(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】半導体モジュール
(51)【国際特許分類】
H01L 25/07 20060101AFI20231017BHJP
H01L 25/18 20230101ALI20231017BHJP
H01L 23/48 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
H01L25/04 C
H01L23/48 G
(21)【出願番号】P 2019224457
(22)【出願日】2019-12-12
【審査請求日】2022-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】妹尾 政宏
(72)【発明者】
【氏名】難波 明博
【審査官】庄司 一隆
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/064775(WO,A1)
【文献】特開2019-169666(JP,A)
【文献】特開2017-054877(JP,A)
【文献】特開2018-163912(JP,A)
【文献】特開2018-093163(JP,A)
【文献】特開2019-140250(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0074647(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0203241(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 25/07
H01L 23/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワー半導体素子と、
前記パワー半導体素子のドレイン端子に接続されるドレイン導体と、
前記パワー半導体素子のソース端子に接続され、前記パワー半導体素子を挟んで前記ドレイン導体に対向して配置されるソース導体と、
前記ドレイン導体と前記ソース導体の間に配置される絶縁基板と、
前記絶縁基板上に配置される実装部品と、を備え、
前記実装部品は、前記ソース導体から間隔を有して、前記絶縁基板の前記ソース導体側に配置されることを特徴とする半導体モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体モジュールであって、
前記ソース導体は、前記ドレイン導体と対向する側に凸部を有し、
前記凸部を介して前記ソース端子に接続されることを特徴とする半導体モジュール。
【請求項3】
請求項2に記載の半導体モジュールであって、
前記凸部の厚さに応じて、前記実装部品と前記ソース導体間の間隔の大きさが決定することを特徴とする半導体モジュール。
【請求項4】
請求項1に記載の半導体モジュールであって、
前記ソース導体は、少なくとも前記実装部品と対向する面に凹部を有し、
前記実装部品は、前記凹部により前記ソース導体から間隔を有して配置されることを特徴とする半導体モジュール。
【請求項5】
請求項1に記載の半導体モジュールであって、
前記ソース導体に切り欠きを有し、
前記切り欠き部分を介して前記絶縁基板の表面に配置されている信号配線が、ボンディングワイヤにより外部の信号端子に接続されることを特徴とする半導体モジュール。
【請求項6】
請求項1に記載の半導体モジュールであって、
前記実装部品は、抵抗素子、コンデンサ、スナバコンデンサ、ダイオード、バイポーラトランジスタの少なくとも一種を含むことを特徴とする半導体モジュール。
【請求項7】
請求項1に記載の半導体モジュールであって、
前記絶縁基板は、低温同時焼成セラミックス基板であることを特徴とする半導体モジュール。
【請求項8】
請求項1に記載の半導体モジュールであって、
前記ソース導体から間隔を有して、前記絶縁基板の前記ソース導体側表面に配置される信号配線を有することを特徴とする半導体モジュール。
【請求項9】
請求項8に記載の半導体モジュールであって、
前記絶縁基板内部に信号配線を有し、当該絶縁基板内部の信号配線は、前記絶縁基板の前記ソース導体側表面に配置される信号配線と接続されることを特徴とする半導体モジュール。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の半導体モジュールを複数接続して構成される半導体モジュールであって、
