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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-12
(45)【発行日】2023-10-20
(54)【発明の名称】測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 33/02 20060101AFI20231013BHJP
   G01R 33/09 20060101ALI20231013BHJP
   A61B 5/053 20210101ALI20231013BHJP
【FI】
G01R33/02 X
G01R33/09
G01R33/02 R
G01R33/02 V
G01R33/02 L
A61B5/053
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020006131
(22)【出願日】2020-01-17
(65)【公開番号】P2020148760
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2022-10-20
(31)【優先権主張番号】P 2019043019
(32)【優先日】2019-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】303046277
【氏名又は名称】旭化成エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片岡 誠
(72)【発明者】
【氏名】中村 威信
(72)【発明者】
【氏名】岡武 茂樹
【審査官】島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-004815(JP,A)
【文献】特開2013-124873(JP,A)
【文献】特開2018-011819(JP,A)
【文献】特開2016-217930(JP,A)
【文献】特開2014-081312(JP,A)
【文献】特開平10-286244(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 33/02
G01R 33/09
A61B 5/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が磁気センサを含む複数の磁気センサセルを三次元に配列して構成され、3軸方向の入力磁場を検出可能な磁気センサアレイと、
前記磁気センサアレイによって検出された前記入力磁場に基づく複数の計測値を取得する計測データ取得部と、
前記複数の計測値に基づいて、前記入力磁場を算出する磁場算出部と、
前記複数の計測値および前記入力磁場を算出した算出結果に基づいて、磁場の検出誤差を算出する誤差算出部と、
前記検出誤差に基づいて、前記複数の計測値の中から、前記磁場算出部によって前記入力磁場を算出するために用いる複数の計測値を選択する計測データ選択部と、
を備え、
前記誤差算出部は、前記複数の計測値毎に前記検出誤差を算出し、
前記計測データ選択部は、前記検出誤差が予め定められた範囲を超えた計測値を除外して、前記複数の計測値を選択し、
前記磁場算出部は、前記検出誤差が予め定められた範囲を超えた計測値を除外した後に、前記計測データ選択部によって選択された前記複数の計測値に基づいて、当該複数の計測値が計測された箇所における前記入力磁場を再算出し、
前記誤差算出部は、当該複数の計測値が計測された箇所における前記入力磁場の検出結果に基づいて、前記検出誤差を算出する、
測定装置。
【請求項2】
各々が磁気センサを含む複数の磁気センサセルを三次元に配列して構成され、3軸方向の入力磁場を検出可能な磁気センサアレイと、
前記磁気センサアレイによって検出された前記入力磁場に基づく複数の計測値を取得する計測データ取得部と、
前記複数の計測値に基づいて、前記入力磁場を算出する磁場算出部と、
前記複数の計測値および前記入力磁場を算出した算出結果に基づいて、磁場の検出誤差を算出する誤差算出部と、
前記検出誤差に基づいて、前記複数の計測値の中から、前記磁場算出部によって前記入力磁場を算出するために用いる複数の計測値を選択する計測データ選択部と、
を備え、
前記誤差算出部は、前記複数の計測値毎に前記検出誤差を算出し、
前記計測データ選択部は、前記検出誤差が予め定められた範囲を超えた計測値を除外して、前記複数の計測値を選択し、
前記磁場算出部は、前記検出誤差が予め定められた範囲を超えた計測値を除外した後に、前記入力磁場を再算出し、
前記磁場算出部は、前記計測データ選択部によって選択された前記複数の計測値から算出された前記入力磁場の算出結果に関わる係数に基づいて、前記除外された計測値が計測された箇所における前記入力磁場を算出する
測定装置。
【請求項3】
各々が磁気センサを含む複数の磁気センサセルを三次元に配列して構成され、3軸方向の入力磁場を検出可能な磁気センサアレイと、
前記磁気センサアレイによって検出された前記入力磁場に基づく複数の計測値を取得する計測データ取得部と、
前記複数の計測値に基づいて、前記入力磁場を算出する磁場算出部と、
前記複数の計測値および前記入力磁場を算出した算出結果に基づいて、磁場の検出誤差を算出する誤差算出部と、
前記検出誤差に基づいて、前記複数の計測値の中から、前記磁場算出部によって前記入力磁場を算出するために用いる複数の計測値を選択する計測データ選択部と、
を備え、
前記複数の磁気センサセルのそれぞれは、前記磁気センサが検出した入力磁場を低減させるフィードバック磁場を前記磁気センサに与える磁場生成部と、前記磁場生成部が前記フィードバック磁場を発生するために流す電流に応じた出力信号を出力する出力部と、をさらに含む
測定装置。
【請求項4】
前記誤差算出部は、前記複数の計測値毎に前記検出誤差を算出し、
前記計測データ選択部は、前記検出誤差が予め定められた範囲を超えた計測値を除外して、前記複数の計測値を選択する、請求項3に記載の測定装置。
【請求項5】
前記磁場算出部は、前記検出誤差が予め定められた範囲を超えた計測値を除外した後に、前記入力磁場を再算出する、請求項4に記載の測定装置。
【請求項6】
複数の磁気センサセルを三次元に配列して構成され、3軸方向の入力磁場を検出可能な磁気センサアレイと、
前記磁気センサアレイによって検出された前記入力磁場に基づく複数の計測値を取得する計測データ取得部と、
前記複数の計測値に基づいて、前記入力磁場を算出する磁場算出部と、
前記複数の計測値および前記入力磁場を算出した算出結果に基づいて、磁場の検出誤差を算出する誤差算出部と、
前記検出誤差に基づいて、前記複数の磁気センサセルのうちの少なくとも1つをリセットするか否かを決定する決定部と、
を備え、
前記複数の磁気センサセルのそれぞれは、
磁気センサと、
前記磁気センサが検出した入力磁場を低減させるフィードバック磁場を前記磁気センサに与える磁場生成部と、
前記磁場生成部が前記フィードバック磁場を発生するために流す電流に応じた出力信号を出力する出力部と、
当該磁気センサセルをリセットする場合に、前記磁気センサを磁気飽和させるリセット磁場を前記磁気センサに与える磁気リセット部と、
を含む、測定装置。
【請求項7】
前記誤差算出部は、前記複数の計測値毎に前記検出誤差を算出し、
前記決定部は、前記検出誤差が予め定められた範囲を超えた計測値の取得に用いられた磁気センサを含む磁気センサセルをリセットすると決定する、請求項に記載の測定装置。
【請求項8】
前記磁場算出部は、前記検出誤差が予め定められた範囲を超えた計測値の取得に用いられた前記磁気センサが磁気リセットされた後に、前記入力磁場を再算出する、請求項に記載の測定装置。
【請求項9】
前記磁気リセット部は、前記フィードバック磁場を発生させるフィードバック電流を前記磁場生成部に供給するか否かを切り替える切替部を含み、前記フィードバック電流を前記磁場生成部に供給していない状態において、前記磁場生成部にリセット電流を供給して前記リセット磁場を前記磁場生成部に発生させる、請求項からのいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項10】
前記磁場算出部は、前記複数の計測値によって示される前記入力磁場の空間分布を、正規直交関数の空間分布を持つ磁場を前記磁気センサアレイで検出したときに前記磁気センサのそれぞれが出力する信号を成分とする信号ベクトルを基底ベクトルとして信号分離し、
前記誤差算出部は、前記磁場算出部が信号分離した結果に基づいて、前記検出誤差を算出する、請求項からのいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項11】
各々が磁気センサを含む複数の磁気センサセルを三次元に配列して構成され、3軸方向の入力磁場を検出可能な磁気センサアレイと、
前記磁気センサアレイによって検出された前記入力磁場に基づく複数の計測値を取得する計測データ取得部と、
前記複数の計測値に基づいて、前記入力磁場を算出する磁場算出部と、
前記複数の計測値および前記入力磁場を算出した算出結果に基づいて、磁場の検出誤差を算出する誤差算出部と、
前記検出誤差に基づいて、前記複数の計測値の中から、前記磁場算出部によって前記入力磁場を算出するために用いる複数の計測値を選択する計測データ選択部と、
を備え、
前記磁場算出部は、前記複数の計測値によって示される前記入力磁場の空間分布を、正規直交関数の空間分布を持つ磁場を前記磁気センサアレイで検出したときに前記磁気センサのそれぞれが出力する信号を成分とする信号ベクトルを基底ベクトルとして信号分離し、
前記誤差算出部は、前記磁場算出部が信号分離した結果に基づいて、前記検出誤差を算出する
測定装置。
【請求項12】
前記磁場算出部は、前記検出誤差の2乗が最小となるように前記入力磁場を算出する、請求項1から11のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項13】
前記検出誤差に基づいて前記基底ベクトルを更新する基底ベクトル更新部を更に備える、請求項10または11に記載の測定装置。
【請求項14】
前記磁気センサは、磁気抵抗効果素子を有する、請求項からのいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項15】
前記磁気センサのそれぞれは、前記磁気抵抗効果素子の両端に配置された二つの磁気収束板をさらに有し、前記磁気抵抗効果素子は、二つの前記磁気収束板に挟まれた位置に配置される、請求項14に記載の測定装置。
【請求項16】
前記フィードバック磁場を発生させるためのコイルが、前記磁気抵抗効果素子および二つの前記磁気収束板を取り囲むように巻かれている、請求項15に記載の測定装置。
【請求項17】
前記複数の磁気センサセルの出力をアナログからデジタルに変換して前記複数の計測値を出力する複数のAD変換器を更に備え、
前記複数のAD変換器は、共通のサンプリングクロックに応じてAD変換を行う、請求項1から16のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項18】
動物の心臓の電気活動により発生する心磁を測定対象とし、
