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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-13
(45)【発行日】2023-10-23
(54)【発明の名称】チップの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20231016BHJP
【FI】
H01L21/78 Q
H01L21/78 F
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019079924
(22)【出願日】2019-04-19
(65)【公開番号】P2020178064
(43)【公開日】2020-10-29
【審査請求日】2022-02-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(72)【発明者】
【氏名】山本 直子
【審査官】中田 剛史
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-014450(JP,A)
【文献】特開2014-053526(JP,A)
【文献】特開2010-087141(JP,A)
【文献】特開2012-079800(JP,A)
【文献】特開2014-179434(JP,A)
【文献】特開2010-135601(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に複数の分割予定ラインを備える被加工物を各分割予定ラインに沿って分割して該被加工物からチップを製造するチップの製造方法であって、
該被加工物の裏面側が露出する様に該被加工物の該表面側が保持テーブルで保持された該被加工物に対して切削ブレードを切り込ませて、各分割予定ラインに沿って該被加工物の該裏面側に該被加工物の該表面には至らない切削溝を形成する切削ステップと、
該被加工物にエキスパンドシートを貼り付ける貼り付けステップと、
該貼り付けステップ及び該切削ステップの後、該エキスパンドシートを拡張することで各分割予定ラインに沿って該被加工物を分割して該被加工物からチップを形成する分割ステップと、を備え、
該貼り付けステップは、該切削ステップの前に行われ、
該貼り付けステップでは、該被加工物の該表面側と、環状フレームの一面と、に該エキスパンドシートを貼り付けて、被加工物ユニットを形成し、
該切削ステップでは、該エキスパンドシートを介して該被加工物の該表面側が該保持テーブルで保持された状態で、該被加工物に該切削溝を形成し、
該被加工物は、炭化ケイ素基板と、該炭化ケイ素基板の一面に設けられ該被加工物の該裏面側に位置する金属層とを含み、
該切削ステップでは、該切削ブレードを該被加工物の該裏面側から切り込ませて該切削溝を形成することを特徴とするチップの製造方法。
【請求項2】
該保持テーブルは、少なくとも一部が表面から裏面まで透明な保持部材を有し、
該切削ステップの前に、可視光用カメラで該保持部材を介して該被加工物の該表面を撮像して少なくとも1つの分割予定ラインを検出する切削位置検出ステップを更に備えることを特徴とする、請求項1に記載のチップの製造方法。
【請求項3】
該切削ブレードは、一対の傾斜面又は曲面を外周部に有し、
該切削ステップでは、該切削ブレードで該被加工物を切削することを特徴とする、請求項1又は2に記載のチップの製造方法。
【請求項4】
該被加工物は、交互に積層された絶縁層と配線層とを含む回路層を該表面側に有し、
該切削ステップでは、該回路層に至らない該切削溝を該被加工物に形成することを特徴とする、請求項1からのいずれかに記載のチップの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に複数の分割予定ラインを備える被加工物を各分割予定ラインに沿って分割して、被加工物からチップを製造するチップの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機やパーソナルコンピュータに代表される電子機器では、電子回路等のデバイスを有するデバイスチップが使用される。デバイスチップは、例えば、シリコン等の半導体材料で形成されたウェーハの表面側を分割予定ライン(ストリート)で複数の領域に区画し、各領域にデバイスを形成した後、この分割予定ラインに沿ってウェーハを分割することで製造される。
【0003】
ウェーハに代表される板状の被加工物をデバイスチップ等の小片へと分割する際には、例えば、レーザー加工装置が用いられる。具体的には、被加工物を透過する波長を有するレーザービームの集光点を被加工物の内部に位置付ける様に、被加工物の分割予定ラインに沿ってレーザービームを照射して、被加工物の内部に改質層を形成した後、被加工物に外力を付与して分割する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかし、被加工物が比較的厚い場合には、被加工物の厚さ方向で複数の改質層を形成した上で、更に、ブレーキング装置を利用して各ストリートに外力を付与する必要があるので、被加工物の分割に時間を要する場合がある。また、設計されたデバイスチップのサイズが比較的小さい場合にも、被加工物の分割に時間を要する場合がある。
【0005】
ところで、レーザー加工装置に代えて、切削装置を用いて被加工物を分割する場合がある。切削装置は、回転軸となるスピンドルを備えており、このスピンドルには切削ブレードと呼ばれる環状の砥石工具が装着される。切削ブレードを高速に回転させた上で、分割予定ラインに沿って被加工物に切り込ませることで、被加工物は裏面から表面まで切断されて複数のデバイスチップへと分割される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第3408805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、切削ブレードを用いて被加工物を分割する場合には、切削によって被加工物に形成される切削溝の幅(即ち、カーフ幅)と、切削により発生するチッピングのサイズとを考慮して、分割予定ラインの幅を予め設定する必要がある。特に、被加工物の表面側にデバイスが形成される場合には、表面側に形成されるカーフ幅を考慮して、分割予定ラインの幅やデバイスのレイアウト等を設計する必要がある。
【0008】
分割予定ラインの幅は、例えば、被加工物1つ当たりのチップの取り数に影響する。分割予定ラインの幅が大きいほど、被加工物1つ当たりのチップの取り数は減少する。それゆえ、被加工物1つ当たりのチップ取り数を増加させるためには、分割予定ラインの幅を狭くする必要がある。
【0009】
本発明は係る問題点に鑑みてなされたものであり、切削装置を用いる場合でも、カーフ幅を小さくできるチップの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、表面に複数の分割予定ラインを備える被加工物を各分割予定ラインに沿って分割して該被加工物からチップを製造するチップの製造方法であって、該被加工物の裏面側が露出する様に該被加工物の該表面側が保持テーブルで保持された該被加工物に対して切削ブレードを切り込ませて、各分割予定ラインに沿って該被加工物の該裏面側に該被加工物の該表面には至らない切削溝を形成する切削ステップと、該被加工物にエキスパンドシートを貼り付ける貼り付けステップと、該貼り付けステップ及び該切削ステップの後、該エキスパンドシートを拡張することで各分割予定ラインに沿って該被加工物を分割して該被加工物からチップを形成する分割ステップと、を備え、該貼り付けステップは、該切削ステップの前に行われ、該貼り付けステップでは、該被加工物の該表面側と、環状フレームの一面と、に該エキスパンドシートを貼り付け、該切削ステップでは、該エキスパンドシートを介して該被加工物の該表面側が該保持テーブルで保持された状態で、該被加工物に該切削溝を形成し、該被加工物は、炭化ケイ素基板と、該炭化ケイ素基板の一面に設けられ該被加工物の該裏面側に位置する金属層とを含み、該切削ステップでは、該切削ブレードを該被加工物の該裏面側から切り込ませて該切削溝を形成するチップの製造方法が提供される。
