(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-13
(45)【発行日】2023-10-23
(54)【発明の名称】ブロック共重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 63/78 20060101AFI20231016BHJP
C08G 63/08 20060101ALI20231016BHJP
C08G 63/85 20060101ALI20231016BHJP
C12P 7/625 20220101ALI20231016BHJP
C12P 7/62 20220101ALI20231016BHJP
C08L 101/16 20060101ALN20231016BHJP
【FI】
C08G63/78
C08G63/08
C08G63/85
C12P7/625
C12P7/62
C08L101/16
(21)【出願番号】P 2022506504
(86)(22)【出願日】2020-09-11
(86)【国際出願番号】 KR2020012318
(87)【国際公開番号】W WO2021049910
(87)【国際公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-01-31
(31)【優先権主張番号】10-2019-0113112
(32)【優先日】2019-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・ユン・チェ
(72)【発明者】
【氏名】チョル・ウン・キム
(72)【発明者】
【氏名】スンウン・ホ
(72)【発明者】
【氏名】ドンギョン・カン
(72)【発明者】
【氏名】ジェ・ヒョン・キム
(72)【発明者】
【氏名】スヒュン・チョ
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2019-0060584(KR,A)
【文献】特表2010-510372(JP,A)
【文献】特開平6-298921(JP,A)
【文献】Julien RAMIER et al.,Microwave-Assisted Synthesis and Characterization of Biodegradable Block Copolyesters Based on Poly(3-hydroxyalkanoate)s and Poly(D,L-lactide),J. Polym. Sci. Part A: Polym. Chem.,2012年,vol.50,pp.1445-1455
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G63/
C08L67/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)開始剤を生合成する段階;および
(b)段階(a)で製造されたポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)開始剤の存在下で、ラクチド単量体を開環重合させてポリラクチド-ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)ブロック共重合体を製造する段階
を含み、
段階(b)を実施する前に、段階(a)で製造されたポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)開始剤を加水分解処理する段階をさらに含み、
前記開環重合が、有機金属複合体触媒および有機触媒からなる群より選ばれる一つ以上の触媒の存在下で実施される、ブロック共重合体の製造方法。
【請求項2】
段階(a)を、ヒドロキシアシル-CoAを生産する能力がある酵素および/またはPHA合成酵素を含む組換え微生物によって実施する、請求項1に記載のブロック共重合体の製造方法。
【請求項3】
前記加水分解処理時に使用する加水分解剤は、酸加水分解剤、塩基加水分解剤、PHAデポリメラーゼ、またはこれらの組み合わせである、請求項
1に記載のブロック共重合体の製造方法。
【請求項4】
前記加水分解処理を、4~80時間の間実施する、請求項
1に記載のブロック共重合体の製造方法。
【請求項5】
前記ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)開始剤は、重量平均分子量が1,500~200,000である、請求項1に記載のブロック共重合体の製造方法。
【請求項6】
前記ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)開始剤の含有量は、前記ラクチド単量体100重量部に対して0.01重量部以上である、請求項1に記載のブロック共重合体の製造方法。
【請求項7】
前記有機金属複合体触媒は、下記化学式1で表される触媒である、請求項1に記載のブロック共重合体の製造方法:
[化学式1]
MA
1
pA
2
2-p
前記化学式1において、MはAl、Mg、Zn、Ca、Sn、Fe、Y、Sm、Lu、TiまたはZrであり、pは0~2の整数であり、A
1およびA
2はそれぞれ独立してアルコキシ基またはカルボキシル基である。
【請求項8】
前記MA
1
pA
2
2-pは、スズ(II)2-エチルヘキサノエート(Sn(Oct)
2)である、請求項
7に記載のブロック共重合体の製造方法。
【請求項9】
前記触媒の含有量は、前記ラクチド単量体100モル%に対して0.01~10モル%である、請求項1に記載のブロック共重合体の製造方法。
【請求項10】
前記開環重合を、150~200℃で5分~10時間の間実施する、請求項1に記載のブロック共重合体の製造方法。
【請求項11】
前記開環重合を、バルク重合によって実施する、請求項1に記載のブロック共重合体の製造方法。
【請求項12】
前記ポリラクチド-ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)ブロック共重合体は、重量平均分子量が10,000~400,000である、請求項1に記載のブロック共重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互引用
