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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-13
(45)【発行日】2023-10-23
(54)【発明の名称】オリゴマーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 7/04 20060101AFI20231016BHJP
   C07C 2/08 20060101ALI20231016BHJP
   C07C 11/02 20060101ALI20231016BHJP
【FI】
C07C7/04
C07C2/08
C07C11/02
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022534807
(86)(22)【出願日】2021-09-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-14
(86)【国際出願番号】 KR2021012030
(87)【国際公開番号】W WO2022050788
(87)【国際公開日】2022-03-10
【審査請求日】2022-06-08
(31)【優先権主張番号】10-2020-0113695
(32)【優先日】2020-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0114794
(32)【優先日】2021-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】キョン・ソグ・ユク
(72)【発明者】
【氏名】ミン・ホ・スン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・フン・ソン
(72)【発明者】
【氏名】ホン・ミン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ムン・スブ・ファン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ソク・イ
【審査官】阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-502088(JP,A)
【文献】国際公開第2020/171730(WO,A1)
【文献】特表2022-521320(JP,A)
【文献】特開2016-65051(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0237360(US,A1)
【文献】特表2015-527311(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 7/04
C07C 2/08
C07C 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単量体ストリームおよび溶媒ストリームを反応器に供給し、オリゴマー化反応させて反応生成物を製造するステップと、
前記反応器の排出ストリームを分離装置に供給して、未反応単量体を含む上部排出ストリームは反応器に供給し、下部排出ストリームは沈殿槽に供給するステップと、
前記沈殿槽で高分子を沈殿させて除去し、高分子が除去された分離装置の下部排出ストリームを高沸点分離塔に供給するステップと、
前記高沸点分離塔で下部排出ストリームから高沸点物質を除去し、オリゴマーを含む上部排出ストリームは溶媒分離塔に供給するステップと、
前記溶媒分離塔で溶媒とオリゴマーを分離するステップと、を含み、
前記単量体ストリームはエチレンを含み、前記オリゴマーはアルファオレフィンを含み、前記高分子はポリエチレンを含み、
前記反応器の排出ストリームは、液相の第1ストリームおよび気相の第2ストリームを含み、前記気相の第2ストリームは、凝縮器を経て第1ストリームとともに液相で分離装置に供給される、オリゴマーの製造方法。
【請求項2】
前記沈殿槽の内部温度は10℃~90℃であり、内部圧力は0.1kg/cm~3kg/cmである、請求項1に記載のオリゴマーの製造方法。
【請求項3】
前記沈殿槽での滞留時間は、2時間以上である、請求項1または2に記載のオリゴマーの製造方法。
【請求項4】
前記沈殿槽では、溶媒を含む上層液と、オリゴマーを含む下層液とに層分離され、上層液ストリームは溶媒分離塔に供給し、下層液ストリームは高沸点分離塔に供給する、請求項1からのいずれか一項に記載のオリゴマーの製造方法。
【請求項5】
前記溶媒分離塔から連結されて沈殿槽内の上層液が形成された領域まで延びて備えられた溶媒抽出ラインをさらに含み、
前記溶媒抽出ラインを介して溶媒を含む沈殿槽の上層液ストリームを溶媒分離塔に供給する、請求項に記載のオリゴマーの製造方法。
