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特許7367036組成物、偏光子層、積層体、および画像表示装置
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  • 特許-組成物、偏光子層、積層体、および画像表示装置 図1
  • 特許-組成物、偏光子層、積層体、および画像表示装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-13
(45)【発行日】2023-10-23
(54)【発明の名称】組成物、偏光子層、積層体、および画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20231016BHJP
   G02B 5/22 20060101ALI20231016BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20231016BHJP
   C09K 19/38 20060101ALI20231016BHJP
   C09K 19/60 20060101ALI20231016BHJP
   C08F 20/28 20060101ALI20231016BHJP
   C08F 20/20 20060101ALI20231016BHJP
   B32B 27/06 20060101ALI20231016BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20231016BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20231016BHJP
   B32B 17/10 20060101ALI20231016BHJP
【FI】
G02B5/30
G02B5/22
G09F9/30 365
G09F9/30 349E
C09K19/38
C09K19/60 A
C08F20/28
C08F20/20
B32B27/06
B32B7/023
B32B27/18 A
B32B17/10
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2021544051
(86)(22)【出願日】2020-09-04
(86)【国際出願番号】 JP2020033595
(87)【国際公開番号】W WO2021045192
(87)【国際公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-02-22
(31)【優先権主張番号】P 2019162262
(32)【優先日】2019-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020058300
(32)【優先日】2020-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】星野 渉
(72)【発明者】
【氏名】平井 友樹
(72)【発明者】
【氏名】松山 拓史
(72)【発明者】
【氏名】柴田 直也
【審査官】磯崎 忠昭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/186503(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/124198(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/199096(WO,A1)
【文献】特表2003-520878(JP,A)
【文献】国際公開第2019/131949(WO,A1)
【文献】特開2001-004834(JP,A)
【文献】特開2014-159124(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
G02B 5/22
G09F 9/30
C09K 19/38
C09K 19/60
C08F 20/28
C08F 20/20
B32B 27/06
B32B 7/023
B32B 27/18
B32B 17/10
G02F 1/1335
G02F 1/13363
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、高分子液晶化合物、二色性物質、および、低分子液晶化合物を含有する組成物であり、
前記高分子液晶化合物が、下記式(1)で表される繰り返し単位(1)を有する共重合体であり、
前記低分子液晶化合物が、下記式(LC)で表される化合物であり、
下記式(11)~(13)、並びに、下記式(20)および(21)の関係を満たす、組成物。
【化1】

【化2】

前記式(1)中、PC1は繰り返し単位の主鎖を表し、L1は単結合または2価の連結基を表し、SP1はスペーサー基を表し、MG1はメソゲン基を表し、T1は末端基を表す。
前記式(LC)中、SPL1およびSPL2はそれぞれ独立にスペーサー基を表し、MLはメソゲン基を表し、Q1およびQ2はそれぞれ独立に架橋性基または末端基を表し、Q1およびQ2の少なくとも一方は架橋性基を表す。
|logP(SP1)-logP(SPL1)| ≦ 2.0 (11)
|logP(MG1)-logP(SP1)| ≧ 4.5 (12)
|logP(ML)-logP(SPL1)| ≧ 4.0 (13)
式(11)~(13)中、logP(SP1)は前記式(1)におけるSP1のlogP値を表し、logP(MG1)は前記式(1)におけるMG1のlogP値を表し、logP(SPL1)は前記式(LC)におけるSPL1のlogP値を表し、logP(ML)は前記式(LC)におけるMLのlogP値を表す。
D(SPL1) ≧ D(SPL2) (20)
|D(SP1)-D(SPL1)| ≦ 4.0Å (21)
式(20)および式(21)中、D(SPL1)は前記式(LC)におけるSPL1の分子長を表し、D(SPL2)は前記式(LC)におけるSPL2の分子長を表し、D(SP1)は前記式(1)におけるSP1の分子長を表す。
【請求項2】
少なくとも、高分子液晶化合物、二色性物質、および、低分子液晶化合物を含有する組成物であり、
前記高分子液晶化合物が、下記式(1)で表される繰り返し単位(1)を有する共重合体であり、
前記低分子液晶化合物が、下記式(LC)で表される化合物であり、
下記式(11)~(13)、並びに、下記式(20)および(41’)の関係を満たす、組成物。
【化3】

【化4】

前記式(1)中、PC1は繰り返し単位の主鎖を表し、L1は単結合または2価の連結基を表し、SP1はスペーサー基を表し、MG1はメソゲン基を表し、T1は末端基を表す。
前記式(LC)中、SPL1およびSPL2はそれぞれ独立にスペーサー基を表し、MLはメソゲン基を表し、Q1およびQ2はそれぞれ独立に架橋性基または末端基を表し、Q1およびQ2の少なくとも一方は架橋性基を表す。
|logP(SP1)-logP(SPL1)| ≦ 2.0 (11)
|logP(MG1)-logP(SP1)| ≧ 4.5 (12)
|logP(ML)-logP(SPL1)| ≧ 4.0 (13)
式(11)~(13)中、logP(SP1)は前記式(1)におけるSP1のlogP値を表し、logP(MG1)は前記式(1)におけるMG1のlogP値を表し、logP(SPL1)は前記式(LC)におけるSPL1のlogP値を表し、logP(ML)は前記式(LC)におけるMLのlogP値を表す。
D(SPL1) ≧ D(SPL2) (20)
D(SPL2) ≦ 4.0Å (41’)
式(20)および式(41’)中、D(SPL1)は前記式(LC)におけるSPL1の分子長を表し、D(SPL2)は前記式(LC)におけるSPL2の分子長を表す。
【請求項3】
さらに、下記式(20)および(41’)の関係を満たす、請求項1に記載の組成物。
D(SPL1) ≧ D(SPL2) (20)
D(SPL2) ≦ 4.0Å (41’)
式(20)および式(41’)中、D(SPL1)は前記式(LC)におけるSPL1の分子長を表し、D(SPL2)は前記式(LC)におけるSPL2の分子長を表す。
【請求項4】
下記式(31)の関係を満たす、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
logP(SPL2) ≦ 1.5 (31)
ここで、式(31)中、logP(SPL2)は、前記式(LC)におけるSPL2のlogP値を表す。
【請求項5】
前記高分子液晶化合物が、さらに下記式(4)で表される繰り返し単位(4)を有し、
前記繰り返し単位(4)の含有量が、前記高分子液晶化合物の全繰り返し単位に対して、10質量%以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【化5】

ここで、式(4)中、PC4は繰り返し単位の主鎖を表し、L4は単結合または2価の連結基を表し、SP4はスペーサー基を表し、T4は架橋性基を表す。
【請求項6】
前記式(4)におけるSP4の主鎖の原子数が、15以上である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記式(1)におけるSP1がオキシエチレン構造である、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
さらに、高分子界面改良剤を含有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
少なくとも、高分子液晶化合物、二色性物質、および、低分子液晶化合物を含有する組成物を用いて形成された偏光子層であって、
前記高分子液晶化合物が、下記式(1)で表される繰り返し単位(1)を有する共重合体であり、
前記低分子液晶化合物が、下記式(LC)で表される化合物であり、
下記式(11)、(12)、(13)、および、(20)の関係を満たし、下記式(21)および(41’)の少なくとも一方の関係を満たす、偏光子層。
【化6】

【化7】

前記式(1)中、PC1は繰り返し単位の主鎖を表し、L1は単結合または2価の連結基を表し、SP1はスペーサー基を表し、MG1はメソゲン基を表し、T1は末端基を表す。
前記式(LC)中、SPL1およびSPL2はそれぞれ独立にスペーサー基を表し、MLはメソゲン基を表し、Q1およびQ2はそれぞれ独立に架橋性基または末端基を表し、Q1およびQ2の少なくとも一方は架橋性基を表す。
|logP(SP1)-logP(SPL1)| ≦ 2.0 (11)
|logP(MG1)-logP(SP1)| ≧ 4.5 (12)
|logP(ML)-logP(SPL1)| ≧ 4.0 (13)
式(11)~(13)中、logP(SP1)は前記式(1)におけるSP1のlogP値を表し、logP(MG1)は前記式(1)におけるMG1のlogP値を表し、logP(SPL1)は前記式(LC)におけるSPL1のlogP値を表し、logP(ML)は前記式(LC)におけるMLのlogP値を表す。
D(SPL1) ≧ D(SPL2) (20)
|D(SP1)-D(SPL1)| ≦ 4.0Å (21)
D(SPL2) ≦ 4.0Å (41’)
式(20)、式(21)および式(41’)中、D(SPL1)は前記式(LC)におけるSPL1の分子長を表し、D(SPL2)は前記式(LC)におけるSPL2の分子長を表し、D(SP1)は前記式(1)におけるSP1の分子長を表す。
【請求項10】
基材と、前記基材上に設けられた請求項9に記載の偏光子層とを有する、積層体。
【請求項11】
前記基材上に、さらに、架橋性基を有する繰り返し単位を有する重合体を含有する配向層を有し、
前記架橋性基を有する繰り返し単位の含有量が、前記重合体の全繰り返し単位に対して、20質量%以上である、請求項10に記載の積層体。
【請求項12】
前記重合体が、さらに、下記式(PA)で表される部分構造を有する繰り返し単位を有する、請求項11に記載の積層体。
【化8】

