(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-12
(45)【発行日】2023-10-20
(54)【発明の名称】硬化性シリコーン組成物、前記組成物からなる剥離コーティング剤、前記剥離コーティング剤を用いた剥離フィルム、並びに前記剥離フィルムを含む積層体
(51)【国際特許分類】
C08L 83/08 20060101AFI20231013BHJP
C08L 83/05 20060101ALI20231013BHJP
C09D 183/04 20060101ALI20231013BHJP
C09D 7/20 20180101ALI20231013BHJP
C09J 7/40 20180101ALI20231013BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20231013BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20231013BHJP
C09J 183/04 20060101ALI20231013BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20231013BHJP
【FI】
C08L83/08
C08L83/05
C09D183/04
C09D7/20
C09J7/40
C09J7/38
C09D7/63
C09J183/04
B32B27/00 L
B32B27/00 101
(21)【出願番号】P 2020562493
(86)(22)【出願日】2019-12-27
(86)【国際出願番号】 JP2019051399
(87)【国際公開番号】W WO2020138413
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】P 2018245681
(32)【優先日】2018-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】719000328
【氏名又は名称】ダウ・東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】須藤 通孝
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 哲
(72)【発明者】
【氏名】大川 直
(72)【発明者】
【氏名】田中 英文
(72)【発明者】
【氏名】古川 晴彦
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/152992(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/098334(WO,A1)
【文献】特表2013-510921(JP,A)
【文献】特開平02-189383(JP,A)
【文献】特開昭59-080464(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 83/00-83/16
C09D 183/04
C09D 7/20
C09J 7/40
C09J 7/38
C09D 7/63
C09J 183/04
B32B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)一分子中にフルオロアルキル基と少なくとも2個のアルケニル基を有し、かつフルオロアルキル基の含有量が互いに異なる2種類以上のフルオロアルキル基含有オルガノポリシロキサンの混合物であって、前記2種類以上のフルオロアルキル基含有オルガノポリシロキサンは無溶媒で混合したときに25℃において完全に相溶することがないものの組み合わせである、混合物
(B)一分子中にケイ素原子結合水素原子を少なくとも3個有するオルガノポリシロキサン
(C)有効量のヒドロシリル化反応用触媒、及び
(D)成分(A)である2種類以上のフルオロアルキル基含有オルガノポリシロキサンの混合物を均一に相溶させることにより、組成物全体を相溶させることができる有機溶媒
を含有してなり
、
成分(A)が、
(A1)フルオロアルキル基含有オルガノジシロキサン単位を含み、フッ素原子含有量が40質量%以上である、1種以上の直鎖状または分岐鎖状オルガノポリシロキサン、及び
(A2)フルオロアルキル基含有オルガノジシロキサン単位を含み、フッ素原子含有量が40質量%未満である、1種以上の直鎖状または分岐鎖状オルガノポリシロキサン
の混合物であり、
成分(B)の含有量は、成分(A)中のアルケニル基に対するケイ素原子結合水素原子のモル比が0.1~20(ケイ素原子結合水素原子/アルケニル基)の範囲内となる量である、硬化性シリコーン組成物。
【請求項2】
成分(A1)のフッ素原子含有量(質量%)と成分(A2)のフッ素原子含有量(質量%)の差が3質量%以上である、
請求項1に記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項3】
成分(A)が、
(A1)フルオロアルキル基含有オルガノジシロキサン単位を含み、前記フルオロアルキル基が3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロヘキシル基であり、前記単位がオルガノシロキサン単位全体の39モル%以上である、1種以上の直鎖状または分岐鎖状オルガノポリシロキサン、及び
(A2)フルオロアルキル基含有オルガノジシロキサン単位を含み、前記フルオロアルキル基が3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロヘキシル基であり、前記単位がオルガノシロキサン単位全体の36モル%以下である、1種以上の直鎖状または分岐鎖状オルガノポリシロキサン
の混合物である、
請求項1又は2に記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項4】
成分(A1)と成分(A2)の質量比が1/99~99/1(成分(A1):成分(A2))である、
請求項1~3のいずれか一項に記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項5】
前記有機溶媒が、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジ-sec-ブチルエーテル、ジ-tert-ブチルエーテル、メチル-tert-ブチルエーテル、エチル-tert-ブチルエーテル、及びペンタンからなる群から選択される1種の溶媒又は2種以上の溶媒からなる混合溶媒である、
請求項1~4のいずれか一項に記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項6】
さらに(E)ヒドロシリル化反応抑制剤を含む、
請求項1~5のいずれか一項に記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の硬化性シリコーン組成物からなる剥離コーティング剤。
【請求項8】
シリコーン粘着剤用である、
請求項7に記載の剥離コーティング剤。
【請求項9】
フィルム状基材、及び
請求項7に記載の剥離コーティング剤を硬化させて得られる硬化物からなる剥離層を含む剥離フィルム。
【請求項10】
前記基材が、プラスチックフィルムである、
請求項9に記載の剥離フィルム。
【請求項11】
前記剥離層の厚みが、2μm以下である、
請求項9又は10に記載の剥離フィルム。
【請求項12】
シリコーン粘着剤用である、
請求項9~11のいずれか一項に記載の剥離フィルム。
【請求項13】
シリコーン粘着剤層が少なくとも1つの剥離層と対向して配置された構造を備えた積層体であって、当該剥離層が、
請求項7に記載の剥離コーティング剤を硬化させてなる硬化物からなる剥離層である、積層体。
【請求項14】
第1の基材、
前記第1の基材上の剥離層、
前記剥離層上のシリコーン粘着剤層、及び
前記シリコーン粘着剤層上の第2の基材
からなり、前記剥離層が、
請求項7に記載の剥離コーティング剤を硬化させてなる硬化物からなる剥離層である、積層体。
【請求項15】
基材、
前記基材上の剥離層、及び
前記の剥離層上のシリコーン粘着剤層
からなる構造単位が2つ以上連続して積み重なった構造を少なくとも1つ含み、前記の剥離層が、
請求項7に記載の剥離コーティング剤を硬化させてなる硬化物からなる剥離層である、積層体。
【請求項16】
第1の基材、
前記第1の基材上の第1の剥離層、
前記第1の剥離層上のシリコーン粘着剤層、
前記シリコーン粘着剤層上の第2の剥離層、及び
前記第2の剥離層上の第2の基材
からなり、前記第1の剥離層及び第2の剥離層の少なくとも一方が、
請求項7に記載の剥離コーティング剤を硬化させてなる硬化物からなる剥離層である、積層体。
【請求項17】
基材、
前記基材上の第1の剥離層、
前記第1の剥離層上のシリコーン粘着剤層、及び
前記シリコーン粘着剤層上の第2の剥離層
からなる構造単位が2つ以上連続して積み重なった構造を少なくとも1つ含み、前記第1の剥離層及び前記第2の剥離層の少なくとも一方が、
請求項7に記載の剥離コーティング剤を硬化させてなる硬化物からなる剥離層である、積層体。
【請求項18】
前記基材がフィルム状基材である、
請求項14~17いずれか一項に記載の積層体。
【請求項19】
シリコーン粘着剤層に対して、その両面のうち一方の面に対向して第1の剥離層が配置され、他方の面に対向して第2の剥離層が配置された構造を備える積層体であって、前記第1の剥離層及び第2の剥離層の少なくとも一方が、
請求項7に記載の剥離コーティング剤を硬化させてなる硬化物からなる剥離層であり、かつ
第1の剥離層から前記シリコーン粘着剤を剥離する際の剥離力(F1)と、
第2の剥離層から前記シリコーン粘着剤を剥離する際の剥離力(F2)が異なることを特徴とする、積層体。
【請求項20】
シリコーン粘着剤層に対して、その2つの面のうち一方の面に対向して第1の剥離層が配置され、他方の面に対向して第2の剥離層が配置された構造を備える積層体であって、前記第1の剥離層及び第2の剥離層の少なくとも一方が、
請求項7に記載の剥離コーティング剤を硬化させてなる硬化物からなる剥離層であり、かつ、
第1の剥離層を形成する剥離コーティング剤と第2の剥離層を形成する剥離コーティング剤が異なることを特徴とする、積層体。
【請求項21】
積層体全体がロール状の形状であることを特徴とする、
