(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-12
(45)【発行日】2023-10-20
(54)【発明の名称】全固体リチウムイオン電池用ガーネット型固体電解質焼結体の製造方法及び全固体リチウムイオン電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0562 20100101AFI20231013BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20231013BHJP
H01M 10/058 20100101ALI20231013BHJP
H01B 1/06 20060101ALI20231013BHJP
H01B 1/08 20060101ALI20231013BHJP
H01B 13/00 20060101ALI20231013BHJP
C04B 35/50 20060101ALI20231013BHJP
【FI】
H01M10/0562
H01M10/052
H01M10/058
H01B1/06 A
H01B1/08
H01B13/00 Z
C04B35/50
(21)【出願番号】P 2020048181
(22)【出願日】2020-03-18
【審査請求日】2022-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】502362758
【氏名又は名称】JX金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山本 翔一
【審査官】小川 進
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-184848(JP,A)
【文献】特開2015-204215(JP,A)
【文献】特開2013-107779(JP,A)
【文献】特開2017-033926(JP,A)
【文献】特開2017-188441(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0562
H01M 10/052
H01M 10/058
H01B 1/06
H01B 1/08
H01B 13/00
C04B 35/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成式:Li
7-3x+αLa
3Zr
2Al
xO
12―yLi
3BO
3
(式中、0≦x<2、1.1<(7-3x+α)/(7-3x)≦1.5および0.3≦y≦2.0)
で表される全固体リチウムイオン電池用ガーネット型固体電解質焼結体の製造方法であって、
Li
2CO
3、La(OH)
3、La
2Zr
2O
7
を秤量し、さらに、全固体リチウムイオン電池用ガーネット型固体電解質焼結体の組成にAlを含ませる場合は、Al
2O
3を秤量し、溶媒とともに混合し、乾燥させることで原料混合粉を得る原料混合粉作製工程と、
前記原料混合粉を焼成することで組成式:Li
7-3x+αLa
3Zr
2Al
xO
12で表される仮焼粉を得る仮焼粉作製工程と、
前記仮焼粉を、平均粒径D50が1~10μmとなるように粉砕する粉砕工程と、
前記粉砕後の粉体に、焼結助剤であるホウ酸リチウムを添加する焼結助剤添加工程と、
前記焼結助剤添加後の固体電解質に対し、800℃以上1000℃未満で放電プラズマ焼結を行う焼結工程と、
を含む全固体リチウムイオン電池用ガーネット型固体電解質焼結体の製造方法。
【請求項2】
前記式中、0≦x<1および0.3≦y≦1.5である請求項1に記載の全固体リチウムイオン電池用ガーネット型固体電解質焼結体の製造方法。
【請求項3】
前記全固体リチウムイオン電池用ガーネット型固体電解質焼結体が、室温において1×10
-5S/cm以上のイオン伝導度を有する請求項1または2に記載の全固体リチウムイオン電池用ガーネット型固体電解質焼結体の製造方法。
【請求項4】
前記全固体リチウムイオン電池用ガーネット型固体電解質焼結体が、室温において5×10
-5S/cm以上のイオン伝導度を有する請求項3に記載の全固体リチウムイオン電池用ガーネット型固体電解質焼結体の製造方法。
【請求項5】
前記粉砕工程において、前記組成式:Li
7-3x+αLa
3Zr
2Al
xO
