(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-12
(45)【発行日】2023-10-20
(54)【発明の名称】ホイップクリーム
(51)【国際特許分類】
A23C 13/14 20060101AFI20231013BHJP
A23L 9/20 20160101ALI20231013BHJP
【FI】
A23C13/14
A23L9/20
(21)【出願番号】P 2020527388
(86)(22)【出願日】2019-06-13
(86)【国際出願番号】 JP2019023416
(87)【国際公開番号】W WO2020004052
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2022-05-26
(31)【優先権主張番号】P 2018122253
(32)【優先日】2018-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】302042678
【氏名又は名称】株式会社J-オイルミルズ
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】西脇 美香
(72)【発明者】
【氏名】美藤 武敏
(72)【発明者】
【氏名】村松 広志
(72)【発明者】
【氏名】長畑 雄也
(72)【発明者】
【氏名】今義 潤
【審査官】河島 拓未
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-193814(JP,A)
【文献】米国特許第05094872(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23C
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分(A)および(B):
(A)アミロース含量が45質量%以上であるとともに冷水膨潤度が3.5以上15以下である澱粉、および
(B)ゲル化剤
を含む、ホイップクリームであって、
当該ホイップクリーム中の前記成分(A)の含有量が、当該ホイップクリーム全体に対して0.05質量%以上5質量%以下であり、
当該ホイップクリーム中の前記成分(B)の含有量が、当該ホイップクリーム全体に対して0.05質量%以上2.8質量%以下であ
り、
前記成分(A)はα化澱粉を含むホイップクリーム。
【請求項2】
前記成分(A)の由来が、とうもろこしである、請求項1に記載のホイップクリーム。
【請求項3】
当該ホイップクリーム中の油脂含量が、当該ホイップクリーム全体に対して15質量%以上42質量%以下である、請求項1または2に記載のホイップクリーム。
【請求項4】
当該ホイップクリーム中の前記成分(B)の含有量に対する前記成分(A)の含有量が、質量比で0.08以上20以下である、請求項1乃至3いずれか1項に記載のホイップクリーム。
【請求項5】
前記成分(B)が、ゼラチン、寒天、ウェランガム、キサンタンガム、ローカストビーンガムおよびスクシノグリカンからなる群から選ばれる1種または2種以上である、請求項1乃至4いずれか1項に記載のホイップクリーム。
【請求項6】
前記ゼラチンのJIS K-6503で規定されるゼリー強度(g)が、80以上400以下である、請求項5に記載のホイップクリーム。
【請求項7】
請求項1乃至6いずれか1項に記載のホイップクリームを含む、食品。
【請求項8】
以下の成分(A)および(B):
(A)アミロース含量が45質量%以上であるとともに冷水膨潤度が3.5以上15以下である澱粉、および
(B)ゲル化剤
を含む、ホイップクリーム用クリームであって、
当該ホイップクリーム用クリーム中の前記成分(A)の含有量が、当該ホイップクリーム用クリーム全体に対して0.05質量%以上5質量%以下であり、当該ホイップクリーム用クリーム中の前記成分(B)の含有量が、当該ホイップクリーム用クリーム全体に対して0.05質量%以上2.8質量%以下であ
り、
前記成分(A)はα化澱粉を含む前記クリーム。
【請求項9】
以下の成分(A)および(B):
(A)アミロース含量が45質量%以上であるとともに冷水膨潤度が3.5以上15以下である澱粉、
(B)ゲル化剤、
を含
み、
前記成分(A)はα化澱粉を含む、
ホイップクリーム用組成物。
【請求項10】
当該組成物中、前記成分(B)の含有量に対する前記成分(A)の含有量が、質量比で0.08以上20以下である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
当該組成物全体に対する前記成分(A)の含有量と前記成分(B)の含有量の合計が、80質量%以上100質量%以下である、請求項9または10に記載の組成物。
【請求項12】
以下の成分(A)および(B):
(A)アミロース含量が45質量%以上であるとともに冷水膨潤度が3.5以上15以下である澱粉、
(B)ゲル化剤、
をクリームに添加し、ホイップクリーム用クリームを得る工程(1)と、前記工程(1)で得られたホイップクリーム用クリームを撹拌し、ホイップクリームを得る工程(2)と、を含むホイップクリームの製造方法であって、
前記工程(1)における前記成分(A)の添加量が、前記ホイップクリーム全体に対して0.05質量%以上5質量%以下であり、前記成分(B)の添加量が、前記ホイップクリーム全体に対して0.05質量%以上2.8質量%以下であ
り、前記成分(A)はα化澱粉を含む、
前記製造方法。
【請求項13】
前記工程(1)が、以下の工程を含む、請求項12に記載の製造方法。
(工程1-1)液体成分に前記成分(B)を溶解して、溶解液を得る工程
(工程1-2)前記溶解液を前記クリームに混合する工程
【請求項14】
ゲル化剤を含むホイップクリームの口どけを向上させる方法であって、
アミロース含量が45質量%以上であるとともに冷水膨潤度が3.5以上15以下であ
り、かつ、α化澱粉を含む澱粉を、前記ホイップクリームに含有させる、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホイップクリームに関する。