請求項13及び18~20のいずれか一項に記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性シリコーン組成物、その組成物からなる剥離コーティング剤、特に、シリコーン粘着剤(感圧接着剤)のための剥離コーティング剤、その剥離コーティング剤を用いた剥離フィルム、特にシリコーン粘着剤のための剥離フィルム、並びに前記剥離フィルムを含む積層体、特に剥離フィルムとシリコーン粘着剤を含む積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーン粘着剤(感圧接着剤)は耐熱性、耐寒性、耐候性、耐薬品性、および電気絶縁性等が優れることから、工業用の保護テープ、マスキングテープ等、医療用の各種機能性テープ等の粘着剤として広く使用されてきた。また、近年、液晶ディスプレイ用光学部品(表示装置、機能性フィルム、レンズ等)の貼合せ用等に代表される、いわゆるアセンブリ用途にも使用されている。シリコーン粘着剤は、シリコーンゴムやシリコーン系の材料がコーティングされた表面に対して強く粘着するため、アクリル系や有機ゴム系の粘着剤に使用される通常のシリコーン系剥離剤は使用できず、これを剥離することのできる剥離フィルムを形成するための硬化性シリコーン剥離剤組成物が種々提案されている。該組成物は、剥離コーティング剤としてプラスチックフィルムなどの可撓性基材上にコーティングされ、剥離フィルムを形成し、さらにこれをシリコーン粘着剤と貼り合わせたシート状、あるいはロール状のテープ等の形状の積層体として使用される。
【0003】
かかる積層体から剥離フィルムを剥離して使用する際には、その作業効率を高めるとともに、剥離後のシリコーン粘着剤の表面あれ等を防ぐために、より低く安定した剥離力が求められる。
【0004】
一方、剥離フィルムから剥がしたシリコーン粘着剤の粘着力は剥離フィルムと長期に密着することで生じる粘着力の低下などの悪影響が少ないことが好ましい。
【0005】
例えば、特許文献1には、シリコーン粘着剤用剥離剤として、ケイ素原子が少なくとも300個で、ビニル基含有シロキサン単位を0.5~2モル%及びフルオロアルキル基含有シロキサン単位を30モル%有するオルガノポリシロキサン、一分子当り平均して少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有し、前記オルガノポリシロキサンと相溶性を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、ヒドロシリル化反応用触媒、およびヒドロシリル化反応抑制剤からなる硬化性コーティング組成物が提案されている。
【0006】
また、特許文献2には、軽剥離化の目的でアルケニル基量の異なる2種類のフロロアルキル変性ポリジメチルシロキサンを含むシリコーン粘着剤用離型剤組成物、およびそれを基材に適用して形成した剥離シートが提案されている。
【0007】
さらに、特許文献3には、剥離力調整の目的で、アルケニル基含有有機基とフルオロアルキル基を有するオルガノポリシロキサン、一分子中に少なくとも3個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、ヒドロシリル化反応用触媒、有機溶剤、およびアルケニル基を有し、フルオロアルキル基を有さないオルガノポリシロキサンからなるシリコーン粘着剤用剥離剤組成物、およびそれをプラスチックフィルムに適用して形成した剥離フィルムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平2-245031号公報
【文献】特開2005-60554号公報
【文献】特開2016-183291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、従来公知の組成物を剥離用コーティング剤として用い、剥離フィルム、さらに積層体を形成した場合であっても、シリコーン粘着剤から剥離フィルムをより低い剥離力で剥離することができ、また、必要に応じて剥離力を調整でき、さらに、剥離フィルムを剥離した後のシリコーン粘着剤の他の基材に対する接着強度をできるだけ低下させないという課題を解決するためのさらなる改良が求められている。
【0010】
本発明の目的は、シリコーン粘着剤(シリコーン感圧接着剤ともいわれる)から低い剥離力で剥離することができ、剥離フィルムと貼り合わせなかった場合と比較して、剥離フィルムを貼り合わせた後にそれを剥離した後のシリコーン粘着剤の接着力が大きく低下することがない剥離フィルム、そのための剥離剤、及び剥離剤として用いることができる硬化性シリコーン組成物、並びに基材、シリコーン粘着剤層、及び剥離剤層を含んでなる積層体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、分子内にフルオロアルキル基と少なくとも2個のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンとして、無溶媒で混合したときに25℃において撹拌後、24時間放置した後で目視により観察して完全には相溶することがない又は完全に非相溶である2種以上のオルガノポリシロキサンの組み合わせを含む硬化性シリコーン組成物を剥離剤として用いることによって、上記課題を解決できることを発見して本発明を完成した。
【0012】
本発明の硬化性シリコーン組成物は、下記成分(A)~(D):
(A)一分子中にフルオロアルキル基と少なくとも2個のアルケニル基を有し、かつフルオロアルキル基の含有量が互いに異なる2種類以上のフルオロアルキル基含有オルガノポリシロキサンの混合物であって、前記2種類以上のフルオロアルキル基含有オルガノポリシロキサンは無溶媒で混合したときに25℃において完全に相溶することがないものの組み合わせである、混合物
(B)一分子中にケイ素原子結合水素原子を少なくとも3個有するオルガノポリシロキサン
(C)有効量のヒドロシリル化反応用触媒、及び
(D)成分(A)である2種類以上のフルオロアルキル基含有オルガノポリシロキサンの混合物を均一に相溶させることにより、組成物全体を相溶させることができる有機溶媒
を含有してなる。
【0013】
上記硬化性シリコーン組成物において、成分(A)は、
(A1)フルオロアルキル基含有オルガノジシロキサン単位を含み、フッ素原子含有量が40質量%以上である、1種以上の直鎖状または分岐鎖状オルガノポリシロキサン、及び
(A2)フルオロアルキル基含有オルガノジシロキサン単位を含み、フッ素原子含有量含有量が40質量%未満である、1種以上の直鎖状または分岐鎖状オルガノポリシロキサン
の混合物であることが好ましい。
【0014】
上記成分(A1)のフッ素原子含有量(質量%)と、成分(A2)のフッ素原子含有量(質量%)の差が3質量%以上であることがさらに好ましい。
【0015】
成分(A1)と成分(A2)のフッ素原子含有量が上記いずれかの条件を満足するとともに、本発明の一つの態様では、成分(A)が、
(A1)フルオロアルキル基含有オルガノジシロキサン単位を含み、フルオロアルキル基が3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロヘキシル基であり、その単位がオルガノジシロキサン単位全体の39モル%以上である、1種以上の直鎖状または分岐鎖状オルガノポリシロキサン、及び
(A2)フルオロアルキル基含有オルガノジシロキサン単位を含み、フルオロアルキル基が3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロヘキシル基であり、その単位がジオルガノジシロキサン単位全体の36モル%以下である、1種以上の直鎖状または分岐鎖状オルガノポリシロキサン
の混合物であることができる。
【0016】
本発明の硬化性シリコーン組成物においては、組成物中に含まれる成分(A1)と成分(A2)の質量比が1/99~99/1(成分(A1):成分(A2))であることが好ましい。
成分(A1)及び成分(A2)を併用すると、成分(A)に代えて成分(A1)又は成分(A2)をそれぞれ単独で使用した場合の結果に基づいて相加平均により推定されるシリコーン粘着剤に対する剥離力よりも低い剥離力が得られる。
【0017】
本発明の硬化性シリコーン組成物の成分(D)の有機溶媒としては、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジ-sec-ブチルエーテル、ジ-tert-ブチルエーテル、メチル-tert-ブチルエーテル、エチル-tert-ブチルエーテル、及びペンタンからなる群から選択される1種の溶媒又はそれらから選択される2種以上の溶媒からなる混合溶媒を用いることが好ましい。
【0018】
本発明の上記硬化性シリコーン組成物は、所望により、成分(E)としてヒドロシリル化反応抑制剤を含んでいてもよい。
【0019】
本発明はさらに剥離コーティング剤を提供し、本発明の剥離コーティング剤は、上述した硬化性シリコーン組成物からなる。本発明の剥離コーティング剤はさらに添加剤を含むことができる。
【0020】
本発明の一つの態様では、上記剥離コーティング剤はシリコーン粘着剤用の剥離コーティング剤である。
【0021】
本発明はさらに、基材、及び上記剥離コーティング剤を硬化させて得られる硬化物からなる剥離層を含む剥離フィルムを提供する。
【0022】
上記剥離フィルムにおいて、基材はプラスチックフィルムであることが好ましい。
【0023】
上記剥離フィルムにおいて、剥離層の厚みは2μm以下であることが好ましい。
【0024】
上記剥離フィルムは、シリコーン粘着剤用の剥離フィルムであることが好ましい。
【0025】
本発明はさらに上記剥離コーティング剤を用いる積層体を提供する。本発明の一つの態様では、積層体は、シリコーン粘着剤層が少なくとも1つの剥離層と対向して配置された構造を備えた積層体であって、当該剥離層が、上記剥離コーティング剤を硬化させてなる硬化物からなる剥離層であることを特徴とする。また、本発明の剥離フィルムはフィルム状基材と剥離層を含んでなる。また、積層体は、剥離層上に配置されたシリコーン粘着剤を含んで構成される積層構造を含み、剥離層上における硬化反応で形成された粘着剤を備える積層体、既に形成された粘着剤への剥離層の貼り合わせによって形成される積層体をともに含む。
【発明の効果】
【0026】
本発明の硬化性シリコーン組成物を剥離コーティング剤として用いることにより、剥離層の厚さが薄くても、剥離層上に密着したシリコーン粘着剤を低剥離力で剥離層から剥離することができる剥離フィルムを形成することができる。また、本発明の剥離フィルム及び積層体は、剥離層上に配置されたシリコーン粘着剤を低剥離力で剥離層から剥離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の積層体の一実施形態を示す断面図である。