ソース導体が延在する方向において、前記ソース導体の一部がドレイン導体よりも突出した第1の半導体モジュールと、
ドレイン導体が延在する方向において、前記ドレイン導体の一部がソース導体よりも突出した第2の半導体モジュールと、
前記第1の半導体モジュールにおける前記ソース導体の突出部と第2の半導体モジュールにおける前記ドレイン導体の突出部と前記ソース導体の突出部と前記ドレイン導体の突出部を接続する導体とで形成された中間導体と、を備えることを特徴とする半導体モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体モジュールの構造に係り、特に、絶縁基板を内蔵した半導体モジュールの実装構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車などに搭載される電力変換装置は、電池から供給される直流電力をスイッチングにより交流電力に変換することで、電気自動車を動かすための交流モータを回転させている。
【0003】
図1に代表的な電力変換装置の回路構成を示す。
図1は、電力変換装置を介してモータと電池を接続した直流/交流変換回路である。電池1は電力変換装置3を介してモータ4に接続する。電力変換装置3で直流の電力を交流に変換する間、コンデンサ2は電力を平滑する。
【0004】
電力変換装置3内には複数の半導体モジュール5が配置されており、半導体モジュール5は制御回路6よりゲート抵抗7を介して接続される信号配線を通じて入力される制御信号によってON・OFFを切り替えることで電流の流れを制御する。
【0005】
ゲート抵抗7は制御回路6の電流の大きさを制限する。半導体モジュール5を2つ直列接続し、その中間点をモータ4のステータ巻線と接続する。2直列の半導体モジュール5を3並列に接続し制御することで、モータ4へ三相交流電力を出力する。
【0006】
以上のように半導体モジュール5には電池1やコンデンサ2、モータ4と接続する高電圧部と、制御回路6やゲート抵抗7と繋がる信号配線部(低電圧部)がある。
【0007】
一方、次世代半導体モジュールでは、更なる高効率化と小型軽量化が求められている。半導体モジュールの高効率化と小型軽量化には、半導体モジュールを構成するパワー半導体素子の高速スイッチング動作や高周波動作が有効である。
【0008】
高速スイッチングはスイッチング損失を低減し、変換効率を改善する。また、高周波スイッチングはシステムに搭載されるトランスやリアクトル、コンデンサ等の電気的フィルタの容量を減らし、これらの電気回路部品を大幅に小型化することができる。
【0009】
しかしながら、半導体を高速で制御するために配線や素子を微細化していくと半導体モジュール内の高電圧部と信号配線部(低電圧部)の距離が小さくなっていき、高電圧部と信号配線部(低電圧部)の間の絶縁性能の確保が課題となる。また、高周波動作において安定した出力を得るにはゲート・ソース電極間の寄生容量Cgsやドレイン・ゲート電極間の寄生容量Cdgの増加を抑制する必要があり、ゲート・ソース電極間の距離やドレイン・ゲート電極間の距離を適切に設ける必要がある。
【0010】
これらの解決策の一つとして、信号配線をセラミック基板上に配置することで、セラミックを高電圧部と信号配線(低電圧部)の間に挟んで絶縁する手法がある。
【0011】
半導体モジュールの小型化や高周波化の技術について、例えば、以下のような文献がある。
【0012】
特許文献1には、半導体について広周波数帯域にわたって安定した利得を有するための間隙を設けた半導体装置が開示されている。
【0013】
また、特許文献2には、樹脂封入のために回路基板とMOSFETが載る実装基板との間にスペーサを設けた回路装置が開示されている。
【0014】
また、特許文献3には、電磁シールド性を有するキャビティ構造を構成した高周波モジュールが開示されている。
【0015】
また、特許文献4には、信号配線を絶縁基板と一体で形成する絶縁基板が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】特開2015-012183号公報
【文献】特開2012-178404号公報
【文献】特開2010-219131号公報
【文献】国際公開第2018/043076号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