【背景技術】
【0002】
ホイップクリームは、ケーキやプリン等の洋菓子のトッピングに広く使用されている。ホイップクリームには、生乳、牛乳等の乳由来の動物性油脂のクリームを用いた動物性ホイップクリームと、乳脂肪以外の植物性油脂のクリームを用いた植物性ホイップクリームと、さらに、動物性油脂と植物性油脂のクリームを用いたコンパウンド型ホイップクリームがある。
【0003】
近年、食生活の多様化や健康指向の高まりから、ホイップクリームにおいてもさっぱりした口あたりや低カロリー化などのために油分を低減させる傾向にある。通常、ホイップ用クリームは、油分を40~50%程度含んでおり、油分が全体に対して35%以上程度ないとホイップするのに長時間を要し、ホイップできたとしてもやわらかすぎて、物足りない食感のクリームとなってしまう。
【0004】
さらに、これら脂肪分が35%未満のホイップクリームは、保存中にいわゆる「ダレ」という現象が生じ、そのため、例えば、ホイップクリームのデコレーションの形状を維持できなくなるといった課題があった。また、時間の経過に伴い水分が分離する「離水」が起き、ケーキのスポンジ部分やプリン等に水分が移行し、食味を低下させるという課題もあった。
【0005】
この点、ホイップクリームの保形性向上および離水防止に関する技術として、特許文献1~3に記載のものがある。
特許文献1(特開2005-278482号公報)には、こんにゃく粉、糖質及び澱粉を合わせて調製した乾燥こんにゃく加工品、及びゼラチンを含むホイップクリーム用安定剤について記載されている。そして、同文献によれば、ホイップクリームに安定剤として、こんにゃく粉、糖質及び澱粉を合わせて調製した乾燥こんにゃく加工品、及びゼラチンを併用することにより、冷蔵保存後や凍結解凍後における離水が有意に抑制され、また、ダレが防止されデコレーションした時の保型性も良好なホイップクリームができるとされている。
【0006】
特許文献2(特開平7-23711号公報)には、特定の油脂、カゼイン類および増粘多糖類を含有し、油分含量が40%以下である低油分クリームに関する技術が記載されており、かかる低油分クリームは、低油分であるにもかかわらず、ホイップ物性に優れ、適度なオーバーランを得ることができ、また、造花性、保型性、乳化安定性などが良好であり、かつ風味、口溶けも極めて良いとされている。
【0007】
また、特許文献3(特開2011-152082号公報)には、ホイップクリームが特定の酸化防止効果のある物質、特定量のゼラチンおよび油脂を含む構成とすることにより、油脂を含む原料液をホイップした後、これに特定の酸化防止効果のある物質およびゼラチンが溶解した溶液を加えることによって、ホイップクリームの酸化による風味劣化防止の効果がより向上するようになるばかりか、高いオーバーランを確保でき、かつひび割れや離水等が抑制され、組織が均一となり、保型性をも維持できるようになるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2005-278482号公報
【文献】特開平7-23711号公報
【文献】特開2011-152082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、本発明者らが検討したところ、上述の特許文献1~3に記載の技術においては、保形性、口溶け、気泡感、離水およびなめらかな外観に優れるホイップクリームを得るという点で改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、
以下の成分(A)および(B):
(A)アミロース含量が45質量%以上であるとともに冷水膨潤度が3.5以上15以下である澱粉、および
(B)ゲル化剤
を含む、ホイップクリームであって、
当該ホイップクリーム中の前記成分(A)の含有量が、当該ホイップクリーム全体に対して0.05質量%以上5質量%以下であり、
当該ホイップクリーム中の前記成分(B)の含有量が、当該ホイップクリーム全体に対して0.05質量%以上2.8質量%以下である、ホイップクリームが提供される。
【0011】
前記成分(A)の由来が、とうもろこしであることが好ましい。
【0012】
当該ホイップクリーム中の油脂含量が、当該ホイップクリーム全体に対して15質量%以上42質量%以下であることが好ましい。
【0013】
当該ホイップクリーム中の前記成分(B)の含有量に対する前記成分(A)の含有量が、質量比で0.08以上20以下であることが好ましい。
【0014】
前記成分(B)が、ゼラチン、寒天、ウェランガム、キサンタンガム、ローカストビーンガムおよびスクシノグリカンからなる群から選ばれる1種または2種以上であることが好ましい。
【0015】
前記ゼラチンのJIS K-6503で規定されるゼリー強度(g)が、80以上400以下であることが好ましい。
【0016】
また、本発明によれば、前記本発明におけるホイップクリームを含む、食品が提供される。
【0017】
本発明によれば、
以下の成分(A)および(B):
(A)アミロース含量が45質量%以上であるとともに冷水膨潤度が3.5以上15以下である澱粉、および
(B)ゲル化剤
を含む、ホイップクリーム用クリームであって、
当該ホイップクリーム用クリーム中の前記成分(A)の含有量が、当該ホイップクリーム用クリーム全体に対して0.05質量%以上5質量%以下であり、当該ホイップクリーム用クリーム中の前記成分(B)の含有量が、当該ホイップクリーム用クリーム全体に対して0.05質量%以上2.8質量%以下である、前記クリームが提供される。
【0018】
本発明によれば、
以下の成分(A)および(B):
(A)アミロース含量が45質量%以上であるとともに冷水膨潤度が3.5以上15以下である澱粉、
(B)ゲル化剤、
を含む、
ホイップクリーム用組成物が提供される。
【0019】
当該組成物中、前記成分(B)の含有量に対する前記成分(A)の含有量が、質量比で0.08以上20以下であることが好ましい。
【0020】
当該組成物全体に対する前記成分(A)の含有量と前記成分(B)の含有量の合計が、80質量%以上100質量%以下であることが好ましい。
