(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-13
(45)【発行日】2023-10-23
(54)【発明の名称】端末キャップ
(51)【国際特許分類】
H02G 15/04 20060101AFI20231016BHJP
H01R 4/22 20060101ALI20231016BHJP
H02G 3/04 20060101ALI20231016BHJP
【FI】
H02G15/04 030
H01R4/22
H02G3/04 062
(21)【出願番号】P 2020048543
(22)【出願日】2020-03-19
【審査請求日】2022-10-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】三田 隼也
【審査官】東 昌秋
(56)【参考文献】
【文献】特開平6-203891(JP,A)
【文献】実開平4-51770(JP,U)
【文献】特開2006-24496(JP,A)
【文献】特開2019-29104(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 15/00-15/196
H02G 1/14- 3/04
H01R 3/00- 4/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の芯線で構成する導体が絶縁被覆より露出する被覆電線の端末を囲繞する端末キャップであり、
前記絶縁被覆の先端側の一部と前記絶縁被覆より露出する露出導体とを収容するキャップ本体と、該キャップ本体に対して枢動可能に連結されるとともに、前記キャップ本体の開口を塞ぐカバー体とが備えられ、
前記露出導体は、中間部分において
、前記露出導体を構成する複数の前記芯線を溶着させた溶着部と、該溶着部より先端側において幅広な先端部とが形成され、
前記キャップ本体は、前記先端部を収容する先端収容部、前記溶着部を収容するとともに、前記先端収容部より幅狭の溶着部収容部、前記絶縁被覆の先端側の一部を収容するとともに前記溶着部収容部より幅広の被覆部収容部とが軸方向に沿って設けられるとともに、一体構成され、
前記カバー体は、
前記先端収容部及び前記溶着部収容部の開口を塞ぐ先端カバー体と、前記被覆部収容部の開口を塞ぐ被覆部カバー体とが設けられ、
前記先端収容部及び前記溶着部収容部の開口を塞ぐ前記先端カバー体を前記キャップ本体に固定する固定部が設けられた
端末キャップ。
【請求項2】
前記固定部は、複数設けられた
請求項1に記載の端末キャップ。
【請求項3】
前記固定部は、前記先端カバー体を前記先端収容部及び前記溶着部収容部のうち少なくとも一方に固定する第1固定部と、固定態様が異なる第2固定部とが設けられた
請求項2に記載の端末キャップ。
【請求項4】
前記第1固定部は、前記先端カバー体に設けられ、前記先端収容部及び前記溶着部収容部のうち少なくとも一方に係止して固定し、
前記第2固定部は前記先端収容部及び前記溶着部収容部のうち少なくとも一方に設けられ、前記先端カバー体に係止して固定する
請求項3に記載の端末キャップ。
【請求項5】
前記第1固定部及び前記第2固定部は、相手方の一部分に係止して固定する構造であり、
前記第1固定部と前記第2固定部とは係止方向が異なる
請求項3又は請求項4に記載の端末キャップ。
【請求項6】
前記被覆部収容部の開口を塞ぐ前記被覆部カバー体を前記被覆部収容部に固定する被覆部固定部が設けられ、
前記先端カバー体に、前記被覆部カバー体に向かって延びるとともに、前記被覆部収容部の開口を塞ぐ前記被覆部カバー体によって移動が規制される被規制部が設けられ、
前記被覆部固定部は、
前記被規制部を介して、前記先端カバー体を前記キャップ本体に固定する前記固定部のひとつとして機能する
請求項2乃至請求項5のうちいずれかに記載の端末キャップ。
【請求項7】
前記被覆部カバー体は、前記被覆部収容部に対して前記軸方向に直交する直交方向に配置されるとともに、前記軸方向に沿ったヒンジによって枢動可能に構成され、
前記先端カバー体は、前記先端収容部及び前記溶着部収容部に対して前記直交方向に配置されるとともに、前記軸方向に沿ったヒンジによって枢動可能に構成され、
請求項6に記載の端末キャップ。
【請求項8】
前記被覆部カバー体と前記先端カバー体とは、
前記キャップ本体に対して前記直交方向の反対側に配置された
請求項7に記載の端末キャップ。
【請求項9】
前記被覆部カバー体は、前記被覆部収容部に対して前記軸方向に直交する直交方向に配置されるとともに、前記軸方向に沿ったヒンジによって枢動可能に構成され、
前記先端カバー体は、前記先端収容部の前記軸方向の先端に配置されるとともに、前記直交方向に沿ったヒンジによって枢動可能に構成された
請求項6に記載の端末キャップ。
【請求項10】
前記露出導体における前記溶着部と前記絶縁被覆の先端部との間に、幅狭の前記溶着部に向かって徐々に幅狭になる幅寄部が形成され、
前記先端カバー体における前記被覆部カバー体の側に、前記幅寄部をカバーする部分が設けられた
請求項1乃至請求項9のうちいずれかに記載の端末キャップ。
【請求項11】
前記先端収容部に、前記先端部の幅を広げる拡幅体が設けられた
請求項1乃至請求項10のうちいずれかに記載の端末キャップ。
【請求項12】
複数の前記被覆電線が備えられ、
前記溶着部は、前記複数の前記被覆電線の前記露出導体がまとめて溶着された
