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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-13
(45)【発行日】2023-10-23
(54)【発明の名称】被加工物の分割方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20231016BHJP
   B23K 26/364 20140101ALI20231016BHJP
   B24B 27/06 20060101ALI20231016BHJP
   B24B 41/06 20120101ALI20231016BHJP
   B28D 1/24 20060101ALI20231016BHJP
   B28D 5/00 20060101ALI20231016BHJP
   B26F 3/00 20060101ALI20231016BHJP
【FI】
H01L21/78 V
H01L21/78 X
B23K26/364
B24B27/06 M
B24B41/06 L
B28D1/24
B28D5/00 Z
B26F3/00 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020010715
(22)【出願日】2020-01-27
(65)【公開番号】P2021118260
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(72)【発明者】
【氏名】アン マイク
【審査官】境 周一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-236034(JP,A)
【文献】特開2011-187608(JP,A)
【文献】特開2015-095547(JP,A)
【文献】特開2013-235940(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
B23K 26/364
B24B 27/06
B24B 41/06
B28D 1/24
B28D 5/00
B26F 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分割予定ラインで区画された底面にデバイスが形成された凹部と、該凹部を囲むリング状の補強部と、を備える被加工物を分割する際に用いられる被加工物の分割方法であって、
第1テープを該凹部の底面に接触させることなく該補強部に貼付し、該凹部の内側の空間を該第1テープで密閉するテープ貼付ステップと、
該補強部に該第1テープが貼付された該被加工物の該第1テープとは反対の面側から分割の起点となる起点領域を該分割予定ラインに形成する起点領域形成ステップと、
第2テープを該被加工物の該面側に貼付するとともに、該第1テープを該補強部から剥離するテープ貼り替えステップと、
該第2テープを拡張して該起点領域を起点に該被加工物を分割する分割ステップと、を備えることを特徴とする被加工物の分割方法。
【請求項2】
該起点領域形成ステップでは、砥粒を含む切り刃を備えた切削ブレードを回転させて該被加工物の該面側に切り込ませ、分割の起点となる溝を該分割予定ラインに形成することを特徴とする請求項1に記載の被加工物の分割方法。
【請求項3】
該起点領域形成ステップでは、該被加工物に吸収される波長のレーザービームを該被加工物の該面側に照射し、分割の起点となる溝を該分割予定ラインに形成することを特徴とする請求項1に記載の被加工物の分割方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状の被加工物を分割する際に用いられる被加工物の分割方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機やパーソナルコンピュータに代表される電子機器では、電子回路等のデバイスを備えるデバイスチップが必須の構成要素になっている。デバイスチップは、例えば、シリコン等の半導体材料でなるウェーハの表面を分割予定ライン(ストリート)で複数の領域に区画し、各領域にデバイスを形成した上で、この分割予定ラインに沿ってウェーハを分割することにより得られる。
【0003】
