(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-13
(45)【発行日】2023-10-23
(54)【発明の名称】グロメット
(51)【国際特許分類】
H02G 3/22 20060101AFI20231016BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20231016BHJP
H01B 17/58 20060101ALI20231016BHJP
F16L 5/02 20060101ALI20231016BHJP
【FI】
H02G3/22
B60R16/02 622
H01B17/58 C
F16L5/02 A
(21)【出願番号】P 2020058194
(22)【出願日】2020-03-27
【審査請求日】2022-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】奥林 良介
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 隆史
(72)【発明者】
【氏名】金次 良高
(72)【発明者】
【氏名】丸岡 武志
【審査官】遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-050307(JP,A)
【文献】特開2001-177955(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/22
B60R 16/02
H01B 17/58
F16L 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
孔周縁部が孔貫通方向の一方に沿って伸びるバーリングが設けられた車体パネルのパネル孔に挿入されて、当該車体パネルに取り付けられるグロメットであって、
ケーブルが挿入される略筒状の挿入筒部と、
該挿入筒部の中間部分において径外側に拡がるとともに、前記車体パネルへの装着状態において前記パネル孔を孔貫通方向に跨いで装着される略円盤状の円盤部と、
前記挿入筒部と前記円盤部の内径側とを連結する連結部とで構成され、
前記円盤部は、
前記パネル孔への挿入方向の先端側である挿入先端側に配置され、前記挿入筒部より大径且つ前記パネル孔より小径な挿入先端部、
該挿入先端部から前記パネル孔の径よりひと回り大径の拡径部分まで徐々に拡径されるテーパー部、
前記拡径部分から挿入方向の後端側である挿入後端側に向かって縮径され、前記装着状態において前記バーリングが配置される縮径部、
該縮径部より前記挿入後端側に配置され、且つ前記装着状態において前記車体パネルより前記挿入後端側に配置される大径部が、前記挿入先端側から前記挿入後端側に向かってこの順で配置され、
前記縮径部に、前記装着状態において、前記バーリングの内周面に当接するように径外側に突出する当接リブが設けられ、
該当接リブは、前記挿入方向に沿う断面形状が径外側に突出する断面山形であ
り、
前記縮径部における前記当接リブの挿入方向前後に周方向の溝部が形成され、
前記当接リブより前記挿入後端側の溝部の溝深さが、前記挿入先端側の溝部の溝深さより深く、
前記挿入先端側の前記溝部は、前記縮径部における他の部分より薄肉である
グロメット。
【請求項2】
前記当接リブの前記挿入先端側の前記挿入方向に対する傾斜角度が、前記挿入後端側の前記挿入方向に対する傾斜角度より緩やかである
請求項1に記載のグロメット。
【請求項3】
前記挿入先端側の前記溝部における前記挿入先端側の端縁部分を段差縮径部とし、
前記当接リブにおけるバーリング内径側の当接頂部と、前記段差縮径部との前記挿入方向の間隔が、前記バーリングの高さ以下である
請求項1または2に記載のグロメット。
【請求項4】
前記挿入先端側の前記溝部における前記挿入先端側の端縁部分を段差縮径部とし、
前記装着状態において、
前記段差縮径部と前記パネル孔の前記挿入先端側の内周縁近傍とが当接するとともに、
前記当接リブが前記バーリングの内周面と当接する
請求項1乃至3のうちいずれかに記載のグロメット。
【請求項5】
前記挿入先端部の内径側における前記挿入筒部との間に、前記挿入後端側に向かって凹状となる肉抜き部が設けられ、
前記肉抜き部は、前記当接リブより前記挿入先端側に形成された
請求項1乃至4のうちいずれかに記載のグロメット。
【請求項6】
前記大径部における前記挿入先端側の外縁近傍に、前記大径部と前記車体パネルが前記挿入方向に離間する前記装着状態において、前記挿入先端側の先端部が前記車体パネルに当接する装着検知リブが設けられた
請求項1乃至5のうちいずれかに記載のグロメット。
【請求項7】
前記大径部において前記装着検知リブを支持する支持外縁部が他の部分に比べて肉厚に形成された
請求項6に記載のグロメット。
【請求項8】
前記装着検知リブは、前記挿入先端側に向かって徐々に拡径されるラッパ状に形成された
請求項6又は7に記載のグロメット。
【請求項9】
前記装着検知リブの前記挿入方向の先端と、前記当接リブにおける外径側の当接頂部との前記挿入方向の間隔が、前記バーリングの高さ以下である
請求項6乃至8のうちいずれかに記載のグロメット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、孔周縁部が孔貫通方向の一方に沿って伸びるバーリングが設けられた車体パネルのパネル孔に挿入されて、当該車体パネルに取り付けられるグロメットに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車体パネルのパネル孔にワイヤーハーネスなどのケーブルを挿通する際、ケーブルの保護及びパネル孔を通じた漏水等の防止の目的で、グロメットが用いられている。具体的には、ケーブルを挿通させたグロメットをパネル孔に装着することで、グロメットで保護されたケーブルをパネル孔に挿通させつつ、パネル孔を通じた漏水等を防止できる。このため、グロメットは、パネル孔から脱落しがたい構造とすることが望ましい。
【0003】
このようにグロメットを装着させる車体パネルのパネル孔の一つとして、孔周縁部が孔貫通方向の一方に沿って伸びるバーリングが設けられたパネル孔がある。このバーリングが設けられたパネル孔に用いるグロメットとして、例えば、ケーブルが挿入される略筒状の挿入筒部の径外側に、パネル孔を孔貫通方向に跨いで車体パネルに装着される略円盤状の円盤部が設けられたグロメットが特許文献1に開示されている。
【0004】
この特許文献1のグロメットでは、円盤部として、先端からパネル孔の径より大径の拡径部分まで徐々に拡径されるテーパー部と、パネル孔の径と略同径であり、バーリングを収容する収容溝部と、パネル孔の径より大径で、且つ、車体パネルへの装着状態において車体パネルより挿入後端側に配置される大径部とが、挿入先端側から挿入後端側に向かってこの順で配置されている。