前記式(PA)中、2つの*は、結合位置を表し、RP1~RP4はそれぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。
【請求項13】
前記偏光子層上に屈折率調整層を有する、請求項10~12のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項14】
ヘイズが0.2~1.5%である、請求項10~13のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項15】
請求項9に記載の偏光子層と、紫外線吸収剤を含有する層とを有する、積層体。
【請求項16】
さらに、λ/4板を有する、請求項10~15のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項17】
前記偏光子層における前記λ/4板が設けられた面とは反対面側に、ガラス基板を有し、
前記積層体が前記基材を有する場合には、前記基材が前記ガラス基板である、請求項16に記載の積層体。
【請求項18】
前記偏光子層における前記λ/4板が設けられた面とは反対面側に、バリヤ層を有する、請求項16に記載の積層体。
【請求項19】
請求項9に記載の偏光子層、または請求項10~18のいずれか1項に記載の積層体を有する、画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物、偏光子層、積層体、および画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザー光または自然光を含む照射光の減衰機能、偏光機能、散乱機能、または、遮光機能等が必要となった際には、それぞれの機能ごとに異なった原理によって作動する装置を利用していた。そのため、上記の機能に対応する製品も、それぞれの機能別に異なった製造工程によって製造されていた。
例えば、画像表示装置(例えば、液晶表示装置)では、表示における旋光性または複屈折性を制御するために直線偏光子または円偏光子が用いられている。また、有機発光ダイオード(Organic Light Emitting Diode:OLED)においても、外光の反射防止のために円偏光子が使用されている。
【0003】
従来、これらの偏光子には、ヨウ素が二色性物質として広く使用されてきたが、ヨウ素の代わりに有機色素を二色性物質として使用する偏光子についても検討されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、高分子液晶化合物、低分子液晶化合物および二色性物質を含有する液晶組成物が記載されている(請求項1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2018/199096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、特許文献1に記載された液晶組成物を用いて得られた光吸収異方性層(偏光子層)について検討したところ、液晶組成物に含まれる高分子液晶化合物および低分子液晶化合物の種類によっては、高配向度と、積層体に適用した場合において偏光子層と他の層との高い密着性と、を両立することが難しいことが明らかになった。
そこで、本発明は、配向度に優れ、かつ、積層体に適用した場合に他の層との密着性に優れた偏光子層を形成できる組成物、偏光子層、積層体および画像表示装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らが鋭意検討した結果、特定の関係を満たす高分子液晶化合物と低分子液晶化合物とを併用した組成物を用いれば、配向度に優れ、かつ、積層体に適用した場合に他の層との密着性に優れた偏光子層を形成できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、以下の構成により上記課題を達成できることを見出した。
【0008】
[1]
少なくとも、高分子液晶化合物、二色性物質、および、低分子液晶化合物を含有する組成物であり、
上記高分子液晶化合物が、後述の式(1)で表される繰り返し単位(1)を有する共重合体であり、
上記低分子液晶化合物が、後述の式(LC)で表される化合物であり、
下記式(11)~(13)の関係を満たす、組成物。
後述の式(1)中、PC1は繰り返し単位の主鎖を表し、L1は単結合または2価の連結基を表し、SP1はスペーサー基を表し、MG1はメソゲン基を表し、T1は末端基を表す。
後述の式(LC)中、SPL1およびSPL2はそれぞれ独立にスペーサー基を表し、MLはメソゲン基を表し、Q1およびQ2はそれぞれ独立に架橋性基または末端基を表し、Q1およびQ2の少なくとも一方は架橋性基を表す。
|logP(SP1)-logP(SPL1)| ≦ 2.0 (11)
|logP(MG1)-logP(SP1)| ≧ 4.5 (12)
|logP(ML)-logP(SPL1)| ≧ 4.0 (13)
式(11)~(13)中、logP(SP1)は後述の式(1)におけるSP1のlogP値を表し、logP(MG1)は後述の式(1)におけるMG1のlogP値を表し、logP(SPL1)は後述の式(LC)におけるSPL1のlogP値を表し、logP(ML)は後述の式(LC)におけるMLのlogP値を表す。
[2]
さらに、下記式(20)および(21)の関係を満たす、[1]に記載の組成物。
D(SPL1) ≧ D(SPL2) (20)
|D(SP1)-D(SPL1)| ≦ 4.0Å (21)
式(20)および式(21)中、D(SPL1)は後述の式(LC)におけるSPL1の分子長を表し、D(SPL2)は後述の式(LC)におけるSPL2の分子長を表し、D(SP1)は後述の式(1)におけるSP1の分子長を表す。
[3]
さらに、下記式(20)および(41’)の関係を満たす、[1]に記載の組成物。
D(SPL1) ≧ D(SPL2) (20)
D(SPL2) ≦ 4.0Å (41’)
式(20)および式(41’)中、D(SPL1)は後述の式(LC)におけるSPL1の分子長を表し、D(SPL2)は後述の式(LC)におけるSPL2の分子長を表す。
[4]
下記式(31)の関係を満たす、[1]~[3]のいずれかに記載の組成物。
logP(SPL2) ≦ 1.5 (31)
ここで、式(31)中、logP(SPL2)は、後述の式(LC)におけるSPL2のlogP値を表す。
[5]
上記高分子液晶化合物が、さらに後述の式(4)で表される繰り返し単位(4)を有し、
上記繰り返し単位(4)の含有量が、上記高分子液晶化合物の全繰り返し単位に対して、10質量%以上である、[1]~[4]のいずれかに記載の組成物。
ここで、後述の式(4)中、PC4は繰り返し単位の主鎖を表し、L4は単結合または2価の連結基を表し、SP4はスペーサー基を表し、T4は架橋性基を表す。
[6]
後述の式(4)におけるSP4の主鎖の原子数が、15以上である、[5]に記載の組成物。
[7]
後述の式(1)におけるSP1がオキシエチレン構造である、[1]~[6]のいずれかに記載の組成物。
[8]
さらに、高分子界面改良剤を含有する、[1]~[7]のいずれかに記載の組成物。
[9]
[1]~[8]のいずれかに記載の組成物を用いて形成される、偏光子層。
[10]
基材と、上記基材上に[9]に記載の偏光子層とを有する、積層体。
[11]
上記基材上に、さらに、架橋性基を有する繰り返し単位を有する重合体を含有する配向層を有し、
上記架橋性基を有する繰り返し単位の含有量が、上記重合体の全繰り返し単位に対して、20質量%以上である、[10]に記載の積層体。
[12]
上記重合体が、さらに、後述の式(PA)で表される部分構造を有する繰り返し単位を有する、[11]に記載の積層体。
後述の式(PA)中、2つの*は、結合位置を表し、RP1~RP4はそれぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。
[13]
上記偏光子層上に屈折率調整層を有する、[10]~[12]のいずれかに記載の積層体。
[14]
ヘイズが0.2~1.5%である、[10]~[13]のいずれかに記載の積層体。
[15]
[9]に記載の偏光子層と、紫外線吸収剤を含有する層とを有する、積層体。
[16]
さらに、λ/4板を有する、[10]~[15]のいずれかに記載の積層体。
[17]
上記偏光子層における上記λ/4板が設けられた面とは反対面側に、ガラス基板を有し、
上記積層体が上記基材を有する場合には、上記基材が上記ガラス基板である、[16]に記載の積層体。
[18]
上記偏光子層における上記λ/4板が設けられた面とは反対面側に、バリヤ層を有する、[16]に記載の積層体。
[19]
[9]に記載の偏光子層、または[10]~[18]のいずれかに記載の積層体を有する、画像表示装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、配向度に優れ、かつ、積層体に適用した場合に他の層との密着性に優れた偏光子層を形成できる組成物、偏光子層、積層体および画像表示装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の積層体の一例を示す模式的な断面図である。
図2図2は、本発明の積層体の一例を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、(メタ)アクリル酸とは、「アクリル酸」および「メタクリル酸」の総称であり、(メタ)アクリロイルとは、「アクリロイル」および「メタクリロイル」の総称であり、(メタ)アクリルとは、「アクリル」および「メタクリル」の総称である。
本明細書において、平行、直交とは厳密な意味での平行、直交を意味するのではなく、平行または直交から±5°の範囲を意味する。
【0012】
本明細書において、液晶化合物を含む組成物、および、液晶化合物とは、硬化等により、もはや液晶性を示さなくなったものも概念として含まれる。
本明細書において、各成分は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。ここで各成分について2種以上併用する場合、その成分の含有量とは特段の断りがない限り、合計の含有量を指す。
本明細書において、配向度および密着性のうちの少なくとも1つがより優れることを、本発明の効果がより優れるということがある。
【0013】
〔置換基W〕
本明細書で用いられる置換基Wは、以下の基を表す。
置換基Wとしては、例えば、ハロゲン原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のハロゲン化アルキル基、炭素数1~20のシクロアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数1~20のアルケニル基、炭素数1~20のアルキニル基、炭素数1~20のアリール基、複素環基(ヘテロ環基といってもよい)、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、カルボキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アニリノ基を含む)、アンモニオ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキルまたはアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキルまたはアリールスルフィニル基、アルキルまたはアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリールまたはヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、ホスホノ基、シリル基、ヒドラジノ基、ウレイド基、ボロン酸基(-B(OH)2)、ホスファト基(-OPO(OH)2)、スルファト基(-OSO3H)、その他の公知の置換基などが挙げられる。
なお、置換基の詳細については、特開2007-234651号公報の段落[0023]に記載される。
また、置換基Wは、下記式(W1)で表される基であってもよい。
【0014】
【化1】
【0015】
式(W1)中、
*は、結合位置を表し、
LWは、単結合または2価の連結基を表し、
SPWは、2価のスペーサー基を表し、
Qは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20の直鎖、分岐または環状のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数1~20のアルケニル基、炭素数1~20のアルキニル基、炭素数1~20のアリール基、複素環基(ヘテロ環基といってもよい)、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、カルボキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アニリノ基を含む)、アンモニオ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキルまたはアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキルまたはアリールスルフィニル基、アルキルまたはアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリールまたはヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、ホスホノ基、シリル基、ヒドラジノ基、ウレイド基、ボロン酸基(-B(OH)2)、ホスファト基(-OPO(OH)2)、スルファト基(-OSO3H)、下記式(P1)~(P-30)で表される架橋性基、
を表す。
【0016】
LWが表す2価の連結基としては、-O-、-(CH-、-(CF-、-Si(CH-、-(Si(CHO)-、-(OSi(CH-(gは1~10の整数を表す。)、-N(Z)-、-C(Z)=C(Z’)-、-C(Z)=N-、-N=C(Z)-、-C(Z)-C(Z’)-、-C(O)-、-OC(O)-、-C(O)O-、-O-C(O)O-、-N(Z)C(O)-、-C(O)N(Z)-、-C(Z)=C(Z’)-C(O)O-、-O-C(O)-C(Z)=C(Z’)-、-C(Z)=N-、-N=C(Z)-、-C(Z)=C(Z’)-C(O)N(Z’’)-、-N(Z’’)-C(O)-C(Z)=C(Z’)-、-C(Z)=C(Z’)-C(O)-S-、-S-C(O)-C(Z)=C(Z’)-、-C(Z)=N-N=C(Z’)-(Z、Z’、Z’’はそれぞれ独立に、水素、炭素数1~4のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、シアノ基、または、ハロゲン原子を表す。)、-C≡C-、-N=N-、-S-、-S(O)-、-S(O)(O)-、-(O)S(O)O-、-O(O)S(O)O-、-SC(O)-、および、-C(O)S-、などが挙げられる。LWは、これらの基を2つ以上組み合わせた基であってもよい(以下「L-C」とも省略する)。
【0017】
【化2】
【0018】
上記式(P-1)~(P-30)中、Rは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~10の直鎖、分岐、または環状のアルキレン基、炭素数1~20のハロゲン化アルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数1~20のアルケニル基、炭素数1~20のアルキニル基、炭素数1~20のアリール基、複素環基(ヘテロ環基といってもよい)、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、カルボキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アニリノ基を含む)、アンモニオ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキルまたはアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキルまたはアリールスルフィニル基、アルキルまたはアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリールまたはヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、ホスホノ基、シリル基、ヒドラジノ基、ウレイド基、ボロン酸基(-B(OH)2)、ホスファト基(-OPO(OH)2)、スルファト基(-OSO3H)、を表し、複数のRはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
架橋性基の好ましい態様としては、ラジカル重合性基、またはカチオン重合性基が挙げられ、ラジカル重合性基としては、上記式(P-1)で表されるビニル基、上記式(P-2)で表されるブタジエン基、上記式(P-4)で表される(メタ)アクリロイルオキシ基、上記式(P-5)で表される(メタ)アクリルアミド基、上記式(P-6)で表される酢酸ビニル基、上記式(P-7)で表されるフマル酸エステル基、上記式(P-8)で表されるスチリル基、上記式(P-9)で表されるビニルピロリドン基、上記式(P-11)で表される無水マレイン酸、上記式(P-12)で表されるマレイミド基、が好ましく、カチオン重合性基としては、上記式(P-18)で表されるビニルエーテル基、上記式(P-19)で表されるエポキシ基、上記式(P-20)で表されるオキセタニル基、が好ましい。
【0019】
SPWが表すスペーサー基としては、炭素数1~50の直鎖、分岐、または環状のアルキレン基、炭素数1~20複素環基が挙げられる。
上記アルキレン基、複素環基の炭素原子は、-O-、-Si(CH-、-(Si(CHO)-、-(OSi(CH-(gは1~10の整数を表す。)、-N(Z)-、-C(Z)=C(Z’)-、-C(Z)=N-、-N=C(Z)-、-C(Z)-C(Z’)-、-C(O)-、-OC(O)-、-C(O)O-、-O-C(O)O-、-N(Z)C(O)-、-C(O)N(Z)-、-C(Z)=C(Z’)-C(O)O-、-O-C(O)-C(Z)=C(Z’)-、-C(Z)=N-、-N=C(Z)-、-C(Z)=C(Z’)-C(O)N(Z’’)-、-N(Z’’)-C(O)-C(Z)=C(Z’)-、-C(Z)=C(Z’)-C(O)-S-、-S-C(O)-C(Z)=C(Z’)-、-C(Z)=N-N=C(Z’)-(Z、Z’、Z’’は独立に、水素、炭素数1~4のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、シアノ基、または、ハロゲン原子を表す。)、-C≡C-、-N=N-、-S-、-C(S)-、-S(O)-、-SO-、-(O)S(O)O-、-O(O)S(O)O-、-SC(O)-、および、-C(O)S-、これらの基を2つ以上組み合わせた基で置換されていてもよい(以下「SP-C」とも省略する)。
上記アルキレン基、複素環基の水素原子は、ハロゲン原子、シアノ基、-Z、-OH、-OZ、-COOH、-C(O)Z、-C(O)OZ、-OC(O)Z、-OC(O)OZ、-NZ’、-NZC(O)Z’、-NZC(O)OZ’、-C(O)NZ’、-OC(O)NZ’、-NZC(O)NZ’OZ’’、-SH、-SZ、-C(S)Z、-C(O)SZ、-SC(O)Z、で置換されていてもよい(以下、「SP-H」とも省略する)。ここで、Z、Z’は炭素数1~10のアルキル基、ハロゲン化アルキル基、-L-CL(Lは単結合または連結基を表す。連結基の具体例は上述したLWおよびSPWと同じである。CLは、架橋性基(上記式(P1)~(P30)で表される基が好ましい。)を表す。
【0020】
<組成物>
本発明の組成物(以下、「偏光子層形成用組成物」ともいう。)は、高分子液晶化合物、二色性物質、および、低分子液晶化合物を含有する組成物である。
また、上記高分子液晶化合物が後述する式(1)で表される繰り返し単位(1)を有する共重合体であり、上記低分子液晶化合物が後述する式(LC)で表される化合物である。
また、下記式(11)~(13)の関係を満たす。
|logP(SP1)-logP(SPL1)| ≦ 2.0 (11)
|logP(MG1)-logP(SP1)| ≧ 4.5 (12)
|logP(ML)-logP(SPL1)| ≧ 4.0 (13)
式(11)~(13)中、
logP(SP1)は上記式(1)におけるSP1のlogP値を表し、
logP(MG1)は上記式(1)におけるMG1のlogP値を表し、
logP(SPL1)は上記式(LC)におけるSPL1のlogP値を表し、
logP(ML)は上記式(LC)におけるMLのlogP値を表す。
【0021】
なお、上記高分子液晶化合物が繰り返し単位(1)を2種以上有する場合、少なくとも1種の繰り返し単位(1)と、上記低分子液晶化合物と、が上記関係式を満たしていればよい。
【0022】
本発明の組成物によれば、高配向度(すなわち、配向度に優れること)、かつ、積層体に適用した場合に他の層との密着性に優れた偏光子層を形成できる。この理由については明らかではないが、概ね以下のように推定している。
偏光子層の密着性向上には、偏光子層の硬化度を上げることが考えられ、例えば架橋性基を複数持つ化合物を併用する方法が挙げられる。しかしながら、高分子液晶化合物と、架橋性基を複数持つ化合物とを併用した場合、これらの化合物の相溶性が悪くなって、得られる偏光子層の配向度が低下する。
この問題に対して、高分子液晶化合物と相溶性の高い架橋性基を持つ化合物として、上述の式(11)~(13)を満たす低分子液晶化合物を用いることで、配向度に優れつつ、他の層との密着性にも優れた偏光子層が得られたと推定している。
また、本発明の組成物を垂直配向に用いた場合、配向度に優れた偏光子層を形成できる。
【0023】
〔高分子液晶化合物〕
本発明の組成物に含まれる高分子液晶化合物は、下記式(1)で表される繰り返し単位(1)を有する共重合体である。
繰り返し単位(1)と共重合可能な繰り返し単位の具体例としては、後述の繰り返し単位(2)~(5)が挙げられる。
高分子液晶化合物は、ブロック重合体、交互重合体、ランダム重合体、および、グラフト重合体など、いずれの重合体であってもよい。
【0024】
【化3】
【0025】
式(1)中、PC1は繰り返し単位の主鎖を表し、L1は単結合または2価の連結基を表し、SP1はスペーサー基を表し、MG1はメソゲン基を表し、T1は末端基を表す。
【0026】
SP1のlogP値を表すlogP(SP1)は、後述する式(LC)で表される低分子液晶化合物のSPL1のlogP値を表すlogP(SPL1)と、下記式(11)の関係を満たし、本発明の効果がより優れる点から、下記式(11’)の関係を満たすことが好ましい。
|logP(SP1)-logP(SPL1)| ≦ 2.0 (11)
|logP(SP1)-logP(SPL1)| ≦ 1.5 (11’)
また、SP1のlogP値を表すlogP(SP1)およびMG1のlogP値を表すlogP(MG1)は、下記式(12)の関係を満たし、本発明の効果がより優れる点から、下記式(12’)の関係を満たすことが好ましい。
|logP(MG1)-logP(SP1)| ≧ 4.5 (12)
|logP(MG1)-logP(SP1)| ≧ 5.0 (12’)
【0027】
ここで、logP値は、化学構造の親水性および疎水性の性質を表現する指標であり、親疎水パラメータと呼ばれることがある。logP値は、ChemBioDraw UltraまたはHSPiP(Ver.4.1.07)などのソフトウェアを用いて計算できる。また、OECD Guidelines for the Testing of Chemicals,Sections 1,Test No.117の方法などにより、実験的に求めることもできる。本発明では特に断りのない限り、HSPiP(Ver.4.1.07)に化合物の構造式を入力して算出される値をlogP値として採用する。
例えば、式(1)で表される繰り返し単位の部分構造であるSP1のlogP値は、SP1の構造式をソフトウェアに入力することで算出される。また、式(LC)で表される低分子液晶化合物の部分構造であるSPL1のlogP値は、SPL1の構造式をソフトウェアに入力することで算出される。
【0028】
さらに、本発明の効果がより優れる点から、上記式(1)におけるSP1の分子長を表すD(SP1)は、後述する式(LC)で表される低分子液晶化合物のSPL1の分子長を表すD(SPL1)と下記式(21)の関係を満たすことが好ましく、下記式(21’)の関係を満たすことがより好ましい。ただし、後述する式(LC)におけるSPL1の分子長を表すD(SPL1)と、後述する式(LC)におけるSPL2の分子長を表すD(SPL2)とは、下記式(20)の関係を満たす。
また、MG1の分子長を表すD(MG1)は、本発明の効果がより優れる点から、後述する式(LC)で表される低分子液晶化合物のMLの分子長を表すD(ML)と、下記式(22)の関係を満たすことが好ましく、下記式(22’)の関係を満たすことがより好ましい。
D(SPL1) ≧ D(SPL2) (20)
|D(SP1)-D(SPL1)| ≦ 4.0Å (21)
|D(SP1)-D(SPL1)| ≦ 3.0Å (21’)
|D(MG1)-D(ML)| ≦ 4.0Å (22)
|D(MG1)-D(ML)| ≦ 2.0Å (22’)
【0029】
ここで、スペーサー基およびメソゲン基などの分子長は、商用化されているWinmostarなどの分子力学計算が可能な計算ソフトを用いて計算することができる。本発明では特に断りのない限り、スペーサー基およびメソゲン基などの分子長は、以下の方法で算出される分子長の値を採用する。ChemDrawで作製した分子構造をMDLMolfile形式とし、Winmostarで開く。Winmostarの簡易分子力場法により構造最適化する。構造最適化後のスペーサー基およびメソゲン基の両末端の原子間距離を分子長として算出する。
【0030】
PC1が表す繰り返し単位の主鎖としては、具体的には、例えば、下記式(P1-A)~(P1-D)で表される基が挙げられ、なかでも、原料となる単量体の多様性および取り扱いが容易である観点から、下記式(P1-A)で表される基が好ましい。
【0031】
【化4】
【0032】
式(P1-A)~(P1-D)において、「*」は、式(1)におけるL1との結合位置を表す。式(P1-A)~(P1-D)において、R11、R12、R13、R14はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基または炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基を表す。上記アルキル基は、直鎖または分岐のアルキル基であってもよいし、環状構造を有するアルキル基(シクロアルキル基)であってもよい。また、上記アルキル基の炭素数は、1~5が好ましい。
式(P1-A)で表される基は、(メタ)アクリル酸エステルの重合によって得られるポリ(メタ)アクリル酸エステルの部分構造の一単位であることが好ましい。
式(P1-B)で表される基は、エポキシ基を有する化合物のエポキシ基を開環重合して形成されるエチレングリコール単位であることが好ましい。
式(P1-C)で表される基は、オキセタン基を有する化合物のオキセタン基を開環重合して形成されるプロピレングリコール単位であることが好ましい。
式(P1-D)で表される基は、アルコキシシリル基およびシラノール基の少なくとも一方の基を有する化合物の縮重合によって得られるポリシロキサンのシロキサン単位であることが好ましい。ここで、アルコキシシリル基およびシラノール基の少なくとも一方の基を有する化合物としては、式SiR14(OR15-で表される基を有する化合物が挙げられる。式中、R14は、(P1-D)におけるR14と同義であり、複数のR15はそれぞれ独立に、水素原子または炭素数1~10のアルキル基を表す。
【0033】
L1は、単結合または上記式(W1)中のLWと同様の2価の連結基であり、好ましい態様としては、単結合、-C(O)O-、-OC(O)-、-O-、-S-、-C(O)NR16-、-NR16C(O)-、-S(O)-、および、-NR1617-などが挙げられる。式中、R16およびR17はそれぞれ独立に、水素原子、置換基(例えば、置換基W)を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基を表す。上記2価の連結基の具体例において、左側の結合手がPC1と結合し、右側の結合手がSP1と結合する。
PC1が式(P1-A)で表される基である場合には、L1は-C(O)O-または-C(O)NR16-で表される基が好ましい。PC1が式(P1-B)~(P1-D)で表される基である場合には、L1は単結合が好ましい。
【0034】
SP1が表すスペーサー基としては、上記式(W1)中のSPWで表される基が挙げられる。
【0035】
SP1が表すスペーサーは、配向度の観点から、オキシエチレン構造、オキシプロピレン構造、ポリシロキサン構造およびフッ化アルキレン構造からなる群より選択される少なくとも1種の構造を含む基、または、炭素数2~20の直鎖または分岐のアルキレン基が好ましい。ただし、上記アルキレン基は、-O-、-S-、-O-CO-、-CO-O-、-O-CO-O-、-O-CNR-(Rは炭素数1~10のアルキル基を表す)、または、-S(O)-を含んでいてもよい(すなわち、アルキレン基中の炭素原子がこれらの基で置換されていてもよいことを意味する。)。また、上記アルキレン基の水素原子は、-OHで置換されていてもよい。
SP1が表すスペーサー基は、液晶性を発現しやすいことや、原材料の入手性などの理由から、オキシエチレン構造、オキシプロピレン構造、ポリシロキサン構造およびフッ化アルキレン構造からなる群より選択される少なくとも1種の構造を含む基であるがより好ましく、オキシエチレン構造を含む基が特に好ましい。
ここで、SP1が表すオキシエチレン構造は、*-(CH-CHO)n1-*で表される基が好ましい。式中、n1は1~20の整数を表し、*はL1またはMG1との結合位置を表す。n1は、本発明の効果がより優れる理由から、2~10の整数であることが好ましく、2~6の整数がより好ましく、2~4であることが最も好ましい。
また、SP1が表すオキシプロピレン構造は、*-(CH(CH)-CHO)n2-*で表される基が好ましい。式中、n2は1~3の整数を表し、*はL1またはMG1との結合位置を表す。
また、SP1が表すポリシロキサン構造は、*-(Si(CH-O)n3-*で表される基が好ましい。式中、n3は6~10の整数を表し、*はL1またはMG1との結合位置を表す。
また、SP1が表すフッ化アルキレン構造は、*-(CF-CFn4-*で表される基が好ましい。式中、n4は6~10の整数を表し、*はL1またはMG1との結合位置を表す。
【0036】
式(1)中、MG1は後述するメソゲン基を表す。MG1が表すメソゲン基とは、液晶形成に寄与する液晶分子の主要骨格を示す基である。液晶分子は、結晶状態と等方性液体状態の中間の状態(メソフェーズ)である液晶性を示す。メソゲン基については特に制限はなく、例えば、「Flussige Kristalle in Tabellen II」(VEB Deutsche Verlag fur Grundstoff Industrie,Leipzig、1984年刊)、特に第7頁~第16頁の記載、および、液晶便覧編集委員会編、液晶便覧(丸善、2000年刊)、特に第3章の記載、を参照することができる。
MG1が表すメソゲン基は、環状構造を2~10個含むのが好ましく、2~7個含むことがより好ましい。
環状構造の具体例としては、芳香族炭化水素基、複素環基、および脂環式基などが挙げられる。
【0037】
MG1が表すメソゲン基としては、液晶性の発現、液晶相転移温度の調整、原料入手性および合成適性という観点、ならびに、本発明の効果がより優れるから、下記式(MG-A)または下記式(MG-B)で表される基が好ましく、式(MG-B)で表される基がより好ましい。
【0038】
【化5】
【0039】
式(MG-A)中、A1は、芳香族炭化水素基、複素環基および脂環式基からなる群より選択される2価の基である。これらの基は、置換基Wなどの置換基で置換されていてもよい。
A1で表される2価の基は、4~15員環であることが好ましい。また、A1で表される2価の基は、単環でも、縮環であってもよい。
*は、結合位置を表す。
【0040】
式(MG-A)中、A1が表す2価の芳香族炭化水素基としては、フェニレン基、ナフチレン基、フルオレン-ジイル基、アントラセン-ジイル基およびテトラセン-ジイル基などが挙げられ、メソゲン骨格の設計の多様性や原材料の入手性などの観点から、フェニレン基、ナフチレン基が好ましい。
【0041】
式(MG-A)中、A1が表す2価の複素環基としては、芳香族または非芳香族のいずれであってもよいが、配向度がより向上するという観点から、2価の芳香族複素環基であることが好ましい。
2価の芳香族複素環基を構成する炭素以外の原子としては、窒素原子、硫黄原子および酸素原子が挙げられる。芳香族複素環基が炭素以外の環を構成する原子を複数有する場合、これらは同一であっても異なっていてもよい。
2価の芳香族複素環基の具体例としては、例えば、ピリジレン基(ピリジン-ジイル基)、ピリダジン-ジイル基、イミダゾール-ジイル基、チエニレン(チオフェン-ジイル基)、キノリレン基(キノリン-ジイル基)、イソキノリレン基(イソキノリン-ジイル基)、オキサゾール-ジイル基、チアゾール-ジイル基、オキサジアゾール-ジイル基、ベンゾチアゾール-ジイル基、ベンゾチアジアゾール-ジイル基、フタルイミド-ジイル基、チエノチアゾール-ジイル基、チアゾロチアゾール-ジイル基、チエノチオフェン-ジイル基、および、チエノオキサゾール-ジイル基、下記の構造(II-1)~(II-4)などが挙げられる。
【0042】
【化6】
【0043】
式(II-1)~(II-4)中、D1は、-S-、-O-、またはNR11-を表し、R11は水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表し、Yは炭素数6~12の芳香族炭化水素基、または、炭素数3~12の芳香族複素環基を表し、Z、Z、およびZはそれぞれ独立に、水素原子または炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、炭素数3~20の脂環式炭化水素基、1価の炭素数6~20の芳香族炭化水素基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、-NR1213または-SR12を表し、ZおよびZは、互いに結合して芳香環または芳香族複素環を形成してもよく、R12およびR13は、それぞれ独立に水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表し、JおよびJは各々独立に、-O-、-NR21-(R21は水素原子または置換基を表す。)、-S-および-C(O)-からなる群から選ばれる基を表し、Eは水素原子または置換基が結合していてもよい第14~16族の非金属原子を表し、Jxは芳香族炭化水素環および芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数2~30の有機基を表し、Jyは水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基、または、芳香族炭化水素環および芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数2~30の有機基を表し、JxおよびJyが有する芳香環は置換基を有していてもよく、JxとJyは結合して、環を形成していてもよく、Dは、水素原子、または、置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基を表す。
【0044】
式(II-2)中、Yが炭素数6~12の芳香族炭化水素基である場合、単環でも多環でもよい。Yが炭素数3~12の芳香族複素環基である場合、単環でも多環でもよい。
式(II-2)中、JおよびJが、-NR21-を表す場合、R21の置換基としては、例えば特開2008-107767号公報の段落0035~0045の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
式(II-2)中、Eが、置換基が結合していてもよい第14~16族の非金属原子である場合、=O、=S、=NR’、=C(R’)R’が好ましい。R’は置換基を表し、置換基としては例えば特開2008-107767号公報の段落[0035]~[0045]の記載を参酌でき、窒素原子が好ましい。
【0045】
式(MG-A)中、A1が表す2価の脂環式基の具体例としては、シクロペンチレン基およびシクロへキシレン基などが挙げられ、炭素原子は、-O-、-Si(CH-、-N(Z)-、-C(O)-、(Z、は独立に、水素、炭素数1~4のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、シアノ基、または、ハロゲン原子を表す。)、-S-、-C(S)-、-S(O)-、およびSO-、これらの基を2つ以上組み合わせた基によって置換されていてもよい。
【0046】
式(MG-A)中、a1は2~10の整数を表す。複数のA1は同一でも異なっていてもよい。
【0047】
式(MG-B)中、A2およびA3はそれぞれ独立に、芳香族炭化水素基、複素環基および脂環式基からなる群より選択される2価の基である。A2およびA3の具体例および好適態様は、式(MG-A)のA1と同様であるので、その説明を省略する。
式(MG-B)中、a2は1~10の整数を表し、複数のA2は同一でも異なっていてもよく、複数のLA1は同一でも異なっていてもよい。a2は、本発明の効果がより優れる理由から、2以上であることがより好ましい。
式(MG-B)中、複数のLA1はそれぞれ独立に、単結合または2価の連結基であり、LA1が表す2価の連結基としては、上記式(W1)中のLWが挙げられる。
【0048】
MG1の具体例としては、例えば以下の構造が挙げられ、以下の構造中、芳香族炭化水素基、複素環基および脂環式基上の水素原子は、上記の置換基Wで置換されていてもよい。
【0049】
【化7】
【0050】
【化8】
【0051】
【化9】
【0052】
T1が表す末端基としては、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、-SH、カルボキシル基、ボロン酸基、-SOH、-PO、-NR1112(R11およびR12はそれぞれ独立に水素原子または置換または非置換の炭素数1~10のアルキル基、シクロアルキル基、またはアリール基を表す。)、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~10のアルキルチオ基、炭素数1~10のアルコキシカルボニルオキシ基、炭素数1~10のアシルオキシ基、炭素数1~10のアシルアミノ基、炭素数1~10のアルコキシカルボニル基、炭素数1~10のアルコキシカルボニルアミノ基、炭素数1~10のスルホニルアミノ基、炭素数1~10のスルファモイル基、炭素数1~10のカルバモイル基、炭素数1~10のスルフィニル基、および、炭素数1~10のウレイド基、架橋性基含有基(すなわち、架橋性基を含む基)などが挙げられる。
上記架橋性基としては、例えば、上記式(W1)中の(P-1)~(P-30)で表される基が好ましい。また、T1は、これらの基を2つ以上組み合わせた基であってもよい。
T1は、本発明の効果がより優れる理由から、炭素数1~10のアルコキシ基が好ましく、炭素数1~5のアルコキシ基がより好ましく、メトキシ基がさらに好ましい。これらの末端基は、これらの基、または、特開2010-244038号公報に記載の重合性基によって、さらに置換されていてもよい。
T1の主鎖の原子数は、本発明の効果がより優れる理由から、1~20が好ましく、1~15がより好ましく、1~10がさらに好ましく、1~7が特に好ましい。T1の主鎖の原子数が20以下であることで、光吸収異方性膜の配向度がより向上する。ここで、T1おける「主鎖」とは、M1と結合する最も長い分子鎖を意味し、水素原子はT1の主鎖の原子数にカウントしない。例えば、T1がn-ブチル基である場合には主鎖の原子数は4であり、T1がsec-ブチル基である場合の主鎖の原子数は3である。