前記磁場算出部の算出結果に基づいて、前記心磁を測定する、請求項1から17のいずれか一項に記載の測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、10pT程度の微弱な磁場を検出するセンサが知られており、心臓等の臓器の電気的な分極に起因する心磁信号を測定する心磁計等に用いられていた(例えば、特許文献1~4参照)。また、磁気抵抗効果素子を用いた電流センサにおいて、フィードバックコイルを用いて環境磁場の影響をキャンセルすることも知られていた(例えば、特許文献5参照)。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1]特開2000-217798号公報
[特許文献2]特開2012-152515号公報
[特許文献3]米国特許第5642045号明細書
[特許文献4]特開2000-284032号公報
[特許文献5]米国特許出願公開第2015/0253412号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
例えば、ジョセフソン効果を利用したSQUIDセンサは、微弱な磁場を検出できるが、高価な液体ヘリウムと、大規模な磁気シールドルーム等が必要になってしまい、当該センサを備える装置を設置することは容易ではなかった。また、磁気抵抗効果素子を用いた電流センサは、小型で磁気感度が高いが、入出力特性の直線性が悪い。また、感度誤差やセンサ特性の変動に起因して、このような電流センサを用いて微弱な磁場を精度よく検出することが困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様においては、測定装置を提供する。測定装置は、各々が磁気センサを含む複数の磁気センサセルを三次元に配列して構成され、3軸方向の入力磁場を検出可能な磁気センサアレイを備えてよい。測定装置は、磁気センサアレイによって検出された入力磁場に基づく複数の計測値を取得する計測データ取得部を備えてよい。測定装置は、複数の計測値に基づいて、入力磁場を算出する磁場算出部を備えてよい。測定装置は、複数の計測値および入力磁場を算出した算出結果に基づいて、磁場の検出誤差を算出する誤差算出部を備えてよい。測定装置は、検出誤差に基づいて、複数の計測値の中から、磁場算出部によって入力磁場を算出するために用いる複数の計測値を選択する計測データ選択部を備えてよい。
【0005】
誤差算出部は、複数の計測値毎に検出誤差を算出し、計測データ選択部は、検出誤差が予め定められた範囲を超えた計測値を除外して、複数の計測値を選択してよい。
【0006】
磁場算出部は、検出誤差が予め定められた範囲を超えた計測値を除外した後に、入力磁場を再算出してよい。
【0007】
磁場算出部は、計測データ選択部によって選択された複数の計測値に基づいて、当該複数の計測値が計測された箇所における入力磁場を再算出し、誤差算出部は、当該複数の計測値が計測された箇所における入力磁場の検出結果に基づいて、検出誤差を算出してよい。
【0008】
磁場算出部は、計測データ選択部によって選択された複数の計測値から算出された入力磁場の算出結果に関わる係数に基づいて、除外された計測値が計測された箇所における入力磁場を算出してよい。
【0009】
複数の磁気センサセルのそれぞれは、磁気センサが検出した入力磁場を低減させるフィードバック磁場を磁気センサに与える磁場生成部と、磁場生成部がフィードバック磁場を発生するために流す電流に応じた出力信号を出力する出力部と、をさらに含んでよい。
【0010】
本発明の第2の態様においては、測定装置を提供する。測定装置は、複数の磁気センサセルを三次元に配列して構成され、3軸方向の入力磁場を検出可能な磁気センサアレイを備えてよい。測定装置は、磁気センサアレイによって検出された入力磁場に基づく複数の計測値を取得する計測データ取得部を備えてよい。測定装置は、複数の計測値に基づいて、入力磁場を算出する磁場算出部を備えてよい。測定装置は、複数の計測値および入力磁場を算出した算出結果に基づいて、磁場の検出誤差を算出する誤差算出部を備えてよい。測定装置は、検出誤差に基づいて、複数の磁気センサセルのうちの少なくとも1つをリセットするか否かを決定する決定部を備えてよい。複数の磁気センサセルのそれぞれは、磁気センサと、磁気センサが検出した入力磁場を低減させるフィードバック磁場を磁気センサに与える磁場生成部と、磁場生成部がフィードバック磁場を発生するために流す電流に応じた出力信号を出力する出力部と、当該磁気センサセルをリセットする場合に、磁気センサを磁気飽和させるリセット磁場を磁気センサに与える磁気リセット部と、を含んでよい。
【0011】
誤差算出部は、複数の計測値毎に検出誤差を算出し、決定部は、検出誤差が予め定められた範囲を超えた計測値の取得に用いられた磁気センサを含む磁気センサセルをリセットすると決定してよい。
【0012】
磁場算出部は、検出誤差が予め定められた範囲を超えた計測値の取得に用いられた磁気センサが磁気リセットされた後に、入力磁場を再算出してよい。
【0013】
磁気リセット部は、フィードバック磁場を発生させるフィードバック電流を磁場生成部に供給するか否かを切り替える切替部を含み、フィードバック電流を磁場生成部に供給していない状態において、磁場生成部にリセット電流を供給してリセット磁場を磁場生成部に発生させてよい。
【0014】
磁場算出部は、検出誤差の2乗が最小となるように入力磁場を算出してよい。
【0015】
磁場算出部は、複数の計測値によって示される入力磁場の空間分布を、正規直交関数の空間分布を持つ磁場を磁気センサアレイで検出したときに磁気センサのそれぞれが出力する信号を成分とする信号ベクトルを基底ベクトルとして信号分離し、誤差算出部は、磁場算出部が信号分離した結果に基づいて、検出誤差を算出してよい。
【0016】
検出誤差に基づいて基底ベクトルを更新する基底ベクトル更新部を更に備えてよい。
【0017】
磁気センサは、磁気抵抗効果素子を有してよい。
【0018】
磁気センサのそれぞれは、磁気抵抗効果素子の両端に配置された二つの磁気収束板をさらに有し、磁気抵抗効果素子は、二つの磁気収束板に挟まれた位置に配置されてよい。
【0019】
フィードバック磁場を発生させるためのコイルが、磁気抵抗効果素子および二つの磁気収束板を取り囲むように巻かれていてよい。
【0020】
複数の磁気センサセルの出力をアナログからデジタルに変換して複数の計測値を出力する複数のAD変換器を更に備え、複数のAD変換器は、共通のサンプリングクロックに応じてAD変換を行ってよい。
【0021】
動物の心臓の電気活動により発生する心磁を測定対象とし、磁場算出部の算出結果に基づいて、心磁を測定してよい。
【0022】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本実施形態に係る測定装置10の構成を示す。
図2】本実施形態に係る磁気センサユニット110の構成を示す。
図3】本実施形態に係る磁気センサアレイ210中の磁気センサセル220の構成および配置を示す。
図4】本実施形態に係る磁気抵抗効果素子を有する磁気センサの入出力特性の一例を示す。
図5】本実施形態に係るセンサ部300の構成例を示す。
図6】本実施形態に係るセンサ部300の入出力特性の一例を示す。
図7】本実施形態に係る磁気センサ520の構成例を示す。
図8】本実施形態に係る磁気センサ520にフィードバック磁場を発生させた時の磁束分布を示す。
図9】本実施形態に係る磁気センサアレイ210、センサデータ収集部230、およびセンサデータ処理部900の構成を示す。
図10】本実施形態に係る測定装置10が測定対象磁場を検出する前処理として不良センサによる計測値を除外するフローの一例を示す。
図11】本実施形態の変形例に係るセンサ部300の構成を示す。
図12】本変形例に係るセンサ部300による、リセットフェーズにおける磁気リセットのフローの一例を示す。
図13】一般的な磁性体の磁化曲線を示す。
図14】本変形例に係るセンサ部300における、磁気センサ520への入力磁場Binに対する電圧Vopenの特性を示す。
図15】複数の磁気センサセル220のそれぞれが本変形例に係るセンサ部300を有する場合における、磁気センサアレイ210、センサデータ収集部230、およびセンサデータ処理部900の構成を示す。
図16】複数の磁気センサセル220のそれぞれが本変形例に係るセンサ部300を有する測定装置10が測定対象磁場を検出する前処理として不良センサをリセットするフローの一例を示す。
図17】本発明の複数の態様が全体的または部分的に具現化されてよいコンピュータ2200の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0025】
図1は、本実施形態に係る測定装置10の構成を示す。測定装置10は、磁気抵抗効果素子を用いて磁場を計測する。測定装置10は、心磁計測装置の一例であり、人間の心臓の電気活動により生成される磁場(「心磁」と示す。)を計測する。これに代えて、測定装置10は、人間以外の生体の心磁を計測するために用いられてもよいし、脳磁場等の心磁以外の生体磁場を計測するために用いられてもよい。また、測定装置10は、鉄鋼材料や溶接部の表面および表面下の傷等を検出するための磁気探傷検査のために用いられてもよい。
【0026】
測定装置10は、本体部100と、情報処理部150とを備える。本体部100は、被験者の心磁をセンシングするためのコンポーネントであり、磁気センサユニット110と、ヘッド120と、駆動部125と、ベース部130と、ポール部140とを有する。
【0027】
磁気センサユニット110は、心磁計測時に被験者の胸部における心臓に向かう位置に配置され、被験者の心磁をセンシングする。ヘッド120は、磁気センサユニット110を支持し、磁気センサユニット110を被験者に対向させる。駆動部125は、磁気センサユニット110およびヘッド120の間に設けられ、キャリブレーションを行う場合にヘッド120に対する磁気センサユニット110の向きを変更する。本実施形態に係る駆動部125は、図中のZ軸を中心に磁気センサユニット110を360度回転させることができる第1アクチュエータと、Z軸と垂直な軸(図中の状態においてはX軸)を中心に磁気センサユニット110を回転させる第2アクチュエータとを含み、これらを用いて磁気センサユニット110の方位角および天頂角を変更する。図中の駆動部125として示したように、駆動部125は図中のY軸方向から見るとY字形状を有し、第2アクチュエータは、磁気センサユニット110を図中X軸中心に360度回転させることができる。
【0028】
ベース部130は、他の部品を支える基台であり、本実施形態においては心磁計測時に被験者が乗る台となっている。ポール部140は、ヘッド120を被験者の胸部の高さに支持する。ポール部140は、磁気センサユニット110の高さを被験者の胸部の高さに調整するべく上下方向に伸縮可能であってよい。
【0029】
情報処理部150は、本体部100による計測データを処理して表示・印刷等により出力するためのコンポーネントである。情報処理部150は、PC(パーソナルコンピュータ)、タブレット型コンピュータ、スマートフォン、ワークステーション、サーバコンピュータ、または汎用コンピュータ等のコンピュータであってよく、複数のコンピュータが接続されたコンピュータシステムであってもよい。これに代えて、情報処理部150は、心磁計測の情報処理用に設計された専用コンピュータであってもよく、専用回路によって実現された専用ハードウェアであってもよい。