【0021】
本発明によれば、
以下の成分(A)および(B):
(A)アミロース含量が45質量%以上であるとともに冷水膨潤度が3.5以上15以下である澱粉、
(B)ゲル化剤、
をクリームに添加し、ホイップクリーム用クリームを得る工程(1)と、前記工程(1)で得られたホイップクリーム用クリームを撹拌し、ホイップクリームを得る工程(2)と、を含むホイップクリームの製造方法であって、
前記工程(1)における前記成分(A)の添加量が、前記ホイップクリーム全体に対して0.05質量%以上5質量%以下であり、前記成分(B)の添加量が、前記ホイップクリーム全体に対して0.05質量%以上2.8質量%以下である、前記製造方法が提供される。
【0022】
また、前記工程(1)が、以下の工程を含むことが好ましい。
(工程1-1)液体成分に前記成分(B)を溶解して、溶解液を得る工程
(工程1-2)前記溶解液を前記クリームに混合する工程
【0023】
また、本発明によれば、
ゲル化剤を含むホイップクリームの口どけを向上させる方法であって、
アミロース含量が45質量%以上であるとともに冷水膨潤度が3.5以上15以下である澱粉を、前記ホイップクリームに含有させる、前記方法が提供される。
【0024】
なお、これらの各構成の任意の組み合わせや、本発明の表現を方法、装置などの間で変換したものもまた本発明の態様として有効である。
たとえば、本発明によれば、前記本発明における製造方法により得られるホイップクリームおよびこれを用いる食品が提供される。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、保形性、口溶け、気泡感、離水およびなめらかな外観に優れるホイップクリームを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
上述した目的、およびその他の目的、特徴および利点は、以下に述べる好適な実施の形態、およびそれに付随する以下の図面によってさらに明らかになる。
【0027】
【
図1】実施例におけるホイップクリームの製造手順を説明する図である。
【
図2】実施例におけるホイップクリームの製造手順を説明する図である。
【
図3】実施例におけるホイップクリームの製造手順を説明する図である。
【
図4】実施例におけるホイップクリームの製造手順を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について、具体例を挙げて説明する。なお、各成分はいずれも単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0029】
(ホイップクリーム)
本実施形態において、ホイップクリームは、クリームを撹拌し、ホイップをすることにより得られる。また、本実施形態におけるホイップクリームは、以下の成分(A)および(B)を含む。
(A)アミロース含量が45質量%以上であるとともに冷水膨潤度が3.5以上15以下である澱粉
(B)ゲル化剤
そして、ホイップクリーム中の成分(A)の含有量が、ホイップクリーム全体に対して0.05質量%以上5質量%以下であり、ホイップクリーム中の成分(B)の含有量が、ホイップクリーム全体に対して0.05質量%以上2.8質量%以下である。
以下、成分(A)および(B)ならびにクリームについて説明する。
【0030】
(成分(A))
成分(A)は、アミロース含量および冷水膨潤度がそれぞれ特定の範囲にある澱粉である。
成分(A)のアミロース含量は、ホイップクリームの気泡感や口どけを十分に向上させる観点から、45質量%以上であり、好ましくは48質量%以上である。
また、成分(A)のアミロース含量の上限に制限はなく、100質量%以下であるが、口どけを向上させる観点から、好ましくは75質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは65質量%以下、さらにより好ましくは60質量%以下、殊更好ましくは55質量%以下である。
【0031】
アミロース含量が45質量%以上である澱粉の由来は、とうもろこし、馬鈴薯、米、小麦、甘藷、タピオカなど問わないが、容易に入手できるという観点からは、好ましくはとうもろこしである。とうもろこし由来の澱粉の具体例として、ハイアミロースコーンスターチが挙げられる。ハイアミロースコーンスターチは、育種によりアミロース含量を高めたとうもろこしを由来とするコーンスターチである。
【0032】
また、成分(A)の冷水膨潤度は、ホイップクリームの気泡感および口どけを向上させる観点から、3.5以上であり、好ましくは3.8以上、より好ましくは4.5以上、さらに好ましくは5.0以上である。
また、ホイップクリームの外観の好ましさおよび保形性を向上させる観点から、成分(A)の冷水膨潤度は15以下であり、好ましくは12以下、より好ましくは10以下、さらに好ましくは8以下である。
上記冷水膨潤度を示す成分(A)の具体例として、未加工の澱粉をα化処理してなるα化澱粉が挙げられる。また、成分(A)は、保形性および口溶けに優れ、なめらかな外観のホイップクリームを得る観点から、好ましくはα化ハイアミロースコーンスターチである。
【0033】
ここで、α化処理の方法としては、ジェットクッカー処理、ドラムドライヤー処理、エクストルーダー処理等が挙げられる。
また、α化澱粉のα化度の指標としては、上述した冷水膨潤度を用いることができる。冷水膨潤度の測定方法については実施例の項で後述する。
【0034】
ホイップクリーム中の成分(A)の含有量は、ホイップクリームの保形性、気泡感および口どけを向上させる観点および離水を抑制する観点から、ホイップクリーム全体に対して0.05質量%以上であり、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上、さらにより好ましくは1質量%以上、殊更好ましくは1.5質量%以上である。
また、好ましい外観を得る観点から、ホイップクリーム中の成分(A)の含有量は、ホイップクリーム全体に対して5質量%以下であり、好ましくは4質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下である。