【0005】
このように構成されたグロメットをパネル孔にグロメットを挿入する場合、グロメットの挿入先端側からパネル孔に挿通し、バーリングに当接したテーパー部を変形させながら、バーリングが収容溝部に収容されるまでグロメットを押し込む。このようにして、バーリングを収容溝部に収容することにより、それぞれパネル孔の径より大径のテーパー部の拡径部分と大径部とが抜け留めとして機能し、パネル孔からグロメットが不用意に脱落することを防止できる。
【0006】
もっとも、グロメットをパネル孔に挿入する際には、作業者は、車体パネルに対向する状態で、グロメットの後方からパネル孔に対してグロメットを押し込むことになる。そうすると、作業者からは、バーリング全体が収容溝部に収容されたこと、すなわち装着が完了したことを目視することができない。そのため、作業者は、装着の完了を知るすべがなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述の問題に鑑み、グロメットの装着が完了したことを確実に判断できるグロメットの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、孔周縁部が孔貫通方向の一方に沿って伸びるバーリングが設けられた車体パネルのパネル孔に挿入されて、当該車体パネルに取り付けられるグロメットであって、ケーブルが挿入される略筒状の挿入筒部と、該挿入筒部の中間部分において径外側に拡がるとともに、前記車体パネルへの装着状態において前記パネル孔を孔貫通方向に跨いで装着される略円盤状の円盤部と、前記挿入筒部と前記円盤部の内径側とを連結する連結部とで構成され、前記円盤部は、前記パネル孔への挿入方向の先端側である挿入先端側に配置され、前記挿入筒部より大径且つ前記パネル孔より小径な挿入先端部、該挿入先端部から前記パネル孔の径よりひと回り大径の拡径部分まで徐々に拡径されるテーパー部、前記拡径部分から挿入方向の後端側である挿入後端側に向かって縮径され、前記装着状態において前記バーリングが配置される縮径部、該縮径部より前記挿入後端側に配置され、且つ前記装着状態において前記車体パネルより前記挿入後端側に配置される大径部が、前記挿入先端側から前記挿入後端側に向かってこの順で配置され、前記縮径部に、前記装着状態において、前記バーリングの内周面に当接するように径外側に突出する当接リブが設けられ、該当接リブは、前記挿入方向に沿う断面形状が径外側に突出する断面山形であり、前記縮径部における前記当接リブの挿入方向前後に周方向の溝部が形成され、前記当接リブより前記挿入後端側の溝部の溝深さが、前記挿入先端側の溝部の溝深さより深く、前記挿入先端側の前記溝部は、前記縮径部における他の部分より薄肉であることを特徴とする。
【0010】
上述の前記パネル孔の径よりひと回り大径とは、前記拡径部分が径内側に変形することで前記バーリングを前記縮径部まで挿通することができる程度に大径であることを意味する。
【0011】
また、上述の前記拡径部分から挿入方向の後端側である挿入後端側に向かって縮径とは、前記拡径部分から前記挿入後端側に向かって徐々に縮径する場合や、前記拡径部分に対して前記縮径部の全体の径が小さい場合を含む。
【0012】
上述の周方向の溝部とは、断面山形の前記当接リブの谷に当たる端縁部分からさらに径内側に窪む溝部が形成される場合のみならず、前記当接リブの谷に当たる端縁部分から立ち上がる部分があり、前記端縁部分を底部とし、当該立ち上がる部分と前記当接リブの傾斜面とで形成される部分を溝部とする場合も含む。また、周方向に溝深さが変化する場合や、周方向において溝部が分断されている場合も含む。
【0013】
この発明により、前記グロメットの装着が完了したことを確実に判断できる。
詳述すると、前記グロメットでは、前記パネル孔に対し、前記円盤部の前記挿入先端部から前記グロメットを挿入し、前記縮径部に前記バーリングが配置されるまで、前記グロメットを前記挿入先端側に挿入する。この挿入の間、前記バーリングが前記テーパー部に当接した際には、前記グロメットを前記挿入先端側に押し込み、前記バーリングに当接する前記テーパー部を径内側に変形させることで、前記グロメットを前記挿入先端側に進行させる。
【0014】
この際、前記バーリングの内周面に当接するように径外側に突出する当接リブが前記縮径部に設けられているため、前記バーリングの先端が前記テーパー部の前記拡径部分を越えると、前記バーリングの先端部分は、前記縮径部の前記挿入後端側の端部に至る前に前記当接リブの前記挿入先端側の傾斜面に当接する。
【0015】
ここで、前記当接リブは、前記挿入方向に沿う断面形状が径外側に突出する断面山形であるため、前記当接リブが断面矩形などの形状である場合に比べ、前記バーリングの先端に当接する前記当接リブ自体が変形しにくく構成されている。
【0016】
そのため、前記バーリングの先端が前記当接リブに当接した状態で、前記グロメットを前記挿入先端側に相応の力で押し込むと、前記当接リブ自体が変形して前記バーリングに引きずられるというよりも、前記当接リブの周囲の部分が変形することとなる。すなわち、前記当接リブの周囲の部分の変形より、前記バーリングの先端が、前記当接リブの前記挿入先端側の傾斜面をすべる形で前記当接リブの頂部を越えることになる。
【0017】
そして、前記当接リブの頂部を越えた前記バーリングの先端は、どの部位とも当接しない状態となる。そのため、軽い力で前記グロメットを進行させることができる。さらに、直前まで前記グロメットには相応の力が加えられる状態にあったため、前記バーリングの先端が前記当接リブの頂部を越えると、前記グロメットが大幅に押し進められて、前記バーリングの先端が直ちに前記縮径部の端部に配置されることになる。
【0018】
このように、前記グロメットの装着作業中、前記バーリングの先端が前記テーパー部に当接してから前記当接リブの頂部を越えるまでは、作業者は、前記グロメットを変形させながら押し込むため、前記グロメットに大きな力を作用させなければならない。また、大きな力で押し込んでも、前記グロメットは徐々にしか押し進められない。一方で、前記バーリングの先端が前記当接リブの頂部を越えた後は、小さな押し込み力で、前記グロメットを大幅に押し進められることになる。
【0019】
すなわち、前記バーリングの先端が前記当接リブの頂部を越える前と後とでは、押し込むための力とこれに対する押し進み量が異なり、前記グロメットの押し込み操作において、作業者の感触を変化させることができる。そして、感触が変化したことは、前記バーリングの先端が前記当接リブの頂部を越えたことを意味し、すなわち、前記グロメットの装着が完了したことを意味する。そのため、作業者は、感触の変化から、前記グロメットの装着が完了したことを感知することができる。