【
図2】本発明の積層体の一実施形態を示す断面図である。
【
図3】本発明の積層体の一実施形態を示す断面図である。
【
図4】本発明の積層体の一実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
はじめに、本発明の硬化性シリコーン組成物について詳細に説明する。
【0029】
[硬化性シリコーン組成物]
本発明の硬化性シリコーン組成物は、上述したとおり、下記成分(A)~(D):
(A)一分子中にフルオロアルキル基と少なくとも2個のアルケニル基を有し、かつフルオロアルキル基の含有量が互いに異なる2種類以上のフルオロアルキル基含有オルガノポリシロキサンの混合物であって、前記2種類以上のフルオロアルキル基含有オルガノポリシロキサンは無溶媒で混合したときに25℃において完全には相溶しないものの組み合わせである、混合物
(B)一分子中にケイ素原子結合水素原子を少なくとも3個有するオルガノポリシロキサン
(C)有効量のヒドロシリル化反応用触媒、および
(D)成分(A)である2種類以上のフルオロアルキル基含有オルガノポリシロキサンの混合物を均一に相溶させることにより、組成物全体を相溶させることができる有機溶媒
を含む。以下これらの必須成分(A)、(B)、(C)、および(D)、並びに硬化性シリコーン組成物にさらに添加してもよい任意成分について説明する。
【0030】
[成分(A)]
成分(A)は、一分子中にフルオロアルキル基と少なくとも2個のアルケニル基を有し且つフルオロアルキル基の含有量が互いに異なる2種類以上のフルオロアルキル基含有オルガノポリシロキサンの混合物である。さらにその2種類以上のフルオロアルキル基含有オルガノポリシロキサンは、それらを無溶媒で混合したときに25℃において完全に相溶することがないものの組み合わせであることが必要である。「無溶媒で混合したときに25℃において完全に相溶することがない」の意味は、2種類以上のフルオロアルキル基含有オルガノポリシロキサンの混合物を蓋つきの透明なガラス製バイアル瓶に入れ、25℃において十分に撹拌した直後及び24時間後に目視によって観察したときに混合物が白濁、もしくは2相に分離し、均一で、かつ透明な液体の状態を呈しないことをいう。なお、フルオロアルキル基含有オルガノポリシロキサンが25℃でガム状又はペースト状等の液状以外である場合には、混合物が液状になる温度まで加熱し、充分に撹拌した後に25℃まで冷却した直後及び24時間後に目視によって観察したときに混合物が白濁もしくは2相に分離しており、均一で、かつ透明な液体の状態を呈しないことをいう。
【0031】
成分(A)は下記平均組成式(I):
(R1
3SiO1/2)a(R1
2SiO2/2)b(R1SiO3/2)c(SiO4/2)d (I)
(式中、R1は同じかまたは異なり、独立に、炭素数1~12のアルキル基、炭素数2~12のアルケニル基、炭素数6~12のアリール基、炭素数7~12のアラルキル基、または炭素数1~12のフルオロアルキル基であり、一分子中、少なくとも2個のR1は前記アルケニル基であり、一分子中、少なくとも1個のR1は炭素数1~12のフルオロアルキル基であり、aは正数、bは正数、cは0または正数、およびdは0または正数であり、)
で表されるオルガノポリシロキサンであることが好ましい。
なお、式(I)において、R1は、本発明の目的を損なわない範囲で、少量の水酸基やアルコキシ基であってもよい。
【0032】
式(I)において、R1が表しうる炭素数1~12のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、及びドデシル基が例示され、メチル基が好ましい。
【0033】
式(I)において、R1が表しうる炭素数2~12のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、及びドデセニル基が例示され、アルケニル基は独立にビニル基又はヘキセニル基であることが好ましく、ビニル基が特に好ましい。なお、式(I)中、少なくとも2個のR1はアルケニル基であり、当該アルケニル基のビニル基換算の含有量はそれを用いて硬化可能な組成物を構成できればよく、特に限定されないが、2.0質量%以下が好ましく、1.0質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下がさらに好ましい。これはアルケニル基の含有量が必要以上に多くなると、本発明の硬化性シリコーン組成物を剥離コーティング剤として用いてシリコーン粘着剤用剥離層を形成した場合に、シリコーン粘着剤層からの剥離層の剥離力が高くなる場合があるためである。なお、アルケニル基のビニル基換算の含有量とは、ビニル基以外のアルケニル基を等モルのビニル基の質量に置き換えて計算した含有量を意味する。
【0034】
式(I)において、R1が表しうる炭素数6~12のアリール基としては、フェニル基、トリル基、及びキシリル基が例示され、フェニル基が好ましい。
【0035】
式(I)において、R1が表しうる炭素数7~12のアラルキル基としては、ベンジル基、及びフェニルエチル基が例示される。
【0036】
式(I)において、R1が表しうる炭素数1~12のフルオロアルキル基の例として、3,3,3-トリフルオロプロピル基、3,3,4,4,4-ペンタフルオロブチル基、3,3,4,4,5,5,5-ヘプタフルオロペンチル基、3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロヘキシル基、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,7-ウンデカフルオロヘプチル基、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロオクチル基、及び3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,9-ペンタデカフルオロノニル基が例示され、3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロヘキシル基が好ましい。
【0037】
上記式(I)におけるa~dについて、aは2以上、好ましくは2~6の整数、bは1以上、好ましくは、1~5,000の整数、さらに好ましくは、30~4,000の整数であり、cは0または正数、およびdは0または正数である。成分(A)については、シロキサン重合度が前記の範囲の下限未満では、当該成分を用いて得られる硬化性シリコーン組成物を剥離コーティング剤として用いたときに、剥離層の形成が困難になる場合があり、シロキサン重合度が前記の範囲の上限を超えると、得られる硬化性シリコーン組成物の塗工性(特に薄膜塗布性)が低下する場合がある。
【0038】
成分(A)を構成する2種以上のフルオロアルキル基含有オルガノポリシロキサンは、それぞれが上記平均組成式(I)で表される2種以上のオルガノポリシロキサンの混合物であることが好ましく、さらに、成分(A)は、下記成分(A1)及び(A2)の混合物であることが特に好ましい。
【0039】
(A1)フルオロアルキル基含有オルガノジシロキサン単位を含み、フッ素原子含有量が40質量%以上、好ましくは41質量%以上、さらに好ましくは42質量%以上である、1種以上の直鎖状または分岐鎖状オルガノポリシロキサン、及び
(A2)フルオロアルキル基含有オルガノジシロキサン単位を含み、フッ素原子含有量が40質量%未満、好ましくは39%質量以下、さらに好ましくは38質量%以下である、1種以上の直鎖状または分岐鎖状オルガノポリシロキサン。
【0040】
すなわち、成分(A1)は上記式(I)において、「R1
2SiO2/2」で表される単位の2つのR1のうち少なくとも1つ、好ましくは1つが炭素数1~12のフルオロアルキル基、特に好ましくは3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロヘキシル基であり、かつ式(I)で表される化合物全体の質量に占めるフッ素原子の質量の割合が40質量%以上、好ましくは41質量%以上、さらに好ましくは42質量%以上である、直鎖状または分岐鎖状オルガノポリシロキサンである。
【0041】
また、成分(A2)は上記式(I)において、「R1
2SiO2/2」で表される単位の2つのR1のうち少なくとも1つ、好ましくは1つが炭素数1~12のフルオロアルキル基、特に好ましくは3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロヘキシル基であり、かつ式(I)で表される化合物全体の質量に占めるフッ素原子の質量の割合が40質量%未満、好ましくは39質量%以下、さらに好ましくは38質量%以下である、直鎖状または分岐鎖状オルガノポリシロキサンである。
【0042】
したがって、成分(A1)及び(A2)はそれぞれが含むフッ素原子含有量が異なる。成分(A1)のフッ素原子含有量と、成分(A2)のフッ素原子含有量の差は、3質量%より大きな値であることが好ましく、4質量%以上であることが好ましい。成分(A1)及び(A2)のそれぞれのフッ素原子含有量の差が前述の値であることによって、成分(A1)と成分(A2)が非相溶性になりやすいからである。
【0043】
また、本発明の一つの態様では、上述した成分(A1)及び(A2)のフッ素原子の含有量の条件を満たした上で、成分(A1)が、フルオロアルキル基含有オルガノジシロキサン単位を含み、フルオロアルキル基が3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロヘキシル基であり、当該単位がオルガノシロキサン単位全体の39モル%以上である、1種以上の直鎖状または分岐鎖状オルガノポリシロキサンであり、成分(A2)が、フルオロアルキル基含有オルガノジシロキサン単位を含み、フルオロアルキル基が3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロヘキシル基であり、当該単位がオルガノシロキサン単位全体の36モル%以下である、1種以上の直鎖状または分岐鎖状オルガノポリシロキサンであることが好ましい。
【0044】
成分(A1)及び成分(A2)の具体例としては以下に挙げるフルオロアルキル基含有オルガノポリシロキサンが例示されるが、これらに限定されない。以下の式中、Me、Vi、Hex、Fa1、Fa2、及びFa3はそれぞれ、メチル基、ビニル基、n-ヘキセニル基、3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロヘキシル基、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロオクチル基、及び3,3,3-トリフルオロプロピル基を表す。
