JP,A)
【文献】特開2011-003609(JP,A)
【文献】特開2004-335990(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0049564(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 29/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体層に設けられ、第1導電型の第1半導体カラムと第2導電型の第2半導体カラムとが前記半導体層の厚み方向に交差する交差方向に沿って交互に配置されたスーパージャンクション部と、
前記半導体層上に設けられ、ゲート電極およびソース電極を含むゲートソース領域と、
前記半導体層の前記第2半導体カラムごとに設けられ、前記第2半導体カラムの前記ゲートソース領域側端面に接触配置された前記第2導電型のベース層と、
前記ベース層に設けられ、前記ベース層より不純物濃度の高い前記第2導電型の第1コンタクト領域と、
前記ベース層に設けられ、前記第1コンタクト領域に対して前記交差方向に隣接して配置された、前記第1導電型のソース領域と、
前記ソース領域における前記ソース電極とのコンタクト領域に対向する対向面に設けられ、前記ベース層より不純物濃度の高い前記第2導電型の第2コンタクト領域と、
を備え
、
単位セル領域に含まれる前記ソース領域が、前記ゲート電極の延伸方向に少なくとも3以上の領域に分割された複数の分割ソース領域からなる、
半導体装置。
【請求項2】
前記ソース領域は、
前記ソース領域の前記対向面が、前記第1コンタクト領域および前記第2コンタクト領域の少なくとも一方によって覆われてなる、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
半導体層に設けられ、第1導電型の第1半導体カラムと第2導電型の第2半導体カラムとが前記半導体層の厚み方向に交差する交差方向に沿って交互に配置されたスーパージャンクション部と、
前記半導体層上に設けられ、ゲート電極およびソース電極を含むゲートソース領域と、
前記半導体層の前記第2半導体カラムごとに設けられ、前記第2半導体カラムの前記ゲートソース領域側端面に接触配置された前記第2導電型のベース層と、
前記ベース層に設けられ、前記ベース層より不純物濃度の高い前記第2導電型の第1コンタクト領域と、
前記ベース層に設けられ、前記第1コンタクト領域に対して前記交差方向に隣接して配置された、前記第1導電型のソース領域と、
を備え、
単位セル領域に含まれる前記ソース領域が、前記ゲート電極の延伸方向に少なくとも3以上の領域に分割された複数の分割ソース領域からなる、
半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ドリフト層に、p型カラムとn型カラムとを交互に配置したスーパージャンクション構造を有するMOSET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-effect Transistor)が開示されている。
【0003】
このようなスーパージャンクション構造を有するMOSFETのドレイン電極に逆バイアスを印加すると、カラムの深さ方向の中心部で発生したホール電流の一部が、チャネル領域の端部表面の近傍に集中する。このようなホール電流の集中は、ゲート閾値の変動またはリーク電流増加の要因となる。このため、従来では、半導体装置の特性変動を抑制することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-186353号公報
【文献】特開2006-24690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、特性変動を抑制することができる、半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の半導体装置は、半導体層に設けられ、第1導電型の第1半導体カラムと第2導電型の第2半導体カラムとが前記半導体層の厚み方向に交差する交差方向に沿って交互に配置されたスーパージャンクション部と、前記半導体層上に設けられ、ゲート電極およびソース電極を含むゲートソース領域と、前記半導体層の前記第2半導体カラムごとに設けられ、前記第2半導体カラムの前記ゲートソース領域側端面に接触配置された前記2導電型のベース層と、前記ベース層に設けられ、前記ベース層より不純物濃度の高い前記第2導電型の第1コンタクト領域と、前記ベース層に設けられ、前記第1コンタクト領域に対して前記交差方向に隣接して配置された、前記第1導電型のソース領域と、前記ソース領域における前記ソース電極とのコンタクト領域に対向する対向面に設けられ、前記ベース層より不純物濃度の高い前記第2導電型の第2コンタクト領域と、を備える。単位セル領域に含まれる前記ソース領域が、前記ゲート電極の延伸方向に少なくとも3以上の領域に分割された複数の分割ソース領域からなる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、第1の実施の形態の半導体装置の一例を示す模式図である。