【請求項6】
前記沈殿槽の上層液ストリーム内の溶媒の含量は、90重量%以上である、請求項またはに記載のオリゴマーの製造方法。
【請求項7】
前記沈殿槽の下層液ストリーム内の高分子の含量は、10重量%以下である、請求項からのいずれか一項に記載のオリゴマーの製造方法。
【請求項8】
前記反応器の排出ストリーム内の高分子の含量に対する前記沈殿槽の下層液ストリーム内の高分子の含量比は、1:0.01~1:0.05である、請求項からのいずれか一項に記載のオリゴマーの製造方法。
【請求項9】
前記溶媒分離塔で分離された溶媒ストリームは、反応器に供給される、請求項1からのいずれか一項に記載のオリゴマーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年9月7日付けの韓国特許出願第10-2020-0113695号及び2021年8月30日付で出願された韓国特許出願第10-2021-0114794号に基づく優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、オリゴマーの製造方法に関し、より詳細には、オリゴマーの製造時に、少ないエネルギー費用で発生する高分子副生成物を除去し、溶媒の再使用を容易にするための効率的なオリゴマーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
アルファオレフィン(alpha-olefin)は、共単量体、洗浄剤、潤滑剤、可塑剤などに使用される重要な物質として商業的に広く使用され、特に、1-ヘキセンと1-オクテンは、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)の製造時に、ポリエチレンの密度を調節するための共単量体として多く使用されている。
【0004】
前記1-ヘキセンおよび1-オクテンのようなアルファオレフィンは、代表的に、エチレンのオリゴマー化反応により製造されている。前記エチレンオリゴマー化反応は、エチレンを反応物として使用して、触媒の存在下で、エチレンのオリゴマー化反応(三量体化反応または四量体化反応)により行われ、前記反応により生成された反応生成物は、目的とする1-ヘキセンおよび1-オクテンを含む多成分炭化水素混合物だけでなく、触媒反応中に副生成物として高分子が少量生成され、前記高分子が反応器内の液相の反応媒体に浮遊するが、時間が経つにつれて反応器内にファウリング現象によって蓄積されて所定の厚さで積もる問題が発生する。この場合、反応器の運転を中断(shut down)しなければならないため、運転時間の減少による生産量の減少だけでなく、洗浄過程で必要となる費用が増加する問題があった。
【0005】
これに対して、前記反応生成物内の高分子を除去し、反応物に対して多い量が使用される溶媒を回収して再使用するために、高沸点分離塔と溶媒分離塔を備える必要がある。この際、前記高沸点分離塔と溶媒分離塔に供給されるストリーム内の高分子の含量が高いほど、分離のためのエネルギー費用と時間が増加する問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、上記発明の背景技術で言及した問題を解決するために、オリゴマーを製造する過程で反応生成物内に浮遊する高分子を除去し、溶媒を回収して再使用し、オリゴマーを高純度で分離する際に、エネルギー費用を低減し、分離時間を短縮するための方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するための本発明の一実施形態によると、本発明は、単量体ストリームおよび溶媒ストリームを反応器に供給し、オリゴマー化反応させて反応生成物を製造するステップと、前記反応器の排出ストリームを分離装置に供給して、未反応単量体を含む上部排出ストリームは反応器に供給し、下部排出ストリームは沈殿槽に供給するステップと、前記沈殿槽で高分子を沈殿させて除去し、高分子が除去された分離装置の下部排出ストリームを高沸点分離塔に供給するステップと、前記高沸点分離塔で下部排出ストリームから高沸点物質を除去し、オリゴマーを含む上部排出ストリームは溶媒分離塔に供給するステップと、前記溶媒分離塔で溶媒とオリゴマーを分離するステップと、を含むオリゴマーの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のオリゴマーの製造方法によると、反応器でオリゴマー化反応により製造された反応生成物を高沸点分離塔および溶媒分離塔に供給する前に沈殿槽に供給することで、反応生成物内に含まれた高分子を除去し、高沸点分離塔および溶媒分離塔に供給されるストリーム内の高分子含量を下げることで、分離のための時間を短縮し、且つ省エネルギーを図ることができる。
【0009】
