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特許7367215荷電粒子線装置、およびそのフォーカス調整方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-13
(45)【発行日】2023-10-23
(54)【発明の名称】荷電粒子線装置、およびそのフォーカス調整方法
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/21 20060101AFI20231016BHJP
【FI】
H01J37/21 B
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022530359
(86)(22)【出願日】2020-06-08
(86)【国際出願番号】 JP2020022503
(87)【国際公開番号】W WO2021250733
(87)【国際公開日】2021-12-16
【審査請求日】2022-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 啓介
(72)【発明者】
【氏名】陳 偉健
(72)【発明者】
【氏名】吉原 真衣
(72)【発明者】
【氏名】千葉 寛幸
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-310223(JP,A)
【文献】特開2016-11896(JP,A)
【文献】特開2002-191060(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/21
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を保持する試料ホルダと、
前記試料を移動させる試料ステージと、
前記試料に荷電粒子線を照射する荷電粒子銃および荷電粒子線鏡筒と、
前記荷電粒子線に対する収束作用の強度を変更することでフォーカス調整が可能な対物レンズと、
前記試料からの電子を検出し、電子像を形成するための信号を出力する検出器と、
前記試料の光学画像を撮影する光学撮像装置と、
前記光学撮像装置で撮像した少なくとも2枚の前記試料の光学画像からステレオ像を生成し、当該ステレオ像に基づいて前記試料の高さ情報マップを作成し、当該高さ情報マップに基づいて観察箇所のフォーカス調整値の設定を自動で実行する制御装置と、
を備える荷電粒子線装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記制御装置は、前記設定されたフォーカス調整値に従って、前記試料の前記観察箇所に前記荷電粒子線を照射し、前記電子像を形成し、出力する荷電粒子線装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記制御装置は、前記料を水平方向に移動させて光学撮像装置で撮像した少なくとも2枚の光学画像から得られるステレオ像に基づいて、前記試料の高さ情報マップを作成する荷電粒子線装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記試料ステージは、試料傾斜機構を備え、
前記制御装置は、試料傾斜角度が異なる少なくとも2枚の光学画像からステレオ像に基づいて、前記試料の高さ情報マップを作成する荷電粒子線装置。
【請求項5】
請求項3または4において、
前記制御装置は、前記試料の高さ情報マップに基準点を設定し、当該基準点の高さ位置を示すオフセット値と、前記試料の各領域における、前記基準点との相対的なフォーカス値とを算出することにより、前記試料のフォーカス値マップを作成する荷電粒子線装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記制御装置は、前記試料のフォーカス値マップに基づいて、前記試料ステージの移動による観察視野移動に追随し、フォーカスの自動調整を実行する荷電粒子線装置。
【請求項7】
請求項1において、
前記試料ステージは、少なくともxyz3軸方向の駆動機構を備え、
前記制御装置は、前記高さ情報およびフォーカス値と、前記試料ステージの座標とをリンクさせる荷電粒子線装置。
【請求項8】
請求項1において、
前記制御装置は、前記高さ情報基づいたフォーカス自動調整の条件を設定するためのユーザインターフェイスを表示装置の画面上に表示させる荷電粒子線装置。
【請求項9】
請求項8において、