【0035】
(成分(B))
成分(B)は、ゲル化剤である。ゲル化剤としては、ゼラチンなどのポリペプチド;寒天、ペクチン、カラギナン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、タマリンド種子多糖類、タラガム、グァーガム、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、プルラン、大豆多糖類、トラガントガム、カラヤガム、アラビアガム、カードラン、ラムザンガム、ウェランガム、サイリウムシードガム、マクロホモプシスガム、スクシノグリカンなどの多糖類等が挙げられ、好ましくはゼラチン、寒天、ウェランガム、キサンタンガム、ローカストビーンガムおよびスクシノグリカンからなる群から選ばれる1種または2種以上であり、より好ましくはゼラチンおよび寒天からなる群から選ばれる1種または2種以上であり、さらに好ましくはゼラチンである。
ゼラチンは、コラーゲンの加水分解物である。ゼラチンの由来として、豚、牛等の家畜の皮、骨等の部位;鶏等の家禽の皮、骨等の部位;魚の鱗、皮等の部位が挙げられる。また、コラーゲンの加水分解前の処理方法による分類として、酸処理ゼラチン、アルカリ処理ゼラチンが挙げられ、これらのいずれを用いてもよい。
【0036】
成分(B)がゼラチンを含むとき、JIS K-6503で測定されるゼラチンのゼリー強度は、ホイップクリームの保形性を向上させる観点から、好ましくは80g以上であり、より好ましくは100g以上、さらに好ましくは120g以上、さらにより好ましくは140g以上である。
また、ホイップクリームの口溶けおよび外観のなめらかさを向上させる観点から、ゼラチンの上記ゼリー強度は、好ましくは400g以下であり、より好ましくは350g以下、さらにより好ましくは280g以下、殊更好ましくは250g以下である。
【0037】
ホイップクリーム中の成分(B)の含有量は、ホイップクリームの外観のなめらかさを高める観点および離水を抑制する観点から、ホイップクリーム全体に対して0.05質量%以上であり、好ましくは0.10質量%以上、より好ましくは0.15質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上、さらにより好ましくは0.4質量%以上である。
また、ホイップクリームの気泡感および口溶けを向上させる観点から、ホイップクリーム中の成分(B)の含有量は、ホイップクリーム全体に対して2.8質量%以下であり、好ましくは2.5質量%以下、より好ましくは2.0質量%以下、さらに好ましくは1.5質量%以下、さらにより好ましくは1.2質量%以下、殊更好ましくは1.0質量%以下である。
【0038】
ホイップクリーム中の成分(B)の含有量に対する成分(A)の含有量の質量比すなわち、質量比((A)/(B))は、ホイップクリームの気泡感を向上させる観点から、好ましくは0.08以上であり、より好ましくは0.15以上、さらに好ましくは0.30以上、さらにより好ましくは0.4以上であり、殊更好ましくは1.0以上、とりわけ好ましくは1.5以上である。
また、外観を好ましいものとする観点から、上記質量比((A)/(B))は、好ましくは20以下であり、より好ましくは10以下、さらに好ましくは6以下、さらにより好ましくは4以下、殊更好ましくは3以下である。
【0039】
(クリーム)
次に、ホイップクリームの基剤として用いられるクリームについて説明する。
クリームの具体例として、生乳・牛乳等の乳由来の動物性脂肪を用いた動物性クリーム(動物性生クリーム、生クリームともいう。)と、乳脂肪以外の植物性脂肪を用いた植物性クリーム(植物性ホイップ、ホイップともいう。)が挙げられる。また、動物性脂肪と植物性脂肪を用いたコンパウンドタイプクリームもある。本実施形態において、これらのいずれを用いてもよい。
【0040】
ホイップクリーム中の油脂含量は、ホイップクリームの保形性を向上させる観点から、ホイップクリーム全体に対して好ましくは15質量%以上であり、より好ましくは20質量%以上である。
また、さっぱりした食味の観点から、ホイップクリーム中の油脂含量は、ホイップクリーム全体に対して好ましくは42質量%以下であり、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは25質量%以下である。
【0041】
また、ホイップクリームは、上述した成分(A)および(B)以外の成分を含んでもよい。成分(A)および(B)以外の成分として、無脂肪乳等の乳製品、甘味料、乳化剤、安定剤、香料、保存料、酸化防止剤、ビタミン、ミネラル等が挙げられる。
このうち、甘味料としては、砂糖、果糖、ブドウ糖、水飴、還元水飴、はちみつ、異性化糖、転化糖、オリゴ糖(イソマルトオリゴ糖、還元キシロオリゴ糖、大豆オリゴ糖等)、トレハロース、糖アルコール(マルチトール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、ラクチトール等)、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、アドバンテーム、スクラロース、アリテーム、ネオテーム、サッカリン、ステビア抽出物等が挙げられる。
ホイップクリーム中の甘味料の含有量は、味質に違和感を与えない観点から、ホイップクリーム全体に対してたとえば0.1質量%以上であり、好ましくは2質量%以上であり、また、たとえば30質量%以下であり、好ましくは20質量%以下である。
【0042】
次に、ホイップクリームの製造方法を説明する。
ホイップクリームの製造方法は、たとえば以下の工程を含む。
工程(1):クリームに成分(A)および(B)を添加して、ホイップクリーム用クリームを得る工程。
工程(2):工程(1)で得られたホイップクリーム用クリームを撹拌し、ホイップクリームを得る工程。
そして、工程(1)における成分(A)の添加量が、ホイップクリーム全体に対して0.05質量%以上5質量%以下であり、成分(B)の添加量が、ホイップクリーム全体に対して0.05質量%以上2.8質量%以下である。