【0030】
図2は、本実施形態に係る磁気センサユニット110の構成を示す。磁気センサユニット110は、磁気センサアレイ210およびセンサデータ収集部230を有する。磁気センサアレイ210は、複数の磁気センサセル220を三次元に配列して構成され、3軸方向の入力磁場を検出可能である。本図において、磁気センサアレイ210は、X方向、Y方向およびZ方向のそれぞれに複数の磁気センサセル220(例えば、X方向に8個、Y方向に8個、およびZ方向に2個の計128個の磁気センサセル220)が平面状に配置されている。
【0031】
センサデータ収集部230は、磁気センサアレイ210に含まれる複数の磁気センサセル220に電気的に接続され(図示せず。)、複数の磁気センサセル220からのセンサデータ(検出信号)を収集して情報処理部150へと供給する。
【0032】
図3は、本実施形態に係る磁気センサアレイ210中の磁気センサセル220の構成および配置を示す。複数の磁気センサセル220のそれぞれは、各々が磁気抵抗効果素子を有する少なくとも1つのセンサ部300を有する。本図においては、複数の磁気センサセル220のそれぞれが、3つのセンサ部300x~z(「センサ部300」と総称する。)を有し、入力磁場を3軸方向で検出可能である場合を一例として示す。しかしながら、複数の磁気センサセル220のいずれもが、3つのセンサ部300x~zを有することには限定されず、磁気センサアレイ210の少なくとも一部で、3軸方向の入力磁場を検出可能であればよい。センサ部300xはX軸方向に沿って配置されX軸方向の磁場を検出可能である。また、センサ部300yはY軸方向に沿って配置されY軸方向の磁場を検出可能である。また、センサ部300zはZ軸方向に沿って配置されZ軸方向の磁場を検出可能である。本図において一点鎖線で示される拡大図によって示されるように、本実施形態において、各センサ部300は、それぞれ、磁気抵抗効果素子の両端に磁気収束板が配置されている。したがって、各センサ部300は、磁気収束板に挟まれた狭い位置に配置された磁気抵抗効果素子を用いて磁場の空間分布をサンプリングすることにより、各軸方向において、空間におけるサンプリング点を明確にすることができる。各センサ部300の構成の詳細については後述する。
【0033】
本図において、センサ部300x、300y、および300zにより検出する磁場の3軸方向と、磁気センサセル220を配列する三次元の方向とが同一方向である。これにより、測定磁場の分布の各成分の把握が容易となる。また、3つのセンサ部300x、300y、および300zは、各磁気センサセル220内において、磁気センサセル220を配列する三次元方向それぞれから見て互いに重ならず、かつ、3つのセンサ部300の間に設けるギャップ側に一端が設けられ、他端が当該ギャップから離れるように3軸方向の各軸方向に延伸して配置されていることが好ましい。しかしながら、検出する磁場の3軸方向と磁気センサセル220を配列する三次元の方向とは異なっていてもよい。例えば、検出する磁場の3軸方向としてX軸、Y軸、およびZ軸に代えて、極座標系のr軸、θ軸、およびφ軸を用いてもよい。また、磁気センサセル220を配列する三次元の方向として、X軸、Y軸およびZ軸に代えて、極座標系のr軸、θ軸、およびφ軸を用いてもよい。検出する磁場の3軸方向と磁気センサセル220を配列する三次元の方向とが異なる場合、磁気センサセル220内におけるセンサ部300の配置や、磁気センサセル220の配列方向に制約を受けることがなく、磁気センサアレイ210の設計の自由度を増すことができる。
【0034】
図4は、本実施形態に係る磁気抵抗効果素子を有する磁気センサの入出力特性の一例を示す。本図は、横軸が磁気センサに入力する入力磁場の大きさBを示し、縦軸が磁気センサの検出信号の大きさV_xMR0を示す。磁気センサは、例えば、巨大磁気抵抗(GMR:Giant Magneto-Resistance)効果素子またはトンネル磁気抵抗(TMR:Tunnel Magneto-Resistance)効果素子等を有し、予め定められた一軸方向の磁場の大きさを検出する。
【0035】
このような磁気センサは、入力磁場Bに対する検出信号V_xMR0の傾きである磁気感度が高く、10pT程度の微小な磁場を検出することができる。その一方で、磁気センサは、例えば、入力磁場Bの絶対値が1μT程度で検出信号V_xMR0が飽和してしまい、入出力特性の直線性が良好な範囲が狭い。そこで、このような磁気センサにフィードバック磁場を発生させる閉ループを加えると、磁気センサの直線性を改善することができる。このような磁気センサについて次に説明する。
【0036】
図5は、本実施形態に係るセンサ部300の構成例を示す。センサ部300は、複数の磁気センサセル220のそれぞれの内部に設けられ、磁気センサ520と、磁場生成部530と、出力部540と、を含む。なお、センサ部300の一部、例えば第1の増幅回路532および出力部540は、磁気センサセル220側ではなくセンサデータ収集部230側に設けられてもよい。
【0037】
磁気センサ520は、図4で説明した磁気センサと同様に、GMR素子またはTMR素子等の磁気抵抗効果素子を有する。また、磁気センサ520のそれぞれは、磁気抵抗効果素子と磁気抵抗効果素子の両端に配置された二つの磁気収束板とを含み、磁気抵抗効果素子は、二つの磁気収束板に挟まれた位置に配置される。磁気センサ520が有する磁気抵抗効果素子は、感磁軸の正の方向を+X方向とした場合に、+X方向の磁場が入力すると抵抗値が増加し、-X方向の磁場が入力すると抵抗値が減少するように形成されてよい。即ち、磁気センサ520が有する磁気抵抗効果素子の抵抗値の変化を観測することにより、当該磁気センサ520に入力する磁場Bの大きさを検出することができる。例えば、磁気センサ520の磁気感度をSとすると、磁気センサ520の入力磁場Bに対する検出結果は、S×Bと算出できる。なお、磁気センサ520は、一例として、電源等が接続され、抵抗値の変化に応じた電圧降下を、入力磁場の検出結果として出力する。磁気センサ520の構成の詳細については後述する。
【0038】
磁場生成部530は、出力部540が出力する出力信号に応じた大きさで、磁気センサ520が検出した入力磁場を低減させるフィードバック磁場を発生させ、磁気センサ520に与える。磁場生成部530は、例えば、磁気センサ520に入力する磁場Bとは逆向きで、絶対値が当該入力磁場と略同一のフィードバック磁場B_FBを発生させ、入力磁場を打ち消すように動作する。磁場生成部530は、増幅回路532と、コイル534とを含む。
【0039】
増幅回路532は、磁気センサ520の入力磁場の検出結果に応じた電流をフィードバック電流I_FBとして出力する。磁気センサ520が有する磁気抵抗効果素子が、少なくとも1つの磁気抵抗効果素子を含むブリッジ回路により構成される場合、増幅回路532の入力端子対には、ブリッジ回路の出力がそれぞれ接続される。そして、増幅回路532は、ブリッジ回路の出力に応じた電流をフィードバック電流I_FBとして出力する。増幅回路532は、例えば、トランスコンダクタンスアンプを含み、磁気センサ520の出力電圧に応じたフィードバック電流I_FBを出力する。例えば、増幅回路532の電圧・電流変換係数をGとすると、フィードバック電流I_FBは、G×S×Bと算出できる。
【0040】
コイル534は、フィードバック電流I_FBに応じたフィードバック磁場B_FBを発生させる。コイル534は、磁気センサ520が有する磁気抵抗効果素子および磁気抵抗効果素子の両端に配置された二つの磁気収束板を取り囲むように、磁気センサ520が検出対象とする磁場の軸方向に沿って巻かれている。コイル534は、磁気センサ520の全体にわたって均一のフィードバック磁場B_FBを発生させることが望ましい。例えば、コイル534のコイル係数をβとすると、フィードバック磁場B_FBは、β×I_FBと算出できる。ここで、フィードバック磁場B_FBは、入力磁場Bを打ち消す向きに発生するので、磁気センサ520に入力する磁場は、B-B_FBに低減されることになる。したがって、フィードバック電流I_FBは、次式のように示される。
【数1】
【0041】
(数1)式をフィードバック電流I_FBについて解くと、センサ部300の定常状態におけるフィードバック電流I_FBの値を算出することができる。磁気センサ520の磁気感度Sおよび第1の増幅回路532の電圧・電流変換係数Gが十分に大きいとすると、(数1)式から次式が算出される。
【数2】
【0042】
出力部540は、磁場生成部530がフィードバック磁場B_FBを発生するために流すフィードバック電流I_FBに応じた出力信号V_xMRを出力する。出力部540は、例えば、抵抗値Rの抵抗性素子を有し、当該抵抗性素子にフィードバック電流I_FBが流れることによって生じる電圧降下を出力信号V_xMRとして出力する。この場合、出力信号V_xMRは、(数2)式より次式のように算出される。
【数3】
【0043】
以上のように、センサ部300は、外部から入力する磁場を低減させるフィードバック磁場を発生するので、磁気センサ520に実質的に入力する磁場を低減させる。これにより、センサ部300は、例えば、磁気センサ520として図4に示した非線形性であり、動作磁場範囲が狭い特性を有する磁気抵抗効果素子を用い、入力磁場Bの絶対値が1μTを超えても、検出信号V_xMRが飽和することを防止できる。このようなセンサ部300の入出力特性を次に説明する。
【0044】
図6は、本実施形態に係るセンサ部300の入出力特性の一例を示す。本図は、横軸がセンサ部300に入力する入力磁場の大きさBを示し、縦軸がセンサ部300の検出信号の大きさV_xMRを示す。センサ部300は、磁気感度が高く、10pT程度の微小な磁場を検出することができる。また、センサ部300は、例えば、入力磁場Bの絶対値が100μTを超えても、検出信号V_xMRの良好な線形性を保つことができる。
【0045】
即ち、本実施形態に係るセンサ部300は、例えば、入力磁場Bの絶対値が数百μT以下といった、予め定められた入力磁場Bの範囲において、当該入力磁場Bに対する検出結果が線形性を有するように構成される。このようなセンサ部300を用いることにより、心磁信号のように微弱な磁気的信号を簡便に検出することができる。
【0046】
図7は、本実施形態に係る磁気センサ520の構成例を示す。本図において、磁気センサ520は、磁気抵抗効果素子710と、磁気抵抗効果素子710の両端に配置された磁気収束板720および730とを有する。磁気収束板720および730は、磁気抵抗効果素子710を間に挟むように、磁気抵抗効果素子710の両端に配置されている。本図において、磁気収束板720は、感磁軸に沿って磁気抵抗効果素子710の負側に設けられ、磁気収束板730は、感磁軸に沿って磁気抵抗効果素子710の正側に設けられている。なお、ここで、感磁軸は、磁気抵抗効果素子710を形成する磁化固定層において固定された磁化の方向に沿っていてよい。また、感磁軸の負側から正側に向かって磁場が入力されると、磁気抵抗効果素子710の抵抗は増加または減少してよい。磁気収束板720および730は、例えばパーマロイ等の透磁率の高い材料により形成される。そして、磁気センサ520が本図に示すように構成される場合、コイル534は、磁気抵抗効果素子710と、磁気抵抗効果素子710の両端に配置された磁気収束板720および730との断面を取り囲むように、磁気センサ520が検出対象とする磁場の軸方向に沿って巻かれている。また、磁気センサ520は、1つの磁気センサ520内に複数の磁気抵抗効果素子710を有する場合、磁気抵抗効果素子およびその両端に配置された磁気収束板を含む組を複数有してもよい。その場合、磁気抵抗効果素子およびその両端に配置された磁気収束板を含む組を1つのコイルで取り囲むようにコイル534が巻かれてもよい。