前記ユーザインターフェイスは、前記フォーカス自動調整を前記対物レンズによる調整、あるいは前記試料ステージによる調整を選択できるようにする選択欄と、前記対物レンズの作動距離を設定欄と、を含み、
前記制御装置は、前記対物レンズの前記作動距離を一定にして前記フォーカス自動調整を実行する荷電粒子線装置。
【請求項10】
請求項8において、
前記ユーザインターフェイスは、前記光学撮像装置で撮像した前記光学画像と前記電子像を重ね合わせて表示する像表示欄を含む荷電粒子線装置。
【請求項11】
荷電粒子線装置に載置された試料に対するフォーカスを自動調整するフォーカス調整方法であって、
前記荷電粒子線装置の動作を制御する制御装置が、光学撮像装置によって取得した前記試料の光学画像を少なくとも2枚取得し、ステレオ像を生成することと、
前記制御装置が、前記ステレオ像に基づいて前記試料の高さ情報マップ作成することと、
前記制御装置が、前記高さ情報マップに基づいて前記試料の観察箇所のフォーカス調整値を設定することと、
前記制御装置が、前記フォーカス調整値に基づいて、前記荷電粒子線装置のフォーカスを制御することと、
を含むフォーカス調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、荷電粒子線装置およびそのフォーカス調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
走査電子顕微鏡や透過電子顕微鏡、収束イオンビーム装置などに代表される荷電粒子線装置は、試料に荷電粒子線を照射し、透過および散乱、反射した荷電粒子、試料表面より発生した二次電子を検出器で検出することにより観察や加工を行うことができる装置である。荷電粒子線装置は光学顕微鏡と比較して分解能が極めて高いことや試料から放出されたX線を検出することにより元素分析もできることなど著しい利点を提供している。このような荷電粒子線装置を用いて試料観察を行うには荷電粒子線の試料に対するフォーカス制御が重要となる。この点、例えば、特許文献1には、走査型電子顕微鏡で粒子欠陥を観察する際に、フォーカス点が合った状態を時間と手間をかけずに確保できる機能が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-007243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されるようなフォーカス自動調整が可能な荷電粒子線装置であっても、高さの異なる領域を有する大きい試料を観察する場合、高さの異なる領域に視野を移動させたとき、荷電粒子線(ビーム)のフォーカスが合わなくなってしまう。このため、ユーザは、観察視野を移動させる度に毎回手動でフォーカス調整する必要があることが多かった。フォーカス調整は荷電粒子線装置の使用には必須の作業である。この作業を視野移動する度に行うことは手間になり、使用効率向上の妨げとなり、観察時間の増大の要因となる。さらに、荷電粒子線装置の専門知識を有さない不慣れなユーザにはフォーカス調整は困難な場合があり、幅広いユーザへの装置使用の普及の妨げにもなっている。
本開示は、高さの異なる領域を有する試料であっても自動フォーカス調整を可能とする技術を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本開示は、試料を保持する試料ホルダと、試料を移動させる試料ステージと、試料に荷電粒子線を照射する荷電粒子銃および荷電粒子線鏡筒と、荷電粒子線に対する収束作用の強度を変更することでフォーカス調整が可能な対物レンズと、試料からの電子を検出し、電子像を形成するための信号を出力する検出器と、試料の光学画像を撮影する光学撮像装置と、光学撮像装置で試料を撮像して得られる光学画像に基づいて試料の高さ情報を算出し、当該高さ情報に基づいて観察箇所のフォーカス調整値の設定を自動で実行する制御装置と、を備える荷電粒子線装置について提案する。
【0006】
本開示に関連する更なる特徴は、本明細書の記述、添付図面から明らかになるものである。また、本開示の態様は、要素及び多様な要素の組み合わせ及び以降の詳細な記述と添付される特許請求の範囲の様態により達成され実現される。
本明細書の記述は典型的な例示に過ぎず、本開示の特許請求の範囲又は適用例をいかなる意味においても限定するものではない。
【発明の効果】
【0007】
本開示の技術によれば、高さの異なる領域を有する試料に対して自動フォーカス調整が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態による荷電粒子線装置101の基本構成例を示す図である。