【
図2】
図2は、第1の実施の形態の半導体装置の拡大模式図である。
【
図5】
図5は、第1の実施の形態の半導体装置の立体図である。
【
図6】
図6は、従来の比較半導体装置の模式図である。
【
図7】
図7は、従来の比較半導体装置の模式図である。
【
図8A】
図8Aは、ホール電流の集中の実験結果を示す図である。
【
図8B】
図8Bは、ホール電流の集中の実験結果を示す図である。
【
図9】
図9は、ホール電流の集中の実験結果を示す図である。
【
図10】
図10は、ホール電流の集中の実験結果を示す図である。
【
図11】
図11は、第2の実施の形態の半導体装置の二次元平面図である。
【
図13】
図13は、第2の実施の形態の半導体装置の立体図である。
【
図14】
図14は、第3の実施の形態の半導体装置の二次元平面図である。
【
図16】
図16は、第3の実施の形態の半導体装置の立体図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に添付図面を参照して、本実施の形態の詳細を説明する。
【0009】
(第1の実施の形態)
図1は、本実施の形態の半導体装置10の一例を示す模式図である。
【0010】
図1は、半導体装置10の平面図の一例を示す模式図である。
図1には、半導体装置10を、厚み方向Zから視認したときの平面図を示した。
【0011】
半導体装置10は、セル領域10Aと、外周領域10Bと、を備える。セル領域10Aは、シリコン等の半導体基板に複数の縦型MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-effect Transistor)が二次元平面に沿って配列された領域である。外周領域10Bは、半導体装置10における、セル領域10A以外の領域である。
【0012】
【0013】
図3Aに示すように、半導体装置10は、半導体層12と、ゲートソース領域14と、を備える。
【0014】
ゲートソース領域14は、半導体層12上に設けられ、ゲート電極16およびソース電極18を含む。
【0015】
図2に示すように、ゲート電極16は、矢印Y方向に延伸して配置されたライン状の電極領域である。また、半導体装置10には、ライン状のゲート電極16が、矢印Y方向に直交する矢印X方向に沿って、間隔を隔てて複数配置されている。
【0016】
なお、矢印Y方向および矢印X方向は、半導体層12の厚み方向Zに直交する二次元平面上の方向であり、互いに直交する方向である。以下では、矢印Y方向を、ゲート電極16の延伸方向Yと称して説明する場合がある。
【0017】
図3Aに戻り説明を続ける。半導体層12は、ドレイン層20と、スーパージャンクション部22と、ベース層28と、第1コンタクト領域30と、ソース領域32と、を含む。
【0018】
ドレイン層20は、ドレイン電極として機能する層である、ドレイン層20は、例えば、n型の不純物をドープされたn+ドレイン層である。
【0019】
スーパージャンクション部22は、第1導電型の第1半導体カラム24と、第2導電型の第2半導体カラム26とが、半導体層12の厚み方向Zに交差する交差方向(矢印X方向)に沿って交互に配置された構成である。詳細には、第1半導体カラム24と第2半導体カラム26とは、ゲート電極16の延伸方向Yに直交する交差方向(矢印X方向)に、交互に配列されてなる。なお、以下では、交差方向を、交差方向Xと称して説明する場合がある。
【0020】
第1の導電型は、例えば、n型である。第2の導電型は、例えば、p型である。本実施の形態では、第1の導電型がn型であり、第2の導電型がp型である場合を、一例として説明する。このため、本実施の形態では、スーパージャンクション部22は、p型カラムである第2半導体カラム26と、n型カラムである第1半導体カラム24と、を交互に配置したスーパージャンクション構造である。
【0021】
第1半導体カラム24は、例えば、第1の導電型の不純物(例えば、リン、ヒ素等)を含有する。第2半導体カラム26は、例えば、第2の導電型の不純物(ホウ素等)を含有する。
【0022】