したがって、この発明により、前記グロメットの装着が完了したことを確実に判断できる。
【0020】
また、前記縮径部における前記当接リブの挿入方向前後に周方向の溝部が形成され、前記当接リブより前記挿入後端側の溝部の溝深さが、前記挿入先端側の溝部の溝深さより深い。これにより、前記グロメットの装着作業を容易にできる。
【0021】
詳述すると、前記バーリングの先端が前記当接リブに当接した後、前記グロメットがさらに押し込まれることで、前記当接リブの周囲の部分が変形し、前記バーリングの先端が前記当接リブの頂部を越えることになる。そして、この前記当接リブの周囲の部分は、前記当接リブの前記挿入先端側の傾斜面が前記バーリングと平行となるように、換言すれば前記当接リブを前記挿入後端側に傾かせる方向となるように変形することとなる。
【0022】
そして、前記当接リブの挿入方向前後に周方向の溝部が形成されているため、前記当接リブの周囲の部分は変形しやすく構成されている。さらに、前記挿入後端側の溝部の溝深さの方が深いため、その変形の仕方として、前記当接リブを前記挿入後端側に傾かせる方向により容易に変形させることができる。すなわち、前記バーリングの先端が前記当接リブの頂部を越えるために必要な変形を容易に生じさせることができる。したがって、この発明により、前記グロメットの装着作業を容易にできる。
【0023】
また、前記挿入先端側の前記溝部は、前記縮径部における他の部分より薄肉である。これにより、前記グロメットの装着作業を容易にできる。
詳述すると、前記バーリングの先端が前記当接リブの頂部を越えるためには、前記当接リブを前記挿入後端側に傾かせる方向に、前記当接リブの周囲の部分を変形させなければならない。そして、このような変形においては、前記挿入先端側の前記溝部を起点として、前記当接リブを前記挿入後端側に傾かせることになる。ここで、前記挿入先端側の前記溝部は、前記縮径部における他の部分より薄肉となるように構成されているため、他の部位に比べ、特に前記挿入先端側の前記溝部を変形させやすく、前記挿入先端側の前記溝部を起点として、前記当接リブを前記挿入後端側に傾かせる方向に容易に変形させることができる。したがって、この発明により、前記グロメットの装着作業を容易にできる。
【0024】
この発明の態様として、前記当接リブの前記挿入先端側の前記挿入方向に対する傾斜角度が、前記挿入後端側の前記挿入方向に対する傾斜角度より緩やかであってもよい。
この発明により、前記グロメットの装着作業を容易にでき、且つ、前記グロメットの脱落を抑制できる。
【0025】
詳述すると、前記当接リブの前記挿入先端側の前記挿入方向に対する傾斜角度である先端側傾斜角度が、前記当接リブの前記挿入後端側の前記挿入方向に対する傾斜角度である後端側傾斜角度より緩やかであるため、先端側傾斜角度の方が急である場合に比べ、前記当接リブの前記挿入先端側の傾斜面に当接する前記バーリングの先端を、その傾斜面上ですべらせやすくなる。したがって、作業者は、先端側傾斜角度の方が急である場合に比べ、前記グロメットの装着をより容易に行うことができる。
【0026】
また、後端側傾斜角度の方が急であるため、後端側傾斜角度の方が緩やかである場合に比べ、前記グロメットの装着状態において、前記バーリングの内周面に前記当接リブの頂部を当接させやすい。したがって、前記バーリングの先端が前記縮径部の端部に配置する前記グロメットの装着状態において、前記バーリングの内周面に前記当接リブの頂部が当接して、前記当接リブを前記バーリングの抜け留めとしても機能させることができ、前記グロメットの脱落も抑制できる。これにより、前記当接リブの前記バーリングの抜け留めとしての機能が向上する。
したがって、前記グロメットの装着作業を容易にでき、且つ、前記グロメットの脱落を抑制できる。
【0027】
またこの発明の態様として、前記挿入先端側の前記溝部における前記挿入先端側の端縁部分を段差縮径部とし、前記当接リブにおけるバーリング内径側の当接頂部と、前記段差縮径部との前記挿入方向の間隔が、前記バーリングの高さ以下であってもよい。
上述の前記バーリングの高さとは、孔周縁部が孔貫通方向の一方に沿って伸びるバーリングの長さをさす。
【0028】
この発明により、前記グロメットの装着作業を容易にできる。
【0029】
詳述すると、前記挿入先端側の前記溝部における前記挿入先端側の端縁部分が段差状の形状である段差縮径部で構成されている。このため、前記グロメットを押し込んで、前記グロメットに当接する前記バーリングの先端を前記挿入後端側に移動させる際に、前記バーリングの先端が前記段差縮径部に当接し、これを超えて、前記当接リブに当接することになる。
【0030】
そして、前記当接頂部と前記段差縮径部との前記挿入方向の間隔が、前記バーリングの高さ以下であるため、前記バーリングの先端が前記当接リブに当接した後、前記当接頂部を越えるまでは確実に前記バーリングの一部を前記段差縮径部に当接させておくことができる。これにより、前記バーリングの先端が前記当接頂部を越える前に前記バーリングの後端が前記段差縮径部を越えてしまい、前記バーリングの後端部分が前記挿入先端側の前記溝部に嵌り込むことがなく、これに伴う不具合が生じるおそれなく装着作業を行うことができる。したがって、この発明により、前記グロメットの装着作業を容易にできる。
【0031】
またこの発明の態様として、前記挿入先端側の前記溝部における前記挿入先端側の端縁部分を段差縮径部とし、前記装着状態において、前記段差縮径部と前記パネル孔の前記挿入先端側の内周縁近傍とが当接するとともに、前記当接リブが前記バーリングの内周面と当接してもよい。
前記内周縁近傍とは、突出している前記バーリングにおける湾曲部分の近傍をさす。具体的には、前記孔貫通方向の一方に沿って伸びる前記バーリングにおける他方側の内周縁の近傍である。
【0032】
この発明により、前記装着状態において、前記パネル孔の前記挿入先端側の内周縁近傍と当接する前記段差縮径部と、前記バーリングの内周面と当接する前記当接リブとを、前記パネル孔及び前記バーリングに対する抜け留めとして機能させることができる。したがって、前記グロメットの脱落を抑制できる。
【0033】
またこの発明の態様として、前記挿入先端部の内径側における前記挿入筒部との間に、前記挿入後端側に向かって凹状となる肉抜き部が設けられ、前記肉抜き部は、前記当接リブより前記挿入先端側に形成されてもよい。
【0034】
この発明により、前記グロメットの脱落を抑制しつつ、前記グロメットの装着作業を容易にできる。
詳述すると、前記肉抜き部により前記円盤部が変形するスペースが確保されるため、前記円盤部の変形性を向上させることができる。これにより、前記グロメットの装着作業を容易にできる。