ところで、半導体モジュール内部の絶縁性能の確保には、絶縁基板による高電圧部と信号配線部(低電圧部)の間の絶縁に加え、モジュール内部の導電部間の絶縁距離を考慮する必要がある。特に、抵抗素子やスナバコンデンサ、ダイオードと言った実装部品を絶縁基板に配置する場合、それらの実装部品と高電圧部側の電極(例えばドレイン導体)との絶縁距離が、モジュール内部の絶縁耐性の維持とモジュールの小型化の両立には重要な要素となる。
【0018】
なお、絶縁距離とは、電気的な製品の中で短絡がおこる危険性のある導電部から別の導電部までの最短距離を表しており、例えば、JIS規格C0704-1995には「制御機器の絶縁距離・絶縁抵抗及び耐電圧」の基準値が決められている。
【0019】
しかしながら、上記特許文献1,2,3には、高い電位差がある導体に挟まれた信号配線や回路の素子と高電圧部分との絶縁距離については検討がない。
【0020】
一方、特許文献4では、高電圧での基板の使用を検討しているが、特許文献4の
図3の様にドレイン導体側の基板の面に配線をすると、ソース端子と信号電圧ほどの差である配線部分とソース端子と電位差が大きいドレイン導体との絶縁距離が小さくなる。
【0021】
また、別体の実装部品を配線上にはんだなどで接合すると、実装部品とドレイン面の絶縁距離はより小さくなってしまい絶縁破壊を起こしてしまう可能性がある。
【0022】
そこで、本発明の目的は、電源配線などの高電圧部と信号配線などの低電圧部とを絶縁する絶縁基板を内蔵した半導体モジュールにおいて、モジュール内部の絶縁耐性を維持しつつ、小型化が可能な半導体モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記課題を解決するために、本発明は、パワー半導体素子と、前記パワー半導体素子のドレイン端子に接続されるドレイン導体と、前記パワー半導体素子のソース端子に接続され、前記パワー半導体素子を挟んで前記ドレイン導体に対向して配置されるソース導体と、前記ドレイン導体と前記ソース導体の間に配置される絶縁基板と、前記絶縁基板上に配置される実装部品と、を備え、前記実装部品は、前記ソース導体から間隔を有して、前記絶縁基板の前記ソース導体側に配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、電源配線などの高電圧部と信号配線などの低電圧部とを絶縁する絶縁基板を内蔵した半導体モジュールにおいて、モジュール内部の絶縁耐性を維持しつつ、小型化が可能な半導体モジュールを実現することができる。
【0025】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図2】従来の半導体モジュールの一部を示す断面図である。
【
図3】実施例1に係る半導体モジュールの一部を示す断面図である。
【
図4A】実施例1に係る半導体モジュールの一部を示す斜視図である。
【
図5】実施例1に係る半導体モジュールの一部を示す斜視図である。
【
図6】実施例1に係る半導体モジュールの変形例を示す斜視図である。
【
図7】実施例1に係る半導体モジュールの変形例の一部を示す上面図である。
【
図8】実施例1に係る半導体モジュールの変形例の外観を示す斜視図である。
【
図9】実施例2に係る半導体モジュールの一部を示す断面図である。
【
図10】実施例3に係る半導体モジュールの一部を示す断面図である。
【
図11】実施例3に係る半導体モジュールの変形例を示す斜視図である。
【
図12】実施例3に係る半導体モジュールの変形例の外観を示す斜視図である。
【
図13】実施例4に係るモータ一体型インバータの一部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。なお、各図面において同一の構成については同一の符号を付し、重複する部分についてはその詳細な説明は省略する。
【0028】
<従来の絶縁基板について>
以下では本発明の理解を容易にするために、先ず従来のセラミック基板を使った絶縁基板の構成とその課題について説明する。その後、本発明に係る絶縁基板の構成について説明する。
【0029】
図2は、絶縁基板としてセラミック基板を用いた場合の半導体素子との従来の接続構造を示す断面図である。ドレイン導体9と2つのパワー半導体素子(MOSFET)10がそれぞれ接続導体であるはんだ12aを介して接続されている。さらに、パワー半導体素子(MOSFET)10のそれぞれのゲート信号端子11が接続導体であるはんだ12bを介してセラミック基板8のゲート信号配線16に接続している。