平均組成式:
(Me2ViSiO1/2)2(Me2SiO2/2)750(Me(Fa1)SiO2/2)750(MeViSiO2/2)20
で表されるオルガノポリシロキサン、
平均組成式:
(Me3SiO1/2)2(Me2SiO2/2)450(Me(Fa1)SiO2/2)350(MeViSiO2/2)10
で表されるオルガノポリシロキサン、
平均組成式:
(Me2(Fa1)SiO1/2)2(Me2SiO2/2)450(Me(Fa1)SiO2/2)350(MeViSiO2/2)10
で表されるオルガノポリシロキサン、
平均組成式:
(Me2HexSiO1/2)2(Me2SiO2/2)1000(Me(Fa1)SiO2/2)1000(MeHexSiO2/2)20
で表されるオルガノポリシロキサン、
平均組成式:
(Me2ViSiO1/2)4(Me2SiO2/2)500(Me(Fa1)SiO2/2)500(SiO4/2)1
で表されるオルガノポリシロキサン、
平均組成式:
(Me2ViSiO1/2)2(Me2SiO2/2)500(Me(Fa2)SiO2/2)500MeViSiO2/2)10
で表されるオルガノポリシロキサン、
平均組成式:
(Me2ViSiO1/2)2(Me2SiO2/2)1470(Me(Fa1)SiO2/2)1100(MeViSiO2/2)8
で表されるオルガノポリシロキサン、
平均組成式:
(Me2ViSiO1/2)2(Me2SiO2/2)1280(Me(Fa1)SiO2/2)1270(MeViSiO2/2)7
で表されるオルガノポリシロキサン、
平均組成式:
(Me2ViSiO1/2)2(Me2SiO2/2)900(Me(Fa1)SiO2/2)450(MeViSiO2/2)10
で表されるオルガノポリシロキサン、
平均組成式:
(Me2ViSiO1/2)2(Me2SiO2/2)1100(Me(Fa1)SiO2/2)400(MeViSiO2/2)7
で表されるオルガノポリシロキサン、
平均組成式:
(Me2ViSiO1/2)2(Me2SiO2/2)1100(Me(Fa1)SiO2/2)400(Me(Fa3)SiO2/2)100(MeViSiO2/2)10
で表されるオルガノポリシロキサン。
【0045】
本発明の硬化性シリコーン組成物においては、組成物中に含まれる成分(A1)と成分(A2)の質量比が1/99~99/1(成分(A1):成分(A2))であることが好ましく、10/90~90:10(成分(A1):成分(A2))がさらに好ましく、20/80~80:20(成分(A1):成分(A2))がより好ましく、30/70~70:30(成分(A1):成分(A2))が最も好ましい。成分(A1)及び成分(A2)を併用すると、成分(A)に代えて成分(A1)又は成分(A2)をそれぞれ単独で使用した場合の結果に基づいて相加平均により推定されるシリコーン粘着剤に対する剥離力よりも低い剥離力が得られる。
【0046】
[成分(B)]
成分(B)は、一分子中にケイ素結合水素原子(Si-H)を少なくとも3個有するオルガノポリシロキサンであり、成分(A)との間でヒドロシリル化反応による付加反応をして本発明の組成物を硬化させる成分である。
【0047】
成分(B)中のケイ素原子に結合する水素原子以外の基としては、炭素数1~12のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、炭素数7~12のアラルキル基、炭素数1~12のフルオロアルキル基、及び炭素数2~100のフルオロ(ポリ)エーテル含有有機基が例示される。なお、成分(B)中のケイ素原子には、本発明の目的を損なわない範囲で、少量の水酸基やアルコキシ基が結合していてもよい。
【0048】
成分(B)の分子構造は特に限定されず、直鎖状、分岐鎖状、一部分岐を有する直鎖状、樹脂状、及び環状が例示され、好ましくは、直鎖状、又は一部分岐を有する直鎖状である。
【0049】
このような成分(B)としては、下記平均組成式(II):
(R3
3SiO1/2)aa(R3
2SiO2/2)ab(R3SiO3/2)ac(SiO4/2)ad (II)
で表されるオルガノポリシロキサンが例示される。
【0050】
式(II)中、R3は同じか又は異なり、独立に、水素原子、炭素数1~12のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、炭素数7~12のアラルキル基、炭素数1~12のフルオロアルキル基、又はフルオロ(ポリ)エーテル含有有機基である。また、aaは正数、abは正数、acは0又は正数、及びadは0又は正数である。ただし、aaを2とした場合に、aa~adの合計は、好ましくは、5~200の範囲内であり、その下限が10、あるいは15であり、一方、その上限が150、120、100、80、70、60、50、又は40であるような任意の範囲内の値である。これは、aaを2とした場合に、aa~adの合計が上記範囲の下限未満であると、本組成物の架橋が十分に進行するからであり、一方、上記範囲の上限を超えると、本組成物の取扱作業性が良好であるからである。
【0051】
R3が表しうるアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、及びドデシル基が例示され、メチル基が好ましい。
【0052】
R3が表しうるアリール基としては、フェニル基、トリル基、及びキシリル基が例示され、フェニル基が好ましい。
【0053】
R3が表しうるアラルキル基としては、ベンジル基及びフェネチル基が例示される。
【0054】
さらに、R3が表しうるフルオロアルキル基としては、3,3,3-トリフルオロプロピル基、3,3,4,4,4-ペンタフルオロブチル基、3,3,4,4,5,5,5-ヘプタフルオロペンチル基、3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロヘキシル基、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,7-ウンデカフルオロヘプチル基、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロオクチル基、及び3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,9-ペンタデカフルオロノニル基が例示され、3,3,4,4,5,5,5-ヘプタフルオロペンチル基、3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロヘキシル基、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,7-ウンデカフルオロヘプチル基、及び3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロオクチル基から選択される基が好ましく、3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロヘキシル基が特に好ましい。
【0055】
また、R3が表しうるフルオロ(ポリ)エーテル含有有機基としては、以下の式(1)で表される基が例示される。
式(1): F(CF2O)a1(CF2CF2O)a2(CF2CH2O)a3[CF(CF3)CF2O]a4[CF(CF3)CH2O]a5(CF2CF2CF2O)a6(CF2CF2CH2O)a7(CF(CF3))a8(CF2)a9(CH2)a10-O-[CF(CF3)]a11(CF2)a12(CH2)a13-
(式中、a1~a13は0以上の整数である。ただし、a1~a9の少なくとも一つは1以上の整数である。a1~a10の合計は21以下であることが好ましく、a11~a13の合計は6以下であることが好ましい。また、(CF2O)a1(CF2CF2O)a2(CF2CH2O)a3[CF(CF3)CF2O]a4[CF(CF3)CH2O]a5(CF2CF2CF2O)a6(CF2CF2CH2O)a7[CF(CF3)]a8(CF2)a9(CH2)a10の中の繰り返し単位、および(CH(CF3))a11(CF2)a12(CH2)a13の中の繰り返し単位はそれぞれランダムに結合されていてもよい。)
【0056】
かかるR1のフルオロ(ポリ)エーテル含有有機基としては、さらに以下の式(2)、(3)、又は(4)のいずれかで表される基であることがより好ましい。
式(2): F[CF(CF3)CF2O]b1[CF(CF3)CH2O]b2-[CF(CF3)]b3(CF2)b4(CH2)b5-
(式中、b1~b5はそれぞれ0以上の整数であり、b1+b2は1以上の整数であり、b3+b4+b5は0以上の整数である。b1+b2は21以下であることが好ましく、11以下であることがより好ましく、6以下であることがさらに好ましい。b3+b4+b5は6以下であることが好ましい。また、(CF(CF3))b3(CF2)b4(CH2)b5の中の繰り返し単位はそれぞれランダムに結合されていてもよい。)
式(3): F(CF2CF2CF2O)c1(CF2CF2CH2O)c2-[CF(CF3)]c3(CF2)c4(CH2)c5-
(式中、c1~c5は0以上の整数であり、c1+c2は1以上の整数であり、c3+c4+c5は0以上の整数である。c1+c2は21以下であることが好ましく、11以下であることがより好ましく、6以下であることがさらに好ましい。c3+c4+c5は6以下であることが好ましい。また、(CF(CF3))c3(CF2)c4(CH2)c5の中の繰り返し単位はそれぞれランダムに結合されていてもよい。)
式(4): F(CF2)d1(CH2)d2-O-(CH2)d3-
(式中、d1、およびd2はそれぞれ1以上の整数であり、d3は0以上の整数である。d1は10以下が好ましく、d2及びd3はそれぞれ6以下が好ましい。)
【0057】
特に好ましいフルオロ(ポリ)エーテル含有有機基としては、以下の基が例示される。
F[CF(CF3)CF2O]nCF(CF3)CF2O(CH2)3-
F[CF(CF3)CF2O]nCF(CF3)CH2O(CH2)3-
F[CF(CF3)CF2O]n+1CF(CF3)(CH2)2-
F(CF2)m(CH2)2O(CH2)3-
上記各式において、nは1~20であることが好ましく、1~10であることがより好ましく、1~5であることが最も好ましい。またmは1~6であることが好ましい。
【0058】
また、ケイ素原子に少量の下記フルオロ(ポリ)エーテル含有有機基が結合していてもよい。
F[CF(CF3)CF2O]oCF(CF3)CF2O-
F[CF(CF3)CF2O]oCF(CF3)CH2O-