請求項1乃至請求項11のうちいずれかに記載の端末キャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、複数の芯線で構成する導体が絶縁被覆より露出する被覆電線の端末を囲繞する端末キャップに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両に配索されるワイヤーハーネス等を構成する電線として、複数の芯線で構成する導体を絶縁被覆で被覆した被覆電線が用いられている。この被覆電線の端末は、接続先となる電子機器類やバッテリなどに接続するため、絶縁被覆より導体が露出されている。ただ、端末において導体が露出したままであると短絡の危険があるため、端末を絶縁するべく、このような被覆電線には、端末を囲繞する端末キャップが用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、一端が閉じた筒状のカバー体を被覆電線の端末に被せて、カバー体の他端に設けた舌片をテープにより被覆電線に固定することにより端末を囲繞する端末キャップが開示されている。この端末キャップによれば、端末キャップがテープで被覆電線に固定されるため、端末キャップが被覆電線に強固に固定され、短絡の危険が低減できるとされている。
【0004】
しかしながら、このような端末キャップを被覆電線に取り付けるためには、端末キャップを保持しながらテープを巻き付けるという煩雑な作業が必要となる。また、この種の作業は、人の手によらねばならないが、取付作業の作業性に問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述の問題に鑑み、容易に取付けることができ、かつ短絡を確実に防止できる端末キャップの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、複数の芯線で構成する導体が絶縁被覆より露出する被覆電線の端末を囲繞する端末キャップであり、前記絶縁被覆の先端側の一部と前記絶縁被覆より露出する露出導体とを収容するキャップ本体と、該キャップ本体に対して枢動可能に連結されるとともに、前記キャップ本体の開口を塞ぐカバー体とが備えられ、前記露出導体は、中間部分において、前記露出導体を構成する複数の前記芯線を溶着させた溶着部と、該溶着部より先端側において幅広な先端部とが形成され、前記キャップ本体は、前記先端部を収容する先端収容部と、前記溶着部を収容するとともに、前記先端収容部より幅狭の溶着部収容部と、前記絶縁被覆の先端側の一部を収容するとともに前記溶着部収容部より幅広の被覆部収容部とが軸方向に沿って設けられるとともに、一体構成され、前記カバー体は、前記先端収容部及び前記溶着部収容部の開口を塞ぐ先端カバー体と、前記被覆部収容部の開口を塞ぐ被覆部カバー体とが設けられ、前記先端収容部及び前記溶着部収容部の開口を塞ぐ前記先端カバー体を前記キャップ本体に固定する固定部が設けられたことを特徴とする。
【0008】
上述の幅狭とは、すべての部分の幅が比較対象とする部位のあらゆる部分の幅より狭いことのみを意味するのではなく、比較対象とする部位の最大幅よりすべての部分の幅が狭いことも含む。同様に、上述の幅広とは、すべての部分の幅が比較対象とする部位のあらゆる部分の幅より広いことのみを意味するのではなく、比較対象とする部位の最小幅よりすべての部分の幅が広いことも含む。
【0009】
この発明により、前記端末キャップを容易に取付けることができ、かつ短絡を確実に防止できる。
【0010】
詳述すると、短絡を防止するためには、前記端末キャップの不用意な脱落を防止する必要がある。特に、前記端末キャップは、前記露出導体が、中間部分において溶着された溶着部と、該溶着部より先端側において幅広な先端部とが形成された前記被覆電線を対象としており、短絡を防止するためには、このような被覆電線からの脱落を防止する必要がある。
【0011】
これに対し、前記溶着部収容部を前記先端収容部より幅狭としてあるため、幅狭な前記溶着部収容部に対し、前記露出導体における幅広な前記先端部を抜け留めとして機能させることができる。これにより、前記端末キャップの軸方向の移動を規制できる。さらに、前記先端カバー体を前記キャップ本体に固定する固定部が設けられているため、この固定部により、前記先端カバー体が外れることも効果的に防止できる。
【0012】
また、前記先端収容部及び前記溶着部収容部に前記露出導体を収容するのみで前記端末キャップが軸方向に移動することを規制でき、前記固定部は前記端末キャップに設けられているため、別部材のテープなどを用いる必要がない。そのため、取付作業を容易にできる。
【0013】
このように、前記端末キャップの軸方向の移動が規制され、前記先端カバー体が外れることも防止されるため、前記端末キャップの不用意な脱落を確実に防止でき、また、前記端末キャップの取付作業を容易にできる。したがって、この発明により、前記端末キャップを容易に取付けることができ、かつ短絡を確実に防止できる。
【0014】
この発明の態様として、前記固定部は、複数設けられてもよい。
【0015】
この発明により、前記端末キャップに対し何らかの力が作用して、複数の前記固定部の1つの固定状態が解除されることとなっても、残りの前記固定部により前記先端カバー体が外れることを防止できる。したがって、前記端末キャップの不用意な脱落をより確実に防止できる。
【0016】
また、この発明の態様として、前記固定部は、前記先端カバー体を前記先端収容部及び前記溶着部収容部のうち少なくとも一方に固定する第1固定部と、固定態様が異なる第2固定部とが設けられてもよい。
上述の固定態様が異なるとは、係止、嵌合などの固定方法の他、固定方法が係止の場合にはどのような係止構造であるかなどの具体的な固定構造、固定方法が係止の場合は係止する方向など固定する方向が異なるなども含み、さらに、回転、引っ張りなど、当該固定部による固定状態を解除するために作用させる力の種類や方向が異なり、異なる種類・方向の力が作用しなければ固定状態を解除できない場合を含む。
【0017】
この発明により、前記端末キャップが不用意に脱落することを確実に防止できる。
【0018】
詳述すると、前記端末キャップに対し、何らかの力が作用して、例えば前記第2固定部の固定状態が解除されたとしても、前記第1固定部は前記第2固定部と固定態様が異なるため、同種の力が作用してもその固定状態が解除されることはない。つまり、複数の種類の力が作用しない限り、前記第1固定部と前記第2固定部との双方の固定状態が解除されることがない状態とできる。したがって、前記端末キャップが不用意に脱落することを確実に防止できる。
