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特許7367185感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、パターン形成方法、レジスト膜、電子デバイスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-13
(45)【発行日】2023-10-23
(54)【発明の名称】感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、パターン形成方法、レジスト膜、電子デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20231016BHJP
   G03F 7/038 20060101ALI20231016BHJP
   G03F 7/039 20060101ALI20231016BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20231016BHJP
   C07D 309/12 20060101ALI20231016BHJP
   C07D 307/00 20060101ALI20231016BHJP
   C07D 327/04 20060101ALI20231016BHJP
   C07D 317/72 20060101ALI20231016BHJP
   C07D 217/08 20060101ALI20231016BHJP
   C07C 381/12 20060101ALN20231016BHJP
【FI】
G03F7/004 503A
G03F7/038 601
G03F7/039 601
G03F7/20 521
C07D309/12
C07D307/00
C07D327/04
C07D317/72
C07D217/08
C07C381/12
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022511679
(86)(22)【出願日】2021-03-02
(86)【国際出願番号】 JP2021007792
(87)【国際公開番号】W WO2021199841
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-08-09
(31)【優先権主張番号】P 2020061028
(32)【優先日】2020-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021021146
(32)【優先日】2021-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】牛山 愛菜
(72)【発明者】
【氏名】小島 雅史
(72)【発明者】
【氏名】後藤 研由
(72)【発明者】
【氏名】白川 三千紘
【審査官】福田 由紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-038764(JP,A)
【文献】特開2014-142620(JP,A)
【文献】特開2014-063160(JP,A)
【文献】特開2014-097969(JP,A)
【文献】特開2021-147390(JP,A)
【文献】特開2021-147389(JP,A)
【文献】特開2010-044347(JP,A)
【文献】特開2014-041329(JP,A)
【文献】特開2014-199357(JP,A)
【文献】国際公開第2021/106535(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/070590(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/039244(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/255964(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/00-7/42
C07D 309/12
C07D 307/00
C07D 327/04
C07D 317/72
C07D 217/08
C07C 381/12
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(S-2)で表される化合物と、
酸の作用により分解して極性が増大する樹脂と、を含む、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
ただし、前記一般式(S-2)で表される化合物は、式(I-c-4)で表されるスルホニウムカチオン、式(I-c-6)で表されるスルホニウムカチオン、式(I-c-15)で表されるスルホニウムカチオン、及び、式(I-c-18)で表されるスルホニウムカチオンをいずれも含まない。
【化1】

一般式(S-2)中、Rは、一般式(S-3)で表される基を表す。Rb1、Rb2、及び、Rb3は、それぞれ独立に、フッ素原子、又は、フッ素原子を有し、かつ、炭素数1~3の有機基を表す。Rc1、Rc2、及び、Rc3は、それぞれ独立に、酸分解性基含有基と異なり、フッ素原子を有さない有機基を表す。Xは、有機アニオンを表す。
は0~4の整数を表し、bは0~5の整数を表し、bは0~5の整数を表す。cは0~4の整数を表し、cは0~5の整数を表し、cは0~5の整数を表す。bとbとbとの合計は、1以上の整数を表す。bとcとの合計は0~4の整数を表し、bとcとの合計は0~5の整数を表し、bとcとの合計は0~5の整数を表す。
b1中のフッ素原子の数、Rb2中のフッ素原子の数、及び、Rb3中のフッ素原子の数の合計は、3個以上である。
【化2】

一般式(S-3)中、*は、結合位置を表す。LT1は、単結合、-O-、-CO-、-CS-、-COO-、メチレン基、エチレン基、又は、-O-、-CO-、-CS-若しくは-COO-と、メチレン基若しくはエチレン基とが連結した連結基を表す。RT1は、フッ素原子を含まない酸の作用により分解して極性が増大する基を表す。
【化3】
【請求項2】
前記フッ素原子を含まない酸の作用により分解して極性が増大する基が、一般式(a-1)又は(a-2)で表される基である、請求項1に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化4】

一般式(a-1)中、Ra1は、フッ素原子を含まない置換基を有していてもよい直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は、フッ素原子を含まない置換基を有していてもよいシクロアルキル基を表す。*は結合位置を表す。
【化5】

一般式(a-2)中、Ra2は、フッ素原子を含まない置換基を有していてもよい直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は、フッ素原子を含まない置換基を有していてもよいシクロアルキル基を表す。Ra3は、水素原子、フッ素原子を含まない置換基を有していてもよい直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は、フッ素原子を含まない置換基を有していてもよいシクロアルキル基を表す。Ra2及びRa3は、互いに結合して環を形成していてもよい。*は結合位置を表す。
【請求項3】
前記フッ素原子を含まない酸の作用により分解して極性が増大する基が、前記一般式(а-1)で表される基である、請求項2に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項4】
b1、Rb2、及び、Rb3が、フッ素原子又はフルオロアルキル基を表す、請求項1~3のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いて形成された、レジスト膜。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いて、基板上にレジスト膜を形成する工程と、
前記レジスト膜を露光する工程と、
現像液を用いて、前記露光されたレジスト膜を現像し、パターンを形成する工程と、を有するパターン形成方法。
【請求項7】
請求項6に記載のパターン形成方法を含む、電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、パターン形成方法、レジスト膜、及び、電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IC(Integrated Circuit、集積回路)及びLSI(Large Scale Integrated circuit、大規模集積回路)等の半導体デバイスの製造プロセスにおいては、感光性組成物を用いたリソグラフィーによる微細加工が行われている。
リソグラフィーの方法として、感光性組成物によりレジスト膜を形成した後、得られた膜を露光して、その後、現像する方法が挙げられる。
例えば、特許文献1では下記化合物を含むレジスト組成物が開示されている。
【0003】
【化1】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-015777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、特許文献1に開示された技術を具体的に検討したところ、特許文献1に記載の組成物は、得られるパターンのLWR(line width roughness)性能に改善の余地があることが分かった。
【0006】
そこで本発明は、LWR性能に優れるパターンを得られる感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を提供することを課題とする。
また、本発明は、上記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物に関する、レジスト膜、パターン形成方法、及び、電子デバイスの製造方法を提供することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、以下の構成により上記課題を解決できることを見出した。
【0008】
(1) 酸分解性基含有基で置換されたアリール基を有し、かつ、少なくとも3つのフッ素原子を有するスルホニウムカチオンを含む塩と、
酸の作用により分解して極性が増大する樹脂と、を含み、
酸分解性基含有基は、酸の作用により分解して極性が増大する基を含み、
酸分解性基含有基は、フッ素原子を含まない、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
(2) スルホニウムカチオンがトリアリールスルホニウムカチオンである、(1)に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
(3) 酸の作用により分解して極性が増大する基が、後述する一般式(a-1)又は(a-2)で表される基である、(1)又は(2)に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
(4) 酸の作用により分解して極性が増大する基が、後述する一般式(а-1)で表される基である、(3)に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
(5) スルホニウムカチオンが、酸の作用により分解して極性が増大する基を1つ有する、(1)~(4)のいずれかに記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
(6) スルホニウムカチオンが、フッ素原子及びフルオロアルキル基からなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されたアリール基を含む、(1)~(5)のいずれかに記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
〔7〕 スルホニウムカチオンを含む塩が、2つ以上のカチオン部位、及び、上記カチオン部位と同数のアニオン部位を有し、上記カチオン部位の少なくとも1つが上記スルホニウムカチオンである、〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
〔8〕 〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いて形成された、レジスト膜。
〔9〕 〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いて、基板上にレジスト膜を形成する工程と、
上記レジスト膜を露光する工程と、
現像液を用いて、上記露光されたレジスト膜を現像し、パターンを形成する工程と、を有するパターン形成方法。
〔10〕 〔9〕に記載のパターン形成方法を含む、電子デバイスの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、LWR性能に優れるパターンを得られる感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を提供できる。
また、本発明によれば、上記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物に関する、レジスト膜、パターン形成方法、及び、電子デバイスの製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明を実施するための形態の一例を説明する。
なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換又は無置換を記していない表記は、置換基を有していない基と共に置換基を有する基をも含む。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも含む。
置換基は、特に断らない限り、1価の置換基が好ましい。
本明細書中における「有機基」とは、少なくとも1個の炭素原子を含む基をいう。
【0011】
本明細書において、ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及び、ヨウ素原子が挙げられる。
【0012】
本明細書において表記される2価の基の結合方向は、特に断らない限り制限されない。例えば、「X-Y-Z」なる一般式で表される化合物中の、Yが-COO-である場合、Yは、-CO-O-であってもよく、-O-CO-であってもよい。また、上記化合物は「X-CO-O-Z」であってもよく「X-O-CO-Z」であってもよい。
【0013】
本明細書における、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルを含む総称であり、「アクリル及びメタクリルの少なくとも1種」を意味する。同様に「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸及びメタクリル酸の少なくとも1種」を意味する。
【0014】
本明細書中における「活性光線」又は「放射線」とは、例えば、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV光: Extreme Ultraviolet)、X線、及び、電子線(EB:Electron Beam)等を意味する。本明細書中における「光」とは、活性光線又は放射線を意味する。
本明細書中における「露光」とは、特に断らない限り、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザー(ArFエキシマレーザー等)に代表される遠紫外線、X線、及び、EUV光等による露光のみならず、電子線、及び、イオンビーム等の粒子線による描画も含む。
【0015】
本明細書において、樹脂の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、及び、分散度(以下、「分子量分布」ともいう。)(Mw/Mn)は、GPC(Gel Permeation Chromatography)装置(東ソー社製HLC-8120GPC)によるGPC測定(溶媒:テトラヒドロフラン、流量(サンプル注入量):10μL、カラム:東ソー社製TSK gel Multipore HXL-M、カラム温度:40℃、流速:1.0mL/分、検出器:示差屈折率検出器(Refractive Index Detector))によるポリスチレン換算値として定義される。
【0016】
1Åは1×10-10mである。
【0017】
本明細書において酸解離定数(pKa)とは、水溶液中でのpKaを表し、具体的には、下記ソフトウェアパッケージ1を用いて、ハメットの置換基定数及び公知文献値のデータベースに基づいた値を、計算により求められる値である。本明細書中に記載したpKaの値は、全て、このソフトウェアパッケージを用いて計算により求めた値を示す。
【0018】
ソフトウェアパッケージ1: Advanced Chemistry Development (ACD/Labs) Software V8.14 for Solaris (1994-2007 ACD/Labs)。
【0019】
一方で、pKaは、分子軌道計算法によっても求められる。この具体的な方法としては、熱力学サイクルに基づいて、溶媒中におけるH解離自由エネルギーを計算して算出する手法が挙げられる。(なお、本明細書において、上記溶媒としては、通常は水を使用し、水ではpKaを求められない場合にはDMSO(ジメチルスルホキシド)を使用する。

解離自由エネルギーの計算方法については、例えばDFT(密度汎関数法)により計算できるが、他にも様々な手法が文献等で報告されており、これに制限されるものではない。なお、DFTを実施できるソフトウェアは複数存在するが、例えば、Gaussian16が挙げられる。
【0020】
本明細書中のpKaとは、上述した通り、ソフトウェアパッケージ1を用いて、ハメットの置換基定数及び公知文献値のデータベースに基づいた値を計算により求められる値を指すが、この手法によりpKaが算出できない場合には、DFT(密度汎関数法)に基づいてGaussian16により得られる値を採用するものとする。
【0021】
[感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物]
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物(以下、「レジスト組成物」ともいう。)について説明する。
本発明のレジスト組成物は、ポジ型のレジスト組成物であっても、ネガ型のレジスト組成物であってもよい。また、アルカリ現像用のレジスト組成物であっても、有機溶剤現像用のレジスト組成物であってもよい。
本発明の組成物は、典型的には、化学増幅型のレジスト組成物である。
【0022】
本発明のレジスト組成物は、酸分解性基含有基で置換されたアリール基を有し、かつ、少なくとも3つのフッ素原子を有するスルホニウムカチオンを含む塩(以下、「特定化合物」ともいう。)と、酸の作用により分解して極性が増大する樹脂(以下、単に「酸分解性樹脂」ともいう。)とを含む。上記酸分解性基含有基は、酸の作用により分解して極性が増大する基(以下、単に「酸分解性基」ともいう。)を含み、かつ、上記酸分解性基含有基は、フッ素原子を含まない。
このような構成で本発明の課題が解決されるメカニズムは必ずしも明らかではないが、以下のように、推測される。
特定化合物は、所定のスルホニウムカチオンを含む塩であり、通常、光酸発生剤として作用する。特定化合物において、上記スルホニウムカチオンは、酸分解性基と、所定数のフッ素原子とを有しており、このような特定化合物は、露光時における分解効率が優れており、酸分解性樹脂との相溶性にも優れているため、形成されたパターンのLWR性能が良好となる。特に、酸分解性樹脂から生じる極性基と共に、スルホニウムカチオンが有する酸分解性基が分解して極性基を生じることにより、露光部のアルカリ現像液に対する溶解性の向上、及び、有機溶剤現像液に対する溶解液の低下がみられ、ポジ型及びネガ型のいずれにおいてもLWRが向上する傾向がある。
以下、本明細書において、LWR性能に優れるパターンを得られることを、本発明の効果が優れるともいう。
【0023】
〔レジスト組成物の成分〕
以下、レジスト組成物が含み得る成分について詳述する。
【0024】
<スルホニウムカチオンを含む塩>
本発明のレジスト組成物は、特定化合物を含む。
特定化合物は、通常、光酸発生剤として作用する。光酸発生剤は、活性光線又は放射線(好ましくはEUV光又はArF)の照射(露光)により酸を発生する化合物である。
光酸発生剤は、低分子化合物の形態であるのが好ましい。
光酸発生剤が、低分子化合物の形態である場合、分子量は3000以下が好ましく、2000以下がより好ましく、1200以下が更に好ましい。
特定化合物は、露光により、有機酸を発生する化合物が好ましい。
上記有機酸として、例えば、スルホン酸(脂肪族スルホン酸、芳香族スルホン酸、及び、カンファースルホン酸等)、カルボン酸(脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸、及び、アラルキルカルボン酸等)、カルボニルスルホニルイミド酸、ビス(アルキルスルホニル)イミド酸、及び、トリス(アルキルスルホニル)メチド酸等が挙げられる。
【0025】
特定化合物より発生する酸の体積は特に制限されないが、露光で発生した酸の非露光部への拡散を抑制し、解像性を良好にする点から、240Å以上が好ましく、305Å以上がより好ましく、350Å以上が更に好ましく、400Å以上が特に好ましい。なお、感度又は塗布溶剤への溶解性の点から、特定化合物より発生する酸の体積は、1500Å以下が好ましく、1000Å以下がより好ましく、700Å以下が更に好ましい。
上記体積の値は、富士通株式会社製の「WinMOPAC」を用いて求める。上記体積の値の計算にあたっては、まず、各例に係る酸の化学構造を入力し、次に、この構造を初期構造としてMM(Molecular Mechanics)3法を用いた分子力場計算により、各酸の最安定立体配座を決定し、その後、これら最安定立体配座についてPM(Parameterized Model number)3法を用いた分子軌道計算を行って、各酸の「accessible volume」を計算できる。
【0026】
特定化合物より発生する酸の構造は特に制限されないが、酸の拡散を抑制し、解像性を良好にする点で、特定化合物より発生する酸と後述する酸分解性樹脂との間の相互作用が強いことが好ましい。この点から、光酸発生剤より発生する酸が有機酸である場合、例えば、有機酸は、スルホン酸基、カルボン酸基、カルボニルスルホニルイミド酸基、ビススルホニルイミド酸基、及び、トリススルホニルメチド酸基等の有機酸基、以外に、更に極性基を有するのが好ましい。
極性基としては、例えば、エーテル基、エステル基、アミド基、アシル基、スルホ基、スルホニルオキシ基、スルホンアミド基、チオエーテル基、チオエステル基、ウレア基、カーボネート基、カーバメート基、水酸基、及び、メルカプト基が挙げられる。
発生する酸が有する極性基の数は特に制限されず、1個以上であることが好ましく、2個以上であることがより好ましい。ただし、過剰な現像を抑制する点から、極性基の数は、6個未満が好ましく、4個未満がより好ましい。
【0027】
(スルホニウムカチオン)
特定化合物は、酸分解性基含有基で置換されたアリール基を有し、かつ、少なくとも3つのフッ素原子を有するスルホニウムカチオン(以下、単に「特定カチオン」ともいう。)を含む。上記酸分解性基含有基は、酸分解性基を含み、かつ、上記酸分解性基含有基は、フッ素原子を含まない。すなわち、特定化合物に含まれるスルホニウムカチオンは、フッ素原子を含まない酸分解性基を含み、かつ、少なくとも3つのフッ素原子を有する。換言すれば、特定化合物に含まれるスルホニウムカチオンは、フッ素原子を含まない酸分解性基含有基で置換されたアリール基と、少なくとも3つのフッ素原子とを有する。好ましいスルホニウムカチオンは、フッ素原子を含まない酸分解性基含有基で置換されたアリール基と、少なくとも3つのフッ素原子を有する基または少なくとも3つのフッ素原子で置換されたアリール基とを有する。
【0028】
スルホニウムカチオンは、酸分解性基含有基で置換されたアリール基を有していればよく、置換基を有していてもよい直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は、置換基を有していてもよいアリール基を更に有していてもよい。上記アルキル基は環状構造であってもよい。上記アリール基は、単環又は多環であってもよい。
上記アルキル基、及び、アリール基が有する置換基としては、例えば、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、及び、ヨウ素原子)、ハロゲン原子を有していてもよいアルキル基、ハロゲン原子及び極性基(例えば、アルコール基)を有していてもよいアルキル基、ハロゲン原子を有していてもよいアルコキシ基、及び、ハロゲン原子を有していてもよいアリール基が挙げられる。なかでも、本発明の効果がより優れる点で、上記置換基としては、フッ素原子、ヨウ素原子、無置換のアルキル基、フルオロアルキル基、フルオロアルコール基、及び、フルオロアルコキシ基からなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、フッ素原子、及び、フルオロアルキル基からなる群から選択される少なくとも1種がより好ましい。
なお、上記フルオロアルキル基としては、例えば、一般式(S-1)で表される化合物が有し得るフルオロアルキル基が挙げられる。
なお、フルオロアルコール基の定義は後段で詳述する。フルオロアルコール基としては、*-C(Ry)(OH)で表される基が好ましい。Ryは、フルオロアルキル基を表す。
上記アルキル基、アルコキシ基、及び、フルオロアルキル基の炭素数は、1~10が好ましく、1~8がより好ましく、1~5が更に好ましい。
【0029】
スルホニウムカチオンとしては、例えば、トリアリールスルホニウムカチオン、ジアリールアルキルスルホニウムカチオン、アリールジアルキルスルホニウムカチオン、ジアリールシクロアルキルスルホニウムカチオン、及び、アリールジシクロアルキルスルホニウムカチオンが挙げられる。
なかでも、本発明の効果がより優れる点で、スルホニウムカチオンとしては、トリアリールスルホニウムカチオンが好ましい。
また、スルホニウムカチオンの別の好適態様としては、スルホニウムカチオンが、フッ素原子及びフルオロアルキル基からなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されたアリール基を含むことが好ましい。
【0030】
((酸分解性基含有基で置換されたアリール基))
特定化合物中のスルホニウムカチオンは、酸分解性基含有基で置換されたアリール基を有する。
上記アリール基は、単環又は多環であってもよい。なかでも、単環が好ましい。
酸分解性基含有基は、酸分解性基を含む。酸分解性基については、後段で詳述する。酸分解性含有基中における酸分解性基の数は特に制限されず、1以上であればよい。上限は特に制限されないが、2以下の場合が多い。
また、酸分解性基含有基は、フッ素原子を含まない。つまり、酸分解性基含有基中には、フッ素原子は含まれない。
また、上記酸分解性基含有基で置換されたアリール基は、酸分解性基含有基以外に、更に置換基を有していてもよい。つまり、アリール基中の芳香族炭化水素環が、酸分解性基含有基以外の置換基を更に有していてもよい。上記置換基の種類は特に制限されず、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、及び、ヨウ素原子)、ハロゲン原子を有していてもよいアルキル基、ハロゲン原子及び極性基(例えば、アルコール基)を有していてもよいアルキル基、ハロゲン原子を有していてもよいアルコキシ基、及び、ハロゲン原子を有していてもよいアリール基が挙げられる。つまり、酸分解性基含有基で置換されたアリール基には、フッ素原子などのハロゲン原子を含む基が更に置換基として置換していてもよい。
また、上記置換基としては、上述したスルホニウムカチオンが有し得る、アルキル基、及び、アリール基が有する置換基も挙げられる。
【0031】
酸分解性基含有基で置換されたアリール基としては、一般式(T-1)で表される基が好ましい。以下の式中、-LT1-RT1で表される部分が、酸分解性基含有基に該当する。
【0032】
【化2】
【0033】
一般式(T-1)中、*は結合位置を表す。nは1~5の整数を表す。
ArT1は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基を表す。
ArT1で表される芳香族炭化水素環基としては、後述するArS1~ArS3で表される芳香族炭化水素環基が挙げられる。
【0034】
T1は、単結合、又は、フッ素原子を含まない置換基を有していてもよい2価の連結基を表す。
T1で表される2価の連結基としては、例えば、-O-、-OC-、-CO-、-COO-、-OCO-、-S―、-CS-、-SO-、―SO-、フッ素原子を含まない置換基を有していてもよい炭化水素基(例えば、アルキレン基、シクロアルキレン基、アルケニレン基、及び、アリーレン基等)、及び、これらの複数が連結した連結基等が挙げられる。なかでも、LT1としては、-O-、-OC-、-CS―、-COO-、無置換の炭化水素基、若しくは、これらの複数が連結した連結基、又は、単結合が好ましい。
なお、上記置換基としては、例えば、ニトロ基、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、及び、シアノ基が挙げられる。
【0035】
T1は、酸分解性基を表す。酸分解性基には、フッ素原子は含まれない。
酸分解性基とは、酸の作用により分解して極性基を生じる基をいう。酸分解性基は、酸の作用により脱離する脱離基によって、極性基が保護された構造を有することが好ましい。つまり、本発明のスルホニウムカチオンを含む塩は、酸の作用により分解し、極性基を生じる基を有する。酸の作用により極性が増大してアルカリ現像液に対する溶解度が増大し、有機溶剤に対する溶解度が減少する。
【0036】
極性基としては、アルカリ可溶性基が好ましく、例えば、カルボキシル基、ヒドロキシル基、フェノール性水酸基、スルホン酸基、リン酸基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)メチレン基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルカルボニル)メチレン基、ビス(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルスルホニル)メチレン基、ビス(アルキルスルホニル)イミド基、トリス(アルキルカルボニル)メチレン基、及び、トリス(アルキルスルホニル)メチレン基等の酸性基が挙げられる。
なかでも、極性基としては、カルボキシル基、ヒドロキシル基、フェノール性水酸基、及び、スルホン酸基からなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、カルボキシル基、ヒドロキシル基、又は、フェノール性水酸基がより好ましい。
【0037】
酸の作用により脱離する脱離基としては、例えば、一般式(S1)~(S3)で表される基が挙げられる。
一般式(S1):-C(RxS1)(RxS2)(RxS3
一般式(S2):-C(=O)OC(RxS1)(RxS2)(RxS3
一般式(S3):-C(RS1)(RS2)(ORS3
【0038】
一般式(S1)及び(S2)中、RxS1~RxS3は、それぞれ独立に、フッ素原子を含まない置換基を有していてもよい直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は、フッ素原子を含まない置換基を有していてもよいシクロアルキル基(単環若しくは多環)を表す。なお、RxS1~RxS3の全てがフッ素原子を含まない置換基を有していてもよい直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基である場合、RxS1~RxS3のうち、少なくとも2つはメチル基、又は、エチル基であることが好ましい。
