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特許7367306液晶組成物、それを用いた液晶表示素子、及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】液晶組成物、それを用いた液晶表示素子、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 19/18 20060101AFI20231017BHJP
   C09K 19/42 20060101ALI20231017BHJP
   C09K 19/12 20060101ALI20231017BHJP
   C09K 19/20 20060101ALI20231017BHJP
   C09K 19/14 20060101ALI20231017BHJP
   C09K 19/16 20060101ALI20231017BHJP
   C09K 19/30 20060101ALI20231017BHJP
   C09K 19/34 20060101ALI20231017BHJP
   C09K 19/32 20060101ALI20231017BHJP
   C09K 19/54 20060101ALI20231017BHJP
   C09K 19/38 20060101ALI20231017BHJP
   G02F 1/1334 20060101ALI20231017BHJP
   G02F 1/139 20060101ALI20231017BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20231017BHJP
   C08F 2/48 20060101ALI20231017BHJP
   G02F 1/13 20060101ALN20231017BHJP
【FI】
C09K19/18
C09K19/42
C09K19/12
C09K19/20
C09K19/14
C09K19/16
C09K19/30
C09K19/34
C09K19/32
C09K19/54 Z
C09K19/38
G02F1/1334
G02F1/139
C08F2/44 B
C08F2/48
G02F1/13 500
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018242836
(22)【出願日】2018-12-26
(65)【公開番号】P2020105264
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】中田 秀俊
(72)【発明者】
【氏名】丸山 和則
【審査官】井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/022866(WO,A1)
【文献】特許第5594442(JP,B2)
【文献】特開2007-045963(JP,A)
【文献】特開平02-073882(JP,A)
【文献】特開平07-056147(JP,A)
【文献】特開2011-074304(JP,A)
【文献】特開平10-017500(JP,A)
【文献】特開2007-092000(JP,A)
【文献】特開2014-080605(JP,A)
【文献】特開2016-110148(JP,A)
【文献】国際公開第2018/043276(WO,A1)
【文献】特開平10-077476(JP,A)
【文献】特表2018-506615(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K
G02F 1/1334
G02F 1/139
C08F 2/44
C08F 2/48
G02F 1/13
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1成分として、一般式(I)
【化1】
(式中、R11、及びR12はそれぞれ独立して炭素原子数1~15のアルキル基を表し、該アルキル基中の1つ又は2つ以上のCH基は、酸素原子が直接隣接しないように、-O-、-CH=CH-、-CO-、-OCO-、-COO-又は-C≡C-で置換されていても良いが、少なくとも1つ以上のCH基は-CH=CH-で置換されており、該アルキル基中の1つ又は2つ以上の水素原子は任意にハロゲン原子に置換されていてもよく、A11、及びA12はそれぞれ独立してトランス-1,4-シクロヘキシレン基、1,4-フェニレン基、1,4-ビシクロ(2.2.2)オクチレン基、ナフタレン-2,6-ジイル基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、又はクロマン-2,6-ジイル基を表し、この基中に存在する1個の-CH-又は隣接していない2個以上の-CH-は-O-に置き換えられてもよく、1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよく、該1,4-フェニレン基、ナフタレン-2,6-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、クロマン-2,6-ジイル基は非置換でも、置換基を有していても良く、Z11及びZ12は、それぞれ独立して、単結合、-COO-、-OCO-、-CH-CH-、-CF-CF-、-CH=CH-、-CF=CF-、-CHO-、-OCH-、-CFO-、-OCF-、又は-C≡C-を表し、m11及びm12はそれぞれ独立して、0、1、又は2を表し、X11~X18はそれぞれ水素原子を表す。)
で表される化合物を含有し、
第2成分として、1種、又は2種以上の下記一般式(II)
【化2】
(式中、R21は炭素原子数1から10までのアルキル基を表し、該アルキル基中の非隣接の1つ又は2つのCH基は酸素原子、-COO-、-OCO-で置き換えられていてもよく、また一つ以上のメチレン基は-CH=CH-、又は-C≡C-よって置き換えられていてもよく、好ましくは炭素原子数1から5までのアルキル基(該アルキル基中の一つ以上のメチレン基は-CH=CH-よって置き換えられていてもよい)であり、