本出願は2019年9月11日付韓国特許出願第10-2019-0113112号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明はポリラクチド-ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)ブロック共重合体を製造する方法に関し、より詳細には生合成したポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)を開始剤として使用してポリラクチド-ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)ブロック共重合体を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ポリラクチド(あるいはポリ乳酸)樹脂はとうもろこしなどの植物から得られる植物由来の樹脂として、生分解性特性を有すると同時に引張強度および弾性率もまた優れた環境に優しい素材として注目をあびている。具体的には、従来使用されているポリスチレン(Polystyrene)樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂、ポリエチレン(Polyethylene)などの石油系樹脂とは異なり、石油資源枯渇防止、炭酸ガス排出抑制などの効果があるので、石油系プラスチック製品の短所である環境汚染を減らすことができる。廃プラスチックなどによる環境汚染問題が社会問題として台頭していることから、食品包装材および容器、電子製品ケースなど一般プラスチック(石油系樹脂)が使用されていた製品分野まで適用範囲を拡大するための努力がなされている。
【0004】
しかし、ポリラクチド樹脂は既存の石油系樹脂と比較して耐衝撃性および耐熱性が劣り適用範囲に制限がある。また、伸び率(Elongation to break)特性が悪く割れやすい特性(Brittleness)を示すため、汎用樹脂としては限界があるのが実情である。
【0005】
したがって、従来技術において生分解が可能でかつ伸び率特性が比較的優れるPBS(poly(butylene succinate))およびPBAT(poly(butylene adipate-co-terephthalate))などの素材を、ポリラクチドと共にコンパウンディングまたはブロック共重合体形成させることによって物性を改善する研究が進められている。しかし、PBSおよびPBATは引張強度が低く、前記コンパウンディングまたはブロック共重合体形成後の引張強度も低くなる問題がある。
【0006】
また、生分解性高分子であるポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)は、機械的物性に優れており、かつガラス転移温度(Tg,Glass transition Temperature)が-20℃程度で低いため伸び率が高く、ポリ乳酸と結合させると、優れた生分解性および機械的物性を維持できるという長所がある。しかし、化学的な合成方法によりポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)の分子量を増加させることには限界があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、生合成により製造することによって分子量を容易に増加させたポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)を開始剤として用いて、優れた環境性および生分解性を維持しながらも、引張モジュラス、引張強度、伸び率および衝撃強度などの機械的特性に優れたポリラクチド-ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)ブロック共重合体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は多様な変更を加えることができ、様々な実施例を有することができる所、特定の実施例を図面に例示して詳細な説明に詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の実施形態に限定しようとするためでなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物ないし代替物を含むものとして理解しなければならない。本発明を説明するにあたり、関連する公知技術に対する具体的な説明が本発明の要旨を曖昧にすると判断する場合には、その詳細な説明を省略する。
【0009】
本明細書では、生合成によって製造されたポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)開始剤の存在下で、ラクチド単量体を開環重合してポリラクチド-ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)ブロック共重合体を製造する段階を含む、ブロック共重合体の製造方法を提供する。好ましくは、本発明によるブロック共重合体の製造方法は、次の段階を含む:
(a)ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)開始剤を生合成する段階;および
(b)段階(a)で製造されたポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)開始剤の存在下に、ラクチド単量体を開環重合してポリラクチド-ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)ブロック共重合体を製造する段階。
【0010】