【0047】
このような磁気センサ520において、感磁軸の負側から正側に磁場が入力されると、透磁率の高い材料で形成された磁気収束板720および730が磁化されることにより、本図において破線で示すような磁束の分布が発生する。すると、磁気収束板720および730が磁化されることにより発生する磁束は、二つの磁気収束板720および730の間に挟まれた磁気抵抗効果素子710の位置を通過することとなる。このため、磁気抵抗効果素子710の位置における磁束密度は、磁気収束板720および730を配置することによって大幅に増加させることができる。また、本図のように、磁気収束板720および730に挟まれた狭い位置に配置された磁気抵抗効果素子710を用いて磁場の空間分布をサンプリングすることにより、空間におけるサンプリング点を明確にすることができる。
【0048】
図8は、本実施形態に係る磁気センサ520にフィードバック磁場を発生させた時の磁束分布を示す。図8においては、図7と同じ機能および構成を有する部材に対して同じ符号を付すとともに、以下相違点を除き説明を省略する。本実施形態に係る磁気センサ520において、コイル534にフィードバック電流が供給されると、コイル534がフィードバック磁場を発生させることにより、本図において一点鎖線で示すような磁束の分布が発生する。このフィードバック磁場により発生する磁束は、磁気抵抗効果素子710に入力され磁気収束板720および730によって磁気増幅された磁場の空間分布をキャンセルするように空間分布する。このため、磁気センサ520は、本図に示すように磁気抵抗効果素子710の両端に磁気収束板720および730が配置されており、磁気抵抗効果素子およびその両端に配置された磁気収束板を含む組を1つのコイルで取り囲むようにコイル534が巻かれている場合には、磁気抵抗効果素子710の位置における磁場分布をフィードバック磁場によって正確にキャンセルすることができるため、入力磁場と出力電圧との間の線形性が高いセンサを実現することができる。
【0049】
図9は、本実施形態に係る磁気センサアレイ210、センサデータ収集部230、およびセンサデータ処理部900の構成を示す。
【0050】
磁気センサアレイ210は、複数の磁気センサセル220を有する。複数の磁気センサセル220のそれぞれは、上述のとおり複数のセンサ部300x~zを有してよい。本図においては、磁気センサアレイ210が各次元方向に有する複数の磁気センサセル220のうち、位置[i,j,k]、[i+1,j,k]、[i,j+1,k]、および、[i,j,k+1]に関する部分を示す。
【0051】
センサデータ収集部230は、複数のAD変換器232およびクロック発生器234を有する。複数のAD変換器232は、磁気センサセル220の複数のセンサ部300x~zのそれぞれに対応して設けられており、対応するセンサ部300が出力するアナログの検出信号(図6のセンサ出力信号V_xMR)をデジタルの計測値V(Vx,Vy,Vz)に変換して複数の計測値を出力する。ここで、Vx、Vy、およびVzは、それぞれ、センサ部300x、300y、および300zからの検出信号をデジタルに変換した計測値(例えばデジタルの電圧値)である。
【0052】
クロック発生器234は、サンプリングクロックを発生させ、共通のサンプリングクロックを複数のAD変換器232のそれぞれへ供給する。そして、複数のAD変換器232のそれぞれは、クロック発生器234から供給された共通のサンプリングクロックに応じてAD変換を行う。したがって、異なる位置に設けられた複数のセンサ部300x~zの出力をそれぞれAD変換する複数のAD変換器232の全てが同期動作をする。これにより、複数のAD変換器232は、異なる空間に設けられた複数のセンサ部300x~zの検出結果を同時にサンプリングすることができる。
【0053】
センサデータ処理部900は、計測データ取得部910、計測データ選択部920、磁場算出部930、基底ベクトル記憶部940、および、誤差算出部950を有する。
【0054】
計測データ取得部910は、磁気センサアレイ210によって検出された入力磁場に基づく複数の計測値を取得する。計測データ取得部910は、複数のAD変換器232に接続され、磁気センサアレイ210を構成する複数の磁気センサセル220内のセンサ部300x~zによって計測された複数の計測値を取得する。具体的に、計測データ取得部910は、複数のAD変換器232によってデジタルに変換された計測値V(Vx,Vy,Vz)を所定のタイミングTでラッチするフリップフロップ等を用いて構成されてよい。計測データ取得部910は、取得した複数の計測値を、計測データΦAllとして計測データ選択部920へ供給する。
【0055】
計測データ選択部920は、後述する磁場の検出誤差に基づいて、計測データ取得部910から供給された複数の計測値の中から、磁場算出部930によって入力磁場を算出するために用いる複数の計測値を選択する。そして、計測データ選択部920は、選択した複数の計測値を、計測データΦSelectとして磁場算出部930へ供給する。
【0056】
磁場算出部930は、計測データ選択部920によって計測データΦSelectとして選択された複数の計測値に基づいて、入力磁場を算出する。動物の心臓の電気活動により発生する心磁を測定対象とする場合、磁場算出部930の算出結果に基づいて、心磁を測定してよい。この際、磁場算出部930は、磁場の検出誤差の2乗が最小となるように入力磁場を算出してよい。また、磁場算出部930は、複数の計測値によって示される入力磁場の空間分布を、正規直交関数の空間分布を持つ磁場を磁気センサアレイ210で検出したときに磁気センサ520のそれぞれが出力する信号を成分とする信号ベクトルを基底ベクトルとして信号分離してよい。これについては後述する。磁場算出部930は、入力磁場を算出した算出結果を、複数の計測値とともに誤差算出部950へ供給する。
【0057】
基底ベクトル記憶部940は、磁場算出部930が入力磁場の空間分布を信号分離する際に用いる基底ベクトルを記憶し、記憶した基底ベクトルを磁場算出部930へ供給する。磁場算出部930は、入力磁場の空間分布を信号分離する際に、当該基底ベクトル記憶部940から供給された基底ベクトルを用いてよい。
【0058】
誤差算出部950は、磁場算出部930から供給された複数の計測値および入力磁場を算出した算出結果に基づいて、磁場の検出誤差εを算出する。これについても後述する。誤差算出部950は、算出した磁場の検出誤差εを、計測データ選択部920へ供給する。そして、上述のとおり、計測データ選択部920は、誤差算出部950から供給された磁場の検出誤差εに基づいて、計測データ取得部910から供給された複数の計測値の中から、磁場算出部930によって入力磁場を算出するために用いる複数の計測値を選択する。
【0059】
図10は、本実施形態に係る測定装置10が測定対象磁場を算出する前処理として不良センサによる計測値を除外するフローの一例を示す。
【0060】
ステップ1010において、測定装置10は、初期設定を行う。例えば、Nを磁気センサアレイ210を構成する複数の磁気センサセル220内の複数のセンサ部300x~zの総数、すなわち、計測データΦAllに含まれる複数の計測値の総数とし、Mを計測データΦSelectに含まれる複数の計測値の総数とすると、測定装置10は、M=Nに設定する。すなわち、測定装置10は、複数の計測値の全てが計測データΦSelectとなるように初期設定する。
【0061】
次に、ステップ1020において、測定装置10は、入力磁場を算出する。例えば、計測データ取得部910は、磁気センサアレイ210を構成する複数の磁気センサセル220内のセンサ部300x~zによって計測された入力磁場に基づく複数の計測値(計測データΦAll)を取得する。そして、計測データ選択部920は、ステップ1010の次に続くステップ1020においては、複数の計測値の全てを計測データΦSelectとして選択するΦSelect=ΦAll)。そして、磁場算出部930は、計測データΦSelectとして選択された複数の計測値に基づいて、入力磁場を算出する。
【0062】
磁場算出部930は、入力磁場を算出するにあたって、例えば、複数の計測値によって示される入力磁場の空間分布を、正規直交関数の空間分布を持つ磁場を磁気センサアレイ210で検出したときに磁気センサ520のそれぞれが出力する信号を成分とする信号ベクトルを基底ベクトルとして信号分離する。なお、正規直交関数は、例えば、球面調和関数であってよい。一例として、基底ベクトル記憶部940は、測定対象磁場の計測前に、空間内の予め定められた点を座標原点に指定した時に球面調和関数を空間サンプリングして得られる磁場信号ベクトルを基底ベクトルとして記憶する。ここで、球面調和関数とは、n次元ラプラス方程式の解となる斉次多項式を単位球面に制限することで得られる関数であり、球面上での正規直交性を有する。なお、基底ベクトル記憶部940は、シミュレーション結果等により予め決められている信号ベクトルを基底ベクトルとして記憶してもよい。
【0063】
磁場算出部930は、基底ベクトル記憶部940が基底ベクトルとして記憶した当該信号ベクトルを基底ベクトル記憶部940から取得する。そして、磁場算出部930は、複数の計測値によって示される入力磁場の空間分布を、当該信号ベクトルを基底ベクトルとして利用して級数展開する。そして、磁場算出部930は、級数展開によって得られたベクトルから、磁場の空間分布を測定対象磁場と外乱磁場とに信号分離する。
【0064】
そして、磁場算出部930は、信号分離した結果として、外乱磁場を抑制して測定対象磁場だけを算出して出力する。以下、これについて数式を用いて詳細に説明する。
【0065】
磁気センサアレイ210を構成する各センサが配置される位置に関して、座標原点からの位置を表す位置ベクトルrの位置において、電流i(r)=0であるとき、静磁場B(r)は、ラプラス方程式Δ・V(r)=0を満たすポテンシャルV(r)を用いて、次式のように、ポテンシャルV(r)の空間勾配(gradient)として求められる。ここで、Δはラプラシアンであり、μは透磁率であり、∇はベクトル微分演算を表す演算子である。
【数4】
【0066】
そして、ラプラス方程式の解は、一般に、正規直交関数系である球面調和関数Yl,m(θ,φ)を使った級数展開の形での解を持つため、ポテンシャルV(r)は次式で表すことができる。ここで、|r|は位置ベクトルrの絶対値(座標原点からの距離)であり、θおよびφは球座標における2つの偏角であり、lは方位量子数であり、mは磁気量子数であり、αおよびβは多極モーメントであり、LinおよびLoutはそれぞれ座標原点および測定対象から見て磁気センサアレイ210の手前の空間と奥の空間のそれぞれについての級数の数である。方位量子数lは正の整数をとり、磁気量子数mは-1から+1までの整数をとる。すなわち、例えばlが1のとき、mは-1、0、および1であり、例えばlが2のとき、mは-2、-1、0、1、および2である。なお、磁場においては単磁極が存在しないことから、(数5)において方位量子数lは、0からではなく1から始まっている。(数5)における第1項は、座標原点からの距離に反比例する項であり、座標原点および測定対象から見て磁気センサアレイ210の手前の空間に存在するポテンシャルを示している。また、(数5)における第2項は、座標原点からの距離に比例する項であり、座標原点および測定対象から見て磁気センサアレイ210の奥の空間に存在するポテンシャルを示している。