図2】本実施形態による荷電粒子線装置制御ソフトウェア112aの基本構成例を示す図である。
図3】本実施形態によるフォーカス自動調整機能を説明するためのフローチャートである。
図4】高さ情報マップに基づくフォーカスの自動調整機能の選択画面を示す図面である。
図5】高さ情報マップに基づくフォーカスの自動調整機能の実行形態(例)を示す図である。
図6】高さ情報マップに基づくフォーカスの自動調整機能の実行形態(例)を示す図である。
図7】最初に自動調整機能を選択する場合のフォーカス自動調整機能を説明するためのフローチャートを示している。
図8】ステージ傾斜機構110tを備える構成において実行可能なフォーカス自動調整機能の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して本開示の実施形態について説明する。添付図面では、機能的に同じ要素は同じ番号で表示される場合もある。なお、添付図面は本開示の原理に則った具体的な実施形態と実装例を示しているが、これらは本開示の理解のためのものであり、決して本開示を限定的に解釈するために用いられるものではない。
【0010】
本実施形態では、当業者が本開示を実施するのに十分詳細にその説明がなされているが、他の実装・形態も可能で、本開示の技術的思想の範囲と精神を逸脱することなく構成・構造の変更や多様な要素の置き換えが可能であることを理解する必要がある。従って、以降の記述をこれに限定して解釈してはならない。
【0011】
更に、本開示の実施形態は、後述されるように、汎用コンピュータ上で稼動するソフトウェアで実装しても良いし専用ハードウェア又はソフトウェアとハードウェアの組み合わせで実装しても良い。
【0012】
<荷電粒子線装置の基本構成例>
図1は、本実施形態による荷電粒子線装置101の基本構成例を示す図である。荷電粒子線装置101は、例えば、荷電粒子銃102と、荷電粒子線鏡筒103と、対物レンズ104と、制御回路105と、検出器106と、光学カメラ107と、試料108と、試料ホルダ109と、ステージ110と、試料室111と、これらを制御するコンピュータ112と、モニタ113と、を備える。
【0013】
図1に示される荷電粒子線装置101は、荷電粒子線鏡筒103の内部空間から試料室111に配置された試料108に対して荷電粒子線を照射して観察や加工を行う装置である。荷電粒子線装置101の構成はこれ以外に他のレンズや検出器などを搭載されても良く、これに限るものでない。荷電粒子線装置101のフォーカス調整は対物レンズ104の励磁を変更する、もしくはステージ110の位置を変更することにより調整することが可能である。
【0014】
ステージ110は、試料を装置設置面に対して水平面方向(XY方向)に駆動するXY軸駆動機構や高さ方向(Z方向)に駆動するZ駆動機構を有する。またこの他に、ステージ110は、回転方向に駆動するR駆動機構や傾斜方向に駆動するT駆動機構を有していてもよい。これらの駆動機構により、試料室111内のステージ110に取り付けた試料ホルダ109および試料108を移動させることが可能である。これによりユーザが指定する任意の視野に移動し観察を行うことが可能である。また、水平移動だけではなく、R駆動機構やT駆動機構により回転あるいは傾斜させて後述のステレオ像を生成することができる。
【0015】
<荷電粒子線装置制御ソフトウェアの基本構成例>
図2は、本実施形態による荷電粒子線装置制御ソフトウェア112aの基本構成例を示す図である。当該ソフトウェア112aは、例えば、コンピュータ112のメモリ(図示せず)に格納され、コンピュータ112のプロセッサ(図示せず)が各機能を実行する際に上記メモリから各プログラムを読み込み、プロセッサの内部メモリに展開して各機能を実現する。
【0016】
荷電粒子線装置制御ソフトウェア112aは、例えば、一般的な荷電粒子像の観察、撮影、および分析をするためのメインルーチン200、ステージ110の動作を制御するためのステージ制御ルーチン201、光学カメラ107の動作を制御するための光学カメラ制御ルーチン202、後述の高さマップおよびフォーカス値マップを生成するための信号処理ルーチン203、高さマップ記憶領域204、フォーカス制御ルーチン205、画像表示ルーチン206、フォーカス値マップ記憶領域207により構成される。
【0017】