F(CF2)p(CH2)2O-
上記式において、oは1~20であることが好ましく、1~10であることがより好ましく、1~5であることが最も好ましい。またpは1~6であることが好ましい。
【0059】
本発明の成分(B)は、フルオロアルキル基及びフルオロ(ポリ)エーテル含有有機基から選択される基を有していてもよいが、有していなくてもよい。成分(B)としてフッ素原子含有基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを使用しなくても、上述した成分(A)と組み合わせることによって、本組成物をコーティング剤として用いて硬化したときに、優れた剥離性、特にシリコーン粘着剤に対する優れた剥離性を有する剥離層が得られる。
【0060】
本発明の成分(B)がフルオロアルキル基及びフルオロ(ポリ)エーテル含有有機基からなる群から選択される基を有する場合、分子内のフルオロアルキル基及び/又はフルオロ(ポリ)エーテル含有有機基に由来するフッ素原子の含有量は特に限定されないが、好ましくは、少なくとも20質量%、少なくとも25質量%、少なくとも30質量%、あるいは少なくとも35質量%である。また、成分(B)中のフッ素原子の含有量の上限は、多くとも60質量%、あるいは多くとも50質量%であることが好ましい。
【0061】
成分(B)の具体例としては以下に挙げるオルガノポリシロキサンが例示されるが、これらに限定されない。以下の式中、Me、Vi、Hex、Fa1はそれぞれ、メチル基、ビニル基、n-ヘキセニル基、及び3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロヘキシル基を表し、Fa4は下記式:
F[CF(CF3)CF2O]2-CF(CF3)CH2O-(CH2)3-
で示す基を表す。
平均組成式:
(Me3SiO1/2)2(Me(Fa1)SiO2/2)12(MeHSiO2/2)27
で表されるオルガノポリシロキサン、
平均組成式:
(Me3SiO1/2)2(Me2SiO2/2)55(Me(Fa4)SiO2/2)25(MeHSiO2/2)25
で表されるオルガノポリシロキサン、
平均組成式:
(Me3SiO1/2)2(MeHSiO2/2)50
で表されるオルガノポリシロキサン、
平均組成式:
(Me3SiO1/2)2(Me2SiO2/2)30(MeHSiO2/2)30
で表されるオルガノポリシロキサン、
平均組成式:
(Me2HSiO1/2)2(Me2SiO2/2)30(MeHSiO2/2)30
で表されるオルガノポリシロキサン。
これらから選択される1種又は2種以上を組み合わせて成分(B)として用いることができる。
【0062】
本発明の硬化性シリコーン組成物中の成分(B)の含有量は、成分(A)中のアルケニル基に対するケイ素原子結合水素原子のモル比が0.1~20(ケイ素原子結合水素原子/アルケニル基)の範囲内となる量であり、好ましくは、その下限が0.5、0.8、又は1であり、一方、その上限が18、17、16、15、14、13、又は12であるような任意の範囲内である。これは、成分(B)の含有量が上記範囲の下限以上であると、硬化性シリコーン組成物の架橋が十分に進行するからであり、一方、上記範囲の上限以下であると、硬化性シリコーン組成物が硬化して得られる剥離性皮膜の特性を安定させうるからである。
【0063】
[成分(C)]
成分(C)は、本硬化性シリコーン組成物のヒドロシリル化反応による硬化を促進するヒドロシリル化反応用触媒であり、白金系触媒、ロジウム系触媒、及びパラジウム系触媒が例示され、好ましくは、白金系触媒である。この白金系触媒としては、白金微粉末、白金黒、白金担持シリカ微粉末、白金担持活性炭、塩化白金酸、及び塩化白金酸のアルコール溶液、白金のオレフィン錯体、並びに白金のアルケニルシロキサン錯体が例示される。
【0064】
成分(C)の含有量は、本硬化性シリコーン組成物の硬化を促進することができる量であり、具体的には、本硬化性シリコーン組成物に対して、この触媒中の金属原子、好ましくは白金原子が質量単位で0.1~1,000ppmの範囲内となる量である。これは、成分(C)の含有量が上記範囲の下限以上であると、得られる硬化性シリコーン組成物の硬化が十分に進行するからであり、一方、上記範囲の上限以下であると、得られる硬化物が着色し難くなるからである。
【0065】
[成分(D)]
成分(D)は、成分(A)である2種類以上のフルオロアルキル基含有オルガノポリシロキサンの混合物を均一に相溶させるとともに、組成物全体を相溶させることができる任意の有機溶媒である。ここで「相溶」させるとは、25℃において外観に濁りが認められず、均一かつ透明な液体を与えることをいう。
【0066】
また、有機溶媒を添加することにより、硬化性シリコーン組成物の粘度を低下させ、塗布作業性や基材に対する濡れ性を改善することができる。
【0067】
成分(D)として用いる有機溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジ-sec-ブチルエーテル、ジ-tert-ブチルエーテル、メチル-tert-ブチルエーテル等のエーテル類、及びペンタンを挙げることができ、ジイソプロピルエーテルが特に好ましい。特に、フッ素非含有の有機溶媒を利用することで、フッ素系溶媒を使用することなく、本発明を実施できるという利点がある。ただし、塗布作業性を向上させる等の見地からフッ素系溶媒を用いてもよく、本発明の実施においてフッ素系溶媒の使用を妨げるものではない。
【0068】
硬化性シリコーン組成物の外観をその組成物を調製してから使用するまでの間25℃において透明かつ均一に保つことができることを条件として、上述した有機溶媒に加えて、その他の有機溶媒をさらに用いてもよい。そのような追加の有機溶媒は特に限定されず、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶剤、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、デカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、イソパラフィン等の脂肪族炭化水素系溶剤、工業用ガソリン(ゴム揮発油等)、石油ベンジン、ソルベントナフサ等の炭化水素系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、2-ペンタノン、3-ペンタノン、2-ヘキサノン、2-ヘプタノン、4-ヘプタノン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、アセトニルアセトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル等のエステル系溶剤;2-メトキシエチルアセタート、2-エトキシエチルアセタート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート、2-ブトキシエチルアセタートなどのエステルとエーテル部分を有する溶剤;ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、トリス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、テトラキス(トリメチルシロキシ)シランなどのシロキサン系溶剤;m-キシレンヘキサフロライド、ベンゾトリフロライドなどのフッ素変性芳香族炭化水素系溶剤;メチルヘプタフルオロプロピルエーテル、メチルノナフルオロブチルエーテル、エチルノナフルオロブチルエーテル、3-メトキシ-1,1,1,2,2,3,4,4,5,5,6,6,6-トリデカフルオロヘキサン、パーフルオロ(2-ブチルテトラヒドロフラン)などのフッ素変性エーテル系溶剤;パーフルオロトリブチルアミン、パーフルオロトリペンチルアミンなどのフッ素変性アルキルアミン系溶剤;及びこれらから選択される二種以上の混合溶剤が例示される。
【0069】
成分(D)の含有量は、本硬化性シリコーン組成物全体を均一に相溶させるために必要な量であり、(A)成分100質量部に対して2,000質量部以下であり、20~1,800質量部の範囲内であることが好ましい。
【0070】
[成分(E)]
本硬化性シリコーン組成物には、その架橋反応を制御するため、(E)ヒドロシリル化反応制御剤を含有してもよい。成分(E)としては、1-エチニルシクロヘキサン-1-オール、2-メチル-3-ブチン-2-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、2-フェニル-3-ブチン-2-オール等のアルキンアルコール;3-メチル-3-ペンテン-1-イン、3,5-ジメチル-3-ヘキセン-1-イン等のエンイン化合物;1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラヘキセニルシクロテトラシロキサン等のメチルアルケニルシロキサンオリゴマー;ジメチルビス(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)シラン、メチルビニルビス(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)シラン等のアルキンオキシシラン;メチルトリス(1-メチル-1-フェニル-プロピンオキシ)シラン、ジメチルビス(1-メチル-1-フェニル-プロピンオキシ)シラン、メチルトリス(1,1-ジメチル-プロピンオキシ)シラン、ジメチルビス(1,1-ジメチル-プロピンオキシ)シラン等のアルキンオキシシラン化合物;その他、ベンゾトリアゾールが例示される。
【0071】
成分(E)の含有量は限定されず、本硬化性シリコーン組成物に十分なポットライフを与えることから、成分(E)を用いる場合、その量は、成分(A)100質量部に対して、0.01~5質量部の範囲内、0.05~5質量部の範囲内、あるいは、0.05~3質量部の範囲内であることが好ましい。
【0072】
[その他の添加剤]
本硬化性シリコーン組成物には、本発明の目的を達成できる範囲内で、光重合開始剤、酸化防止剤、反応性希釈剤、レベリング剤、充填剤、帯電防止剤、消泡剤、及び顔料等から選択される添加剤を用いてもよい。
【0073】
[用途]
本発明の硬化性シリコーン組成物は剥離コーティング剤として使用することが好ましく、粘着剤用の剥離コーティング剤としての使用に適している。特に、シリコーン粘着剤用の剥離コーティング剤としての使用に最も適している。
【0074】