また、本発明は、前記沈殿槽で溶媒の含量が高い上層液ストリームを高沸点分離塔を経ずにすぐ溶媒分離塔に供給することで、高沸点分離塔に供給されるストリームの流量を減少させて、前記高沸点分離塔でのエネルギー使用量をより低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態によるオリゴマーの製造方法の工程フローチャートである。
図2】本発明の一実施形態によるオリゴマーの製造方法の工程フローチャートである。
図3】比較例によるオリゴマーの製造方法の工程フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の説明および特許請求の範囲にて使用されている用語や単語は、通常的もしくは辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則に則って本発明の技術的思想に合致する意味と概念に解釈すべきである。
【0012】
本発明において、用語「ストリーム(stream)」は、工程内の流体(fluid)の流れを意味し得、また、移動ライン(配管)内で流れる流体自体を意味し得る。具体的には、前記「ストリーム」は、各装置を連結する配管内で流れる流体自体および流体の流れを同時に意味し得る。また、前記流体は、気体(gas)、液体(liquid)を意味し得る。
【0013】
以下、本発明に関する理解を容易にするために、下記図1および図2を参照して、本発明をより詳細に説明する。
【0014】
本発明によると、オリゴマーの製造方法が提供される。前記オリゴマーの製造方法として、単量体ストリームおよび溶媒ストリームを反応器100に供給し、オリゴマー化反応させて反応生成物を製造するステップと、前記反応生成物を含む反応器100の排出ストリームを分離装置200に供給し、未反応単量体を含む上部排出ストリームは反応器100に供給し、下部排出ストリームは沈殿槽300に供給するステップと、前記沈殿槽300で高分子を沈殿させて除去し、高分子が除去された分離装置の下部排出ストリームを高沸点分離塔400に供給するステップと、前記高沸点分離塔400で下部排出ストリームから高沸点物質を除去し、オリゴマーを含む上部排出ストリームは溶媒分離塔500に供給するステップと、前記溶媒分離塔500で溶媒とオリゴマーを分離するステップと、を含むオリゴマーの製造方法を提供する。
【0015】
本発明の一実施形態によると、単量体ストリームおよび溶媒ストリームを反応器100に供給し、オリゴマー化反応させて反応生成物を製造することができる。
【0016】
前記反応器100は、触媒および溶媒の存在下で単量体をオリゴマー化反応させてオリゴマーを製造するためのものであることができる。
【0017】
また、前記単量体は、エチレンを含むことができる。具体的には、エチレン単量体を含む単量体ストリームが反応器100に供給され、オリゴマー化反応を経て、目的とするオリゴマーであるアルファオレフィンを製造することができる。この際、前記オリゴマー化反応は、反応器100の下部もしくは中部領域の反応媒体で行われ、触媒および助触媒の存在下で溶媒に溶解された液体状態で単量体のオリゴマー化反応が行われることができる。前記オリゴマー化反応は、単量体が小重合される反応を意味し得る。重合される単量体の個数に応じて、三量化(trimerization)、四量化(tetramerization)と称し、これをまとめて、多量化(multimerization)と称する。
【0018】
前記アルファオレフィンは、共単量体、洗浄剤、潤滑剤、可塑剤などに使用される重要な物質として商業的に広く使用され、特に、1-ヘキセンと1-オクテンは、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)の製造時に、ポリエチレンの密度を調節するための共単量体として多く使用される。前記1-ヘキセンおよび1-オクテンのようなアルファオレフィンは、例えば、エチレン単量体の三量体化反応または四量体化反応により製造することができる。
【0019】
前記単量体のオリゴマー化反応は、前記反応システムと通常の接触技術を応用して溶媒の存在または不在下で、均質液相反応、触媒が一部溶解されないか全部溶解されない形態であるスラリー反応、二相液体/液体反応、または生成物が主媒質として作用するバルク相反応またはガス相反応で行われることができる。
【0020】
前記触媒は、遷移金属供給源を含むことができる。前記遷移金属供給源は、例えば、クロム(III)アセチルアセトネート、クロム(III)クロライドテトラヒドロフラン、クロム(III)2-エチルヘキサノエート、クロム(III)トリス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオネート)、クロム(III)ベンゾイルアセトネート、クロム(III)ヘキサフルオロ-2,4-ペンタンジオネート、クロム(III)アセテートヒドロキシド、クロム(III)アセテート、クロム(III)ブチレート、クロム(III)ペンタノエート、クロム(III)ラウレートおよびクロム(III)ステアレートからなる群から選択される1種以上を含む化合物であることができる。