22は、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、CF基、OCF基、OCHF基、NCS基、又は炭素原子数1~10のアルキル基を表し、該アルキル基中の非隣接の1つ又は2つのCH基は酸素原子、-COO-、-OCO-で置き換えられていてもよく、また一つ以上のメチレン基は-CH=CH-、又は-C≡C-によって置き換えられていてもよく、好ましくはフッ素原子、シアノ基、又は炭素原子数1~5のアルキル基(該アルキル基中の非隣接の1つ又は2つのCH基は酸素原子で置き換えられていてもよい)であり、Z21、及びZ22は、それぞれ独立して、単結合、-COO-、-OCO-、-CH-CH-、-CH=CH-、-CFO-、-OCF-、-CH-CH-COO-、-COO-CH-CH-、-CHO-、-OCH-又は-C≡C-を表し、Z22が複数個存在する場合は、同じであっても異なっていても良い。)、A21、A22、及びA23は、それぞれ独立して、1,4-フェニレン基、1,4-シクロヘキシレン基、1,4-シクロヘキセニル基、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル基、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、ピリジン-2,5-ジイル基、ピリミジン-2,5-ジイル基、ピラジン-2,5-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、2,6-ナフチレン基、3,7-ジベンゾフランジイル基を表し、該1,4-フェニレン基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、2,6-ナフチレン基、3,7-ジベンゾフランジイル基は非置換であるか又は置換基として1個又は2個以上のフッ素原子、塩素原子、CF基、OCF基又はCH基を有していても良く、A23が複数個存在する場合は、同じであっても異なっていても良く、A21、及びA22いずれかが一方が3,7-ジベンゾフランジイル基の場合は、もう片方は単結合であっても良い。)であり、m21は0、1又は2である。ただし、一般式(I)の構造を省く。)で表される化合物、及び、
第3成分として2官能性の重合性化合物を含有し、
前記一般式(II)で表される化合物として、1種、又は2種以上の下記式(II-2-1)~(II-2-6)
【化3】
で表される化合物を含有することを特徴とする液晶組成物。
【請求項2】
第2成分として、一般式(II)中、Z21、又はZ22の少なくとも一つ以上が-C≡C-であり、R21は炭素原子数1から10までのアルキル基を表し(該アルキル基中の非隣接の1つ又は2つのCH基は酸素原子、-COO-、-OCO-で置き換えられていてもよい)、R22は、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、CF基、OCF基、OCHF基、NCS基、又は炭素原子数1~10のアルキル基を表す(該アルキル基中の非隣接の1つ又は2つのCH基は酸素原子、-COO-、-OCO-で置き換えられていてもよい)化合物をさらに含有する、請求項1に記載の液晶組成物。
【請求項3】
第3成分である2官能性の重合性化合物が、下記一般式(III-1)
【化4】
(式中、Y、及びYは水素原子、又はメチル基を表し、Xは2価の有機基を表す。)
で表されるものである請求項1又は2記載の液晶組成物。
【請求項4】
第3成分である2官能性の重合性化合物が、一般式(III-1)中のXとして、
下記一般式(III-3-1)
【化5】
(式中、Eは炭素原子数1~4までのアルキレン基を表し、該アルキレン基中の一つ以上の-CH-は酸素原子、-CO-、-COO-、-OCO-で置換されていても良く、qは1~20を表し、Eは、下記(III-1-2)~(III-1-5)
【化6】
を表し、Eは下記(III-1-6)
【化7】
(式(III-1-6)中、Yは水素原子、又はメチル基を表し、qは10~300を表す))
で表されるものを用いる請求項3記載の液晶組成物。
【請求項5】
第3成分である2官能性の重合性化合物が一般式(III-1)中のXとして、
下記一般式(III-1-7)~(III-1-9)
【化8】
(式中、Yは水素原子、又はメチル基を表し、q、及びqは2~15の整数を表し、qは6~40までの整数を表し、式(III-1-9)中の1つ以上のCH基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、酸素原子、-CO-、-NH-、-COO-、-OCO-で置き換えられていてもよく、CH基中の1つ、又は2つの水素原子は、メチル基、エチル基で置き換えられていても良い。)
で表されるものを用いる請求項3記載の液晶組成物。
【請求項6】
第4成分として、重合開始剤を含有する請求項1~5の何れか一つに記載の液晶組成物。
【請求項7】
第5成分として、単官能重合性化合物を含有する請求項1~5の何れか一つに記載の液晶組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1つに記載の液晶組成物に紫外線を照射して得られる、透明性高分子物質の3次元ネットワーク構造を有する液晶表示素子。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1項に記載の液晶組成物に紫外線を照射することにより、透明性高分子物質の3次元ネットワーク構造が形成させることを特徴とする液晶表示素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
光散乱散型液晶組成物を用いて作製される高分子分散型液晶表示素子は、偏光板を必要としないため、従来の偏光板を用いた、TN、STN、IPS又はVAモードの液晶表示素子に比べ、明るい表示が実現できるメリットがあり、素子の構成も単純であることから、調光ガラス等の光シャッター用途、各種光学素子用途、時計等セグメント表示用途に応用されている。高分子分散型液晶表示素子は高分子により液晶分子の配向が乱された状態から、電圧の印加し液晶化合物を一方向に配向させる状態に変化させることにより、光の散乱及び透過を制御するモードである。散乱時には白濁し、透過時には透明になっている。
【0002】
この高分子分散型液晶素子には、いくつかの種類があり、例えば、ポリマー中に液晶物質の小滴を分散させたNCAPと呼ばれるタイプ(特許文献1)は大面積化には適しているものの駆動電圧が高かった。それを改善する手法としてPDLC、又はPNLCと呼ばれる、液晶材料を光重合性モノマーの混合物に紫外線を照射すことにより引き起こされる重合相分離を用いたタイプ(特許文献2)等が提案され、特に低電圧化が要求される光学素子、表示素子等には液晶の連続相中に高分子の網目構造が形成されたPNLCタイプが応用されてきた。このPNLCタイプは用いる液晶組成物、高分子形成材料であるモノマー組成物の物性のみならず、高分子の網目構造のサイズ等をコントロールして目的の物性値を持つ高分子分散型液晶表示素子を作製する。
【0003】