【0053】
繰り返し単位(1)の含有量は、配向の均一性が優れる点から、高分子液晶化合物の全繰り返し単位(100質量%)に対して、50質量%以上が好ましく、55質量%以上がより好ましく、60質量%以上が特に好ましい。
繰り返し単位(1)の含有量の上限値は、配向度が向上する点から、99質量%以下が好ましく、97質量%以下がより好ましい。
繰り返し単位(1)は、高分子液晶化合物中において、1種単独で含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。高分子液晶化合物が繰り返し単位(1)を2種以上含むと、高分子液晶化合物の溶媒に対する溶解性が向上すること、および、液晶相転移温度の調整が容易になることなどの利点がある。繰り返し単位(1)を2種以上含む場合には、その合計量が上記範囲内であることが好ましい。
本発明において、高分子液晶化合物に含まれる各繰り返し単位の含有量は、各繰り返し単位を得るために使用される各単量体の仕込み量(質量)に基づいて算出される。
【0054】
高分子液晶化合物は、配向度を向上させる観点から、末端に電子供与性および/または電子吸引性を有する繰り返し単位を含むことが好ましい。より具体的には、メソゲン基とこれの末端に存在するσp値が0より大きい電子吸引性基とを有する繰り返し単位(21)と、メソゲン基とこれの末端に存在するσp値が0以下の基とを有する繰り返し単位(22)と、を含むことがより好ましい。このように、高分子液晶化合物が繰り返し単位(21)と繰り返し単位(22)を含む場合、上記繰り返し単位(21)または上記繰り返し単位(22)のいずれかのみを含む場合と比べて、これを用いて形成される偏光子の配向度が向上する。この理由の詳細は明らかではないが、概ね以下のように推定している。
すなわち、繰り返し単位(21)と繰り返し単位(22)に発生する逆向きの双極子モーメントが、分子間相互作用をすることによって、メソゲン基の短軸方向への相互作用が強くなって、液晶の配向する向きがより均一となると推察され、その結果、液晶の秩序度が高くなると考えられる。これにより、二色性物質の配向性も良好になるので、形成される偏光子の配向度が高くなると推測される。
なお上記繰り返し単位(21)および(22)は、上記式(1)で表される繰り返し単位であってもよい。
【0055】
繰り返し単位(21)は、メソゲン基と、上記メソゲン基の末端に存在するσp値が0より大きい電子吸引性基と、を有する。
上記電子吸引性基は、メソゲン基の末端に位置しており、σp値が0より大きい基である。電子吸引性基(σp値が0よりも大きい基)としては、後述の式(LCP-21)におけるEWGで表される基が挙げられ、その具体例も同様である。
上記電子吸引性基のσp値は、0よりも大きく、偏光子の配向度がより高くなる点から、0.3以上が好ましく、0.4以上がより好ましい。上記電子吸引性基のσp値の上限値は、配向の均一性が優れる点から、1.2以下が好ましく、1.0以下がより好ましい。
【0056】
σp値とは、ハメットの置換基定数σp値(単に「σp値」とも略記する)であり、置換安息香酸の酸解離平衡定数における置換基の効果を数値で表したものであり、置換基の電子吸引性および電子供与性の強度を示すパラメータである。本明細書におけるハメットの置換基定数σp値は、置換基が安息香酸のパラ位に位置する場合の置換基定数σを意味する。
本明細書における各基のハメットの置換基定数σp値は、文献「Hansch et al., Chemical Reviews, 1991, Vol, 91, No. 2, 165-195」に記載された値を採用する。なお、上記文献にハメットの置換基定数σp値が示されていない基については、ソフトウェア「ACD/ChemSketch(ACD/Labs 8.00 Release Product Version:8.08)」を用いて、安息香酸のpKaと、パラ位に置換基を有する安息香酸誘導体のpKaとの差に基づいて、ハメットの置換基定数σp値を算出できる。
【0057】
繰り返し単位(21)は、側鎖にメソゲン基と上記メソゲン基の末端に存在するσp値が0より大きい電子吸引性基とを有していれば、特に限定されないが、偏光子の配向度がより高くなる点から、下記式(LCP-21)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
【0058】
【化10】
【0059】
式(LCP-21)中、PC21は繰り返し単位の主鎖を表し、より具体的には上記式(1)中のPC1と同様の構造を表し、L21は単結合または2価の連結基を表し、より具体的には上記式(1)中のL1と同様の構造を表し、SP21AおよびSP21Bはそれぞれ独立にスペーサー基を表し、より具体的には上記式(1)中のSP1と同様の構造を表し、MG21はメソゲン構造、より具体的には上記式(1)中のメソゲン基MG1を表し、EWGはσp値が0より大きい電子吸引性基を表す。
【0060】
SP21AおよびSP21Bが表すスペーサー基は、上記式(1)中のSP1と同様の基を表し、オキシエチレン構造、オキシプロピレン構造、ポリシロキサン構造およびフッ化アルキレン構造からなる群より選択される少なくとも1種の構造を含む基、または、炭素数2~20の直鎖または分岐のアルキレン基が好ましい。ただし、上記アルキレン基は、-O-、-O-CO-、-CO-O-、または-O-CO-O-を含んでいてもよい。
SP1が表すスペーサー基は、液晶性を発現しやすいことや、原材料の入手性などの理由から、オキシエチレン構造、オキシプロピレン構造、ポリシロキサン構造およびフッ化アルキレン構造からなる群より選択される少なくとも1種の構造を含むことが好ましく、オキシエチレン構造であることがさらに好ましい。
【0061】
SP21Bが表すスペーサー基は、単結合、または、炭素数2~20の直鎖もしくは分岐のアルキレン基が好ましい。ただし、上記アルキレン基は、-O-、-O-CO-、-CO-O-、または-O-CO-O-を含んでもよい。
これらの中でも、SP21Bが表すスペーサー基は、偏光子の配向度がより高くなる点から、単結合が好ましい。換言すれば、繰り返し単位21は、式(LCP-21)における電子吸引性基であるEWGが、式(LCP-21)におけるメソゲン基であるMG21に直結する構造を有するのが好ましい。このように、電子吸引性基がメソゲン基に直結していると、高分子液晶化合物中に適度な双極子モーメントによる分子間相互作用がより効果的に働くことで、液晶の配向する向きがより均一となると推察され、その結果、液晶の秩序度が高くなり、配向度がより高くなると考えられる。
【0062】
EWGは、σp値が0より大きい電子吸引性基を表す。σp値が0より大きい電子吸引性基としては、エステル基(具体的には、*-C(O)O-Rで表される基)、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、カルボキシ基、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、-S(O)(O)-OR、-S(O)(O)-R、-O-S(O)(O)-R、アシル基(具体的には、*-C(O)Rで表される基)、アシルオキシ基(具体的には、*-OC(O)Rで表される基)、イソシアネート基(-N=C(O))、*-C(O)N(R、ハロゲン原子、ならびに、これらの基で置換されたアルキル基(炭素数1~20が好ましい。)が挙げられる。上記各基において、*はSP21Bとの結合位置を表す。Rは、炭素数1~20(好ましくは炭素数1~4、より好ましくは炭素数1~2)のアルキル基を表す。Rはそれぞれ独立に、水素原子または炭素数1~20(好ましくは炭素数1~4、より好ましくは炭素数1~2)のアルキル基を表す。
上記基の中でも、EWGは、本発明の効果がより発揮される点から、*-C(O)O-Rで表される基、(メタ)アクリロイルオキシ基、または、シアノ基、ニトロ基、が好ましい。
【0063】
繰り返し単位(21)の含有量は、偏光子の高い配向度を維持しつつ、高分子液晶化合物および二色性物質を均一に配向できる点から、高分子液晶化合物の全繰り返し単位(100質量%)に対して、60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、45質量%以下が特に好ましい。
繰り返し単位(21)の含有量の下限値は、本発明の効果がより発揮される点から、1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましい。
繰り返し単位(21)は、高分子液晶化合物中において、1種単独で含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。高分子液晶化合物が繰り返し単位(21)を2種以上含むと、高分子液晶化合物の溶媒に対する溶解性が向上すること、および、液晶相転移温度の調整が容易になることなどの利点がある。繰り返し単位(21)を2種以上含む場合には、その合計量が上記範囲内であることが好ましい。
【0064】
繰り返し単位(21)を2種以上含む場合には、EWGに架橋性基を含まない繰り返し単位(21)と、EWGに架橋性基を含む繰り返し単位(21)と、を併用してもよい。これにより、偏光子の硬化性がより向上する。なお、架橋性基としては、ビニル基、ブタジエン基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリルアミド基、酢酸ビニル基、フマル酸エステル基、スチリル基、ビニルピロリドン基、無水マレイン酸、マレイミド基、ビニルエーテル基、エポキシ基、および、オキセタニル基が好ましい。
この場合、偏光子層の硬化性と配向度のバランスの点から、EWGに架橋性基を含む繰り返し単位(21)の含有量が、高分子液晶化合物の全繰り返し単位(100質量%)に対して、1~30質量%であることが好ましい。
【0065】
以下において、繰り返し単位(21)の一例を示すが、繰り返し単位(21)は、以下の繰り返し単に限定されるものではない。
【0066】
【化11】
【0067】
本発明者らは、繰り返し単位(21)および繰り返し単位(22)について、組成(含有割合)ならびに末端基の電子供与性および電子吸引性について鋭意検討した結果、繰り返し単位(21)の電子吸引性基の電子吸引性が強い場合(すなわち、σp値が大きい場合)には、繰り返し単位(21)の含有割合を低くすれば偏光子の配向度がより高くなり、繰り返し単位(21)の電子吸引性基の電子吸引性が弱い場合(すなわち、σp値が0に近い場合)には、繰り返し単位(21)の含有割合を高くすれば偏光子の配向度がより高くなることを見出した。
この理由の詳細は明らかではないが、概ね以下のように推定している。すなわち、高分子液晶化合物中に適度な双極子モーメントによる分子間相互作用が働くことで、液晶の配向する向きがより均一となると推察され、その結果、液晶の秩序度が高くなり、偏光子の配向度がより高くなると考えられる。
具体的には、繰り返し単位(21)における上記電子吸引性基(式(LCP-21)においてはEWG)のσp値と、高分子液晶化合物中の繰り返し単位(21)の含有割合(質量基準)と、の積は、0.020~0.150が好ましく、0.050~0.130がより好ましく、0.055~0.125が特に好ましい。上記積が上記範囲内であれば、偏光子の配向度がより高くなる。
【0068】
繰り返し単位(22)は、メソゲン基と上記メソゲン基の末端に存在するσp値が0以下の基とを有する。高分子液晶化合物が繰り返し単位(22)を有することで、高分子液晶化合物および二色性物質を均一に配向できる。
メソゲン基は、液晶形成に寄与する液晶分子の主要骨格を示す基であり、詳細は後述の式(LCP-22)におけるMGで説明する通りであり、その具体例も同様である。
上記基は、メソゲン基の末端に位置しており、σp値が0以下の基である。上記基(σp値が0以下である基)としては、σp値が0である水素原子、および、σp値が0よりも小さい後述の式(LCP-22)におけるT22で表される基(電子供与性基)が挙げられる。上記基のうち、σp値が0よりも小さい基(電子供与性基)の具体例は、後述の式(LCP-22)におけるT22と同様である。
上記基のσp値は、0以下であり、配向の均一性がより優れる点から、0よりも小さいことが好ましく、-0.1以下がより好ましく、-0.2以下が特に好ましい。上記基のσp値の下限値は、-0.9以上が好ましく、-0.7以上がより好ましい。
【0069】
繰り返し単位(22)は、側鎖にメソゲン基と上記メソゲン基の末端に存在するσp値が0以下である基とを有していれば、特に限定されないが、液晶の配向の均一性がより高くなる点から、上記式(LCP-21)で表される繰り返し単位に該当せず、下記式(PCP-22)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
【0070】
【化12】
【0071】
式(LCP-22)中、PC22は繰り返し単位の主鎖を表し、より具体的には上記式(1)中のPC1と同様の構造を表し、L22は単結合または2価の連結基を表し、より具体的には上記式(1)中のL1と同様の構造を表し、SP22はスペーサー基を表し、より具体的には上記式(1)中のSP1と同様の構造を表し、MG22はメソゲン構造、より具体的には上記式(1)中のメソゲン基MG1と同様の構造を表し、T22はハメットの置換基定数σp値が0より小さい電子供与性基を表す。
【0072】
T22は、σp値が0より小さい電子供与性基を表す。σp値が0より小さい電子供与性基としては、ヒドロキシ基、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、および、炭素数1~10のアルキルアミノ基などが挙げられる。
T22の主鎖の原子数が20以下であることで、偏光子の配向度がより向上する。ここで、T22おける「主鎖」とは、MG22と結合する最も長い分子鎖を意味し、水素原子はT22の主鎖の原子数にカウントしない。例えば、T22がn-ブチル基である場合には主鎖の原子数は4であり、T22がsec-ブチル基である場合の主鎖の原子数は3である。
【0073】
以下において、繰り返し単位(22)の一例を示すが、繰り返し単位(22)は、以下の繰り返し単に限定されるものではない。
【0074】
【化13】
【0075】
繰り返し単位(21)と繰り返し単位(22)は、構造の一部が共通しているのが好ましい。繰り返し単位同士の構造が類似しているほど、液晶が均一に整列すると推察される。これにより、偏光子の配向度がより高くなる。
具体的には、偏光子の配向度がより高くなる点から、式(LCP-21)のSP21と式(LCP-22)のSP22とが同一構造であること、式(LCP-21)のMG21と式(LCP-22)のMG22とが同一構造であること、および、式(LCP-21)のL21と式(LCP-22)のL22とが同一構造であること、のうち、少なくとも1つを満たすことが好ましく、2つ以上を満たすことがより好ましく、全てを満たすことが特に好ましい。
【0076】
繰り返し単位(22)の含有量は、配向の均一性が優れる点から、高分子液晶化合物の全繰り返し単位(100質量%)に対して、50質量%以上が好ましく、55質量%以上がより好ましく、60質量%以上が特に好ましい。
繰り返し単位(22)の含有量の上限値は、配向度が向上する点から、99質量%以下が好ましく、97質量%以下がより好ましい。
繰り返し単位(22)は、高分子液晶化合物中において、1種単独で含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。高分子液晶化合物が繰り返し単位(22)を2種以上含むと、高分子液晶化合物の溶媒に対する溶解性が向上すること、および、液晶相転移温度の調整が容易になることなどの利点がある。繰り返し単位(22)を2種以上含む場合には、その合計量が上記範囲内であることが好ましい。
【0077】
本発明に用いられる高分子液晶化合物は、汎用溶媒に対する溶解性を向上させる観点から、メソゲンを含有しない繰り返し単位(3)を含むことができる。
【0078】
繰り返し単位(3)の具体例としては、架橋性基(例えば、エチレン性不飽和基)を含まない繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(3-1)」ともいう。)、および、架橋性基を含む繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(3-2)」ともいう。)が挙げられる。
【0079】
繰り返し単位(3-1)の重合に使用されるモノマーの具体例としては、アクリル酸、α-アルキルアクリル酸類(例えば、メタクリル酸、イタコン酸)、それらから誘導されるエステル類およびアミド類(例えば、N-i-プロピルアクリルアミド、N-n-ブチルアクリルアミド、N-t-ブチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-メチルメタクリルアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N-メチロールアクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、i-プロピルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-メチル-2-ニトロプロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、i-ブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、t-ペンチルアクリレート、2-メトキシエチルアクリレート、2-エトキシエチルアクリレート、2-エトキシエトキシエチルアクリレート、2,2,2-トリフルオロエチルアクリレート、2,2-ジメチルブチルアクリレート、3-メトキシブチルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、n-ペンチルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロペンチルアクリレート、ベンジルアクリレート、n-オクチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、4-メチル-2-プロピルペンチルアクリレート、メチルメタクリレート、2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、i-ブチルメタクリレート、sec-ブチルメタクリレート、n-オクチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、2-メトキシエチルメタクリレート、2-エトキシエチルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、2-ノルボルニルメチルメタクリレート、5-ノルボルネン-2-イルメチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート)、ビニルエステル類(例えば、酢酸ビニル)、マレイン酸またはフマル酸から誘導されるエステル類(例えば、マレイン酸ジメチル、フマル酸ジエチル)、マレイミド類(例えば、N-フェニルマレイミド)、マレイン酸、フマル酸、p-スチレンスルホン酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ジエン類(例えば、ブタジエン、シクロペンタジエン、イソプレン)、芳香族ビニル化合物(例えば、スチレン、p-クロルスチレン、t-ブチルスチレン、α-メチルスチレン)、N-ビニルピロリドン、N-ビニルオキサゾリドン、N-ビニルサクシンイミド、N-ビニルホルムアミド、N-ビニル-N-メチルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、N-ビニル-N-メチルアセトアミド、1-ビニルイミダゾール、4-ビニルピリジン、ビニルスルホン酸、ビニルスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸ナトリウム、メタリルスルホン酸ナトリウム、ビニリデンクロライド、ビニルアルキルエーテル類(例えば、メチルビニルエーテル)、エチレン、プロピレン、1-ブテン、ならびに、イソブテン、が挙げられる。
上記モノマーは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記モノマーの中でも、アクリル酸、α-アルキルアクリル酸類、それらから誘導されるエステル類およびアミド類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ならびに、芳香族ビニル化合物が好ましい。
上記以外のモノマーとしては、例えば、リサーチディスクロージャーNo.1955(1980年、7月)に記載の化合物を使用できる。
【0080】
以下において、繰り返し単位(3-1)の具体例を示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
【0081】
【化14】
【0082】
繰り返し単位(3-2)において、架橋性基の具体例としては、上記P1~P30で表される基が挙げられ、ビニル基、ブタジエン基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリルアミド基、酢酸ビニル基、フマル酸エステル基、スチリル基、ビニルピロリドン基、無水マレイン酸、マレイミド基、ビニルエーテル基、エポキシ基、オキセタニル基、がより好ましい。
繰り返し単位(3-2)は、重合が容易である点から、下記式(3)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
【0083】
【化15】
【0084】
上記式(3)中、PC32は繰り返し単位の主鎖を表し、より具体的には上記式(1)中のPC1と同様の構造を表し、L32は単結合または2価の連結基を表し、より具体的には上記式(1)中のL1と同様の構造を表し、P32は上記式(W1)中の(P-1)~(P-30)で表される基、を表す。
【0085】
以下において、繰り返し単位(3-2)の具体例を示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
【0086】
【化16】
【0087】
繰り返し単位(3)の含有量は、高分子液晶化合物の全繰り返し単位(100質量%)に対して、50質量%未満であり、45質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましい。繰り返し単位(3)の含有量の下限値は、1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましい。繰り返し単位(3)の含有量が50質量%未満であれば、偏光子層の配向度がより向上する。繰り返し単位(3)の含有量が1質量%以上であれば、高分子液晶化合物の溶解性がより向上する。
繰り返し単位(3)は、高分子液晶化合物中において、1種単独で含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。繰り返し単位(3)を2種以上含む場合には、その合計量が上記範囲内であることが好ましい。
【0088】
本発明に用いられる高分子液晶化合物は、密着性や面状均一性の観点を向上させる観点から、分子鎖の長い柔軟な構造(後述の式(4)のSP4)をもつ繰り返し単位(4)を含むことができる。この理由については以下のように推定している。
すなわち、このような分子鎖の長い柔軟な構造を含むことで、高分子液晶化合物を構成する分子鎖同士の絡まりが生じやすくなり、偏光子層の凝集破壊(具体的には、偏光子層自体が破壊すること)が抑制される。その結果、偏光子層と、下地層(例えば、基材または配向層)との密着性が向上すると推測される。また、面状均一性の低下は、二色性物質と高分子液晶化合物との相溶性が低いために生じると考えられる。すなわち、二色性物質と高分子液晶化合物は相溶性が不十分であると、析出する二色性物質を核とする面状不良(配向欠陥)が発生すると考えられる。これに対して、高分子液晶化合物が分子鎖の長い柔軟な構造を含むことで、二色性物質の析出が抑制されて、面状均一性に優れた偏光子層が得られたと推測される。ここで、面状均一性に優れるとは、高分子液晶化合物を含む液晶組成物が下地層(例えば、基材または配向層)上ではじかれて生じる配向欠陥が少ないことを意味する。
【0089】
上記繰り返し単位(4)は、下記式(4)で表される繰り返し単位である。
【0090】
【化17】
【0091】
上記式(4)中、PC4は繰り返し単位の主鎖を表し、より具体的には上記式(1)中のPC1と同様の構造を表し、L4は単結合または2価の連結基を表し、より具体的には上記式(1)中のL1と同様の構造を表し、SP4は主鎖の原子数が10以上のアルキレン基を表し、T4は末端基を表し、より具体的には上記式(1)中のT1と同様の基を表す。
【0092】
上記式(4)中、PC4の具体例および好適態様は、式(1)のPC1と同様であるので、その説明を省略する。
【0093】
上記式(4)中、L4の具体例および好適態様は、式(1)のL1と同様であるので、その説明を省略する。
【0094】
式(4)中、SP4は、主鎖の原子数が10以上のアルキレン基を表す。ただし、SP4が表すアルキレン基を構成する1個以上の-CH-は、前述の「SP-C」より置き換えられていてもよく、特に、-O-、-S-、-N(R21)-、-C(=O)-、-C(=S)-、-C(R22)=C(R23)-、アルキニレン基、-Si(R24)(R25)-、-N=N-、-C(R26)=N-N=C(R27)-、-C(R28)=N-および-S(=O)-からなる群より選択される少なくとも一種の基で置き換えられていることが好ましい。ただし、R21~R28はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基または炭素数1~10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を表す。また、SP4が表すアルキレン基を構成する1個以上の-CH-に含まれる水素原子は、前述の「SP-H」により置き換えられていてもよい。
【0095】
SP4は、主鎖の原子数が10以上のアルキレン基を表し、アルキレン基を構成する1個以上の-CH-は前述の「SP-C」によって置き換えられていてもよく、アルキレン基を構成する1個以上の-CH-に含まれる水素原子は前述の「SP-H」によって置き換えられていてもよい。
SP4の主鎖の原子数は、密着性および面状均一性の少なくとも一方がより優れた光吸収異方性膜が得られる点から、10以上が好ましく、15以上がより好ましい。また、SP4の主鎖の原子数の上限は、配向度により優れた偏光子が得られる点から、70以下が好ましく、60以下がより好ましく、50以下が特に好ましい。
ここで、SP4における「主鎖」とは、L4とT4とを直接連結するために必要な部分構造を意味し、「主鎖の原子数」とは、上記部分構造を構成する原子の個数を意味する。換言すれば、SP4における「主鎖」は、L4とT4を連結する原子の数が最短になる部分構造である。例えば、SP4が3,7-ジメチルデカニル基である場合の主鎖の原子数は10であり、SP4が4,6-ジメチルドデカニル基の場合の主鎖の原子数は12である。また、下記式(4-1)においては、点線の四角形で表す枠内がSP4に相当し、SP4の主鎖の原子数(点線の丸で囲った原子の合計数に相当)は10である。
【0096】
【化18】
【0097】
SP4が表すアルキレン基は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。
SP4が表すアルキレン基の炭素数(アルキレン基の炭素が主鎖の「SP-C」によって置き換えられている場合は主鎖の原子数)は、配向度により優れた光吸収異方性膜が得られる点から、10~80が好ましく、15~80が好ましい。
【0098】
SP4が表すアルキレン基を構成する1個以上の-CH-は、密着性および面状均一性により優れた偏光子層が得られる点から、前述の「SP-C」によって置き換えられているのが好ましい。
また、SP4が表すアルキレン基を構成する-CH-が複数ある場合、密着性および面状均一性により優れた偏光子層が得られる点から、複数の-CH-の一部のみが前述の「SP-C」によって置き換えられていることがより好ましい。
【0099】
「SP-C」のうち、-O-、-S-、-N(R21)-、-C(=O)-、-C(=S)-、-C(R22)=C(R23)-、アルキニレン基、-Si(R24)(R25)-、-N=N-、-C(R26)=N-N=C(R27)-、-C(R28)=N-および-S(=O)-が好ましく、密着性および面状均一性により優れた偏光子層が得られる点から、-O-、-N(R21)-、-C(=O)-および-S(=O)-からなる群より選択される少なくとも一種の基がさらに好ましく、-O-、-N(R21)-および-C(=O)-からなる群より選択される少なくとも1種の基が特に好ましい。
特に、SP4は、アルキレン基を構成する1個以上の-CH-が-O-によって置き換えられたオキシアルキレン構造、アルキレン基を構成する1個以上の-CH-CH-が-O-および-C(=O)-によって置き換えられたエステル構造、ならびに、アルキレン基を構成する1個以上の-CH-CH-CH-が-O-、-C(=O)-および-NH-によって置き換えられたウレタン結合からなる群より選択される少なくとも1つを含む基であるのが好ましい。
【0100】
SP4が表すアルキレン基を構成する1個以上の-CH-に含まれる水素原子は、前述の「SP-H」によって置き換えられていてもよい。この場合、-CH-に含まれる水素原子の1個以上が「SP-H」に置き換えられていればよい。すなわち、-CH-に含まれる水素原子の1個のみが「SP-H」によって置き換えられていてもよいし、-CH-に含まれる水素原子の全て(2個)が「SP-H」によって置き換えられていてもよい。
「SP-H」のうち、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、水酸基、炭素数1~10の直鎖状のアルキル基炭素数1~10の分岐状のアルキル基、および、炭素数1~10ハロゲン化アルキル基からなる群より選択される少なくとも1種の基であることが好ましく、水酸基、炭素数1~10の直鎖状のアルキル基および炭素数1~10の分岐状のアルキル基からなる群より選択される少なくとも1種の基がさらに好ましい。
【0101】
T4は、架橋性基であることが好ましく、上記式(W1)中の上記式(P-1)~(P-30)で表される基が好ましく、ビニル基、ブタジエン基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリルアミド基、酢酸ビニル基、フマル酸エステル基、スチリル基、ビニルピロリドン基、無水マレイン酸、マレイミド基、ビニルエーテル基、エポキシ基、オキセタニル基、が好ましく、(メタ)アクリロイルオキシ基、エポキシ基、オキセタニル基、がさらに好ましく、(メタ)アクリロイルオキシ基が特に好ましい。
エポキシ基は、エポキシシクロアルキル基であってもよく、エポキシシクロアルキル基におけるシクロアルキル基部分の炭素数は、本発明の効果がより優れる点から、3~15が好ましく、5~12がより好ましく、6(すなわち、エポキシシクロアルキル基がエポキシシクロヘキシル基である場合)が特に好ましい。
オキセタニル基の置換基としては、炭素数1~10のアルキル基が挙げられ、本発明の効果がより優れる点から、炭素1~5のアルキル基が好ましい。オキセタニル基の置換基としてのアルキル基は、直鎖状であっても分岐状であってもよいが、本発明の効果がより優れる点から直鎖状であることが好ましい。
【0102】
繰り返し単位(4)の具体例としては、例えば以下の構造が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、下記具体例において、n1は2以上の整数を表し、n2は1以上の整数を表す。
【0103】
【化19】
【0104】
繰り返し単位(4)の含有量は、高分子液晶化合物が有する全繰り返し単位(100質量%)に対して、1~40質量%が好ましく、2~35質量%がより好ましい。繰り返し単位(4)の含有量が2質量%以上(より好ましくは10質量%以上)であれば、密着性により優れた偏光子層が得られる。また、繰り返し単位(4)の含有量が20質量%以下であれば、面状均一性により優れた偏光子層が得られる。
繰り返し単位(4)は、高分子液晶化合物中において、1種単独で含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。繰り返し単位(4)が2種以上含まれる場合、上記繰り返し単位(4)の含有量は、繰り返し単位(4)の含有量の合計を意味する。
【0105】
高分子液晶化合物は、面状均一性の観点から、多官能モノマーを重合して導入される繰り返し単位(5)を含むことができる。特に配向度の低下を抑えながら面状均一性を向上させるためには、この多官能モノマーを重合して導入される繰り返し単位(5)を、分子液晶化合物が有する全繰り返し単位(100質量%)に対して、10質量%以下含むことが好ましい。このように、繰り返し単位(5)を10質量%以下含むこと配向度の低下を抑えながら面状均一性を向上させられる理由としては以下のように推定している。
繰り返し単位(5)は、多官能モノマーを重合して、高分子液晶化合物に導入される単位である。そのため、高分子液晶化合物には、繰り返し単位(5)によって3次元架橋構造を形成した高分子量体が含まれていると考えられる。ここで、繰り返し単位(5)の含有量は少ないため、繰り返し単位(5)を含む高分子量体の含有率はわずかであると考えられる。
このように3次元架橋構造を形成した高分子量体が僅かに存在することで、組成物のはじきが抑制されて、面状均一性に優れた偏光子層が得られたと推測される。
また、高分子量体の含有量が僅かであるため、配向度の低下を抑えられるという効果が維持できたと推測される。
【0106】
上記多官能モノマーを重合して導入される繰り返し単位(5)は、下記式(5)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
【0107】
【化20】
【0108】
式(5)中、PC5AおよびPC5Bはそれぞれ独立に繰り返し単位の主鎖を表し、より具体的には上記式(1)中のPC1と同様の構造を表し、L5AおよびL5Bはそれぞれ独立に単結合または2価の連結基を表し、より具体的には上記式(1)中のL1と同様の構造を表し、SP5AおよびSP5Bはそれぞれ独立にスペーサー基を表し、より具体的には上記式(1)中のSP1と同様の構造を表し、MG5AおよびMG5Bはそれぞれ独立にメソゲン基、より具体的には上記式(1)中のMG1と同様の構造を表し、aおよびbはそれぞれ独立に0または1の整数を表す。
【0109】
PC5AおよびPC5Bは、同一の基であってもよいし、互いに異なる基であってもよいが、偏光子の配向度がより向上する点から、同一の基であるのが好ましい。
L5AおよびL5Bは、いずれも単結合であってもよいし、同一の基であってもよいし、互いに異なる基であってもよいが、偏光子の配向度がより向上する点から、いずれも単結合または同一の基であるのが好ましく、同一の基であるのがより好ましい。
SP5AおよびSP5Bは、いずれも単結合であってもよいし、同一の基であってもよいし、互いに異なる基であってもよいが、偏光子の配向度がより向上する点から、いずれも単結合または同一の基であるのが好ましく、同一の基であるのがより好ましい。
ここで、式(5)における同一の基とは、各基が結合する向きを問わずに化学構造が同一であるという意味であり、例えば、SP5Aが*-CH-CH-O-**(*はL5Aとの結合位置を表し、**はMG5Aとの結合位置を表す。)であり、SP5Bが*-O-CH-CH-**(*はMG5Bとの結合位置を表し、**はL5Bとの結合位置を表す。)である場合も、同一の基である。
【0110】
aおよびbはそれぞれ独立に、0または1の整数であり、偏光子層の配向度がより向上する点から、1であるのが好ましい。
aおよびbは、同一であっても、異なっていてもよいが、偏光子層の配向度がより向上する点から、いずれも1であるのが好ましい。
aおよびbの合計は、偏光子層の配向度がより向上する点から、1または2であるのが好ましく(すなわち、式(5)で表される繰り返し単位がメソゲン基を有すること)、2であるのがより好ましい。
【0111】
-(MG5A)-(MG5B)-で表される部分構造は、偏光子層の配向度がより向上する点から、環状構造を有するのが好ましい。この場合、偏光子層の配向度がより向上する点から、-(MG5A2)-(MG5B)-で表される部分構造における環状構造の個数は、2個以上が好ましく、2~8個がより好ましく、2~6個がさらに好ましく、2~4個が特に好ましく、3~4個が最も好ましい。
MG5AおよびMG5Bが表すメソゲン基はそれぞれ独立に、偏光子層の配向度がより向上する点から、環状構造を1個以上含むのが好ましく、2~4個含むのが好ましく、2~3個含むのがより好ましく、2個含むのが特に好ましい。
環状構造の具体例としては、芳香族炭化水素基、複素環基、および脂環式基が挙げられ、これらの中でも芳香族炭化水素基が好ましい。
MG5AおよびMG5Bは、同一の基であってもよいし、互いに異なる基であってもよいが、偏光子層の配向度がより向上する点から、同一の基であるのが好ましい。
【0112】
MG5AおよびMG5Bが表すメソゲン基としては、液晶性の発現、液晶相転移温度の調整、原料入手性および合成適性という観点、ならびに、本発明の効果がより優れるから、上記式(1)中のメソゲン基MG1と同様の構造であることが好ましい。
【0113】
特に、繰り返し単位(5)は、PC5AとPC5Bが同一の基であり、L5AとL5Bがいずれも単結合または同一の基であり、SP5AとSP5Bがいずれも単結合または同一の基であり、MG5AとMG5Bが同一の基であるのが好ましい。これにより、偏光子層の配向度がより向上する。
【0114】
繰り返し単位(5)の含有量は、高分子液晶化合物が有する全繰り返し単位(100質量%)に対して、10質量%以下であり、本発明の効果がより発揮される点から、0.001~5質量%が好ましく、0.05~3質量%がより好ましい。
繰り返し単位(5)は、高分子液晶化合物中において、1種単独で含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。繰り返し単位(5)を2種以上含む場合には、その合計量が上記範囲内であることが好ましい。
【0115】
高分子液晶化合物は、星型ポリマーであってもよい。本発明における星型ポリマーとは、核を起点として延びるポリマー鎖を3つ以上有するポリマーを意味し、具体的には、下記式(6)で表される。
高分子液晶化合物として式(6)で表される星型ポリマーは、高溶解性(溶媒に対する溶解性が優れること)でありながら、配向度の高い偏光子層を形成できる。
【0116】
【化21】
【0117】
式(6)中、nは、3以上の整数を表し、4以上の整数が好ましい。nの上限値は、これに限定されないが、通常12以下であり、6以下がさらに好ましい。
複数のPIはそれぞれ独立に、上記式(1)、(21)、(22)、(3)、(4)、(5)で表される繰り返し単位のいずれかを含むポリマー鎖を表す。ただし、複数のPIのうちの少なくとも1つは、上記式(1)で表される繰り返し単位を含むポリマー鎖を表す。
Aは、星型ポリマーの核となる原子団を表す。Aの具体例としては、特開2011-074280号公報の[0052]~[0058]段落、特開2012-189847号公報の[0017]~[0021]段落、特開2013-031986号公報の[0012]~[0024]段落、特開2014-104631号公報の[0118]~[0142]段落等に記載の多官能チオール化合物のチオール基から水素原子を取り除いた構造が挙げられる。この場合、AとPIは、スルフィド結合によって結合される。
【0118】
Aの由来となる上記多官能チオール化合物のチオール基の数は、3つ以上が好ましく、4以上がより好ましい。多官能チオール化合物のチオール基の数の上限値は、通常12以下であり、6以下がより好ましい。
多官能チオール化合物の具体例を以下に示す。
【0119】
【化22】