【0021】
前記助触媒は、例えば、トリメチルアルミニウム(trimethyl aluminium)、トリエチルアルミニウム(triethyl aluminium)、トリイソプロピルアルミニウム(triisopropyl aluminium)、トリイソブチルアルミニウム(triisobutyl aluminium)、エチルアルミニウムセスキクロライド(ethylaluminium sesquichloride)、ジエチルアルミニウムクロライド(diethylaluminium chloride)、エチルアルミニウムジクロライド(ethyl aluminium dichloride)、メチルアルミノキサン(methylaluminoxane)、修飾メチルアルミノキサン(modified methylaluminoxane)およびボレート(Borate)からなる群から選択される1種以上を含むことができる。
【0022】
このように、触媒および溶媒の存在下で単量体をオリゴマー化させる過程では、オリゴマー生成物の他に、副生成物としてポリエチレンのような高分子が生成されることができる。前記高分子は、反応器100内の液相の反応媒体に浮遊するが、時間が経つにつれて、反応器100内に、ファウリング現象によって蓄積され、所定の厚さで積もる問題が発生する。この場合、反応器100の運転を中断(shut down)しなければならないため、運転時間の減少による生産量の減少だけでなく、洗浄過程で必要となる費用が増加する問題があった。
【0023】
また、前記反応生成物内の高分子を除去し、反応物に対して多い量が使用される溶媒を回収して再使用するために、高沸点分離塔400と溶媒分離塔500を備える必要がある。この際、前記高沸点分離塔400と溶媒分離塔500に供給されるストリーム内の高分子の含量が高いほど、分離のためのエネルギー費用と時間が増加する問題がある。
【0024】
これに対して、本発明では、前記反応生成物内の高分子を除去するための沈殿槽300を備えることで、高沸点分離塔400と溶媒分離塔500で分離のために使用されるエネルギー費用を低減し、時間を短縮することで、前記のような問題を解決した。これとともに、前記沈殿槽300で溶媒の含量が高い上層液ストリームを高沸点分離塔400を経ずにすぐ溶媒分離塔500に供給することで、高沸点分離塔400に供給される流量を下げて、高沸点分離塔400でのエネルギー使用量をより低減することができた。
【0025】
前記単量体ストリームは、反応器100の下部に備えられた単量体ストリーム供給ラインを介して反応器100に供給されることができる。この際、前記単量体は、気体状態で反応器100に供給されることができる。具体的には、気相の単量体を含む単量体ストリームは、反応器100に供給されることができ、前記気相の単量体は、反応器100に供給される溶媒に溶解され、液相でオリゴマー化反応が行われることができる。
【0026】
前記単量体ストリームは、ナフサ熱分解工程(Naphtha Cracking Center、NCC)で供給されることができる。前記ナフサ熱分解工程は、ナフサ、C2およびC3炭化水素化合物およびプロパンなどをそれぞれ供給原料として投入し、それぞれの熱分解炉で熱分解を実施するステップと、それぞれの熱分解炉で熱分解され、水素、C1、C2およびC3以上の炭化水素化合物を含む熱分解ガスを冷却するステップと、冷却した熱分解ガスを圧縮するステップと、水素、C1、C2およびC3以上の炭化水素化合物を含む熱分解圧縮ストリームを精製するステップと、を含んで実施されることができる。この際、前記単量体ストリームは、ナフサ熱分解炉から分離されるエチレン単量体(C2)を含むストリームであることができる。
【0027】
前記溶媒ストリームは、反応器100の下部側面に備えられた溶媒ストリーム供給ラインを介して反応器100に供給されることができる。前記溶媒は、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、オクタン、シクロオクタン、デカン、ドデカン、ベンゼン、キシレン、1,3,5-トリメチルベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンおよび卜リクロロベンゼンからなる群から選択される1種以上を含むことができる。前記溶媒は、場合に応じて、2種を混合して使用することができる。これにより、より高い温度で気相のエチレン単量体を液化することができ、気相のエチレン単量体が溶媒に溶解される溶解率を向上させることができる。