さらに、本発明によるブロック共重合体の製造方法は、段階(a)と(b)との間に、段階(a)で生合成したポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)開始剤を、加水分解などによって処理して分子量を調節する段階をさらに含み得る。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、化学合成ではなく生合成によって製造されたポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)を必要に応じて適切に処理して多様な分子量を有するようにして開始剤として使用することによって、構造および分子量に応じて変わるポリラクチド-ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)ブロック共重合体の物性を用いて多様な分野に応用可能である。また、優れた環境性および生分解性を維持しながらも、引張モジュラス、引張強度、伸び率および衝撃強度などの機械的特性に優れたポリラクチド-ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)ブロック共重合体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例1-4で製造したブロック共重合体のNMR分析結果を示すチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の具体的な実施形態によるブロック共重合体の製造方法についてより詳細に説明する。
【0014】
本明細書全体で特に明記しない限り「含む」または「含有」とはある構成要素(または構成成分)を特に制限なく含むことをいい、他の構成要素(または構成成分)の付加を除くものと解釈されるべきではない。
【0015】
また、本明細書全体で、「ラクチド単量体」は次の通り定義できる。通常ラクチドは、L-乳酸からなるL-ラクチド、D-乳酸からなるD-ラクチド、L-形態とD-形態がそれぞれ一つずつからなるmeso-ラクチドに区分される。また、L-ラクチドとD-ラクチドとが50:50の重量比で混ざっているものをD,L-ラクチドあるいはrac-ラクチドという。これらのラクチドのうち光学純度が高いL-ラクチドあるいはD-ラクチドのみを用いて重合を行うと、立体規則性が非常に高いL-あるいはD-ポリラクチド(PLLAあるいはPDLA)が得られることが知られており、このようなポリラクチドは、光学純度が低いポリラクチドに対して結晶化速度が速く、結晶化度もまた高いことが知られている。ただし、本明細書において「ラクチド単量体」は、各形態によるラクチドの特性差およびこれから形成されたポリラクチドの特性差に関係なくすべての形態のラクチドを含むものと定義される。
【0016】
そして、本明細書全体において「ポリラクチド-ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)ブロック共重合体」は、ポリラクチド繰り返し単位およびポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)繰り返し単位を含むポリラクチド-ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)ブロック共重合体を称し、このような「ポリラクチド-ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)ブロック共重合体」は、上述したポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)開始剤の存在下で「ラクチド単量体」を開環重合させることによって前記ポリラクチド繰り返し単位およびポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)繰り返し単位を形成する段階を含む方法で製造することができ、このような開環重合および前記繰り返し単位の形成工程が完了した後の重合体を、前記「ポリラクチド-ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)ブロック共重合体」と称する。この時、「ラクチド単量体」の範疇にはすべての形態のラクチドが含まれることは、上述したとおりである。
【0017】
そして、前記「ポリラクチド-ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)ブロック共重合体」と称される重合体の範疇には、前記開環重合および繰り返し単位の形成工程が完了した後のすべての状態の重合体、例えば、前記開環重合が完了した後の未精製または精製された状態の重合体、製品成形前の液相または固相の樹脂組成物に含まれた重合体、または製品成形が完了したプラスチックまたは織物などに含まれた重合体などがすべて含まれ得る。したがって、本明細書全体で、「ポリラクチド-ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)ブロック共重合体」の物性(重量平均分子量など)は、前記開環重合および繰り返し単位の形成工程が完了した後の任意の状態の重合体の物性と定義される。
【0018】
一方、本発明者らは、生合成によってポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)を合成して使用する場合には、ポリラクチド-ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)ブロック共重合体の製造において開始剤として作用するポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)の分子量を増加させたり、あるいは加水分解により調節することなどにより多様に分子量を調節して、多様な物性を有するブロック共重合体を製造することができることを見出して本発明を完成した。
【0019】
本発明の一実施形態によれば、本発明は生合成によって製造されたポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)開始剤の存在下で、ラクチド単量体を開環重合してポリラクチド-ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)ブロック共重合体を製造する段階を含む、ブロック共重合体の製造方法を提供することができる。
【0020】
