(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-12
(45)【発行日】2023-10-20
(54)【発明の名称】接着剤
(51)【国際特許分類】
C09J 129/04 20060101AFI20231013BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20231013BHJP
C09J 177/00 20060101ALI20231013BHJP
G09F 3/10 20060101ALN20231013BHJP
【FI】
C09J129/04
C09J11/04
C09J177/00
G09F3/10 B
(21)【出願番号】P 2019140202
(22)【出願日】2019-07-30
【審査請求日】2022-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(74)【代理人】
【識別番号】110002206
【氏名又は名称】弁理士法人せとうち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田岡 悠太
(72)【発明者】
【氏名】今岡 依理子
【審査官】仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-003022(JP,A)
【文献】国際公開第2010/035906(WO,A1)
【文献】特開平07-011218(JP,A)
【文献】特開平03-045678(JP,A)
【文献】特開2018-135401(JP,A)
【文献】特開平07-011217(JP,A)
【文献】特開平03-045656(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第00413136(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 129/04
C09J 11/04
C09J 177/00
G09F 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシル基又は加水分解によりカルボキシル基を生成しうる置換基を有する変性ビニルアルコール系重合体(A)
、ポリアミド系樹脂(B)
及び塩基性物質(C)を含み、
変性ビニルアルコール系重合体(A)100質量部に対するポリアミド系樹脂(B)の含有量が0.5~50質量部であ
り、
塩基性物質(C)が、アルカリ金属の炭酸塩又は炭酸水素塩である接着剤。
【請求項2】
変性ビニルアルコール系重合体(A)が、下記式(1)で示される構造単位(1)と下記式(2)で示される構造単位(2)とを含み、
変性ビニルアルコール系重合体(A)に含まれる全単量体単位に対する構造単位(1)及び構造単位(2)の合計量が0.2~20モル%である請求項1に記載の接着剤。
【化1】
[式(1)中、Xは水素原子又はメチル基である。]
【化2】
[式(2)中、Xは水素原子又はメチル基であり、Yは水素原子又はアルカリ金属原子である。]
【請求項3】
塩基性物質(C)の25℃での水への溶解性が0.02g/l以上である、請求項
1又は2に記載の接着剤。
【請求項4】
塩基性物質(C)の含有量が、変性ビニルアルコール系重合体(A)100質量部に対して0.05~15質量部である、請求項
1~3のいずれかに記載の接着剤。
【請求項5】
ポリアミド系樹脂(B)がポリアミドエポキシ樹脂である請求項1~
4のいずれかに記載の接着剤。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれかに記載の接着剤からなるラベル用接着剤。
【請求項7】
請求項1~
5のいずれかに記載の接着剤を介してラベルが貼着されてなるガラス瓶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は接着剤に関する。さらに詳しくは、ガラス瓶等の容器に貼り付けるラベルに塗工される接着剤であって、水に浸漬した際の接着性が良好で、かつガラス瓶を洗浄する際の熱アルカリ水によるラベルの易剥離性が良好な水性接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料充填用ガラス瓶には、その内容物に関する情報が記載されたラベルが貼り付けられている。このラベルは水で容易に剥がれるものであってはならず、ラベルに塗工される接着剤には優れた耐水接着性が要求される。また、内容物が消費された後、瓶は回収され熱アルカリ水によってラベルを除去するため、接着剤には優れたアルカリ洗浄性も要求される。
【0003】