【0028】
前記反応器100でオリゴマー化反応時に発生する副生成物、例えば、高分子は、前記反応器100の排出ストリーム内に0.1重量%~5重量%、0.1重量%~4重量%または1重量%~3重量%の含量で含まれていることができる。
【0029】
前記反応器100の排出ストリームは、液相の第1ストリームおよび気相の第2ストリームを含むことができる。例えば、前記反応器100で、オリゴマー化反応により、目的とするオリゴマー生成物が含まれた液相の反応生成物は、第1ストリームとして反応器100の下部側面、例えば、前記溶媒供給ラインが形成される反応器100の下部側面と対向する方向に離隔して備えられた生成物排出ラインを介して排出されることができる。例えば、前記生成物排出ラインは、溶媒供給ラインと同じ高さに形成されることができる。また、前記生成物排出ラインは、反応器100から分離装置200に連結されて、反応生成物を分離装置200に移送することができる。
【0030】
また、前記反応器100で、溶媒に溶解されずオリゴマー化反応に参加することができなかった気相の未反応単量体を含む第2ストリームは、反応器100の上部に備えられた未反応単量体排出ラインを介して排出されることができる。例えば、前記気相の第2ストリームは、凝縮器110を経て液相に凝縮され、第1ストリームとともに分離装置200に供給されることができる。この際、前記第1ストリームと第2ストリームは、別のラインで分離装置200に供給されるか、一つのラインに合流させた後、分離装置200に供給されることができる。
【0031】
本発明の一実施形態によると、前記反応器100の排出ストリームは、分離装置200に供給され、反応生成物内の未反応単量体を分離することができる。具体的には、前記分離装置200では、供給される反応生成物を含む反応器100の排出ストリームから未反応単量体を上部排出ストリームとして分離し、反応器100に循環させて再使用することができる。この際、前記分離装置200の上部排出ストリームは、反応器100への流動性を確保するために、圧縮機210を経た後、反応器100に循環することができる。また、前記分離装置200の下部排出ストリームは、未反応単量体がほとんど除去された反応生成物として沈殿槽300に供給されることができる。
【0032】
前記分離装置200は、上部に、未反応単量体、例えば、単量体および二量体を含む低沸点物質を選択的に分離するために、運転温度および運転圧力が制御されることができる。例えば、前記分離装置200の運転温度は、20℃~250℃、30℃~200℃または40℃~160℃であることができ、運転圧力は、10bar.g~30bar.g、10bar.g~25bar.gまたは10bar.g~20bar.gであることができる。
【0033】
本発明の一実施形態によると、前記分離装置200の下部排出ストリームは、沈殿槽300に供給され、前記沈殿槽300で反応生成物内の高分子を除去することができる。具体的には、前記沈殿槽300では、反応生成物内に浮遊する高分子を沈殿させ、前記沈殿槽300の下部に排出させて除去することができる。
【0034】
前記沈殿槽300は、前記反応生成物内の高分子を沈殿させて除去するために、内部温度および内部圧力を制御することができる。例えば、前記沈殿槽300の内部温度は、10℃~90℃、10℃~85℃または20℃~80℃に制御し、内部圧力は、0.1kg/cm~3kg/cm、0.5kg/cm~2kg/cmまたは0.5kg/cm~1.5kg/cmに制御することができる。この際、前記沈殿槽300の内部圧力は、不活性気体を用いて制御することができる。前記不活性気体は、例えば、窒素(N)およびアルゴン(Ar)からなる群から選択される1種以上を含むことができ、具体的な例として、前記不活性気体は、窒素(N)であることができる。
【0035】
また、前記沈殿槽300は、前記反応生成物内の高分子を沈殿させて除去するために、滞留時間を制御することができる。例えば、前記分離装置200の下部排出ストリームを沈殿槽300に供給し、前記沈殿槽300で滞留させる時間は、2時間以上、2時間~10時間または2時間~6時間であることができる。
【0036】
このように、前記沈殿槽300の内部温度、内部圧力および滞留時間を前記のように制御することで、分離装置200の下部排出ストリーム内に含まれた高分子を効果的に沈殿させて除去することができる。この際、前記高分子は、重量平均分子量が80,000g/mol~300,000g/mol、100,000g/mol~200,000g/molまたは100,000g/mol~150,000g/molであることができる。
【0037】