【数5】
【0067】
したがって、(数4)および(数5)によれば、静磁場B(r)は、次式で表すことができる。ここで、(数6)における第1項は、座標原点および測定対象から見て磁気センサアレイ210の手前の空間に存在する磁場源、例えば、心臓の電気活動が作る心磁(測定対象磁場)を示している。また、(数6)における第2項は、座標原点および測定対象から見て磁気センサアレイ210の奥の空間に存在する磁場源が作る外乱磁場を示している。
【数6】
【0068】
球面調和関数を使った級数展開の形でラプラス方程式の解を表した場合、その一般解は無限級数となるが、例えば、生体磁場を計測するのに十分なSNR(信号ノイズ比、すなわち、外乱磁場及びセンサノイズに対する測定対象磁場信号の比)が得られればよく、実際には10項程度の級数で表せば十分であると言われている。また、脳磁計における信号空間分離の級数については、Lin=8、Lout=3程度でよいと言われている。したがって、例えば心磁計として用いてもよい本実施形態の測定装置10においても、Lin=8、Lout=3の場合を一例として説明する。しかしながら、LinおよびLoutの値は、これに限定されるものではなく、外乱磁場を十分抑制し測定対象磁場だけを算出するのに十分な、いかなる数値であってもよい。
【0069】
ここで、Kを磁気センサアレイ210に含まれる各センサの誤差を表す較正係数行列として、al,mおよびbl,mを次式のように定義する。すなわち、al,mおよびbl,mを、球面調和関数Yl,m(θ,φ)の勾配から得られる磁気センサアレイ210に含まれるセンサ数に等しいM個の成分を持つM次元ベクトルに対して、磁気センサアレイ210に含まれる磁気センサ520の磁気感度誤差を補正する較正係数行列Kを乗じることによって、磁気センサアレイ210の磁気感度誤差を補正した基底ベクトルとする。
【数7】
【0070】
そうすると、ある時刻における計測データΦSelectは、次式で表すことができる。
【数8】
【0071】
さらに、Sin、Sout、Xin、およびXoutをそれぞれ次のように定義する。すなわち、Sinを、l=1からl=Linまで、各lにおいてm=-lからlまでの整数をとった時の各ベクトルaを順に列に並べた、計Lin・(Lin+2)列のベクトルと定義する。また、Soutを、l=1から=Loutまで、各lにおいてm=-lからlまでの整数をとった時の各ベクトルbを順に列に並べた、計Lout・(Lout+2)列のベクトルと定義する。また、Xinを、l=1からl=Linまで、各lにおいてm=-lからlまでの整数をとった時の各多極モーメントαを順に列に並べたベクトルを転置した、計Lin・(Lin+2)行のベクトルと定義する。また、Xoutを、l=1からl=Loutまで、各lにおいてm=-1からlまでの整数をとった時の各多極モーメントβを順に列に並べたベクトルを転置した、計Lout・(Lout+2)行のベクトルと定義する。
【数9】
【0072】
そうすると、有効な計測データΦSelectは、次式に示すように、行列Sと縦ベクトルXの内積の形で表すことができる。ここで、行列Sは、合計Lin・(Lin+2)+Lout・(Lout+2)個の基底ベクトルを横方向に並べることによって得られる行列を示し、例えば、磁場算出部930が基底ベクトル記憶部940から取得したものである。また、(Lin・(Lin+2)+Lout・(Lout+2))次元の縦ベクトルXは、基底ベクトルに係る線形結合の係数を示す。
【数10】
【0073】
磁場算出部930は、この(数10)で得られた計測データΦSelectのモデル式に基づいて、次式を用いて縦ベクトル^X(ここで、「^X」は(数11)における左辺を示し、Xのハット(推定値)を意味するものとする。)を決定する。
【数11】
【0074】
この際、磁場算出部930は、最小2乗法を用いて、次式に示すコスト関数Fを最小にするように縦ベクトル^Xを決定する。これにより、磁場算出部930は、磁場の空間分布を解くことができる。
【数12】
【0075】
ここで、磁場算出部930が(数11)および(数12)を用いて決定した縦ベクトル^Xに関して、^Xin・Sinは測定対象磁場成分(心磁)を表し、^Xout・Soutは外乱磁場成分を表す。そこで、外乱磁場成分を排除して、測定対象磁場成分だけを取り出すためには、磁場検出結果^X・Sのうち^Xin・Sinだけを取り出せばよい。
【0076】
これにより、磁場算出部930は、複数の磁気センサセル220を三次元に配列して構成され、3軸方向の入力磁場を検出可能な磁気センサアレイ210を用いて計測された計測データΦSelectによって示される磁場の空間分布を、測定対象磁場と外乱磁場とに信号分離することができる。このように、測定装置10は、外乱磁場成分を抑制して測定対象磁場成分だけを取り出すことができるので、測定対象磁場をより高精度に計測することができる。また、複数のセンサ部300がそれぞれ磁気収束板を有するので、センサ部300の磁気感度を高めるとともに、空間サンプリング点を明確化することができ、信号空間分離技術との親和性をより高めることができる。磁場算出部930は、入力磁場を算出した算出結果を、複数の計測値とともに誤差算出部950へ供給する。
【0077】
ステップ1030において、誤差算出部950は、磁場算出部930から供給された複数の計測値および入力磁場を算出した算出結果に基づいて、磁場の検出誤差εを算出する。誤差算出部950は、例えば、次式に示すように、計測データΦSelectから、行列Sと縦ベクトル^Xとの内積を減算して検出誤差εを算出してよい。これにより、誤差算出部950は、ある時刻における計測データΦSelectを、最小2乗法を用いて基底ベクトルS=[Sin,Sout]によって張られる部分空間へマッピングした際の誤差を、ベクトルの成分ごとに算出し、これを検出誤差εとする。したがって、誤差算出部950は、複数の計測値毎に検出誤差εを算出する。そして、誤差算出部950は、算出した磁場の検出誤差εを、計測データ選択部920へ供給する。なお、計測値の数がMであるため、検出誤差εはM行の縦ベクトルとなる。
【数13】
【0078】
ステップ1040において、計測データ選択部920は、磁気センサアレイ210全体における検出誤差εの平均値、すなわち、複数の計測値毎の検出誤差εの平均値が予め定められた閾値以下であるか否かを判定する。計測データ選択部920は、例えば、次式により、検出誤差εの平均値avg(ε)を算出し、検出誤差εの平均値avg(ε)が予め定められた閾値Avg_E_Th以下であるか否かを判定してよい。
【数14】
【0079】
ステップ1040において、検出誤差εの平均値が予め定められた閾値以下であると判定した場合、測定装置10は不良センサによる計測値を除外するフローの処理を終了する。
【0080】
一方、ステップ1040において、検出誤差εの平均値が予め定められた閾値を超えると判定した場合、ステップ1050において、計測データ選択部920は、複数の計測値の中から検出誤差εが予め定められた範囲を超えた計測値を除外する計測値として選択する。一例として、計測データ選択部920は、磁気センサアレイ210の中で、検出誤差εの絶対値が最大となる計測値iを除外する計測値として選択してよい。
【0081】
次に、ステップ1060において、計測データ選択部920は、検出誤差εが予め定められた範囲を超えた計測値iを除外して、複数の計測値を選択する。すなわち、計測データ選択部920は、計測値iを除外した複数の計測値を計測データΦSelectとして再構成する。
【0082】
そして、ステップ1070において、計測データ選択部920は、計測値iを除外した結果として、Mの次元を1つデクリメントして処理をステップ1020に戻す。そして、磁場算出部930は、検出誤差εが予め定められた範囲を超えた計測値iを除外した後に、ステップ1020において、入力磁場を再算出する。この際、磁場算出部930は、磁気センサアレイ210を用いて新たに計測値を取得し直してもよいし、既に取得済みの計測値を再利用してもよい。測定装置10は、ステップ1040において、検出誤差εの平均値が予め定められた閾値以下であると判定されるまで、当該処理を繰り返す。
【0083】
なお、上述の説明では、測定装置10が、検出誤差εの平均値が予め定められた閾値を超えると判定した場合に、検出誤差εの絶対値が相対的に最も大きい1つの計測値iを除外してフローを繰り返す場合を一例として説明した。しかしながら、これに限定されるものではない。測定装置10は、検出誤差εの絶対値が相対的に最も大きい1つの計測値iを先に選択し、当該計測値iにおける検出誤差ε、すなわち、検出誤差εの絶対値の最大値が予め定められた閾値を超えると判定した場合に、当該計測値iを除外してフローを繰り返してもよい。また、測定装置10は、検出誤差εの絶対値が予め定められた閾値を超える1又は複数の計測値iを除外して、複数の有効な計測値を選択してもよい。
【0084】
このように、測定装置10は、測定対象磁場を算出する前に、検出誤差εの絶対値が大きい計測値iを除外して、磁場算出部930によって入力磁場を算出するために用いる計測データΦSelectを更新する。検出誤差εの絶対値が大きい測定値iは、大きなノイズが発生したセンサに対応するものである。本実施形態の測定装置10によれば、このようなノイズの大きい不良センサを測定対象磁場の検出前に除外するので、測定対象磁場の検出精度を高めることができる。
【0085】
図11は、本実施形態の変形例に係るセンサ部300の構成を示す。本図においては、図5と同じ機能および構成を有する部材に対して同じ符号を付すとともに、以下相違点を除き説明を省略する。
【0086】
本変形例において、磁気センサ520は、少なくとも1つの磁気抵抗効果素子を有する。本図においては、一例として、磁気センサ520は、電源電圧VccとグランドGNDとの間に直列に接続された第1磁気抵抗効果素子710aと第2磁気抵抗効果素子710b、および、電源電圧VccとグランドGNDとの間に直列に接続された第3磁気抵抗効果素子710cと第4磁気抵抗効果素子710dを有する。なお、本図においては、図示を省略するが、第1~第4磁気抵抗効果素子710a~710d(「磁気抵抗効果素子710」と総称する。)は、それぞれ、図7に示すように、磁気抵抗効果素子710の両端に配置された磁気収束板720および730を有していてよい。これら磁気抵抗効果素子710および磁気収束板は、コイル534に内包されるように位置してよい。磁気センサ520は、第1磁気抵抗効果素子710aと第2磁気抵抗効果素子710bの間の電圧、および、第3磁気抵抗効果素子710cと第4磁気抵抗効果素子710dの間の電圧をそれぞれ出力する。なお、本図において、第1磁気抵抗効果素子710a、第2磁気抵抗効果素子710b、第3磁気抵抗効果素子710c、および第4磁気抵抗効果素子710dとでブリッジ回路を構成している。しかしながら、これに代えて、磁気センサ520は、例えば、第1磁気抵抗効果素子710a、第2磁気抵抗効果素子710b、第3磁気抵抗効果素子710c、および第4磁気抵抗効果素子710dの少なくともいずれかが固定抵抗で構成されたもの、または、第1磁気抵抗効果素子710aと第2磁気抵抗効果素子710b、および、第3磁気抵抗効果素子710cと第4磁気抵抗効果素子710dのいずれか一方が定電圧源で構成されたもの等であってもよく、少なくとも1つの磁気抵抗効果素子に入力された磁場に応じた電圧を出力する様々な態様を含む。