一般的に、ラクチド単量体の開環重合によるポリラクチド樹脂重合反応は、末端ヒドロキシ基を有する化合物によって開始され、前記末端ヒドロキシ基を有する化合物にラクチド単量体が連続的に開環および挿入(insertion)されて行われる。
【0021】
したがって、前記ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)開始剤は、末端にヒドロキシ基および/またはアルコキシ基を含み、前記ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)開始剤の末端であるヒドロキシ基および/またはアルコキシ基をラクチド単量体の開環重合反応に添加すると、末端からラクチド単量体が挿入(insertion)され始めて結果的にポリラクチド-ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)ブロック共重合体が製造される。
【0022】
したがって、前記ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)開始剤の存在下で、ラクチド単量体の開環重合反応を実施すると、ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)は重合開始剤としての役割もすると同時に、ブロック共重合体内に繰り返し単位として含まれ、最終的に製造されるブロック共重合体の柔軟性および衝撃強度などの機械的物性も改善することができる。具体的には、前記ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)は、最終的に製造されるブロック共重合体に含まれることによって、ブロック共重合体のガラス転移温度(Tg)を低下させて柔軟性を増加させることができる。
【0023】
本発明は、このような開始剤として使用されるポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)が、生合成によって製造されたものであることを一つの特徴とする。
【0024】
本発明で使用される用語の「生合成」は、化学合成でなく、生物体を用いて目的物質を合成および製造することを指し、前記生物体は、好ましくは微生物であり、このような微生物は、組換え微生物であり得る。
【0025】
前記生合成では、ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)を合成することができる生合成法であれば制限なく使用でき、当業界にポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)の生合成法として知られている公知の方法を用いることもできる。例えば、ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)は、適切な基質を、ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)を合成可能な微生物によって適切な培地で発酵させることにより生産することができる。前記基質は、精製されたものおよび非精製のものを制限なく使用できる。微生物でポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)のようなポリヒドロキシアルカノエート(PHA)を生産するためには、微生物の代謝産物をPHAモノマーに変換する酵素と、PHAモノマーを用いてPHA高分子を合成するPHA合成酵素(PHA synthase)とが必須である。PHA合成酵素は、ヒドロキシアシルCoA(hydroxyacyl-CoA)を基質として使用してPHAを合成する。PHAの基質であるヒドロキシアシル-CoAを提供できる酵素としては、ラルストニアユートロファ(Ralstonia eutropha)などから由来したα-ケトチオラーゼ(PhaA)、アセトアセチル-CoAレダクターゼ(acetoacetyl-CoA reductase:PhaB)、シュードモナス(Pseudomonas)から由来した3-ヒドロキシデカノイル-ACP:CoAトランスフェラーゼ(3-hydroxydecanoyl-ACP:CoA transferase:PhaG)、エロモナスキャビエ(Aeromonas caviae)とシュードモナスアエルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)から由来した(R)特異的エノイル-CoAヒドラターゼ[(R)-specific enoyl-CoA hydratase:PhaJ]、大腸菌とシュードモナスアエルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)などから由来した3-ケトアシル-ACPレダクターゼ(3-ketoacyl-ACP reductase:FabG)などが知られている。このような微生物は、ヒドロキシアシル-CoAを提供できる酵素および/またはポリヒドロキシアルカノエート合成酵素遺伝子を含む微生物として、このような前記遺伝子を本来から有する微生物であるか、または、組換えによって前記遺伝子を形質転換によって収得した微生物であり得る。例えば、PHA合成酵素遺伝子を本来から有する微生物細胞としては、多様な微生物が知られており(韓国登録特許第10-250830号公報)、また、E.coliのような微生物を形質転換させるても良い。組換えベクターに形質転換できる微生物には、原核細胞および真核細胞のいずれもが含まれることができ、DNAの導入効率が高く、導入されたDNAの発現効率が高い宿主が通常使用される。具体例として、大腸菌(例えば、E.coli DH5a、E.coi JM101、E.coli K12、E.coli W3110、E.coli X1776、E.coli BおよびE.coli XL1-Blue)を含むエシェリヒア属、シュードモナス属、バチルス属、ストレプトマイセス属、エルウィニア属、セラチア属、プロビデンシア属、コリネバクテリウム属、レプトスピラ属、サルモネラ属、ブレビバクテリア属、ヒポモナス属、クロモバクテリウム属、ノカルジア属、真菌または酵母のような周知の真核および原核宿主などを例示できるが、これに制限されるものではない。適当な宿主に形質転換されると、ベクターは宿主ゲノムと関係なく複製して機能をすることができるか、または一部の場合はゲノムそれ自体に統合され得る。