これとともに、前記沈殿槽300の内部温度、内部圧力および滞留時間を前記のように制御して高分子を除去する過程で、沈殿槽300内では、溶媒の含量が高い上層液と、オリゴマーの含量が高い下層液とに層分離されることができる。前記沈殿槽300で分離された上層液は、溶媒の含量が高く、溶媒以外の不純物をほとんど含まないものであり、高沸点分離塔400に供給されず、すぐ溶媒分離塔500に供給されることができる。この際、前記沈殿槽300の上層液内の溶媒の含量は、90重量%以上、90重量%~100%または95重量%~100重量%であることができる。このように、沈殿槽300で高分子を除去するとともに、溶媒以外の不純物がほとんど含まれていない上層液を高沸点分離塔400を経ずに溶媒分離塔500にすぐ供給することで、高沸点分離塔400に供給される流量が減少するに伴い、高沸点分離塔400で分離のためのエネルギー費用が低減することができる。
【0038】
前記沈殿槽300で層分離される上層液と下層液は、分離装置200の下部排出ストリーム内に含まれた溶媒およびオリゴマーの含量に応じて相違することができ、前記沈殿槽300の上層液ストリームを溶媒分離塔500に供給するために、溶媒分離塔500から連結されて沈殿槽300内の上層液が形成された領域まで延びて備えられた溶媒抽出ライン310をさらに備えることができる。この際、前記溶媒抽出ライン310の任意の領域にはポンプ320が設置され、沈殿槽300の上層液ストリームを溶媒分離塔500に移送することができる。
【0039】
また、前記沈殿槽300の下層液ストリームは、オリゴマーの含量が高いものであり、高沸点分離塔400に供給されることができる。この際、前記沈殿槽300の下層液ストリーム内の高分子の含量は、10重量%以下、0.1重量%~5重量%または0.1重量%~5重量%であることができる。また、前記反応器100の排出ストリーム内の高分子の含量に対する前記沈殿槽300の下層液ストリーム内の高分子の含量比は、1:0.01~1:0.05、1:0.01~1:0.04または1:0.01~1:0.03であることができる。これは、前記反応器100の排出ストリーム内に含まれた高分子の95%以上が沈殿槽300で除去されたということを意味し得、これにより、高沸点分離塔400とともに溶媒分離塔500で分離時に必要となるエネルギー費用を低減し、時間を短縮することができるということが分かる。
【0040】
本発明の一実施形態によると、前記沈殿槽300の下層液ストリームを高沸点分離塔400に供給し、前記高沸点分離塔400で沈殿槽300の下層液ストリーム内に含まれた高沸点物質を蒸留により除去することができる。この際、前記沈殿槽300の下層液のみを高沸点分離塔400に供給することから、高沸点分離塔400に供給される流量が減少し、前記下層液内の高分子の含量が少ないため、高沸点分離塔400での分離のためのエネルギー費用が低減し、期間が短縮することができ、
【0041】
前記高沸点分離塔400で、高沸点物質は、下部排出ストリームから除去し、残りの成分、すなわち、オリゴマーの含量が高い上部排出ストリームは、溶媒分離塔500に供給してオリゴマーを精製することができる。
【0042】
本発明の一実施形態によると、前記溶媒分離塔500では、溶媒とオリゴマーの沸点差により、溶媒とオリゴマーを分離することができる。具体的には、前記沈殿槽300の上層液ストリームと高沸点分離塔400の上部排出ストリームは、溶媒分離塔500に供給され、前記溶媒分離塔500で溶媒とオリゴマーを分離することができる。この際、前記オリゴマーが、沸点が異なる2種以上のオリゴマーを含む場合、前記溶媒分離塔500は、2機以上が備えられることができる。例えば、沸点が異なる2種以上のオリゴマーを含む場合、第1溶媒分離塔で高沸点オリゴマーを分離し、第2溶媒分離塔で溶媒と低沸点オリゴマーを分離することができる。
【0043】
前記溶媒分離塔500で分離した溶媒ストリームは、溶媒分離塔500の下部に排出され、これは、反応器100に循環させて再使用することができる。これにより、原料費用を低減してオリゴマー生成物のコストダウンを図り、競争力を確保することができる。
【0044】
本発明の一実施形態によると、オリゴマーの製造方法は、必要に応じて、バルブ(図示せず)、凝縮器(図示せず)、再沸器(図示せず)、ポンプ(図示せず)、分離装置(図示せず)、圧縮機(図示せず)および混合器(図示せず)など、オリゴマーの製造に必要な装置をさらに設置することができる。
【0045】
以上、本発明によるオリゴマーの製造方法ついて記載および図面に図示しているが、前記の記載および図面の図示は、本発明を理解するための核心的な構成のみを記載および図示したものであり、前記記載および図面に図示した工程および装置の他に、別に記載および図示していない工程および装置は、本発明によるオリゴマーの製造方法を実施するために、適切に応用して用いられることができる。