【0087】
磁気センサ520は、少なくとも直列に接続された互いに逆極性の第1磁気抵抗効果素子710aおよび第2磁気抵抗効果素子710bを有し、第1磁気抵抗効果素子710aと第2磁気抵抗効果素子710bの間の電圧を出力する構成とすると、温度によるオフセットや感度などの特性変動の低減効果が得られる。ここで、逆極性とは、同一方向の入力磁場に対して、磁気抵抗効果素子の抵抗の増減方向が逆であることをいう。本図においては、さらに、第3磁気抵抗効果素子710cを第1磁気抵抗効果素子710aと逆極性、および、第4磁気抵抗効果素子710dを第2磁気抵抗効果素子710bと逆極性とし、第1磁気抵抗効果素子710aおよび第2磁気抵抗効果素子710bに加えて、第3磁気抵抗効果素子710cおよび第4磁気抵抗効果素子710dについても互いに逆極性とした例を示す。
【0088】
本変形例において、増幅回路532は、2つの差動入力端子に、磁気センサ520の出力端子をそれぞれ接続する。そして、増幅回路532は、磁気センサ520のそれぞれの出力電圧の差に応じたフィードバック電流を発生させ、これをコイル534に供給する。ここで、磁気センサ520のそれぞれの出力電圧の差をVopenと定義する。
【0089】
本変形例において、出力部540は、電流電圧変換抵抗542と、演算増幅器544とを有する。
【0090】
電流電圧変換抵抗542は、一端がコイル534に接続され、他端が固定電圧に接続されており、フィードバック電流を電圧に変換し、その両端にフィードバック電流に基づく電圧(フィードバック電流×電流電圧変換抵抗542の抵抗値)を発生させる。ここで、電流電圧変換抵抗542によって発生させた当該フィードバック電流に基づく電圧をVclosedと定義する。
【0091】
演算増幅器544は、差動入力端子に電流電圧変換抵抗542の両端をそれぞれ接続し、電流電圧変換抵抗542の両端の電圧、すなわち、電圧Vclosedに応じた電圧を出力する。
【0092】
また、本変形例において、センサ部300は、磁気リセット部1110を更に含む。磁気リセット部1110は、リセットフェーズにおいて、磁気センサ520を磁気飽和させるリセット磁場を磁気センサ520に与える。磁気リセット部1110は、リセット電流供給部1120と、切替部1130と、を含む。
【0093】
リセット電流供給部1120は、リセットフェーズにおいて、コイル534にリセット電流を供給して、磁気センサ520が有する各磁気抵抗効果素子を磁気飽和させるリセット磁場をコイル534に発生させる。なお、磁気飽和とは、磁気抵抗効果素子に一定量の磁場が入力して磁気抵抗効果素子の出力が磁場に対して変動しなくなることを示している。このように磁気抵抗効果素子が磁気飽和する程度の磁場をリセット磁場、またリセット磁場を発生させる電流をリセット電流と定義して用いる。
【0094】
切替部1130は、フィードバック磁場を発生させるフィードバック電流を磁場生成部530に供給するか否かを切り替える。そして、リセット電流供給部1120は、フィードバック電流を磁場生成部530に供給していない状態において、磁場生成部530にリセット電流を供給してリセット磁場を磁場生成部530に発生させる。例えば、切替部1130は、増幅回路532とコイル534との間に設けられ、増幅回路532が発生したフィードバック電流をコイル534に供給しない場合に、コイル534をリセット電流供給部1120に接続させる。そして、リセット電流供給部1120は、フィードバック電流をコイル534に供給していない状態において、コイル534にリセット電流を供給してリセット磁場をコイル534に発生させてよい。
【0095】
このように、本変形例において、センサ部300は、磁気センサ520にセンサ部300への入力磁場が入力されると、増幅回路532は、入力磁場に応じた磁気センサ520のそれぞれの出力電圧の差(すなわち、電圧Vopen)に応じたフィードバック電流を発生させ、これをコイル534に供給する。そして、コイル534は、供給されたフィードバック電流に応じて、磁気センサ520に入力された入力磁場を相殺させるフィードバック磁場を発生させる。そして、出力部540は、測定フェーズにおいて、入力磁場に対して発生されたフィードバック電流に応じた測定値、具体的には、電圧Vclosedに応じた電圧値を出力する。ここで、この一連の制御をクローズドループ制御と定義する。なお、クローズドループ制御下においては、電圧Vopenの値は0となるように、すなわち、入力磁場を相殺するフィードバック磁場が発生するように制御される。
【0096】
なお、上述の説明においては、コイル534がフィードバック磁場およびリセット磁場を発生させるためのコイルとして共用される場合を一例として示したが、これに限定されるものではない。センサ部300は、リセット磁場を発生させるためのコイルとして、フィードバック磁場を発生させるためのコイル534とは別のコイルを含んでもよい。また、上述の説明においては、センサ部300が磁気リセット部1110の全てを含む場合を一例として示したが、これに限定されるものではない。磁気リセット部1110の一部、例えば、リセット電流供給部1120は、センサ部300に設けられていなくてもよく、例えば、センサデータ収集部230に設けられていてもよい。
【0097】
図12は、本変形例に係るセンサ部300による、リセットフェーズにおける磁気リセットのフローの一例を示す。ここで、クローズドループ制御を行わない状態をオープンループと定義する。ステップ1210において、切替部1130は、クローズドループ制御から、フィードバック電流をコイル534に供給しない状態、すなわち、オープンループに切り替える。また、切替部1130は、コイル534をリセット電流供給部1120に接続させる。
【0098】
次に、ステップ1220において、リセット電流供給部1120は、コイル534にリセット電流を供給して、コイル534にリセット磁場を発生させる。ここで、リセット電流供給部1120は、磁気センサ520が有する各磁気抵抗効果素子を磁気飽和させるために予め定めた十分な大きさの電流を供給して、コイル534にリセット磁場を発生させてもよい。これに代えて、リセット電流供給部1120は、磁気センサ520の出力電圧をモニタしながら磁気センサ520の出力電圧が各磁気抵抗効果素子が磁気飽和したことを示す値となるまで供給するリセット電流の強度を徐々に大きくして、コイル534にリセット磁場を発生させてもよい。リセット磁場は、センサ部300がどのような向きに配置されていても、すなわち、どのような向きに地磁気がかかっていても磁気抵抗効果素子を磁気飽和できるよう、例えば、磁場が0の状態で磁気抵抗効果素子を磁気飽和させる磁場の大きさに、地磁気分を加えた大きさ以上としてもよい。
【0099】
次に、ステップ1230において、リセット電流供給部1120は、コイル534へのリセット電流の供給を停止する。ここで、リセット電流供給部1120は、リセット磁場をコイル534に発生させて各磁気抵抗効果素子を磁気飽和させた後に、コイル534へ供給するリセット電流の大きさを徐々に小さくして、コイル534に発生させるリセット磁場の強度を徐々に小さくさせてもよい。一般的に、磁気抵抗効果素子は、磁界を加えていくと、磁壁(磁区と磁区の境界)が移動していき、次に、磁区の中で磁化の回転が起き、やがて全体が一つの磁区で覆われた単一磁区状態となる。これが磁気飽和に対応する。そして、磁気抵抗効果素子は、磁気飽和の状態から磁界を減少していくと、磁気抵抗効果素子のエネルギーを最小化するようにさまざまな磁化方向をもつ磁壁が発生し、磁界の減少とともに磁壁が移動していく。本変形例に係るセンサ部300のリセット電流供給部1120によれば、各磁気抵抗効果素子を磁気飽和させた後のステップ1230において、コイル534へ供給するリセット磁場を徐々に小さくさせることで、磁気抵抗効果素子を常に同じ磁化状態に近づけることができる。これにより、磁気抵抗効果素子は、磁気リセット毎に同じような状態となるため、各磁気リセット後の磁気抵抗効果素子の磁化状態のばらつきを比較的小さくすることができる。
【0100】
そして、ステップ1240において、切替部1130は、コイル534を増幅回路532に接続させ、オープンループからクローズドループ制御に切り替えて磁気リセット処理を終了する。その後、出力部540は、測定フェーズにおいて、クローズドループ制御下で、入力磁場に対して発生されたフィードバック電流に応じた測定値を出力する。
【0101】
図13は、一般的な磁性体の磁化曲線を示す。磁性体は、初磁化状態では、点1310に示すように、磁界が0のとき磁化は0である。この状態から磁界を正側に増加していくと、磁化は、曲線1350を辿って増加し、点1312に到達する。この曲線1350を初磁化曲線という。点1312に到達すると、磁化は、これ以上磁界を正側に増加しても変化しなくなる。この時、磁性体は磁気飽和した状態となる。その後、磁界を減少させていくと、磁化は、曲線1350ではなく、曲線1360を辿って減少し、点1314に到達する。点1314において、磁界が0であっても磁化は残っており、これを残留磁化という。さらに、磁界を負側に増加させていくと、磁化は、曲線1360を辿って減少し、点1316に到達する。点1316に到達すると、磁化は、これ以上磁界を負側に増加しても変化しなくなる。この時、磁性体は再び磁気飽和した状態となる。その後、再び磁界を正側に増加していくと、磁化は、曲線1360ではなく、曲線1370を辿って増加し、点1318を経由して点1312に到達する。磁性体は、一般的に、このような磁気ヒステリシス特性を有する。ここで、磁性体が磁気飽和した状態となる点1312および点1316を通る曲線1360および曲線1370からなる最大のループをメジャーループという。
【0102】
一方、例えば、点1318の状態から、磁界を負側に増加させていくと、磁化は、曲線1380を辿って減少する。この状態から、磁性体が磁気飽和する前の点1320において再び磁界を正側に増加させていくと、磁化は、曲線1380ではなく、曲線1390を辿って増加し、点1318に到達する。このように、磁性体が磁気飽和した状態となる点1312および1316を通らない、例えば、曲線1380および曲線1390からなるループをマイナーループという。
【0103】
図14は、本変形例に係るセンサ部300における、磁気センサ520への入力磁場Binに対する電圧Vopenの特性を示す。本変形例において、磁気センサ520への入力磁場Binに対する電圧Vopenの特性は、磁気センサ520が有する第1磁気抵抗効果素子710a、第2磁気抵抗効果素子710b、第3磁気抵抗効果素子710c、および第4磁気抵抗効果素子710dの磁気ヒステリシス特性に準じて、本図に示すような特性を有する。符号1410は、マイナーループを示し、符号1420はメジャーループを示す。