【0030】
ゲート信号配線16は一部分離しており、ゲート信号配線16の間をゲート抵抗7aで接続している。そのため、ゲート信号配線16とパワー半導体素子であるMOSFET10のゲート信号端子11とを直接はんだ12bで接続すると、ゲート抵抗7aをはじめとした信号用の配線や素子を電位の高い金属性のドレイン導体9側に近い面に実装することになる。
【0031】
ゲート抵抗7aとドレイン導体9の距離が近いと、ゲートとドレインとの間の絶縁距離は小さくなってしまい、高い電圧を加えた時にゲート-ドレイン間の絶縁が破壊され、リーク電流が流れる可能性がある。絶縁破壊が起こり難くするためにはゲートとドレインの距離を大きくすることが必要だがこれはモジュールが大きくなる原因となる。
【実施例1】
【0032】
次に、
図3から
図8を参照して、本発明の実施例1に係る半導体モジュールについて説明する。
【0033】
図3は、本実施例の半導体モジュールの一部を示す断面図である。
図4Aは、本実施例の半導体モジュールの一部を示す斜視図であり、モジュール内部の構造が分かり易くなるように、
図3の構成から凸部18aを含むソース導体18、はんだ12c、ゲート抵抗7aを除いて示している。
図4B,
図4Cは、それぞれ
図4AのA-A’部断面図、B-B’部断面図である。
【0034】
なお、
図3ではゲート信号配線16(16b)は一部分離しており、ゲート信号配線16(16b)の間をゲート抵抗7aで接続している形態で示しているが、
図4Aから
図4Cではゲート信号配線16(16b)が一体で形成されている形態で示している。
図3のように、ゲート信号配線16(16b)の一部を分離し、ゲート信号配線16(16b)の間をゲート抵抗7aで接続した場合、
図5に示すような形態となる。
【0035】
また、
図6は、本実施例の半導体モジュールの変形例を示す斜視図であり、
図7は、その上面図である。
図8は
図6の半導体モジュールを封止樹脂23で封止した状態の外観を示す斜視図である。
【0036】
本実施例の半導体モジュールは、
図3に示すように、はんだ12cを介してパワー半導体素子(MOSFET)10のソース端子14に接続されるソース導体(電極)18が、はんだ12aを介してパワー半導体素子(MOSFET)10のドレイン端子に接続されるドレイン導体(電極)9と対向して配置されている。また、ソース導体(電極)18は、絶縁基板である低温同時焼成セラミックス基板(LTCC)13のゲート抵抗7aが接合された配線の面にも対向している。
【0037】
ソース導体(電極)18は、板状の表面に凸部18aを持ち、凸部18aがパワー半導体素子(MOSFET)10のソース端子14の上に接合したはんだ12cと接合することで、パワー半導体素子(MOSFET)10との間に回路を形成する。
【0038】
凸部18aは、例えば、銅(Cu)ブロックの削り出しにより、ソース導体(電極)18と一体物として形成してもよく、ソース導体(電極)18と凸部18aをそれぞれ別個に成形した後に接合することで形成しても良い。なお、ソース導体(電極)18と凸部18aの材質は銅(Cu)に限定されず、アルミニウム(Al)であっても良く、ソース導体(電極)18をアルミニウム(Al)で形成し、凸部18aを銅(Cu)で形成しても良い。
【0039】
ソース導体(電極)18の凸部18aの厚さを調整することで、ゲート信号端子11、はんだ12b、ゲート信号配線16a,16b、LTCC13、ゲート抵抗7aの合計の厚さである矢印100の長さに対して、ソース端子14、はんだ12c、凸部18aを含むソース導体(電極)18の合計の厚さである矢印101の長さを大きくしている。(101>100)
矢印100に対して矢印101が長い分、ゲート抵抗7aとソース導体(電極)18との間を確実に絶縁することができる。
【0040】
なお、矢印100は、必ずしも上記の全ての構成の合計の厚さに限るものではなく、例えば、ゲート信号配線16aが無いような場合であっても、矢印100の長さに対して矢印101の長さが大きくなるように構成する。
【0041】
つまり、矢印100は、パワー半導体素子(MOSFET)10の上面からゲート抵抗7aの上面までの距離であり、矢印101は、パワー半導体素子(MOSFET)10の上面からソース導体(電極)18の下面までの距離であると言い換えることができる。