【0120】
高分子液晶化合物は、配向度をより向上させる観点から、サーモトロピック性液晶であり、かつ、結晶性高分子であってもよい。
【0121】
(サーモトロピック液晶)
サーモトロピック液晶とは、温度変化によって液晶相への転移を示す液晶であり、ネマチック相およびスメクチック相のいずれを示してもよいが、偏光子層の配向度がより高くなり、かつ、ヘイズがより観察され難くなる(ヘイズがより良好になる)理由から、少なくともネマチック相を示すことが好ましい。
ネマチック相を示す温度範囲は、偏光子層の配向度がより高くなり、かつ、ヘイズがより観察され難くなる点から、室温(23℃)~450℃であることが好ましく、取り扱いや製造適性の観点から、30℃~400℃であることがより好ましい。
【0122】
(結晶性高分子)
結晶性高分子とは、温度変化によって結晶層への転移を示す高分子である。結晶性高分子は結晶層への転移の他にガラス転移を示すものであってもよい。
高分子液晶化合物は、偏光子層の配向度がより高くなり、かつ、ヘイズがより観察され難くなる点から、加熱した時に結晶相から液晶相への転移を持つ(途中にガラス転移があってもよい)高分子液晶化合物、または、加熱により液晶状態した後で温度を下降させた時に結晶相への転移(途中にガラス転移があってもよい)を持つ高分子液晶化合物であることが好ましい。
【0123】
なお、高分子液晶化合物の結晶性の有無は以下のように評価する。
光学顕微鏡(Nikon社製ECLIPSE E600 POL)の二枚の偏光子を互いに直交するように配置し、二枚の偏光子の間にサンプル台をセットする。そして、高分子液晶化合物をスライドガラスに少量乗せ、サンプル台上に置いたホットステージ上にスライドガラスをセットする。サンプルの状態を観察しながら、高分子液晶化合物が液晶性を示す温度までホットステージの温度を上げ、高分子液晶化合物を液晶状態にする。高分子液晶化合物が液晶状態になった後、ホットステージの温度を徐々に降下させながら液晶相転移の挙動を観察し、液晶相転移の温度を記録する。なお、高分子液晶化合物が複数の液晶相(例えばネマチック相とスメクチック相)を示す場合、その転移温度も全て記録する。
次に、高分子液晶化合物のサンプル約5mgをアルミパンに入れて蓋をし、示差走査熱量計(DSC)にセットする(リファレンスとして空のアルミパンを使用)。上記で測定した高分子液晶化合物が液晶相を示す温度まで加熱し、その後、温度を1分保持する。その後、10℃/分の速度で降温させながら、熱量測定を行う。得られた熱量のスペクトルから発熱ピークを確認する。
その結果、液晶相転移の温度以外の温度で発熱ピークが観測された場合は、その発熱ピークが結晶化によるピークであり、高分子液晶化合物は結晶性を有するといえる。
一方、液晶相転移の温度以外の温度で発熱ピークが観測されなかった場合は、高分子液晶化合物は結晶性を有さないといえる。
【0124】
結晶性高分子を得る方法は特に制限されないが、具体例としては、上記繰り返し単位(1)を含む高分子液晶化合物を用いる方法が好ましく、なかでも、上記繰り返し単位(1)を含む高分子液晶化合物の中の好適な態様を用いる方法がより好ましい。
【0125】
(結晶化温度)
上述のとおり、高分子液晶化合物は、結晶化高分子であるのが好ましい。結晶化温度は、偏光子層の配向度がより高くなり、かつ、ヘイズがより観察され難くなる点から、-50℃以上150℃未満であることが好ましく、なかでも120℃以下であることがより好ましく、-20℃以上120℃未満であることがさらに好ましく、なかでも95℃以下であることが特に好ましい。高分子液晶化合物の結晶化温度は、偏光子層のヘイズを減らす観点から、150℃未満であることが好ましい。
なお、結晶化温度は、上述したDSCにおける結晶化による発熱ピークの温度である。
【0126】
(分子量)
高分子液晶化合物の重量平均分子量(Mw)は、本発明の効果がより優れる点、および/または、高分子液晶化合物の取り扱いが容易になる点から、1000~500000が好ましく、2000~300000がより好ましい。
特に、塗布時のクラック抑制の観点から、高分子液晶化合物の重量平均分子量(Mw)は、10000以上が好ましく、10000~300000がより好ましい。
また、配向度の温度ラチチュードの観点から、高分子液晶化合物の重量平均分子量(Mw)は、10000未満が好ましく、2000以上10000未満がより好ましい。
ここで、本発明における重量平均分子量および数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)法により測定された値である。
・溶媒(溶離液):N-メチルピロリドン
・装置名:TOSOH HLC-8220GPC
・カラム:TOSOH TSKgelSuperAWM-H(6mm×15cm)を3本接続して使用
・カラム温度:25℃
・試料濃度:0.1質量%
・流速:0.35mL/min
・校正曲線:TOSOH製TSK標準ポリスチレン Mw=2800000~1050(Mw/Mn=1.03~1.06)までの7サンプルによる校正曲線を使用
【0127】
高分子液晶化合物の液晶性は、ネマチック性およびスメクチック性のいずれを示してもよいが、少なくともネマチック性を示すことが好ましい。
ネマチック相を示す温度範囲は、0~450℃であることが好ましく、取り扱いや製造適性の観点から、30~400℃であることがより好ましい。
【0128】
高分子液晶化合物の含有量は、組成物中の固形分100質量%に対して、25~98質量%が好ましく、30~97質量%がより好ましく、35~96質量%がさらに好ましい。高分子液晶化合物の含有量が上記範囲内にあることで、偏光子層の配向度がより向上する。
【0129】
〔低分子液晶化合物〕
第1実施態様の組成物に含まれる低分子液晶化合物は、下記式(LC)で表される化合物である。
【0130】
【化23】
【0131】
式(LC)中、Q1およびQ2はそれぞれ独立に架橋性基または末端基を表し、SPL1およびSPL2はそれぞれ独立にスペーサー基を表し、MLはメソゲン基を表し、Q1およびQ2の少なくとも一方は架橋性基である。本発明の効果がより優れる点から、Q1およびQ2は、両方とも架橋性基であることが好ましい。
【0132】
SPL1のlogP値を表すlogP(SPL1)およびMLのlogP値を表すlogP(ML)は、下記式(13)の関係を満たし、本発明の効果がより優れる点から、下記式(13’)の関係を満たすことが好ましい。
|logP(ML)-logP(SPL1)| ≧ 4.0 (13)
|logP(ML)-logP(SPL1)| ≧ 4.5 (13’)
【0133】
ここで、SPL1の分子長を表すD(SPL1)と、SPL2の分子長を表すD(SPL2)とは、下記式(20)の関係を満たす。
D(SPL1) ≧ D(SPL2) (20)
【0134】
SPL1は、上記式(1)中のSP1と同様の構造を表すため、その説明を省略する。また、SPL1は、SP1と同一の構造であることが好ましい。
【0135】
MLは、上記式(1)中のMG1と同様の構造を表すため、その説明を省略する。また、MLは、MG1と同一の構造であることが好ましい。
【0136】
Q1およびQ2はそれぞれ独立に、上記式(W1)中のQと同様の構造を表すため、その説明を省略する。
架橋性基の好ましい態様としては、ラジカル重合性基、またはカチオン重合性基であることが挙げられ、ラジカル重合性基としては、上記式(P-1)で表されるビニル基、上記式(P-2)で表されるブタジエン基、上記式(P-4)で表される(メタ)アクリロイルオキシ基、上記式(P-5)で表される(メタ)アクリルアミド基、上記式(P-6)で表される酢酸ビニル基、上記式(P-7)で表されるフマル酸エステル基、上記式(P-8)で表されるスチリル基、上記式(P-9)で表されるビニルピロリドン基、上記式(P-11)で表される無水マレイン酸、および、上記式(P-12)で表されるマレイミド基が好ましく、カチオン重合性基としては、上記式(P-18)で表されるビニルエーテル基、上記式(P-19)で表されるエポキシ基、および、上記式(P-20)で表されるオキセタニル基が好ましい。中でも、ラジカル重合性基である(メタ)アクリロイルオキシ基が特に好ましい。
【0137】
SPL2は、上記式(1)中のSP1と同様の構造を表すため、その説明を省略する。
【0138】
SPL2のlogP値を表すlogP(SPL2)は、下記式(31)を満たすことが好ましく、下記式(31’)を満たすことがより好ましい。
logP(SPL2) ≦ 1.5 (31)
logP(SPL2) ≦ 1.0 (31’)
また、SPL2の分子長を表すD(SPL2)は、下記式(41)を満たすことが好ましく、下記式(41’)を満たすことがより好ましい。
D(SPL2) ≦ 7.0Å (41)
D(SPL2) ≦ 4.0Å (41’)
このようにSPL2のlogP値やスペーサー構造の長さを調整することで、配向度および密着性の両立に有利となる。
【0139】
低分子液晶化合物としては、具体的には以下に示す構造が挙げられるが、低分子液晶化合物はこれらに限定されるものではない。
【0140】
【化24】
【0141】
低分子液晶化合物の液晶性は、ネマチック性およびスメクチック性のいずれを示してもよい。液晶性を示す温度範囲は、取り扱いや製造適性の観点から、室温(23℃)~300℃が好ましく、40~250℃であることがより好ましい。
【0142】
低分子液晶化合物の含有量は、組成物中の固形分100質量%に対して、1~60質量%が好ましく、2~55質量%がより好ましく、3~50質量%が特に好ましい。低分子液晶化合物の含有量が上記範囲内にあることで、偏光子層の配向度と密着性がより向上する。
【0143】
〔二色性物質〕
本発明の組成物が含有する二色性物質は、特に限定されず、可視光吸収物質(二色性色素)、発光物質(蛍光物質、燐光物質)、紫外線吸収物質、赤外線吸収物質、非線形光学物質、カーボンナノチューブ、および、無機物質(例えば量子ロッド)などが挙げられ、従来公知の二色性物質(二色性色素)を使用することができる。
具体的には、例えば、特開2013-228706号公報の[0067]~[0071]段落、特開2013-227532号公報の[0008]~[0026]段落、特開2013-209367号公報の[0008]~[0015]段落、特開2013-14883号公報の[0045]~[0058]段落、特開2013-109090号公報の[0012]~[0029]段落、特開2013-101328号公報の[0009]~[0017]段落、特開2013-37353号公報の[0051]~[0065]段落、特開2012-63387号公報の[0049]~[0073]段落、特開平11-305036号公報の[0016]~[0018]段落、特開2001-133630号公報の[0009]~[0011]段落、特開2011-215337号公報の[0030]~[0169]、特開2010-106242号公報の[0021]~[0075]段落、特開2010-215846号公報の[0011]~[0025]段落、特開2011-048311号公報の[0017]~[0069]段落、特開2011-213610号公報の[0013]~[0133]段落、特開2011-237513号公報の[0074]~[0246]段落、特開2016-006502号公報の[0005]~[0051]段落、国際公開第2016/060173号公報の[0005]~[0041]段落、国際公開2016/136561号公報の[0008]~[0062]段落、国際公開第2017/154835号の[0014]~[0033]段落、国際公開第2017/154695号の[0014]~[0033]段落、国際公開第2017/195833号の[0013]~[0037]段落、国際公開第2018/164252号の[0014]~[0034]段落などに記載されたものが挙げられる。
【0144】
本発明においては、2種以上の二色性物質を併用してもよく、例えば、形成される偏光子を黒色に近づける観点から、波長370~550nmの範囲に極大吸収波長を有する少なくとも1種の二色性物質と、波長500~700nmの範囲に極大吸収波長を有する少なくとも1種の二色性物質とを併用することが好ましい。
【0145】
本発明においては、二色性物質の含有量は、形成される偏光子の配向度がより高くなり、耐熱性がより向上する理由から、組成物中の固形分100質量%に対して1~80質量%であることが好ましく、2~70質量%であることがより好ましく、3~60質量%であることが更に好ましい。
【0146】
〔溶媒〕
本発明の組成物は、作業性等の観点から、溶媒を含有するのが好ましい。
溶媒としては、例えば、ケトン類(例えば、アセトン、2-ブタノン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、および、シクロヘキサノンなど)、エーテル類(例えば、ジオキサン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキソラン、テトラヒドロフルフリルアルコール、および、シクロペンチルメチルエーテルなど)、脂肪族炭化水素類(例えば、ヘキサンなど)、脂環式炭化水素類(例えば、シクロヘキサンなど)、芳香族炭化水素類(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、および、トリメチルベンゼンなど)、ハロゲン化炭素類(例えば、ジクロロメタン、トリクロロメタン(クロロホルム)、ジクロロエタン、ジクロロベンゼン、および、クロロトルエンなど)、エステル類(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、および、酢酸ブチル、炭酸ジエチルなど)、アルコール類(例えば、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、および、シクロヘキサノールなど)、セロソルブ類(例えば、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、および、1,2-ジメトキシエタンなど)、セロソルブアセテート類、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシドなど)、アミド類(例えば、ジメチルホルムアミド、および、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンなど)、および、ヘテロ環化合物(例えば、ピリジンなど)などの有機溶媒、ならびに、水が挙げられる。
これらの溶媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0147】
これらの溶媒のうち、形成される偏光子の配向度がより高くなり、耐熱性がより向上する理由から、有機溶媒を用いることが好ましく、ハロゲン化炭素類、エーテル類またはケトン類を用いることがより好ましい。
【0148】
組成物が溶媒を含有する場合、溶媒の含有量は、形成される偏光子層の配向度がより高くなり、耐熱性がより向上する理由から、組成物の全質量(100質量%)に対して、70~99.5質量%であることが好ましく、75~99質量%であることがより好ましく、80~98質量%であることが特に好ましい。
【0149】
〔界面活性剤〕
本発明の組成物は、界面活性剤(「界面改良剤」ともいう)を含むことが好ましい。界面活性剤を含むことにより、塗布表面の平滑性が向上し、配向度が向上したり、ハジキおよびムラを抑制して、面内の均一性の向上が見込まれる。
界面活性剤としては、液晶化合物を水平配向させるものが好ましく、特開2011-237513号公報の[0253]~[0293]段落に記載の化合物(水平配向剤)を用いることができる。また、特開2007-272185号公報の[0018]~[0043]等に記載のフッ素(メタ)アクリレート系ポリマーも用いることができる。また、特開2007-069471号公報の段落[0079]~[0102]の記載に記載された化合物、特開2013-047204号公報に記載された式(4)で表される重合性液晶化合物(特に段落[0020]~[0032]に記載された化合物)、特開2012-211306号公報に記載された式(4)で表される重合性液晶化合物(特に段落[0022]~[0029]に記載された化合物)、特開2002-129162号公報に記載された式(4)で表される液晶配向促進剤(特に段落[0076]~[0078]および段落[0082]~[0084]に記載された化合物)、並びに、特開2005-099248号公報に記載された式(4)、(II)および(III)で表される化合物(特に段落[0092]~[0096]に記載された化合物)などが挙げられる。
【0150】
界面活性剤の好適態様の一つとしては、偏光子層の配向度がより向上する点、および/または、偏光子層のヘイズを低減できる点から、高分子界面改良剤が挙げられる。高分子界面改良剤とは、化学構造中に繰り返し単位を有する界面改良剤を意味する。
高分子界面活性としては、偏光子層の配向度がより向上する点、および/または、偏光子層のヘイズを低減できる点から、フッ化アルキル基を含む繰り返し単位(以下、「繰り返し単位F」とも略す。)と、環構造を含む繰り返し単位(以下、「繰り返し単位M」とも略す。)と、を有する共重合体であるのが好ましい。
【0151】
(繰り返し単位F)
上記共重合体が有する繰り返し単位Fは、下記式(a)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
【化25】
【0152】
上記式(a)中、Ra1は、水素原子または炭素数1~20のアルキル基を表し、Ra2は、少なくとも1つの炭素原子がフッ素原子を置換基として有する炭素数1~20のアルキル基もしくは炭素数2~20のアルケニル基を表す。
【0153】
上記式(a)中、Ra2は、得られる偏光子層の配向欠陥がより抑制される理由から、少なくともひとつの炭素原子がフッ素原子を置換基として有する炭素数1~10のアルキル基もしくは炭素数2~10のアルケニレン基が好ましく、炭素数1~10のアルキル基であることがより好ましく、Ra2に含まれる半数以上の炭素原子がフッ素原子を置換基として有することが特に好ましい。
【0154】
上記共重合体が有する繰り返し単位Fは、下記式(b)で表される繰り返し単位であることがより好ましい。
【化26】
【0155】
上記式(b)中、Ra1は、水素原子または炭素数1~20のアルキル基を表し、maおよびnaは、それぞれ独立に0以上の整数を表し、Xは、水素原子またはフッ素原子を表す。
ここで、maは、1以上10以下の整数であることが好ましく、naは、4以上12以下が好ましい。
【0156】
上記共重合体が有する繰り返し単位Fを形成する単量体(以下、「フルオロアルキル基含有モノマー」とも略す。)としては、具体的には、例えば、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロデシル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロ-3-メチルブチル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロ-5-メチルヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロ-7-メチルオクチル)エチル(メタ)アクリレート、1H,1H,3H-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H-オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、1H,1H,7H-ドデカフルオロヘプチル(メタ)アクリレート、1H,1H,9H-ヘキサデカフルオロノニル(メタ)アクリレート、1H-1-(トリフオロメチル)トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、1H,1H,3H-ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレート、3-パーフルオロブチル-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-パーフルオロヘキシル-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-パーフルオロオクチル-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-(パーフルオロ-3-メチルブチル)-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-(パーフルオロ-5-メチルヘキシル)-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-(パーフルオロ-7-メチルオクチル)-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0157】
フルオロアルキル基含有モノマーを共重合させる割合は、反応性や表面改質効果の観点から、繰り返し単位Mの形成に用いるモノマー1モルに対して、0.01~100モルであることが好ましく、0.1~50モルであることがより好ましく、1~30モルであることが特に好ましい。
【0158】
繰り返し単位Fの含有量は、高分子界面活性が有する全繰り返し単位(100モル%)に対して、30~80モル%が好ましく、配向度の観点からは50モル%以上が好ましく、ハジキの観点からは70モル%以下が好ましい。
【0159】
(繰り返し単位M)
上記共重合体が有する繰り返し単位Mは、環構造を含む単位であればよい。
環構造とは、例えば、芳香族炭化水素基、複素環基、および、脂環式基からなる群から選択される少なくとも1種の環構造を表す。配向欠陥を抑制する観点からは2個以上の環構造を有することが好ましい。
【0160】
上記共重合体が有する繰り返し単位Mは、下記式(b)で表される繰り返し単位であることがより好ましい。
【化27】
【0161】
上記式(c)中、Ra1は、水素原子または炭素数1~20のアルキル基を表し、L4およびL5はそれぞれ独立に単結合または炭素数1~8のアルキレン基を表し、G1およびG2はそれぞれ独立に2価の環状基を表し、T4は末端基を表す。nは、0~4の整数を表す。
【0162】
L4、L5が表すアルキレン基については、アルキレン基を構成する1個以上の-CH-は、単結合、-O-、-S-、-NR31-、-C(=O)-、-C(=S)-、-CR32=CR32-、-C≡C-、-SiR3334-、-N=N-、-CR35=N-N=CR36-、-CR37=N-、および、-SO-からなる群より選択される少なくとも一種の基によって置き換えられていてもよく、R31~R37は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、または、炭素数1~10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を表す。
また、Lが、アルキレン基を表す場合、アルキレン基を構成する1個以上の-CH-に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、水酸基、炭素数1~10の直鎖状のアルキル基および炭素数1~10の分岐状のアルキル基からなる群より選択される少なくとも1種の基によって置き換えられていてもよい。
中でも、L4については炭素数4~6で末端が酸素のアルキレンオキシ基が好ましく、L5については、エステル基が最も好ましい。
【0163】
G1およびG2が表す2価の環状基は、それぞれ独立に、炭素数5~8の2価の脂環式炭化水素基または芳香族炭化水素基を表し、上記脂環式炭化水素基を構成する-CH-の1個以上が-O-、-S-または-NH-で置換されていてもよい。さらに、脂環式炭化水素基または芳香族炭化水素基は複数が単結合していても良い。中でも、ベンゼン環が好ましい。
【0164】
T4が表す末端基としては、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~10のアルキルチオ基、炭素数1~10のアルコキシカルボニルオキシ基、炭素数1~10のアルコキシカルボニル基(ROC(O)-:Rはアルキル基)、炭素数1~10のアシルオキシ基、炭素数1~10のアシルアミノ基、炭素数1~10のアルコキシカルボニルアミノ基、炭素数1~10のスルホニルアミノ基、炭素数1~10のスルファモイル基、炭素数1~10のカルバモイル基、炭素数1~10のスルフィニル基、および、炭素数1~10のウレイド基、(メタ)アクリロイルオキシ基含有基などが挙げられる。中でも、水素原子、シアノ基が最も好ましい。
【0165】
繰り返し単位Mの含有量は、高分子界面活性が有する全繰り返し単位(100モル%)に対して、5~95モル%が好ましく、15~85モル%がより好ましい。
【0166】
(他の繰り返し単位)
上記共重合体は、繰り返し単位Fおよび繰り返し単位M以外の他の繰り返し単位を有していてもよい。
他の繰り返し単位としては、フッ素原子および環構造を含まない繰り返し単位が挙げられる。
他の繰り返し単位の含有量は、高分子界面活性が有する全繰り返し単位(100モル%)に対して、0~50モル%が好ましい。
【0167】
組成物が界面活性剤を含有する場合、界面活性剤の含有量は、形成される偏光子層の配向度がより高くなり、耐熱性がより向上する理由から、組成物中の固形分100質量%に対し、0.001~5質量%が好ましく、0.005~3質量%がより好ましい。
【0168】
〔重合開始剤〕
本発明の組成物は、重合開始剤を含むことが好ましい。重合開始剤としては特に制限はないが、感光性を有する化合物、すなわち光重合開始剤であることが好ましい。
光重合開始剤としては、各種の化合物を特に制限なく使用できる。光重合開始剤の例には、α-カルボニル化合物(米国特許第2367661号、同2367670号の各明細書)、アシロインエーテル(米国特許第2448828号明細書)、α-炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許第2722512号明細書)、多核キノン化合物(米国特許第3046127号および同2951758号の各明細書)、トリアリールイミダゾールダイマーとp-アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許第3549367号明細書)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60-105667号公報および米国特許第4239850号明細書)、オキサジアゾール化合物(米国特許第4212970号明細書)、o-アシルオキシム化合物(特開2016-27384明細書[0065])、および、アシルフォスフィンオキシド化合物(特公昭63-40799号公報、特公平5-29234号公報、特開平10-95788号公報および特開平10-29997号公報)などが挙げられる。
このような光重合開始剤としては、市販品も用いることができ、BASF社製のイルガキュア-184、イルガキュア-907、イルガキュア-369、イルガキュア-651、イルガキュア-819、イルガキュア-OXE-01およびイルガキュア-OXE-02等が挙げられる。
【0169】
組成物が重合開始剤を含有する場合、重合開始剤の含有量は、形成される偏光子の配向度がより高くなり、耐熱性がより向上する理由から、組成物中の固形分100質量%に対して、0.01~30質量%が好ましく、0.1~15質量%がより好ましい。
【0170】
〔好適態様〕
本発明の組成物の好適態様の一つとしては、上述の式(11)~(13)、(20)および(21)を満たす態様(以下、「第1実施形態」ともいう。)が挙げられる。これにより、本発明の効果がより発揮される。
第1実施形態の組成物は、さらに、上述の式(22)、式(31)および式(41)から選択される少なくとも1つを満たしてもよい。これにより、本発明の効果がより発揮される。
【0171】
本発明の組成物の他の好適態様の一つとしては、上述の式(11)~(13)、(20)および(41’)を満たす態様(以下、「第2実施形態」ともいう。)が挙げられる。これにより、本発明の効果がより発揮される。
第2実施形態の組成物は、さらに、上述の式(21)、式(22)および式(31)から選択される少なくとも1つを満たしてもよい。これにより、本発明の効果がより発揮される。
【0172】
<偏光子層の製造方法>
本発明の偏光子層は、上述の本発明の組成物を用いて形成される。
本発明の偏光子層を製造する方法は特に制限されないが、形成される偏光子の配向度がより高くなる理由から、配向層上に上述した本発明の組成物(「偏光子層形成用組成物」ともいう)を塗布して塗布膜を形成する工程(以下、「塗布膜形成工程」ともいう。)と、上記塗布膜に含まれる液晶性成分を配向させる工程(以下、「配向工程」ともいう。)と、をこの順に備える方法(以下、「本製造方法」ともいう。)が好ましい。
なお、以下における液晶性成分とは、上述した液晶化合物(すなわち、高分子液晶化合物および低分子液晶化合物を意味する。以下同様。)だけでなく、上述した二色性物質が液晶性を有している場合は、液晶性を有する二色性物質も含む成分であり、本発明の組成物(偏光子層形成用組成物)も含む。
以下、各工程について説明する。
【0173】
〔塗布膜形成工程〕
塗布膜形成工程は、配向層上に上述した本発明の組成物を塗布して塗布膜を形成する工程である。塗布膜中の液晶化合物は配向層と(本発明の組成物が界面改良剤を含有する場合には)界面改良剤との相互作用により水平配向する。
上述した溶媒を含有する本発明の組成物を用いたり、本発明の組成物を加熱などによって溶融液などの液状物としたものを用いたりすることにより、配向層上に本発明の組成物を塗布することが容易になる。
本発明の組成物の塗布方法としては、ロールコーティング法、グラビア印刷法、スピンコート法、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法、スプレー法、および、インクジェット法などの公知の方法が挙げられる。
【0174】
(配向層)
配向層は、本発明の組成物に含有される液晶化合物を水平配向させる膜であれば、どのような膜でもよい。
有機化合物(好ましくはポリマー)の膜表面へのラビング処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログルーブを有する層の形成、あるいはラングミュアブロジェット法(LB膜)による有機化合物(例、ω-トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライド、ステアリル酸メチル)の累積のような手段で、設けることができる。さらに、電場の付与、磁場の付与あるいは光照射により、配向機能が生じる配向層も知られている。なかでも、本発明では、配向層のプレチルト角の制御し易さの点からはラビング処理により形成する配向層が好ましく、配向の均一性の点からは光照射により形成する光配向層も好ましい。
【0175】
(1)ラビング処理配向層
ラビング処理により形成される配向層に用いられるポリマー材料としては、多数の文献に記載があり、多数の市販品を入手することができる。本発明においては、ポリビニルアルコールまたはポリイミド、およびその誘導体が好ましく用いられる。配向層については国際公開第2001/88574A1号公報の43頁24行~49頁8行の記載を参照することができる。配向層の厚さは、0.01~10μmであることが好ましく、0.01~2μmであることがさらに好ましい。
【0176】
(2)光配向層
光照射により形成される配向層に用いられる光配向材料としては、多数の文献などに記載がある。本発明においては、例えば、特開2006-285197号公報、特開2007-76839号公報、特開2007-138138号公報、特開2007-94071号公報、特開2007-121721号公報、特開2007-140465号公報、特開2007-156439号公報、特開2007-133184号公報、特開2009-109831号公報、特許第3883848号、特許第4151746号に記載のアゾ化合物、特開2002-229039号公報に記載の芳香族エステル化合物、特開2002-265541号公報、特開2002-317013号公報に記載の光配向性単位を有するマレイミドおよび/またはアルケニル置換ナジイミド化合物、特許第4205195号、特許第4205198号に記載の光架橋性シラン誘導体、特表2003-520878号公報、特表2004-529220号公報、または、特許第4162850号に記載の光架橋性ポリイミド、ポリアミドもしくはエステルが好ましい例として挙げられる。より好ましくは、アゾ化合物、光架橋性ポリイミド、ポリアミド、または、エステルである。
【0177】
上記材料から形成した光配向層に、直線偏光または非偏光照射を施し、光配向層を製造する。
本明細書において、「直線偏光照射」「非偏光照射」とは、光配向材料に光反応を生じせしめるための操作である。用いる光の波長は、用いる光配向材料により異なり、その光反応に必要な波長であれば特に限定されるものではない。光照射に用いる光のピーク波長は、200nm~700nmが好ましく、光のピーク波長が400nm以下の紫外光がより好ましい。
【0178】
光照射に用いる光源は、通常使われる光源、例えばタングステンランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、キセノンフラッシュランプ、水銀ランプ、水銀キセノンランプおよびカーボンアークランプなどのランプ、各種のレーザー[例、半導体レーザー、ヘリウムネオンレーザー、アルゴンイオンレーザー、ヘリウムカドミウムレーザーおよびYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)レーザー]、発光ダイオード、ならびに、陰極線管などを挙げることができる。
【0179】
直線偏光を得る手段としては、偏光板(例えば、ヨウ素偏光板、二色性物質偏光板、および、ワイヤーグリッド偏光板)を用いる方法、プリズム系素子(例えば、グラントムソンプリズム)もしくはブリュースター角を利用した反射型偏光子を用いる方法、または、偏光を有するレーザー光源から出射される光を用いる方法が採用できる。また、フィルタまたは波長変換素子などを用いて必要とする波長の光のみを選択的に照射してもよい。
【0180】
照射する光は、直線偏光の場合には、配向層に対して上面、または裏面から配向層表面に対して垂直、または斜めから光を照射する方法が採用される。光の入射角度は、光配向材料によって異なるが、0~90°(垂直)が好ましく、40~90°が好ましい。非偏光の場合には、配向層に対して、斜めから非偏光を照射する。その入射角度は、10~80°が好ましく、20~60°がより好ましく、30~50°がさらに好ましい。照射時間は、1分~60分が好ましく、1分~10分がより好ましい。パターン化が必要な場合には、フォトマスクを用いた光照射をパターン作製に必要な回数施す方法、または、レーザー光走査によるパターンの書き込みによる方法を採用できる。
【0181】
本発明に用いられる光配向層は、特に制限されず、公知の光配向層を用いることができる。光配向層を形成するための材料は特に制限されないが、通常、光配向性基を有する化合物が使用される。化合物としては、光配向性基を含む繰り返し単位を有する重合体(ポリマー)であってもよい。
上記光配向性基は、光照射により膜に異方性を付与することができる官能基である。より具体的には、光(例えば、直線偏光)の照射により、その基中の分子構造に変化が起こり得る基である。典型的には、光(例えば、直線偏光)の照射により、光異性化反応、光二量化反応、および光分解反応から選ばれる少なくとも1つの光反応が引き起こされる基をいう。これら光配向性基のなかでも、光異性化反応を起こす基(光異性化する構造を有する基)、および、光二量化反応を起こす基(光二量化する構造を有する基)が好ましく、光異性化反応を起こす基がより好ましい。
【0182】
上記光異性化反応とは、光の作用で立体異性化、または、構造異性化を引き起こす反応をいう。このような光異性化反応を起こす物質としては、例えば、アゾベンゼン構造を有する物質(K. Ichimura et al., Mol.Cryst.Liq.Cryst., 298, page 221 (1997))、ヒドラゾノ-β-ケトエステル構造を有する物質(S. Yamamura et al., Liquid Crystals, vol. 13, No. 2, page 189 (1993))、スチルベン構造を有する物質(J.G.Victor and J.M.Torkelson, Macromolecules, 20, page 2241 (1987))、およびスピロピラン構造を有する物質(K. Ichimura et al., Chemistry Letters, page 1063 (1992) ;K.Ichimura et al., Thin Solid Films, vol. 235, page 101 (1993))などが知られている。
上記光異性化反応を起こす基としては、C=C結合またはN=N結合を含む光異性化反応を起こす基が好ましく、このような基としては、例えば、アゾベンゼン構造(骨格)を有する基、ヒドラゾノ-β-ケトエステル構造(骨格)を有する基、スチルベン構造(骨格)を有する基、桂皮酸(シンナモイル)構造(骨格)を有する基、および、スピロピラン構造(骨格)を有する基などが挙げられる。これら基のなかでも、シンナモイル構造を有する基、クマリン構造を有する基が好ましく、シンナモイル構造を有する基がより好ましい。
【0183】
上記光二量化反応とは、光の作用で二つの基の間で付加反応が起こり、典型的には環構造が形成される反応をいう。このような光二量化を起こす物質としては、例えば、桂皮酸構造を有する物質(M. Schadt et al., J. Appl. Phys., vol. 31, No. 7, page 2155 (1992))、クマリン構造を有する物質(M. Schadt et al., Nature., vol. 381, page 212 (1996))、カルコン構造を有する物質(小川俊博他、液晶討論会講演予稿集,2AB03(1997))、ベンゾフェノン構造を有する物質(Y. K. Jang et al., SID Int. Symposium Digest, P-53(1997))などが知られている。
上記光二量化反応を起こす基としては、例えば、桂皮酸(シンナモイル)構造(骨格)を有する基、クマリン構造(骨格)を有する基、カルコン構造(骨格)を有する基、ベンゾフェノン構造(骨格)を有する基、および、アントラセン構造(骨格)を有する基などが挙げられる。これら基のなかでも、シンナモイル構造を有する基、クマリン構造を有する基が好ましく、シンナモイル構造を有する基がより好ましい。
【0184】
また、上記光配向性基を有する化合物は、さらに、架橋性基を有していることが好ましい。上記架橋性基としては、熱の作用により硬化反応を起こす熱架橋性基、光の作用により硬化反応を起こす光架橋性基が好ましく、熱架橋性基および光架橋性基をいずれも有する架橋性基であってもよい。
上記架橋性基としては、例えば、エポキシ基、オキセタニル基、-NH-CH2-O-R(Rは水素原子または炭素数1~20のアルキル基を表す。)で表される基、エチレン性不飽和二重結合を有する基、および、ブロックイソシアネート基からなる群から選ばれた少なくとも1つが挙げられる。なかでも、エポキシ基、オキセタニル基、エチレン性不飽和二重結合を有する基が好ましい。
なお、3員環の環状エーテル基はエポキシ基とも呼ばれ、4員環の環状エーテル基はオキセタニル基とも呼ばれる。
また、エチレン性不飽和二重結合を有する基としては、具体的には、例えば、ビニル基、アリル基、スチリル基、(メタ)アクリロイル基、が挙げられ、(メタ)アクリロイル基であることが好ましい。
【0185】
上記光配向層の好適態様の一つとしては、シンナメート基を含む繰り返し単位a1を有する重合体Aと、シンナメート基を有し、上記重合体Aよりも分子量が小さい低分子化合物Bとを含む光配向層形成用組成物を用いて形成される光配向層が挙げられる。
【0186】
ここで、本明細書において、シンナメート基とは、桂皮酸またはその誘導体を基本骨格として含む桂皮酸構造を有する基であって、下記式(I)または下記式(II)で表される基をいう。
【0187】
【化28】
【0188】
式中、Rは水素原子または1価の有機基を表し、Rは1価の有機基を表す。式(I)中、aは0~5の整数を表し、式(II)中、aは0~4を表す。aが2以上の場合、複数のR1はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。*は結合手であることを示す。
【0189】
重合体Aは、シンナメート基を含む繰り返し単位a1を有する重合体であれば特に制限されず、従来公知の重合体を用いることができる。
重合体Aの重量平均分子量は、1000~500000が好ましく、2000~300000がより好ましく、3000~200000がさらに好ましい。
ここで、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定によるポリスチレン(PS)換算値として定義され、本発明におけるGPCによる測定は、HLC-8220GPC(東ソー(株)製)を用い、カラムとしてTSKgel Super HZM-H、HZ4000、HZ2000を用いて測定できる。
【0190】
上記重合体Aが有するシンナメート基を含む繰り返し単位a1としては、例えば、下記式(A1)~(A4)で表される繰り返し単位が挙げられる。
【0191】
【化29】
【0192】
ここで、式(A1)および式(A3)中、Rは水素原子またはメチル基を表し、式(A2)および式(A4)中、Rは炭素数1~6のアルキル基を表す。
式(A1)および式(A2)中、Lは単結合または2価の連結基を表し、aは0~5の整数を表し、Rは水素原子または1価の有機基を表す。
式(A3)および式(A4)中、Lは2価の連結基を表し、Rは1価の有機基を表す。
また、Lとしては、具体的には、例えば、-CO-O-Ph-、-CO-O-Ph-Ph-、-CO-O-(CH-、-CO-O-(CH-Cy-、および、-(CH-Cy-などが挙げられる。ここで、Phは置換基を有していてもよい2価のベンゼン環(例えば、フェニレン基など)を表し、Cyは置換基を有していてもよい2価のシクロヘキサン環(例えば、シクロヘキサン-1,4-ジイル基など)を表し、nは1~4の整数を表す。
また、Lとしては、具体的には、例えば、-O-CO-、-O-CO-(CH-O-などが挙げられる。ここで、mは1~6の整数を表す。
また、Rの1価の有機基としては、例えば、炭素数1~20の鎖状または環状のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、および、置換基を有していてもよい炭素数6~20のアリール基などが挙げられる。
また、Rの1価の有機基としては、例えば、炭素数1~20の鎖状または環状のアルキル基、および、置換基を有していてもよい炭素数6~20のアリール基などが挙げられる。
また、aは1であるのが好ましく、Rがパラ位に有しているのが好ましい。
また、上述したPh、Cyおよびアリール基が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、および、アミノ基などが挙げられる。
【0193】
液晶層の配向性がより向上する点、および、液晶層の密着性がより向上する点から、上記重合体Aは、さらに、架橋性基を含む繰り返し単位a2を有しているのが好ましい。
架橋性基の定義および好適態様は、上述した通りである。
なかでも、架橋性基を含む繰り返し単位a2としては、エポキシ基、オキセタニル基、エチレン性不飽和二重結合を有する基を有する繰り返し単位が好ましく、(メタ)アクリロイル基を有する繰り返し単位が好ましい。
【0194】
エポキシ基、オキセタニル基、エチレン性不飽和二重結合を有する基を有する繰り返し単位の好ましい具体例としては、下記の繰り返し単位が例示できる。なお、RおよびRは、それぞれ、上述した式(A1)および式(A1)中のRおよびRと同義である。
【0195】
【化30】
【0196】
上記重合体Aは、上述した繰り返し単位a1および繰り返し単位a2以外の他の繰り返し単位を有していてもよい。
他の繰り返し単位を形成するモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル化合物、マレイミド化合物、アクリルアミド化合物、アクリロニトリル、マレイン酸無水物、スチレン化合物、および、ビニル化合物などが挙げられる。
【0197】
液晶性成分の配向性(偏光子層の配向度を含む)と、密着力の点から、上記重合体Aの100質量部に対し、(メタ)アクリロイル基を含有する繰り返し単位を、10~50質量部含むことが好ましく、15~45質量部含むことがさらに好ましく、20~40質量部含むことが特に好ましい。
【0198】
光配向層形成用組成物中における上記重合体Aの含有量は、後述する有機溶媒を含む場合、溶媒100質量部に対して、0.1~50質量部であるのが好ましく、0.5~30質量部であるのがより好ましい。
【0199】
低分子化合物Bは、シンナメート基を有し、重合体Aよりも分子量が小さい化合物である。低分子化合物Bを用いることにより、作製される光配向層の配向性がより良好となる。光配向層の配向性がより向上する理由から、上記低分子化合物Bの分子量は、200~500が好ましく、200~400がより好ましい。
低分子化合物Bとしては、例えば、下記式(B1)で表される化合物が挙げられる。
【0200】
【化31】
【0201】
式(B1)中、aは0~5の整数を表し、Rは、水素原子または1価の有機基を表し、Rは、1価の有機基を表す。aが2以上の場合、複数のRは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
また、Rの1価の有機基としては、例えば、炭素数1~20の鎖状または環状のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、および、置換基を有していてもよい炭素数6~20のアリール基が挙げられ、なかでも、炭素数1~20のアルコキシ基が好ましく、炭素数1~6のアルコキシ基がより好ましく、メトキシ基またはエトキシ基がさらに好ましい。
また、Rの1価の有機基としては、例えば、炭素数1~20の鎖状または環状のアルキル基、および、置換基を有していてもよい炭素数6~20のアリール基が挙げられ、なかでも、炭素数1~20の鎖状のアルキル基が好ましく、炭素数1~10の分岐鎖状のアルキル基がより好ましい。
また、aは1であるのが好ましく、Rがパラ位に有しているのが好ましい。
また、上述したアリール基が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、および、アミノ基などが挙げられる。
【0202】
光配向層形成用組成物中における、上記低分子化合物Bの含有量は、重合体Aの構成単位a1の質量に対して、10~500質量部であるのが好ましく、30~300質量部であるのがより好ましい。
【0203】
光配向層形成用組成物は、配向性がより向上する理由から、架橋性基を含む構成単位a2を有する重合体Aとは別に、架橋性基を有する架橋剤Cを含むことが好ましい。
上記架橋剤Cの分子量は、1000以下が好ましく、100~500がより好ましい。
上記架橋剤Cとしては、例えば、分子内に2個以上のエポキシ基またはオキセタニル基を有する化合物、ブロックイソシアネート化合物(保護されたイソシアナト基を有する化合物)、および、アルコキシメチル基含有化合物などが挙げられる。
これらのうち、分子内に2個以上のエポキシ基またはオキセタニル基を有する化合物、または、ブロックイソシアネート化合物が好ましい。
【0204】
光配向層形成用組成物が上記架橋剤Cを含む場合、架橋剤Cの含有量は、重合体Aの構成単位a1の100質量部に対して、1~1000質量部であるのが好ましく、10~500質量部であるのがより好ましい。
【0205】
光配向層形成用組成物は、光配向層を作製する作業性の観点から、溶媒を含むことが好ましい。溶媒としては、水、および、有機溶媒が挙げられる。
光配向層形成用組成物は、上記以外の他の成分を含んでいてもよく、例えば、架橋触媒、密着改良剤、レベリング剤、界面活性剤、および、可塑剤などが挙げられる。
【0206】
本発明における配向層の好適態様の一つとしては、架橋性基を有する繰り返し単位を有する重合体(以下、重合体X)を含有する配向層が挙げられる。
架橋性基としては、下記式(PG-1)~(PG-9)で表されるいずれかの重合性基を表す。
【0207】
【化32】
【0208】
重合体Xは、偏光子層の配向度がより優れる点、および/または、偏光子層の配向欠陥を抑制できる点から、さらに、下記式(PA)で表される部分構造を有する繰り返し単位を有することが好ましい。ここで、式(PA)で表される部分構造は光配向性基である。
【0209】
【化33】
【0210】
式(PA)中、2つの*は、結合位置を表し、RP1~RP4はそれぞれ独立に、水素原子または置換基を表し、隣接する2つの基が結合して環を形成していてもよい。
【0211】
上記式(PA)で表される光配向性基は、下記式(PA2)で表される光配向性基であることが好ましい。
【0212】
【化34】
【0213】
上記式(PA2)中、*は、Lとの結合位置を表し、RP1~RP5は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表し、隣接する2つの基が結合して環を形成していてもよい。
【0214】
ここで、RP1~RP5の一態様が表す置換基は、光配向性基が液晶化合物と相互作用しやすくなり、隣接する液晶層の液晶配向性がより良好となる理由から、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、炭素数1~20の直鎖状のハロゲン化アルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数6~20のアリール基、炭素数6~20のアリールオキシ基、シアノ基、アミノ基、または、下記式(a3)で表される基であることが好ましい。
【0215】
【化35】
ここで、上記式(a3)中、*は、上記式(a2)中のベンゼン環との結合位置を表し、Rは、1価の有機基を表す。
【0216】
上記式(a3)中のRが表す1価の有機基としては、例えば、炭素数1~20の直鎖状または環状のアルキル基が挙げられる。
直鎖状のアルキル基としては、炭素数1~6のアルキル基が好ましく、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基などが挙げられ、中でも、メチル基またはエチル基が好ましい。
環状のアルキル基としては、炭素数3~6のアルキル基が好ましく、具体的には、例えば、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられ、中でも、シクロヘキシル基が好ましい。
なお、上記式(a3)中のRが表す1価の有機基としては、上述した直鎖状のアルキル基および環状のアルキル基を直接または単結合を介して複数組み合わせたものであってもよい。
【0217】
本発明においては、光配向性基が液晶化合物と相互作用しやすくなり、隣接する偏光子層の液晶配向性がより良好となる理由から、上記式(PA)中のRP1~RP4、または、上記式(PA2)中のRP1~RP5のうち、少なくとも1つ(特に、RP5)が上述した置換基であることが好ましく、得られる重合体Xの直線性が向上し、偏光照射した際に反応効率が向上する理由から、電子供与性の置換基であることがより好ましい。
ここで、電子供与性の置換基(電子供与性基)とは、ハメット値(Hammett置換基定数σp)が0以下の置換基のことをいい、例えば、上述した置換基のうち、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基などが挙げられる。
これらのうち、アルコキシ基であることが好ましく、隣接する偏光子層の液晶配向性が更に良好となる理由から、炭素数が6~16のアルコキシ基であることがより好ましく、炭素数7~10のアルコキシ基であることが更に好ましい。
【0218】
重合体Xにおいて、上記式(PA)で表される部分構造を有する繰り返し単位は、下記式(A)で表される繰り返し単位であるのが好ましい。
【0219】
【化36】
【0220】
上記式(A)中、Rは、水素原子または置換基を表し、Lは、2価の連結基を表し、Aは、上述の式(PA)で表される光配向性基を表す。
【0221】
次に、上記式(A)中のRが表す、水素原子または置換基について説明する。
上記式(A)中、Rの一態様が示す置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1~20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、炭素数1~20の直鎖状のハロゲン化アルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数6~20のアリール基、炭素数6~20のアリールオキシ基、シアノ基、または、アミノ基であることが好ましい。
【0222】
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられ、中でも、フッ素原子、塩素原子であるのが好ましい。
【0223】
炭素数1~20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基について、直鎖状のアルキル基としては、炭素数1~6のアルキル基が好ましく、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基などが挙げられる。
分岐状のアルキル基としては、炭素数3~6のアルキル基が好ましく、具体的には、例えば、イソプロピル基、tert-ブチル基などが挙げられる。
環状のアルキル基としては、炭素数3~6のアルキル基が好ましく、具体的には、例えば、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。
【0224】
炭素数1~20の直鎖状のハロゲン化アルキル基としては、炭素数1~4のフルオロアルキル基が好ましく、具体的には、例えば、トリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基などが挙げられ、中でも、トリフルオロメチル基が好ましい。
【0225】
炭素数1~20のアルコキシ基としては、炭素数1~18のアルコキシ基が好ましく、炭素数6~18のアルコキシ基がより好ましく、炭素数6~14のアルコキシ基が更に好ましい。具体的には、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-ブトキシ基、メトキシエトキシ基、n-ヘキシルオキシ基、n-オクチルオキシ基、n-デシルオキシ基、n-ドデシルオキシ基、n-テトラデシルオキシ基などが好適に挙げられ、中でも、n-ヘキシルオキシ基、n-オクチルオキシ基、n-デシルオキシ基、n-ドデシルオキシ基、n-テトラデシルオキシ基がより好ましい。
【0226】
炭素数6~20のアリール基としては、炭素数6~12のアリール基が好ましく、具体的には、例えば、フェニル基、α-メチルフェニル基、ナフチル基などが挙げられ、中でも、フェニル基が好ましい。
【0227】
炭素数6~20のアリールオキシ基としては、炭素数6~12のアリールオキシ基が好ましく、具体的には、例えば、フェニルオキシ基、2-ナフチルオキシ基などが挙げられ、中でも、フェニルオキシ基が好ましい。
【0228】
アミノ基としては、例えば、第1級アミノ基(-NH);メチルアミノ基などの第2級アミノ基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基、含窒素複素環化合物(例えば、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジンなど)の窒素原子を結合手とした基などの第3級アミノ基;が挙げられる。
【0229】
次に、上記式(A)中のLが表す、2価の連結基について説明する。
2価の連結基としては、光配向性基が液晶化合物と相互作用しやすくなり、隣接する偏光子層の液晶配向性がより良好となる理由から、置換基を有していてもよい炭素数1~18の直鎖状、分岐状または環状のアルキレン基、置換基を有していてもよい炭素数6~12のアリーレン基、エーテル基(-O-)、カルボニル基(-C(=O)-)、および、置換基を有していてもよいイミノ基(-NH-)からなる群から選択される少なくとも2以上の基を組み合わせた2価の連結基であることが好ましい。
【0230】
ここで、アルキレン基、アリーレン基およびイミノ基が有していてもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、シアノ基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基および水酸基などが挙げられる。
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられ、中でも、フッ素原子、塩素原子であるのが好ましい。
アルキル基としては、例えば、炭素数1~18の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基が好ましく、炭素数1~8のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、シクロヘキシル基等)がより好ましく、炭素数1~4のアルキル基であることが更に好ましく、メチル基またはエチル基であるのが特に好ましい。
アルコキシ基としては、例えば、炭素数1~18のアルコキシ基が好ましく、炭素数1~8のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-ブトキシ基、メトキシエトキシ基等)がより好ましく、炭素数1~4のアルコキシ基であることが更に好ましく、メトキシ基またはエトキシ基であるのが特に好ましい。
アリール基としては、例えば、炭素数6~12のアリール基が挙げられ、具体的には、例えば、フェニル基、α-メチルフェニル基、ナフチル基などが挙げられ、中でも、フェニル基が好ましい。
アリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ、ナフトキシ、イミダゾイルオキシ、ベンゾイミダゾイルオキシ、ピリジン-4-イルオキシ、ピリミジニルオキシ、キナゾリニルオキシ、プリニルオキシ、チオフェン-3-イルオキシなどが挙げられる。
アルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどが挙げられる。
【0231】
炭素数1~18の直鎖状、分岐状または環状のアルキレン基について、直鎖状のアルキレン基としては、具体的には、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基、ヘキサデシレン基、ヘプタデシレン基、オクタデシレン基などが挙げられる。
また、分岐状のアルキレン基としては、具体的には、例えば、ジメチルメチレン基、メチルエチレン基、2,2-ジメチルプロピレン基、2-エチル-2-メチルプロピレン基などが挙げられる。
また、環状のアルキレン基としては、具体的には、例えば、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロオクチレン基、シクロデシレン基、アダマンタン-ジイル基、ノルボルナン-ジイル基、exo-テトラヒドロジシクロペンタジエン-ジイル基などが挙げられ、中でも、シクロヘキシレン基が好ましい。
【0232】
炭素数6~12のアリーレン基としては、具体的には、例えば、フェニレン基、キシリレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、2,2’-メチレンビスフェニル基などが挙げられ、中でも、フェニレン基が好ましい。
【0233】
上記式(A)表される繰り返し単位Aとしては、具体的には、例えば、以下に示す繰り返し単位A-1~A-160が挙げられる。なお、下記式中、Meはメチル基を表す。
【化37】



