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特許7366051硬化性シリコーン組成物及びその硬化物、積層体及びその製造方法、並びに光学装置又は光学ディスプレイ
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  • 特許-硬化性シリコーン組成物及びその硬化物、積層体及びその製造方法、並びに光学装置又は光学ディスプレイ 図1
  • 特許-硬化性シリコーン組成物及びその硬化物、積層体及びその製造方法、並びに光学装置又は光学ディスプレイ 図2
  • 特許-硬化性シリコーン組成物及びその硬化物、積層体及びその製造方法、並びに光学装置又は光学ディスプレイ 図3
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  • 特許-硬化性シリコーン組成物及びその硬化物、積層体及びその製造方法、並びに光学装置又は光学ディスプレイ 図6
  • 特許-硬化性シリコーン組成物及びその硬化物、積層体及びその製造方法、並びに光学装置又は光学ディスプレイ 図7
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  • 特許-硬化性シリコーン組成物及びその硬化物、積層体及びその製造方法、並びに光学装置又は光学ディスプレイ 図9
  • 特許-硬化性シリコーン組成物及びその硬化物、積層体及びその製造方法、並びに光学装置又は光学ディスプレイ 図10
  • 特許-硬化性シリコーン組成物及びその硬化物、積層体及びその製造方法、並びに光学装置又は光学ディスプレイ 図11
  • 特許-硬化性シリコーン組成物及びその硬化物、積層体及びその製造方法、並びに光学装置又は光学ディスプレイ 図12
  • 特許-硬化性シリコーン組成物及びその硬化物、積層体及びその製造方法、並びに光学装置又は光学ディスプレイ 図13
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-12
(45)【発行日】2023-10-20
(54)【発明の名称】硬化性シリコーン組成物及びその硬化物、積層体及びその製造方法、並びに光学装置又は光学ディスプレイ
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/07 20060101AFI20231013BHJP
   C08L 83/05 20060101ALI20231013BHJP
   C08K 5/5415 20060101ALI20231013BHJP
   B32B 7/12 20060101ALI20231013BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20231013BHJP
   C09J 183/05 20060101ALI20231013BHJP
   C09J 183/07 20060101ALI20231013BHJP
【FI】
C08L83/07
C08L83/05
C08K5/5415
B32B7/12
B32B27/00 101
C09J183/05
C09J183/07
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2020553185
(86)(22)【出願日】2019-10-15
(86)【国際出願番号】 JP2019040430
(87)【国際公開番号】W WO2020080348
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2022-10-07
(31)【優先権主張番号】P 2018196662
(32)【優先日】2018-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】719000328
【氏名又は名称】ダウ・東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】杉江 敦司
(72)【発明者】
【氏名】小川 琢哉
(72)【発明者】
【氏名】須藤 通孝
(72)【発明者】
【氏名】吉武 誠
(72)【発明者】
【氏名】古川 晴彦
【審査官】常見 優
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-053872(JP,A)
【文献】特開2007-002234(JP,A)
【文献】特開2005-042099(JP,A)
【文献】特開2009-173789(JP,A)
【文献】国際公開第2018/159725(WO,A1)
【文献】特開2017-161779(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/16
C08K 3/00- 13/08
C09J 1/00- 5/10
C09J 9/00-201/10
B32B 1/00- 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)以下の(a1)成分及び(a2)成分を含む、一分子中に少なくとも2個の炭素原子数2~12のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン
(a1)一分子中に少なくとも2個の炭素原子数2~12のアルケニル基を有する直鎖状又は部分分岐状オルガノポリシロキサン
(a2)平均単位式:(R SiO 1/2 (R SiO 2/2 (R SiO 3/2 (SiO 4/2 (式中、R はそれぞれ独立に炭素原子数1~12の一価炭化水素基であり、R の少なくとも1モル%は炭素原子数2~12のアルケニル基であり、a、b、c及びdは次の条件を全て満たす:a+b+c+d=1、0≦a≦0.8、0≦b≦0.4、0≦c≦0.8、0≦d≦0.6、0.2≦c+d≦0.8)で表される、アルケニル基を有するオルガノポリシロキサン
(B)以下の(b1)成分及び(b2)成分を含む、一分子中に少なくとも2個のケイ素結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン
(b1)分子鎖末端にケイ素結合水素原子を有する直鎖状又は部分分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン
(b2)平均単位式:(R SiO 1/2 (R SiO 2/2 (R SiO 3/2 (SiO 4/2 (式中、R はそれぞれ独立にアルケニル基を除く炭素原子数1~12の一価炭化水素基又は水素原子であり、R の少なくとも1モル%は水素原子であり、e、f、g及びhは次の条件を全て満たす:e+f+g+h=1、0≦e≦0.8、0≦f≦0.4、0≦g≦0.7、0≦h≦0.5、0.2≦g+h≦0.7)で表される、オルガノハイドロジェンポリシロキサン
(C)ヒドロシリル化反応用触媒、及び
(D)一分子中に2個以上のアルコキシシリル基を有する有機化合物
を含む、硬化性シリコーン組成物であって、
(B)成分の含有量は、(A)成分中の脂肪族不飽和炭素-炭素結合1モルに対して、(B)成分中のケイ素結合水素原子が0.5~2モルとなる量であり、
i)ポリエーテル化合物の含有量が、硬化性シリコーン組成物の合計量に対して0.1質量%以下であり、かつ、
ii)エポキシ基及びアルコキシシリル基を有する化合物の含有量が、硬化性シリコーン組成物の合計量に対して0.1質量%以下であり、
(a2)成分の含有量が、硬化性シリコーン組成物の硬化反応により不揮発性の固形分を形成する成分の和に対して0.5~10.0質量%の範囲であり、かつ、
(b2)成分の含有量が、硬化性シリコーン組成物の硬化反応により不揮発性の固形分を形成する成分の和に対して0.01~1.0質量%の範囲である、
硬化性シリコーン組成物。
【請求項2】
(D)成分の含有量が、硬化性シリコーン組成物の合計量に対して0.01~5質量%の範囲である、請求項1に記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項3】
(C)成分が、
(c1)高エネルギー線の照射なしで活性を示すヒドロシリル化反応用触媒、
(c2)高エネルギー線の照射により活性を示すヒドロシリル化反応用触媒、及び
(c3)(c1)成分と(c2)成分の組み合わせであるヒドロシリル化反応用触媒
からなる群から選択される、請求項1からのいずれか一項に記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項4】
前記高エネルギー線が、紫外線、ガンマ線、X線、α線、又は電子線から選択される、請求項に記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項5】
(D)成分が、
(d1)分子鎖末端に2個のアルコキシシリル基を有する有機化合物を含む、請求項1からのいずれか一項に記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項6】
25℃における粘度が100,000mPa以下である、請求項1からのいずれか一項に記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項7】
光学用接着剤又は光学用粘着剤である、請求項1からのいずれか一項に記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項8】
請求項1からのいずれか一項に記載の硬化性シリコーン組成物の硬化物。
【請求項9】
25℃における針入度が5~70の範囲である、請求項に記載の硬化物。
【請求項10】
第1の透明又は不透明な光学部材と第2の透明又は不透明な光学部材との間に配置された請求項8又は9に記載の硬化物からなる接着層と、を備える積層体。
【請求項11】
基材と、
前記基材に配置された光学素子と、
前記光学素子の少なくとも一部を封止する請求項8又は9に記載の硬化物と、を備える光学装置。
【請求項12】
請求項10に記載の積層体を備える光学ディスプレイ。
【請求項13】
前記(c1)高エネルギー線の照射なしで活性を示すヒドロシリル化触媒を少なくとも含有する請求項3又は4に記載の硬化性シリコーン組成物を二つの光学部材のうち少なくとも一方の部材の一面又は両面に配置し、前記二つの光学部材を前記硬化性シリコーン組成物を介して貼り合わせる配置工程、及び放置若しくは加熱して前記組成物のヒドロシリル化反応を進行させて前記組成物を硬化させる硬化工程を含む、積層体の製造方法。
【請求項14】
前記(c2)高エネルギー線の照射により活性を示すヒドロシリル化触媒を少なくとも含有する請求項3又は4に記載の硬化性シリコーン組成物を二つの光学部材のうち少なくとも一方の部材の一面又は両面に配置し、前記二つの光学部材を前記硬化性シリコーン組成物を介して貼り合わせる配置工程、及び高エネルギー線照射後、放置若しくは加熱して前記組成物のヒドロシリル化反応を進行させて前記組成物を硬化させる硬化工程を含む、積層体の製造方法。
【請求項15】
以下の工程を有する積層体の製造方法:
工程i):前記(c2)高エネルギー線の照射により活性を示すヒドロシリル化触媒を少なくとも含有する請求項3又は4に記載の硬化性シリコーン組成物を二つの光学部材のうち少なくとも一方の部材の一面又は両面に配置する工程
工程ii):工程i)で配置された前記組成物に高エネルギー線照射を行い、当該組成物を非流動性の半硬化状態にする工程
工程iii):工程ii)の後、前記二つの光学部材を半硬化状態の前記硬化性シリコーン組成物を介して貼り合わせる工程
工程iv):工程iii)で貼り合わせた前記二つの光学部材を、15~80℃の温度範囲で半硬化状態の前記組成物のヒドロシリル化反応を進行させ、前記組成物を本硬化させる工程。
【請求項16】
以下の工程を有する積層体の製造方法:
工程i):前記(c1)高エネルギー線の照射なしで活性を示すヒドロシリル化触媒と、前記(c2)高エネルギー線の照射により活性を示すヒドロシリル化触媒との両方を含有する請求項3又は4に記載の硬化性シリコーン組成物を二つの光学部材のうち少なくとも一方の部材の一面又は両面に配置する工程であって、少なくとも一方の部材として透明な光学部材を用いる工程
工程ii):工程i)で配置された前記組成物を、15~80℃の温度範囲で前記組成物のヒドロシリル化反応を進行させ、当該組成物を非流動性の半硬化状態にする工程
工程iii):工程ii)の後、前記二つの光学部材を半硬化状態の前記硬化性シリコーン組成物を介して貼り合わせる工程
工程iv):工程iii)で貼り合わせた前記二つの光学部材について、前記透明な光学部材を通して、前記硬化性シリコーン組成物に高エネルギー線照射を行った後、15~80℃の温度範囲で半硬化状態の前記組成物のヒドロシリル化反応を進行させ、前記組成物を本硬化させる工程。
【請求項17】
以下の工程を有する積層体の製造方法:
工程i):(c1)高エネルギー線の照射なしで活性を示すヒドロシリル化触媒を少なくとも含有する請求項3又は4に記載の硬化性シリコーン組成物を二つの光学部材のうち少なくとも一方の部材の一面又は両面に配置する工程
工程ii):工程i)で配置された前記組成物を、15~80℃の温度範囲で前記組成物のヒドロシリル化反応を進行させ、当該組成物を非流動性の半硬化状態にする工程
工程iii):工程ii)の後、前記二つの光学部材を半硬化状態の前記硬化性シリコーン組成物を介して貼り合わせる工程
工程iv):工程iii)で貼り合わせた前記二つの光学部材を、さらに、15~80℃の温度範囲で半硬化状態の前記組成物のヒドロシリル化反応を進行させ、前記組成物を本硬化させる工程。
【請求項18】
積層体が光学装置である、請求項14から17いずれか一項に記載の積層体の製造方法。