【0042】
ソース導体(電極)18とゲート抵抗7aの電位差は、ソース導体(電極)18とドレイン導体(電極)9の電位差あるいはゲート抵抗7aとドレイン導体(電極)9の電位差よりも非常に小さく、ソース導体(電極)18とゲート抵抗7aが近くに配置されても絶縁破壊が起こりにくい。
【0043】
そのため、
図2に示す従来構造の様にドレイン導体9側の面にゲート抵抗7aがある場合と比べて、本実施例(
図3)の様にソース導体(電極)18側にゲート抵抗7aがある場合はモジュールの積層配置方向(ドレイン導体9とソース導体18の対向方向,つまり矢印100や矢印101の方向)に絶縁距離を大きくする必要がなく、その分モジュールの大きさを小さくすることができる。
【0044】
図4Aから
図4Cは、本実施例の半導体モジュールの内部のパワー半導体素子(MOSFET)10に備わる信号端子と絶縁基板に設けられた配線の接続関係を示す斜視図および断面図である。
【0045】
図4Aは、信号配線(ゲート信号配線16b,ソース信号配線17b)を有するLTCC13とドレイン導体(電極)9とパワー半導体素子(MOSFET)10の位置関係を示した斜視図である。ドレイン導体(電極)9の上に接続導体であるはんだ12aを介してパワー半導体素子(MOSFET)10があり、さらにその上にゲート信号配線16bやソース信号配線17bが表面に設けられたLTCC13がある。以下に、断面図を使いそれぞれの接続の関係を説明する。
【0046】
図4Bは、ゲート信号配線16(16a,16b)およびソース信号配線17aとパワー半導体素子(MOSFET)10のゲート信号端子11、ソース信号端子15との接続やLTCC13内部のゲート信号配線16cとソース信号配線17cとの接続を示す
図4AのA-A’部断面図である。
【0047】
LTCC13のドレイン導体(電極)9側の面上にあるゲート信号配線16aとパワー半導体素子(MOSFET)10に備わるゲート信号端子11は、はんだ12bにより電気的に接続されている。さらにゲート信号配線16a,16bは、はんだ12bの上で交差するように配置されている。LTCC13の両面のゲート信号配線が交差している位置でLTCC13の内部にあるゲート信号配線16cがゲート信号配線16a,16bを電気的に接続している。
【0048】
また、ソース信号配線17aは、ソース信号端子15とはんだ12bで電気的に接続されており、ソース信号配線17a,17cは、はんだ12bの上で交差し接続されている。
【0049】
上記のように、両面の信号配線が交差した状態でLTCC13内部の配線で接続しても良いし、内部の信号配線と片面の信号配線のみ交差した状態でLTCC13内部の配線と接続しても良い。
【0050】
図4Cは、ゲート信号配線16aとドレイン導体(電極)9の位置関係を示す
図4AのB-B’部断面図である。
【0051】
ゲート信号配線16aは、LTCC13のドレイン導体(電極)9に対向する面にあり、ゲート信号配線16bは、LTCC13を挟んで反対の面にある。ゲート信号配線16bは、LTCC13の中央近傍まで伸びている。ソース信号配線17cもLTCC13内部にあり、LTCC13の中央近傍まで伸びており、LTCC13の中央近傍に存在するソース信号配線17bと接続している。
【0052】
上記のように、LTCC13内部の導体であるゲート信号配線16cやソース信号配線17cがLTCC13両面の導体であるゲート信号配線16a,16bおよびソース信号配線17a,17bと繋がることにより、パワー半導体素子(MOSFET)10のゲート信号端子11やソース信号端子15をドレイン導体(電極)9側の面で電気的に接続しつつ、ドレイン導体(電極)9から遠い面のゲート信号配線16bやソース信号配線17bにON・OFFの信号を入力できるため、LTCC13により信号配線(ゲート信号配線16,ソース信号配線17)をドレイン導体(電極)9から絶縁した上で、パワー半導体素子(MOSFET)10の導通・遮断が可能である。
【0053】
また、LTCC13は、多層構造をとることができ、ゲート信号配線16bが無い場合でも、内部(内層)のゲート信号配線16cがゲート信号配線16aと電気的に繋がり、ゲート信号配線16cがLTCC13の内部でLTCC13と接続する別の基板の配線に接続するようにゲート信号配線16cとLTCC13の基板を伸ばすことで、LTCC13の基板内の配線を絶縁しつつ別の絶縁基板の配線やパワー半導体素子(MOSFET)10以外の制御用半導体素子が実装された別の制御基板の配線と接続することもできる。