なかでも、RxS1~RxS3は、それぞれ独立に、フッ素原子を含まない置換基を有していてもよい直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を表すことが好ましく、RxS1~RxS3は、それぞれ独立に、フッ素原子を含まない置換基を有していてもよい直鎖状のアルキル基を表すことがより好ましい。
RxS1~RxS3の2つが結合して、単環又は多環を形成してもよい。
RxS1~RxS3のアルキル基としては、tert-ブチル基、tert-ペプチル基、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、及び、イソブチル基等の炭素数1~10のアルキル基が好ましい。
Rx~Rxのシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、及び、シクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基、並びに、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及び、アダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が好ましい。
RxS1~RxS3の2つが結合して形成される環としては、シクロアルキル基が好ましい。RxS1~RxS3の2つが結合して形成されるシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、若しくは、シクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基、又は、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、若しくは、アダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が好ましく、炭素数5~6の単環のシクロアルキル基がより好ましい。
RxS1~RxS3の2つが結合して形成されるシクロアルキル基は、例えば、環を構成するメチレン基の1つが、フッ素原子以外の酸素原子等のヘテロ原子、又は、カルボニル基等のフッ素原子以外のヘテロ原子を有する基で置換されていてもよい。
一般式(S1)又は(S2)で表される基は、例えば、Rxがメチル基又はエチル基が挙げられ、Rx及びRxが互いに結合して上述のシクロアルキル基を形成することが好ましい。
【0039】
一般式(S3)中、RS1~RS3は、それぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表す。RS2~RS3とは、互いに結合して環を形成してもよい。1価の有機基としては、フッ素原子を含まない置換基を有していてもよい直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、及び、フッ素原子を含まない置換基を有していてもよいシクロアルキル基が挙げられる。RS1は水素原子であることも好ましい。
なお、上記アルキル基、及び、上記シクロアルキル基には、フッ素原子以外の酸素原子等のヘテロ原子及び/又はカルボニル基等のフッ素原子以外のヘテロ原子を有する基が含まれていてもよい。例えば、上記アルキル基、及び、シクロアルキル基は、例えば、メチレン基の1つ以上が、フッ素原子以外の酸素原子等のヘテロ原子及び/又はカルボニル基等のフッ素原子以外のヘテロ原子を有する基で置換されていてもよい。
また、RS3は、繰り返し単位の主鎖が有する別の置換基と互いに結合して、環を形成してもよい。
【0040】
酸分解性基としては、本発明の効果がより優れる点で、一般式(a-1)又は(a-2)で表される基が好ましく、一般式(a-1)で表される基がより好ましい。
【0041】
【化3】
【0042】
一般式(a-1)中、*は結合位置を表す。Ra1は、フッ素原子を含まない置換基を有していてもよい直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は、フッ素原子を含まない置換基を有していてもよいシクロアルキル基を表す。
【0043】
a1で表されるフッ素原子を含まない置換基を有していてもよい直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基は、本発明の効果がより優れる点で、フッ素原子を含まない置換基を有していてもよい分岐鎖状のアルキル基が好ましい。上記アルキル基は、フッ素原子を含まない置換基を有する直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基であってもよく、無置換の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基であってもよい。上記アルキル基が有するフッ素原子を含まない置換基としては、フッ素原子以外の酸素原子等のヘテロ原子、又は、フッ素原子以外の酸素原子等のヘテロ原子を含むアルキル基が好ましい。なかでも、本発明の効果がより優れる点で、上記アルキル基としては、無置換の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基が好ましい。
上記アルキル基の炭素数は、1~20が好ましく、2~10がより好ましく、2~8が更に好ましい。
【0044】
a1で表されるアルキル基としては、例えば、tert-ブチル基、tert-ヘプチル基、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、1-メチルペンチル基、4-メチル-2-ペンチル基、2-エチルブチル基、n-ヘプチル基、1-メチルヘキシル基、n-オクチル基、1-メチルヘプチル基、及び、2-エチルヘキシル基が挙げられる。
なかでも、本発明の効果がより優れる点で、Ra1で表されるアルキル基としては、tert-ブチル基、又は、tert-ヘプチル基が好ましい。
【0045】
a1で表されるフッ素原子を含まない置換基を有していてもよいシクロアルキル基は、単環又は多環であってもよい。また、上記シクロアルキル基は、フッ素原子を含まない置換基を有するシクロアルキル基であってもよく、無置換のシクロアルキル基であってもよい。なかでも、フッ素原子を含まない置換基を有するシクロアルキル基が好ましい。上記シクロアルキル基が有する置換基としては、例えば、炭素数1~6のアルキル基が好ましく、メチル基、又は、エチル基がより好ましい。
上記シクロアルキル基の炭素数は、4~25が好ましく、4~20がより好ましく、4~15が更に好ましい。
【0046】
a1で表されるシクロアルキル基としては、例えば、メチルシクロペンチル基若しくはエチルシクロペンチル基等のシクロペンチル基、メチルシクロヘキシル基若しくはエチルシクロヘキシル基等のシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデカニル基、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、メチルアダマンチル基若しくはエチルアダマンタン基等のアダマンタン基が挙げられる。
なかでも、本発明の効果がより優れる点で、Ra1で表されるシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、及び、アダマンタン基からなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、メチルシクロペンチル基、エチルシクロペンチル基、メチルシクロヘキシル基、エチルシクロヘキシル基、メチルアダマンチル基、又は、エチルアダマンタン基がより好ましい。
【0047】
【化4】
【0048】
一般式(a-2)中、*は結合位置を表す。Ra2は、フッ素原子を含まない置換基を有していてもよい直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は、フッ素原子を含まない置換基を有していてもよいシクロアルキル基を表す。
【0049】
a2で表されるフッ素原子を含まない置換基を有していてもよい直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基としては、上述したRa1で表されるフッ素原子を含まない置換基を有していてもよい直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基と同義である。
a2で表されるフッ素原子を含まない置換基を有していてもよいシクロアルキル基としては、例えば、上述したRa1で表されるフッ素原子を含まない置換基を有していてもよいシクロアルキル基が挙げられる。
【0050】
a3は、水素原子、フッ素原子を含まない置換基を有していてもよい直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は、フッ素原子を含まない置換基を有していてもよいシクロアルキル基を表す。
【0051】
a3で表されるフッ素原子を含まない置換基を有していてもよい直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基としては、上述したRa1で表されるフッ素原子を含まない置換基を有していてもよい直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基と同義である。
a3で表されるフッ素原子を含まない置換基を有していてもよいシクロアルキル基としては、上述したRa1で表されるフッ素原子を含まない置換基を有していてもよいシクロアルキル基と同義である。
【0052】
a2及びRa3は、互いに結合して環を形成していてもよい。
a2及びRa3が互いに結合して形成される環は、単環又は多環であってもよい。なかでも、単環が好ましい。
a2及びRa3が互いに結合して形成される単環としては、例えば、炭素数3~6のシクロアルカンが挙げられる。より具体的には、例えば、シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、及び、シクロへキサン環が挙げられる。上記環中の炭素原子の一部は、フッ素原子以外の酸素原子等のヘテロ原子によって置換されていてもよい。
なお、Ra2及びRa3が互いに結合して形成される環は、フッ素原子を有さない。
【0053】
((フッ素原子数))
特定化合物に含まれるスルホニウムカチオンは、酸分解性基含有基以外の部分に、少なくとも3つのフッ素原子を有する。つまり、スルホニウムカチオンが有する酸分解性基含有基以外の置換基は、合計で3個以上のフッ素原子を有し、酸分解性基含有基はフッ素原子を有さない。
フッ素原子の数は、6個以上が好ましい。フッ素原子の数の上限は特に制限されないが、30個以下が好ましく、25個以下がより好ましく、20個以下が更に好ましい。
なお、例えば、スルホニウムカチオンがトリフルオロメチル基を有する場合、フッ素原子の数は3と数える。
また、スルホニウムカチオンがフッ素原子を有する置換基を有する場合、フッ素原子を有する置換基の数は1つでもよいし、2つ以上でもよい。
【0054】
スルホニウムカチオンは、上述した酸分解性基含有基及びフッ素原子を有する置換基以外の置換基(例えば、無置換のアルキル基)を有していてもよい。
【0055】
スルホニウムカチオンは、1種単独で使用してもよく、2種以上を使用してもよい。
また、同種のスルホニウムカチオンを2個以上含んでもよい。
【0056】
スルホニウムカチオンの具体例を以下に示すが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0057】
【化5】
【0058】
【化6】
【0059】
【化7】
【0060】
【化8】
【0061】
【化9】
【0062】
【化10】
【0063】
(有機アニオン)
特定化合物は、有機アニオンを含むことが好ましい。有機アニオンとしては、1価のアニオンであってもよく、2価以上のアニオンであってもよい。
有機アニオンとは、求核反応を起こす能力が著しく低いアニオンが好ましく、具体的には非求核性アニオンが挙げられる。
【0064】
非求核性アニオンとしては、例えば、スルホン酸アニオン(脂肪族スルホン酸アニオン、芳香族スルホン酸アニオン、及び、カンファースルホン酸アニオン等)、カルボン酸アニオン(脂肪族カルボン酸アニオン、芳香族カルボン酸アニオン、及び、アラルキルカルボン酸アニオン等)、スルホニルイミドアニオン、ビス(アルキルスルホニル)イミドアニオン、及び、トリス(アルキルスルホニル)メチドアニオンが挙げられる。
【0065】
脂肪族スルホン酸アニオン及び脂肪族カルボン酸アニオンにおける脂肪族部位は、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基であってもシクロアルキル基であってもよく、炭素数1~30の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、又は、炭素数3~30のシクロアルキル基が好ましい。
上記アルキル基は、例えば、フルオロアルキル基(フッ素原子以外の置換基を有していてもよいし、有していなくてもよい。パーフルオロアルキル基でもよい)でもよい。
【0066】
芳香族スルホン酸アニオン及び芳香族カルボン酸アニオンにおけるアリール基としては、炭素数6~14のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、トリル基、及び、ナフチル基が挙げられる。
【0067】
上記で挙げたアルキル基、シクロアルキル基、及び、アリール基は、置換基を有していてもよい。置換基としては特に制限されないが、具体的には、ニトロ基、フッ素原子又は塩素原子等のハロゲン原子、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、シアノ基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~15)、アルキル基(好ましくは炭素数1~10)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3~15)、アリール基(好ましくは炭素数6~14)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2~7)、アシル基(好ましくは炭素数2~12)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは炭素数2~7)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1~15)、アルキルスルホニル基(好ましくは炭素数1~15)、アルキルイミノスルホニル基(好ましくは炭素数1~15)、及び、アリールオキシスルホニル基(好ましくは炭素数6~20)等が挙げられる。
【0068】
アラルキルカルボン酸アニオンにおけるアラルキル基としては、炭素数7~14のアラルキル基が好ましく、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基、及び、ナフチルブチル基が挙げられる。
【0069】
スルホニルイミドアニオンとしては、例えば、サッカリンアニオンが挙げられる。
【0070】
ビス(アルキルスルホニル)イミドアニオン、及び、トリス(アルキルスルホニル)メチドアニオンにおけるアルキル基としては、炭素数1~5のアルキル基が好ましい。これらのアルキル基の置換基としては、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されたアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルオキシスルホニル基、アリールオキシスルホニル基、及び、シクロアルキルアリールオキシスルホニル基が挙げられ、フッ素原子又はフッ素原子で置換されたアルキル基が好ましい。
また、ビス(アルキルスルホニル)イミドアニオンにおけるアルキル基は、互いに結合して環構造を形成してもよい。これにより、酸強度が増加する。
【0071】
その他の非求核性アニオンとしては、例えば、フッ素化燐(例えば、PF )、フッ素化ホウ素(例えば、BF )、及び、フッ素化アンチモン(例えば、SbF )が挙げられる。
【0072】
非求核性アニオンとしては、スルホン酸の少なくともα位がフッ素原子で置換された脂肪族スルホン酸アニオン、フッ素原子若しくはフッ素原子を有する基で置換された芳香族スルホン酸アニオン、アルキル基がフッ素原子で置換されたビス(アルキルスルホニル)イミドアニオン、又は、アルキル基がフッ素原子で置換されたトリス(アルキルスルホニル)メチドアニオンが好ましい。なかでも、パーフルオロ脂肪族スルホン酸アニオン(好ましくは炭素数4~8)、又は、フッ素原子を有するベンゼンスルホン酸アニオンがより好ましく、ノナフルオロブタンスルホン酸アニオン、パーフルオロオクタンスルホン酸アニオン、ペンタフルオロベンゼンスルホン酸アニオン、又は、3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンスルホン酸アニオンが更に好ましい。
【0073】
非求核性アニオンとしては、下記式(AN1)で表されるアニオンも好ましい。
【0074】
【化11】
【0075】
一般式(AN1)中、
oは、1~3の整数を表す。pは、0~10の整数を表す。qは、0~10の整数を表す。
【0076】
Xfは、フッ素原子、又は、少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。このアルキル基の炭素数は、1~10が好ましく、1~4がより好ましい。また、少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基としては、パーフルオロアルキル基が好ましい。
Xfは、フッ素原子又は炭素数1~4のパーフルオロアルキル基であることが好ましく、フッ素原子又はCFであることがより好ましい。特に、双方のXfがフッ素原子であることが更に好ましい。
【0077】
及びRは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、アルキル基、又は、少なくとも一つのフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。R及びRが複数存在する場合、R及びRは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
及びRで表されるアルキル基は、置換基を有していてもよく、炭素数1~4が好ましい。R及びRは、好ましくは水素原子である。
少なくとも一つのフッ素原子で置換されたアルキル基の具体例及び好適な態様は一般式(AN1)中のXfの具体例及び好適な態様と同じである。
【0078】
Lは、2価の連結基を表す。Lが複数存在する場合、Lは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
2価の連結基としては、例えば、-O-CO-O-、-COO-、-OCO-、-CONH-、-NHCO-、-CO-、-O-、-S-、-SO-、-SO-、アルキレン基(好ましくは炭素数1~6)、シクロアルキレン基(好ましくは炭素数3~15)、アルケニレン基(好ましくは炭素数2~6)、及び、これらの複数を組み合わせた2価の連結基等が挙げられる。なかでも、-O-CO-O-、-COO-、-OCO-、-CONH-、-NHCO-、-CO-、-O-、-SO-、-O-CO-O-アルキレン基-、-アルキレン基-O-CO-O-、-COO-アルキレン基-、-OCO-アルキレン基-、-CONH-アルキレン基-、又は、-NHCO-アルキレン基-が好ましく、-O-CO-O-、-O-CO-O-アルキレン基-、-アルキレン基-O-CO-O-、-COO-、-OCO-、-CONH-、-SO-、-COO-アルキレン基-、又は、-OCO-アルキレン基-がより好ましい。
【0079】
Wは、環状構造を含む有機基を表す。なかでも、環状の有機基であることが好ましい。
環状の有機基としては、例えば、脂環基、アリール基、及び、複素環基が挙げられる。
脂環基は、単環であってもよく、多環であってもよい。単環の脂環基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、及び、シクロオクチル基等の単環のシクロアルキル基が挙げられる。多環の脂環基としては、例えば、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及び、アダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が挙げられる。なかでも、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及び、アダマンチル基等の炭素数7以上の嵩高い構造を有する脂環基が好ましい。
【0080】
アリール基は、単環であってもよく、多環であってもよい。このアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、及び、アントリル基が挙げられる。
複素環基は、単環であってもよく、多環であってもよい。多環の方がより酸の拡散を抑制可能である。また、複素環基は、芳香族性を有していてもよいし、芳香族性を有していなくてもよい。芳香族性を有している複素環としては、例えば、フラン環、チオフェン環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、及び、ピリジン環が挙げられる。芳香族性を有していない複素環としては、例えば、テトラヒドロピラン環、ラクトン環、スルトン環、及び、デカヒドロイソキノリン環が挙げられる。複素環基における複素環としては、フラン環、チオフェン環、ピリジン環、又は、デカヒドロイソキノリン環が特に好ましい。
【0081】
上記環状の有機基は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、アルキル基(直鎖状及び分岐鎖状のいずれであってもよく、炭素数1~12が好ましい)、シクロアルキル基(単環、多環、及び、スピロ環のいずれであってもよく、炭素数3~20が好ましい)、アリール基(炭素数6~14が好ましい)、水酸基、アルコキシ基、エステル基、アミド基、ウレタン基、ウレイド基、チオエーテル基、スルホンアミド基、及び、スルホン酸エステル基が挙げられる。なお、環状の有機基を構成する炭素(環形成に寄与する炭素)はカルボニル炭素であってもよい。
【0082】
一般式(AN1)で表されるアニオンとしては、SO -CF-CH-OCO-(L)q’-W、SO -CF-CHF-CH-OCO-(L)q’-W、SO -CF-COO-(L)q’-W、SO -CF-CF-CH-CH-(L)q-W、又は、SO -CF-CH(CF)-OCO-(L)q’-Wが好ましい。ここで、L、q及びWは、一般式(AN1)と同様である。q’は、0~10の整数を表す。
【0083】
非求核性アニオンとしては、下記の式(AN2)で表されるアニオンも好ましい。
【0084】
【化12】
【0085】
一般式(AN2)中、
B1及びXB2は、それぞれ独立に、水素原子、又は、フッ素原子を有さない1価の有機基を表す。XB1及びXB2は、水素原子であることが好ましい。
B3及びXB4は、それぞれ独立に、水素原子、又は、1価の有機基を表す。XB3及びXB4の少なくとも一方がフッ素原子又はフッ素原子を有する1価の有機基であることが好ましく、XB3及びXB4の両方がフッ素原子又はフッ素原子を有する1価の有機基であることがより好ましい。XB3及びXB4の両方が、フッ素で置換されたアルキル基であることが更に好ましい。
L、q及びWは、一般式(AN1)と同様である。
【0086】
非求核性アニオンとしては、下記式(AN3)で表されるアニオンが好ましい。
【0087】
【化13】
【0088】
一般式(AN3)において、Xaは、それぞれ独立に、フッ素原子、又は、少なくとも一つのフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。Xbは、それぞれ独立に、水素原子、又は、フッ素原子を有さない有機基を表す。o、p、q、R、R、L、及び、Wの定義及び好ましい態様は、一般式(AN1)と同様である。
【0089】
非求核性アニオンとしては、下記式(AN4)で表されるアニオンも好ましい。
【0090】
【化14】
【0091】
一般式(AN4)中、R及びRは、それぞれ独立に、電子求引性基ではない置換基又は水素原子を表す。
上記電子求引性基ではない置換基としては、炭化水素基、水酸基、オキシ炭化水素基、オキシカルボニル炭化水素基、アミノ基、炭化水素置換アミノ基、及び、炭化水素置換アミド基等が挙げられる。
また、電子求引性基ではない置換基としては、それぞれ独立に、-R’、-OH、-OR’、-OCOR’、-NH、-NR’、-NHR’、又は、-NHCOR’が好ましい。R’は、1価の炭化水素基である。
【0092】
上記R’で表される1価の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基;エテニル基、プロペニル基、ブテニル基等のアルケニル基;エチニル基、プロピニル基、ブチニル基等のアルキニル基などの1価の直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等のシクロアルキル基;シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、ノルボルネニル基等のシクロアルケニル基などの1価の脂環炭化水素基;フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、ナフチル基、メチルナフチル基、アントリル基、メチルアントリル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基、アントリルメチル基等のアラルキル基等の1価の芳香族炭化水素基が挙げられる。
なかでも、R及びRは、それぞれ独立に、炭化水素基(好ましくはシクロアルキル基)又は水素原子が好ましい。
【0093】
一般式(AN4)中、Lは、1つ以上の連結基Sと1つ以上の置換基を有していてもよいアルキレン基との組み合わせからなる2価の連結基、又は、1つ以上の連結基Sからなる2価の連結基を表す。
連結基Sは、*-O-CO-O-*、*-CO-*、*-CO-O-*、*-O-CO-*、*-O-*、*-S-*、及び、*-SO-*からなる群から選択される基である。
ただし、Lが、「1つ以上の連結基Sと1つ以上の置換基を有していてもよいアルキレン基との組み合わせからなる2価の連結基」の一形態である、「1つ以上の連結基Sと1つ以上の置換基を有さないアルキレン基との組み合わせからなる2価の連結基」である場合、連結基Sは、*-O-CO-O-*、*-CO-*、*-O-CO-*、*-O-*、*-S-*、及び、*-SO-*からなる群から選択される基であるのが好ましい。言い換えると、「1つ以上の連結基Sと1つ以上の置換基を有していてもよいアルキレン基との組み合わせからなる2価の連結基」における、アルキレン基が、いずれも無置換アルキレン基である場合、連結基Sは、*-O-CO-O-*、*-CO-*、*-O-CO-*、*-O-*、*-S-*、及び、*-SO-*からなる群から選択される基であるのが好ましい。
は、一般式(AN4)におけるR側の結合位置を表し、*は、一般式(AN4)における-SO 側の結合位置を表す。
【0094】
1つ以上の連結基Sと1つ以上の置換基を有していてもよいアルキレン基との組み合わせからなる2価の連結基において、連結基Sは1つだけ存在していてもよく、2つ以上存在していてもよい。同様に、置換基を有していてもよいアルキレン基は1つだけ存在していてもよく、2つ以上存在していてもよい。上記連結基Sが複数存在する場合、複数存在する連結基Sは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。上記アルキレン基が複数存在する場合、複数存在するアルキレン基は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
なお、連結基S同士が連続して結合してもよい。ただし、*-CO-*、*-O-CO-*、及び、*-O-*からなる群から選択される基が連続して結合して「*-O-CO-O-*」が形成されないことが好ましい。また、*-CO-*及び*-O-*からなる群から選択される基が連続して結合して「*-O-CO-*」及び「*-CO-O-*」のいずれも形成されないことが好ましい。
【0095】
1つ以上の連結基Sからなる2価の連結基においても、連結基Sは1つだけ存在していてもよく、2つ以上存在していてもよい。連結基Sが複数存在する場合、複数存在する場合の連結基Sは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
この場合も、*-CO-*、*-O-CO-*、及び、*-O-*からなる群から選択される基が連続して結合して「*-O-CO-O-*」が形成されないことが好ましい。また、*-CO-*及び*-O-*からなる群から選択される基が連続して結合して「*-O-CO-*」及び「*-CO-O-*」のいずれも形成されないことが好ましい。
【0096】
ただし、いずれの場合においてもL中において、-SO に対してβ位の原子は、置換基としてフッ素原子を有する炭素原子ではない。
なお、上記β位の原子が炭素原子である場合、上記炭素原子にはフッ素原子が直接置換していなければよく、上記炭素原子はフッ素原子を有する置換基(例えば、トリフルオロメチル基等のフルオロアルキル基)を有していてもよい。
また、上記β位の原子とは、言い換えると、一般式(AN4)における-C(R)(R)-と直接結合するL中の原子である。
【0097】
なかでも、Lは、連結基Sを1つだけ有するのが好ましい。
つまり、Lは、1つの連結基Sと1つ以上の置換基を有していてもよいアルキレン基との組み合わせからなる2価の連結基、又は、1つの連結基Sからなる2価の連結基を表すのが好ましい。
【0098】
Lは、例えば、下記式(AN4-2)で表される基であるのが好ましい。
-(CR2a -Q-(CR2b -* (AN4-2)
【0099】
一般式(AN4-2)中、*は、一般式(AN4)におけるRとの結合位置を表す。
は、一般式(AN4)における-C(R)(R)-との結合位置を表す。
X及びYは、それぞれ独立に、0~10の整数を表し、0~3の整数が好ましい。
2a及びR2bは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。
2a及びR2bがそれぞれ複数存在する場合、複数存在するR2a及びR2bは、それぞれ同一でも異なっていてもよい、
ただし、Yが1以上の場合、一般式(AN4)における-C(R)(R)-と直接結合するCR2b におけるR2bは、フッ素原子以外である。
Qは、*-O-CO-O-*、*-CO-*、*-CO-O-*、*-O-CO-*、*-O-*、*-S-*、又は、*-SO-*を表す。
ただし、一般式(AN4-2)中のX+Yが1以上かつ、一般式(AN4-2)中のR2a及びR2bのいずれもが全て水素原子である場合、Qは、*-O-CO-O-*、*-CO-*、*-O-CO-*、*-O-*、*-S-*、又は、*-SO-*を表す。
は、一般式(AN4)におけるR側の結合位置を表し、*は、一般式(AN4)における-SO 側の結合位置を表す。
【0100】
一般式(AN4)中、Rは、有機基を表す。
上記有機基は、炭素原子を1以上有していれば制限はなく、直鎖状の基(例えば、直鎖状のアルキル基)でも、分岐鎖状の基(例えば、t-ブチル基等の分岐鎖状のアルキル基)でもよく、環状構造を有していてもよい。上記有機基は、置換基を有していても有していなくてもよい。上記有機基は、ヘテロ原子(酸素原子、硫黄原子、及び/又は、窒素原子等)を有していても有してなくてもよい。
【0101】
なかでも、Rは、環状構造を有する有機基であるのが好ましい。上記環状構造は、単環でも多環でもよく、置換基を有していてもよい。環状構造を含む有機基における環は、一般式(AN4)中のLと直接結合しているのが好ましい。
上記環状構造を有する有機基は、例えば、ヘテロ原子(酸素原子、硫黄原子、及び/又は、窒素原子等)を有していても有してなくてもよい。ヘテロ原子は、環状構造を形成する炭素原子の1つ以上と置換していてもよい。