【0011】
た、好ましくは、該保持テーブルは、少なくとも一部が表面から裏面まで透明な保持部材を有し、チップの製造方法は、該切削ステップの前に、可視光用カメラで該保持部材を介して該被加工物の該表面を撮像して少なくとも1つの分割予定ラインを検出する切削位置検出ステップを更に備える。
【0013】
た、好ましくは、該切削ブレードは、一対の傾斜面又は曲面を外周部に有し、該切削ステップでは、該切削ブレードで該被加工物を切削する。また、好ましくは、該被加工物は、交互に積層された絶縁層と配線層とを含む回路層を該表面側に有し、該切削ステップでは、該回路層に至らない該切削溝を該被加工物に形成する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様に係る切削ステップでは、各分割予定ラインに沿って被加工物の表面に至らない切削溝を形成する。更に、貼り付けステップでは、被加工物にエキスパンドシートを貼り付ける。そして、貼り付けステップ及び切削ステップの後の分割ステップでは、エキスパンドシートを拡張することで各分割予定ラインに沿って被加工物を分割して被加工物からチップを形成する。
【0015】
この様に、切削ステップでは、被加工物の表面を切削せずに被加工物を分割するので、被加工物を表面から裏面まで切断する場合に比べて、表面側のカーフ幅を小さくできる。それゆえ、分割予定ラインの幅を狭くできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1(A)は被加工物の斜視図であり、図1(B)は被加工物ユニットの斜視図である。
図2】切削装置の斜視図である。
図3図3(A)は保持ステップでの被加工物等の一部断面側面図であり、図3(B)は切削位置検出ステップでの被加工物等の一部断面側面図である。
図4図4(A)は切削ステップでの被加工物等の一部断面側面図であり、図4(B)は使用前の切削ブレードの断面図であり、図4(C)は一定時間使用後の切削ブレードの断面図である。
図5図5(A)は第1の深さの切削溝を有する被加工物の一部の断面図であり、図5(B)は第2の深さの切削溝を有する被加工物の一部の断面図である。
図6図6(A)はテープ拡張装置の一部断面側面図であり、図6(B)は分割ステップでの被加工物等の一部断面側面図である。
図7】複数のチップの断面図である。
図8】第1実施形態のチップの製造方法のフロー図である。
図9】第2実施形態のチップの製造方法のフロー図である。
図10図10(A)は被加工物を含む積層体の斜視図であり、図10(B)は被加工物から表面保護膜を剥離する様子を示す斜視図である。
図11】第3実施形態に係る被加工物ユニットの斜視図である。
図12】第3実施形態の切削装置の斜視図である。
図13】Y軸移動テーブル等の斜視図である。
図14図14(A)は切削装置の一部の断面図であり、図14(B)は図14(A)の領域Aを拡大した断面図である。
図15】第3の深さの切削溝を有する被加工物の一部の断面図である。
図16図16(A)は被加工物を含む積層体の斜視図であり、図16(B)は被加工物から表面保護膜を剥離する様子を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
添付図面を参照して、本発明の一態様に係る実施形態について説明する。まず、被加工物11の構成例について説明する。図1(A)は、被加工物11の斜視図である。被加工物11は、略円盤形状を有し、表面11a及び裏面11bを備える。
【0018】
被加工物11は、シリコン(Si)で形成された基板11c(図5(A)等参照)を有する。被加工物11の表面11a側には、基板11cに接する様に、回路層11d(図5(A)等参照)が形成されている。回路層11dは、交互に積層された低誘電率絶縁体層(所謂、Low-k材料層と呼ばれる絶縁層)と配線層とを含む。
【0019】
被加工物11の表面11a側は、互いに交差するように格子状に配列された複数の分割予定ライン(ストリート)15によって複数の領域に区画されている。複数の領域の各々には、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)、LED(Light Emitting Diode)等の複数のデバイス13が存在する。各デバイス13は、上述の基板11c及び回路層11dで構成されている。
【0020】
なお、基板11cの材質、形状、構造、大きさ等に制限はない。例えば、基板11cは、他の半導体(GaAs、InP、GaN等)、サファイア、ガラス、セラミックス、樹脂、複酸化物(LiNbO、LiTaO)等の材料によって形成されていてもよい。また、デバイス13の種類、数量、形状、構造、大きさ、配置等にも制限はない。
【0021】
被加工物11を加工する際には、まず、樹脂等の材料で形成された円形のダイシングテープ17によって、被加工物11と金属製の環状フレーム19とを一体化して被加工物ユニット21を形成する。図1(B)は、被加工物ユニット21の斜視図である。
【0022】
環状フレーム19は、被加工物11の径よりも大きな円形の開口部を有しており、被加工物11は、この開口部に配置されている。被加工物11の表面11a側と環状フレーム19の一面とには、ダイシングテープ17が接着している。
【0023】
ダイシングテープ17は、環状フレーム19の開口よりも大きい径を有する。ダイシングテープ17は、伸張性を有するエキスパンドシートであり、引っ張り応力に対して容易に変形可能である。
【0024】
ダイシングテープ17は、例えば、樹脂で形成された基材層に、糊層(粘着層)が積層された樹脂製のフィルムである。基材層は、ポリオレフィン(PO)やポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタラート(PET)等の樹脂で形成されており、粘着層は、ゴム系、アクリル系、シリコーン(silicone)系等の樹脂で形成されている。
【0025】
粘着層は、例えば、紫外線硬化型の樹脂であり、基材層の一面の全体に設けられている。紫外線硬化型の樹脂は、紫外線が照射される前は強い粘着力を有するが、一度、紫外線(UV)が照射されると、粘着力が低下する。例えば、紫外線が透過可能な基材層を介して粘着層に紫外線を照射すると、被加工物11をダイシングテープ17から容易に剥離できる。
【0026】
被加工物11を各分割予定ライン15に沿って加工して分割することにより、各々デバイス13を有する複数のチップ23(図7参照)(即ち、デバイスチップ)が製造される。被加工物11の加工には種々の方法を用いることができるが、例えば、切削ブレードで分割予定ライン15に沿って被加工物11を切削する切削装置2が用いられる。
【0027】
図2は、切削装置2の斜視図である。なお、以下の説明で用いられるX軸方向(加工送り方向)、Y軸方向(割り出し送り方向)、及びZ軸方向(高さ方向、切り込み送り方向)は、互いに垂直である。
【0028】
切削装置2は、各構造を支持する基台4を備える。基台4の上面の一部には、X軸移動ユニット10が設けられている。X軸移動ユニット10は、X軸方向に平行な一対のX軸ガイドレール12を有する。各X軸ガイドレール12は、基台4の上面に固定されている。
【0029】
各X軸ガイドレール12には、X軸移動テーブル14がスライド可能に取り付けられている。X軸移動テーブル14の裏面側(下面側)には、ナット部(不図示)が設けられており、このナット部には、X軸ガイドレール12と平行に配置されたX軸ボールネジ16が回転可能な態様で結合されている。
【0030】
X軸ボールネジ16の一端には、X軸パルスモータ18が連結されている。X軸パルスモータ18でX軸ボールネジ16を回転させれば、X軸移動テーブル14は、X軸ガイドレール12に沿ってX軸方向に移動する。
【0031】