また、本高分子分散型液晶表示素子を光通信用に使用する検討も盛んになされている(非特許文献1)この場合、一般的に散乱させる光の対象は赤外線となる。赤外線を効率よく散乱させるためには、可視光の散乱に比べて、高分子の網目構造のサイズを大きくする必要がある。ただし、高分子の網目構造のサイズを大きくすると電圧印加時の液晶のひずみエネルギーが弱くなり応答速度が遅くなる問題があり、改善が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平8-286162号公報
【文献】US5304323号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】Mol. Cryst. Liq. Cryst., Vol. 404, pp. 57-73, 2003
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明が解決しようとする課題は、上記問題点を改善し、赤外線の散乱特性に優れ、且つ応答速度にも優れる光散乱散型液晶組成物、及び高分子分散型液晶表示素子を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、高分子分散型液晶表示素子において、特定の液晶化合物等を用いると赤外線の散乱特性に優れ、且つ応答速度にも優れる高分子分散型液晶表示素子用の光散乱散型液晶組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、 第1成分として、一般式(I)
【0009】
【化1】

(式中、R11、及びR12はそれぞれ独立して炭素原子数1~15のアルキル基を表し、該アルキル基中の1つ又は2つ以上のCH基は、酸素原子が直接隣接しないように、-O-、-CH=CH-、-CO-、-OCO-、-COO-又は-C≡C-で置換されていても良いが、少なくとも1つ以上のCH基は-CH=CH-で置換されており、該アルキル基中の1つ又は2つ以上の水素原子は任意にハロゲン原子に置換されていてもよく、A11、及びA12はそれぞれ独立してトランス-1,4-シクロヘキシレン基、1,4-フェニレン基、1,4-ビシクロ(2.2.2)オクチレン基、ナフタレン-2,6-ジイル基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、又はクロマン-2,6-ジイル基を表し、この基中に存在する1個の-CH-又は隣接していない2個以上の-CH-は-O-に置き換えられてもよく、1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよく、該1,4-フェニレン基、ナフタレン-2,6-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、クロマン-2,6-ジイル基は非置換でも、置換基を有していても良く、Z11及びZ12は、それぞれ独立して、単結合、-COO-、-OCO-、-CH-CH-、-CF-CF-、-CH=CH-、-CF=CF-、-CHO-、-OCH-、-CFO-、-OCF-、又は-C≡C-を表し、m11及びm12はそれぞれ独立して、0、1、又は2を表す。)
で表される化合物を含有し、
第2成分として、1種、又は2種以上の下記一般式(II)
【0010】
【化2】
(式中、R21は炭素原子数1から10までのアルキル基を表し、該アルキル基中の非隣接の1つ又は2つのCH基は酸素原子、-COO-、-OCO-で置き換えられていてもよく、また一つ以上のメチレン基は-CH=CH-、又は-C≡C-よって置き換えられていてもよく、好ましくは炭素原子数1から5までのアルキル基(該アルキル基中の一つ以上のメチレン基は-CH=CH-よって置き換えられていてもよい)であり、
22は、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、CF基、OCF基、OCHF基、NCS基、又は炭素原子数1~10のアルキル基を表し、該アルキル基中の非隣接の1つ又は2つのCH基は酸素原子、-COO-、-OCO-で置き換えられていてもよく、また一つ以上のメチレン基は-CH=CH-、又は-C≡C-によって置き換えられていてもよく、好ましくはフッ素原子、シアノ基、又は炭素原子数1~5のアルキル基(該アルキル基中の非隣接の1つ又は2つのCH基は酸素原子で置き換えられていてもよい)であり、Z21、及びZ22は、それぞれ独立して、単結合、-COO-、-OCO-、-CH-CH-、-CH=CH-、-CFO-、-OCF-、-CH-CH-COO-、-COO-CH-CH-、-CHO-、-OCH-又は-C≡C-を表し、Z22が複数個存在する場合は、同じであっても異なっていても良く、好ましくは、単結合、-COO-、-CFO-、又は-C≡C-であり(Z22が複数個存在する場合は、同じであっても異なっていても良い)、A21、A22、及びA23は、それぞれ独立して、1,4-フェニレン基、1,4-シクロヘキシレン基、1,4-シクロヘキセニル基、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル基、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、ピリジン-2,5-ジイル基、ピリミジン-2,5-ジイル基、ピラジン-2,5-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、2,6-ナフチレン基、3,7-ジベンゾフランジイル基を表し、該1,4-フェニレン基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、2,6-ナフチレン基、3,7-ジベンゾフランジイル基は非置換であるか又は置換基として1個又は2個以上のフッ素原子、塩素原子、CF基、OCF基又はCH基を有していても良く、A23が複数個存在する場合は、同じであっても異なっていても良く、A21、及びA22のいずれかが一方が3,7-ジベンゾフランジイル基の場合は、もう片方は単結合であっても良い。)であり、m21は0、1又は2である。ただし、一般式(I)の構造を省く。)で表される化合物、及び、
第3成分として2官能性の重合性化合物を含有することを特徴とする液晶組成物に関する。
【0011】
本発明は、更に、上記液晶組成物に紫外線を照射して得られる、透明性高分子物質の3次元ネットワーク構造を有する液晶表示素子に関する。