【0026】
また、前記基質と共に、追加的にグルコース、フラクトース、スクロース、デキストロース、トリグリセリドまたは脂肪酸などが培地中にさらに含まれ得、培地は前記微生物の発酵のための炭素源のみ含まれる限り公知の培地を制限なく選択して使用することができ、このような例としてはMR培地、M9培地またはLB培地などが挙げられる。
【0027】
ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)の生合成法の例として、韓国特許公開第10-2019-0060584号公報などがあるが、これに制限されるものではなく、いかなる経路でも、ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)を生合成できる方法により合成されたポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)を開始剤として使用することはすべて、本発明の範囲に含まれる。
【0028】
このように生合成によってポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)を使用する場合には、化学合成とは異なり、多様な分子量を有するポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)が得られる。例えば、本発明では生合成によって高分子量のポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)を合成してマクロ開始剤(macroinitiator)として使用することもでき、加水分解により分子量が減少したポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)を使用することもできる。加水分解剤は、ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)の加水分解のために使用できる加水分解剤であれば制限なく使用できるが、例えば公知の酸または塩基加水分解剤、またはPHAデポリメラーゼ(PHA depolymerase)またはこれらの組み合わせを使用することができる。一つの例示的な塩基性加水分解剤は、アルカリ金属水酸化物、例えば水酸化ナトリウム(例えば、水酸化ナトリウムの水溶液)であり、一つの例示的な酸性加水分解剤は、塩酸であり得る。また、加水分解剤は、昇温(例えば、室温より高い温度~沸騰点)した水単独であるか、または若干昇温(例えば、室温より高い温度~約80℃)した状態での薄い酸であり得る。加水分解は、例えば、加水分解しようとするポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)をメタノールのような溶媒中に溶解した加水分解剤の溶液と混合した後、該当混合物を数時間(例えば、4~12時間)の間常温~200℃、好ましくは40~150℃、さらに好ましくは80~120℃、より好ましくは100℃付近の温度で加熱する方法によって実施することもできるが、これに制限されるものではない。本発明の実施例では加水分解を100℃で行った。
【0029】
ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)開始剤の存在下で、ラクチド単量体を開環重合してポリラクチド-ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)ブロック共重合体を製造する時、前記ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)開始剤の投与含有量は、最終的に製造されるブロック共重合体内に含まれるポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)の繰り返し単位含有量および最小重合が開始されるのに必要な開始剤のヒドロキシ基および/またはアルコキシ基のモル比などを考慮して、適切な範囲で選択することができる。具体的には、最終的に製造されるブロック共重合体の柔軟性および機械的物性を最適化し、開環重合反応の開始剤としての役割を果たすための最小含有量を考慮して、前記ラクチド単量体100重量部に対して前記ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)開始剤を、0.01重量部以上、0.1重量部~100重量部、0.5~90重量部、0.7~80重量部、または0.9~70重量部の量で添加することができる。
【0030】
前記ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)開始剤は、重合活性が低下せず、かつブロック共重合体が優れた物性を示すために、重量平均分子量が1,500~200,000、2,000~150,000、4,000~120,000、5000~900,000または7,000~30,000であり得る。ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)は分子量が大きいほど結晶性が良くなり、製造されるブロック共重合体の物性も良くなるが、前記ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)開始剤の重量平均分子量が1,500未満であればポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)の結晶性が低くなり、製造されるブロック共重合体の分子量も少なくなるので良い物性を示し難い。ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)開始剤の重量平均分子量が200,000超の場合は重合活性が低下してブロック共重合体が合成されずブレンドした形態を示し得る。本発明では、生合成によってポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)を合成し、必要に応じて加水分解などにより処理して容易に前記分子量範囲に調節することができる。