X軸移動テーブル14の上面側の略中央には、円筒形状の支持台20が設けられている。また、X軸移動テーブル14の上面側の四隅には、角柱形状の4本の支持柱22が固定されており、支持柱22の上方には、矩形形状のテーブルカバー24が固定されている。
【0032】
テーブルカバー24の上面側には、被加工物11を吸引して保持するためのチャックテーブル(保持テーブル)26が設けられている。ここで、図3(A)を参照して、チャックテーブル26の構造について説明する。
【0033】
チャックテーブル26は、ステンレス等の金属材料でなる円筒形状の枠体26bを有する。枠体26bの上部には、略円盤形状の凹部が形成されている。この凹部の底部には、それぞれ凹部の径方向に沿って直線状に形成された複数の底部流路26c1が形成されている。また、凹部の底部の中央部には、凹部の底部から枠体26bの裏面まで枠体26bを貫通する中央流路26c2が形成されている。
【0034】
枠体26bの凹部には、円盤形状の保持部材26dが嵌め込まれており、保持部材26dは接着剤等により凹部に固定されている。保持部材26dは、ポーラスセラミックス等の多孔質部材で形成されたポーラス板であり、底部流路26c1及び中央流路26c2を通じて、エジェクタ等を含む吸引源28aに接続されている。
【0035】
底部流路26c1及び中央流路26c2と、吸引源28aとの間には、バルブ28bが設けられている。バルブ28bを開状態にすることにより、保持部材26dの表面(即ち、保持面26a)には吸引力が発生する。
【0036】
チャックテーブル26の周囲には、環状フレーム19を四方から固定するための4個のクランプユニット26eが設けられている。なお、チャックテーブル26は、例えば、支持台20中に設けられたモータ等の回転駆動源(不図示)に連結されており、Z軸方向に概ね平行な回転軸の周りに回転する。
【0037】
ここで、再び図2に戻り、切削装置2の説明を続ける。X軸移動ユニット10とは異なる基台4の上面の他の一部には、Y軸移動ユニット30が設けられている。Y軸移動ユニット30は、Y軸方向に平行な一対のY軸ガイドレール32を有する。各Y軸ガイドレール32は、基台4の上面に固定されている。
【0038】
各Y軸ガイドレール32上には、Y軸移動ブロック34が設けられている。Y軸移動ブロック34は、X軸及びY軸方向に平行な板状の水平板34aを有する。水平板34aの底面側は、各Y軸ガイドレール32にスライド可能に取り付けられている。
【0039】
水平板34aの下面側には、ナット部(不図示)が設けられており、このナット部には、Y軸ガイドレール32と平行に配置されたY軸ボールネジ36が回転可能な態様で結合されている。
【0040】
Y軸ボールネジ36の一端には、Y軸パルスモータ38が連結されている。Y軸パルスモータ38でY軸ボールネジ36を回転させれば、水平板34aは、Y軸ガイドレール32に沿ってY軸方向に移動する。
【0041】
水平板34aのX軸方向の一端には、Y軸及びZ軸方向に平行な板状の垂直板34bが固定されている。水平板34aのX軸方向の一端とは反対側に位置する他端側の垂直板34bの表面には、Z軸移動ユニット40が設けられている。
【0042】
Z軸移動ユニット40は、Z軸方向に平行な一対のZ軸ガイドレール(不図示)を有する。各Z軸ガイドレールは、X軸方向の他端側の垂直板34bの表面に固定されている。各Z軸ガイドレールには、切削ユニット48を固定するホルダ44がスライド可能に取り付けられている。
【0043】
ホルダ44の裏面側(即ち、垂直板34b側)には、ナット部(不図示)が設けられており、このナット部には、Z軸ガイドレールと平行に配置されたZ軸ボールネジ(不図示)が回転可能な態様で結合されている。
【0044】
Z軸ボールネジの一端には、Z軸パルスモータ42が連結されている。Z軸パルスモータ42でZ軸ボールネジを回転させれば、ホルダ44は、Z軸ガイドレールに沿ってZ軸方向に移動する。
【0045】
ホルダ44は、円柱形状の空洞部を有する。ホルダ44は、円柱形状の空洞部の高さ方向がY軸方向と平行に配置されている。この空洞部には、切削ユニット48を構成するスピンドルハウジング46が固定されている。スピンドルハウジング46は、円筒形状を有し、ホルダ44の空洞部に固定されている。
【0046】
切削ユニット48は、Y軸方向に平行な回転軸となるスピンドル(不図示)を有する。スピンドルは、回転可能な態様で、スピンドルハウジング46中に部分的に収容されている。但し、スピンドルの一端側は、スピンドルハウジング46から露出している。
【0047】
スピンドルの一端側には、砥粒を結合材で固定してなる円環状の切削ブレード48aが装着されている(図4(A)参照)。一方、スピンドルの他端側には、モータ等の回転駆動源(不図示)が連結されている。回転駆動源を駆動させると、切削ブレード48aは、スピンドルを回転軸として回転する。
【0048】
切削ブレード48aの傍には、被加工物11や切削ブレード48aに純水等の切削液を供給するためのノズルが配置されている。ノズルから切削液を供給しながら、チャックテーブル26に保持された被加工物11に対して、回転させた切削ブレード48aを切り込ませることで、被加工物11を切削できる。
【0049】
切削ユニット48に隣接する位置には、チャックテーブル26に保持された被加工物11等を撮影するためのカメラユニット50が設けられている。カメラユニット50は、スピンドルハウジング46の側方に固定されており、切削ユニット48と共に、Y軸移動ユニット30及びZ軸移動ユニット40によってY軸及びZ軸方向に移動する。
【0050】
第1実施形態のカメラユニット50は、赤外線(IR)カメラを有する。赤外線カメラは、保持面26a側に配置された対物レンズ(不図示)と、対物レンズを介して被写体を撮像する撮像素子(不図示)とを含む。
【0051】
切削装置2には、X軸移動ユニット10、チャックテーブル26、Y軸移動ユニット30、Z軸移動ユニット40、切削ユニット48、カメラユニット50等の動作を制御する制御部(不図示)が設けられている。
【0052】
制御部は、CPU(Central Processing Unit)等の処理装置や、フラッシュメモリ等の記憶装置を含むコンピュータによって構成される。記憶装置に記憶されるプログラム等のソフトウェアに従い処理装置を動作させることによって、制御部は、ソフトウェアと処理装置(ハードウェア資源)とが協働した具体的手段として機能する。
【0053】
次に、第1実施形態に係る被加工物11の加工手順等について説明する。第1実施形態では、まず、図1(B)に示す様に、環状フレーム19の開口部に被加工物11を配置して、被加工物11の表面11a側と、環状フレーム19の一面とにダイシングテープ17を貼り付ける(貼り付けステップ(S10))。これにより、被加工物11の裏面11bが露出した被加工物ユニット21を形成する。
【0054】
貼り付けステップ(S10)の後、被加工物ユニット21のダイシングテープ17側をチャックテーブル26で吸引して保持する(保持ステップ(S20))。図3(A)は、保持ステップ(S20)での被加工物11等の一部断面側面図である。
【0055】
保持ステップ(S20)では、まず、バルブ28bを閉状態とし、被加工物11の裏面11b側が上方に露出する様に、被加工物11をチャックテーブル26に載せる。そして、環状フレーム19をクランプユニット26eで固定し、併せて、吸引源28aを動作させる。これにより、被加工物11の表面11a側は、ダイシングテープ(エキスパンドシート)17を介してチャックテーブル26で保持される。
【0056】
保持ステップ(S20)の後、被加工物11の裏面11b側からカメラユニット50で被加工物11の表面11aを撮像して少なくとも1つの分割予定ライン15を検出する(切削位置検出ステップ(S30))。図3(B)は、切削位置検出ステップ(S30)での被加工物11等の一部断面側面図である。
【0057】
本実施形態のカメラユニット50は、赤外線カメラであるので、基板11cを透過して表面11a側を撮像できる。この撮像によって得られる画像は、制御部の記憶装置に記憶される。
【0058】