ウェーハを複数のデバイスチップへと分割する際には、例えば、ダイヤモンド等の砥粒を金属や樹脂等の結合剤で固めてなる環状の切削ブレードを装着した切削装置が使用される。切削ブレードを高速に回転させて、分割予定ラインに沿ってウェーハに切り込ませれば、ウェーハを複数のデバイスチップへと分割できる。分割された後のウェーハは、切削装置が備える洗浄ユニットで洗浄される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-339435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した切削装置を使用してウェーハのような板状の被加工物を分割する際には、被加工物の裏面側に保護用のテープを貼付し、このテープを介して被加工物を保持することによって、デバイスが露出した状態で被加工物を切削することが多い。しかしながら、この方法では、切削によって発生する屑や塵がデバイス等に固着し易かった。
【0006】
デバイスに固着した屑や塵は、後に被加工物を洗浄しても完全には除去されず、不良の原因となってしまう。これに対して、被加工物の表面側にテープを貼付し、裏面側が露出した状態で被加工物を切削することも考えられる。ところが、この場合には、テープの接着剤が表面側のデバイスに残留し、不良の原因となることがあった。
【0007】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、被加工物を分割する際にデバイスが汚染される可能性を低く抑えられる新たな被加工物の分割方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、分割予定ラインで区画された底面にデバイスが形成された凹部と、該凹部を囲むリング状の補強部と、を備える被加工物を分割する際に用いられる被加工物の分割方法であって、第1テープを該凹部の底面に接触させることなく該補強部に貼付し、該凹部の内側の空間を該第1テープで密閉するテープ貼付ステップと、該補強部に該第1テープが貼付された該被加工物の該第1テープとは反対の面側から分割の起点となる起点領域を該分割予定ラインに形成する起点領域形成ステップと、第2テープを該被加工物の該面側に貼付するとともに、該第1テープを該補強部から剥離するテープ貼り替えステップと、該第2テープを拡張して該起点領域を起点に該被加工物を分割する分割ステップと、を備える被加工物の分割方法が提供される。
【0009】
本発明の一態様において、該起点領域形成ステップでは、砥粒を含む切り刃を備えた切削ブレードを回転させて該被加工物の該面側に切り込ませ、分割の起点となる溝を該分割予定ラインに形成することがある。
【0010】
また、本発明の一態様において、該起点領域形成ステップでは、該被加工物に吸収される波長のレーザービームを該被加工物の該面側に照射し、分割の起点となる溝を該分割予定ラインに形成することがある。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様にかかる被加工物の分割方法では、第1テープを凹部のデバイスが形成された底面に接触させることなく補強部に貼付し、凹部の内側の空間を第1テープで密閉した後に、第1テープとは反対の面側から分割の起点となる起点領域を形成するので、デバイスが配置される凹部の内側の空間を清浄な状態に保ちながら、被加工物に起点領域を形成できる。
【0012】
つまり、起点領域を形成する際に発生する屑や塵がデバイスに付着することを防止できる。また、テープを被加工物のデバイスが形成された領域に貼付する場合のように、テープの接着剤がデバイスに残留することもない。よって、本発明の一態様にかかる被加工物の分割方法によれば、被加工物を分割する際にデバイスが汚染される可能性を低く抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、被加工物を模式的に示す斜視図である。
図2図2は、第1テープが貼付された被加工物を模式的に示す断面図である。
図3図3は、分割の起点となる溝が被加工物に形成される様子を模式的に示す断面図である。
図4図4は、溝が形成された被加工物を模式的に示す断面図である。
図5図5は、第2テープが貼付された被加工物を模式的に示す断面図である。
図6図6は、第1テープが剥離された被加工物を模式的に示す断面図である。
図7図7は、被加工物が分割される様子を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。図1は、本実施形態にかかる被加工物の分割方法で分割される被加工物11を模式的に示す斜視図である。被加工物11は、例えば、シリコン等の半導体を用いて形成された円盤状のウェーハであり、第1面(表面)11aと、第1面11aとは反対側に位置する第2面(裏面)11bと、を有している。