【0035】
また、前記肉抜き部は前記当接リブより前記挿入先端側に形成されるため、変形性を向上させる前記肉抜き部を設けつつも、前記バーリングを前記縮径部内に保持するために用いられる領域に対応する前記当接リブより前記挿入後端側の領域の変形性への影響を抑制できる。そのため、前記バーリングを前記縮径部内に安定的に保持できる。したがって、前記グロメットの脱落を抑制しつつ、前記グロメットの装着作業を容易にできる。
【0036】
またこの発明の態様として、前記大径部における前記挿入先端側の外縁近傍に、前記大径部と前記車体パネルが前記挿入方向に離間する前記装着状態において、前記挿入先端側の先端部が前記車体パネルに当接する装着検知リブが設けられてもよい。
【0037】
この発明により、前記装着状態において、前記装着検知リブの先端部が前記車体パネルに当接するため、前記装着検知リブの先端部が前記車体パネルに当接したことを、前記グロメットが前記車体パネルに装着されたことの指標とすることができる。これにより、前記グロメットを介して伝わる感覚に加え、前記装着検知リブの先端部が前記車体パネルに当接したという視覚によっても前記グロメットの装着が完了したことを判断できる。したがって、前記グロメットの装着が完了したことをより確実に判断できる。
【0038】
またこの発明の態様として、前記大径部において前記装着検知リブを支持する支持外縁部が他の部分に比べて肉厚に形成されてもよい。
この発明により、前記グロメットの装着が完了したことをより確実に判断できる。
【0039】
詳述すると、前記グロメットは、一般に前記パネル孔が水平方向を向く状態で挿通されるものであるところ、前記グロメットを水平方向に向かせると、前記装着検知リブが自重によって鉛直下向きに傾くおそれがある。これに対し、前記大径部において前記装着検知リブを支持する支持外縁部が他の部分に比べて肉厚に形成されているため、前記装着検知リブが自重によって鉛直下向きに傾くことを効果的に抑制できる。これにより、前記装着状態において、前記装着検知リブを確実に前記車体パネルに当接させることができる。したがって、前記グロメットの装着が完了したことをより確実に判断できる。
【0040】
またこの発明の態様として、前記装着検知リブは、前記挿入先端側に向かって徐々に拡径されるラッパ状に形成されてもよい。
この発明により、前記装着検知リブの前記車体パネルに当接する部分を、確実に径方向外側に変形させることができる。これにより、前記装着状態において、前記装着検知リブの先端が前記グロメットの径方向外側を向くように変形し、視覚的に、前記装着検知リブが前記車体パネルに当接したことがわかりやすくなる。したがって、前記グロメットの装着が完了したことをより確実に判断できる。
【0041】
またこの発明の態様として、前記装着検知リブの前記挿入方向の先端と、前記当接リブにおける外径側の当接頂部との前記挿入方向の間隔が、前記バーリングの高さ以下であってもよい。
この発明により、前記グロメットの装着が完了したことをより確実に判断できる。
【0042】
詳述すると、前記装着検知リブの前記挿入方向の先端と前記当接頂部との前記挿入方向の間隔が、前記バーリングの高さ以下であるため、前記バーリングの先端が前記当接頂部を越えてからでないと、前記装着検知リブの前記挿入方向の先端が前記車体パネルに当接しない。これにより、前記バーリングの先端が前記当接頂部を越える前に前記装着検知リブの前記挿入方向の先端が前記車体パネルに当接し、作業者が誤って前記グロメットの装着が完了したと判断することを回避できる。
したがって、この発明により、前記グロメットの装着が完了したことをより確実に判断できる。
【発明の効果】
【0043】
この発明によれば、グロメットの装着が完了したことを確実に判断できるグロメットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】グロメットをパネル孔に挿入する前の状態の概略説明図。
【
図5】グロメットを車体パネルに装着する状態の説明図。
【
図6】グロメットを車体パネルに装着する状態の説明図。
【
図7】グロメットを車体パネルに装着する状態の説明図。
【
図8】グロメットを車体パネルに装着する状態の説明図。
【
図9】グロメットを車体パネルに装着する状態の説明図。
【
図10】グロメットを車体パネルに装着する状態の説明図。
【
図11】グロメットを車体パネルに装着する状態の説明図。
【
図12】グロメットを車体パネルに装着する状態の説明図。
【
図13】グロメットを車体パネルに装着する状態の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0045】
この発明の一実施形態を、以下図面を用いて説明する。
まず、グロメット1の概要について
図1乃至
図4を用いて説明する。ここで、
図1はグロメット1をパネル孔210に挿入する前の状態の概略説明図を示し、
図2乃至
図4はそれぞれグロメット1の説明図を示す。
【0046】
具体的には、
図2(a)はグロメット1における挿入方向後側の概略斜視図を示し、
図2(b)はグロメット1における挿入方向前側の概略斜視図を示す。また、
図3は挿入方向Xに沿った断面で切断したグロメット1の断面図を示す。
図4(a)は縮径部60の拡大図を示し、
図4(b)はグロメット1を車体パネル200に装着した状態の縮径部60の拡大図を示す。
【0047】
グロメット1は、
図1に示すように、ワイヤーハーネス等で構成されるケーブル100を内部に挿通させ、ケーブル100に装着した状態で車体パネル200に取り付けられるものである。具体的には、グロメット1は、孔周縁部が孔貫通方向の一方に沿って伸びるバーリング211が設けられた車体パネル200のパネル孔210に挿入し、パネル孔210を塞ぐ形で車体パネル200に取り付けられる。このように車体パネル200に取り付けられたグロメット1は、ケーブル100を保護しつつ、パネル孔210を通じた漏水等を防止することができる。
【0048】
なお、
図1に示すように、グロメット1をパネル孔210に挿入する方向であり、孔貫通方向と一致することになる方向を挿入方向Xとしている。そして、グロメット1をパネル孔210に挿入する際にパネル孔210に向ける側を挿入方向Xの先端側とし、挿入先端側Xfとする。また、挿入先端側Xfの反対側を挿入方向Xの後端側とし、挿入後端側Xbという。
【0049】
グロメット1は、
図2及び
図3に示すように、ケーブル100が挿入される略筒状の挿入筒部10と、略円盤状の円盤部20と、挿入筒部10と円盤部20の内径側とを連結する連結部30とで構成されている。グロメット1は、挿入筒部10にケーブル100を挿入した状態でパネル孔210に挿入され、円盤部20が孔貫通方向に跨いだ状態でパネル孔210に装着されることで、パネル孔210を塞ぐ形で車体パネル200に取り付けられる。