当該画像は、表面11a側に存在するキーパターン等と呼ばれるアライメントマークを含んでいる。このアライメントマークの座標に基づいて、少なくとも1つの分割予定ライン15の座標が検出される。この様にして、カメラユニット50で得られた画像は、被加工物11のアライメント等に用いられる。
【0059】
切削位置検出ステップ(S30)後、表面11a側がチャックテーブル26で保持された状態の被加工物11に対して切削ブレード48aを切り込ませて、各分割予定ライン15に沿って切削溝を形成する(切削ステップ(S40))。図4(A)は、切削ステップ(S40)での被加工物11等の一部断面側面図である。
【0060】
切削ステップ(S40)では、まず、カメラユニット50で撮像した画像に基づいて、分割予定ライン15とX軸方向とが平行になる様に、回転駆動源を用いてチャックテーブル26を回転させる。次いで、Y軸移動ユニット30を用いて、加工の対象となる分割予定ライン15の延長線の上方に切削ブレード48aの位置を合わせる。
【0061】
そして、Z軸移動ユニット40を用いて、切削ブレード48aの下端の高さが被加工物11の表面11aと裏面11bとの間となる様に、切削ユニット48のZ軸方向の位置を調整する。これにより、切削ブレード48aの切り込み深さが被加工物11の表面11aには至らない様に、切削ブレード48aの下端の高さを調整する。
【0062】
次いで、X軸移動ユニット10を用いて、切削ブレード48aに対してチャックテーブル26をX軸方向に平行に移動させる。これにより、1つの分割予定ライン15に沿って被加工物11を切削して、被加工物11の裏面11b側に切削溝を形成する。
【0063】
1つの分割予定ライン15に沿って切削溝を形成した後、Y軸移動ユニット30を用いて、被加工物11を所定のインデックス量だけ割り出し送りする。そして、切削した1つの分割予定ライン15のY軸方向に隣接する他の分割予定ライン15に、同様に切削溝を形成する。
【0064】
この様な動作は、被加工物11が全ての分割予定ライン15に沿って加工されるまで繰り返される。これにより、全ての分割予定ライン15に沿って、表面11a側には至らない切削溝15aが裏面11b側に形成される。
【0065】
切削ブレード48aは、例えば、金属、セラミックス、樹脂等の結合材に、ダイヤモンド、cBN(cubic boron nitride)等の砥粒を混合して円盤状(円環状)に形成されている。ただし、切削ブレード48aを構成する結合材や砥粒に制限はなく、結合材及び砥粒は、切削ブレード48aの仕様等に合わせて選択、変更される。
【0066】
図4(B)は、使用前の切削ブレード48aの断面図である。図4(B)に示す様に、外周部48bには、切削ブレード48aの円盤状(円環状)の端面の外周から、切削ブレード48aの厚さ方向の略中心に位置する外周まで、環状の傾斜面48cが形成されている。
【0067】
この様に、外周部48bには、切削ブレード48aの厚さ方向の略中心を通り切削ブレード48aの円盤状(円環状)の端面に平行な平面に対して、略線対称に一対の傾斜面48cが形成されている。
【0068】
切削ブレード48aの径を通り切削ブレード48aの厚さ方向に平行な断面で切削ブレード48aを見た場合に、外周部48bには、一対の傾斜面48cにより略V字形状の凸部が形成されている。この切削ブレード48aで被加工物11を切削すると、分割予定ライン15に平行な直線に対して直交する平面で被加工物11を切断した場合に、略V字形状の切削溝15aが形成される。
【0069】
なお、一定時間使用後の切削ブレード48aは、摩耗して角部が丸くなる。それゆえ、外周部48bには、一対の傾斜面48cではなく、図4(C)に示す様に、曲面48dが形成されていてもよい。図4(C)は、一定時間使用後の切削ブレード48aの断面図である。なお、図4(C)では、使用前の外周部48bの輪郭を破線で示す。
【0070】
図4(C)に示す様に、外周部48bには、切削ブレード48aの中心から外周側に凸形状を構成する環状の曲面48dが形成されている。つまり、切削ブレード48aの径を通り切削ブレード48aの厚さ方向に平行な断面で切削ブレード48aを見た場合に、外周部48bの輪郭は略U字形状である。
【0071】
この切削ブレード48aで被加工物11を切削すると、分割予定ライン15に平行な直線に対して直交する平面で被加工物11を切断した場合に、略U字形状の切削溝15aが形成される。
【0072】
図5(A)及び図5(B)に、切削ステップ(S40)で形成された切削溝15aを示す。図5(A)は、第1の深さの切削溝15aを有する被加工物11の一部の断面図であり、図5(B)は、第2の深さの切削溝15aを有する被加工物11の一部の断面図である。なお、図5(A)及び図5(B)では、切削溝15aが略U字形状である場合を示し、被加工物11の表面11a側のダイシングテープ17は省略している。
【0073】
図5(A)に示す第1の深さの切削溝15aの底部は、基板11cと回路層11dとの境界11eに位置する。この様に、切削ブレード48aで回路層11dを切削しないことで、切削ブレード48aが回路層11dを切削して回路層11dが基板11cから剥離するデラミネーション現象を防止できる。
【0074】
なお、切削溝15aの底部は、境界11eから所定距離だけ離れていてもよい。図5(B)に示す第2の深さの切削溝15aの底部は、回路層11dに至っておらず、境界11eから数μm以上10μm以下の所定距離だけ離れている。
【0075】
この様に、切削溝15aの底部を境界11eから所定距離だけ離して基板11cの切り残し領域を設けることで、切削溝15aの底部が境界11eに位置する場合に比べて、切削ブレード48aが回路層11dを切削する可能性をより低減できる。それゆえ、デラミネーション現象をより確実に防止できる。
【0076】
更に、基板11cの切り残し領域を設けることにより、切削溝15aの底部が境界11eに位置する場合に比べて、分割予定ライン15における被加工物11の機械的強度を高くできる。それゆえ、被加工物ユニット21の加工、搬送等の最中に、基板11cにおいて予期しない位置又は方向にクラックが発生する可能性を低減できる。
【0077】
なお、基板11cがシリコンで形成されている場合に、切削溝15aの底部から境界11eまでの距離を10μmよりも大きくすると、基板11cにおいて予期しない位置又は方向にクラックが発生する可能性があるので、この距離を10μm以下とするのが好ましい。
【0078】
切削ステップ(S40)の後、各分割予定ライン15に沿って被加工物11を分割する(分割ステップ(S50))。分割ステップ(S50)では、例えば、ダイシングテープ(エキスパンドシート)17を拡張するテープ拡張装置52が用いられる。
【0079】
図6(A)は、テープ拡張装置52の一部断面側面図である。テープ拡張装置52は、被加工物11の径よりも大きい径を有する円筒形状のドラム54と、このドラム54の側方に配置された円環状のフレーム保持テーブル58とを有する。
【0080】
フレーム保持テーブル58の上面は、被加工物ユニット21の環状フレーム19が載置される略平坦な載置面58aである。なお、図6(A)に示す様に、被加工物ユニット21がテープ拡張装置52に載置されるとき、ドラム54の上面54aとフレーム保持テーブル58の載置面58aとの高さ位置は、略同じとなる様に調整されている。
【0081】
フレーム保持テーブル58の外周側面には、周方向の異なる位置に複数のクランプユニット60が固定されている。また、フレーム保持テーブル58の底面には、ドラム54の高さ方向に沿って移動可能な複数のピストンロッド62の上端部が固定されている。
【0082】
ピストンロッド62の下端部側の一部は、エアシリンダ64内に配置されている。各エアシリンダ64内にピストンロッド62が引き込まれると、フレーム保持テーブル58の上面がドラム54の上面54aに対して引き下げられる。
【0083】