特許文献1には、ポリビニルアルコール系樹脂(A)、アミノ化合物またはその塩(B)および架橋剤(C)を有効成分として含有する接着剤が開示されている。この接着剤は初期接着力が高く、かつ冷水接着性とアルカリ洗浄性のバランスが特に良好であるとされている。しかしながら、当該接着剤の耐水接着性及びアルカリ洗浄性は不十分であった。
【0004】
また、特許文献2には、ビニルアルコール系共重合体を含有するラベル用接着剤であって、前記ビニルアルコール系共重合体が、ラクトン環を有する構造単位(1)とカルボキシル基又はその塩を有する構造単位(2)とを含み、前記接着剤に含まれる全単量体単位に対して構造単位(1)と構造単位(2)の合計が0.2~20モル%であり、構造単位(1)と構造単位(2)とのモル比が2以上であるラベル用接着剤が記載されている。この接着剤も、アルカリ洗浄性には優れているものの耐水接着性が不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平3-45678号公報
【文献】特開2018-135401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、耐水接着性及びアルカリ洗浄性に優れた接着剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、カルボキシル基又は加水分解によりカルボキシル基を生成しうる置換基を有する変性ビニルアルコール系重合体(A)及びポリアミド系樹脂(B)を含み、変性ビニルアルコール系重合体(A)100質量部に対するポリアミド系樹脂(B)の含有量が0.5~50質量部である接着剤を提供することによって解決される。
【0008】
このとき、変性ビニルアルコール系重合体(A)が、下記式(1)で示される構造単位(1)と下記式(2)で示される構造単位(2)とを含み、変性ビニルアルコール系重合体(A)に含まれる全単量体単位に対する構造単位(1)及び構造単位(2)の合計量が0.2~20モル%であることが好ましい。
【0009】
【化1】
[式(1)中、Xは水素原子又はメチル基である。]
【0010】
【化2】
[式(2)中、Xは水素原子又はメチル基であり、Yは水素原子又はアルカリ金属原子である。]
【0011】
また、前記接着剤が、さらに塩基性物質(C)を含有することが好ましい。塩基性物質(C)の25℃での水への溶解性が0.02g/l以上であることも好ましい。塩基性物質(C)の含有量が、変性ビニルアルコール系重合体(A)100質量部に対して0.05~15質量部であることも好ましい。塩基性物質(C)が、アルカリ金属の炭酸塩又は重炭酸塩であることも好ましい。
【0012】
ポリアミド系樹脂(B)がポリアミドエポキシ樹脂であることが好ましい。上記接着剤からなるラベル用接着剤が本発明の好適な実施態様である。また、上記接着剤を介してラベルが貼着されてなるガラス瓶が本発明の好適な実施態様である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、耐水接着性及びアルカリ洗浄性に優れた接着剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の接着剤は、カルボキシル基又は加水分解によりカルボキシル基を生成しうる置換基を有する変性ビニルアルコール系重合体(A)(以下、「変性PVA(A)」と略記する)及びポリアミド系樹脂(B)を含むことを特徴とする。本発明者らは、耐水接着性とアルカリ洗浄性とを両立させるべく検討を重ねた結果、変性PVA(A)及びポリアミド系樹脂(B)の両方を含む接着剤が優れた耐水接着性及びアルカリ洗浄性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
本発明で用いられる変性PVA(A)は、カルボキシル基又は加水分解によりカルボキシル基を生成しうる置換基を有する。ここで、カルボキシル基はその水素が金属で置換されたカルボン酸塩であっても構わない。金属原子としては、ナトリウム、カリウムなどが挙げられる。加水分解によりカルボキシル基を生成しうる置換基としてはカルボン酸エステル構造を有する置換基などが挙げられ、ラクトン環を有する置換基が好ましい。
【0016】
カルボキシル基又は加水分解によりカルボキシル基を生成しうる置換基の含有量は0.2~20モル%であることが好ましい。アルカリ洗浄性の観点から、含有量は0.5モル%以上であることがより好ましく、0.8モル%以上であることがさらに好ましい。一方、耐水接着性の観点から、含有量は15モル%以下であることがより好ましい。当該含有量は、変性PVA(A)中の全単量体単位に対する、カルボキシル基を有する構造単位又は加水分解によりカルボキシル基を生成しうる構造単位の含有量を意味する。当該含有量は、後述する実施例においてコモノマー変性量に相当する値である。