本発明は、更に、上記液晶組成物に紫外線を照射することにより、透明性高分子物質の3次元ネットワーク構造が形成させることを特徴とする液晶表示素子の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の光散乱散型液晶組成物を用いると、赤外線の散乱特性に優れ、且つ応答速度にも優れる高分子分散型液晶表示素子が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の高分子分散型液晶素子用組成物は第一成分として一般式(I)
【0014】
【化3】
【0015】
(式中、R11、及びR12はそれぞれ独立して炭素原子数1~15のアルキル基を表し、該アルキル基中の1つ又は2つ以上のCH基は、酸素原子が直接隣接しないように、-O-、-CH=CH-、-CO-、-OCO-、-COO-又は-C≡C-で置換されていても良いが、少なくとも1つ以上のCH基は-CH=CH-で置換されており、該アルキル基中の1つ又は2つ以上の水素原子は任意にハロゲン原子に置換されていてもよく、好ましくはR11の一つ以上のCH基は-CH=CH-で置換されており、且つ及びR12の一つ以上のCH基は-CH=CH-で置換されており、
11、及びA12はそれぞれ独立してトランス-1,4-シクロヘキシレン基、1,4-フェニレン基、1,4-ビシクロ(2.2.2)オクチレン基、ナフタレン-2,6-ジイル基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、又はクロマン-2,6-ジイル基を表し、この基中に存在する1個の-CH2-又は隣接していない2個以上の-CH2-は-O-に置き換えられてもよく、1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよく、該1,4-フェニレン基、ナフタレン-2,6-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、クロマン-2,6-ジイル基は非置換でも、置換基を有していても良く、
11、及びZ12は、それぞれ独立して、単結合、-COO-、-OCO-、-CH-CH-、-CF-CF-、-CH=CH-、-CF=CF-、-CHO-、-OCH-、-CFO-、-OCF-、又は-C≡C-を表し、
11.及びm12はそれぞれ独立して、0、1、又は2を表す。)の化合物を含有する。
【0016】
本発明の化合物はアセチレン骨格と、ビニレン骨格を有し、屈折率異方性の高い化合物であり、高分子分散型液晶素子の散乱性能を向上するとともに、後述するUV照射過程でのモノマー化合物の重合速度を調整する役割も果たす。本化合物の濃度を増やすとモノマーの重合速度が遅くなり、高分子分散型液晶組成の製造過程で液晶ドメインの成長がしやすくなり、結果としてポリマーネットワークサイズを大きくすることができ、赤外線に対する散乱性能を向上させることができる。また、液晶化合物の末端アルキル鎖のCH基が-CH=CH-で置換されることにより水素原子2つがなくなるため、アルキル鎖末端の立体障害が小さくなり、の運動性が向上する(引っ掛かりがなくなり)ことで応答速度を改善することができる。
【0017】
一般式(I)の中でも、R11中の1つ以上のCH基は-CH=CH-で置換されており、且つびR12中の1つ以上のCH基は-CH=CH-で置換されている化合物が好ましく、R11、及びR12の末端のCH基がCH=CH-基で置換されている化合物がより好ましい。特に以下の(I-1)~(I-4)の化合物が好ましい。
【0018】
【化4】
【0019】
一般式(I)で表される化合物は液晶組成物中に5質量%以上添加することが好ましい。
さらに第二成分として1種、又は2種以上の一般式(II)
【0020】
【化5】
【0021】
(式中、R21は炭素原子数1から10までのアルキル基を表し、該アルキル基中の非隣接の1つ又は2つのCH基は酸素原子、-COO-、-OCO-で置き換えられていてもよく、また一つ以上のメチレン基は-CH=CH-、又は-C≡C-よって置き換えられていてもよく、好ましくは炭素原子数1から5までのアルキル基(該アルキル基中の一つ以上のメチレン基は-CH=CH-よって置き換えられていてもよい)であり、
22は、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、CF基、OCF基、OCHF基、NCS基、又は炭素原子数1~10のアルキル基を表し、該アルキル基中の非隣接の1つ又は2つのCH基は酸素原子、-COO-、-OCO-で置き換えられていてもよく、また一つ以上のメチレン基は-CH=CH-、又は-C≡C-によって置き換えられていてもよく、好ましくはフッ素原子、シアノ基、又は炭素原子数1~5のアルキル基(該アルキル基中の非隣接の1つ又は2つのCH基は酸素原子で置き換えられていてもよい)であり、
【0022】
21、及びZ22は、それぞれ独立して、単結合、-COO-、-OCO-、-CH-CH-、-CH=CH-、-CFO-、-OCF-、-CH-CH-COO-、-COO-CH-CH-、-CHO-、-OCH-又は-C≡C-を表し、Z22が複数個存在する場合は、同じであっても異なっていても良く、好ましくは、単結合、-COO-、-CFO-、又は-C≡C-であり(Z22が複数個存在する場合は、同じであっても異なっていても良い)、
21、A22、及びA23は、それぞれ独立して、1,4-フェニレン基、1,4-シクロヘキシレン基、1,4-シクロヘキセニル基、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル基、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、ピリジン-2,5-ジイル基、ピリミジン-2,5-ジイル基、ピラジン-2,5-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、2,6-ナフチレン基、3,7-ジベンゾフランジイル基を表し、該1,4-フェニレン基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、2,6-ナフチレン基、3,7-ジベンゾフランジイル基は非置換であるか又は置換基として1個又は2個以上のフッ素原子、塩素原子、CF基、OCF基又はCH基を有していても良く、A23が複数個存在する場合は、同じであっても異なっていても良く、A21、及びA22いずれかが一方が3,7-ジベンゾフランジイル基の場合は、もう片方は単結合であっても良く、好ましくは、1,4-フェニレン基、ピリミジン-2,5-ジイル基、1,4-シクロヘキシレン基、2,6-ナフチレン基(該1,4-フェニレン基、及び2,6-ナフチレン基は非置換であるか又は置換基として1個又は2個以上のフッ素原子、又はCH基を有していても良く、A23がが複数個存在する場合は、同じであっても異なっていても良く)であり、m21は0、1又は2である。ただし、一般式(I)の構造を省く)