次に、テープ拡張装置52を用いた分割ステップ(S50)について説明する。図6(B)は、分割ステップ(S50)での被加工物11等の一部断面側面図である。分割ステップ(S50)では、まず、略同じ高さ位置に調整されているドラム54の上面54aとフレーム保持テーブル58の載置面58aとに、被加工物ユニット21を載置する。
【0084】
このとき、被加工物ユニット21のうち被加工物11に対応する部分を上面54aに載置し、被加工物ユニット21のうち環状フレーム19に対応する部分を載置面58a上に載置する。そして、クランプユニット60で、環状フレーム19の位置を固定する。
【0085】
次に、エアシリンダ64を作動させてフレーム保持テーブル58を上面54aに対して引き下げる。これにより、図6(B)に示す様に、ダイシングテープ(エキスパンドシート)17が円形のダイシングテープ17の中心から放射状に拡張されて、被加工物11が各分割予定ライン15に沿って分割される。
【0086】
より具体的には、分割ステップ(S50)では、V字形状又はU字形状の切削溝15aの底部を起点として、切削溝15aの底部と表面11aとの間でクラックが伸長して、基板11cの切り残し領域と、切り残し領域の直下の回路層11dとが破断する。これにより、被加工物11から複数のチップ23が形成される。
【0087】
破断時に表面11aに形成されるクラックの幅は、1μmにも満たない程度である。それゆえ、切削ブレード48aで表面11aを切削する場合に比べて、表面11aのカーフ幅を小さくできる。従って、本実施形態のチップ23の製造方法では、切削ブレード48aで表面11aを切削する場合に比べて、分割予定ライン15の幅をより狭く設定できる。
【0088】
図7は、複数のチップ23の断面図である。なお、図7では、第2の深さの切削溝15aが被加工物11に形成されている場合(図5(B)参照)の複数のチップ23の断面図を示し、被加工物11の表面11a側のダイシングテープ17は省略している。
【0089】
分割ステップ(S50)後には、各チップ23の表面11a側に紫外線を照射して、ダイシングテープ17の粘着層の粘着力を低下させる。その後、反転ピックアップ装置(不図示)の吸着ヘッドで、チップ23の裏面11b側を吸着し、チップ23をピックアップする。
【0090】
次いで、チップ23の表面11a側が上を向く様に、吸着ヘッドを上下反転させる。このとき、チップ23は、反転ピックアップ装置の吸着ヘッドにより下方が支持された状態となる。その後、チップ23の表面11a側が、例えば、ボンディング装置(不図示)の吸着ヘッドに吸着される。これにより、チップ23は、反転ピックアップ装置からボンディング装置へ受け渡される。
【0091】
なお、チップ23を搬送する場合には、必ずしも反転ピックアップ装置を使用しなくてもよい。例えば、分割ステップ(S50)後に、各チップ23の裏面11b側にチップ23の転写用の粘着テープ(不図示)を貼り付けて、表面11a側に紫外線を照射することで、被加工物ユニット21からダイシングテープ17を剥離する。
【0092】
これにより、各チップ23は、粘着テープに転写される。この場合、反転ピックアップ装置を用いることなく、例えば、ボンディング装置(不図示)の吸着ヘッドが、チップ23の表面11a側を吸着して、チップ23をピックアップ及び搬送できる。
【0093】
図8は、第1実施形態のチップ23の製造方法のフロー図である。第1実施形態の切削ステップ(S40)では、被加工物11の表面11aを切削せずに被加工物11を分割するので、被加工物11を表面11aから裏面11bまで切削して切断する場合に比べて、表面11a側のカーフ幅を小さくできる。それゆえ、分割予定ライン15の幅を狭くできる。
【0094】
ところで、上述の分割ステップ(S50)では、ダイシングテープ17を放射状に拡張するテープ拡張装置52に代えて、ダイシングテープ(エキスパンドシート)17を四方から外側に引っ張る他のテープ拡張装置(不図示)を使用してもよい。
【0095】
次に、図9図10(A)及び図10(B)を用いて、第2実施形態について説明する。図9は、第2実施形態のチップ23の製造方法のフロー図である。第2実施形態では、まず、被加工物11の表面11a側に、表面保護部材としての表面保護テープ17aを貼り付ける(表面保護ステップ(S15))。なお、表面保護テープ17aに代えて、剛性を有する基板からなるサブストレイトを表面保護部材に用いてもよい。
【0096】
これにより、表面保護テープ17a及び被加工物11から成る積層体25が形成される。図10(A)は、被加工物11を含む積層体25の斜視図である。なお、本実施形態の表面保護テープ17aには環状フレーム19が貼り付けられていないが、表面保護テープ17aが被加工物11の径よりも大きな径を有する場合には、表面保護テープ17aの外周部に環状フレーム19が貼り付けられていてもよい。
【0097】
表面保護テープ17aは、例えば、紫外線が透過可能な樹脂製の基材層と、紫外線硬化型の粘着層とが積層された樹脂製のフィルムである。第2実施形態の表面保護テープ17aは、引っ張り応力に対して容易に変形する伸張性を有するが、必ずしも伸張性を有しなくてもよい。
【0098】
表面保護ステップ(S15)の後、第1実施形態と同様に、保持ステップ(S20)、切削位置検出ステップ(S30)及び切削ステップ(S40)を行う。切削ステップ(S40)では、表面11a側には至らない切削溝15aを裏面11b側に形成する。なお、表面保護ステップ(S15)の後、裏面研削等の加工を被加工物11に施してもよい。
【0099】
そして、切削ステップ(S40)の後、貼り付けステップ(S45)を行う。貼り付けステップ(S45)では、まず、環状フレーム19の開口部に積層体25を配置して、被加工物11の裏面11b側と、環状フレーム19の一面とにエキスパンドシート17bを貼り付ける。エキスパンドシート17bは、基材層及び粘着層が積層された樹脂製のフィルムであり、伸張性を有する。また、エキスパンドシート17bの粘着層は、例えば、紫外線硬化型の樹脂である。
【0100】
貼り付けステップ(S45)では、次いで、被加工物11の表面11a側に紫外線を照射する。紫外線は表面保護テープ17aの基材層を透過して、粘着層に達する。これにより、表面保護テープ17aの粘着力を低下させる。
【0101】
その後、剥離装置(不図示)を用いて表面保護テープ17aを剥離する。図10(B)は、被加工物11から表面保護テープ17aを剥離する様子を示す斜視図である。表面保護テープ17aを剥離することで、被加工物11、エキスパンドシート17b及び環状フレーム19から成る被加工物ユニットが形成される。
【0102】
貼り付けステップ(S45)の後、上述のテープ拡張装置52を用いて、被加工物11を分割予定ライン15に沿って複数のチップ23に分割する(分割ステップ(S50))。その後、各チップ23の裏面11b側に紫外線を照射して、エキスパンドシート17bの粘着層の粘着力を低下させる。
【0103】
第2実施形態では、第1実施形態の様に反転ピックアップ装置(不図示)や転写用の粘着テープ(不図示)等を用いることなく、ボンディング装置(不図示)等の吸着ヘッドが、各チップ23の表面11a側を吸着及びピックアップして、各チップ23を搬送できる。
【0104】
勿論、第2実施形態の切削ステップ(S40)でも、被加工物11の表面11aを切削せずに被加工物11を分割するので、被加工物11を表面11aから裏面11bまで切削して切断する場合に比べて、表面11a側のカーフ幅を小さくできる。それゆえ、分割予定ライン15の幅を狭くできる。
【0105】
次に、第3実施形態について説明する。第3実施形態では、裏面31b側に金属層27が形成された被加工物31を分割予定ライン15に沿って分割して複数のチップ23を形成する。図11は、第3実施形態に係る被加工物ユニット41の斜視図である。
【0106】
被加工物31は、略円盤形状を有し、表面31a及び裏面31bを備えるウェーハである。被加工物31は、炭化ケイ素(SiC)で形成された基板31c(図15参照)を有する。被加工物31の表面31a側には、基板31cに接する様に、上述の回路層11d(図15参照)が形成されている。
【0107】