第2半導体カラム26のゲートソース領域14側端面には、ベース層28が接触配置されている。ベース層28は、第2の導電型(本実施の形態ではp型)のベース層であり、第2半導体カラム26ごとに設けられている。
【0023】
ベース層28のゲートソース領域14側には、第1コンタクト領域30およびソース領域32が設けられている。
【0024】
第1コンタクト領域30は、ベース層28より不純物濃度の高い第2導電型の領域である。具体的には、本実施の形態では、第1コンタクト領域30は、p+コンタクト領域である。第1コンタクト領域30は、第1コンタクト領域30のゲートソース領域14側の端面を介して、ソース電極18に電気的に接続される。
【0025】
ソース領域32は、第1導電型の領域である。具体的には、本実施の形態では、ソース領域32は、n+ソース領域である。ソース領域32は、ベース層28上に設けられ、第1コンタクト領域30を介して交差方向Xに間隔を隔てて配置されている。
【0026】
第1コンタクト領域30のゲートソース領域14側端面上には、ソース電極18が設けられている。すなわち、第1コンタクト領域30のゲートソース領域14側端面は、ソース電極18に電気的に接続されている。また、ソース領域32は、ソース領域32のゲートソース領域14側端面の一部を介してソース電極18に接続されている。また、ソース領域32のゲートソース領域14側端面の一部は、ゲート絶縁膜を介して、ゲート電極16に接続されている。
【0027】
ゲート電極16は、半導体層12のゲートソース領域14側端面における、ソース領域32と、該ソース領域32に対して第1半導体カラム24を介して交差方向Xに隣接する他のソース領域32と、の間の領域に、ゲート絶縁膜を介して配置されている。このため、ソース領域32のゲートソース領域14側端面の一部と、ベース層28のゲートソース領域14側端面と、第1半導体カラム24のゲートソース領域14側端面は、ゲート絶縁膜を介してゲート電極16に電気的に接続されている。
【0028】
図2に戻り説明を続ける、上述したように、ゲート電極16は、延伸方向Yに延伸されて配置されたライン状の電極である。また、ゲート電極16は、延伸方向Yに交差する交差方向Xに間隔を隔てて複数配列されている。ソース電極18は、ゲート電極16上および交差方向Xに配列された複数のゲート電極16間を埋めるように配置されている。このため、半導体層12のゲートソース領域14側端面における、交差方向Xに隣接するゲート電極16間の領域が、ソース電極18にコンタクトするコンタクト領域Cとして機能する。
【0029】
本実施の形態の半導体装置10は、更に、第2コンタクト領域34を備える。第2コンタクト領域34は、ソース領域32における、コンタクト領域Cに対向する対向面に設けられている。また、第2コンタクト領域34は、ベース層28より不純物濃度の高い、第2導電型のp+領域である。また、第2コンタクト領域34の延伸方向Yの端部は、延伸方向Yに隣接する第1コンタクト領域30に接触配置されている。
【0030】
このため、
図2に示すように、ソース領域32のコンタクト領域Cに対向する対向面は、第1コンタクト領域30および第2コンタクト領域34の少なくとも一方によって覆われた状態となる。
【0031】
【0032】
上述したように、
図3Aは、
図2中のA1-A1’断面図である。言い換えると、
図3Aは、半導体装置10を、第1コンタクト領域30を交差方向Xに横切る位置で、厚み方向Zに沿って切断した断面図の一例である。
【0033】
図3Aに示すように、第2コンタクト領域34は、ソース領域32の表面(外周面)における、ソース電極18とのコンタクト領域Cに対向する対向面Fに設けられている。詳細には、第2コンタクト領域34は、ソース領域32の外周面における、ソース電極18とのコンタクト領域Cに対向する対向面Fの内、平面視でコンタクト領域Cに重なる領域を覆うように配置されている。
【0034】
平面視でコンタクト領域Cに重なる領域とは、半導体装置10をゲートソース領域14側から厚み方向Zに視認したときに、交差方向Xおよび延伸方向Yの二次元平面における位置および範囲が重なる事を意味する。
【0035】
図3Bは、上述したように、
図2中のA2-A2’断面図である。言い換えると、
図3Bは、半導体装置10を、ゲート電極16の延伸方向Yに隣接する2つの第1コンタクト領域30の間を交差方向Xに横切る位置で、厚み方向Zに沿って切断した断面図の一例である。
【0036】
図3Bに示すように、第2コンタクト領域34は、ソース領域32の表面(外周面)における、ソース電極18とのコンタクト領域Cに対向する対向面Fに設けられている。詳細には、第2コンタクト領域34は、ソース領域32の外周面における、ソース電極18とのコンタクト領域Cに対向する対向面Fの内、平面視でコンタクト領域Cに重なる領域を覆うように配置されている。