【0019】
また、この発明の態様として、前記第1固定部は、前記先端カバー体に設けられ、前記先端収容部及び前記溶着部収容部のうち少なくとも一方に係止して固定し、前記第2固定部は前記先端収容部及び前記溶着部収容部のうち少なくとも一方に設けられ、前記先端カバー体に係止して固定してもよい。
【0020】
あるいは、この発明の態様として、前記第1固定部及び前記第2固定部は、相手方の一部分に係止して固定する構造であり、前記第1固定部と前記第2固定部とは係止方向が異なってもよい。
【0021】
これらの発明により、前記先端カバー体を外すためには、それぞれ係止方向の異なる前記第1固定部と前記第2固定部との両方の係止状態を解除する複雑な操作が必要となる。これにより、複雑な作業を要しない係止という固定方法を用いながら、前記端末キャップが不用意に脱落することをより確実に防止できる。
【0022】
また、この発明の態様として、前記被覆部収容部の開口を塞ぐ前記被覆部カバー体を前記被覆部収容部に固定する被覆部固定部が設けられ、前記先端カバー体に、前記被覆部カバー体に向かって延びるとともに、前記被覆部収容部の開口を塞ぐ前記被覆部カバー体によって移動が規制される被規制部が設けられ、前記被覆部固定部は、前記被規制部を介して、前記先端カバー体を前記キャップ本体に固定する前記固定部のひとつとして機能してもよい。
【0023】
この発明により、前記先端カバー体が前記被規制部を介して前記被覆部カバー体によって移動が規制されるため、前記端末キャップを外すためには、例えば、前記被覆部固定部の固定状態を解除し、さらに前記先端カバー体における他の前記固定部の固定状態を解除するという段階的な操作が必要になる。これにより、前記端末キャップが不用意に脱落することをより確実に防止できる。
【0024】
また、この発明の態様として、前記被覆部カバー体は、前記被覆部収容部に対して前記軸方向に直交する直交方向に配置されるとともに、前記軸方向に沿ったヒンジによって枢動可能に構成され、前記先端カバー体は、前記先端収容部及び前記溶着部収容部に対して前記直交方向に配置されるとともに、前記軸方向に沿ったヒンジによって枢動可能に構成されてもよい。
【0025】
この発明により、前記先端カバー体及び前記被覆部カバー体をそれぞれ前記軸方向に沿ったヒンジによって枢動させるという簡易な操作により、前記端末キャップを前記被覆電線に取り付けることができる。
【0026】
また、この発明の態様として、前記被覆部カバー体と前記先端カバー体とは、前記キャップ本体に対して前記直交方向の反対側に配置されてもよい。
【0027】
この発明により、前記端末キャップが不用意に脱落することをより確実に防止できる。
【0028】
詳述すると、前記被覆部カバー体と前記先端カバー体とは、前記キャップ本体に対して前記直交方向の反対側に配置されているため、前記被覆部カバー体を開閉するための回転向きと、前記先端カバー体を開閉するための回転向きとを反対向きにすることができる。
【0029】
そのため、前記先端カバー体を開くためには、少なくとも、前記被覆部カバー体を開閉するための回転向きの力が作用した後、さらに、これとは反対方向の回転向きの力が作用しなければならない。つまり、段階的に、且つ,向きが大きく異なる力が作用しなければならず、前記先端カバー体を開くために作用させる必要のある力を複雑化することができる。
【0030】
したがって、前記端末キャップが不用意に脱落することをより確実に防止できる。
【0031】
また、この発明の態様として、前記被覆部カバー体は、前記被覆部収容部に対して前記軸方向に直交する直交方向に配置されるとともに、前記軸方向に沿ったヒンジによって枢動可能に構成され、前記先端カバー体は、前記先端収容部の前記軸方向の先端に配置されるとともに、前記直交方向に沿ったヒンジによって枢動可能に構成されてもよい。
【0032】
この発明により、前記端末キャップが不用意に脱落することをより確実に防止できる。
【0033】
詳述すると、前記被覆部カバー体は前記軸方向に沿ったヒンジによって枢動可能に構成され、且つ、前記先端カバー体は前記直交方向に沿ったヒンジによって枢動可能に構成されているため、前記被覆部カバー体を開閉するための回転向きと、前記先端カバー体を開閉するための回転向きとを直交させることができる。
【0034】
そのため、前記先端カバー体を開くためには、少なくとも、前記被覆部カバー体を開閉するための回転向きの力が作用した後、さらに、これとは直交する回転向きの力が作用しなければならず、つまり、段階的に、且つ,向きが大きく異なる力が作用しなければならず、前記先端カバー体を開くために作用させる必要のある力を複雑化することができる。
【0035】
したがって、前記端末キャップが不用意に脱落することをより確実に防止できる。
【0036】
また、この発明の態様として、前記露出導体における前記溶着部と前記絶縁被覆の先端部との間に、幅狭の前記溶着部に向かって徐々に幅狭になる幅寄部が形成され、前記先端カバー体における前記被覆部カバー体の側に、前記幅寄部をカバーする部分が設けられてもよい。
【0037】
この発明により、前記先端カバー体により前記幅寄部をカバーすることができ、前記幅寄部を有する前記被覆電線に対して前記端末キャップを取り付ける場合でも、短絡を確実に防止できる。
【0038】
また、この発明の態様として、前記先端部収容部に、前記先端部の幅を広げる拡幅体が設けられてもよい。
この発明により、前記先端部をより幅広なものとすることができ、幅狭な前記溶着部収容部に対する抜け留め機能を向上させることができる。これにより、前記端末キャップの軸方向の移動が規制され、前記端末キャップが不用意に脱落することをより確実に防止できる。
【0039】
また、この発明の態様として、複数の前記被覆電線が備えられ、前記溶着部は、前記複数の前記被覆電線の前記露出導体がまとめて溶着されてもよい。