上記環状構造を有する有機基は、例えば、環状構造の炭化水素基、ラクトン環基、及び、スルトン環基が好ましい。なかでも、上記環状構造を有する有機基は、環状構造の炭化水素基が好ましい。
上記環状構造の炭化水素基は、単環又は多環のシクロアルキル基が好ましい。これらの基は、置換基を有していてもよい。
上記シクロアルキル基は、単環(シクロヘキシル基等)でも多環(アダマンチル基等)でもよく、炭素数は5~12が好ましい。
上記ラクトン基及びスルトン基としては、例えば、後述の一般式(LC1-1)~(LC1-21)で表される構造、及び、一般式(SL1-1)~(SL1-3)で表される構造のいずれかにおいて、ラクトン構造又はスルトン構造を構成する環員原子から、水素原子を1つ除いてなる基が好ましい。
【0102】
非求核性アニオンとしては、ベンゼンスルホン酸アニオンであってもよく、分岐鎖状のアルキル基又はシクロアルキル基によって置換されたベンゼンスルホン酸アニオンであることが好ましい。
【0103】
非求核性アニオンとしては、下記式(AN5)で表される芳香族スルホン酸アニオンも好ましい。
【0104】
【化15】
【0105】
一般式(AN5)中、
Arは、アリール基(フェニル基等)を表し、スルホン酸アニオン及び-(D-B)基以外の置換基を更に有していてもよい。更に有してもよい置換基としては、フッ素原子及び水酸基等が挙げられる。
【0106】
nは、0以上の整数を表す。nとしては、1~4が好ましく、2~3がより好ましく、3が更に好ましい。
【0107】
Dは、単結合又は2価の連結基を表す。2価の連結基としては、エーテル基、チオエーテル基、カルボニル基、スルホキシド基、スルホン基、スルホン酸エステル基、エステル基、及び、これらの2種以上の組み合わせからなる基等が挙げられる。
【0108】
Bは、炭化水素基を表す。
【0109】
Bは脂肪族炭化水素構造であることが好ましい。Bは、イソプロピル基、シクロヘキシル基、更に置換基を有してもよいアリール基(トリシクロヘキシルフェニル基等)がより好ましい。
【0110】
非求核性アニオンとしては、ジスルホンアミドアニオンも好ましい。
ジスルホンアミドアニオンは、例えば、N(SO-Rで表されるアニオンである。
ここで、Rは置換基を有していてもよいアルキル基を表し、フルオロアルキル基が好ましく、パーフルオロアルキル基がより好ましい。2個のRは互いに結合して環を形成してもよい。2個のRが互いに結合して形成される基は、置換基を有していてもよいアルキレン基が好ましく、フルオロアルキレン基が好ましく、パーフルオロアルキレン基が更に好ましい。上記アルキレン基の炭素数は2~4が好ましい。
【0111】
また、アニオンとしては、下記式(d1-1)~(d1-3)で表されるアニオンも挙げられる。
アニオンとして下記式(d1-1)~(d1-3)で表されるアニオンを有する特定化合物は、後述する酸拡散制御剤としての機能を持つこともできる。
【0112】
【化16】
【0113】
一般式(d1-1)中、R51は置換基(例えば、水酸基)を有していてもよい炭化水素基(例えば、フェニル基等のアリール基)を表す。
一般式(d1-2)中、Z2cは置換基を有していてもよい炭素数1~30の炭化水素基(ただし、Sに隣接する炭素原子にはフッ素原子が置換されない)を表す。
2cにおける上記炭化水素基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、環状構造を有していてもよい。また、上記炭化水素基における炭素原子(好ましくは、上記炭化水素基が環状構造を有する場合における、環員原子である炭素原子)は、カルボニル炭素(-CO-)であってもよい。上記炭化水素基としては、例えば、置換基を有していてもよいノルボルニル基を有する基が挙げられる。上記ノルボルニル基を形成する炭素原子は、カルボニル炭素であってもよい。
また、一般式(d1-2)中の「Z2c-SO 」は、上述の式(AN1)~(AN5)で表されるアニオンとは異なるのが好ましい。例えば、Z2cは、アリール基以外が好ましい。また、例えば、Z2cにおける、-SO に対してα位及びβ位の原子は、置換基としてフッ素原子を有する炭素原子以外の原子が好ましい。例えば、Z2cは、-SO に対してα位の原子及び/又はβ位の原子は環状基中の環員原子であるのが好ましい。
一般式(d1-3)中、R52は有機基(好ましくはフッ素原子を有する炭化水素基)を表し、Yは直鎖状、分岐鎖状、若しくは、環状のアルキレン基、アリーレン基、又は、カルボニル基を表し、Rfは炭化水素基を表す。
【0114】
有機アニオンは、1種単独で使用してもよく、2種以上を使用してもよい。
【0115】
(一般式(S-1)で表される化合物)
特定化合物としては、一般式(S-1)で表される化合物が好ましい。
【0116】
【化17】
【0117】
一般式(S-1)中、Xは、有機アニオンを表す。
で表される有機アニオンは、上述した有機アニオンと同義である。
【0118】
ArS1~ArS3は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基を表す。
【0119】
ArS1~ArS3で表される芳香族炭化水素環基としては、例えば、ベンゼン環基、ナフタレン環基、及び、アントラセン環基等のアリール基が挙げられる。なかでも、上記芳香族炭化水素環基は、それぞれ独立に、ベンゼン環基が好ましい。
ArS1~ArS3で表される芳香族炭化水素環基は、置換基を有する芳香族炭化水素環基であってもよく、無置換の芳香族炭化水素環基であってもよい。なかでも、上記芳香族炭化水素環基は、置換基を有する芳香族炭化水素環基が好ましい。
上記芳香族炭化水素環基が有する置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ハロゲン原子を有していてもよい直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、及び、ハロゲン原子を有していてもよいアルコキシ基が挙げられ、より具体的には、フッ素原子、ヨウ素原子、アルキル基、フルオロアルキル基、フルオロアルコール基、及び、フルオロアルコキシ基からなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、フッ素原子、及び、フルオロアルキル基からなる群から選択される少なくとも1種がより好ましい。
なかでも、上記芳香族炭化水素基としては、フッ素原子及びフルオロアルキル基からなる群から選ばれる少なくとも1種で置換された芳香族炭化水素基が好ましく、フッ素原子及びフルオロアルキル基からなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されたアリール基を含むことがより好ましい。
上記フルオロアルキル基、フルオロアルコール基、及び、フルオロアルコキシ基が有するフッ素原子数は、1個以上であればよく、アルキレン基中の水素原子が全てフッ素原子で置換されていてもよい。
また、ArS1~ArS3は、互いに結合して環を形成してもよい。
上記アルキル基、アルコール基、及び、アルコキシ基の炭素数は、1~10が好ましく、1~8がより好ましく、1~5が更に好ましい。
【0120】
上記アルキル基としては、例えば、メチル基、tert-ブチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、オクチル基、ドデシル基、ノナデシル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、2-エチルプロピル基、及び、2-エチルヘキシル基が挙げられる。
なかでも、本発明の効果がより優れる点で、上記アルキル基としては、メチル基、又は、tert-ブチル基が好ましい。
【0121】
フルオロアルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ナフルオロブチル基、2-(パーフルオロブチル)エチル基、3-パーフルオロブチル-2-ヒドロキシプロピル基、2-(パーフルオロヘキシル)エチル基、3-パーフルオロヘキシル-2-ヒドロキシプロピル基、2-(パーフルオロオクチル)エチル基、3-パーフルオロオクチル-2-ヒドロキシプロピル基、2-(パーフルオロデシル)エチル基、2-(パーフルオロ-3-メチルブチル)エチル基、3-(パーフルオロ-3-メチルブチル)-2-ヒドロキシプロピル基、2-(パーフルオロ-5-メチルヘキシル)エチル基、2-(パーフルオロ-5-メチルヘキシル)-2-ヒドロキシプロピル基、2-(パーフルオロ-7-メチルオクチル)エチル基、及び、2-(パーフルオロ-7-メチルオクチル)-2-ヒドロキシプロピル基が挙げられる。
なかでも、本発明の効果がより優れる点で、フルオロアルキル基としては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、又は、ナフルオロブチル基が好ましい。
【0122】
フルオロアルコール基としては、例えば、-C(CFOH、-CFOH、-CHCFOH、-CHCFCFOH、-C(CFOH、-CFCF(CF)OH、及び、-CHC(CFOHが挙げられる。
なかでも、本発明の効果がより優れる点で、フルオロアルコール基としては、-C(CFOHが好ましい。
【0123】
フルオロアルコシキ基としては、例えば、フルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基、及び、トリフルオロメトキシ基等のフルオロメトキシ基;フルオロエトキシ基、ジフルオロエトキシ基、トリフルオロエトキシ基、テトラフルオロエトキシ基、及び、ペンタフルオロエトキシ基等のフルオロエトキシ基;フルオロプロポキシ基、ジフルオロプロポキシ基、トリフルオロプロポキシ基、テトラフルオロプロポキシ基、ペンタフルオロプロポキシ基、ヘキサフルオロプロポキシ基、ヘプタフルオロプロポキシ基、及び、オクタフルオロプロポキシ基等のフルオロプロポキシ基が挙げられる。
なかでも、本発明の効果がより優れる点で、フルオロアルコシキ基としては、フルオロメトキシ基、フルオロエトキシ基、及び、フルオロプロポキシ基からなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、トリフルオロメトキシ基がより好ましい。
【0124】
ArS1~ArS3のうち、少なくとも1つは上述した一般式(T-1)で表される基を表す。
【0125】
Ar~Arで表される芳香族炭化水素環基は、合計3個以上のフッ素原子を有する。Ar~Arのうち、1つのみが3個以上のフッ素原子を有し、他方がフッ素原子を有さなくてもよく、全てのAr~Arが、1個以上のフッ素原子を有していてもよい。つまり、一般式(S-1)で表される化合物は、少なくとも3個のフッ素原子を有する。フッ素原子の数は、6個以上が好ましい。上限は特に制限されないが、30個以下が好ましく、25個以下がより好ましく、20個以下が更に好ましい。
【0126】
特定化合物としては、一般式(S-2)で表される化合物がより好ましい。
【0127】
【化18】
【0128】
は、酸分解性基含有基を表す。酸分解性基含有基の定義は、上述した通りであり、一般式(S-3)で表される基が好ましい。一般式(S-3)中、*、LT1、及び、RT1の定義は、上述した通りである。
【0129】
【化19】
【0130】
b1、Rb2、及び、Rb3は、それぞれ独立に、フッ素原子、又は、フッ素原子を有する有機基を表す。フッ素原子を有する有機基としては、フッ素原子を有していればよく、例えば、フッ素原子を有する直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、フッ素原子を有するシクロアルキル基、又は、フッ素原子を有するアリール基が挙げられる。
上記アルキル基及びシクロアルキル基の炭素数は特に制限されないが、炭素数1~10が好ましく、1~5がより好ましく、1~3が更に好ましい。
上記フッ素原子を有する有機基としては、フッ素原子を有する直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基が好ましく、直鎖状若しくは分岐鎖状のフルオロアルキル基がより好ましく、直鎖状若しくは分岐鎖状のパーフルオロアルキル基が更に好ましい。
【0131】
c1、Rc2、及び、Rc3は、それぞれ独立に、酸分解性基含有基と異なり、フッ素原子を有さない有機基を表す。上記有機基としては、無置換のアルキル基、無置換のシクロアルキル基、及び、無置換のアリール基が挙げられる。
上記アルキル基及びシクロアルキル基の炭素数は特に制限されないが、炭素数1~10が好ましく、1~5がより好ましく、1~3が更に好ましい。
【0132】
b1は0~4の整数を表し、b2は0~5の整数を表し、b3は0~5の整数を表す。
c1は0~4の整数を表し、c2は0~5の整数を表し、c3は0~5の整数を表す。
b1とb2とb3との合計は、1以上の整数を表す。
b1とc1との合計は0~4の整数を表し、b2とc2との合計は0~5の整数を表し、b3とc3との合計は0~5の整数を表す。
【0133】
b1中のフッ素原子の数、Rb2中のフッ素原子の数、及び、Rb3中のフッ素原子の数の合計は、3個以上であり、6個以上がより好ましい。上限は特に制限されないが、30個以下が好ましく、25個以下がより好ましく、20個以下が更に好ましい。
b1~Rb3のうち、1つのみが3個以上のフッ素原子を有し、他方がフッ素原子を有さなくてもよく、全てのRb1~Rb3が、1個以上のフッ素原子を有していてもよい。
【0134】
特定化合物としては、2つ以上のカチオン部位、及び、上記カチオン部位と同数のアニオン部位を有し、上記カチオン部位の少なくとも1つが特定カチオンである化合物(以下、単に「化合物W」ともいう。)が挙げられる。
カチオン部位とは、正電荷を帯びた原子又は原子団を含む構造部位である。上述したように、化合物Wにおいては、2つ以上のカチオン部位の少なくとも1つは特定カチオンである。なかでも、本発明の効果がより優れる点で、化合物Wに含まれる2つ以上のカチオン部位のすべてが、特定カチオンであることが好ましい。
なお、化合物Wにおいては、2つ以上のカチオン部位の少なくとも1つは特定カチオンであればよく、特定カチオン以外の有機カチオンが含まれていてもよい。特定カチオン以外の有機カチオンとしては、例えば、特定カチオン以外のスルホニウムカチオン、および、ヨードニウムイオンが挙げられる。
【0135】
アニオン部位とは、負電荷を帯びた原子又は原子団を含む構造部位であり、例えば、化合物W中に存在し得るアニオン性官能基をアニオン部位としてもよい。
化合物Wは、化合物Wが有するカチオン部位と同数のアニオン性官能基を有する有機アニオンを有するのが好ましい。
上述の通り、化合物Wは、2つ以上(好ましくは2~3つ)のカチオン部位、及び、上記カチオン部位と同数のアニオン部位を有する。
つまり、化合物Wは、2つ以上(好ましくは2~3つ)のアニオン部位(好ましくはアニオン性官能基)を有する。
【0136】
上記アニオン性官能基としては、例えば、-SO 及び-SO を一部分として有する基、-COO及び-COOを一部分として有する基、-N-を一部分として有する基、並びに、カルボアニオン(-C<)を一部分として有する基が挙げられる。
中でも、アニオン部位としては、一般式(B-1)~(B-13)で表される基が好ましい。
【0137】
【化20】
【0138】
一般式(B-1)~(B-13)中、*は結合位置を表す。
なお、一般式(B-12)における*は、-CO-及び-SO-のいずれでもない基に対する結合位置であるのも好ましい。
【0139】
一般式(B-1)~(B-5)、及び(B-12)中、RX1は、有機基を表す。
X1としては、アルキル基(直鎖状でも分岐鎖状でもよい。炭素数は1~15が好ましい)、シクロアルキル基(単環でも多環でもよい。炭素数は3~20が好ましい)、又は、アリール基(単環でも多環でもよい。炭素数は6~20が好ましい)が好ましい。
なお、一般式(B-5)においてRX1中の、Nと直接結合する原子は、-CO-における炭素原子、及び、-SO-における硫黄原子のいずれでもないのも好ましい。
【0140】
X1におけるシクロアルキル基は単環でも多環でもよい。
X1におけるシクロアルキル基としては、例えば、ノルボルニル基、及び、アダマンチル基が挙げられる。
X1におけるシクロアルキル基が有してもよい置換基は、アルキル基(直鎖状でも分岐鎖状でもよい。好ましくは炭素数1~5)が好ましい。
X1におけるシクロアルキル基の環員原子である炭素原子のうちの1個以上が、カルボニル炭素原子で置き換わっていてもよい。
X1におけるアルキル基の炭素数は1~10が好ましく、1~5がより好ましい。
X1におけるアルキル基が有してもよい置換基は、シクロアルキル基、フッ素原子、又は、シアノ基が好ましい。
上記置換基としてのシクロアルキル基の例としては、RX1がシクロアルキル基である場合において説明したシクロアルキル基が同様に挙げられる。
X1におけるアルキル基が、上記置換基としてのフッ素原子を有する場合、上記アルキル基は、パーフルオロアルキル基となっていてもよい。
また、RX1におけるアルキル基は、1つ以上の-CH-がカルボニル基で置換されていてもよい。
X1におけるアリール基はベンゼン環基が好ましい。
X1におけるアリール基が有してもよい置換基は、アルキル基、フッ素原子、又は、シアノ基が好ましい。上記置換基としてのアルキル基の例としては、RX1がシクロアルキル基である場合において説明したアルキル基が同様に挙げられ、パーフルオロアルキル基が好ましく、パーフルオロメチル基がより好ましい。
【0141】
一般式(B-7)及び(B-11)中、RX2は、水素原子、又は、フッ素原子及びパーフルオロアルキル基以外の置換基を表す。
X2で表されるフッ素原子及びパーフルオロアルキル基以外の置換基は、パーフルオロアルキル基以外のアルキル基、又は、シクロアルキル基が好ましい。
上記アルキル基の例としては、RX1におけるアルキル基からパーフルオロアルキル基を除いたアルキル基が挙げられる。また、上記アルキル基はフッ素原子を有さないのが好ましい。
上記シクロアルキル基の例としては、RX1におけるシクロアルキル基が挙げられる。また、上記シクロアルキル基はフッ素原子を有さないのが好ましい。
【0142】
一般式(B-8)中、RXF1は、水素原子、フッ素原子、又は、パーフルオロアルキル基を表す。ただし、複数のRXF1のうち、少なくとも1つはフッ素原子又はパーフルオロアルキル基を表す。
XF1で表されるパーフルオロアルキル基の炭素数は1~15が好ましく、1~10がより好ましく、1~6が更に好ましい。
【0143】
一般式(B-10)中、RXF2は、フッ素原子又はパーフルオロアルキル基を表す。
XF2で表されるパーフルオロアルキル基の炭素数は1~15が好ましく、1~10がより好ましく、1~6が更に好ましい。
【0144】
一般式(B-9)中、nは、0~4の整数を表す。
【0145】
化合物Wは、少なくとも2種(好ましくは一般式(B-1)~(B-13)から選択される2種)のアニオン性官能基を有するのが好ましい。この場合、化合物Wが有するアニオン性官能基の組み合わせとしては特に制限されない。
例えば、化合物Wが一般式(B-8)又は(B-10)で表される基を有する場合に、更に、一般式(B-1)~(B-7)、(B-9)、又は(B-11)~(B-13)で表される基を有してもよい。また、化合物Wが一般式(B-7)で表される基である場合に、更に、一般式(B-6)で表される基を有してもよい。これらの化合物Wが、更に異なるアニオン性官能基を有していてもよい。
【0146】
中でも、化合物Wがアニオン部位として、アニオン部位A (アニオン性官能基A )を有するのが好ましい。
アニオン部位A (アニオン性官能基A )は、一般式(BX-1)~(BX-4)のいずれかで表される基である。
【0147】
【化21】
【0148】
一般式(BX-1)~(BX-4)中、*は、結合位置を表す。
一般式(BX-1)~(BX-4)中、Rは、有機基を表す。
における有機基の例としては、一般式(B-1)~(B-5)、及び(B-12)におけるRX1の有機基の例が同様に挙げられる。
【0149】
また、化合物Wは、アニオン部位として、上記アニオン部位A (アニオン性官能基A )に加えて、更に、アニオン部位A (アニオン性官能基A )を有するのが好ましい。
アニオン部位A (アニオン性官能基A )は、一般式(AX-1)~(AX-2)のいずれかで表される基である。
【0150】
【化22】
【0151】
一般式(AX-1)~(AX-2)中、*は、結合位置を表す。
一般式(AX-2)中、Rは、有機基を表す。
は、アルキル基が好ましい。
上記アルキル基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよい。
上記アルキル基の炭素数は1~10が好ましく、1~5がより好ましい。
上記アルキル基が有してもよい置換基は、フッ素原子が好ましい。
置換基としてフッ素原子を有する上記アルキル基は、パーフルオロアルキル基となっていてもよいし、ならなくてもよい。
【0152】
化合物Wは、アニオン部位として、上記アニオン部位A (アニオン性官能基A )、及び、上記アニオン部位A (アニオン性官能基A )に加えて、更なるアニオン部位(好ましくは更なるアニオン性官能基)を有していてもよいし、有していなくてもよい。
【0153】
化合物Wとしては、一般式(AD0)で表される化合物が好ましい。
-(A nk (M nk 一般式(AD0)
【0154】
一般式(AD0)中、nkは、2以上の整数を表す。
nkは、2~10が好ましく、2~3がより好ましい。
一般式(AD0)中に2つ存在するnkは、それぞれ同一の値である。
【0155】
一般式(AD0)中、Lは、nk価の連結基を表す。
ただし、nkが2の場合、Lは、単結合又は2価の連結基を表す。
上記2価の有機基としては、例えば、-COO-、-CONH-、-CO-、-O-、アルキレン基(好ましくは炭素数1~6。直鎖状でも分岐鎖状でもよい)、シクロアルキレン基(好ましくは炭素数3~15)、アルケニレン基(好ましくは炭素数2~6)、及びこれらの複数を組み合わせた2価の連結基等が挙げられる。
上記シクロアルキレン基のシクロアルカン環を構成するメチレン基の1個以上が、カルボニル炭素及び/又はヘテロ原子(酸素原子等)で置き換わっていてもよい。
これらの2価の連結基は、更に、-S-、-SO-、-SO-、及び、-NR-(Rは水素原子又は置換基)からなる群から選択される基を有するのも好ましい。
nk価の連結基としては、例えば、単結合及び/又は上記2価の連結基がとり得る各基と、-CRnk<、-N<、>C<、3価以上の炭化水素環基、及び/又は、3価以上の複素環基とが組み合わせられた基が挙げられる。Rnkは水素原子又は置換基を表す。
が単結合以外の場合、Lを構成する水素原子以外の原子の合計数は1~100が好ましく、1~50がより好ましい。
【0156】
一般式(AD0)中、A は、アニオン性官能基を表す。アニオン性官能基については上述の通りである。複数存在するA は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
複数存在するA は、例えば、「一般式(B-8)又は(B-10)で表される基と、一般式(B-1)~(B-7)、(B-9)、又は(B-11)~(B-13)で表される基」を少なくとも有していてもよく、「一般式(B-7)で表される基と、一般式(B-6)で表される基」を少なくとも有していてもよく、「一般式(BX-1)~(BX-4)のいずれかで表される基と、一般式(AX-1)~(AX-2)のいずれかで表される基」を少なくとも有していてもよい。
【0157】
一般式(AD0)中、M は、カチオン(特定カチオン、又は、特定カチオン以外の有機カチオン)を表す。
nk個のM のうち少なくとも1個(好ましくは全部)は特定カチオンを表す。
複数存在するM は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0158】
また、化合物Wは、化合物(I)、化合物(II)、又は、化合物(III)であるのが好ましい。
以下、化合物(I)~(III)について説明する。
【0159】
・化合物(I)
化合物(I)について説明する。
化合物(I)は下記化合物である。
化合物(I):下記構造部位Xと下記構造部位Yとを各々1つずつ有する化合物であって、活性光線又は放射線の照射によって、下記構造部位Xに由来する下記第1の酸性部位と下記構造部位Yに由来する下記第2の酸性部位とを含む酸を発生する化合物
【0160】
構造部位X:アニオン部位A とカチオン部位M とからなり、かつ、活性光線又は放射線の照射によってHAで表される第1の酸性部位を形成する構造部位
構造部位Y:アニオン部位A とカチオン部位M とからなり、かつ、活性光線又は放射線の照射によって、上記構造部位Xにて形成される上記第1の酸性部位とは異なる構造のHAで表される第2の酸性部位を形成する構造部位
ただし、カチオン部位M およびカチオン部位M の少なくとも1つは特定カチオンである。
【0161】
また、化合物(I)は、下記条件Iを満たす。
条件I:上記化合物(I)において上記構造部位X中の上記カチオン部位M 及び上記構造部位Y中の上記カチオン部位M をHに置き換えてなる化合物PIが、上記構造部位X中の上記カチオン部位M をHに置き換えてなるHAで表される酸性部位に由来する酸解離定数a1と、上記構造部位Y中の上記カチオン部位M をHに置き換えてなるHAで表される酸性部位に由来する酸解離定数a2を有し、かつ、上記酸解離定数a1よりも上記酸解離定数a2の方が大きい。
なお、酸解離定数a1及び酸解離定数a2は、上述した方法により求められる。化合物PIの酸解離定数a1及び酸解離定数a2とは、より具体的に説明すると、化合物PIの酸解離定数を求めた場合において、化合物PI(化合物PIは、「HAとHAを有する化合物」に該当する。)が「A とHAを有する化合物」となる際のpKaが酸解離定数a1であり、上記「A とHAを有する化合物」が「A とA を有する化合物」となる際のpKaが酸解離定数a2である。
また、上記化合物PIとは、化合物(I)に活性光線又は放射線を照射することにより発生する酸に該当する。
【0162】
本発明の効果がより優れる点で、上記化合物PIにおいて、酸解離定数a1と上記酸解離定数a2との差は、0.10~20.00が好ましく、0.50~17.00がより好ましい。
【0163】
また、本発明の効果がより優れる点で、上記化合物PIにおいて、酸解離定数a2は、-4.00~15.00が好ましく、-2.00~12.00がより好ましい。
【0164】
また、本発明の効果がより優れる点で、上記化合物PIにおいて、酸解離定数a1は、-12.00~1.00が好ましく、-7.00~0.50がより好ましい。
【0165】
・一般式(Ia)
化合物(I)としては特に制限されないが、例えば、下記一般式(Ia)で表される化合物が挙げられる。
11 11 -L-A12 12 (Ia)
【0166】
一般式(Ia)中、「M11 11 」及び「A12 12 」は、各々、構造部位X及び構造部位Yに該当する。化合物(Ia)は、活性光線又は放射線の照射によって、HA11-L-A21Hで表される酸を発生する。つまり、「M11 11 」は、HA11で表される第1の酸性部位を形成し、「A12 12 」は、上記第1の酸性部位とは異なる構造のHA12で表される第2の酸性部位を形成する。
ただし、上記一般式(Ia)において、M11 及びM12 で表される特定カチオンをHに置き換えてなる化合物PIa(HA11-L-A12H)において、A12Hで表される酸性部位に由来する酸解離定数a2は、HA11で表される酸性部位に由来する酸解離定数a1よりも大きい。なお、酸解離定数a1と酸解離定数a2の好適値については、上述した通りである。
【0167】
一般式(Ia)中、M11 及びM12 は、それぞれ独立に、カチオン(特定カチオン、又は、特定カチオン以外の有機カチオン)を表す。
11 及びM12 の少なくとも一方(好ましくは両方)が、特定カチオンである。
特定カチオンについては上述の通りである。
特定カチオン以外の有機カチオンについては上述の通りである。
【0168】
一般式(Ia)中、A11 及びA12 は、それぞれ独立に、アニオン性官能基を表す。ただし、A12 は、A11 で表されるアニオン性官能基とは異なる構造を表す。
アニオン性官能基については上述の通りである。
11 及びA12 のアニオン性官能基は、それぞれ独立に、一般式(B-1)~(B-13)で表される基が好ましい。
11 及びA12 で表されるアニオン性官能基の組み合わせとしては特に制限されないが、例えば、A11 が一般式(B-8)又は(B-10)で表される基である場合、A12 で表されるアニオン性官能基としては、一般式(B-1)~(B-7)、(B-9)、又は(B-11)~(B-13)で表される基が挙げられ、A11 が一般式(B-7)で表される基である場合、A12 で表されるアニオン性官能基としては、一般式(B-6)で表される基が挙げられる。
【0169】
一般式(Ia)中、Lは、2価の連結基を表す。
一般式(I)中、Lで表される2価の連結基としては特に制限されず、-CO-、-NR-、-CO-、-O-、アルキレン基(好ましくは炭素数1~6。直鎖状でも分岐鎖状でもよい)、シクロアルキレン基(好ましくは炭素数3~15)、アルケニレン基(好ましくは炭素数2~6)、2価の脂肪族複素環基(少なくとも1つのN原子、O原子、S原子、又はSe原子を環構造内に有する5~10員環が好ましく、5~7員環がより好ましく、5~6員環が更に好ましい。)、及びこれらの複数を組み合わせた2価の連結基等が挙げられる。上記Rは、水素原子又は1価の置換基が挙げられる。1価の置換基としては特に制限されないが、例えば、アルキル基(好ましくは炭素数1~6)が好ましい。
これらの2価の連結基は、更に、-S-、-SO-、及び-SO-からなる群から選択される基を含んでいてもよい。
また、上記アルキレン基、上記シクロアルキレン基、上記アルケニレン基、及び上記2価の脂肪族複素環基は、置換基で置換されていてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子(好ましくはフッ素原子)が挙げられる。
【0170】
・一般式(Ib)
中でも、化合物(I)としては一般式(Ib)で表される化合物が好ましい。
-L-B (Ib)
【0171】
一般式(Ib)中、M 及びM は、それぞれ独立に、カチオン(特定カチオン、又は、特定カチオン以外の有機カチオン)を表す。
及びM のうち少なくとも一方(好ましくは両方)は特定カチオンを表す。
特定カチオンについては上述の通りである。
特定カチオン以外の有機カチオンについても上述の通りである。
【0172】
一般式(Ib)中、Lは、2価の有機基を表す。
上記2価の有機基としては、-COO-、-CONH-、-CO-、-O-、アルキレン基(好ましくは炭素数1~6。直鎖状でも分岐鎖状でもよい)、シクロアルキレン基(好ましくは炭素数3~15)、アルケニレン基(好ましくは炭素数2~6)、及びこれらの複数を組み合わせた2価の連結基等が挙げられる。
上記シクロアルキレン基のシクロアルカン環を構成するメチレン基の1個以上が、カルボニル炭素及び/又はヘテロ原子(酸素原子等)で置き換わっていてもよい。
これらの2価の連結基は、更に、-S-、-SO-、及び-SO-からなる群から選択される基を有するのも好ましい。
【0173】
中でも、Lは、下記一般式(L)で表される基であるのが好ましい。
*A-LA-LB-LC-LD-LE-*B (L)
【0174】
一般式(L)中、*Aは、一般式(Ib)におけるAとの結合位置を表す。
一般式(L)中、*Bは、一般式(Ib)におけるBとの結合位置を表す。
【0175】
一般式(L)中、LAは、-(C(RLA1)(RLA2))XA-を表す。
上記XAは、1以上の整数を表し、1~10が好ましく、1~3がより好ましい。
LA1及びRLA2は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。
LA1及びRLA2の置換基としては、それぞれ独立に、フッ素原子又はフルオロアルキル基が好ましく、フッ素原子又はパーフルオロアルキル基がより好ましく、フッ素原子又はパーフルオロメチル基が更に好ましい。
XAが2以上の場合、XA個存在するRLA1は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