【0015】
第1面11aと、第2面11bと、は、共に概ね平坦であり、且つ、互いに概ね平行である。被加工物11の第1面11a側の中央の領域には、第1面11a側から見た形状が円形の凹部13が設けられている。つまり、この凹部13は、第1面11aに開口し、凹部13の内側の空間は、第1面11a側で被加工物11の外側の空間に接続されている。
【0016】
被加工物11の凹部13を囲むリング状の領域は、凹部13によって不足する被加工物11の強度を補う補強部15となる。リング状の補強部15の厚み(第1面11aと第2面11bとの距離)は、凹部13の底面13aと第2面11bとの距離に比べて大きくなっている。
【0017】
凹部13の底面13aは、互いに交差する複数の分割予定ライン17で複数の領域に区画されており、各領域には、IC(Integrated Circuit)等のデバイス19が形成されている。なお、被加工物11の材質、形状、構造、大きさ等に制限はない。例えば、他の半導体、セラミックス、樹脂、金属等を用いて形成される基板を被加工物11として用いることもできる。同様に、デバイス19の種類、数量、形状、構造、大きさ、配置等にも制限はない。
【0018】
このような被加工物11は、例えば、互いに概ね平行な2つの平面を持つウェーハ等の中央の領域を、エッチングや研削等の方法で薄くして凹部13を形成し、この凹部13の底面13aにデバイス19を形成することで得られる。凹部13と補強部15とを備える被加工物11を用いることで、デバイス19が汚染される可能性を低く抑えた被加工物の分割方法を実現できるようになる。ただし、この被加工物11を得る方法に特段の制限はない。
【0019】
本実施形態にかかる被加工物の分割方法では、まず、被加工物11を加工する際に発生する屑や塵がデバイス19に付着しないように、凹部13の内側の空間を密閉する。具体的には、凹部13を覆うことのできる大きさのテープ(第1テープ)を、補強部15の第1面11a側に貼付し、凹部13の内側の空間と被加工物11の外側の空間とを隔てる(テープ貼付ステップ)。
【0020】
図2は、第1テープ21が貼付された被加工物11を模式的に示す断面図である。第1テープ21は、フィルム状の基材層と、基材層の一方の面の概ね全体に設けられ被加工物11に対して接着力を示す接着剤層と、を含む。第1テープ21の基材層は、例えば、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート等の材料で形成され、第1テープ21の接着剤層は、例えば、アクリル系やゴム系の材料で形成される。
【0021】
この第1テープ21は、例えば、被加工物11の第1面11a(又は第2面11b)の外径と同程度の径を持つ円形に形成される。被加工物11に第1テープ21を貼付する際には、第1テープ21の外周部に位置する接着剤層を、被加工物11の補強部15の第1面11aに密着させる。
【0022】
より具体的には、被加工物11の周方向の全体において、補強部15の第1面11aと第1テープ21の接着剤層とに隙間ができないように、第1テープ21を被加工物11に密着させる。これにより、凹部13の内側の空間が第1テープ21で密閉される。ただし、凹部13の底面13aには第1テープ21を接触させないようにする。底面13aに第1テープ21を接触させると、第1テープ21の接着剤層を構成する材料(接着剤)がデバイス19に付着して残留する可能性が高くなるためである。
【0023】
第1テープ21を補強部15に貼付した後には、被加工物11の第2面11b側(すなわち、第1テープ21とは反対の面側)から、分割の起点となる溝(起点領域)を分割予定ライン17に形成する(起点領域形成ステップ)。図3は、分割の起点となる溝17aが被加工物11に形成される様子を模式的に示す断面図である。
【0024】
被加工物11に溝17aを形成する際には、例えば、図3に示す切削装置2が用いられる。切削装置2は、例えば、被加工物11の保持に適した概ね平坦な保持面を持つチャックテーブル(真空チャック)(不図示)を備えている。このチャックテーブルは、モータ等の回転駆動源に連結されており、上述した保持面に対して概ね垂直な回転軸の周りに回転する。また、チャックテーブルは、ボールねじ式の移動機構によって支持されており、上述した保持面に対して概ね平行な加工送り方向に移動する。
【0025】