で表される液晶化合物を含有することが好ましい。
【0023】
一般式(II)の化合物は、使用する化合物により得られる特性も変化する。より散乱性能を高める場合は、一般式(II)の中でもZ21、又はZ22の少なくとも一つ以上が-C≡C-であることが好ましく、A21、A22、及びA23は、1,4-フェニレン基、1,4-シクロヘキシレン基(該1,4-フェニレン基は、置換基として1個又は2個以上のフッ素原子、塩素原子、CF基、OCF基又はCH基を有していても良い)であることが好ましく、R21、及びR22は炭素原子数1から5までのアルキル基(該アルキル基中の非隣接の1つ又は2つのCH基は酸素原子で置き換えられていてもよい)であることが好ましい。より好ましくは(II-1-1)~(II-1-21)の化合物である。
【0024】
【化6】
【0025】
このような化合物は液晶組成物中に20質量%以上含有することが好ましく、30質量%以上含有することがより好ましく、40質量%以上含有することが更により好ましく、50質量%以上含有することが最も好ましい。これらの化合物、及び一般式(I)の化合物は-C≡C-基を有し、この基を持つ化合物を多く含むことでモノマー化合物の重合速度を制御することができ、赤外光の散乱を高めることができる。
より駆動電圧を下げたい場合は、一般式(II)の中でものA21、A22、及びA23は1,4-フェニレン基、1,4-シクロヘキシレン基、ピリミジン-2,5-ジイル基(該1,4-フェニレン基は、置換基として1個又は2個以上のフッ素原子、塩素原子、CF基、OCF基又はCH基を有していても良い)が好ましく、A21、A22、及びA23の少なくとも一つ以上がピリミジン-2,5-ジイル基であることよりが好ましく、A21がピリミジン-2,5-ジイル基でることが更により好ましい。Z21、又はZ22は単結合、-COO-、-OCO-、-CH-CH-であることが好ましく、単結合であることがより好ましい。R21は炭素原子数1から7までのアルキル基であることが好ましく(該アルキル基中の非隣接の1つ又は2つのCH基は酸素原子で置き換えられていてもよく、また一つ以上のメチレン基は-CH=CH-よって置き換えられていてもよい)、R22は、フッ素原子、シアノ基であることが好ましく、シアノ基であることがより好ましい。m21は0、又は1であることが好ましく、0であることがより好ましい。具体的には(II-2-1)~(II-2-6)の化合物が好ましい。
【0026】
【化7】
【0027】
このような化合物は液晶組成物中に5質量%以上含有することが好ましく、10質量%以上含有することがより好ましい。
【0028】
より応答速度を速めたい場合は、一般式(II)の化合物の中でも、R21は炭素原子数2から8までのアルケニル基を表す(該アルケニル基中の非隣接の1つ又は2つのCH基は酸素原子、-COO-、-OCO-で置き換えられていてもよい)ことが好ましく、R22は、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、CF基、OCF基、OCHF基、NCS基、又は炭素原子数1~10のアルキル基を表す(該アルキル基中の非隣接の1つ又は2つのCH基は酸素原子、-COO-、-OCO-で置き換えられていてもよい)ことが好ましく、フッ素原子、シアノ基であることがより好ましく、Z21、又はZ22は単結合、-COO-、-OCO-、-CH-CH-、-CFO-、-OCF-であることが好ましく、単結合であることがより好ましい。A21、A22、及びA23は、それぞれ独立して、1,4-フェニレン基、1,4-シクロヘキシレン基、1,4-シクロヘキセニル基、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル基、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、ピリジン-2,5-ジイル基、ピリミジン-2,5-ジイル基、ピラジン-2,5-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、2,6-ナフチレン基である(該1,4-フェニレン基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、2,6-ナフチレン基は非置換であるか又は置換基として1個又は2個以上のフッ素原子、塩素原子、CF基、OCF基又はCH基を有していても良く、A23が複数個存在する場合は、同じであっても異なっていても良い)ことが好ましく、1,4-フェニレン基、ピリミジン-2,5-ジイル基、1,4-シクロヘキシレン基、2,6-ナフチレン基(該1,4-フェニレン基、及び2,6-ナフチレン基は非置換であるか又は置換基として1個又は2個以上のフッ素原子、又はCH基を有していても良く、Bが複数個存在する場合は、同じであっても異なっていても良い)であることがより好ましく、m21は0、又は1であることが好ましく、0であることがより好ましい。具体的には(II-3-1)~(II-2-11)の化合物が好ましい。
【0029】
【化8】
【0030】
このような化合物は液晶組成物中に5質量%以上含有することが好ましく、9質量%以上含有することがより好ましい。
【0031】
より散乱性を高めたい場合は、一般式(II)の化合物の中でも、R21は炭素原子数2から8までのアルケニル基を表す(該アルケニル基中の非隣接の1つ又は2つのCH基は酸素原子、-COO-、-OCO-で置き換えられていてもよい)ことが好ましく、R22は、シアノ基、NCS基、又は炭素原子数1~10のアルキル基を表す(該アルキル基中の非隣接の1つ又は2つのCH基は酸素原子、-COO-、-OCO-で置き換えられていてもよい)ことが好ましく、シアノ基であることがより好ましく、Z21、又はZ22は単結合、-COO-、-OCO-、-CH-CH-、-CFO-、-OCF-であることが好ましく、単結合であることがより好ましく、A21、A22、及びA23は、それぞれ独立して、1,4-フェニレン基、ピリミジン-2,5-ジイル基、2,6-ナフチレン基である(該1,4-フェニレン基、2,6-ナフチレン基は非置換であるか又は置換基として1個又は2個以上のフッ素原子、塩素原子、CF基、OCF基又はCH基を有していても良く、Bが複数個存在する場合は、同じであっても異なっていても良い)ことが好ましく、1,4-フェニレン基、ピリミジン-2,5-ジイル基、(該1,4-フェニレン基、及び2,6-ナフチレン基は非置換であるか又は置換基として1個又は2個以上のフッ素原子、又はCH基を有していても良く、A23がが複数個存在する場合は、同じであっても異なっていても良い)であることがより好ましく、m21は1であることが好ましい。具体的には(II-4-1)~(II-4-6)の化合物が好ましい。