【0043】
工程(1)は、外観をなめらかにする観点から、以下の工程を含むことが好ましい。
工程(1-1):液体成分に成分(B)を添加し、溶解液を得る工程。
工程(1-2):溶解液をクリームに混合する工程。
ここで、工程(1-1)で溶解液を得る工程においては、成分(B)の種類に応じて液体成分を加熱してもよい。液体成分を加熱した場合、工程(1-2)の前に溶解液を20℃程度まで冷却することが好ましい。
成分(A)は、工程(1-1)で成分(B)と共に加えてもよいし、工程(1-2)のクリームにあらかじめ加えてもよく、工程(1-2)の後に加えてもよい。
ここで、工程(1-1)における液体成分としては、クリーム、牛乳、低脂肪乳、無脂肪乳、水、液糖、豆乳等が挙げられ、好ましくは脂肪分が5質量%以下の液体である。
また、工程(1-2)におけるクリームが、ホイップされたクリームであることが好ましい。
【0044】
また、工程(1-1)で成分(B)を添加する場合、成分(B)をあらかじめ水に添加して溶解した後、水以外の液体成分と混ぜ、溶解液を得てもよい。またさらに、成分(B)をあらかじめ水に添加し加熱後、水以外の液体成分と混ぜてもよい。成分(B)が寒天を含む場合、あらかじめ寒天を水に添加し加熱後、水以外の液体成分と混ぜることが好ましい。
【0045】
また、工程(1)においては、成分(A)および(B)を一括添加してもよい。一括添加する場合、上述した成分(A)および(B)を含むホイップクリーム用組成物を準備する工程、および、かかる組成物をクリームに添加する工程を含んでもよい。
工程(1-1)で成分(A)を添加する場合、上記組成物として液体成分に添加してもよい。
【0046】
なお、ホイップクリーム用組成物およびホイップクリーム用クリームについては後述する。
【0047】
本実施形態において得られるホイップクリームは、そのまま食すこともできるが、他の飲食品と組み合わせることもできる。そのような飲食品の例として、クッキー、ビスケット、ケーキ、スポンジケーキ、カステラ、パンケーキ、クレープ、プリン、チョコレート、ゼリー、ロールケーキ、シュークリーム等の洋菓子;大福、どら焼き等の和菓子;パフェ;サンドイッチ、菓子パン等のパン類;コーヒー、メロンソーダ等の飲料などが挙げられる。
また、本実施形態における食品は、本実施形態において得られるホイップクリームを含む。
【0048】
(ホイップクリーム用組成物)
本実施形態において、ホイップクリーム用組成物は、上述した成分(A)および(B)を含む。成分(A)および(B)の具体例については、ホイップクリームについて前述のとおりである。
また、ホイップクリーム用組成物中の質量比((A)/(B))は、好ましくはホイップクリームについて前述した範囲である。
【0049】
ホイップクリーム用組成物中、成分(A)の含有量と成分(B)の含有量の合計は、保形性向上、口溶け向上およびなめらかな外観を得る効果を十分に発揮させる観点から、ホイップクリーム用組成物全体に対して好ましくは80質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上であり、さらにより好ましくは100質量%である。同様の観点から、ホイップクリーム用組成物中、成分(A)の含有量と成分(B)の含有量の合計は、ホイップクリーム用組成物全体に対してたとえば20質量%以上であってよい。
また、成分(A)の含有量と成分(B)の含有量の合計は、ホイップクリーム用組成物全体に対して100質量%以下である。
【0050】
(ホイップクリーム用クリーム)
本実施形態において、ホイップクリーム用クリームは、成分(A)および(B)を含み、成分(A)の含有量が、ホイップクリーム用クリーム全体に対して0.05質量%以上5質量%以下であり、成分(B)の含有量が、ホイップクリーム用クリーム全体に対して0.05質量%以上2.8質量%以下である。
成分(A)および(B)ならびにクリームの具体例については、ホイップクリームについて前述のとおりである。
また、ホイップクリーム用クリーム中の各成分の含有量および質量比((A)/(B))は、好ましくはホイップクリームについて前述した範囲である。
【0051】
本実施形態においては、ホイップクリームが成分(A)および(B)をそれぞれ特定量含む構成とすることにより、保形性、口溶け、気泡感、離水およびなめらかな外観に優れる。また、これらの効果は、得られたホイップクリームの、冷蔵および冷凍からなる群から選ばれる1または2の保存後において得ることもできる。ここで、冷蔵とはたとえば0℃超10℃以下であり、好ましくは0℃超8℃以下である。また、冷凍とはたとえば-50℃以上0℃以下であり、好ましくは-35℃以上-5℃以下である。また、本実施形態によれば、たとえば、油脂含量が好ましくは42質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは25質量%以下の低脂肪のクリームの場合にも、外観の好ましさ、保形性、気泡感、口どけに優れるとともに離水が抑制されるホイップクリームを得ることが可能となる。
また、本実施形態において、ゲル化剤を含むホイップクリームの口どけを向上させる方法は、たとえば、アミロース含量が45質量%以上であるとともに冷水膨潤度が3.5以上15以下である澱粉を、ホイップクリームに含有させることを含む。
以下、参考形態の例を付記する。
[1]
以下の成分(A)および(B):
(A)アミロース含量が45質量%以上であるとともに冷水膨潤度が3.5以上15以下である澱粉、および
(B)ゲル化剤
を含む、ホイップクリームであって、
当該ホイップクリーム中の前記成分(A)の含有量が、当該ホイップクリーム全体に対して0.05質量%以上5質量%以下であり、
当該ホイップクリーム中の前記成分(B)の含有量が、当該ホイップクリーム全体に対して0.05質量%以上2.8質量%以下である、ホイップクリーム。
[2]
前記成分(A)の由来が、とうもろこしである、[1]に記載のホイップクリーム。
[3]