この発明により、複数の前記被覆電線の前記露出導体をまとめて1つの露出導体をすることができ、このまとめられた露出導体に対し1の前記端末キャップを取り付けることができる。これにより、各前記被覆電線のそれぞれに前記端末キャップを取り付ける場合に比べ、前記端末キャップの取付作業を容易にできる。
【発明の効果】
【0040】
この発明によれば、容易に取付けることができ、かつ短絡を確実に防止できる端末キャップを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】第1実施形態の端末キャップを被覆電線に取り付ける状態の説明図。
【
図4】第1実施形態の端末キャップを被覆電線に取り付ける工程の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0042】
この発明の一実施形態を、以下図面を用いて説明する。
まず、本実施形態の端末キャップ1について
図1乃至
図3を用いて説明する。ここで、
図1は被覆電線100に端末キャップ1を取り付ける状態の説明図を示し、具体的には、
図1(a)は端末キャップ1を展開した状態の平面図を示し、
図1(b)は端末キャップ1を閉じた状態の平面図を示している。
【0043】
また、
図2は被覆電線100の説明図を示し、具体的には、
図2(a)は被覆電線100の平面図を示し、
図2(b)は被覆電線100の側面図を示している。
図3は端末キャップ1の説明図を示し、具体的には、
図3(a)は端末キャップ1を展開した状態の斜視図を示し、
図3(b)は端末キャップ1を閉じた状態の斜視図を示し、
図3(c)は
図3(b)のA-A断面図を示している。
【0044】
端末キャップ1は、
図1(a)及び
図1(b)に示すように、複数の芯線で構成する導体が絶縁被覆300により被覆された被覆電線100に対して取り付けられるものである。具体的には、導体が絶縁被覆300より露出する被覆電線100の端末110の部分に取り付けられて、端末110を囲繞する。つまり、端末キャップ1を用いて導体が露出する端末110を囲繞して、端末110を絶縁することで、端末110による短絡を防止する。
【0045】
なお、以下、被覆電線100の長手方向に相当する方向を軸方向Lとし、軸方向Lに直交する方向であって
図2(a)における上下方向に相当する方向を横幅方向W1とし、軸方向Lに直交する方向であって
図2(b)における上下方向に相当する方向を縦幅方向W2とする。また、端末キャップ1に関して軸方向L、横幅方向W1、縦幅方向W2というときは、それぞれ端末キャップ1を被覆電線100に対して取り付けた際に各方向に合致する方向を指す。
【0046】
そして、横幅というときは横幅方向W1における長さをいい、縦幅というときは縦幅方向W2における長さをいう。また、単に幅というときは横幅及び縦幅の双方を指し、また、単に幅広又は幅狭というときは横幅及び縦幅ともに広くなっていること又は狭くなっていることをいう。
【0047】
端末キャップ1が取り付けられる被覆電線100の端末110は、
図2(a)及び
図2(b)に示すように、露出導体200が絶縁被覆300より露出している。この露出導体200では、中間部分において溶着された溶着部210と、溶着部210より先端側の部位である先端部220と、溶着部210と絶縁被覆300の先端部(後述する被収容部分301)との間に幅寄部230とで構成されている。そして、露出導体200は、先端部220及び幅寄部230に対して溶着部210が幅狭となったくびれ形状を呈している。
【0048】
具体的には、溶着部210は、露出導体200同士が溶着された部位であり、横幅及び縦幅を軸方向Lにわたって均一としている。
先端部220は、溶着部210の先端側と連続し、先端側に向かうにつれて幅広となるテーパー部221を有し、テーパー部221より先端側の部分も溶着部210より幅広にしている。つまり、先端部220は溶着部210より幅広としている。
【0049】
幅寄部230は、幅狭の溶着部210に向かって徐々に幅狭になるテーパー形状としており、幅寄部230も溶着部210より幅広にしている。このように、露出導体200を、溶着部210が、その軸方向L両側の部位である溶着部210及び幅寄部230に対して幅狭となったくびれ形状としている。
【0050】
端末キャップ1は、複数の被覆電線100に対して取り付けられる。具体的には、複数の被覆電線100は絶縁被覆300で被覆された部分において束ねられ、溶着部210は、複数の導体の露出導体200がまとめて溶着された部位としている。そして、端末キャップ1は、複数の被覆電線100が束ねられ、複数の露出導体200が溶着されて1つにまとめられた端末110に対して取り付けられる。
【0051】
端末キャップ1は、
図3(a)に示すように、絶縁被覆300の先端側の一部と露出導体200とを収容するキャップ本体10と、キャップ本体10に対して枢動可能に連結されるとともに、キャップ本体10の開口を塞ぐカバー体20とを備える。なお、以下では、キャップ本体10に収容される各絶縁被覆300の先端側の一部をまとめて被収容部分301とする。
【0052】
キャップ本体10には、先端部220を収容する先端収容部11と、溶着部210を収容する溶着部収容部12と、幅寄部230を収容する幅寄部収容部13と、被収容部分301を収容する被覆部収容部14とが、軸方向Lに沿って設けられている。これらの先端収容部11、溶着部収容部12、幅寄部収容部13及び被覆部収容部14は一体構成されている。
【0053】
また、カバー体20には、先端収容部11,溶着部収容部12及び幅寄部収容部13の開口を塞ぐ先端カバー体21と、被覆部収容部14の開口を塞ぐ被覆部カバー体22とが設けられている。
【0054】
先端カバー体21は、先端収容部11の軸方向Lの先端に配置されるとともに、軸方向Lに直交する横幅方向W1に沿ったヒンジによって枢動可能に構成されている。