【0032】
【化9】
このような化合物は液晶組成物中に10質量%以上含有することが好ましい。
【0033】
本発明の光散乱散型液晶組成物は、光散乱型液晶素子用の組成物であるため、使用する液晶組成物の△n(屈折率異方性)は高いほうが好ましい。具体的には△nは0.15以上が好ましく、0.18以上がよりこのましく、0.20以上が更により好ましい。
【0034】
また、本発明をリバースタイプの高分子分散型液晶に用いる場合は、一般式(II)の化合物の中でも、負の誘電異方性を有する化合物が好ましく、具体的には、一般式(II)中、R21、及びR22はそれぞれ独立して、炭素原子数1から10までのアルキル基(該アルキル基中の非隣接の1つ又は2つのCH基は酸素原子、-COO-、-OCO-で置き換えられていてもよく、また一つ以上のメチレン基は-CH=CH-によって置き換えられていてもよい)、が好ましく、炭素原子数1から5までのアルキル基(該アルキル基中の一つ以上のメチレン基は酸素原子、-CH=CH-よって置き換えられていてもよい)であることがより好ましく、
21、及びZ22は、それぞれ独立して、単結合、-COO-、-OCO-、-CH-CH-、-CH=CH-、-CHO-、-OCH-、又は-C≡C-であることが好ましく、Z22が複数個存在する場合は、同じであっても異なっていても良く、単結合、-CH-CH-、-CHO-、-OCH-、(Z22が複数個存在する場合は、同じであっても異なっていても良い)であることがより好ましく、
21、A22、及びA23は、それぞれ独立して、1,4-フェニレン基、1,4-シクロヘキシレン基を表すが、少なくとも一つ以上は2,3フルオロ-1-4フェニレン基、又は4,6-ジフルオロ-3,7-ジベンゾフランジイル基であり、A23が複数個存在する場合は、同じであっても異なっていても良く
21は0、1又は2、で表される液晶化合物を含有することが好ましい。具体的には(II-5-1)~(II-5-14)で表される化合物が好ましい。
【0035】
【化10】
【0036】
【化11】
【0037】
(式中R21、及びR22は、炭素原子数1~5のアルキル基、炭素原子数1~5のアルコシキ基、炭素原子数2~5のアルケニル基、炭素原子数2~5のアルケニルオキシ基を表す。)
【0038】
本発明の光散乱散型液晶組成物は高分子の網目構造を形成する第3成分として重合性化合物を含有する。重合性化合物は熱や紫外線により硬化する化合物が好ましく、紫外線硬化性の化合物が好ましい。紫外線で硬化する化合物としては、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合があげられるが、ラジカル重合性の化合物が好ましく、中でもアクリル系、メタクリル系の重合性化合物がより好ましく、アクリル系の重合性化合物が更により好ましい。重合性化合物としては、単官能型重合性化合物、多官能型重合性化合物が上げられるが、少なくとも1種類以上の多官能型重合性化合物で構成させることが好ましく、少なくとも1種類以上の2官能型重合性化合物で構成されることがより好ましい。更により好ましい構成は2官能型重合性化合物と単官能型重合性化合物を併用することである。
【0039】
本発明では、2官能型重合性化合物として一般式(III-1)で表されるものを用いる。
【0040】
【化12】
【0041】
式中、Y、及びYは水素原子、又はメチル基を表し、Xは2価の有機基を表す。該2価の有機基であるXは分子量150~15000であることが好ましく、350~10000であることが更に好ましく、さらに炭素原子、酸素原子、窒素原子、水素原子で構成される基であることが好ましい。
としては、特に密着性を最重視するのであれば、一般式(III-3-1)
【0042】
【化13】
【0043】
(式中、Eは炭素原子数1~4までのアルキル基を表し、該アルキル基中の一つ以上の-CH-は酸素原子、-CO-、-COO-、-OCO-で置換されていても良く、qは1~20を表し、Eは、下記(III-1-2)~(III-1-5)
【0044】
【化14】
【0045】
を表し、Eは下記(III-1-6)
【0046】
【化15】
【0047】
は水素原子、又はメチル基を表し、qは10~300を表す)
であることが好ましく、
駆動電圧を重視するのであれば、Xは一般式(III-1-7)~(III-1-9)
【0048】
【化16】
【0049】
(式中、Yは水素原子、又はメチル基を表し、q、及びqは2~15の整数を表し、qは6~40までの整数を表し、式(II-6-9)中の1つ以上のCH基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、酸素原子、-CO-、-NH-、-COO-、-OCO-で置き換えられていてもよく、CH基中の1つ、又は2つの水素原子は、メチル基、エチル基で置き換えられていても良い)で表わされる化合物であることが好ましい。
【0050】
具体的には以下の(III-1-10)~(III-1-11)で表される化合物が好ましい。
【0051】
【化17】
式中S1、及びS2は3から12の整数を表し、S3、及びS4は0から5の整数を表し、上記化合物を複数含んでいても良い)
【0052】
リバースタイプの高分子分散型液晶として用いる場合は、一般式(III-1)中のXとしては、一般式(III-1-21)
【0053】
【化18】
式中のA21、A22、A23、Z21、Z22、及びm21は前述と同じ意味を表す。その中でも(III-1-22)~(III-1-32)で表される化合物が好ましい。
【0054】
【化19】
【0055】
単官能化合物としても、特に制限はないが、好ましくは一般式(III-2)
【0056】
【化20】
【0057】
(式中、Y5は水素原子、又はメチル基を表し、Xは1価の有機基を表す)。該1価の有機基であるXは分子量120~1000であることが好ましく、150~500であることがより好ましく、さらに炭素原子、酸素原子、水素原子で構成される基であることが好ましい。さらに好ましいXとしては、分岐基を有していてもよい炭素原子数8~30のアルキル基が好ましく(該アルキル基中の非隣接の1つ又は2つ以上の-CH-はそれぞれ独立して酸素原子、-COO-、又は-OCO-で置き換えられていてもよい)、分岐基を有していてもよい炭素原子数10~25のアルキル基がより好ましく(該アルキル基中の非隣接の1つ又は2つ以上の-CH-はそれぞれ独立して酸素原子、-COO-、又は-OCO-で置き換えられていてもよい)、分岐基を有する炭素原子数16~24のアルキル基であることが更により好ましい。