【0050】
また、グロメット1は、パネル孔210への装着でき、且つ、グロメット1の脱落を防止できる程度の所定の可撓性を有するゴムなどの弾性体で構成している。具体的には、装着作業に伴いグロメット1にパネル孔210が当接したときでも、グロメット1の当接部分を径内側に変形させながらグロメット1を押し進めることができる。加えて、円盤部20がパネル孔210を孔貫通方向に跨いだ状態が維持できる程度の可撓性を有する弾性体でグロメット1は構成されている。
【0051】
円盤部20は、挿入筒部10の中間部分において径外側に拡がるとともに、車体パネル200への装着状態においてパネル孔210を孔貫通方向に跨いで装着される。円盤部20は、
図3に示すように、挿入先端部40、テーパー部50、縮径部60、及び、大径部70が、挿入先端側Xfから挿入後端側Xbに向かってこの順で配置されている。挿入先端部40における内径側の部分において、連結部30は円盤部20に連結している。また、テーパー部50、縮径部60及び大径部70は挿入筒部10及び連結部30とは径方向に離間しており、挿入筒部10及び連結部30との間に円環状の隙間空間Sが形成される。
【0052】
挿入先端部40は、挿入先端側Xfに配置され、挿入筒部10より大径且つパネル孔210より小径で構成されており、パネル孔210に最初に挿通される部位である。
テーパー部50は、挿入先端部40からパネル孔210の径よりひと回り大径の拡径部分51まで徐々に拡径される形状である。グロメット1をパネル孔210に挿入する際には、拡径部分51より挿入先端側Xfのどこかでバーリング211に当接することになるが、グロメット1をさらに押し込むことにより、隙間空間Sを狭める形でテーパー部50を径内側に向かって変形させることができる。
【0053】
そのため、テーパー部50がバーリング211に当接する場合でも、グロメット1にある程度大きな押し込み力を作用させることで、テーパー部50を径内側に変形させることができ、これによりグロメット1をさらに挿入方向Xに押し進めることができる。
【0054】
縮径部60は、拡径部分51から挿入後端側Xbに向かって縮径され、装着状態においてバーリング211が配置される部位である。より具体的には、縮径部60は、
図4(a)に示すように、拡径部分51から挿入後端側Xbに向かって徐々に縮径する第1部分60aと、第1部分60aから挿入後端側Xbに向かって段差状に凹んだ第2部分60bとで構成されている。
【0055】
第2部分60bは装着状態においてバーリング211を配置する部位であり、第2部分60bの挿入方向Xの長さは、バーリング211の長さと略同じとなるように構成されている。なお、第1部分60aから挿入後端側Xbに向かって段差状に凹む部分を段差縮径部61としている。
【0056】
このような縮径部60によれば、バーリング211が縮径部60に当たる位置までグロメット1を押し進めた際、第1部分60aに沿ってバーリング211を移動させることで、第2部分60bまでバーリング211が案内される。そして、
図4(b)に示すように、バーリング211が第2部分60bに配置された際には、バーリング211の先端を大径部70に当接させつつ、パネル孔210の挿入先端側Xfの内周縁近傍210aを段差縮径部61に当接させることができる。これにより、バーリング211が第2部分60b内に嵌まった状態となり、第2部分60bからバーリング211が抜けることが防止される。
【0057】
なお、内周縁近傍210aとは、挿入後端側Xbに沿って伸びるバーリング211における挿入先端側Xfの内周縁の近傍をさす。
【0058】
大径部70は、縮径部60より挿入後端側Xbに配置され、且つ、装着状態において車体パネル200より挿入後端側Xbに配置される部位である。
大径部70は、縮径部60及びパネル孔210より大径で構成されている。これにより、
図4(b)に示すように、装着状態においてバーリング211を縮径部60に配置した際には、大径部70の挿入先端側Xfの面にバーリング211の先端が当接することになる。そのため、パネル孔210は大径部70により塞がれることになり、大径部70をパネル孔210の蓋として機能させることができる。
【0059】
このように、円盤部20は、挿入先端部40からパネル孔210に挿入し、バーリング211にテーパー部50が当接した後も、大きな力でグロメット1を押し込むことで、テーパー部50を変形させながらグロメット1を押し進められるようにしている。そして、グロメット1を押し進めて縮径部60にバーリング211を配置させれば、大径部70によりパネル孔210が塞がれ、パネル孔210を通じた漏水等を防止できる状態で、グロメット1が車体パネル200に装着される。また、装着状態において、バーリング211は第2部分60bに嵌まった状態となるため、パネル孔210からグロメット1が脱落することも防止される。
【0060】
このように構成された円盤部20では、さらに、
図3及び
図4(a)に示すように、縮径部60の第2部分60bに、装着状態において、バーリング211の内周面に当接するように径外側に突出する当接リブ62が設けられている。
【0061】
当接リブ62は、装着状態においてバーリング211の内周面に当接する突出高さとし、このような高さとすることで、装着作業の際、バーリング211の先端は、大径部70に当接する前に当接リブ62に当接することになる。
【0062】
この当接リブ62は、挿入方向Xに沿う断面形状が径外側に突出する断面山形としており、当接リブ62自体が屈曲しにくい形状としている。そのため、当接リブ62にバーリング211の先端に当接し、さらにグロメット1が押し込まれても、バーリング211の先端に引きずられる形で当接リブ自体が挿入後端側Xbに向かって変形することが生じにくい。
【0063】
また、当接リブ62の挿入先端側Xfの挿入方向Xに対する傾斜角度である先端側傾斜角度は、挿入後端側Xbの挿入方向Xに対する傾斜角度である後端側傾斜角度より緩やかに構成されている。換言すれば、装着作業においてバーリング211と当接することになる挿入先端側Xfの傾斜面をより緩やかな斜面にし、また、装着状態においてバーリング211の内周面の側に向く挿入後端側Xbの傾斜面をより急な斜面にしている。
【0064】
この当接リブ62の挿入方向X前後(すなわち、挿入先端側Xf及び挿入後端側Xb)に周方向の溝部である先端側溝部63及び後端側溝部64が形成されている。
先端側溝部63は、当接リブ62の頂部から段差縮径部61にかけて形成される溝部をいい、当接リブ62より挿入先端側Xfの溝部である。すなわち、段差縮径部61は、先端側溝部63における挿入先端側Xfの端縁部分に相当する。