【請求項19】
積層体が光学ディスプレイである、請求項14から17いずれか一項に記載の積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性シリコーン組成物及びその硬化物、積層体及びその製造方法、並びに光学装置又は光学ディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
光学ディスプレイの視認性向上のための接着剤又は粘着剤として、透明性が高く、硬化物の伸びの大きい硬化性シリコーン組成物が使用されている。光学ディスプレイには、液晶及び有機EL等の表示部や、タッチパネル及びカバーレンズ等のディスプレイ形成部材などの熱に不安定な材料を使用する必要があるため、使用される硬化性シリコーン組成物は、比較的低温、具体的には40℃以下で硬化するものが好ましく、これまで紫外線硬化性シリコーン組成物が主に適用されてきた。
【0003】
しかしながら、ディスプレイ周辺部に装飾用の加飾部を設ける場合も多く、紫外線が透過しないことから、紫外線照射を必要としない低温硬化性シリコーン組成物が要望されている。例えば、特許文献1には、アルケニル基及びアリール基を含有するオルガノポリシロキサン、ケイ素原子結合水素原子を含有するオルガノポリシロキサン、ポリアルキレンオキシド鎖を有する化合物、並びに白金系触媒からなる硬化性シリコーン組成物が提案されている。
【0004】
しかし、従来の硬化性シリコーン組成物では、得られる硬化物が高温高湿の状態に長時間曝されると、濁りや着色を生じるという問題があった。また、用途によっては接着強度が不足しており、光学部材が剥離してしまう場合があった。さらに、光学ディスプレイやタッチパネルの製造工程においては、積層部材を貼り合わせる際に高い精度を要求されることがあり、一度貼り合わせた後に再度貼り合わせることができない場合には、大きな工程ロスを生じてしまう場合があった。
【0005】
一方、本件出願人は、特許文献2において、ポリオキシアルキレン化合物を含む硬化性シリコーン組成物を提案している。しかしながら、当該組成物は、高温高湿下における濁りや着色の問題を完全に解決するには至らず、接着強度及び透明な硬化性シリコーン組成物として未だに改善の余地を残していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-111850号公報
【文献】国際特許公開第2018/159725号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、光学ディスプレイやタッチパネルなどの接着剤又は粘着剤に使用される硬化性シリコーン組成物として、硬化後に優れた接着強度を示し、かつ、リワーク性を有する組成物が求められていた。また、比較的低温でも優れた硬化性を示すとともに、硬化後に高温高湿の状態に曝された場合であっても、透明性に優れた硬化物が得られる組成物が求められていた。
【0008】
本発明は上記従来技術の課題を解決すべくなされたものであり、光学ディスプレイ又はタッチパネルなどの透明性が求められる部材として用いられる場合に優れた性能を示す硬化性シリコーン組成物及びその硬化物、積層体及びその製造方法、並びに光学装置又は光学ディスプレイを提供することを目的とする。具体的には、硬化後の高温高湿条件下においても透明性を維持することができ、接着強度に優れた硬化性シリコーン組成物を提供することを目的とする。さらに、接着力が一定時間経過後に大きく上昇するという接着挙動を示すことにより、優れたリワーク性を有する硬化性シリコーン組成物を提供することも本発明の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題について鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち、本発明の目的は、
(A)一分子中に少なくとも2個の炭素原子数2~12のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン、
(B)一分子中に少なくとも2個のケイ素結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(C)ヒドロシリル化反応用触媒、及び
(D)一分子中に2個以上のアルコキシシリル基を有する有機化合物
を含む、硬化性シリコーン組成物であって、
(B)成分の含有量は、(A)成分中の脂肪族不飽和炭素-炭素結合1モルに対して、(B)成分中のケイ素結合水素原子が0.5~2モルとなる量であり、
i)ポリエーテル化合物の含有量が、硬化性シリコーン組成物の合計量に対して0.1質量%以下であり、かつ、
ii)エポキシ基及びアルコキシシリル基を有する化合物の含有量が、硬化性シリコーン組成物の合計量に対して0.1質量%以下である、
硬化性シリコーン組成物によって達成される。
【0010】
(D)成分の含有量は、硬化性シリコーン組成物の合計量に対して0.01~5質量%の範囲であることが好ましい。
【0011】
(A)成分は以下の(a1)成分及び(a2)成分:
(a1)一分子中に少なくとも2個の炭素原子数2~12のアルケニル基を有する直鎖状又は部分分岐状オルガノポリシロキサン
(a2)平均単位式:(R SiO1/2(R SiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2(式中、Rはそれぞれ独立に炭素原子数1~12の一価炭化水素基であり、Rの少なくとも1モル%は炭素原子数2~12のアルケニル基であり、a、b、c及びdは次の条件を全て満たす:a+b+c+d=1、0≦a≦0.8、0≦b≦0.4、0≦c≦0.8、0≦d≦0.6、0.2≦c+d≦0.8)で表される、アルケニル基を有するオルガノポリシロキサン
を含み、
(B)成分は以下の(b1)成分及び(b2)成分:
(b1)分子鎖末端にケイ素結合水素原子を有する直鎖状又は部分分岐状のオルガノハイドロジェンポリシロキサン
(b2)平均単位式:(R SiO1/2(R SiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2(式中、Rはそれぞれ独立にアルケニル基を除く炭素原子数1~12の一価炭化水素基又は水素原子であり、Rの少なくとも1モル%は水素原子であり、e、f、g及びhは次の条件を全て満たす:e+f+g+h=1、0≦e≦0.8、0≦f≦0.4、0≦g≦0.7、0≦h≦0.5、0.2≦g+h≦0.7)で表される、オルガノハイドロジェンポリシロキサン
を含むことが好ましい。
【0012】
特に、(a2)成分の含有量が、硬化性シリコーン組成物の硬化反応により不揮発性の固形分を形成する成分の和に対して0.5~10.0質量%の範囲であり、かつ、
(b2)成分の含有量が、硬化性シリコーン組成物の硬化反応により不揮発性の固形分を形成する成分の和に対して0~2.0質量%の範囲であることがより好ましい。
【0013】
(C)成分は、
(c1)高エネルギー線の照射なしで活性を示すヒドロシリル化反応用触媒、
(c2)高エネルギー線の照射により活性を示すヒドロシリル化反応用触媒、及び
(c3)(c1)成分と(c2)成分の組み合わせであるヒドロシリル化反応用触媒
からなる群から選択されることが好ましい。
【0014】
ここで、高エネルギー線とは、紫外線、ガンマ線、X線、α線、電子線などを言い、紫外線、X線、及び市販の電子線照射装置から照射される電子線が好ましい。工業的には、波長280~380nmの範囲の紫外線が簡便に用いられる。
【0015】
(D)成分は、
分子鎖末端に2個のアルコキシシリル基を有する有機化合物を含むことが好ましい。
【0016】
25℃における粘度が100,000mPa以下であることが好ましい。
【0017】
本発明の硬化性シリコーン組成物は、光学用接着剤又は光学用粘着剤であることが好ましい。
【0018】
本発明はまた、本発明の硬化性シリコーン組成物の硬化物にも関する。
【0019】
本発明の硬化性シリコーン組成物の硬化物は、25℃における針入度が5~70の範囲であることが好ましい。
【0020】
本発明はまた、
第1の透明又は不透明な光学部材と、第2の透明又は不透明な光学部材との間に配置された本発明の硬化物からなる接着層と、を備える積層体にも関する。
【0021】
さらに、本発明は、
基材と、
前記基材に配置された光学素子と、
前記光学素子の少なくとも一部を封止する本発明の硬化物と、を備える光学装置にも関する。
【0022】
さらに、本発明は、
本発明の積層体を備える光学ディスプレイにも関する。
【0023】
本発明はまた、
本発明の高エネルギー線の照射なしで活性を示すヒドロシリル化触媒を少なくとも含有する硬化性シリコーン組成物を二つの光学部材のうち少なくとも一方の部材の一面又は両面に配置し、前記二つの光学部材を前記硬化性シリコーン組成物を介して貼り合わせる配置工程、及び放置若しくは加熱して前記組成物のヒドロシリル化反応を進行させて前記組成物を硬化させる硬化工程を含む、積層体の製造方法にも関する。なお、本発明の積層体を構成する光学部材は、平面状の広がりを有する板状部分を備えていることが一般的であり、当該板状部位または部材自身が湾曲していてもよく、部材の用途に由来する三次元的な凹凸を備えていてもよい。また、光学部材の両面に配置された硬化物であって他の光学部材との貼り合わせに使用されない硬化物は、接着面として剥離層や他の部材への接合に用いることができる。
【0024】
さらに、本発明は、本発明の高エネルギー線の照射により活性を示すヒドロシリル化触媒を少なくとも含有する硬化性シリコーン組成物を二つの光学部材のうち少なくとも一方の部材の一面又は両面に配置し、前記二つの光学部材を前記硬化性シリコーン組成物を介して貼り合わせる配置工程、及び
高エネルギー線照射、放置若しくは加熱して前記組成物のヒドロシリル化反応を進行させて前記組成物を硬化させる硬化工程を含む、積層体の製造方法にも関する。
【0025】
さらに、本発明は、本発明の高エネルギー線の照射により活性を示すヒドロシリル化触媒を少なくとも含有する硬化性シリコーン組成物を二つの光学部材のうち少なくとも一方の部材の一面又は両面に配置し、高エネルギー線照射を行い、非流動性の半硬化状態を形成した後、前記二つの光学部材を半硬化状態の前記硬化性シリコーン組成物を介して貼り合わせる配置工程、及び放置若しくは加熱して前記組成物のヒドロシリル化反応を進行させて前記組成物を本硬化させる本硬化工程を含む、積層体の製造方法にも関する。
【0026】
さらに、本発明は、本発明の高エネルギー線の照射なしで活性を示すヒドロシリル化触媒と高エネルギー線の照射により活性を示すヒドロシリル化触媒の両方を含有する硬化性シリコーン組成物を二つの光学部材のうち少なくとも一方の部材の一面又は両面に配置した後に、放置若しくは加熱して前記組成物のヒドロシリル化反応させて室温(25℃)を含む低温領域(15~80℃)で非流動性の半硬化状態を形成した後、前記二つの光学部材を半硬化状態の前記硬化性シリコーン組成物を介して貼り合わせる配置工程、及び透明基材を通して高エネルギー線照射を行った後に、放置若しくは加熱して半硬化状態の前記組成物のヒドロシリル化反応を進行させて前記組成物を本硬化させる本硬化工程を含む、積層体の製造にも関する。
【0027】
さらに、本発明は、本発明の高エネルギー線の照射なしで活性を示すヒドロシリル化触媒を少なくとも含有する硬化性シリコーン組成物を二つの光学部材のうち少なくとも一方の部材の一面又は両面に配置した後、放置若しくは加熱して前記組成物のヒドロシリル化反応させて室温(25℃)を含む低温領域(15~80℃)で非流動性の半硬化状態を形成した後、前記二つの光学部材を半硬化状態の前記硬化性シリコーン組成物を介して貼り合わせる配置工程、及び放置若しくは加熱して半硬化状態の前記組成物のヒドロシリル化反応を進行させて前記組成物を本硬化させる本硬化工程を含む、積層体の製造方法にも関する。
【0028】
本発明は、前記積層体が光学装置である積層体の製造方法に関する。
【0029】
更に、本発明は、前記積層体が光学ディスプレイである積層体の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0030】
本発明の硬化性シリコーン組成物によれば、硬化後に透明性が高く、接着強度にも優れるため、光学ディスプレイ又はタッチパネルに接着剤又は粘着剤として使用する際に有用である。また、接着力が一定時間経過後に大きく上昇するため、接着挙動を制御することによりリワーク性に優れ、工程ロスが減少した光学装置又は光学ディスプレイの製造方法を提供することができる。
【0031】
また、本発明の硬化物及び積層体は、光学ディスプレイ又はタッチパネルの接着剤又は粘着剤として優れた物性を有しており、光学的に透明であり、接着強度に優れている。したがって、高温又は高湿のような条件下でも性能が低下することなく、信頼性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の実施形態の積層体を示す断面図である。
図2】本発明の実施形態の積層体の製造方法を示すフローチャートである。
図3】本発明の別の実施形態の積層体の製造方法を示すフローチャートである。
図4】本発明の実施形態にかかるMicro LEDを示す平面図である。
図5】本発明の実施形態にかかるMicro LEDを示す断面図である。
図6】本発明の別の実施形態にかかるMicro LEDを示す断面図である。
図7】本発明の実施形態にかかるリードフレーム上に赤(R)、緑(G)、青(B)の発光素子が一組で配置されたMicro LEDの断面図である。
図8】本発明の実施形態の光学ディスプレイを示す断面図である。
図9】本発明の別の実施形態の光学ディスプレイを示す断面図である。