【0054】
図5は、
図4Aに示す半導体モジュールのゲート信号配線16(16b)の一部を分離し、ゲート信号配線16(16b)の間をゲート抵抗7aで接続した本実施例の半導体モジュールの斜視図である。ゲート信号配線16bは途中で切れており、切れた部分を繋ぐようにゲート抵抗7aを接続する。ゲート抵抗7aによりパワー半導体素子(MOSFET)10のゲート充放電が抑制される。
【0055】
図6は、本実施例の半導体モジュールの変形例を示す斜視図である。
図6に示す半導体モジュールは、ソース導体(電極)18の一部に切り欠き29が設けられており、ソース導体(電極)18を平面視した際に、その切り欠き部分からLTCC13の上面が一部露出している。なお、ここで言う「露出」とは、後述する封止樹脂23で半導体モジュールを封止する前の状態において、LTCC13の上面がソース導体(電極)18から露出して見える状態を指している。従って、
図8に示すように、半導体モジュールを封止樹脂23で封止した後は、切り欠き部29も封止樹脂23により被覆される。
【0056】
そして、LTCC13の表面に配置されているゲート信号配線16bとソース信号配線17は、切り欠き部分を介してボンディングワイヤ19により外部の信号端子20に接続されている。
【0057】
また、ドレイン導体(電極)9の入力端子P(21)とソース導体(電極)18の入力端子N(22)と外部導体を接続することで、パワー半導体素子(MOSFET)10に対し信号端子20から電源電圧よりも低い小電圧の信号(ゲート駆動信号やソース信号)を入力してパワー半導体素子(MOSFET)10の導通及び遮断を操作することができ、入力端子P(21)、入力端子N(22)を流れる電力の制御ができるようになる。
【0058】
なお、
図6に示した切り欠き29は、ソース導体(電極)18の長方形の面の一部が台形状に切り取られている例で示したが、切り欠き29の形状はこれに限定されるものではなく、矩形や円弧状の切り欠きであっても良い。
【0059】
図7は、
図6に示す半導体モジュールの上面図である。ソース導体(電極)18の一部に切り欠き29が設けられているため、LTCC13上に配置されたゲート信号配線16bやソース信号配線17にボンディングワイヤ19を接続する際、ソース導体(電極)18とボンディングワイヤ19は接触しない。
【0060】
ソース導体(電極)18の切り欠き部分は、パワー半導体素子(MOSFET)10に紙面上で重なっており、なおかつ、ドレイン導体(電極)9の一部と紙面上で重なっている。そのため、ドレイン導体(電極)9側ではソース導体(電極)18側のような切り欠きを設けることはできない。
【0061】
そこで、LTCC13を使うことで、
図6や
図7に示す様に、信号配線(ゲート信号配線16b,ソース信号配線17)をソース導体(電極)18側に実装し、ソース導体(電極)18の一部に切り欠き29を設けることで、ボンディングワイヤ19を取り付けるスペースを作ることができる。
【0062】
図8は、
図6の半導体モジュールを封止樹脂23で封止した状態の外観を示す斜視図である。
図6の半導体モジュールに封止樹脂23を注入し封止することで、導体間やLTCC13と導体の間に異物が入るのを防ぐことができる。
【0063】
以上説明した本実施例の半導体モジュールは、言い換えると、パワー半導体素子(MOSFET)10と、パワー半導体素子(MOSFET)10のドレイン端子に接続されるドレイン導体(電極)9と、パワー半導体素子(MOSFET)10のソース端子14に接続され、パワー半導体素子(MOSFET)10を挟んでドレイン導体(電極)9に対向して配置されるソース導体(電極)18と、ドレイン導体(電極)9とソース導体(電極)18の間に配置される絶縁基板13と、絶縁基板13上に配置される実装部品(ゲート抵抗7a)を備えており、実装部品(ゲート抵抗7a)は、ソース導体(電極)18から間隔を有して、絶縁基板13のソース導体(電極)18側に配置される。
【0064】
また、ソース導体(電極)18は、ドレイン導体(電極)9と対向する側に凸部18aを有し、凸部18aを介してソース端子14に接続される。
【0065】
また、凸部18aの厚さに応じて、実装部品(ゲート抵抗7a)とソース導体(電極)18間の間隔の大きさが決定する。