【0104】
本変形例に係るセンサ部300は、磁気リセットを行う前の状態において、クローズドループ制御下で磁場の測定を行うと、磁気センサ520が有する各磁気抵抗効果素子の磁気動作点がマイナーループ1410上の点1430にある状態で磁場を測定することとなる。しかしながら、磁気センサ520が有する各磁気抵抗効果素子は、磁性体の一般的な現象として、マイナーループ上で動作させた場合には、メジャーループ上で動作させた場合に比べて高い磁気感度(Binに対する電圧Vopenの変化率)を得ることができず、微弱な測定対象磁場を検出できなくなる。そこで、本変形例に係るセンサ部300を複数の磁気センサセル220のそれぞれが有する測定装置10において、測定対象磁場の検出前に、ノイズが大きく不良センサとして検出された磁気センサ520を磁気リセットする。
【0105】
図15は、複数の磁気センサセル220のそれぞれが本変形例に係るセンサ部300を有する場合における、磁気センサアレイ210、センサデータ収集部230、およびセンサデータ処理部900の構成を示す。本図においては、図9と同じ機能および構成を有する部材に対して同じ符号を付すとともに、以下相違点を除き説明を省略する。本変形例において、磁気センサアレイ210が有する複数の磁気センサセル220は、例えば、図11に示すセンサ部300を有する。すなわち、複数の磁気センサセル220が有するセンサ部300は、それぞれ、リセットフェーズにおいて、磁気センサ520を磁気リセット可能に構成される。また、本変形例において、センサデータ処理部900は、決定部1510および基底ベクトル更新部1520を更に備える。
【0106】
決定部1510は、誤差算出部950から供給された磁場の検出誤差εに基づいて、複数の磁気センサセル220のうちの少なくとも1つをリセットするか否かを決定する。より詳細には、決定部1510は、磁場の検出誤差εが予め定められた範囲を超えた計測値の取得に用いられた磁気センサ520を含む磁気センサセル220をリセットすると決定する。この場合、決定部1510は、検出誤差εが予め定められた範囲を超えた計測値の取得に用いられた磁気センサ520のみをリセットすると決定してもよいし、当該磁気センサ520を含む磁気センサセル220の全ての磁気センサ520をリセットすると決定してもよい。
【0107】
基底ベクトル更新部1520は、検出誤差εに基づいて基底ベクトルを更新する。そして、磁場算出部930は、検出誤差εが予め定められた範囲を超えた計測値の取得に用いられた磁気センサ520が磁気リセットされた後に、入力磁場を再算出する。この際、磁場算出部930は、基底ベクトル更新部1520によって更新された基底ベクトルを用いる。これについて、詳細に説明する。
【0108】
図16は、複数の磁気センサセル220のそれぞれが本変形例に係るセンサ部300を有する測定装置10が測定対象磁場を算出する前処理として不良センサをリセットするフローの一例を示す。ステップ1610において、測定装置10は、計測データを取得する。例えば、計測データ取得部910は、磁気センサアレイ210を構成する複数の磁気センサセル220内のセンサ部300x~zによって計測された入力磁場に基づく複数の計測値(計測データΦAll)を取得する。
【0109】
ステップ1620において、測定装置10は、入力磁場を算出する。本フローにおいては、計測データ選択部920は、複数の計測値の全てを計測データΦSelectとして選択するΦSelect=ΦAll)。そして、磁場算出部930は、計測データΦAllに基づいて、ステップ1020と同様の手法により、入力磁場を算出する。
【0110】
ステップ1630において、測定装置10は、検出誤差εを算出する。例えば、誤差算出部950は、ステップ1030と同様の手法により、検出誤差εを算出する。
【0111】
そして、ステップ1640において、測定装置10は、基底ベクトルを更新する。例えば、基底ベクトル更新部1520は、ステップ1630において算出された検出誤差εを最小にするように、最小2乗法を用いて、基底ベクトルを更新する。具体的には、例えば、最適化理論に基づいて(数13)により定義されるεを最小にするアルゴリズムなどを実行して、(数7)における較正係数行列Kを更新することによって基底ベクトルを更新する。なお、当該較正係数行列Kは、複数の磁気センサセル220のセンサ部300x、y、およびzにおける感磁軸方向と磁気感度を表すベクトルを含むものである。したがって、基底ベクトル更新部1520は、当該較正係数行列Kを更新することによって、各磁気センサセル220の磁気感度(主軸感度および他軸感度)の補正を行うことができる。
【0112】
ステップ1650において、測定装置10は、ステップ1640において更新された更新後の基底ベクトルを用いて入力磁場を算出する。例えば、磁場算出部930は、更新後の基底ベクトルを用いて、ステップ1020と同様の手法により、入力磁場を算出する。
【0113】
ステップ1660において、測定装置10は、検出誤差εを算出する。例えば、誤差算出部950は、ステップ1030と同様の手法により、検出誤差εを算出する。
【0114】
ステップ1670において、測定装置10は、検出誤差εの絶対値が最大(最大誤差)となる最大誤差センサを選択する。例えば、決定部1510は、誤差算出部950から供給された計測値毎の検出誤差εに基づいて、検出誤差εの絶対値が最大となる計測値を特定し、当該計測値の取得に用いられた磁気センサ520を最大誤差センサとして選択する。
【0115】
ステップ1680において、測定装置10は、最大誤差が予め定められた閾値以下であるか否かを判定する。例えば、決定部1510は、ステップ1670において選択された最大誤差センサにおける検出誤差εの絶対値が予め定められた閾値Max_E_Th以下であるか否かを判定してよい。
【0116】
ステップ1680において、最大誤差が予め定められた閾値以下であると判定した場合、測定装置10は不良センサをリセットするフローの処理を終了する。
【0117】
一方、ステップ1680において、最大誤差が予め定められた閾値を超えると判定した場合、ステップ1690において、決定部1510は、ステップ1670において最大誤差センサとして選択された磁気センサ520をリセットすると決定する。この場合、決定部1510は、検出誤差εが予め定められた範囲を超えた計測値の取得に用いられた磁気センサ520のみをリセットすると決定してもよいし、当該磁気センサ520を含む磁気センサセル220の全ての磁気センサ520をリセットすると決定してもよい。そして、決定部1510は、リセットすると決定した磁気センサ520を含む磁気センサセル220にリセットを指示する。リセットを指示された磁気センサセル220は、リセット対象の磁気センサ520を、図12のフローに従って、クローズドループ制御からオープンループに切り替えて、リセットフェーズに遷移させて磁気リセットする。
【0118】
ステップ1690において、検出誤差εが予め定められた範囲を超えた計測値の取得に用いられた磁気センサ520が磁気リセットされた後、処理をステップ1610に戻し、磁場算出部930は、新たに取得された計測データを用いて入力磁場を再算出する。測定装置10は、ステップ1680において、最大誤差が予め定められた閾値以下であると判定されるまで、当該処理を繰り返す。なお、この際、測定装置10は、磁気リセットを実行する磁気センサ以外の磁気センサについては、フィードバック電流を切らずに(クローズドループ制御下で)当該処理を繰り返す。
【0119】
このように、決定部1510は、誤差算出部950から供給された磁場の検出誤差εに基づいて、複数の磁気センサセル220のうちの少なくとも1つをリセットするか否かを決定する。より詳細には、決定部1510は、磁場の検出誤差εが予め定められた範囲を超えた計測値の取得に用いられた磁気センサ520を含む磁気センサセル220をリセットすると決定する。
【0120】
なお、上述の説明では、測定装置10が、検出誤差εが相対的に最も大きい1つの最大誤差センサを先に選択し、最大誤差が予め定められた閾値を超えると判定した場合に、当該最大誤差センサを磁気リセットすると場合を一例として説明した。しかしながら、これに限定されるものではない。測定装置10は、検出誤差εの絶対値が予め定められた閾値を超える1又は複数の磁気センサ520を磁気リセットしてもよい。
【0121】
また、予め定められた回数以上磁気リセットしても検出誤差εの絶対値が予め定められた閾値を下回らない場合には、当該計測値の取得に用いられた磁気センサ520を、測定対象磁場の検出に使用しないと決定して、処理を終了させてもよい。
【0122】
このように、測定装置10は、検出誤差εの絶対値が大きい計測値の取得に用いられた磁気センサ520を磁気リセットして、入力磁場を再検出する。検出誤差εの絶対値が大きい測定値の取得に用いられた磁気センサ520は、磁気履歴に起因して磁気感度が低下したり、ノイズが増大した不良センサであり得る。本変形例の測定装置10によれば、このような磁気感度が低下したり、ノイズが増大した不良センサを測定対象磁場の検出前に磁気リセットして磁気感度を高めるので、測定対象磁場の算出精度を高めることができる。
【0123】
なお、上述した本実施形態と、別の実施形態とは、それぞれ独立に機能させてもよいし、両実施形態を組み合わせて機能させてもよい。すなわち、例えば、測定対象磁場の検出前の前処理として、図16に係る不良センサをリセットするフローを実行した後に、図10に係る不良センサを除外するフローを実行してもよい。両実施形態を組み合わせることにより、測定対象磁場の検出精度をより高めることができる。
【0124】
また、上述した本実施形態においては、測定装置10が、検出誤差εの絶対値が大きい測定値iを除外したまま、入力磁場を算出する場合を一例として示した。しかしながら、これに限定されるものではない。
【0125】
例えば、磁場算出部930は、(数11)により磁場の空間分布を解くことにより、計測データ選択部920によって選択された複数の計測値に基づいて、当該複数の計測値が計測された箇所における入力磁場を再算出することができる。その場合、誤差算出部950は、再算出された当該複数の計測値が計測された箇所における入力磁場の検出結果に基づいて、検出誤差を算出してもよい。
【0126】
一例として、磁場算出部930は、(数11)により磁場の空間分布を解くことによって、入力磁場の算出結果に関わる係数、すなわち、(数11)における^Xinおよび^Xoutを用いて、信号空間分離演算から除外された計測値iを計測したセンサの座標(位置ベクトル=r、極座標で表示した座標=(r,θ,φ))における磁場ベクトルB(r)を、次式により表すことができる。
【数15】
【0127】
すなわち、磁場算出部930は、計測データ選択部920によって選択された複数の計測値から算出された入力磁場の算出結果に関わる係数に基づいて、除外された計測値iが計測された箇所における入力磁場を算出することができる。これにより、測定装置10は、不良センサにおける磁場を(数15)により再構成するので、不良センサの位置における計測値が欠落することによる磁場計測精度の低下を抑えることができる。したがって、測定装置10は、高精度な磁場検出を行うことができる。
【0128】