XAが2以上の場合、XA個存在するRLA2は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
-(C(RLA1)(RLA2))-は、-CH-、-CHF-、-CH(CF)-、又は-CF-が好ましい。
中でも、一般式(Ib)中のAと直接結合する-(C(RLA1)(RLA2))-は、-CH-、-CHF-、-CH(CF)-、又は-CF-が好ましい。
一般式(Ib)中のAと直接結合する-(C(RLA1)(RLA2))-以外の-(C(RLA1)(RLA2))-は、それぞれ独立に、-CH-、-CHF-、又は-CF-が好ましい。
【0176】
一般式(L)中、LBは、単結合、エステル基(-COO-)、又はスルホニル基(-SO-)を表す。
【0177】
一般式(L)中、LCは、単結合、アルキレン基、シクロアルキレン基、又はこれらを組み合わせてなる基(「-アルキレン基-シクロアルキレン基-」等)を表す。
上記アルキレン基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよい。
上記アルキレン基の炭素数は、1~5が好ましく、1~2がより好ましく、1が更に好ましい。
上記シクロアルキレン基の炭素数は、3~15が好ましく、5~10がより好ましい。
上記シクロアルキレン基は単環でも多環でもよい。
上記シクロアルキレン基としては、例えば、ノルボルナンジイル基、及びアダマンタンジイル基が挙げられる。
上記シクロアルキレン基が有してもよい置換基としては、アルキル基(直鎖状でも分岐鎖状でもよい。好ましくは炭素数1~5)が好ましい。
上記シクロアルキレン基のシクロアルカン環を構成するメチレン基の1個以上が、カルボニル炭素及び/又はヘテロ原子(酸素原子等)で置き換わっていてもよい。
LCが、「-アルキレン基-シクロアルキレン基-」の場合、アルキレン基部分は、LB側に存在するのが好ましい。
LBが単結合の場合、LCは、単結合又はシクロアルキレン基が好ましい。
【0178】
一般式(L)中、LDは、単結合、エーテル基(-O-)、カルボニル基(-CO-)、又はエステル基(-COO-)を表す。
【0179】
一般式(L)中、LEは、単結合又は-(C(RLE1)(RLE2))XE-を表す。
上記-(C(RLE1)(RLE2))XE-におけるXEは、1以上の整数を表し、1~10が好ましく、1~3がより好ましい。
LE1及びRLE2は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。
XEが2以上の場合、XE個存在するRLE1は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
XEが2以上の場合、XE個存在するRLE2は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
中でも、-(C(RLE1)(RLE2))-は、-CH-又は-CF-が好ましい。
一般式(L)中、LB、LC、及びLDが単結合の場合、LEも単結合であるのが好ましい。
【0180】
一般式(Ib)中、A及びBは、それぞれ独立に、アニオン性官能基を表す。
アニオン性官能基については上述の通りである。
中でも、Aは、一般式(AX-1)~(AX-2)のいずれかで表される基であるのが好ましい。
は、一般式(BX-1)~(BX-4)のいずれかで表される基を表すのが好ましい。
及びBは、それぞれ異なる構造であるのが好ましい。
中でも、Aが、一般式(AX-1)で表される基であり、かつ、Bが、一般式(BX-1)~(BX-4)のいずれかで表される基であるか、又は、Aが、一般式(AX-2)で表される基であり、かつ、Bが、一般式(BX-1)、一般式(BX-3)、及び一般式(BX-4)のいずれかで表される基であるのが好ましい。
【0181】
ただし、一般式(Ib)で表される化合物のM 及びM がそれぞれ水素原子で置換されたHA-L-BHで表される化合物において、HAで表される基のpKaは、BHで表される基のpKaよりも低い。
より具体的には、HA-L-BHで表される化合物について酸解離定数を求めた場合において、「HA-L-BH」が「A-L-BH」となる際のpKaを「HAで表される基のpKa」とし、更に、「A-L-BH」が「A-L-B」となる際のpKaを「BHで表される基のpKa」とする。
「HAで表される基のpKa」及び「BHで表される基のpKa」は、それぞれ、「ソフトウェアパッケージ1」又は「Gaussian16」を用いて求める。
例えば、HAで表される基のpKaは、上述の酸解離定数a1に相当し、好ましい範囲も同様である。
BHで表される基のpKaは、上述の酸解離定数a2に相当し、好ましい範囲も同様である。
HBで表される基のpKaとHAで表される基のpKaとの差(「HBで表される基のpKa」-「HAで表される基のpKa」)は、上述の酸解離定数a1と上記酸解離定数a2との差に相当し、好ましい範囲も同様である。
【0182】
・化合物(II)
次に、化合物(II)について説明する。
化合物(II)は下記化合物である。
化合物(II):上記構造部位Xを2つ以上と上記構造部位Yとを有する化合物であって、活性光線又は放射線の照射によって、上記構造部位Xに由来する上記第1の酸性部位を2つ以上と上記構造部位Yに由来する上記第2の酸性部位とを含む酸を発生する化合物
ただし、カチオン部位M およびカチオン部位M の少なくとも1つは特定カチオンである。
【0183】
また、化合物(II)は、下記条件IIを満たす。
条件II:上記化合物(II)において上記構造部位X中の上記カチオン部位M 及び上記構造部位Y中のカチオン部位M をHに置き換えてなる化合物PIIが、上記構造部位X中の上記カチオン部位M をHに置き換えてなるHAで表される酸性部位に由来する酸解離定数a1と、上記構造部位Y中の上記カチオン部位M をHに置き換えてなるHAで表される酸性部位に由来する酸解離定数a2を有し、かつ、上記酸解離定数a1よりも上記酸解離定数a2の方が大きい。
酸解離定数a1及び酸解離定数a2は、上述した方法により求められる。
ここで、化合物PIIの酸解離定数a1及び酸解離定数a2について、より具体的に説明する。化合物(II)が、例えば、上記構造部位Xに由来する上記第1の酸性部位を2つと、上記構造部位Yに由来する上記第2の酸性部位を1つ有する酸を発生する化合物である場合、化合物PIIは「2つのHAとHAを有する化合物」に該当する。この化合物PIIの酸解離定数を求めた場合、化合物PIIが「1つのA と1つのHAとHAとを有する化合物」となる際のpKaが酸解離定数a1であり、「2つのA とHAとを有する化合物」が「2つのA とA を有する化合物」となる際のpKaが酸解離定数a2である。つまり、化合物PIIが、上記構造部位X中の上記カチオン部位M をHに置き換えてなるHAで表される酸性部位に由来する酸解離定数を複数有する場合、その最も小さい値を酸解離定数a1とみなす。
【0184】
また、上記化合物PIIとは、化合物(II)に活性光線又は放射線を照射することにより発生する酸に該当する。
なお、化合物(II)は、上記構造部位Yを複数有していてもよい。
【0185】
本発明の効果がより優れる点で、上記化合物PIIにおいて、酸解離定数a1と上記酸解離定数a2との差は、2.00以上が好ましく、3.00以上がより好ましい。なお、酸解離定数a1と上記酸解離定数a2との差の上限値は特に制限されないが、例えば、15.00以下である。
【0186】
また、本発明の効果がより優れる点で、上記化合物PIIにおいて、酸解離定数a2は、2.00以下が好ましく、1.00以下がより好ましい。なお、酸解離定数a2の下限値としては、-2.00以上が好ましい。
【0187】
また、本発明の効果がより優れる点で、上記化合物PIIにおいて、酸解離定数a1は、2.00以下が好ましく、0.50以下がより好ましく、-0.10以下が更に好ましい。なお、酸解離定数a1の下限値としては、-15.00以上が好ましい。
【0188】
化合物(II)としては特に制限されず、例えば、下記一般式(IIa)で表される化合物が挙げられる。
【0189】
【化23】
【0190】
一般式(IIa)中、「M21 21 」及び「A22 22 」は、各々、構造部位X及び構造部位Yに該当する。化合物(IIa)は、活性光線又は放射線の照射によって、下記一般式(IIa-1)で表される酸を発生する。つまり、「M21 21 」は、HA21で表される第1の酸性部位を形成し、「A22 22 」は、上記第1の酸性部位とは異なる構造のHA22で表される第2の酸性部位を形成する。
【0191】
【化24】
【0192】
一般式(IIa)中、M21 及びM22 は、それぞれ独立に、カチオン(特定カチオン、又は、特定カチオン以外の有機カチオン)を表す。
21 及びM22 の少なくとも一方(好ましくは両方)は特定カチオンを表す。
21 及びA22 は、それぞれ独立に、アニオン性官能基を表す。ただし、A22 は、A21 で表されるアニオン性官能基とは異なる構造を表す。
は、(n1+n2)価の有機基を表す。
n1は、2以上の整数を表す。
n2は、1以上の整数を表す。
ただし、上記一般式(IIa)において、M21 及びM22 で表されるカチオンをHに置き換えてなる化合物PIIa(上記一般式(IIa-1)で表される化合物に該当する。)において、A22Hで表される酸性部位に由来する酸解離定数a2は、HA21で表される酸性部位に由来する酸解離定数a1よりも大きい。なお、酸解離定数a1と酸解離定数a2の好適値については、上述した通りである。
【0193】
上記一般式(IIa)中、M21 、M22 、A21 、及び、A22 は、各々上述した一般式(Ia)中のM11 、M12 、A11 、及、びA12 と同義であり、好適態様も同じである。
上記一般式(IIa)中、n1個のM21 同士、n1個のA21 同士は、各々互いに同一の基を表す。
【0194】
上記一般式(IIa)中、Lで表される(n1+n2)価の有機基としては特に制限され、例えば、下記(A1)及び下記(A2)で表される基等が挙げられる。なお、下記(A1)及び(A2)中、*のうち少なくとも2個はA21 との結合位置を表し、*のうち少なくとも1個はA22 との結合位置を表す。
【0195】
【化25】
【0196】
上記(A1)及び(A2)中、Tは、3価の炭化水素環基、又は3価の複素環基を表し、Tは、炭素原子、4価の炭化水素環基、又は4価の複素環基を表す。
【0197】
上記炭化水素環基は、芳香族炭化水素環基であっても、脂肪族炭化水素環基であってもよい。上記炭化水素環基に含まれる炭素数は、6~18が好ましく、6~14がより好ましい。
上記複素環基は、芳香族複素環基であっても、脂肪族複素環基であってもよい。上記複素環は、少なくとも1つのN原子、O原子、S原子、又はSe原子を環構造内に有する5~10員環であることが好ましく、5~7員環がより好ましく、5~6員環が更に好ましい。
【0198】
また、上記(A1)及び(A2)中、L21及びL22は、それぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表す。
21及びL22で表される2価の連結基としては、上記一般式(Ia)中のLで表される2価の連結基と同義であり、好適態様も同じである。
n1は、2以上の整数を表す。上限は特に制限されないが、例えば、6以下であり、4以下が好ましく、3以下がより好ましい。
n2は、1以上の整数を表す。上限は特に制限されないが、例えば、3以下であり、2以下が好ましい。
【0199】
・化合物(III)
次に、化合物(III)について説明する。
化合物(III):上記構造部位Xを2つ以上と、下記構造部位Zとを有する化合物であって、活性光線又は放射線の照射によって、上記構造部位Xに由来する上記第1の酸性部位を2つ以上と上記構造部位Zとを含む酸を発生する化合物
構造部位Z:酸を中和可能な非イオン性の有機部位
ただし、カチオン部位M の少なくとも1つは特定カチオンである。
【0200】
構造部位Z中の酸を中和可能な非イオン性の有機部位としては特に制限されず、例えば、プロトンと静電的に相互作用し得る基又は電子を有する官能基を含む有機部位であることが好ましい。
プロトンと静電的に相互作用し得る基又は電子を有する官能基としては、環状ポリエーテル等のマクロサイクリック構造を有する官能基、又はπ共役に寄与しない非共有電子対をもった窒素原子を有する官能基等が挙げられる。π共役に寄与しない非共有電子対を有する窒素原子とは、例えば、下記式に示す部分構造を有する窒素原子である。
【0201】
【化26】
【0202】
プロトンと静電的に相互作用し得る基又は電子を有する官能基の部分構造としては、例えば、クラウンエーテル構造、アザクラウンエーテル構造、1~3級アミン構造、ピリジン構造、イミダゾール構造、及びピラジン構造等が挙げられ、なかでも、1~3級アミン構造が好ましい。
【0203】
上記化合物(III)において上記構造部位X中の上記カチオン部位M をHに置き換えてなる化合物PIIIにおいて、上記構造部位X中の上記カチオン部位M をHに置き換えてなるHAで表される酸性部位に由来する酸解離定数a1は、本発明の効果がより優れる点で、2.0以下が好ましく、0.5以下がより好ましく、-0.1以下が更に好ましい。なお、酸解離定数a1の下限値としては、-15.0以上が好ましい。
なお、化合物PIIIが、上記構造部位X中の上記カチオン部位M をHに置き換えてなるHAで表される酸性部位に由来する酸解離定数を複数有する場合、その最も小さい値を酸解離定数a1とみなす。
つまり、化合物(III)が、例えば、上記構造部位Xに由来する上記第1の酸性部位を2つと上記構造部位Zとを有する酸を発生する化合物である場合、化合物PIIIは「2つのHAを有する化合物」に該当する。この化合物PIIIの酸解離定数を求めた場合、化合物PIIIが「1つのA と1つのHAとを有する化合物」となる際のpKaが酸解離定数a1である。つまり、化合物PIIIが、上記構造部位X中の上記カチオン部位M をHに置き換えてなるHAで表される酸性部位に由来する酸解離定数を複数有する場合、その最も小さい値を酸解離定数a1とみなす。
なお、上記化合物(III)において上記構造部位X中の上記カチオン部位M をHに置き換えてなる化合物PIIIとは、例えば、化合物(III)が後述する化合物(IIIa)で表される化合物である場合、HA31-L-N(R2X)-L-A31Hが該当する。
【0204】
化合物(III)としては特に制限されないが、例えば、下記一般式(IIIa)で表される化合物が挙げられる。
【0205】
【化27】
【0206】
一般式(IIIa)中、「M31 31 」は、構造部位Xに該当する。化合物(IIIa)は、活性光線又は放射線の照射によって、HA31-L-N(R2X)-L-A31Hで表される酸を発生する。つまり、「M31 31 」は、HA31で表される第1の酸性部位を形成する。
【0207】
一般式(IIIa)中、M31 は、カチオン(特定カチオン、又は、特定カチオン以外の有機カチオン)を表す。
31 の少なくとも一方(好ましくは両方)は特定カチオンを表す。
31 は、アニオン性官能基を表す。
及びLは、それぞれ独立に、2価の連結基を表す。
2Xは、1価の有機基を表す。
【0208】
上記一般式(IIIa)中、M31 、及びA31 は、各々上述した一般式(Ia)中のM11 、及びA11 と同義であり、好適態様も同じである。
上記一般式(IIIa)中、L及びLは、各々上述した一般式(Ia)中のLと同義であり、好適態様も同じである。
上記一般式(IIIa)中、2個のM31 同士、及び2個のA31 同士は、各々互いに同一の基を表す。
【0209】
一般式(IIIa)中、R2Xで表される1価の有機基としては特に制限されず、例えば、-CH-が、-CO-、-NH-、-O-、-S-、-SO-、及び-SO-よりなる群より選ばれる1種又は2種以上の組み合わせで置換されていてもよい、アルキル基(好ましくは炭素数1~10。直鎖状でも分岐鎖状でもよい)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3~15)、又はアルケニル基(好ましくは炭素数2~6)等が挙げられる。
また、上記アルキレン基、上記シクロアルキレン基、及び上記アルケニレン基は、置換基で置換されていてもよい。
【0210】
<酸の作用により分解して極性が増大する樹脂(樹脂(A))>
【0211】
本発明の組成物は、酸の作用により分解して極性が増大する樹脂(以下、「酸分解性樹脂」又は「樹脂(A)」ともいう。)を含む。
つまり、本発明のパターン形成方法において、典型的には、現像液としてアルカリ現像液を採用した場合には、ポジ型パターンが好適に形成され、現像液として有機系現像液を採用した場合には、ネガ型パターンが好適に形成される。
樹脂(A)は、通常、酸の作用により分解し極性が増大する基(以下、「酸分解性基」ともいう。)を含み、酸分解性基を有する繰り返し単位を含むことが好ましい。
【0212】
(酸分解性基を有する繰り返し単位)
酸分解性基とは、酸の作用により分解して極性基を生じる基をいう。酸分解性基は、酸の作用により脱離する脱離基で極性基が保護された構造を有することが好ましい。つまり、樹脂(A)は、酸の作用により分解し、極性基を生じる基を有する繰り返し単位を有する。この繰り返し単位を有する樹脂は、酸の作用により極性が増大してアルカリ現像液に対する溶解度が増大し、有機溶剤に対する溶解度が減少する。
【0213】
極性基としては、アルカリ可溶性基が好ましく、例えば、カルボキシル基、フェノール性水酸基、フッ素化アルコール基、スルホン酸基、リン酸基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)メチレン基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルカルボニル)メチレン基、ビス(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルスルホニル)メチレン基、ビス(アルキルスルホニル)イミド基、トリス(アルキルカルボニル)メチレン基、及び、トリス(アルキルスルホニル)メチレン基等の酸性基、並びに、アルコール性水酸基等が挙げられる。
なかでも、極性基としては、カルボキシル基、フェノール性水酸基、フッ素化アルコール基(好ましくはヘキサフルオロイソプロパノール基)、又は、スルホン酸基が好ましい。
【0214】
酸の作用により脱離する脱離基としては、例えば、一般式(Y1)~(Y4)で表される基が挙げられる。
一般式(Y1):-C(Rx)(Rx)(Rx
一般式(Y2):-C(=O)OC(Rx)(Rx)(Rx
一般式(Y3):-C(R36)(R37)(OR38
一般式(Y4):-C(Rn)(H)(Ar)
【0215】
一般式(Y1)及び(Y2)中、Rx~Rxは、それぞれ独立に、アルキル基(直鎖状若しくは分岐鎖状)又はシクロアルキル基(単環若しくは多環)、アルケニル基(直鎖状若しくは分岐鎖状)、又は、アリール基(単環若しくは多環)を表す。なお、Rx~Rxの全てがアルキル基(直鎖状若しくは分岐鎖状)である場合、Rx~Rxのうち少なくとも2つはメチル基であることが好ましい。
なかでも、Rx~Rxは、それぞれ独立に、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を表すことが好ましく、Rx~Rxは、それぞれ独立に、直鎖状のアルキル基を表すことがより好ましい。
Rx~Rxの2つが結合して、単環又は多環を形成してもよい。
Rx~Rxのアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、及び、t-ブチル基等の炭素数1~5のアルキル基が好ましい。
Rx~Rxのシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、及び、シクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基、並びにノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及び、アダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が好ましい。
Rx~Rxのアリール基としては、炭素数6~10のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基、及び、アントリル基等が挙げられる。
Rx~Rxのアルケニル基としては、ビニル基が好ましい。
Rx~Rxの2つが結合して形成される環としては、シクロアルキル基が好ましい。Rx~Rxの2つが結合して形成されるシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、若しくは、シクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基、又は、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、若しくは、アダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が好ましく、炭素数5~6の単環のシクロアルキル基がより好ましい。
Rx~Rxの2つが結合して形成されるシクロアルキル基は、例えば、環を構成するメチレン基の1つが、酸素原子等のヘテロ原子、カルボニル基等のヘテロ原子を有する基、又は、ビニリデン基で置き換わっていてもよい。また、これらのシクロアルキル基は、シクロアルカン環を構成するエチレン基の1つ以上が、ビニレン基で置き換わっていてもよい。
一般式(Y1)又は(Y2)で表される基は、例えば、Rxがメチル基又はエチル基であり、RxとRxとが結合して上述のシクロアルキル基を形成している態様が好ましい。
【0216】
一般式(Y3)中、R36~R38は、それぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表す。R37とR38とは、互いに結合して環を形成してもよい。1価の有機基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、及び、アルケニル基等が挙げられる。R36は水素原子であることも好ましい。
なお、上記アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及び、アラルキル基には、酸素原子等のヘテロ原子及び/又はカルボニル基等のヘテロ原子を有する基が含まれていてもよい。例えば、上記アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及び、アラルキル基は、例えば、メチレン基の1つ以上が、酸素原子等のヘテロ原子及び/又はカルボニル基等のヘテロ原子を有する基で置き換わっていてもよい。
また、R38は、繰り返し単位の主鎖が有する別の置換基と互いに結合して、環を形成してもよい。R38と繰り返し単位の主鎖が有する別の置換基とが互いに結合して形成する基は、メチレン基等のアルキレン基が好ましい。
【0217】
一般式(Y3)としては、下記式(Y3-1)で表される基が好ましい。
【0218】
【化28】
【0219】
ここで、L及びLは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又は、これらを組み合わせた基(例えば、アルキル基とアリール基とを組み合わせた基)を表す。
Mは、単結合又は2価の連結基を表す。
Qは、ヘテロ原子を含んでいてもよいアルキル基、ヘテロ原子を含んでいてもよいシクロアルキル基、ヘテロ原子を含んでいてもよいアリール基、アミノ基、アンモニウム基、メルカプト基、シアノ基、アルデヒド基、又は、これらを組み合わせた基(例えば、アルキル基とシクロアルキル基とを組み合わせた基)を表す。
アルキル基及びシクロアルキル基は、例えば、メチレン基の1つが、酸素原子等のヘテロ原子、又は、カルボニル基等のヘテロ原子を有する基で置き換わっていてもよい。
なお、L及びLのうち一方は水素原子であり、他方はアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又は、アルキレン基とアリール基とを組み合わせた基であることが好ましい。
Q、M、及び、Lの少なくとも2つが結合して環(好ましくは、5員若しくは6員環)を形成してもよい。
パターンの微細化の点では、Lが2級又は3級アルキル基であることが好ましく、3級アルキル基であることがより好ましい。2級アルキル基としては、イソプロピル基、シクロヘキシル基又はノルボルニル基が挙げられ、3級アルキル基としては、tert-ブチル基又はアダマンタン基が挙げられる。これらの態様では、Tg(ガラス転移温度)及び活性化エネルギーが高くなるため、膜強度の担保に加え、かぶりの抑制ができる。
【0220】
一般式(Y4)中、Arは、芳香環基を表す。Rnは、アルキル基、シクロアルキル基、又は、アリール基を表す。RnとArとは互いに結合して非芳香族環を形成してもよい。Arはより好ましくはアリール基である。
【0221】
繰り返し単位の酸分解性が優れる点から、極性基を保護する脱離基において、極性基(又はその残基)に非芳香族環が直接結合している場合、上記非芳香族環中の、上記極性基(又はその残基)と直接結合している環員原子に隣接する環員原子は、置換基としてフッ素原子等のハロゲン原子を有さないのも好ましい。
【0222】
酸の作用により脱離する脱離基は、他にも、3-メチル-2-シクロペンテニル基のような置換基(アルキル基等)を有する2-シクロペンテニル基、及び、1,1,4,4-テトラメチルシクロヘキシル基のような置換基(アルキル基等)を有するシクロヘキシル基でもよい。
【0223】
酸分解性基を有する繰り返し単位としては、一般式(A)で表される繰り返し単位も好ましい。
【0224】
【化29】
【0225】
は、フッ素原子又はヨウ素原子を有していてもよい2価の連結基を表し、Rは水素原子、フッ素原子、ヨウ素原子、フッ素原子若しくはヨウ素原子を有していてもよいアルキル基、又は、フッ素原子若しくはヨウ素原子を有していてもよいアリール基を表し、Rは酸の作用によって脱離し、フッ素原子又はヨウ素原子を有していてもよい脱離基を表す。ただし、L、R、及び、Rのうち少なくとも1つは、フッ素原子又はヨウ素原子を有する。
は、フッ素原子又はヨウ素原子を有していてもよい2価の連結基を表す。フッ素原子又はヨウ素原子を有していてもよい2価の連結基としては、-CO-、-O-、-S―、-SO-、―SO-、フッ素原子又はヨウ素原子を有していてもよい炭化水素基(例えば、アルキレン基、シクロアルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基等)、及び、これらの複数が連結した連結基等が挙げられる。なかでも、Lとしては、-CO-、又は、-アリーレン基-フッ素原子若しくはヨウ素原子を有するアルキレン基-が好ましい。
アリーレン基としては、フェニレン基が好ましい。
アルキレン基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。アルキレン基の炭素数は特に制限されないが、1~10が好ましく、1~3がより好ましい。
フッ素原子又はヨウ素原子を有するアルキレン基に含まれるフッ素原子及びヨウ素原子の合計数は特に制限されないが、2以上が好ましく、2~10がより好ましく、3~6が更に好ましい。
【0226】
は、水素原子、フッ素原子、ヨウ素原子、フッ素原子若しくはヨウ素原子が有していてもよいアルキル基、又は、フッ素原子若しくはヨウ素原子を有していてもよいアリール基を表す。
アルキル基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。アルキル基の炭素数は特に制限されないが、1~10が好ましく、1~3がより好ましい。
フッ素原子又はヨウ素原子を有するアルキル基に含まれるフッ素原子及びヨウ素原子の合計数は特に制限されないが、1以上が好ましく、1~5がより好ましく、1~3が更に好ましい。
上記アルキル基は、ハロゲン原子以外の酸素原子等のヘテロ原子を含んでいてもよい。
【0227】
は、酸の作用によって脱離し、フッ素原子又はヨウ素原子を有していてもよい脱離基を表す。
なかでも、脱離基としては、一般式(Z1)~(Z4)で表される基が挙げられる。
一般式(Z1):-C(Rx11)(Rx12)(Rx13
一般式(Z2):-C(=O)OC(Rx11)(Rx12)(Rx13
一般式(Z3):-C(R136)(R137)(OR138
一般式(Z4):-C(Rn)(H)(Ar
【0228】
一般式(Z1)及び(Z2)中、Rx11~Rx13は、それぞれ独立に、フッ素原子若しくはヨウ素原子を有していてもよいアルキル基(直鎖状若しくは分岐鎖状)、フッ素原子若しくはヨウ素原子を有していてもよいシクロアルキル基(単環若しくは多環)、フッ素原子若しくはヨウ素原子を有していてもよいアルケニル基(直鎖状若しくは分岐鎖状)、又は、フッ素原子若しくはヨウ素原子を有していてもよいアリール基(単環若しくは多環)を表す。なお、Rx11~Rx13の全てがアルキル基(直鎖状若しくは分岐鎖状)である場合、Rx11~Rx13のうち少なくとも2つはメチル基であることが好ましい。
Rx11~Rx13は、フッ素原子又はヨウ素原子を有していてもよい点以外は、上述した(Y1)、(Y2)中のRx~Rxと同じであり、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、及び、アリール基の定義及び好適範囲と同じである。
【0229】
一般式(Z3)中、R136~R138は、それぞれ独立に、水素原子、又は、フッ素原子若しくはヨウ素原子を有していてもよい1価の有機基を表す。R137とR138とは、互いに結合して環を形成してもよい。フッ素原子又はヨウ素原子を有していてもよい1価の有機基としては、フッ素原子又はヨウ素原子を有していてもよいアルキル基、フッ素原子又はヨウ素原子を有していてもよいシクロアルキル基、フッ素原子又はヨウ素原子を有していてもよいアリール基、フッ素原子又はヨウ素原子を有していてもよいアラルキル基、及び、これらを組み合わせた基(例えば、アルキル基とシクロアルキル基とを組み合わせた基)が挙げられる。
なお、上記アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及び、アラルキル基には、フッ素原子及びヨウ素原子以外に、酸素原子等のヘテロ原子が含まれていてもよい。つまり、上記アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及び、アラルキル基は、例えば、メチレン基の1つが、酸素原子等のヘテロ原子、又は、カルボニル基等のヘテロ原子を有する基で置き換わっていてもよい。
また、R138は、繰り返し単位の主鎖が有する別の置換基と互いに結合して、環を形成してもよい。この場合、R138と繰り返し単位の主鎖が有する別の置換基とが互いに結合して形成する基は、メチレン基等のアルキレン基が好ましい。
【0230】
一般式(Z3)としては、下記式(Z3-1)で表される基が好ましい。
【0231】
【化30】
【0232】
ここで、L11及びL12は、それぞれ独立に、水素原子;フッ素原子、ヨウ素原子及び酸素原子からなる群から選択されるヘテロ原子を有していてもよいアルキル基;フッ素原子、ヨウ素原子及び酸素原子からなる群から選択されるヘテロ原子を有していてもよいシクロアルキル基;フッ素原子、ヨウ素原子及び酸素原子からなる群から選択されるヘテロ原子を有していてもよいアリール基;又はこれらを組み合わせた基(例えば、フッ素原子、ヨウ素原子及び酸素原子からなる群から選択されるヘテロ原子を有していてもよい、アルキル基とシクロアルキル基とを組み合わせた基)を表す。
は、単結合又は2価の連結基を表す。
は、フッ素原子、ヨウ素原子及び酸素原子からなる群から選択されるヘテロ原子を有していてもよいアルキル基;フッ素原子、ヨウ素原子及び酸素原子からなる群から選択されるヘテロ原子を有していてもよいシクロアルキル基;フッ素原子、ヨウ素原子及び酸素原子からなる群から選択されるアリール基;アミノ基;アンモニウム基;メルカプト基;シアノ基;アルデヒド基;又はこれらを組み合わせた基(例えば、フッ素原子、ヨウ素原子及び酸素原子からなる群から選択されるヘテロ原子を有していてもよい、アルキル基とシクロアルキル基とを組み合わせた基)を表す。
【0233】