【0234】
【化38】



【0235】
【化39】



【0236】
【化40】



【0237】
【化41】


【0238】
【化42】



【0239】
【化43】



【0240】
【化44】


【0241】
【化45】


【0242】
重合体Xにおいて、架橋性基を有する繰り返し単位は、下記式(B)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0243】
【化46】
【0244】
上記式(B)中、Rは、水素原子または置換基を表す。なお、Rの一態様が示す置換基としては、上記式(A)中のRの一態様が示す置換基で説明したものと同様のものが挙げられる。
また、Lは、2価の連結基を表す。なお、Lが表す2価の連結基としては、上記式(A)中のLが表す2価の連結基で説明したものと同様のものが挙げられる。
また、Bは、上記式(PG-1)~(PG-9)で表されるいずれかの架橋性基を表す。
【0245】
本発明においては、配向度がより向上する理由から、上記式(B)で表される繰り返し単位Bが、繰り返し単位B1および繰り返し単位B2の2種の繰り返し単位からなり、繰り返し単位B1が、上記式(B)中のBが上記式(PG-1)で表される重合性基を表す繰り返し単位であり、繰り返し単位B2が、上記式(B)中のBが上記式(PG-4)~(PG-9)で表されるいずれかの重合性基を表す繰り返し単位であることが好ましい。
【0246】
上記繰り返し単位B1としては、具体的には、例えば、以下に示す繰り返し単位B-1~B-29が挙げられる。
【化47】