本発明は、基材、特にフィルム状基材、及び本発明の硬化性シリコーン組成物又はその硬化物からなる剥離層を備える剥離フィルムにも関する。このような剥離フィルムは、例えば本発明の硬化性シリコーン組成物をフィルム状基材に塗布し、硬化性シリコーン組成物を硬化することにより製造することができる。
【0075】
剥離フィルムに用いられる基材としては、紙やプラスチックフィルム、ガラス、及び金属等から選択されるフィルム状基材を使用できる。紙としては、上質紙、コート紙、アート紙、グラシン紙、ポリエチレンラミネート紙、及びクラフト紙などが挙げられる。プラスチックフィルムとしては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリスチレンフィルム、エチレン-酢酸ビニル共重合体フィルム、エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルム、トリアセチルセルロースフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、及びポリフェニレンサルファイドフィルムなどが挙げられる。剥離層をその上に設ける基材はフィルム状基材でなくてもよく、任意の形状の基材を用いることができる。ガラス、例えばシート状ガラスを基材として用いる場合、その厚みや種類などについて特に制限はなく、化学強化処理などをしたものでもよい。また、ガラス繊維も基材として用いることができ、ガラス繊維は単体でも他の樹脂と複合化したものを使用してもよい。金属基材としては、アルミニウム箔、銅箔、金箔、銀箔、及びニッケル箔などが例示される。基材上に剥離層を設けた生成物を剥離フィルムとして使用する場合には、基材はプラスチックフィルムが好ましく、ポリエステルフィルムがより好ましい。特に、基材及び剥離層が共に光透過性であることが好ましい。
【0076】
剥離層の厚みは2.0μm以下、1.0μm以下、あるいは0.5μm以下であることが好ましく、0.4μm以下であることがより好ましく、0.3μm以下であることがさらにより好ましい。また、0.05μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましい。これは、膜厚が上記範囲の下限以上であると、得られる剥離層の剥離力が十分に低くなるからであり、一方、上記範囲の上限以下であると、剥離層の光透過性が特に優れているからである。本発明にかかる剥離剤は、特に、それから形成した剥離層が薄層でも低い剥離力を実現できることから、剥離層を0.5μm以下に設計できるという利点がある。
【0077】
[積層体]
本発明は、少なくとも、本発明の硬化性シリコーン組成物を硬化させてなる硬化物からなる剥離層とその剥離層と対向して配置された粘着剤層、特にシリコーン粘着剤層を含む構造含む積層体にも関する。この場合、硬化性シリコーン組成物は、剥離コーティング剤ということもできる。この場合「対向」の意味は、剥離層と粘着剤層が直接接していることを意味する。したがって、一般的には、本発明において、剥離層と粘着剤層が互いに対向して配置されている。以下の説明において粘着剤としてシリコーン粘着剤を例に挙げて本発明の積層体の構成を説明するが、粘着剤はシリコーン粘着剤に限定されない。
【0078】
本発明による積層体は上述した剥離層とシリコーン粘着剤層が対向して配置された構造を含むものであればどのような構造の積層体であってもよい。具体的な積層体の例を以下に説明する。
【0079】
本発明の積層体の構成は、例えば、以下に示す(a)~(d)が挙げられる。
(a)第1の基材/剥離層/シリコーン粘着剤層/第2の基材からなる構成、
(b)基材/剥離層/シリコーン粘着剤層からなる構成単位が2つ以上連続して積み重なってなる構成、
(c)第1の基材/第1の剥離層/シリコーン粘着剤層/第2の剥離層/第2の基材からなる構成、
(d)基材/第1の剥離層/シリコーン粘着剤層/第2の剥離層からなる構成単位が2つ以上連続して積み重なってなる構成。
構成(b)及び(d)においては、基材は非連続、又は連続したものが使用でき、一般的には、非連続の場合、積層体はシート状となり、連続したものを用いた場合、積層体はロール状となる。
【0080】
前記積層体の構成(a)~(d)について、さらに詳しく説明する。
【0081】
<構成(a)について>
構成(a)の積層体は、第1の基材と、前記第1の基材上に配置された剥離層、前記剥離層上に配置されたシリコーン粘着剤層、及び前記シリコーン粘着剤層上に配置された第2の基材からなる構成を有し、前記剥離層が、本発明の剥離コーティング剤を硬化させてなる硬化物からなる。構成(a)の積層体は、それ自体のみならず、その構成を含む積層体の一部であることができる。構成(a)の模式図を
図1に示す。
【0082】
<構成(b)について>
構成(b)の積層体は、第1の基材、前記第1の基材上に配置された第1の剥離層、及び前記第1の剥離層上に配置されたシリコーン粘着剤層からなる構成単位が2つ以上連続して積み重なってなる構成を有し、前記剥離層が本発明の剥離コーティング剤を硬化させてなる硬化物からなる。さらに、その構成の最外層に配置されたシリコーン粘着剤層上に、新たな基材を配置することが好ましい。構成(b)の積層体は、それ自体のみならず、その構成を含む積層体の一部であることができる。
図2に構成(b)の一例の模式図を示す。
図2中、前述した連続する構成単位は2つであり、その構成の最外層に配置されたシリコーン粘着剤層上に、新たな基材を配置している。しかし、構成(b)は
図2に示す様態に限定されない。
【0083】
<構成(c)について>
構成(c)の積層体は、第1の基材と、前記第1の基材上に配置された第1の剥離層と、前記第1の剥離層上に配置されたシリコーン粘着剤層と、前記シリコーン粘着剤層の上に配置された第2の剥離層と、前記第2の剥離層の上に配置された第2の基材からなる構成を有し、前記第1の剥離層及び前記第1の剥離層のうちの一方、又はそれら両方が本発明の剥離コーティング剤を硬化させてなる硬化物からなる。構成(c)の積層体は、それ自体のみならず、その構成を含む積層体の一部であることができる。構成(c)の一例の模式図を
図3に示す。
【0084】
<構成(d)について>
構成(d)は、第1の基材、前記第1の基材上に配置された第1の剥離層、前記第1の剥離層上に配置されたシリコーン粘着剤層、及び前記シリコーン粘着剤層上に配置された第2の剥離層からなる構成単位が2つ以上連続して積み重なった構成を有し、第1の剥離層及び第2の剥離層のうちの一方、又はそれら両方が本発明の剥離コーティング剤を硬化させてなる硬化物からなる。さらに、その構成の最外層に配置された剥離層上に、新たな基材を配置することが好ましい。構成(d)の積層体は、それ自体のみならず、その構成を含む積層体の一部であることができる。
図4に構成(d)の一例の模式図を示す。
図4中、前述した連続する構成単位は2つであり、その構成の最外層に配置された剥離層上に、新たな基材を配置している。しかし、構成(b)は
図4に示す様態に限定されない。
【0085】
上記積層体の構成(b)及び(d)において、基材が非連続の場合(シート状)、それぞれの基材、剥離層、シリコーン粘着層は、種類、厚みを含め全て同一ものであってもよく、互いに異なるものであってよい。また、前記基材が連続の場合(ロール状)、基材、シリコーン粘着層、1つ、もしくは2つの剥離層はそれぞれ同一となる。
【0086】
かかる基材はシート状又はフィルム状であることが好ましく、フィルム状基材であることが特に好ましく、上記剥離フィルムに用いられる基材と同様の基材を用いることができる。
また、かかる基材は光透過性、光非透過性のもの、いずれも使用でき、複数の基材を用いる場合には目的に応じて両者を任意に組み合わせてもよい。
【0087】
本発明の積層体は、ロール状の形状、例えば適切な円筒状又は筒状の芯に巻かれたロール状の形状であることが好ましい。
【0088】
本発明の積層体において、シリコーン粘着層に対して、その両面のうち一方の面に対向して第1の剥離層が配置され、他方の面に対向して第2の剥離層が配置された構成の場合、(例えば、構成(c)又は(d)が相当する)、前記第1の剥離層及び第2の剥離層の少なくとも一方が、本発明の剥離コーティング剤を硬化させてなる硬化物からなる剥離層である必要があるが、ここで、第1の剥離層から前記シリコーン粘着剤を剥離する際の剥離力(F1)と、第2の剥離層から前記シリコーン粘着剤を剥離する際の剥離力(F2)は、異なることが好ましい。
【0089】
F1とF2の剥離力差が小さい場合、シリコーン粘着剤層から一方の剥離層を剥離する操作(第1の対向面の剥離)の後、他方の剥離層を剥離する操作(第2の対向面)において、第1の対向面の剥離する際、意図せず、部分的に第2の対向面が剥離してしまい、シリコーン粘着層が破壊され粘着剤として本来意図した使用が困難になる場合がある。剥離力差としては、例えば、10gf/インチ以上であることが好ましく、20gf/インチ以上であることがさらに好ましい。
【0090】
上述した剥離力差を実現する方法としては、以下で述べるような対向面の形成方法を選択する方法や、2つの剥離層の種類を異なるものにする方法などが挙げられる。
【0091】
本発明の積層体において、剥離層の厚みは、それぞれ独立に2.0μm、1.0μm、あるいは0.5μm以下であることが好ましく、0.4μm以下であることがより好ましく、0.3μm以下であることがさらにより好ましい。また、0.05μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましい。これは、剥離層の膜厚が前述の範囲の下限以上であると、シリコーン粘着剤からの剥離層の剥離力が十分に低くなるからであり、一方、上記範囲の上限以下であると、剥離層の光透過性が特に優れ、また、経済性に優れるからである。
【0092】
本発明の積層体に用いることができるシリコーン粘着剤組成物もしくは硬化性シリコーン粘着剤組成物は特定のものに限定されず、目的とする積層体の用途、例えば粘着テープとしての用途に合致した任意のものを用いることができるが、特に粘着力の比較的高い粘着剤が好ましく使用される。
【0093】
硬化性シリコーン粘着剤の硬化機構は特に限定されず、ヒドロシリル化硬化性、過酸化物硬化性、光硬化性のものなどが使用されるが、比較的低温での硬化が可能で基材や適用材料に対して熱の影響を少なくでき、その一方、工程の簡便さも含めて経済性に優れるヒドロシリル化硬化性のものが好ましく用いられる。
【0094】