図10】本発明の別の実施形態の光学ディスプレイを示す断面図である。
図11】本発明の別の実施形態の光学ディスプレイを示す分解斜視図である。
図12】本発明の別の実施形態の光学ディスプレイを示す部分断面図である。
図13】本発明の別の実施形態の光学ディスプレイを示す部分断面図である。
図14】本発明の別の実施形態の光学ディスプレイを示す部分断面図である。
図15】本発明の別の実施形態の光学ディスプレイを示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
[硬化性シリコーン組成物]
以下、まずは本発明の硬化性シリコーン組成物(以下、「本組成物」と称することがある。)について詳細に説明する。
【0034】
(A)成分は一分子中に少なくとも2個の炭素原子数2~12のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンである。(A)成分中のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、及びドデセニル基が例示され、経済性、反応性の点から、ビニル基、アリル基、ヘキセニル基、及びオクテニル基が好ましい。
【0035】
また、(A)成分中のケイ素原子に結合するその他の基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、及びドデシル基等の炭素原子数1~12のアルキル基;ベンジル基及びフェネチル基等の炭素原子数7~12のアラルキル基;3-クロロプロピル基及び3,3,3-トリフルオロプロピル基等のハロゲン置換の炭素原子数1~12のアルキル基、フェニル基、トリル基及びキシリル基等の炭素原子数6~20のアリール基;並びにこれらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素原子、塩素原子、及び臭素原子等のハロゲン原子で置換した基が例示され、経済性、耐熱性の点から、メチル基が好ましい。さらに、(A)成分中のケイ素原子には、本発明の目的を損なわない範囲で、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、及びtert-ブトキシ基等のアルコキシ基や水酸基が少量結合していてもよい。
【0036】
(A)成分の分子構造は限定されず、例えば、直鎖状、一部分岐を有する直鎖状、分岐鎖状、環状、又は三次元網状構造が挙げられる。(A)成分は、これらの分子構造を有する単独のオルガノポリシロキサン、あるいはこれらの分子構造を有する二種以上のオルガノポリシロキサンの混合物であってもよい。
【0037】
好適には、(A)成分は、以下の(a1)成分及び(a2)成分:
(a1)一分子中に少なくとも2個の炭素原子数2~12のアルケニル基を有する直鎖状又は部分分岐状のオルガノポリシロキサン
(a2)平均単位式:(R SiO1/2(R SiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2(式中、Rはそれぞれ独立に炭素原子数1~12の一価炭化水素基であり、Rの少なくとも1モル%は炭素原子数2~12のアルケニル基であり、a、b、c及びdは次の条件を全て満たす:a+b+c+d=1、0≦a≦0.8、0≦b≦0.4、0≦c≦0.8、0≦d≦0.6、0.2≦c+d≦0.8)で表される、アルケニル基を有するオルガノポリシロキサン
を含む。
【0038】
(a1)成分としては、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジフェニルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジフェニルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルビニルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、及び分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、メチルシルセスキオキサン単位(T単位)を含有する部分分岐状の分子鎖末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ポリジメチルシロキサン、シリカ単位(Q単位)を含有する分子鎖末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ポリジメチルシロキサン及びこれらのオルガノポリシロキサンの2種以上の混合物が例示される。
【0039】
(a2)成分において、式中、Rはそれぞれ独立に炭素原子数1~12の一価炭化水素基であり、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、及びこれらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素原子、塩素原子、及び臭素原子等のハロゲン原子で置換した基が例示される。ただし、Rの少なくとも1モル%は炭素原子数2~12のアルケニル基である。
【0040】
このような(a2)成分としては、テトラキス(ジメチルビニルシロキシ)シラン、ヘキサ(ジメチルビニルシロキシ)ジシロキサン、下記平均単位式で表されるオルガノポリシロキサンレジン:
(ViMeSiO1/20.1(MeSiO1/20.4(SiO4/20.5
(ViMeSiO1/20.1(MeSiO1/20.5(SiO4/20.4
(ViMeSiO1/20.05(MeSiO1/20.55(SiO4/20.4
(ViMeSiO1/20.1(MeSiO1/20.4(PhSiO3/20.1(SiO4/20.4
(ViMeSiO1/20.046(MeSiO1/20.394(SiO4/20.56
(ViMeSiO1/20.25(PhSiO3/20.75
が例示される。なお、上式中Meはメチル基であり、Phはフェニル基であり、Viはビニル基である。
【0041】
(a2)成分の含有量は、硬化性シリコーン組成物の固形分に対して0.5~10.0質量%の範囲であり、1.0~5.0質量%の範囲であることが好ましい。ここで、固形分とは、硬化反応により不揮発性の固形分を形成する成分の和を意味するものであり、本組成物を構成する(A)成分~(D)成分および不揮発性の任意成分が特に含まれる。
【0042】
また、(A)成分の25℃における粘度は限定されないが、好ましくは、100,000mPa・s以下、100~100,000mPa・sの範囲内、100~50,000mPa・sの範囲内、あるいは100~10,000mPa・sの範囲内である。これは、(A)成分の粘度が上記範囲の下限以上であると、得られる硬化物の機械的特性が向上するからであり、一方、上記範囲の上限以下であると、得られる組成物の取扱作業性が向上するからである。
【0043】
(B)成分は一分子中に少なくとも2個のケイ素結合水素原子を有するオルガノポリシロキサンである。(B)成分中のケイ素結合水素原子以外のケイ素原子に結合する基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、及びドデシル基等の炭素原子数1~12のアルキル基;フェニル基、トリル基、及びキシリル基等の炭素原子数6~20のアリール基;ベンジル基及びフェネチル基等の炭素原子数7~20のアラルキル基;3-クロロプロピル基及び3,3,3-トリフルオロプロピル基等のハロゲン置換の炭素原子数1~12のアルキル基が例示され、経済性、耐熱性の点から、メチル基及びフェニル基が好ましい。さらに、(B)成分中のケイ素原子には、本発明の目的を損なわない範囲で、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基及びtert-ブトキシ基等のアルコキシ基や水酸基が少量結合していてもよい。
【0044】
(B)成分の分子構造は限定されず、例えば、直鎖状、一部分岐を有する直鎖状、分岐鎖状、環状、又は三次元網状構造が挙げられる。(B)成分は、これらの分子構造を有する単独のオルガノポリシロキサン、あるいはこれらの分子構造を有する二種以上のオルガノポリシロキサンの混合物であってもよい。
【0045】
好適には、(B)成分は、以下の(b1)成分及び(b2)成分:
(b1)分子鎖末端にケイ素結合水素原子を有する直鎖状又は部分分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン
(b2)平均単位式:(R SiO1/2(R SiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2(式中、Rはそれぞれ独立にアルケニル基を除く炭素原子数1~12の一価炭化水素基又は水素原子であり、Rの少なくとも1モル%は水素原子であり、e、f、g及びhは次の条件を全て満たす:e+f+g+h=1、0≦e≦0.8、0≦f≦0.4、0≦g≦0.7、0≦h≦0.5、0.2≦g+h≦0.7)で表される、オルガノハイドロジェンポリシロキサン
を含む。
【0046】
成分(b1)は分子鎖末端にケイ素結合水素原子を有する直鎖状又は部分分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサンであり、(A)成分とのヒドロシリル化反応において、鎖長延長剤として機能し、硬化反応物の柔軟性を改善する成分である。
【0047】
(b1)成分としては、例えば、1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)メチルシラン、ビス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)ジフェニルシラン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、メチルシルセスキオキサン単位(T単位)を含有する分子鎖末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖部分分岐状のポリジメチルシロキサン、シリカ単位(Q単位)を含有する分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖部分分岐状のポリジメチルシロキサン及びこれらのオルガノポリシロキサンの2種以上の混合物が例示される。
【0048】
(b2)成分において、式中、Rはそれぞれ独立にアルケニル基を除く炭素原子数1~12の一価炭化水素基又は水素原子であり、アルキル基、アリール基、アラルキル基、及びこれらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素原子、塩素原子、及び臭素原子等のハロゲン原子で置換した基が例示される。ただし、Rの少なくとも1モル%は水素原子である。
【0049】
このような成分(b2)としては、例えば、テトラキス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)シラン、ヘキサ(ジメチルハイドロジェンシロキシ)ジシロキサン、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)フェニルシラン、下記平均単位式で表されるオルガノポリシロキサンレジン:
(HMeSiO1/20.6(SiO4/20.4
(HMeSiO1/20.3(MeSiO1/20.3(SiO4/20.4
(HMeSiO1/20.5(MeSiO1/20.05(SiO4/20.4
(HMeSiO1/20.5(PhSiO3/20.1(SiO4/20.4
(HMeSiO1/20.6(PhSiO3/20.4
(HMeSiO1/20.75(PhSiO3/20.25
が例示される。なお、上式中Meはメチル基であり、Phはフェニル基である。
【0050】
(b2)成分の含有量は、硬化性シリコーン組成物の固形分に対して0~2.0質量%の範囲であり、0.001~2.0質量%の範囲であってよく、0.01~1.0質量%の範囲であることが好ましい。ここで、固形分とは、硬化反応により不揮発性の固形分を形成する成分の和を意味するものであり、本組成物を構成する(A)成分~(D)成分および不揮発性の任意成分が特に含まれる。
【0051】
(B)成分の25℃における粘度は限定されないが、好ましくは、10,000mPa・s以下、1~1,000mPa・sの範囲内、又は1~500mPa・sの範囲内である。これは、(B)成分の粘度が上記範囲の下限以上であると、得られる硬化物の機械的特性が向上するからであり、一方、上記範囲の上限以下であると、得られる組成物の透明性、及び取扱作業性が向上するからである。
【0052】
(B)成分の含有量は、(A)成分中の脂肪族不飽和炭素-炭素結合1モルに対して、本成分中のケイ素結合水素原子が0.5~2モルの範囲内となる量であり、好ましくは、少なくとも0.6モル、少なくとも0.7モル、又は少なくとも0.8モルとなる量であり、多くとも1.7モル、多くとも1.5モル、又は多くとも1.3モルとなる量であり、これらの上限と下限の任意の範囲内となる量である。これは、(B)成分の含有量が上記範囲の下限以上であると、得られる組成物が十分に硬化するからであり、一方、上記範囲の上限以下であると、得られる硬化物の機械的特性が向上するからである。
【0053】
(C)成分は、本組成物の硬化を促進するヒドロシリル化反応用触媒であり、白金系触媒、ロジウム系触媒、パラジウム系触媒、ニッケル系触媒、イリジウム系触媒、ルテニウム系触媒、及び鉄系触媒が例示され、好ましくは、白金系触媒である。
【0054】