被加工物31の表面31a側は、互いに交差するように格子状に配列された複数の分割予定ライン(ストリート)15によって複数の領域に区画されている。複数の領域の各々には、パワー半導体デバイス等の複数のデバイス13が存在し、各デバイス13は、基板31c及び回路層11dで構成されている。
【0108】
被加工物31の裏面31b側に位置する基板31cの一面には、金属層27が設けられている。金属層27は、例えば、基板31cに接するチタン(Ti)層と、チタン層に対して基板31cとは反対側に位置するニッケル(Ni)層とが積層された積層体である。
【0109】
但し、積層体を構成する材料は、チタン層及びニッケル層に限定されない。また、金属層27は、単一の金属材料の層であってもよく、三つ以上の異なる材料の金属層が積層された成る積層体であってもよい。
【0110】
被加工物31の表面31a側は、ダイシングテープ(エキスパンドシート)17を介して環状フレーム19の開口部に固定されている。ダイシングテープ17は、基材層及び粘着層が積層された樹脂製のフィルムであり、伸張性を有する。
【0111】
なお、被加工物31の裏面31b側の全体には、金属層27が形成されているので、赤外線カメラで裏面11b側を撮像しても、表面31a側の分割予定ライン15を撮像できない。そこで、第3実施形態では、ダイシングテープ17を介して下方から表面31a側を撮像可能な切削装置72を用いる。
【0112】
図12は、第3実施形態の切削装置72の斜視図である。切削装置72は、各構成要素を支持する基台74を備えている。基台74の上面には、X軸Y軸移動機構(加工送り及び割り出し送り機構)78が配置されている。
【0113】
X軸Y軸移動機構78は、基台4の上面に固定されX軸方向に概ね平行な一対のX軸ガイドレール80を備えている。X軸ガイドレール80は、基台74の上面に固定されている。
【0114】
X軸ガイドレール80には、X軸移動テーブル82がスライド可能に取り付けられている。X軸移動テーブル82の下面側には、ナット部(不図示)が設けられており、このナット部には、X軸ガイドレール80に概ね平行なX軸ボールネジ84が回転可能な態様で結合されている。
【0115】
X軸ボールネジ84の一端部には、X軸パルスモータ86が連結されている。X軸パルスモータ86でX軸ボールネジ84を回転させれば、X軸移動テーブル82は、X軸ガイドレール80に沿ってX軸方向に移動する。X軸ガイドレール80に隣接する位置には、X軸移動テーブル82のX軸方向の位置を検出する際に使用されるX軸スケール80aが設けられている。
【0116】
X軸移動テーブル82の上面には、Y軸方向に概ね平行な一対のY軸ガイドレール90が固定されている。Y軸ガイドレール90には、Y軸移動テーブル92がスライド可能に取り付けられている。図13は、Y軸移動テーブル92等の斜視図であり、図14(A)は、切削装置72の一部の断面図であり、図14(B)は、図14(A)の領域Aを拡大した断面図である。
【0117】
なお、図14(A)及び図14(B)では、切削装置72によって加工される被加工物11等を併せて示している。また、図14(A)では、断面のハッチングを省略している。図12図13及び図14(A)に示す様に、Y軸移動テーブル92は、Z軸方向から見た形状が長方形である底板部92aを含む。
【0118】
底板部92aのY軸方向の一端には、Y軸方向から見た形状が長方形である側板部92bの下端が接続されている。この側板部92bの上端には、Z軸方向から見た形状が底板部92aと同様の長方形である天板部92cのY軸方向の一端が接続されている。すなわち、底板部92aと天板部92cとの間には、Y軸方向の他端及びX軸方向の両端で外部と繋がる空間92dが形成されている。
【0119】
Y軸移動テーブル92の底板部92aの下面側には、ナット部92e(図14(A))が設けられており、このナット部92eには、Y軸ガイドレール90に概ね平行なY軸ボールネジ94が回転可能な態様で結合されている。Y軸ボールネジ94の一端部には、Y軸パルスモータ96が連結されている。
【0120】
Y軸パルスモータ96でY軸ボールネジ94を回転させれば、Y軸移動テーブル92は、Y軸ガイドレール90に沿ってY軸方向に移動する。Y軸ガイドレール90に隣接する位置には、Y軸移動テーブル92のY軸方向の位置を検出する際に使用されるY軸スケール90a(図12参照)が設けられている。
【0121】
Y軸移動テーブル92の天板部92cの上面側には、板状の被加工物11(図14(A)及び図14(B)参照)を保持する際に使用されるチャックテーブル(保持テーブル)98が配置されている。このチャックテーブル98は、Z軸方向に概ね平行な回転軸の周りに回転できる態様で天板部92cに支持される。
【0122】
このチャックテーブル98は、例えば、ステンレス等の金属材料でなる円筒形状の枠体100を含む。枠体100の上部には、この枠体100の上部側の開口部100aを塞ぐように、円盤形状の保持部材102が設けられている。保持部材102は、概ね平坦な表面(保持面)102aと、表面102aとは反対側の裏面102bとを有し、ソーダガラス、ホウケイ酸ガラス、石英ガラス等の可視光を透過する透明材で構成されている。
【0123】
図14(B)に示すように、保持部材102の内部には、被加工物31の吸引に使用される吸引路102cが設けられている。また、保持部材102の表面102aには、この吸引路102cの一端に相当する複数の開口102dが形成されている。複数の開口102dは、表面102aに略等間隔で配置されている。吸引路102cの他端側には、エジェクタ等を含む吸引源104が接続される。
【0124】
この保持部材102は、吸引路102cや開口102dを除いた少なくとも一部の領域で、表面102aから裏面102bまで、可視光に対して透明である。それゆえ、この保持部材102の表面102a側に配置される被加工物31等を、可視光用カメラ150で保持部材102の裏面102b側から撮像できる。
【0125】
なお、本実施形態では、全体が可視光に対して透明な透明材で構成された保持部材102を示しているが、保持部材102は、少なくともその一部が、表面102aから裏面102bまで透明であればよい。
【0126】
Y軸移動テーブル92の側板部92bには、モータ等の回転駆動源108が設けられている。枠体100の外周に設けられたプーリー部100bと、回転駆動源108の回転軸に連結されたプーリー108aとには、回転駆動源108の動力を伝達するためのベルト110が掛けられている。そのため、チャックテーブル98は、回転駆動源108からベルト110を介して伝達される力によって、Z軸方向に概ね平行な回転軸の周りに回転できる。
【0127】
なお、枠体100の外周には、プーリー部100bの他に、環状フレーム19を固定する際に使用される複数のクランプ100cが設けられている(図14(A)参照)。複数のクランプ100cは、チャックテーブル98の回転を阻害しない態様で枠体100に固定されている。また、チャックテーブル98は、上述したX軸Y軸移動機構78によって、X軸移動テーブル82やY軸移動テーブル92と共に、X軸方向やY軸方向に移動できる。
【0128】
図12に示すように、基台74の上面のX軸Y軸移動機構78と重ならない領域には、柱状又は壁状の支持構造112が設けられている。支持構造112の側面には、Z軸移動機構114が配置されている。Z軸移動機構114は、支持構造112の側面に固定されZ軸方向に概ね平行な一対のZ軸ガイドレール116を備えている。
【0129】
Z軸ガイドレール116には、切削ユニット118を構成するスピンドルハウジング120がスライド可能に取り付けられている。スピンドルハウジング120の支持構造112側の側面には、ナット部(不図示)が設けられており、このナット部には、Z軸ガイドレール116に概ね平行なZ軸ボールネジ122が回転可能な態様で結合されている。
【0130】