【0037】
図4は、上述したように
図2中のB-B’断面図の一例である。第2コンタクト領域34は、ソース領域32の外周面における、コンタクト領域Cに対向する対向面Fの内、平面視でコンタクト領域Cに重なる領域に設けられている。
【0038】
なお、
図4に示すように、第2コンタクト領域34は、外周領域10Bに配置された第1コンタクト領域30における、コンタクト領域Cに対向する対向面に、更に設けられていてもよい。詳細には、
図4に示すように、第2コンタクト領域34は、ソース領域32におけるコンタクト領域Cに対向する対向面Fと、外周領域10Bに配置された第1コンタクト領域30における、コンタクト領域Cに対向する対向面F’と、の双方に、配置されていてもよい。
【0039】
上述したように、本実施の形態の半導体装置10は、第2コンタクト領域34を備える。第2コンタクト領域34を設けることで、半導体装置10には、平面視でコンタクト領域Cに重なる全領域に、延伸方向Yに沿って第2コンタクト領域34および第1コンタクト領域30によるp+領域が連続して形成された状態となる。
【0040】
なお、第2コンタクト領域34は、第1コンタクト領域30と同じ種類の不純物が同じ濃度でドープされた領域であることが好ましい。
【0041】
次に、本実施の形態の半導体装置10の作用を、
図5を用いて説明する。
【0042】
図5は、半導体装置10の一部を拡大して模式的に示した立体図である。詳細には、
図5は、
図2の領域Dを拡大して示した立体図の一例である。
【0043】
半導体装置10のドレイン層20に逆バイアスを印加すると、第2半導体カラム26の厚み方向Zの中心部でホール電流が発生する(ステップS1)。発生したホール電流は、ベース層28の表面に到達すると、ソース領域32に沿って、ゲート電極16の延伸方向Yに流れる(ステップS2)。
【0044】
本実施の形態では、ソース領域32における、ソース電極18とのコンタクト領域Cに対向する対向面Fに、第2コンタクト領域34が設けられている。このように、ソース領域32の直下にp+領域である第2コンタクト領域34が配置されているため、p+領域である第1コンタクト領域30におけるホール電流の引き上げを促進させることが可能となる。また、ソース領域32の直下の第2コンタクト領域34が配置されているため、ホール電流の、半導体装置10のチャネル領域の端部表面の近傍への集中が抑制される。
【0045】
そして、ホール電流は、ソース領域32の直下に設けられた第2コンタクト領域34を介して、第1コンタクト領域30へ流れ込む(ステップS3)。
【0046】
ここで、従来の比較半導体装置では、ドレイン層20への逆バイアスの印加により、ホール電流の一部が、チャネル領域の端部表面の近傍へ集中していた。
【0047】
図6および
図7は、従来の比較半導体装置100の一例を示す模式図である。
図6は、比較半導体装置100の平面図の一例を示す模式図である。
図6は、比較半導体装置100における、
図1の半導体装置10の領域Aの部分に相当する部分を拡大した模式図である。
図7は、
図6に示す比較半導体装置100の、B-B’断面図である。
【0048】
図6および
図7に示すように、比較半導体装置100は、第2コンタクト領域34を備えない点以外は、本実施の形態の半導体装置10と同様の構成である。
【0049】
比較半導体装置100のドレイン層20に逆バイアスを印加すると、第2半導体カラム26の厚み方向Zの中心部で発生したホール電流の大部分は、第1コンタクト領域30に直接流れ込む。しかし、比較半導体装置100では、一部のホール電流が、チャネル領域の端部表面の近傍に集中する。このようホール電流の集中は、ゲート閾値の変動、および、ソース-ドレイン間のリーク電流増加、などが発生し、比較半導体装置100の特性に変動を生じさせていた。
【0050】
図8A~
図10は、ホール電流の集中の実験結果を示す図である。
【0051】
図8Aは、本実施の形態の半導体装置10の模式図である。
図8Bは、比較半導体装置100の模式図である。
【0052】
図9は、半導体装置10および比較半導体装置100の、ソース領域32の直下の領域の不純物濃度の測定結果を示す図である。
図9の縦軸は、不純物濃度を示し、横軸は、厚み方向Zの深さを示す。
【0053】
図9中、線
図40は、
図8Bに示す比較半導体装置100のF-F’断面における不純物濃度の測定結果を示す線図である。線
図42は、