【0017】
変性PVA(A)のけん化度が70~100モル%であることが好ましい。けん化度が70モル%未満の場合、接着剤の水溶性が低下するおそれがある。またガラスとの接着性が低下するおそれがある。けん化度は、85モル%以上であることがより好ましい。耐水接着性を向上させる観点から、けん化度は90モル%以上であることがさらに好ましく、95モル%以上であることが特に好ましい。一方、粘度安定性を向上させる観点から、けん化度は99モル%以下であることがより好ましく、98モル%以下であることがさらに好ましい。けん化度はJIS K 6726(1994年)に準じて測定した値である。
【0018】
変性PVA(A)の粘度平均重合度(以下、「重合度」と略記することがある)が100~4000であることが好ましい。重合度が100未満の場合、耐水接着性が低下するおそれがある。重合度は、300以上であることがより好ましく、500以上であることがさらに好ましく、1000以上であることが特に好ましい。一方、重合度が4000を超える場合、変性PVA(A)の粘度が高くなり過ぎて取り扱い性が低下するおそれがある。重合度は3000以下であることがより好ましい。粘度安定性を向上させる観点から、重合度は2500以下であることがさらに好ましく、2000以下であることが特に好ましい。重合度はJIS K 6726(1994年)に準じて測定した値である。
【0019】
本発明において、耐水接着性及びアルカリ洗浄性を向上させる観点から、変性PVA(A)が、下記式(1)で示される構造単位(1)と下記式(2)で示される構造単位(2)とを含むことが好ましい。構造単位(2)におけるYは、水素原子又はアルカリ金属原子であるが、アルカリ金属原子としては、ナトリウム、カリウムが好適であり、ナトリウムがより好適である。
【0020】
【化3】
[式(1)中、Xは水素原子又はメチル基である。]
【0021】
【化4】
[式(2)中、Xは水素原子又はメチル基であり、Yは水素原子又はアルカリ金属原子である。]
【0022】
変性PVA(A)に含まれる全単量体単位に対する構造単位(1)及び構造単位(2)の合計量が0.2~20モル%であることが好ましい。合計量が0.2モル%未満の場合、アルカリ洗浄性が低下するおそれがある。合計量は0.5モル%以上であることがより好ましく、0.8モル%以上であることがさらに好ましい。一方、耐水接着性の観点から、合計量は15モル%以下であることがより好ましい。
【0023】
構造単位(1)と構造単位(2)のモル比が2以上であることが好ましい。構造単位(1)と構造単位(2)とのモル比が2未満の場合、すなわち、ラクトン環を有する構造単位(1)のモル数とカルボキシル基又はその塩を有する構造単位(2)のモル数が同程度、あるいは構造単位(2)のモル数の方が構造単位(1)よりも大きくなると、耐水接着性が低下してしまう。かかる観点から、構造単位(1)と構造単位(2)とのモル比は、4以上であることが好ましく、8以上であることがより好ましく、10以上であることがさらに好ましい。一方、構造単位(1)と構造単位(2)とのモル比は、通常100以下であり、50以下であることが好ましい。
【0024】
また、ラクトン環の含有量、すなわち、構造単位(1)の含有量としては、0.2~15モル%であることが好ましい。ラクトン環の含有量が0.2モル%未満の場合、アルカリ洗浄性が低下するおそれがある。ラクトン環の含有量は、1モル%以上であることがより好ましく、2モル%以上であることがさらに好ましく、2.5モル%以上であることが特に好ましい。一方、ラクトン環の含有量が15モル%を超える場合、水溶性が低下するおそれがある。ラクトン環の含有量は10モル%以下であることがより好ましい。
【0025】
本発明で用いられる変性PVA(A)は、ビニルエステルとカルボニル基を有するモノマーとを公知の方法で共重合し、得られた共重合体を既知の方法でけん化した後に洗浄処理、加熱処理することにより得ることができる。さらには、前記けん化後に酸処理により中和し、洗浄処理、加熱処理することにより効率良く得ることができる。構造単位(1)と構造単位(2)とのモル比を2以上にするためには、加熱処理をすることが好ましい。加熱処理する方法としては特に限定されず、熱風乾燥機、回転式乾燥機等を用いることが好ましい。加熱温度としては、60~150℃であることが好ましく、80~150℃であることがより好ましい。
【0026】
上記の方法において用いられるビニルエステルとしては酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ギ酸ビニル等が挙げられるが、経済的にみて酢酸ビニルが好ましい。