当該ホイップクリーム中の油脂含量が、当該ホイップクリーム全体に対して15質量%以上42質量%以下である、[1]または[2]に記載のホイップクリーム。
[4]
当該ホイップクリーム中の前記成分(B)の含有量に対する前記成分(A)の含有量が、質量比で0.08以上20以下である、[1]乃至[3]いずれか1つに記載のホイップクリーム。
[5]
前記成分(B)が、ゼラチン、寒天、ウェランガム、キサンタンガム、ローカストビーンガムおよびスクシノグリカンからなる群から選ばれる1種または2種以上である、[1]乃至[4]いずれか1つに記載のホイップクリーム。
[6]
前記ゼラチンのJIS K-6503で規定されるゼリー強度(g)が、80以上400以下である、[5]に記載のホイップクリーム。
[7]
[1]乃至[6]いずれか1つに記載のホイップクリームを含む、食品。
[8]
以下の成分(A)および(B):
(A)アミロース含量が45質量%以上であるとともに冷水膨潤度が3.5以上15以下である澱粉、および
(B)ゲル化剤
を含む、ホイップクリーム用クリームであって、
当該ホイップクリーム用クリーム中の前記成分(A)の含有量が、当該ホイップクリーム用クリーム全体に対して0.05質量%以上5質量%以下であり、当該ホイップクリーム用クリーム中の前記成分(B)の含有量が、当該ホイップクリーム用クリーム全体に対して0.05質量%以上2.8質量%以下である、前記クリーム。
[9]
以下の成分(A)および(B):
(A)アミロース含量が45質量%以上であるとともに冷水膨潤度が3.5以上15以下である澱粉、
(B)ゲル化剤、
を含む、
ホイップクリーム用組成物。
[10]
当該組成物中、前記成分(B)の含有量に対する前記成分(A)の含有量が、質量比で0.08以上20以下である、[9]に記載の組成物。
[11]
当該組成物全体に対する前記成分(A)の含有量と前記成分(B)の含有量の合計が、80質量%以上100質量%以下である、[9]または[10]に記載の組成物。
[12]
以下の成分(A)および(B):
(A)アミロース含量が45質量%以上であるとともに冷水膨潤度が3.5以上15以下である澱粉、
(B)ゲル化剤、
をクリームに添加し、ホイップクリーム用クリームを得る工程(1)と、前記工程(1)で得られたホイップクリーム用クリームを撹拌し、ホイップクリームを得る工程(2)と、を含むホイップクリームの製造方法であって、
前記工程(1)における前記成分(A)の添加量が、前記ホイップクリーム全体に対して0.05質量%以上5質量%以下であり、前記成分(B)の添加量が、前記ホイップクリーム全体に対して0.05質量%以上2.8質量%以下である、前記製造方法。
[13]
前記工程(1)が、以下の工程を含む、[12]に記載の製造方法。
(工程1-1)液体成分に前記成分(B)を溶解して、溶解液を得る工程
(工程1-2)前記溶解液を前記クリームに混合する工程
[14]
ゲル化剤を含むホイップクリームの口どけを向上させる方法であって、
アミロース含量が45質量%以上であるとともに冷水膨潤度が3.5以上15以下である澱粉を、前記ホイップクリームに含有させる、前記方法。
【実施例】
【0052】
以下に、本発明の実施例を示すが、本発明の主旨はこれらに限定されるものではない。
まず、以下の例で用いた原料を示す。
(澱粉)
α化ハイアミロースコーンスターチ1:ジェルコールAH-F、株式会社J-オイルミルズ製、アミロース含量50%、冷水膨潤度6.5
α化ハイアミロースコーンスターチ2:製造例1で得られたもの、アミロース含量70質量%、冷水膨潤度4.9
α化リン酸架橋馬鈴薯澱粉:ベイクアップB-α、株式会社J-オイルミルズ社製、アミロース含量21質量%、冷水膨潤度23
ハイアミロースコーンスターチ:HS-7、株式会社J-オイルミルズ社製、アミロース含量70質量%、冷水膨潤度2.9
その他の澱粉:アミロファイバーSH、株式会社J-オイルミルズ社製、冷水膨潤度3.0
(ゲル化剤)
(ゼラチン)
ゼラチン1:ゼリエースC-160(野洲化学工業株式会社製、ゼリー強度150g)
ゼラチン2:ゼリエースP-240(野洲化学工業株式会社製、ゼリー強度230g)
ゼラチン3:ゼリエースC-300(野洲化学工業株式会社製、ゼリー強度275g)
(多糖類)
寒天:かんてんぱぱ かんてんクック(伊那食品工業株式会社製)
スクシノグリカン:サクシノグリカンJ(DSP五協フード&ケミカル株式会社製)
ウェランガム:ビストップW(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)
キサンタンガム:キサンタンガムFJ(丸善薬品産業株式会社製)
ローカストビーンガム:GRINDSTED LBG 860(三晶株式会社製)
(クリーム、無脂肪乳)
乳脂肪47%生クリーム:特選北海道純生クリーム47、タカナシ乳業株式会社製、乳脂肪47質量%
乳脂肪35%生クリーム:特選北海道純生クリーム35、タカナシ乳業株式会社製、乳脂肪35質量%
植物性クリーム:ホイップ植物性脂肪、雪印メグミルク株式会社製、乳脂肪0質量%、植物性脂肪40質量%
無脂肪乳:おいしい無脂肪乳、タカナシ乳業株式会社製、乳脂肪0.1質量%
【0053】
また、原料の製造方法および特性評価方法を以下に示す。
(製造例1)α化ハイアミロースコーンスターチ2の製造
200質量部の水に攪拌しながら50質量部の澱粉(ハイアミロースコーンスターチHS-7、水分14%)を混ぜて乾物換算質量濃度17.2%のスラリーを調製し、攪拌しながらスラリーをオンレーター(出口温度110℃前後)で糊化させ、この糊液をただちに常法によりドラムドライヤーに薄く広げ、150℃で加熱、乾燥した後、粉砕機で粉砕してα化ハイアミロースコーンスターチ2を得た。
【0054】
(冷水膨潤度の測定方法)
「澱粉・関連糖質実験法」、279-280頁、1986年、学会出版センターに記載される方法で冷水膨潤度を測定した。具体的には以下の方法で測定した。
(1)試料を、水分計(研精工業株式会社、電磁水分計:型番MX50)を用いて、125℃で加熱乾燥させて水分測定し、得られた水分値から乾燥物質量を算出した。