12で表される仮焼粉を、平均粒径D50が1~3μmとなるように粉砕する請求項1~4のいずれか一項に記載の全固体リチウムイオン電池用ガーネット型固体電解質焼結体の製造方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の全固体リチウムイオン電池用ガーネット型固体電解質焼結体の製造方法で作製した全固体リチウムイオン電池用ガーネット型固体電解質焼結体を用いて固体電解質層を形成し、
前記固体電解質層と、正極層及び負極層とを用いて全固体リチウムイオン電池を作製する全固体リチウムイオン電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全固体リチウムイオン電池用ガーネット型固体電解質焼結体の製造方法及び全固体リチウムイオン電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年におけるパソコン、ビデオカメラ、及び携帯電話等の情報関連機器や通信機器等の急速な普及に伴い、その電源として利用される電池の開発が重要視されている。該電池の中でも、エネルギー密度が高いという観点から、リチウムイオン電池が注目を浴びている。また、車載用等の動力源やロードレべリング用といった大型用途におけるリチウム二次電池についても、高エネルギー密度、電池特性向上が求められている。
【0003】
ただ、リチウムイオン電池の場合は、電解液は有機化合物が大半であり、たとえ難燃性の化合物を用いたとしても火災に至る危険性が全くなくなるとは言いきれない。こうした液系リチウムイオン電池の代替候補として、電解質を固体とした全固体リチウムイオン電池が近年注目を集めている。
【0004】
また、酸化物系固体電解質であるLi7LaZrO12(LLZO)は、Li金属に対する安定性や広い電位窓を持つことから、次世代の全固体電池用固体電解質として期待されている。また、AlやTaなど様々なドーパントを添加することで、酸化物リチウムイオン導電体としては非常に高いイオン伝導度を示すことが報告されている。
【0005】
このような技術として、特許文献1では、ガーネット型酸化物であるLLZOと、何種類かの焼結助剤とを組み合わせることで、従来の焼結温度より低温(850℃)でも緻密かつ高イオン伝導度(1.9×10-5S/cm)を示す焼結体が得られ、セルの作製に適したLLZO焼結体を提供することができると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
固体電解質が高いイオン伝導度を示すためには、製造工程において、高温(1000~1200℃)で焼結する必要がある。しかしながら、このような高温で焼結すると、焼結中のリチウム成分の揮発による焼結体組成の変動が生じるおそれがあり、このため、品質上の問題があった。また、正極活物質や負極活物質と一緒に固体電解質を焼結する際には、前述の温度では正極活物質や負極活物質と反応してしまうという問題があった。
【0008】
本発明の実施形態では、高温(1000~1200℃)での焼結を実施しなくとも、高いイオン伝導度を示すことが可能な全固体リチウムイオン電池用ガーネット型固体電解質焼結体の製造方法及び全固体リチウムイオン電池の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、種々の検討を行った結果、所定の組成式で示される固体電解質の仮焼粉を平均粒径D50が1~10μmとなるように粉砕し、当該粉砕後の固体電解質に800℃以上1000℃未満で放電プラズマ焼結を行うことにより、全固体リチウムイオン電池用ガーネット型固体電解質焼結体を製造することで、上述の課題が解決されることを見出した。
【0010】
上記知見を基礎にして完成した本発明は実施形態において、組成式:Li7-3x+αLa3Zr2AlxO12―yLi3BO3(式中、0≦x<2、1.1<(7-3x+α)/(7-3x)≦1.5および0.3≦y≦2.0)で表される全固体リチウムイオン電池用ガーネット型固体電解質焼結体の製造方法であって、組成式:Li7-3x+αLa3Zr2AlxO12で表される仮焼粉を、平均粒径D50が1~10μmとなるように粉砕する粉砕工程と、前記粉砕後の粉体に、焼結助剤であるホウ酸リチウムを添加する焼結助剤添加工程と、前記焼結助剤添加後の固体電解質に対し、800℃以上1000℃未満で放電プラズマ焼結を行う焼結工程と、を含む全固体リチウムイオン電池用ガーネット型固体電解質焼結体の製造方法である。