【0027】
また上記の方法において用いられるカルボニル基を有するモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などが挙げられる。また、上記モノマーとして、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸イソプロピル等のアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸イソプロピル等のメタクリル酸エステル;マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸ジエチル等のマレイン酸エステル;イタコン酸モノメチル、イタコン酸ジメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸ジエチル等のイタコン酸エステル;フマル酸モノメチル、フマル酸ジメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸ジエチル等のフマル酸エステルなども挙げられる。また、これらのカルボン酸及びエステルを一部または全部中和したカルボン酸塩も好適に用いられる。また、側鎖にラクトン環を含むビニルモノマーを用いても良い。
【0028】
中でも、耐水接着性を向上させる観点から、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルが好適であり、アクリル酸メチル又はメタクリル酸メチルがより好適である。
【0029】
本発明の接着剤は、ポリアミド系樹脂(B)を含む。このとき、耐水接着性及びアルカリ洗浄性を両立させる観点から、変性PVA(A)100質量部に対するポリアミド系樹脂(B)の含有量が0.5~50質量部であることが重要である。ポリアミド系樹脂(B)の含有量が0.5質量部未満の場合、優れた耐水接着性を得ることができない。ポリアミド系樹脂(B)の含有量は、1質量部以上であることが好ましく、2質量部以上であることがより好ましく、5質量部以上であることがさらに好ましい。一方、ポリアミド系樹脂(B)の含有量が50質量部を超える場合、優れたアルカリ洗浄性を得ることができないし、粘度安定性も低下する。ポリアミド系樹脂(B)の含有量は、40質量部以下であることが好ましく、30質量部以下であることがより好ましい。
【0030】
本発明において、ポリアミド系樹脂(B)がポリアミドエポキシ樹脂であることが好ましい。当該ポリアミドエポキシ樹脂としては、ポリアミド樹脂とエピクロロヒドリンとを反応させて得られるポリアミドエピクロロヒドリンが好適に用いられる。
【0031】
本発明の接着剤が、さらに塩基性物質(C)を含有することが好ましい。変性PVA(A)、ポリアミド系樹脂(B)及び水を混合して得られた液は、時間が経過するとその粘度が変化することがある。本発明において、接着剤がさらに塩基性物質(C)を含有することにより液の粘度変化が少なくなり粘度安定性が優れるものとなる。
【0032】
塩基性物質(C)の含有量が、変性PVA(A)100質量部に対して0.05~15質量部であることが好ましい。塩基性物質(C)の含有量が0.05質量部未満の場合、粘度安定性を向上させることができないおそれがある。塩基性物質(C)の含有量は0.1質量部以上であることがより好ましく、0.5質量部以上であることがさらに好ましく、1質量部以上であることが特に好ましい。一方、塩基性物質(C)の含有量が15質量部を超えると耐水接着性が低下するおそれがある。塩基性物質(C)の含有量は12質量部以下であることがより好ましく、10質量部以下であることがさらに好ましい。
【0033】
塩基性物質(C)の種類は特に限定されず、無機化合物又は有機化合物のいずれであっても構わない。当該無機化合物としては、アルカリ金属の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩;アルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩;アンモニアなどが挙げられる。アルカリ金属の水酸化物としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどが挙げられる。アルカリ金属の炭酸塩としては炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどが挙げられる。アルカリ金属の炭酸水素塩としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどが挙げられる。
【0034】