被覆部カバー体22は、被覆部収容部14に対して軸方向Lに直交する横幅方向W1に配置されるとともに、軸方向Lに沿ったヒンジによって枢動可能に構成されている。
【0055】
これにより、キャップ本体10に被覆電線100を収容した状態で、先端カバー体21をヒンジにより横幅方向W1を中心に枢動して先端収容部11、溶着部収容部12及び幅寄部収容部13の開口を塞ぐことができる。また、被覆部カバー体22をヒンジにより軸方向Lを中心に枢動して被覆部収容部14の開口を塞ぐことができる。これにより、端末キャップ1は端末110を覆うことができる。
【0056】
また、キャップ本体10及びカバー体20の具体的形状に関して説明する。キャップ本体10及びカバー体20はそれぞれ合わさって露出導体200及び被収容部分301を収容できる形状である。キャップ本体10とカバー体20とは、開口面(縦幅方向W2と直交し、キャップ本体10の開口縁に接する面)に対し対称な形状としている。そのため、キャップ本体10は、露出導体200及び被収容部分301における縦幅方向W2の下半分の部分を受け入れる箱型の形状としており、カバー体20は、露出導体200及び被収容部分301における縦幅方向W2の上半分の部分を受け入れる箱型の形状としている。
【0057】
つまり、先端収容部11、溶着部収容部12、幅寄部収容部13及び被覆部収容部14はそれぞれ、先端部220,溶着部210,幅寄部230、及び被収容部分301における縦幅方向W2の下半分の部分を受け入れる箱型で形成されている。そして、先端カバー体21は、先端部220,溶着部210及び幅寄部230における縦幅方向W2の上半分の部分を受け入れる箱型の形状,被覆部カバー体22は、被収容部分301における縦幅方向W2の上半分の部分を受け入れる箱型で形成されている。
【0058】
さらに、キャップ本体10において、先端収容部11(より具体的には先端収容部11の最大幅)より溶着部収容部12を幅狭にし、且つ、溶着部収容部12(より具体的には溶着部収容部12の最小幅)より幅寄部収容部13及び被覆部収容部14を幅広とする。そして、全体として、溶着部収容部12が軸方向Lの両側に位置する先端収容部11並びに幅寄部収容部13及び被覆部収容部14に対して幅狭となったくびれ形状となるようにしてある。
【0059】
また、キャップ本体10と対称な形状としたカバー体20も同様の形状であり、カバー体20全体で見たときに、溶着部210をカバーする部分(後述する均一部21b)を軸方向L両側の部位より幅狭となったくびれ形状としている。
【0060】
これにより、キャップ本体10に収容した露出導体200に軸方向Lの力が作用した際に、幅広の先端部220や、幅寄部230、被収容部分301を、幅狭となる溶着部収容部12及び均一部21bに対し抜け留めとして機能させることができる。
【0061】
さらに、キャップ本体10は、
図3(a)乃至
図3(c)に示すように、露出導体200の形状に沿うように、先端収容部11におけるテーパー部221に対応する部分を、先端側に向かうにつれて幅広となるテーパー部11aで構成している。また、溶着部収容部12を、幅が均一なストレート形状で構成し、幅寄部収容部13を、溶着部収容部12に向かって徐々に幅狭になるテーパー形状で構成している。また、テーパー部11a、溶着部収容部12及び幅寄部収容部13はそれぞれ、テーパー部221、溶着部210及び幅寄部230に沿うような幅で形成されている。溶着部収容部12は溶着部210に沿う幅で形成されているため、先端部220より幅狭となっている。
【0062】
また、先端カバー体21についても、先端収容部11、溶着部収容部12及び幅寄部収容部13と対称な形状としてある。このため、テーパー部11a、溶着部収容部12及び幅寄部収容部13と同形状の先端側テーパー部21a、均一部21b、後端側テーパー部21cを有し、かつ、それぞれ、テーパー部221、溶着部210及び幅寄部230に沿うような幅で形成されている。そして、均一部21bは溶着部210に沿う幅で形成されているため、先端部220より幅狭となっている。
【0063】
また、被覆部収容部14は、幅寄部収容部13における最も幅広の部分に連結し、溶着部収容部12より幅広とし、これと対称な形状の被覆部カバー体22についても、均一部21bよりも幅広としている。
【0064】
このような形状・幅で、キャップ本体10及びカバー体20の各部位を形成し、キャップ本体10及びカバー体20を露出導体200の形状・幅に対応したくびれ形状としている。このように構成することで、端末キャップ1を端末110に取り付ける際に、露出導体200がキャップ本体10及びカバー体20に嵌り込む状態となり、端末110は、端末キャップ1に対してあそびが小さく収容される。そして、キャップ本体10及びカバー体20におけるくびれ部分に当たる溶着部収容部12及び均一部21bに対し、先端部220を確実に抜け留めとして機能させることができる。
【0065】
また、
図3(c)に示すように、先端カバー体21には、被覆部カバー体22に向かって延びるとともに、被覆部カバー体22によって移動が規制される被規制部30が設けられている。具体的には、被規制部30は、先端カバー体21の軸方向Lの後端側の部位である後端側テーパー部21cの所定位置に設けられている。
【0066】
この先端カバー体21が先端収容部11,溶着部収容部12及び幅寄部収容部13の開口を塞いだ状態で、被覆部カバー体22により被覆部収容部14の開口を塞ぐと、被規制部30の上側に被覆部カバー体22の先端側の一部が重なるようにしている。そして、被覆部カバー体22が被規制部30の上側から重なることによって、先端カバー体21の枢動が阻害されて、被覆部カバー体22によって移動が規制される。
【0067】
また、端末キャップ1には、先端収容部11、溶着部収容部12及び幅寄部収容部13の開口を塞ぐ先端カバー体21をキャップ本体10に固定する固定部として係合部40が設けられている。係合部40は均一部21bに設けられており、溶着部収容部12に設けられた被係合部41に係止されて、先端カバー体21をキャップ本体10に固定する。