(C)成分の含有量は、本組成物の硬化を促進する量であり、具体的には、本組成物に対して、この触媒中の白金原子が質量単位で0.1~1,000ppmの範囲内となる量である。これは、(C)成分の含有量が上記範囲の下限以上であると、得られる組成物の硬化が十分に進行するからであり、一方、上記範囲の上限以下であると、得られる硬化物が着色し難くなるからである。
【0055】
このような(C)成分としては、
(c1)高エネルギー線の照射なしで活性を示すヒドロシリル化反応用触媒、
(c2)高エネルギー線の照射により活性を示すヒドロシリル化反応用触媒、及び
(c3)(c1)成分と(c2)成分の組み合わせであるヒドロシリル化反応用触媒
からなる群から選択されるものを使用することが好ましい。
【0056】
(c1)成分は、高エネルギー線の照射なしで活性を示すヒドロシリル化反応用触媒である。(c1)成分は好ましくは白金系触媒であり、この白金系触媒としては、白金微粉末、白金黒、白金担持シリカ微粉末、白金担持活性炭、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、白金のオレフィン錯体、白金のアルケニルシロキサン錯体等の白金系化合物が例示され、特に白金のアルケニルシロキサン錯体が好ましい。このアルケニルシロキサンとしては、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン、これらのアルケニルシロキサンのメチル基の一部をエチル基、フェニル基等で置換したアルケニルシロキサン、これらのアルケニルシロキサンのビニル基をアリル基、ヘキセニル基等で置換したアルケニルシロキサンが例示される。特に、この白金-アルケニルシロキサン錯体の安定性が良好であることから、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンが好ましい。また、この白金-アルケニルシロキサン錯体の安定性を向上させることができることから、この錯体に1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3-ジアリル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3-ジビニル-1,3-ジメチル-1,3-ジフェニルジシロキサン、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラフェニルジシロキサン、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン等のアルケニルシロキサンやジメチルシロキサンオリゴマー等のオルガノシロキサンオリゴマーを添加することが好ましく、特に、アルケニルシロキサンを添加することが好ましい。
【0057】
(c1)成分の触媒は、高エネルギー線の照射なしで活性を示す触媒であるが、その中でも比較的低温でも活性を示すものが好ましい。具体的には、0~200℃の温度範囲、好ましくは、0~150℃の温度範囲、さらに好ましくは、0~150℃の温度範囲、より好ましくは、20~150℃の温度範囲において組成物中で活性を示し、ヒドロシリル化反応を促進する。(c1)成分の含有量は、触媒の種類及び組成物の種類によって異なるが、通常は組成物に対して、この触媒中の金属原子が質量単位で0.01~50ppmの範囲内となる量であり、好ましくは0.1~30ppmの範囲内となる量である。この成分の含有量が少なすぎると、硬化速度が遅くなりすぎてしまい、添加量が多すぎると、可使時間が短すぎて実用上の不都合を生じるほか、不経済である。なお、ヒドロシリル化反応は、後述するヒドロシリル化反応遅延剤遅延剤等を用いない場合には、室温で放置しても十分に進行するため、本発明の組成物について半硬化状態の形成又は完全な本硬化状態を形成するために、本組成物を室温(25℃)で放置してもよく、上記の温度範囲で室温以上に加熱してもよい。より具体的には、本発明の硬化性シリコーン組成物は、比較的低温である15~80℃の温度範囲において、半硬化状態の形成又は完全な本硬化状態の形成を行ってよい。なお、本発明において、「半硬化状態」とは、硬化反応が進行した結果、組成物が室温(25℃)を含む低温領域(15~80℃)において、流動性を失って硬化反応物を形成しているが、当該硬化反応物が硬化反応性を依然として維持しており、さらに高エネルギー線の照射の継続または放置・加熱等の硬化条件を設定することによりさらに硬化反応が進行する状態をいい、当該半硬化状態の硬化反応物を「半硬化物」という。また、硬化反応が進行した結果、組成物の硬化反応が停止して硬化反応性を失い、それ以上硬化反応が進行しない状態に達したものを「本硬化状態」という。
【0058】
(c2)成分は、高エネルギー線の照射がないと活性を示さないが、高エネルギー線の照射により活性を示すヒドロシリル化反応用触媒である。(c2)成分は、いわゆる高エネルギー線活性化触媒又は光活性化触媒と呼ばれるものであり、本件技術分野では公知である。
【0059】
高エネルギー線は、紫外線、ガンマ線、X線、α線、電子線などが挙げられる。特に、紫外線、X線、及び市販の電子線照射装置から照射される電子線が挙げられ、これらのうちでも紫外線が触媒活性化の効率の点から好ましく、波長280~380nmの範囲の紫外線が工業的利用の見地から好ましい。また、照射量は、高エネルギー線活性型触媒の種類により異なるが、紫外線の場合は、波長365nmでの積算照射量が100mJ/cm~10J/cmの範囲内であることが好ましい。
【0060】
(c2)成分の具体例としては、(メチルシクロペンタジエニル)トリメチル白金(IV)、(シクロペンタジエニル)トリメチル白金(IV)、(1,2,3,4,5-ペンタメチルシクロペンタジエニル)トリメチル白金(IV)、(シクロペンタジエニル)ジメチルエチル白金(IV)、(シクロペンタジエニル)ジメチルアセチル白金(IV)、(トリメチルシリルシクロペンタジエニル)トリメチル白金(IV)、(メトキシカルボニルシクロペンタジエニル)トリメチル白金(IV)、(ジメチルフェニルシリルシクロペンタジエニル)トリメチルシクロペンタジエニル白金(IV)、トリメチル(アセチルアセトナト)白金(IV)、トリメチル(3,5-ヘプタンジオネート)白金(IV)、トリメチル(メチルアセトアセテート)白金(IV)、ビス(2,4-ペンタンジオナト)白金(II)、ビス(2,4-へキサンジオナト)白金(II)、ビス(2,4-へプタンジオナト)白金(II)、ビス(3,5-ヘプタンジオナト)白金(II)、ビス(1-フェニル-1,3-ブタンジオナト)白金(II)、ビス(1,3-ジフェニル-1,3-プロパンジオナト)白金(II)、ビス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)白金(II)が挙げられ、これらのうちでも(メチルシクロペンタジエニル)トリメチル白金(IV)とビス(2,4-ペンタンジオナト)白金(II)が汎用性と入手の容易さの点から好ましい。
【0061】
(c2)成分の含有量は、(c1)成分によって半硬化された組成物をさらに硬化するのに必要な量であり、好ましくは、本組成物に対して、この触媒中の金属原子が質量単位で1~50ppmの範囲内となる量であり、好ましくは、5~30ppmの範囲内となる量である。
【0062】
(c1)成分と(c2)成分のモル比((c1)/(c2))は、通常0.001~1000、好ましくは0.01~100である。モル比が前記上限以下であると、高エネルギー線照射による硬化反応の加速ができるからであり、モル比が前記下限以上であると、短時間での低温での硬化反応を行うことができるからである。
【0063】
(D)成分は一分子中に2個以上のアルコキシシリル基を有する化合物であり、本組成物の接着強度を向上させる接着促進剤として作用するとともに、接着力が一定時間経過後に大きく上昇するという特異な接着挙動を示すための成分である。アルコキシシリル基としては、トリメトキシシリル基、メチルジメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、及びトリイソプロポキシシリル基が例示される。
【0064】
好適には、(D)成分は、(d1)分子鎖末端に2個又は3個のアルコキシシリル基を有する有機化合物を含む。また、ここでいう有機化合物は、アルカン化合物等に加え、有機ケイ素化合物を含む。(d1)成分の具体例としては、1,2-ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,2-ビス(トリエトキシシリル)エタン、1,2-ビス(メチルジメトキシシリル)エタン、1,2-ビス(メチルジエトキシシリル)エタン、1,3-ビス(トリメトキシシリル)プロパン、1,4-ビス(トリメトキシシリル)ブタン、1,4-ビス(トリエトキシシリル)ブタン、1-メチルジメトキシシリル-4-トリメトキシシリルブタン、1-メチルジエトキシシリル-4-トリエトキシシリルブタン、1,4-ビス(メチルジメトキシシリル)ブタン、1,4-ビス(メチルジエトキシシリル)ブタン、1,5-ビス(トリメトキシシリル)ペンタン、1,5-ビス(トリエトキシシリル)ペンタン、1,4-ビス(トリメトキシシリル)ペンタン、1,4-ビス(トリエトキシシリル)ペンタン、1-メチルジメトキシシリル-5-トリメトキシシリルペンタン、1-メチルジエトキシシリル-5-トリエトキシシリルペンタン、1,5-ビス(メチルジメトキシシリル)ペンタン、1,5-ビス(メチルジエトキシシリル)ペンタン、1,6-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、1,6-ビス(トリエトキシシリル)ヘキサン、1,4-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、1,5-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、2,5-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、1-メチルジメトキシシリル-6-トリメトキシシリルヘキサン、1-フェニルジエトキシシリル-6-トリエトキシシリルヘキサン、1,6-ビス(メチルジメトキシシリル)ヘキサン、1,7-ビス(トリメトキシシリル)ヘプタン、2,5-ビス(トリメトキシシリル)ヘプタン、2,6-ビス(トリメトキシシリル)ヘプタン、1,8-ビス(トリメトキシシリル)オクタン、1,8-ビス(メチルジメトキシシリル)オクタン、2,5-ビス(トリメトキシシリル)オクタン、2,7-ビス(トリメトキシシリル)オクタン、1,9-ビス(トリメトキシシリル)ノナン、2,7-ビス(トリメトキシシリル)ノナン、1,10-ビス(トリメトキシシリル)デカン、及び3,8-ビス(トリメトキシシリル)デカン等の2個のアルコキシシリル基を有するアルカン化合物、1,3-ビス{2-(トリメトキシシリル)エチル}-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3-ビス{2-(メチルジメトキシシリル)エチル}-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3-ビス{2-(トリエトキシシリル)エチル}-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3-ビス{2-(メチルジエトキシシリル)エチル}-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3-ビス{6-(トリメトキシシリル)ヘキシル}-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3-ビス{6-(トリエトキシシリル)ヘキシル}-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン等の2個のアルコキシシリル基を有するジシロキサン化合物が挙げられる。また、3個のアルコキシシリル基を有する有機化合物としては、1,3,5-トリス{2-(トリメトキシシリル)エチル}-1,1,3,5 ,5-ペンタメチルトリシロキサン、1,3,5-トリス{2-(メチルジメトキシシリル)エチル}-1,1,3,5,5-テトラメチルジシロキサン、1,3,5-トリス{2-(トリエトキシシシリル)エチル}-1,1,3,5,5-テトラメチルジシロキサン、1,3,5-トリス{2-(メチルジエトキシシリル)エチル}-1,1,3,5,5-テトラメチルジシロキサン、1,3,5-トリス{6-(トリメトキシシリル)ヘキシル}-1,1,3,5,5-テトラメチルジシロキサン等の3個のアルコキシシリル基を有するトリシロキサン化合物が挙げられる。その構造の一例は、
(MeO)3SiCH2CH2(Me)2Si-O-SiMe(CH2CH2Si(OMe)3)-O-Si(Me)2CH2CH2Si(OMe)3
である(上式中、Meはメチル基である)。
【0065】
(D)成分の含有量は限定されないが、硬化特性や硬化物の変色を促進しないことから、(A)成分~(C)成分の合計100質量部に対して、0.01~5質量部の範囲内、あるいは、0.01~3質量部の範囲内であることが好ましい。
【0066】
本発明の硬化性シリコーン組成物は、ポリエーテル化合物の含有量が、硬化性シリコーン組成物の合計量に対して0.1質量%以下である。これは、ポリエーテル化合物の含有量が0.1質量%以下であると、高い透明性を有する硬化物が得られるからである。
【0067】
ポリエーテル化合物としては、末端が水酸基、アルコキシ基、又はアシロキシ基のポリエーテル化合物で、主鎖のポリエーテル構造としては、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレンが挙げられる。
【0068】
より詳細には、ポリエーテルとは、一般式:
XO-(CO)(C2nO)(YO)-X