アルカリ土類金属の水酸化物としては、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなどが挙げられる。アルカリ土類金属の炭酸塩としては炭酸カルシウムなどが挙げられる。アルカリ土類金属の炭酸水素塩としては炭酸水素カルシウムなどが挙げられる。また、上記有機化合物としては、アミン化合物などが挙げられる。耐水接着性を向上させる観点から、塩基性物質(C)が無機化合物であることが好ましい。
【0035】
また、粘度安定性を向上させる観点から、塩基性物質(C)が、弱塩基性の物質であることが好ましく、弱塩基性の無機化合物であることがより好ましく、アルカリ金属の炭酸塩又は炭酸水素塩であることがさらに好ましく、炭酸水素ナトリウムであることが特に好ましい。
【0036】
本発明において、塩基性物質(C)の25℃での水への溶解性が0.02g/l以上であることが好ましい。溶解性が0.02g/l未満の場合、粘度安定性が低下するおそれがある。また、耐水接着性が低下するおそれがある。溶解性は、0.1g/l以上であることがより好ましく、10g/l以上であることがさらに好ましい。一方、溶解性は、通常2000g/l以下である。
【0037】
本発明の接着剤には、必要に応じてシックナー、消泡剤、防腐剤、防黴剤、着色顔料、消臭剤、香料、可塑剤なども添加することができる。可塑剤としては、ポリエチレングリコールや尿素などが挙げられる。また、凍結防止剤や柔軟性付与剤としてメタノール、エチレングリコール、グリセリンなどのアルコール類を添加してもよい。これらの添加物の含有量は、通常20質量%以下であり、10質量%以下であることが好ましい。
【0038】
本発明の接着剤の製造方法は特に限定されないが、好適な製造方法は、変性PVA(A)を含む水溶液を予め作製した後、当該水溶液にポリアミド系樹脂(B)を添加する方法が好ましい。このとき、当該水溶液に塩基性物質(C)をさらに添加することが好ましい。
【0039】
本発明の接着剤の好適な用途はラベル用接着剤である。ラベルとしては、紙、加工紙(例えば、アルミ蒸着、アルミラミネート、ワニス加工、樹脂加工など施された紙)、合成紙などの紙類によって作製されるラベルなどが挙げられる。一方、被着体は好適にはガラス瓶であり、中でも飲料用ガラス瓶がより好適である。飲料用ガラス瓶としては、ビール瓶、ワインボトルなどが挙げられる。本発明の好適な実施態様は接着剤を介してラベルが貼着されてなるガラス瓶である。
【0040】
また、ラベルの貼着方法は特に限定されないが、好適な貼着方法は、変性PVA(A)、ポリアミド系樹脂(B)、及び水を含む液をラベル又は被着体に塗布してから、ラベルと被着体とを密着させて液を固化させる方法である。このようにすることによって本発明の接着剤を介してラベルが被着体に貼着される。このときの水の量は、変性PVA(A)100質量部に対して100~2000質量部であることが好ましい。また、当該液が塩基性物質(C)をさらに含むことが好ましい。
【実施例】
【0041】
以下実施例により本発明をより具体的に説明するが本発明はこれらに何ら限定されるものではない。なお以下で「部」または「%」は特に断りのない限り「質量部」または「質量%」を意味する。なお、以下の実施例および比較例における接着剤の耐水接着性、アルカリ洗浄、粘度安定性を以下に示す方法により評価した。
【0042】
(耐水接着性)
予め洗浄乾燥したガラス板(10cm×10cm、厚さ2mm)を40℃に予熱しておき、ラベル紙に接着剤をバーコーターを用いて塗布する。塗布量は固形分として8-15g/m2とした。このラベル紙を上記ガラス板に接着し、直ちにゴムローラーで軽く圧着し、40℃で24時間乾燥させてテストピースを得た。このテストピースを20℃、65%RH下で3日間放置した。作製したテストピースを40℃の水(温度むらをなくすために、ゆっくりと水の撹拌を継続)に浸漬し、14日後に水中からテストピースを取り出し、ガラス板面とラベル紙との耐水接着性を指で剥離することにより測定した。その結果を以下の基準に従って評価した。
【0043】
A:全面接着しており、指で剥離するとラベル紙の材破だけが起きる。
B:全面接着しているが、指で剥離するとラベル紙とガラス板との界面剥離が起き、ラベル紙が材破する。
C:全面接着しているが、指で剥離するとラベル紙とガラス板との界面剥離が起き、ラベル紙は材破しない。
D:水中からテストピースを取り出したときにラベル紙の一部又は全部が剥離する。
【0044】
(アルカリ洗浄性)
前記の耐水接着性測定用テストピースと同様の方法で作製したテストピースを70℃の2%NaOH水溶液中で接着面が垂直になるように浸漬し保持した。その3分後にNaOH水溶液中からテストピースを取り出し、ガラス板面とラベル紙とのアルカリ洗浄性を指で剥離することにより測定した。その結果を以下の基準に従って評価した。