【0247】
上記繰り返し単位B2としては、具体的には、例えば、以下に示す繰り返し単位B-30~B-52が挙げられる。
【化48】




【0248】
重合体X中の架橋性基を有する繰り返し単位の含有量は、重合体Xの全繰り返し単位(100質量%)に対して、10質量%以上であるのが好ましく、15質量%以上であるのがより好ましく、また、90質量%以下であるのが好ましく、60質量%以下であるのがより好ましく、45質量%以下であるのが特に好ましい。
重合体X中の式(PA)で表される部分構造を有する繰り返し単位の含有量は、重合体Xの全繰り返し単位(100質量%)に対して、3~40質量%であるのが好ましく、5~35質量%であるのがより好ましい。
【0249】
重合体Xは、本発明の効果を阻害しない限り、上述した架橋性基を有する繰り返し単位および式(PA)で表される部分構造を有する繰り返し単位以外に、他の繰り返し単位を有していてもよい。
このような他の繰り返し単位を形成するモノマー(ラジカル重合性単量体)としては、例えば、アクリル酸エステル化合物、メタクリル酸エステル化合物、マレイミド化合物、アクリルアミド化合物、アクリロニトリル、マレイン酸無水物、スチレン化合物、ビニル化合物等が挙げられる。
【0250】
〔配向工程〕
配向工程は、塗布膜に含まれる液晶性成分を配向させる工程である。これにより、液晶層が得られる。
配向工程は、乾燥処理を有していてもよい。乾燥処理によって、溶媒などの成分を塗布膜から除去することができる。乾燥処理は、塗布膜を室温下において所定時間放置する方法(例えば、自然乾燥)によって行われてもよいし、加熱および/または送風する方法によって行われてもよい。
ここで、上述した本発明の組成物に含まれる液晶性成分は、上述した塗布膜形成工程または乾燥処理によって、配向する場合がある。例えば、本発明の組成物が溶媒を含む塗布液として調製されている態様では、塗布膜を乾燥して、塗布膜から溶媒を除去することで、光吸収異方性を持つ塗布膜(例えば、偏光子層)が得られる。乾燥処理が塗布膜に含まれる液晶性成分の液晶相への転移温度以上の温度により行われる場合には、後述する加熱処理は実施しなくてもよい。
【0251】
塗布膜に含まれる液晶性成分の液晶相への転移温度は、製造適性等の面から10~250℃が好ましく、25~190℃がより好ましい。上記転移温度が10℃以上であると、液晶相を呈する温度範囲にまで温度を下げるための冷却処理等が必要とならず、好ましい。また、上記転移温度が250℃以下であると、一旦液晶相を呈する温度範囲よりもさらに高温の等方性液体状態にする場合にも高温を要さず、熱エネルギーの浪費、ならびに、基板の変形および変質等を低減できるため、好ましい。
【0252】
配向工程は、加熱処理を有することが好ましい。これにより、塗布膜に含まれる液晶性成分を配向させることができるため、加熱処理後の塗布膜を偏光子として好適に使用できる。加熱処理は、製造適性等の面から10~250℃が好ましく、25~190℃がより好ましい。また、加熱時間は、1~300秒が好ましく、1~60秒がより好ましい。
【0253】
配向工程は、加熱処理後に実施される冷却処理を有していてもよい。冷却処理は、加熱後の塗布膜を室温(20~25℃)程度まで冷却する処理である。これにより、塗布膜に含まれる液晶性成分の配向を固定することができる。冷却手段としては、特に限定されず公知の方法により実施できる。
以上の工程によって、偏光子を得ることができる。
なお、本態様では、塗布膜に含まれる液晶性成分を配向する方法として、乾燥処理および加熱処理などを挙げているが、これに限定されず公知の配向処理によって実施できる。
【0254】
〔他の工程〕
本製造方法は、上記配向工程後に、偏光子層を硬化させる工程(以下、「硬化工程」ともいう。)を有することが好ましい。
硬化工程は、例えば、加熱および/または光照射(露光)によって実施される。このなかでも、硬化工程は光照射によって実施されることが好ましい。
硬化に用いる光源は、赤外線、可視光または紫外線など、種々の光源を用いることが可能であるが、紫外線であることが好ましい。また、硬化時に加熱しながら紫外線を照射してもよいし、特定の波長のみを透過するフィルタを介して紫外線を照射してもよい。
また、露光は、窒素雰囲気下で行われてもよい。ラジカル重合によって偏光子の硬化が進行する場合において、酸素による重合の阻害が低減されるため、窒素雰囲気下で露光することが好ましい。
【0255】
<積層体>
本発明の積層体は、基材と、上記基材上に上述の偏光子層(単に、「偏光子」ともいう。)と、を有する。本発明の積層体は、基材上にさらに配向層を有することが好ましい。
本発明の積層体の好適態様の一つとしては、基材と、上記基材上に設けられた配向層と、上記配向層上に設けられた偏光子層と、を有する態様が挙げられる。
また、本発明の積層体は、屈折率調整層、バリヤ層、光学異方性層、表面保護層、機能層、粘着層、接着剤層、などを有していてもよい。
以下、本発明の積層体を構成する各層について説明する。
【0256】
〔基材〕
基材(以下、「透明支持体」ともいう)としては、適宜選択することができ、例えば、ガラスおよびポリマーフィルムが挙げられる。基材の光透過率は、80%以上であるのが好ましい。
基材としてポリマーフィルムを用いる場合には、光学的等方性のポリマーフィルムを用いるのが好ましい。ポリマーの具体例および好ましい態様は、特開2002-22942号公報の[0013]段落の記載を適用できる。また、従来知られているポリカーボネートやポリスルホンのような複屈折の発現しやすいポリマーであっても国際公開第2000/26705号公報に記載の分子を修飾することで発現性を低下させたものを用いることもできる。
透明支持体として具体的には、例えば、ガラス基板およびプラスチック基板が挙げられる。
プラスチック基板を構成するプラスチックとしては例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ノルボルネン系ポリマー等のポリオレフィン;環状オレフィン系樹脂;ポリビニルアルコール;ポリエチレンテレフタレート;ポリメタクリル酸エステル;ポリアクリル酸エステル;トリアセチルセルロース(TAC)、ジアセチルセルロースおよびセルロースアセテートプロピオネート等のセルロースエステル;ポリエチレンナフタレート;ポリカーボネート;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルケトン;ポリフェニレンスルフィド;ポリフェニレンオキシドおよびポリイミドなどが挙げられる。中でも、市場から容易に入手できたり、透明性に優れていたりする点から、とりわけ好ましくは、セルロースエステル、環状オレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリメタクリル酸エステルである。フレキシブルの観点では、ポリイミドが優れている。ポリイミドは、屈折率が高く屈折率ギャップが大きくなる可能性があるが、シリカ粒子を混入させる等の方法で屈折率を調整することも好ましい。ポリイミドの詳細については、国際公開2018/062296号公報や国際公開2018/062190号公報に記載されている。
【0257】
透明支持体の厚さは、実用的な取扱いができる程度の質量である点、および、十分な透明性が確保できる点から、強度および加工性を維持できる程度に薄い方がより好ましい。
ガラス基板の厚みは、100~3000μmが好ましく、100~1000μmがより好ましい。
プラスチック基板の厚みは、5~300μmが好ましく、5~200μmがより好ましい。
なお、本発明の積層体を円偏光板として使用する場合(特にモバイル機器用途の円偏光板として使用する場合)、透明基材の厚みは5~100μm程度が好ましい。
【0258】
基材がガラス基板である場合、ガラス基板は、偏光子層における後述するλ/4板が設けられた面とは反対面側に設けられていてもよい(すなわち、ガラス基板とλ/4板との間に偏光子層が配置されている)。
【0259】
〔配向層〕
本発明の積層体は、配向層を有していてもよい。配向層は、基材と偏光子層との間に設けられていてもよいし、偏光子層と後述の光学異方性層との間に設けられていてもよいし、これらの両方の位置に設けられていてもよい。
配向層の詳細については、上述したとおりであるので、その説明を省略する。
【0260】
〔偏光子層〕
偏光子層については、上述したとおりであるので、その説明を省略する。
【0261】
〔屈折率調整層〕
本発明の積層体は、屈折率調整層を有していてもよい。屈折率調整層は、偏光子層上に形成されるのが好ましく、上記偏光子層界面での反射防止機能に加えて、偏光子層の密着力が向上することから、偏光子層に接するように配置されることがより好ましい。
屈折率調整層は、架橋性基を有する化合物を含有する組成物から形成され、波長550nmにおける面内平均屈折率が1.55以上1.70以下である。
屈折率調整層の面内平均屈折率は、上記範囲であればよいが、1.58~1.70が好ましく、1.60~1.70がさらに好ましい。
【0262】
屈折率調整層の厚みは特に制限されないが、薄型化の点から、0.01~2.00μmが好ましく、0.01~0.80μmがより好ましく、0.01~0.15μmがさらに好ましい。
【0263】
屈折率調整層を構成する成分の種類は、架橋性基を有する化合物を含有していれば特に制限されない。架橋性基があることで層内の強度が確保できる。光や熱で硬化する化合物、例えば、(メタ)アクリロイル基やエポキシ基を有する重合性化合物が好ましい。また、高い面内平均屈折率が得られる点で重合性液晶化合物も好ましい。また、重合性液晶化合物は面内で屈折率を制御できる点で、面内で屈折率異方性を持つ偏光子層との屈折率最適化のポテンシャルが高い。
【0264】
屈折率調整層は、架橋性基を有する化合物と共に、粒子を含んでいてもよい。粒子としては、有機粒子、無機粒子ならびに有機成分および無機成分を含む有機無機複合粒子が挙げられる。
有機粒子としては、スチレン樹脂粒子、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体粒子、アクリル樹脂粒子、メタクリル樹脂粒子、スチレン-アクリル共重合体粒子、スチレン-メタクリル共重合体粒子、メラミン樹脂粒子およびこれらを2種以上含む樹脂粒子が挙げられる。
無機粒子を構成する成分としては、金属酸化物、金属窒化物、金属酸窒化物、および、金属単体が挙げられる。上記金属酸化物、金属窒化物、金属酸窒化物、および、金属単体に含まれる金属原子としては、チタン原子、ケイ素原子、アルミニウム原子、コバルト原子、および、ジルコニウム原子が挙げられる。無機粒子の具体例としては、アルミナ粒子、アルミナ水和物粒子、シリカ粒子、ジルコニア粒子、および、粘土鉱物(例えば、スメクタイト)等の無機酸化物粒子が挙げられる。高屈折率が得られる点で、ジルコニア粒子は好ましい。
【0265】
粒子の平均粒子径は、1~300nmが好ましく、10~200nmがより好ましい。上記範囲であると、粒子の分散性に優れ、また、高温耐久性、湿熱耐久性および透明性により優れる硬化物(透明樹脂層)が得られる。
ここで、粒子の平均粒子径は、TEM(透過型電子顕微鏡)またはSEM(走査型電子顕微鏡)の観察にて得られた写真から求めることができる。具体的には、粒子の投影面積を求め、それに対応する円相当径(円の直径)を粒子の平均粒子径とする。なお、本発明における平均粒子径は、100個の粒子について求めた円相当径の算術平均値とする。
粒子は、球状、針状、繊維(ファイバー状)、柱状および板状等のいずれの形状であってもよい。
屈折率調整層中における粒子の含有量は特に制限されないが、屈折率調整層の面内平均屈折率が調整しやすい点で、屈折率調整層の全質量に対して、1~50質量%が好ましく、1~30質量%がより好ましい。
【0266】
屈折率調整層の形成方法は特に制限されないが、屈折率調整層形成用組成物を偏光子層上に塗布して、必要に応じて、塗膜に硬化処理を施す方法が挙げられる。
屈折率調整層形成用組成物には、屈折率調整層を構成し得る成分が含まれており、例えば、樹脂、モノマー、および、粒子が挙げられる。樹脂および粒子の例示は、上述した通りである。
モノマーとしては、光硬化性化合物および熱硬化性化合物(例えば、熱硬化性樹脂)が挙げられる。モノマーとしては、重合性基を1分子中に1つ含む単官能重合性化合物、および、同一または異なる重合性基を1分子中に2つ以上含む多官能重合性化合物が好ましい。重合性化合物は、モノマーであっても、オリゴマーまたはプレポリマー等の多量体であってもよい。
重合性基としては、ラジカル重合性基およびカチオン重合性基が挙げられ、ラジカル重合性基が好ましい。ラジカル重合性基としては、エチレン性不飽和結合基等が挙げられる。カチオン重合性基としては、エポキシ基およびオキセタン基等が挙げられる。
【0267】
屈折率調整層形成用組成物には、界面改良剤、重合開始剤、および、溶媒の少なくとも1種が含まれていてもよい。これらの成分としては、上述の本発明の組成物(偏光子層を形成するための組成物)に含まれていてもよい成分として例示した化合物が挙げられる。
【0268】
屈折率調整層形成用組成物の塗布方法は特に制限されず、上述した本発明の組成物の塗布方法が挙げられる。
【0269】
屈折率調整層形成用組成物を塗布した後、必要に応じて、塗膜に乾燥処理を施してもよい。
また、屈折率調整層形成用組成物がモノマー等の硬化性化合物を含む場合は、屈折率調整層形成用組成物を塗布した後、塗膜に硬化処理を施してもよい。
硬化処理としては、光硬化処理および熱硬化処理が挙げられ、用いられる材料に応じて最適な条件が選択される。
【0270】
重合性液晶化合物を用いる場合、化合物は特に限定されない。一般的に、液晶化合物はその形状から、棒状タイプと円盤状タイプに分類できる。さらにそれぞれ低分子と高分子タイプがある。高分子とは一般に重合度が100以上のものを指す(高分子物理・相転移ダイナミクス,土井 正男 著,2頁,岩波書店,1992)。
本発明においては、いずれの液晶化合物を用いることもできるが、棒状液晶化合物(以下、「CLC」とも略す。)またはディスコティック液晶化合物(以下、「DLC」とも略す。)を用いるのが好ましく、棒状液晶化合物を用いるのがより好ましい。なお、2種以上の棒状液晶化合物、2種以上の円盤状液晶化合物、または、棒状液晶化合物と円盤状液晶化合物との混合物を用いてもよい。
本発明においては、上述の液晶化合物の固定化のために、重合性基を有する液晶化合物を用いることが必要であり、液晶化合物が1分子中に重合性基を2以上有することがさらに好ましい。なお、液晶化合物が2種類以上の混合物の場合には、少なくとも1種類の液晶化合物が1分子中に2以上の重合性基を有していることが好ましい。なお、液晶化合物が重合によって固定された後においては、もはや液晶性を示す必要はない。
【0271】
また、重合性基の種類は特に制限されず、付加重合反応が可能な官能基が好ましく、重合性エチレン性不飽和基または環重合性基が好ましい。より具体的には、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基などが好ましく挙げられ、(メタ)アクリロイル基がより好ましい。
【0272】
棒状液晶化合物としては、例えば、特表平11-513019号公報の請求項1や特開2005-289980号公報の段落[0026]~[0098]に記載のものを好ましく用いることができ、ディスコティック液晶化合物としては、例えば、特開2007-108732号公報の段落[0020]~[0067]や特開2010-244038号公報の段落[0013]~[0108]に記載のものを好ましく用いることができるが、これらに限定されない。
【0273】
屈折率調整層形成用組成物に含まれるその他の成分としては、具体的には、例えば、上述した組成物(偏光子層形成用組成物)において説明した重合開始剤、界面活性剤および溶媒などを挙げることができる。
【0274】
重合性液晶化合物を含む屈折率調整層形成用組成物を用いた屈折率調整層の形成方法は特に限定されず、屈折率調整層形成用組成物を層構成に応じて上述した配向層または偏光子層上に塗布して塗布膜を形成する工程(以下、「塗布膜形成工程」ともいう。)と、塗布膜に含まれる液晶性成分を配向させる工程(以下、「配向工程」ともいう。)と、をこの順に含む方法が挙げられる。ここで、塗布膜形成工程および配向工程としては、上述した偏光子層の形成方法において説明したものと同様の工程が挙げられる。
【0275】
〔バリヤ層〕
本発明の積層体は、偏光子層の二色性物質の耐光性を向上させる目的で、バリヤ層を有していることが好ましい。
「バリヤ層」とは、酸素遮断機能のある酸素遮断膜であり、例えば、特開2014-159124号公報の[0014]~[0054]段落、特開2017-121721号公報の[0042]~[0075]段落、特開2017-115076号公報の[0045]~[0054]段落、特開2012-213938号公報の[0010]~[0061]段落、特開2005-169994号公報の[0021]~[0031]段落の記載を参照できる。さらに具体例としては、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、セルロースエーテル、ポリアミド、ポリイミド、スチレン/マレイン酸共重合体、ゼラチン、塩化ビニリデン、および、セルロースナノファイバー、などの有機化合物を含む層が挙げられる。酸素遮断能が高い点で、ポリビニルアルコールやポリエチレンビニルアルコールが好ましく、ポリビニルアルコールが特に好ましい。
【0276】
なお、本明細書において酸素遮断機能とは、酸素を全く通さない状態に限らず、目的の性能に応じて若干酸素を通す状態も含む。
【0277】
酸素透過度としては、40cc/m/day/atm以下が好ましく、
4cc/m・day以下がより好ましく、1cc/m/day/atm以下がさらに好ましい。
ここで、酸素透過度は、単位時間、単位面積あたりに膜を通過する酸素量を表す指標であり、25℃50%の環境下で、ハックウルトラアナリティカル社製MODEL3600 型酸素濃度装置で測定した値である。
【0278】
バリヤ層の形成に使用可能な材料のうち、重合性化合物で酸素遮断機能の高い化合物としては、水素結合性の高い重合性化合物や、分子量あたりの重合性基を多く持つ化合物が挙げられる。分子量あたりの重合性基を多く持つ化合物としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートやジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0279】
バリヤ層の形成に使用可能な材料のうち、水素結合性の高い重合性化合物としては、具体的には、例えば、下記式で表される化合物が挙げられ、中でも、下記CEL2021P(ダイセル社製、商品名「セロキサイド CEL2021P」)で表される3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレートが好ましい。また、下記式中、サイクロマーM100はダイセル社の商品名であり、ブレンマGMRは日油社の商品名である。
【0280】
【化49】