で表されるポリオキシアルキレン化合物である。
【0069】
上式中、Xは同じか又は異なる、水素原子、炭素数1~12のアルキル基、炭素数2~12のアルケニル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数1~12のアシル基、アクリル基、もしくはメタクリル基である。Xのアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基が例示される。また、Xのアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、2-メチル-2-プロペン-1-イル基(いわゆる、メタリル基)、3-ブテン-1-イル基、3-メチル-3-ブテン-1-イル基、4-ブテン-1-イル基、5-ペンテン-1-イル基、4-ビニルフェニル基、4-(1-メチルビニル)フェニル基が例示される。また、Xのアリール基としては、フェニル基、o-メチルフェニル基、p-メチルフェニル基、o-フェニルフェニル基(いわゆる、o-ビフェニル基)、p-フェニルフェニル基(いわゆる、p-ビフェニル基)、p-ノニルフェニル基が挙げられる。
【0070】
また、上式中、Yは炭素数2~20の二価炭化水素基であり、具体的には、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ネオペンチレン基、へキシレン基、1,4-フェニレン基、2-メチル-1,4-フェニレン基、2-フェニル-1,4-フェニレン基、4,4’-(プロパン-2,2-ジイル)ジフェニル基が例示される。
【0071】
また、上式中、nは3~6の整数である。
【0072】
また、上式中、pは、2≦p≦100を満たす整数であり、好ましくは、2≦p≦75、あるいは2≦p≦50を満たす整数である。一方、qは、0≦q≦50を満たす整数であり、好ましくは、0≦q≦30、あるいは2≦q≦30を満たす整数である。
【0073】
また、上式中、rは0又は1である。
【0074】
このようなポリオキシアルキレン化合物は、上記一般式で表される単独もしくは二種以上の混合物からなるポリオキシアルキレン化合物である。ポリオキシアルキレン化合物の一般式中、式:COで表される単位、式:C2nOで表される単位、及び式:YOで表される単位はそれぞれランダムに連結していてもよく、また、それぞれブロック状に連結していてもよい。
【0075】
このようなポリオキシアルキレン化合物としては、次のような化合物が例示される。なお、式中、Meはメチル基を表し、X、X、X、X、及びXは、それぞれメチル基、アリル基、メタリル基、アクリル基、及び水素原子を表し、pは2~100の整数、qは1~50の整数である。なお、いずれの単位もランダムに連結していてもよく、また、ブロックで連結していてもよい。
O(CO)[CHCH(Me)O]
O(CO)[CHCH(Me)O]
O(CO)[CHCH(Me)O]
O(CO)[CHCH(Me)O]
O(CO)[CHCH(Me)O]
O(CO)[CHCH(Me)O]
O(CO)[CHCH(Me)O]
O(CO)[CHCH(Me)O]
O(CO)[CHCH(Me)O]
O(CO)
O(CO)
O(CO)
O(CO)
O(CO)
O(CO)
O(CO)
O(CO)
O(CO)
O(CO)-p-C-C19
O(CO)-p-C-C19
O(CO)-p-C-C19
O(CO)-C
O(CO)-C
O(CO)-C
O(CO)-p-C-CMe-p-C-O(CO)
O(CO)-p-C-CMe-p-C-O(CO)
O(CO)-p-C-CMe-p-C-O(CO)
【0076】
本発明の硬化性シリコーン組成物は、エポキシ基及びアルコキシシリル基を有する化合物の含有量が、硬化性シリコーン組成物の合計量に対して0.1質量%以下である。これは、エポキシ基及びアルコキシシリル基を有する化合物の含有量が0.1質量%以下であると高い透明性を有する硬化物が得られるからである。これは、ポリエーテル化合物が本質的に吸水性を有するため、経時的に組成物中に水分に由来する濁りを生じ、永久的な透明性を損なうためである。
【0077】
エポキシ基及びアルコキシシリル基を有する有機化合物としては、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシランが挙げられる。
【0078】
また、本組成物には、硬化までの時間を制御するため、ヒドロシリル化反応遅延剤を含有してもよい。このヒドロシリル化反応遅延剤遅延剤としては、1-エチニルシクロヘキサン-1-オール、2-メチル-3-ブチン-2-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、2-フェニル-3-ブチン-2-オール等のアルキンアルコール;3-メチル-3-ペンテン-1-イン、3,5-ジメチル-3-ヘキセン-1-イン等のエンイン化合物;1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラヘキセニルシクロテトラシロキサン等のメチルアルケニルシロキサンオリゴマー;ジメチルビス(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)シラン、メチルビニルビス(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)シラン等のアルキンオキシシラン;メチルトリス(1-メチル-1-フェニル-プロピンオキシ)シラン、ジメチルビス(1-メチル-1-フェニル-プロピンオキシ)シラン、メチルトリス(1,1-ジメチル-プロピンオキシ)シラン、ジメチルビス(1,1-ジメチル-プロピンオキシ)シラン等のアルキンオキシシラン化合物;その他、ベンゾトリアゾールが例示される。
【0079】
このヒドロシリル化反応遅延剤の含有量は限定されず、本組成物に十分なポットライフを与えることから、(A)成分~(D)成分の合計100質量部に対して、0.0001~5質量部の範囲内、0.01~5質量部の範囲内、あるいは、0.01~3質量部の範囲内であることが好ましい。ただし、本組成物を加熱/高エネルギー線照射することなく室温で放置して硬化ないし半硬化させる場合、ヒドロシリル化反応遅延剤を含まなくてもよく、かつ、硬化反応の見地から好ましい。
【0080】
さらに、本組成物には、本発明の目的を損なわない限り、必要に応じて、ヒュームドシリカ、湿式シリカ等の金属酸化物微粉末;1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ジビニルジシロキサン、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン等の反応性希釈剤としてのアルケニル基含有低分子量シロキサン;2,6-ジターシャルブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジターシャルブチル-4-ヒドロキシメチルフェノール、2,6-ビス(ヒドロキシメチル)-p-クレゾール等の保存安定性向上剤として作用するヒンダードフェノール化合物、N-ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩等の耐熱性向上剤等の従来公知の添加剤を含有することができる。
【0081】
本組成物には、好適には、硬化物の可塑剤又は粘度調整剤として、非反応性のオルガノポリシロキサンを含んでもよい。具体的には、アルケニル基等の官能基を含まない直鎖状又は分岐鎖状のオルガノポリシロキサンやオルガノポリシロキサンレジンが例示される。特に当該成分を使用することで、硬化状態又は半硬化状態における硬度(針入度)及び流動性(粘度)を所望の範囲に調整することができる。
【0082】
本組成物の25℃における粘度は限定されないが、好ましくは、100,000mPa・s以下、200~100,000mPa・sの範囲内、あるいは、500~30,000mPa・sの範囲内である。これは本組成物の粘度が前記範囲の下限以上であると、得られる硬化物の機械的特性が良好であるからであり、一方、上記範囲の上限以下であると、得られる組成物の取扱作業性が良好であり、硬化物中に空気を巻き込み難くなるからである。なお、これらの粘度は、回転粘度計により測定可能である。
【0083】
本組成物は、(A)成分~(D)成分、必要に応じて、その他任意の成分を、均一に混合することにより調製することができる。本組成物を調製する際に、各種攪拌機あるいは混練機を用いて、常温で混合することができ、必要に応じて、加熱下で混合してもよい。また、各成分の配合順序についても限定はなく、任意の順序で混合することができる。
【0084】
また、本組成物は、全ての成分を同一の容器中に配合する一液型組成物とすることも出来るし、保存安定性を考慮し、使用時に混合する二液型組成物とすることも可能である。
【0085】
本組成物は、室温を含む比較的低い温度範囲(例えば、15~80℃の範囲)で硬化することができる。なお、本組成物の硬化反応は、(C)成分中の触媒金属の濃度や、前述のヒドロシリル化反応遅延剤の種類や含有量により所望の速度に調節することができる。
【0086】
本組成物は、各種のポッティング剤、封止剤、接着剤・粘着剤として有用であり、好ましくは光学粘着剤・接着剤として有用であり、特に、ディスプレイ用光学粘着剤・接着剤として有用である。その硬化物は高温又は高温・高湿下で着色が少なく、濁りを生じにくいことから、ディスプレイの画像表示部と保護部との間の中間層を形成する材料として好適である。
【0087】
本組成物は、液晶ディスプレイに限らず、例えば有機ELディスプレイ、電子ペーパーディスプレイ、プラズマディスプレイ等、表示ディスプレイ分野全般に利用可能である。このような分野での本組成物の利用方法については後述する。
【0088】
本組成物は、比較的低温で硬化が進行するため、耐熱性の乏しい基材のコーティングにも適用することができる。かかる基材の種類としては、ガラス、合成樹脂フィルム・シート・透明電極塗膜等透明基材であることが一般的である。また、本組成物の塗工方法としては、ディスペンス、グラビアコート、マイクログラビアコート、スリットコート、スロットダイコート、スクリーンプリント、ステンシルプリント、コンマコートが例示される。
【0089】
[硬化物]
次に、本発明の硬化物について詳細に説明する。
【0090】
本発明の硬化物(以下、「本硬化物」と称することがある。)は、上記の硬化性シリコーン組成物を硬化させてなることを特徴とする。本硬化物の形状は限定されず、例えば、シート状、フィルム状、テープ状、塊状が挙げられる。また、各種基材と一体となっていてもよい。
【0091】
本組成物は、硬化してエラストマー(弾性体)樹脂部材又はゲル状樹脂部材を形成することが好ましく、硬化後のシリコーン樹脂部材にあっては、25℃において、そのJIS K2220で規定される針入度(以下、単に「針入度」という)が、5~70の範囲にあることが好ましく、針入度が10~60の範囲、20~50の範囲にあることがより好ましい。このようなシリコーン樹脂部材は、適度な柔軟性と耐久性を有し、部材間の接着/密着保持性と追従性に優れるため、表示装置用のギャップシール剤組成物として使用することで、確実な目張り効果を実現することができる。
【0092】
本硬化物の形成方法としては、例えば、フィルム状基材、テープ状基材、又はシート状基材に本組成物を塗工した後、高エネルギー線照射、室温放置もしくは低温加熱によりヒドロシリル化反応を起こさせ、硬化を進行させることができる。また、本組成物を二つの基材の間に配置し、硬化して、両基材を強固に接着する場合と、前記基材の少なくとも一つの表面に本組成物を平滑に塗布し、半硬化させて、非流動化させた後、両基材を貼り合わせ、更に硬化を進めて強固に接着する場合とがある。この硬化物の膜厚は限定されないが、好ましくは、1~100,000μmであり、より好ましくは50~30,000μmである。
【0093】
以下、本発明の実施形態の積層体、光学装置及び光学ディスプレイについて説明する。なお、以下の説明及び図面において、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0094】
[積層体]
図1は、本発明の実施形態の積層体を示す断面図である。本発明の実施形態の積層体1は、第1の光学部材20と、第2の光学部材21と、2つの光学部材20、21の間に配置された本硬化物からなる接着層15と、を備えている。積層体1では、2つの光学部材20、21が接着層15により接着されている。これらの光学部材は透明であっても、不透明であってもよく、一方又は両方の光学部材が、単独の基材であってもよく、バックライトユニットのようにそれ自体が独立した積層体である光学部材であってもよい。なお、本発明の積層体を構成する光学部材は、平面状の広がりを有する板状部分を備えていることが一般的であり、当該板状部位または部材自身が湾曲していてもよく、部材の用途に由来する三次元的な凹凸を備えていてもよい。
【0095】
第1の光学部材20は第1の基材であり、第2の光学部材21は第2の基材である。2つの光学部材20、21は、任意で組み合わせることができる。2つの光学部材20、21は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0096】