図8Aに示す半導体装置10のF-F’断面における、不純物濃度の測定結果を示す線図である。線
図44および線
図46については後述する。
【0054】
図9に示すように、半導体装置10におけるソース領域32の直下には、不純物濃度の高いp型の領域である第2コンタクト領域34が形成されていた。一方、比較半導体装置100におけるソース領域32の直下には、第2コンタクト領域34は形成されていなかった。
【0055】
このような構成の半導体装置10および比較半導体装置100の各々のドレイン層20へ、逆バイアスを印加すると、
図8Aおよび
図10に示す結果が得られた。詳細には、
図8Bに示すように、比較半導体装置100では、広い範囲でホール電流の集中が発生していた(
図8B中、ホール電流集中領域E1参照)。一方、
図8Aに示すように、本実施の形態の半導体装置10では、比較半導体装置100よりホール電流の集中範囲が狭かった(ホール電流集中領域E2参照)。
【0056】
図10の縦軸は、ホール電流密度を示す。
図10の横軸は、半導体装置10および比較半導体装置100の各々の半導体層12のゲートソース領域14側端面における、ゲート電極16の延伸方向Yに平行であり、且つ、ソース領域32とベース層28との境界を通るライン(
図8A中ラインL1、
図8B中ラインL2参照)上における位置を示す。
【0057】
図10中、線
図50は、
図8Bに示す比較半導体装置100の、上記ラインL2における延伸方向Yの位置とホール電流密度との関係を示す線図である。線
図52は、
図8Aに示す半導体装置10の、上記ラインL1における延伸方向Yの位置とホール電流密度との関係を示す線図である。線
図54および線
図56については後述する。
【0058】
図10に示すように、線
図52で表される本実施の形態の半導体装置10は、線
図50で表される比較半導体装置100に比べて、ホール電流密度が低く、ホール電流の集中が抑制されていた。
【0059】
これは、本実施の形態の半導体装置10は、第2コンタクト領域34を備えた構成であるため、第1コンタクト領域30におけるホール電流の引き上げが促進されるためと考えられる。
【0060】
このため、本実施の形態の半導体装置10では、ホール電流の集中が抑制されると考えられる。
【0061】
以上説明したように、本実施の形態の半導体装置10は、第2コンタクト領域34を備える。第2コンタクト領域34は、ソース領域32におけるソース電極18とのコンタクト領域Cに対向する対向面Fに設けられ、ベース層28より不純物濃度の高い第2導電型のコンタクト領域である。
【0062】
このため、本実施の形態の半導体装置10は、ホール電流の集中が抑制され、ゲート閾値の変動、および、ドレイン-ソース間のリーク電流増加を抑制することができる。
【0063】
従って、本実施の形態の半導体装置10は、特性変動の抑制を図ることができる。
【0064】
なお、第2コンタクト領域34は、セル領域10A内の少なくとも一部のMOSFETにおける、ソース領域32の直下(コンタクト領域Cとの対向面F)に設けられた構成であればよく、全てのソース領域32の直下に設けられた形態に限定されない。
【0065】
例えば、第2コンタクト領域34は、半導体装置10のセル領域10Aにおける、少なくともセル領域10Aの周縁に配置されたMOSFETのソース領域32について、ソース領域32の直下に第2コンタクト領域34を配置した構成であってもよい。
【0066】
なお、第2コンタクト領域34は、セル領域10Aに含まれる全てのMOSFETのソース領域32の直下、および外周領域10Bの第1コンタクト領域30の直下に配置されていてもよい。すなわち、第2コンタクト領域34は、平面視で半導体装置10におけるコンタクト領域Cの全領域を覆うように配置されていてもよい。
【0067】
(第2の実施の形態)
本実施の形態では、ソース領域32を分割して配置することで、特性変動の抑制を実現する形態を説明する。
【0068】
なお、上記実施の形態と同じ部分については、同じ符号を付与して詳細な説明を省略する場合がある。
【0069】
図11は、本実施の形態の半導体装置11の二次元平面図である。
図11は、
図1に示す半導体装置11の領域Aの拡大模式図である。
図12は、
図11のB-B’断面図である。
【0070】
なお、
図11における、第1コンタクト領域30を交差方向Xに横切る位置で厚み方向Zに沿って切断した断面図、および、ゲート電極16の延伸方向Yに隣接する2つの第1コンタクト領域30の間を交差方向Xに横切る位置で厚み方向Zに沿って切断した断面図は、各々、第2コンタクト領域34を備えない点以外は、上記実施の形態の
図3A、
図3Bと同様である。