【0065】
また、後端側溝部64は、当接リブ62の頂部から縮径部60における挿入後端側Xbの端部にかけて形成される溝部をいい、当接リブ62より挿入後端側Xbの溝部である。
後端側溝部64の溝深さは、先端側溝部63の溝深さより深くなるように構成されている。換言すれば、後端側溝部64の谷の部分の径を、先端側溝部63の谷の部分の径より小径としてある。さらに、先端側溝部63は、縮径部60における他の部分より薄肉で構成している。より具体的には、後端側溝部64における肉厚よりも、先端側溝部63における肉厚を薄肉で構成している。これにより、後端側溝部64の部分よりも、先端側溝部63の部分で変形が起こりやすくしている。
【0066】
当接リブ62は、
図4(b)に示すように、装着状態においてバーリング211の内径側と当接することになる当接頂部62aと、段差縮径部61との挿入方向Xの間隔L1が、バーリング211の高さH1以下となるように構成されている。
【0067】
すなわち、当接頂部62aは、装着作業中においてもバーリング211の内径側と当接するが、間隔L1をH1以下とすることにより、バーリング211の先端が当接頂部62aを越えるまでは、少なくとも段差縮径部61もバーリング211に当接した状態とできる。これにより、バーリング211が先端側溝部63に嵌り込むことが回避される。
【0068】
さらに、当接リブ62では、
図4(b)に示すように、装着状態において、段差縮径部61とパネル孔210の内周縁近傍210aとが当接するとともに、当接リブ62がバーリング211の内周面と当接するようにしてある。すなわち、段差縮径部61に対する当接リブ62の高さや位置を、グロメット1の装着状態で、当接リブ62をバーリング211の内周面に当接させながら、段差縮径部61とパネル孔210の内周縁近傍210aとが当接するものに設定している。
【0069】
また、大径部70における挿入先端側Xfの外縁近傍に、装着状態において、挿入先端側Xfの先端部71aが車体パネル200に当接する装着検知リブ71が設けられている。すなわち、装着状態では、大径部70にはバーリング211の先端が当接するため、大径部70と車体パネル200はバーリング211の分だけ挿入方向Xに離間する。
【0070】
これに対し、大径部70からの装着検知リブ71の挿入方向Xへの突出高さが、当該部分における大径部70と車体パネル200との離間距離よりも高くなるように構成されている。これにより、装着状態において、先端部71aが必ず車体パネル200に当接するようにしている。
【0071】
また、装着検知リブ71は、挿入先端側Xfに向かって徐々に拡径されるラッパ状に形成されており、先端部71aが径方向外側を向くように構成されている。このような形状とすることにより、先端部71aがバーリング211に当接した後、さらにグロメット1が押し進めて大径部70と車体パネル200とを近づけることで、装着検知リブ71を確実に径方向外側に向かって変形させることができる。
【0072】
そして、先端部71aが車体パネル200に当接するタイミングが、バーリング211の先端が当接頂部62aを越えた後となるように、先端部71aと当接頂部62aとの挿入方向Xの間隔L2が、バーリング211の高さH1以下となるように構成されている。
【0073】
すなわち、間隔L2が高さH1より小さいため、当接頂部62aにバーリング211の先端が当接している間は、先端部71aが車体パネル200に当接することがなく、バーリング211の先端が当接頂部62aを越えて初めて先端部71aが車体パネル200に当接することになる。
【0074】
また、大径部70において、装着検知リブ71を支持する支持外縁部72が他の部分に比べて肉厚に形成されている。具体的には、支持外縁部72は、装着検知リブ71の末端部分の部位で、グロメット1を水平に向けたときに、装着検知リブ71が自重により傾くことを防ぐための部位である。そのため、径方向の肉厚を、装着検知リブ71に比べ厚肉にしている。
【0075】
装着検知リブ71の径方向の肉厚は、大径部70の挿入方向Xの肉厚に対して、大幅に薄肉としている。これにより、装着検知リブ71がバーリング211に当接したときに、装着検知リブ71ではなく大径部70の側が変形してしまうことを防止している。
【0076】
挿入先端部40の内径側における挿入筒部10との間に、
図2(b)及び
図3に示すように、挿入後端側Xbに向かって凹状となる肉抜き部80が設けられている。この肉抜き部80は、当接リブ62より挿入先端側Xfに形成されている。
【0077】
この肉抜き部80には、
図2(b)に示すように、挿入筒部10の周面から円盤部20に向かって径方向に伸びるリブ81が放射状に設けられている。すなわち、肉抜き部80を設けることで、円盤部20の径方向内側への変形を容易にしつつ、肉抜き部80内にリブ81を形成することで、装着後における円盤部20の不用意な変形を抑制し、必要な強度を確保している。
【0078】
さらに、
図2(a)に示すように、グロメット1には、オプション用のケーブルを挿通するための、オプション用挿入筒部90を二つ設けている。オプション用挿入筒部90は、肉抜き部80と連通する状態で、挿入筒部10の径外側に配置されている。
【0079】
続いて、グロメット1がどのような段階を経て車体パネル200に装着されるか、より具体的にはグロメット1がどのようにバーリング211と干渉し、車体パネル200に装着されるかについて、
図5乃至
図13を用いて説明する。
【0080】
ここで、
図5乃至
図13は、グロメットを車体パネルに装着する状態の説明図を示し、具体的には、
図5から
図13にかけて、順次グロメット1の車体パネル200への装着が進む様子を断面図で示す。
【0081】
まず、グロメット1では、パネル孔210に対し、円盤部20の挿入先端部40からグロメット1を挿入し、大径部70にバーリング211の先端が当接して、縮径部60にバーリング211が配置されるまで、グロメット1を挿入先端側Xfに挿入する。この装着作業において、バーリング211の先端がテーパー部50に当接した際には、グロメット1をさらに挿入先端側Xfに押し込み(
図5参照)、バーリング211に当接するテーパー部50を径内側に変形させて、グロメット1を挿入先端側Xfに進行させる(
図6参照)。
【0082】
さらにグロメット1を挿入先端側Xfに押し込み、バーリング211の先端が拡径部分51を越えると(
図7参照)、やがて、バーリング211の先端は、大径部70に当接する前に当接リブ62の挿入先端側Xfの傾斜面に当接する(
図8及び
図9参照)。
【0083】
このようにバーリング211の先端が当接リブ62に当接した状態で、グロメット1を挿入先端側Xfに相応の力で押し込むと、当接リブ62が断面山形である。このため、当接リブ62自体が屈曲してバーリング211に引きずられるということなく、当接リブ62の周囲の部分が変形する(