【0068】
また、端末キャップ1には、被覆部収容部14の開口を塞ぐ被覆部カバー体22を被覆部収容部14に固定する被覆部固定部として係合部50が設けられている。係合部50は被覆部カバー体22に設けられており、被覆部収容部14に設けられた被係合部51に係止されて、被覆部カバー体22を被覆部収容部14に固定する。
【0069】
そして、係合部50により被覆部カバー体22が被覆部収容部14に固定されることで、被規制部30を介して先端カバー体21の移動が規制され、これにより、先端カバー体21が先端収容部11、溶着部収容部12及び幅寄部収容部13の開口を塞いだ状態で固定されることになる。すなわち、係合部50は、被規制部30を介して、先端カバー体21をキャップ本体10に固定する固定部のひとつとして機能する。
【0070】
このように、端末キャップ1では、先端収容部11、溶着部収容部12及び幅寄部収容部13の開口を塞ぐ先端カバー体21をキャップ本体10に固定する固定部として、係合部40と係合部50との複数の固定部を設けている。
【0071】
また、係合部40は、横幅方向W1を中心に先端カバー体21が枢動されて被係合部41に係止し、これにより先端カバー体21をキャップ本体10に固定する。これに対し、係合部50は、縦幅方向W2を中心に被覆部カバー体22が枢動されて被係合部51に係止し、被規制部30を介して先端カバー体21の移動を規制することで先端カバー体21をキャップ本体10に固定する。このように係合部50の固定態様を係合部40の固定態様と異なるように構成されている。
【0072】
続いて、このように構成された端末キャップ1を端末110に取り付ける工程について、
図4に基づいて簡単に説明する。ここで、
図4は端末110に端末キャップ1を取り付ける工程を示す説明図を示している。
【0073】
まず、
図4(a)に示すように、キャップ本体10における先端収容部11、溶着部収容部12、幅寄部収容部13及び被覆部収容部14に、被覆電線100の端末110における先端部220、溶着部210、幅寄部230及び被収容部分301をそれぞれ配置する。そして、ヒンジにより横幅方向W1を中心に先端カバー体21を枢動して先端収容部11、溶着部収容部12及び幅寄部収容部13の開口を塞ぎ、係合部40により先端カバー体21をキャップ本体10に固定する。
【0074】
続いて、
図4(b)に示すように、ヒンジにより軸方向Lを中心に被覆部カバー体22を枢動して被覆部収容部14の開口を塞ぎ、被覆部カバー体22を被覆部収容部14に固定し、また、係合部50により先端カバー体21もキャップ本体10に固定される。これにより、
図4(c)に示すように、端末キャップ1が端末110を覆われた状態で取り付けられる。
【0075】
このように構成した端末キャップ1によれば、端末キャップ1を容易に取付けることができ、かつ短絡を確実に防止できる。
【0076】
詳述すると、溶着部収容部12を先端収容部11より幅狭としてあるため、幅狭な溶着部収容部12に対し、露出導体200における幅広な先端部220を抜け留めとして機能させることができる。これにより、端末キャップ1の軸方向Lの移動規制できる。さらに、先端カバー体21をキャップ本体10に固定する固定部として機能する係合部40及び係合部50が設けられているため、これにより、先端カバー体21が外れることも効果的に防止できる。
【0077】
また、キャップ本体10に露出導体200を収容するのみで端末キャップ1が軸方向Lに移動することを規制でき、固定部として機能する係合部40及び係合部50は端末キャップ1に設けられているため、別部材のテープなどを用いる必要がない。そのため、取付作業を容易にできる。
【0078】
このように、端末キャップ1により、端末キャップ1の軸方向Lの移動が規制され、先端カバー体21が外れることも防止されるため、端末キャップ1を確実に防止でき、また、端末キャップ1の取付作業を容易にできる。したがって、この発明により、端末キャップ1を容易に取付けることができ、かつ短絡を確実に防止できる。
【0079】
また、先端カバー体21をキャップ本体10に固定する固定部として係合部40及び係合部50の複数の固定部が設けられている。このため、端末キャップ1に対し何らかの力が作用して、いずれかの固定状態が解除されることとなっても、他の固定部により先端カバー体21が外れることを防止できる。
【0080】
さらに、固定部として機能する係合部40及び係合部50の固定態様をそれぞれ異ならせているため、端末キャップ1に対し、何らかの力が作用して、一方の固定状態が解除された後、これと同種の力が作用してもその固定状態が解除されることはない。つまり、複数の種類の力が作用しない限り、係合部40及び係合部50との双方の固定状態が解除されることがない状態とできる。
【0081】
そして、被規制部30を介して、被覆部カバー体22によって先端カバー体21の移動が規制される。このため、端末キャップ1を被覆電線100から外すには、例えば、係合部50の固定状態を解除し、さらに先端カバー体21における係合部40の固定状態を解除するという段階的な操作が必要になる。
【0082】
さらに、先端カバー体21は横幅方向W1に沿ったヒンジによって枢動可能に構成され、且つ、被覆部カバー体22は軸方向Lに沿ったヒンジによって枢動可能に構成されている。このため、先端カバー体21を開閉するための回転向きと被覆部カバー体22を開閉するための回転向きとは直交している。
【0083】
このため、先端カバー体21を開くには、少なくとも、被覆部カバー体22を開閉するための回転向きの力が作用した後、さらに、これとは直交する回転向きの力が作用しなければならない。つまり、段階的に、且つ,向きが大きく異なる力が作用しなければならず、先端カバー体21を開くために作用させる必要のある力を複雑化することができる。これにより、端末キャップ1が不用意に脱落することをより確実に防止できる。
【0084】