【0071】
すなわち、半導体装置11は、上記実施の形態の半導体装置10と同様に、半導体層12と、ゲートソース領域14と、を備える。但し、本実施の形態の半導体装置11は、第2コンタクト領域34を備えない構成である。
【0072】
図11に示すように、本実施の形態では、ソース領域32は、分割ソース領域32Aからなる。
【0073】
詳細には、本実施の形態の半導体装置11では、単位セル領域Qに含まれるソース領域32が、ゲート電極16の延伸方向Yに少なくとも3以上の領域に分割された複数の分割ソース領域32Aからなる。
【0074】
単位セル領域Qとは、動作領域であるセル領域10A(
図1参照)を、動作単位である縦型MOSFET1つ分の領域毎に分割した、各領域を示す。言い換えると、単位セル領域Qは、セル領域10Aの二次元平面(延伸方向Yおよび交差方向Xからなる二次元平面)を、交差方向Xに1つのゲート電極16を含む長さごとに区切り、且つ、延伸方向Yに該長さごとに区切ることで形成される、各区画領域である。
【0075】
上記実施の形態では、
図2および
図4に示すように、1つの単位セル領域Qには、1つのゲート電極16と2つのソース領域32とが配置されていた。一方、本実施の形態では、
図11および
図12に示すように、1つの単位セル領域Qに対して、3つ以上の分割ソース領域32Aが配置されてなる。
【0076】
すなわち、本実施の形態では、単位セル領域Qごとに、3つ以上の分割ソース領域32Aが、ゲート電極16の延伸方向Yに沿ってソース領域32と交互に配列された構成である。
【0077】
ここで、上記実施の形態で説明したように、単位セル領域Qに含まれるソース領域32は、通常、延伸方向Yに2つ配列された構成である(
図2、
図4参照)。一方、本実施の形態の半導体装置11は、単位セル領域Qに含まれるソース領域32が、延伸方向Yに3つ以上に分割された複数の分割ソース領域32Aから構成されている。このため、1つの単位セル領域Qに含まれる、複数の分割ソース領域32Aの各々の面積は、従来および上記実施の形態に比べて小さくなる。
【0078】
なお、
図11および
図12には、1つの単位セル領域Qに含まれる分割ソース領域32Aが、ゲート電極16の延伸方向Yに沿って3つに分割された形態を一例として示した。しかし、1つの単位セル領域Qに含まれる分割ソース領域32Aは、3つ以上であればよく、分割数は3つに限定されない。
【0079】
次に、本実施の形態の半導体装置11の作用を、
図13を用いて説明する。
【0080】
図13は、半導体装置11の一部を拡大して模式的に示した立体図である。詳細には、
図13は、
図11の領域Gを拡大して示した立体図の一例である。
【0081】
半導体装置11のドレイン層20に逆バイアスを印加すると、第2半導体カラム26の厚み方向Zの中心部でホール電流が発生する(ステップS10)。発生したホール電流は、ベース層28の表面に到達すると、複数の分割ソース領域32Aの配列方向に沿って、ゲート電極16の延伸方向Yに流れる(ステップS11)。このとき、本実施の形態では、単位セル領域Qに含まれるソース領域32が、少なくとも3以上の分割ソース領域32Aに分割されている。このため、延伸方向Yに隣接する1つの分割ソース領域32Aと第1コンタクト領域30とからなる1ブロック当りのホール電流が減少し、ホール電流の、半導体装置10のチャネル領域の端部表面の近傍への集中が抑制される。そして、ホール電流は、第1コンタクト領域30へ流れ込む(ステップS12)。
【0082】
【0083】
図9中、線
図44は、
図13に示す本実施の形態の半導体装置11のF-F’断面における、不純物濃度の測定結果を示す線図である。
図9の線
図44に示すように、半導体装置11における分割ソース領域32Aの直下には、不純物濃度の高いp型の領域である第2コンタクト領域34は形成されていなかった。
【0084】
図13に示すように、本実施の形態の半導体装置11のドレイン層20へ、逆バイアスを印加すると、
図13に示すホール電流集中領域E3が得られた。
図13に示すように、本実施の形態の半導体装置11は、
図8Bに示す比較半導体装置100に比べて、ホール電流の集中の範囲が狭かった。
【0085】
また、
図10中、線
図54は、
図13に示す半導体装置11の、ラインL3における延伸方向Yの位置とホール電流密度との関係を示す線図である。ラインL3は、半導体装置11の半導体層12のゲートソース領域14側端面における、ゲート電極16の延伸方向Yに平行であり、且つ、分割ソース領域32Aとベース層28との境界を通るラインである。
【0086】
図10に示すように、線