(2)この乾燥物質量換算で試料1g精秤し、遠心管にとり、メチルアルコール1mLに含浸させ、ガラス棒で撹拌しながら、25℃の蒸留水を加え正確に50mLとした。ときどき振盪し、25℃で20分間放置した。遠心分離機(日立工機社製、日立卓上遠心機CT6E型;ローター:T4SS型スイングローター;アダプター:50TC×2Sアダプタ)にて25℃で30分間、4000rpm(2860×g)で遠心分離し、上清を傾斜して、秤量瓶にとった。秤量瓶にとった上清を蒸発乾固させ、さらに110℃にて3時間減圧乾燥し、秤量し上清乾燥質量を求めた。さらに沈澱部質量を求め、次式で溶解度を算出後、冷水膨潤度を算出した。
溶解度(S)db%=上清乾燥質量(mg)/1000×100
冷水膨潤度=沈澱部質量(mg)/(1000×(100-S)/100)
【0055】
(ゼリー強度の測定方法)
ゼリー強度はJIS K-6503にしたがって測定した。
【0056】
(実施例1-1~1-4、2-1、3-1~3-9、4-1~4-4、比較例1-1~1-3、2-1および2-2)
表1~表4に示す配合のホイップクリームを以下の方法で製造し、評価した。評価結果を各表にあわせて示す。
ここで、表1に記載の実施例1-2を、表2~表4にもあわせて示す。
【0057】
(ホイップクリームの製造)
図1~
図4は、各例におけるホイップクリームの製造手順を説明する図である。
図1に示す手順においては、生クリームまたは植物性クリームに上白糖および澱粉を加えて、ミキサーの中速でホイップし、8分立てのホイップクリームを得た。一方、無脂肪乳を50℃程度に加温し、ゲル化剤であるゼラチンまたは多糖類を添加した。ゲル化剤が溶解した後、20℃程度まで急冷した。これを上白糖および澱粉が配合された上記ホイップクリームに添加し、さらにミキサーの中速でホイップし、ホイップクリームを得た。
ここで、8分立てのホイップクリームとは、泡立て器ですくった時にやわらかいツノが立ち、その後少し曲がって下を向く状態のホイップクリームのことである。
【0058】
また、
図2に示す手順においては、生クリームまたは植物性クリームに上白糖および澱粉を加えた。一方、無脂肪乳を50℃程度に加温し、成分(B)としてゼラチンを添加した。ゼラチンが溶解した後、20℃程度まで急冷した。これを、上白糖および澱粉が配合された上記クリームに添加し、ホイップクリーム用クリームを得た。得られたホイップクリーム用クリームをミキサーの中速でホイップし、ホイップクリームを得た。
【0059】
また、成分(B)が寒天である場合、
図3に示す手順でホイップクリームを製造した。まず、生クリームまたは植物性クリームに上白糖および澱粉を加えて、ミキサーの中速でホイップし、8分立てのホイップクリームを得た。一方、水に寒天を添加し沸騰するまで加温し、寒天を溶解した。寒天が溶解した後、50℃程度に加温した無脂肪乳と混合し、20℃程度まで急冷した。これを上白糖および澱粉が配合された上記ホイップクリームに添加し、さらにミキサーの中速でホイップし、ホイップクリームを得た。
【0060】
また、
図4は、ホイップクリームの別の製造手順に関する。
図4に示した手順では、あらかじめ成分(A)の澱粉と成分(B)のゼラチンを混合し、ホイップクリーム用組成物を調製した。次に、クリームに上白糖を加えて、ミキサーの中速でホイップし、8分立てのホイップクリームを得た。一方、無脂肪乳を50℃程度に加温し、上記ホイップクリーム用組成物を添加した。ホイップクリーム用組成物が溶解した後、20℃程度まで急冷した。これを上白糖が配合された上記ホイップクリームに添加し、さらにミキサーの中速でホイップし、ホイップクリームを得た。
【0061】
実施例1-3、1-4および実施例3-7以外の各例については、
図1に示した手順でホイップクリームを製造した。実施例1-3については、
図2に示した手順に従い、実施例1-4については
図4に示した手順に従い、実施例3-7については
図3に示した手順に従ってホイップクリームを製造した。
【0062】
(ホイップクリームの評価)
各例で得られたホイップクリームを、以下のD0およびD1のタイミングで評価した。
D0:ホイップクリームを得た後、一時間冷蔵庫(4℃)で冷やしてから、軽く撹拌し均一にしたものを評価
D1:さらにD0のボウルを一晩冷蔵庫(4℃)で冷やしてから、軽く撹拌し均一にしたものを評価
【0063】
(評価方法)
各例で得られたホイップクリームの外観、保形性、気泡感、口どけおよび離水・触感を評価した。外観、保形性、離水・触感については作業者1名で評価し、気泡感、口どけについては2名の専門パネラーの合議により評価した。各項目の評価基準を以下に示す。各項目とも、評価結果がA、BまたはCであるものを合格とした。なお、気泡感とは、口の中でホイップクリームがゆっくりと溶け、溶ける際に舌で感じる気泡が抜けていく感触のことである。
【0064】
(外観)
A:表面がなめらかである
B:表面がややなめらかである
C:表面にややボソつきが見られる
D:表面にボソつきが見られる
【0065】
(保形性)
A:ツノがしっかり(すじが残るくらい)立つ
B:ツノが立つ
C:ツノが立つが少しダレる
D:ツノが立たない
【0066】
(気泡感)
A:気泡感が非常にある
B:気泡感がある
C:気泡感がややある
D:気泡感が少ない
【0067】
(口どけ)
A:非常に口どけが良い
B:口どけが良い
C:ややバタークリームのような重さがあるが口どけは許容範囲である
D:ねっとりして口どけが悪い
【0068】
(離水・触感)
A:離水は無く、クリームが緩くない
B:離水はしていないが、クリームがやや緩い
C:離水はしていないが、クリームが緩い
D:離水が確認できる
【0069】
【0070】
表1より、実施例1-1のように、成分(A)と成分(B)を含むホイップクリームは、外観、保形性、気泡感、口どけ、離水・触感の点で優れていた。また、保形性、気泡感の観点から、成分(A)を0.91質量%以上含有させることが好ましく、1.80質量%含有させるとより好ましかった。
一方、比較例1-3のように成分(B)の入らないホイップクリームは離水が見られ、比較例1-2のように成分(A)が入らないとD1において気泡感に乏しいホイップクリームとなった。