【0066】
また、ソース導体(電極)18に絶縁基板13を露出する切り欠き29を有しており、切り欠き部分から露出した絶縁基板13の表面に配置されている信号配線(ゲート信号配線16b,ソース信号配線17)が、ボンディングワイヤ19を介して外部の信号端子20に接続される。
【0067】
また、実装部品は、抵抗素子、コンデンサ、スナバコンデンサ、ダイオードのいずれかである。
【0068】
これにより、モジュール内部の絶縁耐性を維持しつつ、半導体モジュールの小型化を図ることができる。
【実施例2】
【0069】
図9を参照して、本発明の実施例2に係る半導体モジュールについて説明する。
図9は、本実施例の半導体モジュールの一部を示す断面図であり、実施例1の
図3に対応する図である。
【0070】
本実施例の半導体モジュールは、
図9に示すように、ソース導体(電極)18の位置は
図3と同様であるが、ゲート抵抗7aやLTCC13のゲート信号配線16bの周辺に凹部18bが形成されている点において、実施例1(
図3)の半導体モジュールと異なっている。ソース導体に凹部を形成することによっても、実装部品の周縁の間隔の調整が可能となる旨を説明する。
【0071】
図9に示す本実施例の半導体モジュールでは、ソース導体(電極)18の凸部18aの厚さが
図3よりも小さいために、ソース端子14、はんだ12c、ソース導体(電極)18の凸部18aの合計の厚さを示す矢印102の長さは、ゲート信号端子11、はんだ12b、ゲート信号配線16a、LTCC13の合計の厚さに等しい。
【0072】
そのため、ゲート信号配線16bとゲート抵抗7aの厚さを加えた矢印103の長さがドレイン導体(電極)9の上面からソース導体(電極)18の下面までの距離(長さ)より大きくなってしまい、ソース導体(電極)18とゲート抵抗7aが接触してしまう。
【0073】
そこで、
図9に示すように、ゲート抵抗7aやゲート信号配線16bの上に凹部18bを設けることで、矢印103の長さ(厚さ)よりも矢印103の長さに凹部18bの長さを加えた矢印104の長さ(厚さ)が大きくなる。
【0074】
なお、ゲート抵抗7aやゲート信号配線16bの厚さに合わせて凹部18bの高さを変えても良い。
【0075】
本実施例の半導体モジュールは、言い換えると、ソース導体(電極)18は、少なくとも実装部品(ゲート抵抗7a)と対向する面に凹部18bを有しており、実装部品(ゲート抵抗7a)は、凹部18bによりソース導体(電極)18から間隔を有して配置される。
【0076】
本実施例のように、凹部18bを設けることでゲート信号配線16bやゲート抵抗7aにソース導体(電極)18が接触することなく、絶縁距離を持つことでリーク電流の発生を防止することができる。
【実施例3】
【0077】
図10から
図12を参照して、本発明の実施例3に係る半導体モジュールについて説明する。
図10は、本実施例の半導体モジュールの一部を示す断面図である。
図11は、本実施例の半導体モジュールの変形例を示す斜視図であり、
図12は、
図11の半導体モジュールを封止樹脂23で封止した状態の外観を示す斜視図である。
【0078】
本実施例の半導体モジュールは、
図10に示すように、ドレイン導体(電極)9に平行な面とソース導体(電極)18に平行な面とが半導体モジュールの積層配置方向(ドレイン導体9とソース導体18の対向方向)に柱状の導体で接続する中間導体25を介して、2つの半導体モジュールが繋がって構成されている。
【0079】
ドレイン導体(電極)9を電源の高圧側、ソース導体(電極)18を電源の低圧側、中間導体25を出力に繋ぐことで、ハーフブリッジ回路を作ることができる。
【0080】
LTCC13を使いゲート抵抗7aをソース導体(電極)18側に配置し、ゲート抵抗7a表面からパワー半導体素子(MOSFET)10表面までの厚さよりもソース導体(電極)18表面からパワー半導体素子(MOSFET)10表面までの厚さ(距離)を大きくすることで、中間導体25の積層配置方向(ドレイン導体9とソース導体18の対向方向)の長さが小さくなるため、高圧側と低圧側のパワー半導体素子(MOSFET)10の間のインダクタンスが小さくなる。
【0081】
図11に、本実施例の半導体モジュールの変形例を示す。
図11の半導体モジュールの作製中におけるLTCC13を使用する利点は、外部の導体との接続面を、ドレイン導体(電極)9およびソース導体(電極)18のどちらにも作ることができる点である。