図54で表される本実施の形態の半導体装置11は、線
図50で表される比較半導体装置100に比べて、ホール電流密度が低く、ホール電流の集中が抑制されていた。
【0087】
これは、本実施の形態の半導体装置11は、単位セル領域Qに含まれるソース領域32が、ゲート電極16の延伸方向Yに少なくとも3以上の領域に分割された複数の分割ソース領域32Aからなる構成であるためと考えられる。すなわち、ホール電流の集中が、分割された複数の分割ソース領域32Aによって分割されるためと考えられる。
【0088】
このため、本実施の形態の半導体装置11では、ホール電流の集中が抑制されると考えられる。
【0089】
以上説明したように、本実施の形態の半導体装置11は、単位セル領域Qに含まれるソース領域32が、ゲート電極16の延伸方向Yに少なくとも3以上の領域に分割された複数の分割ソース領域32Aからなる。
【0090】
このため、本実施の形態の半導体装置10は、ホール電流の集中が抑制され、ゲート閾値の変動、および、ドレイン-ソース間のリーク電流増加を抑制することができる。
【0091】
従って、本実施の形態の半導体装置11は、特性変動の抑制を図ることができる。
【0092】
(第3の実施の形態)
なお、半導体装置を、第1の実施の形態と第2の実施の形態を組み合わせた構成としてもよい。すなわち、単位セル領域Qに含まれるソース領域32を3以上の領域に分割された複数の分割ソース領域32Aからなる構成とすると共に、第2コンタクト領域34を備えた構成としてもよい。
【0093】
図14は、本実施の形態の半導体装置13の二次元平面図である。
図14は、
図1に示す半導体装置13の領域Aの拡大模式図である。
図15は、
図14のB-B’断面図である。
図16は、第3の実施の形態の半導体装置の立体図である。
【0094】
なお、
図14における、第1コンタクト領域30を交差方向Xに横切る位置で厚み方向Zに沿って切断した断面図、および、ゲート電極16の延伸方向Yに隣接する2つの第1コンタクト領域30の間を交差方向Xに横切る位置で厚み方向Zに沿って切断した断面図は、各々、上記実施の形態の
図3A、
図3Bと同様である。
【0095】
図11に示すように、本実施の形態では、ソース領域32は、分割ソース領域32Aからなる。本実施の形態の半導体装置13では、第2の実施の形態の半導体装置11と同様に、単位セル領域Qに含まれるソース領域32が、ゲート電極16の延伸方向Yに少なくとも3以上の領域に分割された複数の分割ソース領域32Aからなる。
【0096】
また、本実施の形態の半導体装置13には、第1の実施の形態の半導体装置10と同様に、第2コンタクト領域34が設けられている。第2コンタクト領域34は、第1の実施の形態と同様である。すなわち、第2コンタクト領域34は、分割ソース領域32A(ソース領域32)における、コンタクト領域Cに対向する対向面Fに設けられている。また、第2コンタクト領域34は、第1コンタクト領域30に接触配置され、且つ、ベース層28より不純物濃度の高い、第2導電型のp+領域である。
【0097】
このため、
図14に示すように、分割ソース領域32Aの各々のコンタクト領域Cに対向する対向面は、第1コンタクト領域30および第2コンタクト領域34の少なくとも一方によって覆われた状態となる。
【0098】
図15を用いて詳細に説明する。
図15に示すように、第2コンタクト領域34は、分割ソース領域32Aの外周面における、コンタクト領域Cに対向する対向面Fの内、平面視でコンタクト領域Cに重なる領域に設けられている。
【0099】
そして、第2コンタクト領域34は、交差方向Xまたは延伸方向Yに隣接する第1コンタクト領域30に接触配置され、ベース層28より不純物濃度の高いp+領域である。
【0100】
このため、第2コンタクト領域34を設けることで、第2コンタクト領域34および第1コンタクト領域30によって、平面視でコンタクト領域Cに重なる全領域に、p+領域が連続して形成された状態となる。
【0101】
なお、第1の実施の形態と同様に、第2コンタクト領域34は、外周領域10Bに配置された第1コンタクト領域30における、コンタクト領域Cに対向する対向面F’に、更に設けられていてもよい。詳細には、
図15に示すように、第2コンタクト領域34は、分割ソース領域32Aにおけるコンタクト領域Cに対向する対向面Fと、外周領域10Bに配置された第1コンタクト領域30における、コンタクト領域Cに対向する対向面F’と、の双方に、配置されていてもよい。
【0102】
また、第1の実施の形態と同様に、第2コンタクト領域34は、半導体装置10のセル領域10Aにおける、少なくともセル領域10Aの周縁に配置されたMOSFETの分割ソース領域32Aについて、分割ソース領域32Aの直下に第2コンタクト領域34を配置した構成であってもよい。