また、
図2に示すように、成分(A)、(B)およびその他の成分をすべて混合した後ホイップした場合(実施例1-3)、ホイップに要する時間が少し長くなったものの、
図1の方法で作製したホイップクリーム(実施例1-2)と同等のものが得られることがわかった。さらに、
図4に示すように、先にホイップクリーム用組成物を調製してから無脂肪乳に加えてホイップを作製した場合(実施例1-4)、非常に良好なホイップクリームが得られ、殊に保形性については
図1の方法で作製したホイップクリーム(実施例1-2)よりさらに優れていた。
【0071】
【0072】
表2より、澱粉の種類を変更しホイップクリームを作製した結果、α化ハイアミロースコーンスターチ1およびα化ハイアミロースコーンスターチ2を使用したホイップクリームは、いずれも好ましいものであった。中でも、冷水膨潤度が6.5のα化ハイアミロースコーンスターチ1を使用した場合、気泡感や口どけがさらに良好であった。
一方、冷水膨潤度が23のα化リン酸架橋馬鈴薯澱粉を使用した場合、クリームがもち状に粘り、ツノが立たなかった。
また、成分(A)のアミロース含量が50質量%以上70質量%以下の場合、良好なホイップクリームが得られ、殊にアミロース含量が50質量%のとき、気泡感や口どけがさらに良好であった。
【0073】
【0074】
表3より、成分(A)を0.18質量%以上2.7質量%以下添加し、いずれかの成分(B)を所定量添加すると、良好なホイップクリームが得られた。気泡感の観点からは成分(A)の含有量が0.45質量%以上2.7質量%以下の場合が好ましく、外観のなめらかさの観点からは成分(A)を0.18質量%以上1.81質量%以下含有させた場合、良好であった。
また、成分(B)にゼラチンを使用した場合、ゼラチンを0.18質量%以上1.81質量%以下含有させたとき、良好なホイップクリームが得られた。離水・触感の観点からは0.91質量%以上1.81質量%以下が最も良好であった。外観のなめらかさの観点からはゼラチンの含有量が0.46質量%以上1.81質量%以下のとき良好であり、殊に0.46質量%以上0.91質量%以下のとき、最も良好であった。
成分(B)に寒天を0.18質量%添加し、成分(A)を1.81質量%添加した場合(実施例3-7)、気泡感と口どけは非常に良好であった。一方、外観のなめらかさ、保形性および離水・触感の点では、ゼラチンの場合(実施例1-2)がより優れていた。
成分(B)にウェランガムまたはスクシノグリカンを添加し、成分(A)を1.81質量%添加した場合(実施例3-8、3-9)、外観や離水・触感の点では良好であったが、少し粘りがあり、気泡感や口どけについては、ゼラチン(実施例1-2)や寒天(実施例3-7)の場合がより優れていた。
【0075】
【0076】
表4より、実施例4-1のように、脂肪分として植物性脂肪分のみを含む場合、および、実施例4-2のように乳脂肪35%生クリームを用いた場合でも、成分(B)としてゼラチン1を0.90質量%、成分(A)としてα化ハイアミロースコーンスターチを1.80質量%含んだホイップクリームでは、保形性や気泡感、口どけに優れ、保存後も離水の無い、非常に好ましいホイップクリームとなることがわかった。
また、実施例4-3のように乳脂肪が26.8質量%で、成分(B)としてゼラチン3を0.18質量%、成分(A)としてα化ハイアミロースコーンスターチを0.46質量%含んだホイップクリームでは、脂肪分が高めのためさっぱりした食味はやや劣ったが、それ以外のすべての評価項目で評価が高かった。
実施例4-4のように乳脂肪が18.2質量%と低かった場合でも、成分(B)としてゼラチン1を0.90質量%、成分(A)としてα化ハイアミロースコーンスターチ1を1.80質量%含んだ場合、泡立てるのに他のクリームより時間がかかったものの、好ましいホイップクリームが得られることがわかった。
【0077】
表1~表4より、各例で得られたホイップクリームは、D0およびD1のいずれの評価においても、外観、保形性、気泡感、口どけおよび離水抑制の効果のバランスに優れていた。
また、実施例1-3においては、成分(B)としてゼラチン1を加えており、ゼラチン1を予め加熱溶解するため、
図2に示したように加熱した無脂肪乳にゼラチンを溶解しているが、成分(B)として冷水可溶なものを用いれば、加熱していない無脂肪乳あるいは生クリームまたは植物性クリームに溶解して、同様のホイップを作製することもできる。
【0078】
(実施例5)
表5に示す配合のホイップクリームを以下の方法で製造し、評価した。
【0079】
(ホイップクリームの製造)
【0080】
表5の配合のうち、あらかじめ植物性クリーム以外のすべての原料を混合し、ホイップクリーム用組成物を調製した。次に、クリームに前記組成物を加えて、直ちにミキサーの高速で1分間ホイップし、ホイップクリームを得た。得られたホイップクリームは、ホイップ直後に外観、保形性、気泡感、口どけおよび離水抑制の評価を行った。さらに、得られたホイップを、保存容器の中に敷いた食品用ラップの上に絞り金で絞り出し、保存容器のふたを閉め、-20℃の冷凍庫の中で1日間保存した。保存後、冷凍庫から取出して室温で10分自然解凍し、外観、保形性、気泡感、口どけおよび離水抑制について評価した。
【0081】
【0082】
実施例5で得られたホイップクリームは、ホイップ直後および冷凍保存後のいずれも、外観、保形性、気泡感、口どけおよび離水抑制の効果に優れていた。
すなわち、実施例5のホイップクリームは、冷凍保存後であっても、外観、保形性、気泡感、口どけおよび離水抑制において好ましかった。また、ゲル化剤としてキサンタンガムおよびローカストビーンガムを用い、ホイップクリーム中のこれらゲル化剤の含有量が、ホイップクリーム全体に対して0.12質量%の場合でも、好ましいホイップクリームが得られた。
また、実施例5のホイップクリームは、脂肪分として植物性脂肪を38.2質量%含む場合でも、好ましいものであった。
【0083】
この出願は、2018年6月27日に出願された日本出願特願2018-122253号を基礎とする優先権を主張し、その開示のすべてをここに取り込む。