Z軸ボールネジ122の一端部には、Z軸パルスモータ124が連結されている。Z軸パルスモータ124でZ軸ボールネジ122を回転させれば、スピンドルハウジング120は、Z軸ガイドレール116に沿ってZ軸方向に移動する。Z軸ガイドレール116に隣接する位置には、スピンドルハウジング120のZ軸方向の位置を検出する際に使用されるZ軸スケール(不図示)が設けられている。
【0131】
切削ユニット118は、Y軸方向に平行な回転軸となるスピンドル(不図示)を備えている。スピンドルは、上述したスピンドルハウジング120中に回転可能な態様で支持される。スピンドルの一端部は、スピンドルハウジング120から露出している。このスピンドルの一端部には、円環状の切削ブレード118aが装着されている。一方、スピンドルの他端側には、モータ等の回転駆動源(不図示)が連結されている。
【0132】
切削ユニット118のスピンドルハウジング120には、チャックテーブル98によって保持される被加工物11等を上方から撮像するための上部撮像ユニット128が固定されている。よって、この上部撮像ユニット128は、スピンドルハウジング120に固定されており、切削ユニット48と共に、Z軸移動機構114によってZ軸方向に移動する。
【0133】
基台74の上面のX軸Y軸移動機構78からY軸方向に離れた領域であって、スピンドルハウジング120の下方の領域には、柱状又は壁状の撮像ユニット支持構造132が設けられている。撮像ユニット支持構造132の側面には、撮像ユニット移動機構134が配置されている。
【0134】
撮像ユニット移動機構134は、撮像ユニット支持構造132の側面に固定されZ軸方向に概ね平行な一対のZ軸ガイドレール136を備えている。Z軸ガイドレール136には、Z軸移動プレート138がスライド可能に取り付けられている。
【0135】
Z軸移動プレート138の撮像ユニット支持構造132側の側面には、ナット部(不図示)が設けられており、このナット部には、Z軸ガイドレール136に概ね平行なZ軸ボールネジ140が回転可能な態様で結合されている(図14(A)参照)。
【0136】
Z軸ボールネジ140の一端部には、Z軸パルスモータ142が連結されている。Z軸パルスモータ142でZ軸ボールネジ140を回転させれば、Z軸移動プレート138は、Z軸ガイドレール136に沿ってZ軸方向に移動する。Z軸ガイドレール136に隣接する位置には、Z軸移動プレート138のZ軸方向の位置を検出する際に使用されるZ軸スケール(不図示)が設けられている。
【0137】
Z軸移動プレート138には、Y軸方向に長い支持アーム144を介して下部撮像ユニット146が固定されている。下部撮像ユニット146は、被写体(本実施形態では、被加工物31)に対して可視光を照射する照明装置148と、被写体から反射した光を受けて画像を形成する撮像素子を備えた可視光用カメラ150とを含む。
【0138】
X軸Y軸移動機構78、回転駆動源108、Z軸移動機構114、切削ユニット118、上部撮像ユニット128、撮像ユニット移動機構134、下部撮像ユニット146等の構成要素には、制御部(不図示)が接続されている。制御部は、被加工物31が適切に加工されるように各構成要素の動作を制御する。
【0139】
制御部は、CPU(Central Processing Unit)等の処理装置や、フラッシュメモリ等の記憶装置を含むコンピュータによって構成される。記憶装置に記憶されるプログラム等のソフトウェアに従い処理装置を動作させることによって、制御部は、ソフトウェアと処理装置(ハードウェア資源)とが協働した具体的手段として機能する。
【0140】
次に、第3実施形態に係る被加工物11の加工手順について説明する。第3実施形態では、図8に示す第1実施形態のフロー図と同じ手順で、被加工物31を加工する。まず、図11に示す被加工物ユニット41を形成する(貼り付けステップ(S10))。
【0141】
貼り付けステップ(S10)の後、第1実施形態と同様に、保持ステップ(S20)を行う。保持ステップ(S20)では、まず、ダイシングテープ17が保持部材102の表面102aに接触する様に、被加工物ユニット41をチャックテーブル98に載せる。
【0142】
そして、クランプ100cで環状フレーム19を固定し、併せて、吸引路102cの一端に相当する複数の開口102dから吸引源104の負圧を作用させる。これにより、被加工物31は、裏面11b側が上方に露出した状態でチャックテーブル98で保持される。
【0143】
保持ステップ(S20)後、切削位置検出ステップ(S30)を行う。切削位置検出ステップ(S30)では、X軸Y軸移動機構78及び撮像ユニット移動機構134の動作を制御して、保持部材102の透明な領域の下方に下部撮像ユニット146を配置する。
【0144】
即ち、Y軸移動テーブル92の底板部92aと天板部92cとの間の空間92dに下部撮像ユニット146を挿入する。保持部材102に対する下部撮像ユニット146の位置は、被加工物31の撮像に適した範囲内で任意に調整される。
【0145】
上述の通り、保持部材102の一部は透明である。それゆえ、下部撮像ユニット146の照明装置148から上方の被加工物11に向けて可視光を照射し、保持部材102及びダイシングテープ17を介して被加工物31の表面31a側から反射する光を可視光用カメラ150の撮像素子で受光すれば、被加工物31の表面31a側を撮像できる。
【0146】
この撮像によって得られる画像は、制御部の記憶装置に記憶される。当該画像は、被加工物31の表面31a側に存在するキーパターン等のアライメントマークを含んでいる。アライメントマークの座標に基づいて、少なくとも1つの分割予定ライン15の座標が検出される。この様にして、可視光用カメラ150で得られた画像は、被加工物31のアライメント等に用いられる。
【0147】
切削位置検出ステップ(S30)後、切削ステップ(S40)を行う。切削ステップ(S40)では、X軸Y軸移動機構78の動作を制御して、加工の対象となる分割予定ライン15の延長線の上方に切削ブレード118aの位置を合わせる。
【0148】
そして、Z軸移動機構114の動作を制御して、切削ブレード118aの下端の高さが被加工物31の表面31aと裏面31bとの間となる様に、切削ユニット118のZ軸方向の位置を調整する。
【0149】
その後、切削ブレード118aを回転させながら、X軸Y軸移動機構78でチャックテーブル98をX軸方向に移動させる。これにより、加工の対象となる分割予定ライン15に沿って被加工物31の裏面31b側から切削ブレード118aを切り込ませ、この分割予定ライン15に沿って被加工物31を加工する。
【0150】
1つの分割予定ライン15に沿って切削溝15aを形成した後、X軸Y軸移動機構78を用いて、被加工物31を所定のインデックス量だけ割り出し送りする。そして、切削した1つの分割予定ライン15のY軸方向に隣接する他の分割予定ライン15に、同様に切削溝15aを形成する。
【0151】
この様な動作は、全ての分割予定ライン15に沿って被加工物31が加工されるまで繰り返される。これにより、全ての分割予定ライン15に沿って、表面31a側には至らない切削溝15aが裏面31b側に形成される。
【0152】
図15は、第3の深さの切削溝15aを有する被加工物11の一部の断面図である。なお、図15では、切削溝15aが略U字形状である場合を示し、被加工物31の表面31a側のダイシングテープ17は省略している。
【0153】
図15に示す第3の深さの切削溝15aの底部は、回路層11dに至っておらず、基板31cと回路層11dとの境界11eから所定距離だけ離れている。第3の深さの切削溝15aの底部は、上述の第2の深さの切削溝15aの底部よりも境界11eから離れている。第3の深さの切削溝15aの底部は、境界11eから数μm以上30μm以下、より好ましくは、10μmよりも大きく30μm以下の所定距離だけ離れている。
【0154】
切削溝15aの底部を境界11eから所定距離だけ離して基板31cに切り残し領域を設けることで、切削溝15aの底部が境界11eに位置する場合に比べて、切削ブレード118aが回路層11dを切削する可能性をより低減できる。それゆえ、デラミネーション現象をより確実に防止できる。
【0155】