図10参照)。
【0084】
さらにグロメット1が押し込まれると、バーリング211の先端が、当接リブ62の挿入先端側Xfの傾斜面をすべる形で当接頂部62aを越えることになる。(
図11参照)また、同時に、装着検知リブ71が車体パネル200に当接した状態となる。
【0085】
ここで、当接頂部62aを越えたバーリング211の先端は、どの部位とも当接しない状態となるため、軽い力でグロメット1を進行させることができる。そして、直前までグロメット1には相応の力が加えられる状態にあったため、バーリング211の先端が当接頂部62aを越えると、グロメット1が大幅に押し進められて、バーリング211の先端が直ちに大径部70に当接することになる(
図12参照)。このとき、装着検知リブ71は、グロメット1が押し進められることで、径外側に向かって変形した状態となっている。
【0086】
装着作業が完了し、作業者がグロメット1の押し込みをやめると、押し込み力が作用し変形していたグロメット1は元の形状に戻る(
図13参照)。これにより、バーリング211の先端が大径部70に当接し、且つ、段差縮径部61とパネル孔210の内周縁近傍210aとが当接する状態となり、バーリング211が第2部分60bに嵌まった状態となる。同時に、当接リブ62がバーリング211の内周面と当接し、当接リブ62がバーリング211の抜け留めとして機能し、且つ、パネル孔210を通じた漏水を防止する機能も果たす。
【0087】
このように構成されたグロメット1によれば、グロメット1の装着が完了したことを確実に判断できる。
詳述すると、上述したように、グロメット1の装着作業中、バーリング211の先端がテーパー部50に当接してから当接リブ62の当接頂部62aを越えるまでは、作業者は、グロメット1を変形させながら押し込むため、グロメット1に大きな力を作用させなければならない。そして、大きな力で押し込んでも、グロメット1は徐々にしか押し進められない。一方で、バーリング211の先端が当接頂部62aを越えた後は、小さな押し込み力で、グロメット1を大幅に押し進められる。
【0088】
すなわち、バーリング211の先端が当接頂部62aを越える前と後とでは、押し込むための力とこれに対する押し進み量が異なり、グロメット1の押し込み操作において、作業者の感触を変化させることができる。そして、感触が変化したことは、バーリング211の先端が当接頂部62aを越えたことを意味し、すなわち、グロメット1の装着が完了したことを意味する。そのため、作業者は、感触の変化から、グロメット1の装着が完了したことを感知することができる。したがって、グロメット1の装着が完了したことを確実に判断できる。
【0089】
また当接リブ62は、先端側傾斜角度が後端側傾斜角度より緩やかであるため、先端側傾斜角度の方が急である場合に比べ、当接リブ62の挿入先端側Xfの傾斜面に当接するバーリング211の先端を、その傾斜面上ですべらせやすくなる。したがって、作業者は、先端側傾斜角度の方が急である場合に比べ、グロメット1の装着をより容易に行うことができる。
【0090】
さらにまた、当接リブ62は、後端側傾斜角度の方が急であるため、後端側傾斜角度の方が緩やかである場合に比べ、グロメット1の装着状態において、バーリング211の内周面に当接頂部62aを当接させやすい。これにより、当接頂部62aのバーリング211の抜け留めとしての機能が向上する。
【0091】
上述したように、装着作業において、バーリング211の先端に当接リブ62が当接した後、グロメット1がさらに押し込まれることで、当接リブ62の周囲の部分が変形して、バーリング211の先端が当接頂部62aを越える。そして、この当接リブ62の周囲の部分の変形は、当接リブ62の挿入先端側Xfの傾斜面がバーリング211と平行に向く方向、換言すれば当接リブ62を挿入後端側Xbに傾かせる方向で起きる。
【0092】
そして、当接リブ62の挿入方向X前後に周方向の溝部の先端側溝部63,後端側溝部64が形成されているため、当接リブ62の周囲の部分を変形させやすくできる。さらに、後端側溝部64の溝深さの方が先端側溝部63より深いため、当接リブ62を挿入後端側Xbに傾かせる方向により容易に変形させることができる。すなわち、バーリング211の先端が当接頂部62aを越えるために必要な変形を容易に生じさせることができる。
【0093】
また、当接リブ62を挿入後端側Xbに傾かせる方向に当接リブ62の周囲の部分を変形させる際には、先端側溝部63を起点として、当接リブ62を挿入後端側Xbに傾かせることになる。そして、先端側溝部63を、縮径部60における他の部分より薄肉にし、他の部位に比べ変形しやすくしているため、当接リブ62を挿入後端側Xbに傾かせる方向に容易に変形させることができる。
【0094】
また、当接頂部62aと段差縮径部61との挿入方向Xの間隔L1が、バーリング211の高さH1以下であるため、バーリング211の先端が当接リブ62に当接した後、当接頂部62aを越えるまでは確実にバーリング211の一部を段差縮径部61に当接させることができる。これにより、バーリング211の先端が当接頂部62aを越える前にバーリング211の後端が段差縮径部61を越えてしまい、バーリング211の後端部分が先端側溝部63に嵌り込むことを防止できる。
【0095】
また、グロメット1をパネル孔210に装着した装着状態において、段差縮径部61がパネル孔210の内周縁近傍210aと当接し、当接リブ62がバーリング211の内周面と当接する。このため、段差縮径部61と当接リブ62とを、パネル孔210及びバーリング211に対する抜け留めとして機能させることができる。
【0096】
また、肉抜き部80により円盤部20が変形するスペースが確保されるため、円盤部20の変形性を向上させることができる。一方で、縮径部60における当接リブ62より挿入後端側Xbの領域は、バーリング211を縮径部60内に保持するために用いられる領域であるが、肉抜き部80は当接リブ62より挿入先端側Xfに形成される。そのため、変形性を向上させる肉抜き部80を設けつつも、当接リブ62より挿入後端側Xbの領域の変形性への影響を抑制でき、バーリング211を縮径部60内に安定的に保持できる。
【0097】
また、グロメット1をパネル孔210に装着した装着状態において、装着検知リブ71が車体パネル200に当接する。このため、装着検知リブ71が車体パネル200に当接したことを、グロメット1が車体パネル200に装着されたことの指標とすることができる。これにより、グロメット1を介して伝わる感覚に加え、装着検知リブ71の先端部が車体パネル200に当接したという視覚によってもグロメット1の装着が完了したことを判断できる。したがって、グロメット1の装着が完了したことをより確実に判断できる。