一般式(Z4)中、Arは、フッ素原子又はヨウ素原子を有していてもよい芳香環基を表す。Rnは、フッ素原子若しくはヨウ素原子を有していてもよいアルキル基、フッ素原子若しくはヨウ素原子を有していてもよいシクロアルキル基、又は、フッ素原子若しくはヨウ素原子を有していてもよいアリール基を表す。RnとArとは互いに結合して非芳香族環を形成してもよい。
【0234】
酸分解性基を有する繰り返し単位としては、一般式(AI)で表される繰り返し単位も好ましい。
【0235】
【化31】
【0236】
一般式(AI)において、
Xaは、水素原子、又は、置換基を有していてもよいアルキル基を表す。
Tは、単結合、又は、2価の連結基を表す。
Rx~Rxは、それぞれ独立に、アルキル基(直鎖状若しくは分岐鎖状)、シクロアルキル基(単環若しくは多環)、アルケニル基(直鎖状若しくは分岐鎖状)、又は、アリール(単環若しくは多環)基を表す。ただし、Rx~Rxの全てがアルキル基(直鎖状若しくは分岐鎖状)である場合、Rx~Rxのうち少なくとも2つはメチル基であることが好ましい。
Rx~Rxの2つが結合して、単環又は多環(単環又は多環のシクロアルキル基等)を形成してもよい。
【0237】
Xaにより表される、置換基を有していてもよいアルキル基としては、例えば、メチル基又は-CH-R11で表される基が挙げられる。R11は、ハロゲン原子(フッ素原子等)、水酸基又は1価の有機基を表し、例えば、ハロゲン原子が置換していてもよい炭素数5以下のアルキル基、ハロゲン原子が置換していてもよい炭素数5以下のアシル基、及び、ハロゲン原子が置換していてもよい炭素数5以下のアルコキシ基が挙げられ、炭素数3以下のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。Xaとしては、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基、又は、ヒドロキシメチル基が好ましい。
【0238】
Tの2価の連結基としては、アルキレン基、芳香環基、-COO-Rt-基、及び、-O-Rt-基等が挙げられる。式中、Rtは、アルキレン基、又は、シクロアルキレン基を表す。
Tは、単結合又は-COO-Rt-基が好ましい。Tが-COO-Rt-基を表す場合、Rtは、炭素数1~5のアルキレン基が好ましく、-CH-基、-(CH-基、又は、-(CH-基がより好ましい。
【0239】
Rx~Rxのアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、及び、t-ブチル基等の炭素数1~4のアルキル基が好ましい。
Rx~Rxのシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、及び、シクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基、又は、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及び、アダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が好ましい。
Rx~Rxのアリール基としては、炭素数6~10のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基、及び、アントリル基等が挙げられる。
Rx~Rxのアルケニル基としては、ビニル基が好ましい。
Rx~Rxの2つが結合して形成されるシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、及び、シクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基が好ましく、その他にも、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及び、アダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が好ましい。なかでも、炭素数5~6の単環のシクロアルキル基が好ましい。
Rx~Rxの2つが結合して形成されるシクロアルキル基は、例えば、環を構成するメチレン基の1つが、酸素原子等のヘテロ原子、カルボニル基等のヘテロ原子を有する基、又は、ビニリデン基で置き換わっていてもよい。また、これらのシクロアルキル基は、シクロアルカン環を構成するエチレン基の1つ以上が、ビニレン基で置き換わっていてもよい。
一般式(AI)で表される繰り返し単位は、例えば、Rxがメチル基又はエチル基であり、RxとRxとが結合して上述のシクロアルキル基を形成している態様が好ましい。
【0240】
上記各基が置換基を有する場合、置換基としては、例えば、アルキル基(炭素数1~4)、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基(炭素数1~4)、カルボキシル基、及び、アルコキシカルボニル基(炭素数2~6)等が挙げられる。置換基中の炭素数は、8以下が好ましい。
【0241】
一般式(AI)で表される繰り返し単位としては、好ましくは、酸分解性(メタ)アクリル酸3級アルキルエステル系繰り返し単位(Xaが水素原子又はメチル基を表し、かつ、Tが単結合を表す繰り返し単位)である。
【0242】
酸分解性基を有する繰り返し単位の含有量は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対し、15~80モル%が好ましく、20~70モル%がより好ましく、20~65モル%が更に好ましい。
【0243】
酸分解性基を有する繰り返し単位の具体例を以下に示すが、本発明は、これに限定されるものではない。なお、式中、XaはH、F、CH、CF、及び、CHOHのいずれか、Rxa及びRxbはそれぞれ炭素数1~5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を表す。
【0244】
【化32】
【0245】
【化33】
【0246】
【化34】
【0247】
【化35】
【0248】
【化36】
【0249】
樹脂(A)は、上述した繰り返し単位以外の繰り返し単位を含んでいてもよい。
例えば、樹脂(A)は、以下のA群からなる群から選択される少なくとも1種の繰り返し単位、及び/又は以下のB群からなる群から選択される少なくとも1種の繰り返し単位を含んでいてもよい。
A群:以下の(20)~(29)の繰り返し単位からなる群。
(20)後述する、酸基を有する繰り返し単位
(21)後述する、フッ素原子又はヨウ素原子を有する繰り返し単位
(22)後述する、ラクトン基、スルトン基、又は、カーボネート基を有する繰り返し単位
(23)後述する、光酸発生基を有する繰り返し単位
(24)後述する、一般式(V-1)又は下記一般式(V-2)で表される繰り返し単位
(25)後述する、式(A)で表される繰り返し単位
(26)後述する、式(B)で表される繰り返し単位
(27)後述する、式(C)で表される繰り返し単位
(28)後述する、式(D)で表される繰り返し単位
(29)後述する、式(E)で表される繰り返し単位
B群:以下の(30)~(32)の繰り返し単位からなる群。
(30)後述する、ラクトン基、スルトン基、カーボネート基、水酸基、シアノ基、及び、アルカリ可溶性基から選択される少なくとも1種類の基を有する繰り返し単位
(31)後述する、脂環炭化水素構造を有し、酸分解性を示さない繰り返し単位
(32)後述する、水酸基及びシアノ基のいずれも有さない、一般式(III)で表される繰り返し単位
【0250】
本発明の組成物がEUV用の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物として用いられる場合、樹脂(A)は上記A群からなる群から選択される少なくとも1種の繰り返し単位を有することが好ましい。
また、組成物がEUV用の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物として用いられる場合、樹脂(A)は、フッ素原子及びヨウ素原子の少なくとも一方を含むことが好ましい。樹脂(A)がフッ素原子及びヨウ素原子の両方を含む場合、樹脂(A)は、フッ素原子及びヨウ素原子の両方を含む1つの繰り返し単位を有していてもよいし、樹脂(A)は、フッ素原子を有する繰り返し単位とヨウ素原子を含む繰り返し単位との2種を含んでいてもよい。
また、組成物がEUV用の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物として用いられる場合、樹脂(A)が、芳香族基を有する繰り返し単位を有するのも好ましい。
本発明の組成物がArF用の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物として用いられる場合、樹脂(A)は上記B群からなる群から選択される少なくとも1種の繰り返し単位を有することが好ましい。
なお、本発明の組成物がArF用の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物として用いられる場合、樹脂(A)は、フッ素原子及び珪素原子のいずれも含まないことが好ましい。
また、組成物がArF用の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物として用いられる場合、樹脂(A)は、芳香族基を有さないことが好ましい。
【0251】
(酸基を有する繰り返し単位)
樹脂(A)は、酸基を有する繰り返し単位を有していてもよい。
酸基としては、pKaが13以下の酸基が好ましい。
酸基としては、例えば、カルボキシル基、フェノール性水酸基、フッ素化アルコール基(好ましくはヘキサフルオロイソプロパノール基)、スルホン酸基、スルホンアミド基、又は、イソプロパノール基等が好ましい。
また、上記ヘキサフルオロイソプロパノール基は、フッ素原子の1つ以上(好ましくは1~2つ)が、フッ素原子以外の基(アルコキシカルボニル基等)で置換されてもよい。このように形成された-C(CF)(OH)-CF-も、酸基として好ましい。また、フッ素原子の1つ以上がフッ素原子以外の基に置換されて、-C(CF)(OH)-CF-を含む環を形成してもよい。
酸基を有する繰り返し単位は、上述の酸の作用により脱離する脱離基で極性基が保護された構造を有する繰り返し単位、及び、後述するラクトン基、スルトン基、又は、カーボネート基を有する繰り返し単位とは異なる繰り返し単位であるのが好ましい。
【0252】
酸基を有する繰り返し単位は、フッ素原子又はヨウ素原子を有していてもよい。
【0253】
酸基を有する繰り返し単位としては、式(B)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0254】
【化37】
【0255】
は、水素原子、又は、フッ素原子若しくはヨウ素原子を有していてもよい1価の有機基を表す。
フッ素原子又はヨウ素原子を有していてもよい1価の有機基としては、-L-Rで表される基が好ましい。Lは、単結合、又は、エステル基を表す。Rは、フッ素原子若しくはヨウ素原子を有していてもよいアルキル基、フッ素原子若しくはヨウ素原子を有していてもよいシクロアルキル基、フッ素原子若しくはヨウ素原子を有していてもよいアリール基、又は、これらを組み合わせた基が挙げられる。
【0256】
及びRは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、ヨウ素原子、又は、フッ素原子若しくはヨウ素原子を有していてもよいアルキル基を表す。
【0257】
は、単結合、又は、エステル基を表す。
は、(n+m+1)価の芳香族炭化水素環基、又は、(n+m+1)価の脂環炭化水素環基を表す。芳香族炭化水素環基としては、ベンゼン環基、及び、ナフタレン環基が挙げられる。脂環炭化水素環基としては、単環であっても、多環であってもよく、例えば、シクロアルキル環基が挙げられる。
は、水酸基、又は、フッ素化アルコール基(好ましくは、ヘキサフルオロイソプロパノール基)を表す。なお、Rが水酸基の場合、Lは(n+m+1)価の芳香族炭化水素環基であることが好ましい。
は、ハロゲン原子を表す。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又は、ヨウ素原子が挙げられる。
mは、1以上の整数を表す。mは、1~3の整数が好ましく、1~2の整数が好ましい。
nは、0又は1以上の整数を表す。nは、1~4の整数が好ましい。
なお、(n+m+1)は、1~5の整数が好ましい。
【0258】
酸基を有する繰り返し単位としては、下記一般式(I)で表される繰り返し単位も好ましい。
【0259】
【化38】
【0260】
一般式(I)中、
41、R42及びR43は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基又はアルコキシカルボニル基を表す。ただし、R42はArと結合して環を形成していてもよく、その場合のR42は単結合又はアルキレン基を表す。
は、単結合、-COO-、又は、-CONR64-を表し、R64は、水素原子又はアルキル基を表す。
は、単結合又はアルキレン基を表す。
Arは、(n+1)価の芳香環基を表し、R42と結合して環を形成する場合には(n+2)価の芳香環基を表す。
nは、1~5の整数を表す。
【0261】
一般式(I)におけるR41、R42、及び、R43のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、オクチル基、及び、ドデシル基等の炭素数20以下のアルキル基が好ましく、炭素数8以下のアルキル基がより好ましく、炭素数3以下のアルキル基が更に好ましい。
【0262】
一般式(I)におけるR41、R42、及び、R43のシクロアルキル基としては、単環でも、多環でもよい。なかでも、シクロプロピル基、シクロペンチル基、及び、シクロヘキシル基等の炭素数3~8個で単環のシクロアルキル基が好ましい。
一般式(I)におけるR41、R42、及び、R43のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及び、ヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
一般式(I)におけるR41、R42、及び、R43のアルコキシカルボニル基に含まれるアルキル基としては、上記R41、R42、R43におけるアルキル基と同様のものが好ましい。
【0263】
上記各基における好ましい置換基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アミノ基、アミド基、ウレイド基、ウレタン基、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、チオエーテル基、アシル基、アシロキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、及び、ニトロ基が挙げられる。置換基の炭素数は8以下が好ましい。
【0264】
Arは、(n+1)価の芳香環基を表す。nが1である場合における2価の芳香環基は、例えば、フェニレン基、トリレン基、ナフチレン基、及び、アントラセニレン基等の炭素数6~18のアリーレン基、又は、チオフェン環、フラン環、ピロール環、ベンゾチオフェン環、ベンゾフラン環、ベンゾピロール環、トリアジン環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、トリアゾール環、チアジアゾール環、及び、チアゾール環等のヘテロ環を含む2価の芳香環基が好ましい。なお、上記芳香環基は、置換基を有していてもよい。
【0265】
nが2以上の整数である場合における(n+1)価の芳香環基の具体例としては、2価の芳香環基の上記した具体例から、(n-1)個の任意の水素原子を除してなる基が挙げられる。
(n+1)価の芳香環基は、更に置換基を有していてもよい。
【0266】
上述したアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシカルボニル基、アルキレン基、及び、(n+1)価の芳香環基が有し得る置換基としては、例えば、一般式(I)におけるR41、R42、及び、R43で挙げたアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、ヒドロキシエトキシ基、プロポキシ基、ヒドロキシプロポキシ基、及び、ブトキシ基等のアルコキシ基;フェニル基等のアリール基;等が挙げられる。
により表される-CONR64-(R64は、水素原子又はアルキル基を表す)におけるR64のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、オクチル基、及び、ドデシル基等の炭素数20以下のアルキル基が挙げられ、炭素数8以下のアルキル基が好ましい。
としては、単結合、-COO-、又は、-CONH-が好ましく、単結合、又は、-COO-がより好ましい。
【0267】
におけるアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、及び、オクチレン基等の炭素数1~8のアルキレン基が好ましい。
Arとしては、炭素数6~18の芳香環基が好ましく、ベンゼン環基、ナフタレン環基、及び、ビフェニレン環基がより好ましい。
一般式(I)で表される繰り返し単位は、ヒドロキシスチレン構造を備えていることが好ましい。即ち、Arは、ベンゼン環基であることが好ましい。
【0268】
一般式(I)で表される繰り返し単位としては、下記一般式(1)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0269】
【化39】
【0270】
一般式(1)中、
Aは水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、又は、シアノ基を表す。
Rは、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルケニル基、アラルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボニルオキシ基、アルキルスルホニルオキシ基、アルキルオキシカルボニル基又はアリールオキシカルボニル基を表し、複数個ある場合には同じであっても異なっていてもよい。複数のRを有する場合には、互いに共同して環を形成していてもよい。Rとしては水素原子が好ましい。
aは1~3の整数を表す。
bは0~(5-a)の整数を表す。
【0271】
以下、酸基を有する繰り返し単位を例示する。式中、aは1又は2を表す。
【0272】
【化40】
【0273】
【化41】
【0274】
【化42】
【0275】
なお、上記繰り返し単位のなかでも、以下に具体的に記載する繰り返し単位が好ましい。式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、aは2又は3を表す。
【0276】
【化43】
【0277】
【化44】
【0278】
酸基を有する繰り返し単位の含有量は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対し、10~70モル%が好ましく、10~60モル%がより好ましく、10~50モル%が更に好ましい。
【0279】
(フッ素原子又はヨウ素原子を有する繰り返し単位)
樹脂(A)は、上述した<酸分解性基を有する繰り返し単位>及び<酸基を有する繰り返し単位>とは別に、フッ素原子又はヨウ素原子を有する繰り返し単位を有していてもよい。また、ここでいう<フッ素原子又はヨウ素原子を有する繰り返し単位>は、後述の<ラクトン基、スルトン基、又は、カーボネート基を有する繰り返し単位>、及び、<光酸発生基を有する繰り返し単位>等の、A群に属する他の種類の繰り返し単位とは異なるのが好ましい。
【0280】
フッ素原子又はヨウ素原子を有する繰り返し単位としては、式(C)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0281】
【化45】
【0282】
は、単結合、又は、エステル基を表す。
は、水素原子、又は、フッ素原子若しくはヨウ素原子を有していてもよいアルキル基を表す。
10は、水素原子、フッ素原子若しくはヨウ素原子を有していてもよいアルキル基、フッ素原子若しくはヨウ素原子を有していてもよいシクロアルキル基、フッ素原子若しくはヨウ素原子を有していてもよいアリール基、又は、これらを組み合わせた基を表す。
【0283】
フッ素原子又はヨウ素原子を有する繰り返し単位を以下に例示する。
【0284】
【化46】
【0285】
フッ素原子又はヨウ素原子を有する繰り返し単位の含有量は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対し、0~60モル%が好ましく、5~60モル%がより好ましく、10~60モル%が更に好ましい。
なお、上述したように、フッ素原子又はヨウ素原子を有する繰り返し単位には、<酸分解性基を有する繰り返し単位>及び<酸基を有する繰り返し単位>は含まれないことから、上記フッ素原子又はヨウ素原子を有する繰り返し単位の含有量も、<酸分解性基を有する繰り返し単位>及び<酸基を有する繰り返し単位>を除いたフッ素原子又はヨウ素原子を有する繰り返し単位の含有量を意図する。
【0286】
樹脂(A)の繰り返し単位のうち、フッ素原子及びヨウ素原子の少なくとも一方を含む繰り返し単位の合計含有量は、樹脂(A)の全繰り返し単位に対して、1~100モル%が好ましく、5~80モル%がより好ましく、10~60モル%が更に好ましい。
なお、フッ素原子及びヨウ素原子の少なくとも一方を含む繰り返し単位としては、例えば、フッ素原子又はヨウ素原子を有し、かつ、酸分解性基を有する繰り返し単位、フッ素原子又はヨウ素原子を有し、かつ、酸基を有する繰り返し単位、及び、フッ素原子又はヨウ素原子を有する繰り返し単位が挙げられる。
【0287】
(ラクトン基、スルトン基、又は、カーボネート基を有する繰り返し単位)
樹脂(A)は、ラクトン基、スルトン基、及び、カーボネート基からなる群から選択される少なくとも1種を有する繰り返し単位(以下、総称して「ラクトン基、スルトン基、又は、カーボネート基を有する繰り返し単位」ともいう。)を有していてもよい。
ラクトン基、スルトン基、又は、カーボネート基を有する繰り返し単位は、ヘキサフルオロプロパノール基等の酸基を有さないのも好ましい。
【0288】
ラクトン基又はスルトン基としては、ラクトン構造又はスルトン構造を有していればよい。ラクトン構造又はスルトン構造は、5~7員環ラクトン構造又は5~7員環スルトン構造が好ましい。なかでも、ビシクロ構造若しくはスピロ構造を形成する形で5~7員環ラクトン構造に他の環構造が縮環しているもの、又は、ビシクロ構造若しくはスピロ構造を形成する形で5~7員環スルトン構造に他の環構造が縮環しているもの、がより好ましい。
樹脂(A)は、下記一般式(LC1-1)~(LC1-21)のいずれかで表されるラクトン構造、又は、下記一般式(SL1-1)~(SL1-3)のいずれかで表されるスルトン構造の環員原子から、水素原子を1つ以上引き抜いてなるラクトン基又はスルトン基を有する繰り返し単位を有することが好ましい。
また、ラクトン基又はスルトン基が主鎖に直接結合していてもよい。例えば、ラクトン基又はスルトン基の環員原子が、樹脂(A)の主鎖を構成してもよい。
【0289】
【化47】
【0290】
上記ラクトン構造又はスルトン構造部分は、置換基(Rb)を有していてもよい。好ましい置換基(Rb)としては、炭素数1~8のアルキル基、炭素数4~7のシクロアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、炭素数1~8のアルコキシカルボニル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、及び、酸分解性基等が挙げられる。n2は、0~4の整数を表す。n2が2以上の時、複数存在するRbは、異なっていてもよく、また、複数存在するRb同士が結合して環を形成してもよい。
【0291】
一般式(LC1-1)~(LC1-21)のいずれかで表されるラクトン構造又は一般式(SL1-1)~(SL1-3)のいずれかで表されるスルトン構造を有する基を有する繰り返し単位としては、例えば、下記一般式(AI)で表される繰り返し単位等が挙げられる。
【0292】
【化48】
【0293】
一般式(AI)中、Rbは、水素原子、ハロゲン原子、又は、炭素数1~4のアルキル基を表す。
Rbのアルキル基が有していてもよい好ましい置換基としては、水酸基、及び、ハロゲン原子が挙げられる。
Rbのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及び、ヨウ素原子が挙げられる。Rbは、水素原子又はメチル基が好ましい。
Abは、単結合、アルキレン基、単環又は多環の脂環炭化水素構造を有する2価の連結基、エーテル基、エステル基、カルボニル基、カルボキシル基、又は、これらを組み合わせた2価の基を表す。なかでも、単結合、又は、-Ab-CO-で表される連結基が好ましい。Abは、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基、又は、単環若しくは多環のシクロアルキレン基であり、メチレン基、エチレン基、シクロヘキシレン基、アダマンチレン基、又は、ノルボルニレン基が好ましい。
Vは、一般式(LC1-1)~(LC1-21)のいずれかで表されるラクトン構造の環員原子から水素原子を1つ引き抜いてなる基、又は、一般式(SL1-1)~(SL1-3)のいずれかで表されるスルトン構造の環員原子から水素原子を1つ引き抜いてなる基を表す。
【0294】
ラクトン基又はスルトン基を有する繰り返し単位に、光学異性体が存在する場合、いずれの光学異性体を用いてもよい。また、1種の光学異性体を単独で用いても、複数の光学異性体を混合して用いてもよい。1種の光学異性体を主に用いる場合、その光学純度(ee)は90以上が好ましく、95以上がより好ましい。
【0295】
カーボネート基としては、環状炭酸エステル基が好ましい。
環状炭酸エステル基を有する繰り返し単位としては、下記一般式(A-1)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0296】
【化49】
【0297】
一般式(A-1)中、R は、水素原子、ハロゲン原子、又は、1価の有機基(好ましくはメチル基)を表す。
nは0以上の整数を表す。
は、置換基を表す。nが2以上の場合、複数存在するR は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
Aは、単結合又は2価の連結基を表す。上記2価の連結基としては、アルキレン基、単環又は多環の脂環炭化水素構造を有する2価の連結基、エーテル基、エステル基、カルボニル基、カルボキシル基、又は、これらを組み合わせた2価の基が好ましい。
Zは、式中の-O-CO-O-で表される基と共に単環又は多環を形成する原子団を表す。
【0298】
ラクトン基、スルトン基、又は、カーボネート基を有する繰り返し単位を以下に例示する。
【0299】
【化50】
【0300】
【化51】
【0301】
【化52】
【0302】
ラクトン基、スルトン基、又は、カーボネート基を有する繰り返し単位の含有量は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対し、1~70モル%が好ましく、5~65モル%がより好ましく、5~60モル%が更に好ましい。
【0303】
(光酸発生基を有する繰り返し単位)
樹脂(A)は、上記以外の繰り返し単位として、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する基(以下、「光酸発生基」ともいう。)を有する繰り返し単位を有していてもよい。
この場合、この光酸発生基を有する繰り返し単位が、後述する活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物(以下、「光酸発生剤」ともいう。)にあたると考えることができる。
このような繰り返し単位としては、例えば、下記一般式(4)で表される繰り返し単位が挙げられる。
【0304】
【化53】
【0305】
41は、水素原子又はメチル基を表す。L41は、単結合、又は、2価の連結基を表す。L42は、2価の連結基を表す。R40は、活性光線又は放射線の照射により分解して側鎖に酸を発生させる構造部位を表す。
【0306】
光酸発生基を有する繰り返し単位を以下に例示する。
【0307】
【化54】
【0308】
【化55】
【0309】
そのほか、一般式(4)で表される繰り返し単位としては、例えば、特開2014-041327号公報の段落[0094]~[0105]に記載された繰り返し単位が挙げられる。
【0310】
光酸発生基を有する繰り返し単位の含有量は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対して、1~40モル%が好ましく、5~35モル%がより好ましく、5~30モル%が更に好ましい。
【0311】
(一般式(V-1)又は(V-2)で表される繰り返し単位)
樹脂(A)は、下記一般式(V-1)、又は、下記一般式(V-2)で表される繰り返し単位を有していてもよい。
下記一般式(V-1)、及び、下記一般式(V-2)で表される繰り返し単位は上述の繰り返し単位とは異なる繰り返し単位であるのが好ましい。
【0312】
【化56】
【0313】
式中、
及びRは、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、アルキル基、アルコキシ基、アシロキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、ハロゲン原子、エステル基(-OCOR又は-COOR:Rは炭素数1~6のアルキル基又はフッ素化アルキル基)、又は、カルボキシル基を表す。アルキル基としては、炭素数1~10の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基が好ましい。
は、0~6の整数を表す。
は、0~4の整数を表す。
は、メチレン基、酸素原子、又は、硫黄原子である。
一般式(V-1)又は(V-2)で表される繰り返し単位を以下に例示する。
【0314】
【化57】
【0315】
(主鎖の運動性を低下させるための繰り返し単位)
樹脂(A)は、発生酸の過剰な拡散又は現像時のパターン崩壊を抑制できる観点から、ガラス転移温度(Tg)が高い方が好ましい。Tgは、90℃より大きいことが好ましく、100℃より大きいことがより好ましく、110℃より大きいことが更に好ましく、125℃より大きいことが特に好ましい。なお、過度な高Tg化は現像液への溶解速度低下を招くため、Tgは400℃以下が好ましく、350℃以下がより好ましい。
なお、本明細書において、樹脂(A)等のポリマーのガラス転移温度(Tg)は、以下の方法で算出する。まず、ポリマー中に含まれる各繰り返し単位のみからなるホモポリマーのTgを、Bicerano法によりそれぞれ算出する。以後、算出されたTgを、「繰り返し単位のTg」という。次に、ポリマー中の全繰り返し単位に対する、各繰り返し単位の質量割合(%)を算出する。次に、Foxの式(Materials Letters 62(2008)3152等に記載)を用いて各質量割合におけるTgを算出して、それらを総和して、ポリマーのTg(℃)とする。
Bicerano法はPrediction of polymer properties, Marcel Dekker Inc, New York(1993)等に記載されている。またBicerano法によるTgの算出は、ポリマーの物性概算ソフトウェアMDL Polymer(MDL Information Systems, Inc.)を用いて行うことができる。
【0316】
樹脂(A)のTgを大きくする(好ましくは、Tgを90℃超とする)には、樹脂(A)の主鎖の運動性を低下させることが好ましい。樹脂(A)の主鎖の運動性を低下させる方法は、以下の(a)~(e)の方法が挙げられる。
(a)主鎖への嵩高い置換基の導入
(b)主鎖への複数の置換基の導入
(c)主鎖近傍への樹脂(A)間の相互作用を誘発する置換基の導入
(d)環状構造での主鎖形成
(e)主鎖への環状構造の連結
なお、樹脂(A)は、ホモポリマーのTgが130℃以上を示す繰り返し単位を有することが好ましい。