【0031】
生合成によって製造されたポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)開始剤およびラクチド単量体を含む反応物を乾燥させ、その後乾燥されたポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)開始剤およびラクチド単量体を開環重合して、上述したブロック共重合体を製造することができる。
【0032】
前記開環重合に使用する触媒としては、ラクチド単量体の開環重合反応によるポリラクチド樹脂の製造に一般的に使用されるすべての触媒を使用することができる。例えば、前記開環重合は有機金属複合体触媒および有機触媒からなる群より選ばれた一つ以上の触媒下で行われる。
【0033】
前記有機金属複合体触媒は、一般的にラクチド単量体の開環重合反応によるポリラクチド樹脂の製造に通常使用されるものであればその構成に限定されることなく使用することができるが、例えば、前記有機金属複合体触媒は下記化学式1で表される触媒であり得る。
[化学式1]
MA1
pA2
2-p
【0034】
前記化学式1において、MはAl、Mg、Zn、Ca、Sn、Fe、Y、Sm、Lu、TiまたはZrであり、pは0~2の整数であり、A1とA2はそれぞれ独立してアルコキシまたはカルボキシル基である。
【0035】
より具体的に、前記MA1
pA2
2-pはスズ(II)2-エチルヘキサノエート(Sn(Oct)2;以下、Tin Octoateともいう)であり得る。
【0036】
一方、前記有機触媒は、一般的にラクチド単量体の開環重合反応によるポリラクチド樹脂の製造に通常使用されるものであれば、その構成の限定なく使用できる。例えば、前記有機触媒は下記1,5,7-トリアゾビシクロ-[4,4,0]デカ-5-エン(TBD)、下記1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデ-7-セン(DBU)、下記7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(MTBD)、下記4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、下記4-(1-ピロリジニル)ピリジン(PPY)、イミダゾール、トリアゾリウム、トチオウレア、三級アミンおよびクレアチニンからなる群より選ばれた一つ以上であり得る。
【化1】
【0037】
前記イミダゾールは下記化合物で構成される群より選ばれた一つ以上であり得る。
【化2】
【0038】
前記トリアゾリウムは下記化合物であり得る。
【化3】
【0039】
前記トチオウレアは下記化合物で構成される群より選ばれた一つ以上であり得る。
【化4】
【0040】
前記三級アミンは下記化合物で構成される群より選ばれた一つ以上であり得る。
【化5】
【0041】
上述した触媒の存在下でラクチド開環重合反応を行う場合、最終的に製造されるブロック共重合体の解重合または分解が抑制され得、より大きな分子量および優れた機械的物性を有するポリラクチド-ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)ブロック共重合体をより高い転換率で得ることができる。
【0042】
前記一実施形態によるブロック共重合体の製造方法において、前記触媒の含有量は、前記ラクチド単量体100モル%に対して0.01~10モル%、0.05~8モル%、0.07~5モル%、または0.09~3モル%であり得る。前記ラクチド単量体100モル%に対する前記触媒の含有量の含有量が0.01モル%未満であれば重合活性が充分でなく、10モル%超えると製造されたポリラクチド-ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)ブロック共重合体の残留触媒量が大きくなりトランスエステル化反応などの解重合による共重合体の分解または分子量減少などを招く。
【0043】
前記開環重合は150~200℃で5分~10時間の間行われる。
【0044】
また、前記開環重合反応は、実質的に溶媒を使用しないバルク重合で行うことができる。この時、実質的に溶媒を使用しないことには、触媒を溶解させるための少量の溶媒、例えば、使用ラクチド単量体1Kg当たり最大1ml未満の溶媒を使用する場合を包含し得る。前記開環重合をバルク重合で行うことにより、重合後の溶媒除去などの工程の省略が可能になり、このような溶媒除去工程での樹脂の分解または損失なども抑制できる。また、前記バルク重合によって前記ポリラクチド-ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)ブロック共重合体を高い転換率および収率で得ることができる。
【0045】
前記一実施形態による製造方法によって製造されたポリラクチド-ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)ブロック共重合体は、重量平均分子量が10,000~400,000、15,000~350,000、20,000~300,000、または25,000~250,000であり得る。
【0046】
前述したように、従来のポリラクチド-ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)ブロック共重合体を製造するにあたって、開始剤として生合成によって得たポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)を使用する場合には、多様な分子量を有するポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)を使用することができ、ポリラクチド-ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)ブロック共重合体の構造および分子量を調節することがが可能であり、構造および分子量によりポリラクチド-ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)ブロック共重合体の物性が変わるので、多様な分野に応用できる可能性があることを確認することができる。また、柔軟性に優れながらも、引張強度、伸び率などの優れた機械的物性が得られるので、従来のポリラクチド樹脂の脆性(brittleness)問題を解決し、その適用分野を拡大することができる。