本発明の様々な実施形態は、フローチャートおよびブロック図を参照して記載されてよく、ここにおいてブロックは、(1)操作が実行されるプロセスの段階または(2)操作を実行する役割を持つ装置のセクションを表わしてよい。特定の段階およびセクションが、専用回路、コンピュータ可読媒体上に格納されるコンピュータ可読命令と共に供給されるプログラマブル回路、および/またはコンピュータ可読媒体上に格納されるコンピュータ可読命令と共に供給されるプロセッサによって実装されてよい。専用回路は、デジタルおよび/またはアナログハードウェア回路を含んでよく、集積回路(IC)および/またはディスクリート回路を含んでよい。プログラマブル回路は、論理AND、論理OR、論理XOR、論理NAND、論理NOR、および他の論理操作、フリップフロップ、レジスタ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プログラマブルロジックアレイ(PLA)等のようなメモリ要素等を含む、再構成可能なハードウェア回路を含んでよい。
【0129】
コンピュータ可読媒体は、適切なデバイスによって実行される命令を格納可能な任意の有形なデバイスを含んでよく、その結果、そこに格納される命令を有するコンピュータ可読媒体は、フローチャートまたはブロック図で指定された操作を実行するための手段を作成すべく実行され得る命令を含む、製品を備えることになる。コンピュータ可読媒体の例としては、電子記憶媒体、磁気記憶媒体、光記憶媒体、電磁記憶媒体、半導体記憶媒体等が含まれてよい。コンピュータ可読媒体のより具体的な例としては、フロッピー(登録商標)ディスク、ディスケット、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EPROMまたはフラッシュメモリ)、電気的消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EEPROM)、静的ランダムアクセスメモリ(SRAM)、コンパクトディスクリードオンリメモリ(CD-ROM)、デジタル多用途ディスク(DVD)、ブルーレイ(RTM)ディスク、メモリスティック、集積回路カード等が含まれてよい。
【0130】
コンピュータ可読命令は、アセンブラ命令、命令セットアーキテクチャ(ISA)命令、マシン命令、マシン依存命令、マイクロコード、ファームウェア命令、状態設定データ、またはSmalltalk、JAVA(登録商標)、C++等のようなオブジェクト指向プログラミング言語、および「C」プログラミング言語または同様のプログラミング言語のような従来の手続型プログラミング言語を含む、1または複数のプログラミング言語の任意の組み合わせで記述されたソースコードまたはオブジェクトコードのいずれかを含んでよい。
【0131】
コンピュータ可読命令は、汎用コンピュータ、特殊目的のコンピュータ、若しくは他のプログラム可能なデータ処理装置のプロセッサまたはプログラマブル回路に対し、ローカルにまたはローカルエリアネットワーク(LAN)、インターネット等のようなワイドエリアネットワーク(WAN)を介して提供され、フローチャートまたはブロック図で指定された操作を実行するための手段を作成すべく、コンピュータ可読命令を実行してよい。プロセッサの例としては、コンピュータプロセッサ、処理ユニット、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ等を含む。
【0132】
図17は、本発明の複数の態様が全体的または部分的に具現化されてよいコンピュータ2200の例を示す。コンピュータ2200にインストールされたプログラムは、コンピュータ2200に、本発明の実施形態に係る装置に関連付けられる操作または当該装置の1または複数のセクションとして機能させることができ、または当該操作または当該1または複数のセクションを実行させることができ、および/またはコンピュータ2200に、本発明の実施形態に係るプロセスまたは当該プロセスの段階を実行させることができる。そのようなプログラムは、コンピュータ2200に、本明細書に記載のフローチャートおよびブロック図のブロックのうちのいくつかまたはすべてに関連付けられた特定の操作を実行させるべく、CPU2212によって実行されてよい。
【0133】
本実施形態によるコンピュータ2200は、CPU2212、RAM2214、グラフィックコントローラ2216、およびディスプレイデバイス2218を含み、それらはホストコントローラ2210によって相互に接続されている。コンピュータ2200はまた、通信インターフェイス2222、ハードディスクドライブ2224、DVD-ROMドライブ2226、およびICカードドライブのような入/出力ユニットを含み、それらは入/出力コントローラ2220を介してホストコントローラ2210に接続されている。コンピュータはまた、ROM2230およびキーボード2242のようなレガシの入/出力ユニットを含み、それらは入/出力チップ2240を介して入/出力コントローラ2220に接続されている。
【0134】
CPU2212は、ROM2230およびRAM2214内に格納されたプログラムに従い動作し、それにより各ユニットを制御する。グラフィックコントローラ2216は、RAM2214内に提供されるフレームバッファ等またはそれ自体の中にCPU2212によって生成されたイメージデータを取得し、イメージデータがディスプレイデバイス2218上に表示されるようにする。
【0135】
通信インターフェイス2222は、ネットワークを介して他の電子デバイスと通信する。ハードディスクドライブ2224は、コンピュータ2200内のCPU2212によって使用されるプログラムおよびデータを格納する。DVD-ROMドライブ2226は、プログラムまたはデータをDVD-ROM2201から読み取り、ハードディスクドライブ2224にRAM2214を介してプログラムまたはデータを提供する。ICカードドライブは、プログラムおよびデータをICカードから読み取り、および/またはプログラムおよびデータをICカードに書き込む。
【0136】
ROM2230はその中に、アクティブ化時にコンピュータ2200によって実行されるブートプログラム等、および/またはコンピュータ2200のハードウェアに依存するプログラムを格納する。入/出力チップ2240はまた、様々な入/出力ユニットをパラレルポート、シリアルポート、キーボードポート、マウスポート等を介して、入/出力コントローラ2220に接続してよい。
【0137】
プログラムが、DVD-ROM2201またはICカードのようなコンピュータ可読媒体によって提供される。プログラムは、コンピュータ可読媒体から読み取られ、コンピュータ可読媒体の例でもあるハードディスクドライブ2224、RAM2214、またはROM2230にインストールされ、CPU2212によって実行される。これらのプログラム内に記述される情報処理は、コンピュータ2200に読み取られ、プログラムと、上記様々なタイプのハードウェアリソースとの間の連携をもたらす。装置または方法が、コンピュータ2200の使用に従い情報の操作または処理を実現することによって構成されてよい。
【0138】
例えば、通信がコンピュータ2200および外部デバイス間で実行される場合、CPU2212は、RAM2214にロードされた通信プログラムを実行し、通信プログラムに記述された処理に基づいて、通信インターフェイス2222に対し、通信処理を命令してよい。通信インターフェイス2222は、CPU2212の制御下、RAM2214、ハードディスクドライブ2224、DVD-ROM2201、またはICカードのような記録媒体内に提供される送信バッファ処理領域に格納された送信データを読み取り、読み取られた送信データをネットワークに送信し、またはネットワークから受信された受信データを記録媒体上に提供される受信バッファ処理領域等に書き込む。
【0139】
また、CPU2212は、ハードディスクドライブ2224、DVD-ROMドライブ2226(DVD-ROM2201)、ICカード等のような外部記録媒体に格納されたファイルまたはデータベースの全部または必要な部分がRAM2214に読み取られるようにし、RAM2214上のデータに対し様々なタイプの処理を実行してよい。CPU2212は次に、処理されたデータを外部記録媒体にライトバックする。
【0140】
様々なタイプのプログラム、データ、テーブル、およびデータベースのような様々なタイプの情報が記録媒体に格納され、情報処理を受けてよい。CPU2212は、RAM2214から読み取られたデータに対し、本開示の随所に記載され、プログラムの命令シーケンスによって指定される様々なタイプの操作、情報処理、条件判断、条件分岐、無条件分岐、情報の検索/置換等を含む、様々なタイプの処理を実行してよく、結果をRAM2214に対しライトバックする。また、CPU2212は、記録媒体内のファイル、データベース等における情報を検索してよい。例えば、各々が第2の属性の属性値に関連付けられた第1の属性の属性値を有する複数のエントリが記録媒体内に格納される場合、CPU2212は、第1の属性の属性値が指定される、条件に一致するエントリを当該複数のエントリの中から検索し、当該エントリ内に格納された第2の属性の属性値を読み取り、それにより予め定められた条件を満たす第1の属性に関連付けられた第2の属性の属性値を取得してよい。
【0141】
上で説明したプログラムまたはソフトウェアモジュールは、コンピュータ2200上またはコンピュータ2200近傍のコンピュータ可読媒体に格納されてよい。また、専用通信ネットワークまたはインターネットに接続されたサーバーシステム内に提供されるハードディスクまたはRAMのような記録媒体が、コンピュータ可読媒体として使用可能であり、それによりプログラムを、ネットワークを介してコンピュータ2200に提供する。
【0142】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0143】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0144】
10 測定装置
100 本体部
110 磁気センサユニット
120 ヘッド
130 ベース部
140 ポール部
150 情報処理部
210 磁気センサアレイ
220 磁気センサセル
230 センサデータ収集部
232 AD変換器
234 クロック発生器
300 センサ部
520 磁気センサ
530 磁場生成部
532 増幅回路
534 コイル
540 出力部
542 電流電圧変換抵抗
544 演算増幅器
710 磁気抵抗効果素子
720、730 磁気収束板
900 センサデータ処理部
910 計測データ取得部
920 計測データ選択部
930 磁場算出部
940 基底ベクトル記憶部
950 誤差算出部
1110 磁気リセット部
1120 リセット電流供給部
1130 切替部
1510 決定部
1520 基底ベクトル更新部
2200 コンピュータ
2201 DVD-ROM
2210 ホストコントローラ
2212 CPU
2214 RAM
2216 グラフィックコントローラ
2218 ディスプレイデバイス
2220 入/出力コントローラ
2222 通信インターフェイス
2224 ハードディスクドライブ
2226 DVD-ROMドライブ
2230 ROM
2240 入/出力チップ
2242 キーボード
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17