また、被覆電線100の端末110では、露出導体200における溶着部210と被収容部分301との間に幅寄部230が形成されている。これに対し、先端カバー体21には後端側テーパー部21cが設けられ、これにより、先端カバー体21における被覆部カバー体22の側に、幅寄部230をカバーする部分が設けられている。これにより、先端カバー体21により幅寄部230をカバーすることができ、幅寄部230を有する被覆電線100に対して被覆電線100を取り付ける場合でも、短絡を確実に防止できる。
【0085】
また、端末110では、複数の被覆電線100の露出導体200をまとめて1つとし、この端末110に対し1の端末キャップ1を取り付けるため、各被覆電線100のそれぞれに端末キャップ1を取り付ける場合に比べ、端末キャップ1の取付作業を容易にできる。
【0086】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、端末キャップは端末キャップ1に対応し、
以下同様に、
キャップ本体はキャップ本体10に対応し、
先端収容部は先端収容部11に対応し、
溶着部収容部は溶着部収容部12に対応し、
被覆部収容部は被覆部収容部14に対応し、
カバー体はカバー体20に対応し、
先端カバー体は先端カバー体21に対応し、
幅寄部をカバーする部分は後端側テーパー部21cに対応し、
被覆部カバー体は被覆部カバー体22に対応し、
被規制部は被規制部30に対応し、
固定部は係合部40,50に対応し、
被覆部固定部は係合部50に対応し、
被覆電線は被覆電線100に対応し、
端末は端末110に対応し、
露出導体は露出導体200に対応し、
溶着部は溶着部210に対応し、
先端部は先端部220に対応し、
幅寄部は幅寄部230に対応し、
絶縁被覆は絶縁被覆300に対応し、
絶縁被覆の先端側の一部は被収容部分301に対応し、
軸方向は軸方向Lに対応し、
直交方向は横幅方向W1に対応するが、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【0087】
例えば、上述の説明においては、先端カバー体21は、先端収容部11の軸方向Lの先端に配置されるとともに、軸方向Lに直交する横幅方向W1に沿ったヒンジによって枢動可能に構成されている。しかしながら、必ずしもこれに限定されず、例えば、先端カバー体21は、先端収容部11、溶着部収容部12及び幅寄部収容部13の軸方向Lに直交する横幅方向W1に配置されるとともに、軸方向Lに沿ったヒンジによって枢動可能に構成してもよい。この場合、さらに、
図5に示すように、先端カバー体21と被覆部カバー体22とは、キャップ本体10に対して横幅方向W1の反対側に配置されてもよい。
【0088】
このような構成とすることで、先端カバー体21と被覆部カバー体22をそれぞれ軸方向Lに沿ったヒンジ及びヒンジによって枢動させるという簡易な操作により、端末キャップ1を被覆電線100に取り付けることができる。
【0089】
また、先端カバー体21と被覆部カバー体22とは、キャップ本体10に対して横幅方向W1の反対側に配置した際には、先端カバー体21を開閉するための回転向きと、被覆部カバー体22を開閉するための回転向きとを反対向きにすることができる。そのため、先端カバー体21を開くためには、少なくとも、被覆部カバー体22を開閉するための回転向きの力が作用した後、さらに、これとは反対方向の回転向きの力が作用しなければならない。つまり、段階的に、且つ,向きが大きく異なる力が作用しなければならず、先端カバー体21を開くために作用させる必要のある力を複雑化することができる。したがって、端末キャップ1が不用意に脱落することをより確実に防止できる。
【0090】
また、例えば、先端収容部11に、先端部220の幅を広げる拡幅体が設けられてもよい。拡幅体としては、先端部220の幅を広げることができるものであれば特に限定されないが、例えば、
図6及び
図7に示すように、先端収容部11の底面から縦幅方向W2に突出する拡幅体60としてもよい。
【0091】
具体的には、
図6及び
図7に示すように、拡幅体60は、溶着部収容部12に向かってとがった先端が向く三角柱状で形成され、先端収容部11におけるテーパー部11aに設けられ、その突出高さは、先端カバー体21が閉じた際の先端カバー体21の底面まで延びる高さとしている。この際、先端カバー体21の対応箇所に拡幅体60の先端を受け入れる凹部を設けてもよい。
【0092】
このような拡幅体60が設けられた先端収容部11に先端部220を収容すると、テーパー部11aに余剰スペースがある場合には拡幅体60が存在する幅の分だけ先端部220の先端は広がることとなる。また、テーパー部11aに余剰スペースがない場合には、先端部220がテーパー部11aの壁面に対して押し当てられることになる。
【0093】
このように、拡幅体60により、先端部220をより幅広となるように作用させることができ、溶着部収容部12に対する抜け留め機能を向上させることができる。これにより、端末キャップ1の軸方向Lの移動が規制され、端末キャップ1が不用意に脱落することをより確実に防止できる。
【0094】
上述の説明では、先端カバー体21をキャップ本体10に固定する固定部として係合部40と係合部50を設けた構成とした。しかしながら、必ずしもこれに限定されず、固定部の固定態様としては係合部40や係合部50のものに限られず、先端カバー体21をキャップ本体10に固定できるものであれば、種々の固定態様を用いることができる。また、固定部を設ける位置も適宜選択すればよく、複数の固定部を設ける場合でも、それぞれの固定部を異なる位置に設けてもよいし、同じ位置に設けてもよい。
【0095】
例えば、被規制部30を設けず、係合部50が、先端カバー体21をキャップ本体10に固定する固定部として機能しないようにし、別の固定部を設けてもよい。また、係合部40は、均一部21bではなく先端側テーパー部21aや後端側テーパー部21cなど他の部位に設けてもよいし、係止とは異なる固定方法を用いてもよい。