【0011】
本発明の全固体リチウムイオン電池用ガーネット型固体電解質焼結体の製造方法は別の実施形態において、前記式中、0≦x<1および0.3≦y≦1.5である。
【0012】
本発明の全固体リチウムイオン電池用ガーネット型固体電解質焼結体の製造方法は更に別の実施形態において、前記全固体リチウムイオン電池用ガーネット型固体電解質焼結体が、室温において1×10-5S/cm以上のイオン伝導度を有する。
【0013】
本発明の全固体リチウムイオン電池用ガーネット型固体電解質焼結体の製造方法は更に別の実施形態において、前記全固体リチウムイオン電池用ガーネット型固体電解質焼結体が、室温において5×10-5S/cm以上のイオン伝導度を有する。
【0014】
本発明の全固体リチウムイオン電池用ガーネット型固体電解質焼結体の製造方法は更に別の実施形態において、前記粉砕工程において、前記組成式:Li7-3x+αLa3Zr2AlxO12で表される仮焼粉を、平均粒径D50が1~3μmとなるように粉砕する。
【0015】
本発明は別の実施形態において、本発明の実施形態に係る全固体リチウムイオン電池用ガーネット型固体電解質焼結体の製造方法で作製した全固体リチウムイオン電池用ガーネット型固体電解質焼結体を用いて固体電解質層を形成し、前記固体電解質層と、正極層及び負極層とを用いて全固体リチウムイオン電池を作製する全固体リチウムイオン電池の製造方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、高温(1000~1200℃)での焼結を実施しなくとも、高いイオン伝導度を示すことが可能な全固体リチウムイオン電池用ガーネット型固体電解質焼結体の製造方法及び全固体リチウムイオン電池の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(全固体リチウムイオン電池用ガーネット型固体電解質焼結体の製造方法)
本発明の実施形態に係る全固体リチウムイオン電池用ガーネット型固体電解質焼結体は、組成式:Li7-3x+αLa3Zr2AlxO12―yLi3BO3(式中、0≦x<2、1.1<(7-3x+α)/(7-3x)≦1.5および0.3≦y≦2.0)で表される。全固体リチウムイオン電池用ガーネット型固体電解質焼結体が上記組成を有すると、常温にて立方晶となるため、常温にて高いイオン伝導度を有することができるという効果が得られる。また、本発明の実施形態に係る全固体リチウムイオン電池用ガーネット型固体電解質焼結体は、組成式:Li7-3x+αLa3Zr2AlxO12―yLi3BO3において、Liの定比である「Li7-3x」よりも「α」だけ過剰にLiを有しており、Li過剰となっている。そして、当該組成式:Li7-3x+αLa3Zr2AlxO12―yLi3BO3で表される全固体リチウムイオン電池用ガーネット型固体電解質焼結体において、Li過剰の程度を、1.1<(7-3x+α)/(7-3x)≦1.5に制御することで、正極活物質と共に焼成したときに反応物の生成が良好に抑制される。また、前記式中、0≦x<1であってもよい。また、Li3BO3の物質量比を示す「y」については、0.3≦y≦1.5であってもよい。
【0018】
本発明の実施形態に係る全固体リチウムイオン電池用ガーネット型固体電解質焼結体は、室温において1×10-5S/cm以上のイオン伝導度を有するのが好ましい。室温は、24~26℃の範囲である。本発明の実施形態に係る全固体リチウムイオン電池用ガーネット型固体電解質焼結体は、室温において5×10-5S/cm以上のイオン伝導度を有するのがより好ましく、1×10-4S/cm以上のイオン伝導度を有するのが更により好ましい。当該イオン伝導度の測定については、例えば、25℃設定の恒温槽中にてACインピーダンスアナライザーを用い、周波数が10MHz~50MHz、振幅電圧が100mVとなるような条件で、ナイキストプロットの円弧より抵抗値を求め、イオン伝導度を算出することができる。また、ACインピーダンスアナライザーで測定する際の電極にはLi電極を用いることができる。
【0019】
全固体リチウムイオン電池用ガーネット型固体電解質焼結体の製造方法としては、まず、組成式:Li7-3x+αLa3Zr2AlxO12で表される仮焼粉を準備する。当該仮焼粉は、例えば、組成式:Li7.5La3Zr2Al0.25O12で表される粉体を、900~1000℃で1~4時間、仮焼成することで作製することができる。