【実施例】
【0047】
発明を下記の実施例でより詳細に説明する。ただし、下記の実施例は本発明を例示するだけであり、本発明の内容は下記の実施例によって限定されない。
実施例1~4
(1)ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)オリゴマーの生合成
1)高分子量のポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)の生産
本発明による高分子量のポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)の生合成のために、まず発酵基質として3-ヒドロキシプロピオネートを含む発酵液を製造するために次の条件により発酵を行った。具体的には、発酵のための菌株としてGDHおよびALDH酵素遺伝子を有するE.coli W3110を使用した。培地としてはM9を使用し、グリセロール70g/Lを基質として使用して発酵させて3-ヒドロキシプロピオネートを生産した。
【0048】
その後前記で製造された3-ヒドロキシプロピオネートを基質としてP(3HP)を発酵生産した。発酵のために、具体的に5L発酵器(内部体積:3L)を使用し、発酵のための微生物としてはpBLuescript II KS+ベクターにRalstonia eutropha由来のポリヒドロキシアルカノエート合成酵素(PHA synthase)のRecC遺伝子およびClostridium propionicum由来のプロピオニルCoAトランスフェラーゼ(propionyl-CoA transferase)の変異体540(CPPCT_540)遺伝子をクローニングした組換えベクターをXL1-Blue大腸菌に形質転換して製造した組換え大腸菌を使用した。
【0049】
前記CPPCT_540遺伝子は、194番目のアミノ酸であるValineがAlanin (V194A)として発現するように塩基配列が置換され、その他にアミノ酸変化させることのないDNA置換のみが行われたサイレント突然変異(silent mutation)(T669C、A1125G、T1158C)が三ヵ所行われた、改良遺伝子である(WO09/022797)。
【0050】
培地としてはMR(Modified Riesenberg)培地にグルコース20g/Lおよび基質として前記で製造された3HPを含む発酵液を2.0g/L投入した。これを300rpm、1vvmの条件でエアレーション(aeration)して発酵させて最終的に高分子量のP(3HP)を生産した。
【0051】
2)低分子量のポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)生産
低分子量のポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)を生産するために、韓国特許第10-2017-0028186号公報に開示された方法により(本文献は参考文献として本発明の範囲に含まれる)、プロピオニル-CoAトランスフェラーゼ遺伝子(pct)としてクロストリジウムプロピオニカム(Clostridium propionicum)由来のプロピオニル-CoAトランスフェラーゼ(CP-PCT)の変異体、PHA合成酵素遺伝子としてシュードモナス属MBEL 6-19(KCTC 11027BP)由来のPHA合成酵素の変異体およびベクターとしてpBluescript II (Stratagene Co.,USA)を使用して、pPs619C1310-CPPCT540組換えベクターを製造して、これを用いてpPs619C1249.18H-CPPCT540ベクターを製造した後、これをldhAがノックアウト(knock-out)されたE.coli XL1-BlueΔldhAに電気穿孔法(electroporation)を用いて形質転換させて、組換えE.coli XL1-BlueΔldhAを製作した。
【0052】
前記製造された組換えE.coli XL1-BlueΔldhA、および発酵基質として前記高分子量のポリ(ヒドロキシプロピオネート)の製造で使用されたものと同様の方法で製造された3-ヒドロキシプロピオネートを含む発酵液を使用して、ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)を生産するためのフラスコ培養を行った。先に前培養(seed culture)のために、前記組換え大腸菌を、100mg/Lアンピシリン(ampicillin)および20mg/Lカナマイシンが含有されている3mLのLB培地[BactoTM Triptone(BD) 10g/L、BactoTM yeast extract(BD) 5g/L、NaCL(amresco) 10g/L]で12時間培養した。本培養のために、この前培養液1mlを、1g/Lの3-ヒドロキシプロピオネートを含む発酵液、100mg/Lのアンピシリン、20mg/Lカナマイシン、10mg/Lのチアミン(thiamine)が追加で含有された100ml MR培地(1L当たりGlucose 10g、KH2PO4 6.67g、(NH4)2HPO4 4g、MgSO4・7H2O 0.8g、citric acid 0.8g、およびtrace metal solution 5mL;ここで、Trace metal solutionは1L当たり5M HCl 5mL、FeSO47H2O 10g、CaCl2 2g、ZnSO4H2O 2.2g、MnSO4・4H2O 0.5g、CuSO4・5H2O 1g、(NH4)6Mo7O2・4H2O 0.1g、およびNa2B4O2・10H2O 0.02g)に接種して、30℃で3日間250rpmで攪拌して培養した。
【0053】