光学部材20、21は、光学ディスプレイの構成部材として一般的に使用されるものである。より具体的には、光学部材20、21は、例えば、レンズ(樹脂製又はガラス製であってよい)、光学シート状部材(カラーフィルタ、偏光板、位相差板、視野角拡大フィルム、輝度向上フィルム、反射シート、透明導電性フィルムを含む)、透明であってもよい光学保護材(透明保護材(透明保護フィルム)等であり、ガラス製、樹脂製又は樹脂コーティング層)、前面表示パネル、タッチパネル(ガラス製又は樹脂製)、ITO又はATO膜等の透明電極層であり得る。いうまでもなく、表示パネル又はタッチパネル表面には、光学保護材をさらに備えてもよい。また、光学部材は、後述する発光層及び表示面(表示パネル)を含むバックライトユニットそれ自体であってもよく、光学部材全体が独立した積層部材からなる部品又はタッチパネル等の表示装置内のモジュールであってもよく、当該光学部材内に、本硬化物からなる接着層15をさらに有していてもよい。すなわち、光学部材の概念には、後述する画像表示パネル、光学パネル、前面パネル、バックライトユニット、タッチパネルユニット等が、包含される。
【0097】
光学部材20、21の材質は、上記の用途で一般的に使用されるものであれば特に制限されないが、ガラス、酸化インジウムスズ(Indium Tin Oxide、ITO)等の無機光学材料、又は、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、シクロポリオレフィン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂、液晶ポリアリレート樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂又はこれらの混合物等の有機光学材料が例示される。
【0098】
特に耐熱性が要求される場合には、ポリイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂、液晶ポリアリレート樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂又はこれらの混合物等であり得る。
【0099】
一方、表示デバイス等視認性が求められる用途においては、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、PVA樹脂、ポリカーボネート樹脂、PET樹脂、PEN樹脂又はこれらの混合物等であり得る。
【0100】
光学部材20、21は、光学ディスプレイの構成部材として一般的に施される表面処理が行われていてもよい。表面処理は、例えばプライマー処理又はコロナ処理等であり得る。
【0101】
2つの光学部材が互いに異なる場合、例えば2つの光学部材の熱膨張率差に起因して2つの光学部材が接着界面で剥がれることがある。本接着層は柔軟性を有するため、熱膨張率差の影響を小さくすることができ、互いに異なる2つの光学部材20、21を良好に接着することができる。したがって、本接着相は、互いに異なる光学部材の接着、特に熱膨張率差の大きい有機材料と無機材料との接着に好適に用いられる。
【0102】
なお、図1に示す積層体1は、2つの光学部材を備えているが、複数の光学部材を備えていれば光学部材の数は特に制限されない。
【0103】
また、図1に示す接着層15は、2つの光学部材20、21の間に全体にわたって形成されているが、2つの光学部材20、21の間の一部に形成されていてもよい。また、図2に示す接着層15は、2つの光学部材20、21の間に形成されているが、光学部材20の接着面20aの反対側の面20bに形成されていてもよく、光学部材21の接着面21bの反対側の面21aに形成されていてもよく、両方の面20b及び21aに形成されていてもよい。
【0104】
以下、本発明の実施形態における積層体の製造方法について説明する。
【0105】
図2は、本発明の実施形態における積層体の製造方法を示すフローチャートである。本発明の一実施形態の積層体の製造方法は、前記(c1)高エネルギー線の照射なしで活性を示すヒドロシリル化触媒を少なくとも含有する上記の硬化性シリコーン組成物を二つの光学部材のうち少なくとも一方の部材の一面又は両面に配置し、前記二つの光学部材を前記硬化性シリコーン組成物を介して貼り合わせる配置及び貼り合わせ工程S1、及び放置若しくは加熱して前記組成物のヒドロシリル化反応を進行させて前記組成物を硬化させる硬化工程S2を含む。
【0106】
上記の配置工程S1では、例えば上述した塗工方法を用いて本組成物を部材上に配置する。上記の配置工程S1では、一方の光学部材の一面に本組成物を配置してもよい。また、光学部材の両面に配置された硬化物であって他の光学部材との貼り合わせに使用されない硬化物は、接着面として剥離層や他の部材への接合に用いてもよい。
【0107】
また、別の実施形態において、上記の配置工程S1では、二つの光学部材のそれぞれの一面に本組成物を配置してもよい。
【0108】
上記の実施形態において、「一面」とは、他方の光学部材と対向する面である。
【0109】
さらに、別の実施形態において、上記の配置工程S1では、上記の一面とは反対側に位置する他面にも本組成物を配置してもよい。
【0110】
上記の硬化工程S2では、本組成物を室温(25℃)を含む低温領域(15~80℃)で硬化させる。なお、本発明の実施形態において、「低温」とは、例えば15℃~80℃の温度範囲をいう。15~80℃の温度範囲で本組成物(半硬化物を含む)の反応を進行させる場合、好適には室温付近(加熱又は冷却を行うことなく到達できる温度範囲であって、20~25℃の温度領域を特に含む)で、当該組成物を放置してもよく、室温以下15℃以上に冷却してもよく、室温以上80℃以下に加熱してもよい。
【0111】
本発明のさらなる実施形態における積層体の製造方法は、前記(c2)高エネルギー線の照射により活性を示すヒドロシリル化触媒を少なくとも含有する上記の硬化性シリコーン組成物を二つの光学部材のうち少なくとも一方の部材の一面又は両面に配置し、前記二つの光学部材を前記硬化性シリコーン組成物を介して貼り合わせる配置工程S1、及び透明基材を通して高エネルギー線照射後、放置若しくは加熱して前記組成物のヒドロシリル化反応を進行させて前記組成物を硬化させる硬化工程S2を含む。
【0112】
上記の硬化工程S2では、高エネルギー線を照射する。これにより、本組成物を硬化させた本硬化物を得る。高エネルギー線は、上述のものであり、好ましくは紫外線である。
【0113】
図3は、本発明のさらなる別の実施形態における積層体の製造方法を示すフローチャートである。本発明のさらなる別の実施形態における積層体の製造方法は、以下の工程を有する。
工程i):前記(c2)高エネルギー線の照射により活性を示すヒドロシリル化触媒を少なくとも含有する上記の硬化性シリコーン組成物を二つの光学部材のうち少なくとも一方の部材の一面又は両面に配置する工程S1
工程ii):工程i)で配置された前記組成物に高エネルギー線照射を行い、当該組成物を非流動性の半硬化状態にする工程S21
工程iii):工程ii)の後、前記二つの光学部材を半硬化状態の前記硬化性シリコーン組成物を介して貼り合わせる工程S3
工程iv):工程iii)で貼り合わせた前記二つの光学部材を、15~80℃の温度範囲で前記組成物のヒドロシリル化反応を進行させ、前記組成物を本硬化させる工程S22
【0114】
上記の半硬化工程S21では、本組成物に高エネルギー線を照射する。これにより、ヒドロシリル化反応を進行させた半硬化物を得る。
【0115】
上記の硬化工程S22では、図2の硬化工程S2と異なり、半硬化物を15~80℃の温度範囲で硬化反応を進行させ、本硬化せしめる。これにより、半硬化物をさらに硬化させた本硬化物を得る。
【0116】
本発明のさらなる実施形態における積層体の製造方法は、以下の工程を有する。
工程i):前記(c1)高エネルギー線の照射なしで活性を示すヒドロシリル化触媒と、前記(c2)の高エネルギー線の照射により活性を示すヒドロシリル化触媒との両方を含有する上記の硬化性シリコーン組成物を二つの光学部材のうち少なくとも一方の部材の一面又は両面に配置する工程S1であって、少なくとも一方の部材として透明な光学部材を用いる工程
工程ii):工程i)で配置された前記組成物を室温で放置若しくは加熱して前記組成物のヒドロシリル化反応を進行させ、当該組成物を非流動性の半硬化状態にする工程S21
工程iii):工程ii)の後、前記二つの光学部材を半硬化状態の前記硬化性シリコーン組成物を介して貼り合わせる工程S3
工程iv):工程iii)で貼り合わせた前記二つの光学部材について、前記透明な光学部材を通して、前記硬化性シリコーン組成物に高エネルギー線照射を行った後、15~80℃の温度範囲で半硬化状態の前記組成物のヒドロシリル化反応を進行させ、前記組成物を本硬化させる工程S22
【0117】
上記の半硬化工程S21では、本組成物を15~80℃の温度範囲で反応を進行させる。これにより、ヒドロシリル化反応を進行させた半硬化物を得る。
【0118】
上記の硬化工程S22では、図2の硬化工程S2と異なり、半硬化物に高エネルギー線を照射する。これにより、半硬化物をさらに硬化させた本硬化物を得る。
【0119】
本発明の別の実施形態における積層体の製造方法は、以下の工程を有する。
工程i):(c1)高エネルギー線の照射なしで活性を示すヒドロシリル化触媒を少なくとも含有する上記の硬化性シリコーン組成物を二つの光学部材のうち少なくとも一方の部材の一面又は両面に配置する工程S1
工程ii):工程i)で配置された前記組成物を15~80℃の温度範囲で前記組成物のヒドロシリル化反応を進行させ、当該組成物を非流動性の半硬化状態にする工程S21
工程iii):工程ii)の後、前記二つの光学部材を半硬化状態の前記硬化性シリコーン組成物を介して貼り合わせる工程S3
工程iv):工程iii)で貼り合わせた前記二つの光学部材を、さらに、15~80℃の温度範囲で半硬化状態の前記組成物のヒドロシリル化反応を進行させ、前記組成物を本硬化させる工程S22
【0120】
上記の半硬化工程S21では、本組成物を15~80℃の温度範囲で反応を進行させる。これにより、ヒドロシリル化反応を進行させた半硬化物を得る。
【0121】
上記の硬化工程S22では、図2の硬化工程S2と異なり、半硬化物を15~80℃の温度範囲で、さらに、硬化反応を進行させ、本硬化せしめる。これにより、半硬化物をさらに硬化させた本硬化物を得る。
【0122】
[光学装置]
本発明の実施形態の光学装置(以下、「本光学装置」と称することがある。)は、基材と、基材に配置された光学素子と、光学素子の少なくとも一部を封止する本硬化物と、を備えている。
【0123】
本光学装置は、例えば光半導体装置である。光半導体装置としては、発光ダイオード(LED)、フォトカプラー、CCDが例示される。また、光半導体素子としては、発光ダイオード(LED)素子、固体撮像素子が例示される。特に、多数の小型LED素子が基板上に配置された構造を有する、いわゆるMicro LED(ミニLED)をまとめて封止する場合でも、本発明の硬化性シリコーン組成物を好適に使用することができる。その際、アリール基の含有量等の官能基の種類を選択することで、硬化物の屈折率を所望により調整してもよい。さらに、本発明の硬化性シリコーン組成物は耐熱性及び耐湿性に優れることから、透明性の低下を起こしにくく、濁りを生じにくい。そのため、Micro LEDを含む光半導体装置の光取り出し効率を良好に維持できる利点がある。
【0124】
以下、本光学装置の一例としてLEDを説明するが、これに制限されない。図4は、本発明の実施形態にかかるMicro LEDを示す平面図である。図5は、本発明の実施形態にかかるMicro LEDを示す断面図である。
【0125】
図4及び5に示すLED100は、4行4列のLED素子(光学素子)101がそれぞれリードフレーム(基材)102上にダイボンドされ、これらのLED素子101とリードフレーム102とがボンディングワイヤ104(図4では図示しない)によりワイヤボンディングされている。これらのLED素子101の周囲には枠材105が設けられており、この枠材105の内側のLED素子101が、本硬化物106により封止されている。
【0126】
なお、図4及び5に示すMicro LED100では、4行4列のLED素子が本硬化物に封止されているが、LED素子の数や配置はこれに限定されない。また、本発明の実施形態の硬化性シリコーン組成物は、単体の表面実装型のLEDにおける封止材としても適用可能である。
【0127】
図6は、本発明の別の実施形態にかかるMicro LED100Aを示す断面図である。
【0128】
LED素子101は基板102上に配置されている。LED素子101は、任意に接着層を介して基板102上に配置されてもよい。LED素子101は、本硬化物106により封止されている。
【0129】
基板102は、任意で電極を備えてもよく、基板102の表面及び内部には、その他の光学素子又は部材が配置されていてもよい。
【0130】
表層103は、本硬化物106を基準に基板102の反対側に配置されている。表層103は、複層であってもよいガラス、PET等の透明層であり、内部に透明接着層を備えてもよい。なお、この透明接着層は、本硬化物であってもよい。
【0131】
図7は、本発明の実施形態にかかるリードフレーム上に赤(R)、緑(G)、青(B)の発光素子が一組で配置されたMicro LED100Bの断面図である。たとえば、図7のように、光の三原色である、赤(R)、緑(G)、青(B)に対応した3種の発光半導体(LED)素子101R、101G、101Bを一組としてリードフレーム102上に配置し、枠材を用いて又は枠材を用いることなく、本硬化物106により封止することができる。
【0132】
本光学装置の製造方法は、
本組成物を加熱することによりヒドロシリル化反応を進行させた組成物を得てから基材に配置された光学素子上に加熱後の組成物を配置する配置工程S1、又は
基材に配置された光学素子上に本組成物を配置してから本組成物を加熱することによりヒドロシリル化反応を進行させた組成物を得る加熱工程のいずれか1つを含み、