【0045】
A:ラベル紙とガラス板が界面剥離しており、水中からテストピースを取り出したときにラベル紙が全面剥離する。
B:水中からテストピースを取り出したとき、ラベル紙が一部剥離する。
C:全面接着しているが、指で剥離するとラベル紙とガラス板との界面剥離が起きる。
D:全面接着しており、指で剥離してもラベル紙の材破だけが起きる。
【0046】
(粘度安定性)
30℃での粘度が20000mPa・sとなるようにPVA(A)、ポリアミド系樹脂(B)及び塩基性物質(C)に水を加え、粘度安定性を評価するための接着剤を得た。この接着剤を10℃にて2週間保管後、30℃での粘度を測定し、次の式で粘度安定性を求めた。粘度安定性が0.7以上1.5以下のものをA、0.5以上0.7未満または1.5超2.0以下のものをB、0.5未満または2.0超のものをC、ゲル化したものをDとして表示した。
粘度安定性=(10℃にて1カ月保管後の粘度)/(10℃に保管する前の粘度)
【0047】
(PVA-1の合成)
撹拌機、温度計、滴下ロート、窒素ガス導入管および還流冷却器を付した反応器に、酢酸ビニル1350g、メタノール450g、コモノマーとしてアクリル酸メチル(MA)2.22gを仕込み、窒素バブリングをしながら30分間系内を窒素置換した。反応器の昇温を開始し、内温が60℃となったところで、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.5gを添加し重合を開始した。MAの20%メタノール溶液167部を、定量ポンプを用いて連続的に供給しながら、60℃で220分重合した後、冷却して重合を停止した。重合停止時の重合率は36%であった。続いて、30℃、減圧下でメタノールを時々添加しながら未反応のモノマーの除去を行い、酢酸ビニル/アクリル酸メチル共重合体のメタノール溶液(濃度30.8%)を得た。25%に調整した該溶液にアルカリモル比(NaOHのモル数/変性ポリビニルアセテート中のビニルエステル単位のモル数)が0.04となるようにNaOHメタノール溶液(10%濃度)を添加した。添加後約3分でゲル化物が生成したので、これを粉砕機にて粉砕し、さらに40℃で57分間放置してけん化を進行させた後、0.5Nの酢酸を加えて中和した。フェノールフタレイン指示薬を用いて中和が終了したことを確認した後、濾別して白色固体を得、これにメタノール500gを加えて加熱還流した。上記の洗浄操作を5回繰り返した後、遠心脱水して得られた白色固体を真空乾燥機にて、40℃で24時間乾燥させた。次いで、熱風乾燥機中で120℃にて5時間熱処理を行うことで、構造単位(1)及び(2)を有するPVA-1を得た。PVA-1の重合度およびけん化度をJISK 6726(1994年)に準じて測定したところ、重合度は1590、けん化度は96.1モル%であった。また、1H-NMRにより測定した、PVA-1のコモノマーの変性量は5.0モル%であった。そのうち、構造単位(1)の含有量は4.8モル%であり、構造単位(2)の含有量は0.2モル%であった。
【0048】
(PVA-2~8の合成)
重合条件、けん化条件、コモノマーの種類を変化させることにより、表1に示す重合度、けん化度、構造単位(1)と(2)、コモノマーを有するPVA(PVA-2~8)を製造した。PVA6~8は、構造単位(1)及び(2)を有するものではなかった。
【0049】
【0050】
比較例6
温度計を備えた撹拌機付きセパラブルフラスコにPVA-1を100部、所定量の水に攪拌しながら混合した。次にこの混合物を攪拌しつつ95℃まで昇温し、その温度で1時間保持しPVAを完全に溶解した後、室温まで冷却し、濃度20質量%のPVA水溶液を得た。このPVA水溶液にポリアミドエピクロロヒドリン(WS-4020、星光PMC株式会社製)および炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)を表2の組成になるように添加し、十分に攪拌混合することにより均質な接着剤を得た。得られた接着剤の耐水接着性、アルカリ洗浄性及び粘度安定性を評価した。得られた評価結果を表2に示す。
【0051】
実施例3~6、10~14
PVA(A)、ポリアミド系樹脂(B)および塩基性物質(C)の種類と配合比を表2に記載の内容に変更した以外は比較例6と同様にして接着剤を得た。得られた接着剤の各種評価結果を表2に示す。
【0052】
比較例1~10
PVA(A)、ポリアミド系樹脂(B)および塩基性物質(C)の種類と配合比を表2に記載の内容に変更した以外は比較例6と同様にして接着剤を得た。得られた接着剤の各種評価結果を表2に示す。
【0053】