【0020】
次に、組成式:Li7-3x+αLa3Zr2AlxO12で表される仮焼粉を、平均粒径D50が1~10μmとなるように粉砕する。当該粉砕は、ジェットミルなどを用いて行うことができる。組成式:Li7-3x+αLa3Zr2AlxO12で表される仮焼粉を、平均粒径D50が1~10μmとなるように粉砕することで、界面エネルギー上昇に伴う焼結温度低温化の効果が生じ、高温(1000~1200℃)での焼結を実施しなくとも、高いイオン伝導度を示すことが可能な全固体リチウムイオン電池用ガーネット型固体電解質焼結体を製造することができる。このとき、仮焼粉の平均粒径D50が10μm超であると、焼結温度低温化の効果が十分得られないという問題が生じるおそれがある。
【0021】
また、組成式:Li7-3x+αLa3Zr2AlxO12で表される仮焼粉を、平均粒径D50が1~3μmとなるように粉砕するのがより好ましい。このような構成によれば、界面エネルギー上昇に伴う焼結温度がより低温化することで、高温(1000~1200℃)での焼結を実施しなくとも、高いイオン伝導度を示すことが可能な全固体リチウムイオン電池用ガーネット型固体電解質焼結体を製造することができる。
【0022】
次に、粉砕後の粉体に、焼結助剤であるホウ酸リチウムを添加する。ホウ酸リチウムは、粉砕後の粉体に対し、3.0~11.5質量%添加することができる。ここで、本発明の実施形態では、上述の通り、組成式:Li7-3x+αLa3Zr2AlxO12で表される仮焼粉を、平均粒径D50が1~10μmとなるように粉砕しておき、当該粉体に対して、焼結助剤であるホウ酸リチウムを添加している。このため、焼結助剤であるホウ酸リチウムが、小粒径化した仮焼粉と良好に混ざり合うことができる。このような構成によれば、界面エネルギー上昇に伴う焼結温度がより低温化することで、高温(1000~1200℃)での焼結を実施しなくとも、高いイオン伝導度を示すことが可能な全固体リチウムイオン電池用ガーネット型固体電解質焼結体を製造することができる。
【0023】
次に、焼結助剤添加後の固体電解質に対し、800℃以上1000℃未満で放電プラズマ焼結(SPS:Spark Plasma Sintering)を行う。ここで、放電プラズマ焼結は、機械的な加圧とパルス通電加熱とによって、焼結を行う加工法を示す。一般的な焼結に用いられる熱的および機械的エネルギーに加えて、パルス通電による電磁的エネルギーや焼成対象物の自己発熱および粒子間に発生する放電プラズマエネルギーなどを複合的に焼結の駆動力としている。このように、焼結助剤添加後の固体電解質に対し、放電プラズマ焼結を行うことで、焼結温度を低温(800℃以上1000℃未満)で行うことができる。これにより、本発明の実施形態に係る全固体リチウムイオン電池用ガーネット型固体電解質焼結体を作製することができる。
【0024】
上述の通り、本発明の実施形態に係る全固体リチウムイオン電池用ガーネット型固体電解質焼結体の製造方法では、以下の特徴を有している。
(1)Li仕込み量を定比より過剰にしたAl添加LLZOを作製する。
(2)Al添加LLZOを粉砕して小粒径化することで、界面エネルギーを上昇させる。
(3)粉砕したAl添加LLZOに焼結助剤であるホウ酸リチウムを添加する。
(4)Al添加LLZOを粉砕して小粒径化することで、Al添加LLZOと焼結助剤であるホウ酸リチウムとを良好に混ざり合わせる。
(5)放電プラズマ焼結によって焼結温度を低温化する。
これら全ての特徴が作用することにより、より低温でイオン伝導度が高い焼結体が得られるものと考えられる。
【0025】
(全固体リチウムイオン電池の製造方法)
本発明の実施形態に係る全固体リチウムイオン電池用ガーネット型固体電解質焼結体を用いて全固体リチウムイオン電池を作製することができる。例えば、本発明の実施形態に係る全固体リチウムイオン電池用ガーネット型固体電解質焼結体を金型中に入れ、所定の圧力で成形してペレットを作製し、当該ペレットを固体電解質層とし、これを用いて固体電解質層、正極層及び負極層を備えた全固体リチウムイオン電池を作製することができる。
【実施例】
【0026】
以下、本発明及びその利点をより良く理解するための実施例を提供するが、本発明はこれらの実施例に限られるものではない。
(実施例1)