高エネルギー線を照射して加熱後の組成物を硬化させる硬化工程をさらに含む。
【0133】
なお、本光学装置の製造方法における配置工程S1では、本組成物を加熱する代わりに室温を低温含む低温領域(15~80℃)で放置することによりヒドロシリル化反応を進行させた組成物を得てから基材に配置された光学素子上にその組成物を配置することもできる。
【0134】
図4及び5に示すMicro LEDを製造する方法としては、まず、4つのLED素子101をリードフレーム102にそれぞれダイボンドし、これらのLED素子101とリードフレーム102とを金製のボンディングワイヤ104によりそれぞれワイヤボンドする。
【0135】
次いで、4つのLED素子101の周囲に設けられた枠材105の内側に本組成物を充填(配置)した後、0~200℃で放置することにより硬化させる。本発明の別の実施形態では、本組成物を0~200℃で放置した後、組成物をLED素子101の周囲に設けられた枠材105の内側に配置する。
【0136】
さらに、高エネルギー線を照射して加熱後の組成物を硬化させる。このようにして、4つのLED素子101が本硬化物106により封止されたLED100を得ることができる。
【0137】
[光学ディスプレイ]
図8は、本発明の実施形態の光学ディスプレイを示す断面図である。本発明の実施形態の光学ディスプレイ200は、上記の積層体1と、画像表示パネル201と、を備えている。
【0138】
積層体1と、画像表示パネル201とは接着剤層(図示なし)を介して接着されている。この接着剤層は、本硬化物で構成されていてもよい。
【0139】
図8に示す光学ディスプレイ200では、積層体1の第2の光学部材21が接着剤層に接している。図8に示す光学ディスプレイ200において、例えば積層体1の第1の光学部材20は偏光フィルムであり、第2の光学部材21は位相差フィルムであり得る。また、別の実施形態においては、例えば積層体1の第1の光学部材20は偏光フィルムであり、第2の光学部材21は表面保護フィルムであり得る。
【0140】
画像表示パネル201は、画像情報を表示するものであれば特には限定されるものではなく、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)の場合、偏光フィルム、位相差フィルム、カラーフィルタ、視野角拡大フィルム、輝度向上フィルム、反射シート等の光学フィルム、液晶材料、透明基板及びバックライトシステムから構成される(通常、感圧接着部品又は感圧接着層の画像表示パネルに対する被着面は光学フィルムとなる)ものであり、液晶材料の制御方式によりSTN方式やVA方式やIPS方式等があるが、何れの方式であってもよい。また、画像表示パネル201は、タッチパネル機能をTFT-LCD内に内蔵したインセル型であっても、偏光板とカラーフィルタを設けたガラス基板の間にタッチパネル機能を内蔵したオンセル型であってもよい。一方、有機ELディスプレイの場合、画像表示パネル201は有機EL素子基板又は有機EL素子基板とその他の光学フィルム等の積層体から構成される。
【0141】
光学ディスプレイ200は、ブラウン管(Cathode Ray Tube、CRT)ディスプレイ、又はフラットパネルディスプレイ(FPD)であり得る。FPDとしては、例えば、LCD、エレクトロクロミックディスプレイ(ECD)等の受光型表示装置、又は有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイ等の電界発光ディスプレイ(ELD)、プラズマディスプレイ(PDP)、表面伝導型電子放出素子ディスプレイ(SED)等の電界放出型ディスプレイ(FED)、LEDディスプレイ等の発光型表示装置が挙げられる。
【0142】
図9は、本発明の別の実施形態の光学ディスプレイを示す断面図である。本発明の別の実施形態の光学ディスプレイ300Aは、画像表示パネル301と、光学部材20と、画像表示パネル301と光学部材20との間に配置された本硬化物からなる接着層15と、を備えている。
【0143】
画像表示パネル301は第1の部材であり、光学部材20は第2の部材である。
【0144】
画像表示パネル301は、画像表示パネル201で例示したものであり得る。
【0145】
光学ディスプレイ300Aは、例えば、光学部材20を画像表示パネル301の一方の面301aに本組成物からなる組成物層を介して配置した後、組成物層を15~80℃の温度範囲で半硬化させ、さらに組成物層に高エネルギー線を照射して硬化させることにより得ることができる。なお、15~80℃の温度範囲における半硬化のプロセスは、高エネルギー線の照射により置き換えてもよく、高エネルギー線を照射して硬化させるプロセスは、15~80℃の温度範囲で硬化させるプロセスに置き換えることができる。
【0146】
本発明の別の実施形態では、例えば、光学部材20の一方の面20aに形成した本組成物からなる組成物層を15~80℃の温度範囲で半硬化させた後、光学部材20を画像表示パネル301の一方の面301aに半硬化させた組成物層を介して配置し、さらに組成物層に高エネルギー線を照射して硬化させることにより得ることができる。なお、15~80℃の温度範囲における半硬化のプロセスは、高エネルギー線の照射により置き換えてもよく、高エネルギー線を照射して硬化させるプロセスは、15~80℃の温度範囲において硬化させるプロセスに置き換えることができる。
【0147】
図10は、本発明の別の実施形態の光学ディスプレイを示す断面図である。本発明の別の実施形態の光学ディスプレイ300Bは、画像表示パネル301と、タッチパネル302と、画像表示パネル301と、タッチパネル302との間に配置された本硬化物からなる接着層15と、を備えている。
【0148】
タッチパネル302は、特に制限されるものではなく、抵抗膜方式、静電容量方式、電磁誘導方式又はこれらの組み合わせ等のいずれであってもよい。タッチパネル302は、少なくとも1つの、カバーフィルム、ITO又はATO膜等の透明電極層、又は、ガラス基板を備えるものが好ましい。なお、タッチパネルは装飾フィルム等をさらに含んでもよい。
【0149】
本発明の実施形態の光学ディスプレイでは、液晶・有機EL等の表示部と、タッチパネル、カバーレンズ等のディスプレイ形成部材との間、あるいはディスプレイ形成部材間を、本発明の硬化性シリコーン組成物の硬化物により接着もしくは粘着することにより、光学ディスプレイの視認性を向上させることができる。
【0150】
ディスプレイの画像表示面はフラット(平面)でもよく、曲面乃至湾曲した形状でもよい。
【0151】
本発明の実施形態の光学ディスプレイは、例えば、携帯電話、固定電話等の通信機器;タブレット端末、デスクトップ端末、ノート型端末等のコンピュータ機器;TV;プリンタ;ATM(現金自動預け払い機);車載用モニター又はナビゲーションシステム;デジタルカメラ;ビデオカメラ;医療機器;PDA(モバイル端末);時計;電子ペーパー;CD、DVDまたはBlue-rayディスクプレーヤー;SSMやHD等の固体電子記録媒体再生機;電子書籍機器;携帯ゲーム機器、固定ゲーム機器等の遊戯機器;POSシステム;魚群探知機;自動券売機;計器盤等の用途に適用される。
【0152】
さらに、本発明の実施形態の光学ディスプレイは、上記の構成以外にも、第1の光学部材、画像表示パネル又は第1のタッチパネルのいずれか1つの第1の部材と、第2の光学部材、透明保護部材又は第2のタッチパネルのいずれか1つの第2の部材と、第1の部材と、第2の部材との間に配置された本硬化物からなる接着層と、を備えてもよい。
【0153】
具体的には、必要に応じて、表示モジュールに枠状に樹脂部材、いわゆるダム材を形成し、その内側に光学弾性樹脂(以下「OCR(Optically Clear Resin)」という。)を塗布し、その上から前面パネルを貼り合せることができる。また、注入ないし配置する部位に応じて、シリンジ、カートリッジ等のディスペンサーを用いて、本発明にかかる硬化性シリコーン組成物を注入して充填し、OCRを配置してもよい。さらに、表示モジュールの構造およびOCRの粘度及び塗布形態に応じて、ダム材を表示モジュールの一部のみに設けてもよく、まったく設けない構造、いわゆるダムレス構造として、OCRによる貼り合わせを行ってもよい。
【0154】
なお、前面パネルを有する表示装置を製造する上で必要となるOCR塗布工程(オプティカルボンディングの場合)、又は貼り合せ工程等については前記減圧環境下に限定されることなく、大気圧環境下における公知の貼り合せ方法を採用してもよい。例えば大気圧環境下で前面パネル側にOCRを塗布し、前面パネルを反転させて表示モジュールと貼り合せる方式(反転貼り合せ方式)や、前面パネルと表示モジュールとの間に所定のギャップ量を確保して平行配置し、そのギャップ間にOCRを充填する方法(ギャップディスペンス方式)などであってもよい。
【0155】
本発明の光学ディスプレイの典型的な製造法としては、例えば、ダム-フィル法を挙げることができる。具体的には、カバーレンズとして用いられるガラスやポリカーボネート等の有機光学樹脂上に、ダム材料をディスプレイの形状に合わせて1mm以下の幅でディスペンスし、種々の方法で硬化させる。その後、本発明の硬化性シリコーン組成物をディスペンスし、画像表示パネルを貼り合わせ、比較的低温(例えば、40℃)で加熱することにより該シリコーン組成物を硬化させ、光学ディスプレイを製造する方法が挙げられる。
【0156】
ここで、ダム材料としては、チクソ性を有する紫外線硬化型、室温硬化型、もしくは加熱硬化型の液状材料を使用することが出来る。熱衝撃(いわゆるサーマルサイクル)に対する高耐性を考慮し、紫外線硬化型シリコーン材料を好ましく使用することができる。
【0157】
また、本発明の光学ディスプレイでは、比較的低温、具体的には、40℃以下の温度で速やかに硬化するので、熱に不安定な材料の変形や劣化、さらには、高温高湿下に曝されても硬化物に濁りや着色を生じ難いので、光学ディスプレイの信頼性を向上させることができる。
【0158】
本発明の実施形態の光学ディスプレイは、さらに、
前記前面パネルの前記表示面に対向する面に設けられ、透明導電膜が形成された面を有するシールド基板をさらに備え、
前記透明導電膜と前記ベゼルとが導電性材料を介して電気的に接続された構造を備えた表示装置であってよい。
【0159】
例えば、表示装置において、表示モジュールと前面パネルとの間に、さらに、片面に導電層を備えた電磁妨害(Electro-Magnetic Interference、EMI)基板等のシールド基板を挿入することができる。このようなシールド基板は電磁波遮蔽機能を有するので、表示モジュールから放射される電磁波によって前面パネルが誤動作することを防ぐ。また、当該シールド基板の片面には、ITO等の透明導電膜からなる導電層が一様に又はメッシュ状に形成されている。そして、当該導電層の電位を表示モジュールのGNDに設定するため、ベゼルの外周に配置する接着部材等を、例えばAgペースト等の導電性接着部材で形成することもできる。なお、表示モジュールのベゼルは、金属製であり、表示モジュール内でGND接続されている。ここで、接着部材を導電性材料とすることで、金属製のベゼルと前記のシールド基板の導電層とを確実にGND接続できるため、電磁波耐性の強い表示装置を提供することができる。
【0160】
図11は、本発明の別の実施形態の光学ディスプレイを示す分解斜視図である。図12は、本発明の別の実施形態の光学ディスプレイを示す部分断面図であり、図11に示す光学ディスプレイの部分断面図である。
【0161】
図11及び図12に示すように、本発明にかかる表示装置400(光学ディスプレイ)は、表示面111を有する表示パネル110と、枠部121と枠部121の内側の開口端122とを有し、表示パネル110の表示面111側の周縁を枠部121で覆うベゼル120と、表示パネル110の表示面111側にベゼル120を挟んだ状態で設けられた前面パネル130と、ベゼル120の開口端122の直下であって、ベゼル120と表示面111との重なり部位に生じた間隙172を表示面111に対して垂直方向に空隙を有さずに充填する樹脂部材140と、表示面111と前面パネル130との間に充填されたOCR150と、を備えている。ここで、表示面111とは、表示パネル110の前面パネル130側の面全域を指す。
【0162】
バックライトユニット171上に表示パネル110が搭載され、ベゼル120とバックライトユニット171とが嵌合構造(図示せず)により固定されることにより、表示モジュール170が構成されている。表示モジュール170とタッチパネル等の前面パネル130とは、OCR150を介して全面が貼り合されている。
【0163】
本発明の実施形態では、前面パネル130の内層、OCR150、ベゼル下の樹脂部材140等に本発明の硬化性シリコーン組成物を適用可能である。なお、これらの用途に限定されず、図11及び図12に示す各部材内又は各部材間の接合に及び充填に本発明の硬化性シリコーン組成物を使用することができる。
【0164】
図13図15は、本発明の別の実施形態の光学ディスプレイを示す部分断面図である。なお、図13~15は、図12に対応する図である。
【0165】
図13に示される部分断面図には、図12に示すベゼル120上にさらにダム(樹脂部材)140を設け、前面パネル130との空間173を本硬化物からなるOCR150で充填した構造、いわゆる二段ダム構造が示されている。
【0166】
また、図11~13に示すベゼル120は必須ではない。図14に示される部分断面図には、ベゼル120を配置せずに、バックライトユニット170A上にダム140を設け、前面パネル130との空間173を本硬化物からなるOCR150で充填した構造が示されている。
【0167】