【0058】
前記調光層中に網目構造を形成している高分子物質を紫外線重合により形成する場合は、光重合開始剤を用いることができ、光重合開始剤としては、特に制限はないが、好ましくはアルキルフェノン系、アシルフォスフィンオキサイド系、オキシムエステル系等の分子内開裂型の開始剤が好ましく、具体的にはジフェニル-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フォスフィンオキシド、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシーシクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、ベンゾフェノン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]-フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチル-ベンジル)-1-(4-モルフォリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)、ベンゾフェノン、メチルベンゾイルフォーメート、オリゴ{2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン、2,4,6トリメチルベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、2-エトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2-(1-メチルエトキシ)-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2-イソブトキシ-2-フェニルアセトフェノン。
【0059】
特にこの中でも、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オンがより好ましい。
開始剤の含有量は光散乱散型液晶組成物中に含まれる第3成分であるモノマー組成物に対して0.5~5.0質量%であることが好ましく、1.0~3.0質量%であることがより好ましい。
光散乱散型液晶組成物中に、第一成分と第二成分を含む液晶組成物は50~90質量%含有することが好ましく、60~85質量%含有することがより好ましく、65~80質量%含有することが更により好ましい。
【0060】
その他、必要に応じて酸化防止剤、紫外線吸収剤、非反応性のオリゴマーや無機充填剤、有機充填剤、重合禁止剤、消泡剤、レベリング剤、可塑剤、シランカップリング剤等を適宜添加しても良い。
また、着色を目的として染料等、特に2色性染料を添加することも可能である。
【0061】
また、基板との密着性を向上させる材料として、一般式(V-1)
【0062】
【化21】
で表される基を有する化合物を添加することが好ましい。具体的には下記の化合物を添加することもできる。その中でも一般式(V-1-1)、(V-1-2)の化合物が好ましい。
【0063】
【化22】
(式中Y、Y、及びYはそれぞれ独立して水素原子、又はメチル基を表し、q、q、及びqは1から4の整数を表す。)
【0064】
次に、高分子分散型液晶表示素子の作製方法について説明する。本発明の高分子分散型液晶表示素子は、電極を有する2枚の基板であって、少なくとも一方が透明電極を有する透明基板である2枚の基板間に、アイソトロピック相である本発明の光散乱型液晶デバイス用組成物を狭持した後、熱、又は活性エネルギー線を照射することによって重合性化合物を重合させ、液晶組成物との相分離を誘発させることにより、液晶組成物と透明性高分子物質からなる調光層が形成されることによって得ることができる。特に紫外線を照射して重合性化合物を重合させることにより、液晶組成物との相分離を誘発させる手法が好ましい。
【0065】
2枚の基板はガラス、プラスチックの如き柔軟性をもつ透明な材料を用いることができ、一方はシリコン等の不透明な材料でも良い。透明電極層を有する透明基板は、例えば、ガラス板等の透明基板上にインジウムチンオキシド(ITO)をスパッタリングすることにより得ることができる。また、低波長分散の透明性基板を用いることにより本発明のデバイスの光散乱能が高まり反射率やコントラストが向上してより好ましい。低波長分散の透明性基板としては、ホウケイ酸硝子や、ポリエチレンテレフタレートまたはポリカーボネート等のプラスチック透明フィルム、1/4λの光干渉条件を使用した誘電体多層膜をコートした透明性基板が挙げられる。
【0066】
また、該基板上には、必要に応じて、高分子膜や、配向膜、SiO2膜、SiNx膜、やカラーフィルターを配置することもできる。配向膜としては、例えば、ポリイミド配向膜、光配向膜等が使用できる。配向膜の形成方法としては、例えばポリイミド配向膜の場合、ポリイミド樹脂組成物を該透明基板上に塗布し、180℃以上の温度で熱硬化させ、更に綿布やレーヨン布でラビング処理することで得ることができる。また、ラビング処理を施していないポリイミド膜等の高分子膜も用いることもできる。
【0067】
カラーフィルターは、例えば、顔料分散法、印刷法、電着法、又は、染色法等によって作成することができる。顔料分散法によるカラーフィルターの作成方法を一例に説明すると、カラーフィルター用の硬化性着色組成物を、該透明基板上に塗布し、パターニング処理を施し、そして加熱又は光照射により硬化させる。この工程を、赤、緑、青の3色についてそれぞれ行うことで、カラーフィルター用の画素部を作成することができる。その他、該基板上に、TFT、薄膜ダイオード、金属絶縁体金属比抵抗素子等の能動素子を設けた画素電極を設置してもよい。
【0068】
前記基板を、透明電極層が内側となるように対向させる。その際、スペーサーを介して、基板の間隔を調整してもよい。このときは、得られる調光層の厚さが1から100μmとなるように調整するのが好ましい。中でも2から50μmが好ましく、2から30μmがより好ましく、5から25μmが更に好ましく、10から20μmが最も好ましい。スペーサーとしては、例えば、ガラス粒子、プラスチック粒子、アルミナ粒子、フォトレジスト材料等が挙げられる。その後、エポキシ系熱硬化性組成物等のシール剤を、液晶注入口を設けた形で該基板にスクリーン印刷し、該基板同士を貼り合わせ、加熱しシール剤を熱硬化させる。
【0069】