原料であるLi2CO3、La(OH)3、La2Zr2O7、Al2O3を組成比Li7.5La3Zr2Al0.25O12となるように秤量し、溶媒であるエタノールとともにボールミルにて20時間混合し、乾燥させることで原料混合粉を得た。次に、この原料混合粉をマッフル炉にて1000℃で1時間焼成することでLi7.5La3Zr2Al0.25O12の仮焼粉を得た。さらに、この仮焼粉をジェットミルで平均粒径D50が2.5μmとなるまで粉砕し、小粒径化した仮焼粉を得た。次に、この小粒径化仮焼粉とLi3BO3をモル比1:1.36となるよう乳棒乳鉢を用いて15分間混合し、小粒径化仮焼粉と焼結助剤混合粉を得た。最後に、この混合粉を、SPS装置を用いて800℃、50MPa、5分間の条件で焼結し、焼結体を得た。
【0027】
(実施例2)
上記実施例1と同様の手順で小粒径化した仮焼粉を得た後、小粒径化仮焼粉とLi3BO3をモル比1:0.68となるよう乳棒乳鉢を用いて15分間混合し、小粒径化仮焼粉と焼結助剤混合粉を得た。最後に、この混合粉を、SPS装置を用いて900℃、50MPa、5分間の条件で焼結し、焼結体を得た。
【0028】
(実施例3)
上記実施例1と同様の手順で小粒径化仮焼粉と焼結助剤混合粉を得た後、この混合粉を、SPS装置を用いて900℃、50MPa、5分間の条件で焼結し、焼結体を得た。
【0029】
(実施例4)
上記実施例1と同様の手順で小粒径化した仮焼粉を得た後、小粒径化仮焼粉とLi3BO3をモル比1:0.34となるよう乳棒乳鉢を用いて15分間混合し、小粒径化仮焼粉と焼結助剤混合粉を得た。最後に、この混合粉を、SPS装置を用いて900℃、50MPa、5分間の条件で焼結し、焼結体を得た。
【0030】
(比較例1)
上記実施例1と同様の手順でLi7.5La3Zr2Al0.25O12の仮焼粉(平均粒径D50=60μm)を得た後、この仮焼粉をペレッターにて570MPaを印加し圧粉体とした。最後に、マッフル炉にて1000℃、8時間熱処理して焼結体を得た。
【0031】
(比較例2)
上記実施例1と同様の手順で小粒径化した仮焼粉を得た後、Li3BO3を添加せずにマッフル炉を用いて1000℃、8時間熱処理して焼結体を得た。
【0032】
(比較例3)
上記実施例1と同様の手順で小粒径化仮焼粉と焼結助剤混合粉を得た後、この混合粉をマッフル炉にて1000℃、8時間熱処理して焼結体を得た。
【0033】
(比較例4)
上記実施例1と同様の手順でLi7.5La3Zr2Al0.25O12の仮焼粉(平均粒径D50=60μm)を得た後、SPS装置を用いて1000℃、50MPa、5分間の条件で焼結し、焼結体を得た。
【0034】
(比較例5)
上記実施例1と同様の手順で小粒径化した仮焼粉を得た後、Li3BO3を添加せずにSPS装置を用いて800℃、50MPa、5分間の条件で焼結し、焼結体を得た。
【0035】
(比較例6)
原料であるLi2CO3、La(OH)3、La2Zr2O7、Al2O3を組成比Li6.25La3Zr2Al0.25O12となるように秤量し、溶媒であるエタノールとともにボールミルにて20時間混合し、乾燥させることで原料混合粉を得た。次に、この原料混合粉をマッフル炉にて1000℃で1時間焼成することでLi6.25La3Zr2Al0.25O12の仮焼粉(平均粒径D50=60μm)を得た。この仮焼粉をペレッターにて570MPaを印加し圧粉体とした。最後に、マッフル炉にて1200℃、8時間熱処理して焼結体を得た。
【0036】
(評価)
こうしてできた各実施例及び比較例のサンプルについて、ガーネット型の結晶構造であることをXRDにて確認した。また、下記の条件にてイオン伝導度の評価を実施した。
-イオン伝導度の評価-
各サンプルの伝導度は、25℃設定の恒温槽中にてACインピーダンスアナライザーを用い、周波数が10MHz~50MHz、振幅電圧が100mVとなるような条件で、ナイキストプロットの円弧より抵抗値を求め、伝導度を算出した。ACインピーダンスアナライザーで測定する際の電極にはLi電極を用いた。
評価条件及び結果を表1に示す。
【0037】
【0038】
(評価結果)
実施例1~4に係るサンプルは、いずれも、高温(1000~1200℃)での焼結を実施しなくとも、高いイオン伝導度を示した。
比較例1、2、5に係るサンプルは、いずれもイオン伝導度が低かった。
比較例3、4、6に係るサンプルは、いずれも1000℃または1200℃という高温で焼結することで、ようやく実施例と同程度のイオン伝導度が得られた。