さらに、図14に示される部分断面図には、ベゼル120及びダム140を設けずに、前面パネル130との空間173を本硬化物からなるOCR150で充填した構造、いわゆるダムレス構造が示されている。図14に示す構造は、本組成物の半硬化時に非流動化させることで実現することができる。
【0168】
[まとめ]
当該表示装置は、前記表示面と前面パネルとの間が実質的に透明な光学弾性体樹脂部材又は光学ゲル状樹脂部材により充填された構造を備えた表示装置であることが好ましい。このような光学弾性体樹脂部材又は光学ゲル状樹脂部材をOCRとして、オプティカルボンディングに用いることで、当該表示装置の表示性能及び耐久性を改善し、高信頼性の表示装置を提供できる。
【0169】
このようなOCRは硬化性樹脂組成物を硬化させてなることが好ましく、前記の針入度、せん断接着強度、及び最大接着強度で試料厚みに対する変位の割合にかかる物理的性質を有し、UV光の照射を含む光硬化により形成された、シリコーン樹脂硬化物(部材)が例示される。
【0170】
また、本組成物は、硬化後の高温高湿条件下においても透明性を維持することができる。一方、例えば表示パネルの表示面側の周縁を枠部で覆うベゼルを有しない種類の表示装置においては、表示品位に対するOCRの透明性の影響が大きいと考えられている。そのため、このようなベゼルを有しない種類の表示装置に好適に用いることができる。また、ベゼルを有しない種類の表示装置に限らず、透明性の高い積層体及び光学装置を提供することができる。
【0171】
さらに、本組成物は、接着強度に優れている。そのため、信頼性の高い積層体、光学装置及び光学ディスプレイを提供することができる。
【0172】
さらに、本組成物は、接着力が一定時間経過後に大きく上昇するという接着挙動を示す。すなわち、本組成物は、優れたリワーク性を有する。そのため、例えば貼り合わせ精度が求められるプロセスに好適に用いることができる。
【0173】
以上、上記実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記各実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細については、当業者が理解し得るさまざまな変更を加えることができる。また、本発明には、上記各実施形態の構成の一部又は全部を相互に適宜組み合わせたものも含まれる。
【0174】
例えば、各実施形態では全面貼り合せ用のOCRとしてUV硬化型の場合を説明したが、これに限らず、熱硬化型や湿気硬化型、又はこれらの複合硬化型等の場合であっても同様の効果が得られる。
【0175】
また、本発明の技術的効果を損なわない範囲内であれば、ダム材として前記ベゼルと表示パネルの間の間隙を充填するシリコーン樹脂部材の外側にさらなるダム材を設けて同間隙の一部又は全部を塞ぐ構造を採ることを妨げるものではない。たとえば、意匠上ベゼルの一部に特殊な形状を採用し、上記の方法をもってしても間隙を完全に塞ぐことができない場合などには、ピンポイントで当該箇所にダム材である硬化性樹脂組成物を注入してもよい。
【0176】
さらに、前面パネルの形状は四角形状の場合について説明したが、四角形である必要はなく、任意の多角形、曲線部を有する平板、あるいはこれらの組み合わせであってもよく、さらには立体形状であっても構わない。さらに、上述したように、ディスプレイの画像表示面はフラット(平面)でもよく、曲面乃至湾曲した形状でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0177】
本発明の硬化性シリコーン組成物及びその硬化物は、透明性が高く、接着強度にも優れるため、光学ディスプレイやタッチパネルに好適に使用することができる。また、接着力が一定時間経過後に大きく上昇する性質を示すため、リワーク性にも優れており、光学装置又は光学ディスプレイを製造する際の工程ロスを減少させることができる。
【0178】
本発明の硬化性シリコーン組成物は、硬化性に優れ、接着力が一定時間経過後に大きく上昇するという接着挙動を有し、高温高湿に曝されても、透明性を維持し、濁りや着色を生じ難い硬化物を形成するので、光学ディスプレイ等の表示装置(タッチパネルを含む)や光半導体装置(Micro LEDを含む)に使用する接着剤や粘着剤として有用である。さらに、本発明の硬化性シリコーン組成物は、光学ディスプレイ等に限らず、透明部材の貼り合わせ又は充填に制限なく利用することができ、たとえば、太陽電池セル、複層ガラス(スマートガラス)、光導波路、プロジェクターレンズ(複層型レンズ、偏光/光学フィルムの貼り合わせ)などの接着層に使用することができる。
【0179】
これに加えて、本発明の硬化性シリコーン組成物は、硬化物の硬化収縮が小さいため、ディスプレイや光学部材の欠陥、写りムラ等の表示不良を抑制できるという、シリコーンOCRの一般的な長所を有することに加えて、上記の柔軟な性質を備えることから接着部材への追従性が高く、かつ、一定時間経過後に強い接着力を発現することから、部材間の剥離を有効に抑制し、平面表示面又は湾曲した表示面を有する車載ディスプレイ、上記のプロジェクターレンズを利用したヘッドアップディスプレイなどの光学接着層に好適に使用することができる。
【実施例
【0180】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。また、実施例中の測定及び評価は次のようにして行った。
【0181】
[オルガノポリシロキサン及び硬化性シリコーン組成物の粘度]
回転粘度計(トキメック株式会社製のE型粘度計VISCONIC EMD)を使用して、25℃における粘度(mPa・s)を測定した。
【0182】
[硬化物の針入度と硬化・未硬化の判定]
厚みが10mm以上の硬化性シリコーン組成物をシャーレ中、25℃で48時間放置して硬化させ、針入度測定装置(離合社製のRPM-201)を使用して、25℃における針入度を測定した。流動性がある場合は、未硬化と判定した。
【0183】
[硬化物のせん断接着強度]
2枚のガラス板(縦75mm×横25mm×厚さ2mm)の間に、硬化後のシリコーン硬化物の寸法が縦25mm×横25mm×厚さ200μmとなるように硬化性シリコーン組成物を充填し、室温で2時間及び48時間加熱することにより、前記組成物を硬化させ、2枚のガラス板に挟まれた硬化物からなる試験体を作製した。この試験体を、JIS K6850に規定される方法に準じてせん断接着試験を行ない、硬化物のせん断接着強度を測定した。
【0184】
[硬化物の外観及び黄色度]
2枚のガラス板(縦75mm×横25mm×厚さ2mm)の間に、硬化後のシリコーン硬化物の寸法が縦25mm×横25mm×厚さ200μmとなるように硬化性シリコーン組成物を充填した試験体を、25℃で48時間放置した。硬化したものについては、恒温恒湿オーブンで85℃85%相対湿度の条件で500時間試験体を放置し、オーブンから取り出して、24時間室温で放置した後に目視で濁りの有無を判定した。いくつかの例については、着色度b*の測定を同じ試験体で行った。
【0185】
[硬化物のせん断接着強度及び伸び率]
2枚のガラス板(縦75mm×横25mm×厚さ2mm)の間に、硬化後のシリコーン硬化物の寸法が縦25mm×横25mm×厚さ200μmとなるように硬化性シリコーン組成物を充填し、40℃のオーブン中で1時間加熱することにより、前記組成物を硬化させ、2枚のガラス板に挟まれた硬化物からなる試験体を作製した。この試験体を、JIS K6850に規定される方法に準じてせん断接着試験を行ない、接着強度を測定した。同時に、硬化物の厚みに対する破断時変形量の割合を伸び率(%)として記録した。
【0186】
[ポットライフ、硬化挙動]
いくつかの例について、レオメーターAR550で下記に定義するポットライフ、非流動化時間、ゲル化時間を測定した。
ポットライフ:25℃での2倍粘度到達時間
非流動化時間:25℃での貯蔵弾性率1KPa到達時間
ゲル化時間:25℃での損失正接1到達時間
【0187】
[信頼性試験]
いくつかの例について、下記条件での耐久性試験を行い、上記の針入度、せん断接着強度、せん断接着伸び率、着色度b*を測定した。
高温保持試験:85℃、1000時間
低温保持試験:-40℃、1000時間
冷熱サイクル試験:-40℃~125℃、500サイクル
温湿度保持試験:60℃、90%RH、1000時間
紫外線試験:1.55W/m2、340nm、300時間
【0188】
[実施例1~13、比較例1~13]
下記の成分を用いて、表1に示す組成(質量部)の硬化性シリコーン組成物を調製した。各構造式において、Meはメチル基であり、Viはビニル基であり、Phはフェニル基であり、Epはエポキシ基である。
【0189】
(A)成分として、次の成分を用いた。
a1-1:ViMeSiO(SiMeO)232OSiMeVi
a1-2:ViMeSiO(SiMeO)372OSiMeVi
a1-3:ViMeSiO(SiMeO)233(SiMePhO)24OSiMeVi
a1-4:ViMeSiO(SiMePhO)31OSiMeVi
a2-1:(ViMeSiO1/20.046(MeSiO1/20.394(SiO4/20.56
【0190】
(B)成分として、次の成分を用いた。
b1-1:HMeSiO(SiMeO)24OSiMe
b1-2:PhSi(OSiMeH)
b2-1:(HMeSiO1/20.63(SiO4/20.37
b2-2:(HMeSiO1/20.60(PhSiO3/20.40
【0191】
(C)成分として、次の成分を用いた。
c1-1:白金 1,3―ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体
c2-1:(メチルシクロペンタジエニル)トリメチル白金(IV)
【0192】
(D)成分として、次の成分を用いた。また、比較成分としてd1’で始まる以下の成分を利用した。
d1-1:1,6-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン
d1-2:1,3-ビス(トリメトキシシリルエチル)テトラメチルジシロキサン
d1-1(比較成分):3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
d1’-2(比較成分):3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン
d1’-3(比較成分):5-ヘキセニルトリメトキシシラン
d1’-4(比較成分):デシルトリメトキシシラン
d1’-5(比較成分):多摩化学工業(株)製シリケート40(テトラメチルオルトシリケート縮合物)
【0193】
その他の任意成分成分として、次の成分を用いた。
任意成分-1:MeSiO(SiMeO)450(SiMePhO)40OSiMe
任意成分-2:(ViMeSiO1/20.18(EPMeSiO2/20.29(PhSiO3/20.53
【0194】
また、ポリエーテル成分として、次の成分を用いた。
ポリエーテル成分-1:CH=C(Me)-CHO(CHCHO)34(CHCHMeO)26CH-C(Me)=CH
【0195】
表1-1 硬化性シリコーン組成物の組成(実施例1~7)
【表1】


表1-2 硬化性シリコーン組成物の組成(実施例8~13)
【表1】

*波長365 nmの紫外線を2J/cmで照射後、25℃で硬化。
【0196】
表2-1 硬化性シリコーン組成物の組成(比較例1~6)
【表2】


表2-2 硬化性シリコーン組成物の組成(比較例7~13)
【表2】

【0197】
実施例1~13に示すとおり、本発明にかかる硬化物は85℃85%相対湿度の条件で500時間放置した後でも濁りを生じず、2時間硬化後(初期)において低い初期接着強度を有するが、48時間硬化後(後期)において高いせん断接着強度を発現するものである。なお、比較的低い温度領域における硬化(実施例1~8、10~12)だけでなく、実施例9に示すとおり、光反応性のヒドロシリル化触媒を用いた場合でも、同様に優れた硬化性、透明性を実現することができ、時間経過による高いせん断接着強度を発現することができた。
【0198】
一方、ポリエーテル化合物を含む比較実験(比較例13)及び3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを大量に含む比較実験(比較例7)においては、類似組成であるにも関わらず、85℃85%相対湿度の条件で500時間放置した後の硬化物に濁りが生じ、光学的透明性が損なわれることから、特に、OCRとしての使用に適さないものであった。また、本発明の(D)成分以外の接着付与剤では、時間経過による十分な接着強度の増大は認められなかった。
【0199】
表1に加えて、実施例5については、更に関連するその他の物性を測定した結果を表3に示す。
表3 実施例5の物性
【表3】
【符号の説明】
【0200】
1 積層体
15 接着層
20 第1の光学部材
20a 接着面
20b 面
21 第2の光学部材
21a 面
21b 面
100、100A LED
101、101B、101G、101R LED素子(光学素子)
102 リードフレーム(基材)
103 透明層104 ボンディングワイヤ
105 枠材
106 本硬化物
110 表示パネル
111 表示面
120 ベゼル
121 枠部
122 開口端
130 前面パネル
140 樹脂部材(ダム)
150 OCR
170、170A 表示モジュール
171 バックライトユニット
172 間隙
173 空間
200 光学ディスプレイ
201 画像表示パネル
300A 光学ディスプレイ
300B 光学ディスプレイ
301 画像表示パネル
301a 面
302 タッチパネル
400 表示装置(光学ディスプレイ)
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