ステージ駆動機構は、ステージ制御ルーチン201により制御される。また、ステージ制御ルーチン201はステージ110のステージ座標と視野をリンクさせる(光学画像の座標と荷電粒子線装置による画像とを対応付ける)機能を有する。
【0018】
フォーカス調整は、フォーカス制御ルーチン205により制御される。光学カメラ制御ルーチン202で制御される光学カメラ107で撮像した光学画像は、信号処理ルーチン203で処理され、生成された高さマップは高さマップ記憶領域204に格納され、生成されたフォーカス値マップはフォーカス値マップ記憶領域207に格納される。コンピュータ112で処理される情報はモニタ113に出力されユーザは確認することが可能である。なお、荷電粒子線装置制御ソフトウェア112aの構成は、これ以外の機能も保持しても良く、これに限るものではない。
【0019】
<フォーカス自動調整機能>
図3は、本実施形態によるフォーカス自動調整機能を説明するためのフローチャートである。フォーカス自動調整機能は、概略的に、試料の光学ステレオ像から高さ情報マップを生成する機能、当該高さ情報マップからフォーカス値マップを生成する機能、および当該フォーカス値マップに基づいてフォーカスを自動調整して観察等を実行する機能によって構成される。
【0020】
(i)ステップ101
荷電粒子線装置101を立ち上げ開始する。
【0021】
(ii)ステップ102
コンピュータ112(コンピュータ112のプロセッサ)は、試料108をセットした試料ホルダ109が試料室111のステージ110にユーザ(オペレータ)によって取り付けられたことを検知する。具体的には、試料ホルダ109をステージ110に取り付けた後、ユーザが取り付け完了をコンピュータに通知する(例えば、UI上の取付完了ボタンをクリックするなど)。
【0022】
(iii)ステップ103
光学カメラ107で観察試料108を撮像し光学画像を撮影する。具体的には、例えば、試料ホルダ109のステージ110への取り付けが完了すると、自動的に高さ情報マップに基づいたフォーカスの自動調整機能の選択画面301(図4参照)が開かれる(例えば、ポップアップ表示)。
【0023】
高さ情報マップに基づいたフォーカスの自動調整の選択画面301は、フォーカスの自動調整機能を使用するか否かを設定するフォーカス自動調整機能設定ボタン302と、フォーカスを対物レンズで調整するか否かを設定する対物レンズ調整選択ボタン303と、作動距離設定ボタン304と、フォーカスをステージ高さの上下動で調整するか否かを設定するステージ高さ調整選択ボタン305と、光学画像および荷電粒子像を表示する像表示部306と、光学像撮影ボタン307と、高さマップ作成ボタン308と、ステレオ像作成ボタン309と、フォーカス値マップ作成ボタン310と、を有する。ここで、作動距離(Working Distance:WD)は、対物レンズ104下面と試料108の間の距離を示している。フォーカスの調整は、ステージ110を上下方向に移動させることによりWDを変える、または、WDを一定のまま対物レンズで調整する両方をユーザは任意に選択可能である。さらに、WDをユーザが望む任意の値に設定し、WDを常に一定としてフォーカス調整を行い観察することが可能である。
【0024】
当該ステップでは、ユーザが光学像撮影ボタン307をクリックし、光学カメラ107で光学画像を撮像する。なお、ユーザが予め光学撮像の対象位置(試料108上の位置)を指定し、自動的に光学撮像を開始し、光学画像を取得するようにしてもよい。撮像して得られた光学画像は、像表示部(像表示領域)308に表示され、荷電粒子像と重ね合わせることも可能である。
【0025】
(iv)ステップ104
ユーザがフォーカスの自動調整の選択画面301上でステレオ像作成ボタン309をクリックすると、コンピュータ112のプロセッサは、ステップ103で撮像した光学画像に基づき、信号処理ルーチン203によりステレオ像を作成する。
【0026】
(v)ステップ105
ユーザがフォーカスの自動調整の選択画面301上の高さマップ作成ボタン308をクリックすると、上記プロセッサは、ステップ104で作成したステレオ像に基づき試料108の高さ情報マップ(試料108上の各座標値とその位置における高さの組情報)を作成する。特定の座標における高は、例えば、ステレオ像(異なる角度で取得した2枚の画像から構成される)から視差法を用いて対象の座標までの距離をする推定することにより算出することができる。なお、視差法については、ステレオビジョン法として、国際公開第2018/043437号の段落[0002]から[0003]に紹介されている。