かかるシリコーン粘着剤組成物としては、市販のものを用いることができる。このようなシリコーン粘着剤としては、ヒドロシリル化硬化性の東レ・ダウコーニング株式会社製のSD 4580 PSA、SD 4584 PSA、及びSD 4585 PSA等を使用することができる。また、アセンブル用途、特にOCA用途においては、低温を含めたより広い温度範囲で、高い粘着力と高い柔軟性が求められる場合があり、このために、硬化した粘着剤組成物のガラス転移温度が低く、例えば室温以下になるように組成を設計することができ、低温での貯蔵弾性率を低く抑え、十分大きな破断時伸度を有するシリコーン粘着剤を使用することが好ましい。例えば、国際公開第2017/188308号等において本出願人が提案したシリコーン粘着剤組成物が挙げられる。
【0095】
本発明の積層体のシリコーン粘着剤層の厚みは特に限定されないが、0.1~300μmであることが好ましく、0.5~200μmであることがより好ましい。
【0096】
また、本発明の積層体において、シリコーン粘着剤層を、その層が構成する面全体に形成することも、その面の一部分にのみ形成することもできる。シリコーン粘着剤層が面の一部にのみ形成される態様は特に限定されないが、例えば一又は複数の点状、一又は複数の直線又は曲線状、同心円状などの他、任意の形状を構成するようにシリコーン粘着剤が塗布されていてよい。剥離層も、剥離層が構成する面全体に形成されていてもよいが、シリコーン粘着剤層に形成されたシリコーン粘着剤が形作る形状に合わせて、剥離層を形成してもよい。
【0097】
[積層体の製造方法]
本発明の上記積層体の製造方法は特に限定されないが、以下にいくつかの好ましい方法を挙げる。
はじめに、本発明の積層体を製造するにあたり、シリコーン粘着層と剥離層との対向面を調製する方法として以下の2つの方法が例示される。
【0098】
<シリコーン粘着層と剥離層との対向面の調製方法(1)>
対向面の第1の調製方法は、
フィルム状基材上に、本発明の硬化性シリコーン組成物からなる剥離コーティング剤を塗工し硬化させることにより、第1の剥離層を備えた第1の剥離フィルムを形成する工程(1);
上記フィルム状基材と同一のフィルム状基材又は上記フィルム基材とは異なる第2のフィルム状基材上に、硬化性シリコーン粘着剤組成物を塗工し硬化させてシリコーン粘着剤層を形成する工程(2);及び
上記工程(2)によって得られたシリコーン粘着剤層の上に、上記工程(1)によって得られた第1の剥離フィルムの剥離層を貼り合わせる工程(3)、
からなる。本調製方法は、既に硬化した剥離層と、既に硬化したシリコーン粘着剤層を接触させ、両層の対向面を形成する方法である。
【0099】
<シリコーン粘着層と剥離層との対向面の調製方法(2)>
対向面の第2の調製方法は、
フィルム状基材上に、本発明の硬化性シリコーン組成物からなる剥離コーティング剤を塗工し硬化させることにより、第1の剥離層を備えた第1の剥離フィルムを形成する工程(1);
上記工程(1)によって得られた第1の剥離フィルム上に、硬化性シリコーン粘着剤組成物を塗工し硬化させてシリコーン粘着剤層を形成する工程(2);及び
上記工程(2)によって得られたシリコーン粘着剤層の上に、上記フィルム状基材と同一のフィルム状基材又は上記フィルム基材とは異なるフィルム状基材を貼り合わせる工程(3)
からなる。本調製方法は、既に硬化した剥離層上に、硬化性シリコーン粘着剤を塗工し、硬化して、両層の対向面を形成する方法である。
一般には、第1の方法に比べて第2の方法は、シリコーン粘着剤と剥離剤との剥離力差が高い場合が多い。
【0100】
次に、上述した本発明の積層体の構成例(a)~(d)についてそれぞれ製造方法を例示する。これらの中でシリコーン粘着剤と剥離剤との対向面は、上述した対向面調製方法(1)または(2)に該当する方法が適宜使用される。
【0101】
<構成(a)、片面単層、例えばシート状に相当>
構成(1)の製法は、上述したシリコーン粘着層と剥離層との対向面の調製方法(1)、もしくは調製方法(2)がそのまま適用できる。上記方法はシート状の積層体に関連して説明しているが、シート状の積層体に限られない。
【0102】
<構成(b)、片面複層、例えばシート状、又はロール状に相当>
構成(b)の一態様は、例えば、以下の工程(1)~(3)を含む製造方法によって製造できる。
【0103】
フィルム状基材上に、本発明の硬化性シリコーン組成物からなる剥離コーティング剤を塗工し硬化させることにより、剥離層を備えた剥離フィルムを形成する工程(1)、
前記剥離フィルムの剥離層とは反対側の面に、硬化性シリコーン粘着剤組成物を塗工し、硬化させることにより、フィルム基材上にシリコーン粘着剤層を形成する工程(2)、及び
さらにこの積層体の両端のシリコーン粘着層と剥離層とを貼り合わせる工程(3)。
上記はシート状の積層体に関するものであるが、また、工程(3)は、工程(1)及び(2)によって作成した積層体をロール形状に巻くことによっても行うことができる。工程(3)は、また工程(1)及び(2)によって作成した2つ以上の積層体を貼り合わせる工程であってもよく、ロール状の積層体を形成することもできる。ロールの最外面がシリコーン粘着剤層である場合には、そのさらに外側に剥離フィルムを積層することが好ましい。
【0104】
<構成(c)、両面単層、例えばシート状に相当>
構成(c)の一態様は、例えば、以下の工程(1)~(4)を含む製造方法によって製造できる。
本発明の硬化性シリコーン組成物からなる剥離コーティング剤をフィルム状基材上に塗工し硬化させることにより、第1の剥離層を備えた第1の剥離フィルムを形成する工程(1)、
前記第1の剥離フィルムの第1の剥離層上に、硬化性シリコーン粘着剤組成物を塗工し、硬化させることにより、第1の剥離層上にシリコーン粘着剤層を形成する工程(2)、
前記フィルム状基材と同一のフィルム状基材又は前記基材とは異なる種類の第2のフィルム状基材上に、第1の剥離層を形成するために用いたものと同一又はそれとは異なる本発明の硬化性シリコーン組成物からなる剥離コーティング剤、又は本発明の剥離コーティング剤とは異なる剥離コーティング剤を塗工し、硬化させることにより、第2の剥離層を備えた第2の剥離フィルムを形成する工程(3)、及び
前記工程(2)によって得られたシリコーン粘着剤層に、前記工程(3)によって得られた第2の剥離フィルムの第2の剥離層を貼り合わせる工程(4)。
【0105】
<構成(d)、両面複層、例えばシート状、又はロール状に相当>
構成(b)の一態様は、例えば、以下の工程(1)~(4)を含む製造方法によって製造できる。
本発明の硬化性シリコーン組成物からなる剥離コーティング剤をフィルム状基材上に塗工し硬化させることにより、第1の剥離層を備えた第1の剥離フィルムを形成する工程(1)
前記第1の剥離フィルムの第1の剥離層とは反対側の面に、第1の剥離層を形成するために用いたものと同一又はそれとは異なる本発明の硬化性シリコーン組成物からなる剥離コーティング剤、又は本発明の剥離コーティング剤とは異なる剥離コーティング剤を塗工し、硬化させることにより、第1、及び第2の剥離層を備えた剥離フィルムを形成する工程(2)、
第1(又は第2)の剥離層上に、硬化性シリコーン粘着剤組成物を塗工し、硬化させることにより、第1(又は第2)の剥離層上にシリコーン粘着剤層を形成する工程(3);
さらにこの積層体の両端のシリコーン粘着層と第2(又は第1)の剥離層とを貼り合わせる工程(4)。
上記はシート状の積層体に関するものであるが、工程(4)は、工程(1)、(2)、及び(3)によって作成した積層体をロール形状に巻くことによっても行うことができる。工程(4)は、また工程(1)、(2)及び(3)によって作成した2つ以上の積層体を貼り合わせることにより、ロール状の積層体を形成することもできる。ロールの最外面がシリコーン粘着剤層である場合には、そのさらに外側に剥離フィルムを積層することが好ましい。
【0106】
さらに、本発明の積層体において、シリコーン粘着剤層自身を基材の両面それぞれにシリコーン粘着剤層を備えた積層体により構成することも可能である。この場合、2つのシリコーン粘着層は、同一又は異なるものが使用できる。
【0107】
かかる自身が積層構造を備えたシリコーン粘着剤層を含む積層体は、以下の工程(1)~(6)を含む方法により製造することができる。
本発明の硬化性シリコーン組成物からなる剥離コーティング剤をフィルム状基材上に塗工し硬化させることにより、第1の剥離層を備えた第1の剥離フィルムを形成する工程(1);
上記フィルム状基材と同一のフィルム状基材又は上記フィルム基材とは異なるフィルム状基材上に、硬化性シリコーン粘着剤組成物を塗工し硬化させて第1のシリコーン粘着剤層を形成する工程(2);
工程(2)によって得られた第1のシリコーン粘着剤層の上に、上記工程(1)によって得られた第1の剥離フィルムの剥離層を貼り合わせる工程(3);
前記フィルム状基材と同一のフィルム状基材又は前記基材とは異なる種類のフィルム状基材上に、第1の剥離層を形成するために用いたものと同一又はそれとは異なる本発明の硬化性シリコーン組成物からなる剥離コーティング剤、又は本発明の剥離コーティング剤とは異なる剥離コーティング剤を塗工し、硬化させることにより、第2の剥離層を備えた第2の剥離フィルムを形成する工程(4);
工程(2)でシリコーン粘着剤層を設けたのと反対側の面(基材の面)に、上記シリコーン粘着剤組成物と同一又は異なる硬化性シリコーン粘着剤組成物を塗工し硬化させて第2のシリコーン粘着剤層を形成する工程(5);
工程(5)によって得られた第2のシリコーン粘着剤層の上に、上記工程(4)によって得られた第2の剥離フィルムの剥離層を貼り合わせる工程(6)。
【0108】
上記各工程の条件は、それぞれの硬化性シリコーン組成物及び硬化性シリコーン粘着剤組成物が硬化して、所望の剥離層及び粘着剤層が形成できればよく、特に限定されない。また、当業者にはそれらの硬化性組成物の硬化条件はよく知られており、過度の試行錯誤なしに最適な条件を選択できる。
【0109】
上述した積層体の製造方法の他に、本発明の積層体は、各層を基材上に順番に作成していくこと、あるいは2つの基材上に別々に作成したパーツを貼り合わせることによって製造することができ、その方法は当業者が技術常識に基づいて容易に想到できることである。
【実施例】
【0110】
本発明のシリコーン粘着剤用剥離剤組成物及び剥離性フィルムを実施例により詳細に説明する。なお、以下で示す平均組成式中、記号Meはメチル基を表し、Viはビニル基を表す。また、剥離フィルムからシリコーン粘着剤を剥離させるときの剥離力および剥離フィルムを剥離した後のシリコーン粘着剤の接着力保持率(残留接着率ともいう)の測定方法は以下に記載するとおりである。
【0111】
<参考例>
「ヒドロシリル化硬化性シリコーン粘着剤組成物溶液」の調製