チャックテーブルの上方には、切削ユニット4が配置されている。切削ユニット4は、例えば、チャックテーブルの保持面に対して概ね平行で加工送り方向に対して概ね垂直な軸心を持つスピンドル6を備えている。スピンドル6の一端側には、砥粒を含む切り刃を備えた切削ブレード8が装着されている。スピンドル6の他端側には、モータ等の回転駆動源(不図示)が連結されており、スピンドル6の一端側に装着された切削ブレード8は、この回転駆動源の動力によって回転する。
【0026】
切削ユニット4は、ボールねじ式の移動機構(不図示)によって支持されている。切削ブレード8は、この移動機構によって、チャックテーブルの保持面に対して概ね平行で加工送り方向に対して概ね垂直な割り出し送り方向と、保持面に対して概ね垂直な鉛直方向とに移動する。切削ブレード8の側方には、切削ブレード8や被加工物11に水等の液体(切削液)を供給するノズル(不図示)が配置されている。
【0027】
分割の起点となる溝17aを分割予定ライン17に形成する際には、被加工物11に貼付されている第1テープ21の基材層側をチャックテーブルの保持面に接触させて、このチャックテーブルで被加工物11を保持する。つまり、第2面11b側が上方に露出するように、被加工物11をチャックテーブルで保持する。
【0028】
被加工物11をチャックテーブルで保持した後には、例えば、チャックテーブルを回転させて、任意の分割予定ライン17を加工送り方向に対して概ね平行にする。次に、チャックテーブルと切削ユニット4とを相対的に移動させて、この分割予定ライン17の延長線の上方に切削ブレード8の位置を合わせる。なお、分割予定ライン17の位置を確認する際には、赤外線カメラ等でデバイス19を第2面11b側から撮像すると良い。分割予定ライン17を示す目印を被加工物11の第2面11b等に付しておいても良い。
【0029】
また、切削ブレード8の下端の高さが被加工物11の第2面11bの高さより低くなり、底面13aの高さより高くなるように、チャックテーブルに対する切削ユニット4の高さを調整する。そして、切削ブレード8を回転させながら、チャックテーブルを加工送り方向に移動させて、切削ブレード8を被加工物11に切り込ませる。切削ブレード8を被加工物11に切り込ませる際には、切削ブレード8や被加工物11に対して、ノズルから液体を供給する。
【0030】
これにより、回転させた切削ブレード8を被加工物11の第2面11b側に切り込ませて、対象の分割予定ライン17に溝17aを形成できる。本実施形態では、切削ブレード8の下端の高さを底面13aの高さより高くしているので、形成される溝17aが被加工物11を貫通することはない。言い換えれば、形成される溝17aが底面13aに開口することはない。
【0031】
よって、この溝17aを形成する際に発生する屑や塵が凹部13の内側の空間に侵入してデバイス19に付着することもない。同様の手順が、全ての分割予定ライン17に溝17aが形成されるまで繰り返される。図4は、溝17aが形成された被加工物11を模式的に示す断面図である。
【0032】
なお、被加工物11に溝17aを形成する際には、第2面11b側から見て底面13aと重なる領域(補強部15より内側の領域)だけでなく、第2面11b側から見て底面13aより外側の領域(補強部15)にも溝17aを形成することが望ましい。これにより、補強部15を含む被加工物11の全体を適切に分割できるようになる。
【0033】
この場合には、補強部15の溝17aを、補強部15より内側の領域の溝17aより深く形成しても良い。補強部15の深い溝17aは、例えば、回転させた切削ブレード8を直上から切り込ませるチョッパーカットと呼ばれる方法で形成することができる。なお、被加工物11を分割する前に補強部15を除去するのであれば、底面13aより外側の領域に溝17aを形成する必要はない。
【0034】
分割の起点となる溝17aを被加工物11に形成した後には、被加工物11の第2面11b側に別のテープ(第2テープ)を貼付し、第1テープ21を補強部15(被加工物11の第1面11a)から剥離する(テープ貼り替えステップ)。図5は、第2テープ23が貼付された被加工物11を模式的に示す断面図であり、図6は、第1テープ21が剥離された被加工物11を模式的に示す断面図である。
【0035】
第2テープ23の構造や材質は、例えば、第1テープ21と同様である。すなわち、第2テープ23は、フィルム状の基材層と、基材層の一方の面の概ね全体に設けられ被加工物11に対して接着力を示す接着剤層と、を含む。ただし、この第2テープ23は、被加工物11の第1面11a(又は第2面11b)の外縁よりも大きくなるように形成されている。
【0036】