2枚の基板間に調光層形成材料を狭持させるに方法は、通常の真空注入法でも良いが、ODF法等滴下又は塗布で行うことも好ましい。真空注入や、滴下又は塗布工程から調光層中に網目構造を形成させるために紫外線重合を行うまでの間、調光層形成材料は均一なアイソトロピック状態であることが好ましい。
【0070】
紫外線重合のためのランプとしては、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ等を用いることができる。また、照射する紫外線の波長としては、調光層形成材料に含有されている光重合開始剤の吸収波長領域であり、且つ含有されている液晶組成物の吸収波長域でない波長領域の紫外線を照射することが好ましく、具体的には、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプを使用して330nm以下の紫外線をカットして使用することが好ましい。また、単一波長を照射できるUV-LEDランプを用いることも好ましい。
【0071】
また、紫外線照射の時の温度は、調光層の特性を決める重要な要素となるが、光散乱散型液晶組成物のアイソトロピック-ネマティック転移点よりわずかに高い温度が好ましく、具体的には転移点+0.1から10.0℃が好ましく、+0.5から5.0℃がより好ましい。
照射する紫外線の強度は、目的の高分子分散型液晶表示素子を得るため適宜調整することができるが1から200mW/cmであることが好ましく、5から100mW/cmであることがより好ましい。紫外線を照射する時間も適宜調整することができるが10から600秒が好ましい。
【0072】
上述の手法、又はそれ以外の手法で作製された、高分子分散型液晶表示素子内の調光層は、液晶組成物が透明性高分子物質でカプセル状に閉じ込められた構造、液晶組成物の連続相中に透明性高分子物質の3次元ネットワーク構造が形成された構造、又は両者が混在した構造等を有しているが、液晶組成物の連続相中に透明性高分子物質の3次元ネットワーク構造が形成された構造であることが好ましく、紫外線照射によって、液晶組成物の連続相中に透明性高分子物質の3次元ネットワーク構造が形成された構造がより好ましい。
ネットワーク構造の平均空隙間隔は光散乱型液晶デバイスの特性に大きく影響し、平均空隙間隔としては、0.2から2.0μmが好ましく、0.5から1.5μmがより好ましい。
【0073】
また、本発明の液晶デバイスの裏面側に光吸収層や、拡散反射板等を配置することもでき、反射率とコントラストの高い反射型光散乱型液晶デバイスが得られる。また、シアン・マゼンタ・イエロー等の光吸収波長の異なる光吸収層を各色別に分割した画素電極の位置に一致するように配置すると、カラー表示が可能である。鏡面反射、拡散反射、再帰性反射、ホログラム反射等の機能を付加することもできる。
また、本発明の高分子分散型液晶表示素子は電圧により光の透過散乱をコントロールすることができる素子である。
【実施例
【0074】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳述するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例及び比較例の組成物における「%」は「質量%」を意味する。
【0075】
実施例中の高分子分散型液晶表示素子は以下の方法で作製した。
液晶組成物、重合性化合物、光重合開始剤からなる光散乱散型液晶組成物をセル厚15μmのITO付きガラスセル内にアイソトロピック状態で注入した。注入後注入口を封口剤3026E(スリーボンド社製)で封止した後、光散乱散型液晶組成物のアイソトロピック-ネマチック転移点より1~2℃高い温度にコントロールし、厚さ6mmのソーダライムガラスを介した照射強度が20~60mW/cmとなるように調整されたメタルハライドランプを60秒間照射して、高分子分散型液晶表示素子を得た。
実施例中に示される液晶組成物、光散乱散型液晶組成物の特性の略号、及び意味は以下の通りである。
【0076】
Tni(LC) :液晶組成物のネマチック相-等方性液体相転移温度(℃)
△n :液晶組成物の25℃における屈折率異方性
Tnm(PNM) :光散乱散型液晶組成物のネマチック相-等方性液体相転移温度(℃)
赤外散乱:セル厚15μm、25℃において、何もない(空気)の時の光量を100%とした場合の高分子分散型液晶素子の電圧OFF時の透過率(%)。
T100:セル厚15μm、25℃において、何もない(空気)の時の光量を100%とした場合の高分子分散型液晶素子の50V印加時の透過率(%)。
V99 :セル厚15μm、25℃において、電圧無印加時の高分子分散型液晶素子の光透過率(T0)を0%とし、50V印加時の光透過率(T100)を100%とした時、光透過率が99%となる印加電圧値(V)。
応答速度τr:電圧無印加時の高分子分散型液晶素子の光透過率(T0)を0%とし、50V印加時の光透過率(T100)を100%とした場合の、電圧無印加状態から50V印加した時に透過率が10%から90%までの変化に要する時間(msec)
応答速度τd:電圧無印加時の高分子分散型液晶素子の光透過率(T0)を0%とし、50V印加時の光透過率(T100)を100%とした場合の、50V印加状態から0V印加状態にした時に透過率が90%から10%までの変化に要する時間(msec)
【0077】
評価方法は以下の通りである。
転移点測定には、メトラートレド社製の温度コントロールシステムFP-90、及びホットステージFP82を用いた。
赤外散乱は大塚電子社製のRET-100IRの色/コントラスト測定モードを用い、セルのない状態をリファレンスとした電圧無印加状態での940nmの赤外光の透過率を測定した。温度コントロールは北里コーポレーション社製のMicroheat Plateを用いた。
V99、T100、τr、τd測定には、大塚電子社製のLCD評価システムLCD-5200を用い、Bレンズ、アパーチャーSの条件にて測定した。
屈折率はアッペの屈折計(ATAGO社製)を用いた。
【0078】
(実施例1~6、比較例1、2)
表1に示す液晶組成物を準備し、それらを用いて表2の光散乱散型液晶組成物を作製した。表2の光散乱散型液晶組成物を用いて、上述の条件にて高分子分散型液晶素子を作製し、上述の評価方法にて評価を行った、その結果を表3に示す。
【0079】
[使用した化合物]
【0080】
【化23】
【0081】
【化24】
【0082】
【化25】




























【0083】
【表1】








【0084】
【表2】








【0085】
【表3】

実施例の組成物の方が比較例の組成物に比べて、赤外線の散乱性能に優れ、且つ応答速度も速いことがわかる。