(CH3)3SiO1/2単位、SiO4/2単位、及び水酸基からなるMQシリコーン樹脂(分子量が2,600、水酸基量が3質量%)のキシレン溶液(固形分68%) 30.0質量部、(CH3)3SiO1/2単位、SiO4/2単位、および水酸基からなるMQシリコーン樹脂(分子量が3,300、水酸基量が1質量%)のキシレン溶液(固形分76%) 21.9質量部、ビニル官能性ポリジメチルシロキサン(分子量が650,000、ビニル基量が0.01質量%)26.4質量部、及びトルエン67.9質量部をよく混合し、均一な溶液とした。
前記の溶液146.2g、分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体(分子量が1,600、ケイ素原子結合水素原子量が0.73質量%)0.50g、1-エチニル-1-シクロヘキサノールの20質量%トルエン溶液0.50g、及び白金系ヒドロシリル化反応触媒(白金金属含有量が0.52質量%)0.50gをよく混合し、均一な溶液とした。
【0112】
<剥離力1の測定方法>
ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略記する)フィルム(株式会社東レ製、製品名ルミラー(登録商標)S10、厚さ50μm)上に、硬化後の剥離剤層の厚さが1μmとなるように、硬化性シリコーン剥離剤組成物をアプリケーターを用いて塗布し、150℃で3分間加熱して、硬化シリコーン剥離層を有する「剥離フィルム1」を作成した。「剥離フィルム1」の剥離層上に、上記参考例の「ヒドロシリル化硬化性シリコーン粘着剤組成物溶液」を、硬化後の膜厚が50μmとなるように、アプリケーターを用いて塗布し、160℃で6分間加熱して硬化させてシリコーン粘着剤層を形成した。得られたシリコーン粘着剤層上に、2kgのハンドローラーを用いて、前記PETフィルムを貼合わせた。得られたフィルムを1インチ幅に切断し、引張り試験機(オリエンテック社製RTC-1210)にて、「剥離フィルム1」を180°の方向に1.0m/分の速度で引張り、25℃においてシリコーン粘着剤層から剥離フィルム1を剥離させるのに要する力(剥離力1)を測定した。
【0113】
<残留接着率1の測定方法>
厚さ2mmのポリメチルメタクリレート(以下、PMMAと略記する)板上に、上記の剥離力測定後のPETフィルム状基材とシリコーン粘着剤層からなる試験片の粘着剤層を、2kgのハンドローラーを用いて貼り合わせた。その後、上記引張り試験機にてシリコーン粘着剤層をPETフィルム状基材とともに180°の方向に0.3m/分の速度で引張り、25℃においてPMMA板からシリコーン粘着剤を剥離するのに要する力(接着力F1)を測定した。
別途、前記PETフィルム上に、上記参考例で得られたヒドロシリル化硬化性シリコーン粘着剤溶液を、硬化後の膜厚が50μmとなるように、アプリケーターを用いて塗布し、160℃で6分間加熱して硬化させて、シリコーン粘着剤層を形成した。このフィルムを1インチ幅に切断し、上述したものと同じ厚さ2mmのPMMA板上に、その粘着剤層を2kgのハンドローラーを用いて貼合わせた。その後、前記引張り試験機にてシリコーン粘着剤層をPETフィルムとともに180°の方向に0.3m/分の速度で引張り、25℃においてPMMA板からシリコーン粘着剤を剥離するのに要する力(接着力F2)を測定した。接着力F1及び接着力F2から下記式に従い、残留接着率1を求めた。
残留接着率1(%)=(接着力F1/接着力F2)*100(%)
【0114】
<剥離力2の測定方法>
前記PETフィルム上に、硬化後の剥離剤層の厚さが1μmとなるように、上記のヒドロシリル化硬化性シリコーン剥離剤組成物溶液を、アプリケーターを用いて塗布し、150℃で3分間加熱して、硬化シリコーン剥離層を有する「剥離フィルム2」を作成した。
別途、前記PETフィルム上に、前記ヒドロシリル化硬化性シリコーン粘着剤組成物溶液を、硬化後の膜厚が50μmとなるように、アプリケーターを用いて、塗布し、160℃で6分間加熱することにより硬化させた。この粘着剤層上に、前記剥離フィルム2を、2kgのハンドローラーを用いて貼り合わせた。冷却後、このフィルムを1インチ幅に切断し、前記引張り試験機にて剥離フィルムを180°の方向に1.0m/分の速度で引っ張り、25℃においてシリコーン粘着剤層から剥離フィルム2を剥離させるのに要する力(剥離力2)を測定した。
【0115】
<残留接着率2の測定方法>
厚さ2mmのPMMA板上に、上記の剥離力2の測定後のPETフィルム状基材とシリコーン粘着剤層からなる試験片の粘着剤層を、2kgのハンドローラーを用いて貼り合わせた。その後、上記引張り試験機にてシリコーン粘着剤層をPETフィルム状基材とともに180°の方向に0.3m/分の速度で引張り、25℃においてPMMA板からシリコーン粘着剤を剥離するのに要する力(接着力F3)を測定した。接着力F3及び残留接着率1の測定において求めた接着力F2から下記式に従い、残留接着率2を求めた。
残留接着率2(%)=(接着力F3/接着力F2)*100(%)
【0116】
実施例及び比較例において用いた原料は以下のとおりである。
以下において、ビニル基量は、一分子中のCH2=CH-基の含有量(質量%)を示す。
(A-1):フッ素原子含有量が40質量%以上であるフルオロアルキル基及びアルケニル基含有オルガノポリシロキサン
(i)ポリマー1
平均組成式:
(Me2ViSiO1/2)2(Me2SiO2/2)1470(Me(C4F9CH2CH2)SiO2/2)1100(MeViSiO2/2)8
で表される、ビニル基量が0.042質量%、(Me(C4F9CH2CH2)SiO2/2)単位が全ジオルガノシロキサン単位(D単位)の43モル%であり、フッ素含有量が42質量%であるフルオロアルキル基及びアルケニル基含有オルガノポリシロキサン。
(ii)ポリマー2
平均組成式:
(Me2ViSiO1/2)2(Me2SiO2/2)1280(Me(C4F9CH2CH2)SiO2/2)1270(MeViSiO2/2)7
で表される、ビニル基量が0.051質量%、(Me(C4F9CH2CH2)SiO2/2)単位が全ジオルガノシロキサン単位(D単位)の50モル%であり、フッ素原子含有量が45質量%であるフルオロアルキル基及びアルケニル基含有オルガノポリシロキサン。
【0117】
(A-2):フッ素原子含有量が40質量%未満であるフルオロアルキル基及びアルケニル基含有オルガノポリシロキサン
ポリマー3
平均組成式:
(Me2ViSiO1/2)2(Me2SiO2/2)900(Me(C4F9CH2CH2)SiO2/2)450(MeViSiO2/2)10
で表される、ビニル基量が0.16質量%、(Me(C4F9CH2CH2)SiO2/2)単位が全ジオルガノシロキサン単位(D単位)の33モル%であり、フッ素原子含有量が38質量%であるフルオロアルキル基及びアルケニル基含有オルガノポリシロキサン
【0118】
(B)平均組成式:
(Me3SiO1/2)2 (Me(C4F9CH2CH2)SiO2/2)12(MeHSiO2/2)27
で表される、ケイ素原子結合水素原子量が0.49質量%、(Me(C4F9CH2CH2)SiO2/2)単位が全ジオルガノシロキサン単位(D単位)の31モル%であり、フッ素原子含有量が38質量%である、平均して1分子当たり少なくとも3つのSiH基を有するオルガノポリシロキサン(表1及び2中で、SiHポリマーと記す)
【0119】
(C)ヒドロシリル化触媒
1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン白金錯体(ビニル基含有ジメチルポリシロキサン中のマスターバッチとして添加した)(白金金属量として270ppmを硬化性組成物中の固形分量に対して添加した)。
(D)有機溶媒
ジイソプロピルエーテル(表1及び2中で、IPEと記す)
【0120】
[混合試験]
上記ポリマー1とポリマー3を1:1の質量比で、蓋つきの透明なガラス製バイアル瓶に入れ、25℃において十分に撹拌し混合したところ、混合物は白濁して均一透明にはならなかった。この混合物を25℃に静置し、24時間後に再び外観を観察したところ、依然として白濁したままであった。なお、ポリマー1及びポリマー3はそれぞれ25℃において透明な液体である。
【0121】
上記ポリマー2とポリマー3を1:1の質量比で、上と同様の方法で混合試験行ったところ、ポリマー2とポリマー3の混合物も25℃において白濁した外観を有し、24時間放置後においても白濁した状態だった。なお、ポリマー2は25℃において透明な液体である。
【0122】
一方、ポリマー1とポリマー2を1:1の質量比で、上と同様の方法で混合試験を行ったところ、ポリマー1とポリマー2の混合物は、25℃において均一かつ透明な外観を有し、24時間放置後においても均一かつ透明な外観を有していた。
【0123】
[実施例1~4及び比較例1~2]
下の表1に示した組成にしたがって硬化性シリコーン組成物を調製し、これを剥離コーティング剤として用いて、上述した方法にしたがって、剥離フィルムを調製し、剥離フィルムをシリコーン粘着剤層から剥離させるときの剥離力、及び剥離フィルムを剥離した後の粘着剤層のポリメチルメタクリレート樹脂に対する残留接着率を測定した。
実施例1~6の剥離コーティング剤である硬化性シリコーン組成物は25℃において均一透明だった。
【0124】
【0125】
[実施例5~6及び比較例3]
下の表2に示した組成にしたがって硬化性シリコーン組成物を調製し、これを剥離コーティング剤として用いて、上述した方法にしたがって剥離フィルムを調製し、剥離フィルムをシリコーン粘着剤層から剥離させるときの剥離力、及び剥離フィルムを剥離した後のシリコーン粘着剤層のPMMA板に対する残留接着率を測定した。
【0126】
【0127】
表1及び2に示した結果から、25℃で混合しても相溶せずに白濁混合物を形成するポリマー1及びポリマー2の組み合わせを含む剥離コーティング剤は、ポリマー1及びポリマー2をそれぞれ単独で用いた剥離コーティング剤と比較して、シリコーン粘着剤層と剥離層との間の剥離力を低下させて剥離しやすくするとともに、粘着剤層の残留接着率を大きく低下させることがないという効果を奏することがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明の硬化性シリコーン組成物をシリコーン粘着剤用剥離コーティング剤として用いて形成した剥離層を備えた剥離フィルムは、弱い力で剥離フィルムをシリコーン粘着剤から剥離させることができ、しかも剥離フィルムを剥離した後のシリコーン粘着剤の接着力を高く維持できるという特性を有するので、本発明の硬化性シリコーン組成物は、シリコーン粘着剤用の剥離フィルム用の剥離コーティング剤として有用である。
【符号の説明】
【0129】
1 積層体
11 基材
12 剥離層
13 粘着剤層