なお、ホモポリマーのTgが130℃以上を示す繰り返し単位の種類は特に制限されず、Bicerano法により算出されるホモポリマーのTgが130℃以上である繰り返し単位であればよい。なお、後述する式(A)~式(E)で表される繰り返し単位中の官能基の種類によっては、ホモポリマーのTgが130℃以上を示す繰り返し単位に該当する。
【0317】
(式(A)で表される繰り返し単位)
上記(a)の具体的な達成手段の一例としては、樹脂(A)に式(A)で表される繰り返し単位を導入する方法が挙げられる。
【0318】
【化58】
【0319】
式(A)、Rは、多環構造を有する基を表す。Rは、水素原子、メチル基、又は、エチル基を表す。多環構造を有する基とは、複数の環構造を有する基であり、複数の環構造は縮合していても、縮合していなくてもよい。
式(A)で表される繰り返し単位の具体例としては、下記繰り返し単位が挙げられる。
【0320】
【化59】
【0321】
【化60】
【0322】
【化61】
【0323】
上記式中、Rは、水素原子、メチル基、又は、エチル基を表す。
Raは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、水酸基、アルコキシ基、アシロキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、ハロゲン原子、エステル基(-OCOR’’’又は-COOR’’’:R’’’は炭素数1~20のアルキル基又はフッ素化アルキル基)、又は、カルボキシル基を表す。なお、上記アルキル基、上記シクロアルキル基、上記アリール基、上記アラルキル基、及び、上記アルケニル基は、それぞれ、置換基を有してもよい。また、Raで表される基中の炭素原子に結合している水素原子は、フッ素原子又はヨウ素原子で置換されていてもよい。
また、R’及びR’’は、それぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、水酸基、アルコキシ基、アシロキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、ハロゲン原子、エステル基(-OCOR’’’又は-COOR’’’:R’’’は炭素数1~20のアルキル基又はフッ素化アルキル基)、又は、カルボキシル基を表す。なお、上記アルキル基、上記シクロアルキル基、上記アリール基、上記アラルキル基、及び、上記アルケニル基は、それぞれ、置換基を有してもよい。また、R’及びR’’で表される基中の炭素原子に結合している水素原子は、フッ素原子又はヨウ素原子で置換されていてもよい。
Lは、単結合又は2価の連結基を表す。2価の連結基としては、例えば、―COO-、-CO-、-O-、-S―、-SO-、-SO-、アルキレン基、シクロアルキレン基、アルケニレン基、及び、これらの複数が連結した連結基等が挙げられる。
m及びnは、それぞれ独立に、0以上の整数を表す。m及びnの上限は特に制限されないが、2以下の場合が多く、1以下の場合がより多い。
【0324】
(式(B)で表される繰り返し単位)
上記(b)の具体的な達成手段の一例としては、樹脂(A)に式(B)で表される繰り返し単位を導入する方法が挙げられる。
【0325】
【化62】
【0326】
式(B)中、Rb1~Rb4は、それぞれ独立に、水素原子又は有機基を表し、Rb1~Rb4のうち少なくとも2つ以上が有機基を表す。
また、有機基の少なくとも1つが、繰り返し単位中の主鎖に直接環構造が連結している基である場合、他の有機基の種類は特に制限されない。
また、有機基のいずれも繰り返し単位中の主鎖に直接環構造が連結している基ではない場合、有機基の少なくとも2つ以上は、水素原子を除く構成原子の数が3つ以上である置換基である。
【0327】
式(B)で表される繰り返し単位の具体例としては、下記繰り返し単位が挙げられる。
【0328】
【化63】
【0329】
上記式中、Rは、それぞれ独立に、水素原子又は有機基を表す。有機基としては、置換基を有してもよい、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、及び、アルケニル基、等の有機基が挙げられる。
R’は、それぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、水酸基、アルコキシ基、アシロキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、ハロゲン原子、エステル基(-OCOR’’又は-COOR’’:R’’は炭素数1~20のアルキル基又はフッ素化アルキル基)、又は、カルボキシル基を表す。なお、上記アルキル基、上記シクロアルキル基、上記アリール基、上記アラルキル基、及び、上記アルケニル基は、それぞれ、置換基を有してもよい。また、R’で表される基中の炭素原子に結合している水素原子は、フッ素原子又はヨウ素原子で置換されていてもよい。
mは0以上の整数を表す。mの上限は特に制限されないが、2以下の場合が多く、1以下の場合がより多い。
【0330】
(式(C)で表される繰り返し単位)
上記(c)の具体的な達成手段の一例としては、樹脂(A)に式(C)で表される繰り返し単位を導入する方法が挙げられる。
【0331】
【化64】
【0332】
式(C)中、Rc1~Rc4は、それぞれ独立に、水素原子又は有機基を表し、Rc1~Rc4のうち少なくとも1つが、主鎖炭素から原子数3以内に水素結合性の水素原子を有する基である。なかでも、樹脂(A)の主鎖間の相互作用を誘発する上で、原子数2以内(より主鎖近傍側)に水素結合性の水素原子を有することが好ましい。
【0333】
式(C)で表される繰り返し単位の具体例としては、下記繰り返し単位が挙げられる。
【0334】
【化65】
【0335】
上記式中、Rは有機基を表す。有機基としては、置換基を有してもよい、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、及び、エステル基(-OCOR又は-COOR:Rは炭素数1~20のアルキル基又はフッ素化アルキル基)等が挙げられる。
R’は、水素原子又は有機基を表す。有機基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、及び、アルケニル基、等の有機基が挙げられる。なお、有機基中の水素原子は、フッ素原子又はヨウ素原子で置換されていてもよい。
【0336】
(式(D)で表される繰り返し単位)
上記(d)の具体的な達成手段の一例としては、樹脂(A)に式(D)で表される繰り返し単位を導入する方法が挙げられる。
【0337】
【化66】
【0338】
式(D)中、「cyclic」は、環状構造で主鎖を形成している基を表す。環の構成原子数は特に制限されない。
【0339】
式(D)で表される繰り返し単位の具体例としては、下記繰り返し単位が挙げられる。
【0340】
【化67】
【0341】
上記式中、Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、水酸基、アルコキシ基、アシロキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、ハロゲン原子、エステル基(-OCOR’’又は-COOR’’:R’’は炭素数1~20のアルキル基又はフッ素化アルキル基)、又は、カルボキシル基を表す。なお、上記アルキル基、上記シクロアルキル基、上記アリール基、上記アラルキル基、及び、上記アルケニル基は、それぞれ、置換基を有してもよい。また、Rで表される基中の炭素原子に結合している水素原子は、フッ素原子又はヨウ素原子で置換されていてもよい。
上記式中、R’は、それぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、水酸基、アルコキシ基、アシロキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、ハロゲン原子、エステル基(-OCOR’’又は-COOR’’:R’’は炭素数1~20のアルキル基又はフッ素化アルキル基)、又は、カルボキシル基を表す。なお、上記アルキル基、上記シクロアルキル基、上記アリール基、上記アラルキル基、及び、上記アルケニル基は、それぞれ、置換基を有してもよい。また、R’で表される基中の炭素原子に結合している水素原子は、フッ素原子又はヨウ素原子で置換されていてもよい。
mは0以上の整数を表す。mの上限は特に制限されないが、2以下の場合が多く、1以下の場合がより多い。
【0342】
(式(E)で表される繰り返し単位)
上記(e)の具体的な達成手段の一例としては、樹脂(A)に式(E)で表される繰り返し単位を導入する方法が挙げられる。
【0343】
【化68】
【0344】
式(E)中、Reは、それぞれ独立に、水素原子又は有機基を表す。有機基としては、置換基を有してもよい、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、及び、アルケニル基等が挙げられる。
「cyclic」は、主鎖の炭素原子を含む環状基である。環状基に含まれる原子数は特に制限されない。
【0345】
式(E)で表される繰り返し単位の具体例としては、下記繰り返し単位が挙げられる。
【0346】
【化69】
【0347】
【化70】
【0348】
上記式中、Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、及び、アルケニル基、水酸基、アルコキシ基、アシロキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、ハロゲン原子、エステル基(-OCOR’’又は-COOR’’:R’’は炭素数1~20のアルキル基又はフッ素化アルキル基)、又は、カルボキシル基を表す。なお、上記アルキル基、上記シクロアルキル基、上記アリール基、上記アラルキル基、及び、上記アルケニル基は、それぞれ、置換基を有してもよい。また、Rで表される基中の炭素原子に結合している水素原子は、フッ素原子又はヨウ素原子で置換されていてもよい。
R’は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、及び、アルケニル基、水酸基、アルコキシ基、アシロキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、ハロゲン原子、エステル基(-OCOR’’又は-COOR’’:R’’は炭素数1~20のアルキル基又はフッ素化アルキル基)、又は、カルボキシル基を表す。なお、上記アルキル基、上記シクロアルキル基、上記アリール基、上記アラルキル基、及び、上記アルケニル基は、それぞれ、置換基を有してもよい。また、R’で表される基中の炭素原子に結合している水素原子は、フッ素原子又はヨウ素原子で置換されていてもよい。
mは0以上の整数を表す。mの上限は特に制限されないが、2以下の場合が多く、1以下の場合がより多い。
また、同一の炭素原子に結合する2つのRは互いに結合して環を形成していてもよい。
式(E-2)、式(E-4)、式(E-6)、及び、式(E-8)中、2つのRは、共同して「=O」を形成していてもよい。
【0349】
式(E)で表される繰り返し単位の含有量は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対して、5モル%以上が好ましく、10モル%以上がより好ましい。また、その上限値としては、60モル%以下が好ましく、55モル%以下がより好ましい。
【0350】
(ラクトン基、スルトン基、カーボネート基、水酸基、シアノ基、及び、アルカリ可溶性基から選択される少なくとも1種類の基を有する繰り返し単位)
樹脂(A)は、ラクトン基、スルトン基、カーボネート基、水酸基、シアノ基、及び、アルカリ可溶性基から選択される少なくとも1種類の基を有する繰り返し単位を有していてもよい。
樹脂(A)が有するラクトン基、スルトン基、又は、カーボネート基を有する繰り返し単位としては、上述した<ラクトン基、スルトン基、又は、カーボネート基を有する繰り返し単位>で説明した繰り返し単位が挙げられる。好ましい含有量も上述した<ラクトン基、スルトン基、又は、カーボネート基を有する繰り返し単位>で説明した通りである。
【0351】
樹脂(A)は、水酸基又はシアノ基を有する繰り返し単位を有していてもよい。これにより基板密着性、現像液親和性が向上する。
水酸基又はシアノ基を有する繰り返し単位は、水酸基又はシアノ基で置換された脂環炭化水素構造を有する繰り返し単位であることが好ましい。
水酸基又はシアノ基を有する繰り返し単位は、酸分解性基を有さないことが好ましい。
水酸基又はシアノ基を有する繰り返し単位としては、下記一般式(AIIa)~(AIId)で表される繰り返し単位が挙げられる。
【0352】
【化71】
【0353】
一般式(AIIa)~(AIId)において、
1cは、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基又はヒドロキシメチル基を表す。
2c~R4cは、それぞれ独立に、水素原子、水酸基又はシアノ基を表す。ただし、R2c~R4cのうちの少なくとも1つは、水酸基又はシアノ基を表す。好ましくは、R2c~R4cの内の1つ又は2つが水酸基で、残りが水素原子である。より好ましくは、R2c~R4cの内の2つが水酸基で、残りが水素原子である。
【0354】
水酸基又はシアノ基を有する繰り返し単位の含有量は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対して、5モル%以上が好ましく、10モル%以上がより好ましい。また、その上限値としては、60モル%以下が好ましく、55モル%以下がより好ましく、50モル%以下が更に好ましい。
【0355】
水酸基又はシアノ基を有する繰り返し単位の具体例を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【0356】
【化72】
【0357】
樹脂(A)は、アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位を有していてもよい。
アルカリ可溶性基としては、カルボキシル基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、ビススルホニルイミド基、α位が電子求引性基で置換された脂肪族アルコール基(例えば、ヘキサフルオロイソプロパノール基)が挙げられ、カルボキシル基が好ましい。樹脂(A)がアルカリ可溶性基を有する繰り返し単位を含むことにより、コンタクトホール用途での解像性が増す。
アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位としては、アクリル酸及びメタクリル酸による繰り返し単位のような樹脂の主鎖に直接アルカリ可溶性基が結合している繰り返し単位、又は、連結基を介して樹脂の主鎖にアルカリ可溶性基が結合している繰り返し単位が挙げられる。なお、連結基は、単環又は多環の環状炭化水素構造を有していてもよい。
アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位としては、アクリル酸又はメタクリル酸による繰り返し単位が好ましい。
【0358】
アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位の含有量は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対して、0モル%以上が好ましく、3モル%以上がより好ましく、5モル%以上が更に好ましい。その上限値としては、20モル%以下が好ましく、15モル%以下がより好ましく、10モル%以下が更に好ましい。
【0359】
アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位の具体例を以下に示すが、本発明は、これに限定されるものではない。具体例中、RxはH、CH、CHOH、又は、CFを表す。
【0360】
【化73】
【0361】
ラクトン基、水酸基、シアノ基、及び、アルカリ可溶性基から選択される少なくとも1種類の基を有する繰り返し単位として、ラクトン基、水酸基、シアノ基、及び、アルカリ可溶性基から選択される少なくとも2つを有する繰り返し単位が好ましく、シアノ基とラクトン基を有する繰り返し単位がより好ましく、一般式(LC1-4)で表されるラクトン構造にシアノ基が置換した構造を有する繰り返し単位が更に好ましい。
【0362】
(脂環炭化水素構造を有し、酸分解性を示さない繰り返し単位)
樹脂(A)は、脂環炭化水素構造を有し、酸分解性を示さない繰り返し単位を有してもよい。これにより液浸露光時にレジスト膜から液浸液への低分子成分の溶出が低減できる。このような繰り返し単位として、例えば、1-アダマンチル(メタ)アクリレート、ジアマンチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、又は、シクロヘキシル(メタ)アクリレート由来の繰り返し単位等が挙げられる。
【0363】
(水酸基及びシアノ基のいずれも有さない、一般式(III)で表される繰り返し単位)
樹脂(A)は、水酸基及びシアノ基のいずれも有さない、一般式(III)で表される繰り返し単位を有していてもよい。
【0364】
【化74】
【0365】
一般式(III)中、Rは少なくとも一つの環状構造を有し、水酸基及びシアノ基のいずれも有さない炭化水素基を表す。
Raは水素原子、アルキル基又は-CH-O-Ra基を表す。式中、Raは、水素原子、アルキル基又はアシル基を表す。
【0366】
が有する環状構造には、単環炭化水素基及び多環炭化水素基が含まれる。単環炭化水素基としては、例えば、炭素数3~12(より好ましくは炭素数3~7)のシクロアルキル基、又は、炭素数3~12のシクロアルケニル基が挙げられる。
【0367】
多環炭化水素基としては、環集合炭化水素基及び架橋環炭化水素基が挙げられる。架橋環炭化水素環としては、2環炭化水素環、3環炭化水素環、及び、4環炭化水素環等が挙げられる。また、架橋環炭化水素環としては、5~8員シクロアルカン環が複数個縮合した縮合環も含まれる。
架橋環炭化水素基として、ノルボルニル基、アダマンチル基、ビシクロオクタニル基、又は、トリシクロ[5、2、1、02,6]デカニル基が好ましく、ノルボルニル基又はアダマンチル基がより好ましい。
【0368】
脂環炭化水素基は置換基を有していてもよく、置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、保護基で保護されたヒドロキシル基、及び、保護基で保護されたアミノ基が挙げられる。
ハロゲン原子としては、臭素原子、塩素原子、又は、フッ素原子が好ましい。
アルキル基としては、メチル基、エチル基、ブチル基、又は、t-ブチル基が好ましい。上記アルキル基は更に置換基を有していてもよく、置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、保護基で保護されたヒドロキシル基、又は、保護基で保護されたアミノ基が挙げられる。
【0369】
保護基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、置換メチル基、置換エチル基、アルコキシカルボニル基、及び、アラルキルオキシカルボニル基が挙げられる。
アルキル基としては、炭素数1~4のアルキル基が好ましい。
置換メチル基としては、メトキシメチル基、メトキシチオメチル基、ベンジルオキシメチル基、t-ブトキシメチル基、又は、2-メトキシエトキシメチル基が好ましい。
置換エチル基としては、1-エトキシエチル基、又は、1-メチル-1-メトキシエチル基が好ましい。
アシル基としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、及び、ピバロイル基等の炭素数1~6の脂肪族アシル基が好ましい。
アルコキシカルボニル基としては、炭素数1~4のアルコキシカルボニル基が好ましい。
【0370】
水酸基及びシアノ基のいずれも有さない、一般式(III)で表される繰り返し単位の含有量は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対し、0~40モル%が好ましく、0~20モル%がより好ましい。
一般式(III)で表される繰り返し単位の具体例を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されない。式中、Raは、H、CH、CHOH、又は、CFを表す。
【0371】
【化75】
【0372】
(その他の繰り返し単位)
更に、樹脂(A)は、上述した繰り返し単位以外の繰り返し単位を有してもよい。
例えば樹脂(A)は、オキサチアン環基を有する繰り返し単位、オキサゾロン環基を有する繰り返し単位、ジオキサン環基を有する繰り返し単位、及び、ヒダントイン環基を有する繰り返し単位からなる群から選択される繰り返し単位を有していてもよい。
このような繰り返し単位を以下に例示する。
【0373】
【化76】
【0374】
樹脂(A)は、上記の繰り返し構造単位以外に、ドライエッチング耐性、標準現像液適性、基板密着性、レジストプロファイル、解像力、耐熱性、及び、感度等を調節する目的で様々な繰り返し構造単位を有していてもよい。
【0375】
樹脂(A)としては、(特に、組成物がArF用の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物として用いられる場合)繰り返し単位の全てが(メタ)アクリレート系繰り返し単位で構成されるのも好ましい。この場合、繰り返し単位の全てがメタクリレート系繰り返し単位であるもの、繰り返し単位の全てがアクリレート系繰り返し単位であるもの、繰り返し単位の全てがメタクリレート系繰り返し単位とアクリレート系繰り返し単位とによるもののいずれのものでも用いることができ、アクリレート系繰り返し単位が全繰り返し単位の50モル%以下であることが好ましい。
【0376】
樹脂(A)は、常法に従って(例えばラジカル重合)合成できる。
GPC法によりポリスチレン換算値として、樹脂(A)の重量平均分子量は、1000~200000が好ましく、3,000~20000がより好ましく、5,000~15000が更に好ましい。樹脂(A)の重量平均分子量を、1000~200000とすることにより、耐熱性及びドライエッチング耐性の劣化をより一層抑制できる。また、現像性の劣化、及び、粘度が高くなって製膜性が劣化することもより一層抑制できる。
樹脂(A)の分散度(分子量分布)は、通常1~5であり、1~3が好ましく、1.20~3.00がより好ましく、1.20~2.00が更に好ましい。分散度が小さいものほど、解像度、及び、レジスト形状がより優れ、更に、レジストパターンの側壁がよりスムーズであり、ラフネス性にもより優れる。
【0377】
本発明の組成物において、樹脂(A)の含有量は、組成物の全固形分に対して、50~99.9質量%が好ましく、60~99.0質量%がより好ましい。
なお、固形分とは、組成物中の溶剤を除いた成分を意図し、溶剤以外の成分であれば液状成分であっても固形分とみなす。
また、樹脂(A)は、1種で使用してもよいし、複数併用してもよい。
【0378】
<その他の光酸発生剤>
レジスト組成物は、特定化合物には該当しないその他の光酸発生剤(特定化合物に該当しない、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物)を含んでいてもよい。その他の光酸発生剤は、露光(好ましくはEUV光及び/又はArFの露光)により酸を発生する化合物である。
その他の光酸発生剤は、低分子化合物の形態であってもよく、重合体の一部に組み込まれた形態であってもよい。また、低分子化合物の形態と重合体の一部に組み込まれた形態を併用してもよい。
その他の光酸発生剤が、低分子化合物の形態である場合、分子量は3000以下が好ましく、2000以下がより好ましく、1000以下が更に好ましい。
その他の光酸発生剤が、重合体の一部に組み込まれた形態である場合、樹脂(A)の一部に組み込まれてもよく、樹脂(A)とは異なる樹脂に組み込まれてもよい。
本発明において、光酸発生剤が、低分子化合物の形態であるのが好ましい。
その他の光酸発生剤は特に限定されず、なかでも、有機酸を発生する化合物が好ましく、上記有機酸としては、特定化合物が発生し得る有機酸として説明した有機酸が同様に挙げられる。
【0379】
その他の光酸発生剤としては、例えば、「M」で表される化合物(オニウム塩)が挙げられる。
「M」で表される化合物において、Xは、有機アニオンを表す。
「M」におけるXは、特定化合物における一般式(1)に関して説明したXで表される有機アニオンが同様に使用できる。
「M」で表される化合物において、Mは、有機カチオンを表す。
上記有機カチオンは、それぞれ独立に、一般式(ZaI)で表されるカチオン(カチオン(ZaI))又は一般式(ZaII)で表されるカチオン(カチオン(ZaII))が好ましい。
ただし、一般式(ZaI)で表されるカチオンは、特定化合物における特定カチオンとは異なる。
【0380】
【化77】
【0381】
上記一般式(ZaI)において、
201、R202、及び、R203は、それぞれ独立に、有機基を表す。
201、R202、及び、R203としての有機基の炭素数は、通常1~30であり、1~20が好ましい。また、R201~R203のうち2つが結合して環構造を形成してもよく、環内に酸素原子、硫黄原子、エステル基、アミド基、又は、カルボニル基を含んでいてもよい。R201~R203の内の2つが結合して形成する基としては、例えば、アルキレン基(例えば、ブチレン基、ペンチレン基)、及び、-CH-CH-O-CH-CH-が挙げられる。
【0382】
一般式(ZaI)におけるカチオンとしては、例えば、後述する、カチオン(ZaI-1)が挙げられる。
【0383】
カチオン(ZaI-1)は、上記一般式(ZaI)のR201~R203の少なくとも1つがアリール基である、アリールスルホニウムカチオンである。
アリールスルホニウムカチオンは、R201~R203の全てがアリール基でもよいし、R201~R203の一部がアリール基であり、残りがアルキル基又はシクロアルキル基であってもよい。
また、R201~R203のうちの1つがアリール基であり、R201~R203のうちの残りの2つが結合して環構造を形成してもよく、環内に酸素原子、硫黄原子、エステル基、アミド基、又は、カルボニル基を含んでいてもよい。R201~R203のうちの2つが結合して形成する基としては、例えば、1つ以上のメチレン基が酸素原子、硫黄原子、エステル基、アミド基、及び/又はカルボニル基で置換されていてもよいアルキレン基(例えば、ブチレン基、ペンチレン基、又は、-CH-CH-O-CH-CH-)が挙げられる。
アリールスルホニウムカチオンとしては、例えば、トリアリールスルホニウムカチオン、ジアリールアルキルスルホニウムカチオン、アリールジアルキルスルホニウムカチオン、ジアリールシクロアルキルスルホニウムカチオン、及び、アリールジシクロアルキルスルホニウムカチオンが挙げられる。
【0384】
アリールスルホニウムカチオンに含まれるアリール基は、フェニル基又はナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。アリール基は、酸素原子、窒素原子、又は、硫黄原子等を有するヘテロ環構造を有するアリール基であってもよい。ヘテロ環構造としては、例えば、ピロール残基、フラン残基、チオフェン残基、インドール残基、ベンゾフラン残基、及び、ベンゾチオフェン残基等が挙げられる。アリールスルホニウムカチオンが2つ以上のアリール基を有する場合に、2つ以上あるアリール基は同一であっても異なっていてもよい。
アリールスルホニウムカチオンが必要に応じて有しているアルキル基又はシクロアルキル基は、炭素数1~15の直鎖状アルキル基、炭素数3~15の分岐鎖状のアルキル基、又は、炭素数3~15のシクロアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、及び、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0385】
201~R203のアリール基、アルキル基、及び、シクロアルキル基が有していてもよい置換基は、それぞれ独立に、アルキル基(例えば炭素数1~15)、シクロアルキル基(例えば炭素数3~15)、アリール基(例えば炭素数6~14)、アルコキシ基(例えば炭素数1~15)、シクロアルキルアルコキシ基(例えば炭素数1~15)、ハロゲン原子、水酸基、又は、フェニルチオ基が好ましい。
上記置換基は可能な場合は更に置換基を有していてもよく、例えば、上記アルキル基が置換基としてハロゲン原子を有して、トリフルオロメチル基等のハロゲン化アルキル基となっていてもよい。
【0386】
他の光酸発生剤としては、例えば、以下の化合物が挙げられる。
【0387】
【化78】
【0388】
レジスト組成物中がその他の光酸発生剤を含む場合、その含有量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、組成物の全固形分に対して、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、2質量%以上が更に好ましい。また、上記含有量は、40質量%以下が好ましく、35質量%以下がより好ましく、30質量%以下が更に好ましい。
光酸発生剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を使用してもよい。
【0389】
<溶剤>
レジスト組成物は、溶剤を含んでいてもよい。
溶剤は、(M1)プロピレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート、並びに、(M2)プロピレングリコールモノアルキルエーテル、乳酸エステル、酢酸エステル、アルコキシプロピオン酸エステル、鎖状ケトン、環状ケトン、ラクトン、及び、アルキレンカーボネートからなる群から選択される少なくとも1つの少なくとも一方を含んでいるのが好ましい。なお、この溶剤は、成分(M1)及び(M2)以外の成分を更に含んでいてもよい。
【0390】
本発明者らは、このような溶剤と上述した樹脂とを組み合わせて用いると、組成物の塗布性が向上すると共に、現像欠陥数の少ないパターンが形成可能となることを見出している。その理由は必ずしも明らかではないが、これら溶剤は、上述した樹脂の溶解性、沸点及び粘度のバランスが良いため、組成物膜の膜厚のムラ及びスピンコート中の析出物の発生等を抑制できることに起因していると本発明者らは考えている。
【0391】
成分(M1)は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA:propylene glycol monomethylether acetate)、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、及び、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートからなる群から選択される少なくとも1つが好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)がより好ましい。
【0392】
成分(M2)は、以下の溶剤が好ましい。
プロピレングリコールモノアルキルエーテルは、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、及び、プロピレングリコールモノエチルエーテル(PGEE)が好ましい。
乳酸エステルは、乳酸エチル、乳酸ブチル、又は、乳酸プロピルが好ましい。
酢酸エステルは、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸プロピル、酢酸イソアミル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸ブチル、蟻酸プロピル、又は、酢酸3-メトキシブチルが好ましい。
また、酪酸ブチルも好ましい。
アルコキシプロピオン酸エステルは、3-メトキシプロピオン酸メチル(MMP)、又は、3-エトキシプロピオン酸エチル(EEP)が好ましい。
鎖状ケトンは、1-オクタノン、2-オクタノン、1-ノナノン、2-ノナノン、アセトン、2-ヘプタノン、4-ヘプタノン、1-ヘキサノン、2-ヘキサノン、ジイソブチルケトン、フェニルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、アセトニルアセトン、イオノン、ジアセトニルアルコール、アセチルカービノール、アセトフェノン、メチルナフチルケトン、又は、メチルアミルケトンが好ましい。