被加工物11に第2テープ23を貼付する際には、図5に示すように、第2テープ23の接着剤層を被加工物11の第2面11bの全体に密着させる。このように、第2面11bの全体に第2テープ23を貼付することで、この第2テープ23を拡張した際に第2面11bの全体に力を作用させて被加工物11を適切に分割できるようになる。被加工物11に第2テープ23を貼付した後には、図6に示すように、第1テープ21を補強部15から剥離する。
【0037】
なお、本実施形態では、被加工物11に第2テープ23を貼付した後に、第1テープ21を補強部15から剥離しているが、第1テープ21を補強部15から剥離した後に、被加工物11に第2テープ23を貼付しても良い。また、被加工物11よりも大きな開口部を有するリング状のフレームの開口部に被加工物11が収容されるように、第2テープ23にリング状のフレームを固定しても良い。
【0038】
被加工物11に第2テープ23を貼付し、第1テープ21を補強部15から剥離した後には、第2テープ23を拡張して溝17aを起点に被加工物11を分割する(分割ステップ)。図7は、被加工物11が分割される様子を模式的に示す断面図である。被加工物11を分割する際には、例えば、被加工物11より径の大きい円筒状の拡張ドラムを備える拡張装置が使用される。
【0039】
具体的には、拡張装置の拡張ドラムと第2テープ23とを相対的に移動させて、円筒の底面に相当する拡張ドラムの端面を、第2テープ23の基材層に突き当てる。その結果、拡張ドラムの径方向に(すなわち、等方的に)第2テープ23が拡張され、この第2テープ23の拡張に伴い被加工物11に付与される力によって、被加工物11が複数のチップ31に分割される。
【0040】
なお、被加工物11を分割する際の具体的な方法に制限はない。本実施形態では、円筒状の拡張ドラムを備える拡張装置を使用し、第2テープ23を等方的に拡張することで被加工物11を分割しているが、例えば、分割予定ライン17に対して垂直な方向に第2テープ23を拡張して被加工物11を分割することもできる。
【0041】
以上のように、本実施形態にかかる被加工物の分割方法では、第1テープ21を凹部13のデバイス19が形成された底面13aに接触させることなく補強部15に貼付し、凹部13の内側の空間を第1テープ21で密閉した後に、第1テープ21とは反対の第2面11b側から分割の起点となる溝(起点領域)17aを形成するので、デバイス19が配置される凹部13の内側の空間を清浄な状態に保ちながら、被加工物11に溝17aを形成できる。
【0042】
つまり、溝17aを形成する際に発生する屑や塵がデバイス19に付着することを防止できる。また、テープを被加工物11のデバイス19が形成された領域に貼付する場合のように、テープの接着剤がデバイス19に残留することもない。よって、本実施形態にかかる被加工物の分割方法によれば、被加工物11を分割する際にデバイス19が汚染される可能性を低く抑えられる。
【0043】
なお、本発明は、上述した実施形態の記載に制限されず種々変更して実施可能である。例えば、上述した実施形態では、第1面11a側から見た形状が円形の凹部13を備える被加工物11を分割しているが、同様の方法で、第1面11a側から見た形状が非円形の凹部13を備える被加工物11を分割できる。
【0044】
また、上述した実施形態では、砥粒を含む切り刃を備えた切削ブレード8を用いて分割の起点となる溝(起点領域)17aを被加工物11の分割予定ライン17に形成しているが、被加工物11に吸収される波長のレーザービームを被加工物11の第2面11b側に照射するアブレーション加工によって、分割の起点となる溝(起点領域)を被加工物11の分割予定ライン17に形成することもできる(起点領域形成ステップ)。
【0045】
なお、この場合には、例えば、被加工物11の保持に適した概ね平坦な保持面を持つチャックテーブル(真空チャック)と、被加工物11に吸収される波長のレーザービームを生成するレーザー発振器やレーザービームを集光するレンズ等の集光器を備えるレーザー加工ユニットと、を含むレーザー加工装置が使用される。
【0046】
その他、上述した実施形態にかかる構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0047】
11 :被加工物
11a :第1面(表面)
11b :第2面(裏面)
13 :凹部
13a :底面
15 :補強部
17 :分割予定ライン
17a :溝
19 :デバイス
21 :第1テープ
23 :第2テープ
31 :チップ
2 :切削装置
4 :切削ユニット
6 :スピンドル
8 :切削ブレード
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7