【0096】
さらに具体例を挙げると、先端カバー体21をキャップ本体10に固定する固定部として、先端カバー体21に設ける。また、先端収容部11及び溶着部収容部12のうち少なくとも一方に係止して固定される第1固定部と、先端収容部11及び溶着部収容部12のうち少なくとも一方に設け、先端カバー体21に係止して固定される第2固定部を設けてもよい。
【0097】
例えば、
図8に示すように、先端カバー体21に設けられ、溶着部収容部12に係止して固定される第1固定部70と、溶着部収容部12に設けられ、先端カバー体21に係止して固定される第2固定部80とを設けてもよい。より具体的には、第1固定部70は、溶着部収容部12の対応箇所に設けられた被係止部71に係止する構成とし、また、第2固定部80は、先端カバー体21の対応箇所に設けられた被係止孔81に挿通されて、被係止孔81に係止する構成としてある。
【0098】
このような構成とすることにより、先端カバー体21を外すためには、それぞれ反対側に設けられて反対方向に係止する第1固定部70と第2固定部80との両方の係止状態を解除する複雑な操作が必要となる。これにより、複雑な作業を要しない係止という固定方法を用いながら、端末キャップ1が不用意に脱落することをより確実に防止できる。
【0099】
他の具体例として、例えば、先端カバー体21をキャップ本体10に固定する固定部として、それぞれ相手方の一部分に係止して固定する構造である第1固定部及び第2固定部を設け、第1固定部と第2固定部とは係止方向が異なるようにしてもよい。
【0100】
例えば、
図9に示すように、先端カバー体21の所定箇所における横幅方向W1の内側に第1固定部70aを設けるとともに、同じ箇所の横幅方向W1の外側に第2固定部80aを設ける。そして、第1固定部70aを、溶着部収容部12の対応箇所におけるW1の内側に設けた被係止部71aに係止して固定されるように構成し、第2固定部80aを、溶着部収容部12の対応箇所におけるW1の外側に設けた被係止部81aに係止して固定されるように構成してもよい。これにより、第1固定部70a及び第2固定部80aは、それぞれ相手方の一部である被係止部71a及び被係止部81aに係止して固定する構造であり、その係止方向を反対としている。
【0101】
このような構成とすることにより、先端カバー体21を外すためには、それぞれ係止方向の異なる第1固定部70a及び第2固定部80aとの両方の係止状態を解除する複雑な操作が必要となる。これにより、複雑な作業を要しない係止という固定方法を用いながら、端末キャップ1が不用意に脱落することをより確実に防止できる。
【0102】
また、上述の説明では、先端カバー体21をキャップ本体10に固定する固定部として係合部40及び係合部50を設け、固定態様の異なる固定部を複数設けた構成としたが、必ずしもこれに限られない。例えば、先端カバー体21をキャップ本体10に固定する固定部は2つに限らず、3以上設けてもよく、また、1つのみとしてもよい。また、固定部を複数設ける場合には、各固定部の固定態様として同じものを用いてもよい。
【0103】
上述の説明で示したキャップ本体10及びカバー体20の具体的形状はあくまでも例示であり、適宜変更してもよい。例えば、キャップ本体10において、先端収容部11より溶着部収容部12が幅狭で、且つ、溶着部収容部12より幅寄部収容部13及び14が幅広となっているのであればよい。そのため、必ずしもテーパー部221、溶着部210及び幅寄部230に沿うような幅・形状で各部を構成しなくてもよく、上述の説明で示した形状と異なる形状としてもよい。また、キャップ本体10は先端部220,溶着部210,被収容部分301の全体を収容するようにし、カバー体20についてはキャップ本体10の開口を塞ぐ板状の部材としてもよい。
【0104】
上述の説明では、被覆電線100の露出導体200に幅寄部230が形成され、これに対応して、キャップ本体10には幅寄部収容部13が設けられ、先端カバー体21には後端側テーパー部21cが設けられた構成としている。しかしながら、必ずしもこれに限られず、被覆電線100として、露出導体200に幅寄部230が形成されていないものに端末キャップ1を取り付けてもよい。また、その場合、端末キャップ1において、幅寄部収容部13や後端側テーパー部21cを有しない構成としてもよい。
【0105】
上述の説明では、先端カバー体21における後端側テーパー部21cの所定位置に、被覆部カバー体22に向かって延びる被規制部30を設けた構成を説明した。しかしながら、被規制部30の構成は必ずしもこれに限られず、被覆部収容部14の開口を塞ぐ被覆部カバー体22によって移動が規制される構成であれば種々の構成としてもよい。例えば、被覆部カバー体22を幅寄部230にわたって設け、被覆部カバー体22の一部が後端側テーパー部21cに重なるようにし、後端側テーパー部21cを被規制部30として機能させてもよい。
【0106】
上述の説明では、先端カバー体21と被覆部カバー体22とを別体とした構成としたが、必ずしもこれに限られず、先端カバー体21と被覆部カバー体22とを一体構成してもよい。
【0107】
上述の説明では、1つの端末キャップ1が、複数の被覆電線100に対して取り付けられた構成としたが、必ずしもこれに限られず、1つの被覆電線100に対して端末キャップ1を取り付けてもよい。
【符号の説明】
【0108】
1 端末キャップ
10 キャップ本体
11 先端収容部
12 溶着部収容部
14 被覆部収容部
20 カバー体
21 先端カバー体
21c 幅寄部をカバーする部分
22 被覆部カバー体
30 被規制部
40,50 固定部
50 被覆部固定部
60 拡幅体
70,70a 第1固定部
80,80a 第2固定部
100 被覆電線
110 端末
200 露出導体
210 溶着部
220 先端部
230 幅寄部
300 絶縁被覆
301 絶縁被覆の先端側の一部
A 軸方向
W1 直交方向