生成された高さ情報マップは、ステージ座標とリンクし、観察視野と関連付けて高さマップ記憶領域204に保存される。
【0027】
(vi)ステップ106
ユーザがフォーカスの自動調整の選択画面301上のフォーカス値マップ作成ボタン310をクリックすると、上記プロセッサは、ステップ104で作成した試料108の高さ情報マップに基づき、試料108の各領域におけるフォーカス値マップを作成する。試料108の各点の相対的なフォーカス値をオフセット(例えば、高さが一番高い座標を基準点としたときの当該基準点の高さをオフセットとし、基準点のフォーカス値との差分値を相対的フォーカス値とする)とともに事前に計算することで、ステージ座標とリンクさせ、フォーカス値マップ記憶領域207に保存される。
【0028】
(vii)ステップ107
上記プロセッサは、フォーカスの自動調整の選択画面301上のフォーカス自動調整機能設定ボタン302が選択されているか(チェックが入れられているか)判断する。このとき、ユーザは対物レンズ調整選択ボタン303またはステージ高さ調整選択ボタン305のどちらかをクリックしてフォーカスの調整制御方法を選択することが要求される。対物レンズ調整を選択した場合、ユーザはWD設定ボタン304でWDを任意選択する。フォーカス自動調整機能設定ボタン302にチェックを入れない場合(ステップ107でNoの場合)、処理はステップ108に進む。フォーカス自動調整機能設定ボタン302にチェックが入っている場合(ステップ107でYesの場合)、処理はステップ109に移行する。
【0029】
(viii)ステップ108
ユーザは通常のフォーカス調整を行う。ここで、「通常のフォーカス調整とは、観察視野を移動する度に毎回ユーザが操作して手動でフォーカスを調整する方法である。本明細書では省略しているが、走査透過電子顕微鏡像観察機能も付加する構成においては、試料108は薄膜加工されておりほぼ均一な高さとなり、なおかつユーザが手動でデフォーカスの量を調整して撮影する場合が多いので、この分岐を設けるようにしてもよい。
【0030】
(ix)ステップ109
ユーザは、任意に視野移動を行う(試料108上で観察したい任意の座標位置に観察視野を移動することができる)。この視野移動は、ステージ制御ルーチン201で試料108を取り付けたステージ110を制御しながら駆動することで実行される。ここでユーザは、図示していないがマウスやトラックボール、ジョイスティックなどを用いて任意に視野移動量の入力を行うことが可能である。
【0031】
(x)ステップ110
上記プロセッサは、ステップ109で行った視野移動に追随して、ステップ106で作成したフォーカス値マップに基づいて、自動でフォーカスを調整する。上記の手順によりフォーカスの自動調整機能が設定されていればユーザは手動によるフォーカスの調整を省略することができる。
【0032】
(xi)ステップ111
上記プロセッサは、メインルーチン200に基づいて、一般的な荷電粒子像の観察および撮影、分析といった機能をユーザは任意に実行させることができる。このときにユーザはフォーカスの調整を行う必要がないため操作時間が大幅に短縮される。
【0033】
(xii)ステップS112
上記プロセッサは、視野移動が継続されているか判断する。視野移動が継続される場合(ステップ112でYesの場合)、処理はステップ109に移行し、ステップ109からステップ111の処理が再度繰り返される。視野移動が終了する場合(ステップ112でNoの場合:例えば、ユーザによって処理終了の指示が入力された場合や観察すべき全ての座標について電子像を取得および分析が終了した場合など)、処理はステップ113で終了する。
【0034】
<フォーカス自動調整機能の変形例>
図3の説明では、図4に示したステップごとのボタンを設け、段階的に実行させてゆく方式を示したが、ステップ102にて試料108をセットした後に、フォーカスの自動調整の選択画面301上のフォーカス自動調整機能設定ボタン302により自動調整機能が選択されているか判断される。自動調整機能が選択されている場合には、自動的にステップ103からステップ106までが実行されるようにシステムを構成してもよい。図7は、最初に自動調整機能を選択する場合のフォーカス自動調整機能を説明するためのフローチャートを示している。
【0035】
<高さ情報マップ作成の変形例>