【0098】
また、グロメット1は、パネル孔210が水平方向を向く状態で挿通されるものであるところ、グロメット1を水平方向に向かせると、装着検知リブ71が自重によって鉛直下向きに傾くおそれがある。これに対し、支持外縁部72が他の部分に比べて肉厚に形成されているため、装着検知リブ71が自重によって鉛直下向きに傾くことを効果的に抑制できる。これにより、装着状態において、装着検知リブ71を確実に車体パネル200に当接させることができる。
【0099】
また、装着検知リブ71が、挿入先端側Xfに向かって徐々に拡径されるラッパ状に形成されているため、装着検知リブ71の車体パネル200に当接する先端部71aを、確実に径方向外側に変形させることができる。これにより、装着状態において、先端部71aがグロメット1の径方向外側を向くように変形し、視覚的に、装着検知リブ71が車体パネル200に当接したことをわかりやすくできる。
【0100】
また、装着検知リブ71の先端部71aと当接頂部62aとの挿入方向Xの間隔L2が、バーリング211の高さH1以下であるため、バーリング211の先端が当接頂部62aを越えてからでないと、大径部70の先端部71aが車体パネル200に当接しない。これにより、バーリング211の先端が当接頂部62aを越える前に装着検知リブ71が車体パネル200に当接し、作業者が誤ってグロメット1の装着が完了したと判断することを回避できる。
【0101】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、グロメットはグロメット1に対応し、
以下同様に、
挿入筒部は挿入筒部10に対応し、
円盤部は円盤部20に対応し、
連結部は連結部30に対応し、
挿入先端部は挿入先端部40に対応し、
テーパー部はテーパー部50に対応し、
拡径部分は拡径部分51に対応し、
縮径部は縮径部60に対応し、
段差縮径部は段差縮径部61に対応し、
当接リブは当接リブ62に対応し、
当接頂部は当接頂部62aに対応し、
溝部は先端側溝部63,後端側溝部64に対応し、
大径部は大径部70に対応し、
装着検知リブは装着検知リブ71に対応し、
支持外縁部は支持外縁部72に対応し、
肉抜き部は肉抜き部80に対応し、
ケーブルはケーブル100に対応し、
車体パネルは車体パネル200に対応し、
パネル孔はパネル孔210に対応し、
内周縁近傍は内周縁近傍210aに対応し、
バーリングはバーリング211に対応し、
挿入方向は挿入方向Xに対応するが、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施形態を得ることができる。
【0102】
上述の説明では、縮径部60を、拡径部分51から挿入後端側Xbに向かって徐々に縮径する第1部分60aと、第1部分60aから挿入後端側Xbに向かって段差状に凹んだ第2部分60bとで構成している。しかしながら、必ずしもこれに限られず、例えば、第1部分60a又は第2部分60bと同様の構成のみから縮径部60を構成してもよく、拡径部分51から挿入後端側Xbに向かって縮径するものであれば、縮径部60の構成は適宜変更してもよい。
【0103】
また、上述した当接リブ62の具体的構成はあくまでも一例であり、必ずしもこれに限られず、装着状態において、バーリング211の内周面に当接するように径外側に突出し、挿入方向Xに沿う断面形状が径外側に突出する断面山形であれば、当接リブ62の構成は適宜変更してもよい。
【0104】
例えば、先端側溝部63の挿入方向Xに対する傾斜角度は後端側溝部64の挿入方向Xに対する傾斜角度と同じでもよいし、急な角度でもよい。また、装着状態においてバーリング211の内周面に当接する範囲で、当接リブ62の配置や突出高さを変更してもよい。当接頂部62aと段差縮径部61との挿入方向Xの間隔L1も変更してもよく、バーリング211の高さH1を超えてもよい。また、段差縮径部61と当接リブ62の位置関係も、装着状態において、段差縮径部61とパネル孔210の内周縁近傍210aとが当接するとともに、当接リブ62がバーリング211の内周面と当接するような位置関係でなくてもよく適宜変更可能である。
【0105】
上述の説明では、当接リブ62の挿入方向Xの前後に周方向の先端側溝部63及び後端側溝部64を形成した構成としたが、必ずしもこれに限られず、先端側溝部63及び後端側溝部64の一方又は双方を設けなくてもよく、また、設ける溝部の構成も適宜変更してもよい。
【0106】
例えば、後端側溝部64の溝深さも、先端側溝部63の溝深さより浅くてもよく、また、同じ深さとしてもよい。また、先端側溝部63は、当接リブ62の頂部から段差縮径部61にかけて形成されるものでなく、当接リブ62の谷に当たる端縁部分からさらに径内側に窪む構成としてもよい。また、後端側溝部64も同様の構成としてもよい。その他、溝部は、周方向に溝深さを変化させたり、周方向において溝部が分断されるようにするなどしてもよい。
【0107】
上述の説明では、先端側溝部63は、縮径部60における他の部分より薄肉で構成したが、必ずしもこれに限られない。他の部分と同じ肉厚としてもよいし、より厚肉とするなど適宜変更してもよい。
【0108】
上述の説明においては、大径部70に装着検知リブ71を設けた構成としたが、必ずしもこれに限られず、装着検知リブ71を設けなくてもよい。また、装着検知リブ71を設ける場合でも、装着検知リブ71は、装着状態において、先端部71aが車体パネル200に当接するものであれば、装着検知リブ71の構成は適宜変更してもよい。
【0109】
例えば、挿入先端側Xfに向かって徐々に拡径されるラッパ状でなくとも他の異なる形状としてもよいし、先端部71aと当接頂部62aとの間隔をバーリング211の高さH1以下とせず、大径部70の突出高さも適宜変更してもよい。また、支持外縁部72を設けなくてもよい。
【0110】
上述の説明においては、肉抜き部80を設けた構成としたが、必ずしもこれに限られず、肉抜き部80を設けなくてもよい。また、肉抜き部80を設ける場合でも、リブ81を設けない構成としてもよく、また、当接リブ62より挿入後端側Xbにわたって肉抜き部80が形成されてもよい。
【符号の説明】
【0111】
1 グロメット
10 挿入筒部
20 円盤部
30 連結部
40 挿入先端部
50 テーパー部
51 拡径部分
60 縮径部
61 段差縮径部
62 当接リブ
62a 当接頂部
63 先端側溝部(溝部)
64 後端側溝部(溝部)
70 大径部
71 装着検知リブ
72 支持外縁部
80 肉抜き部
100 ケーブル
200 車体パネル
210 パネル孔
210a 内周縁近傍
211 バーリング
X 挿入方向