【0281】
また、バリヤ層としては、金属化合物からなる薄層(金属化合物薄層)も挙げられる。金属化合物薄層の形成方法は、目的の薄層を形成できる方法であればいかなる方法でも用いることができる。例えば、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、および、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法などが適しており、具体的には特許第3400324号、特開2002-322561号、特開2002-361774号各公報記載の形成方法を採用することができる。
【0282】
金属化合物薄層に含まれる成分は、酸素遮断機能を発揮できるものであれば特に限定されないが、例えば、Si、Al、In、Sn、Zn、Ti、Cu、Ce、またはTa等から選ばれる1種以上の金属を含む酸化物、窒化物もしくは酸化窒化物などを用いることができる。これらの中でも、Si、Al、In、Sn、ZnおよびTiから選ばれる金属の酸化物、窒化物もしくは酸化窒化物が好ましく、特に、Si、Al、SnおよびTiから選ばれる金属酸化物、窒化物もしくは酸化窒化物が好ましい。これらは、副次的な成分として他の元素を含有してもよい。特開2016-40120号公報や公報特開2016-155255号公報に記載されているような、アルミニウム化合物とリン化合物の反応生成物からなる層も好ましい。
【0283】
またバリヤ層は、例えば米国特許第6413645号公報、特開2015-226995号公報、特開2013-202971号公報、特開2003-335880号公報、特公昭53-12953号公報、特開昭58-217344号公報、に記載されているように、上記の有機素材を含む層と金属化合物薄層の積層した形態であってもよいし、国際公開2011/11836号公報、特開2013-248832号公報、特許第3855004号公報、に記載されているように、有機化合物と無機化合物とをハイブリッドした層であってもよい。
【0284】
バリヤ層の膜厚は、有機化合物を含む層の場合は、0.1~10μmが好ましく、0.5~5.5μmがより好ましい。金属化合物薄層の場合は、バリヤ層の膜厚は、5nm~500nmが好ましく、10nm~200nmがより好ましい。
【0285】
例えば、上記屈折率調整層や、後述する接着層や表面保護層等の他の機能層に酸素遮断機能を付与して機能統合することも好ましい。屈折率調整層と表面保護層のフィルムとの接着層が酸素遮断機能を有することが特に好ましい。この場合、ポリビニルアルコール樹脂を有する接着剤を用いることも好ましい態様である。
また、表面保護として、カバーガラスや多層スパッタ金属酸化膜を有する低反射フィルムを用いることも、バリヤ層の機能を兼ねるため好ましい態様である。
【0286】
カバーガラスは接触や落下による表面の傷、破損からディスプレイを保護するため、化学強化により高い強度を保つ ことが要求される。化学強化ガラスの材料となるのは主にアルミノシリケートガラス、ソーダライムガラスである。 通常、化学強化ガラスは高温のアルカリ熔融塩(KNO3)にガラスを浸漬し、ガラス表面の Na+イオンをよりイオン 半径の大きい K+イオンに置き換え、圧縮応力を発生させるイオン交換法によって作られている。特に Al2O3を多く含 有する組成を有しているアルミノシリケートガラスは圧縮応力値が大きく、且つ圧縮応力層の深い化学強化ガラスを 作ることができる。市販の化学強化ガラスとしては、例えば、松浪硝子工業社製化学強化ガラス、コーニング社製「ゴリラガラス」(登録商標)、「ゴリラガラス2」(登録商標)、「ゴリラガラス3」(登録商標)、旭硝子社製「ドラゴントレイル」(登録商標)、日本電気硝子社製「CX-01」、「CX-01P」、「CX-01T」、セントラル硝子社製(ARMOREX)、日本板硝子社製化学強化ガラス、ショット日本株式会社製「Xensation Cover」、「Xensation Cover 3D」等が挙げられる。
カバーガラスの厚みは、200μm~1000μmであることが多い。ガラスは、酸素遮断能や水分遮断能に優れており、酸素遮断機能を十分に実現できる。
【0287】
バリヤ層は、偏光子層における後述するλ/4板または後述する表面保護層が設けられた面とは反対面側に設けられてもよい。なお、本発明の偏光子層とバリヤ層との間に、他の層(例えば、粘着層、接着層または配向層)を備える場合には、バリヤ層は、例えば、本発明の偏光子と他の層との間に設けることができる。
【0288】
〔光学異方性層〕
本発明の積層体は、光学異方性層を有していてもよい。反射防止機能を付与するための積層体の場合、光学異方性層は、λ/4機能を有する。λ/4板は、ある特定の波長の直線偏光を円偏光に(または、円偏光を直線偏光に)変換する機能を有する板であり、特定の波長λnmにおける面内レターデーションRe(λ)がRe(λ)=λ/4を満たす板(位相差フィルム)のことであり、ポジティブAプレートのReをλ/4に調整して作製することが好ましい。斜め方向から視認した時の色味変化や黒表示時の光漏れを改善するためには、さらにポジティブCプレートを組み合わせることが好ましい。このとき、反射防止板のトータルRthがゼロに近くなるように調整することが好ましい。
反射防止板は、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)や陰極管表示装置(CRT)のような画像表示装置の反射防止用途に好適に用いられ、表示光のコントラスト比を向上させることができる。例えば、有機EL表示装置の光取り出し面側に反射防止板を設けることができる。この場合、外光は偏光子によって直線偏光となり、次に位相差板を通過することで、円偏光となる。これが有機ELパネルの金属電極等にて反射された際に円偏光状態が反転し、再び位相差板を通過した際に、入射時から90°傾いた直線偏光となり、偏光子に到達して吸収される。結果として、外光の影響を抑制することができる。
【0289】
本発明の積層体は、例えば、偏光子層と光学異方性層であるλ/4のポジティブAプレートおよびポジティブCプレートを、後述する粘着層等により貼り合わせることで製造することもできる。光学異方性層が、λ/4のポジティブAプレートおよびポジティブCプレートから構成されている場合、ポジティブCプレート側の面で偏光子層と接着されていてもよく、その反対側の面で、偏光子層と接着されていてもよい。
あるいは偏光子層上にλ/4のポジティブAプレートおよびポジティブCプレートを直接形成することにより製造することができる。特許第6243869号公報の実施例19に記載されているように、偏光子層とポジティブAプレートの間には、配向層を加えることも好ましい。また、特許第6123563号公報の実施例1にあるように偏光子層とポジティブAプレートの間に保護層を加えることも可能である。あるいは、λ/4のポジティブAプレートおよびポジティブCプレートを形成したのちに、偏光子層を形成する方法も可能である。
【0290】
反射防止板のポジティブAプレートの遅相軸方向と偏光子層の吸収軸方向とのなす角は45°±10°の範囲であることが好ましい。ポジティブAプレートおよびポジティブCプレートの光学特性としては、特に色味変化を抑制する観点から、ReやRthの波長分散が逆分散性を示すことが好ましい。
反射防止板の製造の際は、例えば、偏光子層とポジティブAプレートおよびポジティブCプレートとが、それぞれ長尺の状態で連続的に積層される工程を含むことが好ましい。長尺の反射防止板は、用いられる画像表示装置の画面の大きさに合わせて裁断される。
【0291】
光学異方性層は、液晶化合物から形成すると薄層化できるため、フレキシブル化の点で好ましい。また、光耐久性の観点で、後述する式(4)で表される重合性液晶化合物を含む組成物を用いて形成された層を含むことが好ましい。
以下では、まず、光学異方性層の形成に用いられる組成物(以下、「光学異方性層形成用組成物」ともいう。)中の成分について詳述し、その後、光学異方性層の製造方法および特性について詳述する。
【0292】
(式(4)で表される重合性液晶化合物)
光学異方性層形成用組成物には、式(4)で表される重合性液晶化合物が含まれる。式(4)で表される重合性液晶化合物は、液晶性を示す化合物である。
【0293】
【化50】
【0294】
上記式(I)中、D、D、DおよびDは、それぞれ独立に、単結合、-CO-O-、-C(=S)O-、-CR-、-CR-CR-、-O-CR-、-CR-O-CR-、-CO-O-CR-、-O-CO-CR-、-CR-O-CO-CR-、-CR-CO-O-CR-、-NR-CR-、または、-CO-NR-を表す。R、R、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、または、炭素数1~4のアルキル基を表す。
また、上記式(I)中、SPおよびSPは、それぞれ独立に、単結合、炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、または、炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基を構成する-CH-の1個以上が-O-、-S-、-NH-、-N(Q)-、もしくは、-CO-に置換された2価の連結基を表し、Qは、置換基を表す。
また、上記式(I)中、LおよびLは、それぞれ独立に1価の有機基を表し、LおよびLの少なくとも一方は重合性基を表す。ただし、Arが、下記式(Ar-3)で表される芳香環である場合は、LおよびLならびに下記式(Ar-3)中のLおよびLの少なくとも1つが重合性基を表す。
【0295】
上記式(I)中、SPおよびSPが示す炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、メチルヘキシレン基、および、へプチレン基が好ましい。なお、SPおよびSPは、上述した通り、炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基を構成する-CH-の1個以上が-O-、-S-、-NH-、-N(Q)-、もしくは、-CO-に置換された2価の連結基であってもよく、Qで表される置換基としては、後述する式(Ar-1)中のYが有していてもよい置換基と同様のものが挙げられる。
【0296】
上記式(I)中、LおよびLが示す1価の有機基としては、例えば、アルキル基、アリール基、および、ヘテロアリール基が挙げられる。
アルキル基は、直鎖状、分岐状または環状であってもよいが、直鎖状が好ましい。アルキル基の炭素数は、1~30が好ましく、1~20がより好ましく、1~10がさらに好ましい。
また、アリール基は、単環であっても多環であってもよいが、単環が好ましい。アリール基の炭素数は、6~25が好ましく、6~10がより好ましい。
また、ヘテロアリール基は、単環であっても多環であってもよい。ヘテロアリール基を構成するヘテロ原子の数は1~3が好ましい。ヘテロアリール基を構成するヘテロ原子は、窒素原子、硫黄原子、または、酸素原子が好ましい。ヘテロアリール基の炭素数は6~18が好ましく、6~12がより好ましい。
また、アルキル基、アリール基およびヘテロアリール基は、無置換であってもよく、置換基を有していてもよい。置換基としては、後述する式(Ar-1)中のYが有していてもよい置換基と同様のものが挙げられる。
【0297】
上記式(I)中、LおよびLの少なくとも一方が示す重合性基は特に制限されないが、ラジカル重合またはカチオン重合可能な重合性基が好ましい。
ラジカル重合性基としては、一般に知られているラジカル重合性基を用いることができ、アクリロイル基またはメタクリロイル基が好ましい。この場合、重合速度はアクリロイル基が一般的に速いことが知られており、生産性向上の点からアクリロイル基が好ましいが、メタクリロイル基も重合性基として同様に使用できる。
カチオン重合性基としては、一般に知られているカチオン重合性を用いることができ、具体的には、脂環式エーテル基、環状アセタール基、環状ラクトン基、環状チオエーテル基、スピロオルソエステル基、および、ビニルオキシ基が挙げられる。中でも、脂環式エーテル基、または、ビニルオキシ基が好ましく、エポキシ基、オキセタニル基、または、ビニルオキシ基がより好ましい。
特に好ましい重合性基の例としては下記が挙げられる。
【0298】
【化51】
【0299】
上記式(I)中、積層体の熱耐久性がより優れる点(以下、単に「本発明の効果がより優れる点」ともいう)から、上記式(4)中のLおよびLが、いずれも重合性基であることが好ましく、アクリロイル基またはメタクリロイル基であることがより好ましい。
【0300】
一方、上記式(I)中、Arは、下記式(Ar-1)~(Ar-5)で表される基からなる群から選択されるいずれかの芳香環を表す。なお、下記式(Ar-1)~(Ar-5)中、*は、上記式(I)中のDまたはDとの結合位置を表す。
【0301】
【化52】
【0302】
ここで、上記式(Ar-1)中、Qは、NまたはCHを表し、Qは、-S-、-O-、または、-N(R)-を表し、Rは、水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表し、Yは、置換基を有してもよい、炭素数6~12の芳香族炭化水素基、または、炭素数3~12の芳香族複素環基を表す。
が示す炭素数1~6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、および、n-ヘキシル基が挙げられる。
が示す炭素数6~12の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、2,6-ジエチルフェニル基、および、ナフチル基などのアリール基が挙げられる。
が示す炭素数3~12の芳香族複素環基としては、例えば、チエニル基、チアゾリル基、フリル基、および、ピリジル基などのヘテロアリール基が挙げられる。
また、Yが有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、および、ハロゲン原子が挙げられる。
アルキル基としては、例えば、炭素数1~18の直鎖状、分岐状または環状のアルキル基が好ましく、炭素数1~8のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、および、シクロヘキシル基など)がより好ましく、炭素数1~4のアルキル基がさらに好ましく、メチル基またはエチル基が特に好ましい。
アルコキシ基としては、例えば、炭素数1~18のアルコキシ基が好ましく、炭素数1~8のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-ブトキシ基、メトキシエトキシ基など)がより好ましく、炭素数1~4のアルコキシ基がさらに好ましく、メトキシ基またはエトキシ基が特に好ましい。
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、および、ヨウ素原子が挙げられ、中でも、フッ素原子、または、塩素原子が好ましい。
【0303】
また、上記式(Ar-1)~(Ar-5)中、Z、ZおよびZは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~20の1価の脂肪族炭化水素基、炭素数3~20の1価の脂環式炭化水素基、炭素数6~20の1価の芳香族炭化水素基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、-OR、-NR、または、-SRを表し、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表し、ZおよびZは、互いに結合して芳香環を形成してもよい。
炭素数1~20の1価の脂肪族炭化水素基としては、炭素数1~15のアルキル基が好ましく、炭素数1~8のアルキル基がより好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert-ペンチル基(1,1-ジメチルプロピル基)、tert-ブチル基、または、1,1-ジメチル-3,3-ジメチル-ブチル基がさらに好ましく、メチル基、エチル基、または、tert-ブチル基が特に好ましい。
炭素数3~20の1価の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデシル基、メチルシクロヘキシル基、および、エチルシクロヘキシル基などの単環式飽和炭化水素基;シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘプテニル基、シクロオクテニル基、シクロデセニル基、シクロペンタジエニル基、シクロヘキサジエニル基、シクロオクタジエニル基、および、シクロデカジエンなどの単環式不飽和炭化水素基;ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基、ビシクロ[2.2.2]オクチル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デシル基、トリシクロ[3.3.1.13,7]デシル基、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデシル基、および、アダマンチル基などの多環式飽和炭化水素基;などが挙げられる。
炭素数6~20の1価の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、2,6-ジエチルフェニル基、ナフチル基、および、ビフェニル基が挙げられ、炭素数6~12のアリール基(特にフェニル基)が好ましい。
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、および、ヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子、塩素原子、または、臭素原子が好ましい。
一方、R~Rが示す炭素数1~6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、および、n-ヘキシル基が挙げられる。
【0304】
また、上記式(Ar-2)および(Ar-3)中、AおよびAは、それぞれ独立に、-O-、-N(R10)-、-S-、および、-CO-からなる群から選択される基を表し、R10は、水素原子または置換基を表す。
10が示す置換基としては、上記式(Ar-1)中のYが有していてもよい置換基と同様のものが挙げられる。
【0305】
また、上記式(Ar-2)中、Xは、水素原子または置換基が結合していてもよい第14~16族の非金属原子を表す。
また、Xが示す第14~16族の非金属原子としては、例えば、酸素原子、硫黄原子、置換基を有する窒素原子、および、置換基を有する炭素原子が挙げられ、置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、アルキル置換アルコキシ基、環状アルキル基、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基など)、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、アルキルカルボニル基、スルホ基、および、水酸基が挙げられる。
【0306】
また、上記式(Ar-3)中、DおよびDは、それぞれ独立に、単結合、-CO-O-、-C(=S)O-、-CR-、-CR-CR-、-O-CR-、-CR-O-CR-、-CO-O-CR-、-O-CO-CR-、-CR-O-CO-CR-、-CR-CO-O-CR-、-NR-CR-、または、-CO-NR-を表す。R、R、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、または、炭素数1~4のアルキル基を表す。
【0307】
また、上記式(Ar-3)中、SPおよびSPは、それぞれ独立に、単結合、炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、または、炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基を構成する-CH-の1個以上が-O-、-S-、-NH-、-N(Q)-、もしくは、-CO-に置換された2価の連結基を表し、Qは、置換基を表す。置換基としては、上記式(Ar-1)中のYが有していてもよい置換基と同様のものが挙げられる。
【0308】
また、上記式(Ar-3)中、LおよびLは、それぞれ独立に1価の有機基を表し、LおよびLならびに上記式(I)中のLおよびLの少なくとも1つが重合性基を表す。
1価の有機基としては、上記式(I)中のLおよびLにおいて説明したものと同様のものが挙げられる。
また、重合性基としては、上記式(I)中のLおよびLにおいて説明したものと同様のものが挙げられる。
【0309】
また、上記式(Ar-4)~(Ar-5)中、Axは、芳香族炭化水素環および芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも1つの芳香環を有する、炭素数2~30の有機基を表す。
また、上記式(Ar-4)~(Ar-5)中、Ayは、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~12のアルキル基、または、芳香族炭化水素環および芳香族複素環からなる群から選択される少なくとも1つの芳香環を有する、炭素数2~30の有機基を表す。
ここで、AxおよびAyにおける芳香環は、置換基を有していてもよく、AxとAyとが結合して環を形成していてもよい。
また、Qは、水素原子、または、置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基を表す。
AxおよびAyとしては、国際公開第2014/010325号の段落[0039]~[0095]に記載されたものが挙げられる。
また、Qが示す炭素数1~6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、および、n-ヘキシル基が挙げられ、置換基としては、上記式(Ar-1)中のYが有していてもよい置換基と同様のものが挙げられる。
【0310】
このような重合性液晶化合物(I)としては、例えば、下記式(1)~(12)で表される化合物が好適に挙げられ、具体的には、下記式(1)~(12)中のK(側鎖構造)として、下式に示す側鎖構造を有する化合物がそれぞれ挙げられる。
なお、下式中、Kの側鎖構造に示される「*」は、芳香環との結合位置を表す。
また、以下の説明においては、下記式(1)で表され、かつ、下式中の1-1に示す基を有する化合物を「化合物(1-1-1)」と表記し、他の構造式および基を有する化合物についても同様の方法で表記する。例えば、下記式(2)で表され、かつ、下式中の2-3に示す基を有する化合物は「化合物(2-2-3)」と表記できる。
また、下記式中の1-2および2-2で表される側鎖構造において、それぞれアクリロイルオキシ基およびメタクリロイル基に隣接する基は、プロピレン基(メチル基がエチレン基に置換した基)を表し、メチル基の位置が異なる位置異性体の混合物を表す。
【0311】
【化53】
【0312】
【化54】
【0313】
光学異方性層形成用組成物中における上記式(I)で表される重合性液晶化合物の含有量は特に制限されないが、光学異方性層形成用組成物中の全固形分に対して、50~100質量%が好ましく、70~99質量%がより好ましい。
本発明において、固形分とは、組成物中の溶媒を除いた他の成分を意味し、その性状が液状であっても固形分として計算する。
【0314】
光学異方性層形成用組成物には、上記式(I)で表される重合性液晶化合物以外の他の成分が含まれていてもよい。
【0315】
(液晶化合物)
光学異方性層形成用組成物は、上記式(I)で表される重合性液晶化合物以外の他の液晶化合物を含んでいてもよい。他の液晶化合物としては、公知の液晶化合物(棒状液晶化合物および円盤状液晶化合物)が挙げられる。他の液晶化合物は、重合性基を有していてもよい。
【0316】
光学異方性層形成用組成物は、上記式(I)で表される重合性液晶化合物および重合性基を有する他の液晶化合物以外の他の重合性モノマーを含んでいてもよい。なかでも、光学異方性層の強度がより優れる点で、重合性基を2個以上有する重合性化合物(多官能重合性モノマー)が好ましい。
多官能重合性モノマーとしては、多官能性ラジカル重合性モノマーが好ましい。多官能性ラジカル重合性モノマーとしては、例えば、特開2002-296423号公報中の段落[0018]~[0020]に記載の重合性モノマーが挙げられる。
また、光学異方性層形成用組成物中に多官能重合性モノマーが含まれる場合、多官能重合性モノマーの含有量は、上記式(I)で表される重合性液晶化合物の全質量に対して、1~50質量部が好ましく、2~30質量部がより好ましい。
【0317】
光学異方性層形成用組成物は、重合開始剤、溶媒、界面活性剤、を含んでいてもよい。これらについては偏光子層形成用組成物と同様のものを用いることができるため、その説明を省略するが、重合開始剤としてはオキシム型の重合開始剤が好ましい。また、後述する配向制御剤としての機能を兼ね備えてもよい。
【0318】
(配向制御剤)
光学異方性層形成用組成物は、必要に応じて、配向制御剤を含んでいてもよい。配向制御剤により、ホモジニアス配向の他、ホメオトロピック配向(垂直配向)、傾斜配向、ハイブリッド配向、および、コレステリック配向などの種々の配向状態を形成でき、また、特定の配向状態をより均一かつより精密に制御して実現できる。
【0319】
ホモジニアス配向を促進する配向制御剤としては、例えば、低分子の配向制御剤、および、高分子の配向制御剤を用いることができる。低分子の配向制御剤としては、例えば、特開2002-20363号公報の段落[0009]~[0083]、特開2006-106662号公報の段落[0111]~[0120]、および、特開2012-211306公報の段落[0021]~[0029]の記載を参酌でき、この内容は本願明細書に組み込まれる。高分子の配向制御剤としては、例えば、特開2004-198511号公報の段落[0021]~[0057]、および、特開2006-106662号公報の段落[0121]~[0167]を参酌でき、この内容は本願明細書に組み込まれる。
【0320】
また、ホメオトロピック配向を形成または促進する配向制御剤としては、例えば、ボロン酸化合物、オニウム塩化合物が挙げられ、具体的には、特開2008-225281号公報の段落[0023]~[0032]、特開2012-208397号公報の段落[0052]~[0058]、特開2008-026730号公報の段落[0024]~[0055]、および、特開2016-193869号公報の段落[0043]~[0055]などに記載された化合物を参酌でき、この内容は本願明細書に組み込まれる。
【0321】
配向制御剤の含有する場合の含有量は、光学異方性層形成用組成物中の全固形分に対して、0.01~10質量%が好ましく、0.05~5質量%がより好ましい。
【0322】
光学異方性層形成用組成物は、上述した成分以外の成分を含んでいてもよく、例えば、チルト角制御剤、配向助剤、可塑剤、および、架橋剤などが挙げられる。
【0323】
(光学異方性層の製造方法)
光学異方性層の製造方法は特に制限されず、公知の方法が挙げられる。
例えば、所定の基板(例えば後述する支持体層)に、上記光学異方性層形成用組成物を塗布して塗膜を形成し、得られた塗膜に対して硬化処理(活性エネルギー線の照射(光照射処理)および/または加熱処理)を施すことにより、硬化させた塗膜(光学異方性層)を製造できる。なお、必要に応じて、後述する配向層を用いてもよい。
光学異方性層形成用組成物の塗布は、公知の方法(例えば、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、および、ダイコーティング法)により実施できる。
【0324】
上記光学異方性層の製造方法において、上記塗膜に対する硬化処理を行う前に、上記塗膜に含まれる液晶化合物の配向処理を行うことが好ましい。
配向処理は、室温(例えば、20~25℃)で乾燥させる、または、加熱することにより行うことができる。配向処理で形成される液晶相は、サーモトロピック性液晶化合物の場合、一般に温度または圧力の変化により転移させることができる。リオトロピック性をもつ液晶化合物の場合には、溶媒量などの組成比によっても転移させることができる。
配向処理が加熱処理である場合、加熱時間(加熱熟成時間)は、10秒間~5分間が好ましく、10秒間~3分間がより好ましく、10秒間~2分間がさらに好ましい。
【0325】
上述した、塗膜に対して硬化処理(活性エネルギー線の照射(光照射処理)および/または加熱処理)は、液晶化合物の配向を固定するための固定化処理ということもできる。
固定化処理は、活性エネルギー線(好ましくは紫外線)の照射により行われることが好ましく、液晶化合物の重合により液晶が固定化される。
【0326】
(光学異方性層の特性)
光学異方性層は、上述した光学異方性層形成用組成物を用いて形成されるフィルムである。光学異方性層の光学特性は特に制限されないが、λ/4板として機能することが好ましい。λ/4板は、ある特定の波長の直線偏光を円偏光に(または、円偏光を直線偏光に)変換する機能を有する板であり、特定の波長λnmにおける面内レターデーションRe(λ)がRe(λ)=λ/4を満たす板(光学異方性層)のことをいう。
この式は、可視光域のいずれかの波長(例えば、550nm)において達成されていればよいが、波長550nmにおける面内レターデーションRe(550)が、110nm≦Re(550)≦160nmの関係を満たすことが好ましく、110nm≦Re(550)≦150nmを満たすことがより好ましい。
【0327】
光学異方性層の波長450nmで測定した面内レターデーションであるRe(450)と、光学異方性層の波長550nmで測定した面内レターデーションであるRe(550)と、光学異方性層の波長650nmで測定した面内レターデーションのであるRe(650)とは、Re(450)≦Re(550)≦Re(650)の関係にあることが好ましい。すなわち、この関係は、逆波長分散性を表す関係といえる。
【0328】
光学異方性層は、Aプレートであっても、Cプレートであってもよく、ポジティブAプレートであることが好ましい。
ポジティブAプレートは、例えば、式(4)で表される重合性液晶化合物を水平配向させることにより得ることができる。
【0329】
光学異方性層の厚さは特に制限されないが、薄型化の点から、0.5~10μmが好ましく、1.0~5μmがより好ましい。
【0330】
〔機能層〕
偏光子層よりも視認側に、短波光を低減する機能を有する機能層を有することが好ましい。短波光を低減することで、色素化合物の光分解を抑制し、耐光性に優れた表示装置が提供できる。
機能層の一態様としては、後述の粘着層、接着剤層、支持体およびバリヤ層などが、短波光を低減する機能を有することが好ましい。
また、機能層の別の一態様として、偏光子層よりも視認側に、新たに短波光を低減する機能を有する層を設けることも好ましい。
【0331】
短波光を低減する方法は特に限定されず、吸収剤等による光吸収を用いる方法、および多層膜による波長選択反射を用いる方法が例示される。
【0332】
前述の短波光とは430nm以下の波長の光を指す。430nm以下の波長の光を低減することで、太陽光もしくはJIS B 7751およびJIS B 7754の耐光性試験にて使用される光源光による液晶化合物の光分解を抑制できる。
また可視光における偏光子の性能に影響を与えないために、450nm以上波長域では透明であることが好ましい。
透過率として、波長350~390nmの範囲で0.1%以下、410nmにおいて20~70%、450nm以上の範囲で90%以上とするのが好ましい。
波長410nmにおける透過率は40~50%であることがさらに好ましい。
【0333】
短波光を吸収する化合物としては、特開2017-119700号公報やWO2018/123267号公報に記載のメロシアニン化合物が好ましく用いられる。
また、従来公知の紫外線吸収剤を併用することも好ましい。例えば、オキシベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチル酸エステル系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤等の有機系紫外線吸収剤が挙げられる。
【0334】
〔表面保護層〕
本発明の積層体は、表示装置の一部として用いられるが、その場合の最も視認側に、表面保護層を有することが好ましい。表面保護層は、表面を保護する機能があれば限定されない。一層でも良いが、複数層も好ましい。硬度が高いことも好ましいが、回復性の高いことも好ましい。空気界面で生じる表面反射を抑制した低反射層も好ましい。
好ましい態様の一つとしては、透明基材と表面コート層の構成が想定される。透明基材については上記基材と同様のためその説明を省略し、以下、表面コート層について記載する。
【0335】
表面コート層としては、反射防止層、防眩層、およびハードコート層からなる群から選択される少なくとも1つが挙げられる。これらは公知の層材料が使用される。なお、これらの層は、複数層が積層してもよい。
【0336】
反射防止層は、上述の光学異方性層と偏光子層から構成されるいわゆる円偏光板の反射防止板とは異なり、光の干渉を用いた構造により反射を低下させる構造体を指す。反射防止層は、最も単純な構成として、低屈折率層のみからなる構成であってもよい。更に反射率を低下させるには、屈折率の高い高屈折率層と、屈折率の低い低屈折率層を組み合わせて反射防止層を構成することが好ましい。構成例としては、下側から順に、高屈折率層/低屈折率層の2層のものや、屈折率の異なる3層を、中屈折率層(下層よりも屈折率が高く、高屈折率層よりも屈折率の低い層)/高屈折率層/低屈折率層の順に積層されているもの等があり、更に多くの反射防止層を積層するものも提案されている。中でも、耐久性、光学特性、コストや生産性等から、ハードコート層上に、中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層の順に有することが好ましく、例えば、特開平8-122504号公報、特開平8-110401号公報、特開平10-300902号公報、特開2002-243906号公報、特開2000-111706号公報等に記載の構成が挙げられる。また、膜厚変動に対するロバスト性に優れる3層構成の反射防止フィルムは特開2008-262187号公報記載されている。上記3層構成の反射防止フィルムは、画像表示装置の表面に設置した場合、反射率の平均値を0.5%以下とすることができ、映り込みを著しく低減することができ、立体感に優れる画像を得ることができる。また、各層に他の機能を付与させてもよく、例えば、防汚性の低屈折率層、帯電防止性の高屈折率層、帯電防止性のハードコート層、防眩性のハードコート層としたもの(例、特開平10-206603号公報、特開2002-243906号公報、特開2007-264113号公報等)等が挙げられる。
本発明の一つの態様として、フォルダブル用途有機エレクトロルミネッセンス(以下、「EL」ともいう)表示装置としては、偏光子層以外は、特開2018-56069号公報の記載が参考にできる。カバーガラスが使用できないため、表面フィルムが必要となる。例えば、[0030]~[0040]において、曲率半径3mm以下(例えば、3mm、2mm、1mm)で好ましくは20万回、より好ましくは30万回、さらに好ましくは50万回折り曲げ可能な屈曲性を有する基材として、ポリイミド系樹脂が好ましいこと、ハードコート層として、紫外線硬化型アクリル系樹脂にシリカ粒子やかご状シルセスキオキサン化合物などを配合した有機無機ハイブリッド材料が好ましいこと、が記載されている。
本発明における表面保護層は、特開2015-212353号公報や、特開2017-008148号公報等に記載された構造のシルセスキオキサン化合物を用いたハードコートが好ましい。
【0337】
〔粘着層、接着剤層〕
本発明の積層体は、上述したλ/4板や表面保護層を貼合する観点から、λ/4板を貼合する面に粘着層または接着剤層を有していてもよい。
【0338】
粘着層に含まれる粘着剤としては、例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、ポリビニルアルコール系粘着剤、ポリビニルピロリドン系粘着剤、ポリアクリルアミド系粘着剤、セルロース系粘着剤等が挙げられる。これらのうち、透明性、耐候性、耐熱性などの観点から、アクリル系粘着剤(感圧粘着剤)であるのが好ましい。
【0339】
粘着層は、例えば、粘着剤の溶液を離型シート上に塗布し、乾燥した後に後、透明樹脂層の表面に転写する方法;粘着剤の溶液を透明樹脂層の表面に直接塗布し、乾燥させる方法;等により形成することができる。
粘着剤の溶液は、例えば、トルエンや酢酸エチル等の溶媒に、粘着剤を溶解または分散させた10~40質量%程度の溶液として調製される。
塗布法は、リバースコーティング、グラビアコーティング等のロールコーティング法、スピンコーティング法、スクリーンコーティング法、ファウンテンコーティング法、ディッピング法、スプレー法などを採用できる。
【0340】
また、離型シートの構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなどの合成樹脂フィルム;ゴムシート;紙;布;不織布;ネット;発泡シート;金属箔;等の適宜な薄葉体等が挙げられる。
【0341】
本発明においては、任意の粘着層の厚みは特に限定されないが、3μm~50μmであることが好ましく、4μm~40μmであることがより好ましく、5μm~30μmであることが更に好ましい。
【0342】
本発明に用いられる接着剤は、貼り合わせた後の乾燥や反応により接着性を発現する。
ポリビニルアルコール系接着剤(PVA系接着剤)は、乾燥により接着性が発現し、材料どうしを接着することが可能となる。
反応により接着性を発現する硬化型接着剤の具体例としては、(メタ)アクリレート系接着剤のような活性エネルギー線硬化型接着剤やカチオン重合硬化型接着剤が挙げられる。なお、(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよび/またはメタクリレートを意味する。(メタ)アクリレート系接着剤における硬化性成分としては、例えば、(メタ)アクリロイル基を有する化合物、ビニル基を有する化合物が挙げられる。
また、カチオン重合硬化型接着剤としては、エポキシ基やオキセタニル基を有する化合物も使用することができる。エポキシ基を有する化合物は、分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有するものであれば特に限定されず、一般に知られている各種の硬化性エポキシ化合物を用いることができる。好ましいエポキシ化合物として、分子内に少なくとも2個のエポキシ基と少なくとも1個の芳香環を有する化合物(芳香族系エポキシ化合物)や、分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有し、そのうちの少なくとも1個は脂環式環を構成する隣り合う2個の炭素原子との間で形成されている化合物(脂環式エポキシ化合物)等が例として挙げられる。
【0343】
図1は、本発明の積層体の一例を示す模式的な断面図である。図1において、積層体100は、光学異方性層12、偏光子層14、屈折率調整層16、バリヤ層18および表面保護層20がこの順に積層されている。