【0046】
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明する。しかし、下記の実施例は、本発明を例示するためのものであって、本発明の範疇および技術思想の範囲内で様々な変更および修正が可能であることは、通常の技術者にとって明白であり、これらのみに本発明の範囲が限定されるものではない。
【0047】
実施例
実施例1
下記の図1に図示されている工程フローチャートにしたがってアルファオレフィンを製造した。
【0048】
具体的には、反応器100の下部に気相のエチレン単量体ストリームを供給し、下部側面にメチルシクロヘキサンを供給し、触媒および助触媒を供給してエチレン単量体をオリゴマー化反応させて、オリゴマーであるアルファオレフィンを含む反応生成物を製造した。この際、前記反応生成物内に含まれた高分子の含量は1.9重量%と確認 した。
【0049】
前記反応器100の排出ストリームは、分離装置200に供給した。具体的には、気相の第2ストリームは、凝縮器110を介して液相に凝縮させた後、分離装置200に供給し、液相の第1ストリームはすぐ分離装置200に供給した。
【0050】
前記分離装置200で気相の未反応単量体を含む上部排出ストリームは、圧縮機210を通過して反応器100に供給し、下部排出ストリームは、沈殿槽300に供給した。
【0051】
前記沈殿槽300から供給された分離装置200の下部排出ストリームを内部温度を40℃に制御し、窒素(N)を供給して、内部圧力は1kg/cmに制御した状態で4時間滞留させて層分離させた。この際、沈殿された高分子は、下部に排出させて除去した後、上層液と下層液は、8.0kg/hrの流量で高沸点分離塔400に供給した。この際、上層液内の溶媒の含量は98重量%であり、下層液内の高分子の含量は0.7重量%であると確認された。
【0052】
前記高沸点分離塔400では、下部に高沸点物質を除去し、上部排出ストリームは、溶媒分離塔500に供給した。この際、前記高沸点分離塔400で、エネルギー使用量は、2,480kcal/hrと確認された。
【0053】
前記溶媒分離塔500では、側部にオリゴマーであるアルファオレフィンを回収し、下部排出ストリームは、反応器100に循環させた。この際、前記溶媒分離塔500で、エネルギー使用量は、2,430kcal/hrと確認された。
【0054】
実施例2
下記図2に図示されている工程フローチャートにしたがってアルファオレフィンを製造した。
【0055】
具体的には、反応器100の下部に気相のエチレン単量体ストリームを供給し、下部側面にメチルシクロヘキサンを供給し、触媒および助触媒を供給して、エチレン単量体をオリゴマー化反応させてオリゴマーであるアルファオレフィンを含む反応生成物を製造した。この際、前記反応生成物内に含まれた高分子の含量は1.9重量%と確認した。
【0056】
前記反応器100の排出ストリームは、分離装置200に供給した。具体的には、気相の第2ストリームは、凝縮器110を介して液相に凝縮させた後、分離装置200に供給し、液相の第1ストリームはすぐ分離装置200に供給した。
【0057】
前記分離装置200で気相の未反応単量体を含む上部排出ストリームは、圧縮機210を通過して反応器100に供給し、下部排出ストリームは、沈殿槽300に供給した。
【0058】
前記沈殿槽300に供給された分離装置200の下部排出ストリームを、内部温度を20℃に制御し、窒素(N)を供給して、内部圧力は1kg/cmに制御した状態で2時間滞留させて層分離させた。この際、沈殿された高分子は、下部に排出させて除去し、溶媒の含量が97重量%である上層液は、3.0kg/hrの流量で溶媒抽出ライン310を介してポンプ320を用いて溶媒分離塔500に供給し、高分子の含量が0.25重量%である下層液は、3.5kg/hrの流量で高沸点分離塔400に供給した。
【0059】
前記高沸点分離塔400では、下部に高沸点物質を除去し、上部排出ストリームは、溶媒分離塔500に供給した。この際、前記高沸点分離塔400で、エネルギー使用量は、2,200kcal/hrと確認された。
【0060】
前記溶媒分離塔500では、側部にオリゴマーであるアルファオレフィンを回収し、下部排出ストリームは、反応器100に循環させた。この際、前記溶媒分離塔500で、エネルギー使用量は、2,400kcal/hrと確認された。
【0061】
実施例3
前記実施例2で、前記沈殿槽300の内部温度を40℃に制御した以外は、前記実施例2と同じ方法で行った。
【0062】
この際、前記沈殿槽300で沈殿された高分子は、下部に排出させて除去し、溶媒の含量が95重量%である上層液は、3.0kg/hrの流量で溶媒抽出ライン310を介してポンプ320を用いて溶媒分離塔500に供給し、高分子の含量が0.34重量%である下層液は、3.5kg/hrの流量で高沸点分離塔400に供給した。