【0082】
図11に示すように、ボンディングワイヤ19とLTCC13上の配線との接続面を中間導体25とソース導体(電極)18側に設けることができるため、パワー半導体素子(MOSFET)10の端子で最も広い面積を持つドレイン端子と接続するドレイン導体(電極)9を削ることなく、信号配線と入力用の信号端子をボンディングワイヤ19で接続できるスペースを確保できる。
【0083】
また、ドレイン導体(電極)9側からLTCC13の接続面を露出する必要がないことでドレイン導体(電極)9の面積を広くする必要がないためモジュールの小型化ができる。
【0084】
図12に、
図11の半導体モジュールを封止樹脂23で封止した状態の外観を示す。封止樹脂23で高圧側と低圧側の導体を絶縁したハーフブリッジモジュールとして外部電源や負荷と接続することができる。
【0085】
以上説明した本実施例の半導体モジュールは、言い換えると、ソース導体(電極)18が延在する方向において、ソース導体(電極)18の一部がドレイン導体(電極)9よりも突出した第1の半導体モジュールと、ドレイン導体(電極)9が延在する方向において、ドレイン導体(電極)9の一部がソース導体(電極)18よりも突出した第2の半導体モジュールと、第1の半導体モジュールにおけるソース導体(電極)18の突出部と第2の半導体モジュールにおけるドレイン導体(電極)9の突出部と前記ソース導体(電極)18の突出部と前記ドレイン導体(電極)9の突出部を接続する導体とで形成する中間導体25を備えており、第1の半導体モジュールおよび第2の半導体モジュールは、上記実施例1または2のいずれかの半導体モジュールである。
【実施例4】
【0086】
図13を参照して、本発明の実施例4に係るモータ一体型インバータについて説明する。
図13は、本実施例のモータ一体型インバータの一部を示す斜視図である。
【0087】
モータ4a内部の巻線と接続されたACバスバー27と中間導体25に接続された出力端子26が接続し、ドレイン導体(電極)9先端の入力端子P(21)とソース導体(電極)18先端の入力端子N(22)がDCバスバー28を通り、コンデンサ24と図示しないDC電源に接続している。
【0088】
ハーフブリッジモジュールは、図示していない他の2つのモジュールと合わせて3つのAC出力で三相交流を出力する三相インバータとなる。インバータのACバスバー27は図示しないモータの三相巻線の入力端子にそれぞれ接続される。
【0089】
<本発明の変形例について>
上記した各実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。LTCC13上で信号配線と接続する素子は受動素子に限らず、バイポーラトランジスタやICなどでも良い。
【0090】
また、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0091】
1…電池
2…コンデンサ
3…電力変換装置
4,4a…モータ
5…半導体モジュール
6…制御回路
7,7a…ゲート抵抗
8…セラミック基板
9…ドレイン導体(電極)
10…パワー半導体素子(MOSFET)
11…ゲート信号端子
12a,12b,12c…はんだ(接続導体)
13…低温同時焼成セラミックス基板(LTCC)(絶縁基板)
14…ソース端子
15…ソース信号端子
16,16a,16b,16c…ゲート信号配線
17,17a,17b,17c…ソース信号配線
18…ソース導体(電極)
18a…(ソース導体18の)凸部
18b…(ソース導体18の)凹部
19…ボンディングワイヤ
20…信号端子
21…入力端子P
22…入力端子N
23…封止樹脂
24…コンデンサ
25…中間導体
26…出力端子
27…ACバスバー
28…DCバスバー
29…切り欠き(部)
100…ゲート信号端子11、はんだ12b、ゲート信号配線16a,16b、LTCC13、ゲート抵抗7aの合計の厚さ
101…ソース端子14、はんだ12c、凸部18aを含むソース導体(電極)18の合計の厚さ
102…ソース端子14、はんだ12c、ソース導体(電極)18の凸部18aの合計の厚さ
103…ゲート信号端子11、はんだ12b、ゲート信号配線16a、LTCC13,ゲート信号配線16b、ゲート抵抗7aの合計の厚さ
104…矢印103の長さ(厚さ)に凹部18bの長さを加えた長さ(厚さ)