【0103】
次に、本実施の形態の半導体装置13の作用を、
図16を用いて説明する。
【0104】
半導体装置13のドレイン層20に逆バイアスを印加すると、第2半導体カラム26の厚み方向Zの中心部でホール電流が発生する。発生したホール電流は、ベース層28の表面に到達すると、複数の分割ソース領域32Aの配列方向に沿って、ゲート電極16の延伸方向Yに流れる。また、ホール電流は、分割ソース領域32Aの直下に設けられた第2コンタクト領域34を介して、第1コンタクト領域30へ流れ込む。
【0105】
本実施の形態では、分割ソース領域32Aの直下にp+領域である第2コンタクト領域34が配置されているため、p+領域である第1コンタクト領域30におけるホール電流の引き上げを促進させることが可能となる。また、単位セル領域Qに含まれるソース領域32が、少なくとも3以上の分割ソース領域32Aに分割されている。このため、延伸方向Yに隣接する1つの分割ソース領域32Aと第1コンタクト領域30とからなる1ブロック当りのホール電流が減少し、ホール電流の、半導体装置10のチャネル領域の端部表面の近傍への集中が抑制される。このため、ホール電流の集中が抑制される。
【0106】
図9~
図10には、ホール電流の集中の実験結果を示した。
【0107】
図9中、線
図46は、
図14に示す本実施の形態の半導体装置13のA1-A1’断面における、不純物濃度の測定結果を示す線図である。
図9の線
図46に示すように、半導体装置11における分割ソース領域32Aの直下には、不純物濃度の高いp型の領域である第2コンタクト領域34が形成されていた。
【0108】
本実施の形態の半導体装置13のドレイン層20へ、逆バイアスを印加すると、ホール電流集中領域は発生しなかった。
【0109】
また、
図10中、線
図56は、
図14、
図15、および
図16に示す半導体装置13の、ラインにおける延伸方向Yの位置とホール電流密度との関係を示す線図である。このラインは、半導体装置13の半導体層12のゲートソース領域14側端面における、ゲート電極16の延伸方向Yに平行であり、且つ、分割ソース領域32Aとベース層28との境界を通るラインである。
【0110】
図10に示すように、線
図56で表される本実施の形態の半導体装置13は、線
図50で表される比較半導体装置100に比べて、ホール電流密度が低く、ホール電流の集中が抑制されていた。また、線
図56で表される本実施の形態の半導体装置13は、線
図52および線
図54で表される上記実施の形態の半導体装置10および半導体装置11に比べて、ホール電流密度が更に低く、ホール電流の集中が更に抑制されていた。
【0111】
これは、本実施の形態の半導体装置13は、単位セル領域Qに含まれるソース領域32が、ゲート電極16の延伸方向Yに少なくとも3以上の領域に分割された複数の分割ソース領域32Aからなる構成であり、且つ、第2コンタクト領域34を備えた構成であるためと考えられる。
【0112】
このため、本実施の形態の半導体装置13では、ホール電流の集中が更に抑制されると考えられる。
【0113】
以上説明したように、本実施の形態の半導体装置13は、第2コンタクト領域34を備える。また、半導体装置13は、単位セル領域Qに含まれるソース領域32が、ゲート電極16の延伸方向Yに少なくとも3以上の領域に分割された複数の分割ソース領域32Aからなる。
【0114】
このため、本実施の形態の半導体装置10は、ホール電流の集中が抑制され、ゲート閾値の変動、および、ドレイン-ソース間のリーク電流増加を抑制することができる。
【0115】
従って、本実施の形態の半導体装置13は、特性変動の抑制を図ることができる。
【0116】
以上、本発明の実施の形態および変形例を説明したが、これらの実施の形態および変形例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施の形態および変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施の形態および変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0117】
10、11、13 半導体装置
12 半導体層
14 ゲートソース領域
16 ゲート電極
18 ソース電極
22 スーパージャンクション部
24 第1半導体カラム
26 第2半導体カラム
28 ベース層
30 第1コンタクト領域
32 ソース領域
32A 分割ソース領域
34 第2コンタクト領域