図2は、本発明の積層体の一例を示す模式的な断面図である。図2において、積層体200は、光学異方性層12、配向層13、偏光子層14、屈折率調整層16、バリヤ層18および表面保護層20がこの順に積層されている。積層体200は、光学異方性層12と偏光子層14との間に配向層13が形成されている以外は、積層体100と同様の構造である。
図1および図2における各層の詳細は、上述した通りであるので、その説明を省略する。
【0344】
〔積層体の物性〕
本発明の積層体のヘイズは、0.2~3.0%であることが好ましく、0.2~1.5%であることがより好ましく、0.2~1.0%であることが特に好ましい。
積層体のヘイズの測定方法は、実施例欄に記載の通りである。
【0345】
〔用途〕
本発明の積層体は、例えば、偏光子(偏光板)として使用でき、例えば、直線偏光板または円偏光板として使用できる。
本発明の積層体が上記λ/4板などの光学異方性層を有さない場合には、積層体は直線偏光板として使用できる。
一方、本発明の積層体が上記λ/4板を有する場合には、積層体は円偏光板として使用できる。
【0346】
<画像表示装置>
本発明の画像表示装置は、上述した本発明の偏光子または上述した本発明の積層体を有する。
本発明の画像表示装置に用いられる表示素子は特に限定されず、例えば、液晶セル、有機EL表示パネル、および、プラズマディスプレイパネルなどが挙げられる。これらのうち、液晶セルまたは有機EL表示パネルであるのが好ましく、液晶セルであるのがより好ましい。すなわち、本発明の画像表示装置としては、表示素子として液晶セルを用いた液晶表示装置、表示素子として有機EL表示パネルを用いた有機EL表示装置であるのが好ましい。
【0347】
〔液晶表示装置〕
本発明の画像表示装置の一例である液晶表示装置としては、上述した本発明の偏光子と、液晶セルと、を有する態様が好ましく挙げられる。より好適には、上述した本発明の積層体(ただし、λ/4板を含まない)と、液晶セルと、を有する液晶表示装置である。
なお、本発明においては、液晶セルの両側に設けられる偏光素子のうち、フロント側の偏光素子として本発明の積層体を用いるのが好ましく、フロント側およびリア側の偏光素子として本発明の積層体を用いるのがより好ましい。
以下に、液晶表示装置を構成する液晶セルについて詳述する。
【0348】
〔液晶セル〕
液晶表示装置に利用される液晶セルは、VA(Vertical Alignment)モード、OCB(Optically Compensated Bend)モード、IPS(In-Plane-Switching)モード、またはTN(Twisted Nematic)モードであることが好ましいが、これらに限定されるものではない。
TNモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に水平配向し、更に60~120゜にねじれ配向している。TNモードの液晶セルは、カラーTFT(Thin Film Transistor)液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献に記載がある。
VAモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に垂直に配向している。VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2-176625号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル(SID97、Digest of tech.Papers(予稿集)28(1997)845記載)、(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n-ASMモード)の液晶セル(日本液晶討論会の予稿集58~59(1998)記載)および(4)SURVIVALモードの液晶セル(LCDインターナショナル98で発表)が含まれる。また、PVA(Patterned Vertical Alignment)型、光配向型(Optical Alignment)、およびPSA(Polymer-Sustained Alignment)のいずれであってもよい。これらのモードの詳細については、特開2006-215326号公報、および特表2008-538819号公報に詳細な記載がある。
IPSモードの液晶セルは、棒状液晶性分子が基板に対して実質的に平行に配向しており、基板面に平行な電界が印加することで液晶分子が平面的に応答する。IPSモードは電界無印加状態で黒表示となり、上下一対の偏光板の吸収軸は直交している。光学補償シートを用いて、斜め方向での黒表示時の漏れ光を低減させ、視野角を改良する方法が、特開平10-54982号公報、特開平11-202323号公報、特開平9-292522号公報、特開平11-133408号公報、特開平11-305217号公報、特開平10-307291号公報などに開示されている。
【0349】
〔有機EL表示装置〕
本発明の画像表示装置の一例である有機EL表示装置としては、例えば、視認側から、上述した本発明の偏光子と、λ/4板と、有機EL表示パネルと、をこの順で有する態様が好適に挙げられる。
より好適には、視認側から、λ/4板を有する上述した本発明の積層体と、有機EL表示パネルと、をこの順に有する態様である。その一例としては、視認側から、基材、バリア層、配向層、本発明の偏光子層、および、λ/4板の順に配置された態様、視認側から、バリア層、本発明の偏光子層、配向層、基材、λ/4板の順に配置された態様、ならびに、視認側から、ガラス基板、本発明の偏光子層、配向層、λ/4板の順に配置された態様が挙げられる。
また、有機EL表示パネルは、電極間(陰極および陽極間)に有機発光層(有機エレクトロルミネッセンス層)を挟持してなる有機EL素子を用いて構成された表示パネルである。有機EL表示パネルの構成は特に制限されず、公知の構成が採用される。
【実施例
【0350】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、操作等は本発明の趣旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明は以下の実施例に限定され制限されるものではない。
【0351】
[実施例1-1]
〔セルロースアシレートフィルム1の作製〕
(コア層セルロースアシレートドープの作製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、撹拌して、各成分を溶解し、コア層セルロースアシレートドープとして用いるセルロースアセテート溶液を調製した。
【0352】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
コア層セルロースアシレートドープ
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・アセチル置換度2.88のセルロースアセテート 100質量部
・特開2015-227955号公報の実施例に
記載されたポリエステル化合物B 12質量部
・下記化合物F 2質量部
・メチレンクロライド(第1溶媒) 430質量部
・メタノール(第2溶媒) 64質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0353】
【化55】
【0354】
(外層セルロースアシレートドープの作製)
上記のコア層セルロースアシレートドープ90質量部に下記のマット剤溶液を10質量部加え、外層セルロースアシレートドープとして用いるセルロースアセテート溶液を調製した。
【0355】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
マット剤溶液
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・平均粒子サイズ20nmのシリカ粒子
(AEROSIL R972、日本アエロジル(株)製) 2質量部
・メチレンクロライド(第1溶媒) 76質量部
・メタノール(第2溶媒) 11質量部
・上記のコア層セルロースアシレートドープ 1質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0356】
(セルロースアシレートフィルム1の作製)
上記コア層セルロースアシレートドープと上記外層セルロースアシレートドープを平均孔径34μmのろ紙および平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過した後、上記コア層セルロースアシレートドープとその両側に外層セルロースアシレートドープとを3層同時に流延口から20℃のドラム上に流延した(バンド流延機)。
次いで、溶媒含有率略20質量%の状態で剥ぎ取り、フィルムの幅方向の両端をテンタークリップで固定し、横方向に延伸倍率1.1倍で延伸しつつ乾燥した。
その後、熱処理装置のロール間を搬送することにより、更に乾燥し、厚み40μmの光学フィルムを作製し、これをセルロースアシレートフィルム1(支持体1)とした。得られたセルロースアシレートフィルム1の面内レターデーションは0nmであった。
【0357】
〔配向層PA1の作製〕
後述する配向層形成用塗布液PA1を、ワイヤーバーで連続的に上記セルロースアシレートフィルム1上に塗布した。塗膜が形成された支持体を140℃の温風で120秒間乾燥し、続いて、塗膜に対して偏光紫外線照射(10mJ/cm、超高圧水銀ランプ使用)することで、光配向層PA1を形成し、光配向層付きTACフィルムを得た。
膜厚は0.5μmであった。
【0358】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
(配向層形成用塗布液PA1)
―――――――――――――――――――――――――――――――――
下記重合体PA1 100.00質量部
下記酸発生剤PAG-1 8.00質量部
下記酸発生剤CPI-110TF 0.005質量部
キシレン 1220.00質量部
メチルイソブチルケトン 122.00質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0359】
【化56】
【0360】
【化57】
【0361】
【化58】
【0362】
〔偏光子層1の作製〕
得られた配向層PA1上に、下記の偏光子層形成用組成物1をワイヤーバーで連続的に塗布し、塗布層を形成した。
次いで、上記塗布層を140℃で30秒間加熱し、を室温(23℃)になるまで冷却した。次いで、90℃で60秒間加熱し、再び室温になるまで冷却した。
その後、LED(Light Emitting Diode)灯(中心波長365nm)を用いて照度200mW/cmの照射条件で2秒間照射することにより、光配向層PA1上に偏光子層1を作製した。
偏光子層1の膜厚は0.4μmであった。
【0363】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
偏光子層形成用組成物1の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・下記二色性物質Y1 0.376質量部
・下記二色性物質M1 0.417質量部
・下記二色性物質C1 0.608質量部
・下記高分子液晶化合物P1 3.761質量部
・下記低分子液晶化合物L1 0.636質量部
・重合開始剤I1
(IRGACUREOXE-02、BASF社製) 0.174質量部
・下記界面活性剤F1 0.029質量部
・シクロペンタノン 47.000質量部
・テトラヒドロフラン 47.000質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0364】
【化59】
【0365】
【化60】
【0366】
【化61】
【0367】
【化62】
【0368】
〔屈折率調整層N1の作製〕
得られた偏光子層1上に、下記の屈折率調整層形成用組成物N1をワイヤーバーで連続的に塗布し、硬化層を形成した。
次いで、硬化層を室温乾燥させ、次いで、高圧水銀灯を用いて照度28mW/cmの照射条件で15秒間照射することにより、偏光子層1上に屈折率調整層N1を作製した。屈折率調整層N1の膜厚は、0.05μm(50nm)であった。
【0369】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
屈折率調整層形成用組成物N1の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・下記棒状液晶化合物の混合物L1 2.61質量部
・下記変性トリメチロールプロパントリアクリレート 0.11質量部
・下記光重合開始剤BI1 0.05質量部
・下記界面改良剤BF1 0.21質量部
・メチルイソブチルケトン 297質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0370】
棒状液晶化合物の混合物L1(下記式中の数値は質量%を表す。)
【化63】
【0371】
【化64】
【0372】
【化65】
【0373】
【化66】
【0374】
〔バリヤ層B1の作製〕
屈折率調整層N1上に、下記の組成の塗布液をワイヤーバーで連続的に塗布した。その後、100℃の温風で2分間乾燥することにより、屈折率調整層N1上に厚み1.0μmのポリビニルアルコール(PVA)バリヤ層B1が形成された実施例1-1の積層体1-1を作製した。
【0375】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
バリヤ層形成用組成物B1の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・下記の変性ポリビニルアルコール 3.80質量部
・開始剤(Irgacure2959) 0.20質量部
・水 70質量部
・メタノール 30質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0376】
変性ポリビニルアルコール
【化67】
【0377】
[実施例1-2~1-13、15~17および比較例1-1~1-2]
偏光子層形成用組成物1を下記第1表に示した組成物に変更した以外は実施例1-1と同様にして実施例1-2~1-13、15~17の積層体1-2~1-13、15~17、比較例1-1~1-2の積層体1H-1~1H-2を作製した。
第1表中において記号で示した成分の概要を以下に示す。
【0378】
【化68】
【0379】
【化69】
【0380】
【化70】
【0381】
【化71】
【0382】
[実施例1-14]
配向層形成用塗布液中の重合体PA1の代わりに、重合体PA2を含む配向膜形成用塗布液を用いて得られた配向層PA2を用いた以外は、実施例1-2と同様にして、実施例1-14の積層体1-14を作製した。
【0383】
【化72】
【0384】
<配向度の評価>
光学顕微鏡(株式会社ニコン製、製品名「ECLIPSE E600 POL」)の光源側に直線偏光子を挿入した状態で、サンプル台に積層体をセットし、マルチチャンネル分光器(Ocean Optics社製、製品名「QE65000」)を用いて、400~700nmの波長域における偏光子層の吸光度を測定し、以下の式により配向度を算出し、以下の基準で評価した。結果を下記第1表に示す。
配向度:S=[(Az0/Ay0)-1]/[(Az0/Ay0)+2]
Az0:偏光子層の吸収軸方向の偏光に対する吸光度
Ay0:偏光子層の偏光軸方向の偏光に対する吸光度
A:0.96以上
B:0.94以上0.96未満
C:0.90以上0.94未満
D:0.90未満
【0385】
<密着力の評価>
作製した積層体のセルロースアシレートフィルム1を除去し、後述する粘着剤N2を用いて再度セルロースアシレートフィルム1に貼り合わせた。続いて、バリヤ層B1を有する側の表面に、カッターナイフで碁盤目状に縦11本、横11本の切り込みを入れて、合計100個の正方形の升目を刻み、その面に日東電工(株)製のポリエステル粘着テープ(No.31B)を貼りつけた。30分経時したあとに、垂直方向にテープを素早く引き剥がし、剥がれた升目の数を数えて、以下の基準で評価した。結果を下記第1表に示す。
A:100升において剥がれが全く認められなかった。
B:100升において1~10升の剥がれが認められた。
C:100升において11~30升の剥がれが認められた。
D:100升において31升以上の剥がれが認められた。
【0386】
【表1】
【0387】
【表2】
【0388】
[実施例1-18]
屈折率調整層N1を形成しない以外は、実施例1-1の積層体1-1と同様にして積層体1-18を作製した。実施例1-1と同様の方法で、配向度、密着力の評価を行ったところ、下記の結果であった。
配向度:A
密着力:C
【0389】
[実施例2-1~2-3、比較例2-1]
実施例1-1~1-3、および、比較例1-1に対し、屈折率調整層N1およびバリヤ層B1を設けない以外は同様にして、下記第2表に示した実施例2-1~2-3の積層体2-1~2-3、ならびに、比較例2-1の積層体2H-1を作製した。
【0390】
<ヘイズの評価>
HazeMeterND4000(日本電色社製)に、支持体1に光配向層PA1を積層したサンプルを作製し、光配向層側を入射側としてセットし、リファレンス測定を行った。続いて、作製した積層体の偏光子層側を入射側に、光配向層の偏光照射光と平行方向を水平にセットし、ヘイズ測定を3回行い、平均値(Hz1)を算出した。続いて、同じ積層体のバリヤ層側を入射側に、光配向層の偏光照射光と垂直方向を水平にセットし、ヘイズ測定を3回行い、平均値(Hz2)を算出し、Hz1とHz2の平均値をヘイズ値とした。結果を第2表に示した。
【0391】
【表3】
【0392】
本発明の組成物によれば、高配向度、密着性、に加えて、低ヘイズを鼎立した偏光子を形成できる。
【0393】
<光学異方性層の作製>
(ポジティブAプレートA1の作製)
下記の組成にて、光配向層形成用組成物E1を調製し、攪拌しながら1時間溶解し、0.45μmフィルターでろ過した。
【0394】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
光配向層形成用組成物E1
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・下記光活性化合物E-1 5.0質量部
・シクロペンタノン 95.0質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0395】
光活性化合物E-1
【化73】
【0396】
(ポジティブAプレート形成用組成物A1の調製)
下記組成のポジティブAプレート形成用組成物A1を調製した。
【0397】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
ポジティブAプレート形成用組成物A1の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・下記液晶化合物L-1 70.00質量部
・下記液晶化合物L-2 30.00質量部
・重合開始剤OXE-03(BASFジャパン社製) 7.50質量部
・重合開始剤Irg369(BASF社製) 3.00質量部
・レベリング剤BYK-361N 0.10質量部
・メチルエチルケトン(溶媒) 60.00質量部
・シクロペンタノン(溶媒) 240.00質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0398】
【化74】
【0399】
セルローストリアセテートフィルムTJ40(富士フイルム製:厚み40μm)上に、上記光配向層形成用組成物E1を塗布し、80℃で1分間乾燥した。その後、得られた塗膜に、偏光紫外線露光装置を用いて直線偏光紫外線(100mJ/cm)を照射し、厚み100nmの光配向層E1を作製した。
得られた光配向層E1上に、上記ポジティブAプレート形成用組成物A1をワイヤーバーで塗布した。次に、得られた塗膜に対して120℃で90秒間加熱し、室温になるまで冷却した。
その後、高圧水銀灯を用いて露光量1200mJ/cmの紫外線を照射することにより、ポジティブAプレートA1を形成した。
ポジティブAプレートA1の厚みは2μmであり、Re(550)は145nmであった。また、ポジティブAプレートA1は、Re(450)≦Re(550)≦Re(650)の関係を満たしていた。Re(450)/Re(550)は、0.85であった。
【0400】
(ポジティブCプレートC1の作製)
仮支持体として、上記セルロースアシレートフィルム1を用いた。
セルロースアシレートフィルム1を温度60℃の誘電式加熱ロールを通過させ、フィルム表面温度を40℃に昇温した後に、フィルムの片面に下記に示す組成のアルカリ溶液を、バーコーターを用いて塗布量14ml/mで塗布し、110℃に加熱し、(株)ノリタケカンパニーリミテド製のスチーム式遠赤外ヒーターの下に、10秒間搬送した。
次いで、同じくバーコーターを用いて、フィルム上に純水を3ml/m塗布した。
次いで、ファウンテンコーターによる水洗とエアナイフによる水切りを3回繰り返した後に、フィルムを70℃の乾燥ゾーンに10秒間搬送して乾燥し、アルカリ鹸化処理したセルロースアシレートフィルム1を作製した。
【0401】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
(アルカリ溶液)
―――――――――――――――――――――――――――――――――
水酸化カリウム 4.7質量部
水 15.8質量部
イソプロパノール 63.7質量部
界面活性剤SF-1
(C1429O(CHCH2O20H) 1.0質量部
プロピレングリコール 14.8質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0402】
下記の組成の配向層形成用塗布液3を、#8のワイヤーバーを用いて上記アルカリ鹸化処理されたセルロースアシレートフィルム1上に連続的に塗布した。得られたフィルムを60℃の温風で60秒間、さらに100℃の温風で120秒間乾燥し、配向層を形成した。
【0403】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
(配向層形成用塗布液3)
―――――――――――――――――――――――――――――――――
ポリビニルアルコール(クラレ製、PVA103) 2.4質量部
イソプロピルアルコール 1.6質量部
メタノール 36質量部
水 60質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0404】
後述するポジティブCプレート形成用塗布液C1を配向層上に塗布し、得られた塗膜を60℃で60秒間熟成させた後に、空気下にて70mW/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、1000mJ/cmの紫外線を照射して、その配向状態を固定化することにより、液晶化合物を垂直配向させ、厚み0.5μmのポジティブCプレートC1を作製した。
得られたポジティブCプレートのRth(550)は、-60nmであった。
【0405】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
(ポジティブCプレート形成用塗布液C1)
―――――――――――――――――――――――――――――――――
下記液晶化合物L-11 80質量部
下記液晶化合物L-12 20質量部
下記垂直配向剤S01(配向制御剤) 1質量部
エチレンオキサイド変成トリメチロールプロパントリアクリレート
(V#360、大阪有機化学(株)製) 8質量部
イルガキュアー907(BASF製) 3質量部
カヤキュアーDETX(日本化薬(株)製) 1質量部
下記化合物B03(界面活性剤) 0.4質量部
メチルエチルケトン 170質量部
シクロヘキサノン 30質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0406】
【化75】
【0407】
【化76】
【0408】
化合物 B03
【化77】
【0409】
<粘着剤シートN1~N3の作製>
次に、以下の手順に従い、アクリレート系ポリマーを調製した。
冷却管、窒素導入管、温度計および撹拌装置を備えた反応容器に、アクリル酸ブチル95質量部、アクリル酸5質量部を溶液重合法により重合させて、平均分子量200万、分子量分布(Mw/Mn)3.0のアクリレート系ポリマー(A1)を得た。
【0410】
次に得られたアクリレート系ポリマー(A1)用いて、以下の第3表の組成で、粘着剤を調製した。これらの組成物を、シリコーン系剥離剤で表面処理したセパレートフィルムにダイコーターを用いて塗布し90℃の環境下で1分間乾燥させ、紫外線(UV)を下記条件で照射して、粘着剤シートN1~N3を得た。粘着剤の組成と粘着剤シートの膜厚を下記第3表に示す。
<UV照射条件>
・フュージョン社無電極ランプ Hバルブ
・照度600mW/cm、光量150mJ/cm
・UV照度・光量は、アイグラフィックス製「UVPF-36」を用いて測定した。
【0411】
【表4】
【0412】
(A)多官能アクリレート系モノマー:トリス(アクリロイロキシエチル)イソシアヌレート、分子量=423、3官能型(東亜合成社製、商品名「アロニックスM-315」)(B)光重合開始剤:ベンゾフェノンと1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンとの質量比1:1の混合物、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製「イルガキュア500」
(C)イソシアネート系架橋剤:トリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート
(日本ポリウレタン社製「コロネートL」)
(D)シランカップリング剤:3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製「KBM-403」)
(E)UV吸収剤(下記構造):λmax=389nm(2-ブタノン中)
【0413】
【化78】
【0414】
<UV接着剤の作製>
下記のUV接着剤を調製した。
【0415】
─────────────────────────────────
UV接着剤
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・CEL2021P(ダイセル社製) 70質量部
・1、4-ブタンジオールジグリシジルエーテル 20質量部
・2-エチルヘキシルグリシジルエーテル 10質量部
・CPI-100P(下記化合物) 2.25質量部
─────────────────────────────────
【0416】
【化79】
【0417】
<積層体1-1’~1-17’の作製>
上記ポジティブAプレートA1の位相差側と、上記ポジティブCプレートC1の位相差側とを、上記UV接着剤を用いて600mJ/cmのUV照射で貼り合わせた。以下、同様の条件でUV接着剤を用いた。UV接着剤層の厚みは1.5μmであった。なお、UV接着剤で貼り合わせる表面には、それぞれコロナ処理を行った(後述においても同じ)。次に、ポジティブAプレートA1側の光配向層とセルローストリアセテートフィルムTJ40を除去し、位相差板1とした。
特開2008-262187号公報の実施例1の試料No1を参考に低反射表面保護フィルム1を作製した。この低反射表面保護フィルム1の支持体側に、上記粘着剤シートN1を用いて、上記積層体1-1のバリヤ層側を貼り合わせた。次に、セルロースアシレートフィルム1のみを除去し、その除去した面と、上記位相差板1のポジティブAプレートA1の位相差側とを、上記粘着剤N1を用いて貼り合わせ、積層体1-1’を作製した。このとき、偏光子層の吸収軸と、ポジティブAプレートA1の遅相軸とのなす角度が45°となるように貼り合わせた。
実施例1-1の積層体1-1を、実施例1-2~1-17の積層体1-2~1-17に変更した以外は、上記と同様にして積層体1-2’~1-17’を作製した。
【0418】
<有機EL表示装置の作製>
有機ELパネル(有機EL表示素子)搭載のSAMSUNG社製GALAXY S4を分解し、有機EL表示装置から、円偏光板付きタッチパネルを剥離し、さらにタッチパネルから円偏光板を剥がし、有機EL表示素子、タッチパネルおよび円偏光板をそれぞれ単離した。次いで、単離したタッチパネルを有機EL表示素子と再度貼合し、さらに上記の積層体1-1’~1-17’を粘着剤シートN2を用いてタッチパネル上に貼合し、有機EL表示装置を作製し、反射防止の効果が見られることを確認した。
【0419】
〔実施例3-1の積層体の作製〕
積層体1-2’に対し、粘着剤シートN1の代わりに粘着剤シートN3を用いること以外は同様にして、積層体3-1を作製した。積層体3-1は、下記第4表に示すように、粘着剤シートN1を用いた積層体3-4よりも良好な耐光性を示した。
【0420】
〔実施例3-2の積層体の作製〕
積層体1-2’に対し、バリヤ層を形成しないこと、低反射表面保護フィルム1の代わりに500μm厚みのガラス基材(アルミノシリケート強化ガラス)を用いること以外は同様にして、積層体3-2を作製した。積層体3-2は、下記第4表に示すように、低反射表面保護フィルム1を用いた積層体3-5よりも良好な耐光性を示した。
【0421】
〔実施例3-3の積層体の作製〕
積層体1-2’に対し、バリヤ層を形成しないこと、低反射表面保護フィルム1の代わりに多層スパッタ金属酸化膜を有するARフィルム(Dexerials社、AR100;91μm)を用いること以外は同様にして、積層体3-3を作製した。積層体3-3は、下記第4表に示すように、低反射表面保護フィルム1を用いた積層体3-5よりも良好な耐光性を示した。
【0422】
〔実施例3-4の積層体の作製〕
積層体1-2’を、積層体3-4とした。
【0423】
〔実施例3-5の積層体の作製〕
積層体1-2’に対し、バリヤ層を形成しないこと以外は同様にして、積層体3-5を作製した。積層体3-5は、下記第4表に示すように、バリア層の存在する積層体3-4よりも劣る耐光性を示した。
【0424】
<耐光性の評価>
実施例3-1~3-5の積層体を、セルロースアシレートフィルム1を除去し、粘着剤N2を用いて、1.1cmのガラス基板に貼り合わせたサンプルを作製した。光学顕微鏡(株式会社ニコン製、製品名「ECLIPSE E600 POL」)のサンプル台にサンプルをセットし、マルチチャンネル分光器(Ocean Optics社製、製品名「QE65000」)を用いて、400~700nmの波長域における吸光度を1nmピッチで測定した。続いて、本サンプルをXe耐光性試験機(光源XB-50101AA-A:USHIO社製)にセットし、ガラス基板と逆側から40時間照射した。照射前と同様にしてサンプルの吸光度を測定し、各波長における照射前後の吸光度の変化率を算出し、400~700nmにおける平均値を吸光度の変化率とした。
A:吸光度の変化率が50%未満
B:吸光度の変化率が50%以上、75%未満
C:吸光度の変化率が75%以上
【0425】
【表5】
【0426】
[実施例4-1]
実施例1-2の積層体1-2に対し、屈折率調整層N1およびバリヤ層B1を形成しなかった以外は同様にして、実施例4-1の積層体4-1を得た。
【0427】
[実施例4-2]
〔配向層Rb1の作製〕
ケン化処理を施した上記セルロースアシレートフィルム1上に、下記の組成の配向膜塗布液Rb1を#17のワイヤーバーで塗布した。
その後、110℃の温風で2分間乾燥することにより、セルロースアシレートフィルム上に変性ポリビニルアルコール(PVA)配向膜Rb1を形成した。
なお、変性ポリビニルアルコールは、濃度が4質量%となるように配向膜塗布液中に加えた。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
配向膜塗布液Rb1の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・変性ビニルアルコール(下記PVA-1) 4.00質量部
・水 74.08質量部
・メタノール 21.86質量部
・光重合開始剤
(IRGACURE2959、BASF社製) 0.06質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0428】
変性ポリビニルアルコール
【化80】
【0429】
得られた配向層Rb1にラビング処理(1000回転、ステージ速度1.8m/分)を1回施して、配向層Rb1を作製した。
【0430】
〔偏光子層の作製〕
得られた配向層Rb1を用いた以外は実施例4-1と同様にして、実施例4-2の積層体4-2を得た。
【0431】
[実施例4-3]
偏光子層の形成において下記偏光子層形成用組成物Xを用いた以外は、実施例4-1と同様にして、実施例4-3の積層体4-3を得た。
――――――――――――――――――――――――――――――――
偏光子層形成用組成物Xの組成
――――――――――――――――――――――――――――――――
・上記二色性物質Y4 0.274質量部
・上記二色性物質M1 0.317質量部
・上記二色性物質C1 0.488質量部
・上記高分子液晶性化合物P1 3.354質量部
・上記低分子液晶性化合物L2 0.915質量部
・重合開始剤I1 0.110質量部
・上記界面活性剤F2 0.055質量部
・シクロペンタノン 47.000質量部
・テトラヒドロフラン 47.000質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――
【0432】
[実施例4-4]
〔配向層PA3の作製〕
下記構造の光配向材料PA3を1質量部に、ブトキシエタノール41.6質量部、及びジプロピレングリコールモノメチル41.6質量部、純水15.8質量部を加え、得られた溶液を0.45μmメンブレンフィルターで加圧ろ過した。得られた光配向膜用塗布液を、ラビング処理を施さない配向層Rb1上に塗布し、60℃で1分間乾燥した。得られた塗布膜に、偏光紫外線露光装置を用いて直線偏光紫外線(照度4.5mW、照射量300mJ/cm)を照射し、配向膜PA3を作製した。
【0433】
【化81】
〔偏光子層の作製〕
得られた配向層PA3を用いた以外は実施例4-3と同様にして、実施例4-4の積層体4-4を得た。
【0434】
<欠陥の評価>
上記積層体を、10cm×10cmのサイズに切り出し、偏光板(HCL2-5618HCS、サンリッツ社製)を備えたバックライト上に置き、ルーペを用いて偏光子層を観察した。屑による配向欠陥の個数を数え、以下の基準により評価した。結果を第5表に示した。
A:欠陥が20個未満
B:欠陥が20個以上
【0435】
<配向度>
上積層体4-1~4-4の配向度について、上述した配向度の評価方法および評価基準により評価した。結果を第5表に示した。
【0436】
<密着力>
上積層体4-1~4-4の密着力について、上述した密着力の評価方法および評価基準により評価した。結果を第5表に示した。
【0437】
【表6】
【0438】
[実施例5-1]
界面活性剤F1の代わりに下記界面活性剤F3を用いた以外は、実施例1-2と同様にして、実施例5-1の積層体5-1を作製した。実施例1-2と同様の方法で、配向度、密着力、ヘイズの評価を行ったところ、下記の結果であった。
配向度:B
密着力:B
ヘイズ:C
【0439】
【化82】
【0440】
[実施例6-1]
〔垂直偏光子層の作製〕
セルロースアシレートフィルム1上に設けられた上記配向層Rb1の上に、下記垂直偏光子層形成用組成物Zを#20のワイヤーバーで連続的に塗布し、120℃で45秒加熱した後、室温(23℃)になるまで冷却した。次いで、75℃で30秒間加熱した後、再び室温になるまで冷却した。その後、LED灯(中心波長365nm)を用いて照度200mW/cmの照射条件で2秒間照射することにより、配向膜Rb1上に垂直偏光子層6-1を作製した。垂直偏光子層6-1の膜厚は1.8μmであった。垂直偏光子層において、液晶性化合物および二色性物質が垂直偏光子層の膜厚方向に向かって配向している。
【0441】
――――――――――――――――――――――――――――――――
垂直偏光子層形成用組成物Zの組成
――――――――――――――――――――――――――――――――
・上記二色性物質Y1 0.322質量部
・上記二色性物質M1 0.087質量部
・上記二色性物質C2 0.579質量部
・上記高分子液晶性化合物P1 2.526質量部
・上記低分子液晶性化合物L1 1.669質量部
・重合開始剤I1 0.081質量部
・上記化合物B03(界面活性剤) 0.005質量部
・上記垂直配向剤S01(配向制御剤) 0.065質量部
・下記垂直配向剤S02(配向制御剤) 0.065質量部
・シクロペンタノン 87.505質量部
・ベンジルアルコール 7.095質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――
【0442】
【化83】
【0443】
[実施例6-2~実施例6-4、比較例6-1]
垂直偏光子層形成用組成物Zを下記第6表に示した組成物に変更した以外は実施例6-1と同様にして、実施例6-2~実施例6-4および比較例6-1の各垂直偏光子層を形成した。
【0444】
<配向度の評価>
得られた垂直偏光子層を用い、AxoScan OPMF-1(オプトサイエンス社製)において、波長λにおける、垂直偏光子層のミューラーマトリックスを極角を-70°~70°まで5°毎に計測した。この計測結果より、透過率が極大となる角度をθとした。表面反射の影響を除去した後、スネルの式やフレネルの式を考慮した下記理論式にフィッティングすることにより、ko[λ]、ke[λ]を算出した。測定波長λは、550nmで行った。
k=-log(T)×λ/(4πd)
このようにして得られたko[λ]、ke[λ]より、面内方向および厚さ方向の吸光度、二色比を算出し、最終的に配向度を算出し、以下の基準で配向度を評価した。結果を下記第6表に示す。
A:0.96以上
B:0.92以上0.96未満
C:0.85以上0.92未満
D:0.85未満
【0445】
<密着力の評価>
作製した積層体上に実施例1-1と同様にしてバリヤ層B1を形成した。次いで、セルロースアシレートフィルム1を除去し、上記粘着剤N2を用いて再度セルロースアシレートフィルム1に貼り合わせた。続いて、バリヤ層B1を有する側の表面に、カッターナイフで碁盤目状に縦11本、横11本の切り込みを入れて、合計100個の正方形の升目を刻み、その面に日東電工(株)製のポリエステル粘着テープ(No.31B)を貼りつけた。30分経時したあとに、垂直方向にテープを素早く引き剥がし、剥がれた升目の数を数えて、以下の基準で評価した。結果を下記第6表に示す。
A:100升において剥がれが全く認められなかった。
B:100升において1~10升の剥がれが認められた。
C:100升において11~30升の剥がれが認められた。
D:100升において31升以上の剥がれが認められた。
【0446】
【表7】
【符号の説明】
【0447】
100、200 積層体
12 光学異方性層
13 配向層
14 偏光子層
16 屈折率調整層
18 バリヤ層
20 表面保護層
図1
図2