環状ケトンは、メチルシクロヘキサノン、イソホロン、シクロペンタノン、又は、シクロヘキサノンが好ましい。
ラクトンは、γ-ブチロラクトンが好ましい。
アルキレンカーボネートは、プロピレンカーボネートが好ましい。
【0393】
成分(M2)は、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、乳酸エチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、酢酸ブチル、酢酸ペンチル、γ-ブチロラクトン、又は、プロピレンカーボネートがより好ましい。
【0394】
上記成分の他、炭素数が7以上(7~14が好ましく、7~12がより好ましく、7~10が更に好ましい)、かつ、ヘテロ原子数が2以下のエステル系溶剤を用いるのが好ましい。
【0395】
炭素数が7以上かつヘテロ原子数が2以下のエステル系溶剤としては、例えば、酢酸アミル、酢酸2-メチルブチル、酢酸1-メチルブチル、酢酸ヘキシル、プロピオン酸ペンチル、プロピオン酸ヘキシル、プロピオン酸ブチル、イソ酪酸イソブチル、プロピオン酸ヘプチル、及び、ブタン酸ブチル等が挙げられ、酢酸イソアミルが好ましい。
【0396】
成分(M2)は、引火点(以下、「fp」ともいう。)が37℃以上である溶剤が好ましい。このような成分(M2)は、プロピレングリコールモノメチルエーテル(fp:47℃)、乳酸エチル(fp:53℃)、3-エトキシプロピオン酸エチル(fp:49℃)、メチルアミルケトン(fp:42℃)、シクロヘキサノン(fp:44℃)、酢酸ペンチル(fp:45℃)、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル(fp:45℃)、γ-ブチロラクトン(fp:101℃)、又は、プロピレンカーボネート(fp:132℃)が好ましい。これらのうち、プロピレングリコールモノエチルエーテル、乳酸エチル、酢酸ペンチル、又は、シクロヘキサノンがより好ましく、プロピレングリコールモノエチルエーテル、又は、乳酸エチルが更に好ましい。
なお、ここで「引火点」とは、東京化成工業株式会社又はシグマアルドリッチ社の試薬カタログに記載されている値を意味している。
【0397】
溶剤は、成分(M1)を含んでいるのが好ましい。溶剤は、実質的に成分(M1)のみからなるか、又は、成分(M1)と他の成分との混合溶剤であるのがより好ましい。後者の場合、溶剤は、成分(M1)と成分(M2)との双方を含んでいるのが更に好ましい。
【0398】
成分(M1)と成分(M2)との質量比(M1/M2)は、「100/0」~「0/10」が好ましく、「100/0」~「15/85」がより好ましく、「100/0」~「40/60」が更に好ましく、「100/0」~「60/40」が特に好ましい。
つまり、溶剤は、成分(M1)と成分(M2)との双方を含む場合、成分(M2)に対する成分(M1)の質量比は、15/85以上が好ましく、40/60以上がより好ましく、60/40以上が更に好ましい。このような構成を採用すると、現像欠陥数を更に減少させられる。
【0399】
なお、溶剤が成分(M1)と成分(M2)との双方を含んでいる場合、成分(M2)に対する成分(M1)の質量比は、例えば、99/1以下とする。
【0400】
上述した通り、溶剤は、成分(M1)及び(M2)以外の成分を更に含んでいてもよい。この場合、成分(M1)及び(M2)以外の成分の含有量は、溶剤の全量に対して、5~30質量%が好ましい。
【0401】
レジスト組成物中の溶剤の含有量は、固形分濃度が0.5~30質量%となるように定めるのが好ましく、1~20質量%となるように定めるのがより好ましい。こうすると、
レジスト組成物の塗布性を更に向上させられる。
なお、固形分とは、溶剤以外の全ての成分を意味する。
【0402】
<酸拡散制御剤>
レジスト組成物は、酸拡散制御剤を更に含んでいてもよい。酸拡散制御剤は、光酸発生剤から生じた酸をトラップするクエンチャーとして作用し、レジスト膜中における酸の拡散現象を制御する役割を果たす。
酸拡散制御剤は、例えば、塩基性化合物であってもよい。
塩基性化合物は、下記一般式(A)~一般式(E)で示される構造を有する化合物が好ましい。
【0403】
【化79】
【0404】
一般式(A)及び一般式(E)中、R200、R201及びR202は、同一でも異なってもよく、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1~20)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3~20)又は、アリール基(好ましくは炭素数6~20)を表し、ここで、R201とR202は、互いに結合して環を形成してもよい。
【0405】
上記アルキル基について、置換基を有するアルキル基は、炭素数1~20のアミノアルキル基、炭素数1~20のヒドロキシアルキル基、又は、炭素数1~20のシアノアルキル基が好ましい。
203、R204、R205及びR206は、同一でも異なってもよく、炭素数1~20のアルキル基を表す。
これら一般式(A)及び一般式(E)中のアルキル基は、無置換であるのがより好ましい。
【0406】
塩基性化合物として、グアニジン、アミノピロリジン、ピラゾール、ピラゾリン、ピペラジン、アミノモルホリン、アミノアルキルモルフォリン(アルキル基部分は直鎖状でも分岐鎖状でもよく、一部がエーテル基及び/又はエステル基で置き換えられていてもよい。アルキル基部分の水素原子以外の全原子の合計数の合計は1~17が好ましい)、又は、ピペリジン等が好まし。なかでも、イミダゾール構造、ジアザビシクロ構造、オニウムヒドロキシド構造、オニウムカルボキシレート構造、トリアルキルアミン構造、アニリン構造、又は、ピリジン構造を有する化合物、水酸基及び/又はエーテル結合を有するアルキルアミン誘導体、又は、水酸基及び/又はエーテル結合を有するアニリン誘導体等がより好ましい。
【0407】
イミダゾール構造を有する化合物としては、例えば、イミダゾール、2、4、5-トリフェニルイミダゾール、及び、ベンズイミダゾール等が挙げられる。ジアザビシクロ構造を有する化合物としては、例えば、1、4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、1、5-ジアザビシクロ[4,3,0]ノナ-5-エン、及び、1、8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ-7-エン等が挙げられる。オニウムヒドロキシド構造を有する化合物としては、例えば、トリアリールスルホニウムヒドロキシド、フェナシルスルホニウムヒドロキシド、及び、2-オキソアルキル基を有するスルホニウムヒドロキシド等が挙げられる。具体的にはトリフェニルスルホニウムヒドロキシド、トリス(t-ブチルフェニル)スルホニウムヒドロキシド、ビス(t-ブチルフェニル)ヨードニウムヒドロキシド、フェナシルチオフェニウムヒドロキシド、及び、2-オキソプロピルチオフェニウムヒドロキシド等が挙げられる。オニウムカルボキシレート構造を有する化合物としては、オニウムヒドロキシド構造を有する化合物のアニオン部がカルボキシレートになったものであり、例えば、アセテート、アダマンタン-1-カルボキシレート、及び、パーフルオロアルキルカルボキシレート等が挙げられる。トリアルキルアミン構造を有する化合物としては、例えば、トリ(n-ブチル)アミン、及び、トリ(n-オクチル)アミン等が挙げられる。アニリン化合物としては、例えば、2,6-ジイソプロピルアニリン、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジブチルアニリン、及び、N,N-ジヘキシルアニリン等が挙げられる。水酸基及び/又はエーテル結合を有するアルキルアミン誘導体としては、例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリス(メトキシエトキシエチル)アミン、及び、「(HO-C-O-CN(-C-O-CH)」等が挙げられる。水酸基及び/又はエーテル結合を有するアニリン誘導体としては、例えば、N,N-ビス(ヒドロキシエチル)アニリン等が挙げられる。
【0408】
塩基性化合物として、フェノキシ基を有するアミン化合物、及び、フェノキシ基を有するアンモニウム塩化合物が好ましく挙げられる。
【0409】
アミン化合物としては、例えば、1級、2級、及び、3級のアミン化合物を使用でき、少なくとも1つのアルキル基が窒素原子に結合しているアミン化合物が好ましい。アミン化合物は、3級アミン化合物であるのがより好ましい。アミン化合物は、少なくとも1つのアルキル基(好ましくは炭素数1~20)が窒素原子に結合していれば、アルキル基の他に、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3~20)又はアリール基(好ましくは炭素数6~12)が窒素原子に結合していてもよい。
また、アミン化合物は、オキシアルキレン基を有するのが好ましい。オキシアルキレン基の数は、分子内に1以上が好ましく、3~9がより好ましく、4~6が更に好ましい。
オキシアルキレン基のなかでもオキシエチレン基(-CHCHO-)、又は、オキシプロピレン基(-CH(CH)CHO-若しくはCHCHCHO-)が好ましく、オキシエチレン基がより好ましい。
【0410】
アンモニウム塩化合物としては、例えば、1級、2級、3級、及び、4級のアンモニウム塩化合物が挙げられ、少なくとも1つのアルキル基が窒素原子に結合しているアンモニウム塩化合物が好ましい。アンモニウム塩化合物は、少なくとも1つのアルキル基(好ましくは炭素数1~20)が窒素原子に結合していれば、アルキル基の他に、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3~20)又はアリール基(好ましくは炭素数6~12)が窒素原子に結合していてもよい。
アンモニウム塩化合物は、オキシアルキレン基を有するのが好ましい。オキシアルキレン基の数は、分子内に1以上が好ましく、3~9がより好ましく、4~6が更に好ましい。オキシアルキレン基のなかでもオキシエチレン基(-CHCHO-)、又は、オキシプロピレン基(-CH(CH)CHO-、又は、-CHCHCHO-)が好ましく、オキシエチレン基がより好ましい。
アンモニウム塩化合物のアニオンとしては、例えば、ハロゲン原子、スルホネート、ボレート、及び、フォスフェート等が挙げられ、なかでも、ハロゲン原子、又は、スルホネートが好ましい。ハロゲン原子は、塩素原子、臭素原子、又は、ヨウ素原子が好ましい。
スルホネートは、炭素数1~20の有機スルホネートが好ましい。有機スルホネートとしては、例えば、炭素数1~20のアルキルスルホネート、及び、アリールスルホネートが挙げられる。アルキルスルホネートのアルキル基は置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、アルコキシ基、アシル基、及び、芳香環基等が挙げられる。アルキルスルホネートとしては、例えば、メタンスルホネート、エタンスルホネート、ブタンスルホネート、ヘキサンスルホネート、オクタンスルホネート、ベンジルスルホネート、トリフルオロメタンスルホネート、ペンタフルオロエタンスルホネート、及び、ノナフルオロブタンスルホネート等が挙げられる。アリールスルホネートのアリール基としてはベンゼン環基、ナフタレン環基、及び、アントラセン環基が挙げられる。ベンゼン環基、ナフタレン環基、及び、アントラセン環基が有し得る置換基は、炭素数1~6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、又は、炭素数3~6のシクロアルキル基が好ましい。直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、及び、シクロアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基、n-ヘキシル基、及び、シクロヘキシル基等が挙げられる。他の置換基としては、例えば、炭素数1~6のアルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アシル基、及び、アシルオキシ基等が挙げられる。
【0411】
フェノキシ基を有するアミン化合物、及び、フェノキシ基を有するアンモニウム塩化合物とは、アミン化合物又はアンモニウム塩化合物のアルキル基の窒素原子と反対側の末端にフェノキシ基を有するものである。
フェノキシ基の置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、スルホン酸エステル基、アリール基、アラルキル基、アシルオキシ基、及び、アリールオキシ基等が挙げられる。置換基の置換位は、2~6位のいずれであってもよい。置換基の数は、1~5のいずれであってもよい。
【0412】
フェノキシ基と窒素原子との間に、少なくとも1つのオキシアルキレン基を有するのが好ましい。オキシアルキレン基の数は、分子内に1以上が好ましく、3~9がより好ましく、4~6が更に好ましい。オキシアルキレン基のなかでもオキシエチレン基(-CHCHO-)、又は、オキシプロピレン基(-CH(CH)CHO-又は-CHCHCHO-)が好ましく、オキシエチレン基がより好ましい。
【0413】
フェノキシ基を有するアミン化合物は、フェノキシ基を有する1又は2級アミン及びハロアルキルエーテルを加熱して反応させた後、反応系に強塩基(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及び、テトラアルキルアンモニウム等)の水溶液を添加し、更に、有機溶剤(例えば、酢酸エチル及びクロロホルム等)で反応生成物を抽出して得られる。又は、1又は2級アミンと末端にフェノキシ基を有するハロアルキルエーテルを加熱して反応させた後、反応系に強塩基の水溶液を添加し、更に、有機溶剤で反応生成物を抽出して得られる。
【0414】
(プロトンアクセプター性官能基を有し、かつ、活性光線又は放射線の照射により分解してプロトンアクセプター性が低下、消失、又は、プロトンアクセプター性から酸性に変化した化合物を発生する化合物(PA))
レジスト組成物は、酸拡散制御剤として、プロトンアクセプター性官能基を有し、かつ、活性光線又は放射線の照射により分解してプロトンアクセプター性が低下若しくは消失、又は、プロトンアクセプター性から酸性に変化した化合物を発生する化合物(以下、「化合物(PA)」ともいう。)を含んでいてもよい。
【0415】
プロトンアクセプター性官能基とは、プロトンと静電的に相互作用し得る基、又は、電子を有する官能基であって、例えば、環状ポリエーテル等のマクロサイクリック構造を有する官能基、又は、π共役に寄与しない非共有電子対を持った窒素原子を有する官能基を意味する。π共役に寄与しない非共有電子対を有する窒素原子とは、例えば、下記一般式に示す部分構造を有する窒素原子である。
【0416】
【化80】
【0417】
プロトンアクセプター性官能基の好ましい部分構造として、例えば、クラウンエーテル構造、アザクラウンエーテル構造、1~3級アミン構造、ピリジン構造、イミダゾール構造、及び、ピラジン構造等が挙げられる。
【0418】
化合物(PA)は、活性光線又は放射線の照射により分解してプロトンアクセプター性が低下若しくは消失、又は、プロトンアクセプター性から酸性に変化した化合物を発生する。ここで、プロトンアクセプター性の低下若しくは消失、又は、プロトンアクセプター性から酸性への変化とは、プロトンアクセプター性官能基にプロトンが付加することに起因するプロトンアクセプター性の変化である。具体的には、プロトンアクセプター性官能基を有する化合物(PA)とプロトンからプロトン付加体が生成する時、その化学平衡に於ける平衡定数が減少することを意味する。
【0419】
化合物(PA)としては、例えば、特開2014-41328号公報の段落[0421]~[0428]、及び、特開2014-134686号公報の段落[0108]~[0116]に記載されたものを援用でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0420】
窒素原子を有し、酸の作用により脱離する基を有する低分子化合物も酸拡散制御剤として使用できる。上記低分子化合物は、酸の作用により脱離する基を窒素原子上に有するアミン誘導体が好ましい。
酸の作用により脱離する基は、アセタール基、カルボネート基、カルバメート基、3級エステル基、3級水酸基、又は、ヘミアミナールエーテル基が好ましく、カルバメート基、又は、ヘミアミナールエーテル基がより好ましい。
低分子化合物の分子量は、100~1000が好ましく、100~700がより好ましく、100~500が更に好ましい。
低分子化合物は、窒素原子上に保護基を有するカルバメート基を有してもよい。
【0421】
下記に、酸拡散制御剤の具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0422】
【化81】
【0423】
【化82】
【0424】
【化83】
【0425】
【化84】
【0426】
【化85】
【0427】
レジスト組成物が酸拡散制御剤を含む場合、酸拡散制御剤の含有量は、レジスト組成物の全固形分に対して、0.001~15質量%が好ましく、0.01~8質量%がより好ましい。
酸拡散制御剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。
また、レジスト組成物が式(d1-1)~(d1-3)のいずれかで表されるアニオンを有する特定化合物及び/又は式(d1-1)~(d1-3)のいずれかで表されるアニオンを有するその他の光酸発生剤(以下、これらを総称して「d1系光酸発生剤」ともいう。)を含む場合、d1系光酸発生剤にも酸拡散制御剤としての役割を持たせることもできる。レジスト組成物がd1系光酸発生剤を含む場合、レジスト組成物が酸拡散制御剤を実質的に含まないのも好ましい。ここで酸拡散制御剤を実質的に含まないとは、酸拡散制御剤の含有量が、d1系光酸発生剤の合計含有量に対して5質量%以下であることを意図する。
また、レジスト組成物がd1系光酸発生剤と酸拡散制御剤との両方を含む場合、その合計含有量は、1~30質量%が好ましく、3~20質量%がより好ましい。
【0428】
光酸発生剤と酸拡散制御剤とのレジスト組成物中の使用割合は、光酸発生剤/酸拡散制御剤(モル比)=2.0~300であるのが好ましい。感度及び解像度の点からモル比は2.0以上が好ましく、露光後加熱処理までの経時でのレジストパターンの太りによる解像度の低下抑制の点からモル比は300以下が好ましい。光酸発生剤/酸拡散制御剤(モル比)は、2.0~200がより好ましく、2.0~150が更に好ましい。
【0429】
酸拡散制御剤としては、例えば、特開2013-011833号公報の段落[0140]~[0144]に記載の化合物(アミン化合物、アミド基含有化合物、ウレア化合物、及び、含窒素複素環化合物等)も挙げられる。
【0430】
<疎水性樹脂>
レジスト組成物は、上記樹脂(A)とは別に、樹脂(A)とは異なる疎水性樹脂を含んでいてもよい。
疎水性樹脂はレジスト膜の表面に偏在するように設計されるのが好ましいが、界面活性剤とは異なり、必ずしも分子内に親水基を有する必要はなく、極性物質及び非極性物質の均一な混合に寄与しなくてもよい。
疎水性樹脂の添加による効果として、水に対するレジスト膜表面の静的及び動的な接触角の制御、並びに、アウトガスの抑制等が挙げられる。
【0431】
疎水性樹脂は、膜表層への偏在化の点から、“フッ素原子”、“珪素原子”、及び、“樹脂の側鎖部分に含まれたCH部分構造”のいずれか1種以上を有するのが好ましく、2種以上を有するのがより好ましい。また、上記疎水性樹脂は、炭素数5以上の炭化水素基を有するのが好ましい。これらの基は樹脂の主鎖中に有していても、側鎖に置換していてもよい。
【0432】
疎水性樹脂が、フッ素原子及び/又は珪素原子を含む場合、疎水性樹脂における上記フッ素原子及び/又は珪素原子は、樹脂の主鎖中に含まれていてもよく、側鎖中に含まれていてもよい。
【0433】
疎水性樹脂がフッ素原子を含んでいる場合、フッ素原子を有する部分構造は、フッ素原子を有するアルキル基、フッ素原子を有するシクロアルキル基、又は、フッ素原子を有するアリール基が好ましい。
フッ素原子を有するアルキル基(好ましくは炭素数1~10、より好ましくは炭素数1~4)は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基であり、更にフッ素原子以外の置換基を有していてもよい。
フッ素原子を有するシクロアルキル基は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された単環又は多環のシクロアルキル基であり、更にフッ素原子以外の置換基を有していてもよい。
フッ素原子を有するアリール基としては、例えば、フェニル基、及び、ナフチル基等のアリール基の少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたものが挙げられ、更にフッ素原子以外の置換基を有していてもよい。
フッ素原子又は珪素原子を有する繰り返し単位としては、例えば、US2012/0251948A1の段落[0519]に例示された繰り返し単位が挙げられる。
【0434】
また、上記したように、疎水性樹脂は、側鎖部分にCH部分構造を含むのも好ましい。
ここで、疎水性樹脂中の側鎖部分が有するCH部分構造は、エチル基、及び、プロピル基等が有するCH部分構造を含むものである。
一方、疎水性樹脂の主鎖に直接結合しているメチル基(例えば、メタクリル酸構造を有する繰り返し単位のα-メチル基)は、主鎖の影響により疎水性樹脂の表面偏在化への寄与が小さいため、本発明におけるCH部分構造には含めない。
【0435】
疎水性樹脂は酸分解性基を有する繰り返し単位を有していてもよい。
【0436】
疎水性樹脂に関しては、特開2014-010245号公報の段落[0348]~[0415]の記載を参酌でき、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。
【0437】
なお、疎水性樹脂はこの他にも特開2011-248019号公報、特開2010-175859号公報、特開2012-032544号公報記載の樹脂も好ましく使用できる。
【0438】
疎水性樹脂を構成する繰り返し単位に相当するモノマーの好ましい例を以下に示す。
【0439】
【化86】
【0440】
【化87】
【0441】
レジスト組成物が疎水性樹脂を含む場合、疎水性樹脂の含有量は、レジスト組成物の全固形分に対して、0.01~20質量%が好ましく、0.1~15質量%がより好ましい。
【0442】
<界面活性剤>
レジスト組成物は、界面活性剤を含んでいてもよい。界面活性剤を含むと、密着性により優れ、現像欠陥のより少ないパターンを形成できる。
界面活性剤は、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤が好ましい。
フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤としては、例えば、米国特許出願公開第2008/0248425号明細書の段落[0276]に記載の界面活性剤が挙げられる。また、エフトップEF301、又は、EF303(新秋田化成(株)製);フロラードFC430、431、及び、4430(住友スリーエム(株)製);メガファックF171、F173、F176、F189、F113、F110、F177、F120、及び、R08(DIC(株)製);サーフロンS-382、SC101、102、103、104、105又は106(旭硝子(株)製);トロイゾルS-366(トロイケミカル(株)製);GF-300又はGF-150(東亜合成化学(株)製)、サーフロンS-393(セイミケミカル(株)製);エフトップEF121、EF122A、EF122B、RF122C、EF125M、EF135M、EF351、EF352、EF801、EF802又はEF601((株)ジェムコ製);PF636、PF656、PF6320、及び、PF6520(OMNOVA社製);KH-20(旭化成(株)製);FTX-204G、208G、218G、230G、204D、208D、212D、218D、及び、222D((株)ネオス製)を用いてもよい。なお、ポリシロキサンポリマーKP-341(信越化学工業(株)製)も、シリコン系界面活性剤として使用できる。
【0443】
また、界面活性剤は、上記に示すような公知の界面活性剤の他に、テロメリゼーション法(テロマー法ともいわれる)又はオリゴメリゼーション法(オリゴマー法ともいわれる)により製造されたフルオロ脂肪族化合物を用いて合成してもよい。具体的には、このフルオロ脂肪族化合物から導かれたフルオロ脂肪族基を備えた重合体を、界面活性剤として用いてもよい。このフルオロ脂肪族化合物は、例えば、特開2002-090991号公報に記載された方法によって合成できる。
また、米国特許出願公開第2008/0248425号明細書の段落[0280]に記載されているフッ素系及び/又はシリコン系以外の界面活性剤を使用してもよい。
【0444】
これら界面活性剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を使用してもよい。
【0445】
レジスト組成物が界面活性剤を含む場合、界面活性剤の含有量は、組成物の全固形分に対して、0.0001~2質量%が好ましく、0.0005~1質量%がより好ましい。
【0446】
<その他の添加剤>
レジスト組成物は、溶解阻止化合物、染料、可塑剤、光増感剤、光吸収剤、及び/又は、現像液に対する溶解性を促進させる化合物(例えば、分子量1000以下のフェノール化合物、又は、カルボン酸基を含んだ脂環族若しくは脂肪族化合物)を更に含んでいてもよい。
【0447】
レジスト組成物は、溶解阻止化合物を更に含んでいてもよい。ここで「溶解阻止化合物」とは、酸の作用により分解して有機系現像液中での溶解度が減少する、分子量3000以下の化合物である。
【0448】
〔レジスト膜、パターン形成方法〕
上記レジスト組成物を用いたパターン形成方法の手順は特に制限されないが、以下の工程を有するのが好ましい。
工程1:レジスト組成物を用いて、基板上にレジスト膜を形成する工程
工程2:レジスト膜を露光する工程
工程3:現像液を用いて、露光されたレジスト膜を現像し、パターンを形成する工程
以下、上記それぞれの工程の手順について詳述する。
【0449】
<工程1:レジスト膜形成工程>
工程1は、レジスト組成物を用いて、基板上にレジスト膜を形成する工程である。
レジスト組成物の定義は、上述の通りである。
【0450】
レジスト組成物を用いて基板上にレジスト膜を形成する方法としては、例えば、レジスト組成物を基板上に塗布する方法が挙げられる。
なお、塗布前にレジスト組成物を必要に応じてフィルター濾過するのが好ましい。フィルターのポアサイズは、0.1μm以下が好ましく、0.05μm以下がより好ましく、0.03μm以下が更に好ましい。また、フィルターは、ポリテトラフルオロエチレン製、ポリエチレン製、又は、ナイロン製が好ましい。
【0451】
レジスト組成物は、集積回路素子の製造に使用されるような基板(例:シリコン、二酸化シリコン被覆)上に、スピナー又はコーター等の適当な塗布方法により塗布できる。塗布方法は、スピナーを用いたスピン塗布が好ましい。スピナーを用いたスピン塗布をする際の回転数は、1000~3000rpmが好ましい。
レジスト組成物の塗布後、基板を乾燥し、レジスト膜を形成してもよい。なお、必要により、レジスト膜の下層に、各種下地膜(無機膜、有機膜、反射防止膜)を形成してもよい。
【0452】
乾燥方法としては、例えば、加熱して乾燥する方法が挙げられる。加熱は通常の露光機、及び/又は、現像機に備わっている手段で実施でき、ホットプレート等を用いて実施してもよい。加熱温度は80~150℃が好ましく、80~140℃がより好ましく、80~130℃が更に好ましい。加熱時間は30~1000秒が好ましく、60~800秒がより好ましく、60~600秒が更に好ましい。
【0453】
レジスト膜の膜厚は特に制限されないが、より高精度な微細パターンを形成できる点から、10~65nmが好ましく、15~50nmがより好ましい。
【0454】
なお、レジスト膜の上層にトップコート組成物を用いてトップコートを形成してもよい。
トップコート組成物は、レジスト膜と混合せず、更にレジスト膜上層に均一に塗布できるのが好ましい。
トップコート組成物は、例えば、樹脂と添加剤と溶剤とを含む。
上記樹脂としては、上述の疎水性樹脂と同様の樹脂を使用できる。樹脂の含有量は、トップコート組成物の全固形分に対して、50~99.9質量%が好ましく、60~99.7質量%がより好ましい。
上記添加剤としては、上述の酸拡散制御剤及びd1系光酸発生剤を使用できる。また、N-オキシルフリーラジカル基を有する化合物のようなラジカルトラップ基を有する化合物も使用できる。このような化合物としては、例えば、[4-(ベンゾイルオキシ)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジノオキシ]ラジカルが挙げられる。添加剤の含有量は、トップコート組成物の全固形分に対して、0.01~20質量%が好ましく、0.1~15質量%がより好ましい。
上記溶剤は、レジスト膜を溶解しないのが好ましく、例えば、アルコール系溶剤(4-メチル-2-ペンタノール等)、エーテル系溶剤(ジイソアミルエーテル等)、エステル系溶剤、フッ素系溶剤、及び、炭化水素系溶剤(n-デカン等)が挙げられる。
トップコート組成物中の溶剤の含有量は、固形分濃度が0.5~30質量%となるように定めることが好ましく、1~20質量%となるように定めることがより好ましい。
また、トップコート組成物は、上述の添加剤以外に界面活性剤を含んでもよく、上記界面活性剤としては、本発明の組成物が含んでもよい界面活性剤を使用できる。界面活性剤の含有量は、トップコート組成物の全固形分に対して、0.0001~2質量%が好ましく、0.0005~1質量%がより好ましい。
その他にも、トップコートは、特に限定されず、従来公知のトップコートを、従来公知の方法によって形成でき、例えば、特開2014-059543号公報の段落[0072]~[0082]の記載に基づいてトップコートを形成できる。
例えば、特開2013-061648号公報に記載されたような塩基性化合物を含むトップコートを、レジスト膜上に形成するのが好ましい。トップコートが含み得る塩基性化合物の具体的な例は、レジスト組成物が含んでいてもよい塩基性化合物が挙げられる。
また、トップコートは、エーテル結合、チオエーテル結合、水酸基、チオール基、カルボニル結合、及び、エステル結合からなる群から選択される基又は結合を少なくとも一つ含む化合物を含むのも好ましい。
【0455】
<工程2:露光工程>
工程2は、レジスト膜を露光する工程である。
露光の方法としては、例えば、形成したレジスト膜に所定のマスクを通してEUV光を照射する方法が挙げられる。
【0456】
露光後、現像を行う前にベーク(加熱)を行うのが好ましい。ベークにより露光部の反応が促進され、感度及びパターン形状がより良好となる。
加熱温度は80~150℃が好ましく、80~140℃がより好ましく、80~130℃が更に好ましい。
加熱時間は10~1000秒が好ましく、10~180秒がより好ましく、30~120秒が更に好ましい。
加熱は通常の露光機及び/又は現像機に備わっている手段で実施でき、ホットプレート等を用いて行ってもよい。
この工程は露光後ベークともいう。
【0457】
<工程3:現像工程>
工程3は、現像液を用いて、露光されたレジスト膜を現像し、パターンを形成する工程である。
現像液は、アルカリ現像液であっても、有機溶剤を含有する現像液(以下、「有機系現像液」ともいう。)であってもよい。
【0458】
現像方法としては、例えば、現像液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静置して現像する方法(パドル法)、基板表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、及び、一定速度で回転している基板上に一定速度で現像液吐出ノズルをスキャンしながら現像液を吐出しつづける方法(ダイナミックディスペンス法)が挙げられる。