図3のステップ103から105では、光学カメラ107を用いて試料108を撮像して生成されたステレオ像に基づいて高さ情報マップを作成しているが、この手法に限定されず、光学カメラ107の代わりにレーザ干渉計を用いて試料108の各領域(各座標位置)における高さ情報を取得し、試料の高さ情報マップを作成することも可能である。この場合、レーザ干渉計から得た試料108の高さ情報マップによりフォーカス値マップを算出し、視野移動に追随してフォーカスを自動調整することになる。
【0036】
<フォーカスの自動調整機能の実行形態>
図5および図6は、高さ情報マップに基づくフォーカスの自動調整機能の実行形態(例)を示す図である。
【0037】
(i)まず、ユーザは、試料108を試料ホルダ109にセットする(図5(a)参照)。
【0038】
(ii)次に、視野移動させ、光学カメラで2枚の画像を撮影する(図5(b)参照)。このときステージ110、もしくは光学カメラ107を左右XY移動させ少なくとも2枚の試料108の光学画像を撮影する。
【0039】
(iii)取得した2枚の画像からステレオ像を作成し、試料108の高さ情報を計算して高さ情報マップを作成する(図5(c)および図6(a)参照)。
【0040】
(iv)高さ情報マップに基づき、試料108の各領域(各座標)におけるフォーカス値マップを作成する(図5(d)、図6(b)参照)。ここで図6(c)に示すように、ユーザは、任意の最初の観察視野を観察することができる。また、ここで任意に選択した最初の観察視野のフォーカスをフォーカス値マップに基づいて自動調整すること可能である。
【0041】
(v)高さの異なる視野に移動するとフォーカスも追随して自動で調整される(図5(e)および図6(d))。ここで自動調整されるフォーカスは(iv)で作成した各領域のフォーカス値マップを参照して実行される。図5(e)に示すようにステージ移動に伴い、フォーカス値F=αやフォーカス値F=βのようにステージ座標とリンクして調整することが可能である。ここで荷電粒子線鏡筒103からの荷電粒子線を試料室111に配置された試料108に対して照射して観察を行い、検出器106で荷電粒子線画像の明るさ信号を検出することで観察を行うことが可能である。
【0042】
<試料を傾斜させた画像を用いたフォーカス自動調整の例>
図8は、ステージ傾斜機構110tを備える構成において実行可能なフォーカス自動調整機能の例を示す図である。この場合、傾斜0度の光学画像にてXY座標を決め、続いて試料を傾斜させて撮影した2つの光学画像(例えば、試料108をプラス3度傾斜させて撮影した光学画像とマイナス3度傾斜させて撮影した光学画像)から試料108のZ方向のマップを作成し、フォーカス値マップに使用してもよい。
【0043】
<まとめ>
本実施形態の荷電粒子線装置によれば、光学撮像装置で試料を撮像して得られる光学画像に基づいて試料の高さ情報を算出、あるいは、レーザ干渉計で計測した高さ情報を計測し、当該高さ情報に基づいて観察箇所のフォーカス調整値の設定を自動で実行する。これにより、ユーザは高さの異なる箇所(領域)を有する大きい試料を観察する際に、どの観察視野に移動しても自動でフォーカスを調整することができる。視野移動に追随してフォーカスが自動調整されるため、ユーザが調整することなく常に最適なフォーカスで観察することが可能である。また、観察時間を短縮できるため、業務の効率化やユーザビリティの向上につながる。さらに、フォーカス調整をユーザがする必要がなくなるため、荷電粒子線装置の操作に不慣れなユーザも簡便に取り扱うことが可能となる。
【符号の説明】
【0044】
101 荷電粒子線装置、102 荷電粒子銃、103 荷電粒子線鏡筒、104対物レンズ、105 制御回路、106 検出器、107 光学カメラ、108 試料、109 試料ホルダ、110 ステージ、110t ステージ傾斜機構、111 試料室、112 コンピュータ、113 モニタ、112a 荷電粒子線装置制御ソフトウェア、200 メインルーチン、201 ステージ制御ルーチン、202 光学カメラ制御ルーチン、203 信号処理ルーチン、204 高さマップ記憶領域、205 フォーカス制御ルーチン、206 画像表示ルーチン、207 フォーカス値マップ記憶領域、301 高さ情報マップに基づくフォーカスの自動調整機能の選択画面、302 フォーカス自動調整機能設定ボタン、303 対物レンズ調整選択ボタン、304 作動距離設定ボタン、305 ステージ高さ調整選択ボタン、306 像表示部、307 光学像撮影ボタン、308 高さマップ作成ボタン、309 ステレオ像作成ボタン、310 フォーカス値マップ作成ボタン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8