更に、切り残し領域を設けることにより、切削溝15aの底部が境界11eに位置する場合に比べて、分割予定ライン15における被加工物11の機械的強度を高くできる。それゆえ、被加工物ユニット41の加工、搬送等の最中に、基板31cにおいて予期しない位置又は方向にクラックが発生する可能性を低減できる。
【0156】
切削ステップ(S40)の後、吸引源104の負圧を遮断すると共に、クランプ100cによる環状フレーム19の固定を解除する。そして、被加工物ユニット41をチャックテーブル98から上述のテープ拡張装置52へ搬出する。
【0157】
その後、分割ステップ(S50)を行う。分割ステップ(S50)では、上述のテープ拡張装置52を用いて、ダイシングテープ(エキスパンドシート)17を拡張することで、被加工物31を複数のチップ23に分割する。
【0158】
なお、第3実施形態の基板31cは、シリコンよりも硬度の高い炭化ケイ素(SiC)で形成されている。しかし、第1実施形態に比べて切り残し量を多くしても、分割ステップ(S50)での被加工物11の分割に支障は無いということを発明者は確認している。
【0159】
分割ステップ(S50)後には、各チップ23の表面31a側に紫外線を照射して、ダイシングテープ17の粘着層の粘着力を低下させる。その後、反転ピックアップ装置(不図示)の吸着ヘッドが、チップ23の裏面11b側を吸着した後、チップ23の表面31a側をボンディング装置(不図示)の吸着ヘッドへ受け渡す。
【0160】
なお、これに代えて、分割ステップ(S50)後に、各チップ23の裏面31b側にチップ23の転写用の粘着テープ(不図示)を貼り付けて、表面31a側に紫外線を照射することで、ダイシングテープ17を剥離してもよい。これにより、各チップ23は、粘着テープに転写される。この場合、ボンディング装置(不図示)の吸着ヘッドが、チップ23の表面31a側を吸着して、チップ23をピックアップ及び搬送できる。
【0161】
第3実施形態の切削ステップ(S40)でも、被加工物31の表面31aを切削せずに被加工物31を分割するので、被加工物31を表面31aから裏面31bまで切削して切断する場合に比べて、表面31a側のカーフ幅を小さくできる。それゆえ、分割予定ライン15の幅を狭くできる。
【0162】
次に、第4実施形態について説明する。第4実施形態では、金属層27を有する被加工物31を、図9に示す第2実施形態のフロー図と同じ手順で加工する。まず、被加工物31の表面31a側に、表面保護テープ17aを貼り付ける(表面保護ステップ(S15))。
【0163】
これにより、表面保護テープ17a及び被加工物31から成る積層体35が形成される。図16(A)は、被加工物31を含む積層体35の斜視図である。なお、本実施形態の表面保護テープ17aには環状フレーム19が貼り付けられていないが、表面保護テープ17aが被加工物31の径よりも大きな径を有する場合には、表面保護テープ17aの外周部に環状フレーム19が貼り付けられていてもよい。
【0164】
表面保護ステップ(S15)の後、保持ステップ(S20)、切削位置検出ステップ(S30)及び切削ステップ(S40)を行う。切削ステップ(S40)では、表面31a側には至らない切削溝15aを裏面31b側に形成する。
【0165】
そして、切削ステップ(S40)の後、貼り付けステップ(S45)を行う。貼り付けステップ(S45)では、環状フレーム19の開口部に積層体35を配置して、被加工物31の裏面31b側と、環状フレーム19の一面とにエキスパンドシート17bを貼り付ける。
【0166】
更に、被加工物31の表面31a側に紫外線を照射した後、剥離装置(不図示)を用いて表面保護テープ17aを剥離する。図16(B)は、被加工物31から表面保護テープ17aを剥離する様子を示す斜視図である。表面保護テープ17aを剥離することで、被加工物31、エキスパンドシート17b及び環状フレーム19から成る被加工物ユニットが形成される。
【0167】
貼り付けステップ(S45)の後、上述のテープ拡張装置52を用いて、被加工物31を分割予定ライン15に沿って複数のチップ23に分割する(分割ステップ(S50))。その後、各チップ23の裏面31b側に紫外線を照射して、エキスパンドシート17bの粘着層の粘着力を低下させる。
【0168】
第4実施形態では、第3実施形態の様に反転ピックアップ装置(不図示)や転写用の粘着テープ(不図示)等を用いることなく、ピックアップ装置(不図示)で各チップ23の表面31a側を吸着及びピックアップして、各チップ23を搬送できる。
【0169】
勿論、第4実施形態の切削ステップ(S40)でも、被加工物31の表面31aを切削せずに被加工物31を分割するので、被加工物31を表面31aから裏面31bまで切削して切断する場合に比べて、表面31a側のカーフ幅を小さくできる。それゆえ、分割予定ライン15の幅を狭くできる。
【0170】
その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。例えば、第2実施形態、第3実施形態及び第4実施形態の各分割ステップ(S50)でも、ダイシングテープ17を四方から外側に引っ張る他のテープ拡張装置(不図示)を使用してもよい。
【符号の説明】
【0171】
2 切削装置
4 基台
10 X軸移動ユニット
11 被加工物
11a 表面
11b 裏面
11c 基板
11d 回路層
11e 境界
12 X軸ガイドレール
13 デバイス
14 X軸移動テーブル
15 分割予定ライン
15a 切削溝
16 X軸ボールネジ
17 ダイシングテープ(エキスパンドシート)
17a 表面保護テープ
17b エキスパンドシート
18 X軸パルスモータ
19 環状フレーム
20 支持台
21 被加工物ユニット
22 支持柱
23 チップ
24 テーブルカバー
25 積層体
26 チャックテーブル(保持テーブル)
26a 保持面
26b 枠体
26c1 底部流路
26c2 中央流路
26d 保持部材
26e クランプユニット
27 金属層
28a 吸引源
28b バルブ
30 Y軸移動ユニット
31 被加工物
31a 表面
31b 裏面
31c 基板
32 Y軸ガイドレール
34 Y軸移動ブロック
34a 水平板
34b 垂直板
35 積層体
36 Y軸ボールネジ
38 Y軸パルスモータ
40 Z軸移動ユニット
41 被加工物ユニット
42 Z軸パルスモータ
44 ホルダ
46 スピンドルハウジング
48 切削ユニット
48a 切削ブレード
48b 外周部
48c 傾斜面
48d 曲面
50 カメラユニット(IRカメラ)
52 テープ拡張装置
54 ドラム
54a 上面
58 フレーム保持テーブル
58a 載置面
60 クランプユニット
62 ピストンロッド
64 エアシリンダ
72 切削装置
74 基台
78 X軸Y軸移動機構
80 X軸ガイドレール
80a X軸スケール
82 X軸移動テーブル
84 X軸ボールネジ
86 X軸パルスモータ
90 Y軸ガイドレール
90a Y軸スケール
92 Y軸移動テーブル
92a 底板部
92b 側板部
92c 天板部
92d 空間
92e ナット部
94 Y軸ボールネジ
96 Y軸パルスモータ
98 チャックテーブル(保持テーブル)
100 枠体
100a 開口部
100b プーリー部
100c クランプ
102 保持部材
102a 表面
102b 裏面
102c 吸引路
102d 開口
104 吸引源
108 回転駆動源
108a プーリー
110 ベルト
112 支持構造
114 Z軸移動機構
116 Z軸ガイドレール
118 切削ユニット
118a 切削ブレード
120 スピンドルハウジング
122 Z軸ボールネジ
124 Z軸パルスモータ
128 上部撮像ユニット
132 撮像ユニット支持構造
134 撮像ユニット移動機構
136 Z軸ガイドレール
138 Z軸移動プレート
140 Z軸ボールネジ
142 Z軸パルスモータ
144 支持アーム
146 下部撮像ユニット
148 照明装置
150 可視光用カメラ
A 領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16