前記培養液を4℃、4000rpmで10分間遠心分離して菌体を回収して十分な量の蒸溜水で2回洗浄した後80℃で12時間乾燥して最終的に分子量10,200のP(3HP)を製造した。
【0054】
3)多様な重量平均分子量を有するポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)オリゴマーの製造
前記1)で製造された20,000g/molの重量平均分子量を有する高分子量のポリ(ヒドロキシプロピオネート)を蒸溜水に入れ、塩酸を用いてpH2に合わせて酸触媒の条件下で加水分解を行った。加水分解を速かに行うために100℃オーブンにて前記ポリ(ヒドロキシプロピオネート)サンプルをそれぞれ24時間、および72時間の間加水分解させて、重量平均分子量がそれぞれ2100および21800(g/mol)のポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)オリゴマーを収得した。
【0055】
(2)ポリラクチド-ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)ブロック共重合体の製造
500mLの丸いフラスコにL-ラクチド16g、前記(1)で製造された多様な重量平均分子量を有するポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)オリゴマーおよびスズ(II)2-エチルヘキサノエート0.04g(0.1mol%;Sigma Aldrich社)を下記表1に記載された含有量で投入して十分に真空をかけて常温で4時間の間真空乾燥した。
【0056】
その後、130℃で予熱(pre-heating)したオイルバスに前記フラスコを入れ、180℃に昇温した後20分間開環重合反応させた。反応が終結した後、反応物をクロロホルムに溶解させた後、メタノールで抽出して、ブロック共重合体を回収した。
【0057】
【0058】
比較例1および2
500mLの丸いフラスコにL-ラクチド、ドデカノールおよびスズ(II)2-エチルヘキサノエートを下記表2に記載された含有量で投入して十分に真空をかけて常温で4時間の間真空乾燥した。
【0059】
その後、130℃に予熱(pre-heating)したオイルバスに前記フラスコを入れ、180℃に昇温した後20分間開環重合反応させた。反応が終結した後、反応物をクロロホルムに溶解させた後、メタノールで抽出して、重合体を回収した。
【0060】
【0061】
評価
1.NMR(Nuclear Magnetic Resonance)分析
NMR分析は三重共鳴5mm探針(probe)を有するVarian Unity Inova(500MHz)分光計を含むNMR分光計を使用して常温で行った。NMR測定用溶媒(CDCl3)に分析対象物質として実施例1~4でそれぞれ製造されたブロック共重合体および重合体を約10mg/ml程度の濃度に希薄して使用し、化学シフトはppmで表した。
【0062】
図1は実施例1~4で製造されたブロック共重合体のNMR分析結果を示すチャートである。
図1によれば、本発明による実施例1~4のブロック共重合体のNMR分析チャートでは、ポリラクチドピークとポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)ピークがいずれも観察された。
【0063】
また、実施例1~4のNMR分析結果チャートからポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)ピークの積分比を計算し、これを表3に示した。
【0064】
【0065】
図1によれば、「NMR分析におけるポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)の含有量」は、「ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)を実際に投入した量」と近似しているので、実施例1~4のブロック共重合体の製造方法で使用されたポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)オリゴマーはほとんどの反応物として使用されたことが類推される。
【0066】
2.GPC((Gel Permeation Chromatography)分析
実施例1~4のブロック共重合体および比較例1および2の重合体を、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)(Waters:Waters707)にかけることにより、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)をそれぞれ求めた。測定するブロック共重合体/重合体を4000ppmの濃度になるようにテトラヒドロフランに溶解させて、GPCに100μlを注入した。GPCの移動相にはテトラヒドロフランを使用し、1.0mL/分の流速で流入させ、分析は35℃で行った。カラムはWaters HR-05、1、2、4E の4個を直列に連結した。検出器としてはRI and PAD Detecterを用いて35℃で測定した。その結果を表4に示した。
【0067】
【0068】
前記表4によれば、比較例1および2のようにドデカノールが開始剤として使用された場合、ドデカノールの含有量が増加するほど重合体の数平均分子量および重量平均分子量が減少することを確認した。同様に、実施例1~4で製造されたポリラクチド-ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)ブロック共重合体の場合、ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)のオリゴマーに比べて分子量が大きくなったことを確認できた。また、投入されたポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)の含有量が増加するほどブロック共重合体の数平均分子量および重量平均分子量が減少することにより、ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)が開始剤の役割をすることを確認することができた。