【0063】
また、前記高沸点分離塔400で、エネルギー使用量は、2,050kcal/hrと、前記溶媒分離塔500で、エネルギー使用量は、2,350kcal/hrと確認された。
【0064】
実施例4
前記実施例2で、前記沈殿槽300の内部温度を80℃に制御した以外は、前記実施例2と同じ方法で行った。
【0065】
この際、前記沈殿槽300で沈殿された高分子は、下部に排出させて除去し、溶媒の含量が92重量%である上層液は、3.0kg/hrの流量で溶媒抽出ライン310を介してポンプ320を用いて溶媒分離塔500に供給し、高分子の含量が0.43重量%である下層液は、3.5kg/hrの流量で高沸点分離塔400に供給した。
【0066】
また、前記高沸点分離塔400で、エネルギー使用量は、2,030kcal/hrと、前記溶媒分離塔500で、エネルギー使用量は、2,370kcal/hrと確認された。
【0067】
実施例5
前記実施例3で、前記沈殿槽300の滞留時間を4時間に制御した以外は、前記実施例3と同じ方法で行った。
【0068】
この際、前記沈殿槽300で沈殿された高分子は、下部に排出させて除去し、溶媒の含量が98重量%である上層液は、3.0kg/hrの流量で溶媒抽出ライン310を介してポンプ320を用いて溶媒分離塔500に供給し、高分子の含量が0.21重量%である下層液は、3.5kg/hrの流量で高沸点分離塔400に供給した。
【0069】
また、前記高沸点分離塔400で、エネルギー使用量は、2,100kcal/hrと、前記溶媒分離塔500で、エネルギー使用量は、2,350kcal/hrと確認された。
【0070】
実施例6
前記実施例3で、前記沈殿槽300の滞留時間を6時間に制御した以外は、前記実施例3と同じ方法で行った。
【0071】
この際、前記沈殿槽300で沈殿された高分子は、下部に排出させて除去し、溶媒の含量が99重量%である上層液は、3.0kg/hrの流量で溶媒抽出ライン310を介してポンプ320を用いて溶媒分離塔500に供給し、高分子の含量が0.18重量%である下層液は、3.5kg/hrの流量で高沸点分離塔400に供給した。
【0072】
また、前記高沸点分離塔400で、エネルギー使用量は、2,050kcal/hrと、前記溶媒分離塔500で、エネルギー使用量は、2,330kcal/hrと確認された。
【0073】
前記実施例1~実施例6で、分離装置200の下部排出ストリームを高沸点分離塔400に供給する前に、沈殿槽300に供給して高分子を除去することで、後段の高沸点分離塔400および溶媒分離塔500で使用されるエネルギーを低減することができるということを確認した。
【0074】
特に、前記沈殿槽300で、上層液を下層液とともに高沸点分離塔400に供給せず、上層液を溶媒抽出ライン310を介してポンプ320を用いて溶媒分離塔500に別に供給した実施例2~実施例6の場合に、エネルギー低減効果が大きいことを確認した。
【0075】
比較例
比較例1
下記図3に図示されている工程フローチャートにしたがってアルファオレフィンを製造した。
【0076】
具体的には、反応器100の下部に気相のエチレン単量体ストリームを供給し、下部側面にメチルシクロヘキサンを供給し、触媒および助触媒を供給して、エチレン単量体をオリゴマー化反応させてオリゴマーであるアルファオレフィンを含む反応生成物を製造した。この際、前記反応生成物内に含まれた高分子の含量は1.9重量%と確認した。
【0077】
前記反応器100の排出ストリームは、分離装置200に供給した。具体的には、気相の第2ストリームは、凝縮器110を介して液相に凝縮させた後、分離装置200に供給し、液相の第1ストリームはすぐ分離装置200に供給した。
【0078】
前記分離装置200で気相の未反応単量体を含む上部排出ストリームは、圧縮機210を通過して反応器100に供給し、高分子の含量が2.2重量%である下部排出ストリームは、10kg/hrの流量で高沸点分離塔400に供給した。
【0079】
前記高沸点分離塔400では、下部に高沸点物質を除去し、上部排出ストリームは、溶媒分離塔500に供給した。この際、前記高沸点分離塔400で、エネルギー使用量は、3,800kcal/hrと確認された。
【0080】
前記溶媒分離塔500では、側部にオリゴマーであるアルファオレフィンを回収し、下部排出ストリームは、反応器100に循環させた。この際、前記溶媒分離塔500で、エネルギー使用量は、2,500kcal/hrと確認された。
【0081】
前記比較例1は、前記実施例1~実施例6に比べて、高沸点分離塔400に供給されるストリームの流量および高分子の含量が増加し、高沸点分離塔400および溶媒分離塔500でのエネルギー使用量が増加したことを確認することができる。
図1
図2
図3