また、現像を行う工程の後に、他の溶剤に置換しながら、現像を停止する工程を実施してもよい。
現像時間は未露光部の樹脂が十分に溶解する時間であれば特に制限はなく、10~300秒が好ましく、20~120秒がより好ましい。
現像液の温度は0~50℃が好ましく、15~35℃がより好ましい。
【0459】
アルカリ現像液は、アルカリを含むアルカリ水溶液を用いるのが好ましい。アルカリ水溶液の種類は特に制限されないが、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドに代表される4級アンモニウム塩、無機アルカリ、1級アミン、2級アミン、3級アミン、アルコールアミン、又は、環状アミン等を含むアルカリ水溶液が挙げられる。なかでも、アルカリ現像液は、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)に代表される4級アンモニウム塩の水溶液であるのが好ましい。アルカリ現像液には、アルコール類、界面活性剤等を適当量添加してもよい。アルカリ現像液のアルカリ濃度は、通常、0.1~20質量%である。また、アルカリ現像液のpHは、通常、10.0~15.0である。
【0460】
有機系現像液は、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤、及び、炭化水素系溶剤からなる群から選択される少なくとも1種の有機溶剤を含有する現像液であるのが好ましい。
【0461】
ケトン系溶剤としては、例えば、1-オクタノン、2-オクタノン、1-ノナノン、2-ノナノン、アセトン、2-ヘプタノン(メチルアミルケトン)、4-ヘプタノン、1-ヘキサノン、2-ヘキサノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、フェニルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、アセトニルアセトン、イオノン、ジアセトニルアルコール、アセチルカービノール、アセトフェノン、メチルナフチルケトン、イソホロン、及び、プロピレンカーボネート等を挙げられる。
【0462】
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチルー3-エトキシプロピオネート、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸ブチル、蟻酸プロピル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル、ブタン酸ブチル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル、イソ酪酸イソブチル、及び、プロピオン酸ブチル等を挙げられる。
【0463】
アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤、及び、炭化水素系溶剤としては、例えば、米国特許出願公開2016/0070167A1号明細書の段落[0715]~[0718]に開示された溶剤を使用できる。
【0464】
上記の溶剤は、複数混合してもよいし、上記以外の溶剤又は水と混合してもよい。現像液全体としての含水率は、50質量%未満が好ましく、20質量%未満がより好ましく、10質量%未満が更に好ましく、実質的に水分を含有しないのが特に好ましい。
有機系現像液に対する有機溶剤の含有量は、現像液の全量に対して、50質量%以上100質量%以下が好ましく、80質量%以上100質量%以下がより好ましく、90質量%以上100質量%以下が更に好ましく、95質量%以上100質量%以下が特に好ましい。
【0465】
<他の工程>
上記パターン形成方法は、工程3の後に、リンス液を用いて洗浄する工程を含むのが好ましい。
【0466】
アルカリ現像液を用いて現像する工程の後のリンス工程に用いるリンス液としては、例えば、純水が挙げられる。なお、純水には、界面活性剤を適当量添加してもよい。
リンス液には、界面活性剤を適当量添加してもよい。
【0467】
有機系現像液を用いた現像工程の後のリンス工程に用いるリンス液は、パターンを溶解しないものであれば特に制限はなく、一般的な有機溶剤を含む溶液を使用できる。リンス液は、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、及び、エーテル系溶剤からなる群から選択される少なくとも1種の有機溶剤を含有するリンス液を用いるのが好ましい。
炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、及び、エーテル系溶剤の例としては、有機溶剤を含む現像液において説明したものと同様のものが挙げられる。
【0468】
リンス工程の方法は特に限定されず、例えば、一定速度で回転している基板上にリンス液を吐出しつづける方法(回転塗布法)、リンス液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、及び、基板表面にリンス液を噴霧する方法(スプレー法)等が挙げられる。
また、本発明のパターン形成方法は、リンス工程の後に加熱工程(Post Bake)を含んでいてもよい。本工程により、ベークによりパターン間及びパターン内部に残留した現像液及びリンス液が除去される。また、本工程により、レジストパターンがなまされ、パターンの表面荒れが改善される効果もある。リンス工程の後の加熱工程は、通常40~250℃(好ましくは90~200℃)で、通常10秒間~3分間(好ましくは30秒間~120秒間)行う。
【0469】
また、形成されたパターンをマスクとして、基板のエッチング処理を実施してもよい。つまり、工程3にて形成されたパターンをマスクとして、基板(又は、下層膜及び基板)を加工して、基板にパターンを形成してもよい。
基板(又は、下層膜及び基板)の加工方法は特に限定されないが、工程3で形成されたパターンをマスクとして、基板(又は、下層膜及び基板)に対してドライエッチングを行うことにより、基板にパターンを形成する方法が好ましい。
ドライエッチングは、1段のエッチングであっても、複数段からなるエッチングであってもよい。エッチングが複数段からなるエッチングである場合、各段のエッチングは同一の処理であっても異なる処理であってもよい。
エッチングは、公知の方法をいずれも使用でき、各種条件等は、基板の種類又は用途等に応じて、適宜、決定される。例えば、国際光工学会紀要(Proc.of SPIE)Vol.6924,692420(2008)、特開2009-267112号公報等に準じて、エッチングを実施できる。また、「半導体プロセス教本 第4版 2007年刊行 発行人:SEMIジャパン」の「第4章 エッチング」に記載の方法に準ずることもできる。
なかでも、ドライエッチングは、酸素プラズマエッチングが好ましい。
【0470】
レジスト組成物、及び、本発明のパターン形成方法において使用される各種材料(例えば、溶剤、現像液、リンス液、反射防止膜形成用組成物、トップコート形成用組成物等)は、金属等の不純物を含まないのが好ましい。これら材料に含まれる不純物の含有量は、1質量ppm以下が好ましく、10質量ppb以下がより好ましく、100質量ppt以下が更に好ましく、10質量ppt以下が特に好ましく、1質量ppt以下が最も好ましい。ここで、金属不純物としては、例えば、Na、K、Ca、Fe、Cu、Mg、Al、Li、Cr、Ni、Sn、Ag、As、Au、Ba、Cd、Co、Pb、Ti、V、W、及び、Zn等が挙げられる。
【0471】
各種材料から金属等の不純物を除去する方法としては、例えば、フィルターを用いた濾過が挙げられる。フィルター孔径は、ポアサイズ100nm未満が好ましく、10nm以下がより好ましく、5nm以下が更に好ましい。フィルターは、ポリテトラフルオロエチレン製、ポリエチレン製、又は、ナイロン製のフィルターが好ましい。フィルターは、上記フィルター素材とイオン交換メディアとを組み合わせた複合材料で構成されていてもよい。フィルターは、有機溶剤であらかじめ洗浄したフィルターを用いてもよい。フィルター濾過工程では、複数種類のフィルターを直列又は並列に接続して用いてもよい。複数種類のフィルターを使用する場合は、孔径及び/又は材質が異なるフィルターを組み合わせて使用してもよい。また、各種材料を複数回濾過してもよく、複数回濾過する工程が循環濾過工程であってもよい。
レジスト組成物の製造においては、例えば、樹脂、及び、光酸発生剤等の各成分を溶剤に溶解させた後、素材が異なる複数のフィルターを用いて循環濾過を行うのが好ましい。例えば、孔径50nmのポリエチレン製フィルター、孔径10nmのナイロン製フィルター、孔径3nmのポリエチレン製フィルターを順列に接続し、10回以上循環濾過を行うのが好ましい。フィルター間の圧力差は小さい程好ましく、一般的には0.1MPa以下であり、0.05MPa以下が好ましく、0.01MPa以下がより好ましい。フィルターと充填ノズルの間の圧力差も小さい程好ましく、一般的には0.5MPa以下であり、0.2MPa以下が好ましく、0.1MPa以下がより好ましい。
レジスト組成物の製造装置の内部は、窒素等の不活性ガスによってガス置換を行うのが好ましい。これにより、酸素等の活性ガスのレジスト組成物中への溶解を抑制できる。
レジスト組成物はフィルターによって濾過された後、清浄な容器に充填される。容器に充填されたレジスト組成物は、冷蔵保存されるのが好ましい。これにより、経時による性能劣化が抑制される。組成物の容器への充填が完了してから、冷蔵保存を開始するまでの時間は短い程好ましく、一般的には24時間以内であり、16時間以内が好ましく、12時間以内がより好ましく、10時間以内が更に好ましい。保存温度は0~15℃が好ましく、0~10℃がより好ましく、0~5℃が更に好ましい。
【0472】
また、各種材料に含まれる金属等の不純物を低減する方法としては、例えば、各種材料を構成する原料として金属含有量が少ない原料を選択する方法、各種材料を構成する原料に対してフィルター濾過を行う方法、及び、装置内をテフロン(登録商標)でライニングする等してコンタミネーションを可能な限り抑制した条件下で蒸留を行う方法等が挙げられる。
【0473】
フィルター濾過の他、吸着材による不純物の除去を行ってもよく、フィルター濾過と吸着材とを組み合わせて使用してもよい。吸着材としては、公知の吸着材を使用でき、例えば、シリカゲル及びゼオライト等の無機系吸着材、並びに、活性炭等の有機系吸着材を使用できる。上記各種材料に含まれる金属等の不純物を低減するためには、製造工程における金属不純物の混入を防止する必要がある。製造装置から金属不純物が十分に除去されたかどうかは、製造装置の洗浄に使用された洗浄液中に含まれる金属成分の含有量を測定して確認できる。使用後の洗浄液に含まれる金属成分の含有量は、100質量ppt(parts per trillion)以下が好ましく、10質量ppt以下がより好ましく、1質量ppt以下が更に好ましい。
【0474】
リンス液等の有機系処理液には、静電気の帯電、引き続き生じる静電気放電に伴う、薬液配管及び各種パーツ(フィルター、O-リング、チューブ等)の故障を防止するため、導電性の化合物を添加してもよい。導電性の化合物は特に制限されないが、例えば、メタノールが挙げられる。添加量は特に制限されないが、好ましい現像特性又はリンス特性を維持する点で、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。
薬液配管としては、例えば、SUS(ステンレス鋼)、又は、帯電防止処理の施されたポリエチレン、ポリプロピレン、若しくは、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン、又は、パーフルオロアルコキシ樹脂等)で被膜された各種配管を使用できる。フィルター及びO-リングに関しても同様に、帯電防止処理の施されたポリエチレン、ポリプロピレン、又は、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン、又は、パーフルオロアルコキシ樹脂等)を使用できる。
【0475】
本発明の方法により形成されるパターンに対して、パターンの表面荒れを改善する方法を適用してもよい。パターンの表面荒れを改善する方法としては、例えば、国際公開第2014/002808号に開示された水素を含有するガスのプラズマによってパターンを処理する方法が挙げられる。その他にも、特開2004-235468号公報、米国特許出願公開第2010/0020297号明細書、特開2008-083384号公報、及び、Proc. of SPIE Vol.8328 83280N-1”EUV Resist Curing Technique for LWR Reduction and Etch Selectivity Enhancement”に記載されているような公知の方法が挙げられる。
【0476】
形成されるパターンがライン状である場合、パターン高さをライン幅で割った値で求められるアスペクト比が、2.5以下が好ましく、2.1以下がより好ましく、1.7以下が更に好ましい。
形成されるパターンがトレンチ(溝)パターン状又はコンタクトホールパターン状である場合、パターン高さをトレンチ幅又はホール径で割った値で求められるアスペクト比が、4.0以下が好ましく、3.5以下がより好ましく、3.0以下が更に好ましい。
【0477】
本発明のパターン形成方法は、DSA(Directed Self-Assembly)におけるガイドパターン形成(例えば、ACS Nano Vol.4 No.8 Page4815-4823参照)にも使用できる。
【0478】
また、上記の方法によって形成されたパターンは、例えば、特開平3-270227号公報、及び、特開2013-164509号公報に開示されたスペーサープロセスの芯材(コア)として使用できる。
【0479】
また、本発明は、上記したパターン形成方法を含む、電子デバイスの製造方法、及び、この製造方法により製造された電子デバイスにも関する。
本発明の電子デバイスは、電気電子機器(家電、OA(Office Automation)、メディア関連機器、光学用機器及び通信機器等)に、好適に、搭載されるものである。
【実施例
【0480】
以下に実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、及び、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更できる。従って、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきではない。
【0481】
〔感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の製造〕
以下に、実施例又は比較例で用いた感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物(以下、「レジスト組成物」ともいう。)が含む成分及び製造の手順を示す。
【0482】
<光酸発生剤(特定化合物及び比較用化合物)>
(特定化合物X-1の合成)
特定化合物X-1を、下記スキームに基づいて合成した。
【0483】
【化88】
【0484】
マグネシウム(18.0g)をテトラヒドロフラン(500mL)に加え、混合物を得た。得られた混合物に、4-ブロモベンゼントリフルオリド(151.5g)を滴下した。その後、上記混合物を、1時間攪拌し、グリニャール試薬X-1-1を調製した。塩化チオニル(37.7g)をテトラヒドロフラン(500mL)に加え、混合液を得た。得られた混合液を0℃に冷却し、上記混合液に、先に調製したグリニャール試薬X-1-1を滴下した。上記混合液を1時間攪拌した後、上記混合液に1N塩酸(600mL)を、上記混合液の温度を0℃に維持しながら添加した。上記混合液中に生成された反応生成物を酢酸エチル(600mL)で抽出した。得られた有機相を、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(500mL)及び水(500mL)で洗浄し、その後、上記有機相から溶媒を留去した。得られた濃縮物をヘキサン(300mL)で洗浄し、濾過することでX-1-A(60g)を得た(収率56%)。
【0485】
【化89】
【0486】
X-1-A(30.0g)を五酸化ニリン(6.8g)とメタンスルホン酸(90.8g)の混合物に加えた。得られた混合物を、10℃に冷却した後、2,6-ジメチルフェノール(11.9g)を加えて20℃で30分攪拌した。得られた混合物を50℃に加熱し更に3時間攪拌した後、20℃以下で水(300mL)を滴下した。塩化メチレン(300mL)で抽出し、有機層を水(300mL)で洗浄し、溶媒を留去した。濃縮物を酢酸エチル(300mL)で晶析し、濾過することでX-1-B(35g)を得た(収率73%)。
【0487】
【化90】
【0488】
X-1-B(20.0g)に、tert-ブチル-2-ブロモアセテート(7.9g)、炭酸セシウム(18.2g)、及び、ジメチルアセトアミド(174g)を加え、40℃で2時間攪拌した。得られた混合物を室温まで冷却し、濾過した後、塩化メチレン(150g)を加え、1N塩酸(100mL)で2回洗浄した。更に有機層を水(100mL)で2回洗浄した後、溶媒を留去した。濃縮物をジイソプロピルエーテル(200mL)で晶析し、濾過することでX-1-C(19g)を得た(収率78%)。
【0489】
【化91】

塩化メチレン(100mL)と、水(100mL)とを混合した後、X-1-2(5.0g)、及び、X-1-C(8.0g)を加えた。1時間攪拌後、水層を除去し、有機層を1質量%炭酸カリウム水溶液(100mL)、0.1N塩酸(100mL)、及び、水(100mL)で洗浄した。溶媒を留去することで、X-1(10.3g)を得た(収率95%)。
【0490】
上記合成方法を参考に、実施例の特定化合物X-2~X-29を合成した。以下に示す。
【0491】
【化92】
【0492】
【化93】
【0493】
【化94】
【0494】
【化95】
【0495】
【化96】
【0496】
以下に、比較用化合物Z-1~Z-3を示す。
【0497】
【化97】
【0498】
<酸分解性樹脂(樹脂(A))>
レジスト組成物の製造に使用した酸分解性樹脂(樹脂(A))を以下に示す。*は結合位置を表す。
【0499】
【化98】
【0500】
【化99】
【0501】
【化100】
【0502】
【化101】
【0503】
上記に示した各樹脂を構成する繰り返し単位のモル比率(左から順A,B,C,Dに対応)、各樹脂の重量平均分子量(Mw)、及び、分散度(Mw/Mn)を下記表1に示す。
【0504】
【表1】
【0505】
以下に、光酸発生剤を示す。
【0506】
【化102】
【0507】
<酸拡散制御剤>
レジスト組成物が酸拡散制御剤を含む場合、下記酸拡散制御剤を使用した。
【0508】
【化103】
【0509】
<疎水性樹脂>
レジスト組成物が疎水性樹脂を含む場合、下記モノマーに基づく繰り返し単位を有する疎水性樹脂を使用した。
【0510】
【化104】
【0511】
組成物に使用した疎水性樹脂における、各モノマーに基づく繰り返し単位のモル比率、各樹脂の重量平均分子量(Mw)、及び、分散度(Mw/Mn)を下記表に示す。
【0512】
【表2】
【0513】
<レジスト組成物の調製>
【0514】
(EUV露光試験用のレジスト組成物の調製(Re-1~Re-32、Re-53~Re-55、Re-59~Re-71))
下記表に示した各成分を固形分濃度が2質量%となるように混合した。次いで、得られた混合液を、最初に孔径50nmのポリエチレン製フィルター、次に孔径10nmのナイロン製フィルター、最後に孔径5nmのポリエチレン製フィルターの順番で濾過することにより、EUV露光による試験に使用するレジスト組成物を調製した。
なお、レジスト組成物において、固形分とは、溶剤以外の全ての成分を意味する。得られたレジスト組成物を、実施例及び比較例で使用した。
なお、下記表において、各成分の含有量(質量%)は、全固形分に対する含有量を意味する。
【0515】
(ArF露光試験用のレジスト組成物の調製(Re-33~Re-52、Re-56~Re-58))
下記表に示した各成分を固形分濃度が4質量%となるように混合した。次いで、得られた混合液を、最初に孔径50nmのポリエチレン製フィルター、次に孔径10nmのナイロン製フィルター、最後に孔径5nmのポリエチレン製フィルターの順番で濾過して、ArF露光による試験に使用するレジスト組成物を調製した。
【0516】
以下に、各レジスト組成物の配合を示す。
【0517】
【表3】
【0518】
【表4】
【0519】
<界面活性剤>
レジスト組成物が界面活性剤を含む場合、下記界面活性剤を使用した。
E-1:メガファックF176(DIC(株)製、フッ素系界面活性剤)
E-2:メガファックR08(DIC(株)製、フッ素及びシリコン系界面活性剤)
E-3:PF656(OMNOVA社製、フッ素系界面活性剤)
【0520】
<溶剤>
レジスト組成物が含む溶剤を下記に示す。
F-1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)
F-2:プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)
F-3:プロピレングリコールモノエチルエーテル(PGEE)
F-4:シクロヘキサノン
F-5:シクロペンタノン
F-6:2-ヘプタノン
F-7:乳酸エチル
F-8:γ-ブチロラクトン
F-9:プロピレンカーボネート
【0521】
〔トップコート組成物の製造〕
本実施例では、上記レジスト組成物を用いてレジスト膜を作製する際に、更に、所望に応じてレジスト膜上に作製したトップコートを作製した。
以下に、トップコートの形成に使用したトップコート組成物に使用した成分及び製造の手順を示す。
【0522】
<樹脂>
トップコート組成物に使用した樹脂の、各モノマーに基づく繰り返し単位のモル分率、各樹脂の重量平均分子量(Mw)、及び、分散度(Mw/Mn)を下記表に示す。
なお、表中に示した繰り返し単位に対応するモノマーの構造は、上述の<疎水性樹脂>の説明中で示したモノマーを参照できる。
【0523】
【表5】
【0524】
<トップコート組成物の調製>
下記表に記載の配合を満たし、かつ、固形分濃度3.8質量%となるように、各成分を溶剤に溶解させ、溶液を調製した。
次いで、得られた溶液を0.1μmのポアサイズを有するポリエチレンフィルターで濾過して、トップコート組成物TC-1~TC-3を調製した。
【0525】
【表6】
【0526】
<添加剤>
トップコート組成物が含む添加剤を下記に示す。
【0527】
【化105】
【0528】
<溶剤>
トップコート組成物が含む溶剤を下記に示す。
FT-1:4-メチル-2-ペンタノール(MIBC)
FT-2:n-デカン
FT-3:ジイソアミルエーテル
【0529】
〔試験〕
上述の通り調製したレジスト組成物を用いて、以下に示す各条件で現像したパターンのLWRを評価した。
【0530】
<EUV露光、有機溶剤現像>
(パターン形成)
シリコンウエハ上に下層膜形成用組成物AL412(Brewer Science社製)を塗布し、205℃で60秒間ベークして、膜厚20nmの下地膜を形成した。その上に、表6に示すレジスト組成物を塗布し、100℃で60秒間ベークして、膜厚30nmのレジスト膜を形成した。
EUV露光装置(Exitech社製、Micro Exposure Tool、NA0.3、Quadruple、アウターシグマ0.68、インナーシグマ0.36)を用いて、得られたレジスト膜を有するシリコンウエハに対してパターン照射を行った。なお、レチクルとしては、ラインサイズ=20nmであり、かつ、ライン:スペース=1:1であるマスクを用いた。
露光後のレジスト膜を90℃で60秒間ベークした後、酢酸n-ブチルで30秒間現像し、これをスピン乾燥してネガ型のパターンを得た。
【0531】
(評価)
ライン幅が平均20nmのラインパターンを解像する時の最適露光量にて解像した20nm(1:1)のラインアンドスペースのパターンに対して、測長走査型電子顕微鏡(SEM((株)日立製作所S-9380II))を使用してパターン上部から観察した。パターンの線幅を任意のポイント(100箇所)で観測し、その測定ばらつきを3σで評価し、LWRとした。LWRの値が小さいほど良好なLWR性能であることを示す。本発明のレジスト組成物を用いた場合、LWR(nm)は、4.6nm以下であり、4.2nm以下が好ましく、3.9nm以下がより好ましく、3.7nm以下が更に好ましい。
【0532】
【表7】
【0533】
(結果)
表7に示される通り、EUV露光をして、有機溶剤現像でパターンを得る場合において、本発明のレジスト組成物は、LWR性能に優れるパターンを形成できることが確認された。
実施例1-1~1-45の比較より、スルホニウムカチオンが一般式(a-1)又は(a-2)で表される酸分解性基を有する場合、本発明の効果がより優れることが確認された。また、同様の比較から、スルホニウムカチオンが一般式(a-1)で表される酸分解性基を有する場合、本発明の効果が更に優れることが確認された。
実施例1-1~1-45の比較より、スルホニウムカチオンが酸分解性基を1つ有する場合、本発明の効果がより優れることが確認された。
実施例1-1~1-45の比較より、一般式(S-1)で表されるスルホニウムカチオンを含む特定化合物を用いた場合、本発明の効果がより優れることが確認された。
【0534】
<EUV露光、アルカリ現像>
(パターン形成)
シリコンウエハ上に下層膜形成用組成物AL412(Brewer Science社製)を塗布し、205℃で60秒間ベークして、膜厚20nmの下地膜を形成した。その上に、表7に示すレジスト組成物を塗布し、100℃で60秒間ベークして、膜厚30nmのレジスト膜を形成した。
EUV露光装置(Exitech社製、Micro Exposure Tool、NA0.3、Quadruple、アウターシグマ0.68、インナーシグマ0.36)を用いて、得られたレジスト膜を有するシリコンウエハに対してパターン照射を行った。なお、レチクルとしては、ラインサイズ=20nmであり、かつ、ライン:スペース=1:1であるマスクを用いた。
露光後のレジスト膜を90℃で60秒間ベークした後、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液(2.38質量%)で30秒間現像し、次いで純水で30秒間リンスした。その後、これをスピン乾燥してポジ型のパターンを得た。
【0535】
(評価)
得られたパターンについて、<EUV露光、有機溶剤現像>でパターンのLWRを評価したのと同様の方法で評価した。
【0536】
【表8】
【0537】
(結果)
表8に示される通り、EUV露光をして、アルカリ現像でパターンを得る場合において、本発明のレジスト組成物は、LWR性能に優れるパターンを形成できることが確認された。
実施例2-1~2-45の比較より、スルホニウムカチオンが一般式(a-1)又は(a-2)で表される酸分解性基を有する場合、本発明の効果がより優れることが確認された。また、同様の比較から、スルホニウムカチオンが一般式(a-1)で表される酸分解性基を有する場合、本発明の効果が更に優れることが確認された。
実施例2-1~2-45の比較より、スルホニウムカチオンが酸分解性基を1つ有する場合、本発明の効果がより優れることが確認された。
実施例2-1~2-45の比較より、一般式(S-1)で表されるスルホニウムカチオンを含む特定化合物を用いた場合、本発明の効果がより優れることが確認された。
【0538】
<ArF液浸露光、有機溶剤現像>
(パターン形成)
シリコンウエハ上に有機反射防止膜形成用組成物ARC29SR(Brewer Science社製)を塗布し、205℃で60秒間ベークして、膜厚98nmの反射防止膜を形成した。その上に、表8に示すレジスト組成物を塗布し、100℃で60秒間ベークして、膜厚90nmのレジスト膜(感活性光線性又は感放射線性膜)を形成した。
なお、実施例3-18~3-20については、レジスト膜の上層にトップコート膜を形成した(使用したトップコート組成物の種類については、表8に示す)。トップコート膜の膜厚は、いずれにおいても100nmとした。
レジスト膜に対して、ArFエキシマレーザー液浸スキャナー(ASML社製;XT1700i、NA1.20、Dipole、アウターシグマ0.950、インナーシグマ0.850、Y偏向)を用いて、線幅45nmの1:1ラインアンドスペースパターンの6%ハーフトーンマスクを介して露光した。液浸液は、超純水を使用した。
露光後のレジスト膜を90℃で60秒間ベークした後、酢酸n-ブチルで30秒間現像し、次いで4-メチル-2-ペンタノールで30秒間リンスした。その後、これをスピン乾燥してネガ型のパターンを得た。
【0539】
(評価)
ライン幅が平均45nmのラインパターンを解像する時の最適露光量にて解像した45nm(1:1)のラインアンドスペースのパターンに対して、測長走査型電子顕微鏡(SEM((株)日立製作所S-9380II))を使用してパターン上部から観察した。パターンの線幅を任意のポイント(100箇所)で観測し、その測定ばらつきを3σで評価し、LWRとした。LWRの値が小さいほど良好なLWR性能であることを示す。本発明のレジスト組成物を用いた場合、LWR(nm)は、3.8nm以下であり、3.2nm以下が好ましく、2.9nm以下がより好ましく、2.7nm以下が更に好ましく、2.5nm以下が特に好ましい。
【0540】
【表9】
【0541】
(結果)
表9に示される通り、ArF露光をして、有機溶剤現像でパターンを得る場合において、本発明のレジスト組成物は、LWR性能に優れるパターンを形成できることが確認された。
実施例3-1~3-20の比較より、スルホニウムカチオンが一般式(a-1)で表される酸分解性基を有する場合、本発明の効果がより優れることが確認された。
実施例3-1~3-20の比較より、スルホニウムカチオンが酸分解性基を1つ有する場合、本発明の効果がより優れることが確認された。
実施例3-1~3-20の比較より、一般式(S-1)で表されるスルホニウムカチオンを含む特定化合物を用いた場合、本発明の効果がより優れることが確認された。
【0542】
<ArF液浸露光、アルカリ現像>
(パターン形成)
シリコンウエハ上に有機反射防止膜形成用組成物ARC29SR(Brewer Science社製)を塗布し、205℃で60秒間ベークして、膜厚98nmの反射防止膜を形成した。その上に、表9に示すレジスト組成物を塗布し、100℃で60秒間ベークして、膜厚90nmのレジスト膜を形成した。
なお。実施例4-18~4-20については、レジスト膜の上層にトップコート膜を形成した(使用したトップコート組成物の種類については、表9に示す)。トップコート膜の膜厚は、いずれにおいても100nmとした。
レジスト膜に対して、ArFエキシマレーザー液浸スキャナー(ASML社製;XT1700i、NA1.20、Dipole、アウターシグマ0.950、インナーシグマ0.890、Y偏向)を用いて、線幅45nmの1:1ラインアンドスペースパターンの6%ハーフトーンマスクを介して露光した。液浸液は、超純水を使用した。
露光後のレジスト膜を90℃で60秒間ベークした後、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液(2.38質量%)で30秒間現像し、次いで純水で30秒間リンスした。その後、これをスピン乾燥してポジ型のパターンを得た。
【0543】
(評価)
得られたパターンについて、<ArF液浸露光、有機溶剤現像>でパターンのLWRを評価したのと同様の方法で評価した。
【0544】
【表10】
【0545】
(結果)
表10に示される通り、ArF露光をして、アルカリ現像でパターンを得る場合において、本発明のレジスト組成物は、LWR性能に優れるパターンを形成できることが確認された。
実施例4-1~4-20の比較より、スルホニウムカチオンが一般式(a-1)で表される酸分解性基を有する場合、本発明の効果がより優れることが確認された。
実施例4-1~4-20の比較より、スルホニウムカチオンが酸分解性基を1つ有する場合、本発明の効果がより優れることが確認された。
実施例4-1~4-20の比較より、一般式(S-1)で表されるスルホニウムカチオンを含む特定化合物を用いた場合、本発明の効果がより優れることが確認された。